図1は、位相コントラストイメージング機能、特に、差動位相コントラストイメージング(DPCI)を有するイメージングシステムIMの基本的コンポーネントを示す。X線放射波XBを発生させるX線源XRがある。X線放射波XBは、検査領域を通過した後、検出器Dの検出器画素pxによって検出可能である。位相コントラストイメージング機能は、干渉計を、X線源XRと放射線感応検出器Dとの間に配置することによって達成される。
干渉計(1つの非限定的な実施形態では、ロー・タルボ(Lau-Talbot)式干渉計である)は、2つ以上、好適には、3つの格子G0、G1及びG2を含む。X線源側における第1の減衰格子G0は、X線源XRにおいて放出されたX線放射波面の空間コヒーレンスに整合し、また、当該空間コヒーレンスをもたらす周期p0を有する。
吸収格子G1(周期p1を有する)は、X線源から距離Dに置かれ、更に下流に、周期p2を有する干渉パターンをもたらす。当該干渉パターンは、検出器Dによって検出される。次に、(イメージングされる)サンプルが、X線源と検出器との間の検査領域内に導入されると、干渉パターンの位相がシフトされる。(例えばF M Epple他による「Unwrapping differential X-ray phase contrast images through phase estimation from multiple energy data」、OPTICS EXPRESS、2013年12月2日、第21巻、第24号といったように他の場所でも報告されているように)この干渉パターンシフトΔφは、サンプルを通る各経路に沿って蓄積された屈折による位相シフトΦΔの勾配に比例する(したがって、DCPIの名前がある)。つまり、干渉の位相変化を測定する場合、これは、サンプルにおける屈折によってもたらされた位相シフトのシフト(又は勾配)を抽出することを可能にする。
残念ながら、干渉パターンの位相シフトは、通常、直接空間分解されるには、小さすぎる。ほとんどのX線検出器の分解能は、これを可能にしない。したがって、この干渉パターン位相シフトを「サンプリング」するために、干渉パターンと同じ周期p2を有する第2の減衰格子G2が、格子G1から距離lに置かれる。干渉パターン位相シフト(したがって、サンプルによってもたらされる位相勾配のシフト)の実際の抽出は、すべて本明細書において考案される様々な実施形態にしたがって、幾つかの異なる方法で達成される。
一般に、差動位相抽出には、検出器Dと格子の少なくとも1つとの相対運動が必要である。これは、一実施形態では、アクチュエータを使用して、例えばアナライザ格子G2を、様々な個別の格子位置に亘って横方向に(即ち、格子に平行なx方向に沿って)移動し、各格子位置において、各画素pxにおける強度を測定することによって達成される。各画素における強度は、正弦状に振動することが分かる。つまり、各画素は、アナライザ格子G2の動作中に、(対応する画素における)様々な強度を時系列的に、時間の関数(又は、より好適には、様々な格子位置の関数)として記録する。このアプローチ(「位相ステッピング」)は、F.Pfeiffer他によって、「Phase retrieval and differential phase-contrast imaging with low-brilliance X-ray sources」、Nature Phys.Lett.2、258−261(2006)に説明されている。
例えば29104頁に、Eppleによる上記参考文献における式(1a)、(1b)に説明されるように、各画素pxにおいて振動する強度信号は、サンプルによってもたらされる吸収と、サンプルによってもたらされるデコヒーレンス(「小角散乱」とも知られる)と共に、干渉パターンの所望の位相シフトを「エンコード」する。この意味で、差動位相コントラストイメージングは、当該技術が、差動位相コントラストを生じさせるだけでなく、(従来、放射線写真術において測定される)吸収信号と、X線によって経験される散乱(「小角散乱」とも呼ばれる)の度合いに関するデコヒーレンス信号である第3の量とを生じさせるため、適切な呼称ではない。つまり、画素信号は、3つの異なる画像信号チャネルを提供する。各チャネルは、3つの物理的影響、即ち、i)吸収、ii)デコヒーレンス及びiii)屈折の個別の1つの物理的影響用のチャネルである。