以下の説明は、概して、臨床医及び患者の意思決定に関する。その意思決定は、患者中心の意思決定サポートツールを利用する際に臨床医及び患者を支援するためのシステム及び方法と共に特定の用途が見出され、特にその意思決定サポートツールを参照して説明する。しかしながら、その意思決定は、他の使用シナリオにおいても用途が見出されるものであり、必ずしも前述した用途に限定されるものではないことが理解されるだろう。
共有される意思決定は、特に、患者の選好(preference)が重要な影響因子である論争を引き起こし易い治療法について医学的決定を行うことに関して、患者と臨床医との間の対話の新たなトレンドである。患者の個人的な選好によってしばしば影響を受ける決定の例には、早期の前立腺癌及び乳癌に対する治療選択、癌予防決定及び癌スクリーニング決定、及び他の疾患及び損傷に対する外科治療対保存治療が挙げられる。例えば、特定の治療オプションが生活の質(quality of life)に不利な影響を及ぼす可能性があるが、生活の質への影響が最小限である他の選択肢よりも治癒率又は成功率が高い場合に、患者の選好の影響力がより増してくる。患者の選好は、治療の選択において大きな役割を果たす。
共有される意思決定は、診断及び治療についての代替オプションに関する状況に応じた情報を患者に提供することにより、患者が情報に基づいた医療ケア選択を行う能力を高める。意思決定プロセスのいくつかの実装形態では、共有される意思決定は、患者の意思決定サポートツール又は補助の助けを借りて行われる。これらのツール及び/又は補助によって、それぞれの疾患の状態を患者により良く理解させ、患者の相対的な健康教育を高め、及び客観的な方法で質の高い医療ケア関連情報にアクセスできるようにする。既存の患者の意思決定サポートツールは、信頼できる情報源から患者に教育情報を提供すること、患者自身の選好や価値を指定するように患者に尋ねること、得た情報を患者が臨床医と話し合って患者が理解し且つ同意する決定に到達することに注力している。
例えば、患者が特定のタイプの癌と診断された場合に、複数の専門医チームが一緒に集まり(sit together)その症例について議論し、どの治療オプションが利用可能であるかを決定する。その後直ぐに、臨床医が患者と一緒に集まり、その診断結果及び利用可能な治療オプションについて話し合う。次に、臨床医及び患者は、臨床ガイドラインに基づいて、推奨される治療及び患者の経路について一緒に決定する。しかしながら、この治療法及び経路の選択は、既知の医療行為に基づいた一般的なものであり、病理、症状及び他の一般的な臨床パラメータを超えた治療後の生活の質への様々な影響についての患者の選好等の個人情報を考慮していない。
さらに、患者がどの様なオプションが利用可能であり、特にそれらオプションの結果がどの様なことを意味するのかを患者が完全に理解していないことは周知の問題である。現在の意思決定補助(例えば、紙ベースの価値明確化フォーム、Webベースのツール等)は、(回復及び副作用を含む)健康の転帰及び副作用に対する患者の評価をある程度考慮しているが、それら現在の意思決定補助は、患者の生活様式レジーム(regime)を完全に考慮していない。さらに、これらのツールは、手動ベースのものであり、且つ他の情報源へのリンクが外れている(disentangled)。さらに、多くの共有される意思決定は、言葉による議論に基づいており、患者が全ての情報を完全に把握したり、又は完全に理解したりすることは困難である。
さらに、患者が転帰パラメータ(例えば、副作用、回復時間等)の個人的な選好に基づいて自分の治療及び臨床経路をさらに個人化することを可能にする対話形式の解決法は存在しておらず、患者は、変化する転帰パラメータに基づいて患者自身の経路の変化を視覚的に確認する必要がある。また、ユーザが治療経路を調整する(例えば、治療頻度を少なくする)こと、及び転帰パラメータに基づいてこれらの変化の影響を確認することを可能にする対話形式の解決法は存在していない。
さらに、患者及び臨床医は、しばしば、標準的な診断手順の一部として収集された情報に基づいて、困難な治療決定を行う状況に直面する。追加の又は新たな診断検査が利用可能になった場合に、患者及び/又は臨床医が目下の患者のために最適な治療計画を決定するのに役立つこの情報を既存の意思決定補助に統合することは困難である。
現在の共有される意思決定患者サポートツールは、患者の個々の健康リテラシー及び記憶に基づいてカスタマイズできない。一般に、患者は、自分の臨床医との共有される意思決定を行うミーティングを行う前に、既存のツールの意思決定サポート・コンテンツについて十分に権限を与えられていないか、又は退屈で飽き飽きしている。
さらに、患者にとって、以前の意思決定について自分自身の選好や理論的根拠(rationales)を思い出すことは困難である。すなわち、患者は、大概、特定の治療過程に同意する自分の理由付けを覚えていない。理論的根拠を思い出すことのこの困難性は、患者に限定されるものではなく、医師も、特定の治療に関して患者にアドバイスした際に、自分のアドバイスや論理を思い出せない可能性がある。
自分の理論的根拠及び選好を思い出せないことによって、医師及び患者は、長い決定期間(通常数年)での後の段階での共有される意思決定を行う際に「同じページ」に達するために追加的な努力及び相談時間が必要となる。これは、疾病管理の全期間を通じて全体的な最適な解決策を実現するためには、患者の選好及び疾患の理解が比較的一貫したままの状態で、以前の段階の決定及び後の段階の決定を計画する必要があるためである。
さらに、現在の共有される患者意思決定サポートツールは、定時の決定にのみに焦点を当てており、長期的な疾病管理全体に対する個人化された患者サポートを無視している。患者は、フォローアップ受診訪問を覚えておき、治療経路計画の全体を順守するのに苦労することが多い。フォローアップ受診訪問及び長期間に亘る治療計画への順守は、前立腺癌の積極的な監視等の保存的な疾病管理にとって特に重要であり、治療計画の変更に伴って複数回のフォローアップ受診訪問を必要とする。
以下に、上記で言及した問題及びその他を克服する、新規で改良された方法及びシステムを開示する。
一態様によれば、多段階式の共有される意思決定のためのシステムが、治療経路の第1段階に関する決定に関連する患者の選好及び患者の理論的根拠を記憶する患者意思決定データ記憶装置を含む。このシステムは、治療経路の次の段階に関する決定を行うために、記憶された患者の選好、患者の理論的根拠、及び治療経路に関して患者を教育するサポートツール支援システムをさらに含む。
別の態様によれば、多段階式の共有される意思決定のための方法が、治療経路の第1段階に対応する患者の選好及び理論的根拠の情報を受け取るステップと、受け取った患者の選好及び理論的根拠の情報を関連するデータベースに記憶するステップとを含む。この方法は、記憶された選好及び理論的根拠の情報に従って理解度スコアを計算するステップと、それに対応する共有される決定についての計算された理解度スコアに従って、治療経路の次の段階に進むステップと、をさらに含む。
別の態様によれば、患者の経路を個人化するためのシステムが、初期治療段階の前に、患者の医療記録に関する患者データを受け取り、患者の生活様式の価値及び選好を患者から受け取り、患者データ、並びに患者の生活様式の価値及び選好から患者の経路及び治療オプションを生成し、経路及び治療オプションの選択肢を評価及び比較するためのグラフィックツールを生成し、及び患者の生活様式の価値及び選好、並びに選択された経路及び治療オプションをメモリに記憶する、ようにプログラムされた1つ又は複数のプロセッサを含む。1つ又は複数のプロセッサは、初期治療段階の後に、第1段階の治療後に患者の病状を反映する患者の医療記録に関する患者データを受け取り、患者の生活様式の価値及び選好をメモリから読み出し、患者の生活様式の価値及び選好に対する調整を受け取り、患者データ、並びに患者の生活様式の価値及び選好から患者の経路及び治療オプションを再生成し、第1の治療段階の前に選択された経路及び治療オプションを、再生成された患者の経路及び治療オプションと評価及び比較するためのグラフィックツールを生成する、ようにさらにプログラムされる。
1つの利点は、疾病管理の全期間を通じて全体的な最適な解決策を実現することである。
別の利点は、治療経路の段階の間に患者の選好、並びに患者及び医師の理論的根拠に連続性が存することである。
別の利点は、疾患及び治療に関する患者の連続的で適応性のある教育が存することである。
別の利点は、治療期間に亘った多段階式の患者意思決定支援が存することである。
別の利点は、過去の治療決定に関する患者の混同を最小限に抑えることである。
別の利点は、意思決定の後悔を減らし、個々の健康リテラシーを改善し、医師の相談時間を短縮し、治療中の患者満足度を向上させることである。
以下の詳細な説明を読んで理解することにより、当業者には更なる利点が理解されるであろう。
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の配置において、並びに様々なステップ及びステップの配置において具体化することができる。図面は、単に好適な実施形態を例示するためのものに過ぎず、本発明を限定するものとして解釈すべきでない。
本願の一実施形態による情報技術(IT)インフラ基盤のブロック図である。
治療決定段階及び治療経路を含む乳癌治療の一連のケアを概略的に示す図である。
本願の一実施形態による患者の選好を確認するための調査質問の一例を示すインターフェイスの図である。
本願の一実施形態による、以前の段階決定の個人化された議論及び理論的根拠の例示的なインターフェイスの図である。
本願の一実施形態による多段階式の共有される意思決定についての1つの方法を示すフローチャートである。
本願の一実施形態による多段階式の共有される意思決定についての1つの方法を示すフローチャートである。
本願の一実施形態による多段階式の共有される意思決定についての1つの方法を示すフローチャートである。
本願は、共有される意思決定サポートシステムを介して患者が多段階式の共有される意思決定を行うのを支援するシステム及び方法を提示する。患者を支援するために、以前の意思決定を行った際の患者の選好及び理論的根拠が記録され、後の意思決定について患者の混同を最小限に抑えるとともにその後の意思決定を容易にし、疾病管理期間全体に亘って全体的な最適な解決策を実現する。本願は、さらに、患者自身の健康リテラシー及び記憶に従って個々の患者の学習経験をカスタマイズし、向上させる能力を提供し、患者が医師との共有される意思決定を行うミーティングの前に十分な権限を患者が有することを保証する。
一実施形態によれば、本願は、患者が以前の意思決定を行うために使用した情報の保持を介した多段階式の共有される意思決定を可能にするシステム及び方法を提示する。保持された情報は、次の段階の治療を決定する際に患者及び医師を支援するために再利用される。保持された情報から、共有される意思決定サポートツールは、特定の疾患又は利用可能な治療に関する患者の教育レベルを確認し、グラフィカル・ユーザインターフェイスを介して教育レベルを高めることができる。一実施形態によれば、前述した情報を保持することにより、その情報は、過去の治療に関する患者の混同(曖昧性)を最小化し、治療間の患者の一貫性を検証するために使用され得る。
図1を参照すると、特定の治療決定を行う際に患者にサポートを提供するように構成された共有される意思決定サポートシステム18と、患者情報の保持及び患者の教育を介してシステム18の利用を支援するように構成されたサポートツール支援システム20とを介して、保持されたユーザの選好及び理論的根拠を使用して多段階式の共有される意思決定を行うためのシステム10のブロック図が示されている。共有される意思決定サポートシステム18は、最良の個人化された医学的決定を見出すために、患者の視点からの診断及び治療の代替的な選択肢を定量的に評価及び比較する。一実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、患者の視点から様々な選択肢を評価して比較する際に、死亡率及び罹患率の確率等の予後及び臨床転帰をその患者にとって直接的に有意な値に変換するアルゴリズムを利用する。システム18の入力パラメータには、患者の個人医療記録、適切な母集団についての転帰及び予後に関する臨床的証拠、患者の価値及び選好66等が含まれる。システム18の出力は、特定の決定/推奨の際に患者の理論的根拠68及び医師の理論的根拠70と一緒の、代替的な選択肢及びシンプルで直接的な治療推奨の定量的評価及び比較であってもよい。患者18が要求する場合に、システム18は、従来の教材、大規模な患者コミュニティへの情報及びアクセス、最良である全ての代替オプションの確率、全ての推定値の信頼区間、及び計算に基づく証拠を含む追加的な出力を提供することができる。一実施形態によれば、システム18からの出力は、後述するように、患者のリテラシーレベル72に基づいてサポートツール支援システム20によって調整してもよい。
また、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が代替的な選択肢を同じ基準で比較するのを可能にし、生活様式レジーム及び選好、転帰パラメータ、患者の経路、質調整生存年(QALYs)、全体的な転帰又は特定の転帰パラメータの望ましい確率等を患者が調整するのを可能にする。システム18は、患者が興味を示す場合に、パラメータ及びモデルの情報源、及び計算の基礎となる数学式についての詳細も提供することができる。本願は、患者の選好66及び理論的根拠68並びに医師の理論的根拠70を記憶することにより、患者及び臨床医の共有される意思決定プロセスを単純化し、患者のストレスを軽減し、患者の意思決定の満足度を高め、意思決定の質及び連続性を保証及び改善し、臨床医の作業負荷を軽減し、患者に提供される教育の質及び効率を高め、臨床医の信頼を高め、及び全体的な医療費を削減する。
共有される意思決定サポートシステム18は、追加の又は新たな診断検査から導き出された潜在的な新しい情報が最適な治療計画を決定するのに役立つかどうかを定量化することもできる。プロバイダー特有の治療送達統計情報を組み込むことにより、意思決定サポートシステムは、特定のケア提供者を用いたこの患者に対する治療計画の成功率を見積もることができる。共有される意思決定サポートシステム18は、ケア提供者が結果を患者に示す前に信頼区間の制限を確立することも可能にする。別のオプションは、ケア提供者が、最適な治療オプションを決定するために使用される情報源を評価して、その情報源が現在の患者に対して関連性を有することを保証することである。
図1を参照すると、病院等の医療機関のITインフラ基盤10の実施形態を示すブロック図が示されている。ITインフラ基盤10は、通信ネットワーク8を介して相互接続された患者個人化システム12、患者情報システム14、1つ又は複数の医療情報システム16、共有される意思決定サポートシステム18、及びサポートツール支援システム20等を適切に含む。理解されるように、通信ネットワーク8は、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、ワイヤレスネットワーク、有線ネットワーク、セルラネットワーク、データバス等の1つ又は複数を含んでもよい。ITインフラ基盤10の構成要素は、中央位置又は複数の遠隔位置に配置することができることも理解されたい。
患者個人化システム12は、患者が、患者の視点からの、患者の診断及び治療に関する患者の価値、生活様式レジーム、及び選好66を入力することを可能にする。患者個人化システム12は、医療機関で治療を受けている患者に対する治療段階64及び経路62の代替的な選択肢の定量的な評価及び比較も受け取る。種々の治療経路62及び段階64は、以下に説明する乳癌のケア連続性において共有される意思決定23に関して図2に示されている。例えば、患者個人化システム12は、同じ基準での代替的な選択肢の比較を含む治療及び経路の選択肢の定量的な評価及び比較を表示し、患者が生活様式レジーム及び選好、転帰パラメータ、患者の経路、QALYs、全体的な転帰又は特定の転帰パラメータの望ましい確率等を調整することを可能にする。
患者個人化システム12は、選択肢の評価及び/又は比較を表示するためのCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等のディスプレイ22と、患者が患者の価値及び選好66を入力し、及び/又は評価及び/又は比較を変更するキーボード及びマウス等のユーザ入力装置24とを含む。患者個人化システム12は、さらに、特定の治療決定に関連して患者が述べた又は選択した理論的根拠68を受け取ることができる。述べられた又は選択された理論的根拠68は、患者自身の言葉で入力してもよく、患者に提示される利用可能な理論的根拠のセット等から選択してもよい。一実施形態では、患者の価値、選好66、及び理論的根拠68は、患者個人化データベース26に記憶される。別の実施形態では、特定の治療決定を行う際の患者の選好66及び理論的根拠68は、以下に詳細に説明する患者意思決定データ記憶装置60に記憶される。患者個人化システム12の例には、パーソナルコンピュータでアクセス及び/又は表示することができるソフトウェアアプリケーション、ウェブベースのアプリケーション、タブレット、モバイル装置、携帯電話等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
