JP2017530152A - インタクトな細菌由来のベシクルへの低分子化合物の充填の向上 - Google Patents

インタクトな細菌由来のベシクルへの低分子化合物の充填の向上 Download PDF

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Abstract

インタクトな細菌由来のベシクルへの低分子化合物の充填を向上すると、操作上及び治療上の利点が得られる。【選択図】図18

Description

関連出願の相互参照のPCT出願形式
本出願は、2014年10月3日に出願された米国仮特許出願第62/059,466号からの優先権を主張する。本出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
生物活性剤を封入する、生存していないがインタクトな(intact)細菌ベシクルが治療目的のために使用されてきた。例えば、国際特許出願WO2003/033519において、本発明者らは、治療用核酸分子を含有するインタクトな細菌由来のミニ細胞の調製及び使用を記載している。WO2005/079854により、本発明者らはまた、低分子薬を、親水性又は疎水性にかかわらず、ミニ細胞に封入することができ、このミニ細胞は、標的哺乳動物細胞に取り込まれると、標的細胞の細胞質に薬物を放出することができることも示している。同様に、米国特許第8,591,862号は、本発明者らを列挙に含めており、治療剤を封入したインタクトな死滅細菌細胞の調製及び使用を実証している。
定義による死滅細菌細胞は、ミニ細胞と同様に、生存していない。いずれのタイプのインタクトな細菌ベシクルも、複製することも宿主細胞に能動的に侵入することもできない。
本発明者らは、死滅細菌細胞及びミニ細胞が、それらが比較的大きなサイズであるにもかかわらず、標的哺乳動物細胞によって取り込まれ得、細胞に接触すると、次に、後期エンドソーム/リソソーム中で分解し、標的細胞にその薬物ペイロード(payload)を放出することを報告している。取込みは、死滅細菌細胞又はミニ細胞が、哺乳動物細胞を標的とするリガンドに結合すると改善される。WO2005/056749に記載されている、こうしたリガンドの例示には、(i)ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第1のアーム、及び(ii)非食哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第2のアームを有する、二特異性抗体がある。
本発明者らはまた、ミニ細胞は、腫瘍を有する哺乳動物宿主に静脈内投与されると、ある種の脳腫瘍を含めた多数の固形腫瘍に伴う漏出性血管を介して、管外に迅速に遊出すること(WO2013/088250)、及びこのミニ細胞は腫瘍微小環境に集積することも発見した。ミニ細胞は腫瘍微小環境に限定され、正常組織には浸透しないのは、直径約400nm±50nmを有するミニ細胞が、正常(非腫瘍)組織周辺の正常な血管からは漏れ出すことができないためであると考えられる。
さらに、本発明者らは、こうした細菌ベシクルに薬物ペイロードを充填(load)するための方法を記載した。例えば、核酸は、濃度勾配下でベシクルとインキュベートすると、インタクトな非生存細菌ベシクルに封入することができ、この間に、この核酸はその勾配を下ってベシクルへと移動する。例えば、米国特許第8,669,101号を参照されたい。或いは、核酸をコードするプラスミドは、生存細菌に形質導入されることができ、複製又は転写して核酸を産生することができる。次に、核酸が封入された生存細菌は、死滅され、上記の死滅細菌細胞が生じ得るか、又は上記の生存細菌は、それ自体、核酸を充填したインタクトなミニ細胞を生成することができる。例えば、WO2003/033519を参照されたい。
核酸と異なり、低分子薬は、通常、プラスミドから生成することができない。しかし、述べた通り、本発明者らは、こうした薬物をベシクルに直接、充填することができることを発見した。低分子薬を充填するそれらの手法は、MacDiarmidら、Cancer Cell 11巻:431〜45頁(2007年)により報告された実験に例示された。
その2007年の開示において報告された実験の場合、薬物充填は、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2PO4、2mM KH2PO4(pH7.4に調節)の組成を有するリン酸緩衝生理食塩水(「PBS緩衝液」)1〜2ミリリットル(ml)中に含有されているミニ細胞を用いて行われた。P. Gerhardtら、MANUAL OF METHODS FOR GENERAL BACTERIOLOGY、第2版、American Society for Microbiology(Washington、D.C.)、1981年を参照されたい。この1〜2mlのスケール(以後、「小スケール」)に関して、ミニ細胞を所与の薬物と共インキュベートし、その後、このミニ細胞から過剰の薬物を除去する労力が続く。この労力は、遠心分離を必要とし、これにより、薬物が封入されたミニ細胞がペレットになり、次に、過剰の薬物があるならばそこに残留すると考えられる上澄み液が廃棄される。次に、所与の調製を行うために、このミニ細胞をやはり1〜2mlの新しいPBS中で再懸濁させ、遠心分離及び上澄み液の廃棄という工程が5〜6回繰り返された。本開示では、この従来の方法は、「小スケールプロトコル」と呼ばれ、これは、共インキュベート(充填)工程、並びに再懸濁による洗浄、遠心分離及び上澄み液の廃棄という多段階工程を必要とし、すべてが1〜2mlスケールで行われる。
小スケールプロトコルを実施するための再検討として、MacDiarmidらは、ミニ細胞に結合している薬物を抽出(433頁以降の最後の全文を参照されたい)すると直ぐに、この薬物濃度を、HPLC分析を使用して決定した。いくつかの抗がん薬の場合、MacDiarmidらは、例えば、同著の435頁の最初の全文の、「〜10 million … molecules … per minicell」に関して、小スケール方法の場合のドキソルビシンの推定充填率を報告した。
WO2003/033519 WO2005/079854 米国特許第8,591,862号 WO2005/056749 WO2013/088250 米国特許第8,669,101号
MacDiarmidら、Cancer Cell 11巻:431〜45頁(2007年)
さらなる検討により、本発明者らは、所与の蛍光化合物を最初は含有していないインタクトな非生存細菌ベシクルと共にインキュベートすると、後者の蛍光化合物は、非蛍光化合物である点以外は類似している化合物よりも予想外に迅速に、結果として生じる濃度勾配を下って(高い外側から低い内側へ)、ベシクルの細胞質に移動することができること、及び上記蛍光化合物が、驚くほど一層高いベシクル内濃度を実現し得ることも発見した。これらと整合することには、本発明者らは、例えば、非蛍光化合物に蛍光部分を連結すると、こうした修飾が、通常、分子量の増加をもたらし、これにより、薬物充填を妨げると考えられているにも関わらず、インタクトな非生存細菌ベシクルへの充填が、非蛍光化合物自体を使用して得られる結果と比べてかなり改善されることを観察した。
特に、蛍光化合物の充填に関連して、本発明者らはまた、アルカリ金属ハロゲン化物の塩、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム及び臭化カリウムなどの二元イオン化合物が添加された媒体中で蛍光化合物の充填を行うと、効率の一層大きな向上が起こることも見つけ出した。本発明によれば、充填用媒体中にこうした化合物が約200mM程度の低い濃度で存在すると、蛍光化合物の充填率が2倍以上改善され、充填がわずか約15分後に効率よく完了する。
より一般には、本発明者らは、上で論じた小スケールプロトコルに含まれる遠心分離をなくすことができ、かつ蛍光化合物と非蛍光化合物のどちらの場合も、小スケールプロトコル自体を共インキュベート(充填)とその後の複数の工程のクロスフローろ過による洗浄からなる方法で置き換えることができることを見いだした。一般的には、www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1392028292867/litdoc29085076_20140313045908.pdfでアクセスされる、CROSS FLOW FILTRATION METHOD HANDBOOK(29-0850-76AB)、GE Healthcareを参照されたい。MEMBRANE PROCESSES IN BIOTECHNOLOGY AND PHARMACEUTICS、Catherine Charcosset(編)、Elsevier(2012年)及びSTERILE FILTRATION:A PRACTICAL APPROACH、Maik W. Jornitz及びTheodore H. Meltzer(編)、Taylor & Francis(2000年)も参照されたい。本発明によれば、クロスフローろ過は、医薬品グレードのフィルターを用いて行われ、このフィルターは、供給業者の中でも特に、Sartorius Stedim Systems、GE Healthcare及びPall Corporationから商業的に入手可能である。供給業者によって提供されるユーザーマニュアル中の記載に基づいた好適なフィルターの選択は、フィルターのサイズ、生成スケールなどに応じて、ろ過分野の有識者の範囲内にある。さらに、フィルターの細孔サイズは、ろ過の目的に応じて、標準品、例えば、0.45μm又は0.2μmである。ろ過中に適用される圧力は、すべての工程において様々であり、必要に応じて調節される。
本文脈では、薬物が封入されたベシクルを緩衝液中で洗浄するスケールが、使用される緩衝液の体積に関して、約4〜5倍の間の桁数、すなわち、小スケール(smale-scale)プロトコルのミリリットルスケールと比べて、リットルスケール(これ以降、「大スケール」)まで増やす(例えば、繰り返し1回あたり、新しい緩衝液約20リットル中で、薬物を充填したベシクルの洗浄を3〜5回、繰り返す)場合に、予想外の利点が伴うことが見いだされた。したがって、この手法(以後、「大スケール方法」)によれば、例えば、所与のバッチの薬物を充填したベシクルの洗浄工程において、約100リットル程度の緩衝液を使用することができる。
その結果、本発明の方法は、遊離エンドトキシンレベルの低下をもたらすだけではなく、これまで、従来の小スケールプロトコルによりベシクルの外側表面に捕捉されて残存する、これまで認識されていなかったペイロード化合物のフラクションの減少ももたらす。例示として、小スケールプロトコルにより、インタクトなミニ細胞あたりに充填されたドキソルビシン分子の数は、MacDiarmidら(2007年)が、上記の文献で、約1000万個と推定するに至った。本発明の大スケール方法では、この数は、ミニ細胞あたり約100万個の分子未満である(以下の実施例6を参照されたい)。したがって、小スケールプロトコルは、封入されたミニ細胞の外側層に、約900万個のドキソルビシン分子の捕捉を伴い、本発明の方法(実施例14を参照されたい)と著しい対照をなしている。
したがって、本発明の方法によれば、封入しているベシクルの外側へのペイロード化合物の捕捉が最小化され、充填された化合物は、濃度勾配が除かれるても、ベシクル内部に留まる。すなわち、本発明は、ミニ細胞109個あたり化合物を数百ナノグラム程度の量で充填された化合物を封入するインタクトな非生存細菌ベシクルを調製するためのかなり有効な手法を提供する。
したがって、一態様では、本開示は、ドキソルビシン、イリノテカン、ビスアントレン、トポテカン、エピルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、Oregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセル又はBODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチンではない、蛍光低分子薬を封入するインタクトな非生存細菌ベシクルを含む組成物を提供する。このベシクルは、インタクトな細菌由来のミニ細胞又は死滅細菌細胞のどちらかである。一部の実施形態では、ミニ細胞は、少なくとも500,000個の分子の低分子薬を封入する。好ましくは、低分子薬は、生物活性である。一部の実施形態では、低分子薬は、約900ダルトン以下の分子量を有する。他の実施形態では、低分子薬は細胞毒性がある。例示的な低分子薬には、以下に限定されないが、PNU-159682などのモルホリニルアントラサイクリン誘導体が含まれる。ある種の実施形態では、低分子薬はインビボで活性化される。
別の態様では、本開示は、式D-L-Fの化合物又はその塩を封入するインタクトな非生存細菌ビシクルを含む組成物を提供し、Dは、低分子薬の残基であり、Lはリンカーであり、Fは蛍光部分である。本発明に好適なリンカーは、6時間〜24時間の間の半減期を有するか、又は哺乳動物細胞のエンドソーム中などの酸性pHの条件下で分解する。例示的な低分子薬、蛍光部分及びリンカー、並びにそれらの構造は、以下に詳述されている。
さらに別の態様では、リンカーを介してエネルギー移動部分に結合されている活性剤を含む化合物を取り囲んでいるインタクトな細菌由来の細菌ベシクルを含む組成物であって、上記活性剤が、Oregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセル及びBODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチン以外である、組成物が提供される。一部の実施形態では、このエネルギー移動部分は、発光部分であり、共役パイ系を含むか、又はアクリジニル部分、ザンテニル部分若しくはベンゾイミダゾリル部分を含む。
関連する態様では、本発明は、遠心分離を用いることなく、所望の化合物を複数のミニ細胞に充填する方法を対象としている。本方法は、(A)緩衝液体中、所望の化合物のある量のインキュベート用溶液を複数回、インキュベートするステップであって、上記量が約100ml程度以上となる、ステップ、次に(B)洗浄工程を複数から多数回、施すステップであって、それぞれが数リットル程度である、ある量の緩衝液体によるミニ細胞のクロスフローろ過を含み、洗浄工程のいずれもミニ細胞の遠心分離を使用しない、ステップを含む。一部の実施形態では、ミニ細胞内に充填される所望の化合物とは異なる二元イオン化合物を、約200mM程度以上となる濃度までインキュベート用溶液に溶解する。好ましくは、工程(B)は、3〜5回の洗浄工程を含む。一部の実施形態では、所望の化合物は蛍光性である。一部の実施形態では、工程(A)のインキュベートは、約4時間の期間である。一部の実施形態では、所望の化合物は、生物活性である。所望の化合物は、約900ダルトン以下の分子量を有する低分子薬とすることができる。好ましくは、低分子薬は、細胞毒性がある。低分子薬は、インビボで活性化され得る。他の実施形態では、所望の化合物は、式D-L-F又はその塩であり、Dは、低分子薬の残基であり、Lはリンカーであり、Fは蛍光部分である。好ましくは、このリンカーは、6時間〜24時間の間の半減期を有するか、又は哺乳動物細胞のエンドソーム中で分解する。
さらに別の態様では、本記載は、それを必要としている患者における、がんの処置に関する。この処置は、有効量の本発明によって包含される組成物を、患者に投与するステップを含む。一部の実施形態では、本組成物は細胞毒性化合物を含む。
ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLを封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。このミニ細胞は、黒色のバックグラウンド上に明赤色の蛍光を発しており、ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLが、ミニ細胞中に存在しているのであって、外部空間中には存在していないことを示している。 FLUTAX-1を封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。ミニ細胞は、黒色のバックグラウンド上に明緑色の蛍光を発している。したがって、FLUTAX-1は、ミニ細胞に封入されており、外部空間に残存していなかった。 1×109個のFLUTAX-1を封入したミニ細胞からの抽出物のHPLC分離からのクロマトグラムの一例を示す図である。FLUTAX-1に対応するピークは、保持時間(rt)=4.72分に見られる。このピークの面積を使用して、既知量のFLUTAX-1の標準曲線と比較することにより、ミニ細胞に封入されたFLUTAX-1の量を計算した。 Oregon(登録商標)Green-488にコンジュゲートされているパクリタキセルを封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。ミニ細胞が、黒色のバックグラウンド上に明緑色の蛍光を発することは、このコンジュゲートがミニ細胞に封入されていることを示している。 FCPを封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。ミニ細胞が、黒色のバックグラウンド上に明緑色の蛍光を発することは、FCPがミニ細胞に封入されていることを示している。 FCPを充填したミニ細胞(1×109)からの抽出物のHPLC分離からのクロマトグラムの一例を示す図である。FCPに対応するピークは、保持時間(rt)=3.64分に見られる。このピークの面積を使用して、既知量のFCPの標準曲線と比較することにより、ミニ細胞に封入されたFCPの量を計算した。 BacLight(商標)Greenを封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。ミニ細胞が、黒色のバックグラウンド上に明緑色の蛍光を発している。したがって、BacLight(商標)Greenは、ミニ細胞に結合されており、外部空間には結合していないことを示している。 空の及びBacLight(商標)Greenを封入したミニ細胞のフローサイトメトリー分析から生成したヒストグラムを示す図である。x軸は、FL-1チャネルにおける蛍光を表し、y軸=計数である。BacLight(商標)Greenが封入されているミニ細胞は、個々の集団を示しており、この集団は、空のミニ細胞と比べて、右側にシフトしており、集団のミニ細胞が蛍光性であることを示している。 ドキソルビシンを封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。このミニ細胞は、黒色のバックグラウンド上に明赤色の蛍光を発しており、ドキソルビシンが、外部空間中よりもむしろ、ミニ細胞内に存在していることを示している。 1×109個のドキソルビシンを封入したミニ細胞からの抽出物のHPLC分離からのクロマトグラムの一例を示す図である。ドキソルビシンに対応するピークは、保持時間(rt)=5.5分に見られる。このピークの面積を使用して、既知量のドキソルビシンの標準曲線と比較することにより、ミニ細胞に封入されたドキソルビシンの量を計算した。 核酸色素SYTO9を封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。ミニ細胞は、黒色のバックグラウンド上に明緑色の蛍光を発しており、SYTO9は外部空間ではなく、ミニ細胞に結合していることを示している。 空の及びSYTO9を封入したミニ細胞のフローサイトメトリー分析から生成したヒストグラムを示す図である。x軸は、FL-1チャネルにおける蛍光を表し、y軸=計数である。SYTO9を封入したミニ細胞は、個々の集団を示しており、この集団は、空のミニ細胞と比べて右側にシフトしている。したがって、封入したミニ細胞は蛍光性である。 9-アミノアクリジン塩酸塩水和物を封入したミニ細胞の蛍光画像を示す図である。ミニ細胞は暗バックグラウンド上で青色の蛍光を発しており、9-アミノアクリジン塩酸塩水和物が、外部空間の代わりに、ミニ細胞内部に結合していることを示している。 1×109個のパクリタキセルが封入されているミニ細胞からの抽出物のHPLC分離からのクロマトグラムの一例を示す図である。パクリタキセルに対応するピークは、保持時間(rt)=4.48分に見られる。このピークの面積を使用して、既知量の標準曲線と比較することにより、ミニ細胞に封入されたパクリタキセルの量を計算した。 1×109個のTF.Pacを封入したミニ細胞からの抽出物のHPLC分離からのクロマトグラムの一例を示す図である。TF.Pacに対応するピークは、保持時間(rt)=4.57分に見られる。このピークの面積を使用して、既知量のTF.Pacの標準曲線と比較することにより、ミニ細胞に封入されたTF.Pacの量を決定した。 様々な濃度の葉酸を含むドキソルビシン充填用溶液の、2つの異なる波長における蛍光読取値を示すグラフである。 遊離ドキソルビシンの標準曲線の生成を示すグラフである。 ドキソルビシン充填に及ぼす蛍光消光物質である葉酸の影響を示すグラフである。 UV(250nm)読取値からの、ミニ細胞へのドキソルビシン充填量のHPLC定量を示すグラフである。 相対蛍光(RF)読取値からの、ドキソルビシン充填量のHPLC定量を示すグラフである。 様々なイオン性塩の解離に由来するイオンの存在下での、ミニ細胞に充填されたFLUTAX-1の経過及び量を示すグラフである。 ミニ細胞へのFLUTAX-1の充填が15分間となる時間点の場合の、図21に示されているデータを図示しているグラフである。 化合物のミニ細胞への蛍光を媒介とする膜貫通移動の、イオンによる向上に及ぼす、共インキュベート温度の効果を示すグラフである。 ヒト受容体チロシンキナーゼ(Lemmon及びSchlessinger、Cell 141巻:1117〜134頁(2010年)から引用)のうちの20のサブファミリー及び58のメンバーを例示している図である。
本開示は、ミニ細胞及び死滅細菌細胞を含めた分類であるインタクトな細菌由来の非生存ベシクルに化合物を充填する方法、並びにこうした化合物が充填されているベシクルを含有する組成物、好ましくは医薬品グレードの組成物の両方を提供する。
(A)定義
特に定義されていない限り、本説明において使用されている技術用語及び科学用語はすべて、当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において使用されているある種の用語及び言い回しの意味を以下に提示する。他の用語及び言い回しは、本明細書全体で定義されている。
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の参照物を含む。
本明細書で使用する場合、用語「約」は、当業者により理解され、それが使用されている文脈に応じて、ある程度、様々なものとなろう。「約」が使用されている文脈を考えると、当業者に明確ではない期間が使用されている場合、「約」は、特定の期間のプラス又はマイナス10%までを意味することになろう。
本明細書で使用する場合、文脈が他に必要としている場合を除き、用語「comprise(含む)」、並びに「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised)」などその用語の変化形は、他の添加物、構成成分、整数又は工程を排除することを意図するものではない。