つまり、サンプルの存在は、入射X線波面に3部からなる外乱を導入し、差動位相コントラストイメージングは、これらの外乱のそれぞれを、3つの量、即ち、パラメータA(吸収)、V(デコヒーレンス)、Δφ(〜ΦΔ)(位相シフト)によって捕捉することを可能にする。当該3つの量は、1画素pxあたりの検出器信号を、特にA/D変換回路を含むデータ収集回路(図示せず)によって、数値形式になるように処理することによって得られる。数値は、フーリエアナライザFAによって、又は、曲線当てはめ演算によって処理され、1画素あたりのパラメータA、V、Δφが得られる。これらの(イメージング)パラメータの集合は、処理ユニットPRによって処理可能である。例えばパラメータの幾つか又は全部が、色又はグレー値パレットにマッピングされ、それぞれ、吸収画像、デコヒーレンス画像(「暗視野画像」)又は位相コントラスト画像として、スクリーンMT上で見るためにレンダリングされる。3つの物理的影響(吸収、デコヒーレンス及び差動位相コントラスト)のそれぞれの外乱の度合い又は量は、モジュールFAによって行われるフーリエ解析又は他の曲線当てはめ演算から取り出し可能である3つの対応する量によって測定される。
前に短く述べたように、干渉パターンのサンプリングは、必ずしも、格子G1、G2を互いに対して移動することによって達成されるわけではない。別の実施形態において、例えばマンモグラフィイメージングシステムでは、2つの格子G1、G2は、検出器の上に(順に重ねて)堅く取り付けられる。この場合、検出器が、2つの格子と共に、サンプルを渡って走査動作で横方向に動かされ、(上記した位相ステッピングの代わりに)この動きを使用して、3つのイメージング量/パラメータA、V、Δφが得られる。
上記差動位相コントラストイメージングシステムIMは、一実施形態では、(上記されたように)スロット又はスリットデザインのマンモグラフィシステムであっても、CTイメージングシステムであっても、回転式Cアームラジオグラフィシステムであってもよい。
差動位相コントラストイメージングが正しく機能するためには、上記(タルボット)距離D、lが、正確に観察されなければならない。これらの距離は、例えばE Roessl他によって、「Clinical boundary conditions for grating-based differential phase-contrast mammography」、Philosophical Transactions of The Royal Society(A)Mathematical, Physical and Engineering Sciences、2014年3月6日、第372巻、第2010号に説明されるように、計算可能である。更に、上記信号処理は、関与するハードウェア、特に格子及び検出器のハードウェアの完全なアライメント及び完全な製造を想定している。しかし、実際の現実として、測定精度、したがって、上記信号処理及び関与する計算の精度を損ねる不正確さが必ずある。例えば画素が損傷していたり、しかるべき態様で反応していなかったりする。又は、格子が少し歪んでいたり、傾斜していたりする。使用される特定のイメージングシステムによって程度が異なるこれらの不完全さに対処するために、較正処置が必要である。この較正処置のために、本明細書では、特別にデザインされた較正ファントム体PBが提案される。ファントム体PBは、検査領域内に入れられ、乳房若しくは他の解剖学的部位、又は、イメージングすることを望む物体であれば何でもよい実際の関心物体であるかのように、イメージングされる。
以下に更に詳細に説明されるファントム体PBは、上記物理的影響i)〜iii)に関して、既知の画素位置において既知の度合いの外乱をもたらすようにデザインされる。各外乱の度合いが分かっているので、フーリエアナライザFAにおける反応が理論的に予測される。しかし、一般に、ハードウェアの不完全さによって、この期待理論値からの偏差がある。この偏差は、実際に測定された検出器信号から計算されたイメージング量と、理論的に予測されるイメージング量との比として表される。この比は、1画素あたりの較正補正値A’、V’、Δφ’として記憶される。