患者情報システム14は、医療機関によって治療を受けている患者に関する患者データを記憶する。患者データには、患者の医療記録や、体重、年齢、家族健康歴、併存疾患等の患者の人口統計情報が含まれる。患者データには、1つ又は複数のセンサから収集された生理学的データ、別の生理学的データ、実験室データ、1つ又は複数の撮像装置によって取得された画像データ、患者の管理データ、患者の医療記録等も含まれる。一実施形態では、患者データには、患者個人化データベース26に記憶された患者の価値、生活様式レジーム、及び選好66が含まれる。患者データには、医師の理論的根拠70、医師の治療ノート、コメント、リテラシースコア72等も含むことができる。患者データは、自動的に生成してもよく、手動で入力してもよく、又はそれらの組合せの結果であってもよい。患者データの一部又は全部が手動入力で行われる場合に、ユーザ入力装置28を使用することができる。一実施形態によれば、患者情報システム14は、患者データを手動で入力する及び/又は生成された患者データを表示するためのユーザインターフェイスをユーザに提供する表示装置30を含む。一実施形態では、患者データは、患者情報データベース32に記憶される。患者情報システムの例には、電子医療記録システム、部門システム等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
図1のインフラ基盤10は、治療を受けている患者に関連する集団から収集された医療データを記憶する医療情報システム16をさらに含む。例えば、医療情報システム16は、異なる集団の様々な臨床的問題に関する集団レベルの医療データを記憶する。医療データには、文献からの集団レベルの知識、過去に遡った遡及的研究、臨床試験、転帰及び予後に関する臨床的証拠等が含まれる。医療データには、さらに、疾患に関する現在の医療知識、治療経路、患者の知識レベルに関連するテスト情報、健康リテラシー情報、閾値スコア、リマインダ等を含むことができる。医療データは、自動的に、手動で、又はそれらの組合せで生成することができる。手動で入力される場合に、例えば、システム16は、ユーザ入力装置34を利用することができる。一実施形態によれば、医療情報システム16は、医療データを手動で入力する及び/又は生成された医療データを表示するためのユーザインターフェイスをユーザに提供する表示装置36を含む。一実施形態では、医療データは、医療データベース38に記憶される。別の実施形態では、患者データも、医療データベース38に記憶される。医療情報システムの例には、医学文献データベース、医療検査及び研究データベース、地域及び国内の医療システム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。後述するように、医療データの一部又は全部を患者意思決定データ記憶装置60に記憶してもよい。
一実施形態によれば、共有される意思決定サポートシステム18は、臨床サポートツール又は患者の意思決定支援を具体化する臨床モデル及びアルゴリズムを記憶する。臨床モデル及びアルゴリズムは、典型的には、治療を受けている患者の患者データ及び臨床的問題の関数として、1つ又は複数の診断及び/又は治療オプションを含む。臨床モデル及びアルゴリズムは、患者の状態及び患者データに基づいて、様々な診断及び/又は治療オプションに関する推奨事項をさらに含むことができる。具体的には、臨床モデル及び/又はガイドラインは、利用可能な最良の証拠に基づいて、すなわち科学的方法及び研究(例えば、無作為に抽出された臨床検査)によって得られた臨床的証拠に基づいて、特定の疾患又は状態に合わせて患者の診断及び/又は治療オプションを決定する。患者データを受け取った後に、共有される意思決定サポートシステム18は、治療を受けている患者の臨床的問題に関連する臨床モデル及びアルゴリズムを適用する。次に、共有される意思決定サポートシステム18は、患者データに基づいて利用可能な診断及び/又は治療オプションを提供する。より多くの患者データが利用可能になると、共有される意思決定サポートシステム18は、患者に利用可能な診断及び/又は治療オプションを更新することも企図される。具体的には、共有される意思決定サポートシステム18は、患者データ、医療データ、臨床モデル及びアルゴリズム等を取得し、医療機関で治療を受けている患者(例えば、図2)に治療及び経路の代替的な選択肢の定量的な評価及び比較を提供する。例えば、共有される意思決定サポートシステム18は、患者情報システム14からの患者の医療記録、医療情報システム16からの適切な母集団についての転帰及び予後に関する臨床的証拠、臨床モデル及びアルゴリズム、患者が入力した患者の価値、生活様式レジーム、及び選好を取得し、治療及び経路の選択肢の定量的な評価及び比較を表示する。共有される意思決定サポートシステム18は、臨床モデル及びアルゴリズムを表示するためのCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等のディスプレイ40と、臨床医が臨床モデル及びアルゴリズムを入力及び/又は修正するためのキーボード及びマウス等のユーザ入力装置42とを含む。
図1に示されるインフラ基盤10は、対応する治療経路62の各段階を通じて、共有される意思決定サポートシステム18を利用する際に患者を支援するサポートツール支援システム20をさらに含む。一実施形態によれば、サポートツール支援システム20は、共有される意思決定サポートシステム18から、患者の特定の治療経路62に関連する治療決定の初期選択に対応する出力を受け取る。サポートツール支援システム20は、患者に関する情報を記憶する患者意思決定データ記憶装置60と通信する。この患者情報は、医療データベース32、個人化データベース26、及び医療機器データベース38に記憶される情報に加えて、特に患者に関する情報である。図1に示されるように、患者意思決定データ記憶装置は、例えば、治療経路62、完了した又は残存する治療段階(複数可)64、患者の選好66、過去の治療決定に関する患者の理論的根拠68、医師の理論的根拠70、患者のリテラシーレベル72、次の段階への意思決定の関与に関するスコア閾値74、及び患者の治療に関して患者又は医師のために生成されたリマインダ76を含む。
患者の選好66は、共有される意思決定サポートシステム18に対して上述したように確認することができる。患者の理論的根拠68は、特定の治療の患者の選択に応答して自動的に生成され、患者によって個人化システム12を介して入力され、又はそれらの組合せが行われる。患者の理論的根拠68は、選択された治療経路62に沿った次の段階64の治療に関する決定を行う際に患者を支援するサポートツール支援システム20によって利用することができることを理解されたい。例えば、患者は、次のイベントに関する以前の治療決定に基づいて、そのようなイベントへの関与を可能にするより侵襲性の低い処置を選択する。実質的に侵襲的な処置を次に決定しなければならないときに、この情報を有することは、患者が、この次の処置がなぜ非常にドラスティック(drastic)となるのかを理解するのを助けることができる。さらに、患者は、次の段階64の治療を決定するのを補助するために自分の理論的根拠を思い出すことができる。患者のリテラシーレベル72は、患者の特定の疾患、治療経路62、医学的進歩、治療段階64等に関する患者の情報量及び理解量に対応する。サポートツール支援システム20は、健康リテラシー決定システム54によって患者リテラシー72のこの決定を容易にするように構成することができる。
健康リテラシー決定システム54は、治療を受けている疾患の詳細、治療に関する現在の状態、選択された治療経路62の様々な段階64等に関して患者を教育するように構成することができる。患者の健康リテラシー72は、特定の疾患及び治療経路64に従って生成された質問を用いて決定することができる。一実施形態によれば、健康リテラシー決定システム54は、対応するグラフィカル・ユーザインターフェイスを介して、患者の疾患のプロファイル並びに将来可能になる治療経路64及び決定に関する小テストを提示し、患者の理解度をテストし理解を確実にすることができる。前述したテストに含まれる質問は、患者が治療経路62の次の段階64への意思決定を行う際の関与に十分に準備が整ったことを保証するように、患者による以前の誤りを反映するように調整してもよい。
サポートツール支援システム20は、健康リテラシー決定システム54に応答して患者によって提出された回答を分析するように構成されたスコア計算ユニット56をさらに含むことができる。計算ユニット56によって生成されたスコアをスコア閾値74と比較して、サポートツール支援システム20が、患者が十分に教育され、次の段階64への治療に関する決定を行う準備が整っているかどうかを決定する際に支援する。スコア計算ユニット56は、患者に関連するスコアを決定する際に様々な入力を利用することができる。スコア計算ユニット56は、患者自身の疾患についての患者の個人的理解度、患者の選好66、及び以前の治療決定のための患者の理論的根拠68を推定するスコアを計算することができる。一実施形態によれば、このスコアは、患者が忘却曲線に従って忘れるにつれて、徐々に減少する。このスコアは、患者の以前のテスト履歴に基づいて更新されたベイズ的統計値(bayesian)であってもよく、すなわち、以前のテストで高得点を示した患者は、自分の疾患に特有の知識理解レベル又は健康リテラシー72を維持するために再度テストされる可能性が低い。例えば、スコア計算ユニット56は、次の段階64の治療に対する過去の治療決定について、患者の以前の選好66と理論的根拠68との間に不一致が生じる場合を検出し認識するように構成することができる。不一致が検出された場合に、医師は、患者が自分の疾患及び/又は治療に関して追加の相談及びアドバイスを必要とすることを通知され得る。
一実施形態では、サポートツール支援システム20は、患者の治療の段階64に関するリマインダ及び/又は通知を生成するように構成されたリマインダ生成ユニット58を含む。リマインダ生成ユニット58は、今後行う又は実行する必要のある意思決定又は治療に関する電子メールメッセージ、カレンダ通知、自動呼出し、又は他の適切な通知手段を、患者及び/又は医師に送信するように構成することができる。そのようなリマインダ76は、患者への生成時又は通信後に、患者意思決定データ記憶装置60に記憶してもよい。サポートツール支援システム20は、臨床モデル及びアルゴリズムを表示するためのCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等のディスプレイ50と、キーボード及びマウス等のユーザ入力装置52とを含み、このユーザ入力装置52によって、患者が、患者の選好66及び患者の理論的根拠68を入力及び/又は変更し、健康リテラシー決定システム54からのテスト質問に答え、共有される意思決定サポートシステム18と対話する。
ITインフラ基盤10の構成要素は、前述した機能を具現化するコンピュータ実行可能命令を実行するプロセッサ44を適切に含み、このコンピュータ実行可能命令は、プロセッサ44に関連するメモリ46に記憶される。前述した機能の少なくとも一部は、プロセッサを使用せずにハードウェア内に実装することができることを理解されたい。例えば、アナログ回路を使用してもよい。さらに、ITインフラ基盤10の構成要素は、プロセッサ44に通信ネットワーク20を介して通信するためのインターフェイスを提供する通信ユニット48を含む。さらに、ITインフラ基盤10の前述した構成要素について個別に記載されているが、これらの構成要素を組み合わせることができることを理解されたい。
上述したように、共有される意思決定サポートシステム18及びサポートツール支援システム20は、有効な患者データ、医療データ、臨床モデル及びアルゴリズムを利用する推奨される患者治療経路62又は治療オプション(複数可)、転帰パラメータ(例えば、副作用の重症度、治療の頻度、治療後の生存予測、治療後の合併症のリスク推定等)に関する患者の選好66、意思決定選択に関する患者の理論的根拠68、患者の生活様式レジーム(アジェンダ、習慣、食生活、運動、治療後の長期的な損傷及び障害のリスク推定等)を受け取る。こうして、共有される意思決定サポートシステム18及びサポートツール支援システム20は、転帰パラメータに関して患者が有する価値を利用するだけでなく、その価値を患者のニーズ及び状況に合わせてさらに個人化する。
一実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が、上述したような入力に基づいて生成された調整済みの患者の経路(複数可)又は治療オプション(複数可)を視覚化することを可能にするグラフィックツールを生成する。グラフィックツールは、回復期間、(例えば、身体的、精神的、感情的な)結果、治療の頻度及びレジーム、生活様式の主な変化、及び他の不利な影響(食生活、睡眠、疲労、性生活等)を含む、各(又は選択された)経路又は治療オプションの健康転帰に関して、個々の患者の経路及び視覚的なトレンドを視覚的に描写する。更なる実施形態では、患者は、他の転帰パラメータのトレンド及び患者の経路に関するその変化の影響を視覚化するために、上記パラメータのうちの任意の1つをグラフィック的に調整することによって、グラフィックツールを制御し且つさらに個別化することができる。あるいはまた、ユーザは、経路をグラフィック的に調整し、その変化の影響を全ての転帰パラメータのトレンドに関して確認することができる。
グラフィックツールは、医療データ並びに臨床モデル及びアルゴリズムからの利用可能な医学的証拠に基づいて全体的な転帰の確率も示す。一実施形態では、患者は、転帰の確率を調整し、全てのパラメータ及び患者の経路に関する変化の影響を確認することができる。全体的な転帰の確率に加えて、特定の転帰パラメータの(有効な証拠に基づく)他の確率、例えば身体的エネルギーが減少する特定のトレンドの可能性、回復の可能性、身体的痛みの可能性等を加えることができる。特定の患者の経路がどれ位の頻度で又は実際に実施されているかの追加情報も、示すことができ、その追加情報は、例えば最も頻繁に使用される経路を確認するために患者が調整することもできる。その特定の確率値に対して有効な証拠が利用可能でない場合に、システムは利用可能な最も近い証拠を自動的に検索し、その検索結果をユーザに示す。
別の実施形態では、グラフィックツールは、患者が、特定の患者の経路又は治療オプションの転帰パラメータ、すなわち癌の回復及び副作用を経時的に視覚的に調査することを可能にする。患者は、視覚的な患者の経路上の任意の特定の点をクリックするか、特定の視覚制御ツール(例えば、経時的な視覚スライダー)を調整して、例えば癌の大きさ/拡散を視覚的に確認することができ、毛髪の抜け量等の副作用を視覚的に確認することができる。さらに、その視覚化画像をそのような転帰の確率と結びつけることができ、それによって、ユーザは、確率値を調整し、変更された視覚化画像を確認することができる。
具体的には、一実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、死亡率及び様々な罹患率の確率等の予後及び臨床転帰を、患者の視点からの定量的な決定評価及び比較に変換する。評価は、有効な患者データ、医療データ、臨床モデル及びアルゴリズム、転帰パラメータに関する患者の選好、患者の生活様式レジーム等に依存する。別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が、同じ基準を使用して自分自身の選好に従った生存期間及び生活の質を組み合わせた代替的な意思決定選択肢を評価し比較することを可能にする。これにより、患者のための直接的で簡単な個人的且つ定量的な意思決定サポートツールが得られる。別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、パラメータの情報源に関する詳細、患者が興味を示す場合の計算方法、及び他の関連する教材も提供する。例えば、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が直面する難しい質問に容易に回答するのを直接的に補助することができる、様々な代替的な選択肢及び意思決定支援のより定量的な評価及び比較を提供する。選択肢は、患者の視点からの生存期間と生活の質との両方、並びに信頼区間を考慮するQALYsの観点から評価される。
これを達成するために、共有される意思決定サポートシステム18は、患者データ、臨床モデル及びアルゴリズム、医療データ等を利用して、患者の現在の状態を考慮して最適な患者の経路及び/又は治療オプションを計算する。具体的には、臨床モデル及びアルゴリズムを患者に適用して、利用可能な患者の経路及び/又は処置を決定する。次に、患者の選好、生活様式レジーム、及び価値は、関連する集団の医療データに基づいて、各経路及び/又は治療オプションの生存期間及び生活の質のトレードオフを行う比較可能な測定値を計算するためのパラメータを推定する際に利用される。
