JP2017507969A - がん幹細胞標的化合物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、がん幹細胞の増殖阻害または除去のための、式Iの化合物、組成物、それらの使用、ならびに方法を提供し、がん幹細胞の根絶または増殖阻害には、がん幹細胞の死滅、および/またはがん幹細胞におけるアポトーシス誘導が含まれる。上記化合物、組成物、それらの使用および方法の範囲には、がん幹細胞の増殖を選択的に根絶または阻害するものが含まれる。【化1】

Description

本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去において、がん幹細胞を標的とするための化合物、組成物、およびそれらの使用に関する。本発明はまた、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法に関する。
WHOによればがんは差し迫った「人類の災害」であり、今後20年間でがん患者は全世界で57%も急増すると予測されている。全世界のがん罹患率はたった4年間で、2008年の1270万人から2012年の新規患者数の1410万人に増加し、そのうち死亡は820万人だった。WHOのがん専門機関の作成した世界がん報告書によれば、新規がん患者数は2012年の年間推定数1400万人から20年後には2200万人にまで増加すると予測されている。同期間内のがんによる死亡数は年間820万人から1300万人に増加すると予測されている。しかしながら、従来法のみならず、現在のがん治療のための手法にも劇的な変化は認められず、生存率の改善につながることはなかった。このような限界の理由は、他の因子も存在するものの、急速に成長し、腫瘍の塊を形成する細胞を基本的に標的とする手法にあると考えられる。こういった手法は、腫瘍やがん細胞の発生の根本的な原因とみられるがん幹細胞を標的としていない。さらに、化学療法薬、放射線療法およびその他の療法を使用してもがん幹細胞は生き延び、「第一選択」治療に対する耐性を獲得した「二次」腫瘍をもたらすと考えられている。療法に対してより高い耐性を持つ「二次」腫瘍を完全に取り除くのは非常に困難であり、更なる療法が難しくなる。
このように上述のアプローチには、白血病幹細胞を含むがん幹細胞を標的とすることができない故に有効性に乏しいという欠点だけではなく、従来の化学療法、および、より新しい標的療法に対する耐性の問題、さらに患者におけるがんの再発や再燃という問題に対応できないという欠点がある。このようにがん幹細胞を選択的に標的としうる化合物または療法が必要とされているが、いまだに確立されていない。
一実施形態において、本発明は、下記一般式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される誘導体を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物または水和物を含むその薬学的に許容される誘導体である、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための化合物を提供する。
[式中、
、RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル基、−CN、−NO、−R、−OR、−SR、−N(R)、−N(R)NR、−C(NR)NR、−N(R)C(O)R、C(O)RN(R)、−N(R)C(O)N(R)、−N(R)C(O)OR、−OC(O)N(R)、−N(R)SOR、−SORN(R)、C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−C(O)OR、−S(O)R、および−SORから選択され、
Rはそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよい基であり、前記基はC1〜6脂肪族基、3〜12員の飽和もしくは部分不飽和単環式炭素環、フェニル基、8〜12員の二環式芳香族炭素環、それぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜2個のヘテロ原子を有する4〜8員の飽和もしくは部分不飽和単環式複素環式環、それぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の単環式複素芳香環、およびそれぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜5個のヘテロ原子を有する8〜10員の二環式複素芳香環から選択され、
nは独立に0〜5である。特定の実施形態では、nは、1〜4である。いくつかの実施形態では、nは、1〜3である。さらにその他の実施形態では、nは、1〜2である。いくつかの実施形態では、nは、0、1、2、3、4または5である。]
本発明の化合物は、上記で一般的に記載されるものを含み、本明細書に開示されるクラス、サブクラスおよび分子種によってさらに例示される。本発明の化合物を説明するために上記で使用した種々の用語および専門用語、ならびに本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、標準的な定義もしくは意味、または化学分野もしくは技術分野において使用されるような定義もしくは意味、または本発明が属する技術分野における当業者によって知られているか、当業者の間で共通に理解される定義もしくは意味と、同一であるか、それらを意味するか、もしくはそれらを参照するものである。
本発明の化合物は、「置換されていてもよい」部分を含有してもよい。一般に、用語「置換されて」は、用語「いてもよい」が続くか否かにかかわらず、指定された部分の1または複数の水素が、適切な置換基で置き換えられていることを意味する。特に断りのない限り、「置換されていてもよい」基は、基のそれぞれ置換可能な位置に適切な置換基を有してもよく、任意の構造において2以上の位置が、特定の群から選択される2つ以上の置換基によって置換されてもよい場合には、すべての位置の置換基が同一であっても、異なっていてもよい。本発明において想定される置換基の組合せは、安定な化合物、または化学的に容易な化合物の形成をもたらすものであることが好ましい。
特定の実施形態において、1または複数の置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素脂環、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、エステル基、アルキルスルホン基、アリールスルホン基、シアノ基、ハロ基、アルコイル基、アルコイルオキソ基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、フルオロアルキル基、アミノ基、アルキル−アミノ基、ジアルキル−アミノ基、およびアミド基から選択される。
特定の実施形態において、本発明は下記式IIで表される化合物の薬学的に許容される誘導体を提供する。
一実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための、式Iで表される化合物、あるいは式IまたはIIで表される化合物の塩、溶媒和物または水和物を含む、その薬学的に許容される誘導体を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、治療上有効な量の、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体と、担体、補助剤、ビヒクルもしくはそれらの混合物を含む薬学的に許容される賦形剤とを包含する組成物を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための、式IIで表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体と、担体、補助剤、もしくはビヒクルを含む薬学的に許容される賦形剤とを包含する組成物を提供する。好ましい誘導体は薬学的に許容されるエステルまたはエステルの塩であってもよい。
本発明の組成物中の化合物の量は、生体サンプルにおいてまたはそれを必要とする対象において、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去に有効であるような量である。特定の実施形態においては、組成物中の化合物の量は、生体サンプルまたはそれを必要とする対象において、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去を測定可能な程度に達成するのに有効な量である。特定の実施形態において、組成物は、生物学的に有効な用量と最大耐用量との間の量で、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、エステルもしくはエステルの塩を含んでもよい。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、それを必要とする対象への投与のために製剤化され得る。
本発明の組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、口腔投与、経膣投与または埋め込まれたリザーバーによる投与に適切な投与剤形に製剤化され得る。本発明の組成物は、液体投与剤形、固体投与剤形および半固体投与剤形を含む、投与剤形に製剤化され得る。本明細書における「非経口」という用語には、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術が含まれる。組成物は、経口、静脈内にまたは腹膜内に投与されることが好ましい。
一実施形態において、一般式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩、またはその組成物は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のために使用されてもよく、それによって、関連する障害、疾患または病態を治療する。したがって、提供される化合物は、血液がんおよび固形腫瘍に限定されることのないがんを治療するために有用であり得る。
特定の実施形態において、式IIで表される化合物またはその薬学的に許容される塩またはその組成物は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のために使用されてもよく、それによって、関連する障害、疾患または病態を治療する。したがって、提供される化合物は、血液がんおよび固形腫瘍に限定されることのないがんを治療するために有用である。