言い回し「生物活性な」及び「生物活性」は、場合に応じて、生体に対する化合物又は組成物の作用を認める又は意味するために使用される。したがって、ある物質が、例えば、タンパク質、核酸又は細胞中の他の分子と反応することにより、ヒト若しくは動物の身体における任意の細胞組織と相互作用を有する、又は任意の細胞組織に対して影響を及ぼす場合、この物質は生物活性であるか、又は生物活性を有する。
本明細書において互換的に使用される「がん」、「新生物」、「腫瘍」、「悪性腫瘍」及び「癌腫」は、細胞増殖の著しい制御不能によって特徴付けられる、異常な増殖表現型を示す細胞又は組織を指す。本開示の方法及び組成物は、特に、悪性、前転移性、転移性及び非転移性細胞に適用される。
「薬物」は、動物、特に、哺乳動物及びヒトにおいて、局所若しくは全身効果を生じる任意の生理学的又は薬理学的活性物質を指す。
本説明において互換的に使用される用語「個体」、「対象」、「宿主」及び「患者」は、診断、処置又は治療が望まれる任意の哺乳動物対象を指す。個体、対象、宿主又は患者は、ヒト又は非ヒト動物とすることができる。したがって、好適な対象には、以下に限定されないが、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット及びマウスが含まれ得る。
「処置」、「処置すること」、「処置する」などの用語は、腫瘍患者における所望の薬理学的及び/若しくは生理学的効果を得ることを指す。この効果は、腫瘍増殖若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防することをもって、予防的とすることができ、かつ/又はこの効果は、腫瘍及び/若しくはこの腫瘍に起因し得る有害作用を部分的に若しくは完全に安定化若しくは治癒することをもって、治療的とすることができる。処置は、哺乳動物、特にヒトにおける腫瘍のあらゆる処置を包含する。所望の処置効果は、腫瘍量の減少又は腫瘍量の増加の阻害として測定することができる腫瘍応答とすることができる。代替として、又はさらには、所望の処置効果は、総合的な患者の生存、進行のない生存、腫瘍再発までの時間の増加、又は有害作用の低下とすることができる。
「アルキル」は、1〜20個、又は1〜10個、又は1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する、一価の直鎖又は分岐鎖飽和直鎖炭化水素基を指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル又はオクチルが含まれる。直鎖又は分岐C1〜C4アルキル基は、「低級アルキル」基とも呼ばれる。
「アルキレン」は、1〜20個、又は1〜10個、若しくは1〜6個、若しくは1〜4個の炭素原子、又は1個若しくは2個の炭素原子を有する、二価の直鎖又は分岐鎖飽和直鎖炭化水素基を指す。アルキレンの例には、-(CH2)y-が含まれ、式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
「シクロアルキル」は、3〜10個又は3〜8個の炭素原子を有する、環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基の例には、例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル及びシクロヘキセニルが含まれる。「Cu〜vシクロアルキル」とは、環員として、u〜v個の炭素原子を有するシクロアルキル基を指す。
「複素環」又は「複素環式」又は「ヘテロシクロ」又は「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」とは、合計が3〜18個の環原子、1〜14個の炭素原子、及び窒素、硫黄又は酸素からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子を有する、飽和又は部分飽和な環式基を指し、単環、並びに縮合環系、架橋環系及びスピロ環系を含めた多環系を含む。芳香族及び/又は非芳香族環を有する多環系の場合、少なくとも1個の環ヘテロ原子が存在し、かつ結合点が非芳香族環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-3-イル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-6-イル及びデカヒドロキノリン-6-イル)の原子にあると、用語「複素環式」、「複素環」、「ヘテロシクロ」、「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」が当てはまる。一実施形態では、複素環式基の窒素及び/又は硫黄原子は、場合により、酸化されて、N-オキシド、スルフィニル、スルホニル部分をもたらす。より具体的には、ヘテロシクリルには、以下に限定されないが、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、N-メチルピペリジン-3-イル、ピペラジニル、N-メチルピロリジン-3-イル、3-ピロリジニル、2-ピロリドン-1-イル、モルホリニル及びピロリジニルが含まれる。炭素原子数を示す接頭語(例えば、C3〜C10)は、ヘテロ原子数を除くヘテロシクリル基の部分における炭素原子の総数を指す。
置換アルキル、アルキレン、シクロアルキル又は複素環は、それぞれ、この化合物の抗がん活性を実質的に妨害しない、1〜5つ又は1〜3つの置換基を有する、アルキル、アルキレン、シクロアルキル又は複素環を指す。アルキル基上の置換基の例には、-OH、-NH2、-NO2、-CN、-COOH、ハロ、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシ、ハロアルコキシ、-ORa、oxo(=O)、-O-CORa、-CORa、-SO3H、-NHRa、-NRaRb、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CONRaRb、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCONRaRb、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCONRaRb、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-NRaRb、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-NRaRb、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-NRaRb、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-NRaRb、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-NRaRb、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-NRaRb、-NHNH2、-NHNHRa、-NHNRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb、-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra及び-CO-アルキルが含まれ、Ra、Rb、Rc及びRdは、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、フェニル又はベンジルである。一部の実施形態では、置換基は、-OH、ハロ、フェニル、ベンジル、ピリジル及びC1〜C8アルコキシから選択される。一部の実施形態では、置換基は、-OH、ハロ及びC1〜C4アルコキシから選択される。アルキレン、シクロアルキル又は複素環基上の置換基の例には、-OH、-NH2、-NO2、-CN、-COOH、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシ、ハロアルコキシ、オキソ(=O)、-ORa、-O-CORa、-CORa、-SO3H、-NHRa、-NRaRb、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CONRaRb、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCONRaRb、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCONRaRb、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-NRaRb、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-NRaRb、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-NRaRb、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-NRaRb、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-NRaRb、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-NRaRb、-NHNH2、-NHNHRa、-NHRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb、-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra及び-CO-アルキルが含まれ、Ra、Rb、Rc及びRdは、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、フェニル又はベンジルである。一部の実施形態では、置換基は、-OH、ハロ、C1〜C4アルキル、フェニル、ベンジル、ピリジル及びC1〜C8アルコキシから選択される。一部の実施形態では、置換基は、-OH、C1〜C4アルキル、ハロゲン及びC1〜C4アルコキシから選択される。
「アリール」とは、6〜14個の炭素原子からなり、環ヘテロ原子のない芳香族基であって、単環(例えば、フェニル)又は縮合(condensed)(縮合(fused))多環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する、芳香族基を指す。環ヘテロ原子を有さない芳香族環及び非芳香族環を有する、縮合、架橋及びスピロ環系を含めた多環系の場合、用語「アリール」又は「Ar」は、その結合点が芳香族炭素原子にある場合に当てはまる。例えば、5,6,7,8テトラヒドロナフタレン-2-イルは、芳香族フェニル環の2位においてその結合点を有するアリール基である。
「置換アリール」とは、-OH、オキソ(=O)、-NH2、-NO2、-CN、-COOH、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシ、ハロアルコキシ、-ORa、-O-CORa、-CORa、-COOH、-SO3H、-NHRa、-NRaRb、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CONRaRb、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCONRaRb、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCONRaRb、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-NRaRb、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-NRaRb、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-NRaRb、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-NRaRb、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-NRaRb、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-NRaRb、-NHNH2、-NHNHRa、-NHRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb、-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra及び-CO-アルキルからなる群から選択される、1〜8つ、又は一部の実施形態では、1〜5つ、1〜3つ又は1〜2つの置換基により置換されているアリール基を指し、Ra、Rb、Rc及びRdは、独立して、アルキル、シクロアルキル、フェニル又はベンジルである。一部の実施形態では、置換基は、-OH、ハロ、C1〜C4アルキル、フェニル、ベンジル、ピリジル及びC1〜C8アルコキシから選択される。一部の実施形態では、置換基は、-OH、C1〜C4アルキル、ハロゲン及びC1〜C4アルコキシから選択される。
「ハロアルキル」は、1〜5個又は1〜3個のハロにより置換されているアルキル基を指す。
「アルコキシ」は、アルキルが本明細書において定義されている通りである、-O-アルキル基を指す。「置換アルコキシ」とは、-O-(置換アルキル)を指す。
「ハロアルコキシ」は、ハロアルキルが本明細書において定義されている通りである、-O-ハロアルキル基を指す。
「ハロ」とは、-F、-Cl、-Br又は-Iを指す。
「ヘテロアリール」は、1〜14個の炭素原子、並びに酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子からなる芳香族基を意味し、単環(例えば、イミダゾリル)又は多環(例えば、ベンゾイミダゾール-2-イル及びベンゾイミダゾール-6-イル)を含む5から18員環又は環系を含む。芳香族環及び非芳香族環を有する、縮合、架橋及びスピロ環系を含めた、多環系の場合、少なくとも1個の環ヘテロ原子が存在し、その結合点が、芳香族環の原子にある場合(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル及び5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)、用語「ヘテロアリール」が当てはまる。一実施形態では、ヘテロアリール基の窒素及び/又は硫黄環原子は、場合により、酸化されて、N-オキシド(N→O)、スルフィニル又はスルホニル部分をもたらす。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、合計で5、6又は7環原子を含み、それぞれ5員、6員又は7員のヘテロアリールと呼ばれる。ヘテロアリールの例には、以下に限定されないが、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、キナゾリノニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル又はベンゾチエニルが含まれる。
「小スケールプロトコル」は、MacDiarmidら(2007年)に例示されている手順であって、ミニ細胞などの細菌由来のベシクルに、緩衝液体、通常、PBS緩衝液中で治療用ペイロードが充填されており、PBS緩衝液が、ミリリットル量の程度、例えば、1〜2mlであり、この後、充填されたミニ細胞に、遠心分離、上澄み液の廃棄、及びここでもやはりミリリットル量の緩衝液体中でのミニ細胞の再懸濁を含む、複数の洗浄工程が施される手順を意味する。
対照的に、「大スケール方法」とは、充填されたミニ細胞に複数(例えば、3〜5回)の洗浄工程が施される、本発明の方法であって、PBS緩衝液、又はHEPES-緩衝生理食塩水、ホウ酸緩衝生理食塩水及びTris緩衝生理食塩水などの細胞の生物学研究に好適な他の緩衝液体を工程あたり数十リットルの程度の量(例えば、約20リットル)を用いて、クロスフローろ過が使用(遠心分離はなし)される、方法を指す。さらに、大スケール方法の場合、低分子薬などの治療用ペイロードをミニ細胞に充填する工程は、好ましくは約100ミリリットル程度以上である量の緩衝液体中で行われ、この場合、PBS緩衝液などの緩衝液体は、場合により、約200mM程度以上の濃度のKClなどの二元イオン化合物を有する。
言い回し「医薬品グレード」は、親細胞の混入、細胞破片、遊離エンドトキシン、及びヒトへの静脈内投与に対する規制要件を十分に満たす他の発熱物質がないことを意味する。例えば、「Guidance for Industry-Pyrogen and Endotoxins Testing」、米国食品医薬品局(2012年6月)を参照されたい。
「化合物の残基」は、化合物から、水素原子、-OH又は-CO-CH3基などの原子又は部分を除去することにより得られる部分を意味する。したがって、一部の実施形態では、化合物の残基は、化合物から水素原子を除去することにより得られる部分である。
「置換ヘテロアリール」とは、置換アリールに関して定義されている置換基からなる群から選択される、1〜8つ、又は一部の実施形態では、1〜5つ又は1〜3つ又は1〜2つの置換基により置換されているヘテロアリール基を指す。
「立体異性体(単数)」及び「立体異性体(複数)」は、1個以上の立体中心のキラリティーが異なる化合物を意味する。立体異性体には、鏡像異性体及びジアステレオマーが含まれる。本発明の化合物は、それらが1個以上の不斉中心、又は非対称な置換を有する二重結合を有する場合、立体異性体として存在することができ、したがって、個々の立体異性体として又は混合物として生成され得る。特に示さない限り、この記載は、個々の立体異性体及び混合物を含むことが意図される。立体化学の決定及び立体異性体の分離の方法は、MARCH'S ADVANCED ORGANIC CHEMISTRYの第4章、第7版(Wiley、2013年)での議論により証明されている通り、周知である。
「互変異性体」とは、エノール-ケト及びイミン-エナミン互変異性体などのプロトンの位置が異なる化合物の交互形態、又はピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール及びテトラゾールなどの、環の-NH-部分と環の=N-部分の両方に結合している環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性体を指す。さらに、本明細書において「化合物」を言及する場合、その互変異性体も同様に含む。
「薬学的に許容される塩」とは、当分野で周知の様々な有機及び無機の対イオンから誘導される、薬学的に許容される塩を指し、単なる例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びテトラアルキルアンモニウムを含む。分子が塩基性官能基を含有している場合、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの有機酸又は無機酸の酸付加塩、又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-二スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸により形成される。親化合物中の酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ金属イオン又はアルミニウムイオンにより置き換えられているか、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基に配位しているかのいずれかの場合にも、塩を形成することができる。薬学的に許容される塩は、患者において投与するのに適しており、所望の薬理学的特性を有する。好適な塩には、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES、SELECTION、AND USE、第2版(Wiley、2011年)に記載されているものがさらに含まれる。
本記載中の「ペイロード」は、充填されることになる、又は標的化されている宿主細胞に送達するためのミニ細胞に充填された生物活性な物質を特定又は認定する。
(B)本発明者らの発見及びその驚くべき性質
明記される通り、本発明者らは、蛍光それ自体が、インタクトな非生存細菌ベシクルへの低分子化合物の充填率を大幅に高めることを発見した。例えば、以下の実施例は、下記のどちらもミニ細胞と共インキュベートすることにより、非修飾パクリタキセルはミニ細胞に封入されて、ミニ細胞あたり2,115個のコピー(copy)(分子)濃度に到達することができる(実施例9)一方、パクリタキセルの水溶性誘導体であるTF.Pacは、ミニ細胞あたり50,000個のコピー(実施例10)に到達することができることを示している。対照的に、パクリタキセルの2つの蛍光誘導体である、FLUTAX-1及びFITC-コンジュゲートされているパクリタキセル(FCP)のどちらも、ミニ細胞に充填され、ミニ細胞あたり270,000個のコピー(実施例2)及び230,000個のコピー(実施例4)という高い濃度に到達することができる。これらの濃度は、非修飾(非誘導化)、非蛍光化合物によって到達されるものと比べて、それぞれ127倍及び109倍、高い。
充填法は、サイズが移動に影響を及ぼすと思われる、膜チャネルを通過する必要があると考えられるので、より大きな分子は、より小さな分子よりもベシクルへの充填が一般に困難であることが予想された。とはいえ、FCP(分子量:1455.6ダルトン)は、パクリタキセル(分子量:853.9ダルトン)よりもかなり大きいにもかかわらず、その蛍光誘導体は、パクリタキセル自体よりも109倍高いベシクル内濃度に到達することができる。この理由でも、この点で本発明者らの発見は、全く驚くべきものである。
恐らく、それらの(自家)蛍光特性に加えて、小さなサイズであるという利点のため、ドキソルビシン及びミトキサントロンは、ミニ細胞あたり約800,000個のコピー(実施例6)及び759,000個のコピー(実施例12)にそれぞれ達する。蛍光化合物BacLight(商標)Green色素(実施例5)、SYTO9(実施例7)及び9-AAHH(実施例8)もやはり、高い充填率を示す。
しかし、パクリタキセルの蛍光コンジュゲートである、パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488も、こうした高い濃度に到達する(実施例3)。ビンブラスチンの蛍光誘導体であるBODIPY(登録商標)FLも同様に、実施例1が実証している通り、高い効率でミニ細胞に充填される。こうした充填は、非修飾ビンブラスチンの場合、不可能であるが、この事実は、ミニ細胞への薬物の充填を、蛍光顕微鏡法によって証明しようとする、BODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチン及びOregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセルを使用した、MacDiarmidら(2007年)(上記の文献)による開示では明らかでなかった。MacDiarmidら(2007年)の432頁の図1(E)及び(F)(凡例)を参照されたい。
本発明の別の驚くべき態様は、蛍光化合物の高い充填率が、所与の化合物の親水性又は疎水性に無関係のように思われることである。例えば、パクリタキセルは、疎水性である一方、TF.PacとFCPはどちらも水溶性であるが、FCPの充填率は、TF.Pacのそれよりも5倍、高い。
