JP2018008833A - 放電プラズマ焼結用スペーサー、放電プラズマ焼結装置、及び放電プラズマ焼結方法 - Google Patents

放電プラズマ焼結用スペーサー、放電プラズマ焼結装置、及び放電プラズマ焼結方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放電プラズマ焼結による破壊の発生を抑制して、その放電プラズマ焼結を安定的に行うことを可能にする炭化ケイ素スペーサーを提供する。【解決手段】本発明に係る放電プラズマ焼結用スペーサーは、炭化ケイ素を含み、円錐台形状を有する炭化ケイ素スペーサー12である。この炭化ケイ素スペーサー12は、放電プラズマ焼結装置1において、シリンダー111と、パンチ112とを備える放電プラズマ焼結用成形型11のそのパンチ112と、パンチ112に圧力を印加する加圧ラム14との間に設置され、円錐台形状の小平面部21がパンチ112側に配置されて用いられる。また、小平面部21の直径(ds)は、パンチ112の直径(a)との比で、1≦ds/a<1.5の関係を満たすように構成されることが好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、放電プラズマ焼結用スペーサー、放電プラズマ焼結装置、及び放電プラズマ焼結方法に関する。
従来、金属やセラミックスの焼結方法の一つとして、放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)が知られている。この放電プラズマ焼結は、固体状又は粉末状の成形材料を成形型に充填し、一軸性加圧と直流パルス電圧・電流を、成形型及び成形材料に同時に印加して焼結する方法である。
例えば図3は、従来の放電プラズマ焼結装置の構成の一例を示す断面図である。従来の放電プラズマ焼結装置5は、放電プラズマ焼結用成形型51と、その両端のそれぞれに、スペーサー52と、加圧ラム53とが配置されて構成されている。スペーサー52としては一般的には金属製のものが用いられる。なお、グラファイト製のものや炭化タングステン製のもの等が用いられることもある。また、放電プラズマ焼結用成形型51は、中空の円筒形状をしたシリンダー511と、そのシリンダー511の両端から内部に向かって挿入される2つのパンチ512とで構成されている。そして、放電プラズマ焼結装置5においては、放電プラズマ焼結用成形型51の内部に成形材料Mが装入されると、成形材料Mを2つのパンチ512により加圧圧縮しながら、それぞれのパンチ512及びシリンダー511に電流を通電して加熱することによって、成形材料Mを焼結する。
このような放電プラズマ焼結装置において、放電プラズマ焼結成形型は、通電性及び成形性の観点から、例えばグラファイトを用いて構成される(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、グラファイトにより構成された成形型では、酸素を含む雰囲気中で高温に加熱されると、次第にグラファイトが消耗されていくため、大気中で焼結を行うことは不可能となる。そのため、周囲を真空状態又は不活性ガスを充填した状態に保つべく、焼結が進行する部分やその周辺部分を外部と遮断するための真空チャンバーを設けることが必要となる。ところが、そのような真空チャンバーへの成形型の出し入れは、成形物の生産性を大きく低下させる。また、グラファイトにより構成された成形型は、その機械的強度が十分でなく、成形材料に加える圧力を100MPa未満に抑える必要があり、100MPaを超える超高圧条件下での成形材料の焼結は困難であった。
このような問題に対して、炭化ケイ素から構成される放電プラズマ焼結用成形型を用いる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。炭化ケイ素は、酸素雰囲気中で高温に加熱されても消耗が無い。そのため、炭化ケイ素を用いて構成される成形型を用いることで、大気中で焼結を行うことが可能となり、真空チャンバーも不要となり、量産性を大きく改善することができる。さらに、炭化ケイ素は、高い強度を有する材料でもあるため、500MPaを超える超高圧条件で焼結を行うこともできる。
さて、上述したような、炭化ケイ素により構成される成形型を用いた放電プラズマ焼結装置として、パンチ(図3の放電プラズマ焼結装置5におけるパンチ512に相当する。)と接触するスペーサー(図3の放電プラズマ焼結装置5におけるスペーサー52に相当する。)の破壊を防ぐために、そのパンチとスペーサーとの間に、同じ炭化ケイ素からなるスペーサー(炭化ケイ素スペーサー)を設けた装置が提案されている。例えば図4は、炭化ケイ素スペーサーを設けた放電プラズマ焼結装置の構成の一例を示す断面図である。