別の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、一般式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、式IIで表される化合物またはその薬学的に許容される塩、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
一実施形態によれば、本発明は、生体サンプル内のがん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、前記生体サンプルを式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物と、有効な量で、接触させることを含む方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、生体サンプル内のがん細胞またはがん幹細胞を死滅させるための方法であって、前記生体サンプルを式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物と、有効な量で、接触させることを含む方法に関する。
もう1つの実施形態において、本発明は、がん幹細胞に関連する障害、疾患または病態の治療方法であって、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞媒介性の障害の治療を必要とする患者において行うための方法であって、前記患者に、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物を、有効な量で、投与することを含む方法を提供する。このような障害は、がん、がんの再発もしくは再燃、またはその他の増殖性疾患を含む。
特定の実施形態において、本発明は、がんの緩解につながる、患者におけるがん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、前記患者に、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物を、有効な量で、投与することを含む方法に関する。
いくつかの実施形態において、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物は、有効な量で、がんまたはその他の増殖性障害の治療方法に使用してもよい。いくつかの実施形態において、本発明は、がんまたはその他の増殖性障害を治療するための方法であって、本発明の化合物または組成物を、がんまたはその他の増殖性障害を患う患者に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物は、有効な量で、ヒト患者においてがんを治療するために使用されてもよく、当該がんは、患者の前立腺、乳房、頸部、結腸、皮膚、肝臓、胃、膵臓、腎臓、卵巣、肺、精巣、陰茎、甲状腺、上皮小体、下垂体、胸腺、網膜、ブドウ膜、結膜、脾臓、頭部、気管、胆嚢、直腸、唾液腺、副腎、咽頭、食道、リンパ節、汗腺、皮脂腺、筋肉、心臓、脳、血液または骨髄に発生したものである。
治療される特定の病態または疾患に応じて、その病態を治療するために通常投与される追加治療薬が、本発明の化合物および組成物と組み合わせて投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の提供する化合物またはその組成物は、1または複数のその他の化学療法薬と組み合わせて投与される。
本発明の化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、PC3の一次スフィアに対し、シスプラチンよりも強い抗がん効果を有することを示すグラフである。 当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、DU145の一次スフィアに対し、シスプラチンよりも強い抗がん効果を有することを示すグラフである。 当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、MDA MBの一次スフィアに対し、シスプラチンよりも強い抗がん効果を有することを示すグラフである。 抗CD44−PE標識抗体および抗CD24−FITC標識抗体を用いて染色した、薬物処理を行わないPC3細胞のFACS結果の4象限プロットであり、85.61%の細胞にCD44が発現し(UL)、CSC、即ちがん幹細胞様細胞、が豊富な集団であることを示す。 IC25となる薬物濃度のシスプラチンに48時間曝露したPC3細胞のFACS結果の4象限プロットであり、IC25となる薬物濃度のシスプラチン曝露が、PC3細胞内のCD44集団に対して大きな効果を示さない、即ちシスプラチンが、がん幹細胞に対してそれほど有効ではないことを示す。 IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに48時間曝露したPC3細胞のFACS結果の4象限プロットである。IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに曝露したPC3細胞は、CD44領域から共発現領域へのほぼ完全なシフトとなる劇的な効果をCD44集団に対して示し、これは、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、PC3細胞内のがん幹細胞に対して作用することを意味する。 エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、PC3内のがん幹細胞に対し、標準的な治療薬物であるシスプラチンよりも強い活性を持つことを示す棒グラフである。 抗CD44−PE標識抗体および抗CD24−FITC標識抗体を用いて染色した、薬物処理を行わないDU145細胞のFACS結果の4象限プロットであり、当該プロットにおいて70.18%の細胞がCD44を発現し(UL)、がん幹細胞の豊富な集団であることを示す。 IC25となる薬物濃度のシスプラチンに48時間曝露したDU145細胞のFACS結果の4象限プロットであり、IC25となる薬物濃度のシスプラチン曝露が、PC3細胞内のCD44集団に対して大きな効果を示さない、即ちシスプラチンが、がん幹細胞に対してそれほど有効ではないことを示す。 IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに48時間曝露したDU145細胞のFACS結果の4象限プロットであり、IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに曝露したDU145細胞は、CD44領域から共発現領域へのほぼ完全なシフトであるCD44集団に対する劇的な効果を示し、これはエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、DU145細胞内のがん幹細胞に対して作用することを意味する。 エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、DU145内のがん幹細胞に対し、標準的な治療薬物であるシスプラチンよりも強い活性を持つことを示す棒グラフである。
本発明は、がん幹細胞の死滅および/またはアポトーシス誘導を含む、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための、化合物、組成物、それらの使用、および方法を提供する。このような化合物、組成物、それらの使用、および方法の範囲には、正常幹細胞またはその他の正常細胞と比べてがん幹細胞を選択的に死滅および/またはアポトーシス誘導も含む、増殖停止もしくは阻害、または除去するためのものも含まれる。
がん幹細胞は、腫瘍内のがん細胞のわずかな割合を占めるにすぎないことが報告されてきた。がん幹細胞は、その遅い成長速度および遅い複製速度故に、がんの中でも最も根絶しにくい細胞であると考えられている。がんやその他の細胞を取り除いた後に残った残存がん幹細胞は、その後に複製して新たながん細胞を発生させることができる。治療の後には寛解期があり、その後、再発期へと続くことがある。がん幹細胞を阻害または除去することで、がん再発の可能性をなくす、あるいは減らすことができる。さらに、本発明の化合物のようにがん幹細胞を選択的に停止、阻害または除去する化合物で治療することで、適応(耐性)の可能性を減らすことができる。
一実施形態において、本発明は、下記一般式Iを有する化合物またはその薬学的に許容される誘導体を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための、式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物または水和物を含むその薬学的に許容される誘導体を提供する。
[式中、
、RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル基、−CN、−NO、−R、−OR、−SR、−N(R)、−N(R)NR、−C(NR)NR、−N(R)C(O)R、C(O)RN(R)、−N(R)C(O)N(R)、−N(R)C(O)OR、−OC(O)N(R)、−N(R)SOR、−SORN(R)、C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−C(O)OR、−S(O)R、および−SORから選択され、
Rはそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよい基であり、前記基はC1〜6脂肪族基、3〜12員の飽和もしくは部分不飽和単環式炭素環、フェニル基、8〜12員の二環式芳香族炭素環、それぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜2個のヘテロ原子を有する4〜8員の飽和もしくは部分不飽和単環式複素環式環、それぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の単環式複素芳香環、およびそれぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜5個のヘテロ原子を有する8〜10員の二環式複素芳香環から選択され、