個人の選好及び価値評価の重要な役割は、患者の選好を理解し、意思決定プロセスにおいてこれらの選好を最大限に活用することである。例えば、調査やアンケートは、完全な健康状態で生活する時間と様々な障害を伴って生活する時間とのトレードオフを行うことによって、選好を判断する。図3は、一実施形態による、患者の選好66を確認するために患者に提示された調査の例示的な説明図である。時間トレードオフの調査では、様々な損傷や障害について、個人化され且つ比較可能な基準、生活の質がもたらされる。さらに、時間の経過に伴う生活の質の積分値は、比較可能な測定値QALYをもたらし、このQALYは、患者及び医師が、患者自身の選好に応じて様々な選択肢を直接的に比較するのを可能にする。共有される意思決定サポートシステム18の上述した動作は、上述したサポートツール支援システム20によってさらに強化される。患者が、後続の段階64の治療中に共有される意思決定サポートシステム18と対話する際に、患者に、これら過去の決定を行う際に使用した、過去の意思決定、以前の選好66、及び理論的根拠68を思い出させる。
治療中又は治療後に、患者は、(例えば、アンケートに記入された)主観的データ又は患者が報告した転帰を入力することができ、臨床医は、疾患(例えば、腫瘍の縮小サイズ)に関する進行情報を入力することができ、治療の有効性がどれ位かを有効な証拠に基づいて予想される回復及び副作用と比較して、治療の有効性及び進行をさらに理解し、図式的に視覚化することもできる。これは、治療が開始されると、患者の経路の特定のポイントで行うことができる。例えば、治療の異なるポイント又はステージでの撮像結果又は患者データをシステムにアップロードして使用し、期待される転帰(医学的証拠の知識ベースに保存された画像又は写真)と比較を行い、治療効果又は進行スコアを生成する。患者が報告した転帰データを使用して、システムは、回復及び副作用の実際のトレンドと、有効な証拠に基づいて期待されるトレンドとの間の違いを視覚的に描くことができる。
全ての異なるオプションについて、共有される意思決定サポートシステム18は、臨床モデル及びアルゴリズム並びに医療データを利用した患者の疾患状態に基づいて、死亡確率及び罹患率等の臨床転帰も推定する。これを達成するために、共有される意思決定サポートシステム18は、患者の選好及び価値に従って異なる罹患率のQALY転帰を評価する。次に、患者の異なる意思決定選択肢のQALY転帰を評価する。これらのQALY結果は、定量的であり、比較可能であり、個人化され、及び患者に提示される。患者を圧倒する(overwhelming)のを避けるために、結果及び証拠は、異なるレベルで提供することができる。例えば、一実施形態では、最も直接的な結果(すなわち、様々な治療の期待されるQALY)が、患者が興味を示す場合に、利用可能な他の詳細と共に表示される。別の実施形態では、期待されるQALYs及び対応する信頼区間が、医療データ並びに臨床モデル及びアルゴリズムに従って患者の現在の状態を考慮して異なる代替動作の下で計算される。別の実施形態では、期待されるQALYsの信頼区間は、確率論的な感度分析による計算である。臨床研究の従来からの焦点であり且つ通常は異なる集団についての文献から見出すことができる死亡の確率とは異なり、損傷/障害の確率は、選択するそれぞれの特定の代替動作の合併症又は副作用の確率から計算される。死亡率及び罹患率のリスクは、臨床提供者からの長期的なデータセット内の患者を数えることによって、又は患者が属する集団の医学的文献に提供された値を直接的に使用することによって得ることができる。
別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、追加の診断検査及び/又はプロバイダー特有の治療送達統計情報を、個人化された患者の意思決定プロセスに提供する。意思決定サポートツールは、治療転帰に関して有効な証拠が生成された最も影響力のある独立したパラメータを反映する一連の標準的な診断検査(デジタル直腸検査(DRE)、グリソン(Gleason)スコア、前立腺特異抗原(PSA)である。患者の前提条件をさらに特定するために利用可能な「高度な」又は他の追加の診断検査を用いて、及び/又は文献からの一般的な転帰ではなく、プロバイダー特有の治療送達統計値を用いて、治療選択肢の間の区別が(例えば、転帰予測についてより狭い信頼区間の観点で)改善され、いくつか又は全ての選択肢を明確にランク付けするだろう。例えば、「高度な」診断検査は、Dx(m−p)MRI、画像統合、超音波エラストグラフィ、HistoScan、PCA3等を含むことができる。信頼区間が治療オプションの追加的に区別される検出力(power)を提供するのに十分狭い場合に、共有される意思決定サポートシステム18は、これらの更なる高度な検査が特定の患者に対して不要であることを患者に通知することができる。
更なる実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、ケア提供者が、治療オプションのランキングを変更し得る、患者についての情報を取り込む困難性を調整するために信頼区間の制限を調整するのを可能にする。例えば、患者が異なる腫瘍について以前に放射線療法を行っていた場合に、次に、モデルからのランク付けに拘わらず、放射線療法が、現在の患者のオプションから外されるだろう。共有される意思決定サポートシステム18は、ケア提供者が、患者のための最適な治療オプションを推定するために使用した基準の適合性を評価することも可能にする。例えば、患者が、ソースデータが収集された地理的領域とは著しく異なる特定の地理的領域に位置していた場合に、次に、そのデータに基づいて患者に治療オプションを推奨することは不適切になるだろう。
共有される意思決定サポートシステム18は、さらに、追加テストに関する情報を提供し、及び有効な証拠からのそのテストの正確性及び精度に関するデータに基づいて、転帰測定値の信頼区間を狭めるモデル化を行うことにより、そのような追加テストがどの様に意思決定をサポートし得るかを予測し、意思決定プロセスにおいてその予測検出力を実行可能なものにする。例えば、標準的な診断検査を超える診断検査Xを行うことによって新たな証拠が得られた場合に、治療Qが、治療R又はSよりも患者に対してより効果的であり、診断検査Xに進むことは価値があることになる。
別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、文献からの一般的統計値の代わりにプロバイダー特有の治療送達統計値を利用して、治療オプションの信頼区間のオーバーラップを低減し、患者にプロバイダー特有の治療決定支援を提供する。これは、ケア提供者が、患者に関する無形又は難しい情報を取り込むために、信頼区間の制限を調整することを可能にする。ケア提供者は、現在の患者にとって最適な治療オプションを推定するモデルを開発するために使用したソースデータの有用性を評価する権限も有する。
このような機能を実現するために、医療情報システム16は、(潜在的には医療従事者による診断及び治療サービスの間に)健康アドバイスを提供する施設に関する情報、特定の健康上の選択肢を考慮した患者の疾患の経路の統計的又は最適化モデルの形態の適用可能な及び利用可能な証拠、及び、患者の選好、前提条件、及び所見に関するデータが提供された意思決定支援の計算アプリケーションが含まれる。医療情報システム16は、前述の統計的又は最適化モデルに含まれていない代替的な診断又は治療方法に関する有効な証拠をさらに記憶し、この追加された証拠により、共有される意思決定サポートシステム18は、それらの正確性及び精度に関して代替的な方法を以前説明した統計モデルで使用された方法と比較し、その計算結果をモデル内に通知する。
共有される意思決定サポートシステム18によって提供されるこの比較は、モデルには含まれていないが定量的に比較可能な特定の又は一部の「高度な」テストが、正確性、精度、予測値に関して標準的なテストと共に適用される場合に、転帰の潜在的に低減した変動を伴う推定が、統計的又は最適化モデルがそのモデルによって使用される「標準的な」テストに基づいて各治療選択肢について予測することを、推定する。この機能は、「追加のテストの特有の効果を評価する」ことを可能にするユーザインターフェイス要素によって、意思決定支援のユーザに利用可能にされ、ユーザは、テスト又はテストのセットを選択し、転帰の信頼区間予測がどの様に変化するかを確認する(信頼区間が狭くなった場合に、ユーザは、テストを適用したがる可能性があるが、そうでなければ、テストは不要である)。
追加の効果的な診断検査と同様に、プロバイダー特有の治療送達統計情報も、転帰推定の精度を向上させることができる。プロバイダー特有の統計値は、プロバイダーが関心のある手順等を定期的に実施する病院/医療機関又は保険業者から得ることができる。これらの統計値には、プロバイダーが一般的に扱う患者集団の疾患の重症度、特に患者の併存疾患による予防不可能な合併症の割合等が含まれる。例えば、一部のプロバイダーは、特定の併存疾患を有する患者を治療することに特化するので、患者がその併存疾患を有する場合に、そのプロバイダーにより治療を受けることは有益であり得る。
別の実施形態では、ユーザ(例えば、患者又は医療従事者)は、許容可能な信頼区間を指定するか、又は個々の治療選択肢の転帰について許容可能なレベルの「オーバーラップ」を設定し、共有される意思決定サポートシステム18は、追加のどのテストがその信頼区間を許容するかを選択する。基本的には、これは上記のアプローチの逆であり、「高度な診断検査Aを行う場合に、Jが転帰であり、信頼区間をY%だけ狭める」代わりに、ユーザは、「オーバーラップを減らしたい、どの様な高度な診断検査を行う必要があるか?」、又は「私が生きたいと望む信頼区間の最大範囲は、+/−X%であるが、どの様なオプションを検討する必要があるか?」、又は「許容可能な最大オーバーラップはZ%であるが、これに最も近づくように達成するためには、どの様な追加の診断検査を行うべきか?」と設定することができる。これは、いくつかの新しい高度な診断検査が存在していると仮定している。推奨される治療オプションの推定値のオーバーラップを排除することは、達成するのが困難又は不可能な場合があり得るが、オーバーラップを減らすことは満足できる代替選択肢である。共有される意思決定サポートシステム18からの応答は、追加のテストが推奨される治療オプションの推定値のオーバーラップを減らすことができないということになり得、これがシステムからの有効な応答となり得る。
さらに別の実施形態では、高度な診断検査毎の追加コスト等の他の要因も考慮に入れることができる。別の実施形態では、ケア提供者は、患者に関する意思決定補助情報を患者と共有する前に、患者にとって許容可能な信頼区間を調整して、患者に関する無形の又は困難な個人情報を取り込むのを考慮する。別の実施形態では、ケア提供者は、最も正確で関連性の高い情報のみが使用されることを保証するために、現在の患者に対する最適な治療オプションをランク付けする、モデルで使用されるソースデータの関連性を評価することができる。
サポートツール支援システム20は、共有される意思決定サポートシステム18と対話しながら、患者に補足的なグラフィカル・ユーザインターフェイスを提供する。図4は、患者の以前行われた意思決定、例えばそのような以前の意思決定を行う際に利用した選好66及び理論的根拠68を示す。次に、サポートツール支援システム20は、(図3に示すような)調査を実施する際に共有される意思決定サポートシステム18と協働して、患者の現在の選好66、患者の現在の健康リテラシー等を確認することができる。この追加情報が収集されると、サポートツール支援システム20は、スコア計算ユニット56を介して、患者自身の疾患、治療、選好66及び理論的根拠68、及び以前の意思決定について患者の理解度を推定する理解度スコアを計算する。次に、このスコアは、患者が次の決定段階64の治療に関与する準備が整っているかどうかを示す閾値スコアと比較される。患者のスコアがこの閾値を超えた場合に、患者及び医師は、(上述したような)共有される意思決定サポートシステムを利用して、治療経路62の次の段階64の次の動作の経過(例えば、乳腺腫瘤摘出手術又は乳房切除術)を決定することができる。患者のスコアがこの閾値を下回った場合に、患者は、患者の理解をさらに高めるために追加の教材及びテストの提示を受けることができ、医師は、更なる相談が必要であるとの通知を受けることができる。図1では、インフラ基盤10の別個の構成要素として示されているが、共有される意思決定サポートシステム18及びサポートツール支援システム20は、本明細書に記載の機能を実行するように構成された単一の装置に組み合わせてもよい。
本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピュータ装置のプロセッサによって実行可能な命令を記憶することができる任意の有形記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体と呼んでもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、有形のコンピュータ可読媒体と呼んでもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ装置のプロセッサによってアクセス可能なデータを記憶することもできる。コンピュータ可読記憶媒体の例には、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体状態ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、及びプロセッサのレジスタファイルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。光ディスクの例には、CD−ROM、CD−RW、CD−R、DVD−ROM、DVD−RW、又はDVD−Rディスク等のコンパクトディスク(CD)及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータ装置によりアクセスすることができる様々なタイプの記録媒体も指す。例えば、データは、モデム、インターネット、又はローカルエリアネットワークを介して読み出すことができる。コンピュータ可読記憶媒体への言及は、おそらく複数のコンピュータ可読記憶媒体であると解釈すべきである。1つ又は複数のプログラムの様々な実行可能なコンポーネントを異なる位置に記憶することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、同じコンピュータシステム内の複数のコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、複数のコンピュータシステム又はコンピュータ装置の間で分散されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセスできるメモリである。コンピュータメモリの例には、RAMメモリ、レジスタ、及びレジスタファイルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「コンピュータメモリ」又は「メモリ」への言及は、おそらく複数の記憶装置であると解釈すべきである。メモリは、例えば、同じコンピュータシステム内の複数のメモリであってもよい。メモリは、複数のコンピュータシステム又はコンピュータ装置の間で分散された複数のメモリであってもよい。
「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。コンピュータ記憶装置の例には、ハードディスクドライブ、USBサムドライブ、フロッピー(登録商標)ドライブ、スマートカード、DVD、CD−ROM、及び固体状態ハードドライブが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、コンピュータ記憶装置は、コンピュータメモリであってもよく、その逆であってもよい。「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」への言及は、おそらく複数の記憶装置であると解釈すべきである。記憶装置は、例えば、同じコンピュータシステム又はコンピュータ装置内の複数の記憶装置であってもよい。記憶装置は、複数のコンピュータシステム又はコンピュータ装置の間で分散された複数の記憶装置であってもよい。
本明細書で使用される「プロセッサ」は、プログラム又は機械実行可能命令を実行することができる電子部品を包含する。「プロセッサ」を含むコンピュータ装置への言及は、複数のプロセッサ又はプロセッサコアを含む可能性があると解釈すべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサは、単一のコンピュータシステム内の又は複数のコンピュータシステムの間で分散したプロセッサの集合を指してもよい。コンピュータ装置という用語は、それぞれが1つ又は複数のプロセッサを含むコンピュータ装置の集合又はネットワークを指す可能性があると解釈すべきである。多くのプログラムは、同じコンピュータ装置内にあっても、又は複数のコンピュータ装置に分散してもよい複数のプロセッサによって実行される命令を有する。
