発明の詳細な説明
本発明者らは、IL−34が免疫抑制を誘導し、初代T細胞応答を阻害し、T細胞寛容を誘導することを実証した。自己免疫、アレルギー、移植、治療用タンパク質による処置及び遺伝子治療の分野では、免疫系による自己又は治療分子/組織の分解を避けるために、このアプローチは関心対象である。
本発明者らは、CD8+Tregの免疫抑制機能におけるIL−34の関与をin vitroで初めて実証した。骨髄細胞上において専ら発現されるそのレセプターCD115の遮断は、pDCに応じたエフェクターCD4+T細胞増殖に対するIL−34の抑制効果を回復させたが、これは、pDCを介したT細胞応答の間接的な抑制を示唆している。本発明者らは、IL−34の過剰発現が、感染寛容性の調節性細胞を誘導することをin vivoで初めて示した。したがって、本発明者らは、CD8+Tregによる抑制の新たなメディエーターとして、及び同種移植片拒絶を効率的に阻害する寛容原性サイトカインとしてIL−34を同定した。
本発明者らはまた、IL−34及び準最適の短期免疫抑制処置(ラパマイシン)を含む組み合わせが、別個の各処置と対比して、長期移植片生存の相乗的増加を可能にすることを実証した。したがって、本発明者らは、AAV媒介性過剰発現を使用して、移植におけるこのサイトカインの免疫調節能力を評価したところ、短い10日間の準最適用量のラパマイシンにより同種移植片生存が有意に延長し、75%において不定的な生存をもたらし、同種抗体産生が完全に阻害されることを実証した。
本発明者らは、IL−34が、移植拒絶のリスクを予測するためのバイオマーカーとして有用であることをさらに実証した。
治療方法及び用途:
本発明は、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するための方法及び組成物(例えば、医薬組成物及びキットオブパーツ組成物)を提供する。
本発明はまた、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するための方法及び組成物を提供する。
本発明はさらに、その患者における自己免疫疾患、同種免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するのに使用するための方法及び組成物を提供する。
第1の態様では、本発明は、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するための単離されたインターロイキン−34(IL−34)ポリペプチドに関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するための単離されたマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)ポリペプチドに関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するための、単離されたIL−34ポリペプチドと単離されたM−CSFポリペプチドとの組み合わせに関する。
本明細書で使用される「免疫寛容」という用語は、免疫応答を誘発する能力を有する物質又は組織に対する免疫系の応答が無い状態を指す。
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、T細胞媒介性及び/又はB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答は、T細胞応答、例えばサイトカイン産生及び細胞傷害性を含み、加えて、免疫応答という用語は、T細胞活性化よって間接的に影響される免疫応答、例えば抗体産生(体液性応答)及びサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化を含む。免疫応答に関与する免疫細胞としては、リンパ球、例えばB細胞及びT細胞(CD4+、CD8+、Th1及びTh2細胞);抗原提示細胞(例えば、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;骨髄性細胞、例えばマクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球及び顆粒球が挙げられる。
例えば、免疫応答は、移植拒絶だけではなく、このような免疫応答の付随する生理学的結果、例えば間質性線維症、慢性グラフトアテローム性硬化症又は血管炎などに関与する。免疫応答はまた、自己免疫疾患及びこのような免疫応答の付随する生理学的結果、例えばT細胞依存性浸潤及び直接的な組織傷害、マクロファージ及び他のエフェクター細胞のT細胞依存性動員及び活性化、並びに自己抗体産生をもたらすT細胞依存性B細胞応答に関与する。
したがって、未処置患者と比較して、IL−34ポリペプチドによる処置患者は、以下の生理学的特徴を示す:a)免疫応答のレベルの低下(特異的又は非特異的)(抗原特異的エフェクターCD4+T細胞及びCD8+リンパ球によって少なくとも部分的には媒介されると考えられる);b)免疫応答(特異的又は非特異的)の発生若しくは進行の遅延;又はc)免疫応答(特異的又は非特異的)の発生若しくは進行のリスクの減少。本明細書で使用される「特異的」免疫寛容という用語は、他のものと比較して特定の抗原に対して、免疫寛容が優先的に誘発される場合に現れる。
「それを必要とする患者」は、処置すべき移植拒絶、自己免疫疾患、同種免疫応答又はアレルギーを患っているか又は患いやすい個体を意味する。本発明の枠内で処置すべき個体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
特定の一実施態様では、それを必要とする患者は、移植を受けている患者である。
第2の態様では、本発明は、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するための単離されたIL−34ポリペプチドに関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するための単離されたM−CSFポリペプチドに関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するための、単離されたIL−34ポリペプチドと単離されたM−CSFポリペプチドとの組み合わせに関する。
本明細書で使用される「移植拒絶の予防又は軽減」という用語は、免疫移植拒絶の予防又は阻害、及び免疫移植拒絶の発症又は進行の遅延を包含することを意味する。この用語はまた、患者における移植物の生存の延長、又は患者における移植物の失敗の回復を包含することを意味する。さらに、この用語は、例えば、免疫拒絶に関連する免疫学的合併症、例えば間質性線維症、慢性グラフトアテローム性硬化症又は血管炎などの改善を含む、免疫移植拒絶の症候の改善を包含することを意味する。
本明細書で使用される「移植拒絶」という用語は、急性移植拒絶及び慢性移植拒絶の両方を包含する。「急性拒絶」は、移植組織が免疫学的に異物である場合の組織移植レシピエントの免疫系による拒絶である。急性拒絶は、レシピエントの免疫細胞による移植組織の浸潤(これは、それらのエフェクター機能を実行し、移植組織を破壊する)を特徴とする。急性拒絶の発症は急速であり、一般に、ヒトでは移植手術後数週間以内に起こる。一般に、急性拒絶は、ラパマイシン、シクロスポリン、抗CD40Lモノクローナル抗体などの免疫抑制薬で阻害又は抑制され得る。「慢性移植拒絶」は、一般に、急性拒絶の免疫抑制が成功した場合であっても、ヒトでは移植後数カ月〜数年以内に起こる。線維症は、全ての種類の臓器移植の慢性拒絶における共通因子である。
「移植」という用語及びその変化形は、移植が同系(ドナー及びレシピエントが遺伝的に同一である場合)、同種異系(ドナー及びレシピエントが異なる遺伝的起源のものであるが、同じ種のものである場合)又は異種(ドナー及びレシピエントが異なる種に由来する場合)であるかにかかわらず、レシピエントへの移植物(移植片とも称される)の挿入を指す。したがって、典型的なシナリオでは、宿主はヒトであり、移植片は、同じ又は異なる遺伝的起源のヒト由来の同種移植片である。別のシナリオでは、移植片は、それが移植される種と異なる種に由来し(系統学的に遠く離れている種由来の動物を含む)、例えばヒヒの心臓がヒト宿主に移植される。
一実施態様では、移植物のドナーは、ヒトである。移植物のドナーは、生存しているドナー又は死亡したドナー(すなわち、死体ドナー)であり得る。
一実施態様では、移植物は、臓器、組織又は細胞である。
本明細書で使用される「臓器」という用語は、生物内で特定の機能又は機能群を実行する固体の血管新生臓器を指す。臓器という用語は、限定されないが、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、皮膚、子宮、骨、軟骨、小腸又は大腸、膀胱、脳、胸、血管、食道、ファロピウス管、胆嚢、卵巣、膵臓、前立腺、胎盤、脊髄、四肢(上肢及び下肢を含む)、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿管、尿道、子宮を含む。本明細書で使用される「組織」という用語は、ヒト又は動物における任意の種類の組織を指し、限定されないが、血管組織、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨格組織(骨及び軟骨を含む)、脂肪組織、結合組織(腱及び靭帯を含む)、羊膜組織、絨毛組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織を含む。
特定の実施態様では、移植拒絶は、心臓同種移植拒絶である。
本明細書で使用される「細胞」という用語は、目的の細胞が豊富な組成物、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、特により好ましくは少なくとも65%の前記細胞を含む組成物を指す。
特定の実施態様では、細胞は、骨髄、末梢血若しくは臍帯血由来の多分化能造血幹細胞;又は異なる細胞系統、例えば心筋細胞、ベータ−膵臓細胞、肝細胞、ニューロンなどの多能性(すなわち、胚性幹細胞(ES)又は人工多能性幹細胞(iPS))若しくは多分化能幹細胞由来の分化細胞からなる群より選択される。
一実施態様では、細胞組成物は、同種造血幹細胞移植(HSCT)に使用されるので、通常は、骨髄、末梢血又は臍帯血由来の多分化能性造血幹細胞を含む。
HSCTは、白血病及びリンパ腫を有する患者の治療であり得る。しかしながら、同種HCTの重要な限界は、移植片対宿主病(GVHD)の発症であり、この治療を受けるヒトの約30〜50%では重症型で生じる。
本発明のポリペプチドは、移植片対宿主病(GvHD)の予防又は軽減に有用である。
したがって、一実施態様では、それを必要とする患者は、急性骨髄性白血病(AML);急性リンパ性白血病(ALL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄異形成症候群(MDS)/骨髄増殖性症候群;リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)及び多発性骨髄腫からなる群より選択される疾患に罹患している。
第3の態様では、本発明は、その患者における自己免疫疾患、遺伝子治療の過程で発現されるタンパク質又は治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するのに使用するための単離されたIL−34ポリペプチドに関する。
本発明はまた、その患者における自己免疫疾患、遺伝子治療の過程で発現されるタンパク質又は治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するのに使用するための単離されたM−CSFポリペプチドに関する。
本発明はまた、その患者における自己免疫疾患、遺伝子治療の過程で発現されるタンパク質又は治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するのに使用するための、単離されたIL−34ポリペプチドと単離されたM−CSFポリペプチドとの組み合わせに関する。
本明細書で使用される「予防する」、「予防すること」及び「予防」という用語は、疾患、障害又は症状の少なくとも1つの症候を最終的に発現する可能性があるがまだ発現していない個体に治療を施行して、個体が、所定の期間にわたって疾患、障害又は症状の症候を発症する可能性を減少させることを指す。このような減少は、例えば、患者における疾患、障害又は症状の少なくとも1つの症候の発症の遅延に反映され得る。
本明細書で使用される「処置する」、「処置すること」又は「処置」という用語は、患者の疾患、異常、障害又は有害症状の症候の頻度及び/又は重症度を軽減するために、個体に治療を施行することを指す。
本明細書で使用される「自己免疫疾患」という用語は、免疫系が、正常宿主の一部である抗原(すなわち、自己抗原)に対する免疫応答(例えば、B細胞又はT細胞応答)を引き起こし、その結果として組織損傷を伴う疾患を指す。自己免疫疾患では、宿主の免疫系は、特定の抗原を「自己」として認識することができず、該抗原を発現する宿主組織に対して免疫応答が起こる。
ヒトが罹患する例示的な自己免疫疾患としては、関節リウマチ、若年性少関節炎、コラーゲン誘発性関節炎、アジュバント誘発性関節炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、自己免疫性胃萎縮症、尋常性天疱瘡、乾癬、白斑、1型糖尿病、非肥満糖尿病、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、アジソン病、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、後天性血友病、血栓性血小板減少性紫斑病などが挙げられる。
本明細書で使用される「治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答」という用語は、遺伝子治療の過程で発現されるタンパク質及び/又は治療用タンパク質、例えば第VIII因子(血友病A)及び他の凝固因子、酵素補充療法、モノクローナル抗体(例えば、ナタリズマブ、リツキシマブ、インフリキシマブ)、ポリクローナル抗体、酵素又はサイトカイン(例えば、IFNβ)に対する任意の望ましくない免疫応答を指す。
例えば、実際、このアプローチは、免疫応答を抑制するために、特に、対応する遺伝子欠損を有する個体において遺伝子治療によって発現が回復した場合に、特定のタンパク質に対する免疫応答を防止するために適用され得る。したがって、本発明の単離されたIL−34ポリペプチドは、突然変異により患者において通常存在しないが、遺伝子治療によって再構成が達成されるタンパク質に対する免疫応答を防止するために使用され得る。
また、タンパク質治療は、より普及しており、治療用製品として酵素、抗体又はサイトカインなどのタンパク質を患者に直接適用することを含む医療イノベーションの領域である。このような医薬の送達における主な障害の1つは、治療用タンパク質それ自体に対する免疫応答を含む。タンパク質系治療薬の投与は、免疫抑制剤(これは、より長寿のタンパク質を容易にし、したがって、生物の細胞及び組織へのタンパク質の取り込みの増加を容易にするために使用される)の投与によって達成されることが多い。しかしながら、一般的な免疫抑制剤は、行われる免疫抑制の非特異的性質のために不利であり、望ましくない副作用を患者にもたらし得る。したがって、このアプローチは、患者に投与される治療用タンパク質及びペプチド、例えば治療用抗体、サイトカイン、酵素又は任意の他のタンパク質に対する免疫応答を抑制するために適用され得る。