nは独立に0〜5である。特定の実施形態では、nは、1〜4である。いくつかの実施形態では、nは、1〜3である。さらにその他の実施形態では、nは、1〜2である。いくつかの実施形態では、nは、0、1、2、3、4または5である。]
本発明の化合物は、上記で一般的に記載されるものを含み、本明細書に開示されるクラス、サブクラスおよび分子種によってさらに例示される。本発明の化合物を説明するために上記で使用した種々の用語および専門用語、ならびに本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、標準的な定義もしくは意味、または化学分野もしくは技術分野において使用されるような定義もしくは意味、または本発明が属する技術分野における当業者によって知られているか、当業者の間で共通に理解される定義もしくは意味と、同一であるか、それらを意味するか、もしくはそれらを参照するものである。
本発明の化合物は、「置換されていてもよい」部分を含有してもよい。一般に、用語「置換されて」は、用語「いてもよい」が続くか否かにかかわらず、指定された部分の1または複数の水素が、適切な置換基で置き換えられていることを意味する。特に断りのない限り、「置換されていてもよい」基は、基のそれぞれ置換可能な位置に適切な置換基を有してもよく、任意の構造において2以上の位置が、特定の群から選択される2つ以上の置換基によって置換されてもよい場合には、すべての位置の置換基が同一であっても、異なっていてもよい。本発明において想定される置換基の組合せは、安定な化合物、または化学的に容易な化合物の形成をもたらすものであることが好ましい。
特定の実施形態において、1または複数の置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素脂環、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、エステル基、アルキルスルホン基、アリールスルホン基、シアノ基、ハロ基、アルコイル基、アルコイルオキソ基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、フルオロアルキル基、アミノ基、アルキル−アミノ基、ジアルキル−アミノ基、およびアミド基から選択される。
「アルキル基」とは、脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基という場合、「飽和アルキル基」および/または「不飽和アルキル基」を含む。アルキル基は、飽和であれ不飽和であれ、分岐した基、直鎖基、または環状基を含む。単なる例として、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、およびヘキシル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「ヘテロアルキル」基においては、アルキル基の炭素の任意の一つが、適切な数の水素が結合したヘテロ原子で(例えばCH基がNH基やOで)置換されている。
「アルコキシ」基は、(アルキル)O−基を指し、アルキル基は本明細書中で定義した通りである。
「アルキルアミン基」という用語は、−N(アルキル)基を指し、アルキル基は本明細書中で定義した通りであり、xおよびyは、x=1、y=1およびx=2、y=0からなる群から選択される。x=2である場合には、アルキル基は、当該基に結合した窒素原子とともに環状の環系を形成してもよい。
「アミド基」は、−C(O)NHRまたは−NHC(O)Rの式で表される化学部分であり、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、(環中の炭素を介して結合している)ヘテロアリール基および(環中の炭素を介して結合している)複素脂環から選択される。
「エステル基」という用語は、−C(=O)ORの式で表される化学部分を指し、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および複素脂環からからなる群から選択される。
「炭素環」または「炭素環式基」という用語は、環を形成する原子がそれぞれが炭素である環を指す。炭素環式基は、アリール基およびシクロアルキル基を含む。従って、この用語により炭素環式基は、環骨格が炭素と異なる少なくとも1の原子(即ちヘテロ原子)を含む複素環式基(「複素環」)から区別される。複素環式基はヘテロアリール基およびヘテロシクロアルキル基を含む。本明細書に開示される炭素環式基と複素環式基は置換されていてもよい。
本明細書で使用する「アリール基」という用語は、環を形成する原子のそれぞれが炭素原子である芳香族環を指す。本明細書に開示されるアリール環は、炭素原子の数が5、6、7、8、9または9超である環を含む。アリール基は置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル基およびナフタレニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「シクロアルキル基」という用語は、環を形成する原子(即ち骨格原子)のそれぞれが炭素原子である単環式または多環式の非芳香族基を指す。種々の実施形態において、シクロアルキル基は飽和、もしくは部分不飽和である。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は芳香族環と縮合している。シクロアルキル基には、3〜10の環原子を有する基が含まれる。シクロアルキル基の具体的な例には以下の部分などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
単環式シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「複素環式基」という用語は、O、SおよびNからそれぞれ選ばれる1〜4の環ヘテロ原子を有する複素芳香族基および複素脂環式基を指す。場合によっては、それぞれの複素環式基はその環構造に4〜10の原子を有するが、但し、その環は隣り合う2のO原子またはS原子を含まない。非芳香族複素環式基には、その環系内に3の原子を有する基が含まれるが、芳香族複素環式基はその環系内に少なくとも5の原子を有していなければならない。複素環式基には、ベンゾ縮合環構造が含まれる。3員の複素環式基の例としては、(アジリジンから誘導される)アジリジニル基がある。4員の複素環式基の例としては、(アゼチジンから誘導される)アゼチジニル基がある。5員の複素環式基の例としては、チアゾリル基がある。6員の複素環式基の例としては、ピリジル基があり、10員の複素環式基の例としては、キノリニル基がある。非芳香族複素環式基の例としては、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、ジヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、チオキサニル基、ピペラジニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、ホモピペリジニル基、オキセパニル基、チエパニル基、オキサアゼピニル基、ジアゼピニル基、チアゼピニル基、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル基、2−ピロリニル基、3−ピロリニル基、インドリニル基、2H−ピラニル基、4H−ピラニル基、ジオキサニル基、1,3−ジオキサラニル基、ピラゾリニル基、ジチアニル基、ジチオラニル基、ジヒドロピラニル基、ジヒドロチエニル基、ジヒドロフラニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、3−アザビシクロヘキサニル基、3−アザビシクロヘプタニル基、3H−インドリル基およびキノリジニル基が挙げられる。芳香族複素環式基の例としては、ピリジニル基、イミダゾリル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピラジニル基、テトラゾリル基、フリル基、チエニル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イソチアゾリル基、ピロリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、シンノリニル基、インダゾリル基、インドリジニル基、フタラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、イソインドリル基、プテリジニル基、プリニル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フラザニル基、ベンゾフラザニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、およびフロピリジニル基が挙げられる。
「ヘテロアリール基」あるいは「複素芳香族基」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選ばれる1以上の環ヘテロ原子を含むアリール基を指す。特定の実施の形態において、ヘテロアリール基は単環または多環である。ヘテロアリール基の具体的な例としては、以下の部分などが挙げられる。
「複素脂環式」基あるいは「ヘテロシクロアルキル」基とは、シクロアルキル基であって、1以上の骨格環原子が、窒素、酸素および硫黄から選ばれるヘテロ原子である、シクロアルキル基を指す。種々の実施形態において、ラジカルである前記基は、アリール基またはヘテロアリール基を有する。ヘテロシクロアルキル基は非芳香族複素環式基ともいうが、具体的な例としては、以下に記載のものなどが挙げられる。
複素脂環という用語には、炭水化物の全ての環形も含まれ、その例として単糖、二糖およびオリゴ糖が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「ハロ基」、あるいは「ハロゲン」という用語は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基およびヨード基を意味する。
「ハロアルキル基」および「ハロアルコキシ基」という用語は、1以上のハロゲンで置換されたアルキル構造およびアルコキシ構造を含む。実施形態において、2以上のハロゲンが置換基中に含まれる場合には、そのハロゲンは、同じであるかまたは異なる。