本明細書で使用される「ユーザインターフェイス」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムと対話することを可能にするインターフェイスである。「ユーザインターフェイス」は、「ヒューマンインターフェイス装置」と呼んでもよい。ユーザインターフェイスは、オペレータに情報又はデータを提供し、及び/又はオペレータから情報又はデータを受信することができる。ユーザインターフェイスは、オペレータからの入力をコンピュータが受信することを可能にし、コンピュータからの出力をユーザに提供することができる。換言すれば、ユーザインターフェイスは、オペレータがコンピュータを制御又は操作することを可能にし、インターフェイスは、コンピュータがオペレータの制御又は操作の結果を示すことを可能にすることができる。ディスプレイ又はグラフィカル・ユーザインターフェイス上のデータ又は情報の表示は、オペレータに情報を提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ペダル、有線グローブ、ダンスパッド、リモコン、加速度計によるデータの受信は、全て、オペレータからの情報又はデータの受信を可能にするユーザインターフェイス・コンポーネントの一例である。
本明細書で使用する「ハードウェアインターフェイス」は、コンピュータシステムのプロセッサが、外部のコンピュータ装置及び/又は機器と対話し及び/又は制御することを可能にするインターフェイスを含む。ハードウェアインターフェイスは、プロセッサが制御信号又は命令を外部コンピュータ装置及び/又は機器に送信することを可能にすることができる。ハードウェアインターフェイスは、プロセッサが外部のコンピュータ装置及び/又は機器とデータを交換することも可能にすることができる。ハードウェアインターフェイスの例としては、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS−232ポート、IEEE−488ポート、Bluetooth(登録商標)接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、電圧制御インターフェイス、MIDIインターフェイス、アナログ入力インターフェイス、デジタル入力インターフェイス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイ装置」は、画像又はデータを表示するように適合された出力装置又はユーザインターフェイスを包含する。ディスプレイは、視覚的、音声的、触覚的なデータを出力することができる。ディスプレイの例には、コンピュータモニタ、テレビ画面、タッチスクリーン、触覚的電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄積管(storage tube)、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクターディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ)、プロジェクタ、ヘッドマウント式ディスプレイが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
データベース26,32,38,60等の本明細書に記載される各データベースは、コンピュータ・データベースを適切に含み、このコンピュータ・データベースは、単一のコンピュータによって、複数のコンピュータに亘って分散されることにより具体化される。さらに、各データベースは、リコール(recall)を容易にする構造化された方法でデータを適切に記憶し、且つそのようなデータへのアクセスを容易にする。さらに、本明細書で使用されるように、メモリは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体;磁気ディスク又は他の磁気記憶媒体;光ディスク又は他の光記憶媒体;ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、他の電子メモリデバイス、或いはチップ又は動作可能に相互接続されたチップの又はセット;記憶した命令をインターネット又はローカルエリアネットワークを介して読み出すインターネットサーバ等の1つ又は複数を含む。さらに、本明細書で使用されるように、コントローラは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィック処理ユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の1つ又は複数を含む。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、無線ネットワーク、有線ネットワーク、セルラネットワーク、USB及びI2C等のデータバス等の1つ又は複数を含む。ユーザ入力装置は、マウス、キーボード、タッチスクリーンディスプレイ、1つ又は複数のボタン、1つ又は複数のスイッチ、1つ又は複数のトグル等の1つ又は複数を含む。ディスプレイは、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、投影ディスプレイ、タッチスクリーンディスプレイ等の1つ又は複数を含む。
図5は、患者が治療に関するその後の意思決定を行う際に患者を補助するための例示的な方法の簡略化したフローチャート500を示す。502において、共有される意思決定サポートシステム18からの出力が、サポートツール支援システム20によって特定の治療決定のために受信される。次に、504において、サポートツール支援システム20は、治療決定に関連する患者の選好66及び患者の理論的根拠68を記憶する。506において、患者は、以前の決定についての自分の疾患、治療の経路64、患者の選好66、及び患者の理論的根拠68に関して、サポートツール支援システム20によって教育され、テストされる。
次に、508において、サポートツール支援システム20は、患者の理解度スコアを計算し、このスコアを使用して次のテストのタイミング及び質問を決定する。上述したように、患者に提示される質問は、間違った回答、不一致等に従って調整してもよい。サポートツール支援システム20は、計算された理解度スコアに基づいて、患者のリテラシー72についてより頻繁な又はより少ない頻度のテストが必要とされ得ることを決定することができることが理解されるであろう。次に、510において、計算された理解度スコアが所定の閾値スコアよりも大きいかどうかの判定が行われる。患者の理解度スコアが閾値を下回った場合に、動作は506に戻り、そこで理解度スコアが閾値を満たすか又は超えるまで、患者を再教育し、テストする。
510において、閾値スコアを満たすか又は超えると、動作は512に進み、そこで患者はフォローアップ受診訪問及び治療経路62に関する次のイベント/決定を思い出す。続いて、514において、患者は、次の段階64の治療を決定するために進み、動作が502に戻り、そこで共有される意思決定サポートシステム18を利用して、次の意思決定を行い、その出力が上述したようにサポートツール支援システム20によって受け取られる。
図6をここで参照すると、サポートツール支援システム20の動作の拡張された一実施形態の詳細なフローチャート600が示されている。方法は、602で開始し、そこで患者の健康ケア情報が受信される。次に、604において、患者は、種々の疾患治療オプションに関して教育される。606において、治療及び生活の質に関する患者の選好66が、上に詳述したように、調査される。次に、608において、適用可能な治療経路62が、患者の医療情報及び前述の調査の結果、すなわち患者の選好66に従って決定される。次に、610において、適用可能な治療経路62及び決定が、患者に提示される。
次に、612において、特定の治療決定の患者選択が、受信され、その選択は、決定を必要とする治療経路62及び治療の段階64の1つに対応する。例えば、図2に示されるように、乳癌についての様々な治療経路62を患者及び医師に提示することができ、治療経路62の1つは、患者特有の疾患プロファイル(図2に下線が引かれている)に従って選択される。この経路62を選択した後に、手術前の化学療法に関して共有される意思決定23を行わなければならない。612において、治療のこの段階64に関して共有される意思決定23が受け取られる。614において、この特定の共有される意思決定23に関して患者にアドバイスすることに関連する医師の理論的根拠70は、患者意思決定データ記憶装置60に記憶される。
616において、共有される意思決定23に関連する患者の選好66及び理論的根拠が、患者意思決定データ記憶装置60に記憶される。次に、患者は、手術前の化学療法に関して共有される意思決定23に従って治療され得る。次に、618において、患者意思決定データ記憶装置60内の患者情報が更新され、治療段階64の結果を反映する。次に、620において、動作は、治療経路62の次の段階64に進む。治療経路62の次の段階64は、将来の相当な時間に亘って生じ、すなわち、決定された経過に応じた術前化学療法は、数週間又は数ヶ月を要することがある。
次の段階64において決定、例えば一次治療(乳房切除術又は乳腺腫瘤摘出手術)のための共有される意思決定23を行う時期になった場合に、動作は、622に進む。622において、患者の選好66、患者の理論的根拠68、医師の理論的根拠70、及び患者の他の医療情報が、適切なデータ記憶装置26,32,38,60から読み出される。次に、624において、患者は、例えば図4の適切なグラフィカル・ユーザインターフェィスを介して以前の意思決定(手術前化学療法)、それらの過去の選好66、過去の理論的根拠68等について教育される。一実施形態によれば、624において患者を教育するために使用される教材は、その患者に特有なものとして、すなわち、疾患、過去の治療、潜在的な将来の治療法等に関する特定の情報としてカスタマイズされる。そのような実施形態では、教育するために患者に提示される情報は、患者の特定の健康情報、例えば体重、年齢、現在の処方箋の影響、及び様々な他の患者特有のデータ等に基づくことができる。このような学習体験の強化は、患者の治療に関する健康リテラシーレベル72を実質的に高め、改善することが理解されるだろう。626において、患者は、疾患及び/又は治療経路62に関連する医療のあらゆる新たな進展に関して教育される。医療データベース32又は34を利用して、前述した新しい進展を提供できることが理解されるだろう。次に、628において、患者は、患者に関連する現在のリテラシーレベル72を判定するように、自分の疾患、過去の選好66、過去の理論的根拠68、及び選択された治療経路62に関して、健康リテラシー決定システム54を介してテストされる。
次に、630において、スコア計算ユニット56によって患者の理解度スコアが計算され、患者の特定の疾患、利用可能な治療、それらの選好66、それらの理論的根拠68等の患者の現在の理解を推定する。632において、計算されたスコアが所定の閾値スコア74より大きいかどうかが判定される。632において、計算された理解度スコアが所定の閾値74を下回ると判定された場合に、動作は634に進み、そこで患者の選好66が変化したかどうかを判定するために患者の回答を分析する。患者の選好66が変化した場合に、636において、過去の選好と現在の選好との間の不一致について患者の医師に警告し、医師が患者と更なる相談を行うスケジュール調整をすることができる。選好66の変化は、医師に、過去の治療の副作用、精神的施設での患者のメンタル低下、生活様式の変化等も警告することもできる。検出された不一致の追加の原因は、患者の健康に悪影響を及ぼし得るので、医師は、即時の警報、所定の通信手段等を介して通知され得る。
636において医師に警告した後に、又は634において選好66の不一致が判定されなかったという決定に基づいて、638において、患者を教育するための教材が、テストの結果に応じて更新される。例えば、テスト中に患者の回答によって示された誤り、間違い、又は物忘れに特化するように、教材を更新することができる。一実施形態によれば、テスト中に特定された患者の健康リテラシー72が低い分野に関連する追加の情報を、患者に提示される教材に組み込むために、対応するデータベース26,32,38,60から検索され得る。その後、動作は624に戻り、そこで患者は、自分の特定の疾患、過去の選好66及び理論的根拠68、現在の医学的状態、治療の経路62等に関して(再)教育される。その後、図6を参照して上記で詳細に説明したように動作が進む。
632に戻って、患者の計算された理解度スコアが所定の閾値スコア74を満たすか又は超えることが判定されると、動作は640に進む。640において、次の段階64の治療(例えば、アジュバント(adjuvant)治療等)に関する患者の次のテストのタイミング及び質問が決定される。次に、642において、患者は、次の段階64の治療、すなわち一次治療の意思決定に進むのが許可される。644において、次の治療(アジュバント治療)に関するリマインダ76が患者に対して生成されると、図6に関する動作は、特定の治療決定、例えば乳腺腫瘤摘出手術又は乳房切除術の選択のために612に戻る。すなわち、治療経路62上で行うべき次のイベント又は決定に対応するリマインダが患者のために生成される。その後、選択された治療経路62全体について動作が続行される。図6に提供される例は単一の治療経路62に従うが、医学的必要性によって別の経路への変更が強制されることがあることが理解されるだろう。すなわち、癌が予想よりも侵襲的であり、癌が他の身体部分/身体組織等に拡がっている場合である。このような場合に、本明細書に提示されるシステム及び方法は、初めから終わりまで患者、患者の選好等を教育し、評価するために適合することができる。
本明細書に提示される特定の例示的な実施形態に関連して、特定の構造的及び/又は機能的特徴は、規定された要素及び/又は構成要素に組み込まれるものとして記載していることを理解されたい。これらの特徴は、同様に、他の要素及び/又は構成要素に組み込むことができ、適切な場合には同じ又は同様の利益が得られることが理解されるだろう。例示的な実施形態の異なる態様は、所望の用途に適した他の代替実施形態を実現するために適宜選択的に使用してもよく、それにより他の代替実施形態は、その内部に組み込まれた態様のそれぞれの利点を実現する。
また、本明細書に記載された特定の要素又は構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組合せにより適切に実装された機能を有することができることも理解されたい。さらに、一緒に組み込まれるように本明細書に記載される特定の要素は、適切な状況下で、独立した要素であるか、又は他の方法で分割してもよいことを理解されたい。同様に、1つの特定の要素によって実行されるように記載された複数の特定の機能は、個々の機能を実行するために独立して動作する複数の個別の要素によって実行してもよく、又は特定の個々の機能は、分割してもよく及び複数の別々の要素が協調して動作することにより実行してもよい。あるいはまた、互いに異なるものとして本明細書で説明及び/又は示したいくつかの要素又は構成要素は、必要に応じて、物理的又は機能的に組み合わせてもよい。
要するに、本明細書は、好適な実施形態を参照して説明している。明らかに、本明細書を読んで理解すると、修正及び変更が当業者に想起されるだろう。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内に入る限りにおいて、そのような修正及び変更の全てを含むと解釈されることが意図される。すなわち、上述した様々な特徴及び機能、及び他の特徴及び機能、又はそれらの代替物は、多くの他の異なるシステム又はアプリケーションに望ましく組み合わせることができ、また現在予期せぬ又は予想せぬ種々の代替、修正、変形、又は改良は、当業者であればその後行うことができ、それら代替等は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを同様に意図する。
以下の説明は、概して、臨床医及び患者の意思決定に関する。その意思決定は、患者中心の意思決定サポートツールを利用する際に臨床医及び患者を支援するためのシステム及び方法と共に特定の用途が見出され、特にその意思決定サポートツールを参照して説明する。しかしながら、その意思決定は、他の使用シナリオにおいても用途が見出されるものであり、必ずしも前述した用途に限定されるものではないことが理解されるだろう。