この結果、将来のイメージングセッションにおいて、上記されたように、関心サンプルが検査領域内に導入され、イメージングされると、記憶された補正値A’、V’、Δφ’は、イメージングシステムの不完全さを補正するために、当該物体による検出器信号を処理して導出されるイメージング量に適用される。つまり、較正補正値は、画像補正のために使用される。較正処置は、繰り返される必要がある。これは、ハードウェアの不完全さが、通常、固定ではなく、熱変動等によって変化するからである。
次に、図2乃至図4を参照するに、一実施形態によるファントム体の様々な図が示される。一般に、ファントム体は、3つのイメージング量A、V、Δφ、即ち、チャネルのそれぞれを同時に較正することを可能にするようにデザインされる。
図2は、ファントム体PBのz軸に沿った平面図を提供する。z軸は、X線ビーム(又は波面)XBの伝搬方向と見なされる。図2におけるz軸は、紙面内へと延在する。使用時、つまり、検出器とX線源との間の検査領域内に配置されると、ファントム体は、検査領域内へと延在する検査台(図示せず)によって支持される。
図2の平面図に示されるように、ファントム体は、少なくとも(幾つかの例では正確に3つの)個別の部分P1〜P3を含む。3つの部分P1、P2、P3は、本明細書では、それぞれ、位相コントラスト部P1、吸収部P2及びデコヒーレンス部P3と呼ぶ。図2の実施形態では、各部分P1、P2、P3は、対応するブロック又はブロック群として形成される。ブロックP1、P2、P3は、適切な取付け手段によって、接地板GP上に取り付けられる。ファントム体PBの一実施形態は、xy平面において対称軸(破線で示される)について、鏡面対称であり、当該対称軸の片側に1つのリーフで、ファントム体PBの2つの「リーフ」が形成される。したがって、以下の説明は、ファントム体の1つのリーフ上のブロックP1〜P3に着目するが、以下の説明は、もう1つのリーフに配置されたブロックにも同等に適用されることは理解されるものとする。その3つの下位部分/ブロックSP2を有するブロックP2は、対称軸を横断して延在するものとして示されるが、必ずしもそうである必要はない。例えばブロックP2は、ブロックP3、P1のブロックSP3、SP1がそうであるように、軸に沿って半分(又は半分以下)までしか延在しなくてもよい。実際に、これは、一実施形態では、2つのリーフのうちの1つしか、それ自体で(より小さい)ファントム体PBを形成しないというブロックに対する制限である。
各ブロックP1、P2、P3は、3つの外乱(吸収、位相シフト、デコヒーレンス)のうちの1つを、他の2つの部分よりも高い度合いでもたらすように構成される。例えば吸収ブロックP2は、当該ブロックP2によってもたらされる吸収外乱が、残りの2つのブロックタイプP1及びP3によってもたらされる吸収よりも高くなるような材料から形成される。反対に、このブロックP2は、他の2つの外乱に関して、2つの他のブロックP1、P3よりも低い度合いで作用する。他の2つのブロックについて、同じことが、任意の他の物理的影響又は外乱についても当てはまる。例えば専門位相シフトブロックP1によってもたらされる位相シフトは、他のブロックタイプP2及びP3の何れによってもたらされる屈折よりも高い度合いで生じる。同じことが、デコヒーレンスについても当てはまる。つまり、各ブロックP1、P2、P3は、3種類の外乱のうちの特定の1つの外乱に充てられ、各ブロックは、3つの外乱のうちの異なる1つの外乱に関して、より顕著に作用する。つまり、3つのブロックP1〜P3は、度合い、即ち、各外乱をどれくらい強く引き起こすかについて相補的に作用する。この相補性によって、較正パラメータA、V、Δφの正確かつ同時の収集が可能となる。
物理的影響/外乱のうちの異なる1つの外乱に充てられている各部分P1、P2、P3は、xy平面(即ち、z軸に沿った波伝播方向に垂直な平面)の全面に空間的に分布する。したがって、ファントム体が検査領域内に配置されると、検出器画素px及び/又は格子G1、G2の様々な部分上に重なる。ファントム体の様々な部分が、3種類の物理的外乱の異なる1つの外乱に充てられているため、ファントム体の各部分は、下にある検出器及び格子の各部分と空間的に位置合わせされ、関連付けられることが可能である。検出器及びファントム体の次元が使用されるため、検出器の様々な部分が、様々な較正パラメータを収集するために使用される。