JP2017512068A - マイトフュージンの方法及び使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、マイトフュージン−1(Mfn1)ポリペプチドを提供するステップ、及びMfn1ポリペプチドと候補薬剤の結合とを検出するステップを含む、Mfn1に結合可能な薬剤を同定する方法に関する。【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明はマイトフュージン−1(mitofusin−1)に関する。より詳細には、本発明は、マイトフュージン−1に結合可能な、又はマイトフュージン−1の活性若しくは発現を調節することが可能な薬剤を同定する方法に関する。本発明は、これらの方法により同定される薬剤及び治療におけるこれらの薬剤の使用にも関する。
発明の背景
ミトコンドリアは、体のほとんどすべての細胞に存在する細胞内小器官である。ミトコンドリアは、多くの細胞内過程、最も顕著にはエネルギー代謝において重要な役割を果たしている。ミトコンドリアの機能障害は、代謝系合併症及び心血管合併症、神経変性疾患並びに癌を含む数多くの病理に結びついている。
しかし、ミトコンドリアは単独のものとして分離される細胞内小器官ではない。むしろ、それらは、代謝の必要性に応じて細胞の呼吸能を適合させるために、細胞中を動き回り、融合及び分裂することができる動的な構造である。
ミトコンドリアの融合及び分裂には数個の遺伝子が重要である。これらの中で、マイトフュージン−1及びマイトフュージン−2(Mfn1及びMfn2)はミトコンドリア外膜の融合を担っている。いずれのタンパク質も、ミトコンドリア外膜に局在する膜貫通GTPアーゼである。Mfn1とMfn2の主要な相違は、細胞内でミトコンドリアを相互に接着させるのみならず小胞体内腔ともつなぐことができるMfn2の能力にある(de Brito O.M.and Scorrano L.(2008) Nature 456:605−10)。
Mfn1及びMfn2の発現調節は、ミトコンドリア新生(例えば、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体共活性化因子α(PGC−1α)の活性化により引き起こされるもの)を制御する支配プログラムにより通常は組織化されている(Soriano F.X.et al.(2006)Diabetes 55:1783−91)。Mfn1及びMfn2の過剰発現は異常に伸長したミトコンドリアを誘発する。逆に、Mfn1及びMfn2の下方制御は小さな丸形のミトコンドリア(「分裂ミトコンドリア」と呼ばれる)を生じる。
2型糖尿病患者で、ミトコンドリアが高度に分裂した構造を呈することが示されている(Bach D.et al.(2003) J.Biol.Chem.278:17190−7)。さらに、肥満状態及び2型糖尿病においてMfn2の下方制御も確認されている(Bach D.et al.(2003) J.Biol.Chem.278:17190−7)。糖尿病患者で一般に見られるミトコンドリアの機能障害はこのことにより説明できると示唆されている。これらの結果から、Mfn1又はMfn2いずれの下方制御も糖尿病の発症に寄与する因子になり得ると考えられた。
Mfn1又はMfn2欠失形質転換マウスモデルの開発が困難であったことにより、当初生体内でのMfn1及びMfn2の研究は妨げられていた。生殖細胞系列でのMfn1又はMfn2の欠失はいずれも、マウスにおいて妊娠中期の胎生致死を引き起こす(Chen H.et al.(2003) J.Cell Biol.160:189−200)。このことを克服するために、組織特異的にMfn2を欠失することのできる条件付きノックアウトマウスモデルが作製された。続いて、関連する代謝研究を容易にするために、これらのマウスをC57Bl/6Jの遺伝的背景に戻し交配された。C57Bl/6Jの遺伝的背景は、高脂肪食飼育によりヒトの代謝疾患を模倣できることから、かかる研究に最も一般的に用いられる系統である。
肝特異的Mfn2欠失(Mfn2−LKO)マウスの研究結果は先行研究と一致した。このモデルは肝臓において著しいミトコンドリア機能障害を示し、マウスは空腹時高血糖症を呈した(Sebastian D.et al.(2012) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109:5523−8)。高脂肪食を与えられた場合、そのマウスはインスリン抵抗性の進展に対して極度に感受性であった。このことは、変化したミトコンドリア構造がブドウ糖の恒常性に有害である可能性を確実なものとした。
Mfn1欠失マウスにおける同様の研究は同様の結果を示すであろうと広く考えられていた。
1つの態様では、本発明は、マイトフュージン−1(Mfn1)ポリペプチドを提供するステップ、及びMfn1ポリペプチドと候補薬剤との結合を検出するステップを含む、Mfn1に結合可能な薬剤を同定する方法を提供する。
1つの実施形態では、方法は、マイトフュージン−2(Mfn2)に比べてMfn1に優先的に結合可能な薬剤を同定するためのものである。例えば、その薬剤は、Mfn2よりMfn1に対して高い親和性でMfn1に結合し得る。1つの実施形態では、その薬剤はMfn1には結合するが、マイトフュージン−2(Mfn2)には結合しない。
他の態様では、本発明は、Mfn1の活性を調節する薬剤を同定するための方法であって、Mfn1ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドと候補薬剤とを含む調製物を提供するステップ、及びかかる候補薬剤がMfn1ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドの活性に影響するか否かを検出するステップを含む方法を提供する。
1つの実施形態では、Mfn1の活性はMfn1のGTPアーゼ活性を決定することによって測定される。
他の実施形態では、方法は、GTP存在下で候補薬剤をMfn1ポリペプチドと接触させるステップ、及びGTPのGDPへの加水分解を測定するステップを含む。
1つの実施形態では、方法は、マイトフュージン−2(Mfn2)に比べてMfn1の活性を優先的に調節(例えば阻害)することが可能な薬剤を同定するためのものである。他の実施形態では、方法は、Mfn1の活性を調節することが可能な薬剤であって、マイトフュージン−2(Mfn2)の活性を調節しない薬剤を同定するための方法である。Mfn2の活性は、Mfn2のGTPアーゼ活性を決定することによって測定され得る。例えば、その薬剤は、Mfn1阻害においてMfn2阻害より低い50%阻害濃度(IC50)を有し得る。1つの実施形態では、その薬剤はMfn1の活性は阻害するが、マイトフュージン−2(Mfn2)の活性は阻害しない。
他の実施形態では、方法は、Mfn1の活性を減少させる薬剤を同定するための方法である。Mfn1の活性は、候補薬剤がない場合の活性に比較して5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少し得る。
他の実施形態では、方法は、例えばインスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常及び糖尿病からなる群から選択される疾患などの代謝疾患を処置又は予防することが可能な薬剤を同定するためのものである。
他の態様では、本発明は、Mfn1とGTPとの相互作用を調節することが可能な化合物を同定する方法であって、
a)Mfn1ポリペプチドを提供するステップ、
b)GTP分子を提供するステップ、及び
c)候補薬剤の存在下でMfn1ポリペプチドとGTP分子との結合を検出するステップ
を含む方法を提供する。
他の態様では、本発明は、Mfn1ポリペプチドを発現する細胞を候補薬剤と接触させるステップ、及びかかるMfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングの増減をモニタリングするステップを含む、Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングを調節する薬剤を同定するための方法を提供する。
1つの実施形態では、方法は、Mfn1ポリペプチドを発現する細胞を候補薬剤と接触させるステップ、及び前記Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングの減少をモニタリングするステップを含む、Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングを減少させる薬剤を同定するためのものである。Mfn1の発現は、候補薬剤がない場合の発現レベルに比較して5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少し得る。
1つの実施形態では、前述のいずれの方法も、疾患、例えばMfn1又はミトコンドリアの融合若しくは機能障害に関連する疾患の症状を予防、調節、減少又は改善する薬剤を同定するためのものである。方法は、代謝疾患の症状を予防、減少又は改善する薬剤を同定するためのものである場合もある。その代謝疾患は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択され得る。
他の態様では、本発明は、Mfn1活性を調節するものとして同定された薬剤を前記代謝疾患のモデル動物に投与するステップ、及びかかるモデル動物における代謝疾患の進行を観察するステップを含む、代謝疾患の症状を予防、調節、減少又は改善する薬剤を同定する方法を提供する。
1つの実施形態では、候補薬剤は前述の任意の方法を用いて同定される。
代謝疾患は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択され得る。
前述の方法の薬剤は、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、又は小分子であり得る。
他の態様では、本発明は、Mfn1の活性を調節すること又はMfn1の発現若しくはプロセシングを調節することが可能な、代謝疾患の処置又は予防における使用のための薬剤を提供する。
1つの実施形態では、代謝疾患の処置又は予防における使用のための薬剤は、Mfn1の活性、発現又はプロセシングを減少させることが可能な薬剤である。その薬剤は、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は小分子からなる群から選択することができる。
他の態様では、本発明は、本発明の前述した態様での代謝疾患の処置における使用のための、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、又はポリペプチドをコードするベクターを提供する。
本発明のベクター又は薬剤は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択される代謝疾患の処置又は予防における使用のためのものであり得る。
他の態様では、本発明は、代謝疾患を予防又は処置する薬剤をスクリーニングする方法における、Mfn1ポリペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
他の態様では、本発明は、代謝疾患のバイオマーカーとしての、Mfn1ポリペプチド又はこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
他の態様では、本発明は、対象から得られた試料におけるMfn1の発現レベルを測定することを含む、対象における代謝疾患又は前記疾患の素因を診断する方法を提供する。その代謝疾患は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択され得る。
