JP2018006265A - 固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インク、その製造方法、固体高分子形燃料電池の電極触媒層及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
通常、電極触媒層は、高分子電解質膜に触媒インクを塗布・乾燥する方法や、触媒インクを一旦、転写基材に塗布し、その後、高分子電解質膜に転写する方法などにより製造される。
例えば、特許文献1には、高分子電解質として、プロトン供与性基1モル当たりの乾燥質量値(当量重量;以下、EW(Equivalent Weight)とも呼称する)が650〜750と比較的低いパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を使用することで、触媒担持炭素粒子の表面を高分子電解質で良好に被覆でき、塗膜のひび割れを抑制できると記載されている。しかし、EWの低い高分子電解質は保湿性が高いため、高加湿な条件で燃料電池の運転を行った場合、フラッディングによる性能低下を引き起こす原因となる。
なお、本実施形態は、以下に記載する実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づく設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本実施形態の範囲に含まれるものである。
また、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で示す場合がある。
固体高分子形燃料電池50は、図1中に示すように、高分子電解質膜51の両面に、当該高分子電解質膜51を挟んで互いに向い合う一対の電極触媒層52A、52Fが配置されている。
電極触媒層52Aの高分子電解質膜51と対向する面と反対側の面には、ガス拡散層53Aが配置されている。電極触媒層52Fの高分子電解質膜51と対向する面と反対側の面にはガス拡散層53Fが配置されている。また、高分子電解質膜51及び一対の電極触媒層52A、52Fを挟んで互いに向かい合うように配置されている。
さらに、ガス拡散層53Fの電極触媒層52Fと対向する面と反対側の面にはセパレーター54Fが配置されている。セパレーター54Fは、ガス拡散層53Fの面に対向する面に反応ガス流通用のガス流路55Fを備えると友井、相対する主面に冷却水流通用の冷却水通路56Fを備える。
以下、電極触媒層52A及び52Fを区別する必要がない場合には、電極触媒層52A及び52Fを、単に「電極触媒層52」と記載する場合がある。
次に、図2を参照しつつ、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池50の電極触媒層52形成用の触媒インクの製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係る触媒インクの製造工程を示す図である。
本実施形態の電極触媒層形成用の触媒インクは、第一の高分子電解質と、第一の高分子電解質よりもEWが大きな第二の高分子電解質と、炭素粒子担体に触媒を担持させた触媒担持炭素粒子と、分散媒とを含んで構成されている。以下の例では、触媒として白金を使用する場合を例に挙げて説明するが、他の公知の触媒を使用しても構わない。
第二の高分子電解質としては、EWが750(g/eq)以上1000(g/eq)以下の範囲内の高分子電解質を用いる。EWが750〜1000と第一の高分子電解質より高い第二の高分子電解質では、保湿性が第一の高分子電解質と比べ低いため、第二の高分子電解質を加える事でフラッディングによる性能低下を抑制することができる。また、第二の高分子電解質は、予め第二の高分子電解質を溶液中に分散させた、高分子電解質分散液の状態で使用することができる。
第一の高分子電解質の質量は、第一の高分子電解質及び第二の高分子電解質を合わせた質量の5%以上50%以下の範囲とする。
第一の高分子電解質の質量割合が5%より小さい場合、白金担持炭素粒子の表面を高分子電解質で良好に被覆できず、塗膜にひび割れが生じる原因となる。
一方、第一の高分子電解質の質量割合が50%より高い場合には、触媒層の保湿性が高まり、特に高加湿の条件での動作において、フラッディングを引き起こす原因となる。
以上のことから、本実施形態では、第一の高分子電解質と第二の高分子電解質を合わせた質量は、炭素粒子担体の質量に対する質量比が0.6以上1.5以下の範囲内とする。
電極触媒層52は、上記の方法により作製された触媒インクを転写基材に塗布、乾燥させ、高分子電解質膜51に転写する方法や、高分子電解質膜51に直接、上記触媒インクを塗布、乾燥させることで製造出来る。塗布方式としては、ダイコート法、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などを用いることが出来るがダイコート法によるものが好ましい。
以下、本発明に基づく実施例1を説明する。
(触媒インクの製造)
触媒である白金を50質量%担持した触媒担持炭素粒子(商品名:TEC10F50E、田中貴金属社製)に、EWが700の高分子電解質分散液を加え、1−プロパノール中に混合・分散させた。このとき、混合・分散にはプラネタリーミキサーを使用した。
次に、上記混合・分散を行ったEW700の第一の高分子電解質を含むスラリーに対し、EW1000の高分子電解質を加え、ビーズミルにて分散を行った。このとき、EW700の第一の高分子電解質とEW1000の第二の高分子電解質を合わせた質量は、炭素粒子担体の質量に対する質量比(I/C)が1.0となるよう調製を行った。
次いで、上記の触媒インクをダイコーティング法により転写シートに塗布し、転写シート上に塗布された触媒インクを、温度80℃の大気雰囲気中で5分間乾燥させることにより、電極触媒層52を得た。この際、触媒物質の担持量が0.3mg/cm2となるように、電極触媒層52の厚さを調節した。
また、この電極触媒層を電解質膜に転写し膜電極接合体を製造して発電性能を評価した。その評価として、低加湿及び高加湿のいずれの条件においても、良好な発電性能が得られることを確認した。
次に、本発明に基づく実施例2を説明する。
