(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に開示の巻取装置は、巻取速度及び張力の変動を検出してから、フィードバック制御によって送出用サーボモータの回転速度(すなわち線材の供給速度)を補正するように構成されているため、急激に線材の巻取速度が変化した場合、以下の理由により張力の変動を十分に抑制することができない。
・張力検出手段の慣性力により、正確な張力を検出するまでに時間がかかる。
・巻取速度と張力を検出してから制御手段が送出用サーボモータに指令を与えるまでに演算の時間がかかる。
・送出用サーボモータの回転子の慣性力により、送出用サーボモータが指令を受けてからその指令に基づく回転速度に到達するまでに時間がかかる。
つまり、特許文献1に記載の巻取装置は、巻取速度及び張力の検出値に基づいて、送出用サーボモータをフィードバック制御しているので、応答遅れが生じる。従って、特に被巻取部材とワークとの相対回転速度を高めて高速で被巻取部材をワークに巻回しようとする場合には、応答遅れにより適正に送出用サーボモータを回転させることができず、その結果、張力の変動を十分に抑制することができない。
本発明は、ワークに巻回される被巻取部材の張力の変動をより一層抑制することができる巻取装置を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、長尺状の被巻取部材(W)の供給源(S)から供給される被巻取部材に張力を付与する張力付与部材(24)と、張力付与部材により張力が付与された被巻取部材が巻取対象物としてのワーク(P)に巻回されるように、被巻取部材とワークとを相対回転させる回転装置(4)と、供給源から供給され且つ張力付与部材により張力が付与された被巻取部材がワークに巻回されるまでに通過する第一位置(A1)及び第二位置(A2)との間の区間である調整区間(L)内に配設され、回転装置による被巻取部材とワークとの相対回転に同期して回転するとともに、回転しながら調整区間を通過する被巻取部材に接触することにより、調整区間内における被巻取部材の長さを調整するカム部材(32)と、を備え、カム部材は、被巻取部材がワークに巻回される速度である巻取速度の増加時に調整区間内における被巻取部材の長さが短くなり、巻取速度の減少時に調整区間内における被巻取部材の長さが長くなるように、形成されている、巻取装置(1)を提供する。
本発明に係る巻取装置によれば、供給源から供給され且つ張力が付与された被巻取部材は、ワークに巻回されるまでに、第一位置と第二位置との間の区間である調整区間を通過する。また、調整区間内に配設されたカム部材が、被巻取部材とワークとの相対回転に同期して回転しながら調整区間を通過する被巻取部材に接触することにより、調整区間内における被巻取部材の長さを調整する。そして、カム部材は、被巻取部材の巻取速度の増加時に調整区間内における被巻取部材の長さが短くなり(すなわち調整区間内における被巻取部材の長さが減少し)、被巻取部材の巻取速度の減少時に調整区間内における被巻取部材の長さが長くなる(すなわち調整区間内における被巻取部材の長さが増加する)ように、形成される。
ワークに巻回される被巻取部材の巻取速度が増加した場合、単位時間当たりにワークに巻回される被巻取部材の量(長さ)が増加する。また、調整区間内における被巻取部材の長さが短くなると、調整区間内における被巻取部材の量(長さ)が減少して被巻取部材の余剰分が発生する。従って、本発明のように巻取速度の増加時に調整区間内における被巻取部材の長さを短くすることにより、巻取速度の増加により増加するワークに巻回される被巻取部材の量の増加分を、調整区間内の被巻取部材の長さが短くされたことにより生じる被巻取部材の余剰分で補うことができる。このため、巻取速度の増加時に巻取対象物に巻回される被巻取部材の量が不足することに起因して被巻取部材が引っ張られることによる張力上昇を抑制することができる。
また、巻取速度が減少した場合、単位時間当たりにワークに巻回される被巻取部材の量(長さ)が減少して余剰の被巻取部材が発生する。また、調整区間内における被巻取部材の長さが長くなると、調整区間内における被巻取部材の量が増加する。従って、本発明のように巻取速度の減少時に調整区間内における被巻取部材の長さを長くすることにより、巻取速度の減少により生じる被巻取部材の余剰分で、調整区間内の被巻取部材の長さが長くされたことにより増加する調整区間内の被巻取部材の量の増加分を補うことができる。このため、巻取速度の減少時に余剰の被巻取部材が発生して被巻取部材が弛むことによる張力低下を抑制することができる。
このように、本発明によれば、巻取速度の変動及びそれに起因して生じる被巻取部材の量(長さ)の増減に合わせて調整区間内の被巻取部材の量(長さ)が調整される。つまり、巻取速度の変動に合わせて、ワークに巻回される被巻取部材の量が調整される。このため巻取速度の変動による張力変動を抑制することができる。