本明細書で使用される「アレルギー(allergy)」又は「アレルギー(allergies)」という用語は、免疫系の障害(又は不適切な反応)を指す。アレルギー反応は、アレルゲンとして公知の通常無害な環境物質に対して起こる;これらの反応は、後天的、予測可能及び迅速である。厳密に言えば、アレルギーは、過敏症の4つの形態の1つであり、I型(又は即時型)過敏症と称される。それは、IgEとして公知の抗体型による、肥満細胞及び好塩基球と称される特定の白血球の過剰な活性化を特徴とし、過度の炎症反応をもたらす。一般的なアレルギー反応としては、湿疹、蕁麻疹、枯草熱、喘息、食物アレルギー、並びに雀バチ及びミツバチなどの刺咬昆虫の毒に対する反応が挙げられる。
本明細書で使用される「インターロイキン−34ポリペプチド」又は「IL−34ポリペプチド」という用語は当技術分野で周知であり、単球及びマクロファージの増殖、生存及び分化を促進するサイトカインを指す。この用語は、天然に存在するIL−34アイソフォーム(例えば、Q81にかかわらず、Q6ZMJ4及びQ6ZMJ4−2)、変異体(例えば、変異体rs8046424及びrs7206509)及びそれらの改変形態を含む。天然に存在するヒトIL−34タンパク質は、アクセッションナンバーQ6ZMJ4でUniProtデータベースに提供されている242アミノ酸のアミノ酸配列を有し、以下のように示され(配列番号:1)、又は配列番号:1の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の配列を有するポリペプチドである:
本明細書で使用される「マクロファージコロニー刺激因子ポリペプチド」又は「M−CSFポリペプチド」(「コロニー刺激因子1ポリペプチド」については、CSF−1としても公知である)という用語は、マクロファージの産生、分化及び機能をコントロールする任意のネイティブ又は変異体(ネイティブ又は合成にかかわらず)のサイトカインを指す。この用語は、天然に存在するM−CSF変異体及びその改変型を含む。したがって、選択的mRNAスプライシングによって産生される3つの異なる変異体M−CSFアイソフォームがそれぞれ記載されており、M−CSF[アルファ]変異体は、アクセッションナンバーUPI0000D61F83でUniProt Uniparcデータベースに提供されている256アミノ酸のタンパク質を指し、M−CSF[ベータ]変異体は、アクセッションナンバーNP_000748.3でGenPeptデータベースに提供されている554アミノ酸のタンパク質を指し、アクセッションナンバーNM_000757.5でGenBankデータベースに提供されている核酸配列によってコードされ、M−CSF[ガンマ]変異体は、アクセッションナンバーNP_757349.1でGenPeptデータベースに提供されている438アミノ酸のタンパク質を指し、アクセッションナンバーNM_172210.2でGenBankデータベースに提供されている核酸配列によってコードされる。
一実施態様では、M−CSFポリペプチドは、アクセッションナンバーUPI0000D61F83でUniProt/Uniparcデータベースに提供されている256アミノ酸のヒトアイソフォームM−CSF[アルファ]であり、以下のように示され(配列番号:4)、又は配列番号:4の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の配列を有するポリペプチドである:
一実施態様では、M−CSFポリペプチドは、アクセッションナンバーNP_000748.3でGenBankデータベースに提供されている554アミノ酸のヒトアイソフォームM−CSF[ベータ]であり、以下のように示され(配列番号:5)、又は配列番号:5の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の配列を有するポリペプチドである:
一実施態様では、M−CSFポリペプチドは、アクセッションナンバーNP_757349.1でGenBankデータベースに提供されている438アミノ酸のヒトアイソフォームM−CSF[ガンマ]であり、以下のように示され(配列番号:6)、又は配列番号:6の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の配列を有するポリペプチドである:
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、天然又は合成で生産されるかにかかわらず、非特定の長さを有するペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーを指す。したがって、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質はポリペプチドの定義に含まれ、これら用語は、本明細書および特許請求の範囲を通して互換的に使用される。ポリペプチドという用語は、限定されないが、リン酸化、アセチル化、グリコシル化などを含む翻訳後修飾を除外するものではない。この用語はまた、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーだけではなく、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
「単離された」ポリペプチドは、ポリペプチドが生物内、例えば人体内に存在しないことを意図する。しかしながら、単離されたポリペプチドは、組成物又はキットの一部であり得る。単離されたポリペプチドは、好ましくは精製される。このようなポリペプチドは、夾雑細胞成分、例えば炭水化物、脂質、又は天然では該ポリペプチドに付随する他のタンパク質性不純物を本質的に含まない。典型的には、単離されたポリペプチドの調製物は、高度に精製された形態、すなわち少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、95%超純粋、例えば96%、97%又は98%又はそれ以上純粋、又は99%超純粋なポリペプチドを含有する。特定のタンパク質調製物が単離されたポリペプチドを含有することを示す一例は、タンパク質調製物のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びゲルのクーマシーブリリアントブルー染色後に、単一バンドが出現することである。
「IL−34ポリペプチド」という用語は、本明細書では、天然に存在するヒトポリペプチドIL−34及び該ポリペプチドの天然に存在するアレル変異を含むと定義される。アレル変異は、種集団における天然に存在する塩基変化であり、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸変化をもたらしてもよいし、又はもたらさなくてもよい。加えて、本発明のIL−34ポリペプチドは、全長IL−34及びその変異体を含むか又はこれらからなるポリペプチドだけではなく、それらのフラグメントが生物学的に活性である限り、該フラグメントからなるポリペプチドも包含する。加えて、ポリペプチド及びそのDNA配列中に人工的改変を含有し得るリコンビナント型及び合成型の両方のポリペプチドIL−34がこの定義に含まれる。したがって、IL−34ポリペプチドという用語は、配列番号:1の配列によってコードされるIL−34ポリペプチドの機能的等価物を包含することを意図する。
「M−CSFポリペプチド」という用語は、本明細書では、天然に存在するヒトポリペプチドM−CSF及び該ポリペプチドの天然に存在するアレル変異を含むと定義される。アレル変異は、種個体群における天然に存在する塩基変化であり、ポリペプチド又はタンパク質におけるアミノ酸変化をもたらしてもよいし、又はもたらさなくてもよい。加えて、本発明のM−CSFポリペプチドは、全長M−CSF及びその変異体を含むか又はこれらからなるポリペプチドだけではなく、そのフラグメントが生物学的に活性である限り、該フラグメントからなるポリペプチドも包含する。加えて、ポリペプチド及びそのDNA配列において誘導性改変を含有し得るリコンビナント型及び合成型の両方のポリペプチドM−CSFがこの定義に含まれる。したがって、M−CSFポリペプチドという用語は、配列番号:4、配列番号:5又は配列番号:6の配列によってコードされるM−CSFポリペプチドの機能的等価物を包含することを意図する。
本明細書で使用される「機能的等価物」は、親ポリペプチドの生物学的活性及び特異性を保持する分子(例えば、リコンビナントポリペプチド)を指す。したがって、「IL−34ポリペプチドの機能的等価物」という用語は、該機能的等価物が、下記のように参照ポリペプチドの生物学的活性の少なくとも1つ、好ましくは全てを示す限り、それが指すポリペプチド(すなわち、IL−34ポリペプチド)の変異体及びフラグメントを含む。IL−34ポリペプチドの機能的等価物は、以前に記載されている(40)。「M−CSFポリペプチドの機能的等価物」という用語は、該機能的等価物が、下記のように参照ポリペプチドの生物学的活性の少なくとも1つ、好ましくは全てを示す限り、それが指すポリペプチド(すなわち、M−CSFポリペプチド)の変異体及びフラグメントを含む。
ポリペプチド「変異体」は、ネイティブ配列のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを指す。このような変異体としては、例えば、1つ以上のアミノ酸残基が、ポリペプチドのN末端又はC末端において付加又は欠失されているポリペプチドが挙げられる。通常、変異体は、ネイティブ配列のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。
本発明のクエリーアミノ酸配列と例えば少なくとも95%「同一」のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、対象ポリペプチド配列が、クエリーアミノ酸配列の各100アミノ酸当たり最大5アミノ酸の変化を含み得ることを除いて、対象ポリペプチドのアミノ酸配列がクエリー配列と同一であることを意図する。換言すれば、クエリーアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、対象配列におけるアミノ酸残基の最大5%(100個のうちの5個)が挿入され、欠失され、又は別のアミノ酸で置換され得る。
本出願の枠内では、同一性の割合は、グローバルアラインメントを使用して計算される(すなわち、2つの配列は、それらの全長にわたって比較される)。2つ以上の配列の同一性及び相同性を比較するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、全長を考慮して2つの配列の最適なアラインメント(ギャップを含む)を見出すためにNeedleman-Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970 J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用する「needle」プログラムが使用され得る。needleプログラムは、例えば、ebi.ac.ukワールドワイドウェブサイトにおいて入手可能である。本発明による同一性の割合は、好ましくは、「Gap Open」パラメータ=10.0、「Gap Extend」=0.5及びBlosum62マトリックスのEMBOSS::needle(グローバル)プログラムを使用して計算される。
参照配列と「少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一の」アミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、参照配列と比較して欠失、挿入及び/又は置換などの突然変異を含み得る。参照配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、参照配列のアレル変異体に対応し得る。例えば、それは、参照配列と比較して置換のみを含み得る。置換は、好ましくは、以下の表に示されている保存的置換に対応する。
本明細書で使用されるポリペプチド「フラグメント」は、参照ポリペプチドよりも短い生物学的に活性なポリペプチドを指す(すなわち、IL−34ポリペプチドのフラグメント又はM−CSFポリペプチドのフラグメント)。したがって、本発明のポリペプチドは、フラグメントが生物学的に活性である限り、IL−34又はM−CSFのフラグメントを含むか又はこれからなるポリペプチドを包含する。
本発明の枠内では、生物学的に活性なフラグメントは、例えば、IL−34ポリペプチドの少なくとも連続する175、200、205、210、215、220、225、230、235、240アミノ酸を含み得る。
本発明の枠内では、生物学的に活性なフラグメントは、例えば、M−CSFポリペプチドの連続する少なくとも150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525又は550アミノ酸を含み得る。
特定の一実施態様では、M−CSFポリペプチドは、ヒトM−CSFの150アミノ酸のポリペプチドを含むか又はこれからなり、以下のように示される(配列番号:7):
IL−34若しくはその機能的等価物又はM−CSF若しくはその機能的等価物の「生物学的活性」は、
(i)(実施例のセクションに記載されているように)免疫寛容を(ラットでは少なくとも120日間)誘導及び/又は維持する能力;すなわち、混合リンパ球反応(MLR)におけるCD4+及びCD8+T細胞の増殖を阻害する能力;及び/又は
(ii)臓器同種移植モデル(心臓同種移植モデル)における移植拒絶を予防する能力
を意味する。
当業者であれば、IL−34ポリペプチドの機能的等価物又はM−CSFポリペプチドの機能的等価物が生物学的に活性であるかを容易に決定し得る。新たに作製したポリペプチドが、MLRにおけるCD4+T細胞増殖を阻害し、及び/又は臓器同種移植モデルにおける移植拒絶を予防するかを調べるために、各ポリペプチドについて、FACS分析又は単一細胞遺伝子発現プロファイリング(実施例のセクションを参照のこと)を実施し得る。また、新たに作製したポリペプチドが移植拒絶を予防するかを調べるために、臓器同種移植モデルを使用し得る(実施例のセクションを参照のこと)。加えて、(例えば、臓器同種移植モデルを使用することによって)in vitro又はin vivoで実施した経時変化及び用量反応は、各ポリペプチドの最適条件を決定するであろう。
一実施態様では、本発明のポリペプチドは、タグを含み得る。タグは、ポリペプチドの精製に有用であり得るエピトープ含有配列である。それは、免疫標識技術を使用して細胞又は組織サンプル内のポリペプチドを位置決定するために、イムノブロッティングなどによってポリペプチドを検出するために、親和性クロマトグラフィーなどの様々な技術によって付加される。当技術分野で一般に用いられるタグの例は、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグ、FLAG(商標)タグ、Strep-tag(商標)、V5タグ、mycタグ、Hisタグ(典型的には、6個のヒスチジン残基からなる)などである。