この放電プラズマ焼結装置6は、放電プラズマ焼結用成形型61と、その両端のそれぞれに、スペーサー63と、加圧ラム64とが配置されており、さらに、放電プラズマ焼結用成形型61のパンチ612とスペーサー63との間には、円柱状、円盤状等の炭化ケイ素スペーサー62が設けられて構成されている。なお、放電プラズマ焼結用成形型61は、シリンダー611と、2つのパンチ612とにより構成されている。このような放電プラズマ焼結装置6によれば、パンチ612からの圧力でスペーサー63が破壊されることを防ぐことができる。
しかしながら、炭化ケイ素は、グラファイトと比較して脆性が大きく、円柱状等の炭化ケイ素スペーサー62を用いても、焼結中に炭化ケイ素スペーサー62のパンチ612との接触面に凹状の破壊が発生することがあった(例えば、図5参照。図5は破壊したときの様子を示す写真図である。)。このような炭化ケイ素スペーサー62における破壊の発生は、焼結中に発生することが多く、成形材料に対する良好な焼結が損なわれるだけでなく、焼結処理を重ねる度に進行していき、高額なシリンダーの損失にもつながり、工業的な大量生産への応用の妨げとなっている。
特開平11−335707号公報 特開2003−081649号公報
K.Kakegawa, C.M.Wen, N.Uekawa, T.Kojima, "SPS Using SiC Die", Key Engineering Materials, Vol. 617, pp. 72−77, Jun. 2014
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、放電プラズマ焼結による破壊の発生を抑制して、その放電プラズマ焼結を安定的に行うことを可能にする炭化ケイ素スペーサーを提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、円錐台形状等の錐台形状の炭化ケイ素スペーサーを構成し、その錐台形状における小平面部をパンチ側に配置して用いることで、パンチとの接触部の破壊を抑制でき、安定的に放電プラズマ焼結を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、炭化ケイ素を含み、円錐台形状を有する、放電プラズマ焼結用スペーサーである。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、当該放電プラズマ焼結用スペーサーは、径の大きさの異なる2つの平面部を有する円錐台形状であり、放電プラズマ焼結において、シリンダーと、パンチとを備える放電プラズマ焼結用成形型における該パンチと、該パンチに圧力を印加する加圧ラムとの間に、前記円錐台形状における径の小さい平面部が前記パンチ側に配置されて用いられる、放電プラズマ焼結用スペーサーである。
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記小平面部の直径(d)は、前記パンチの直径(a)との比で、1≦d/a<1.5となるように構成される、放電プラズマ焼結用スペーサーである。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、高さ(h)が10mm以上である、放電プラズマ焼結用スペーサーである。
(5)本発明の第5の発明は、炭化ケイ素を含み、錐台形状を有する、放電プラズマ焼結用スペーサーである。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明に係る放電プラズマ焼結用スペーサーを備える、放電プラズマ焼結装置である。
(7)本発明の第7の発明は、シリンダーと、パンチとを備える焼結用成形型に成形材料を装入し、加圧ラムにより該パンチを加圧しながら該成形材料に対して放電プラズマ焼結を行う焼結方法であって、前記焼結用成形型における前記パンチと、前記加圧ラムとの間に、炭化ケイ素を含み、径の大きさの異なる2つの平面部を有する円錐台形状の放電プラズマ焼結用スペーサーを、該円錐台形状における径の小さい小平面部が該パンチ側となるように配置して放電プラズマ焼結を行う、放電プラズマ焼結方法である。
(8)本発明の第8の発明は、シリンダーと、パンチとを備える焼結用成形型に成形材料を装入し、加圧ラムにより該パンチを加圧しながら該成形材料に対して放電プラズマ焼結を行う焼結方法であって、前記焼結用成形型における前記パンチと、前記加圧ラムとの間に、炭化ケイ素を含み、大きさの異なる2つの平面部を有する錐台形状の放電プラズマ焼結用スペーサーを、該錐台形状における小平面部が該パンチ側となるように配置して放電プラズマ焼結を行う、放電プラズマ焼結方法である。