さらに、上記のように調整区間内の被巻取部材の長さを調整することができるように構成されるカム部材は、被巻取部材とワークとの相対回転に同期して回転する。従って、被巻取部材とワークとの相対回転角度の変化に応じて変化する巻取速度の変化に合わせてカム部材を形成することができる。このようにして機械的に被巻取部材とワークとの相対回転と同期させてカム部材を回転させることにより、巻取速度の変化に遅れることなく、調整区間内の被巻取部材の長さを適正な長さに調整することができる。よって、従来技術のような、応答遅れによる不具合の発生を、効果的に防止することができる。その結果、ワークに巻回される被巻取部材の張力の変動をより一層抑制することができる巻取装置を提供することができる。
本発明に係る回転装置は、被巻取部材がワークに巻回されるように、被巻取部材とワークとを相対回転させるように構成されていればよい。例えば、回転装置は、ほぼ一定の位置から繰り出される被巻取部材に対してワークを回転させることによって被巻取部材がワークに巻回されるように、ワークを回転させる回転装置でもよい。また、回転装置は、固定されたワークの周囲に被巻取部材を回転させることによって被巻取部材がワークに巻回されるように、被巻取部材を回転させる回転装置であってもよい。さらに、回転装置は、ワークと被巻取部材とを共に回転させることにより、ワークに被巻取部材が巻回されるように構成されていてもよい。また、本発明において、被巻取部材が回転するとは、被巻取部材がワークに巻回されるようにワークの周囲を回るような動作態様を表す。従って、ノズル、フライヤー等の排出部材に被巻取部材が支持されながらこれらがワークの周囲を回転することにより被巻取部材がワークに巻回される場合、このノズル、フライヤー等の排出部材(支持部材)がワークの周囲を回転することも、被巻取部材が回転するという表現に包含される。この場合、これらの排出部材を回転させるための回転装置も、本発明の回転装置に含まれる。
また、本発明において、カム部材は、カム面(32a)を有するとともに、回転しながらカム面が調整区間を通過する被巻取部材に直接接触するように構成されるとよい。そして、カム面の形状は、巻取速度の増加時に調整区間内における被巻取部材の長さが短くなり(減少し)、巻取速度の減少時に調整区間内における被巻取部材の長さが長くなる(増加する)ように、形成されているのがよい。これによれば、カム部材のカム面が直接的に被巻取部材に接触するように構成されるので、調整区間内の被巻取部材の長さの変動時に、被巻取部材のみを変動させることができる。つまり、調整区間内の被巻取部材の長さの変動時に、被巻取部材の長さの変動に合わせて変動する変動部材が無い。よって、変動部材の慣性の影響を除外することができ、その結果、巻取速度の変動に対する調整区間内の被巻取部材の長さの変動の追従性を向上させることができる。このため、ワークに巻回される被巻取部材の張力の変動をさらに一層抑制することができる。また、変動部材が変動することによる設備負荷を無くすことができ、巻取装置の耐久性を向上させることができる。
また、カム部材は、調整区間を通過する被巻取部材に接触することにより、調整区間を通過する被巻取部材に、第一位置と第二位置とを結ぶ線分から隆起した隆起部(W1)を形成するとともに、被巻取部材と巻取対象物との相対回転に同期して回転することにより、巻取速度の増加時に隆起部の高さが低くなり(高さが低下し)、巻取速度の減少時に前記隆起部の高さが高くなる(高さが増加する)ように、形成されているとよい。これによれば、巻取速度の増加時に隆起部の高さを低くすることによって、調整区間内の被巻取部材の長さを短くすることができ、巻取速度の減少時に隆起部の高さを高くすることによって、調整区間内の被巻取部材の長さを長くすることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る巻取装置の概略構成を示す図である。ここで、本実施形態においては、巻取対象物であるワークPに、長尺状の被巻取部材としての線材Wが巻回される例について説明する。しかしながら、本発明において、被巻取部材は、線材Wに限らず、テープ状の部材や、フィルム状の部材であってもよい。図1に示すように、本実施形態に係る巻取装置1は、線材供給装置2と、線材長調整装置3と、線材の排出部材であるノズル4と、ワーク回転装置5(回転装置)と、回転同期機構6を備える。
線材供給装置2には、線材供給源Sから線材Wが供給される。線材供給源Sとして、例えば、線材Wが巻回されているボビン等を例示することができる。線材Wとして、例えばエナメル被覆された銅線を例示できるが、この限りでない。図1に示すように、線材Wは、線材供給源Sから線材供給装置2に供給され、線材供給装置2から線材長調整装置3に供給され、さらに線材長調整装置3からノズル4を経由してワーク回転装置5に供給される。したがって、線材供給源Sから供給される線材WがワークPに巻回されるまでの流れの上流側から下流側にかけて、線材供給装置2、線材長調整装置3、ノズル4、ワーク回転装置5が、この順で、巻取装置1内に配設されていることになる。
線材供給装置2は、送出用モータ21と、第一プーリ22と、第二プーリ23と、張力付与機構24(張力付与部材)とを備える。