「ヘテロアルキル基」という用語は、置換されていてもよいアルキルラジカル、アルケニルラジカルおよびアルキニルラジカルであって、炭素以外の原子、例えば酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素およびこれらの組み合わせから選択される骨格鎖原子を1以上有する基を含む。特定の実施形態において、ヘテロ原子はヘテロアルキル基の内側の位置に配置される。例として、−CH−O−CH、−CH−CH−O−CH,−CH−NH−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−N(CH)−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH=CH−N(CH)−CHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、最大2のヘテロ原子が連続しており、例として−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHが挙げられる。
「シアノ」基とは、−CN基を指す。
「イソシアナト」基とは、−NCO基を指す。
「チオシアナト」基とは、−CNS基を指す。
「イソチオシアナト」基とは、−NCS基を指す。
「アルコイルオキシ」基とは、RC(=O)O−基を指す。
「アルコイル」基とは、RC(=O)−基を指す。
本明細書において、用語「薬学的に許容される塩」とは、堅実な医学的判断の範囲内において、ヒトおよび下等動物の組織との接触において過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などを伴うことなく使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に対応する塩を指す。本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、適切な無機および有機の酸および塩基に由来するものが挙げられる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例としては、アミノ基の塩が挙げられ、これは塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸や過塩素酸などの無機酸を用いて、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸やマロン酸などの有機酸を用いて、またはイオン交換などの当技術分野で使用されるその他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。例示的な薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
適切な塩基から誘導した塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。塩となる代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容される塩としては、適切な場合には、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成される、非毒性のアンモニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオンおよびアミンカチオンが挙げられる。
特に断りのない限り、本明細書に示した構造は、当該構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体(または配座異性体))の構造をも含むことを意図し、例えば、各不斉中心に対するRおよびS立体配置、ZおよびE二重結合異性体ならびにZおよびE配座異性体を含むものとする。したがって、本化合物の単一の立体化学的異性体のみならず、その鏡像異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体(または配座異性体)の混合物も、本発明の範囲内である。特に断りのない限り、本発明の化合物のすべての互変異性体は、本発明の範囲内である。さらに、特に断りのない限り、本明細書に示した構造は、1種または複数種の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物をも含むものとする。例えば、本発明の構造の水素を重水素またはトリチウムで置き換えたもの、または炭素を13Cまたは14C濃縮炭素で置き換えたものも、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、本発明において、分析ツール、生物学的アッセイ用プローブ、または治療薬として有用である。特定の実施形態では、提供される化合物のウォーヘッドとなる部分であるRは、1または複数の重水素原子を含む。
一実施形態において、式Iの化合物は、下記式IIの化合物ではない。特定の実施形態において、本発明は、式IIで表される化合物の薬学的に許容される誘導体を提供する。
一実施形態において、本発明は、式Iで表される化合物、あるいは式IまたはIIで表される化合物の塩、溶媒和物または水和物を含む薬学的に許容される誘導体である、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための化合物を提供する。
一実施形態において、本発明は、下記式IIIまたはIVを有する化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、治療上有効な量の、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体と、担体、補助剤、ビヒクルもしくはそれらの混合物を含む薬学的に許容される賦形剤と、を包含する組成物を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための、式IIで表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体と、担体、補助剤、もしくはビヒクルを含む薬学的に許容される賦形剤とを包含する組成物を提供する。好ましい誘導体は薬学的に許容されるエステルまたはエステルの塩であってもよい。
本発明の組成物中の化合物の量は、生体サンプルにおいてまたはそれを必要とする対象において、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去に有効であるような量である。特定の実施形態においては、組成物中の化合物の量は、生体サンプルまたはそれを必要とする対象において、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去を測定可能な程度に達成するのに有効な量である。特定の実施形態において、組成物は、生物学的に有効な用量と最大耐用量の間の量で、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、エステルもしくはエステルの塩を含んでもよい。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、それを必要とする対象への投与のために製剤化され得る。「対象」は、哺乳動物、好ましくは、ヒトであるが、獣医学的治療を必要とする動物でもよい。用語「それを必要とする対象」とは、がん幹細胞の増殖と関連した疾患、障害または病態、例えば任意の種類のがん、またはがんの再燃もしくは再発を患う患者を指す。
用語、薬学的に許容される賦形剤、担体、補助剤またはビヒクル、とは、ともに製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない、非毒性の賦形剤、担体、補助剤またはビヒクルを指す。
「薬学的に許容される誘導体」とは、本発明の化合物の任意の非毒性の塩、エステル、エステルの塩またはその他の誘導体であり、レシピエントへの投与によって、本発明の化合物、その活性代謝物または残渣を直接的または間接的に供給可能なものを意味する。
本発明の組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、口腔投与、経膣投与または埋め込まれたリザーバーによる投与に適切な投与剤形に製剤化され得る。本発明の組成物は、液体投与剤形、固体投与剤形および半固体投与剤形を含む、投与剤形に製剤化され得る。本明細書における「非経口」という用語には、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術が含まれる。組成物は、経口、静脈内にまたは腹膜内に投与されることが好ましい。
本発明の組成物の滅菌注射用形態は、滅菌済の注射用の水溶液または油性懸濁液であって、非毒性の非経口投与可能な希釈剤もしくは溶媒、または懸濁液、適切な分散剤もしくは湿潤剤や懸濁剤を基剤とする液であり得る。
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射において、化合物の吸収の遅延が望まれることが多い。これは水に対する溶解度の低い結晶性または非晶質材料の液体懸濁液を使用することで達成できる。デポ注射用製剤は、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に当該化合物を封入することによって調製することもできる。
本発明の薬学的に許容される組成物は、任意の経口投与可能な剤形で経口投与されてもよく、経口投与可能な剤形としては、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液および溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
経口投与のための固体投与剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような固体投与剤形では、活性化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、充填剤もしくは増量剤、結合剤、保水剤、崩壊剤、溶液溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、緩衝剤および/またはそれらの混合物と混合される。