図1。標準食のMfn1−LKOマウスでは血糖制御に影響はない。(A)18週齢の雄性対照マウス又はMfn1−LKOマウスに2g/kg体重で腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。(B)20週齢の雄性対照マウス又はMfn1−LKOマウスに0.3U/kgのインスリンを腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。すべての値は、対照マウスがn=11、Mfn1−LKOマウスがn=9の平均+/−標準誤差(SEM)で表示されている。 図2。Mfn1−LKOマウスは高脂肪食飼育においてより良い糖耐性及びインスリン感受性を示す。(A)10週齢の対照マウス及びMfn1−LKOマウスを低脂肪食(LFD)又は高脂肪食(HFD)で飼育した。(A)体重の変化。(B)高脂肪食飼育8週後にエコーMRIにより測定された身体組成。(C)高脂肪食開始後10週で2g/kg体重でマウスに腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。(D)高脂肪食開始後12週で老齢マウスに0.75U/kgのインスリンを腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。曲線上面積(AOC)値を右図に示す。すべての値は、対照マウスがn=10、Mfn1−LKOマウスがn=10の平均+/−標準誤差(SEM)で表示されている。*は、それぞれの対照マウスに対する統計的有意差をp<0.05で示している。 図3。低血糖に対するメトホルミンの作用はMfn1−LKOマウスで増強される。12週齢の対照マウス及びMfn1−LKOマウスを8週間高脂肪食(D12492,Research Diets Inc.,USA)で飼育した。その後、マウスは一晩絶食させ、生理食塩水(溶媒として)又はメトホルミン(125mg/kg)いずれかを注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。すべての値は、各群n=10のマウスの平均+/−標準誤差(SEM)で表されている。*は、対照マウスとMfn1−LKOマウスとの間の統計的有意差をp<0.05で示している。白い四角は対照マウスの値に用いられており、黒い四角はMfn1−LKOに用いられている。 図4。野生型及びMfn1−LKOマウスにおけるミトコンドリア呼吸のメトホルミンによる阻害。野生型及びMfn1−LKOマウスから新しく抽出したミトコンドリアを呼吸測定液で均質化し、2mgの組織を呼吸測定解析に用いた。リンゴ酸及びグルタミン酸の添加によってミトコンドリアにおける複合体Iの活性を刺激した。その後、最大の共役的呼吸を達成するためにADPを添加し、続いてメトホルミンの効果を評価した。棒グラフは、呼吸の絶対量を各遺伝子型について4つのミトコンドリア調製物の平均+/−標準誤差(SEM)で示している。*は、遺伝子型間の統計的有意差をp<0.05で示している。下の表は、異なるメトホルミン用量での最大呼吸に対する残存%を表している。白い棒グラフは対照マウス、黒い棒グラフはMfn1−LKOマウスに用いられている。
発明の詳細な説明
本発明者らは、肝特異的Mfn1欠失(Mfn1−LKO)マウスモデルを作製した。作製を達成するために、Mfn1のfloxマウス(すなわちMfn1遺伝子が2つのloxP部位に挟まれているマウス)を、アルブミンプロモーターによりCreリコンビナーゼの発現が制御されているマウスと交配することにより、生殖細胞系列のMfn1の欠失に関係する胎生致死を克服した。Mfn1−LKOマウスは正常な外観を有し対照マウスに等しいエネルギー消費を示すが、エネルギー源としては脂肪を好むことを、本発明者は発見した。加えて、Mfn1−LKOマウスの肝臓は、より高い呼吸容量及びより多い呼吸複合体を示した(表2)。
しかし、驚くべきことに、通常の低脂肪食で飼育された場合、Mfn1−LKOマウスは、Mfn2−LKOマウスで観察される空腹時高血糖症又はブドウ糖恒常性の異常を示さない(図1A〜B)(Sebastian D.et al.(2012) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109:5523−5528)。さらに驚くべきことに、本発明者らは、高脂肪食が与えられた場合、Mfn1−LKOマウスは、体重増加(図2A)及び脂肪量(図2B)増加は対照マウスと同じであるが、耐糖性(図2C)及びインスリン感受性(図2D)がより高いままであることを発見した。この重要な打開は、Mfn1の下方制御が糖尿病に対抗する有力な戦略を提供する可能性があることを示唆する。
本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態が非限定的な例としてこれから記載されるであろう。
本発明の実施には、特段の指示がない限り、当業者にとって可能な範囲の化学、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来技術が用いられるであろう。そのような技術は文献に説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995年及び定期的に追補)Current Protocols in Molecular Biology,Ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,NY;B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn (1996) DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee (1990) In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(ed.) (1984) Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;及びD.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg (1992) Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressを参照。これらの一般的な教科書の各々は参照により本明細書に組み入れられる。
マイトフュージン:
マイトフュージン−1(Mfn1)及びマイトフュージン−2(Mfn2)は、ドロソフィラ(Drosophila)Fzo又は酵母Fzo1タンパク質の哺乳動物の相同体である。哺乳動物のMfn1及びMfn2タンパク質は組織により発現レベルは異なるが、多くの組織で広く発現している。Mfn1及びMfn2はいずれもミトコンドリアの構造維持に重要である。
Mfn1及びMfn2は、C末端の膜結合領域によりミトコンドリア外膜に係留している。両タンパク質は細胞質側にN末端GTPアーゼ領域を有している。加えて、少なくともMfn1はC末端に7アミノ酸反復を有している。この領域は、ミトコンドリアの繋留をもたらす二量体逆平行コイルドコイル構造を形成することが示されている(Koshiba et al.(2004)Science 305:858−62)。
Mfn1及びMfn2両タンパク質、及びそれらの機能するGTPアーゼ領域はミトコンドリアの融合に必須である。
本発明の1つの実施形態では、Mfn1はヒト(Homo sapiens)由来である。例えば、Mfn1は下記配列を含み得る:
MAEPVSPLKHFVLAKKGITAIFDQLLEFVTEGSHFVEATYKNPELDRIATEDDLVEMQGYKDKLSIIGEVLSRRHMKVAFFGRTSSGKSSVINAMLWDKVLPSGIGHITNCFLSVEGTDGDKAYLMTEGSDEKKSVKTVNQLAHALHMDKDLKAGCLVRVFWPKAKCALLRDDLVLVDSPGTDVTTELDSWIDKFCLDADVFVLVANSESTLMNTEKHFFHKVNEWLSKPNIFILNNRWDASASEPEYMEDVRRQHMERCLHFLVEELKVANALEAQNRIFFVSAKEVLSARKQKAQGMPESGVALAEGFHARLQEFQNFEQIFEECISQSAVKTKFEQHTIRAKQILATVKNIMDSVNLAAEDKRHYSVEEREDQIDRLDFIRNQMNLLTLDVKKKIKEVTEEVANKVSCAMTDEICRLSVLVDEFCSEFHPNPDVLKIYKSELNKHIEDGMGRNLADRCTDEVNALVLQTQQEIIENLKPLLPAGIQDKLHTLIPCKKFDLSYNLNYHKLCSDFQEDIVFRFSLGWSSLVHRFLGPRNAQRVLLGLSEPIFQLPRSLASTPTAPTTPATPDNASQEELMITLVTGLASVTSRTSMGIIIVGGVIWKTIGWKLLSVSLTMYGALYLYERLSWTTHAKERAFKQQFVNYATEKLRMIVSSTSANCSHQVKQQIATTFARLCQQVDITQKQLEEEIARLPKEIDQLEKIQNNSKLLRNKAVQLENELENFTKQFLPSSNEES
(GenBank Accession No.AAK06840.1;配列番号1)
他の実施形態では、Mfn1はハツカネズミ(Mus musculus)由来である。例えば、Mfn1は下記配列を含み得る:
MAETVSPLKHFVLAKKAITAIFGQLLEFVTEGSHFVEATYRNPELDRIASEDDLVEIQGYRNKLAVIGEVLSRRHMKVAFFGRTSSGKSSVINAMLWDKVLPSGIGHTTNCFLSVEGTDGDKAYLMTEGSDEKKSVKTVNQLAHALHMDKDLKAGCLVHVFWPKAKCALLRDDLVLVDSPGTDVTTELDIWIDKFCLDADVFVLVANSESTLMNTEKHFFHKVNERLSKPNIFILNNRWDASASEPEYMEDVRRQHMERCLHFLVEELKVVSPSEARNRIFFVSAKEVLNSRKHKAQGMPEGGGALAEGFQARLQEFQNFEQTFEECISQSAVKTKFEQHTIRAKQILDTVKNILDSVNVAAAEKRVYSMEEREDQIDRLDFIRNQMNLLTLDVKKKIKEVTEEVANKVSCAMTDEICRLSVLVDEFCSEFHPTPSVLKVYKSELNKHIEDGMGRNLADRCTNEVNASILQSQQEIIENLKPLLPAGIQNKLHTLIPCKKFDLSYDLNCHKLCSDFQEDIVFRFSLGWSSLVHRFLGSTNAQRVLLGLSEPIFQVPRSLASTPTAPSNPAAPDNAAQEELMITLITGLASLTSRTSMGIIVVGGVIWKTVGWKLISVTLSMYGALYLYERLTWTTRAKERAFKQQFVNYATEKLQMIVSFTSANCSHQVQQEMATTFARLCQQVDVTQKHLEEEIARLSKEIDQLEKIQNNSKLLRNKAVQLESELENFSKQFLHPSSGES
(GenBank Accession No.AAO34660.1;配列番号2)