送出用モータ21は、巻取装置1の筐体の所定位置に固定される。この送出用モータ21の回転出力軸に同軸的に第一プーリ22が接続される。第一プーリ22の回転周面に、線材供給源Sから供給される線材Wが巻き掛けられる。送出用モータ21が駆動することにより第一プーリ22が回転し、第一プーリ22の回転により、第一プーリ22の回転周面に巻き掛けられた線材Wが送り出される。
第二プーリ23は第一プーリ22の近傍位置に配置され、第一プーリ22の回転軸と平行な回転軸回りを回転可能に巻取装置1の筐体に支持される。第一プーリ22から送り出された線材Wは、第二プーリ23の回転周面に巻き掛けられる。第二プーリ23は、図1の左右方向に移動可能に巻取装置1の筐体に取り付けられる。また、第二プーリ23には張力付与機構24が取り付けられる。張力付与機構24によって第二プーリ23及び第二プーリ23に巻き掛けられた線材Wが引っ張られる。張力付与機構24により、線材供給源21から供給される線材Wに張力が付与される。第二プーリ23の回転周面に巻き掛けられ且つ張力付与機構24により張力が付与された線材Wは、送出用モータ21の駆動によって、線材供給装置2の下流側に送出される。
線材供給装置2の下流側には、線材長調整装置3が配設される。線材長調整装置3は、第一ガイドローラ31と、カム32(カム部材)と、第二ガイドローラ33と、第三プーリ34を備える。
第一ガイドローラ31は、巻取装置1の筐体に回転可能に支持される。線材供給装置2から送出された線材Wは、第一ガイドローラ31の回転軸方向に直交する方向から第一ガイドローラ31の回転周面に図1の接触位置A1にて接触する。接触位置A1が、本発明の第一位置に相当する。線材Wは第一ガイドローラ31の回転周面に接触位置A1にて接触した後にカム32に向かう。
カム32は、巻取装置1の筐体に回転可能に支持された第三プーリ34に同軸回転可能に接続される。従って、第三プーリ34が回転すると、それに伴い第三プーリ34と一体的にカム32が回転する。カム32及び第三プーリ34の回転軸方向は、第一ガイドローラ31の回転軸方向に一致する。また、カム32は、カム面32aを有する。このカム面32aは、カム32の回転周面に形成される。カム面32aの断面形状は非円形である。本実施形態においては、カム面32aの断面形状は、カム32の回転中心を中心とした点対称形状である。第一ガイドローラ31を経由した線材Wは、カム32の回転軸方向に直交する方向からカム32のカム面32aに接触する。カム32のカム面32aに接触した線材Wは、第二ガイドローラ33に向かう。
第二ガイドローラ33は、巻取装置1の筐体に回転可能に支持される。第二ガイドローラ33の回転軸方向は、第一ガイドローラ31の回転軸方向に一致する。カム32のカム面32aに接触した線材Wは、第二ガイドローラ33の回転軸方向に直交する方向から第二ガイドローラ33の回転周面に図1の接触位置A2にて接触する。接触位置A2が、本発明の第二位置に相当する。第二ガイドローラ33の回転周面に接触位置A2にて接触した線材Wは、ノズル4に向かう。
ノズル4は、導入口4aと排出口4bとを有する筒状部材であり、第二ガイドローラ33から送出された線材Wが導入口4aに導入される。ノズル4の導入口4aからノズル4内に導入された線材Wは、排出口4bから排出される。排出口4bから排出された線材Wが、ワーク回転装置5に向かう。
ワーク回転装置5は、線材供給装置2、線材長調整装置3及びノズル4を経由して線材供給源Sから供給された線材Wが巻回されるワークPを回転させる。ワーク回転装置5は、巻取用モータ51と、図示しないワークホルダとを有する。ワークホルダにワークPが保持される。ワークホルダに保持されたワークPは、巻取用モータ51の回転出力軸に接続される。従って、巻取用モータ51が回転すると、ワークPも回転する。
ワークPは、線材Wが巻回される対象部品(巻取対象物)である。ワークPとして、モータ(回転電機)のステータ(固定子)を構成するインシュレータを例示することができる。ワークPは、線材Wが巻回される周面を有する。ワークPの周面の断面形状は、非円形である。本実施形態においては、図1に示すように、ワークPの周面の断面形状は、角丸長方形状である。そして、ワークPの周面が、巻取用モータ51の駆動により回転するワークPの回転軸方向に直交するように、ワークPがワークホルダに保持された状態で巻取用モータ51の回転出力軸に取り付けられる。ワークPの周面には、線材Wの端部が接続される。従って、ワークPが回転することにより、ワークPの周面に、その周方向に沿って線材Wが巻回される。
上記説明からわかるように、線材供給源Sから供給される線材Wは、上流側から下流側に向かって、線材供給装置2の第一プーリ22、第二プーリ23、線材長調整装置3の第一ガイドローラ31、カム32、第二ガイドローラ33、ノズル4、を、この順に経由して、ワークホルダに保持されたワークPに至る。
回転同期機構6は、ワークPの回転(すなわち巻取用モータ51の回転)とカム32の回転(すなわち第三プーリ34の回転)を同期させる機能を有する。回転同期機構6としてタイミングベルトを例示できる。この場合、巻取用モータ51の出力軸(或いはその出力軸と同軸回転するプーリ等)と第三プーリ34とをタイミングベルトで連結することにより、ワークPの回転とカム32の回転とを同期させることができる。なお、本実施形態においては、ワークPの回転速度(すなわち巻取用モータ51の回転速度)とカム32の回転速度(すなわち第三プーリ34の回転速度)が一致するように、回転同期機構6によってワークPの回転とカム32の回転を同期させている。しかしながら、カム面32aのカムプロフィール(カム形状)を変更することにより、ワークPの回転速度(すなわち巻取用モータ51の回転速度)がカム32(すなわち第三プーリ34)の回転速度の整数倍となるように、両者を同期させてもよい。