経口投与のための液体投与剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。活性化合物に加えて、液体投与剤形は、当技術分野でしばしば使用される不活性の希釈剤を含有してもよい。不活性の希釈剤の例としては、水やその他の溶媒、可溶化剤および/または乳化剤が挙げられる。経口組成物は、また、不活性の希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤や懸濁剤、甘味料、矯味剤および芳香剤などの補助剤も含み得る。
本発明の薬学的に許容される組成物は局所投与してもよく、それは、特に治療の標的が眼、皮膚または下部腸管の疾患などの、局所適用によって容易に到達可能な領域または臓器を含む場合である。これらの領域または臓器のために、それぞれ適切な局所製剤が容易に調製される。
局所適用のために提供される薬学的に許容される組成物は、1または複数の担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する、適切な軟膏に製剤化することができる。あるいは、提供される薬学的に許容される組成物は、1または複数の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する、適切なローションまたはクリームに製剤化してもよい。
本発明の化合物の局所または経皮投与のための投与剤形として、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチなどがある。活性成分は、必要に応じて、滅菌条件下で薬学的に許容される担体および任意の必要とされる防腐剤またはバッファーと混合する。さらに、本発明においては、身体への化合物の制御下の送達といった更なる利点を有し得る経皮パッチの使用が考えられる。このような投与剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または調合することによって製造することができる。化合物の皮膚を介した移動を増加させるために吸収エンハンサーも使用できる。この速度は、速度制御膜の使用、または化合物のポリマーマトリックスもしくはゲルへの分散のいずれかによって制御することができる。
眼科製剤、点耳液および点眼薬も、本発明の範囲内であると考えられる。眼科使用のために提供される薬学的に許容される組成物は、いずれも防腐剤を含むか含まない、等張なpH調整された滅菌生理食塩水の微粒子化懸濁液として、また好ましくは等張なpH調整された滅菌生理食塩水の溶液として製剤化され得る。あるいは、眼科使用のために、薬学的に許容される組成物は、軟膏として製剤化されてもよい。
本発明の組成物はまた、鼻腔エアゾールまたは吸入によって投与することができる。このような組成物は、医薬製剤化の技術分野で周知の技術に従って調製され、適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収プロモーターおよび/またはその他公知の可溶化剤もしくは分散剤を含む溶液として調製され得る。
下部腸管への局所適用は、直腸用の坐剤製剤(上記参照)または適切な浣腸製剤で行い得る。局所経皮パッチを使用してもよい。直腸または膣への投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製できる坐剤である。
最も好ましくは、本発明の薬学的に許容される組成物は、経口投与用に製剤化してもよい。このような製剤は、食物とともに、または別に投与されてもよい。
単回投与剤形の組成物を製造するために、薬学的に許容される賦形剤または担体と組み合わせることのできる本発明の化合物の量は、治療される対象や特定の投与様式に応じて変化する。好ましくは、提供される組成物は、本発明の化合物の有効量を、これら組成物を受ける対象に投与できるように製剤化されなくてはならない。
特定の患者のための特定の投与量および治療レジメンは種々の因子によるものであることも理解されたい。このような因子としては、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、総合的な健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組合せおよび担当医師の判断および治療中の特定疾患の重症度が挙げられる。組成物中の本発明の化合物の量はまた、組成物中の特定の化合物の有無にも依存する。
一実施形態において、一般式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩、またはその組成物は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のために使用されてもよく、それによって、関連する障害、疾患または病態を治療する。したがって、提供される化合物は、血液がんおよび固形腫瘍に限定されることのないがんを治療するために有用であり得る。
特定の実施形態において、式IIで表される本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、またはその組成物は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のために使用されてもよく、それによって、関連する障害、疾患または病態を治療する。したがって、提供される化合物は、血液がんおよび固形腫瘍に限定されることのないがんを治療するために有用である。
本明細書において、用語「がん幹細胞」は、有糸分裂をし、腫瘍内にみられる1種以上の細胞に分化する能力によって特徴付けられる細胞を含む。「がん幹細胞」は全能性、万能性、多能性、少能性、または単能性である細胞を含む。「がん幹細胞」は前駆細胞を含む。
本明細書において、用語「がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去」とは、がん幹細胞の成長、分裂、成熟もしくは生存力の阻害もしくは抑制すること、および/または細胞傷害作用もしくはアポトーシス誘導による、個別のがん幹細胞または他のがん幹細胞との凝集体に対する、がん幹細胞死の発生による、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去を意味する。
別の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、一般式Iで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、式IIで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
特定の理論や機序に縛られることなく、がん幹細胞集団の増殖停止もしくは阻害、またはその除去によって、がん幹細胞集団から生じたがん細胞集団の増殖停止もしくは阻害、またはその除去がなされ、それによって、腫瘍の成長や腫瘍隗の拡大、腫瘍の形成、および/または転移の発生を停止、阻害または除去する。即ち、がん幹細胞集団の増殖停止もしくは阻害、またはその除去によって、腫瘍の形成、再形成もしくは成長、および/またはがん細胞の転移を防ぐ。
特定の実施形態において、本発明の方法は、治療ががん幹細胞集団を安定化または減少させるような(例えば、血中、血漿中、血清中、組織中、および/または腫瘍中の)濃度となるように策定されてもよい。
多くの場合、がん幹細胞は腫瘍の亜集団を形成するに過ぎないため、がん幹細胞の安定化、減少、または除去を達成する治療は、従来、がん患者において、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の成長や拡大および/または腫瘍形成、および/または転移の除去、あるいはがん関連症状の改善に必要と予測される時間よりも長い期間を要することがある。従って、この余分にかかる時間の間に、たとえ毒性の低い(例えば少量の)用量であっても、追加の治療を送達する機会が得られる。がん幹細胞集団の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞集団の除去の結果、がんは著しい損傷を受け、(後期に生じる可能性が高いにしても)応答頻度が増加し、寛解期間が延び、および/または特定の形態ではしばしば、本明細書に記載の方法によってがん幹細胞集団の減少を確認することが可能となる。
がん幹細胞またはその他のがん細胞の根絶または増殖阻害のために本発明において利用する化合物の活性は、in vitroまたはin vivoでアッセイすることができる。本発明の化合物の排除活性または細胞傷害活性のin vivoにおける評価は、がんの動物モデル、例えば、げっ歯類モデルまたは霊長類モデルを使用して行うことができる。細胞ベースのアッセイは、腫瘍または血液由来がんから単離された細胞株を使用して実施することができる。がん細胞株の特定のタンパク質または核酸成分、例えば、酵素、構造タンパク質、細胞表面マーカー、DNAまたはRNA、あるいはマイクロアレイ、に対する活性のための細胞ベースのアッセイも実施することができる。さらに、生化学またはメカニズムに基づくアッセイ、例えば、精製タンパク質を用いた転写アッセイ、ノーザンブロット、RT−PCRなどを実施することができる。In vitroアッセイは、細胞形態、生存率、細胞数または成長阻害、および/または細胞傷害活性、酵素阻害活性および/または機能的変化を、本発明の化合物による処理後のがん細胞について調べるアッセイを含む。別のin vitroアッセイは、本発明の化合物の、細胞内のタンパク質または核酸分子との結合能を定量する。
試験のために使用可能である、または本明細書に記載される化合物および組成物によって増殖の停止もしくは阻害、または除去され得るがん細胞株であって、本明細書に記載される方法が有用であり得るがん細胞株の例としては、LNCaP、MDA MB 231、MCF7、DU145、PC3、T47D、HeLa、または組織由来の他の細胞株が挙げられるが、これらに限定されるものではない。組織としては、前立腺、乳房、線維芽細胞、子宮頸部、腎臓、結腸、膵臓、または肺が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一実施形態によれば、本発明は、生体サンプル内のがん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、前記生体サンプルを式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物と、有効な量で、接触させることを含む方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、生体サンプル内のがん細胞またはがん幹細胞を死滅させるための方法であって、前記生体サンプルを式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物と、有効な量で、接触させることを含む方法に関する。