共有される意思決定は、特に、患者の選好(preference)が重要な影響因子である論争を引き起こし易い治療法について医学的決定を行うことに関して、患者と臨床医との間の対話の新たなトレンドである。患者の個人的な選好によってしばしば影響を受ける決定の例には、早期の前立腺癌及び乳癌に対する治療選択、癌予防決定及び癌スクリーニング決定、及び他の疾患及び損傷に対する外科治療対保存治療が挙げられる。例えば、特定の治療オプションが生活の質(quality of life)に不利な影響を及ぼす可能性があるが、生活の質への影響が最小限である他の選択肢よりも治癒率又は成功率が高い場合に、患者の選好の影響力がより増してくる。患者の選好は、治療の選択において大きな役割を果たす。
共有される意思決定は、診断及び治療についての代替オプションに関する状況に応じた情報を患者に提供することにより、患者が情報に基づいた医療ケア選択を行う能力を高める。意思決定プロセスのいくつかの実装形態では、共有される意思決定は、患者の意思決定サポートツール又は補助の助けを借りて行われる。これらのツール及び/又は補助によって、それぞれの疾患の状態を患者により良く理解させ、患者の相対的な健康教育を高め、及び客観的な方法で質の高い医療ケア関連情報にアクセスできるようにする。既存の患者の意思決定サポートツールは、信頼できる情報源から患者に教育情報を提供すること、患者自身の選好や価値を指定するように患者に尋ねること、得た情報を患者が臨床医と話し合って患者が理解し且つ同意する決定に到達することに注力している。
例えば、患者が特定のタイプの癌と診断された場合に、複数の専門医チームが一緒に集まり(sit together)その症例について議論し、どの治療オプションが利用可能であるかを決定する。その後直ぐに、臨床医が患者と一緒に集まり、その診断結果及び利用可能な治療オプションについて話し合う。次に、臨床医及び患者は、臨床ガイドラインに基づいて、推奨される治療及び患者の経路について一緒に決定する。しかしながら、この治療法及び経路の選択は、既知の医療行為に基づいた一般的なものであり、病理、症状及び他の一般的な臨床パラメータを超えた治療後の生活の質への様々な影響についての患者の選好等の個人情報を考慮していない。
さらに、患者がどの様なオプションが利用可能であり、特にそれらオプションの結果がどの様なことを意味するのかを患者が完全に理解していないことは周知の問題である。現在の意思決定補助(例えば、紙ベースの価値明確化フォーム、Webベースのツール等)は、(回復及び副作用を含む)健康の転帰及び副作用に対する患者の評価をある程度考慮しているが、それら現在の意思決定補助は、患者の生活様式レジーム(regime)を完全に考慮していない。さらに、これらのツールは、手動ベースのものであり、且つ他の情報源へのリンクが外れている(disentangled)。さらに、多くの共有される意思決定は、言葉による議論に基づいており、患者が全ての情報を完全に把握したり、又は完全に理解したりすることは困難である。
さらに、患者が転帰パラメータ(例えば、副作用、回復時間等)の個人的な選好に基づいて自分の治療及び臨床経路をさらに個人化することを可能にする対話形式の解決法は存在しておらず、患者は、変化する転帰パラメータに基づいて患者自身の経路の変化を視覚的に確認する必要がある。また、ユーザが治療経路を調整する(例えば、治療頻度を少なくする)こと、及び転帰パラメータに基づいてこれらの変化の影響を確認することを可能にする対話形式の解決法は存在していない。
さらに、患者及び臨床医は、しばしば、標準的な診断手順の一部として収集された情報に基づいて、困難な治療決定を行う状況に直面する。追加の又は新たな診断検査が利用可能になった場合に、患者及び/又は臨床医が目下の患者のために最適な治療計画を決定するのに役立つこの情報を既存の意思決定補助に統合することは困難である。
現在の共有される意思決定患者サポートツールは、患者の個々の健康リテラシー及び記憶に基づいてカスタマイズできない。一般に、患者は、自分の臨床医との共有される意思決定を行うミーティングを行う前に、既存のツールの意思決定サポート・コンテンツについて十分に権限を与えられていないか、又は退屈で飽き飽きしている。
さらに、患者にとって、以前の意思決定について自分自身の選好や理論的根拠(rationales)を思い出すことは困難である。すなわち、患者は、大概、特定の治療過程に同意する自分の理由付けを覚えていない。理論的根拠を思い出すことのこの困難性は、患者に限定されるものではなく、医師も、特定の治療に関して患者にアドバイスした際に、自分のアドバイスや論理を思い出せない可能性がある。
自分の理論的根拠及び選好を思い出せないことによって、医師及び患者は、長い決定期間(通常数年)での後の段階での共有される意思決定を行う際に「同じページ」に達するために追加的な努力及び相談時間が必要となる。これは、疾病管理の全期間を通じて全体的な最適な解決策を実現するためには、患者の選好及び疾患の理解が比較的一貫したままの状態で、以前の段階の決定及び後の段階の決定を計画する必要があるためである。
さらに、現在の共有される患者意思決定サポートツールは、定時の決定にのみに焦点を当てており、長期的な疾病管理全体に対する個人化された患者サポートを無視している。患者は、フォローアップ受診訪問を覚えておき、治療経路計画の全体を順守するのに苦労することが多い。フォローアップ受診訪問及び長期間に亘る治療計画への順守は、前立腺癌の積極的な監視等の保存的な疾病管理にとって特に重要であり、治療計画の変更に伴って複数回のフォローアップ受診訪問を必要とする。
特許文献1は、患者の健康記録、医療ケアガイドライン、及び/又は健康ケアシステムに関連するコンテキスト情報の統合的検討に基づいて、コンテキスト認知情報を患者に提供することにより、より良い患者中心のケアサービス提供を促進させる患者情報インターフェイスを開示する。患者の価値観の選好は、医療的な意思決定を行う際に考慮され且つ組み込まれる。
特許文献2は、特定の医療疾患及び病状に関して患者及び医師が一緒に意思決定を行うためのコンピュータ化された健康評価システムを開示する。患者の生活様式及び選好に関する患者データを、システム内に入力することができる。
特許文献3は、健康維持オプションを分析するとともに個人化された健康維持計画を実行する際に顧客を支援するシステムを開示する。このシステムは、進捗状況をフォローアップする際に顧客を支援し、且つリマインダ、励まし、サポート及び教育リソースを提示する。
国際公開第2013/184127号
米国特許出願公開第2002/0184050号明細書
米国特許出願公開第2011/0093295号明細書
以下に、上記で言及した問題及びその他を克服する、新規で改良された方法及びシステムを開示する。
一態様によれば、多段階式の共有される意思決定のためのシステムが、治療経路の第1段階に関する決定に関連する患者の選好及び患者の理論的根拠を記憶する患者意思決定データ記憶装置を含む。このシステムは、治療経路の次の段階に関する決定を行うために、記憶された患者の選好、患者の理論的根拠、及び治療経路に関して患者を教育するサポートツール支援システムをさらに含む。
別の態様によれば、多段階式の共有される意思決定のための方法が、治療経路の第1段階に対応する患者の選好及び理論的根拠の情報を受け取るステップと、受け取った患者の選好及び理論的根拠の情報を関連するデータベースに記憶するステップとを含む。この方法は、記憶された選好及び理論的根拠の情報に従って理解度スコアを計算するステップと、それに対応する共有される決定についての計算された理解度スコアに従って、治療経路の次の段階に進むステップと、をさらに含む。
この方法は、関連するデータベースから記憶された患者の選好及び理論的根拠の情報を読み出すステップと、読み出された患者の選好及び読み出された理論的根拠の情報、並びに新たな医療的発達、疾患、及び治療経路の少なくとも1つに従って、患者を教育するステップと、を含む。
患者の経路を個人化するためのシステムが、初期治療段階の前に、患者の医療記録に関する患者データを受け取り、患者の生活様式の価値及び選好を患者から受け取り、患者データ、並びに患者の生活様式の価値及び選好から患者の経路及び治療オプションを生成し、経路及び治療オプションの選択肢を評価及び比較するためのグラフィックツールを生成し、及び患者の生活様式の価値及び選好、並びに選択された経路及び治療オプションをメモリに記憶する、ようにプログラムされた1つ又は複数のプロセッサを含む。1つ又は複数のプロセッサは、初期治療段階の後に、第1段階の治療後に患者の病状を反映する患者の医療記録に関する患者データを受け取り、患者の生活様式の価値及び選好をメモリから読み出し、患者の生活様式の価値及び選好に対する調整を受け取り、患者データ、並びに患者の生活様式の価値及び選好から患者の経路及び治療オプションを再生成し、第1の治療段階の前に選択された経路及び治療オプションを、再生成された患者の経路及び治療オプションと評価及び比較するためのグラフィックツールを生成する、ようにさらにプログラムされる。
1つの利点は、疾病管理の全期間を通じて全体的な最適な解決策を実現することである。
別の利点は、治療経路の段階の間に患者の選好、並びに患者及び医師の理論的根拠に連続性が存することである。
別の利点は、疾患及び治療に関する患者の連続的で適応性のある教育が存することである。
別の利点は、治療期間に亘った多段階式の患者意思決定支援が存することである。
別の利点は、過去の治療決定に関する患者の混同を最小限に抑えることである。
別の利点は、意思決定の後悔を減らし、個々の健康リテラシーを改善し、医師の相談時間を短縮し、治療中の患者満足度を向上させることである。
以下の詳細な説明を読んで理解することにより、当業者には更なる利点が理解されるであろう。
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の配置において、並びに様々なステップ及びステップの配置において具体化することができる。図面は、単に好適な実施形態を例示するためのものに過ぎず、本発明を限定するものとして解釈すべきでない。
本願の一実施形態による情報技術(IT)インフラ基盤のブロック図である。
治療決定段階及び治療経路を含む乳癌治療の一連のケアを概略的に示す図である。
本願の一実施形態による患者の選好を確認するための調査質問の一例を示すインターフェイスの図である。
本願の一実施形態による、以前の段階決定の個人化された議論及び理論的根拠の例示的なインターフェイスの図である。
本願の一実施形態による多段階式の共有される意思決定についての1つの方法を示すフローチャートである。
本願の一実施形態による多段階式の共有される意思決定についての1つの方法を示すフローチャートである。
本願の一実施形態による多段階式の共有される意思決定についての1つの方法を示すフローチャートである。
本願は、共有される意思決定サポートシステムを介して患者が多段階式の共有される意思決定を行うのを支援するシステム及び方法を提示する。患者を支援するために、以前の意思決定を行った際の患者の選好及び理論的根拠が記録され、後の意思決定について患者の混同を最小限に抑えるとともにその後の意思決定を容易にし、疾病管理期間全体に亘って全体的な最適な解決策を実現する。本願は、さらに、患者自身の健康リテラシー及び記憶に従って個々の患者の学習経験をカスタマイズし、向上させる能力を提供し、患者が医師との共有される意思決定を行うミーティングの前に十分な権限を患者が有することを保証する。
一実施形態によれば、本願は、患者が以前の意思決定を行うために使用した情報の保持を介した多段階式の共有される意思決定を可能にするシステム及び方法を提示する。保持された情報は、次の段階の治療を決定する際に患者及び医師を支援するために再利用される。保持された情報から、共有される意思決定サポートツールは、特定の疾患又は利用可能な治療に関する患者の教育レベルを確認し、グラフィカル・ユーザインターフェイスを介して教育レベルを高めることができる。一実施形態によれば、前述した情報を保持することにより、その情報は、過去の治療に関する患者の混同(曖昧性)を最小化し、治療間の患者の一貫性を検証するために使用され得る。
図1を参照すると、特定の治療決定を行う際に患者にサポートを提供するように構成された共有される意思決定サポートシステム18と、患者情報の保持及び患者の教育を介してシステム18の利用を支援するように構成されたサポートツール支援システム20とを介して、保持されたユーザの選好及び理論的根拠を使用して多段階式の共有される意思決定を行うためのシステム10のブロック図が示されている。共有される意思決定サポートシステム18は、最良の個人化された医学的決定を見出すために、患者の視点からの診断及び治療の代替的な選択肢を定量的に評価及び比較する。一実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、患者の視点から様々な選択肢を評価して比較する際に、死亡率及び罹患率の確率等の予後及び臨床転帰をその患者にとって直接的に有意な値に変換するアルゴリズムを利用する。システム18の入力パラメータには、患者の個人医療記録、適切な母集団についての転帰及び予後に関する臨床的証拠、患者の価値及び選好66等が含まれる。システム18の出力は、特定の決定/推奨の際に患者の理論的根拠68及び医師の理論的根拠70と一緒の、代替的な選択肢及びシンプルで直接的な治療推奨の定量的評価及び比較であってもよい。患者18が要求する場合に、システム18は、従来の教材、大規模な患者コミュニティへの情報及びアクセス、最良である全ての代替オプションの確率、全ての推定値の信頼区間、及び計算に基づく証拠を含む追加的な出力を提供することができる。一実施形態によれば、システム18からの出力は、後述するように、患者のリテラシーレベル72に基づいてサポートツール支援システム20によって調整してもよい。
また、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が代替的な選択肢を同じ基準で比較するのを可能にし、生活様式レジーム及び選好、転帰パラメータ、患者の経路、質調整生存年(QALYs)、全体的な転帰又は特定の転帰パラメータの望ましい確率等を患者が調整するのを可能にする。システム18は、患者が興味を示す場合に、パラメータ及びモデルの情報源、及び計算の基礎となる数学式についての詳細も提供することができる。本願は、患者の選好66及び理論的根拠68並びに医師の理論的根拠70を記憶することにより、患者及び臨床医の共有される意思決定プロセスを単純化し、患者のストレスを軽減し、患者の意思決定の満足度を高め、意思決定の質及び連続性を保証及び改善し、臨床医の作業負荷を軽減し、患者に提供される教育の質及び効率を高め、臨床医の信頼を高め、及び全体的な医療費を削減する。
共有される意思決定サポートシステム18は、追加の又は新たな診断検査から導き出された潜在的な新しい情報が最適な治療計画を決定するのに役立つかどうかを定量化することもできる。プロバイダー特有の治療送達統計情報を組み込むことにより、意思決定サポートシステムは、特定のケア提供者を用いたこの患者に対する治療計画の成功率を見積もることができる。共有される意思決定サポートシステム18は、ケア提供者が結果を患者に示す前に信頼区間の制限を確立することも可能にする。別のオプションは、ケア提供者が、最適な治療オプションを決定するために使用される情報源を評価して、その情報源が現在の患者に対して関連性を有することを保証することである。
図1を参照すると、病院等の医療機関のITインフラ基盤10の実施形態を示すブロック図が示されている。ITインフラ基盤10は、通信ネットワーク8を介して相互接続された患者個人化システム12、患者情報システム14、1つ又は複数の医療情報システム16、共有される意思決定サポートシステム18、及びサポートツール支援システム20等を適切に含む。理解されるように、通信ネットワーク8は、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、ワイヤレスネットワーク、有線ネットワーク、セルラネットワーク、データバス等の1つ又は複数を含んでもよい。ITインフラ基盤10の構成要素は、中央位置又は複数の遠隔位置に配置することができることも理解されたい。
患者個人化システム12は、患者が、患者の視点からの、患者の診断及び治療に関する患者の価値、生活様式レジーム、及び選好66を入力することを可能にする。患者個人化システム12は、医療機関で治療を受けている患者に対する治療段階64及び経路62の代替的な選択肢の定量的な評価及び比較も受け取る。種々の治療経路62及び段階64は、以下に説明する乳癌のケア連続性において共有される意思決定23に関して図2に示されている。例えば、患者個人化システム12は、同じ基準での代替的な選択肢の比較を含む治療及び経路の選択肢の定量的な評価及び比較を表示し、患者が生活様式レジーム及び選好、転帰パラメータ、患者の経路、QALYs、全体的な転帰又は特定の転帰パラメータの望ましい確率等を調整することを可能にする。