上記構成の巻取装置1を起動する前に、ワークPをワーク回転装置5のワークホルダにセットする。次いで、線材供給源Sから線材Wを引き出し、その端部を、第一プーリ22、第二プーリ23、第一ガイドローラ31、カム32、第二ガイドローラ33、ノズル4にこの順で経由させた後に、線材WがワークPの回転周面の所定位置に配置されるよう固定される。ここで、線材Wを巻取装置1の線材長調整装置3に通すにあたり、図1に示すように、第一ガイドローラ31の回転周面が図1において上側から接触位置A1にて線材Wに接触し、第二ガイドローラ33の回転周面が図1において上側から接触位置A2にて線材Wに接触し、第一ガイドローラ31と第二ガイドローラ33との間に位置するカム32のカム面32aが図1において下側から線材Wに接触するように、線材Wが線材長調整装置3に通される。つまり、カム32のカム面32aの上側部分が線材Wに接触し、第一ガイドローラ31及び第二ガイドローラ33の回転周面の下側部分が線材Wに接触するように、これらの部材に線材Wが通される。
従って、線材供給源Sから供給され線材供給装置2(張力付与部材24)により張力が付与された線材Wは、ワークPに至るまでに、接触位置A1(第一位置)と接触位置A2(第二位置)を通過する。また、接触位置A1と接触位置A2との間の区間L内にカム32が配設され、区間L内の線材Wはカム32のカム面32aに接触してカム面32aに乗り上げる。言い換えれば、接触位置A1と接触位置A2との間の線材Wがカム面32aに乗り上げるように、第一ガイドローラ31及び第二ガイドローラ33の図1における上下位置に対するカム32の上下位置が定められる。こうして接触位置A1と接触位置A2との間の線材Wがカム32のカム面32aに乗り上げることにより、線材Wに、図1において上下方向に隆起する隆起部W1が形成される。つまり、カム32は、接触位置A1と接触位置A2との間の区間Lを通過する線材Wに接触することにより、上記区間内の線材Wに、接触位置A1と接触位置A2とを結ぶ線分から隆起する隆起部W1を形成する。接触位置A1と接触位置A2との間の区間Lを、線材長調整区間と呼ぶ。線材長調整区間が、本発明の調整区間に相当する。
巻取装置1内に線材Wを通した後に、巻取装置1を起動させる。巻取装置1が起動すると、送出用モータ21及び巻取用モータ51が駆動する。送出用モータ21が駆動することにより、線材供給源Sから線材供給装置2に線材Wが供給される。線材供給装置2に供給された線材Wは、線材供給装置2により張力が付与されるとともに線材長調整装置3に送り出され、さらにノズル4の排出口4bから排出される。そして、ノズル4の排出口4bから排出された線材Wは、巻取用モータ51の駆動により回転するワークPの周面に巻回される。つまり、巻取用モータ51を備えるワーク回転装置5は、線材供給源Sから供給され且つ線材供給装置2(張力付与部材24)により張力が付与された線材WがワークPに巻回されるように、線材WとワークPとを相対回転させる。本実施形態では、ワーク回転装置5は、線材Wに対してワークPを回転させる。
また、巻取用モータ51の駆動に伴い、カム32及び第三プーリ34がワークPの回転に同期して回転する。このカム32は、上記したように、線材供給源Sから供給され且つ張力付与部材24により張力が付与された線材WがワークPに巻回されるまでに通過する第一位置A1及び第二位置A2との間の区間である線材長調整区間L内に配設されている。従って、カム32のカム面32aは、回転しながら線材長調整区間Lを通過する線材Wに直接接触する。上記したように、カム32のカム面32aの断面形状は非円形状であるので、カム32が回転することにより、カム面32aに接触している線材Wの上下方向位置が変化する。このため、線材長調整区間L内の線材に形成される隆起部W1の形状、特に隆起部W1の上下方向高さが周期的に変化する。ここで、隆起部W1の上下方向高さとは、接触位置A1と接触位置A2とを結ぶ線分から見た隆起部W1の頂点の高さ(すなわち、接触位置A1と接触位置A2とを結ぶ線分と隆起部W1の頂点との間の距離)をいう。
隆起部W1の形状が変化すると、線材長調整区間L内における線材Wの線方向に沿った長さ(以下、ローラ間線材長という場合がある)が変化する。特に、隆起部W1の上下方向高さが高くなると、隆起部W1を形成するために必要な線材量が増加するため、ローラ間線材長が長くなる(ローラ間線材長が増加する)。また、隆起部W1の上下方向高さが低くなると、隆起部W1を形成するために必要な線材量が減少するため、ローラ間線材長が短くなる(ローラ間線材長が減少する)。
また、上記したように、カム32は、ワークPの回転と同期回転する。従って、ワークPの回転位置(回転角度)に応じて、隆起部W1の上下方向高さが異なる。つまり、ワークPの回転位置(回転角度)によって、ローラ間線材長が異なる。