本発明によれば、放電プラズマ焼結による炭化ケイ素スペーサーの破壊の発生を抑制して、放電プラズマ焼結を安定的に行うことができる。
放電プラズマ焼結装置の構成を示す断面図である。 放電プラズマ焼結用スペーサーの構成を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図である。 従来の放電プラズマ焼結装置の構成を示す断面図である。 従来の放電プラズマ焼結装置の構成を示す断面図である。 放電プラズマ焼結用スペーサーにおいて発生した破壊の様子を示す写真図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
≪1.放電プラズマ焼結装置≫
放電プラズマ焼結用成形型を用いて放電プラズマ焼結を行うための放電プラズマ焼結装置について説明する。放電プラズマ焼結装置は、成形材料に直接パルス状の電気エネルギーを投入し、火花放電により瞬時に発生する高温プラズマの高エネルギーを、熱拡散・電解拡散等に応用することで、昇温時間及び保持時間を含めて、例えば3〜30分程度の短時間で焼結を行うことを可能とするものである。
図1は、放電プラズマ焼結装置の構成の一例を示す断面図である。放電プラズマ焼結装置1は、放電プラズマ焼結用成形型11を備えている。また、その放電プラズマ焼結用成形型11の両端には、炭化ケイ素スペーサー12と、金属スペーサー13と、加圧ラム14とが、この順でそれぞれ設けられている。
放電プラズマ焼結装置1においては、放電プラズマ焼結用成形型11の内部に成形材料Mが装入され、成形材料Mに対して加圧下で電圧が印加することによって焼結を行う。
放電プラズマ焼結装置1には、図示しないが、炭化ケイ素により構成される炭化ケイ素スペーサー12の導電性を十分に確保する観点から、放電プラズマ焼結用成形型11及び炭化ケイ素スペーサー12を囲うように加熱部を設けることができる。この加熱部により、放電プラズマ焼結用成形型11及び炭化ケイ素スペーサー12を加熱することによって、より効率的に焼結を行うことができる。
成形材料Mとしては、放電プラズマ焼結により焼結体が形成されるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物等のセラミックスや、金属、合金、サーメット等を用いることができる。また、その形状についても、特に限定されず、粉末状又は固体状の原料を用いることができる。
[放電プラズマ焼結用成形型]
放電プラズマ焼結用成形型11は、成形材料を加圧しつつ電圧を印加して放電プラズマ焼結を行うための反応場である。
図1に示すように、放電プラズマ焼結用成形型11は、シリンダー111と、2つのパンチ112(112A,112B)とを備える。そして、放電プラズマ焼結用成形型11では、成形材料Mが、シリンダー111と、2つのパンチ112とに囲まれる空間において加圧された状態で焼結される。
(シリンダー)
シリンダー111は、例えば、円筒形状のものであって、その中空部に挿入される円柱状の2つのパンチ112の上下動をガイドする。シリンダー111においては、成形材料Mが装入され、2つのパンチ112による圧力の印加によってその成形材料Mを加圧圧縮する。
シリンダー111の大きさとしては、特に限定されず、設備や焼結体の収量によって適宜調整することができる。
また、シリンダー111は、導電性材料により構成されるものであることが好ましい。具体的には、炭化ケイ素、グラファイト、炭化タングステン等により構成されるものが好ましく、その中でも、炭化ケイ素により構成されるものがより好ましい。例えば、炭化ケイ素からなるシリンダー111とすることで、真空雰囲気とすることなく、酸素雰囲気中で高温のプラズマ焼結を行うことができ、そのような高温加熱条件でもクラックの発生を抑制することができる。
(パンチ)
パンチ112は、例えば円柱形状を有するものであり、シリンダー111の中空部に挿入されることで、シリンダー111とともに、そのシリンダー111の内部に装入した成形材料を加圧圧縮する。具体的に、内部に成形材料Mが装入されたシリンダー111の中空部の一端から一つのパンチ112Bを挿入し、他端からもう一つのパンチ112Aを挿入して、これらのパンチ112A,112Bにより、シリンダー111の内部の成形材料Mに対して直接圧力を印加する。
パンチ112A,112Bは、シリンダー111の両端から挿入されて成形材料15に圧力を印加する際、その端部における一部が、シリンダー111の開口部111Pから露出するような大きさとなっている。なお、ここでいう大きさとは、パンチ112のシリンダー111への挿入方向の長さをいう。