本明細書における「本発明の化合物(compound of this invention)」または「本発明の化合物(compound of the invention)」という用語は、一般式Iで表される化合物、または式Iもしくは式IIで表される化合物の薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む。
本明細書における「生体サンプル」という用語は、細胞培養物またはその抽出物、哺乳動物から得た生検材料またはその抽出物、および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙またはその他の体液またはその抽出物を含むが、これらに限定されるものではない。
生体サンプル中のがん幹細胞の根絶は、当業者に公知の種々の目的にとって有用であり得る。このような目的の例として、生物学的アッセイ、遺伝子発現研究および生物学的標的同定が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらなる一実施形態において、本発明は、がん幹細胞関連性の障害、疾患または病態の治療方法であって、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、がん幹細胞媒介性の障害の治療を必要とする患者において行うための方法であって、前記患者に、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物を、有効な量で、投与することを含む方法を提供する。このような障害は、がんまたはがんの再発もしくは再燃、またはその他の増殖性疾患を含む。
特定の実施形態において、本発明は、がんの緩解につながる、患者におけるがん幹細胞の増殖の根絶、停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、前記患者に、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを含む組成物を、有効な量で、投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態において、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを有効な量で含む組成物は、がんまたはその他の増殖性障害の治療方法に使用してもよい。いくつかの実施形態においては、本発明は、がんまたはその他の増殖性障害を治療するための方法であって、本発明の化合物または組成物を、がんまたはその他の増殖性障害を患う患者に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを有効な量で含む組成物は、哺乳動物のがんの治療に使用してもよい。特定の実施形態において、哺乳動物は、ヒト患者である。
特定の実施形態において、式IもしくはIIの化合物またはその誘導体、またはそれらを有効な量で含む組成物は、ヒト患者においてがんを治療するために使用されてもよく、当該がんは、患者の前立腺、乳房、頸部、結腸、皮膚、肝臓、胃、膵臓、腎臓、卵巣、肺、精巣、陰茎、甲状腺、上皮小体、下垂体、胸腺、網膜、ブドウ膜、結膜、脾臓、頭部、気管、胆嚢、直腸、唾液腺、副腎、咽頭、食道、リンパ節、汗腺、皮脂腺、筋肉、心臓、脳、血液または骨髄に発生したものである。
治療されるべき特定の病態または疾患に応じて、その病態を治療するために通常投与される追加治療薬を、本発明の化合物および組成物と組み合わせて投与してもよい。いくつかの実施形態においては、提供される本発明の化合物またはその組成物を、1または複数のその他の化学療法薬と組み合わせて投与する。このような化学療法薬としては、キナーゼ阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、チューブリン安定化剤、チューブリン重合阻害剤、DNA複製阻害剤、細胞周期阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、細胞傷害性抗生物質または前記の薬剤のいずれかのナノ粒子もしくはタンパク質コンジュゲートなどの薬剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特定の実施形態において、2種以上の化学療法薬の組合せを本発明の化合物と一緒に投与することができる。特定の実施形態において、3種以上の化学療法薬の組合せを本発明の化合物と一緒に投与することができる。いくつかの実施形態では、化学療法薬は、アルキル化剤および代謝拮抗剤から選択される。
本発明の化合物と組み合わせることのできる薬剤の他の例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:ビタミン類および栄養補給剤、がんワクチン、アンチセンス剤、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、siRNA治療薬、またはがん以外の病態、障害もしくは疾患の治療用のその他薬剤が挙げられる。
一実施形態において、上記その他薬剤としては、1または複数の抗増殖性薬剤、抗炎症剤、免疫調節剤または免疫抑制剤が挙げられる。
それらの追加薬剤は、本発明の化合物を含有する組成物とは別個に、複数回投与レジメンの一部として、投与することができる。あるいはそれらの薬剤は、単回投与剤形、即ち本発明の化合物と一緒に混合された単一組成物、の一部であってもよい。複数回投与レジメンの一部として投与される場合には、2種の活性薬剤は、同時に、続けて、または互いに一定期間内、通常、5時間内に、与えることができる。単回投与剤形を製造するために担体材料と組み合わせてもよい、(上記のような追加治療薬を含む組成物中の)本発明の化合物および追加治療薬の量は、いずれも、治療相手および特定の投与様式に応じて変化する。
追加治療薬を含む組成物においては、その追加治療薬と本発明の化合物は、相乗的に作用し得る。したがって、このような組成物中の追加治療薬の量は、その治療薬のみを利用する単剤療法において必要な量よりも少なくなる。
本発明の組成物中に含まれる追加治療薬の量は、その治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物における通常の投与量を超えない量とすることができる。好ましくは、ここで開示される組成物中の追加治療薬の量は、その治療薬を唯一の治療上活性な薬剤として含む組成物中に通常含まれる量の約5%〜90%の範囲内である。
化学療法薬に対する耐性は、多くの種類のがんおよびその他の増殖性障害に対する治療薬の有効性を制限する主要な因子である。これら細胞の速い分裂速度は、変異体の発生、またはMDRなどのポンプの上方制御を可能せしめ、現在の第一選択化学療法薬に対する耐性をもたらす。薬物耐性がより強いがんの再燃の問題は、がん患者を治療するための新規化学療法薬の薬物開発において直面するきわめて重要なハードルである。
本発明は、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための本発明の化合物およびその組成物を提供することによってこの問題に対処することでき、その結果、関連する障害または疾患または病態を治療し、特にがん再燃の問題を防ぐか最小化することができる。
本発明の化合物は、当業者が知り得る合成法に従って調製するか、または本明細書に記載される方法によって、本発明の化合物またはこれらの化合物それぞれのサブクラスもしくは分子種を合成するために具体的に設計することができる。
本発明に関する上述の記載は、単に本発明を例示するためになされたものであり、制限することを意図していない。本明細書で提供する化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤および/または使用方法に関連する技術を含む、本願で開示する態様に、本発明の精神および実質から逸脱することのない改変を当業者は想到し得るため、本発明は、本開示範囲内のすべてのものを含むと解釈されなければならない。
実施例1
エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンの調製
三つ口丸底フラスコを、水冷却器、温度計ポケットとともにマグネチックスターラ上に配置し、室温で撹拌しながら、エチルアセトアセテート(4ml)、マロノニトリル(2.48gm)、硫黄(1.2gm)を含むメタノール(37.5ml)およびモルホリン(6.97ml)を仕込んだ。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで、3時間還流した。反応をTLCでモニタリングし、変換が完了した後、反応混合物を室温で放冷し、真空下で濾過し、得られた化合物をメタノールで洗浄して、エチル5−アミノ−4−シアノ−3−メチルチオフェン−2−カルボキシレートを得た。
反応装置を上記と同様に準備し、エチル5−アミノ−4−シアノ−3−メチルチオフェン−2−カルボキシレート(0.210gm、1mmol)を仕込み、そこに10mlのギ酸:濃塩酸(1:1)の混合物を加え、水浴中で2時間還流した。反応をTLCでモニタリングし、反応の完了後、反応混合物を室温で放冷し、砕いた氷の中に注いだ。得られた固体を真空下で濾過し、水で洗浄して、純粋なエチル5−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレートを得た。
上記と同様の反応装置を準備し、撹拌しながらエチル5−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレート(0.238gm、1mmol)、POCL10mlおよび2滴のDMFを仕込んだ。添加が完了した後、反応混合物を1時間還流し、冷却し、砕いた氷上に注いだ。生成物であるエチル4−クロロ−5−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレートが沈殿し、それを真空下で濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、純粋なエチル4−クロロ−5−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレートを得た。