図2は、ワークPの回転位置が、図1に示す回転位置から反時計回り方向に約90°回転した状態を示す、巻取装置1の概略図である。図2に示す回転位置までワークPが回転した場合、隆起部W1の上下方向高さは、図1に示す隆起部W1の上下方向高さよりも低い。よって、ワークPの回転位置が図1に示す回転位置から図2に示す回転位置まで変化した場合、ローラ間線材長が短くなる。また、図3は、ワークPの回転位置が、図2に示す回転位置から反時計回り方向にさらに約90°回転した状態を示す、巻取装置1の概略図である。図3に示す位置までワークPが回転した場合、隆起部W1の上下方向高さは、図2に示す隆起部W1の上下方向長さよりも高い。よって、ワークPの回転位置が図2に示す回転位置から図3に示す回転位置まで変化した場合、ローラ間線材長が長くなる。このように、カム32は、ワークPの回転と同期して回転しながら線材長調整区間Lを通過する線材Wに接触することにより、ワークPの回転角度に応じてローラ間線材長を調整することができるように構成される。
ここで、本実施形態において、線材Wが巻回されるワークPの周面の断面形状は、非円形である。線材Wが巻回されるワークPの周面の断面形状が非円形である場合、ワークPの回転角度(回転位置)によって、ワークPの周面と線材Wの接触点の位置が変化する。接触点の位置が変化した場合、その位置においてワークPに巻回される線材Wの線速度である巻取線速度(巻取速度)が変化する。従って、巻取線速度は、ワークPの回転角度に応じて変化する。
ワークPの回転角度と巻取線速度とは、ワークPの回転角度、回転速度、線材Wが巻回される周面の断面形状、ワークPと線材Wとの配置状態、線材Wの径等をパラメータとした一定の相関関係を有する。図4は、ノズル4の排出口4bから排出される線材Wが所定の回転角度θのワークPに巻回される状態をX−Y座標に示す図である。ここで、X−Y座標におけるX方向は、水平方向、Y方向は鉛直方向である。ワークPは、X−Y座標の原点Oを中心として、図4において反時計回りに回転速度N[rpm]で回転する。このワークPの回転により、直径d[mm]の線材WがワークPに巻回される。また、図4において、θは、ワークPの短軸とX軸とのなす角であり、この角度がワークPの回転角度である。また、図4において、BはワークPの短辺の長さ[mm]、HはワークPの長辺の長さ[mm]、rはワークPのコーナー半径[mm]、lはワークPの回転中心とノズル4の排出口4bとの間のX方向距離[mm]、hはワークPの回転中心を通る水平線(X軸)からのノズル4の高さ[mm]すなわちY方向距離である。これらをパラメートとした幾何学的な計算により、ワークPの回転角度θ[deg.]に対する巻取線速度[m/sec.]を算出することができる。
従って、これらのパラメータを用いることにより、ワークPが非円形である場合においても、ワークPの回転位置(回転角度)に対する巻取線速度を算出することができる。このような計算によれば、ワークPの回転角度が図1に示す回転角度から図2に示す回転角度まで変化した場合に、巻取線速度は増加し、ワークPの回転角度が図2に示す回転角度から図3に示す回転角度まで変化した場合に、巻取速度は減少することがわかる。
また、線材Wが巻回されるワークPの周面の断面形状が直線を含む非円形形状である場合、ワークPの回転角度に応じて線材Wの巻取線速度は複雑に変化する。図5は、ワークPに線材Wを巻回する際における、ワークPの回転角度θと巻取線速度Vとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。ここで、ワークPとして、図6に示すモータのステータに用いられるインシュレータを用い、このインシュレータの周面に線材Wが巻回される際における、回転角度θと巻取線速度Vとの関係を計算した。計算に用いたインシュレータの周面の断面形状は、角丸長方形状である。
図5の横軸はワークPの回転角度θ[deg.]であり、縦軸は巻取線速度V[m/sec.]である。図5からわかるように、ワークPの回転角度θに応じて、巻取線速度Vが大きく変化する。
巻取線速度Vが変化すると、単位時間当たりにワークPに巻回される線材量も変化する。このときに、ワークPに巻回される線材量が巻取線速度の変化に追従して変化しない場合、張力が変動する。この張力変動を抑制するために、従来においては、巻取線速度Vが変化した場合、変化する巻取線速度Vに近づくように、送出用サーボモータの回転速度を制御している。つまり、送出用サーボモータから送出される線材の線速度、すなわち線材の供給線速度が図5に示す巻取線速度に追従するように、送出用サーボモータの回転速度が制御される。しかしながら、図5に示すような急激な線速度の変化を送出用サーボモータに実現させることは困難である。また、従来においては、巻取線速度の変化を検知してから送出用サーボモータの回転速度(すなわち線材の供給線速度)を変化させるフィードバック制御であるため、応答遅れによって、適切に送出用サーボモータの回転速度を制御することができない。特に、ワークPが高速回転している場合には、応答遅れにより送出用サーボモータの制御にずれが生じる。その結果、ワークPに巻回される線材Wの張力の変動を十分に抑制することができない。