別の実施態様では、本発明のポリペプチドは、その安定性及び/又はそのバイオアベイラビリティを改善する化学的改変を含み得る。このような化学的改変は、in vivoにおける酵素分解からのポリペプチドの保護が強化され、及び/又は膜バリアを通過する能力が強化されたポリペプチドを得、それにより、ポリペプチドの半減期を増加させ、その生物学的活性を維持又は改善することを目的とする。当技術分野で公知の任意の化学的改変が、本発明にしたがって用いられ得る。このような化学的改変としては、限定されないが:
−改変及び/若しくは異常アミノ酸によるアミノ酸の置換(例えば、Nle、Nva若しくはOrnのような異常アミノ酸によるアミノ酸の置換);並びに/又は
−ペプチドのN末端及び/若しくはC末端の改変(例えば、N末端のアシル化(好ましくは、アセチル化)若しくは脱アミノ化、又はC末端カルボキシル基のアミド若しくはアルコール基への改変);
−2個のアミノ酸間のアミド結合の改変:2個のアミノ酸を連結するアミド結合の窒素原子若しくはアルファ炭素のアシル化(好ましくは、アセチル化)若しくはアルキル化(好ましくは、メチル化);
−2個のアミノ酸を連結するアミド結合のアルファ炭素における改変(例えば、2個のアミノ酸を連結するアミド結合のアルファ炭素のアシル化(好ましくは、アセチル化)又はアルキル化(好ましくは、メチル化));
−キラリティの変化(例えば、1個以上の天然に存在するアミノ酸(Lエナンチオマー)の対応するD−エナンチオマーによる置換);
−(C末端からN末端への)アミノ酸鎖のインバージョンと共に、1個以上の天然に存在するアミノ酸(L−エナンチオマー)が対応するD−エナンチオマーで置換されているレトロインバージョン;
−1個以上のアルファ炭素が窒素原子で置換されているアザペプチド;並びに/又は
−1個以上のアミノ酸のアミノ基がα炭素ではなくβ炭素に結合しているベータペプチド
が挙げられる。
薬物のバイアビリティを改善するための別の戦略は、水溶性ポリマーの利用である。様々な水溶性ポリマーが、生体分布を変化させ、細胞取り込みモードを改善し、生理学的バリアの透過性を変化させ、身体からのクリアランス速度を改変することが示されている。ターゲティング又は持続放出効果を達成するために、末端基として、骨格の一部として、又はポリマー鎖におけるペンダント基として薬物部分を含有する水溶性ポリマーが合成されている。
高い生体適合性及び改変容易性を考慮して、ポリエチレングリコール(PEG)が薬物担体として広く使用されている。様々な薬物、タンパク質及びリポソームへの結合が、滞留時間を改善し、毒性を低下させることが示されている。PEGは、鎖の末端におけるヒドロキシル基を通して、及び他の化学的方法を介して、活性剤にカップリングされ得る;しかしながら、PEGそれ自体は、1分子当たり多くとも2個の活性剤に限定される。異なるアプローチでは、PEGの生体適合性を保持するが、1分子当たりの結合点が多数である(より大きな薬物ローディングを提供する)というさらなる利点を有し、様々な用途に適切なように合成的に設計され得る新規生体材料として、PEG及びアミノ酸のコポリマーが研究された。
当業者であれば、薬物の有効な改変のためのPEG化技術を認識している。例えば、PEG及び三官能性モノマー(例えば、リジン)の交互ポリマーからなる薬物送達ポリマーが、VectraMed (Plainsboro, N.J.)によって使用されている。PEG鎖(典型的には、2000ダルトン以下)は、安定なウレタン結合を通してリジンのa−及びe−アミノ基に連結される。このようなコポリマーは、ポリマー鎖に沿って厳密にコントロールされた所定の間隔で反応性ペンダント基(リジンのカルボン酸基)を提供すると同時に、PEGの望ましい特性を保持する。反応性ペンダント基は、誘導体化、架橋又は他の分子とのコンジュゲーションに使用され得る。これらポリマーは、ポリマーの分子量、PEGセグメントの分子量、及び薬物とポリマーとの間の切断可能な結合を変化させることによって、安定な長時間循環するプロドラッグを生産するのに有用である。PEGセグメントの分子量は、薬物/連結基複合体の間隔、及びコンジュゲートの1分子量当たりの薬物の量に影響を与える(PEGセグメントが小さいほど、提供される薬物ローディングが大きい)。一般に、ブロックコポリマーコンジュゲートの全分子量を増加させると、コンジュゲートの循環半減期が増加する。それにもかかわらず、コンジュゲートは、容易に分解可能でなければならず、又は限界糸球体ろ過量未満(例えば、60kDa未満)の分子量を有しなければならない。
循環半減期及び生体分布の維持において重要なポリマー骨格に加えて、リンカーは、特定のトリガー、典型的には、ターゲット組織における酵素活性によって骨格ポリマーから放出されるまで治療剤をプロドラッグ形態に維持するために使用され得る。例えば、この種の組織活性化薬物送達は、生体分布の特定の部位への送達が必要であり、治療剤を病変部位又はその近くに放出する場合に特に有用である。活性化薬物送達に使用するための連結基ライブラリーは当業者に公知であり、酵素反応速度、活性酵素の保有率、及び選択された疾患特異的酵素の切断特異性に基づき得る。このようなリンカーは、処置用送達のために本明細書に記載するポリペプチドの改変において用いることができる。
さらに別の実施態様では、本発明のポリペプチドは、異種ポリペプチド(すなわち、無関係なタンパク質、例えば、免疫グロブリンタンパク質由来のポリペプチド)に融合され得る。
本明細書で使用される「融合された」及び「融合」という用語は、互換的に使用される。これら用語は、化学的コンジュゲーション又はリコンビナント手段を含むあらゆる手段によって、2つ以上の要素又は成分を互いに連結することを指す。「インフレーム融合」は、元のORFの正確な翻訳リーディングフレームが維持されるように、2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)を連結して、連続するより長いORFを形成することを指す。例えば、リコンビナント融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメント(これらのセグメントは、通常、天然ではこのように連結されない)を含有する単一タンパク質であり得る。したがって、リーディングフレームは、融合セグメント全体を通して連続的であるが、該セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的又は空間的に分離され得る。
本明細書で使用される「IL−34融合タンパク質」という用語は、異種ポリペプチドに融合されたIL−34ポリペプチド又はその機能的等価物を含むポリペプチドを指す。IL−34融合タンパク質は、一般に、(上記)IL−34ポリペプチドと共通の少なくとも1つの生物学的特性を共有するであろう。
IL−34融合タンパク質の例は、IL−34イムノアドヘシンである。
本明細書で使用される「M−CSF融合タンパク質」という用語は、異種ポリペプチドに融合されたM−CSFポリペプチド又はその機能的等価物を含むポリペプチドを指す。M−CSF融合タンパク質は、一般に、(上記)M−CSFポリペプチドと共通の少なくとも1つの生物学的特性を共有するであろう。
M−CSF融合タンパク質の例は、M−CSFイムノアドヘシンである。
本明細書で使用される「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドへシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを併せ持つ抗体様分子を意味する。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列(これは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、「異種」である))と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には、レセプター又はリガンドの結合部位を少なくとも含む連続するアミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3又はIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1及びIgA−2を含む)、IgE、IgD又はIgMから得られ得る。
免疫グロブリン配列は、好ましくは、免疫グロブリン定常ドメイン(Fc領域)であるが必須ではない。イムノアドヘシンは、ヒト抗体の有用な化学的特性及び生物学的特性の多くを有し得る。イムノアドヘシンは、所望の特異性を有するヒトタンパク質配列であって、適切なヒト免疫グロブリンのヒンジ及び定常ドメイン(Fc)配列に連結されたヒトタンパク質配列から構築され得るので、目的の結合特異性は、全体的にヒト成分を使用して達成され得る。このようなイムノアドヘシンは、患者に対する免疫原性が最低限であり、慢性使用又は反復使用に安全である。一実施態様では、Fc領域は、ネイティブ配列のFc領域である。別の実施態様では、Fc領域は、変異体のFc領域である。さらに別の実施態様では、Fc領域は、機能的Fc領域である。IL−34イムノアドヘシンのIL−34配列部分及び免疫グロブリン配列部分は、最小リンカーによって連結され得る。免疫グロブリン配列は、好ましくは、免疫グロブリン定常ドメインであるが必須ではない。本発明のキメラにおける免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD又はIgM、しかし好ましくはIgG1又はIgG3から得られ得る。
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、ネイティブ配列のFc領域及び変異体のFc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、位置Cys226又はPro230のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端に及ぶと定義される。
IL−34融合タンパク質又はM−CSF融合タンパク質の別の例は、IL−34ポリペプチド又はM−CSFポリペプチドと、Konterman et al. 2012 AlbudAb(商標)Technology Platform-Versatile Albumin Binding Domains for the Development of Therapeutics with Tunable Half-Livesに記載されているAlbudAb(商標)Technology Platformによるヒト血清アルブミン結合ドメイン抗体(AlbudAbs)との融合物である。
別の実施態様では、本発明のポリペプチドは、治療用タンパク質に適切な薬物送達システムと結合/製剤化され得る。
使用され得る薬物送達システムの例としては、治療用タンパク質のターゲティング送達のための様々なマイクロキャリア及びナノキャリア、例えばミクロスフェア/マイクロ粒子、リポソーム、ナノ粒子、デンドリマー、ニオソーム及びカーボンナノチューブが挙げられる。特定の実施態様では、このような薬物送達システムは、細胞による薬物送達、特にJain et al., 2013 (42)に記載されている単球及び/又はマクロファージによる薬物送達に適切な薬物送達システムである。
あるいは、本発明のポリペプチドは、赤血球又はエリスロサイトに封入され得る。欧州特許出願公開第1773452号に記載されている方法(これは、現在のところベストパフォーマンスを提供する方法であり、再現可能であり、有効成分の封入収率を改善するという利点を有する)を含め、赤血球への有効成分の取り込みを可能にするための様々な方法が記載されている。
当業者には明らかであるように、本発明のポリペプチドは、任意の適切な手段によって生産され得る。本発明にしたがって使用するための十分な量のIL−34又はM−CSFポリペプチドを生産するために、本発明のポリペプチドを含有するリコンビナント宿主細胞を適切な条件下で培養することによって、発現が便利に達成され得る。好ましくは、ポリペプチドは、リコンビナント手段によって、コード核酸分子から発現させることによって生産される。様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現系は周知である。
リコンビナント型で発現させる場合、ポリペプチドは、好ましくは、宿主細胞においてコード核酸から発現させることによって生産される。特定の系の個々の要件に応じて、任意の宿主細胞が使用され得る。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドを発現させるために当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞などが挙げられる。細菌もまた、容易に操作及び増殖させ得るので、リコンビナントタンパク質の生産のための好ましい宿主である。一般的な好ましい細菌宿主は、E. coliである。
また、タンパク質系バイオ医薬品の大部分は、その治療用途に関連するタンパク質特性に大きな影響を与え得るいくつかの翻訳後修飾を有することに留意すべきである。タンパク質のグリコシル化は、最も一般的な修飾である(ヒトタンパク質の約50%は、グリコシル化される)。グリコシル化は、組成物内のタンパク質上に様々なグリカン構造を作製することによって、タンパク質組成物に顕著な異種性を導入し得る。このようなグリカン構造は、糖タンパク質が小胞体(ER)及びゴルジ複合体を通過する際に、グリコシル化機構の多様な酵素の作用によって作られる(グリコシル化カスケード)。タンパク質のグリカン構造の性質は、タンパク質のフォールディング、安定性、寿命、輸送、薬力学、薬物動態及び免疫原性に対して影響を有する。グリカン構造は、タンパク質の主な機能活性に対して大きな影響を有する。グリコシル化は、局所タンパク質構造に影響を及ぼし得、ポリペプチド鎖のフォールディングを指令するのに役立ち得る。グリカン構造の1つの重要な種類は、いわゆるN−グリカンである。それらは、初期ポリペプチド鎖のコンセンサス配列NXS/Tにおけるアスパラギン残基のアミノ(N)基とオリゴ糖との共有結合によって生成される。N−グリカンは、さらに、タンパク質の選別又はその最終ターゲットへの方向づけに関与し得る:抗体のN−グリカンは、例えば、補体成分と相互作用し得る。N−グリカンはまた、例えば、その可溶性を増強し、その表面上の疎水性パッチを遮蔽し、タンパク質分解から保護し、鎖内安定化相互作用を指令することによって、糖タンパク質を安定化させる機能を有する。グリコシル化は、例えば、ヒトにおいてタンパク質の半減期をレギュレーションし得、N−グリカンにおける末端シアル酸の存在は、血流中を循環するタンパク質の半減期を増加させ得る。
本明細書で使用される「糖タンパク質」という用語は、それに付加された1つ以上のN−グリカンを有する任意のタンパク質を指す。したがって、この用語は、糖タンパク質として当技術分野で一般に認識されているタンパク質、及び1つ以上のN結合型グリコシル化部位を含有するように遺伝子操作されているタンパク質の両方を指す。本明細書で使用される「N−グリカン」及び「グリコフォーム」という用語は互換的に使用され、N結合型オリゴ糖、例えばアスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合によってポリペプチドのアスパラギン残基に付加されたものを指す。N結合型糖タンパク質は、タンパク質におけるアスパラギン残基のアミド窒素に連結されたN−アセチルグルコサミン残基を含有する。糖タンパク質に見られる主要糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GluNAc)及びシアル酸(例えば、N−アセチルノイラミン酸(NANA))である。糖基のプロセシングは、ERの内腔において翻訳と同時に生じ、N結合型糖タンパク質の場合にはゴルジ装置において翻訳後も継続する。