患者個人化システム12は、選択肢の評価及び/又は比較を表示するためのCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等のディスプレイ22と、患者が患者の価値及び選好66を入力し、及び/又は評価及び/又は比較を変更するキーボード及びマウス等のユーザ入力装置24とを含む。患者個人化システム12は、さらに、特定の治療決定に関連して患者が述べた又は選択した理論的根拠68を受け取ることができる。述べられた又は選択された理論的根拠68は、患者自身の言葉で入力してもよく、患者に提示される利用可能な理論的根拠のセット等から選択してもよい。一実施形態では、患者の価値、選好66、及び理論的根拠68は、患者個人化データベース26に記憶される。別の実施形態では、特定の治療決定を行う際の患者の選好66及び理論的根拠68は、以下に詳細に説明する患者意思決定データ記憶装置60に記憶される。患者個人化システム12の例には、パーソナルコンピュータでアクセス及び/又は表示することができるソフトウェアアプリケーション、ウェブベースのアプリケーション、タブレット、モバイル装置、携帯電話等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
患者情報システム14は、医療機関によって治療を受けている患者に関する患者データを記憶する。患者データには、患者の医療記録や、体重、年齢、家族健康歴、併存疾患等の患者の人口統計情報が含まれる。患者データには、1つ又は複数のセンサから収集された生理学的データ、別の生理学的データ、実験室データ、1つ又は複数の撮像装置によって取得された画像データ、患者の管理データ、患者の医療記録等も含まれる。一実施形態では、患者データには、患者個人化データベース26に記憶された患者の価値、生活様式レジーム、及び選好66が含まれる。患者データには、医師の理論的根拠70、医師の治療ノート、コメント、リテラシースコア72等も含むことができる。患者データは、自動的に生成してもよく、手動で入力してもよく、又はそれらの組合せの結果であってもよい。患者データの一部又は全部が手動入力で行われる場合に、ユーザ入力装置28を使用することができる。一実施形態によれば、患者情報システム14は、患者データを手動で入力する及び/又は生成された患者データを表示するためのユーザインターフェイスをユーザに提供する表示装置30を含む。一実施形態では、患者データは、患者情報データベース32に記憶される。患者情報システムの例には、電子医療記録システム、部門システム等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
図1のインフラ基盤10は、治療を受けている患者に関連する集団から収集された医療データを記憶する医療情報システム16をさらに含む。例えば、医療情報システム16は、異なる集団の様々な臨床的問題に関する集団レベルの医療データを記憶する。医療データには、文献からの集団レベルの知識、過去に遡った遡及的研究、臨床試験、転帰及び予後に関する臨床的証拠等が含まれる。医療データには、さらに、疾患に関する現在の医療知識、治療経路、患者の知識レベルに関連するテスト情報、健康リテラシー情報、閾値スコア、リマインダ等を含むことができる。医療データは、自動的に、手動で、又はそれらの組合せで生成することができる。手動で入力される場合に、例えば、システム16は、ユーザ入力装置34を利用することができる。一実施形態によれば、医療情報システム16は、医療データを手動で入力する及び/又は生成された医療データを表示するためのユーザインターフェイスをユーザに提供する表示装置36を含む。一実施形態では、医療データは、医療データベース38に記憶される。別の実施形態では、患者データも、医療データベース38に記憶される。医療情報システムの例には、医学文献データベース、医療検査及び研究データベース、地域及び国内の医療システム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。後述するように、医療データの一部又は全部を患者意思決定データ記憶装置60に記憶してもよい。
一実施形態によれば、共有される意思決定サポートシステム18は、臨床サポートツール又は患者の意思決定支援を具体化する臨床モデル及びアルゴリズムを記憶する。臨床モデル及びアルゴリズムは、典型的には、治療を受けている患者の患者データ及び臨床的問題の関数として、1つ又は複数の診断及び/又は治療オプションを含む。臨床モデル及びアルゴリズムは、患者の状態及び患者データに基づいて、様々な診断及び/又は治療オプションに関する推奨事項をさらに含むことができる。具体的には、臨床モデル及び/又はガイドラインは、利用可能な最良の証拠に基づいて、すなわち科学的方法及び研究(例えば、無作為に抽出された臨床検査)によって得られた臨床的証拠に基づいて、特定の疾患又は状態に合わせて患者の診断及び/又は治療オプションを決定する。患者データを受け取った後に、共有される意思決定サポートシステム18は、治療を受けている患者の臨床的問題に関連する臨床モデル及びアルゴリズムを適用する。次に、共有される意思決定サポートシステム18は、患者データに基づいて利用可能な診断及び/又は治療オプションを提供する。より多くの患者データが利用可能になると、共有される意思決定サポートシステム18は、患者に利用可能な診断及び/又は治療オプションを更新することも企図される。具体的には、共有される意思決定サポートシステム18は、患者データ、医療データ、臨床モデル及びアルゴリズム等を取得し、医療機関で治療を受けている患者(例えば、図2)に治療及び経路の代替的な選択肢の定量的な評価及び比較を提供する。例えば、共有される意思決定サポートシステム18は、患者情報システム14からの患者の医療記録、医療情報システム16からの適切な母集団についての転帰及び予後に関する臨床的証拠、臨床モデル及びアルゴリズム、患者が入力した患者の価値、生活様式レジーム、及び選好を取得し、治療及び経路の選択肢の定量的な評価及び比較を表示する。共有される意思決定サポートシステム18は、臨床モデル及びアルゴリズムを表示するためのCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等のディスプレイ40と、臨床医が臨床モデル及びアルゴリズムを入力及び/又は修正するためのキーボード及びマウス等のユーザ入力装置42とを含む。
図1に示されるインフラ基盤10は、対応する治療経路62の各段階を通じて、共有される意思決定サポートシステム18を利用する際に患者を支援するサポートツール支援システム20をさらに含む。一実施形態によれば、サポートツール支援システム20は、共有される意思決定サポートシステム18から、患者の特定の治療経路62に関連する治療決定の初期選択に対応する出力を受け取る。サポートツール支援システム20は、患者に関する情報を記憶する患者意思決定データ記憶装置60と通信する。この患者情報は、医療データベース32、個人化データベース26、及び医療機器データベース38に記憶される情報に加えて、特に患者に関する情報である。図1に示されるように、患者意思決定データ記憶装置は、例えば、治療経路62、完了した又は残存する治療段階(複数可)64、患者の選好66、過去の治療決定に関する患者の理論的根拠68、医師の理論的根拠70、患者のリテラシーレベル72、次の段階への意思決定の関与に関するスコア閾値74、及び患者の治療に関して患者又は医師のために生成されたリマインダ76を含む。
患者の選好66は、共有される意思決定サポートシステム18に対して上述したように確認することができる。患者の理論的根拠68は、特定の治療の患者の選択に応答して自動的に生成され、患者によって個人化システム12を介して入力され、又はそれらの組合せが行われる。患者の理論的根拠68は、選択された治療経路62に沿った次の段階64の治療に関する決定を行う際に患者を支援するサポートツール支援システム20によって利用することができることを理解されたい。例えば、患者は、次のイベントに関する以前の治療決定に基づいて、そのようなイベントへの関与を可能にするより侵襲性の低い処置を選択する。実質的に侵襲的な処置を次に決定しなければならないときに、この情報を有することは、患者が、この次の処置がなぜ非常にドラスティック(drastic)となるのかを理解するのを助けることができる。さらに、患者は、次の段階64の治療を決定するのを補助するために自分の理論的根拠を思い出すことができる。患者のリテラシーレベル72は、患者の特定の疾患、治療経路62、医学的進歩、治療段階64等に関する患者の情報量及び理解量に対応する。サポートツール支援システム20は、健康リテラシー決定システム54によって患者リテラシー72のこの決定を容易にするように構成することができる。
健康リテラシー決定システム54は、治療を受けている疾患の詳細、治療に関する現在の状態、選択された治療経路62の様々な段階64等に関して患者を教育するように構成することができる。患者の健康リテラシー72は、特定の疾患及び治療経路64に従って生成された質問を用いて決定することができる。一実施形態によれば、健康リテラシー決定システム54は、対応するグラフィカル・ユーザインターフェイスを介して、患者の疾患のプロファイル並びに将来可能になる治療経路64及び決定に関する小テストを提示し、患者の理解度をテストし理解を確実にすることができる。前述したテストに含まれる質問は、患者が治療経路62の次の段階64への意思決定を行う際の関与に十分に準備が整ったことを保証するように、患者による以前の誤りを反映するように調整してもよい。
サポートツール支援システム20は、健康リテラシー決定システム54に応答して患者によって提出された回答を分析するように構成されたスコア計算ユニット56をさらに含むことができる。計算ユニット56によって生成されたスコアをスコア閾値74と比較して、サポートツール支援システム20が、患者が十分に教育され、次の段階64への治療に関する決定を行う準備が整っているかどうかを決定する際に支援する。スコア計算ユニット56は、患者に関連するスコアを決定する際に様々な入力を利用することができる。スコア計算ユニット56は、患者自身の疾患についての患者の個人的理解度、患者の選好66、及び以前の治療決定のための患者の理論的根拠68を推定するスコアを計算することができる。一実施形態によれば、このスコアは、患者が忘却曲線に従って忘れるにつれて、徐々に減少する。このスコアは、患者の以前のテスト履歴に基づいて更新されたベイズ的統計値(bayesian)であってもよく、すなわち、以前のテストで高得点を示した患者は、自分の疾患に特有の知識理解レベル又は健康リテラシー72を維持するために再度テストされる可能性が低い。例えば、スコア計算ユニット56は、次の段階64の治療に対する過去の治療決定について、患者の以前の選好66と理論的根拠68との間に不一致が生じる場合を検出し認識するように構成することができる。不一致が検出された場合に、医師は、患者が自分の疾患及び/又は治療に関して追加の相談及びアドバイスを必要とすることを通知され得る。
一実施形態では、サポートツール支援システム20は、患者の治療の段階64に関するリマインダ及び/又は通知を生成するように構成されたリマインダ生成ユニット58を含む。リマインダ生成ユニット58は、今後行う又は実行する必要のある意思決定又は治療に関する電子メールメッセージ、カレンダ通知、自動呼出し、又は他の適切な通知手段を、患者及び/又は医師に送信するように構成することができる。そのようなリマインダ76は、患者への生成時又は通信後に、患者意思決定データ記憶装置60に記憶してもよい。サポートツール支援システム20は、臨床モデル及びアルゴリズムを表示するためのCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等のディスプレイ50と、キーボード及びマウス等のユーザ入力装置52とを含み、このユーザ入力装置52によって、患者が、患者の選好66及び患者の理論的根拠68を入力及び/又は変更し、健康リテラシー決定システム54からのテスト質問に答え、共有される意思決定サポートシステム18と対話する。
ITインフラ基盤10の構成要素は、前述した機能を具現化するコンピュータ実行可能命令を実行するプロセッサ44を適切に含み、このコンピュータ実行可能命令は、プロセッサ44に関連するメモリ46に記憶される。前述した機能の少なくとも一部は、プロセッサを使用せずにハードウェア内に実装することができることを理解されたい。例えば、アナログ回路を使用してもよい。さらに、ITインフラ基盤10の構成要素は、プロセッサ44に通信ネットワーク20を介して通信するためのインターフェイスを提供する通信ユニット48を含む。さらに、ITインフラ基盤10の前述した構成要素について個別に記載されているが、これらの構成要素を組み合わせることができることを理解されたい。
上述したように、共有される意思決定サポートシステム18及びサポートツール支援システム20は、有効な患者データ、医療データ、臨床モデル及びアルゴリズムを利用する推奨される患者治療経路62又は治療オプション(複数可)、転帰パラメータ(例えば、副作用の重症度、治療の頻度、治療後の生存予測、治療後の合併症のリスク推定等)に関する患者の選好66、意思決定選択に関する患者の理論的根拠68、患者の生活様式レジーム(アジェンダ、習慣、食生活、運動、治療後の長期的な損傷及び障害のリスク推定等)を受け取る。こうして、共有される意思決定サポートシステム18及びサポートツール支援システム20は、転帰パラメータに関して患者が有する価値を利用するだけでなく、その価値を患者のニーズ及び状況に合わせてさらに個人化する。
一実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が、上述したような入力に基づいて生成された調整済みの患者の経路(複数可)又は治療オプション(複数可)を視覚化することを可能にするグラフィックツールを生成する。グラフィックツールは、回復期間、(例えば、身体的、精神的、感情的な)結果、治療の頻度及びレジーム、生活様式の主な変化、及び他の不利な影響(食生活、睡眠、疲労、性生活等)を含む、各(又は選択された)経路又は治療オプションの健康転帰に関して、個々の患者の経路及び視覚的なトレンドを視覚的に描写する。更なる実施形態では、患者は、他の転帰パラメータのトレンド及び患者の経路に関するその変化の影響を視覚化するために、上記パラメータのうちの任意の1つをグラフィック的に調整することによって、グラフィックツールを制御し且つさらに個別化することができる。あるいはまた、ユーザは、経路をグラフィック的に調整し、その変化の影響を全ての転帰パラメータのトレンドに関して確認することができる。
グラフィックツールは、医療データ並びに臨床モデル及びアルゴリズムからの利用可能な医学的証拠に基づいて全体的な転帰の確率も示す。一実施形態では、患者は、転帰の確率を調整し、全てのパラメータ及び患者の経路に関する変化の影響を確認することができる。全体的な転帰の確率に加えて、特定の転帰パラメータの(有効な証拠に基づく)他の確率、例えば身体的エネルギーが減少する特定のトレンドの可能性、回復の可能性、身体的痛みの可能性等を加えることができる。特定の患者の経路がどれ位の頻度で又は実際に実施されているかの追加情報も、示すことができ、その追加情報は、例えば最も頻繁に使用される経路を確認するために患者が調整することもできる。その特定の確率値に対して有効な証拠が利用可能でない場合に、システムは利用可能な最も近い証拠を自動的に検索し、その検索結果をユーザに示す。
別の実施形態では、グラフィックツールは、患者が、特定の患者の経路又は治療オプションの転帰パラメータ、すなわち癌の回復及び副作用を経時的に視覚的に調査することを可能にする。患者は、視覚的な患者の経路上の任意の特定の点をクリックするか、特定の視覚制御ツール(例えば、経時的な視覚スライダー)を調整して、例えば癌の大きさ/拡散を視覚的に確認することができ、毛髪の抜け量等の副作用を視覚的に確認することができる。さらに、その視覚化画像をそのような転帰の確率と結びつけることができ、それによって、ユーザは、確率値を調整し、変更された視覚化画像を確認することができる。
具体的には、一実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、死亡率及び様々な罹患率の確率等の予後及び臨床転帰を、患者の視点からの定量的な決定評価及び比較に変換する。評価は、有効な患者データ、医療データ、臨床モデル及びアルゴリズム、転帰パラメータに関する患者の選好、患者の生活様式レジーム等に依存する。別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が、同じ基準を使用して自分自身の選好に従った生存期間及び生活の質を組み合わせた代替的な意思決定選択肢を評価し比較することを可能にする。これにより、患者のための直接的で簡単な個人的且つ定量的な意思決定サポートツールが得られる。別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、パラメータの情報源に関する詳細、患者が興味を示す場合の計算方法、及び他の関連する教材も提供する。例えば、共有される意思決定サポートシステム18は、患者が直面する難しい質問に容易に回答するのを直接的に補助することができる、様々な代替的な選択肢及び意思決定支援のより定量的な評価及び比較を提供する。選択肢は、患者の視点からの生存期間と生活の質との両方、並びに信頼区間を考慮するQALYsの観点から評価される。