例えば吸収ブロックP2のすぐ下(又は場合によっては上)になる検出器画素の部分によって捕捉される信号は、吸収補正又は較正パラメータを決定するために排他的に使用される。他のファントム体の部分P1又はP3の1つの下になる(又は場合によっては上になってもよい。例えばファントムがCTにおいて使用される場合)残りの画素にもそれぞれ同じことが言える。この空間的ファントム体−検出器位置合わせ及び様々な検出器画素位置は、分かっていることが想定されるので、各画素について、当該特定の画素について保持されるのは、A、V又はΔφ値であるのかが、当該画素がたまたまどのファントム部分P1〜P3に空間的に関連付けられているのかに依存して、(例えばフーリエアナライザFAの上流に配置される論理回路によって)決定される。各画素座標は、フーリエアナライザに転送され、当該フーリエアナライザに、当該画素に対し、画像較正パラメータA、V、Δφの対応するパラメータのみを、出力として提供するように伝える。
図2から分かるように、各専用ブロックP1、P2、P3は、モノリシックではなく、むしろ、複数の下位部分SP1、SP2及びSP3によってそれぞれ一体に形成されている。しかし、これは、本明細書において、モノリシック実施形態が考えられないというわけではない。非モノリシック実施形態では、吸収部分P2は、3つの別個の下位ブロック又は部分SP2から形成される。同じことが、3つの下位部分SP1から形成される差分位相ブロックP1にも当てはまる。例えば一実施形態では、差動位相コントラストブロックは、x軸に沿って互いに隣接して配置される3つ以上(例えば図2に示されるように正確に5つ)のウェッジ要素又はプリズムから形成される。同様に、デコヒーレンスブロックP3は、3つのブロックSP3から形成される。
図3における側面図は、一実施形態にしたがって、各ブロックP1、P2、P3が、それらの対応する下位部分SP1、SP2、SP3からどのように形成されるのかをより詳細に示す図を提供する。
例えば各吸収ブロックP2は、それぞれ異なる高さを有する3つの下位ブロックSP2から形成される。
更に、図3の側面図によれば、デコヒーレンスブロックP3は、3つの下位部分SP3から形成される。一実施形態では、幾つかの又は全部の下位部分SP3が、互いに重なり合ったデコヒーレンスストリップ310のデッキとして形成される。ストリップの数によって、デコヒーレンス下位ブロックSP3の高さが個別に調整され、したがって、入射X線放射波XBに与えられるデコヒーレンスの度合い又は量が調整できる。
最後に、位相コントラストブロックP1は、(前に簡単に述べたように)図3によって与えられる図内へと延在するx軸に沿って配置される複数のダブルウェッジ要素SP1でできている。各ダブルウェッジ要素SP1は、水平及び垂直対称軸に対して左右対称である。しかし、各ダブルウェッジ要素は、異なる度合いの回折をもたらすために、異なる斜面を有する。より具体的には、各ウェッジは、各ウェッジが、反対の勾配(tan(+α)及びtan(−α))を有する2対の斜面を含む意味で、「ダブル」である。各要素は、その4つの平行エッジが4つの斜面を形成するように斜めにされている直方体から形成される。斜向かいの任意の2つの斜面は、等しい一方で、任意の2つの隣接する斜面は、反対の勾配を有する。位相コントラストブロックP1は、その要素SP1が、ブロックP1の長手軸に沿って部分的に斜めにされていることによって形成されている点で、モノリシック構造体である。或いは、各下位部分SP1は、別個の直方体から形成されてもよく、その場合、図2乃至図4に示されるように互いに接触するように連続的に並べて配置されるか、又は、幾つかの若しくは任意の2つの隣接する要素SP1間に間隙があって離散的に配置される。一実施形態では、追加のウェッジP1がブロックP1の上に(つまり、z軸方向に)積み重ねられても、又は、2つのブロックP1全体がz方向に積み重ねられてもよい。このように、位相シフトブースタが形成される。これは、位相コントラストブロックのスタックを伝播して横断する波面は、2つ以上のウェッジ(ダブルウェッジ)SP1を通過する場合に、屈折の合計を経験するからである。