好ましい実施形態では、Mfn1は、配列番号1又は2と50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%の相同性を有し、ミトコンドリアの融合及び/又はミトコンドリア外膜への組み込みを促進することが可能であるアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、Mfn1は、配列番号1若しくは2のタンパク質、又は配列番号1若しくは2と50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%若しくは100%のアミノ酸相同性を有し、ミトコンドリアの融合及び/又はミトコンドリア外膜への組み込みを促進することが可能であるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ得る。
本発明の1つの実施形態では、Mfn2はヒト(Homo sapiens)由来である。例えば、Mfn2は下記配列を含み得る:
MSLLFSRCNSIVTVKKNKRHMAEVNASPLKHFVTAKKKINGIFEQLGAYIQESATFLEDTYRNAELDPVTTEEQVLDVKGYLSKVRGISEVLARRHMKVAFFGRTSNGKSTVINAMLWDKVLPSGIGHTTNCFLRVEGTDGHEAFLLTEGSEEKRSAKTVNQLAHALHQDKQLHAGSLVSVMWPNSKCPLLKDDLVLMDSPGIDVTTELDSWIDKFCLDADVFVLVANSESTLMQTEKHFFHKVSERLSRPNIFILNNRWDASASEPEYMEEVRRQHMERCTSFLVDELGVVDRSQAGDRIFFVSAKEVLNARIQKAQGMPEGGGALAEGFQVRMFEFQNFERRFEECISQSAVKTKFEQHTVRAKQIAEAVRLIMDSLHMAAREQQVYCEEMREERQDRLKFIDKQLELLAQDYKLRIKQITEEVERQVSTAMAEEIRRLSVLVDDYQMDFHPSPVVLKVYKNELHRHIEEGLGRNMSDRCSTAITNSLQTMQQDMIDGLKPLLPVSVRSQIDMLVPRQCFSLNYDLNCDKLCADFQEDIEFHFSLGWTMLVNRFLGPKNSRRALMGYNDQVQRPIPLTPANPSMPPLPQGSLTQEEFMVSMVTGLASLTSRTSMGILVVGGVVWKAVGWRLIALSFGLYGLLYVYERLTWTTKAKERAFKRQFVEHASEKLQLVISYTGSNCSHQVQQELSGTFAHLCQQVDVTRENLEQEIAAMNKKIEVLDSLQSKAKLLRNKAGWLDSELNMFTHQYLQPSR
(GenBank Accession No.AAK18728.1;配列番号3)
他の実施形態では、Mfn2はハツカネズミ(Mus musculus)由来である。例えば、Mfn2は下記配列を含み得る:
MSLLFSRCNSIVTVKKDKRHMAEVNASPLKHFVTAKKKINGIFEQLGAYIQESASFLEDTHRNTELDPVTTEEQVLDVKGYLSKVRGISEVLARRHMKVAFFGRTSNGKSTVINAMLWDKVLPSGIGHTTNCFLRVGGTDGHEAFLLTEGSEEKKSVKTVNQLAHALHQDEQLHAGSMVSVMWPNSKCPLLKDDLVLMDSPGIDVTTELDSWIDKFCLDADVFVLVANSESTLMQTEKQFFHKVSERLSRPNIFILNNRWDASASEPEYMEEVRRQHMERCTSFLVDELGVVDRAQAGDRIFFVSAKEVLSARVQKAQGMPEGGGALAEGFQVRMFEFQNFERQFEECISQSAVKTKFEQHTVRAKQIAEAVRLIMDSLHIAAQEQRVYCLEMREERQDRLRFIDKQLELLAQDYKLRIKQITEEVERQVSTAMAEEIRRLSVLVDEYQMDFHPSPVVLKVYKNELHRHIEEGLGRNLSDRCSTAIASSLQTMQQDMIDGLKPLLPVSMRNQIDMLVPRQCFSLSYDLNCDKLCADFQEDIEFHFSLGWTMLVNRFLGPKNSRRALLGYSDQVQRPLPLTPANPSMPPLPQSSLTQEELMVSMVTGLASLTSRTSMGILVVGGVVWKAVGWRLIALSFGLYGLLYVYERLTWTTKAKERAFKRQFVEYASEKLQLIISYTGSNCSHQVQQELSGTFAHLCQQVDITRDNLEQEIAAMNKKVEALDSLQSRAKLLRNKAGWLDSELNMFTHQYLQPSR
(GenBank Accession No.AAM88577.1;配列番号4)
好ましい実施形態では、Mfn2は、配列番号3又は4と50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%の相同性を有し、ミトコンドリアの融合をもたらすことが可能であるアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、Mfn2は、配列番号3若しくは4のタンパク質、又は配列番号3若しくは4と50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%若しくは100%のアミノ酸相同性を有し、ミトコンドリアの融合をもたらすことが可能であるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ得る。
マイトフュージン結合:
本発明は、マイトフュージン、例えばMfn1又はMfn2に結合可能な薬剤を同定する方法を含む。
方法は、質的又は量的な結果のいずれかを提供することが可能である。本発明の方法は、Mfn1若しくはその断片に結合可能な薬剤を同定すること及びその代わりに若しくはそれに加えてそのような結合を特性評価することのいずれのためにも用いられ得る。例えば、方法は、絶対的若しくは相対的な結合親和性、及び/又は結合のエンタルピー若しくはエントロピーを測定することを可能とし得る。結合親和性は平衡解離定数(K)又は結合定数(K)によって表され得る。
候補薬剤は、例えばペプチド、ポリペプチド、核酸、抗体又は小分子など、対象となり得るいかなる薬剤であってもよい。好ましくは、候補薬剤は潜在的な治療対象に関する化合物又は混合物である。好ましくは、候補薬剤は哺乳動物、特にヒトに対して低毒性である。いくつかの実施形態では、候補薬剤には天然化合物又は植物若しくは動物の抽出物などの化合物の混合物を含む栄養剤及び/又は食品成分を含ませることが可能である。
候補薬剤は、例えばコンビナトリアルケミストリーにより作成されたライブラリー又はファージディスプレイのライブラリーなど薬剤ライブラリーの部分である場合もある。1つの実施形態では、候補薬剤は植物性の生理活性分子ライブラリーの部分である。
候補薬剤とタンパク質の結合を同定するためのいくつかのアッセイ技術が当業者に知られている。用いられるアッセイ技術は、好ましくは、自動化及び/又は候補薬剤のハイスループットスクリーニングが容易にできるものである。アッセイは、マイクロタイタープレート、マイクロビーズ、レジンなどの使い捨ての固体支持体で実施され得る。
例えば、Mfn1は、例えばマイクロビーズ、レジン、マイクロタイタープレート又はアレイなどの固体の支持体に固相化され得る。そして、候補薬剤は固相化されたMfn1に接触させられる。弱く又は非特異的に結合した薬剤を除去するために随意に洗浄処理を適用することができる。その後、Mfn1に結合した薬剤を検出及び同定することができる。結合した薬剤の検出を容易にするために、候補薬剤は容易に検出可能なマーカーで標識され得る。マーカーは、例えば、放射性標識、酵素標識、抗体標識、蛍光標識、粒子(例えばラテックス又は金)標識、又は同様のものを含み得る。
あるいは、上述の手順は逆でもよく、候補薬剤を固相化し、Mfn1をかかる固相化薬剤に接触させてもよい。弱く又は非特異的に結合したMfn1を除去するために随意に洗浄処理を適用することができる。その後、Mfn1が結合した薬剤を検出及び同定することができる。結合の検出を容易にするために、Mfn1は上述のように容易に検出可能なマーカーで標識され得る。
上述のアッセイに加えて、他の適切なアッセイ技術も当業者に知られている。そのような技術の例は、放射標識測定、蛍光測定、ELISA、蛍光偏光法、蛍光異方性測定、等温滴定型熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴分析(SPR)及び同様のものである。これらのアッセイは、Mfn1に結合する薬剤を同定するために適用され得る。実際、ハイスループットスクリーニングを容易にするために、これら技術の多くについて自動化のための基盤が広く当業者に知られている。
1つ以上のアッセイ技術が、候補薬剤のMfn1への結合を詳細に理解するために用いられ得る。例えば、質的な結合情報を与えるアッセイを方法の第一段階として用いた後に、量的な結合データを与える異なる技術を用いたさらなるアッセイを続けることもできる。
Mfn1に結合可能な薬剤を同定するための技術が上記で検討されてきたが、これらの技術は、Mfn2に結合可能な薬剤を同定するために同じく適用可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの技術は、Mfn1又はMfn2に結合しない薬剤の同定も可能にするであろうことが理解されるべきである。
上述のアッセイ技術は、競合的結合試験を実施するために改変することが可能である。これらの技術は、例えば候補薬剤の存在下でタンパク質の基質又は補因子への結合を分析するのにも同様に適している。したがって、タンパク質とその基質又は補因子との結合を調節する薬剤を選別及び同定するために上述の技術を使用することが可能となろう。例えば、これらのアッセイは、候補薬剤の存在下でのMfn1又はMfn2とGTPとの結合の検出を可能とするであろう。したがって、例えばGTPへの結合を減少させるなど、Mfn1又はMfn2のGTPへの結合を調節する薬剤を同定することが可能となろう。
好ましくは、本発明の薬剤はMfn1に高親和性で結合するであろう。例えば、本発明の薬剤は、100μM未満、より好ましくは10μM未満、例えば1μM未満、100nM未満又は10nM未満のKでMfn1に結合するであろう。
本発明の薬剤は、基本的にMfn2に比べてMfn1に優先的に結合する。換言すれば、薬剤は基本的にMfn2よりMfn1に選択的であり、例えば、同一条件下でかかる薬剤はMfn2より高い親和性でMfn1に結合する。結合親和性は、例えば表面プラズモン共鳴分析、ELISAなど(例えば上述のものなど)、当業者に知られている標準的な技術を用いて測定することができ、結合定数(K)又は解離定数(K)のいずれかにより定量され得る。
好ましい実施形態では、薬剤は少なくとも2:1の親和性比でMfn1及びMfn2に結合する(例えば、K(Mfn1)/K(Mfn2)≧2)。さらなる実施形態では、薬剤は、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも100:1、少なくとも1000:1、少なくとも10,000:1のMfn1/Mfn2親和性比を有し得る。例えば、薬剤は、100μM未満、好ましくは1μM未満、より好ましくは100nM未満、最も好ましくは10nM未満のKでMfn1に結合し得る。かかる薬剤は、10nM超、好ましくは100nM超、より好ましくは1μM超、最も好ましくは100μM超のKでMfn2に結合し得る。1つの実施形態では、薬剤はMfn2に結合しない(例えば、薬剤は、標準的なアッセイ条件下で、Mfn2に対し無視できる程度の結合しか示さない又は結合を実質的に示さない)。
マイトフュージン活性:
本発明はまた、マイトフュージン、例えばMfn1又はMfn2の活性を調節することが可能な薬剤を同定するための方法を含む。Mfn1又はMfn2の活性は、例えばMfn1又はMfn2のGTPアーゼの酵素活性を分析することによって、直接分析され得る。代わりに又は加えて、Mfn1又はMfn2の活性は、例えば細胞内のミトコンドリアの融合を分析することによって、間接的に分析され得る。