また、パンチ112は、成形材料Mに対して効率的に放電プラズマ焼結を施す観点から、導電性材料により構成されるものであることが好ましい。具体的には、シリンダー111の構成材料と同様に、炭化ケイ素、グラファイト、炭化タングステン等により構成されるものが好ましく、その中でも、炭化ケイ素により構成されるものがより好ましい。
また、パンチ112は、シリンダー111の中空部に挿入可能であって、成形材料Mに対して有効に圧力を印加できるような大きさ(径)で構成されている。具体的に、パンチ112の径としては、成形材料Mに対して均一に圧力を印加する観点から、シリンダー111の中空部の径より僅かに小さいことが好ましい。例えば、シリンダー111の中空部の径に対して、99.8%以下の大きさであることが好ましく、99.6%以下の大きさであることがより好ましい。一方で、パンチ112の径は、シリンダー111の中空部の径に対して、99.3%以上の大きさであることが好ましく、99.5%以上の大きさであることがより好ましい。
なお、パンチ112が、高温条件下において成形材料Mと化学的に活性な材料で構成されている場合には、パンチ112と成形材料Mとの間に反応防止材を設けることができる。反応防止剤としては、例えば、金属板やカーボンペーパー等を用いることができる。
ここで、放電プラズマ焼結用成形型11においては、例えば、シリンダー111の中空部に、一方の端部から一つのパンチ112Bが挿入され、次いで、シリンダー111の他方の端部から、その内部に成形材料Mが装入される。その後、成形材料Mが装入された側の端部から、もう一つのパンチ112Aを挿入することで、成形材料Mに対してパンチ112A,112Bにより圧力を印加する状態がセットされる。このようにして成形材料Mが装入された放電プラズマ焼結用成形型11は、放電プラズマ焼結装置1に設置され、成形材料Mに対する圧力の印加が行われる。
なお、放電プラズマ焼結用成形型として、円筒状のシリンダー111と円柱状の一対のパンチ112とが設けられた態様(放電プラズマ焼結用成形型11)を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、シリンダーの中空部の一方が封止され、もう一方の中空部のみにパンチが挿入されて構成されるものであってもよい。
[炭化ケイ素スペーサー]
炭化ケイ素スペーサー12は、放電プラズマ焼結用成形型11と加圧ラム14との間に配置されるものである。具体的には、炭化ケイ素スペーサー12は、放電プラズマ焼結用成形型11におけるパンチ112と接触するように配置され、加圧ラム14からの圧力をパンチ112に伝えて、放電プラズマ焼結用成形型11内に装入された成形材料Mを圧縮する。このようにして炭化ケイ素スペーサー12を設けることで、パンチ112の圧力をより大面積の大平面部に分散させ、金属スペーサー13を保護することができる。
本実施の形態においては、炭化ケイ素スペーサー12が、炭化ケイ素を含む材料により構成され、径の大きさの異なる2つの平面部を有する円錐台形状を有するものであることを特徴としている。このような炭化ケイ素スペーサー12によれば、例えば500MPaを超える高圧条件で加圧しながら放電プラズマ焼結を行った場合でも、パンチ112との接触面における破壊(損傷)の発生を効果的に防ぐことができ、安定的に焼結を行うことが可能となる。なお、炭化ケイ素スペーサー12についての詳細は、後述する。
[金属スペーサー]
金属スペーサー13は、加圧ラム14の保護、及び放電プラズマ焼結用成形型11の上下方向の位置調整のために用いられる。
金属スペーサー13としては、導電性及び高い強度を有するものであれば、特に限定されず、各種の金属製のものを用いることができる。また、グラファイト製のものや炭化タングステン製のものを用いることもできる。さらに、金属スペーサー13の形状や大きさについても、特に限定されず、例えば、炭化ケイ素スペーサー12よりもやや大きく、円柱形状のものを用いることができる。
[加圧ラム]
加圧ラム14は、放電プラズマ焼結用成形型11のパンチ112を通じて成形材料Mに対して所定の圧力を印加するとともに、パルス電圧・電流を印加する。
≪2.放電プラズマ焼結用スペーサー≫
(円錐台形状のスペーサー)
次に、放電プラズマ焼結装置1に設けられる炭化ケイ素スペーサー12について、より詳細に説明する。炭化ケイ素スペーサー12は、上述したように、放電プラズマ焼結用成形型11におけるパンチ112と、パンチ112に圧力を印加する加圧ラム14との間に設置され、加圧ラム14からの圧力を分散させるとともに、パンチ112を通じて成形材料Mに対して均一に圧力を印加させるために用いられる。