3つ以上の別個の下位部分SP1〜SP3からなるブロックP1、P2、P3を有することの利点は、較正精度を上げられる点である。各ブロックにおいて、3つの異なる影響i)〜iii)のそれぞれについて、少なくとも3つの異なる種類の段階を有することによって、3つ以上の変数を、検出器画素によって記録された各測定値に当てはめることができる。より具体的には、補正パラメータA、V、Δφは、一実施形態では、1つの画素が、各外乱i)〜iii)の3つ以上の発生を異なる度合いで記録する場合に、より安定する曲線当てはめ演算によって計算される。例えば吸収ブロックP2が、異なる高さの3つの下位ブロックSP2を含むことによって、3つの異なる度合いにおいて、吸収を記録することを可能にする。吸収が非常に高いブロックは、最も高いブロックであり、吸収の低いブロックは、最も低いブロックSP2であり、最も高い高さと最も低い高さとの間の中間サイズのブロックは、2つの極端間の吸収レベルを記録する。各下位部分にわたって段階があるが、1つのブロックの下位部分によってもたらされる外乱の種類は、異なるが、2つの他のブロックの任意の下位部分によってもたらされる同じ種類の外乱i)、ii)又はiii)よりも依然として高い度合いにあることが依然として保証される。一例として、位相コントラストブロックP1において、そのコンポーネント(つまり、ダブルウェッジSP1)は、様々な回折をもたらすが、これらの回折のそれぞれは、他の残りのブロックP2及びP3によって(つまり、それらの下位部分SP2、SP3によって)もたらされる任意の回折よりも依然として大きい。同様の状況が、他のブロックP2、P3についても、これらのブロックによってもたらされる優勢な外乱に関して当てはまる。
しかし、図2及び図3に示されるように、各ブロックにおける段階の数は、一実施形態によるものに過ぎず、本明細書において、好適には少なくとも3である他の数も考えられる。しかし、好適には、各ブロックの段階の数は、3つ以上であり、例えば5つ、7つ又は更に大きい。
図2及び図3から分かるように、各ブロック又は下位ブロックは、1ブロックあたりに、各ブロックを通り、波伝播方向Zに延在する少なくとも2つの穴がある。穴は、各ブロックを接地板GPに取り付けるために使用される対応するボルト又はねじ305を受け入れるようにねじ山が付けられている。一実施形態では、ボルト305は、各ブロックと同じ材料から形成されるが、これは、必ずしもそうある必要はない。
図4は、今回は、ファントム体PBのy方向に沿って、ブロックP1、P3間の透明下位ブロックSP1を「通る」側面図を提供する。
図2乃至図4は、非モノリシックに形成された各部分P1〜P3を示すが、これは、幾つか又は全ての部分P1〜P3が、代替実施形態では、その中に下位部分が画成される単一のモノリシックブロックとして構成されてもよいので、限定的ではない。例えば吸収ブロックは、階段状の表面を有する単一ブロックとして構成されてもよく、各段階が下位部分SP1〜SP3の1つを画成する。
図2乃至図4に示されるように、各ブロック又はブロック群P1〜P3は、交互配置された実施形態として示される。例えば差動位相コントラストブロックP1は、2つの隣接する吸収ブロックSP2間に配置される。しかし、この交互配置は、一実施形態によるものに過ぎず、ブロック群は相互配置されないが、各下位ブロックP1、P2、P3が、厳密にまとめられて、非交互配置のデコヒーレンス位相コントラスト及び吸収ブロックP1、P2、P3が形成される他の実施形態も考えられる。図2、図3、図4から分かるように、各ブロックP1〜P3間及び/又は各下位部分SP1〜SP3間に、間隙がある。更に、図2に示されるような特定の交互配置(つまり、ブロックP1及びP2の交互配置)は、例示であり、本明細書では、他の交互配置組み合わせも考えられる。つまり、ブロックP1乃至P3の(y方向における)特定の順序は、例示的な実施形態であり、他のブロック/下位ブロックの順序も考えられる。図2に示されるような特定の連鎖配列は、優れた較正結果を提供している。
しかし、すべての又は幾つかのブロックP1〜P3又は下位ブロックSP1〜SP3が、接地板上で互いに直接接触して配置されるか、又は、単一ブロック内に形成若しくは画成される代替実施形態も考えられる。
図5A、図5Bを参照するに、位相コントラストブロックP1は、ファントムPBを、光軸OXに対して位置合わせするのに役立つ機構を含む。