タンパク質、例えばGTPアーゼなどの酵素の活性を減少させる候補薬剤の能力はIC50値により表現され得る。IC50は、タンパク質の活性を50%減少(例えば酵素活性の50%の減少)させるのに必要とされる薬剤の濃度である。IC50値の算出は当業者に知られている。好ましくは、本発明の薬剤は、Mfn1活性(例えばGTPアーゼ活性)の阻害について100μM未満、より好ましくは10μM未満、例えば1μM未満、100nM未満又は10nM未満のIC50値を有する。
本発明の薬剤は、基本的にMfn2に比べてMfn1を優先的に阻害する。換言すれば、薬剤は基本的にMfn1を選択的に阻害し、例えば、かかる薬剤は、同一条件下でMfn2に比べてMfn1の活性阻害についてより低いIC50値を有する。好ましい実施形態では、薬剤は少なくとも2:1のIC50比でMfn2及びMfn1を阻害する(例えば、IC50(Mfn2)/IC50(Mfn1)≧2)。さらなる実施形態では、薬剤は、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも100:1、少なくとも1000:1、少なくとも10,000:1のMfn2/Mfn1のIC50比を有し得る。例えば、薬剤は、Mfn1阻害について100μM未満、好ましくは1μM未満、より好ましくは100nM未満、最も好ましくは10nM未満のIC50を有し得る。薬剤は、Mfn2阻害について10nM超、好ましくは100nM超、より好ましくは1μM超、最も好ましくは100μM超のIC50を有し得る。1つの実施形態では、薬剤はMfn2活性を阻害しない(例えば、薬剤は、標準的なアッセイ条件下で、Mfn2活性に対し無視できる程度の阻害しか示さない又は阻害を実質的に示さない)。
GTPアーゼアッセイ:
GTPアーゼ活性を測定するためのいくつかの技術が当業者に知られている。そのようなGTPアーゼアッセイは、付随して無機リン酸の放出を生じるGTPアーゼによるGTPのGDPへの変換を検出することに基づくものであり得る。これらの技術は、細胞から単離されたGTPアーゼ、例えばMfn1又はMfn2に応用することができる。Mfn1又はMfn2は組換え技術を用いて発現させることが可能である。好ましくは、かかるMfn1又はMfn2は精製されている。Mfn1及びMfn2の発現及び精製の方法は当業者に知られている。
1つの実施形態では、GTPアーゼ活性は、[α−32P]標識したGTPを用いてGTPからGDPへの変換をモニタリングすることによって決定することが可能である。簡潔には、GTPアーゼ反応における様々な時点で薄層クロマトグラフィによるGTP及びGDPの分離が実施され得る。そして、それぞれの時点でのGTP及びGDPの相対量がホスフォイメージャ分析により定量され得る。適切な[α−32P]に基づくGTPアーゼアッセイは、Ishihara N.et al.(2004) J.Cell Sci.117:6535−46(Mfn1に適用)及びWarnock D.E.et al.(1996) J.Biol.Chem.271:22310−4に記載されている。
他の実施形態では、GTPアーゼ活性は、GTP加水分解で産生される無機リン酸(P)の放出を検出するためのアッセイを用いて決定され得る。例えば、酵素反応の間の無機リン酸放出を検出するためのマラカイトグリーン比色アッセイが当業者に知られている。簡潔には、これらのアッセイは、マラカイトグリーン検出試薬が無機リン酸との結合により変色されるという原理に基づいている。色の変化は、各時点までに放出された無機リン酸の定量が可能である分光光度検出によって測定され得る。例えばInnova BiosciencesのGTPase assayなどの、適切な市販のマラカイトアッセイが入手可能である。そのような比色アッセイはハイスループットスクリーニングに適している。
ミトコンドリア融合アッセイ:
ミトコンドリア融合に対する候補薬剤の効果も細胞内で直接分析することが可能である。ミトコンドリア融合を分析する方法は当業者に知られている。例えば、ミトコンドリアは、共焦点顕微鏡を用いるタイムラプス撮影により細胞内で可視化され得る。この技術は、Mfn1及びMfn2のノックアウトがミトコンドリア動態及び融合に及ぼす効果についての研究においてChen et al.(Chen H.et al.(2003) J.Cell Biol.160:189−200)が記載している。
マイトフュージン発現:
Mfn1又はMfn2の発現を分析する方法は、本発明においてタンパク質レベルで候補薬剤の効果を選別するために用いられ得る。加えて、診断方法の部分として、対象者からの試料中のタンパク質、例えばMfn1、Mfn2又は他のバイオマーカーの発現レベルを分析することもできる。タンパク質の発現レベルは疾患又は疾患の素因に関連し得る。
タンパク質の発現レベルを決定するためのいくつかの技術が当業者に知られている。これらの技術は、候補薬剤がMfn1及び/又はMfn2の発現レベルに及ぼす効果についての試験に適用することが可能である。用いられる技術は、好ましくは、自動化及び/又は候補薬剤のハイスループットスクリーニングが容易にできるものである。
例えば、選別は、リポーター部分に操作可能に連結されたMfn1及び/又はMfn2をコードする核酸を有する細胞を用いて実施され得る。リポーター部分は、内在性のMfn1及び/又はMfn2をコードする遺伝子に操作可能に連結され得る。あるいは、リポーター部分に操作可能に連結されたMfn1及び/又はMfn2の外来複製物が細胞に導入され得る。この実施形態では、細胞は、天然のMfn1及び/又はMfn2発現を欠失するように操作され得る。Mfn1及びMfn2に連結されたリポーター部分が異なっていて相互に識別可能である場合がある。適切なリポーター部分は、例えば緑色、黄色、チェリー色、シアン色又はオレンジ色の蛍光タンパク質などの蛍光標識を含む。
「操作可能に連結」することにより、記載された構成要素が意図された様式でそれらが機能するような関係になると理解される。
そのような細胞を候補薬剤と接触させて細胞内のリポーター部分の発現レベルを分析することによってMfn1及び/又はMfn2の発現レベルをモニタリングすることができる。蛍光リポーター部分は、例えばフローサイトメトリー、蛍光表示式細胞分取(FACS)、及び蛍光顕微鏡観察などの、いくつかの当業者に知られている技術により分析され得る。Mfn1又はMfn2の発現は同一細胞内で別々に又は同時に分析され得る。Mfn1及び/又はMfn2の発現レベルは候補薬剤と接触させる前後で比較され得る。あるいは、Mfn1及び/又はMfn2の発現レベルは、候補薬剤と接触させた細胞と対照細胞の間で比較され得る。Mfn1及びMfn2の発現への効果が両方とも決定された場合、候補薬剤の効果はMfn1とMfn2の発現の比として表すこともできる。
例えば、Mfn1及びMfn2などのタンパク質の発現を分析するために他の方法を用いることもできる。タンパク質の発現は直接分析され得る。例えば、発現は、クマシー染色又は銀染色による可視化を伴うSDS−PAGE分析のような方法を用いて定量的に分析され得る。あるいは、発現は、タンパク質産物に結合する抗体プローブを用いるウェスタンブロット解析又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて定量的に分析され得る。上述のリポーター部分で標識されたMfn1及び/又はMfn2もこれらの方法で用いられ得る。あるいは、タンパク質の発現は、例えばそのタンパク質に対応するmRNA、例えば細胞内で転写されるMfn1及び/又はMfn2の量を調査することによって、間接的に分析され得る。このような分析は、定量的逆転写PCR及びノザンブロット解析などの方法を用いることにより達成することができる。
siRNA、shRNA、miRNA、及びアンチセンスDNA/RNA:
マイトフュージン発現は、転写後遺伝子抑制(PTGS)を用いて調節することができる。2本鎖RNA(dsRNA)によりもたらされる転写後遺伝子抑制は、外来遺伝子の発現を制御するため保存された細胞防御機構である。トランスポゾン又はウイルスなどの配列の無作為な挿入が、相同な1本鎖mRNA又はウイルスのゲノムRNAの配列特異的な分解を活性化するdsRNAの発現を引き起こすと考えられている。そのサイレンシング効果はRNA干渉(RNAi)として知られている(Ralph et al.(2005) Nat.Medicine 11:429−33)。RNAiの機構は、長いdsRNAを約21〜25ヌクレオチド(nt)のRNA2重鎖にプロセシングすることを含む。これらの産物はmRNA分解の配列特異的な介在分子であり、低分子干渉RNA又はサイレンシングRNA(siRNA)と呼ばれる。分化した哺乳動物細胞では、30bpより長いdsRNAが、タンパク質合成の停止及び非特異的mRNA分解を誘導するインターフェロン応答を活性化することが明らかとなっている(Stark et al.(1998) Ann.Rev.Biochem.67:227−64)。しかし、この応答は21ntのsiRNA2重鎖を用いることにより回避され得(Elbashir et al.(2001) EMBO J.20:6877−88;Hutvagner et al.(2001) Science 293:834−8)、培養哺乳動物細胞での遺伝子機能の分析を可能とする。
shRNAは、小さな環状配列により隔てられた短い逆位反復RNAからなる。これらは細胞機構によって即座に19〜22ntのsiRNAにプロセシングされ、それにより標的遺伝子の発現が抑制される。
マイクロRNA(miRNA)は、3’非翻訳領域(UTR)に結合することによって標的mRNAの翻訳を効果的に減少させることが可能な、小さな(長さ22〜25ヌクレオチド)非コードRNAである。マイクロRNAは生物で天然に産生される小さなRNAの非常に大規模な群であり、その中の少なくともいくつかは標的遺伝子の発現を制御している。マイクロRNA集団の構成要素にはlet−7及びlin−4がある。let−7遺伝子は、線虫の成長の間、内在性タンパク質をコードする遺伝子の発現を調節する高度に保存された小さなRNA種をコードしている。活性のあるRNA種はまず約70ntの前駆体として転写され、転写後に約21ntの成熟型にプロセシングされる。let−7及びlin−4はいずれも、ダイサー酵素により成熟型にプロセシングされるヘアピンRNA前駆体として転写される。
アンチセンスの概念は、細胞内でメッセンジャーRNAに短鎖の修飾されている場合もあるDNA又はRNA分子を選択的に結合させ、コードされるタンパク質の合成を妨げるというものである。
標的タンパク質の発現を調節するためのsiRNA、shRNA、miRNA、及びアンチセンスDNA/RNAの設計法、及び対象となる細胞へこれらの分子を送達する方法は当業者に知られている。さらに、生物中の特定の細胞型におけるタンパク質発現を例えば組織特異的プロモーターの使用を通じて特異的に調節(例えば減少)する方法も当業者に知られている。
代謝疾患:
本発明の薬剤は代謝疾患の処置又は予防に用いられ得る。代謝疾患は、糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、又は空腹時血糖異常であり得る。好ましくは、代謝疾患は糖尿病である。糖尿病は1型又は2型糖尿病であり得、好ましくは2型糖尿病である。
糖尿病は、主にインスリンの合成又は利用が体内でできないことに起因する高血糖濃度により特徴づけられる代謝状態である。高血糖症は、神経障害、失明、手足の切断、腎不全、網膜症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、糖尿病由来の壊疽、心臓発作、及び脳卒中を含む、数多くの臨床的合併症を引き起こす。