図2は、炭化ケイ素スペーサー12の構成を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図である。本実施の形態に係る炭化ケイ素スペーサー12は、炭化ケイ素を含んで構成されており、径の大きさの異なる2つの円形状の平面部を有する円錐台形状からなっている。より具体的に、図2に示すように、炭化ケイ素スペーサー12は、径が小さく面積の小さい平面部である小平面部21と、径が大きく面積の大きい平面部である大平面部22とを有する円錐台形状により構成されている。
なお、小平面部21の直径を「d」とし、大平面部22の直径を「d」とし、また、円錐台形状の炭化ケイ素スペーサー12の高さを「h」としている。また、「錐台形状」とは、錐体から、頂点を共有し相似に縮小した錐体を取り除いた立体形状をいい、言い換えると、錐体面と、2枚の平行かつ相似である平面とにより囲まれる立体形状をいう。
ここで、本発明者は、従来の放電プラズマ焼結装置(例えば図4に構成を示す装置)における炭化ケイ素スペーサーにおける破壊の発生の原因が、放電プラズマ焼結中のパンチと炭化ケイ素スペーサーとの温度差により、炭化ケイ素スペーサーが局所的に加熱されることに起因することを見出した。
より具体的に説明すると、例えば図4に示すように、従来の放電プラズマ焼結装置6においては、パンチ612は、その径が炭化ケイ素スペーサー62の径に比べて相対的に小さく、また、発熱量が大きいため温度が高い状態にある。一方で、炭化ケイ素スペーサー62は、その径がパンチ612の径に比べて相対的に大きく、また、水冷されている加圧ラムの方向に熱が流れるため温度が低い状態となっている。従来の放電プラズマ焼結装置6においては、このようにして生じる温度差により、炭化ケイ素スペーサー62におけるパンチ612との接触面で、温度が高いパンチ612からの熱により局所的に加熱され、その部分と周辺部との間にも温度差が生じることによって、その炭化ケイ素スペーサー62のパンチ612との接触面に歪が発生し、凹状の破壊が生じる。
そこで、本実施の形態においては、図2に示すように、径の大きさの異なる平面部(小平面部21、大平面部22)を有する円錐台形状の炭化ケイ素スペーサー12を用いる。そして、図1に示すように、その炭化ケイ素スペーサー12を、円錐台形状における径の小さい小平面部21がパンチ112側に配置して、その小平面部21とパンチ112の面とが接触するようにして使用する。
このように、炭化ケイ素スペーサー12を円錐台形状に構成し、径の小さい小平面部21をパンチ112と接触させるようにすることで、その小平面部21における発熱量も大きくなって、パンチ112との温度差を小さくすることができる。また、炭化ケイ素スペーサー12が、パンチ112から離れるに従って径が大きくなる円錐台形状であることにより、径が大きくなる方向に徐々に発熱量が減少していき、金属スペーサー13との接触面の温度を下げることができる。
したがって、炭化ケイ素スペーサー12においては、パンチ112との接触面、すなわち小平面部21が局所的に加熱されることがなく、さらに、その周囲との温度差も極めて小さくなるため、その接触面において凹状に破壊されるといった事態の発生を防ぐことができる。そして、このことにより、放電プラズマ焼結を安定的に行うことができる。なお、炭化ケイ素スペーサー12においては、上述したように円錐台形状となっており、金属スペーサー13との接触面の面積が大きくなるように構成されていることから、加圧ラム14から金属スペーサー13を通じて印加される圧力を分散させという本来の機能も十分に奏し得る。
ここで、炭化ケイ素スペーサー12の小平面部21の直径(d)としては、特に限定されないが、パンチ112の直径(a)との比(d/a,以下「相似比」ともいう。)で、1≦d/a≦1.5の関係を満たすことが好ましい。また、小平面部21の直径(d)は、相似比がd/a≦1.4となることが好ましく、d/a≦1.3となることがより好ましく、d/a≦1.2となることがさらに好ましい。このように、小平面部21の直径(d)が、1≦d/aの関係にあることによって、炭化ケイ素スペーサー12とパンチ112との間でずれが生じることを防ぎ、均一に圧力を印加することができる。また、d/a≦1.5の関係にあることによって、その小平面部21とその周辺部との温度差をより小さくすることができ、炭化ケイ素スペーサー12の破壊をより効果的に防ぐことができる。