このような系の利点を使用するが、グリコシル化に関する不利点を排除するために、いくつかの酵母、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が近年開発中である。タンパク質上に所定のヒト様グリカン構造を作製するために、いくつかの株が遺伝的に開発中である。酵母を遺伝子操作してヒト様N−グリカンを生産するための方法は、米国特許出願公開第20040230042号、米国特許出願公開第20050208617号、米国特許出願公開第20040171826号、米国特許出願公開第20050208617号及び米国特許出願公開第20060286637号に記載されている方法と共に、米国特許第7,029,872号及び米国特許第7,449,308号に記載されている。これら方法は、酵母型N−グリカンの代わりにヒト様複合体又はハイブリッドN−グリカンを主に有する治療用糖タンパク質を産生し得るリコンビナント酵母を構築するために使用されている。以前に記載されているように、ヒト様グリコシル化は、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース及び/又はN−アセチルノイラミン酸を含有する「複雑な」N−グリカン構造を主に特徴とする。したがって、いくつかの酵母株は、1つ以上のヒト様複合体又はヒト様ハイブリッドN−グリカン、例えばGlcNAcMan3GlcNAc2を含む糖タンパク質を産生するように遺伝子操作されている。
あるいは、本発明のポリペプチド(例えば、配列番号:1に示されているIL−34ポリペプチド、又は配列番号:4、5、6及び7に示されているM−CSFポリペプチド)をコードする核酸、又はこのような核酸を含むベクター、又はこのようなベクターを含む宿主細胞が使用され得る。
したがって、本発明の別の態様は、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するための、本明細書における上記配列番号:1若しくは配列番号:4、5、6及び7を含むアミノ酸配列をコードする核酸、又はこのような核酸を含むベクター、又はこのようなベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明の別の態様は、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するための、本明細書における上記配列番号:1若しくは配列番号:4、5、6及び7を含むアミノ酸配列をコードする核酸、又はこのような核酸を含むベクター、又はこのようなベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明のさらに別の態様は、その患者における自己免疫疾患、同種免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するのに使用するための、本明細書における上記配列番号:1若しくは配列番号:4、5、6及び7を含むアミノ酸配列をコードする核酸、又はこのような核酸を含むベクター、又はこのようなベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明の核酸は、当技術分野でそれ自体が公知の任意の技術、例えば限定されないが、任意の化学的、生物学的、遺伝学的、又は酵素的技術を単独で又は組み合わせて生産され得る。
その最も広義の意味において、「ベクター」は、核酸の細胞への移入を促進することができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下で生じる分解の程度と比べて少ない分解で核酸を細胞に輸送する。一般に、本発明において有用なベクターとしては、限定されないが、プラスミド、ファージミド、ウイルス、目的の核酸配列の挿入又は組み込みによって操作されているウイルス又は細菌の起源由来の他のビヒクルが挙げられる。ウイルスベクターが好ましい種類のベクターであり、限定されないが、以下のウイルス:レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳ガンウイルス及びマウス肉腫ウイルス);アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV−40タイプのウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;及びRNAウイルス(例えば、レトロウイルス)由来の核酸配列が挙げられる。命名されていないが、当技術分野で公知の他のベクターを容易に使用し得る。
好ましいウイルスベクターは、非必須遺伝子が目的の遺伝子で置換されている非細胞変性真核生物ウイルスをベースとする。非細胞変性ウイルスとしては、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写と、それに続く宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みが生活環に含まれるレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)が挙げられる。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療治験に承認されている。最も有用なものは、複製欠損性(すなわち、所望のタンパク質の合成を指令することができるが、感染粒子を製造することができない)レトロウイルスである。このような遺伝子改変レトロウイルス発現ベクターは、in vivoにおける高効率な遺伝子トランスダクションに一般的な有用性を有する。複製欠損性レトロウイルスを生産するための標準的なプロトコール(外因性遺伝物質をプラスミドに組み込む工程、プラスミドでパッケージング細胞株をトランスフェクションする工程、パッケージング細胞株によってリコンビナントレトロウイルスを生産する工程、組織培養培地からウイルス粒子を回収する工程、及びウイルス粒子をターゲット細胞に感染させる工程を含む)は、KRIEGLER (A Laboratory Manual,“ W.H. Freeman C.O., New York, 1990)及びMURRY (“Methods in Molecular Biology,” vol.7, Humana Press, Inc., Cliffton, N.J., 1991)に提供されている。
特定用途のための好ましいウイルスは、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスであり、これらは、遺伝子療法におけるヒトへの使用について既に認可されている二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損性となるように操作され得、広範囲の細胞型及び種に感染することができる。それはさらに、熱及び脂質溶媒に対する安定性;造血細胞を含む多様な系統の細胞における高いトランスダクション頻度;並びに、重感染阻害の欠如(したがって、複数回のトランスダクションが可能である)などの利点を有する。報告によれば、アデノ随伴ウイルスは、ヒト細胞DNAに部位特異的に組み込まれ得るので、レトロウイルス感染に特徴的な挿入突然変異誘発の可能性及び挿入遺伝子発現の変動性が最小限になる。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択的圧力の非存在下において、100継代超にわたって組織培養液中で継続し、これは、アデノ随伴ウイルスのゲノム組み込みが比較的安定な事象であることを意味する。アデノ随伴ウイルスはまた、染色体外で機能し得る。
他のベクターとしては、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは当技術分野で詳細に記載されており、当業者に周知である。例えば、SANBROOK et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual,” Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照のこと。過去数年間、プラスミドベクターは、抗原をコードする遺伝子をin vivoで細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されている。それらは、ウイルスベクターの多くと同じ安全性の懸念がないので、これに特に有利である。しかしながら、宿主細胞と適合性のプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内の作動的にコードされる遺伝子からペプチドを発現し得る。いくつかの一般に使用されるプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40及びpBlueScriptが挙げられる。他のプラスミドも当業者に周知である。加えて、制限酵素及びライゲーション反応を使用してプラスミドを特注設計して、DNAの特定のフラグメントを除去及び付加し得る。プラスミドは、様々な非経口、粘膜及び外用経路によって送達され得る。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内、眼、皮内、皮下又は他の経路によって注入され得る。それはまた、鼻腔内スプレー又は液滴、直腸坐剤及び経口によって投与され得る。それはまた、遺伝子銃を使用して表皮又は粘膜表面に投与され得る。プラスミドを水溶液に加え、金粒子上で乾燥させ、又は別のDNA送達システム(限定されないが、リポソーム、デンドリマー及びマイクロカプセル化を含む)と併用し得る。
本発明によれば、使用され得る宿主細胞の例は、ヒト単球又はマクロファージ(特に、処置すべき被験体から得られるもの)である。
遺伝子を運ぶベクターを細胞に導入し得る手段としては、限定されないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション若しくはDEAE−デキストラン、リポフェクション、リン酸カルシウムを使用するトランスフェクション、又は当業者に公知の他の手段が挙げられる。
医薬組成物:
本発明は、単離されたIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び単離されたM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物に関する。
本発明は、単離されたIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び免疫抑制薬を含む医薬組成物に関する。
本発明は、単離されたM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び免疫抑制薬を含む医薬組成物に関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するための、本明細書に定義されるポリペプチド(又は、それをコードする核酸、上記に定義される発現ベクター又は宿主細胞)及び免疫抑制薬を含む医薬組成物に関する。
本発明はさらに、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するための、本明細書に定義されるポリペプチド(又は、それをコードする核酸、上記に定義される発現ベクター又は宿主細胞)及び免疫抑制薬を含む医薬組成物に関する。
本発明は、それを必要とする患者において使用するための、本明細書に定義されるポリペプチド(又は、それをコードする核酸、上記に定義される発現ベクター又は宿主細胞)及び免疫抑制薬を含む医薬組成物に関する。
本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、ポリペプチドが、意図する目的を達成するのに有効な量で含まれる全ての組成物を含む。加えて、医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用され得る調製物に加工するのを容易にする賦形剤及び補助剤を含む適切な生理学的に許容し得る担体を含有し得る。
「生理学的に許容し得る担体」という用語は、有効成分の生物学的活性の有効性に干渉しない任意の担体であって、投与される宿主に対して毒性ではない任意の担体を包含することを意味する。適切な生理学的に許容し得る担体は当技術分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA, 1985)(これは、この分野の標準的な参考書である)に記載されている。例えば、非経口投与の場合、上記有効成分は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンゲル液などのビヒクル中で、注射用単位剤形に製剤化され得る。
生理学的に許容し得る担体に加えて、本発明の医薬組成物は、少量の安定剤、賦形剤、緩衝剤及び保存剤などの添加剤を含み得る。本発明の医薬組成物は、免疫抑制薬をさらに含み得る。
一実施態様では、免疫抑制薬は、細胞増殖抑制剤、例えば哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤及びラパマイシン(シロリムス);アルキル化剤(シクロホスファミド)及び代謝拮抗剤(アザチオプリン、メルカプトプリン及びメトトレキサート);治療用抗体(例えば、抗CD40Lモノクローナル抗体、抗IL−2Rモノクローナル抗体、抗CD3モノクローナル抗体、抗リンパ球グロブリン(ALG)及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG));カルシニューリン阻害剤(シクロスポリン);グルココルチコイド及びミコフェノール酸モフェチルからなる群より選択される。
一実施態様では、免疫抑制薬は、ラパマイシン(シロリムス)である。
本発明のポリペプチドは、意図する目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、限定されないが、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、脳内、くも膜下腔内、鼻腔内、経口、直腸内、経皮、頬側、局所、部分的、吸入又は皮下使用を含むいくつかの異なる経路によって達成され得る。非経口及び局所経路が特に好ましい。
投与すべき投与量は、個体の要求、所望の効果、及び選択される投与経路に依存する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康及び体重、併用処置、もしあれば処置の頻度、並びに所望の効果の性質に依存すると理解されよう。各処置に必要な総用量は、複数回投与又は単回投与によって投与され得る。
投与に使用される用量は、様々なパラメータに応じて、特に、使用される投与様式、関連病変、又は望ましい処置期間に応じて適合され得る。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なものよりも低レベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当技術分野の技術の範囲内である。しかしながら、ポリペプチドの1日用量は、0.01〜1,000mg/成人/日の広範囲で変動し得る。好ましくは、組成物は、処置すべき被験体に対する投与量を対症的に調整するために、有効成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgを含有する。医薬は、典型的には、有効成分約0.01mg〜約500mg、好ましくは有効成分1mg〜約100mgを含有する。薬物の有効量は、通常、0.0002mg/kg体重〜約20mg/kg体重/日、特に、約0.001mg/kg体重〜10mg/kg体重/日の投与量レベルで供給される。