化合物上の蛍光部分のコンジュゲート点は、本発明により実現される充填率に影響を及ぼさないように見える。したがって、FCP及びFLUTAX-1は、同じフルオレセインフルオロフォアを有しているが、その結合は、FCPの場合、FLUTAX-1にあるC7位ではなく、むしろC2'にある。しかし、ミニ細胞内の最終的な化合物濃度に関して、両方の誘導体は類似した充填率を実現する。
実施例11は、ドキソルビシン蛍光の葉酸による消光は、ミニ細胞へのドキソルビシンの充填率を用量依存的に低下させることをさらに例示している。この現象はさらに、本発明によれば、蛍光それ自体の役割は、ミニ細胞への化合物の充填を向上することにあることを強調している。
本発明者が知る限り、蛍光それ自体によって、化学化合物の輸送又は移動、とりわけ細胞膜の通過に影響を及ぼすという報告はない。本発明者らにより証明された、こうした影響は、蛍光化合物と膜貫通チャネル内又はそれに並ぶある種の分子との間のエネルギー移動によるものとすることができ、これにより、化合物がチャネルを通過するのが高められる。非蛍光化合物と比較すると、蛍光化合物は、例えば電磁波照射によって、より容易に励起しやすい電子を含有している。こうした励起は、蛍光化合物と一部のミニ細胞の膜貫通チャネル構造との間のエネルギー移動を促進すると考えられ、チャネル中の上記化合物が一層速く移動し、充填された化合物の量を増加させる。
本発明による充填方法は、濃度勾配、すなわち、化合物の濃度が細胞内よりも細胞外で高いことを必要とする。しかし、明記される通り、蛍光化合物の関与により、濃度勾配だけの観点で慣用的に説明され得る場合よりも高い充填率及びベシクル内濃度をもたらす。すなわち、蛍光化合物の場合、ミニ細胞への充填が進行するので、化合物の細胞内濃度が向上し、次に、細胞外濃度を超え、実際の飽和に到達するまで、化合物のミニ細胞への移動が続く。同様に、実施例13に例示されている通り、媒体中にイオンが存在すると、インタクトな細菌由来のベシクルへの充填の、蛍光を媒介とする向上が賦活化されることは、濃度勾配の明白な働きによるものではない。
さらに、医薬品グレードのミニ細胞及び死滅細菌細胞含有組成物の調製に関する際の従来の考えは知らされておらず、MacDiarmidら(2007年)によって例示されている小スケールプロトコルの場合に起こる、充填された化合物がベシクル表面に捕捉されていることを考慮しなかった。本発明者らの捕捉問題の発見により、これまで認識されていなかった変数、すなわち以下の項目(I)による、ミニ細胞又は死滅細菌細胞含有組成物の投与により送達される、有効量のペイロード化合物に影響を及ぼし得る、表面に捕捉された化合物の漏出(実施例14を参照されたい)が明らかになった。実施例14にやはり例示されている、本発明の大スケール方法により、この捕捉問題を軽減する、又はそれをなくすことさえすることによって、この変数を制御することが可能である。
上記のこうした発見及び他の知見は、インタクトな細菌由来のミニ細胞を用いてなされたが、それらは死滅細菌細胞にも容易に外挿される。これは、これらの2つのタイプの非生存細菌ベシクルが、主にサイズによって、及び細菌の染色体が存在するか存在しないかで異なるためである。化合物の充填率に関していずれにも区別がないと思われ、これは、主に、細菌膜の機能、すなわち両方のタイプの細菌ベシクルに共通な特徴である。
本発明者らによる予想外の発見は、この点で、インタクトな非生存細菌ベシクルに低分子化合物を充填するための、ここで記載されている方法の驚くべき性質だけではく、本発明による関連組成物及びそれらを使用するための方法の驚くべき性質も強調している。
(C)インタクトな細菌由来のベシクルへの蛍光化合物の充填
したがって、蛍光を示す化合物を封入するインタクトな非生存細菌ベシクルを含む組成物が提供される。この蛍光は、(A)内在性(自家蛍光)又は(B)外因性の、すなわち予め化学的に導入された、以下に定義されている、エネルギー移動部分による蛍光のいずれかである。
原理的に、自家蛍光化合物の下位分類(A)は、以下に定義されている通り、通常、必ずしも可視スペクトルにある必要はないが、電磁波照射のある種の波長に曝露されると、蛍光を内在的に示す、いかなる低分子化合物も包含する。その方法による態様によれば、下位分類(A)に関連する本発明は、上で定義されている大スケール方法によって、ミニ細胞又は死滅細菌細胞を含めた、インタクトな細菌由来のベシクルに、任意の自家蛍光化合物を充填することを企図している。その組成物に関する態様によれば、下位分類(A)に関する本発明は、ベシクル充填に及ぼす、本発明に記載されている蛍光作用についての言及又は暗示なしで以前に開示された、以下の化合物のうちのいずれか1つ以上又はそれらのすべてを除外して、下位分類(A)から選択される自家蛍光化合物を含有する、インタクトな細菌由来のベシクルを含む、組成物を包含する:ドキソルビシン(励起480nm、発光580nm)、カンプトテシンの半合成類似体であるイリノテカン(励起極大約360nm及び発光極大約440nm)、ビスアントレン(励起、410nm、発光、517nm)、トポテカン(励起、382nm、発光、523nm)、エピルビシン(励起、474nm、発光551nm)、ダウノルビシン(励起、488nm、発光575nm)及びミトキサントロン(励起、610及び660nm、発光684nm)。
本発明の組成物に関する態様の範疇に入る、残りの自家蛍光低分子化合物の例は、天然の環式エンジインである、ジネマイシンA、及びジネマイシンAの蛍光類似体(米国特許第5,281,710号、その内容が参照により本明細書に組み込まれている)、502nmに励起極大及び525nmに発光極大(緑色)を有するアクリジンオレンジ、及び360nmにおいて励起極大及び440nmにおいて発光極大を有する天然アルカロイドであるカンプトテシンである。同様に、例示されるものには、国際特許出願WO1998/002446に記載されているモルホリニルアントラサイクリン誘導体のクラスにおける内在的な蛍光化合物がある。こうした誘導体の中には、その構造式が以下に示されている、MMDXとしても知られるネモルビシン(3'-デアミノ-3'-[2(S)-メトキシ-4-モルホリニル]ドキソルビシン)、及びその主要代謝産物であるPNU-159682(3'-デアミノ-3"-4'-アンヒドロ-[2"(S)-メトキシ-3"(R)-ヒドロキシ-4"-モルホリニル]ドキソルビシン)、及びその内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,470,984号に記載されているこれらのこうした他の4つの誘導体:3'-デアミノ-3''-4'-アンヒドロ-[2''(S)-メトキシ-3''(R)-ヒドロキシ-4''-モルホリニル]イダルビシン、3'-デアミノ-3''-4'-アンヒドロ-[2''(S)-メトキシ-3''(R)-ヒドロキシ-4''-モルホリニル]ダウノルビシン、3'-デアミノ-3''-4'-アンヒドロ-[2''(S)-メトキシ-3''(R)-ヒドロキシ-4''-モルホリニル]-カミノマイシン及び3'-デアミノ-3''-4'-アンヒドロ-[2''(S)-エトキシ-3''(R)-ヒドロキシ-4''-モルホリニル]d-オキソルビシンがある。
前述の誘導体のいずれかの薬学的に許容される酸付加塩も、本発明によると、自家蛍光性モルホリニルアントラサイクリン誘導体のこうした群のメンバーである。
外因性蛍光化合物の下位分類(B)は、とりわけ、(i)活性な構成物又は部分、及び(ii)以下に定義されているエネルギー移動部分を含む任意の化合物を包含する。活性な構成物は、誘導体化反応によりエネルギー移動部分が付与される薬物又は薬物の活性な部分とすることができる。その結果は、コンジュゲートとすることができ、この場合、誘導体化反応の生成物は、リンカーを用いて又は用いないで、エネルギー移動部分にそのまま結合させた薬物又はその活性部を組み込む。又は、それは、構造類似体とすることができ、この場合、反応生成物は、薬物又はその活性部と構造的な類似性を示すが、1個以上の原子、官能基、又は部分構造が、薬物又は活性部において、この構造類似体中の他の原子、基又は部分構造により置き換えられている点で異なる。
その方法論による態様によれば、下位分類(B)に関連する本発明は、大スケール方法によって、ミニ細胞又は死滅細菌細胞を含めた、インタクトな細菌由来のベシクルに、外因性蛍光化合物を充填することを企図している。その組成物に関する態様によれば、下位分類(B)に関連する本発明は、構成ミニ細胞がOregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセル又はBODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチンを含有するものからなる、ミニ細胞含有組成物を除いた、下位分類(B)から選択される、外因性蛍光化合物を含有する、インタクトな細菌由来のベシクルを含む組成物を包含する。このように除外されるミニ細胞含有組成物は、こうしたベシクルへの化合物の膜貫通移動に及ぼす、本発明に記載されている蛍光作用が言及されていないか又はそれが暗示されないで、MacDiarmidら(2007年)による上の文献で開示された。
上記の構造類似体の例には、Tietzeら、Chemistry & Diversity 9巻:2559〜70頁(2012年)により記載されている、デュオカルマイシンの蛍光性seco類似体である細胞毒性抗生物質がある。ある種のクマリンカルボン酸が関与する反応スキームによって、この薬物のトリメトキシインドール部分及び(ジメチルアミノ)エトキシインドール部分は、置き換えられた部分のようにDNAと相互作用する、蛍光分子によって置き換えられる。同様に、この記載内の構造類似体の例示には、Mollinedoら、Cell Death & Dis. 2巻:e158頁(2011年)に記載されている、薬物のアポトーシス促進活性を保存する、エデルホシン(1-O-オクタデシル-2-O-メチル-rac-グリセロ-3-ホスホコリン)という薬物の蛍光類似体がある。Gajateら、Oncogene 31巻:2627〜39頁(2012年)も参照されたい。
蛍光コンジュゲートが使用される実施形態では、リンカーは、化合物がベシクルに充填されると、若しくはある期間の時間が経過すると、又はそれ以降(以下を参照されたい)の時間の範囲内でリンカーが分解し、外因性蛍光コンジュゲートの活性な構成物を放出するような半減期を有することができる。或いは、リンカー基は、標的細胞内で不安定となり得る。すなわち、リンカーは、取り込まれた後、活性な構成物を細胞に放出する際、熱、pH依存性の化学的(例えば、加水分解)又は酵素的開裂を受けることができる。こうした不安定なリンカーが、例えば、抗体-薬物コンジュゲートの背景で開発されており、本発明における使用に容易に適合される。Ducry及びStump、Bioconjugate Chem. 21巻:5〜13頁(2010年)及び以下のさらなる考察を参照されたい。
上記の「エネルギー移動部分」は、適切な波長の電磁波照射により励起されると、近くのエネルギー受容体にエネルギーを移動させる基である。この「適切」な波長は、エネルギー移動部分において電子を励起し、その結果、これらの電子が、あるエネルギーレベルに入り、こうして緩和されると、これらの電子は、エネルギー移動部分から放出されるか、又はエネルギー移動部分から電磁波放射の放出を引き起こすかのどちらかとなる、電磁波照射の任意の波長である。
例示的なエネルギー移動部分は、共役パイ電子系を有する基である。共役パイ系には、例えば、複数の二重結合の配位、複数芳香族基の配位、芳香族基を有する二重結合の配位、複素環式芳香族基の配位などが含まれる。例示的なエネルギー移動部分は、アクリジニル基、ザンテニル基、アントラセニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントレニル基、ピリジニル基、キノリニル基及びポルホリニル基である。
エネルギーの移動先のエネルギー受容体は、本発明を踏まえると、非生存細菌ベシクルの1つ以上の膜貫通構造に関係していると考えられる。この観点によれば、エネルギー移動がエネルギー移動部分から行われると、膜貫通構造体は、電子によるか又は発光によるかにかかわらず、その移動したエネルギーを受け取る。
様々なタイプの化合物が自家蛍光性又は外因性蛍光性である場合、本発明による、インタクトな非生存性細菌ベシクルに充填するのに好適な上記化合物が以下に論じられている。これらには、以下に限定されないが、生物活性な化合物のクラス、及び化学治療用化合物、特に低分子化学治療用化合物のサブクラスが含まれる。
生物活性な化合物の多くは蛍光性ではない。本開示は、蛍光性である、所与の化合物の修飾(誘導体化)形態を提供し、インタクトな非生存細菌ベシクルにこのような化合物を充填し、次にそのようなベシクルを介して、標的哺乳動物細胞にそれらを導入するための手法に関する。大部分の分子は、サイズが約900ダルトン未満であるが、蛍光分子の結合、又はミニ細胞に薬物を充填するのを向上するための薬物の構造の改変により、その分子量が、最大約1500ダルトンまで増加してもよい。
一態様では、本発明は、生物活性ではあるが非蛍光である化合物を、蛍光部分とコンジュゲートして、式:
D-L-F、
である「修飾化合物」又はそれらのその塩を形成することを企図しており、
Dは、化合物又はその活性な構成物であり、
Lはリンカーであり、
Fは蛍光部分である。
こうした蛍光修飾化合物は、本発明により、修飾化合物がベシクルに侵入することが可能な条件下で、インタクトな非生存細菌ベシクルとインキュベートすることができる。
リンカーLは、ある時間の期間後、又はある種の条件下で、化合物又は活性な構成物Dが、蛍光部分Fから放出されるようなものとすることができる。例えば、上記の通り、リンカーは、修飾化合物が充填された後、いつか分解して、ベシクル内にDを放出するよう、ベシクル中で半減期を有することができる。或いは、リンカーLは、ベシクルの内部で安定となり得るが、哺乳動物細胞のエンドソーム又はリソソーム中では不安定となり得る。すなわち、リンカーは、標的哺乳動物細胞に取り込まれて、エンドソーム又はリソソームのコンパートメント内部の環境に曝露されると、pH又は酵素の作用などの環境要因の影響下で分解し、エンドソーム又はリソソーム中に活性な構成物を放出する。こうしたリンカーの例は、以下の項目Gにおいて提示されている。
関連する態様によれば、修飾化合物は、非修飾化合物の生物活性を有しておらず、ベシクル内部では「不活性な」状態でのままでいる。エンドソーム又はリソソーム中でのリンカーの分解により、活性形態又は化学種、すなわち活性な構成物Dが放出される。
より一般には、蛍光部分が、生物活性な化合物の活性を部分的又は完全に阻害する位置において、生物活性な化合物に連結され得る。生物活性な化合物は、通常、生物活性にとって重要な1つ以上の外部反応性基を有する。これらの反応性基の化学修飾又は誘導体化は、その化合物の生物活性を低下させるか、又は消失させてしまうことさえある。こうしたことは、以下の実施例において論じられている、対応する非修飾化合物に関連する生物活性を有していない、ある種の修飾化合物によって例示される。
本技術により、以下の項目(E)で定義されている、低分子化合物の分子量に関する連続系列においてより高い分子量の化合物でさえも、インタクトな細菌由来のベシクルに効果的に充填することができる。すなわち、修飾化合物は、少なくとも約1000ダルトン、又は代わりに、少なくとも約1100、1200、1300、1400若しくは1500ダルトンの分子量を有することができる。
上記の方法及び組成物のいずれの文脈において、化合物又は修飾化合物は、疎水性とすることができる一方、別の態様では、親水性とすることができる。さらに別の態様では、化合物又は修飾化合物は水溶性である。
同様の方向性のもとで、本発明は、一態様では、ミニ細胞及び/又は死滅細菌細胞の形態にあるインタクトな細菌由来のベシクル、及び式D-L-Fの化合物又はその塩を含む組成物であって、Dが薬物などの非蛍光低分子化合物の残基であり、Lがリンカーであり、Fが蛍光部分である、組成物を提供する。本組成物は、非修飾低分子化合物の例よりも、化合物をベシクルに充填するのが促進されるという事実のために、特に有用である。
一態様によれば、この記載の細菌ベシクルは、インタクトな細菌由来のミニ細胞である。本発明の充填方法が高い効率であることを考慮すると、こうしたベシクル(すなわち、ミニ細胞)はそれぞれ、化合物の少なくとも約100,000個のコピーを封入することができる。より詳細には、ミニ細胞はそれぞれ、化合物の、少なくとも約200,000個のコピーを、又は代わりに、少なくとも約300,000、約400,000、約500,000個、約600,000個、約700,000個、約800,000個、約900,000個若しくは約1,000,000個のコピーを封入することができる。
一態様では、ミニ細胞は、109個のミニ細胞あたり、少なくとも約200ng、又は少なくとも300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng若しくは1,000ngの所与の蛍光化合物又は蛍光化合物の組合せ物を封入する。対照的に、109個のミニ細胞あたりに充填される、比較可能な非蛍光化合物の量は、通常、1桁小さく、すなわち数十ナノグラム程度である。
本開示の別の態様によれば、インタクトな非生存ベシクルは死滅細菌細胞である。上記の記載を踏まえると、所与の死滅細菌細胞は、ミニ細胞のそれよりも約3〜4倍、大きな収容力を有する。したがって、死滅細菌細胞は、少なくとも約400,000個のコピーの修飾化合物を封入することができる。より詳細には、死滅細菌細胞はそれぞれ、化合物の、少なくとも約800,000個のコピー、又は代わりに、少なくとも約1,200,000個、約1,600,000個、約2,000,000個、約2,400,000個、約2,800,000個、約3,200,000個、約3,600,000個若しくは約4,000,000個のコピーを封入することができる。
こうした死滅細菌細胞は、109個の死滅細胞あたり、少なくとも約800ng、又は少なくとも1,200ng、1,600ng、2,000ng、2,400ng、2,800ng、3,200ng、3,600ng若しくは4,000ngの化合物を封入することができる。
(D)インタクトな細菌由来のベシクル
「インタクトな細菌由来のベシクル」及び「インタクトな非生存細菌ベシクル」という言い回しは、複製することができず、かつ哺乳動物細胞への侵入を能動的に開始することができない死滅細菌細胞及び細菌ミニ細胞を含めた、細菌細胞のベシクル誘導体を同義的に指す。この文脈では、「インタクトな」は、細胞外被すなわち原形質膜及び周囲の細胞壁における規則正しい連続性及び構造的完全性を暗示したものであり、この細胞壁は、多層(グラム陽性細菌細胞に由来するベシクルの場合)、又は単層の細胞壁周辺の二層の外側膜(グラム陰性細菌細胞に由来するベシクルの場合)を含む。BERGEY'S MANUAL OF SYSTEMATIC BIOLOGY、第2版(Springer、2012年)を参照されたい。
したがって、「インタクトな死滅細菌細胞」という言い回しは、インタクトな細胞外被を有しており、かつ細菌種に対して内因性の遺伝性物質(核酸)を含有する、細菌、藍色細菌、真性細菌又は古細菌のインタクトな非生存原核細胞を意味する。同文献。医薬品用途の場合、死滅細菌細胞の組成物は、免疫原性構成成分及び他の毒性混入物質からできる限り完全に単離される。インタクトな死滅細菌細胞を精製するための方法は、米国特許第8,591,862号に記載されており、その関連する内容は、参照により本明細書に組み込まれている。簡潔に言うと、生存細菌細胞は、抗生物質、次いで、細胞破片及び遊離エンドトキシンを除去することにより死滅させることができる。
「ミニ細胞」は、染色体を欠き(「染色体不含」)、かつ、二分裂の際にDNA分離を伴う細胞分裂の協調が乱されることによって生じる細菌細胞の誘導体を指す。ミニ細胞は、ある種の状況において自発的に生成及び放出されるが、特定の遺伝子再配列又はエピソーム遺伝子発現によるものではない、いわゆる「膜ブレブ」(約0.2μm以下の大きさ)などの他の小型ベシクルとは区別される。同様に、インタクトなミニ細胞は、特定の遺伝子再配列又はエピソーム遺伝子発現によって生じるものではない、細菌ゴーストとは区別される。
本開示で使用される細菌由来のミニ細胞は、上で論じた通り、完全にインタクトであり、したがって、破壊又は分解され、除去されてもいる外側膜又は画定膜を特徴とする細菌細胞誘導体の他の染色体不含形態とは区別される。米国特許第7,183,105号のカラム111の54行目以降を参照されたい。本開示のミニ細胞を特徴付けるインタクトな膜は、ペイロードが放出されて腫瘍細胞内に事後取り込みされるまで、ミニ細胞内での治療用ペイロードの保持を可能にする。
本開示により使用されるミニ細胞は、大腸菌(E.coli)及びネズミチフス菌(S.typhymurium)などの細菌細胞から調製することができる。原核生物の染色体の複製は、正常な二分裂にリンクしており、この二分裂は、細胞中央の隔壁の形成に関与している。大腸菌では、例えば、minCDなどのmin遺伝子の変異により、細胞分裂の間に、細胞極において隔壁形成の阻害が除かれ、正常な娘細胞及び染色体のないミニ細胞が産生され得る。de Boerら、J. Bacteriol. 174巻:63〜70頁(1992年)、Raskin及びde Boer、J. Bacteriol. 181巻:6419〜24頁(1999年)、Hu及びLutkenhaus、Mol. Microbiol. 34巻:82〜90頁(1999年)及びHarry、Mol. Microbiol. 40巻:795〜803頁(2001年)を参照されたい。
minオペロン変異に加えて、染色体のないミニ細胞が、例えば、枯草菌(B.subtilis)中のdivIVB1において、隔膜形成に影響を及ぼすある範囲の他の遺伝的再配列又は変異後に発生する。Reeve及びCornett、J. Virol. 15巻:1308〜16頁(1975年)を参照されたい。ミニ細胞はまた、細胞分裂/染色体分離に関与するタンパク質の遺伝子発現レベルの撹乱後にも形成され得る。例えば、minEの過剰発現により、ミニ細胞の極性分裂及び生成に至る。同様に、染色体のないミニ細胞は、染色体の分離における欠失、例えば、枯草菌におけるsmc変異(Brittonら、Genes Dev. 12巻:1254〜59頁(1998年))、枯草菌におけるspoOJ欠失(Iretonら、J. Bacteriol. 176巻:5320〜29頁(1994年))、大腸菌におけるmukB変異(Hiragaら、J. Bacteriol. 171巻:1496〜1505頁(1989年))、及び大腸菌におけるparC変異(Stewart及びD'Ari、J. Bacteriol. 174巻:4513〜51頁(1992年))から生じ得る。さらに、CafAは、細胞分裂の速度を向上し、かつ/又は複製後の染色体分配を阻害して(Okada et al., J. Bacteriol. 176巻: 917〜22頁(1994年))、連鎖細胞及び染色体のないミニ細胞の形成に至ることができる。