また、炭化ケイ素スペーサー12の大平面部22の直径(d)としては、特に限定されないが、小平面部21の直径(d)との比(d/d,以下「相似比」ともいう。)で、d/d≧1.3であることが好ましく、d/d≧1.5であることがより好ましく、d/d≧1.8であることがさらに好ましく、d/d≧2.0であることが特に好ましい。d/d≧1.3であることにより、大平面部22の発熱量を減少させ、金属スペーサー13との接触面の温度を下げることができる。なお、大平面部22の直径(d)の上限値としては、特に限定されず、適用する放電プラズマ焼結装置1や金属スペーサー13の大きさ等に合わせて適宜選択することができる。
炭化ケイ素スペーサー12の高さ(h)としては、特に限定されないが、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。炭化ケイ素スペーサー12の高さ(h)が、10mm以上であることにより、強度が向上し、高温、高圧条件であってもより安定的に焼結を行うことができる。なお、炭化ケイ素スペーサー12の高さ(h)の上限値としては、特に限定されず、適用する放電プラズマ焼結装置1の大きさ等に合わせて適宜選択することができる。
(その他の錐台形状のスペーサー)
上述した実施形態においては、円形状の平面部(小平面部21、大平面部22)を有する円錐台形状の炭化ケイ素スペーサー12について説明したが、その形状は、円錐台形状に限られず、成形材料の成形形状やパンチの形状に合わせて、その他の「錐台形状」のもので構成することができる。
具体的には、小平面部及び大平面部の形状が、例えば四角形等の多角形状である錐台形状により構成することができる。なお、このようなその他の錐台形状の場合においても、小平面部と大平面部との相似比、炭化ケイ素スペーサーの小平面部とパンチの接触面との相似比の関係は、上述した円錐台形状の場合とほぼ同様である。
≪3.放電プラズマ焼結方法≫
次に、放電プラズマ焼結装置1による焼結方法について説明する。
本実施の形態に係る放電プラズマ焼結方法は、シリンダー111と、パンチ112とを備える放電プラズマ焼結用成形型11に成形材料Mを装入し、加圧ラム14によりパンチ112を加圧しながら成形材料Mに対して放電プラズマ焼結を行う方法である。そして、このとき、本実施の形態においては、放電プラズマ焼結用成形型11のパンチ112と、加圧ラム14との間に、円錐台形状を有する炭化ケイ素スペーサー12を、その円錐台形状における径の小さい小平面部21がパンチ112側となるように配置して放電プラズマ焼結を行う。
このような放電プラズマ焼結方法によれば、円錐台形状の炭化ケイ素スペーサー12を用い、その小平面部21をパンチ112に接触させるように配置して焼結を行うことで、その接触面における両者の温度の差を小さくすることができ、炭化ケイ素スペーサー12の破壊を抑制することができる。このことにより、炭化ケイ素スペーサー12の破壊による焼結不良を防ぎ、安定的に焼結処理を行うことができる。
なお、円錐台形状ではなく、多角形状を呈した、大きさの異なる2つの平面部を有するような、他の錐台形状の炭化ケイ素スペーサーを用いた場合であっても、同様にして、焼結用成形型におけるパンチと、加圧ラムとの間に、その錐台形状の放電プラズマ焼結用スペーサーを、小平面部がパンチ側となるように配置して焼結を行うようにする。
放電プラズマ焼結方法の処理条件としては、特に限定されず、例えば、大気条件下において、1000℃〜2000℃の温度条件(到達温度)で、100MPa〜1GPaの圧力を印加することによって行うことができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
先ず、図2に示すような、2つの平面(小平面部、大平面部)を上下に有する円錐台形状の炭化ケイ素スペーサーを作製した。炭化ケイ素スペーサーにおいて、小平面部の直径(d)を16mmとし、大平面部の直径(d)と30mmとし、高さ(h)を10mmとした。
次に、作製した炭化ケイ素スペーサーを用いて、図1に示すような放電プラズマ焼結装置を構成した。その放電プラズマ焼結装置において、成形材料を加圧圧縮するパンチとしては、円柱形状であり、直径(a)が15mmのものを用いた。また、円錐台形状の炭化ケイ素スペーサーは、小平面部がパンチ側に配置されるようにし、その小平面部とパンチと平面とが接触することで圧力が印加されるように構成した。なお、炭化ケイ素スペーサーの小平面部の直径(d)とパンチの直径(a)とは、その比(d/a)が1.07となる。
このような放電プラズマ焼結装置を用い、成形材料としてアルミナ粉を装入して、加圧条件を100MPaとし、昇温速度100℃/分、到達温度1800℃の焼結温度条件で、放電プラズマ焼結を行った。なお、同一のスペーサーを用いた焼結を「1サイクル」として、20サイクルの繰り返し試験を行った。
[比較例1]
