以下、クランプセンサおよび測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、測定装置の一例としての電流測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。図1に示す電流測定装置1は、例えば、クランプ対象としての電線200(図2,5参照)に流れる電流(被測定量の一例)を測定可能に構成されている。具体的には、電流測定装置1は、図1に示すように、装置本体2およびクランプセンサ3を備えて構成されている。
装置本体2は、図1に示すように、測定部11、操作部12、表示部13および処理部14を備えて構成されている。
測定部11は、処理部14の制御に従い、クランプセンサ3によって検出された磁気(被検出量の一例)に基づいて電線200に流れる電流を測定する測定処理を実行する。
操作部12は、各種のスイッチを備えて構成され、各スイッチが操作されたときに操作信号を出力する。表示部13は、処理部14の制御に従って電流の測定値等を表示する。処理部14は、操作部12から出力される操作信号に従って装置本体2を構成する各部を制御する。
クランプセンサ3は、クランプ対象としての電線200をクランプした(挟み込んだ)状態において被検出量の一例としての磁気を検出するクランプ型のセンサであって、図2〜図4に示すように、本体部21、第1センサ22、スライド部23、第2センサ24、スライド機構25およびロック機構26を備えて構成されている。
本体部21は、図2〜図4に示すように、嵌合可能な一対のケース31a,31b(以下、区別しないときには「ケース31」ともいう)を備えて構成されている。また、本体部21の先端部21aには、図2に示すように、電線200をクランプする際に電線200を嵌め込ませる断面「U」字状の凹部32が形成されている。また、図5,6に示すように、本体部21の先端部21aにおける凹部32の下部には、第1センサ22(各センサのいずれか一方)を収容する収容部33が形成されている。なお、図5,6では、本体部21のケース31aを取り外した状態で図示している。
また、図5,6に示すように、本体部21には、本体部21の先端部21aと基端部21bとを結ぶ方向(スライド方向:両図に示す矢印Aの方向)に本体部21に対してスライド可能な状態でスライド部23を収容する収容部34が形成されている。
第1センサ22は、一例として磁気コアであって、図5,6に示すように、本体部21の収容部33に収容されている。
スライド部23は、図2,4に示すように、嵌合可能な一対のケース41a,41b(以下、区別しないときには「ケース41」ともいう)を備えて構成され、本体部21の収容部34に少なくとも基端部23bが収容された状態で、上記したスライド方向にスライド可能に本体部21に配置されている。なお、図5に示すように、スライド部23が本体部21の先端部21a側に位置している状態(本体部21の凹部32が閉塞されて、第1センサ22と第2センサ24とが対向する状態)を「クローズ状態」ともいい、図6に示すように、スライド部23が本体部21の基端部21b側に位置している状態(本体部21の凹部32が開放されて、第1センサ22と第2センサ24とが対向していない状態)を「オープン状態」ともいう。
また、図7,8に示すように、スライド部23の先端部23aには、収容部42が形成され、この収容部42には、第2センサ24(各センサの他方)を保持する第2センサ保持部43が収容されている。
また、図7,8に示すように、収容部42における第2センサ保持部43の上部には、バネ44およびプレート45が収容されている。バネ44は、スライド部23の天面とプレート45との間に配設されてプレート45を下向きに付勢する。この場合、バネ44は、後述する「アンロック状態」(図7に示す状態)、および後述する「ロック状態」(図8に示す状態)のいずれの状態においても弾性変形してプレート45を下向きに常に付勢する。
プレート45は、図13に示すように、略矩形に形成されている。また、プレート45の基端部(同図における右側の端部)には、開口部45aが形成され、プレート45の両側部には、円柱状の4つの突起部45bが形成されている。このプレート45は、図13に示すように、後述するロック機構26のフレーム72の先端部72c(図17参照)が開口部45aに係合することによってフレーム72に連結され、フレーム72の移動に伴ってスライド部23の上記したスライド方向に沿って移動させられる。