min系は、大部分の細菌種に存在している(Barak、Frontiers in Microbiology 4巻:Art. 378頁(2013年)を参照されたい)一方、カウロバクター・クレスセンツゥス(Caulobacter crescentus)などの他の細菌では、分裂隔壁の位置を制御する別の機構が展開し、この機構がうまく働き、不均等分裂によりミニ細胞が生じ得る。したがって、ミニ細胞は、グラム陽性源又はグラム陰性源であろうがなかろうが、任意の細菌細胞から、本開示のために調製することができる。さらに、本開示において使用されるミニ細胞は、上記の通り、インタクトな細胞壁を有するべきであり(すなわち、「インタクトなミニ細胞」である)、特定の遺伝子再配列又はエピソーム遺伝子発現に起因しない、膜ブレブなどの他の小型ベシクルとは区別され、分離されるべきである。
所与の実施形態では、ミニ細胞用の親(元)細菌は、言及されている通り、グラム陽性とすることができるか、又はそれらはグラム陰性とすることができる。したがって、親細菌は、例えば、テッラバクテリア(Terrabacteria)(BV1)の分類群のうちのいずれか1つ以上から選択することができ、このテッラバクテリアには、とりわけ、グラム陽性の門(放線菌門(Actinobacteria)及びフィルミクテス門(Firmicutes))、プロテオバクテリア門(BV2)(そのすべてのメンバーの門は、グラム陰性である)、及びBV4の分類(これには、スピロヘータ綱(Spirochaetes)、スフィンゴバクテリア門(Sphingobacteria)及びプランクトバクテリア門(Planctobacteria)、並びに他のアシドバクテリウム門(Acidobacteria)などのグラム陰性菌が含まれる)が含まれる。
したがって、一態様によれば、死滅細菌細胞又はミニ細胞が調製される、細菌は、バシラス綱(Bacilli)、クロストリジウム綱(Clostridia)及びテネリクテス門(Tenericutes)/モリテクス綱(Mollicutes)などのフィルミクテス門(Firmicutes)(BV3)の分類群、及び放線菌目(Actinomycetales)及びビフィドバクテリウム目(Bifidobacteriales)などの放線菌門(BV5)の1つ以上から選択される。さらなる態様では、親細菌は、エオバクテリア下界(Eobacteria)(クロロフレクサス門(Chloroflexi)、デイノコッカス・テルムス門(Deinococcus-Thermus))、藍色細菌門(Cyanobacteria)、サーモデスルフォバクテリア門(Thermodesulfobacteria)、サーモフィルス門(thermophiles)(アクウィフェクス門(Aquificae)、テルモトガ門(Thermotogae))、アルファ、ベータ、ガンマ(腸内細菌科(Enterobacteriaceae))、デルタ又はイプシロンプロテオバクテリア門(Proteobacteria)、スピロヘータ綱、フィブロバクター門(Fibrobacteres)、クロロビウム門(Chlorobi)/バクテロイデス門(Bacteroidetes)、クラミジア門(Chlamydiae)/ベルコミクロビウム門(Verrucomicrobia)、プランクトミケス門(Planctomycetes)、アシドバクテリウム門、クリシオゲネス門(Chrysiogenetes)、デフェリバクター門(Deferribacteres)、フソバクテリウム門(Fusobacteria)、ゲンマティモナス門(Gemmatimonadetes)、ニトロスピラ門(Nitrospirae)、シネルギステス門(Synergistetes)、ディクティオグロムス門(Dictyoglomi)、レンティスファエラ門(Lentisphaerae)、バシラス目(Bacillales)、バシラス科(Bacillaceae)、リステリア科(Listeriaceae)、ブドウ球菌科(Staphylococcaceae)、ラクトバシラス目(Lactobacillales)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、ロイコノストック科(Leuconostocaceae)、ストレプトコッカス科(Streptococcaceae)、クロストリジア目(Clostridiales)、ハロアナエロビウム目(Halanaerobiales)、テルモアナエロバクター目(Thermoanaerobacterales)、マイコプラズマ目(Mycoplasmatales)、エントモプラズマ目(Entomoplasmatales)、アナエロプラズマ目(Anaeroplasmatales)、アコレプラズマ目(Acholeplasmatales)、ハロプラズマ目(Haloplasmatales)、アクチノミセス亜科(Actinomycineae)、アクチノミセス科(Actinomycetaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacterineae)、ノカルジア科(Nocardiaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)、フラキア亜科(Frankineae)、フラキア科(Frankiaceae)、ミクロコッカス亜科(Micrococcineae)、ブレビバクテリウム科(Brevibacteriaceae)及びビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)のいずれか1つ以上から選択される。
医薬品用途の場合、本開示の組成物は、免疫原性構成成分及び他の毒性混入物質からできる限り完全に単離される死滅細菌細胞又はミニ細胞を含むべきである。遊離エンドトキシン及び親細菌細胞を除去するために細菌由来ミニ細胞を精製するための方法は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれている、WO2004/113507に記載されている。手短に言えば、精製過程により、(a)一般にサイズが0.2μmより小さい膜ブレブなどの、より小型ベシクル、(b)細胞膜から放出された遊離エンドトキシン、及び(c)生存又は死滅にかかわらず、親細菌及びそれらの破片(これらも、遊離エンドトキシンの供給源である)の除去も実現される。こうした除去は、とりわけ、より小さなベシクル及び細胞破片を除去するための0.2μmのフィルター、親細胞を誘導して微細線維を形成させた後の親細胞、生存細菌細胞を死滅させる抗生物質及び遊離エンドトキシンに対する抗体を除去するための0.45μmのフィルターを用いて実施することができる。
精製手順の基礎にあるのは、細菌の供給源の違いにかかわらず、すべてのインタクトなミニ細胞が約400nmのサイズである、すなわち、膜ブレブ及び他のより小型のベシクルよりも大きく、かつさらには親細菌よりも小さいという本発明者による発見である。ミニ細胞のサイズの決定は、電子顕微鏡などの固体状態を用いることにより、又は液体に基づく技法、例えば動的光散乱法によって行うことができる。こうした各技法によって得られたサイズの値には、ある誤差範囲があり得、これらの値は技法間でいくらかの相違があり得る。したがって、乾燥状態にあるミニ細胞のサイズは、電子顕微鏡によって約400nm±50nmと測定され得る。一方、動的光散乱法は、同じミニ細胞をサイズが約500nm±50nmと測定し得る。同様に、薬物が封入されたリガンド標的化ミニ細胞は、やはり動的光散乱法を用いて、約600nm±50nmと測定され得る。
このサイズ値のばらつきは、上記の通り、例えば免疫原性構成成分及び他の毒性混入物質からのミニ細胞の単離を目的に、実際に容易に受け入れられる。すなわち、インタクトな細菌由来のミニ細胞は、強固な膜によって取り囲まれている細胞質を特徴とし、この膜はミニ細胞に強固な球形構造をもたらす。この構造は、透過型電子顕微鏡写真で明らかであり、この場合、ミニ細胞の直径は、強固な膜の外側の境界値間で、ミニ細胞を横断するよう測定される。この測定により、400nm±50nmという上述のサイズ値が得られる。
グラム陰性菌由来のミニ細胞の別の構造的要素は、脂質Aのアンカーを介して外側膜に埋め込まれているリポポリサッカライド(LPS)のO-ポリサッカライド構成成分である。この構成成分は、鎖あたり4〜5つの糖の繰り返し単位が70〜100にもなる、炭水化物残基の繰り返し単位の鎖である。これらの鎖はインビボとしての液体環境では剛性ではないので、それらの鎖は珊瑚海の環境における海藻の一般的な外観を呈する波打った柔軟な構造を採ることができる。すなわち、これらの鎖は、ミニ細胞膜にアンカーされたままで、液体によって動く。
O-ポリサッカライド構成成分によって影響を受けるので、動的光散乱法は上記の通り、ミニ細胞サイズに関して約500nm〜約600nmの値を示し得る。とはいえ、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌に由来するミニ細胞は同様に、0.45μmのフィルターを容易に通り抜け、これにより400nm±50nmの有効ミニ細胞サイズが具現化される。上記のサイズのばらつきは、本発明により包含されており、特に、「約400nmのサイズ」などの言い回しで修飾語句「約」により表される。
毒性汚染物質に関しては、本開示の組成物は、約350EU未満の遊離エンドトキシンを含むことができる。この点に関しての例示は、遊離エンドトキシンのレベルがそれぞれ、約250EU、約200EU、約150EU、約100EU、約90EU、約80EU、約70EU、約60EU、約50EU、約40EU、約30EU、約20EU、約15EU、約10EU、約9EU、約8EU、約7EU、約6EU、約5EU、約4EU、約3EU、約2EU、約1EU、約0.9EU、約0.8EU、約0.7EU、約0.6EU、約0.5EU、約0.4EU、約0.3EU、約0.2EU、約0.1EU、約0.05EU及び約0.01EUである。
本開示の組成物はまた、少なくとも約108ベシクル、例えば、少なくとも約5×108ベシクルを含有することができる。或いは、本組成物は、109又は1010ベシクルの程度、例えば、5×109、1×1010又は5×1010ベシクルを含有することができる。さらには、ミニ細胞のこうした任意の数の中で、本開示の組成物は、約10の汚染性生存/親細菌細胞よりも少なく、例えば、約9、8、7、6、5、4、3、2又は1つの生存/親細菌細胞を含有することができる。
(E)低分子化合物
明記されている通り、本開示は、蛍光性である低分子化合物をインタクトな非生存細菌ベシクルに充填する方法を提供する。低分子化合物は、内在的に蛍光性(自家蛍光性)とすることができるか、又は外因性蛍光性、すなわち、非蛍光化合物に蛍光部分を付与することにより蛍光性とすることができ、そうして、修飾化合物はインタクトな非生存細菌ベシクルに充填される。
この開示によれば、低分子化合物は、「低分子薬」とすることができ、これは、本発明の組成物の投与時点において生物活性であること、又は投与後、インビボで生物的に活性な形態(「活性化されている」である)に変換されることを意味する。上記の定義を踏まえると、「生物活性な」とは、低分子薬が、細胞中のタンパク質、核酸又は他の分子と反応して、細胞中で機能変化をもたらすことができることを指す。一態様では、この変化は、治療上望ましいものである。生物活性は、細胞毒性とすることができ、例えば、これにより、低分子化合物は、化学治療剤となる。すなわち、低分子化合物は、低分子「化学治療薬」である。したがって、「化学治療薬」「化学治療剤」及び「化学療法」は、新生物の細胞を死滅又は撹乱させる能力を有する低分子薬を暗示するために、互換的に使用される。
「低分子薬」の下位区分は、(i)生体過程に対しての作用、及び(ii)タンパク質又はポリマー状マクロ分子に比べて比較的低い分子量を有することを特徴とする化合物を包含する。低分子薬は、通常、約900ダルトン以下であり、下限は、多形膠芽細胞腫及び他のタイプの脳のがんを処置するために使用されている約194ダルトンのTemodar(登録商標)(テモゾロミド)により例示される通り、約150ダルトンとなる。しかし、大部分の分子は、サイズが約900ダルトン未満であるが、蛍光分子の結合、又はミニ細胞への薬物の充填を向上させるための薬物の構造の変更により、その分子量を最大約1500ダルトンまで増加することがある。この文脈において、「約」は、適格な分子量値が、数ダルトン又は数十ダルトン程度の測定精度の変動及び実験誤差を受けることを示す。したがって、低分子薬(非修飾、修飾又は蛍光分子に結合されている)は、約1500ダルトン以下、約1400ダルトン以下、約1300ダルトン以下、約1200ダルトン以下、約1100ダルトン以下、約1000ダルトン以下、約900ダルトン以下、約800ダルトン以下、約700ダルトン以下、約600ダルトン以下、約500ダルトン以下、又は約400ダルトン以下、例えば、約150〜約400ダルトンの範囲の分子量を有することができる。より具体的には、低分子薬(非修飾、修飾又は蛍光分子に結合されている)は、約400ダルトン以上、約450ダルトン以上、約500ダルトン以上、約550ダルトン以上、約600ダルトン以上、約650ダルトン以上、約700ダルトン以上、約750ダルトン以上、約800ダルトン以上、約850ダルトン以上、約900ダルトン以上、約950ダルトン以上、約1000ダルトン以上、約1050ダルトン以上、約1100ダルトン以上、約1150ダルトン以上、約1200ダルトン以上、約1250ダルトン以上、約1300ダルトン以上、約1350ダルトン以上、約1400ダルトン以上、約1450ダルトン以上、又は約1500ダルトン以上の分子量を有することができる。別の実施形態では、ミニ細胞中に封入される低分子薬(非修飾、修飾又は蛍光分子に結合されている)は、約400〜約1300ダルトンの間、約400〜約1100ダルトンの間、約400〜約1000ダルトンの間、約450〜約900ダルトンの間、約450〜約850ダルトンの間、約450〜約800ダルトンの間、約500〜約800ダルトンの間又は約550〜約750ダルトンの間の分子量を有する。
本発明の方法及び組成物に関する態様に対してそれぞれ上で説明されている適格性に従うと、好適な低分子の化学療法薬には、以下に限定されないが、とりわけ、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、エチレンイミン、スルホン酸アルカン、テトラジン、白金化合物、ピリミジン類似体、プリン類似体、代謝拮抗物質、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、ビンカアルカロイド及びトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。したがって、本発明において使用される低分子の化学療法薬は、とりわけ、以下のいずれかの中から選択され得る:ダイネマイシンA、ウニカラマイシン、カリケアマイシンγ1及びカリケアマイシンθ1などのエンジイン、FR901464の合成類似体であるメアヤマイシン、例えば、Tanpureら、Bioorg. Med. Chem. 21巻:8019〜32頁(2013年)により記載されているベンゾスベレン誘導体、ドラスタチンの合成類似体であるオーリスタチンE、モノ-メチルオーリスタチンE(MMAE)及びオーリスタチンFなどのオーリスタチン、デュオカルマイシンSA及びCC-1065などのデュオカルマイシン、DM1及びDM4などのマイタンシン及びその誘導体(マイタンシノイド)、イリノテカン(Camptosar(登録商標))及び他のトポイソメラーゼ阻害剤(トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン及びテニポシドなど)、並びにその合成がOkanoら、J. Am. Chem. Soc. 128巻:7136〜37頁(2006年)により詳説されているヤタケマイシン。
より詳細に、本段落において詳説されている特定の低分子化学治療薬のいずれか1つ以上又はすべてが、上の項目(C)において説明されている適格性に従って使用するのに好適なものの例示である:アクチノマイシン-D、アルケラン、ara-C、アナストロゾール、BiCNU、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、カルボプラチン、カルボプラチナム、カルムスチン、CCNU、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、CPT-11、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、サイトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、DTIC、エチレンイミン、エトポシド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォテムスチン、ゲムシタビン、ヘキサメチルアミン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、STI-571、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テトラジン、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオスルファン、トリメトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びVP-16。本発明によれば、これらの低分子化学治療薬のいずれか1つ以上又はすべてが、フルオロフォアにより誘導体化され得るか、又は場合に応じて、内在性蛍光性を利用することができる。
上記の項目(C)において詳述されている通り、本発明内の組成物は、それぞれ、内在的な蛍光性薬物(下位分類(A))及び外因性蛍光性活性剤(下位分類(B))に関連して、除外されるものがある。下位分類(A)に関して、排除されるものは、ドキソルビシン、イリノテカン、ビスアントレン、エピルビシン、トポテカン、エピルビシン、ダウノルビシン及びミトキサントロンからなる。下位分類(B)に関して、排除されるものは、Oregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセル及びBODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチンからなる。
一部の実施形態では、式D-L-FにおけるDは、式D-I又はD-II
又はその立体異性体若しくは該化合物若しくは立体異性体の薬学的に許容される塩であり、
式中、
R1は、H、-OH、C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、置換C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(置換C1〜4アルキル)、-O-CH2-O-P(O)(OH)2、-O-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-O-CH2-S-(C1〜4アルキル)、又はR3と一緒になって形成した-CH2-、若しくはR4と一緒になった二重結合、ORe又はReであり、
R2は、H、-OH、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、置換C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-O-C(O)-(置換C1〜4アルキル)、-O-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-S-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-O-C(O)-Re又は-Reであり、
R3は、H、C1〜4アルキル、又はR1と一緒になって形成した-CH2-であり、
R4は、H又はハロゲン、又はR1と一緒になった二重結合であり、
R5は、H、C1〜4アシル、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシメチル、(C1〜4アルキル)チオメチル、-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-(置換C1〜4アルキル)、-C(O)-O(C1〜4アルキル)、-C(O)-O(置換C1〜4アルキル)、-C(O)-NH(C1〜4アルキル)、-C(O)-NH(置換C1〜4アルキル)又はReであり、
R6は、フェニル又は置換フェニルであり、
R7は、H、-OH、-CO-(C1〜4アルキル)、-CO-(置換C1〜4アルキル)、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、(C1〜4アルコキシ)メチル若しくは(C1〜4アルキル)チオメチル、又はR8 及びR7とR8が結合している炭素原子と一緒になった5員若しくは6員の非芳香族複素環式環であり、
R8は、H、-CH3、又はR7 及びR7とR8が結合している炭素原子と一緒になった5員若しくは6員の非芳香族複素環式環であり、
R9は、H、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、-CO-(C1〜4アルキル)、-CO-(置換C1〜4アルキル)又はReであり、
R10は、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、アリール又は置換アリールであり、
R11は、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、フェニル、置換フェニル、-SR12、-NHR12又は-OR12であり、
R12は、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、フェニル又は置換フェニルであるが、
ただし、R1、R2、R5及びR9のうちの少なくとも1つはReであり、Reは、Lへの結合点であることを条件とする。
一部の実施形態では、
R1は、H、OH、-CH2SCH3、-CH2-O-P(O)(OH)2、ORe又はReであり、
R2は、H、-OH、-OCO-CH3、-CO-CH3又は-(CH2)2-N-モルホリノであり、
R3は、メチルであるか、又はR3とR4が一緒になって、-CH2-などのアルキレンとなり、
R4は、H又は-Fであり、
R5は、-CO-CH3であり、
R6はフェニルであり、
R7は、H若しくはOHであり、
R8は、Hであるか、
又はR7とR8は一緒になって、-O-CO-O-であり、
R9は、H、-C(O)-CHBr-(CH2)13-CH3、-C(O)-(CH2)2-NH2、-C(O)-(CH2)14-CH3、-C(O)-CH2-CH(OH)-COOH、-C(O)-CH2-O-C(O)-CH2CH(NH2)-CONH2、-C(O)-CH2-O-CH2CH2OCH3、-C(O)-O-C(O)-CH2CH3又は-Reであり、
R10は、フェニル、(CH3)2CHCH2-、-2-フラニル、シクロプロピル又はパラ-トルイルであり、
R11は、フェニル、tert-ブトキシ、-S-CH2-CH-(CH3)2、-S-CH(CH3)3、-S-(CH2)3CH3、-O-CH(CH3)3、-NH-CH(CH3)3、-CH=C(CH3)2又はパラ-クロロフェニルであるが、
ただし、R1及びR9のうちの少なくとも1つはReであることを条件とする。
一部の実施形態では、式D-L-FにおけるDは、式
又はその立体異性体若しくは該化合物若しくは立体異性体の薬学的に許容される塩
であり、
式中、
は、Lとの結合点を表す。
一部の実施形態では、式D-L-FにおけるDは、
から選択される化合物、又はその立体異性体若しくはその化合物若しくは立体異性体の薬学的に許容される塩の残基である。