最も一般的な糖尿病の型は、インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)及び最多の型である2型糖尿病である。2型糖尿病の増加は主として肥満率の上昇による。現在、11億人を超える人々が過体重であると推定されており、そのうちおよそ3億2000万人は肥満である。
1型糖尿病は、インスリンを産生する膵臓のベータ細胞の破壊を引き起こす自己免疫疾患である。2型糖尿病は、インスリンの分泌量が不適切である(インスリン欠乏)あるいは血糖値抑制におけるインスリンの効果が弱められている(インスリン耐性又はインスリン抵抗性)状態である。
2型糖尿病発症についての病態生理は複雑で多因子性である。肥満、座りがちの生活習慣、及び/又は加齢は、インスリン抵抗性及び経年の血中インスリン濃度の増加を引き起こし得る。ある時点で血糖制御の喪失が現れ始め、耐糖能異常又は空腹時血糖異常を生じる。最終的に2型糖尿病になる場合がある。したがって、インスリン抵抗性、耐糖能異常、及び空腹時血糖異常は正常な糖恒常性と糖尿病の中間の代謝状態を表す。
代謝疾患の動物モデル:
代謝疾患、例えば、糖尿病、インスリン抵抗性、及び耐糖能異常についてのいくつかの動物モデルが当業者に知られている。上記に検討したように、C57Bl/6Jマウスモデルは、高脂肪食飼育によりヒトの代謝疾患を模倣可能であることから、動物に基づく研究に普通に用いられる。
1型糖尿病のモデルは、ベータ細胞の化学的アブレーション又は自己免疫疾患を発症するげっ歯類の育種により開発することができる。げっ歯類又は高等動物の化学的アブレーションは、例えばSTZ又はアロキサンを用いて達成することが可能である。1型糖尿病の自己免疫モデルは、NODマウス、BBラット、及びLEW.1AR1/−iddmラットを含む。加えて、遺伝的に誘導されたインスリン依存性糖尿病を有するAKITAマウスが、1型糖尿病のモデルとして使用され得る。例えば、ブタ及びカニクイザルなどの高等生物のモデルは、膵切除又はベータ細胞の化学的アブレーションの後、1型糖尿病のモデルとして用いられ得る。
2型糖尿病のモデルは通常インスリン抵抗性のモデルでもある。例えば、Lepob/obマウス、Lepdb/dbマウス、Zucker肥満及びZucker糖尿病肥満ラット、KKマウス、OLETFラット、New Zealand obeseマウス並びに同様のものなど、多くの2型糖尿病モデルは肥満である。2型糖尿病モデルは、例えばC57Bl/6Jマウスなど、高脂肪食で飼育することにより作り出すことも可能である。2型糖尿病の非肥満モデルはGoto−Kakizakiラット及びhIAPPマウスを含む。加えて、ネコ、イヌ、ブタ、及び昔のヒト以外の霊長類の2型糖尿病モデルが当業者に知られている。これらのモデル系は本発明の方法において用いられ得る。
当業者に知られている適切な動物モデルは、King et al.(King A.J.et al.(2012) Br.J.Pharmacol.166:877−94)が詳細に記載している。加えて、上記で検討されたMfn1−LKO及びMfn2−LKOマウスも代謝疾患の動物モデルとして用いられ得る。
細胞へのポリペプチド及びポリヌクレオチドの導入:
本発明で用いる薬剤はポリペプチド又はポリヌクレオチドであり得る。ポリヌクレオチド及びポリペプチドは、本発明の方法又はスクリーニングアッセイの部分として細胞内へ導入することが必要な場合がある。
本発明でポリペプチドを使用する場合、ポリペプチドは、直接(例えばポリペプチドそのものが投与され得る)、又は対象とする細胞でポリペプチドを発現させる条件下でポリペプチドをコードする核酸配列を細胞内に導入することによって投与され得る。核酸はベクターを用いて細胞内に導入され得る。
ベクターは、対象とする核酸をある環境から他の環境に移動させることのできる又は異動を容易にする道具である。本発明に従って、実施例の方法により、組換え核酸技術で使用されるいくつかのベクターは、核酸断片(例えば異種cDNA断片などの異種DNA断片)などの核酸配列を標的細胞内に運ぶことができる。ベクターは、細胞内で異種核酸(DNA又はRNA)を維持する、核酸断片を含むベクターの複製を容易にする、又は核酸断片によりコードされるタンパク質の発現を容易にする、といった目的のために用いられ得る。ベクターは非ウイルス性又はウイルス性であり得る。組換え核酸技術で用いられるベクターの例としては、限定されるものではないが、プラスミド、染色体、人工染色体、及びウイルスが挙げられる。ベクターは例えば核酸(例えばDNA)のみである場合もある。最も単純な形では、ベクターそのものが対象の核酸である場合がある。
本発明で用いられるベクターは、例えばプラスミド又はウイルスベクターであり得、ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター及び随意にプロモーターのレギュレーターを含み得る。
本発明で用いられるポリヌクレオチドを含むベクターは、形質転換及び形質導入などの当業者に知られている様々な技術を用いて細胞内へ導入され得る。例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、及び単純ヘルペスウイルスのベクターなどの組換えウイルスベクターを用いた感染、核酸の直接注入、及び遺伝子銃による形質転換など、いくつかの技術が当業者に知られている。
ウイルスによらない送達系としては、限定されるものではないが、DNA形質移入法が挙げられる。ここで、形質移入は、遺伝子を標的細胞へ送達するために非ウイルスベクターを用いるステップを含む。
ポリペプチド又はポリヌクレオチドの移動は、当業者に知られている、物理的又は化学的に細胞膜を透過可能にし得るいかなる方法によっても実施され得る。細胞内へポリペプチドを移動するために細胞浸透ペプチドを用いることも可能である。
ウイルスによらない送達系としては、限定されるものではないが、DNA形質移入の方法及びリン酸カルシウム沈殿が挙げられる。典型的な形質移入方法としては、電気穿孔法、DNA遺伝子銃、脂質を介した形質移入、凝縮させたDNAを介した形質移入、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、陽イオン試薬を介した形質移入、陽イオン性表面両親媒性物質(CFA)(Nature Biotechnology 1996 14;556)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
加えて、本発明は、例えばDNA修飾剤の送達など、遺伝子ターゲティングの手法を用いることが可能である。
ベクターは発現ベクターであり得る。本明細書で記載される発現ベクターは、転写可能な配列を有する核酸領域を含んでいる。したがって、mRNA、tRNA、及びrRNAをコードする配列がこの定義に含まれる。
好ましくは、発現ベクターは、コードする配列の宿主細胞による発現を可能とする制御配列に操作可能に連結された、本発明での使用のためのポリヌクレオチドを含む。コード配列に「操作可能」に連結された調節配列は、制御配列に適した条件下でコード配列の発現が達成されるような形で連結される。例えば制御配列により指示される転写量について転写を調節する因子への応答性をより高めるさらなる転写調節因子の付加によって、制御配列を修飾することが可能である。
ポリヌクレオチド:
本発明のポリヌクレオチドはDNA又はRNAを含み得る。それらは1本鎖又は2本鎖であり得る。遺伝暗号の縮重の結果、数多くの異なるポリヌクレオチドが同一のポリペプチドをコードし得ることは当業者に理解されるであろう。加えて、本発明のポリペプチドを発現するいかなる特定の宿主生物におけるコドン使用をも反映して、日常的な技術を用いて、本発明のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの配列に影響を与えずにヌクレオチドを置換することが、当業者に可能であることが理解されるべきである。
ポリヌクレオチドは、当該技術分野において実施可能な任意の方法によって修飾され得る。そのような修飾は、本発明のポリヌクレオチドの生体内での活性又は寿命を増強するために実行することができる。
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組換え技術、合成又は当業者により使用可能ないかなる手段によっても生産され得る。それらは標準的な技術によってクローン化され得る。
長いポリヌクレオチドは、一般的に組換え手法を用いて、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を用いて生産される。このような生産には、クローン化しようとする標的配列に隣接する1対のプライマーを作製するステップ(例えば約15から30ヌクレオチド)、例えば動物又はヒト細胞から得られたmRNA又はcDNAなどのmRNA又はcDNAとプライマーを接触させるステップ、所望の領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施するステップ、(例えばアガロースゲルで反応混合物を精製することによって)増幅断片を単離するステップ、及び増幅されたDNAを回収するステップを含むであろう。増幅したDNAを適切なベクターにクローン化できるように適切な制限酵素認識部位を含有するようにプライマーを設計することができる。
タンパク質:
本明細書で用いられる「タンパク質」という用語は、個々の構成ポリペプチドが共有結合又は非共有結合により連結されている複数ポリペプチドの複合体に加えて、単鎖ポリペプチド分子を含む。本明細書で用いられる「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、単量体がアミノ酸であり、ペプチド結合又はジスルフィド結合を通じて連結された重合体を表す。
多様体、誘導体、類似体、相同体、及び断片:
本明細書で言及される特定のタンパク質及びヌクレオチドに加えて、本発明は多様体、誘導体、類似体、相同体、及びこれらの断片をも包含する。
本発明の状況において、所与の任意の配列の多様体は、(アミノ酸又は核酸残基いずれでも)その特定の配列残基が、問題となるポリペプチド又はポリヌクレオチドが少なくとも1つの内在性機能を保持するような形で修飾されている配列である。多様体配列は、天然のタンパク質又はヌクレオチドに存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、交換、及び/又は多様化によって得ることが可能である。
本明細書で用いられる「誘導体」という用語は、本発明のタンパク質又はポリペプチドに関して、生じるタンパク質又はポリペプチドが少なくとも1つの内在性機能を保持している、1つ(以上)のアミノ酸残基からの又はアミノ酸配列へのいかなる置換、多様化、修飾、交換、欠失、及び/又は付加をも含む。
本明細書で用いられる「類似体」という用語は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドに関して、任意の模倣体を、すなわちそれが模倣するポリペプチド又はポリヌクレオチドの少なくとも1つの内在性機能を有する化学物質を含む。
典型的には、アミノ酸置換は、求められる活性又は能力を修飾配列が保持する場合に限り、例えば1、2又は3〜10又は20の置換からなるものであり得る。アミノ酸置換は非天然に生じる類似体の使用も含み得る。