得られた純粋なエチル4−クロロ−5−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレート(0.256gm、1mmol)を、10mlのエタノールが入った50mlの丸底フラスコに加えた。フラスコを水冷却器、温度計ポケットを装備したマグネチックスターラ上に配置し、ピペリジン(0.1ml、1mmol)をゆっくりと加え、4時間還流した。反応の完了後、反応混合物を室温で放冷し、砕いた氷上に注ぎ、生成物であるエチル−5−メチル−4−(ピペリジン1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレートが沈殿したら、これを真空下で濾過により分離し、水で洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物を得た。
実施例2:In vitroでの比色分析による細胞死アッセイ
細胞の生存率評価のために、下記に示すように細胞を2次元表面上に成長させ、in vitroでの比色分析による細胞死アッセイを行った。
それぞれの細胞株について後述するコロニー形成率を有するがん細胞を、96穴プレートに播種した。プレートを37℃、5%CO雰囲気で24時間インキュベートし、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンを10−3Mから10−6Mの濃度範囲でウェルに添加し、プレートを5%CO雰囲気で更に48時間インキュベートした。プレートを3000rpmで3分間の遠心分離に2回かけ、上澄み液を捨てて、0.5mg/mlの3−(4、5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2、5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)溶液を100μL添加し、プレートを37℃、5%CO雰囲気で4時間インキュベートした。次にプレートを3000rpmで3分間の遠心分離に2回かけ、上澄み液を注意深く吸引して、200μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を各ウェルに添加してMTT結晶を可溶化し、プレートを振盪してよく混和させた。プレートを37℃、5%CO雰囲気で10分間インキュベートし、プレートをELISAプレート・リーダーのシェーカーに載せ、570nmの吸光度を測定した。残っている生細胞の割合(%)を、まずバックグランドの吸光度を差し引き、次に薬物未処理の細胞サンプルの吸光度と比較することにより求めた。結果をグラフにプロットして、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンのIC50となる値を回帰分析により求めた。
それぞれ異なる細胞株に対するin vitroでの比色分析による細胞死アッセイの結果を下記の表1、表2、表3、表4、表5および表6に示す。
上記の結果から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは前立腺がん細胞株に対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが前立腺がん細胞に対してより強い活性を持つことがわかる。
上記表から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは乳がん細胞株に対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが乳がん細胞に対してより強い活性を持つことがわかる。
上記表から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは線維芽細胞がん細胞株に対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが線維芽細胞がんの細胞に対してより強い活性を持つことがわかる。
上記表から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは子宮頸がん細胞株に対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが子宮頸がん細胞に対してより強い活性を持つことがわかる。
上記表から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは結腸がん細胞株に対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが結腸がん細胞に対してより強い活性を持つことがわかる。
上記表から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは肝臓がん細胞株に対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが肝臓がん細胞に対してより強い活性を持つことがわかる。
実施例3:3D一次スフィアアッセイ
がん幹細胞が無血清培地中でスフィアを形成する能力を、スフィアが懸濁状態で存在する3D一次スフィアアッセイで測定した。このアッセイによって、シスプラチンなどの標準的な化学療法薬と比べた、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンががん幹細胞を死滅させる強度を下記のように評価した。
細胞をプラスティック基板上で3次元に成長させ、無血清培地中に懸濁状態で採取した。次いで、サンプル中の細胞をトリプシン処理し、セルストレーナーを通過させて単一細胞懸濁液にした。検討する細胞株についてあらかじめ決定しておいたコロニー形成率に応じて、細胞を幹細胞用培地に懸濁し、希釈した。この縣濁液100μLを96穴の懸濁プレートの各ウェルに添加し、プレートを37℃、5%CO雰囲気で24時間インキュベートした後、2μLの適切な濃度の薬物を、それぞれのウェルに100μLの幹細胞用培地と共に添加し、プレートを37℃、5%CO雰囲気で72時間インキュベートした。2.5μLの適切な濃度の薬物を、それぞれのウェルに50μLの幹細胞用培地と共に添加し、プレートを37℃、5%CO雰囲気で72時間インキュベートした。3μLの適切な濃度の後述の化合物を、それぞれのウェルに50μLの幹細胞用培地と共に添加し、37℃、5%CO雰囲気で72時間インキュベートした。形成したスフィアを顕微鏡で観察して個数を計測し、大きさによりスコア付けを行った。
In vitroの3Dスフィア形成幹細胞アッセイの結果を表形式で表す。各マスの数字は、各濃度のシスプラチンまたは本発明化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンの存在下で形成したスフィアの合計数である。GCは、薬物または溶媒(DMSO)の非存在下で行った成長対照群(growth control)を指す。GCDは薬物の非存在下ではあるが、DMSOの存在下で行った成長対照群を指す。
上記表7と図1から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンはPC3の一次スフィアに対し、シスプラチンよりも強い抗がん効果を示すことがわかる。
PC3は高度に転移性の前立腺がん細胞株である。当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは、前立腺がん細胞株(PC3)の一次スフィアに対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも強い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンには、前立腺がん細胞の一次スフィアに対してシスプラチンよりも高い効果があることを明示し。これは、図1において、これらのがん細胞によって形成された一次スフィアの数が、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンの場合の方が、シスプラチンの場合よりも有意に少ないことからわかる。
上記表8と図2から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンはDU145の一次スフィアに対し、シスプラチンよりも強い抗がん効果を示すことがわかる。
DU145は中程度に転移性の前立腺がん細胞株である。当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは、前立腺がん細胞株(DU145)の一次スフィアに対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンには、前立腺がん細胞の一次スフィアに対してシスプラチンよりも高い効果があることを明示した。これは、図2において、これらのがん細胞によって形成された一次スフィアの数が、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンの場合の方が、シスプラチンの場合よりも有意に少ないことからわかる。
上記表9と図3から、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンはMDA MBの一次スフィアに対し、シスプラチンよりも強い抗がん効果を示すことがわかる。
MDA MB 231は高度に転移性の乳がん細胞株であり、他の細胞株に比べて幹細胞集団率が高い。当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンは、乳がん細胞株(MDA MB 231)の一次スフィアに対し、シスプラチン(標準的な治療薬物)よりも高い抗がん活性を示し、当該化合物であるエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、乳がん細胞の一次スフィアに対してシスプラチンよりも高い効果があることを明示した。これは、図3において、これらのがん細胞によって形成された一次スフィアの数が、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンの場合の方が、シスプラチンの場合よりも有意に少ないことからわかる。
実施例4:エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンおよびシスプラチンの前立腺がん細胞株PC3に対する効果のフローサイトメトリーによる検討