一実施態様では、免疫抑制薬は、(通常投与される用量と比較して)低用量で、それを必要とする患者に投与される。
一実施態様では、免疫抑制薬は、準最適用量で、それを必要とする患者に投与される。
特定の実施態様では、ラパマイシン(シロリムス)は、準最適用量で、それを必要とする患者に投与される。
一態様では、本発明は、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するための方法であって、治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するための方法であって、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するための方法であって、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
一実施態様では、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するための方法であって、治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
一実施態様では、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するための方法であって、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
一実施態様では、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するための方法であって、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド、治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における移植拒絶を予防及び/又は軽減するための方法であって、移植と同時に及び/又は移植の後に、治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における移植拒絶を予防及び/又は軽減するための方法であって、移植と同時に及び/又は移植の後に、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における移植拒絶を予防及び/又は軽減するための方法であって、移植と同時に及び/又は移植の後に、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
一実施態様では、それを必要とする患者における移植拒絶を予防及び/又は軽減するための方法であって、移植と同時に及び/又は移植の後に、治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
一実施態様では、それを必要とする患者における移植拒絶を予防及び/又は軽減するための方法であって、移植と同時に及び/又は移植の後に、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
一実施態様では、それを必要とする患者における移植拒絶を予防及び/又は軽減するための方法であって、移植と同時に及び/又は移植の後に、治療有効量のM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド、治療有効量のIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
本明細書で使用される「同時に」という用語は、移植と同じ日に、目的のポリペプチドをレシピエント患者に投与することを意味する。
本明細書で使用される「後に」という用語は、移植の後に、例えば移植の2日後、3日後、4日後、5日後、6日後又は7日後に、目的のポリペプチドをレシピエント患者に投与することを意味する。
さらなる態様では、本発明は、移植物の生存を改善するための方法であって、有効量のIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチドを含む培養培地と共に、該移植物を(前)培養する工程を含む方法に関する。
本明細書で使用される「培養培地」という用語は、哺乳動物細胞、組織又は臓器のex vivo培養に適切な液体培地を指す。
本発明によって使用される培養培地は、物質、例えば塩、栄養素、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、核酸、タンパク質、例えばサイトカイン、成長因子及びホルモン(これらは全て、細胞、組織又は臓器の生存に必要である)の組み合わせを含む水性培地であり得る。
例えば、本発明の培養培地は、必要な添加剤を補充した合成組織培養培地、例えばヒト用のRPMI (Roswell Park Memorial Institute medium)又はCMRL-1066 (Connaught Medical Research Laboratory)であり得る。
好ましい実施態様では、本発明の培養培地は、動物由来物質を含まない。好ましい実施態様では、本発明の培養培地は、合成化合物、ヒト起源の化合物及び水から本質的になる。有利には、前記培養培地は、(「GMP」条件下で)優れた製造プラクティスにしたがって、細胞を培養するために使用され得る。
さらなる態様では、本発明は、移植患者(レシピエント)における移植物の生存を改善するための方法であって、治療有効量のIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
一実施態様では、IL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチドは、移植の非常に早い段階で、患者に投与される。
さらに別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における自己免疫疾患、望ましくない又は抗治療用タンパク質免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するための方法であって、治療有効量のIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
一実施態様では、それを必要とする患者における自己免疫疾患、同種免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するための方法であって、治療有効量のIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び治療有効量の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
「治療有効量」は、処置すべき疾患を予防、治療又は遅延することができるポリペプチドの濃度を達成するのに十分な量を意味する。当業者であれば、このような濃度をルーチンに決定し得る。実際に投与されるポリペプチドの量は、典型的には、処置すべき症状、選択される投与経路、投与される実際の化合物、患者の年齢、体重及び応答、被験体の症候の重症度などを含む関連状況を考慮して、医師又は獣医師によって決定されるであろう。また、当業者であれば、投与量は、投与されるポリペプチドの安定性に依存し得ることを理解するであろう。
一実施態様では、IL−34ポリペプチド及び/又はM−CSFポリペプチによる処置は、複数サイクルで施行される(すなわち、IL−34ポリペプチド及び/又はM−CSFポリペプチの投与は、少なくとも1回繰り返される)。
例えば、特定の患者の状態及び応答に応じて、2〜10サイクル又はそれ以上を施行し得る。間隔(すなわち、その後の2サイクルの開始時点間の期間)は、典型的には数日間である。
キットオブパーツ組成物:
IL−34ポリペプチド及びM−CSFポリペプチドは、1つの製剤中で混合され、同時に投与され得る。したがって、本発明は、単離されたIL−34ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチド及びM−CSFポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを含むキットオブパーツ組成物に関する。
IL−34ポリペプチド及び/又はM−CSFポリペプチド及び免疫抑制薬(immunusuppressive drug)は、1つの製剤中で混合され、同時に投与され得る。しかしながら、それらはまた、別個の組成物を使用して、別個に投与され得る。それらは異なる時点に投与され得ることにさらに留意する。
したがって、本発明は、単離されたIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び免疫抑制薬を含むキットオブパーツ組成物に関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における免疫寛容を誘導及び/又は維持するのに使用するためのキットオブパーツ組成物であって、単離されたIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び免疫抑制薬を含むキットオブパーツ組成物に関する。
本発明はまた、それを必要とする患者における移植拒絶を予防又は軽減するのに使用するためのキットオブパーツ組成物であって、単離されたIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び免疫抑制薬を含むキットオブパーツ組成物に関する。
本発明はさらに、それを必要とする患者における自己免疫疾患、同種免疫応答及びアレルギーを予防又は治療するのに使用するためのキットオブパーツ組成物であって、単離されたIL−34ポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び/又はM−CSFポリペプチド若しくはそれをコードするポリヌクレオチド及び免疫抑制薬を含むキットオブパーツ組成物に関する。
本明細書で使用される「キット」、「製品」又は「複合製剤」という用語は、上記に定義される組み合わせパートナーが独立して、又は区別される量の組み合わせパートナーと共に異なる一定の組み合わせの使用によって(すなわち、同時に又は異なる時点で)投与され得るという意味において、特に「キットオブパーツ」を定義する。次いで、キットオブパーツのパーツは、同時に又は時間的にずらして(すなわち、キットオブパーツの任意のパーツについて、異なる時点において、等しい又は異なる時間間隔で)投与され得る。複合調製物で投与される組み合わせパートナーの総量の比は、変動し得る。組み合わせパートナーは、同じ経路で又は異なる経路で投与され得る。投与が逐次である場合、第1のパートナーは、例えば、第2のパートナーの1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前に投与され得る。
本発明の予後診断方法:
さらなる態様では、本発明は、患者が移植拒絶、自己免疫疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答又はアレルギーのリスクがあるかを決定するためのin vitro方法であって、前記患者から得られた生物学的サンプルにおけるIL−34の発現レベルを決定する工程を含み、IL−34の存在が、移植拒絶、自己免疫疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答又はアレルギーのリスクの減少を示すin vitro方法に関する。
さらなる態様では、本発明は、患者が移植拒絶、自己免疫疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答又はアレルギーのリスクがあるかを決定するためのin vitro方法であって、前記患者から得られた生物学的サンプルにおけるM−CSFの発現レベルを決定する工程を含み、M−CSFの存在が、移植拒絶、自己免疫疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答又はアレルギーのリスクの減少を示すin vitro方法に関する。
本明細書で使用される「リスク」という用語は、移植拒絶の発症などのイベントが特定期間に起こる確率を指し、被験体の「絶対」リスク又は「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、関連時間コホートの実際の測定後観察に関して、又は関連時間追跡した統計的に妥当な歴史コホートから開発された指標値に関して測定され得る。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスク又は平均集団リスク(これは、臨床的リスク因子の評価方法によって変動し得る)のいずれかと比較した、患者の絶対リスクの比を指す。オッズ比(所定の試験結果に関する陽性イベントと陰性イベントとの割合)もまた、無変換に対して一般に使用される(オッズは、式p/(1−p)(式中、pはイベントの確率であり、(1−p)はイベントなしの確率である)に従う)。
本発明との関連では、「リスクの決定」は、イベントが起こり得る確率、オッズ又は可能性を予測することを包含する。リスクの決定はまた、以前に測定された集団に関して絶対的又は相対的な将来の臨床パラメータ、伝統的な実験室リスク因子の値、例えば年齢、性別ミスマッチ、HLA試験などの予測を含み得る。本発明の方法は、移植拒絶のリスクのカテゴリー測定を行って、移植拒絶のリスクがあると定義された移植患者のカテゴリーのリスクスペクトルを定義するために使用され得る。
さらに別の態様では、本発明は、移植患者(レシピエント)が寛容であるかを決定するためのin vitro方法であって、前記移植患者から得られた生物学的サンプルにおけるIL−34の発現レベルを決定する工程を含み、IL−34の存在が寛容を示すin vitro方法に関する。
さらに別の態様では、本発明は、移植患者(レシピエント)が寛容であるかを決定するためのin vitro方法であって、前記移植患者から得られた生物学的サンプルにおけるM−CSFの発現レベルを決定する工程を含み、M−CSFの存在が寛容を示すin vitro方法に関する。
本明細書で使用される「決定する」という用語は、コントロール又は所定値の参照にかかわらず、定性的及び/又は定量的な検出(すなわち、発現レベルの検出及び/又は測定)を含む。本明細書で使用される「検出する」は、IL−34又はM−CSFが生物学的サンプル中に存在するか否かを決定することを意味し、「測定する」は、生物学的サンプルにおけるIL−34又はM−CSFの量を決定することを意味する。典型的には、発現レベルは、例えば、生体サンプルに対して実施されるELISAなどのイムノアッセイによって決定され得る。
本明細書で使用される「生物学的サンプル」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、in vitro評価の目的のために患者から得られ得る任意のサンプルを指す。好ましい生物学的サンプルは、血液サンプル(例えば、全血サンプル、血清サンプル又は血漿サンプル)である。