図7は、従来技術(特許文献1)に示す方法によってワークPに巻回される線材の張力Tを抑制した場合における、ワークPの回転角度θと張力Tとの関係を示すグラフである。図7には、3つのグラフが描かれている。破線で示すグラフAは、ワークPの回転速度が250rpmである場合における回転角度θと張力Tとの関係を示し、一点鎖線で示すグラフBは、ワークPの回転速度が500rpmである場合における回転角度θと張力Tとの関係を示し、実線で示すグラフCは、ワークPの回転速度が1000rpmである場合における回転角度θと張力Tとの関係を示す。
図7に示すように、回転速度が低い場合(グラフAの場合)においては、ワークPの1回転当たりにおける張力Tの変動量は小さいが、回転速度が高い場合(グラフCの場合)においては、ワークPの1回転当たりにおける張力Tの変動量は大きい。このように、従来のフィードバック制御では、張力の変動を十分に抑制することができない。
これに対し、本実施形態においては、ワークPの回転に同期して回転するカム32を用いて張力の変動を抑制するように構成される。以下、本実施形態において、張力の変動を抑制する原理について説明する。
上記したように、本実施形態に係る巻取装置1は、線材長調整装置3を備え、この線材長調整装置3には、線材供給源Sから線材供給装置2を経由した線材Wが導入される。また、線材長調整装置3はカム32を備え、このカム32のカム面32aには、線材長調整区間L(接触位置A1と接触位置A2との間の区間)を通過する線材Wが乗り上げる、これにより、線材長調整区間L内の線材に、隆起部W1が形成される。また、カム32は、回転しながらそのカム面32aにて線材長調整区間Lを通過する線材Wに接触する。カム面32aの断面形状は非円形であるため、隆起部W1の形状(例えば隆起部W1の上下方向高さ)は、カム32の回転位置(回転角度)に応じて変化する。
また、カム32は、ワークPの回転と同期して回転する。従って、ワークPの回転角度(回転位置)に応じて隆起部W1の形状を変化させることができる。また、隆起部W1の形状(例えば隆起部W1の上下方向高さ)が変化すると、ローラ間線材長が変化する。具体的には、隆起部W1の上下方向高さが低くなると、ローラ間線材長が短くなり、隆起部W1の上下方向高さが高くなると、ローラ間線材長が長くなる。つまり、カム32は、回転しながらそのカム面32aにて線材長調整区間L内の線材に直接接触することにより、ワークPの回転角度に応じてローラ間線材長を調整することができるように構成されている。
そして、カム32のカム面32aは、ワークPの回転角度(回転位置)が、巻取線速度が増加する回転角度であるときに、つまり、巻取線速度の増加時に、ローラ間線材長が短くなり(すなわち隆起部W1の上下方向高さが低くなり)、ワークPの回転角度(回転位置)が、巻取線速度が減少する回転角度であるときに、つまり、巻取線速度の減少時に、ローラ間線材長が長くなる(すなわち隆起部W1の上下方向高さが高くなる)ように、ワークPの回転角度(回転位置)に応じて(すなわち巻取線速度の変化に合わせて)、その形状(カムプロフィール)が形成される。例えば、ワークPの回転角度が図1に示す回転角度から図2に示す回転角度まで変化したときには、巻取速度が増加するが、このときには図2に示すようにローラ間線材長が短くなる(隆起部W1の高さが低くなる)ようにカム形状が設計される。一方、ワークPの回転角度が図2に示す回転角度から図3に示す回転角度まで変化したときには、巻取速度が減少するが、このときには図3に示すようにローラ間線材長が長くなる(隆起部W1の高さが高くなる)ようにカム形状が設計される。
ここで、巻取線速度が増加した場合、単位時間当たりにワークPに巻回される線材量が増加する。また、ローラ間線材長が短くなると、線材長調整区間L内における線材量が減少して線材の余剰分が発生する。従って、本実施形態のように、巻取線速度の増加時にローラ間線材長を短くすることにより、巻取線速度の増加により増加するワークPに巻回される線材量の増加分を、ローラ間線材長が短くされたことにより生じる線材の余剰分で補うことができる。このため、巻取線速度の増加時にワークPに巻回される線材量が不足することに起因して線材が引っ張られることによる張力上昇を抑制することができる。
また、巻取線速度が減少した場合、単位時間当たりにワークPに巻回される線材量が減少して、余剰の線材が発生する。また、ローラ間線材長が長くなると、線材長調整区間L内における線材量が増加する。従って、本実施形態のように、巻取線速度の減少時にローラ間線材長を長くすることにより、巻取線速度の減少により生じる線材の余剰分で、ローラ間線材長が長くされたことにより増加する線材長調整区間内の線材Wの増加分を補うことができる。このため、巻取線速度の減少時に余剰の線材が発生して線材が弛むことによる張力低下を抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、カム32をワークPの回転と同期させて回転させることにより、巻取線速度の変動及びそれに起因して生じる線材量の増減に合わせて線材長調整区間内の線材量(線材の長さ)、すなわちローラ間線材長を調整することができる。