一部の実施形態では、式D-L-FにおけるDは、パクリタキセルの残基である。
一部の実施形態では、式D-L-FにおけるDは、ドセタキセルの残基である。
一部の実施形態では、式D-L-FにおけるDは、ビンブラスチン又はその類似体の残基である。
(F)蛍光部分
蛍光部分は、当分野において周知である。一部の態様では、蛍光部分は、760nmの励起の極大波長、及び/又は770nmの発光の極大波長を有する。一部の態様では、蛍光部分は、600nmの励起の極大波長、及び/又は600nmの発光の極大波長を有する。一部の態様では、蛍光部分は、500nmの励起の極大波長、及び/又は550nmの発光の極大波長を有する。一部の実施形態では、蛍光部分は、380〜450nm、450〜495nm、495〜570nm、570〜590nm、590〜620nm、620〜650nm、650〜700nm又は700〜760nmから選択される励起波長を有する。一部の実施形態では、蛍光部分は、380〜450nm、450〜495nm、495〜570nm、570〜590nm、590〜620nm、620〜650nm、650〜700nm又は700〜770nmから選択される発光波長を有する。
一部の態様では、蛍光部分は、約100ダルトン〜約1000ダルトンの分子量若しくはこれらの2つの値の間の任意の量、又は約100ダルトン〜約650ダルトン若しくはこれらの2つの値の間の任意の量を有する。他の実施形態では、蛍光部分は、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900ダルトン又はこれらの値の間の任意の量の分子量を有する。さらに他の実施形態では、蛍光部分は、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650ダルトン又はこれらの値の間の任意の量の分子量を有する。
一態様では、蛍光部分(F)は、フルオレセイン、ローダミン、Oregon Green、エオシン及びテキサスレッドなどのキサンテン誘導体、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン及びメロシアニンなどのシアニン誘導体、ダンシル及びプロダン誘導体などのナフタレン誘導体、クマリン誘導体、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾール及びベンゾオキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、アントラキノン、例えば、DRAQ5、DRAQ7及びCyTRAKオレンジなどのアントラセン誘導体、カスケードブルーなどのピレン誘導体、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット及びオキサジン170などのオキサジン誘導体、プロフラビン、アクリジンオレンジ及びアクリジンイエローなどのアクリジン誘導体、アウラミン、クリスタルバイオレット及びマラカイトグリーンなどのアリールメチン誘導体、及びポルフィン、フタロシアニン及びビリルビンなどのテトラピロール誘導体から選択される化合物の残基である。
一態様では、蛍光部分(F)は、
であり、
式中、
Xは、O又はNR20であり、
R20は、H又はC1〜4アルキルであり、
R21は、H、C1〜4アルキル、ハロ、-OH、-COOH、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、C1〜4アルコキシ、ハロ、-NO2、-SO2Cl、-SO3 -又はRfであり、
R22は、H、ハロ、-OH、-COOH、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、置換C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-O-C(O)-(置換C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(置換C1〜4アルキル)、-O-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-S-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-NO2、-SO2Cl、-SO3 -又はRfであり、
R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29はそれぞれ、独立して、H、ハロ、-OH、-NO2、-CH3若しくはRfであるか、
又はR23とR24は一緒に結合して、5、6若しくは7員環を形成し、かつ/又はR24とR25は一緒に結合して、5、6若しくは7員環を形成し、かつ/又はR27とXは一緒に結合して、5、6若しくは7員環を形成し、かつ/又はR28とXは一緒に結合して、5、6若しくは7員環を形成するが、
ただし、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29のうちの少なくとも1つ及び2つ以下は、Rfであり、RfはLへの結合点であることを条件とする。
一態様では、蛍光部分(F)は、
であり、
式中、R21は、Lへの結合点である。
一態様では、蛍光部分(F)は、
から選択される化合物の残基であり、
式中、R30はそれぞれ、独立して、水素、C1〜4アルキル又は置換C1〜4アルキルであり、A1及びA2は、独立して、ヘテロアリールを含有する場合により置換されている窒素であり、nは、1〜10から選択される整数である。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、ピロール、イミダゾール、チアゾール、ピリジン、キノリン、インドール、ベンゾオキサゾール又はベンゾチアゾールである。
一態様では、蛍光部分(F)は、
であり、
式中、R40の一方はR30であり、もう一方はRf、L40-Rf、L40-ORf、L40-NHRfであり、L40は、(CH2)mであり、1つ又は2つのCH2基は、O、S、SO、SO2、C(O)O、OC(O)、C(O)NH、NHC(O)、NH、又は場合により置換されているフェニルにより場合により置き換えられており、Rfは、Lへの結合点である。
一態様では、蛍光部分(F)は、
であり、
式中、
R31及びR32は、独立して、H、-OH、C1〜4アルキル、C1〜4ハロアルキル、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、C1〜4アルコキシ、ハロ又はRfであり、
R34及びR35は、独立して、H、ハロ、-OH、-COOH、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、-O-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-S-CH2-O-(C1〜4アルキル)又はRfであり、
R33及びR36はそれぞれ独立して、H、ハロ、-OH、-CH3又はRfであり、
R37、R38及びR39はそれぞれ独立して、ハロ、-OH、-CH3又はRfであり、
各m、n及びpは独立して、0、1、2、3又は4であるが、
ただし、R31、R32、R34、R34、R35、R36、R37、R38及びR39のうちの少なくとも1つ及び2つ以下は、Rfであり、RfはLへの結合点であることを条件とする。
一態様では、蛍光部分(F)は、
であり、
式中、R32は、Lへの結合点である。
(G)リンカー
本開示のリンカー(L)は、低分子化合物に蛍光部分又はフルオロフォアを結合する。特定の態様では、リンカーは結合であり、すなわち蛍光部分は、低分子化合物に直接、連結されている。
一部の実施形態では、蛍光部分の結合は、薬物(D)の活性を著しく低下させることはなく、これにより、修飾化合物は、生物活性である、かつ/又は薬学的に有効である。一部の実施形態では、蛍光部分の結合は、薬物(D)の活性を低減又は消失させてしまい、これにより、修飾化合物は、生物的及び/若しくは薬学的活性が低下しているか、又は代わりに、生物的に不活性である、かつ/若しくは薬学的に効果がない。
この目的に好適な他のリンカーには、2つの分子をコンジュゲートする目的として周知なリンカーが含まれる。
一部の態様では、リンカー(L)は安定であり、投与時には分解せず、蛍光部分と薬物とのコンジュゲートは、生物的及び/又は薬学的に活性である。例示的な安定したリンカーには、以下に限定されないが、アセチルアラニン(実施例2を参照されたい)及びベータ-アラニン(実施例3を参照されたい)が含まれる。他の態様では、蛍光部分/フルオロフォア及び低分子化合物が、修飾化合物がミニ細胞に充填された後、リンカーの分解時に分離するよう、リンカーは、生理的条件(例えば、非凍結乾燥状態)下では、ミニ細胞への充填時間よりも長い半減期を有する。一般に言えば、ミニ細胞への充填に約4時間がかかる。したがって、リンカーの半減期は、少なくとも4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間又は24時間とすることができる。好ましくは、リンカーの半減期は6〜24時間又は8〜24時間以内にある。例えば、リンカーとして使用した場合、2'-(3-アミノプロパノイル)部分は、約8時間の半減期を有する。
他の態様では、リンカーは、細菌ベシクル内では安定であるが、pHには敏感であり、したがって、中性より低いpHではそれほど安定ではない。エンドソーム/リソソーム中のpHは、正常な細胞環境中よりもかなり低いので、こうしたpHに敏感なリンカーは、標的哺乳動物細胞のエンドソーム/リソソームにおいて分解しかしない。こうした酸性条件下では、リンカーは加水分解され得る。例えば、エステルは、アルコール残基及びカルボン酸に加水分解することができ、又はアミドは、アミン及びカルボン酸に加水分解され得る。
pHに敏感であることが知られているリンカーは、例えば、Nieらにより、POLYMERIC BIOMATERIALS:MEDICINAL AND PHARMACEUTICAL APPLICATIONS、第16章、413〜32頁(Dumitriu(編)、2013年)に例示されており、これは、薬物送達において使用されている酸開裂性リンカーを記載している。国際特許出願WO2006/108052はまた、リソソーム中で見いだされる条件下で分解可能な、酸開裂性リンカーも記載している。Duncan、Nature Reviews Cancer 6巻:688〜701頁(2006年)は、リソソーム酵素に曝露されると分解性となるリンカーを記載しており、例えば、Gly-Phe-Leu-Gly及びポリグルタミン酸(PGA)は、カテプシンBにより、又はより低いpHに開裂し、例えば、ヒドラゾンリンカーは、エンドソーム及びリソソーム中(pH6.5〜pH<4.0)で分解する。米国特許第5,306,809号は、免疫治療に好適な酸開裂性リンカーを記載している。
例えば、米国特許第6,521,431号は、グリコール酸又は乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸及び5-ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシエステル、アミノ酸、オルト-エステル、無水物、ホスファジン、ホスホエステルをリンカーとして使用することを記載している。
米国出願公開第2013/0071482号は、
などの1つ以上の部分を有するリンカーを記載しており、
式中、X5は、O又はNHであり、Rの構造は、第482号の出願公開に詳述されている。
米国出願公開第2013/0261094号は、-OQ-(CnH2n)-S(R')(R)-(CmH2m)-CH2-A又は-R9N-Q-(CnH2n)-S(R')(R")-(CmH2m)-CH2-Aなどのリンカーを記載しており、式中、n及びmは0〜20の整数であり、好ましくは1〜10であり、R'及びR"は独立して、孤立電子対、=Oなどの酸素部分、=N-RXなどの窒素部分であり、Rxは、均一又は不均一な原子団であり、Aは結合部分であり、Qは直接結合、C=O、C=N又はC=NRp基であり、RpはC1〜C3アルキルであり、R9は、水素原子又はC1〜C3アルキル基のどちらかとすることができる。
米国出願公開第2012/0121615号は、
などのリンカーを記載している。
米国出願公開第2005/0112065号は、シトラコニル若しくはヒドラジドリンカー、又は酵素に敏感なリンカーなどの、pHに敏感なリンカーを記載している。上記の出願が詳述しているこうしたリンカーの例には、
が含まれ、
式中、x、y、zは、独立して、0、1、2、3、4又は5であるが、ただし、x、y及びzのうちの少なくとも1つは0ではない条件とする。一部の実施形態では、x、y及びzは、独立して1、2、3、4又は5である。
NicolettiらのInt'l J. Antimicrob. Agents 33巻:441〜48頁(2009年)は、リンカーとしてポリペプチドであるGlyPheLeuGlyを記載している。
上記の刊行物のそれぞれの内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれている。一部の刊行物は、リンカーを記載する場合、所与の化合物の名称を使用している。いかなる場合においても、リンカーとして作用する場合、所与の化合物のいずれも二価ラジカルであることを示しており、こうして、リンカーは、薬物と蛍光部分を連結して、本発明による修飾(蛍光)化合物をもたらすことができる。
一態様では、リンカー(L)は、結合、-C(O)-O-、-C(O)NH-、-OC(O)-(CHR50)qNR51C(O)-及び-OC(O)-(CHR50)qC(O)NR51-(CHR52)u-NH-C(S)-NH-からなる群から選択され、R50、R51及びR52は、独立して、H又はC1〜4アルキルであり、q及びuは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7である。
別の態様では、Lは、-O-C(O)-CH(CH3)-NHC(O)-、-O-C(O)-(CH2)2-NH-CO-及び-O-C(O)-(CH2)3C(O)NH-(CH2)6-NH-C(S)-NH-からなる群から選択される。
一部の態様では、リンカーは-(CHR52)p-であり、-(CHR52)-のうちの少なくとも1つは、-O-、-((CHR52)-O)q-、-S-、-S-S-、-C(O)NH-、-C(O)O-及び-CR52=NNHの群からの1つにより置き換えられており、R52はH又はC1〜4アルキルであり、pは、2〜10から選択される整数であり、qは、1〜7から選択される整数である。一部の実施形態では、pは、2〜10を含む整数であり、qは1〜7を含む整数である。
(H)処置方法及び組成物
この開示のさらなる態様によれば、上記の組成物である、化合物が充填されているインタクトな非生存細菌ベシクルは、リガンドを介して哺乳動物の腫瘍細胞を標的とするよう指向化される。一部の実施形態では、リガンドは、「二重特異性」である。すなわち、リガンドは、ミニ細胞と哺乳動物(腫瘍)細胞の構成成分のどちらにも特異性を示し、そうしてリガンドにより所与のベシクルが標的細胞に結合し、それにより標的細胞がベシクルを取り込む。ミニ細胞が腫瘍細胞を標的とするための二重特異性リガンドの使用は、WO05/056749及びWO05/079854にさらに記載されており、死滅細菌細胞が腫瘍細胞を標的とするための二重特異性リガンドの使用は、米国特許第8,591,862号にさらに記載されており、それらの全内容のそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている。こうしたリガンドが一旦、ベシクルに結合すると、リガンドの非独占特異性(「単一特異性」)は、そのリガンドが標的(腫瘍)哺乳動物細胞と相互作用するまで関わる。
リガンドは、リガンドとポリサッカライド、糖タンパク質又はポリペプチドなどの細胞膜上の構成成分との間の相互作用のために、ベシクルの細胞膜に結合することができる。発現されたリガンドは、リガンドの表面にある構成成分の結合部分が露出され、その結果、この部分は、ベシクルと哺乳動物細胞が接触すると、標的哺乳動物細胞表面の構成成分と結合することができるようにベシクルの表面上に固定される。
或いは、リガンドは、細菌由来のベシクルの生存相対物により、例えば、ミニ細胞の親細胞により、又は死滅細胞となる前の細菌細胞により発現されて現れ得る。この例では、リガンドはベシクルに対する特異性を必要とせず、哺乳動物細胞の特徴である一構成成分に対する特異性を示すだけである。すなわち、こうした構成成分は、腫瘍細胞がそれらの表面にその構成成分を提示する限り、腫瘍細胞それ自体に対して、又は処置下にある特定の種類の腫瘍細胞に対してさえも特異的なものである必要はない。
静脈内投与の際、ベシクルは腫瘍の微小環境中で急速に蓄積する。上記の漏出性の腫瘍血管の機能として起こるこの蓄積は、ベシクルに封入された治療用ペイロードの腫瘍細胞への送達を果たし、次に、この腫瘍細胞は封入されたベシクルを内部に移行させる。
本発明者らは、この送達手法が、ミニ細胞の特異的接着及びエンドサイトーシスに通常、不応性である細胞を含めた、ある範囲の哺乳動物腫瘍細胞に適用可能であることを見いだした。例えば、抗HER2受容体又は抗EGF受容体に対する抗体又は抗体誘導体(以下を参照されたい)を含むリガンドは、肺、卵巣、脳、乳房、前立腺及び皮膚のがん細胞などのある範囲の標的非食細胞上の個々の受容体にミニ細胞を結合させることができる。
こうして達成された結合は、各タイプの非食細胞によるベシクルの取込みに先行する。すなわち、本発明の文脈では、好適な標的細胞が細胞表面の構成成分を提示し、ベシクル上のリガンドによりこの構成成分が結合すると、そのベシクルのエンドサイトーシスが引き起こされる。
より詳細には、本発明者らは、(a)ミニ細胞又は死滅細菌細胞上のリガンドと、(b)哺乳動物細胞表面受容体との間の相互作用により、本明細書において「受容体媒介性エンドサイトーシス」(rME)経路と呼ばれる、腫瘍細胞などの標的宿主細胞の後期エンドソーム/リソソームコンパートメントへの取込み経路を活性化できることを発見した。本発明者らは、このrME経路により、細菌由来のベシクルが初期エンドソーム、後期エンドソーム及びリソソームによって処理され、その結果、それらのペイロードが哺乳動物宿主細胞の細胞質中に放出されることを見いだした。さらに、ペイロード、すなわち核酸は、後期エンドソーム/リソソームコンパートメント内での完全な分解から逃れるだけではなく、宿主細胞によって発現もされる。
リガンドはペイロード保持ベシクル上及び標的細胞上のそれぞれの表面構成成分に結合して、後者の標的細胞の構成成分との相互作用がrME経路へのベシクルの取込みをもたらすので、上記の通り、この送達手法のためのリガンドは、「二重特異性」であり得る。いかなる場合においても、所与の標的細胞の表面構成成分との相互作用が、標的細胞表面からのサイトゾル内部移行を必要とするエンドサイトーシス経路を実際に利用できれば、標的細胞の表面構成成分は、本発明による、リガンドによる結合の候補となり得る。上記のこうした候補は、その表面に候補となる構成成分を提示する細胞のタイプが、その候補と結合したリガンドであって、かつ蛍光色素、又は例えば共焦点顕微鏡により視覚的に検出されやすい他のマーカーとも結合したリガンドを保持するミニ細胞とインビトロで共インキュベートされるアッセイにより、本発明における適性に関する評価を容易に受ける(この種のインビトロアッセイは、MacDiarmidら(2007年)の436頁の図3の凡例に記載されている)。したがって、観察されるマーカーの内部移行は、試験される標的細胞の表面構成成分が本発明に好適であるということについての、こうしたアッセイによる肯定的示唆となる。
候補となる標的細胞の表面構成成分の例示としては、(A)他の内在性膜タンパク質の速度と類似した速度で構成的内部移行(エンドサイトーシス)を受ける膜貫通タンパク質のファミリーである受容体チロシンキナーゼ又は「RKT」のメンバーがある。Goh及びSorkin、Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 5巻:a017459頁(2013年)を参照されたい。RKTのファミリーは、例えば、Lemmon and Schlessinger、Cell 141巻:1117〜134頁(2010年)により記載されている。以下の表は、ヒトプロテオームの20のサブファミリーにおける、全58個のRTKを一覧表示しており、そのいずれか1つ以上が上記の通り、本発明における適性に関して試験することができる(図24も参照されたい)。
同様の例には、(B)葉酸及び還元型葉酸誘導体と結合し、テトラヒドロ葉酸の細胞内部への送達を媒介する膜結合性高親和性葉酸結合タンパク質(葉酸受容体)のクラス、(C)IL13などの同族サイトカインの内部移行において役割を果たす、膜結合サイトカイン受容体のサブグループ、(D)ある種のがん細胞上に発現され、かつ同族モノクローナル抗体(例えば、CD20の場合にはリツキシマブ)の内部移行を媒介する、CD20、CD33、メソテリン及びHM1.24などの表面抗原、及び(E)エンドソーム経路を介して輸送(trafficked)され、かつ細胞外マトリックスへのがん細胞間接着の主要な媒介因子である膜貫通グリプロテイン(glyprotein)である接着受容体(インテグリン)のファミリーからなるメンバーがある。
本発明によれば、リガンドは、場合に応じて所望の特異性(複数可)を示すいずれかのポリペプチド又はポリサッカライドとすることができる。好ましいリガンドは抗体である。そのここでの使用では、用語「抗体」は、免疫原性応答のインビトロ又はインビボ生成によって得られる免疫グロブリン分子を包含する。したがって、「抗体」の分類には、モノクローナル抗体及びヒト化抗体、並びに一本鎖抗体断片(scFv)、二重特異性抗体などの抗体誘導体が含まれる。その全内容が参照により本明細書に組み込まれている、Caravella及びLugovskoy、Curr. Opin. Chem. Biol. 14巻:520〜28頁(2010年)の総説により明らかにされている通り、多数の異なる二重特異性タンパク質及び抗体をベースとするリガンドが知られている。本開示により有用な抗体は、同様に、公知の組換えDNA技法によって得ることができる。
したがって、非限定例として、腫瘍抗原などの表面の構成成分に対する特異性を有する抗体は、本発明によりミニ細胞を、処置される腫瘍における細胞の標的とするために使用することができる。この点に関する例示的な細胞表面受容体には、RTK、上皮成長因子受容体(EGFR)、血管内皮細胞成長因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)及びインスリン様成長因子受容体(IGFR)(これらのそれぞれは、脳腫瘍を含めたいくつかの固形腫瘍において多量に発現される)、及び葉酸受容体(一部の下垂体腺腫において過剰発現される)のいずれもが含まれる。こうした二重特異性リガンドは、変異体受容体又は変異型受容体、例えば、ヒト多形膠芽細胞腫瘍の50%〜80%に発現されるが(Wykoskyら、Clin Cancer Res. 14巻:199〜208頁(2008年)、Jarboeら、Cancer Res. 67巻:7983〜86頁(2007年)、Debinskiら、J. Neurooncol. 48巻:103〜11頁(2000年)及びOkadaら、J. Bacteriol. 176巻:917〜22頁(1994年)を参照されたい)、正常組織において発現されるその生理学的相対物IL4R/IL13Rとは異なる、IL-13Rα2受容体に対しても同様に標的化され得る。Hershey、J. Allergy Clin. Immunol. 111巻:677〜90頁(2003年)を参照されたい。したがって、IL13Rα2は、正常な脳細胞には実質的に存在しない。Debinski及びGibo、Mol. Med. 6巻:440〜49頁(2000年)を参照されたい。さらに、脳に転移する腫瘍は、ある種の受容体を過剰発現することがあり、これもやはり好適な標的となり得る。例えば、Da Silvaら、Breast Cancer Res. 12巻:R46頁(1〜13号)(2010年)は、乳がんの脳への転移により、RTKのHERファミリーのすべてのメンバーが発現することを示した。HER2は脳への転移の20%で増幅及び過剰発現され、EGFRは脳への転移の21%で過剰発現され、HER3は脳への転移の60%で過剰発現され、HER4は脳への転移の22%で過剰発現された。興味深いことに、HER3発現は、脳に存在している乳がん細胞において向上した。