フローサイトメトリーアッセイのためにPC3がん細胞(0.35×10)を、60mm組織培養プレートに入れた、10%ウシ胎児血清(F.B.S)添加ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で37℃、5%COで24時間培養した。次いで細胞をIC25となる薬物濃度のシスプラチンに曝露したものを2セット準備した。同様に他の細胞のセットもIC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンで48時間処理し、37℃、5%COで48時間インキュベートした。適切な対照群、即ち成長対照群(細胞+DMEM培地)、溶媒対照群(solvent control)(細胞+対照DMEM培地+DMSO)および培地対照群(medium control)(DMEM)も上述の実験セットと同様に処理した。48時間後に細胞を顕微鏡で観察し、トリプシン処理し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D.P.B.S)で洗浄したのち、各セットにつき50μlの細胞を取り出してCD44−PE標識抗体およびCD24−FITC標識抗体をそれぞれ5μl加えた。抗体がきちんと結合するように、セットを4℃で45分間インキュベートした。インキュベートの後、細胞を200μlのD.P.B.Sで遠心分離により洗浄した。上澄み液を捨て、最後に細胞を300μlのFACS緩衝液(4%ウシ胎児血清添加D.P.B.S)に懸濁した。サンプルはFACSに供されるまで4℃で暗所に保存した。データの取得はBD−FACS Accuri C6で行った。
1.未処理集団:薬物処理を行わないPC3細胞を、抗CD44−PE標識抗体および抗CD24−FITC標識抗体を用いて染色し、4象限プロット内の発現を観察した。85.61%の細胞がCD44を発現し(UL)(図4)、がん幹細胞が豊富な集団であることを示す。
2.IC25となる薬物濃度のシスプラチンに48時間曝露したPC3細胞の、FACSの結果:IC25となる薬物濃度のシスプラチン曝露は、PC3細胞内のCD44集団に対して大きな効果を示さなかった。これはシスプラチンが、がん幹細胞に対してそれほど有効ではないことを示す(図5)。
3.IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに48時間曝露したPC3細胞の、FACSの結果:IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに曝露したPC3細胞は、CD44集団に対する劇的な効果を示した。CD44領域から共発現領域へのほとんど完全なシフトが見られ(図6)、これは、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、高度に転移性の細胞株であるPC3細胞内のがん幹細胞に対して作用することを明示している。
上記結果ならびに図7から、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、PC3内のがん幹細胞に対し、標準的な治療薬物であるシスプラチンよりも強い活性を示すことがわかる。
実施例5:エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンおよびシスプラチンの前立腺がん細胞株DU145に対する効果のフローサイトメトリーによる検討
PC3がん細胞に代えて、DU145がん細胞を使用した以外は、上述の実施例4と同様にフローサイトメトリーアッセイを実施した。
1.未処理集団:薬物処理を行わないDU145細胞を、抗CD44−PE標識抗体および抗CD24−FITC標識抗体を用いて染色し、4象限プロット内の発現を観察した。70.18%の細胞がCD44を発現し(UL)(図8)、がん幹細胞が豊富な集団であることを示す。
2.IC25となる薬物濃度のシスプラチンに48時間曝露したDU145細胞の、FACSの結果:IC25となる薬物濃度のシスプラチン曝露は、DU145細胞内のCD44集団に対して大きな効果を示さなかった。これはシスプラチンが、がん幹細胞に対してそれほど有効ではないことを示す(図9)。
3.IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに48時間曝露したDU145細胞の、FACSの結果:IC25となる薬物濃度のエチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンに曝露したDU145細胞は、CD44集団に対する劇的な効果を示した(図10)。これは、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、中程度に転移性の細胞株であるDU145内のがん幹細胞に対して作用することを明示している。
上記結果ならびに図11から、エチル−5,6−ジメチル−4−(ピペリジン−1−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジンが、DU145内のがん幹細胞に対し、標準的な治療薬物であるシスプラチンよりも強い活性を示すことがわかる。
本発明は列挙した実施の形態と共に記載されてはいるが、本発明をこれらの実施の形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は請求項によって定義される本発明の範囲内に含まれてもよい代替、改変および同等のものをすべてカバーすることを意図するものである。従って、上述の記載は本発明の原理のみを例示するものとみなす。

Claims (12)

  1. 下記式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される誘導体である、がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための化合物。
    式中、
    、RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、−CN、−NO、−R、−OR、−SR、−N(R)、−N(R)NR、−C(NR)NR、−N(R)C(O)R、C(O)RN(R)、−N(R)C(O)N(R)、−N(R)C(O)OR、−OC(O)N(R)、−N(R)SOR、−SORN(R)、C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−C(O)OR、−S(O)R、および−SORから選択され、
    Rはそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよい基であり、前記基はC1〜6脂肪族基、3〜12員の飽和もしくは部分不飽和単環式炭素環、フェニル基、8〜12員の二環式芳香族炭素環、それぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜2個のヘテロ原子を有する4〜8員の飽和もしくは部分不飽和単環式複素環式環、それぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の単環式複素芳香環、およびそれぞれ独立に窒素、酸素もしくは硫黄である1〜5個のヘテロ原子を有する8〜10員の二環式複素芳香環から選択され、
    nは独立に0〜5である。
  2. 下記式IIで表される化合物の薬学的に許容される誘導体である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記式IIで表される化合物の薬学的に許容される誘導体が、下記式IIIまたは下記式IVで表される化合物である、請求項2に記載の化合物。
  4. 式IもしくはIIで表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体と、担体、補助剤、ビヒクルもしくはそれらの混合物を含む薬学的に許容される賦形剤とを包含する組成物。
  5. がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、治療上有効な量の、式Iで表される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体もしくは塩、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
  6. がん幹細胞の増殖停止もしくは阻害、またはがん幹細胞の除去のための方法であって、治療上有効な量の、式IIで表される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体もしくは塩、またはそれらを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
  7. がん幹細胞関連またはがん幹細胞媒介性の障害、疾患または病態の治療方法であって、式IもしくはIIで表される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体もしくは塩、またはそれらを含む組成物を、有効な量で、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
  8. 前記がん幹細胞関連またはがん幹細胞媒介性の障害、疾患または病態が、がんまたは再発性もしくは再燃性のがんを含む、請求項7に記載の方法。
  9. がんの治療方法であって、式IもしくはIIで表される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体もしくは塩、またはそれらを含む組成物を、有効な量で、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
  10. 前記がんが、患者の前立腺、乳房、頸部、皮膚、筋肉、結腸、肝臓、胃、膵臓、腎臓、卵巣、肺、精巣、陰茎、甲状腺、上皮小体、下垂体、胸腺、網膜、ブドウ膜、結膜、脾臓、頭部、気管、胆嚢、直腸、唾液腺、副腎、咽頭、食道、リンパ節、汗腺、皮脂腺、心臓、脳、血液または骨髄に発生したがんを含む、請求項7または9に記載の方法。
  11. 前記がんが、患者の前立腺または乳房に発生したがんである、請求項10に記載の方法。
  12. 化学療法剤を含む追加治療薬の投与をさらに含む、請求項9に記載の方法。
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