図5Aは、良好に位置合わせされたシステムの状況を示す一方で、図5Bは、少し位置ずれしたシステムのインスタンスを示す。位置ずれは、光軸OXに対する角度変位δによって記述可能である。検査領域内の較正ファントムPBを、X線源XR及び/又は検出器D及び/又は格子G0〜G2に対して位置合わせする際に、特別な配慮が必要であることが分かっている。位相コントラスト信号自体の場合、X線ビームに垂直な方向に対する材料の密度勾配の推移は、DPCIにおける差動位相に最も影響を及ぼす要因である。図5A)において、密度勾配は、ウェッジの角度α(又はより好適にはtan(α))によって表される。非常に急な勾配(大きいα)について、ウェッジの僅かな角度の位置ずれが、著しい誤差につながる。正常な状態とするために、上記されたように、反対の勾配を有する対のウェッジが使用される。図5B)から分かるように、実効勾配の大きさの合計は、小さい位置ずれ角度δにほぼ影響を受けない。つまり、ダブルウェッジの特別な対称性によって、「シーソー」効果(つまり、ダブルウェッジの中心点周りで旋回する効果)が提供され、一方の側の勾配の増加が、同じ量であるが反対の方向であるもう一方の側の勾配の減少によって相殺される。
上記されたように、ファントム体PBは、図2において破線で示される対称軸に沿って鏡面対称である。つまり、このダブルリーフ実施形態は、1対の位相コントラストブロックP1と、1対のデコヒーレンスブロックP3(それぞれ前述した通りである)とを有し、それぞれ、対称軸の周りに配置され、吸収ブロックP2の3つの下位部分SP2は、対称軸を横断して延在している。吸収ブロックP2の代わりに又は加えて、ブロックP1、P3の何れか1つ(又は両方)が、軸を横断して延在する他の配置も考えられる。
上記左右対称性の検討事項は、本明細書において、左右非対称のブロック配置が排除されることを示唆するものではない。左右非対称のブロックは排除されない。イメージャの検査領域における特定の空間制約下では、左右非対称の配置が必要である。
図2の左側及び右側は、基本ファントム体を形成する。基本ファントム体は、左右対称配置の場合には、4、6、8又は任意の他の数の基本ファントム体といった、(図2に示されるように)2つ又はそれ以上の基本ファントム体から形成される、より複合的な左右対称又は左右非対称のファントム体を組み立てるために、単一接地板上に共に取り付けられる。(図2の左側又は右側のファントム体といったように)複数の基本ファントム体から構成されるこのような複合ファントム体を使用することは、較正演算が、検出器平面及び/又は格子の様々な部分に「局所化」できるという利点を有する。実際に、マンモグラフィといった幾つかのイメージングシステムでは、干渉格子が、所望の視野サイズに製造することができない。必要とされる視野は、しばしば、様々な格子G1、G2又はG0のサイズよりもはるかに大きい。このコンテキストにおいて、1つの解決策は、必要な視野サイズを作るために、個々の格子の傾斜を使用することである。格子傾斜調節可能なイメージングシステムでは、複合ファントムが、有益である。これは、複合ファントムを構成する基本ファントムのそれぞれを使用して、格子傾斜調節部における複数の格子のうちの異なる格子を較正することができるからである。
図2乃至図4による実施形態では、様々なファントム体部分P1、P2、P3は、ブロック又は直方体として示されているが、本明細書では、他の幾何学的形状も考えられる。つまり、様々な部分P1、P2、P3は、必ずしも、1つの軸に沿って単に鏡面対称である必要はなく、回転対称であってもよい。例えば、一実施形態では、部分は、円筒等として形成されてもよい。より具体的には、ファントム体は、様々な層P1、P2、P3を形成するために、幾つかの入れ子式の中空の円筒から形成され、各層は、図2乃至図4において、ブロックについて説明されたように、3つの物理的外乱のうちの1つの外乱に充てらえる。層状構造、つまり、部分P1〜P3が互いの上に積み重ねられる構造も、説明したばかりの回転対称実施形態以外の実施形態について考えられる。例えば図2乃至図4におけるブロックは、接地板GPの平面上に広げられる隣り合わせの配置ではなく、層となるように互いの上に積み重ねられてよい。この積み重ね又は層状配置は、ファントムの全体的なフットプリントが小さいことが求められる場合には、好適である。層状の実施形態では、様々な部分は、較正測定の精度を保障するために、任意の所与の部分P1〜P3について、各外乱が、他の2つの外乱よりも(図6において以下により詳細に説明されるように、画像コントラストとして表現可能である倍数分で)非常に優勢であるように、非常に差別的に構成されることが好適である。この意味で、図2乃至図4に示すように、「広げられた」隣り合わせのレイアウトは、より扱い易いことが期待される。これは、3つの外乱i)〜iii)に関して、3つの部分P1〜P3に対する差別要件が、積み重ね実施形態よりも低いからである。