この場合、プレート45は、図13に示すように、スライド部23の基端部23b側に移動させられている状態では、突起部45bがスライド部23を構成するケース41の側壁41cに形成されているリブ41fの上部に位置して、バネ44によって下向きに付勢された状態でリブ41fによって突起部45bが支持されることにより、下向きへの移動が規制される。また、プレート45は、図17に示すように、スライド部23の先端部23a側に移動させられている状態では、リブ41fによる突起部45bの支持が解除されて、図16に示すように下向きに移動し、バネ44の付勢力によってセンサ保持部43を押圧する。なお、図13,17では、本体部21、第1センサ22、スライド部23のケース41a、第2センサ24、スライド機構25、並びにロック機構26のロックレバー71、アーム73およびキー74の図示を省略している。また、図16および後述する図12では、本体部21、第1センサ22、スライド部23の各ケース41およびスライド機構25の図示を省略している。
また、図7,8,12,16に示すように、第2センサ保持部43には、バネ46が配設されている。この場合、バネ46は、上部がセンサ保持部43の側部に軸支されると共に、下端部がスライド部23のケース41の側壁41cに形成されているリブ41g(図4参照)に当接する状態で配設されて、センサ保持部43を上向きに付勢する。また、バネ46の付勢力は、バネ44の付勢力よりも小さく規定されている。このバネ46は、スライド部23が後述する「アンロック状態」となったとき(後述する「ロック状態」が解除されたとき)に、第2センサ保持部43を上方に押し上げる機能を有している。
第2センサ24は、上記した第2センサ保持部43に保持された状態でスライド部23の収容部42(つまり、スライド部23の先端部23a)に収容されている。この場合、第1センサ22と第2センサ24とが互いに対向した状態において、両センサ22,24によって磁気(被検出量)が検出される。
スライド機構25は、上記したスライド方向にスライド部23をスライドさせる機構であって、図9に示すように、レバー51、2つのアーム52および2つのバネ53を備えて構成されている。
レバー51は、第1操作部に相当し、図5,6に示すように、本体部21におけるスライド部23の配置位置(同図における上部側の位置)の反対側(同図における下部側の位置)に配設されている。また、レバー51は、本体部21の先端部21a側に位置する支持部51a(第1支持部に相当する)に挿通された支持軸51bによって本体部21に軸支され、支持部51aを支点として回動可能に構成されている。この場合、レバー51は、両図に示すように、端部51cに対する操作に応じて第1支持部51aを支点として回動することにより、上記したスライド方向(両図に示す矢印Aの方向)に対して交差する交差方向(両図に示す矢印Bの方向)に変位(本体部21からの端部51cの突出量が変化)する。言い換えると、レバー51は、本体部21からの端部51cの突出量の変化に伴って回動するように構成されている。また、両図に示すように、第1支持部51aにおけるスライド部23側に位置する端面には、円弧状の当接部51dが形成されている。
各アーム52は、図9に示すように、各々の基端部52a側が連結軸61aによって連結されると共に、各々の先端部52b側が連結軸61bによって連結されている。また、各アーム52の基端部52a側には、円柱状の被当接部62(図5,6参照)が取り付けられ、各アーム52の先端部52bには、凸部63(係合部に相当する)が取り付けられている。また、各アーム52は、図5,6に示すように、被当接部62がレバー51の当接部51dに当接すると共に、スライド部23に配置されているアーム73の長孔73a(被係合部に相当する)に凸部63が係合した状態で、連結軸61aによって本体部21に軸支された基端部52a側(第2支持部に相当する)を支点として回動可能に本体部21に配設されている。この場合、各アーム52は、レバー51の回動に伴って回動することにより、スライド部23を上記したスライド方向にスライドさせる。
各バネ53は、ねじりコイルバネであって、図5,6,9に示すように、コイル部に連結軸61aが挿通され、一方の腕部がアーム52に係合し、他方の腕部が本体部21に係合するように配設されている。この場合、バネ53は、各スライド部23が閉じるようにアーム52が回動する向きにアーム52を付勢する。
このクランプセンサ3では、図6に示すように、レバー51に対する操作による交差方向へのレバー51の変位に伴って端部51cの突出量が減少する向きにレバー51が回動したときに、スライド部23が開く向き(各センサ22,24が非対向状態となる向き:同図に示す矢印A2の向き)にアーム52がスライド部23をスライドさせ、図5に示すように、端部51cの突出量が増加する向きにレバー51が回動したときに、スライド部23が閉じる向き(各センサ22,24が対向状態となる向き:同図に示す矢印A1の向き)にアーム52がスライド部23をスライドさせる。