つまり、巻取線速度の変動に合わせて、ワークPに巻回される線材量が調整される。このため、巻取線速度の変動による張力変動を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、タイミングベルトのような回転同期機構6を用いて機械的にワークPの回転とカム32の回転とを同期させている。従って、ワークPの回転角度の変化に応じて変化する巻取線速度の変化に合わせてカム面32aの形状を設計することで、巻取線速度の変化に遅れることなく、ローラ間線材長を適正な長さに調整することができる。つまり、巻取線速度の増加時には確実にローラ間線材長を短くして張力の上昇を抑え、巻取線速度の減少時には確実にローラ間線材長を長くして張力の低下を抑えることができる。従って、従来技術のような、応答遅れによる不具合の発生を効果的に防止することができる。さらに、本実施形態によれば、ワークPの回転速度が変更された場合であっても、それと同期してカム32の回転速度が変更されるため、カム32のカム面32aの形状を、ワークPの回転速度が変更されるたびに変更することを要しない。このため、様々なワークPの回転速度に対して共通のカム32を用いることができる。
図8は、本実施形態に係る巻取装置1及び従来技術に係る巻取装置を用いてワークPに線材を巻回した際における、ワークPの回転角度θとワークPに巻回される線材Wの張力Tとの関係を示すグラフである。図8において、実線で示すグラフDが、本実施形態に係る巻取装置1を用いてワークPに線材Wを巻回した際における、ワークPの回転角度θと張力Tとの関係を表し、破線で示すグラフEが、従来技術に係る巻取装置を用いてワークPに線材Wを巻回した際における、ワークPの回転角度θと張力Tとの関係を示すグラフである。なお、ワークPの回転速度は1000rpmである。従って、図8のグラフEは、図7のグラフCと同じである。図8からわかるように、本実施形態に係る巻取装置1を用いた場合、ワークPを高速回転させた場合(例えば1000rpmでワークPを回転させた場合)であっても、従来に比べて、張力の変動量を十分に抑制できることがわかる。
図9は、本実施形態に係る巻取装置1を用いてワークPに線材Wを巻回した際における、張力の変動量と、従来技術に係る巻取装置を用いてワークPに線材Wを巻回した際における、張力の変動量とを比較した図である。なお、ワークPの回転速度は1000rpmである。図9から、本実施形態に係る巻取装置1を用いて線材WをワークPに巻回する際における張力変動量は、従来技術に係る巻取装置を用いて線材WをワークPに巻回する際に生じる張力変動量の、約1/10であることがわかる。このように、本実施形態によれば、ワークPに巻回される線材Wの張力の変動をより一層抑制することができる。
ところで、本実施形態で示した方法によれば、巻取線速度が減少する際にローラ間線材長が長くされることにより、巻取線速度の減少により余剰となった線材が線材長調整装置3に蓄積され、巻取線速度が増加する際にローラ間線材長が短くされることにより、巻取線速度の増加により不足する線材分が線材長調整装置3から放出される。このようにして巻取線速度の変動が線材長調整装置3に吸収されるため、線材長調整装置3よりも上流側の線材Wの線速度、すなわち線材Wの供給速度、具体的には、線材供給装置2から線材長調整装置3に供給される線材Wの線速度には、巻取線速度の変動が伝達されにくい。つまり、巻取線速度の変動が、線材Wの供給線速度に及ぼす影響が小さい。
図10は、本実施形態に係る巻取装置1によりワークPに線材Wを巻回する際における、ワークPの回転角度θと線材Wの供給線速度(線材供給装置2から送出される線材Wの線速度)との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。また、前述の図5は、ワークPの回転角度θと巻取線速度Vとの関係のシミュレーション結果を示すグラフであるが、本実施形態の線材長調整装置3を省略した場合には、図5のグラフは、ワークPの回転角度θと線材Wの供給線速度との関係のシミュレーション結果を示すグラフと言える。
図10と図5とを比較してわかるように、線材長調整装置3を用いることにより、線材Wの供給線速度の変動量(変動幅)を、従来の約1/5にまで低減できることがわかる。図10に示す程度の供給線速度の変動であれば、送出用モータとしてサーボモータを用いて供給線速度を追従制御することができる。よって、張力変動をより一層抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。例えば、上記実施形態においては、線材長調整装置3のカム32のカム面32aが直接的に線材Wに接触する例について示したが、カム面が直接的に線材Wに接触しないように巻取装置を構成することができる。図11は、カム面が直接的に線材Wに接触しないように構成された変形例に係る巻取装置1Aの概略図である。図11に示すように、この巻取装置1Aに備えられる線材長調整装置3Aは、第一ガイドローラ31と、カム32Aと、接触子32Bと、第二ガイドローラ33と、第三プーリ34とを備える。カム32A及び接触子32Bが、本発明のカム部材に相当する。