上記の内容から分かるように、様々な部分P1〜P3及び/又はその対応する下位部分SP1〜SP3は、接地板に、例えば接着されて永久的に固定されるか、又は、例えば、図3に示されるように、ネジ又はボルト305を緩める若しくは外すことによって、若しくは、取り外し可能な取付け手段、スナップフィット、ベルクロ(登録商標)等を使用することによって、非破壊的に取り外し可能である。
ファントム体が、例えば規則的なグリッドレイアウトとなるように適切な空間間隔で配置された適切なスナップ取り付け具をその表面上に含む接地板を含むファントム体キットを本質的に形成する別の実施形態が考えられる。様々な部分P1〜P3の対応する下位部分SP1〜SP3のそれぞれは、空間及び形状の要件に従って、接地板上の適切な位置にスナップフィットされる。これは、例えば較正されるイメージャの空間要件について、ファントム体を調整する高い適応性を提供する。
接地板GPは、一般に、様々なブロックP1〜P3の組み合わされたフットプリントと同一の広がりを有するが、図2に示されるように、良好な基盤を確保するために、接地板が、ブロックのフットプリントを越えて延在する他の実施形態も考えられる。接地板は、矩形、特に四角形であるが、他の形状も考えられる。形状は、較正測定中に、ファントムがその上に配置される検査台又は支持台のサイズ及び形状に大きく応じる。
好適には、吸収ブロックP2は、(PMMAといった)適切なポリカーボネート(好適には均質)ブロックから製造され、様々な吸収段階は、ブロックの下位ブロックSP2が様々な高さにおいて配置されることによって達成される。幾つかの実施形態では、代わりにアルミニウムが使用される。吸収ブロックの適切な高さは、一実施形態では、2、10、20及び50mmであるが、当然ながら、吸収要件に応じて、他の高さも同様に考えられる。明白な吸収を有するこれらのブロックは、様々な高さ、即ち、10、20及び50mmを有し、減衰信号が較正又は評価されることが可能である領域としての役割を果たす。
好適には、デコヒーレンスブロックは、本出願人の欧州特許第2,283,089号に開示されるように、Aralditeのようなマイクロガラス気泡エポキシ樹脂から製造される。デコヒーレンスブロックの高さは、一実施形態では、1、2及び4mmであり、図3を参照して上記されたように、それぞれ、適切な数のデコヒーレンスストリップ310を互いの上に積み重ねることによって達成される。適切な平均サイズの空気包囲体を有する任意の他の多孔性又はスポンジ状又は発泡構造体が、デコヒーレンスブロックを形成するのに適した材料である。多数の空気包囲体を有するこのような構造体は、弱い吸収しか示さないが、小さいガラス気泡が比較的強い散乱をもたらすことにより、デコヒーレンス信号を較正することができる領域としての役割を果たすことができる。空気包囲体の平均構造体が、十分の大きい場合(つまり、デコヒーレンスブロックにおけるよりも大きい場合)、このような多孔性材料は、位相コントラストブロックの利益にもなるように、使用可能である。この場合、図2乃至図4に示されるような一連の様々なウェッジは不要であるが、この場合、下位部分SP1は、異なる平均サイズの空気包囲体を有するセクションとして画成される。
差動位相ブロックP1は、一実施形態では、切断、ミリング又は他の適切な加工技術によって、斜面が形成された均質PMMAブロックとして製造される。上記されたように、一実施形態では、異なる斜面又は勾配を有する5対のウェッジがある。普遍性を失うことなく、また、実施形態のほんの一例として、一実施形態における傾斜角は、それぞれ、1.5、3、4.5、6及び7°である。これらのウェッジは、比較的強い位相コントラストを示し、ブロックは、比較的弱い減衰を有し、ほぼデコヒーレンスがないので、ウェッジブロックは、差動位相信号が較正される領域としての役割を果たす。代替実施形態では、デコヒーレンスブロックと同様に、吸収ブロックも、様々な高さを達成するように、互いの上に積み重ね可能である幾つかのストリップ又は下位ブロックによって構成されてよい。