(I)製剤及び投与経路及び計画
本開示の組成物の製剤は、例えば、アンプル若しくはバイアル中の単位剤形で、又は保存剤を添加若しくは無添加の多回用量容器で提供することができる。製剤は油性又は水性ビヒクル中の溶液剤、懸濁剤又はエマルション剤とすることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤用作用剤を含むことができる。好適な溶液剤はレシピエントの血液と等張であり、生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液により例示される。或いは、製剤は、好適なビヒクル、例えば、無菌の発熱性物質不含水又は生理食塩水により復元するための凍結乾燥散剤の形態とすることができる。製剤はまた、デポ調製剤の形態とすることができる。こうした長期作用製剤は、埋込み(例えば、皮下又は筋肉内)によって又は筋肉内注射によって投与することができる。
一部の態様では、治療有効量の低分子化合物を含むベシクル含有組成物が提供される。抗新生物剤の「治療有効」量は、本開示による、対象とする薬剤の投与量である。低分子化合物がベシクル中では不活発な形態にある場合、「治療有効」量は、標的細胞のエンドソーム/リソソームにおいて、活性化化合物を有効量放出する不活性化合物の量を指す。
したがって、本開示の文脈では、治療有効量は、治療用ペイロードを保持するミニ細胞が、下記においてさらに記載されている通り、投与される場合、動物モデル又はヒト対象のいずれかにおいて、腫瘍又は腫瘍の症状の予防又は改善を参照することにより判断することができる。特定の対象にとっての、所与の場合における「治療有効量」であることを示す量は、こうした投与量が熟練の医師により「治療有効量」と考えられる場合でさえも、対象とする腫瘍の場合に同様に処置される対象の100%に対しては有効でないことがある。この点で適当な投与量はやはり、例えば、腫瘍のタイプ、ステージ及び重症度に応じて様々となろう。いかなる場合においても、本開示によるインビトロ試験(実施例3及び4)及びインビボ試験(実施例5、7及び8)の本例示、並びに薬物のインビボでの分布を定量するための方法(実施例9)により、全体の記載に照らし合わせて考慮すると、候補薬物の前臨床試験及び臨床試験の熟知者が、型通りの実験によって、特定の症例に対する活性剤の治療有効量を決定するのを可能にする。同様に、「治療有効な」が、医薬組成物中のミニ細胞の数を指して使用される場合、その数は、どの抗新生物剤がミニ細胞中に封入されているか、及び腫瘍を処置する際のその薬剤の有効性に基づいて確認することができる。この点で治療効果は、腫瘍量などの臨床パラメータ又は病理パラメータを用いて測定することができる。したがって、腫瘍量の減少又は増加の減少を治療効果の測定に使用することができる。
本開示の範囲内の製剤は、局所的又は全身的のどちらかで所望の治療効果を実現するために、哺乳動物の身体の様々な部分に種々の経路を介して投与することができる。特定の態様において、投与経路は静脈内注射である。
一般に、本開示の製剤は、いかなる潜在毒性も最小化しながら、最適な生理学的効果を得るために、型通りの試験により定義される適当な投与量で使用することができる。投与レジメンは、患者の年齢、体重、性別、医療状態、腫瘍の重症度又はステージ、投与経路、並びに患者の腎機能及び肝機能を含めた様々な因子に応じて選択することができる。
最小の副作用で最大の有効性が生じる範囲内のベシクル及び治療剤の濃度を実現する上での精度を最適化するには、標的部位及び標的細胞に対する薬剤の利用率の動態に基づくレジメンが必要となり得、通常、必要となるであろう。処置レジメンに最適な濃度を決定する場合、ベシクル又は薬剤の分布、平衡及び排出を考慮することができる。ベシクル及び治療剤の投与量はそれぞれ、所望の効果を実現するために調整することができる。
さらに、本製剤の投与量の投与は、薬物動態/薬力学モデル系を用いて最適化することができる。したがって、1つ以上の投与レジメンを選択することができ、1つ以上の投与レジメンの薬物動態/薬力学プロファイルを決定するために薬物動態/薬力学モデルを使用することができる。次に、こうした特定のプロファイルに基づいて、所望の薬物動態/薬力学応答を実現する投与を行うための投与量レジメンの1つを選択することができる。例えば、WO00/67776を参照されたい。
本開示の製剤は、数週間の過程にわたって少なくとも週1回、腫瘍患者に投与することができる。したがって、本製剤は、数週間から数カ月の期間にわたって少なくとも週1回投与することができる。
より具体的には、本発明の製剤は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30又は約31日間、少なくとも1日1回投与することができる。或いは、本製剤は、毎日約1回、或いは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30若しくは約31日又はそれより多くの日数ごとに約1回投与することができる。
本開示の別の実施形態では、本製剤は、毎週約1回、或いは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20週間又はそれより多くの週数ごとに約1回投与することができる。或いは、本製剤は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20週間、又はそれより多くの週数の間、少なくとも週に1回投与することができる。
或いは、本製剤は、毎月約1回、或いは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11若しくは約12か月又はそれより多くの月数ごとに約1回投与することができる。
本製剤は、単回の毎日の用量で投与することができる。或いは、1日の総投与量を1日2回、3回又は4回の分割用量で投与することができる。
このように、一般的に記載された本発明は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解され、これらの実施例は例示のために提示されているものであり、本発明の限定を意図するものではない。以下に限定されないが、特許を含めた、本明細書において参照されている公に利用可能な文献はすべて、参照により具体的に組み込まれている。
本発明者らは、蛍光のタイプ(内在性対外因性)及び化合物の構造の異なる充填された幅広い範囲の化合物全体にわたり、蛍光が関連する充填の向上効果を観察した。外因性蛍光化合物に関して、差異は、フルオロフォア及び存在する場合、リンカーのそれぞれの性質に関係する。
一般に、本実施例は、インタクトな細菌由来のベシクルに様々な蛍光化合物を充填することに関する。すべての実施例に関して、出発原料は、遊離エンドトキシンレベルを109個のミニ細胞あたり約5EU以下しか含まない、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)(S. typhimurium)のminCDE-染色体欠失変異体に由来する、空のインタクトなミニ細胞の緩衝組成物であった。米国特許第8,449,877号(遊離エンドトキシンを実質的に欠失しているミニ細胞組成物の生成)を参照されたい。
ベシクル(ここではミニ細胞)の充填の場合、実施例1〜5、7〜10、12及び13における方法は、上記のMacDiarmidら(2007年)において例示されている小スケールプロトコルを用いて実質的に確認する。例えば、所与の実験において、PBS緩衝液中の空のミニ細胞を微遠心管に加えて遠心分離にかける(16,000g、10分間)ことができた。得られた上澄み液を廃棄した後、ミニ細胞ペレットを、場合によりゼラチン0.01(w/v)を加えたPBS緩衝液(いわゆる「BSG緩衝液」)中で再懸濁させて、一般に、ミニ細胞懸濁液1mlあたり約200μg〜約1mgで、ペイロード化合物とインキュベートした。こうして得られた充填されたミニ細胞を遠心分離(16,000g、10分間)にかけ、充填した上澄み液を廃棄した。次に、懸濁液1ml中でペレットを再懸濁することにより、充填されたミニ細胞を洗浄して、ミニ細胞を遠心分離にかけ(16,000g、10分間)、上澄み洗液を廃棄した。こうした洗浄工程を、通常、3回、繰り返した。最後に、ミニ細胞は、PBS又はBSG緩衝液中で再懸濁させた。
充填させる蛍光化合物が水溶性である場合、上述の実施例の多くの場合と同様に、ベシクルの外側表面への化合物の捕捉がかなり低減される。結果として、小スケールでの洗浄で十分であり、小スケールプロトコルの使用が可能である。しかし、実施例6及び11では、充填された化合物はドキソルビシンであり、これは、親水性というよりもむしろ両親媒性であり、その結果、捕捉は重要な因子となる。したがって、これらの実施例の場合の充填工程が小スケールであった(すなわち、充填は、ほぼミリリットルスケールの量の緩衝液体で行われた)一方、洗浄工程は、リットルスケールの量の緩衝液体を用いたクロスろ過(遠心分離ではない)を含み、こうして大スケール方法を構成した。
最後に、実施例14は、大スケール方法を用いて実現された濃度及び純度の改善に焦点をあてた、小スケールプロトコルと大スケール方法の比較である。
これらの実施例において、ペイロードが封入されたミニ細胞を、LeicaモデルDM LB光学顕微鏡、100x倍率(Leica Microsystems、ドイツ)を使用し、蛍光顕微鏡観察により可視化するためのガラス製スライド上にマウントした。これらの結果は、ペイロードの蛍光の可視化を可能にするために使用した適切なフィルターを装備した、Leica DCカメラ及びLeica IM 画像管理ソフトウェアを使用してキャプチャーした。
[実施例1]ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLの充填
この実施例は、細菌由来のミニ細胞の細胞質への、ビンブラスチンの蛍光コンジュゲートの封入を実証している。ビンブラスチンは、ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、乳がん、頭頚部がん及び睾丸がんを含めた、ある種のがんを処置するために従来から使用されている、抗微小管薬である。
使用された化合物であるビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLは、商業的に入手可能であり、Life Technologies(Thermo Fisher Scientific)、Molecular Probes(登録商標)ブランドから得た。この化合物は、メチレンリンカーを介して、蛍光色素BODIPY(登録商標)FLを含む、ビンブラスチンコンジュゲートである。BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY581/591、BODIPY TR、BODIPY630/650及びBODIPY650/665などの他のBODIPYフルオロフォアは、本文脈において、BODIPY(登録商標)FLを置き換えることができた。その内容が参照により組み込まれている、THE MOLECULAR PROBES(登録商標)HANDBOOK-A GUIDE TO FLUORESCENT PROBES AND LABELING TECHNOLOGIES(第11版)、項目1.4、「BODIPY Dye Series」を参照されたい。
ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLは、十分に明らかにされている蛍光特性(励起505nm、発光513nm、赤色蛍光)を有する。その構造は、以下に図示されている。
空のミニ細胞を含有している原料の組成物を用い、ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLを充填し(溶液1mlあたり1mgのコンジュゲート中でインキュベート)、小スケールプロトコルに従って洗浄し、この洗浄工程を3回、繰り返した。蛍光画像の結果(図1)により、充填されたミニ細胞のすべてが明赤色の蛍光を発することが明らかとなり、ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FLがミニ細胞の細胞質に移送されたことを示している。さらに、ビンブラスチンBODIPY(登録商標)FL分子は、洗浄工程を通して濃度勾配を逆にしたにもかかわらず、ミニ細胞内に残留した。
[実施例2]FLUTAX-1の充填
この実施例は、パクリタキセルの蛍光コンジュゲートのインタクトな細菌由来のベシクルの細胞質への封入を実証している。パクリタキセルは、微小管を安定させるタキサンであり、その結果、細胞分裂中に、微小管の正常な分解を妨害する。パクリタキセルは、肺、卵巣及び乳がん、頭頚部のがん、並びに進行形態のカポジ肉腫を処置するための化学療法において、有糸分裂阻害剤として使用されている。
使用された蛍光タキサン誘導体であるFLUTAX-1は、アセチルアラニンリンカーを介して、フルオレセインを有する、市販のパクリタキセルのコンジュゲートである。従来通り、FLUTAX-1は、治療上、有効ではないと考えられる。したがって、それは、研究試薬としてしか販売されていない。この実施例の場合、このコンジュゲートは、商業的供給源である、Tocris Biosciences(Bristol、英国)から得た。
FLUTAX-1(分子量:1283.2は、十分に明らかにされている蛍光特性(励起約495nm、発光約520nm、緑色蛍光)を有する。この誘導体の正式名称は、2aR,4S,4aS,6R,9S,11S,12S、12aR,12bS)-6,12b-ビス(アセチルオキシ)-9-[(2R,3S)-3-(ベンゾイルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-オキソ-3-フェニルプロポキシ]-12-(ベンゾイルオキシ)-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-11-ヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-7,11-メタノ-1H-シクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-4-イルエステルN-[(3',6'-ジヒドロキシ-3-オキソスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-5-イル)カルボニル]-L-アラニンである。その化学構造は、以下に図示されている。
上記の通り調製したPBS中のミニ細胞を1mlの200μg/ml FLUTAX-1溶液と共にインキュベートし、次に、小スケールプロトコルに準拠して繰り返し洗浄した。
蛍光画像(図2)により、ミニ細胞のすべてが明緑色の蛍光を発したことが明らかになり、FLUTAX-1がミニ細胞の細胞質に移送されたこと、及びFLUTAX-1分子の多くは、洗浄工程を通して濃度勾配を逆にしたにもかかわらず、封入されたままであったことを示唆している。バックグラウンドは、FLUTAX-1を封入したミニ細胞と比べると、黒色に見え、外側にFLUTAX-1がほとんど又は全くないことが証明された。
ミニ細胞内に封入されたFLUTAX-1の量は、ミニ細胞から薬物を抽出し、次いで、HPLC分析し、既知濃度のFLUTAX-1試料の標準曲線と比較することにより決定した。ドキソルビシンを封入したミニ細胞の場合、ミニ細胞抽出は、上のMacDiarmidら(2007年)により記載されている通り行った。FLUTAX-1の定量のために、HPLC法を開発した。HPLC法の特徴には(i)移動相:アセトニトリル:MilliQ dH2O、流速2ml/分で12分間の50:50の定組成溶出、(ii)固定相:Metalchem 3u Taxsil、100mm×4.6mm plus C18カートリッジ、(iii)カラム温度:40℃、(iv)検出:(a)SPD-M10Avpダイオードアレイ検出器-228nm(b)RF-10AXL蛍光検出器(島津)-励起495nm、発光520nm、(v)注入量:50μl、(vi)HPLCシステム:Class-VPバージョン7.2.1ソフトウェアを装備した、SIL-10AVPオートインジェクター、LC-10Advpポンプ、DGU-14Aデガッサー、CTO-10Avpカラムオーブン、RF-10AXL蛍光検出器及びSPD-M10Avpダイオードアレイ検出器を備えた、Shimadzu SCL-10AVPシステム(島津製作所、京都、日本)が含まれた。
これらの薬物充填条件を用いて得られたFLUTAX-1の含有量は、HPLCによって1×109個のミニ細胞あたり570ngであると求まった(図3)。アボガドロ数を使用することにより、これは、ミニ細胞あたり封入されたFLUTAX-1の分子が約270,000個に等しく、パクリタキセルの封入時に、ミニ細胞あたりのパクリタキセル分子よりも127倍多いFLUTAX-1分子となる有意な改善がある(以下の実施例9を参照されたい)。このことは、パクリタキセルの水溶性誘導体であるTF.Pacが、ミニ細胞あたりわずか25倍多い分子しか実現しないので驚くべきことである(実施例10を参照されたい)。これらの結果は、フルオレセインフルオロフォアが、FLUTAX-1の侵入、及びミニ細胞中での保持を向上させることを示している。
[実施例3]パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488の充填
この実施例は、別の蛍光パクリタキセルコンジュゲートであり、「FLUTAX-2」としても知られるパクリタキセルOregon Green(登録商標)-488が、インタクトな細菌由来のベシクルの細胞質に封入され得ることを実証している。この誘導体に関しては、フッ素化フルオレセイン部分であるOregon Green(登録商標)-488は、ベータ-アラニンリンカーを介してパクリタキセルのC7にコンジュゲートされている。このフッ素化フルオレセイン部分は、蛍光(励起約495nm、発光約525nm、緑色蛍光)及び誘導体分子に対する水溶解度の改善をもたらす。
パクリタキセルの関連する誘導体化により生物的に不活性となり、したがって、研究目的だけで市販されている、治療上効果のない化学実体が生じる。パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488は市販されており、したがって、この実施例のために、Life Technologies(Thermo Fisher Scientific)から得た。
誘導体の正式名称は、L-アラニン、N-[(2',7'-ジフルオロ-3',6'-ジヒドロキシ-3-オキソスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-5-イル)カルボニル]-(2aR,4S,4aS,6R,9S,11S,12S,12aR,12bS)-6,12b-ビス(アセチルオキシ)-12-(ベンゾイルオキシ)-9-[(2R,3S)-3-(ベンゾイルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-オキソ-3-フェニルプロポキシ]-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-11-ヒドロキシである。その化学構造は、以下に表されている。
PBS中でミニ細胞を調製して充填(コンジュゲート溶液は100μg/mlの外部充填濃度)し、小スケールプロトコルに準拠して洗浄した。蛍光画像(図4)により、ミニ細胞のすべてが明緑色の蛍光を発したことが明らかになり、パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488がミニ細胞の細胞質に移送されたこと、及び多数のコンジュゲート分子は、洗浄工程を通して濃度勾配を逆にした場合でさえも、ミニ細胞に留まったままであったことを示している。バックグラウンドが充填されたミニ細胞と比べて、黒く見えたことは、パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488が外部にほとんど又は全く存在しないことの証拠であった。
この場合、充填されたミニ細胞の破壊により充填された化合物が同様に分解し、HPLC分析による定量が妨害されたので、ミニ細胞内に封入されたパクリタキセルOregon Green(登録商標)-488の量は、間接的に求めなければならない。したがって、パクリタキセル Oregon(登録商標)Green-488を充填したミニ細胞中の蛍光(緑色)強度は、蛍光顕微鏡観察によって、抽出及び定量の条件下で安定な、ドキソルビシンを充填したミニ細胞の場合に可視化した(赤色)自家蛍光と比較した。109個のミニ細胞あたり封入された約800ngのドキソルビシンを示している、以下の実施例6を参照されたい。すなわち、ドキソルビシンを用いて観察された蛍光との関連で、パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488を充填したミニ細胞の場合に観察された蛍光強度が高いことは、後者のパクリタキセルOregon Green(登録商標)-488の濃度が類似していること、すなわち109個のミニ細胞あたり約800ngであることを示した。この値は、109個のミニ細胞あたり10ng未満の薬物となる、パクリタキセルを充填したミニ細胞の場合に観察される値と対照的である(以下の実施例9)。
[実施例4]FITC-コンジュゲートされているパクリタキセルの充填
この実施例は、パクリタキセルのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)誘導体(頭文字「FCP」)のインタクトな細菌由来のベシクルの細胞質への効果的な封入を実証している。FLUTAX-1において見いだされたものと同一のフルオレセイン基は、5-オキソ-5-((6-チオウレイドヘキシル)アミノ)ペンタン酸リンカー(すなわち、比較的長いリンカードメイン)を介して、FLUTAX-1及びパクリタキセルOregon Green(登録商標)-488と同様に、パクリタキセル分子上のC7位ではなくC'2位にコンジュゲートされている。ここでもまた、フルオレセイン基は、誘導体分子(励起:495nm、発光:519nm)に蛍光をもたらし、リンカーを用いることにより、その水溶解度が向上している。
FCPは、生物活性がなく、研究目的だけのために、これまで使用されてきた。この実施例の場合、FCPは、IDT Australia Ltd.(Boronia、Victoria)から得た。その化学構造は、以下に見られる。