本発明で用いられるタンパク質は、機能に影響しない変化をもたらし機能的に同等のタンパク質を生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を有することも可能である。内在性機能が保持されるならば、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性といった残基の性質の類似性に基づいて意図的にアミノ酸置換を行うこともできる。例えば、負電荷を有するアミノ酸はアスパラギン酸及びグルタミン酸を含み、正電荷を有するアミノ酸はリシン及びアルギニンを含み、同程度の親水性を有し非荷電の極性頭基を伴うアミノ酸はアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンを含む。
保存的置換は例えば下記表に従ってなされ得る。2列目の同じ区画内の、好ましくは3列目の同じ行内のアミノ酸は相互に置換可能である。
Figure 2017512068
「相同体」という用語は、野生型アミノ酸配列又は野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有するものを意味する。「相同性」という用語は「同一性」と等しいとすることができる。
本発明の状況において、相同配列は、対象の配列に対して少なくとも50%、55%、65%、75%、85%又は90%同一、好ましくは少なくとも95%又は97%又は99%同一であり得るアミノ酸配列を含むものとする。一般的に、相同体は、対象とするアミノ酸配列と同じ活性部位などを含むであろう。相同性は類似性(すなわち同様の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)と考えることも可能であるが、本発明の状況においては配列の同一性による相同性の方を好んで表す。
本発明の状況において、相同配列は、対象の配列に対して少なくとも50%、55%、65%、75%、85%又は90%同一、好ましくは少なくとも95%又は97%又は99%同一であり得るヌクレオチド配列を含むものとする。相同性は類似性と考えることも可能であるが、本発明の状況においては配列の同一性による相同性の方を好んで表す。
相同性比較は目視により、又はより普通には、容易に利用可能な配列比較プログラムの助けを借りて行うことが可能である。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同性又は同一性の百分率を算出することが可能である。
相同性の百分率は連続した配列に対して算出され得る。すなわち、1つの配列が他の配列と並べられ、1つの配列中のアミノ酸又はヌクレオチドの各々が、他の配列の対応するアミノ酸又はヌクレオチドと1残基ずつ直接比較される。これは「ギャップなし」アライメントと呼ばれる。通常、そのようなギャップなしアライメントは比較的短い残基数に対してのみ実施される。
これは非常に簡単で一貫性のある方法だが、例えば、アミノ酸又はヌクレオチド配列内に挿入又は欠失が1つあることを除いて他は同一である一対の配列で、1点の挿入又は欠失の後に続く残基又はコドンをアライメントから外してしまう可能性があることを考慮できず、したがって全体的なアライメントを行った場合に相同率が大きく低下する可能性がある。したがって、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティーを加算することなく、挿入及び欠失の可能性を考慮に入れた最適なアライメントを提示するよう設計されている。これは、局所的な相同性が最大となるように配列アライメントに「ギャップ」を挿入することによって達成される。
しかし、これらのより複雑な方法は、アライメントにおいて生じる各々のギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てるので、その結果、同一のアミノ酸又はヌクレオチドが同数である場合は、できるだけ少ないギャップを有し、比較している2つの配列間の関連性が高いことを示す配列のアライメントが、ギャップを多く有するものより高いスコアを獲得するであろう。ギャップの存在について比較的高いコストを加え、ギャップ中の残基に続くそれぞれの残基に小さなペナルティーを負わせる「アフィンギャップコスト」が、一般的に用いられる。これは最も普通に用いられるギャップ評価系である。ギャップペナルティーを高くすると、当然のことながら有するギャップがより少ない最適化アライメントが生じるであろう。ほとんどのアライメントプログラムで、ギャップペナルティーは変更可能である。しかし、そのようなソフトウェアを配列比較に用いる場合は初期設定の値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを用いる場合、アミノ酸配列についての初期設定のギャップペナルティーはギャップ当たり−12、各伸長当たり−4である。
したがって、最大の相同性の百分率を算出するためには、まずギャップペナルティーを考慮に入れた最適なアライメントの生成が必要である。そのようなアライメントを実施するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A.;Devereux et al.(1984) Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較の実施が可能な他のソフトウェアの例としては、限定されるものではないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.(1999)同前−18章参照)、FASTA(Atschul et al.(1990) J.Mol.Biol.403−410)及びGENEWORKSの比較ツール一式を含む。BLAST及びFASTAはいずれもオフライン及びオンラインでの検索が可能である(Ausubel et al.(1999)同前、7−58から7−60ページ参照)。しかし、いくつかの用途ではGCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST2 Sequenceと呼ばれる他のツールもタンパク質配列及びヌクレオチド配列の比較に利用可能である(FEMS Microbiol.Lett.(1999)174(2):247−50;FEMS Microbiol.Lett.(1999)177(1):187−8参照)。
最終的な相同性の百分率は同一性により測定することができるが、アライメント処理そのものは、通常、全か無かの対比較に基づいてはいない。その代わり、化学的な類似性又は進化的な距離に基づくそれぞれの対比較にスコアを割り当てる、スケール変換されたスコア行列が一般に用いられる。そのような普通に用いられる行列の例はBLOSUM62行列(BLASTプログラム一式の標準行列)である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に公開初期値又は提供されている場合はカスタムシンボル比較表のいずれかを用いる(より詳細には使用説明書参照)。いくつかの適用では、GCGパッケージの公開初期値、又は他のソフトウェアの場合はBLOSUM62のような標準行列を用いることが好ましい。
一旦ソフトウェアが最適なアライメントを生成すれば、相同性の百分率、好ましくは配列同一性の百分率を算出することが可能である。通常、ソフトウェアはこれを配列比較の部分として行い、数値で結果を生成する。
「断片」は多様体でもあり、その用語は一般に、機能的な意味で又は例えばアッセイにおいて関心対象となっているポリペプチド又はポリヌクレオチドの選択された領域を表す。したがって、「断片」は、完全長のポリペプチド又はポリヌクレオチドの一部分であるアミノ酸配列又は核酸配列を表す。
そのような多様体は、部位特異的突然変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を用いて調製することが可能である。挿入する場合、挿入部位の両側それぞれの天然の配列に対応する5’及び3’隣接領域と共に挿入をコードする合成DNAが作製され得る。その配列が適切な酵素で切断され切断物に合成DNAが連結され得るように、隣接領域には、天然の配列の部位に対応する便利な制限酵素切断部位を有するであろう。その後、DNAはコードされるタンパク質を作製するために本発明に従って発現される。これらの方法は、DNA配列を操作する当業者に知られている数多くの標準的な技術の例示に過ぎず、他の既知技術も用いられ得る。
本発明のマイトフュージン(例えばMfn1又はMfn2)のすべての多様体、断片、又は相同体は、ミトコンドリア融合をもたらすために結合する能力を保持しているであろう。
コドン最適化:
本発明で用いられるポリヌクレオチドはコドンの最適化がなされ得る。コドン最適化は、以前に国際公開第1999/041397号及び国際公開第2001/079518号に記載されている。異なる細胞では特定のコドンの使用に相違がある。このコドンの偏りは、細胞型における特定tRNAの相対量の偏りに対応している。対応するtRNAの相対量に合うよう配列中のコドンを変化させることによって発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型で稀であることがわかっているコドンを意図的に選択することによって発現を減少させることが可能である。このように、転写度合いを追加的に制御可能である。哺乳動物の細胞のコドン使用頻度は他の多様な生物と同様に当業者に知られている。
抗体:
本明細書で用いられる抗体は、選択された標的に結合可能であり、Fv、ScFv、F(ab’)、及びF(ab’)、モノクローナル及びポリクローナル抗体、キメラ、CDR移植、及びヒト化を含む設計された抗体、並びにファージディスプレイ又は代わりの技術を用いて生産された人工的に選択される抗体を含む、抗体全体又は抗体断片を表す。
加えて、本発明では、例えば「アビボディ」、「アビマー」、「アンチカリン」、「ナノボディ」及び「DARPin」など古典的抗体も使用され得る。
抗体の生産方法は当業者に知られている。あるいは、抗体は市販の供給源に由来するものでもよい。
ポリクローナル抗体が望ましい場合は、選択された哺乳動物(例えばマウス、ウサギ、ヤギ又はウマ)が免疫され得る。免疫された動物の血清を既知の手順に従って採取し処理することができる。血清が他の抗原に対するポリクローナル抗体を含有する場合は、そのポリクローナル抗体は免疫親和性クロマトグラフィにより精製され得る。ポリクローナル抗血清を生産し加工する技術は当業者に知られている。
本発明で用いられる抗原(例えばタンパク質)に対するモノクローナル抗体も当業者により容易に生産され得る。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論はよく知られている。不死化させた抗体産生細胞株は、細胞融合並びに腫瘍形成性のDNAによるB細胞の直接形質転換又はエプスタイン−バールウイルスを用いた形質移入などの他の技術によっても作製することが可能である。抗原に対して生産されたモノクローナル抗体の集団は、例えばアイソタイプ及び抗原決定基の親和性など様々な特性により選別され得る。
代わりの技術として、ファージが、外殻の表面上に、例えば多様な相補性決定領域(CDR)を有するscFv断片を発現する、ファージディスプレイのライブラリーをスクリーニングすることが含まれる。この技術は当業者に知られている。
抗原に対するモノクローナル及びポリクローナルいずれの抗体も診断において特に有益であり、中和するこれらの抗体は受動免疫療法に役立つ。モノクローナル抗体は、抗イディオタイプ抗体を生成するために特に用いられ得る。抗イディオタイプ抗体は、防御が望まれる感染因子である抗原の「内部イメージ」を有する免疫グロブリンである。
抗イディオタイプ抗体を生成するための技術は当業者に知られている。この抗イディオタイプ抗体は、抗原の免疫原性領域の解明に加えて処置にも有益であり得る。
処置の方法:
本明細書中の処置というすべての表現は治療的、緩和的及び予防的処置を含むと理解されるべきである。哺乳動物、特にヒトの処置が好ましい。ヒト及び獣医学的処置はいずれも本発明の範囲内である。
投与:
本発明で使用される薬剤は単独で投与され得るとしても、特にヒトの治療法において、それらは一般的には医薬担体、賦形剤又は希釈剤との混合物で投与されるであろう。いくつかの実施形態では、薬剤は栄養剤、食品添加物、又は食品成分であり、したがって適切な食品組成物に処方され得る。それ故、薬剤は、例えば食品製品、飲料、ペットフード製品、補助食品、機能性食品、又は栄養製剤で投与され得る。
用量:
当業者は、本発明の薬剤のうちの1つについて、過度の実験を行うことなしに、対象への投与のために適切な用量を容易に決定することが可能である。一般には、医師が個々の患者に最も適切な実際の用量を決定し、その用量は、用いる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用期間、齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の方法及び時期、排泄率、併用する薬剤、特定の状態についての重症度、並びに個々に受けている治療を含む様々な要因によるであろう。もちろん、より高い又はより低い用量範囲が優れている個別の場合があり得、そのような場合は本発明の範囲内にある。
診断のバイオマーカー及び方法:
試料:
診断及び予防の方法という面での「試料」は、対象に由来する試料を表すものとして本発明の範囲内にあると理解される。生体試料は、対象から直接得られるものであってもよいし、又は前記対象から得られた培養細胞に由来するものであってもよい。
スクリーニングアッセイという面での「試料」は、適切な細胞、細胞集団、動物モデル又はヒトを表すものとして本発明の範囲内にあると理解される。これらの試料は必ずしも対象に由来しなくてもよい。この面での試料は細胞株由来の細胞集団であり得る。
対象:
「対象」は、ヒト又はヒト以外の動物のいずれをも表す。ヒト以外の動物の例は、例えば、ヒト以外の霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、げっ歯類(例えばマウス、ラット又はモルモット)、ブタ及びネコといった哺乳動物などの脊椎動物を含む。好ましい実施形態において対象はヒトである。
実施例1. 一般的方法論:
材料:
特段の記載がない場合、PJ34を含むすべての化学物質はSigma−Aldrichから入手した。
動物実験:
純系C57Bl/6Jを背景とした雄のMfn1のfloxマウスが、IRB Barcelona(スペイン)のAntonio Zorzano教授により作成された。その後、肝特異的にMfn1遺伝子を欠失させたマウス(Mfn1−LKO)を育成するために、このマウスと、Creリコンビナーゼ酵素を発現するマウスを交配させた。flox動物が対照として用いられた。マウスは、水並びにげっ歯類の標準食(D12450J,Research diets Inc.,New Brunswick,NJ,USA)又は高カロリー、高脂肪食(脂肪60kcal、Research Diets,New Brunswick,NJ,USA)を自由に利用できる状態で収容し、12時間の明暗周期の下で飼育した。すべての動物実験は、現地国内及びEUの倫理指針に従って実施された。体重をモニタリングするために、マウスは各週同一曜日に計量し摂食量を測定した。すべての研究において、絶食(8:00開始)した場合は6時間後(14:00)に動物を屠殺し、下記に詳述するように組織の採取及び処理を行った。経口の耐糖試験及び腹腔内インスリン耐性試験は、以前(Lagouge et al,2006)に記載されている通りに決定した。そして、血漿インスリンは、ヘパリン添加血漿試料中で特異的なELISAキット(Mercodia)を用いて決定した。ヘパリンを入れた採血管に血液試料を採取し、遠心分離後に血漿を単離した。我々は、O消費量、CO生成量、及び自発運動量を、文献(Lagouge et al,2006)に記載されている通り、開放型間接熱量測定系(Sabre systems,Las Vegas,NV,USA)で24〜48時間にわたり測定した。エネルギー消費量は、エネルギー当量20.1J/mL Oを用いて算出した。呼吸商は、O消費量に対するCO生成量の比とした。運動量測定の間、ビームラインの横断は各々15分間についてまとめた。各15分間のビームライン横断の合計を時間に対してプロットし、各実験集団で平均的であった個々のマウスについてAUCを算出した。
mRNA解析:
製造者の指示に従ってTRIzol(Invitrogen)を用いて全RNAを調製した。RNAをDNA分解酵素で処理し、2mgのRNAを逆転写(RT)に用いた。cDNAはQIAquick PCR cleanupカラム(Qiagen,Valencia,CA,USA)で精製した。50倍希釈したcDNAを定量RT−PCR(RT−qPCR)反応に用いた(Lagouge et al,2006)。RT−qPCR反応は、Light−Cyclerシステム(Roche Applied Science)及びqPCR Supermix(Qiagen)を用いて、次のプライマーで実施した:ベータ−2−マイクログロブリン(ハウスキーピング遺伝子;F:TTCTGGTGCTTGTCTCACTG(配列番号5);R:TATGTTCGGCTTCCCATTCT(配列番号6));シクロフィリン(ハウスキーピング遺伝子:F:CAGGGGAGATGGCACAGGAG(配列番号7);R:CGGCTGTCTGTCTTGGTGCTCTCC(配列番号8));Mfn1(F:AGGGGACCGATGGAGATAAAG(配列番号9);R:AAGAGGGCACATTTTGCTTTG(配列番号10));Mfn2(F:ACGTCAAAGGGTACCTGTCCA(配列番号11);R:CAATCCCAGATGGCAGAACTT(配列番号12))。Mfn1及びMfn2の発現評価は2つの常発現遺伝子により補正した。
ミトコンドリアの単離、SDS−PAGE、ウェスタンブロット:
以前(Frezza et al,2007)に記載されている通り、ミトコンドリアの単離にはおよそ0.5mgの肝臓を用いた。最終的なミトコンドリア塊は、溶解緩衝液(50mM トリス、100mM KCl、1mM EDTA、1% NP40、5mM ニコチンアミド、1mM 酪酸ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤、pH7.4)に再懸濁された。タンパク質濃度はBCA protein assayキット(Thermo Scientific,Rockford,IL,USA)を用いて測定し、試料の希釈はタンパク質濃度が等しくなるよう調整した。タンパク質は、以前(Canto et al,2004)に記載されている通り、SDS−PAGEにより分離され、ニトロセルロース膜上に移された。
ウェスタンブロット解析に用いた抗体:
Mfn1、ポリン、及びOXPHOSのカクテル抗体はAbcam(Cambridge,UK)から購入し、OPA−1抗体はBD Biosciences(San Francisco,USA)から購入した。ペルオキシダーゼ標識した2次マウス及びウサギ抗体はSigma−Aldrichから購入した。
ミトコンドリアの呼吸:
ミトコンドリアの機能は、以前(Holmstrom et al,2012)に記載されている通り、呼吸測定器(Oroboros Oxygraph−2k;Oroboros Instruments,Innsbruck,Austria)を用いて評価された。摘出したばかりの1片の肝臓(約50mg)を計量し、弛緩液(2.8mM CaEGTA、7.2mM KEGTA、5.8mM ATP、6.6mM 塩化マグネシウム、20mM タウリン、15mM クレアチンリン酸ナトリウム、20mM イミダゾール、0.5mM ジチオスレイトール、及び50mM MES、pH7.1)に入れ、解剖処理の最後に、エッペンドルフ製の電動乳棒を用いて、200マイクロリットルの氷冷した呼吸測定液(0.5mM EGTA、3mM 塩化マグネシウム、60mM ラクトビオン酸カリウム、20mM タウリン、10 mM リン酸二水素カリウム、20mM HEPES、110mM ショ糖、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン、pH7.1)中でこの組織をゆっくり均質化した。その後、呼吸測定液の量は、0.1mg組織/マイクロリットルの濃度となるように調整した。そして、2mgの破砕物を呼吸チャンバに加えた。すべての測定は2回反復した。基質としてリンゴ酸(終濃度2mM)、グルタミン酸(20mM)、及びピルビン酸(10mM)を添加することによって、呼吸鎖の複合体Iからの基底酸素流量(漏出)を測定した。複合体I+IIを通って収束した電子の流れについて、ADP(5mM)とそれに続く複合体IIの基質であるコハク酸(10mM)の添加によって酸化的リン酸化を定量した。その後、プロトノフォアであるカルボニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(0.2μM)を滴下し、電子伝達系を介する最大流量を達成した。最後に、ロテノン(0.1μM)及びアンチマイシンA(2.5μM)をそれぞれ順次添加することにより、複合体I及びIIIからの電子伝達を阻害した。
統計解析:
動物試験の統計解析において、すべてのデータは正規分布することが確認された。有意性の評価のために、我々は独立標本のためのスチューデントのt検定を実施した。統計解析ソフトウェアは、GraphPad Prism 5(GraphPad Software,Inc.)を用い、すべてにおいてp値<0.05を有意とした。
実施例2. 肝特異的Mfn1欠失(Mfn1−LKO)は、全体的な外観、摂食量、身体活動又はエネルギー消費を変化させないが、全身の脂質酸化速度を促進する(表1):
16週齢のMfn1−LKO及び対照マウスで、身体組成を分析するためにエコーMRI解析(エコー核磁気共鳴画像解析)を行い、その直後から日々の活動及び摂食量を評価するためにCLAMS解析を実施した。マウスは24週齢で屠殺し、Mfn1及びMfn2の発現をRT−qPCRで分析するために肝臓から全mRNAを抽出した。
実施例3. Mfn1−LKOマウスの肝臓はより高い呼吸能を示す(表2):
対照及びMfn1−LKOマウスは24週齢で供試された。(A)実施例1の記載に従って全肝臓の破砕物を呼吸測定アッセイに用いた。すべての値は、対照マウスがn=11、Mfn1−LKOマウスがn=9の、平均+/−標準誤差(SEM)で表示されている。
実施例4. 標準食のMfn1−LKOマウスでは血糖制御に影響はない(図1):
(A)18週齢の雄性対照又はMfn1−LKOマウスに2g/kg体重で腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。(B)20週齢の雄性対照又はMfn1−LKOマウスに0.3U/kgのインスリンを腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。すべての値は、対照マウスがn=11、Mfn1−LKOがn=9の、平均+/−標準誤差(SEM)で表示されている。
実施例5. 高脂肪食飼育において、Mfn1−LKOマウスはより良い耐糖性及びインスリン感受性を示す(図2):
(A)10週齢の対照及びMfn1−LKOマウスを低脂肪食(LFD)又は高脂肪食(HFD)で飼育した。(A)体重の変化。(B)8週の高脂肪食飼育後にエコーMRIにより測定された身体組成。(C)高脂肪食の開始から10週後にマウスに2g/kg体重で腹腔内注入し、記載の期間で血糖量を追跡調査した。(D)高脂肪食開始後12週に老齢マウスは0.75U/kgのインスリンを腹腔内注入され、記載の期間で血糖量が追跡調査された。曲線上面積(AOC)値は右に示されている。すべての値は、対照マウスがn=10、Mfn1−LKOがn=10の、平均+/−標準誤差(SEM)で表示されている。*は、それぞれの対照マウスに対する統計的有意差をp<0.05で示している。