上記されたように、図1の平面図に示されるように、様々なブロック及び/又はその下位ブロック間には、特定の安全用の間隙又はマージンが残されている。これらのマージンは、より正確な較正結果を確保する。これは、検出器の各画素を、上又は下にあるブロックに関連付けることがより簡単だからである。正確な較正結果を確保するために、様々なブロック及び下位ブロック間に5〜10mmの間隙が好適である。
図6を参照するに、画像としてレンダリングされた典型的な較正パラメータのセットの再構成結果が示される。簡潔さのために、図6では、図2乃至図4においてブロックを示すために使用された参照符号と同じ参照符号P1〜P3を、様々な画像を示すために使用している。左から右に、3つの列は、吸収画像、差動位相コントラスト画像及びデコヒーレンス画像に対応する。3列の画像は、3つのブロックタイプP1〜P3の相補的な特徴を明らかに示す。各列において、最も高いコントラストは、P1又はP2又はP3ブロックの正確に1つによって達成される。例えば中央列は、位相コントラストブロックP1について最も高いコントラストを示す一方で、残りのブロックP1又はP3は、屈折信号についてのみ、無視可能なコントラストを示す。ウェッジブロックSP1の様々な斜面によってもたらされる位相コントラストは、かなり良好に観察できる(吸収ブロックの端からの幾らかの寄与もあるが、これは、次に、例えばファンビームの代わりに平行ビームといった適切なX線ビームXB形状を使用して回避される)。更に、デコヒーレンス画像が示される最右列を参照するに、デコヒーレンスブロックP3は、良好なコントラストを示すが、他のブロックは示さない。左列における吸収画像についても同様である。3つの吸収ブロックは、比較的強く、異なる吸収を示すが、アラルダイト(Araldite)ブロックは、弱い吸収しか示さないことが観察できる。図6の画像では、図2乃至図4のダブルファントム実施形態の右又は左リーフに対応する「基本」又は単一リーフファントム体が使用される。図6の3列を比較した場合、各ブロック又は下位ブロックの様々な画像コントラストは、もたらされた様々な外乱の度合い又は卓越(又は下位部分の場合には、段階の量)を定量化するために使用される。例えば(左列における)吸収ブロックの「フットプリント」は、当該列における他の2つのブロックのフットプリントよりも高いコントラスト(1つの例示的な実施形態では、2倍又は2乃至10倍のコントラスト)で現れる。同様の観察が、他のブロック/下位ブロックの各フットプリントについても当てはまる。画像コントラストは、図6の所与の列における各フットプリントに亘る各ブロックフットプリントにおける画像画素強度全体で取られるRMS(二乗平均平方根)尺度といった比較が可能である任意の適切な形式で表現される。
なお、本発明の実施形態は、様々な主題を参照して説明されている。具体的には、方法タイプの請求項を参照して説明される実施形態もあれば、装置タイプの請求項を参照して説明される実施形態もある。しかし、当業者であれば、上記及び下記の説明から、特に明記されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、様々な主題に関連する特徴の任意の組み合わせも、本願によって開示されていると見なされると理解できるであろう。しかし、すべての特徴は、特徴の単なる足し合わせ以上の相乗効果を提供する限り、組み合わされることが可能である。
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示され、説明されたが、当該例示及び説明は、例示的に見なされるべきであり、限定的に見なされるべきではない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形態様は、図面、開示内容及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される幾つかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定すると解釈されるべきではない。