EWが700の第一の高分子電解質の、第二の高分子電解質を合わせた質量に対しての質量割合を、40%となるよう調製を行った。また、EW700の第一の高分子電解質とEW1000の第二の高分子電解質を合わせたI/C(炭素粒子担体に対する質量比)を1.2とした。それ以外は、上記実施例1と同様として、実施例2の触媒インクを得た。
このとき、電極触媒層にひび割れがないことを確認した。この電極触媒層を電解質膜に転写し膜電極接合体を製造して発電性能を評価した。その評価として、低加湿及び高加湿のいずれの条件においても、良好な発電性能が得られることを確認した。
次に、本発明に基づく実施例3を説明する。
第一の高分子電解質のEWを400とし、第一の高分子電解質の質量を、第一の高分子電解質と第二の高分子電解質を合わせた質量に対する割合を10質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様として、実施例3の触媒インクを得た。
このとき、電極触媒層にひび割れがないことを確認した。この電極触媒層を電解質膜に転写し膜電極接合体を製造して発電性能を評価した。その評価として、低加湿及び高加湿のいずれの条件においても、良好な発電性能が得られることを確認した。
第一の高分子電解質の第二の高分子電解質を合わせた質量に対しての割合を、60%とした以外は、上記実施例1と同様として、比較例1の触媒インクを得た。
このとき、電極触媒層にひび割れがないことを確認した。しかし、この電極触媒層を電解質膜に転写し膜電極接合体を製造して発電性能を評価した。その評価は、高加湿条件において、フラッディングの影響による発電性能の低下が生じる結果となった。
第一の高分子電解質の質量を、第一の高分子電解質と第二の高分子電解質を合わせた質量に対しての質量割合を1%とした以外は、上記実施例1と同様として、比較例2の触媒インクを得た。このとき、電極触媒層にひび割れが生じる結果となった。
第一の高分子電解質と第二の高分子電解質を合わせたI/Cを1.7としたこと以外は、上記実施例1と同様として、比較例3の触媒インクを得た。
このとき、電極触媒層にひび割れがないことを確認した。しかし、この電極触媒層を電解質膜に転写し膜電極接合体を製造して発電性能を評価した。その評価は、高加湿条件において、フラッディングの影響による発電性能の低下が生じる結果となった。
以上のように、本発明に基づく触媒インクを用いた場合、電極触媒層にひび割れがなく、この電極触媒層を有する固体高分子形燃料電池は、低加湿及び高加湿のいずれの条件においても、良好な発電性能が得られる。
51…高分子電解質膜
52A、52F…電極触媒層
53A、53F…ガス拡散層
54A、54F…セパレーター
55A、55F…ガス流路
56A、56F…冷却水通路
Claims (7)
- 固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクであって、
プロトン供与性基1モル当たりの乾燥質量値(当量重量;以下、EW(Equivalent Weight)とも呼称する)が異なる第一の高分子電解質及び第二の高分子電解質の2種類の高分子電解質と、炭素粒子担体に触媒を担持させた触媒担持炭素粒子と、分散媒とを含み、
前記第一の高分子電解質のEWが400(g/eq)以上700(g/eq)以下の範囲内であり、前記第二の高分子電解質のEWが750(g/eq)以上1000(g/eq)以下の範囲内であり、
前記第一の高分子電解質の質量は、前記第一の高分子電解質及び第二の高分子電解質を合わせた質量の、5%以上50%以下の範囲であり、
前記第一の高分子電解質と第二の高分子電解質を合わせた質量は、前記炭素粒子担体の質量に対する質量比が0.6以上1.5以下の範囲内であることを特徴とする固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インク。 - 固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクの製造方法であって、
プロトン供与性基1モル当たりの乾燥質量値(当量重量;以下、EW(Equivalent Weight)とも呼称する)が異なる第一の高分子電解質及び第二の高分子電解質の2種類の高分子電解質と、炭素粒子担体に触媒を担持させた触媒担持炭素粒子とを、分散媒中に混合・分散させる工程を有し、
前記第一の高分子電解質のEWより前記第二の高分子電解質のEWが大きく、
前記混合・分散させる工程において、前記第一の高分子電解質と前記触媒担持炭素粒子とを前記分散媒中に混合した後に、前記第二の高分子電解質を前記分散媒中に混合することを特徴とする固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクの製造方法。 - 前記混合・分散させる工程において、前記第一の高分子電解質のEWが400(g/eq)以上700(g/eq)以下の範囲内であり、前記第二の高分子電解質のEWが750(g/eq)以上1000(g/eq)以下の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載した固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクの製造方法。
- 前記第一の高分子電解質の質量を、前記第一の高分子電解質及び第二の高分子電解質を合わせた質量の5%以上50%以下の範囲とすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクの製造方法。
- 前記第一の高分子電解質と第二の高分子電解質を合わせた質量を、前記炭素粒子担体の質量に対する質量比が0.6以上1.5以下の範囲内とすることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載した固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクの製造方法。
- 請求項1に記載した固体高分子形燃料電池の電極触媒層形成用の触媒インクからなる固体高分子形燃料電池の電極触媒層。
- 請求項6に記載された固体高分子形燃料電池の電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池。
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