ロック機構26は、クローズ状態となっている(各センサ22,24が対向している)スライド部23のスライドを規制するロック状態と、スライド部23のスライド規制を解除する(スライドを可能とする)アンロック状態とを切り替える機構であって、図11,12に示すように、ロックレバー71、フレーム72、アーム73およびキー74を備えて構成されている。
ロックレバー71は、第2操作部に相当し、図5,6に示すように、本体部21におけるスライド部23の配置位置(同図における上部側の位置)の側に配設されている。このロックレバー71は、図11に示すように、略矩形の本体部71aと、本体部71aに突出形成された2つのアーム71bと、本体部71aに突出形成されてアーム71bよりも長い2つのアーム71cとを備えている。この場合、各アーム71b,71cは、弾性変形可能に構成されている。また、各アーム71bの先端部には、幅方向の外向きに突出する突起部71dがそれぞれ形成されている。また、各アーム71cの先端部には、幅方向の外向きに突出する突起部71eがそれぞれ形成されると共に、下向きに突出する係合部71f(図12参照)がそれぞれ形成されている。なお、図11および後述する図15では、本体部21を破線で図示すると共に、スライド部23における各ケース41の図示を省略している。
この場合、ロックレバー71は、図7,8に示すように、本体部21を構成する各ケース31の側壁31cの内面における収容部34(スライド部23が収容される部位)の上部に形成されている溝部31dに本体部71aの両側部が嵌め込まれた状態で、スライド部23の先端部23a側のロック位置P1(図8参照)とスライド部23の基端部23b側のアンロック位置P2(図7参照)との間で上記したスライド方向に沿ってスライド可能に配設されている。なお、図7,8では、ケース31a、スライド部23の各ケース41、スライド機構25、並びにロック機構26のアーム73およびキー74を取り外した状態で図示している。
フレーム72は、図14に示すように略矩形に形成されて、図13に示すように、スライド部23を構成するケース41の側壁41cの内面に形成されている溝部41dに嵌め込まれた状態で、スライド方向にスライド可能にスライド部23内に配置されている。また、図14に示すように、フレーム72の内側には、ロックレバー71のアーム71cに形成されている係合部71f(図12参照)が係合する係合部72aが形成されている。なお、図14および後述する図18〜図20では、本体部21およびスライド部23を破線で図示すると共に、ロックレバー71を取り外した状態で図示している。
アーム73は、図5,6に示すように、スライド部23を構成するケース41の側壁41cに形成されている開口部41eに嵌め込まれるように配置されている。また、アーム73の基端部(スライド部23の基端部23b側の端部)には、スライド機構25のアーム52に取り付けられている凸部63が係合する長孔73aが形成されている。また、図10に示すように、アーム73の先端部(スライド部23の先端部23a側の端部)には、湾曲部73bが形成されている。
キー74は、図9,10に示すように、平面視略矩形に形成された本体部74aと本体部74aの裏面に突出形成された突起部74bとを備えている。また、キー74は、図10に示すように、スライド部23を構成する各ケース41の側壁41cに形成されている開口部41eに本体部74aの側部(同図では、紙面奥側の部位)が嵌め込まれた状態でスライド部23内に配設されている。なお、図10では、各ケース41のうちのケース41bのみを図示している。
また、キー74は、図18に示すように、フレーム72がスライド部23の先端部23a側(同図における左側)に移動したときに、フレーム72の側部72dに本体部74aの縁部が当接してスライド部23のケース41の側壁41cから側壁41cの外側に移動させられ、これによって側壁41cの開口部41eを貫通して、本体部21のケース31の側壁31cに形成されている凹部31eに本体部74aの側部が嵌合する。また、本体部74aと凹部31eとの嵌合によって本体部21に対するスライド部23のスライドが規制されて、スライド部23がロック状態となる。
また、キー74は、図14に示すように、フレーム72がスライド部23の基端部23b側(同図における右側)に移動したときには、フレーム72の側部72dと本体部74aの縁部との当接が解除され(両者が離間し)、側壁41cの内側への移動が可能な状態となる。また、キー74は、図10に示すように、突起部74bがアーム73の湾曲部73bに当接しており、側壁41cの内側への移動が可能な状態においてアーム73がスライド部23の基端部23b側(同図における右側)に移動したときに、湾曲部73bによって側壁41cの内側に移動させられて、図14に示すように、本体部74aと凹部31eとの嵌合が解除され、これによって本体部21に対するスライド部23のスライド規制が解除されて、スライド部23がアンロック状態となる。