カム32Aは、第三プーリ34と一体回転するように第三プーリ34に接続される。また、カム32A及び第三プーリ34は、巻取用モータ51と同期して回転するように、回転同期機構6により巻取用モータ51に接続される。カム32Aの回転周面にカム面32aが形成される。カム面32aの断面形状は、非円形形状である。
接触子32Bは、両端にローラが設けられた棒状部材である。接触子32Bは、カム32Aの図11において上方に配設され、軸方向移動可能であり且つその他の方向への移動が不能であるように、巻取装置1Aの筐体に取り付けられる。また、接触子32Bの一方端(図11の下方端)に設けられたローラがカム32Aのカム面32aを転動するように、カム面32aに接触される。また、接触子32Bの他方端(図11の上方端)に設けられたローラの回転周面に、接触位置A1と接触位置A2との間の線材W(すなわち線材長調整区間L内の線材W)が乗り上げる。これにより、線材長調整区間L内の線材Wに図11において上下方向に隆起する隆起部W1が形成される。それ以外の構成についは、上記実施形態に係る巻取装置1の各構成と同一であるので、その説明は省略する。
上記構成の巻取装置1Aにおいて、カム32AがワークPの回転と同期して回転しながら、接触子32Bが線材長調整区間L内の線材に接触して隆起部W1の上下方向高さを変更することにより、ローラ間線材長が調整される。具体的には、ワークPの周面への線材Wの巻取線速度の増加時に、接触子32Bが図11の下方に軸方向移動して隆起部W1の上下方向高さが低くなり、巻取線速度の減少時に接触子32Bが図11の上方に軸方向移動して隆起部W1の上下方向高さが高くなるように、カム32AがワークPの回転と同期して回転する。つまり、巻取線速度の増加時にローラ間線材長が短くなり、巻取線速度の減少時にローラ間線材長が長くなるように、カム32AがワークPと同期して回転する。これにより、巻取線速度の変化に伴う張力変動を抑制することができる。
図11に示すような変形例に係る巻取装置1Aによれば、線材Wと接触子32Bとの接触位置が線材Wの移動方向に変化しないので、カム32Aのカム面32aの形状を設計する上で、線材Wとカム部材との接触位置の変化を考慮する必要がない。よって、カム面32aの設計が容易である。
一方、図1に示す本実施形態に係る巻取装置1によれば、カム32のカム面32aが直接的に線材Wに接触しているため、ローラ間線材長の変動時に、線材Wのみを変動させることができる。つまり、ローラ間線材長の長さの変動時に、線材Wの変動に合わせて変動する変動部材、例えば図11に示す接触子32Bが無い。よって、変動部材の慣性の影響を除外することができ、その結果、巻取線速度の変動に対するローラ間線材長の変動の追従性を向上させることができる。さらに、変動部材が変動することによる設備負荷を無くすことができ、巻取装置1の耐久性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、ワークPの周面の断面形状が角丸長方形状である例を示したが、非円形断面形状であれば、それ以外の形状、例えば楕円形状、あるいは多角形状であってもよい。また、上記実施形態によれば、ワークPとしてモータのステータに用いられるインシュレータを例示したが、それ以外のものでもよい。また、ワークに巻回される被巻取部材は、線材以外の長尺状の部材でもよい。また、ワークに線材を巻回する場合、その線材は上記実施形態に示したような絶縁被覆された銅線に限らず、どのようなものでもよい。なお、絶縁被覆された電線を線材とした場合、本発明に係る技術を利用することによって、絶縁被覆の損傷を効果的に防止することができるので、そのような電線をワークに巻回する際には、本発明の効果がより向上する。
また、上記実施形態に係る巻取装置1に備えられるワーク回転装置5は、ワークPに所定位置から排出される被巻取部材(線材W)が巻回されるようにワークPを回転させるように構成されているが、本発明に係る回転装置は、例えば、フライヤー式の巻取装置に用いられる回転装置のように、固定されたワークの周囲に被巻取部材が回転するように、ワークに巻回される被巻取部材を排出する(支持する)ノズル或いはフライヤーを回転させるように構成することができる。また、本発明に係る回転装置は、例えばノズル式の巻取装置に用いられる回転装置のように、ワーク及び、ワークに巻回される被巻取部材(または、ワークに巻回される被巻取部材が排出されるノズル或いはトラバース)を共に回転させるように構成されていてもよい。つまり、本発明に係る回転装置は、ワークに被巻取部材が巻回されるように、被巻取部材とワークとを相対回転させるものであればよい。
また、上記実施形態では、線材供給装置2に送出用モータ21が備えられており、送出用モータ21の駆動によって線材供給装置2から線材Wが送出される例について示したが、線材供給源Sから供給される線材に張力を加えられるように構成されていれば、送出用モータ等の線材Wを送出するような機構を省略することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。