記載されている原料組成物を用い、PBS中でミニ細胞を調製し、FCP溶液(300μg/ml)と共にインキュベートすることにより充填し、小スケールプロトコルに準拠して洗浄した。蛍光画像(図5)により、ミニ細胞のすべてが明緑色の蛍光を発したことが明らかになり、FCPがミニ細胞の細胞質に移送されたこと、及び洗浄工程を通して濃度勾配を逆にしても、多数のFCP分子がこのミニ細胞中に封入されたままであることを示している。FCPを封入したベシクルに対してバックグラウンドが黒い外観で映し出されている通り、FCPが外部にはほとんど又は全く存在していなかった。
ミニ細胞内に封入されたFCPの量は、ミニ細胞から薬物を抽出し、次いで、HPLC分析することにより決定した。ミニ細胞抽出を行い、上記のFLUTAX-1の定量について記載した通り、HPLC法を使用した。
これらの薬物充填条件を用いて得られたFCPの含有量は、1×109個のミニ細胞あたり550ngと定量された(図6)。これは、ミニ細胞あたり封入されたFLCPが、約230,000個の分子であることに等しい。これは、パクリタキセルの封入に際し、有意に改善されており、FCPがより大きな分子(式量1455.6対853.9)であるという事実があるにもかかわらず、ミニ細胞あたり109倍も多い分子である。
封入されたFCP分子の数は、FLUTAX-1(約270,000個)のそれと類似している。FCP及びFLUTAX-1は、同一のフルオロフォアを有する。しかし、コンジュゲートは、C2'(FCP)対C7(FLUTAX-1)と異なっている一方、パクリタキセルOregon Green(登録商標)-488は、FLUTAX-1と同じC7でのコンジュゲート位を担っている。したがって、分子へのコンジュゲート点ではなく、フルオレセインフルオロフォアの構造が、ミニ細胞への薬物分子の充填を促進する上で重要であることが示される。したがって、コンジュゲート点は、本発明による、インタクトな細菌由来のベシクルへの、蛍光物質を媒介とする化合物の充填の向上に重要ではないことが示される。
[実施例5]BacLight(商標)Greenの充填
この実施例は、細菌染色剤BacLight(商標)Greenが、インタクトな細菌由来のベシクル中に容易に封入され得ることを実証している。緑色蛍光色素(それぞれ、吸収/発光約480/516nm及び約581/644nm)であるBacLight(商標)Greenは市販されており、Life Technologies(Thermo Fisher Scientific)、Molecular Probes(登録商標)ブランドからこの実施例のために得た。その化学構造は、以下に図示されている。
PBS緩衝液中のミニ細胞にBacLight(商標)Green溶液を、200nMの最終濃度になるまで加えた。小スケールプロトコルに準拠し、ミニ細胞を室温で30分間、インキュベートし、上記の通り、3回、繰り返した洗浄工程を施した。
蛍光画像(図7)により、ミニ細胞はすべて明緑色の蛍光を発していることが明らかになり、BacLight(商標)Greenがミニ細胞に充填されたことを示した。BacLight(商標)Green-染色したミニ細胞に比べて、外観が黒色のバックグラウンドであることから、染色剤は外側にほとんど又は全く存在していないことが明らかになった。
BacLight(商標)Greenを封入したミニ細胞をフローサイトメトリー(Beckman Coulter FC500)によって分析した。空のミニ細胞及びBacLight(商標)Greenを封入したミニ細胞を、抗LPS alexa fluor647(AF647)抗体を用いて標識した。まず、ミニ細胞をFL4チャネルを使用して分析し、抗LPS AF647で染色したミニ細胞を検出した。ミニ細胞集団は、前方散乱に対するFL4蛍光を使用したドットプロットで視覚化し、この集団をゲートコントロールして、抗LPS AF647で染色したミニ細胞のみを選択し、いかなる断片も無視した。
ゲートコントロールした集団をFL1チャネルで分析し、BacLight(商標)Green蛍光を検出した。ヒストグラム(図8)により、BacLight(商標)Greenが封入されたミニ細胞が完全な個々の集団として表され、空のミニ細胞と比較(logスケール)すると、FL1蛍光が大きくシフトしている。これは、ミニ細胞の95%超が、効率的なBacLight(商標)Greenの取込みにより蛍光性を示していること、及びそれらは、空のミニ細胞に認められるものをはるかに上回るFL1蛍光を有する単一蛍光集団に相当することを示している。
[実施例6]ドキソルビシンの充填
この実施例は、両親媒性の自家蛍光細胞毒素は、細菌由来のベシクルの細胞質に効率的に封入され得ることを実証している。細胞毒素のアントラサイクリン構造であるドキソルビシンが以下に示されている。ドキソルビシンは、がん化学療法において使用され、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の細菌から半化学合成により誘導され、商業的に入手可能である。
大スケール方法(小スケールでの充填、及び大スケールでの複数回の洗浄工程、遠心分離なし、クロスフローろ過を用いる)に従うと、PBS緩衝液中のミニ細胞にドキソルビシンを充填し、この充填されたミニ細胞を蛍光顕微鏡観察(励起480nm、発光580nm、赤色蛍光)により視覚化した。画像結果(図9)により、ドキソルビシンを封入したミニ細胞と比較すると、黒色に見えるバックグラウンドを伴い、ミニ細胞のすべてが明赤色の蛍光を発することが明らかになった。
ミニ細胞内に封入されたドキソルビシンの量は、記載されている通り、ミニ細胞から薬物を抽出し、次いで、HPLC分析することにより決定した。HPLC法の特徴には、(i)移動相:0.1Mギ酸アンモニウムpH3.0:MilliQ H2O:アセトニトリル、0.2分間で28:72:0から28:42:30へのグラジエント、定組成で5分間、28:72:0へのステップ、定組成で15分間、流速1.25ml/分、(ii)固定相:Waters XBridge Phenyl、3.5μm×4.6mm×150mm plus C18カートリッジ、(iii)カラム温度:40℃、(iv)検出:蛍光-励起480nm、発光560nm、(v)注入量:10μl、(vi)HPLCシステム:Class-VPバージョン7.2.1ソフトウェア(島津製作所、京都、日本)を備えた、オートサンプラー、溶媒デガッサー、クォータナリーポンプ、カラムヒーター及び蛍光検出器を備えたShimadzu 10AVPシステムが含まれた。
これらの薬物充填条件を用いて得られたドキソルビシンの含有量はHPLCを使用し、既知量のドキソルビシン試料の線形標準曲線と比較することにより、1×109個のミニ細胞あたり約770ngと求まった(図10)。これは、各ミニ細胞にドキソルビシンが約800,000個の分子が充填されたことに等しい。
[実施例7]蛍光核酸染色剤の充填
SYTO(登録商標)9は、緑色の蛍光(励起約485/6nm、発光約498/501nm)である、核酸結合細菌染色剤である。この実施例のために、SYTO(登録商標)9をLife Technologies(Thermo Fisher Scientific)、Molecular Probes(登録商標)のブランドから得た。
PBS緩衝液中のミニ細胞に、SYTO(登録商標)9溶液を20μMの最終濃度になるまで加えた。小スケールプロトコルに準拠し、ミニ細胞は、30分間、インキュベートされ、既に記載した通り、3回、繰り返した洗浄工程を施した。
SYTO(登録商標)9Greenを封入したミニ細胞を、上記の通り、蛍光顕微鏡を使用して可視化し、適切なフィルターを使用してSYTO(登録商標)9の蛍光の可視化を可能にした。蛍光画像(図11)により、SYTO(登録商標)9がミニ細胞に取り込まれていることが明らかになり、外側には染色剤はほとんど又は全く存在していなかった。
SYTO9(登録商標)を充填したミニ細胞をフローサイトメトリー(Beckman Coulter FC500)によって分析した。抗LPS alexa fluor647(AF647)抗体を用いて、空のミニ細胞及びSYTO(登録商標)9で染色したミニ細胞を標識した。まず、ミニ細胞をFL4チャネルを使用して分析し、抗LPS AF647で染色したミニ細胞を検出した。ミニ細胞集団は、前方散乱に対するFL4蛍光を使用したドットプロットで視覚化し、この集団をゲートコントロールして、抗LPS AF647で染色したミニ細胞のみを選択し、いかなる断片も無視した。次に、ゲートコントロールした集団をFL1チャネルで分析し、SYTO9蛍光を検出した。
こうして得られたヒストグラム(図12)により、SYTO9で染色したミニ細胞が個々の集団として表され、空のミニ細胞(logスケール)と比較すると、FL1蛍光がシフトしている。これは、ミニ細胞がSYTO9の取込みにより、蛍光性を示していること、及びそれらは、空のミニ細胞によって示されるものを上回るFL1蛍光を有する蛍光集団に相当することを示している。
[実施例8]9-アミノアクリジン化合物の充填
この実施例は、塩酸塩水和物化合物として、蛍光色素9-アミノアクリジンを、インタクトな細菌由来のベシクルの細胞質に封入することができることを実証している。化合物の9-アミノアクリジン塩酸塩水和物(9-AAHH)は、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO)から入手可能であり、以下に示されている構造を有する。
9-AAHH(インキュベート用溶液:500μg/ml)を充填したPBS(2.5×1010)中のミニ細胞を小スケールプロトコルにより調製し、蛍光顕微鏡による視覚化(励起400nm、発光420nm、青色蛍光)を施した。蛍光画像の結果(図13)より、9-アミノアクリジンはミニ細胞の細胞質に移送され、洗浄工程を通して濃度勾配を逆にしたにもかかわらず、そこに残留した。
[実施例9]パクリタキセルの非効率的な充填
この実施例は、疎水性の非蛍光細胞毒性薬物であるパクリタキセル(以下の構造を参照されたい)は、インタクトな細菌由来のベシクルの細胞質に、パクリタキセルの蛍光誘導体ほど効率的に充填されないことを実証している。
PBS緩衝液中のミニ細胞を、小スケールプロトコルに従い調製した。こうして、空のミニ細胞(109個のミニ細胞あたり遊離エンドトキシンレベルは≦約2EU)を微小遠心管に加え、遠心分離(16,000g、10分間)にかけた。この上澄み液を廃棄し、pH3(かなり疎水性のパクリタキセルを溶液中で少なくとも30分間、維持するためにより低いpHを必要とした)に調節したPBS緩衝液0.9ml中でミニ細胞ペレットを徹底的に再懸濁した。次に、このミニ細胞懸濁液に6mg/mlのパクリタキセル(1:1のクレモフォールEL:EtOH中)100μlを加え、外部濃度600μg/mlのパクリタキセルが得られた。このミニ細胞を回転しながら、37℃で一晩、インキュベートした。過剰パクリタキセル溶液及びミニ細胞表面に非特異的に結合している分子を遠心分離による洗浄によって洗浄した。すなわち、インキュベート後のミニ細胞を遠心分離にかけ(16,000g、10分間)、パクリタキセルを充填する上澄み液を廃棄した。PBS1ml(pH7.4)1ml中でペレットを徹底的に再懸濁することによりパクリタキセルを充填した細胞を洗浄し、このミニ細胞を遠心分離にかけ(16,000g、10分間)、上澄み洗液を廃棄した。洗浄工程を、3回、繰り返した。最後に、このパクリタキセルを充填したミニ細胞をPBS(pH7.4)に再懸濁した。
ミニ細胞内に封入されたパクリタキセルの量は、HPLC分析を使用して、上記の通り決定した。パクリタキセルの定量のために開発したHPLC法は、(i)移動相:アセトニトリル及びMilliQ dH2O、定組成37:63で0.24分間、5分間で37:63から60:40へのグラジエント溶出、次に、移動相を1分間かけて元の溶媒組成である37:63に戻し、このレベルで終了まで維持、流速2ml/分(操作時間は8分間)、(ii)固定相:Metalchem3u Taxsil、100mm×4.6mm plus C18カートリッジ、(iii)カラム温度:40℃、(iv)検出:SPD-M10Avpダイオードアレイ検出器-228nm、(v)注入量:50μl、及び(vi)HPLCシステム:Class-VPバージョン7.2.1ソフトウェアを装備した、SIL-10AVPオートインジェクター、LC-10Advpポンプ、DGU-14Aデガッサー、CTO-10Avpカラムオーブン、SPD-M10Avpダイオードアレイ検出器を備えた、Shimadzu SCL-10AVPシステム(島津製作所、京都、日本)を含む特徴を有した。
これらの薬物充填条件を用いて得られたパクリタキセルの含有量は、HPLCにより、既知量のパクリタキセル試料の線形標準曲線と比較することにより、1×109個のミニ細胞あたり3ngと定量された(図14)。これは、ミニ細胞あたりに封入されたパクリタキセル分子が2115個であることに等しいか、又はFCP及びFLUTAX-1の場合よりもそれぞれ約110〜130分の1少ない。より多量のパクリタキセルをミニ細胞に充填するために、さらなる手法を使用した。これらには、様々な溶媒、緩衝液、pH、シクロデキストリン/パクリタキセル包接錯体の使用、サリチル酸ナトリウム及びNN-ジエチルニコチンアミドなどのヒドロトロープの使用、及び化学的(例えば、EDTA、CaCl2処理)及び物理的(ソノポレーション(sonoporation)など)な膜不安定化法の使用が含まれた。試験した手法のすべてが、類似した結果をもたらし、パクリタキセル充填率は、1×109個のミニ細胞あたり0〜10ngの範囲となった。
[実施例10]水溶性パクリタキセル類似体の充填
この実施例は、パクリタキセルの水溶性類似体である、2'-β-アラニルタキソールギ酸塩又は「TF.Pac」(以下の構造を参照されたい)の充填率が、パクリタキセル自体と比べて、ほんのわずかだけ向上したことを実証している。
パクリタキセルのC2'にコンジュゲートされている、ベータ-アラニルギ酸塩により、TF.Pacは、溶解度が向上する。パクリタキセルが単に水溶解度に乏しいことが、インタクトな細菌由来のベシクルへの効率的な充填の妨げとなっているのかどうかを解明するため、商業的に入手可能ではないTF.Pacを合成した。パクリタキセルは、水に0.3μg/ml溶解する一方、TF.Pacの溶解度は少なくとも2mg/mlである。
小スケールプロトコルに準拠し、PBS緩衝液中のミニ細胞にTF.Pacを充填(充填用溶液:0.1%酢酸の蒸留水1mlあたり1mgの化合物)した。
こうして、ミニ細胞内に封入されたTF.Pacの量は、ミニ細胞から薬物を抽出し、次いで、HPLC分析することにより決定した。ドキソルビシンを封入したミニ細胞の場合、ミニ細胞抽出は、上記の通り行った。使用したHPLC法は、パクリタキセル定量のために開発されたものと同じとした。
これらの薬物充填条件を用いて得られた平均のTF.Pac含有量は、HPLCにより、1×109個のミニ細胞あたり78ngと定量され(図15)、これは、ミニ細胞あたり封入されたTF.Pacが約50,000個の分子であることに等しい。こうして、充填率はパクリタキセルよりもいくらか高かったが、FLUTAX-1の約5.4分の1であった。より多量のTF.Pacをミニ細胞に充填するため、多量の緩衝液を使用した。しかし、上記の方法で得られた効率を超えなかった。したがって、化学化合物の水溶解度を単に向上させても、インタクトな細菌由来のベシクルへの充填を向上する推進力にはならない。
[実施例11]ドキソルビシンの蛍光消光物質である葉酸は、インタクトなミニ細胞へのドキソルビシンの充填に影響を及ぼす
この実施例は、蛍光化合物の蛍光を消光すると、蛍光化合物がインタクトな細菌由来のベシクルにそれほど効率的に充填されないかどうかを決定する。この場合では、化合物は、自家蛍光性薬物であるドキソルビシン(Dox)であり、消光物質は葉酸(FA)とした。Husseini、Adv. Sci. Lett. 7巻:726頁(2012年)(FA quenches Dox fluorescence)を参照されたい。
物質及び方法
PBS(100μg/ml)中のドキソルビシンを、様々な濃度、つまり0μg/ml、50μg/ml及び400μg/mlのFAと混合した。この溶液を室温で一晩、インキュベートし、次に、0.1μmフィルターによってろ過し、溶液を滅菌して、いかなる微粒子も除去した。
翌日、各溶液の一定分量の蛍光を蛍光プレートリーダー(励起波長:485nm、発光波長:590nm及び620nm)で測定した。同時に、ミニ細胞をPBS緩衝液により洗浄し、次に、約1ml〜2mlの間の量で2.5×1010個のミニ細胞/mlの密度で予め調製した、各Dox+FA溶液のどれかを充填した。試料(500μl)を、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間及び一晩の時間点で、処理群の各々から採取した。
各時間点について、ミニ細胞に以下の小スケールプロトコルを施した:
1.ミニ細胞を遠心分離にかけた。16,000gで7分間。
2.上澄み液(SN)を廃棄し、1mlのPBS緩衝液(pH7.4)中でペレットを再懸濁した。
3.ミニ細胞を遠心分離にかけた。16,000gで7分間。
4.SNを廃棄し、0.5mlのPBS緩衝液中でペレットを再懸濁した。
5.0.8μmフィルターにミニ細胞懸濁液を通した。
6.上記のフィルターをさらに0.5mlのPBSにより洗浄し、ミニ細胞と一緒にした。
7.ミニ細胞を遠心分離にかけた。16,000gで7分間。
8.SNを廃棄し、1mlのPBS緩衝液中でペレットを再懸濁した。
9.ミニ細胞を遠心分離にかけた。16,000gで7分間。
10.SNを廃棄し、1mlのPBS緩衝液中でペレットを再懸濁した。
11.ミニ細胞を遠心分離にかけた。16,000gで7分間。
12.SNを廃棄し、最後に350μlのPBS緩衝液中でペレットを再懸濁した。
a. ナノ粒子トラッキング分析(Malvern Instruments、英国)をするために、Nanosight技法を使用して、ミニ細胞の定量を行うために、ミニ細胞を20μlとなる一定分量を採取した。
b. 抽出及びHPLC分析用にミニ細胞40μlをペレットにした(16,000gで15分間、SNを廃棄し、-20℃でペレットを保管した)。
ドキソルビシンが充填されているミニ細胞は、遠心分離後のペレットとしてのピンク-赤色に見えた。相対的な色調強度に基づいて、肉眼による検査を通じて評価すると、洗浄工程の完了後、400μg/mlの葉酸の存在下で充填したミニ細胞は、各時間点において、葉酸の非存在下で充填されたものよりもかなり少ないドキソルビシンしか含有していないことが明らかとなった。0μg/mlの葉酸と比べて、50μg/mlの葉酸試料中でも同様に充填量がやや少なく観察された。
50μg/ml及び400μg/mlの葉酸により、様々な程度で100μg/mlのDox溶液の蛍光が消光することが観察された(図16)。このことは、この溶液が485nmにおいて励起される場合に該当し、この発光は、590nm又は620nmのどちらかで測定したものであった。400μg/mlの葉酸を使用すると、ドキソルビシンの消光は一層、明確になり、約40%のドキソルビシンの蛍光発光シグナルが喪失した一方、50μg/mlというより低い濃度の葉酸を使用すると、ドキソルビシン発光の蛍光はわずか6〜7%しか失われなかった。
比色分析によるミニ細胞DOX試料の定量
比色アッセイの測定はDox蛍光とは無関係なので、ミニ細胞試料の各々に関するDox含有量を決定するため、HPLCの使用に加えて、比色アッセイを使用してドキソルビシン含有量を測定した。
ドキソルビシン標準曲線
遊離ドキソルビシンの標準曲線を生成した。バイオフォトメータにより、490nmにおいて、PBS中のドキソルビシンの吸光度を様々な濃度で、二連で測定した。
結果
線形回帰を平均データに対して行い、これにより、式y=0.019x(式中、yは、吸光度(Abs490nm)であり、xはドキソルビシンのμg/mlである)が得られた(図17)。したがって、測定されたミニ細胞Dox試料の場合、
μg/mlドキソルビシン=Abs490nm/0.019
であった。
ミニ細胞Dox試料の比色分析
各ミニ細胞Dox試料からのミニ細胞を上記の表に従い、キュベット中、PBS緩衝液(pH7.4)で200μlにした。空のミニ細胞を含有している「ブランク」試料も、キュベット中、PBS(pH7.4)200μl中で作製した。ブランクのミニ細胞試料及びミニ細胞Dox試料のすべての吸光度を490nmで測定した。
結果が上の図3に提示されている。大部分の試料は、0.472のブランクの吸光度(すなわち、それらは、0.1というバイオフォトメータの誤差範囲内であった)にあまりにも近いので、有用ではなかった。この比色アッセイの感度は、大多数の試料にはあまりにも低く、したがって、ほとんどの時間点からの測定が変動した。図18を参照されたい。
HPLCの結果
上のMacDiarmidら(2007年)により記載されているHPLCによる分析を行うため、ミニ細胞のペレットを処理した。各試料中のDoxは、UV250nm検出と相対蛍光(RF)検出の両方を使用して定量した。
UV250nmの読取値からのHPLC定量が図19に示されており、相対蛍光(RF)の読取値からのHPLC定量が図20に示されている。充填用溶液中に存在している葉酸の増加量は、ドキソルビシンをミニ細胞に充填するのに悪影響を及ぼすことが観察された。葉酸の外部濃度が高いほど、インタクトなミニ細胞に充填されたドキソルビシンの濃度は低かった。
[実施例12]ミトキサントロンの充填
この実施例は、「ミトザントロン」としても知られている、内在的に蛍光性の細胞毒性薬である、ミトキサントロン二塩酸塩(MTX)のインタクトな細菌由来のベシクルへの充填が向上したことを例示している。アントラセンジオン抗新生物剤MTXは、タイプIIのトポイソメラーゼ阻害剤として作用し、転移性乳がん、急性骨髄性白血病及び非ホジキンリンパ腫などのがんを処置するために使用されてきた。
ミトキサントロンは、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO)から購入した。空のインタクトなミニ細胞は、上記の通り調製した(3.2×1010/ml)。Centricon(登録商標)カラム(0.65μm)はMillipore(Billerica、MA)から、滅菌PBS(pH7.4)はSigma-Aldrichから、及び注入可能な生理食塩水はLivingstone Int'l(Rosebery、NSW)から得た。
MTXの2mg/mlの保存溶液を生理食塩水中で調製し、0.1μmフィルターによりろ過した(ミトキサントロンは、水に約5〜7.5mg/ml、可溶である)。得られた溶液を4℃で保管し、光から保護した。
小スケールプロトコルをこの実施例において使用するために適合させた。すなわち、個々の管中に、ミニ細胞を781μLの一定分量(最終2.5×1010)で供給した。これらの管を卓上型Eppendorf遠心分離器で、13,200rpmで8分間,回転した。この上澄み液を除去した。ペレットを1mlのPBS緩衝液(pH7.4)に再懸濁し、次に、再度、回転させた。こうして得られたペレットを850μlのPBS緩衝液に再懸濁した。
ミニ細胞懸濁液のそれぞれに、MTX(2mg/mlの保存溶液)のある量(150μl)を加え、300μg/ml(外部濃度)の最終充填溶液を得た。回転器上で混合することにより、試料を37℃で2時間、4時間又は一晩(約12時間)インキュベートした。
インキュベート後、ミニ細胞を13,200rpmで8分間、回転し、上澄み液を破棄した。このペレットを1mlのPBS(pH7.4)により洗浄し、上記の通り遠心分離にかけた。この上澄み液を廃棄した。