本発明のバイオマーカーの発現レベルを決定するための方法:
IL−34又はM−CSFの発現レベルの決定は、様々な技術によって実施され得る。一般に、決定される発現レベルは、相対的発現レベルである。
例えば、IL−34又はM−CSFの発現レベルの決定は、生物学的サンプルを選択的試薬(例えば、抗体)と接触させ、それにより、前記生物学的サンプル中に元々含まれる目的のポリペプチドの存在を検出し、又はその量を測定する工程を含み得る。接触は、任意の適切なデバイス、例えばプレート、マイクロタイターディッシュ、試験管、ウェル、グラス、カラムなどの中で実施され得る。
一実施態様では、接触は、試薬でコーティングされた基材上で実施される。基材は、固体又は半固体の基材、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーなどを含む任意の適切な支持体であり得る。基材は、様々な形態及びサイズのもの、例えばスライド、膜、ビーズ、カラム、ゲルなどであり得る。接触は、試薬と生物学的サンプルのポリペプチドとの間で、検出可能な複合体(例えば、抗体−抗原複合体)が形成されるのに適切な任意の条件下で行われ得る。
IL−34ポリペプチド又はM−CSFポリペプチドの存在は、イムノアッセイ、例えば競合、直接反応又はサンドイッチ型アッセイを含む標準的な電気泳動及び免疫診断技術を使用して検出され得る。このようなアッセイとしては、限定されないが、ウエスタンブロット;凝集試験;酵素標識媒介性イムノアッセイ、例えばELISA;ビオチン/アビジン型アッセイ;ラジオイムノアッセイ;免疫電気泳動;免疫沈降などが挙げられる。反応は、一般に、標識、例えば蛍光、化学発光、放射性、酵素標識若しくは色素分子を明らかにすること、又は抗原と、それと反応した抗体との間の複合体の形成を検出するための他の方法を含む。シグナルを一般に(直接的又は間接的に)提供する標識は、当技術分野で公知である。
抗体又はアプタマーに関して本明細書で使用される「標識された」という用語は、検出可能な物質、例えば放射性薬剤又はフルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)又はフィコエリスリン(PE)又はインドシアニン(Cy5))を抗体又はアプタマーにカップリング(すなわち、物理的に連結)することによって、抗体又はアプタマーを直接的に標識すること、並びに検出可能な物質との反応性によって、抗体又はアプタマーを間接的に標識すること(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、HRP)を包含することを意図する。抗体又はアプタマーはまた、当技術分野で公知の任意の方法によって、放射性分子で標識され得る。例えば、放射性分子としては、限定されないが、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばI123、I124、In111、Re186及びRe188が挙げられる。上記アッセイは、一般に、抗原−抗体複合体が結合している固相支持体から、液相中の未結合タンパク質を分離することを含む。本発明の実施に使用され得る固体支持体としては、基材、例えばニトロセルロース(例えば、膜又はマイクロタイターウェルの形態);ポリ塩化ビニル(例えば、シート又はマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズ又はマイクロタイタープレート);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロン膜;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどが挙げられる。
より具体的には、試験すべきタンパク質に対する抗体でマイクロタイタープレートのウェルをコーティングするELISA法を使用し得る。次いで、バイオマーカーを含有するか又は含有すると疑われる生物学的サンプルを、コーティングウェルに追加する。抗体−抗原複合体の形成を可能にするのに十分なインキュベーション期間の後、プレートを洗浄して未結合の部分を除去し、検出可能に標識した二次結合分子を追加し得る。二次結合分子を任意の捕捉サンプルマーカータンパク質と反応させ、プレートを洗浄し、当技術分野で周知の方法を使用して、二次結合分子の存在を検出する。
選択的試薬は一般に抗体であり、ポリクローナル又はモノクローナル、好ましくはモノクローナルであり得る。IL−34に対するポリクローナル抗体は当業者に周知であり、例えば、Abnovaが市販している抗体PAB16574がある。
IL−34に対するモノクローナル抗体も周知であり、例えば、Abnovaが市販しているモノクローナル抗体MAB10698がある。
加えて、IL−34 ELISAキットも周知であり、例えば、Abnova(KA2217 Kit)又はR&D Systems (Human IL-34 Quantikine ELISA)が市販しているものがある。
選択的試薬は一般に抗体であり、ポリクローナル又はモノクローナル、好ましくはモノクローナルであり得る。M−CSFに対するポリクローナル抗体は当業者に周知であり、例えば、Abcamが市販している抗体(ab9693)がある。
M−CSFに対するモノクローナル抗体も周知であり、例えば、MyBioSourceが市販しているモノクローナル抗体(MBS690427)がある。
加えて、M−CSF ELISAキットも周知であり、例えば、R&D Systemsが市販しているもの(Human M-CSF Quantikine ELISA)がある。
特定の実施態様では、IL−34又はM−CSFの発現レベルは、前記生物学的サンプルにおけるIL−34又はM−CSFの濃度を測定することによって決定される。
したがって、本発明の方法は、血液サンプルを、前記血液サンプルにおけるIL−34ポリペプチド又はM−CSFポリペプチドと選択的に相互作用することができる結合パートナーと接触させる工程を含む。
結合パートナーは一般に抗体であり得、ポリクローナル又はモノクローナル、好ましくはモノクローナルであり得る。IL−34又はM−CSFに対するポリクローナル抗体は、公知の方法にしたがって、適切な抗原又はエピトープを、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ及びマウスなどから選択される宿主動物に投与することによって生じさせ得る。当技術分野で公知の様々なアジュバントを使用して、抗体産生を増強し得る。
本発明のモノクローナル抗体は、培養液中の継代細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して調製及び単離され得る。産生及び単離の技術としては、限定されないが、Kohler and Milstein (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Cote et al., 1983);及びEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985)が挙げられる。あるいは、単鎖抗体の生産について記載されている技術(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)を改良して、単鎖抗体を生産し得る。本発明を実施するのに有用な抗体としては、限定されないが、F(ab’)2フラグメント(これは、インタクトな抗体分子のペプシン消化によって生成され得る)及びFabフラグメント(これは、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成され得る)を含むフラグメントも挙げられる。あるいは、Fab及び/又はscFv発現ライブラリーを構築して、所望の特異性を有するフラグメントの迅速な同定を可能にし得る。例えば、抗体のファージディスプレイを使用し得る。このような方法では、単鎖Fv(scFv)又はFabフラグメントは、適切なバクテリオファージ(例えば、M13)の表面上に発現される。簡潔に言えば、タンパク質で免疫した適切な宿主(例えば、マウス)の脾臓細胞を取り出す。タンパク質に対する所望の抗体を産生している細胞から、VL及びVH鎖のコード領域を得る。次いで、これらのコード領域をファージ配列の末端に融合する。ファージを適切なキャリア(例えば、細菌)に挿入したら、ファージは、抗体フラグメントをディスプレイする。抗体のファージディスプレイもまた、当業者に公知のコンビナトリアル法によって提供され得る。次いで、ファージによってディスプレイされた抗体フラグメントをイムノアッセイの一部として使用し得る。
別の実施態様では、結合パートナーは、アプタマーであり得る。アプタマーは、分子認識に関して、抗体の代替物に相当する分子クラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性で、実質的に任意のクラスのターゲット分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチド配列である。このようなリガンドは、Tuerk C. and Gold L., 1990に記載されているように、ランダム配列ライブラリーの試験管内進化法(SELEX)によって単離され得る。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成により入手可能である。このライブラリーでは、各メンバーは、最終的には化学的に改変される固有配列の線形オリゴマーである。このクラスの分子の可能な改変、使用及び利点は、Jayasena S.D., 1999に概説されている。ペプチドアプタマーは、ツーハイブリッド方法(Colas et al., 1996)によってコンビナトリアルライブラリーから選択されるプラットフォームタンパク質(例えば、E. coliチオレドキシンA)によってディスプレイされるコンフォメーション的に制約された抗体可変領域からなる。
他の実施態様では、IL−34又はM−CSFの濃度の測定はまた、タンパク質の分離;タンパク質の分子量に基づく遠心分離;質量及び電荷に基づく電気泳動;疎水性に基づくHPLC;サイズに基づくサイズ排除クロマトグラフィー;並びに、使用される特定の固相に対するタンパク質の親和性に基づく固相親和性を含み得る。分離されると、IL−34又はM−CSFは、そのタンパク質の公知の「分離プロファイル」(例えば、保持時間)に基づいて同定され、標準的な技術を使用して測定され得る。あるいは、分離されたタンパク質は、例えば、質量分析計よって検出及び測定され得る。
免疫抑制処置を調整するための方法:
本発明はさらに、個別処置計画を開発するための方法を提供する。上記方法によって得られた情報を使用して、移植レシピエントのための個別処置計画を開発し得る。
したがって、さらなる態様では、本発明は、それを必要とする患者に施行された免疫抑制処置を調整するための方法であって、以下の工程(i)本発明のリスク決定方法を実施すること、及び(ii)免疫抑制処置を調整することを含む方法に関する。
前記方法は、例えば、上記リスク決定方法のいずれかを使用し、得られた結果を考慮して、移植レシピエントのための処置計画を設計することによって行われ得る。IL−34又はM−CSFが、目的の患者から得られた生物学的サンプル中に存在しない場合、これは、前記患者が、望ましくない臨床転帰(例えば、移植片拒絶)のリスクがあることを示す。したがって、前記患者は、有効量の免疫抑制処置による(例えば、抗拒絶剤による)処置の候補である。反対に、生物学的サンプル中のIL−34又はM−CSFの存在は、移植拒絶のリスクの減少を示す。また、IL−34又はM−CSFの発現レベル(すなわち、分析した生物学的サンプル中の低レベル又は高レベルのIL−34又はM−CSF)に応じて、患者は、標準レジメンよりも積極的若しくは消極的な処置方法を要求し得るか、又は患者が標準レジメンに最適であると決定され得る。例えば、高レベルのIL−34又はM−CSFを有する患者は、免疫抑制処置及び関連副作用を回避し得る(又は、消極的なレジメンを要求し得る)。
以下の図面及び実施例によって、本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。
実施例1:移植寛容の新たなTreg特異的サイトカインメディエーターのインターロイキン−34
材料及び方法
健常志願者の血液採取及びPBMCの分離:Etablissement Francais du Sang (Nantes, France)において、インフォームドコンセントを得た後に、健常ドナーから血液を採取した。血液をPBSで2倍希釈してから、Ficoll-Paque density-gradient centrifugation (Eurobio)によって、PBMCを制動せずに2000rpm、室温で30分間単離した。収集したPBMCを、PBS 50mLによって1800rpmで10分間洗浄した。
動物及び心臓移植モデル:以前に記載されているように(15)、全MHC不適合雄性LEW−1W(ドナー)とLEW−1A(レシピエント)ラットとの間で、心臓同種移植を実施した。腹壁を通して触診によって、心臓の生存を評価し、心拍を+++から−に格付けした。実験は、動物実験の地域倫理委員会によって承認された。
IL−34の定量的RT−PCR:mRNAの単離及び逆転写、並びにHPRT値に対する正規化後のTaqman技術を使用した特定のmRNAレベルの定量が記載されている(15)。プローブ配列は、フォワードプライマーについては5’CTGGCTGTCCTCTACCCTGA3’(配列番号:2)であり、リバースプライマーについては5’TGTCGTGGCAAGATATGGCAA3’(配列番号:3)であった。
細胞分取、モノクローナル抗体及びフローサイトメトリー:TCRαβ(R7/3)及びTCRγδ(V65)陰性細胞、CD45RA−FITC(OX33)及びCD11b/c−APC(OX42)陽性細胞について、マクロファージを分取した。以前に記載されているように(16)、ナイーブLEW.1A CD4+CD25−T細胞、LEW.1W pDC及びLEW.1A CD8+CD45RClowTregのサブセットを分取した。T細胞(TCRαβ、クローンR7/3)、CD4+CD25−T細胞(クローンOX35及びOX39)、CD8+T細胞(クローンOX8)、CD8+CD45RClowT細胞(クローンOX8及びOX22)及びCD4+CD45R+85C7+pDC(クローンHis24、OX35及び85C7)の分取に使用した抗体は、European Collection of Cell Culture (Salisbury, UK)から入手した。ストレプトアビジン−PE−Cy7(BD Biosciences)又はストレプトアビジン−Alexa405を使用して、全てのビオチン標識mAbを可視化した。CD3+CD4+CD25−細胞(クローンSKY7、L−200及びMA251)をゲーティングすることによって、ヒトCD4+CD25−T細胞を分取し、CD25high及びCD127low細胞(クローンHIL7−R M21)をゲーティングすることによって、CD4+Tregを分取し、CD3+CD4−CD45RClow細胞(クローンMT2)をゲーティングすることによって、CD8+Tregを分取した。抗myc抗体(9E10, Sigma)を使用して、IL−34−Mycを検出した。抗IL−34(PAB16574, Abnova)、抗CD115(MCA1898, Serotec)及び抗M−CSF(AB-416-NA, R and D system)抗体で、IL−34、CD115及びMCSFをブロッキングした。MHC−II(OX6)、CD11b及びCD45RA+B細胞(OX33)に対する抗体を分析して、細胞の表現型を特性評価した。CD3−PeCy7(SKY7)、CD4−PercPCy5.5(L200)、CD25−APCCy7(M-A251)、CD127−PE(HIL7-R M21, BD Bioscience)、CD45RC−FITC(MT2, IQ Product)、Foxp3−APC(236A/E7, ebiosciences)及びIL34−PE(578416, R&D)に対する抗体を使用して、ヒト細胞の表現型を特性評価した。FACS ARIA I (BD Biosciences, Mountain View, CA)を使用して、細胞を分取した。A Canto II cytometer (BD Biosciences, Mountain View, CA)を使用して蛍光を測定し、FLOWJO software (Tree Star, Inc. USA)を使用してデータを分析した。最初に、形態によって細胞をゲーティングし、DAPI生存細胞を選択することによって死細胞を排除した。