次に、電流測定装置1の使用方法について、図面を参照して説明する。なお、初期状態では、図5に示すように、クランプセンサ3のスライド部23がクローズ状態で、かつロック機構26におけるロックレバー71がロック位置P1に位置しているものとする。
例えば、測定対象体としての電線200(図5,6参照)に流れている電流(被測定量)を測定する際には、装置本体2の操作部12を操作して電源を投入し、次いで、電線200をクランプセンサ3でクランプする。
具体的には、まず、ロック機構26のロックレバー71をロック位置P1(図5,8参照)からアンロック位置P2(図6,7参照)にスライドさせる。この際に、図11に示すように、ロックレバー71のアーム71cに形成されている突起部71eが本体部21の側壁31cの内側に形成されている突起部31gに当接してアーム71cが内側に弾性変形して、アーム71cの下部に形成されている係合部71f(図12参照)とフレーム72の係合部72a(図14参照)とが係合しない状態となるため、ロックレバー71のスライドが可能な状態に維持される。また、ロックレバー71のスライドによってロックレバー71のアーム71bに形成されている突起部71dが本体部21の側壁31cの内側に形成されている突起部31fに当接し、これによってアーム71bが内側に弾性変形する。この際のアーム71bの弾性力の変化により、ロックレバー71をスライドさせている感覚(クリック感)を生じさせることが可能となっている。
続いて、ロックレバー71の係合部71fがフレーム72の後端部72bに当接し、ロックレバー71のスライドに伴ってフレーム72がスライド部23の基端部23b側に移動させられる。
また、基端部23b側へのフレーム72の移動に伴い、図11,12に示すように、フレーム72に連結されているプレート45がスライド部23の基端部23b側(両図における右側)に移動させられる。この際に、図13に示すように、プレート45の突起部45bがスライド部23の側壁41cに形成されているリブ41fの上部に位置する。この結果、プレート45は、バネ44によって下向きに付勢された状態でリブ41fによって突起部45bが支持され、これによって下向きへの移動が規制されると共に、図12に示すように、プレート45がセンサ保持部43から離間した状態に維持される。また、この状態では、第2センサ24を保持しているセンサ保持部43に配設されているバネ46の付勢力によって第2センサ保持部43が上方(第1センサ22から離間する向き)に押し上げられる。このため、第1センサ22とセンサ保持部43とが離間する。
一方、基端部23b側へのフレーム72の移動に伴い、図14に示すように、フレーム72の側部72dとキー74の本体部74aの縁部との当接が解除され(両者が離間し)、スライド部23の側壁41cの内側へのキー74の移動が可能な状態となる。
次いで、スライド機構25のレバー51を操作する。具体的には、本体部21を片手で握り、人差し指、中指および薬指(または、これらのうちの1本または2本の指)で、図6に示すように、レバー51の端部51cを上向き(交差方向であって、一例として、スライド方向に直交する方向:同図に示す矢印B1の向き)に押圧する。この際に、レバー51が、バネ53の付勢力に抗して、支持部51aを支点として回動(この例では、左回り(同図に示す矢印Cの向き)に回動)して上向きに変位(本体部21からの端部51cの突出量が変化)する。
また、図6に示すように、レバー51の当接部51dに当接している各アーム52の各被当接部62が、レバー51の回動に伴って当接部51dによって押圧され、これによってアーム52が基端部52a側(連結軸61aによって軸支された部位)を支点として回動(この例では、右回り(同図に示す矢印Dの向き)に回動)する。
また、図6に示すように、アーム52の回動により、各アーム52の先端部52bに取り付けられている凸部63に係合しているロック機構26のアーム73が同図に示す矢印A2の向き(スライド方向)にスライドさせられる。
また、図19,20(両図では、ロック機構26をクランプセンサ3の下側から見た状態で図示している)に示すように、アーム73のスライドが開始されたときに、アーム73の湾曲部73bに当接しているキー74の突起部74b(図10も参照)が湾曲部73bによってスライド部23の側壁41cの内側に移動させられる。この結果、キー74の本体部74aと本体部21における側壁31cの凹部31eとの嵌合が解除され、これによってスライド部23がアンロック状態となる(本体部21に対するスライド部23のスライド規制が解除される)。