ペレットを0.5mlのPBS(pH7.4)に再懸濁し、回転しながら室温で15分間、インキュベートした。インキュベート後、各試料を0.65μm Centricon(登録商標)カラムに適用した後、試料全体が通過するまで、200gで1分間、回転した。通過分を新しい管に採集した。新しい0.5mlのPBS(pH7.4)を同じフィルターに適用して回転し、通過分を元の0.5mlの試料に加えた。
この試料を13,200rpmで8分間、遠心分離にかけ、上澄み液を破棄した。次に、各試料を350μlのPBS(pH7.4)中で再懸濁した。
ミニ細胞の試料の計数は、NanoSight Ltd(Amesbury、Wiltshire、英国)の製品である、LM20ナノ粒子分析システムを使用して、990μlのPBS(pH7.4)中の10μlミニ細胞を用いて行った。結果は以下の通りであった。
2時間:6.24×1010/ml
4時間:5.77×1010/ml
一晩:5.93×1010/ml
各試料(20μl)のロットを13,200rpmで8分間、回転し、上澄み液を除去し、次いで、ミニ細胞試料中のMTX含有量をHPLC分析した。
HPLCによって、各試料においてミニ細胞に充填されたMTXの量は、251nm(注入量:50μl)におけるピーク面積として測定した。一対の二連の試料(1、2:2時間の充填、3、4:4時間の充填及び5、6:一晩の充填)について、試料あたりのMTXの含有量及び109個のミニ細胞あたりのMTXの量を含め、結果を以下に示している。
試料5及び6に関しては、一晩充填すると、109個のミニ細胞は、平均で約0.56μgのMTXを充填した。このことは、ミニ細胞はそれぞれ、The Merck Index Online(2014年)によると、この薬物の分子量が約444であることに基づくと、約759,000個のMTX分子を含有したことを意味する。
ミニ細胞内部のMTXの濃度は、驚くほど高く、MTXのように内在的に蛍光性を示す、ドキソルビシンの濃度に匹敵した。Consoliら、Leukemia 11巻:2066〜74頁(1997年)及びBell、Biochim Biophys Acta 949巻:132〜37頁(1988年)(MTXの励起極大及び発光はそれぞれ、約610nm及び685nmである)を参照されたい。Smithら、Cancer Res. 52巻:4000〜08頁(1992年)も参照されたい(514nmにおいて低い赤色蛍光)。したがって、ドキソルビシンよりわずかに小さい、MTXの高い充填率はその蛍光の関数であると考えられる。
[実施例13]イオンの存在下での蛍光化合物の充填
この実施例は、イオンの存在により、最初の実施例によって証明された、ベシクルへの充填の、蛍光を媒介とする向上が強められることを示している。したがって、ベシクル媒体中の、塩の解離に由来するイオンは、細菌由来のベシクル(ここでは、ミニ細胞)のインタクトな膜中のチャネルと相互作用し、その結果、化合物とチャネル中又はチャネルに並ぶ分子との間のエネルギー移動が、膜貫通チャネルを介した蛍光化合物の移動に及ぼす上記で論じた効果が賦活されると考えられる。
小スケールプロトコルを踏まえて、ミニ細胞(管あたり2.5×1010)をPBS(pH7.4)1mlにより一度、洗浄し、遠心分離にかけて(16,000g、7分間)、上澄み液を廃棄した。15%エタノール、85%PBS(pH7.4)中で、洗浄したミニ細胞に、200mM KCl(Sigma Aldrich)を含むか又は含まないFLUTAX-1(Tocris Biosciences)100μg/mlのどちらかを充填した。
この管を37℃で回転した。15分間、45分間、2時間及び5時間のそれぞれで洗浄するために、各処置からの管を1つ取り出した。各処置物を3回、洗浄して試薬を除去し、ミニ細胞を保持した。
FLUTAX-1レベルは、上記の方法でHPLCにより測定した。こうして、測定値(UV228nm)を既知量のFLUTAX-1の標準曲線と比較し、1×109個のミニ細胞内にあるFLUTAX-1量を得るために外挿した。
図21が図示している通り、これらの結果は、充填用溶液中に200mM KClが含まれると、インタクトなミニ細胞へのFLUTAX-1の充填が劇的に向上されたことを示している。すなわち、より高い塩濃度ではそれに付随して、ミニ細胞に充填された蛍光薬物の量が2倍を超えた。実際に、この効果は、ミニ細胞/薬物を15分間しか共インキュベートしない後でも明白であった。
他のイオン性塩がこの効果を有するかどうかを解明するため、ミニ細胞へのFLUTAX-1の充填を、当量の異なる塩の存在下で試験した。充填はこれまでの通り、HPLCにより測定した。すなわち、ミニ細胞(管あたり2.5×1010個)をPBS(pH7.4)1mlにより一度、洗浄し、遠心分離にかけて(16,000g、7分間)、上澄み液を廃棄した。洗浄したミニ細胞に、15%エタノール、85%PBS(pH7.4)中で、KCl、NaCl又はKBr200mMを含むか又は含まないFLUTAX-1 100μg/mlのどちらかを充填した。この管を37℃で回転した。15分間及び1時間のそれぞれで洗浄するために、各条件からの管を1つ取り出した。上に記載されている通り、各処置物を3回洗浄した。
上記の通り、ミニ細胞を溶解して抽出し、FLUTAX-1レベルを測定するために、溶解物をHPLC条件下で操作した。測定値(UV228nm)を既知量のFLUTAX-1の曲線と比較し、1×109個のミニ細胞中のFLUTAX-1の量を得るために外挿した。
結果が図21に示されている。200mMでは、試験した塩の各々は、ミニ細胞への蛍光薬物の充填を劇的に向上し、15分間及び1時間の両方の時間点において改善は明白である。図22の棒グラフは、15分間の時間点から一緒にしたデータを表す。各実験(例えば、塩なし対200mM KCl)において実施された同一処置により、かなり一致した重複データが得られた。
塩KCl、NaCl及びKBrのそれぞれにより、この場合、15分間で約2倍、インタクトな細菌由来のベシクルへの蛍光薬物の充填率が向上した。充填は約4時間のインキュベートの範囲内で実際に完了した。これらの観察は、外部環境に添加された陽イオン及び/又は陰イオンと共に、ベシクル及び蛍光化合物を共インキュベートすることにより、インタクトなベシクルへの蛍光化合物の充填が向上されることを強調している。対照的に、非蛍光性である点以外は類似している化合物の充填に対しては、こうしたイオンの影響はない。
このイオンの効果は、共インキュベートの温度によって影響を受けることが分かった。例えば、HEPES生理食塩水緩衝液(pH6.8)中、インタクトな細菌由来のミニ細胞を調製し、実質的に上記の通り、それぞれ室温(約22℃)及び約37℃でドキソルビシンとの共インキュベートにより薬物を充填した場合の、様々な時間点におけるベシクル内のドキソルビシンレベルの、HPLCに基づいた定量からの結果は、以下の通りであった。
これらのデータ(図23)のグラフ表示から、約37℃で共インキュベートを行うと、ミニ細胞に充填される蛍光化合物の量が室温に比べ100%を超えることが示される(膜の分解により、約37℃よりもかなり高い、いかなる共インキュベート温度も実現不可能である)。
[実施例14]従来の小スケールプロトコルに勝る本発明の大スケール方法の利点
本実施例は、MacDiarmidら(2007年)との関連で、上で論じた小スケールプロトコルと本発明の大スケール方法を対比する。実施例が実証している通り、本発明の方法により、インタクトな細菌由来のベシクルを含有する組成物が、驚くほど優れた濃度と純度で得られた。これは、本発明の大スケール方法により、エンドトキシンレベルだけではなく、ベシクルの外部に捕捉されたペイロード化合物もかなり低減されるからである。
小スケールプロトコル
インタクトなミニ細胞を調製し、ミニ細胞が標的となるいずれの二重特異性リガンドも有しておらず、したがって、標的化宿主細胞によって取り込まれないことを除外すると、MacDiarmidら(2007年)の方法に実質的に従って、ドキソルビシンを充填した。回転しながら、37℃で薬物(約1ml/mg)と一晩、インキュベートして、充填されたミニ細胞に、5回、遠心分離(13,200rpm、10分間)を必要とする洗浄工程、及び得られたペレットの1ml BGS緩衝液(pH7.4)中での再懸濁を施した。
次に、洗浄済みのドキソルビシンを充填したミニ細胞(1×108)を、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及びペニシリンGとストレプトマイシンのどちらも100U/mlを補充したGibco RPMI-1640組織培養培地(ウェルあたり0.5ml中)中で、エストロゲン受容体陰性MDA-MB-468ヒト乳がん細胞(ウェルあたり104個細胞)と共にインキュベートした。
続いて、共焦点顕微鏡により、これらの細胞を24時間ごとにモニタリングした。充填されたミニ細胞ががん細胞による取込みの標的とならなかった場合でさえも、がん細胞は、2日以内に、ドキソルビシンの侵入を暗示する、がん細胞の核中での赤色の蛍光を示した。したがって、小スケールプロトコルにより、組織培養培地に浸出してがん細胞に侵入する外部ドキソルビシンがミニ細胞表面上で捕捉された。
大スケール方法
ドキソルビシンを封入したミニ細胞のバッチを独立して5つ調製し、EGFRに結合する二重特異性リガンドを用いて標的化した(MacDiarmidら(2007年)の443頁の「実験手順」の第2段落を参照されたい)。大スケール方法に準拠し、ドキソルビシンを充填しており、かつEGFRを標的とするミニ細胞に、大型のクロスフローフィルター上で、PBS緩衝液を用いて、5回、連続の洗浄(1回の洗浄あたり約20リットル)を施した。
ミニ細胞の各バッチについて、ドキソルビシン濃度を上記の通り決定し、遊離エンドトキシンのレベルは、標準LALアッセイにより測定した。例えば、Dawson、LAL Update、22巻、3号(2005年10月)を参照されたい。これらの結果が、以下に表にまとめられている。
これらの結果が示す通り、大スケール方法により、充填されたミニ細胞について、1×109個のミニ細胞あたり約672ng±58ngとなる平均ドキソルビシン濃度がもたらされた。大スケール方法を用いて純度の大きな改善が実現されたことが、1×109個のミニ細胞あたり、2.99EU±1.45EUの平均遊離エンドトキシンレベルとなることによって裏付けられる。
ある種の実施形態を例示して説明してきたが、以下の特許請求の範囲において規定されている通り、より幅広い態様における技術から逸脱することなく、当業者によって、本明細書において変更及び修正を行うことができることを理解すべきである。
上で例示として記載されている実施形態は、具体的に開示されていない、任意の要素(単数又は複数)、限定(単数又は複数)なしに、好適に実施することができる。例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などは、拡張的かつ非限定的に読まれるべきである。さらに、本明細書において使用された用語及び表現は、説明の用語として使用されており、制限の用語として使用されているわけではなく、こうした用語及び表現を使用する際、示され説明されている特徴又はその一部のいかなる均等物も除外する意図はない。むしろ特許請求されている技術の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。さらに、言い回し「から本質的になる(consisting essentially of)」は、具体的に列挙されているそうした要素、及び特許請求されている技術の基本的及び新規特徴に具体的に影響を及ぼさない追加の要素を含むことが理解されよう。表現「からなる(consisting of)」は、指定されていない、いかなる要素も除外する。
本開示は、この明細書において記載されている特定の実施形態に関するものに限定されるべきではない。多くの修正及び改変が、当業者に明白である通り、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本開示の範囲内にある、機能的に等価な方法及び組成物は、本明細書において列挙されているものに加えて、上述の説明から当業者には明白となろう。こうした修正及び改変は、添付の特許請求の範囲内に収まることが意図されている。本開示は、こうした特許請求の範囲の権利が与えられる均等物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるものとする。本開示は、当然ながら様々になり得る、特定の方法、試薬、化合物組成又は生物系に限定されないことを理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載するためだけのものであり、限定を意図するものではないことも同様に理解されたい。
さらに、本開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本開示がまた、これにより、マーカッシュ群の個々の任意の構成要素又はその構成要素の下位群の観点から記載されていることを認識するであろう。
当業者によって理解される通り、任意及びすべての目的のために、特に、記載されている説明を提示するという点に関して、本明細書において開示されているすべての範囲はまた、任意及びすべての可能な部分範囲及びその部分範囲の組合せも包含する。列挙されているいずれの範囲も、十分に説明したものとして、及び同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分けることができるものとして容易に認識することができる。非限定例として、本明細書において論じられた各範囲は、下から3分の1、真ん中の3分の1及び上から3分の1などに容易に分けることができる。当業者によってやはり理解される通り、「まで」「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などの言葉のすべては、列挙されている数字を含み、上で論じたように部分範囲に後で分けることができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解される通り、範囲は、個々のメンバーのそれぞれを含む。
本明細書中において参照されているすべての公報、特許出願、交付特許及びその他の文献は、あたかも個々の公報、特許出願、交付特許又はその他の文献の各々が、具体的かつ個々に示されて参照によりそれらの全体が組み込まれているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれている。参照により組み込まれている本明細書中に含まれる定義は、本開示における定義に矛盾する範囲については排除される。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に説明されている。

Claims (23)

  1. ドキソルビシン、イリノテカン、ビスアントレン、トポテカン、エピルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、Oregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセル又はBODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチンではない、蛍光低分子薬を封入するインタクトな非生存細菌ベシクルを含む組成物。
  2. ベシクルが、インタクトな細菌由来のミニ細胞である、請求項1に記載の組成物。
  3. ミニ細胞が、少なくとも約500,000個の分子の低分子薬を封入する、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. ベシクルが死滅細菌細胞である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 低分子薬が、
    (a)生物活性である、かつ/又は
    (b)細胞毒性がある、かつ/又は
    (c)インビボで活性化される
    請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 低分子薬がモルホリニルアントラサイクリン誘導体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 低分子薬がPNU-159682である、請求項6に記載の組成物。
  8. 式D-L-Fの化合物又はその塩を封入するインタクトな非生存細菌ビシクルを含む組成物であって、Dが低分子薬の残基であり、Lがリンカーであり、Fが蛍光部分である、組成物。
  9. リンカーが、約6時間〜約24時間の間の半減期を有する、請求項8に記載の組成物。
  10. リンカーが哺乳動物細胞のエンドソームにおいて分解される、請求項8又は9に記載の組成物。
  11. (a) リンカーが、結合、-OC(O)-(CHR40)qNR41C(O)-及び-OC(O)-(CHR40)qC(O)NR41-(CHR42)u-NH-C(S)-NH-からなる群から選択され、R40、R41及びR42が、独立して-H若しくはC1〜4アルキルであり、q及びuが、独立して、1、2、3、4、5、6若しくは7であるか、又は
    (b) リンカーが、-O-C(O)-(CH2)NHC(O)-及び-O-C(O)-(CH2)3C(O)NH-(CH2)6-NH-C(S)-NH-からなる群から選択される、
    請求項8から10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 蛍光部分が、
    (式中、
    R21は、-H、-OH、-COOH、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、C1〜4アルコキシ、ハロ又は-Rdであり、
    R22は、-H、-OH、-COOH、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、置換C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-O-C(O)-(置換C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(置換C1〜4アルキル)、-O-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-S-CH2-O-(C1〜4アルキル)又は-Rdであり、
    R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29はそれぞれ、独立して、-H、ハロ、-OH、-CH3又は-Rdであるが、
    ただし、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29のうちの少なくとも1つは、-Rdであり、Rdはリンカーへの結合点であることを条件とする)である、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 蛍光部分が、
    (式中、R21は、リンカーへの結合点である)である、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 蛍光部分が、
    (式中、
    R31及びR32は、独立して、-H、-OH、C1〜4アルキル、C1〜4ハロアルキル、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、C1〜4アルコキシ、ハロ又は-Rdであり、
    R34及びR35は、独立して、-H、ハロ、-OH、-COOH、C1〜4アルキル、置換C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、-O-C(O)-(C1〜4アルキル)、-C(O)-O-(C1〜4アルキル)、-O-CH2-O-(C1〜4アルキル)、-S-CH2-O-(C1〜4アルキル)又は-Rdであり、
    R33及びR36はそれぞれ独立して、-H、ハロ、-OH、-CH3又は-Rdであり、
    R37、R38及びR39はそれぞれ独立して、ハロ、-OH、-CH3又は-Rdであり、
    m、n及びpはそれぞれ独立して、0、1、2、3又は4であるが、
    ただし、R31、R32、R34、R34、R35、R36、R37、R38及びR39のうちの少なくとも1つは、-Rdであり、Rdはリンカーへの結合点であることを条件とする)である、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 蛍光部分が、
    (式中、R32は、リンカーへの結合点である)である、請求項14に記載の組成物。
  16. リンカーを介してエネルギー移動部分に結合されている活性剤を含む化合物を封入するインタクトな細菌由来の細菌ベシクルを含む組成物であって、前記活性剤が、Oregon Green(登録商標)488-コンジュゲートされているパクリタキセル及びBODIPY(登録商標)FL-コンジュゲートされているビンブラスチン以外である、組成物。
  17. エネルギー移動部分が、
    (a) 発光部分である、
    (b) 共役パイ系を含む、かつ/又は、
    (c) アクリジニル部分、ザンテニル部分若しくはベンゾイミダゾリル部分を含む
    請求項16に記載の組成物。
  18. 遠心分離を用いることなく、所望の化合物を複数のミニ細胞に充填する方法であって、
    (a)緩衝液体中、前記化合物のある量のインキュベート用溶液を複数回、インキュベートするステップであって、前記量が約100ml程度以上となる、ステップ、次に
    (b)洗浄工程を複数から多数回、施すステップであって、それぞれが数リットル程度である、ある量の緩衝液体によるミニ細胞のクロスフローろ過を含み、洗浄工程のいずれもミニ細胞の遠心分離を使用しない、ステップ
    を含む方法。
  19. 所望の化合物とは異なる二元イオン化合物を、約200mM程度以上の濃度までインキュベート用溶液に溶解する、請求項18に記載の方法。
  20. (a) 工程(b)が、3〜5回の洗浄工程を含む、かつ/又は
    (b) 所望の化合物が蛍光性である、かつ/又は
    (c) インキュベートが、約4時間以上の期間である、かつ/又は
    (d) 所望の化合物が生物活性である、かつ/又は
    (e) 所望の化合物が、約1500ダルトン以下の低分子薬である、かつ/又は
    (f) 低分子薬に細胞毒性がある、かつ/又は
    (g) 低分子薬がインビボで活性化される
    請求項18又は19に記載の方法。
  21. 所望の化合物が、式D-L-F又はその塩であり、Dが低分子薬の残基であり、Lがリンカーであり、Fが蛍光部分である、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. (a) リンカーが、約6時間〜約24間の半減期を有する、かつ/又は
    (b) リンカーが、哺乳動物細胞のエンドソーム中で分解する
    請求項21に記載の方法。
  23. それを必要としている患者においてがんを処置するための医薬における、化合物に細胞毒性がある、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物の有効量の使用。
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