AAVの作製並びにin vitro及びin vivoでの使用:Q81を含有するラットIL−34の完全cDNA配列(9)又はGFP(コントロールとして)をRSVプロモーターの下流に配置した。最初に、lipofectamine reagent (Life Technologies, Carlsbad, Nouveau-Mexique)でトランスフェクションしたHEK293T細胞において、プラスミドを試験した。48時間後、細胞を、抗myc AbによるFACSによって、GFP及びIL−34−myc発現について分析した。次いで、プラスミドを使用して、血清型8のAAVベクター(LTG platform, INSERM UMR 1089, Nantes)を生産した。10000、100000〜1000000MOIベクターゲノムコピー/細胞のAAV−IL−34又はAAV−GFP及び5000MOIのAdLacZで、HEK293T細胞をトランスダクションした。24時間後、細胞を回収し、FACSによって、IL−34−Myc発現について分析し、上清を、1/10及び1/5希釈で、同種pDCに応じたCD4+T細胞に対する抑制活性について試験した。移植の1カ月前に、リコンビナントAAV−IL−34及びAAV−GFP(4.5.1010、1.1012及び2.1012ベクターゲノム/ラット)ベクターを4週齢のラットに静脈内(i.v.)注射して、AAVベクターからの最適な発現を可能にした(23)。ドナー同種特異的抗体の定量のために、血液サンプルを採取した。
養子細胞移植:以前に記載されているように(5、8)、FACS Aria (BD Biosciences, Mountain View, CA)によって、TCRαβ−APC(R7/3)、CD45RA−FITC(OX33)及びCD11b/c−ビオチン−ストレプトアビジンPECy7(OX42)陽性細胞をゲーティングすることによって、ラット細胞を分取した。IL34処理ラット由来の脾細胞を移植したレシピエントを第1移植と定義し、次いで、反復移植を第2〜第3移植と定義した。同日に4.5Gyの全身照射を受けたナイーブLEW−1Aレシピエントへの心臓移植の前日に、全脾臓細胞(細胞1.5×108個)及びFACS Aria分取CD45RA+B細胞(6×107個)、T細胞(4×107個)、CD11b/c+細胞(1.5×107個)、CD4+CD25highTreg(4×106個)又はCD8+CD45RClowTreg(4×106個)を静脈内(i.v.)に養子移植した。
混合リンパ球反応:以前に記載されているように(16)、ナイーブLewis 1A CD4+T細胞、ナイーブLewis 1W pDC及びAdCD40Ig処理Lewis 1A CD8+CD45RClowTregのサブセットを分取した。AAV−IL−34処理レシピエント、AdCD40Ig処理レシピエント及びナイーブラット由来の血清を共培養物に追加して、最終濃度を3.12%、6.25%及び12.5%にした。抑制活性の試験のために、トランスダクション細胞の上清を10%〜20%の最終濃度でCD4+T細胞及びpDCに追加した。ラットIL−34、CD115又はM−CSF遮断Ab又はアイソタイプコントロールを、CD8+CD40Ig Tregの存在下又は非存在下、1.25〜30μg/mlで、遮断活性について試験した。M−CSFタンパク質(ab56288, ABCAM)を0.1〜2μg/mlで試験した。6日後に、CFSE標識CD4+CD25−T細胞の増殖を、フローサイトメトリーによって、生細胞(DAPI陰性)の中のTCR+CD4+細胞(R7/3−APC、Ox35−PECY7)をゲーティングすることによって分析した。
分取したヒトCD4+CD25−T細胞を、同種ヒトT枯渇PBMCと共に、37℃及び5%CO2で、それぞれ丸底又は円錐底96ウェルプレート内の完全RPMI−1640培地200μl中に3重にプレーティングした。ヒトIL34 Abを50μg/mlで使用し、不定数のTregを追加した。アイソタイプコントロールAbを、各グラフに示されている最高濃度で使用した。M−CSFタンパク質(ab56288, ABCAM)を0.1〜2μg/mlで試験した。抑制活性試験のために、可溶性ヒトIL34(eBiosciences)を1、2又は5μg/mlの濃度で追加した。
ドナー特異的同種抗体の定量:ドナー脾臓をコラゲナーゼDによって消化し、EDTA 0.1mM 400μlで停止し、赤血球を溶解した。レシピエントの血清を1/8希釈でドナー脾細胞に追加し、抗ラットIgG−FITC(Jackson ImmunoResearch Labs INC, Baltimore, USA)、抗ラットIgG1(MCA 194, Serotec)、抗ラットIgG2a(MCA 278, Serotec)又は抗ラットIgG2b(STAR114F, Serotec)及び抗Ms Ig−FITC(115-095-164, Jackson ImmunoResearch)と共にインキュベーションした。FACS Canto (BD Biosciences, Mountain View, CA)を使用して蛍光を測定し、FLOWJO software (Tree Star, Inc. USA)を使用してデータを分析した。試験した血清の蛍光の幾何平均(MFI)を、コントロールとして5つのナイーブLewis 1A血清のMFIの平均で割った。
統計分析:一元配置ANOVAクラスカルワリス検定及びダン事後検定をPCR及び共培養実験に使用し、二元配置ANOVA検定及びボンフェローニ事後検定をドナー指向性抗体及び脾細胞表現型の特性評価に適用し、マンテルコックス検定を使用して生存曲線を分析した。
クロドロネートリポソームin vivo処理:マクロファージ枯渇のためのクロドロネートリポソームは、Vrije University, The Netherlands (www.clodronateliposomes.org)から購入し、推奨されているように調製した(5041)。簡潔に言えば、−25日目〜3日目に、懸濁溶液2.5mlを週1回腹腔内投与した。
定量的RT−PCR:Trizol reagent (Invitrogen)又はRNeasy Mini Kit (Qiagen)を使用して、細胞から全RNAを単離した。製造業者の説明書(Life Technologies)にしたがってMessageAmpTMII aRNA Amplification Kitを用いて、マクロファージ由来のRNAを増幅し、ランダムプライマー及びM−MLV逆転写酵素(Life Technologies)を用いて逆転写した。Fast SYBR Green技術を使用して、Master Mix 2X (Life Technologies)10μL、プライマー(10μM)0.6μL、cDNA 1μL及び水8.4μlを含有する最終反応容量20μL中で、リアルタイムPCRを行った。Applied Biosystems StepOneTM (Life Technologies)によって、この反応を実施した。熱条件は、以下の通りであった:95℃で3秒間、60℃で30秒間及びTM−5℃で15秒間(最後の融解曲線段階)。
結果
IL−34は、脾臓CD8+CD45RClowTreg及び寛容同種移植片によって発現された:脾臓由来のCD8+CD40Ig Treg対ナイーブCD8+CD45RClowTregのDNAマイクロアレイ分析により、CD8+CD40Ig Tregによる(最もアップレギュレーションされた遺伝子の中でも)IL−34のアップレギュレーションが強調された(変化倍率4.05)。qPCRによってこのアップレギュレーションを確認したところ、長期脾臓CD8+CD40Ig TregにおけるIL−34 mRNA発現は、ナイーブCD8+CD45RClowTregと比較して11倍超であった(p<0.05、図1A)。
臓器全体を見ると、IL−34 mRNAは、(Lin et al. (18)によって観察されたように)ナイーブ動物の脾臓及び心臓では内因的に発現されており(図1B)、脾臓及び移植片の両方では急性同種移植片拒絶の間にわずかに減少していた(NT、図1B及び1C)。最初の1週間の間に、CD8+CD40Ig Tregが移植片に蓄積したという本発明者らの以前の観察結果(16)と相関して、5日目において、AdCD40Ig処理移植片及び脾臓では、IL−34 mRNA発現が有意に増加していた(図1B及び1C)。移植の120日後において、AdCD40Ig処理移植片では、この有意な増加は依然として検出可能であった;しかしながら、脾臓全体では、IL−34 mRNAレベルは正常に戻った。
IL−34のタンパク質発現を確認するために、本発明者らは、本発明者らが作製したマウス抗ラットIL−34抗体(Ab)でCD8+CD40Ig Tregを標識した。このAbを用いて、本発明者らは、CD8+CD40Ig TregによるIL−34の発現が、ナイーブCD8+CD45RClowTregと比較して有意であることを確認した(図1D)。
まとめると、これらの結果により、IL−34は、誘導CD8+CD45RClowTreg及び寛容同種移植片によって発現され得ることが初めて実証された。また、移植片及び脾臓におけるIL−34の初期発現は、急性移植片拒絶の抑制、したがって同種移植片寛容の確立におけるその初期関与を示唆している。
M−CSFではなく、CD8+CD45RClowTregによって発現されるIL−34は、Treg媒介性抑制に関与する:本発明者らは、CD8+CD40Ig Tregが、同種pDCに応じて、CD4+エフェクターT細胞の抗ドナー増殖をex vivoで抑制することを以前に実証した(16)。加えて、本発明者らは、このプロセスにおけるIFNγ及びFGL2の関与を実証した;しかしながら、IFNγ及びFGL2の阻害効果の遮断後において、いくらかの抑制が残存していた(15、16)。IL−34がCD8+CD40Ig Tregの抑制に関与していたかを解決するために、本発明者らは、抑制MLRアッセイにおいて中和抗IL−34抗体を試験した(図2A)。漸増濃度の遮断抗IL−34 Abを追加すると、CD4+増殖は、CD8+Treg媒介性阻害の59%の回復まで用量依存的に増加した。
IL−34がM−CSFと類似性を有すること、ナイーブCD8+CD45RClowTregと比較したCD8+CD40Ig TregによるM−CSFの有意な発現を本発明者らが観察したこと(図6A)、及び同じレセプターに対して競合すること(18、19)を考慮して、本発明者らは、M−CSFが、エフェクターT細胞の増殖の阻害において役割を果たし得る可能性に取り組もうとしていた。最初に、本発明者らは、以前に記載されているMLRアッセイにおいて、M−CSFの抑制能力を試験した。興味深いことに、本発明者らは、M−CSFが、CD4+CD25−T細胞増殖を用量依存的に93.5%まで効率的に抑制したことを観察したが(図6B)、これは、IL−34の場合と同様に、M−CSF媒介性抑制がCSF1−R発現pDCを介して作用することを示唆している(20、21)。しかしながら、CD8+Tregの存在下の共培養抑制アッセイにおいて、遮断抗M−CSF Abを追加してもCD4+T細胞増殖は回復せず、これは、M−CSFが、CD8+CD40Ig Treg媒介性抑制に関与していなかったことを実証している(図2B)。
次に、本発明者らは、単球/マクロファージ、cDC及びpDC(20、21)によって発現されるCSF1−R(IL−34についてこれまでに記載されている唯一の末梢レセプター(18、19))の関与を試験した。したがって、本発明者らは、ラット及びマウスの両方においてM−CSF作用を阻害すると以前に示されている抗CSF1−R遮断Abを使用した(22)。本発明者らは、CSF1−Rの遮断が、pDCの存在下におけるCD4+T細胞増殖に対するCD8+Treg媒介性抑制を有意に低減したことを実証した(図2C)。
結論として、本発明者らは、M−CSF/CSF1−R相互作用ではなくIL−34/CFS1−R相互作用が、CD8+CD40Ig Tregの抑制効果に関与することを実証した。
IL−34の持続的発現のためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの作製:IL−34の抑制活性をさらに分析するために、及びリコンビナントIL−34ラットサイトカインは市販されておらず、in vivo実験のための生産が困難であったので、本発明者らが、他の分子の場合に霊長類(23)及びラット(24)において行ったように、本発明者らは、IL−34ラット分子をコードするリコンビナントAAVベクターを作製した。このベクターでは、ラットIL−34 cDNAをC末端Mycタグと融合し、プラスミド(pIIL−34)及びレンチウイルスの両方を初めて使用して、HEK293 T細胞株を安定的にランスフェクション又はトランスダクションした。Mycタグのフローサイトメトリーによって、IL−34発現が示された。非トランスフェクションHEK293 T細胞又はAAV−GFPトランスダクションHEK293 T細胞、及びアイソタイプコントロールAbで染色したHEK293 T細胞では、Myc染色は検出不可能であった。しかしながら、pIIL−34トランスフェクションHEK293 T細胞、又はAAV−IL−34トランスダクションHEK293 T細胞は、強い量のIL−34タンパク質を用量依存的に発現しており、これは、IL−34の分泌及びベクターの機能性を実証している。
次いで、本発明者らは、AAV−IL34トランスダクションHEK293 T細胞の培養上清(図3A)及びAAV−IL34処理ラットの血清(図3B)(これらは両方とも、以前に示されているように多量のIL−34タンパク質を含有する)の抑制能力を試験した。本発明者らは、AAVIL−34トランスダクション細胞由来の上清及びAAV−IL34処理ラット由来の血清が両方とも、コントロールと比較して、同種pDCによって刺激されるCD4+エフェクターT細胞の増殖応答を(用量依存的に)有意に阻害したことを観察した(図3A及び3B)。
まとめると、これらの結果は、エフェクターT細胞増殖の阻害におけるベクターの機能性及びIL−34の抑制効果を実証しており、したがって、in vivoの移植におけるその可能性を示唆している。