これを達成するために、共有される意思決定サポートシステム18は、患者データ、臨床モデル及びアルゴリズム、医療データ等を利用して、患者の現在の状態を考慮して最適な患者の経路及び/又は治療オプションを計算する。具体的には、臨床モデル及びアルゴリズムを患者に適用して、利用可能な患者の経路及び/又は処置を決定する。次に、患者の選好、生活様式レジーム、及び価値は、関連する集団の医療データに基づいて、各経路及び/又は治療オプションの生存期間及び生活の質のトレードオフを行う比較可能な測定値を計算するためのパラメータを推定する際に利用される。
個人の選好及び価値評価の重要な役割は、患者の選好を理解し、意思決定プロセスにおいてこれらの選好を最大限に活用することである。例えば、調査やアンケートは、完全な健康状態で生活する時間と様々な障害を伴って生活する時間とのトレードオフを行うことによって、選好を判断する。図3は、一実施形態による、患者の選好66を確認するために患者に提示された調査の例示的な説明図である。時間トレードオフの調査では、様々な損傷や障害について、個人化され且つ比較可能な基準、生活の質がもたらされる。さらに、時間の経過に伴う生活の質の積分値は、比較可能な測定値QALYをもたらし、このQALYは、患者及び医師が、患者自身の選好に応じて様々な選択肢を直接的に比較するのを可能にする。共有される意思決定サポートシステム18の上述した動作は、上述したサポートツール支援システム20によってさらに強化される。患者が、後続の段階64の治療中に共有される意思決定サポートシステム18と対話する際に、患者に、これら過去の決定を行う際に使用した、過去の意思決定、以前の選好66、及び理論的根拠68を思い出させる。
治療中又は治療後に、患者は、(例えば、アンケートに記入された)主観的データ又は患者が報告した転帰を入力することができ、臨床医は、疾患(例えば、腫瘍の縮小サイズ)に関する進行情報を入力することができ、治療の有効性がどれ位かを有効な証拠に基づいて予想される回復及び副作用と比較して、治療の有効性及び進行をさらに理解し、図式的に視覚化することもできる。これは、治療が開始されると、患者の経路の特定のポイントで行うことができる。例えば、治療の異なるポイント又はステージでの撮像結果又は患者データをシステムにアップロードして使用し、期待される転帰(医学的証拠の知識ベースに保存された画像又は写真)と比較を行い、治療効果又は進行スコアを生成する。患者が報告した転帰データを使用して、システムは、回復及び副作用の実際のトレンドと、有効な証拠に基づいて期待されるトレンドとの間の違いを視覚的に描くことができる。
全ての異なるオプションについて、共有される意思決定サポートシステム18は、臨床モデル及びアルゴリズム並びに医療データを利用した患者の疾患状態に基づいて、死亡確率及び罹患率等の臨床転帰も推定する。これを達成するために、共有される意思決定サポートシステム18は、患者の選好及び価値に従って異なる罹患率のQALY転帰を評価する。次に、患者の異なる意思決定選択肢のQALY転帰を評価する。これらのQALY結果は、定量的であり、比較可能であり、個人化され、及び患者に提示される。患者を圧倒する(overwhelming)のを避けるために、結果及び証拠は、異なるレベルで提供することができる。例えば、一実施形態では、最も直接的な結果(すなわち、様々な治療の期待されるQALY)が、患者が興味を示す場合に、利用可能な他の詳細と共に表示される。別の実施形態では、期待されるQALYs及び対応する信頼区間が、医療データ並びに臨床モデル及びアルゴリズムに従って患者の現在の状態を考慮して異なる代替動作の下で計算される。別の実施形態では、期待されるQALYsの信頼区間は、確率論的な感度分析による計算である。臨床研究の従来からの焦点であり且つ通常は異なる集団についての文献から見出すことができる死亡の確率とは異なり、損傷/障害の確率は、選択するそれぞれの特定の代替動作の合併症又は副作用の確率から計算される。死亡率及び罹患率のリスクは、臨床提供者からの長期的なデータセット内の患者を数えることによって、又は患者が属する集団の医学的文献に提供された値を直接的に使用することによって得ることができる。
別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、追加の診断検査及び/又はプロバイダー特有の治療送達統計情報を、個人化された患者の意思決定プロセスに提供する。意思決定サポートツールは、治療転帰に関して有効な証拠が生成された最も影響力のある独立したパラメータを反映する一連の標準的な診断検査(デジタル直腸検査(DRE)、グリソン(Gleason)スコア、前立腺特異抗原(PSA)である。患者の前提条件をさらに特定するために利用可能な「高度な」又は他の追加の診断検査を用いて、及び/又は文献からの一般的な転帰ではなく、プロバイダー特有の治療送達統計値を用いて、治療選択肢の間の区別が(例えば、転帰予測についてより狭い信頼区間の観点で)改善され、いくつか又は全ての選択肢を明確にランク付けするだろう。例えば、「高度な」診断検査は、Dx(m−p)MRI、画像統合、超音波エラストグラフィ、HistoScan、PCA3等を含むことができる。信頼区間が治療オプションの追加的に区別される検出力(power)を提供するのに十分狭い場合に、共有される意思決定サポートシステム18は、これらの更なる高度な検査が特定の患者に対して不要であることを患者に通知することができる。
更なる実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、ケア提供者が、治療オプションのランキングを変更し得る、患者についての情報を取り込む困難性を調整するために信頼区間の制限を調整するのを可能にする。例えば、患者が異なる腫瘍について以前に放射線療法を行っていた場合に、次に、モデルからのランク付けに拘わらず、放射線療法が、現在の患者のオプションから外されるだろう。共有される意思決定サポートシステム18は、ケア提供者が、患者のための最適な治療オプションを推定するために使用した基準の適合性を評価することも可能にする。例えば、患者が、ソースデータが収集された地理的領域とは著しく異なる特定の地理的領域に位置していた場合に、次に、そのデータに基づいて患者に治療オプションを推奨することは不適切になるだろう。
共有される意思決定サポートシステム18は、さらに、追加テストに関する情報を提供し、及び有効な証拠からのそのテストの正確性及び精度に関するデータに基づいて、転帰測定値の信頼区間を狭めるモデル化を行うことにより、そのような追加テストがどの様に意思決定をサポートし得るかを予測し、意思決定プロセスにおいてその予測検出力を実行可能なものにする。例えば、標準的な診断検査を超える診断検査Xを行うことによって新たな証拠が得られた場合に、治療Qが、治療R又はSよりも患者に対してより効果的であり、診断検査Xに進むことは価値があることになる。
別の実施形態では、共有される意思決定サポートシステム18は、文献からの一般的統計値の代わりにプロバイダー特有の治療送達統計値を利用して、治療オプションの信頼区間のオーバーラップを低減し、患者にプロバイダー特有の治療決定支援を提供する。これは、ケア提供者が、患者に関する無形又は難しい情報を取り込むために、信頼区間の制限を調整することを可能にする。ケア提供者は、現在の患者にとって最適な治療オプションを推定するモデルを開発するために使用したソースデータの有用性を評価する権限も有する。
このような機能を実現するために、医療情報システム16は、(潜在的には医療従事者による診断及び治療サービスの間に)健康アドバイスを提供する施設に関する情報、特定の健康上の選択肢を考慮した患者の疾患の経路の統計的又は最適化モデルの形態の適用可能な及び利用可能な証拠、及び、患者の選好、前提条件、及び所見に関するデータが提供された意思決定支援の計算アプリケーションが含まれる。医療情報システム16は、前述の統計的又は最適化モデルに含まれていない代替的な診断又は治療方法に関する有効な証拠をさらに記憶し、この追加された証拠により、共有される意思決定サポートシステム18は、それらの正確性及び精度に関して代替的な方法を以前説明した統計モデルで使用された方法と比較し、その計算結果をモデル内に通知する。
共有される意思決定サポートシステム18によって提供されるこの比較は、モデルには含まれていないが定量的に比較可能な特定の又は一部の「高度な」テストが、正確性、精度、予測値に関して標準的なテストと共に適用される場合に、転帰の潜在的に低減した変動を伴う推定が、統計的又は最適化モデルがそのモデルによって使用される「標準的な」テストに基づいて各治療選択肢について予測することを、推定する。この機能は、「追加のテストの特有の効果を評価する」ことを可能にするユーザインターフェイス要素によって、意思決定支援のユーザに利用可能にされ、ユーザは、テスト又はテストのセットを選択し、転帰の信頼区間予測がどの様に変化するかを確認する(信頼区間が狭くなった場合に、ユーザは、テストを適用したがる可能性があるが、そうでなければ、テストは不要である)。
追加の効果的な診断検査と同様に、プロバイダー特有の治療送達統計情報も、転帰推定の精度を向上させることができる。プロバイダー特有の統計値は、プロバイダーが関心のある手順等を定期的に実施する病院/医療機関又は保険業者から得ることができる。これらの統計値には、プロバイダーが一般的に扱う患者集団の疾患の重症度、特に患者の併存疾患による予防不可能な合併症の割合等が含まれる。例えば、一部のプロバイダーは、特定の併存疾患を有する患者を治療することに特化するので、患者がその併存疾患を有する場合に、そのプロバイダーにより治療を受けることは有益であり得る。
別の実施形態では、ユーザ(例えば、患者又は医療従事者)は、許容可能な信頼区間を指定するか、又は個々の治療選択肢の転帰について許容可能なレベルの「オーバーラップ」を設定し、共有される意思決定サポートシステム18は、追加のどのテストがその信頼区間を許容するかを選択する。基本的には、これは上記のアプローチの逆であり、「高度な診断検査Aを行う場合に、Jが転帰であり、信頼区間をY%だけ狭める」代わりに、ユーザは、「オーバーラップを減らしたい、どの様な高度な診断検査を行う必要があるか?」、又は「私が生きたいと望む信頼区間の最大範囲は、+/−X%であるが、どの様なオプションを検討する必要があるか?」、又は「許容可能な最大オーバーラップはZ%であるが、これに最も近づくように達成するためには、どの様な追加の診断検査を行うべきか?」と設定することができる。これは、いくつかの新しい高度な診断検査が存在していると仮定している。推奨される治療オプションの推定値のオーバーラップを排除することは、達成するのが困難又は不可能な場合があり得るが、オーバーラップを減らすことは満足できる代替選択肢である。共有される意思決定サポートシステム18からの応答は、追加のテストが推奨される治療オプションの推定値のオーバーラップを減らすことができないということになり得、これがシステムからの有効な応答となり得る。
さらに別の実施形態では、高度な診断検査毎の追加コスト等の他の要因も考慮に入れることができる。別の実施形態では、ケア提供者は、患者に関する意思決定補助情報を患者と共有する前に、患者にとって許容可能な信頼区間を調整して、患者に関する無形の又は困難な個人情報を取り込むのを考慮する。別の実施形態では、ケア提供者は、最も正確で関連性の高い情報のみが使用されることを保証するために、現在の患者に対する最適な治療オプションをランク付けする、モデルで使用されるソースデータの関連性を評価することができる。
サポートツール支援システム20は、共有される意思決定サポートシステム18と対話しながら、患者に補足的なグラフィカル・ユーザインターフェイスを提供する。図4は、患者の以前行われた意思決定、例えばそのような以前の意思決定を行う際に利用した選好66及び理論的根拠68を示す。次に、サポートツール支援システム20は、(図3に示すような)調査を実施する際に共有される意思決定サポートシステム18と協働して、患者の現在の選好66、患者の現在の健康リテラシー等を確認することができる。この追加情報が収集されると、サポートツール支援システム20は、スコア計算ユニット56を介して、患者自身の疾患、治療、選好66及び理論的根拠68、及び以前の意思決定について患者の理解度を推定する理解度スコアを計算する。次に、このスコアは、患者が次の決定段階64の治療に関与する準備が整っているかどうかを示す閾値スコアと比較される。患者のスコアがこの閾値を超えた場合に、患者及び医師は、(上述したような)共有される意思決定サポートシステムを利用して、治療経路62の次の段階64の次の動作の経過(例えば、乳腺腫瘤摘出手術又は乳房切除術)を決定することができる。患者のスコアがこの閾値を下回った場合に、患者は、患者の理解をさらに高めるために追加の教材及びテストの提示を受けることができ、医師は、更なる相談が必要であるとの通知を受けることができる。図1では、インフラ基盤10の別個の構成要素として示されているが、共有される意思決定サポートシステム18及びサポートツール支援システム20は、本明細書に記載の機能を実行するように構成された単一の装置に組み合わせてもよい。
本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピュータ装置のプロセッサによって実行可能な命令を記憶することができる任意の有形記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体と呼んでもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、有形のコンピュータ可読媒体と呼んでもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ装置のプロセッサによってアクセス可能なデータを記憶することもできる。コンピュータ可読記憶媒体の例には、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体状態ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、及びプロセッサのレジスタファイルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。光ディスクの例には、CD−ROM、CD−RW、CD−R、DVD−ROM、DVD−RW、又はDVD−Rディスク等のコンパクトディスク(CD)及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータ装置によりアクセスすることができる様々なタイプの記録媒体も指す。例えば、データは、モデム、インターネット、又はローカルエリアネットワークを介して読み出すことができる。コンピュータ可読記憶媒体への言及は、おそらく複数のコンピュータ可読記憶媒体であると解釈すべきである。1つ又は複数のプログラムの様々な実行可能なコンポーネントを異なる位置に記憶することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、同じコンピュータシステム内の複数のコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、複数のコンピュータシステム又はコンピュータ装置の間で分散されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセスできるメモリである。コンピュータメモリの例には、RAMメモリ、レジスタ、及びレジスタファイルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「コンピュータメモリ」又は「メモリ」への言及は、おそらく複数の記憶装置であると解釈すべきである。メモリは、例えば、同じコンピュータシステム内の複数のメモリであってもよい。メモリは、複数のコンピュータシステム又はコンピュータ装置の間で分散された複数のメモリであってもよい。
「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。コンピュータ記憶装置の例には、ハードディスクドライブ、USBサムドライブ、フロッピー(登録商標)ドライブ、スマートカード、DVD、CD−ROM、及び固体状態ハードドライブが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、コンピュータ記憶装置は、コンピュータメモリであってもよく、その逆であってもよい。「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」への言及は、おそらく複数の記憶装置であると解釈すべきである。記憶装置は、例えば、同じコンピュータシステム又はコンピュータ装置内の複数の記憶装置であってもよい。記憶装置は、複数のコンピュータシステム又はコンピュータ装置の間で分散された複数の記憶装置であってもよい。