実施例6. メトホルミンの低血糖への影響はMfn1−LKOマウスで増強される:
メトホルミンは、ビグアニド類の経口抗糖尿病薬であり、特に腎機能が正常である体重過剰及び肥満の個体における2型糖尿病処置の第1選択薬である。メトホルミンは、インスリン抵抗性が重要因子となり得る疾患においても利用される。メトホルミンは、肝臓によるブドウ糖産生を抑制することによって作用する。メトホルミンは、インスリン又は他の医薬との組み合わせで処方されることもある。
図3に見られるように、メトホルミンの低血糖への影響はMfn1−LKOマウスで増強される。12週齢の対照及びMfn1−LKOマウスは、高脂肪食(D12492,Research Diets Inc.,USA)で8週間飼育した。その後、マウスを一晩絶食させ、生理食塩水(溶媒として)又はメトホルミン(125mg/kg)いずれかを注入し、記載の時点で血糖量を追跡調査した。すべての値は、各群n=10のマウスの平均+/−標準誤差(SEM)で表されている。*は、対照マウスとMfn1−LKOマウスとの間の統計的有意差をp<0.05で示している。
実施例7. メトホルミン注入によりMfn1−LKOマウスにおいて促進されたAMPK活性化:
12週齢の対照及びMfn1−LKOマウスを高脂肪食(D12492,Research Diets Inc.,USA)で8週間飼育した。その後、マウスを一晩絶食させ、生理食塩水(溶媒として)又はメトホルミン(125mg/kg)いずれかを注入した。マウスは90分後に屠殺し、直後に肝臓を摘出し凍結させた。タンパク質抽出物を得、AMPK活性化の指標であるCRTC2、eIF2アルファ及びGAPDHを検査するためにウェスタンブロット解析に用いた。測定されたAMPK活性化指標が表すように、対照マウスに比較してMfn1−LKOマウスは促進されたAMPK活性化を示した。
実施例8. 野生型及びMfn1−LKOマウスにおけるメトホルミンによるミトコンドリア呼吸の阻害:
ミトコンドリアの呼吸を測定する方法は上記実施例1に記載されている。野生型及びMfn1−LKOマウスから抽出したてのミトコンドリアを呼吸測定液に再懸濁し、100μgのタンパク質を呼吸測定解析に用いた。複合体Iの活性はリンゴ酸及びグルタミン酸の添加により刺激した。その後、最大共役呼吸を達成するためにADPを添加し、続いてメトホルミンの効果を評価した。図4の棒グラフは、呼吸の絶対量を各遺伝子型について4つのミトコンドリア調製物の平均+/−標準誤差(SEM)で示している。*は、野生型及びMfn1−LKO間の、p<0.05の統計的有意差を示している。下の表は、異なるメトホルミン用量での最大呼吸に対する残存の百分率を表している。
一般に、メトホルミンの作用は複合体Iの阻害が主要な原因だと考えられているが、未だ十分には理解されていない(Metformin:From Mechanisms of Action to Therapies,Foretz et al.,2014,Cell Metabolism;DOI:10.1016/j.cmet.2014.09.018)。この実施例で示されたように、メトホルミン投与後、ミトコンドリア複合体Iの呼吸はMfn1−LKOマウスで対照マウスより強く阻害される。
表1:
対照及びMfn1−LKOマウスの全体的な外観及びエネルギー消費のパラメータ。すべての値は、対照マウスがn=11、Mfn1−LKOマウスがn=9の平均+/−標準誤差(SEM)で表されている。
Figure 2017512068
表2:
対照及びMfn1−LKOマウスの肝臓における呼吸値(pmol/(秒×mg組織))。値は、アンチマイシン−A(複合体III阻害剤)添加後に残った残存呼吸を引いた後の正味の呼吸速度である。すべての値は、対照マウスがn=11、Mfn1−LKOマウスがn=9の平均+/−標準誤差(SEM)で表されている。
Figure 2017512068
参考文献:
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上記明細書で言及したすべての出版物は参照により本明細書に組み入れられる。本発明の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本発明についての記載された方法の様々な変更及び変形は、当業者にとって明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記載されてきたが、請求されている本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、生化学及び生物工学、又は関連分野において技術を有する者にとって明白である本発明実施のための記載形態の様々な変更は、以下の請求項の範囲内にあることが意図されている。

Claims (26)

  1. マイトフュージン−1(Mfn1)に結合可能な薬剤を同定する方法であって、Mfn1ポリペプチドを提供するステップ、及び前記Mfn1ポリペプチドと候補薬剤との結合を検出するステップを含む方法。
  2. Mfn1の活性を調節する薬剤を同定するための方法であって、Mfn1ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドと候補薬剤とを含む調製物を提供するステップ、及び前記候補薬剤が前記Mfn1ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドの活性に影響するか否かを検出するステップを含む方法。
  3. Mfn1の活性が、Mfn1のGTPアーゼ活性を決定することによって測定される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記候補薬剤をGTP存在下で前記Mfn1ポリペプチドと接触させるステップ、及びGDPへのGTPの加水分解を測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
  5. Mfn1の活性を調節することが可能な薬剤であって、マイトフュージン−2(Mfn2)の活性を調節しない薬剤を同定するための方法である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. Mfn2の活性が、Mfn2のGTPアーゼ活性を決定することによって測定される、請求項5に記載の方法。
  7. Mfn1の活性を減少させる薬剤を同定するための方法である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. Mfn1とGTPとの相互作用を調節することが可能な化合物を同定する方法であって、
    d)Mfn1ポリペプチドを提供するステップ、
    e)GTP分子を提供するステップ、及び
    f)候補薬剤の存在下で前記Mfn1ポリペプチドと前記GTP分子との結合を検出するステップ
    を含む方法。
  9. Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングを調節する薬剤を同定するための方法であって、Mfn1ポリペプチドを発現する細胞を候補薬剤と接触させるステップ、及び前記Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングの増減をモニタリングするステップを含む方法。
  10. Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングを減少させる薬剤を同定するための方法である、請求項9に記載の方法であって、Mfn1ポリペプチドを発現する細胞を候補薬剤と接触させるステップ、及び前記Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングの減少をモニタリングするステップを含む方法。
  11. Mfn1ポリペプチドの発現又はプロセシングを減少させる薬剤であって、Mfn2ポリペプチドの発現又はプロセシングを調節しない薬剤を同定するための方法である、請求項9に記載の方法。
  12. Mfn1関連疾患の症状を予防、調節、減少又は改善する薬剤を同定するための方法である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 代謝疾患の症状を予防、減少又は改善する薬剤を同定するための方法である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 代謝疾患の症状を予防、調節、減少又は改善する薬剤を同定する方法であって、Mfn1活性を調節するものとして同定された薬剤を前記代謝疾患の動物モデルに投与するステップ、及び前記動物モデルにおける前記代謝疾患の進行を観察するステップを含む方法。
  15. 前記候補薬剤が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法を用いて同定される、請求項14に記載の方法。
  16. 前記代謝疾患が、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記薬剤が、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、又は小分子である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 代謝疾患の処置又は予防における使用のための、Mfn1の活性を調節することが可能な薬剤。
  19. 代謝疾患の処置における使用のための請求項18に記載の薬剤であって、Mfn1の活性を減少させることが可能な薬剤。
  20. 代謝疾患の処置における使用のための請求項17〜19のいずれか一項に記載の薬剤であって、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は小分子からなる群から選択される薬剤。
  21. 代謝疾患の処置における使用のための請求項17〜19のいずれか一項に記載のsiRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、又はポリペプチドをコードするベクター。
  22. 代謝疾患の処置における使用のための請求項17〜21のいずれか一項に記載のベクター又は薬剤であって、前記代謝疾患が、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択される、ベクター又は薬剤。
  23. 代謝疾患を予防又は処置する薬剤をスクリーニングする方法における、Mfn1ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。
  24. 代謝疾患のバイオマーカーとしての、Mfn1ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。
  25. 対象における代謝疾患又は該疾患の素因を診断する方法であって、対象から得られた試料におけるMfn1の発現レベルを測定することを含む方法。
  26. 前記代謝疾患が、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び糖尿病からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
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