同種移植片寛容誘導におけるIL−34の治療効果:治療戦略としてIL−34のin vivo抑制能力をさらに決定するために、本発明者らは、移植の1カ月前に、AAV−IL−34 1.1012vg/ラット又はコントロール非コードAAVのいずれかでレシピエントを静脈内(i.v.)処理した。IL−34のみによるこのような処理は、非コードAAVを注射したコントロール(14.2±1.8日間)又は未処理のレシピエント(7.8±0.6日間)と対比して、同種移植片生存の有意な延長をもたらした(平均生存時間32.6±7.8日間)(図4)。次いで、同種移植片生存を改善するために、AAVベクターに加えて、準最適用量のラパマイシンでレシピエントを(14日間)処理した。ラパマイシンのみによる14日間は、同種移植片生存を有意に延長しなかった(図4、黒丸)。対照的に、本発明者らは、AAV−IL34及びラパマイシンの併用療法を受けたレシピエントの75%では、コントロールと比較して、不定的な同種移植片生存を観察した(p<0.001、図4)。慢性拒絶の兆候に関する長期生存レシピエントの移植片の分析により、分析した全てのレシピエントの心筋では、血管病変の完全な消失(すなわち、正常な血管構造及び白血球浸潤の消失)が明らかになった。加えて、長期生存レシピエントの血清中の抗ドナー抗体の存在の分析により、非コードAAVで処理したレシピエントと対比して、全IgG、IgG1、IgG2a及びIgG2b抗ドナーAbの有意な阻害が明らかになった。
まとめると、本発明者らは、IL−34が、ラパマイシンとの組み合わせで有益な寛容誘導治療戦略であり、全ての同種免疫応答の低減をもたらしたことを初めて実証することができた。
IL−34は、感染寛容可能な調節性T細胞を強力に誘導する:上記で実証したように、IL34は、CD8+CD40Ig Tregによって特異的に産生される。次に、本発明者らは、調節性細胞が、IL34処理の状況下で誘導され、AAV−IL34及びラパマイシンの組み合わせによってもたらされる長期同種移植片生存に関与していたかを評価した。このために、本発明者らは、本発明者らが以前に行ったように(15)、長期生存レシピエントの脾細胞を使用して、ナイーブ移植放射線照射レシピエントへの養子細胞移植実験を実施した。第2のナイーブ移植放射線照射レシピエントへの1,5.108個の脾細胞の第1養子移植は、レシピエントの60%の同種移植片生存の有意な延長をもたらしたが(図5A)、これは、IL−34が調節性細胞を効率的に誘導することを実証している。本発明者らは、第1養子移植した長期脾細胞レシピエントの移植片の解剖病理学的状況を調査したところ、血管病変及び閉塞の完全な消失(すなわち、慢性拒絶の兆候なし)を観察した。次いで、本発明者らは、同種移植片生存のこの延長が、第2及び第3のレシピエントに連続的に承継され得るかを決定したところ、本発明者らは、寛容が、ナイーブ移植放射線照射レシピエントに少なくとも3代連続で承継され得ることを確認した(図5、第2及び第3移植)。
IL−34が調節性マクロファージを誘導することが最近記載されたことを考慮して(25)、本発明者らは、養子寛容の連続承継を可能にする調節性集団(マクロファージを含む)を調査した。このために、本発明者らは、IL34で処理した寛容レシピエントから異なるメインサブセット(B細胞、T細胞及びマクロファージ)のサブ集団を精製し、ナイーブ放射線照射移植レシピエントへの養子細胞移植を実施した(図5B)。驚くべきことに、本発明者らは、他者によって示唆されているように、マクロファージではなくT細胞移植の場合にのみ、寛容の承継が達成されたことを観察したが、これは、IL−34が調節性T細胞を誘導し得ること、及び本発明者らのモデルでは、マクロファージは、急性同種移植片拒絶を抑制する効力が十分ではなかったことを初めて実証している。しかしながら、調節性T細胞はIL−34レセプターを発現せず、これは、マクロファージが調節性T細胞の機能に必要な中間体であることを示唆している。どのTreg集団(すなわち、CD4+CD25high又はCD8+CD45RClowT細胞)が新たな移植レシピエントに寛容を与え得るかをさらに決定するために、本発明者らは、CD4+CD25high及びCD8+CD45RClowTregを分取し、養子細胞移植を実施した(図5B)。本発明者らは、CD4+CD25high及びCD8+CD45RClowTregの養子移植が両方とも、レシピエントにおいて50%の長期同種移植片生存をもたらしたことを観察したが、これは、両Treg集団が、IL34改変マクロファージによって等しく増強されたことを示唆している。
まとめると、これらのin vivo結果は、低炎症及び移植の状況下では、効率的なTregがIL34処理後に生成されること、及びこれらのTregが連続的な寛容を優勢的に誘導し得ることを実証している。
Treg誘導は、移植片に浸潤するIL34改変マクロファージによって媒介される:寛容誘導におけるIL−34誘導性マクロファージの役割をさらに同定するために、本発明者らは、同種移植片に対する寛容誘導との関連で、マクロファージに対するIL34効果を特性評価した。最初に、本発明者らは、移植後15日目(すなわち、AAV注射後45日目)のAAV−IL34処理レシピエントの脾臓、血液及び移植片由来のマクロファージ、並びにナイーブラット由来のマクロファージを分取し、qPCRによっていくつかの遺伝子を分析した(図7)。興味深いことに、本発明者らは、AAV−IL34処理レシピエント由来の移植片におけるマクロファージが、ナイーブマクロファージと比較して、アルギナーゼ1及び誘導型NO合成酵素(iNOS)(これらは両方とも必須アミノ酸の代謝に関与し、Tリンパ球の増殖の制限による抑制マクロファージの共通の免疫調節機構として説明されている(34))を強くアップレギュレーションしたことを観察した。本発明者らはまた、主に移植片においてだがAAV−IL34処理マクロファージの脾臓及び血液においても、ナイーブマクロファージと比較して、CD14の発現が増加しており、CD23、CD86及びIL10の発現が減少していたことを観察した。最後に、本発明者らは、CD16、CD32、IL1、TGFβ及びTNFγの発現について、有意差を観察しなかった。血液及び移植片中に存在するマクロファージ間に有意差があったことも興味深いが、これは、移植片では、移植の直後に、IL34改変調節性マクロファージが遊走及び存在していることを示唆している。本発明者らは、移植前−25日目から移植後3日目に、クロドロネートをローディングしたリポソームを使用して、マクロファージ集団をさらに枯渇させ、他者によって以前に記載されているように、IL34又は非コードAAV+準最適用量のラパマイシンで10日間同時処理した。残念なことに、この治療は同種移植片生存をもたらしたが、この治療を使用して、IL−34誘導性マクロファージの役割を明らかにすることはできなかった。このようにして、移植の30日前に注射したAAV−IL34は、同時に枯渇させたマクロファージを介して作用することができなかった。重要なことに、リポソームの枯渇を開始した時点までに、AAV血清型8のほとんどは、肝臓由来の肝細胞に組み込まれていた。本発明者らは、クロドロネートをローディングしたリポソームで処理したレシピエントが、コントロール群と比較して早く移植片を拒絶したことを観察したが、これは、マクロファージが、IL34による寛容誘導に必須であることを実証している(図8)。
IL34は、強力な抑制能力を有する:本発明者らは、ヒトにおけるIL34の抑制能力を疑って、APCとしてのT細胞枯渇同種PBMCの存在下でCD4+CD25−CFSE標識エフェクターT細胞を培養したMLRに、様々な用量の可溶性ヒトIL34を追加した(図9A)。本発明者らは、IL34の存在下において、エフェクターT細胞増殖の有意な用量依存的阻害を観察したが、これは、抗ドナー免疫応答に対するIL34の抑制能力を裏付けている。最後に、抗ドナー免疫応答に対するCD4+CD25highCD127low及びCD8+CD45RClowTreg媒介性抑制活性におけるIL34の関与を実証するために、本発明者らは、同種T枯渇PBMCの存在下でCFSE標識CD4+CD25−エフェクターT細胞増殖をTregによって阻害したMLRに、抗ヒトIL34遮断Ab又はコントロールアイソタイプAbのいずれかを追加した(図9B)。本発明者らは、CD4+及びCD8+Tregでは両方とも、アイソタイプコントロールAbと比較して、IL34の遮断がTreg媒介性抑制を有意に回復したことを観察したが、これは、Tregの抑制活性におけるIL34の重要な役割を実証している。
まとめると、これらのデータは、本発明者らの知見の妥当性を証明しており、IL34がTreg特異的タンパク質であり、抗ドナー免疫応答を操作する際の治療ターゲット候補であるという概念の証拠を提供している。
討論
これまで、IL−34の生物学的関連性はほとんどが依然として不明であり、論争中である。IL−34の役割に関する現在の理解は、主に病理学的状況の研究によるものであり、IL−34は、M−CSFなどの炎症機能を発揮することが見出された。様々な研究により、M−CSFの投与は、コラーゲン誘発性RAモデルにおける炎症を増加させること(26)、及びIL−34は、RAモデルにおける滑膜炎、炎症の重症度と相関し(13)、M−CSFと同様にTNFαによって誘導され得る(27)ことが示されている。さらに、IL−34及びM−CSFは両方とも、IL−6、IP10/CXCL10、IL−8/CXCL8、MCP1/CCL2のような炎症促進性サイトカインを誘導する(28)。これらの研究とは対照的に、M−CSF及びより最近ではIL−34は単独で、又は他のサイトカインと組み合わせて、調節性マクロファージを誘導し得ることも示されている(25、29〜32)。移植では、マウスのM−CSF前処理はマクロファージを増殖させ、GVHDを抑制することが実証されている(33)。加えて、M−CSF及びIFNγの組み合わせは、iNOS依存的に心臓同種移植片生存を延長することができる調節性マクロファージの中で単球を識別する(34)。これらの研究は、IL−34の矛盾した役割の基礎となっている。本発明者らの研究では、移植における寛容誘導の複雑な機構を解明するために、本発明者らは、免疫応答及び寛容のマスターレギュレーターとしてのIL−34の予想外の特性の証拠を初めて提供する。本発明者らはまた、IL−34が、寛容同種移植片及びCD8+CD45RClowTregによって発現され得、最も重要なことには、強力な調節性T細胞を誘導し得るという最初の証拠を提供する。
本発明者らは、CD40Igをコードするアデノウイルスによる心臓移植レシピエントの処理が、レシピエントの93%における不定的な同種移植片生存をもたらすこと、及びこの認容性が、IFNγ、IDO及びFGL2依存的に、CD8+CD45RClowTregによって媒介されたことを以前に実証した。より最近では、本発明者らは、CD8+CD45RClowTregがバイアス制限Vβ11レパートリーに再結合して、主要MCHクラスII由来ペプチドを認識したこと、及びこのペプチドが調節性Tregを誘導して、寛容を誘導することを実証した(17)。本明細書では、本発明者らは、AdCD40Ig処理レシピエントの寛容移植片によって、重要なことには、同じレシピエント由来の脾臓CD8+CD45RClowTregによっても、IL−34が高レベルで発現されたことを示す。さらに、CD8+CD45RClowTreg媒介性抑制は、IL−34の遮断によって部分的に低減され得る。したがって、CD8+CD45RClowTregによって媒介される抑制のCD40Igモデルでは、IL−34は、これまでに研究されていなかった免疫抑制特性を有し、FGL2、IDO及びIFNγと相乗的に作用する。
本発明者らはまた、このモデルでは、M−CSFが関与していなかったことを観察したので、この特性がIL−34特異的であったことを実証した。累積する証拠は、IL−34及びM−CSFが特異的かつ非冗長な特性を示すことを示唆している。これは、IL−34及びM−CSFが異なってCD115に結合することを示す構造分析比較によって強調されている(11、19)。より最近では、第2の別個のIL−34レセプターの同定がこの解釈を補強する(10)。ごく最近では、IL−34欠損マウスが作製され、ランゲルハンス細胞及びミクログリアなどの特定の細胞サブセットの消失(これは、M−CSF KOマウスでは観察されていなかった効果である)を示したが(12)、これは、IL−34及びM−CSFでは、時間的及び空間的な発現の役割が異なるだけではなく、機能的な効果も異なることを実証している。
この分子の治療的価値は、IL−34をコードするAAVの作製によって証明された。このベクターを用いて、本発明者らは、in vitro及び最も重要なことにはin vivoにおけるIL−34の強力な免疫抑制特性を初めて示すことができ、本発明者らは、準最適用量のラパマイシンと組み合わせた場合に、レシピエントの80%において不定的な同種移植片生存を達成した。本発明者らはまた、このような治療が、全ての同種免疫応答の低減及び寛容の誘導をもたらしたことを実証した。以前の研究では、M−CSF及びIL−34は両方とも、調節性マクロファージの中で単球を識別し(25、34)、M−CSF及びIFNγによってin vitroで誘導された調節性マクロファージをin vivoで使用して、マウスにおける心臓同種移植片生存を延長し得る(34)ことが実証された。別の研究では、移植前のM−CSFの投与はマクロファージを増殖させて、ドナーT細胞増殖及びGVHDを制限し得ることがマウスで実証された(33)。Chenらは、可溶性IL−34タンパク質で処理したマウスにおけるCD11b+集団の増加を示した(35)。また、他の研究では、CSF−1欠損大理石骨病マウスにおけるpDC及びcDCの減少(21)、並びにDC数のCFS1誘導性増加(20)が認められた。驚くべきことに、他の研究とは対照的に、投与後のin vivoにおけるIL−34の寛容原性効果は、調節性T細胞によって媒介された。実際、本発明者らは、AAV−IL−34処理レシピエントで得られた寛容が、新たな移植放射線照射レシピエントにおいて、少なくとも3世代にわたって承継され得ること、及びこの効果が、マクロファージによってではなく、(CD11b+細胞集団について観察された増加にもかかわらず)Tregによって媒介されたことを実証した。しかしながら、TregはIL−34レセプターを発現しないので、本発明者らは、調節性マクロファージがCD4エフェクターT細胞をアネルギー化し(36)、T細胞をTregに変換し(37)、又は他のAPCの提示を阻害し得る(38)と文献に示されているように、IL−34が、マクロファージを介してTregに対する効果を媒介したと仮説することができる。本発明者らは、本発明者らのモデルにおいて、IL−34が調節性マクロファージを誘導すると結論することができなかったが、これらは、IL−34誘導性Tregの必要な中間体である。いくつかの研究では、拒絶された腎臓同種移植片において、マクロファージの増殖及び蓄積を増加させるMCSFの炎症促進性役割が示されたように(39)、これらの結果は、IL−34及びM−CSFの機能的差異並びにこのトピックに関する論争を強調している。
結論として、本発明者らは、新たなサイトカインIL−34の移植寛容における役割を本明細書に記載し、本発明者らは、移植の治療としての、又は移植の予後良好に関連するバイオマーカーとしてのその可能性を明らかにしたが、他の疾患にも拡大される。本発明者らはまた、このサイトカインがCD8+Tregによって産生され得、寛容誘導可能なTregを優勢的に誘導し得ることを初めて実証したが、これは、ヒトに移植可能なTregの作製に関する新たな可能性を開くものである。
参考文献:
本出願を通して、本発明が関係する現状技術が様々な参考文献に記載されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。