比較例1では、炭化ケイ素スペーサーとして、直径30mm、高さ10mmの円柱形状のスペーサーを用い、到達温度を1200℃として焼結し行ったこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
[比較例2]
比較例2では、炭化ケイ素スペーサーとして、直径30mm、高さ10mmの円柱形状のスペーサーを用い、到達温度を1400℃として焼結を行ったこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
[比較例3]
比較例3では、炭化ケイ素スペーサーとして、直径30mm、高さ10mmの円柱形状のスペーサーを用い、到達温度を1600℃として焼結を行ったこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
[比較例4]
比較例4では、炭化ケイ素スペーサーとして、直径30mm、高さ10mmの円柱形状のスペーサーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
表1に、実施例1及び比較例1〜4の繰り返し試験の結果を示す。表1の結果における破壊発生の評価の欄では、20サイクルの繰り返し試験において、炭化ケイ素スペーサーに破壊が発生したときのサイクル数を示す。なお、破壊の有無は、炭化ケイ素スペーサーのパンチとの接触面を目視で確認して評価し、その接触面に凹状の損傷が確認された場合を破壊有りとした。
実施例1では、20サイクルの繰り返し試験においも、炭化ケイ素スペーサーの破壊は確認されなかった。一方で、実施例1と同じ焼結条件で試験を行った比較例4では、1サイクル目で破壊が生じた。また、到達温度を低い条件とした比較例1〜3においても、数サイクルの繰り返しにより、炭化ケイ素スペーサーに破壊が生じた。
1 放電プラズマ焼結装置
11 放電プラズマ焼結用成形型
111 シリンダー
112,112A,112B パンチ
12 炭化ケイ素スペーサー
13 金属スペーサー
14 加圧ラム
21 小平面部
22 大平面部

Claims (8)

  1. 炭化ケイ素を含み、円錐台形状を有する
    放電プラズマ焼結用スペーサー。
  2. 当該放電プラズマ焼結用スペーサーは、径の大きさの異なる2つの平面部を有する円錐台形状であり、
    放電プラズマ焼結において、
    シリンダーと、パンチとを備える焼結用成形型における該パンチと、該パンチに圧力を印加する加圧ラムとの間に、前記円錐台形状における径の小さい小平面部が前記パンチ側に配置されて用いられる
    請求項1に記載の放電プラズマ焼結用スペーサー。
  3. 前記小平面部の直径(d)は、前記パンチの直径(a)との比で、
    1≦d/a<1.5
    の関係を満たすように構成される
    請求項2に記載の放電プラズマ焼結用スペーサー。
  4. 高さ(h)が10mm以上である
    請求項1乃至3いずれか1項に記載の放電プラズマ焼結用スペーサー。
  5. 炭化ケイ素を含み、錐台形状を有する
    放電プラズマ焼結用スペーサー。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の放電プラズマ焼結用スペーサーを備える
    放電プラズマ焼結装置。
  7. シリンダーと、パンチとを備える焼結用成形型に成形材料を装入し、加圧ラムにより該パンチを加圧しながら該成形材料に対して放電プラズマ焼結を行う焼結方法であって、
    前記焼結用成形型における前記パンチと、前記加圧ラムとの間に、
    炭化ケイ素を含み、径の大きさの異なる2つの平面部を有する円錐台形状の放電プラズマ焼結用スペーサーを、該円錐台形状における径の小さい小平面部が該パンチ側となるように配置して放電プラズマ焼結を行う
    放電プラズマ焼結方法。
  8. シリンダーと、パンチとを備える焼結用成形型に成形材料を装入し、加圧ラムにより該パンチを加圧しながら該成形材料に対して放電プラズマ焼結を行う焼結方法であって、
    前記焼結用成形型における前記パンチと、前記加圧ラムとの間に、
    炭化ケイ素を含み、大きさの異なる2つの平面部を有する錐台形状の放電プラズマ焼結用スペーサーを、該錐台形状における小平面部が該パンチ側となるように配置して放電プラズマ焼結を行う
    放電プラズマ焼結方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115194919A (zh) * 2022-08-02 2022-10-18 北京理工大学唐山研究院 SPS制备AlON透明陶瓷用模具及制备方法与所得透明陶瓷

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