続いて、レバー51の端部51cをさらに押圧してレバー51をさらに変位させる。この際に、図6に示すように、レバー51およびアーム52がそれぞれ矢印C,Dの向きにさらに回動し、ロック機構26のアーム73が矢印A2の向きにさらにスライドさせられる。また、アーム73が嵌め込まれているスライド部23がアーム73と共に矢印A2の向きにスライドさせられる。これにより、同図に示すように、スライド部23がオープン状態となる。この場合、アンロック状態では、バネ46の付勢力によって第1センサ22とセンサ保持部43とが離間しているため、スライド部23がスライドするときの第1センサ22とセンサ保持部43との摺動が防止される。
次いで、図6に示すように、本体部21の凹部32に電線200を嵌め込ませる。この場合、このクランプセンサ3では、上記したように、本体部21を片手で握ってレバー51を操作することでスライド部23をスライドさせることができる。したがって、もう片方の手で電線200を支持することができるため、電線200を凹部32に嵌め込ませる作業を容易に行うことが可能となっている。
続いて、レバー51の端部51cに加えている力を弛める(レバー51に対する押圧を解除する)。この際に、バネ53の付勢力によってアーム52が図5に示す矢印Fの向き(上記した矢印Dの向きとは逆の左回り)に回動する。また、アーム52の回動に伴ってレバー51が同図に示す矢印Eの向き(上記した矢印Cの向きとは逆の右回り)に回動し、レバー51が下向きに変位(本体部21からの端部51cの突出量が変化)する。
また、図5に示すように、アーム52の回動により、ロック機構26のアーム73がスライド部23と共に同図に示す矢印A1の向き(スライド方向)にスライドさせられる。これにより、同図に示すように、スライド部23がクローズ状態となる。
次いで、スライド部23をロック状態に設定する。具体的には、ロック機構26のロックレバー71をアンロック位置P2(図6,7参照)からロック位置P1(図5,8参照)にスライドさせる。この際に、図15に示すように、ロックレバー71のアーム71cの突起部71eと本体部21の側壁31cの内側の突起部31gとの当接が解除され、アーム71cの内側への弾性変形が解除される(外側に復元する)。
続いて、図16,20に示すように、ロックレバー71の係合部71fがフレーム72の係合部72aに当接し、ロックレバー71のスライドに伴ってフレーム72がスライド部23の先端部23a側に移動させられる。
また、先端部23a側へのフレーム72の移動に伴い、図15,16に示すように、フレーム72に連結されているプレート45がスライド部23の先端部23a側(両図における左側)に移動させられる。この際に、図17に示すように、スライド部23の側壁41cのリブ41fの上部に位置していたプレート45の突起部45bがリブ41fから外れ、これによってリブ41fによる突起部45bの支持が解除される。この結果、プレート45は、図16に示すように下向きに移動し、バネ44の付勢力によって第2センサ24を保持しているセンサ保持部43を下向き(第1センサ22に近接する向き)に押圧する。また、下向きにセンサ保持部43が押圧されることで、センサ保持部43(第2センサ24)と第1センサ22とが十分に近接する。
ここで、付勢力を加える従来の一般的な機構では、アンロック状態においては第2センサ24を押圧するバネを弾性変形させない状態(非圧縮状態)とし、ロック状態に移行させたときにのみバネを弾性変形(圧縮状態に移行)させて付勢力を生じさせる構成が採用されている。この従来の機構では、バネを非圧縮状態から圧縮状態に移行させるのにバネを大きく変位させなければならないため、機構が大型化するという課題が生じ、機構を小型化したときには十分な押圧力が得られないという課題が生じる。これに対して、このクランプセンサ3では、アンロック状態およびロック状態のいずれの状態においてもバネ44が弾性変形している構成のため、十分に大きな付勢が常に生じている結果、上記したように、プレート45を支持状態から支持解除状態に移行させるだけで、十分に大きな付勢力でプレート45を付勢することができる。このため、このクランプセンサ3では、センサ保持部43(第2センサ24)と第1センサ22とを確実に近接させることが可能となっている。
一方、図18に示すように、先端部23a側へのフレーム72の移動に伴い、フレーム72の側部とキー74の本体部74aの縁部とが当接してキー74がスライド部23のケース41の側壁41cよりも外側に移動させられる。この結果、キー74の本体部74aが側壁41cの開口部41eを貫通し、本体部21のケース31の側壁31cに形成されている凹部31eに本体部74aの側部が嵌合する。これにより、本体部21に対するスライド部23のスライドが規制され、スライド部23がロック状態となる。以上により、電線200のクランプが完了する。