本明細書で使用される「プロセッサ」は、プログラム又は機械実行可能命令を実行することができる電子部品を包含する。「プロセッサ」を含むコンピュータ装置への言及は、複数のプロセッサ又はプロセッサコアを含む可能性があると解釈すべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサは、単一のコンピュータシステム内の又は複数のコンピュータシステムの間で分散したプロセッサの集合を指してもよい。コンピュータ装置という用語は、それぞれが1つ又は複数のプロセッサを含むコンピュータ装置の集合又はネットワークを指す可能性があると解釈すべきである。多くのプログラムは、同じコンピュータ装置内にあっても、又は複数のコンピュータ装置に分散してもよい複数のプロセッサによって実行される命令を有する。
本明細書で使用される「ユーザインターフェイス」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムと対話することを可能にするインターフェイスである。「ユーザインターフェイス」は、「ヒューマンインターフェイス装置」と呼んでもよい。ユーザインターフェイスは、オペレータに情報又はデータを提供し、及び/又はオペレータから情報又はデータを受信することができる。ユーザインターフェイスは、オペレータからの入力をコンピュータが受信することを可能にし、コンピュータからの出力をユーザに提供することができる。換言すれば、ユーザインターフェイスは、オペレータがコンピュータを制御又は操作することを可能にし、インターフェイスは、コンピュータがオペレータの制御又は操作の結果を示すことを可能にすることができる。ディスプレイ又はグラフィカル・ユーザインターフェイス上のデータ又は情報の表示は、オペレータに情報を提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ペダル、有線グローブ、ダンスパッド、リモコン、加速度計によるデータの受信は、全て、オペレータからの情報又はデータの受信を可能にするユーザインターフェイス・コンポーネントの一例である。
本明細書で使用する「ハードウェアインターフェイス」は、コンピュータシステムのプロセッサが、外部のコンピュータ装置及び/又は機器と対話し及び/又は制御することを可能にするインターフェイスを含む。ハードウェアインターフェイスは、プロセッサが制御信号又は命令を外部コンピュータ装置及び/又は機器に送信することを可能にすることができる。ハードウェアインターフェイスは、プロセッサが外部のコンピュータ装置及び/又は機器とデータを交換することも可能にすることができる。ハードウェアインターフェイスの例としては、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS−232ポート、IEEE−488ポート、Bluetooth(登録商標)接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、電圧制御インターフェイス、MIDIインターフェイス、アナログ入力インターフェイス、デジタル入力インターフェイス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイ装置」は、画像又はデータを表示するように適合された出力装置又はユーザインターフェイスを包含する。ディスプレイは、視覚的、音声的、触覚的なデータを出力することができる。ディスプレイの例には、コンピュータモニタ、テレビ画面、タッチスクリーン、触覚的電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄積管(storage tube)、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクターディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ)、プロジェクタ、ヘッドマウント式ディスプレイが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
データベース26,32,38,60等の本明細書に記載される各データベースは、コンピュータ・データベースを適切に含み、このコンピュータ・データベースは、単一のコンピュータによって、複数のコンピュータに亘って分散されることにより具体化される。さらに、各データベースは、リコール(recall)を容易にする構造化された方法でデータを適切に記憶し、且つそのようなデータへのアクセスを容易にする。さらに、本明細書で使用されるように、メモリは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体;磁気ディスク又は他の磁気記憶媒体;光ディスク又は他の光記憶媒体;ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、他の電子メモリデバイス、或いはチップ又は動作可能に相互接続されたチップの又はセット;記憶した命令をインターネット又はローカルエリアネットワークを介して読み出すインターネットサーバ等の1つ又は複数を含む。さらに、本明細書で使用されるように、コントローラは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィック処理ユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の1つ又は複数を含む。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、無線ネットワーク、有線ネットワーク、セルラネットワーク、USB及びI2C等のデータバス等の1つ又は複数を含む。ユーザ入力装置は、マウス、キーボード、タッチスクリーンディスプレイ、1つ又は複数のボタン、1つ又は複数のスイッチ、1つ又は複数のトグル等の1つ又は複数を含む。ディスプレイは、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、投影ディスプレイ、タッチスクリーンディスプレイ等の1つ又は複数を含む。
図5は、患者が治療に関するその後の意思決定を行う際に患者を補助するための例示的な方法の簡略化したフローチャート500を示す。502において、共有される意思決定サポートシステム18からの出力が、サポートツール支援システム20によって特定の治療決定のために受信される。次に、504において、サポートツール支援システム20は、治療決定に関連する患者の選好66及び患者の理論的根拠68を記憶する。506において、患者は、以前の決定についての自分の疾患、治療の経路64、患者の選好66、及び患者の理論的根拠68に関して、サポートツール支援システム20によって教育され、テストされる。
次に、508において、サポートツール支援システム20は、患者の理解度スコアを計算し、このスコアを使用して次のテストのタイミング及び質問を決定する。上述したように、患者に提示される質問は、間違った回答、不一致等に従って調整してもよい。サポートツール支援システム20は、計算された理解度スコアに基づいて、患者のリテラシー72についてより頻繁な又はより少ない頻度のテストが必要とされ得ることを決定することができることが理解されるであろう。次に、510において、計算された理解度スコアが所定の閾値スコアよりも大きいかどうかの判定が行われる。患者の理解度スコアが閾値を下回った場合に、動作は506に戻り、そこで理解度スコアが閾値を満たすか又は超えるまで、患者を再教育し、テストする。
510において、閾値スコアを満たすか又は超えると、動作は512に進み、そこで患者はフォローアップ受診訪問及び治療経路62に関する次のイベント/決定を思い出す。続いて、514において、患者は、次の段階64の治療を決定するために進み、動作が502に戻り、そこで共有される意思決定サポートシステム18を利用して、次の意思決定を行い、その出力が上述したようにサポートツール支援システム20によって受け取られる。
図6をここで参照すると、サポートツール支援システム20の動作の拡張された一実施形態の詳細なフローチャート600が示されている。方法は、602で開始し、そこで患者の健康ケア情報が受信される。次に、604において、患者は、種々の疾患治療オプションに関して教育される。606において、治療及び生活の質に関する患者の選好66が、上に詳述したように、調査される。次に、608において、適用可能な治療経路62が、患者の医療情報及び前述の調査の結果、すなわち患者の選好66に従って決定される。次に、610において、適用可能な治療経路62及び決定が、患者に提示される。
次に、612において、特定の治療決定の患者選択が、受信され、その選択は、決定を必要とする治療経路62及び治療の段階64の1つに対応する。例えば、図2に示されるように、乳癌についての様々な治療経路62を患者及び医師に提示することができ、治療経路62の1つは、患者特有の疾患プロファイル(図2に下線が引かれている)に従って選択される。この経路62を選択した後に、手術前の化学療法に関して共有される意思決定23を行わなければならない。612において、治療のこの段階64に関して共有される意思決定23が受け取られる。614において、この特定の共有される意思決定23に関して患者にアドバイスすることに関連する医師の理論的根拠70は、患者意思決定データ記憶装置60に記憶される。
616において、共有される意思決定23に関連する患者の選好66及び理論的根拠が、患者意思決定データ記憶装置60に記憶される。次に、患者は、手術前の化学療法に関して共有される意思決定23に従って治療され得る。次に、618において、患者意思決定データ記憶装置60内の患者情報が更新され、治療段階64の結果を反映する。次に、620において、動作は、治療経路62の次の段階64に進む。治療経路62の次の段階64は、将来の相当な時間に亘って生じ、すなわち、決定された経過に応じた術前化学療法は、数週間又は数ヶ月を要することがある。
次の段階64において決定、例えば一次治療(乳房切除術又は乳腺腫瘤摘出手術)のための共有される意思決定23を行う時期になった場合に、動作は、622に進む。622において、患者の選好66、患者の理論的根拠68、医師の理論的根拠70、及び患者の他の医療情報が、適切なデータ記憶装置26,32,38,60から読み出される。次に、624において、患者は、例えば図4の適切なグラフィカル・ユーザインターフェィスを介して以前の意思決定(手術前化学療法)、それらの過去の選好66、過去の理論的根拠68等について教育される。一実施形態によれば、624において患者を教育するために使用される教材は、その患者に特有なものとして、すなわち、疾患、過去の治療、潜在的な将来の治療法等に関する特定の情報としてカスタマイズされる。そのような実施形態では、教育するために患者に提示される情報は、患者の特定の健康情報、例えば体重、年齢、現在の処方箋の影響、及び様々な他の患者特有のデータ等に基づくことができる。このような学習体験の強化は、患者の治療に関する健康リテラシーレベル72を実質的に高め、改善することが理解されるだろう。626において、患者は、疾患及び/又は治療経路62に関連する医療のあらゆる新たな進展に関して教育される。医療データベース32又は34を利用して、前述した新しい進展を提供できることが理解されるだろう。次に、628において、患者は、患者に関連する現在のリテラシーレベル72を判定するように、自分の疾患、過去の選好66、過去の理論的根拠68、及び選択された治療経路62に関して、健康リテラシー決定システム54を介してテストされる。
次に、630において、スコア計算ユニット56によって患者の理解度スコアが計算され、患者の特定の疾患、利用可能な治療、それらの選好66、それらの理論的根拠68等の患者の現在の理解を推定する。632において、計算されたスコアが所定の閾値スコア74より大きいかどうかが判定される。632において、計算された理解度スコアが所定の閾値74を下回ると判定された場合に、動作は634に進み、そこで患者の選好66が変化したかどうかを判定するために患者の回答を分析する。患者の選好66が変化した場合に、636において、過去の選好と現在の選好との間の不一致について患者の医師に警告し、医師が患者と更なる相談を行うスケジュール調整をすることができる。選好66の変化は、医師に、過去の治療の副作用、精神的施設での患者のメンタル低下、生活様式の変化等も警告することもできる。検出された不一致の追加の原因は、患者の健康に悪影響を及ぼし得るので、医師は、即時の警報、所定の通信手段等を介して通知され得る。
636において医師に警告した後に、又は634において選好66の不一致が判定されなかったという決定に基づいて、638において、患者を教育するための教材が、テストの結果に応じて更新される。例えば、テスト中に患者の回答によって示された誤り、間違い、又は物忘れに特化するように、教材を更新することができる。一実施形態によれば、テスト中に特定された患者の健康リテラシー72が低い分野に関連する追加の情報を、患者に提示される教材に組み込むために、対応するデータベース26,32,38,60から検索され得る。その後、動作は624に戻り、そこで患者は、自分の特定の疾患、過去の選好66及び理論的根拠68、現在の医学的状態、治療の経路62等に関して(再)教育される。その後、図6を参照して上記で詳細に説明したように動作が進む。
632に戻って、患者の計算された理解度スコアが所定の閾値スコア74を満たすか又は超えることが判定されると、動作は640に進む。640において、次の段階64の治療(例えば、アジュバント(adjuvant)治療等)に関する患者の次のテストのタイミング及び質問が決定される。次に、642において、患者は、次の段階64の治療、すなわち一次治療の意思決定に進むのが許可される。644において、次の治療(アジュバント治療)に関するリマインダ76が患者に対して生成されると、図6に関する動作は、特定の治療決定、例えば乳腺腫瘤摘出手術又は乳房切除術の選択のために612に戻る。すなわち、治療経路62上で行うべき次のイベント又は決定に対応するリマインダが患者のために生成される。その後、選択された治療経路62全体について動作が続行される。図6に提供される例は単一の治療経路62に従うが、医学的必要性によって別の経路への変更が強制されることがあることが理解されるだろう。すなわち、癌が予想よりも侵襲的であり、癌が他の身体部分/身体組織等に拡がっている場合である。このような場合に、本明細書に提示されるシステム及び方法は、初めから終わりまで患者、患者の選好等を教育し、評価するために適合することができる。
本明細書に提示される特定の例示的な実施形態に関連して、特定の構造的及び/又は機能的特徴は、規定された要素及び/又は構成要素に組み込まれるものとして記載していることを理解されたい。これらの特徴は、同様に、他の要素及び/又は構成要素に組み込むことができ、適切な場合には同じ又は同様の利益が得られることが理解されるだろう。例示的な実施形態の異なる態様は、所望の用途に適した他の代替実施形態を実現するために適宜選択的に使用してもよく、それにより他の代替実施形態は、その内部に組み込まれた態様のそれぞれの利点を実現する。
また、本明細書に記載された特定の要素又は構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組合せにより適切に実装された機能を有することができることも理解されたい。さらに、一緒に組み込まれるように本明細書に記載される特定の要素は、適切な状況下で、独立した要素であるか、又は他の方法で分割してもよいことを理解されたい。同様に、1つの特定の要素によって実行されるように記載された複数の特定の機能は、個々の機能を実行するために独立して動作する複数の個別の要素によって実行してもよく、又は特定の個々の機能は、分割してもよく及び複数の別々の要素が協調して動作することにより実行してもよい。あるいはまた、互いに異なるものとして本明細書で説明及び/又は示したいくつかの要素又は構成要素は、必要に応じて、物理的又は機能的に組み合わせてもよい。
要するに、本明細書は、好適な実施形態を参照して説明している。明らかに、本明細書を読んで理解すると、修正及び変更が当業者に想起されるだろう。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内に入る限りにおいて、そのような修正及び変更の全てを含むと解釈されることが意図される。すなわち、上述した様々な特徴及び機能、及び他の特徴及び機能、又はそれらの代替物は、多くの他の異なるシステム又はアプリケーションに望ましく組み合わせることができ、また現在予期せぬ又は予想せぬ種々の代替、修正、変形、又は改良は、当業者であればその後行うことができ、それら代替等は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを同様に意図する。