次いで、電線200をクランプした状態において、クランプセンサ3の第1センサ22および第2センサ24が、電線200に流れる電流によって生じる磁気を検出して検出信号を出力する。
続いて、操作部12を操作して測定開始を指示する。この際に、処理部14が測定部11を制御して、測定処理を実行させる。この測定処理では、測定部11は、クランプセンサ3から出力された検出信号(クランプセンサ3によって検出された磁気)に基づいて電線200に流れる電流を測定する。続いて、処理部14が、表示部13を制御して、測定部11によって測定された電流の値を表示させる。以上により、電線200を流れる電流の測定が完了する。
一方、測定が完了して、電線200のクランプを解除する際には、上記したように、ロック機構26のロックレバー71を操作し、次いで、レバー51の端部51cを押圧してスライド部23をアンロック状態とする。続いて、レバー51の端部51cをさらに押圧してスライド部23をスライドさせてオープン状態とさせる。次いで、電線200を凹部32から取り外す。続いて、レバー51に対する押圧を解除する。この際に、バネ53の付勢力によってアーム52が回動し、アーム52の回動に伴ってレバー51が回動すると共に、スライド部23がスライドし、これによってスライド部23がクローズ状態となる。以上により、電線200に流れる電流の測定が完了する。
このように、このクランプセンサ3および電流測定装置1では、スライド方向に対して交差する交差方向に変位可能なレバー51を備え、レバー51の交差方向の変位に伴ってスライド部23をスライド方向にスライド可能にスライド機構25が構成されている。この場合、スライド部23を直接スライド方向にスライドさせる従来の構成では、片手での操作が困難であり、また両手で操作したとするとクランプ対象の電線200を支持することができないため、電線200をクランプすることが困難となる。これに対して、このクランプセンサ3および電流測定装置1では、レバー51をスライド方向に対して交差する交差方向に変位させることでスライド部23をスライド方向にスライドさせることができるため、片手でクランプセンサ3を操作してスライド部23をスライドさせ、もう片方の手で電線200を支持してクランプさせることができる。したがって、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、電線200をクランプする際の操作性を十分に向上させることができる。
また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、本体部21におけるスライド部23の配置位置の反対側にレバー51を配設し、交差方向の変位に伴って本体部21からの突出量が変化するようにレバー51を構成したことにより、スライド部23のスライド状態や電線200のクランプ状態を操作者が正面で捉えつつ、電線200をクランプする操作を確実かつ容易に行うことができる。また、このように構成したことにより、本体部21を握った状態で、人差し指、中指および薬指(または、これらのうちの1本または2本の指)でレバー51を操作することができる。このため、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、電線200をクランプする際の操作性をさらに向上させることができる。また、このような構成を採用することで、レバー51とスライド部23を離すことができるため、設計の自由度を高めることができる結果、クランプセンサ3の設計を容易とすることができる。
また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、本体部21におけるスライド部23の配置位置側にロック機構26のロックレバー71を配設し、ロックレバー71のスライドに伴ってロック状態とアンロック状態とを切り替え可能に構成したことにより、ロック機構26の存在によってスライド部23の意図しないスライドを好適に回避できるだけでなく、ロックレバー71をレバー51と共に本体部21におけるスライド部23の配置位置の反対側に配設した構成とは異なり、ロックレバー71がいずれの位置にスライドさせられているか、すなわち、ロック機構26がロック状態およびアンロック状態のいずれの状態であるかを確実かつ容易に認識させることができる。また、このように構成したことにより、本体部21を握った状態で、レバー51については、上記したように、人差し指、中指および薬指(または、これらのうちの1本または2本の指)で操作し、ロックレバー71については、親指で操作することができる。このため、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、電線200をクランプする際の操作性をさらに向上させることができる。また、このような構成を採用することで、レバー51とロックレバー71とを離すことができるため、設計の自由度を高めることができる結果、クランプセンサ3の設計を容易とすることができる。
また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、回動による変位によって本体部21からの突出量が変化するように本体部21に配設されたレバー51と、レバー51の当接部51dにアーム52の被当接部62が当接すると共に凸部63がアーム73の長孔73aに係合した状態で回動可能に本体部21に配設されてレバー51の回動に伴って回動してスライド部23をスライドさせるアーム52とを備えてスライド機構25を構成したことにより、簡易な構成でありながら、交差方向にレバー51を変位させてスライド部23をスライド方向にスライドさせる動作を確実に行わせることができる。また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、スライド機構25をこのように構成したことにより、レバー51の回動支点と当接部51dとの間の距離、アーム52の回動支点と被当接部62との間の距離、およびアーム52の回動支点と凸部63との間の距離を調整することで、変位量に対するスライド部23のスライド量の比率を任意に規定することができる。
また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、本体部21からの突出量が減少する向きにレバー51が回動したときに、各センサ22,24が非対向状態(オープン状態)となる向きにスライド部23をスライドさせると共に、本体部21からの突出量が増加する向きにレバー51が回動したときに、各センサ22,24が対向状態(クローズ状態)となる向きにスライド部23をスライド可能にスライド機構25を構成したことにより、例えば、本体部21からの突出量が増加する向きにレバー51をバネ53で付勢することで、電線200をクランプした状態でレバー51に対する押圧を解除(操作を停止)しても、電線200をクランプした状態を維持することができるため、電線200をクランプした状態で電線200の電流を測定する際の操作性を十分に向上させることができる。
なお、クランプセンサおよび測定装置の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、図21,22に示すクランプセンサ103を採用することもできる。なお、上記したクランプセンサ3と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
このクランプセンサ103は、図21,22に示すように、本体部21に対して上下方向(スライド方向に対して直交する方向)にスライド(変位)可能なレバー151を備えてスライド機構25が構成されている。このクランプセンサ103では、例えば、レバー151を両図における下向きにスライドさせたときに、スライド部23がクローズ状態となり、レバー151を両図における上向きにスライドさせたときに、スライド部23がオープン状態となるようにスライド機構25がスライド部23をスライドさせる。
また、上記のクランプセンサ3では、突出量が減少する向きにレバー51が回動したときにスライド部23がオープン状態となり、突出量が増加する向きにレバー51が回動したときにスライド部23がクローズ状態となるようにスライド機構25がスライド部23をスライドさせる構成例について上記したが、これとは逆に、突出量が減少する向きにレバー51が回動したときにスライド部23がクローズ状態となり、突出量が増加する向きにレバー51が回動したときにスライド部23がオープン状態となるようにスライド機構25がスライド部23をスライドさせる構成を採用することもできる。
また、本体部21の先端部21a側に位置する支持部51aを支点として回動するレバー51を採用した例について上記したが、本体部21の基端部21b側に位置する支持部を支点として回動するレバー51を採用することもできる。
また、スライド方向に交差する方向として、本体部21に対して上下方向(図5,6に示す矢印Bの方向)に変位する第1操作部(上記したレバー51,151)を採用した例について上記したが、本体部21の幅方向(図5,6における紙面手前側と紙面奥側を結ぶ方向)に変位する第1操作部を採用することもできる。