定義
本発明は特定の実施形態に関しておよびある種の図を参照して記載されるが、本発明はそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲のみに限定される。特許請求の範囲のいかなる引用符号もその範囲を限定すると解釈させることはない。記載されている図は図解にすぎず、非限定的なものである。図では、その要素の一部のサイズは説明目的で誇張されており目盛どおりに描かれていないことがある。用語「含む(comprising)」が本記述および特許請求の範囲で使用されている場合、それは他の要素またはステップを除外していない。単数名詞に言及する際に不定冠詞または定冠詞、例えば、「1つ(a)」または「1つ(an)」、「その(the)」が使用されている場合、何か他のことが明確に述べられていない限り、これは複数のその名詞を含む。さらに、本記述におけるおよび特許請求の範囲における用語第1の、第2の、第3のなどは類似する要素を区別するために使用されており必ずしも順番または時系列を記載するためではない。そのように使用される用語は適切な状況下で互換的であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は本明細書に記載されるまたは説明される以外の順序で機能することが可能であることは理解されるべきである。
本明細書において他の方法で定義されない限り、本発明との関連で使用される科学用語および専門用語および語句は当業者が一般に理解しているのと同じ意味を持たせる。一般に、本明細書に記載される分子および細胞生物学、構造生物学、生物物理学、薬理学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学と関連して使用される命名法および技法は、当技術分野で周知であり一般に使用されている命名法および技法である。Singleton, et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2D ED., John Wiley and Sons, New York (1994), and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は当業者に、本開示において使用される用語のうちの多くについての一般的な辞書を提供している。本発明の方法および技法は、他の方法で指示されていなければ、一般に当技術分野で周知の従来の方法に従って、および本明細書全体で引用され考察されている種々の一般的および特定の参考文献に記載されている通りに実施される。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992, and Supplements to 2002); Rup, Biomolecular crystallography: principles, Practice and Applications to Structural Biology, 1st edition, Garland Science, Taylor & Francis Group, LLC, an informa Business, N.Y. (2009); Limbird, Cell Surface Receptors, 3d ed., Springer (2004)を参照されたい。
本明細書で使用されるように、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」は本明細書では互換的に使用され、任意の長さのポリマー型のアミノ酸のことであり、アミノ酸はコードされたアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的にまたは生化学的に改変されたまたは誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことが可能である。本出願全体で、標準的なアミノ酸の1文字表示法を使用することになる。典型的には、用語「アミノ酸」は「タンパク質新生アミノ酸」、すなわち、タンパク質中に天然に存在するアミノ酸のことである。最も詳細には、アミノ酸はL異性体型であるが、Dアミノ酸も想定している。
本明細書で使用されるように、用語「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」、「ポリ核酸」、「核酸」は互換的に使用され、任意の長さのポリマー型のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体のことである。ポリヌクレオチドはいかなる三次元構造でも有することができ、既知であれ未知であれいかなる機能でも果たすことができる。ポリヌクレオチドの非限定的例には、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、制御領域、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。核酸分子は線形でも環状でもよい。
本明細書に開示されるペプチド、ポリペプチド、核酸、化合物のいずれでも「単離する」または「精製する」ことができる。「単離された」は、言及する材料が(i)天然には一緒に存在する1つもしくは複数の物質から分離されている(例えば、少なくとも一部の細胞材料から分離されている、他のポリペプチドから分離されている、その天然配列状況から分離されている)、および/または(ii)組換えDNA技術、化学合成、等などの人の手を必要とするプロセスにより産生される、および/または(iii)天然には見られない配列、構造、もしくは化学組成を有することを示すために本明細書では使用される。「単離された」は、対象の化合物が実質的に濃縮されている試料および/または対象の化合物が部分的にもしくは実質的に精製されている試料内にある化合物を含むことを意味する。本明細書で使用される「精製された」は、言及されている材料がその天然の環境から取り除かれて、天然に会合している他の成分から少なくとも60%遊離している、少なくとも75%遊離している、または少なくとも90%遊離しており、「実質的に純粋である」とも呼ばれることを意味する。
本明細書で使用される用語「配列同一性」とは、配列が比較窓にわたりヌクレオチド対ヌクレオチドベースでまたはアミノ酸対アミノ酸ベースで同一である程度のことである。したがって、「配列同一性の割合」は、2つの最適に整列させた配列を比較窓にわたり比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列に存在している位置の数を決定してマッチしている位置の数を得て、マッチしている位置の数を比較窓の位置の総数(すなわち、窓サイズ)で割って、その結果に100をかけて配列同一性の割合を得ることにより計算される。配列同一性の割合を決定するのは、手作業でまたは当技術分野で利用可能なコンピュータプログラムを利用することにより実行することが可能である。有用なアルゴリズムの例はPILEUP(Higgins & Sharp, CABIOS 5:151 (1989))、BLASTおよびBLAST2.0(Altschul et al. J. Mol. Biol. 215: 403 (1990))である。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは米国立バイオテクノロジー情報センターを通して一般に公開されている(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
「類似性」とは、同一であるまたは保存的置換を構成するアミノ酸の割合数のことである。類似性はGAPなどの配列比較プログラムを使用して決定することができる(Deveraux et al. 1984)。このようにして、本明細書で言及する配列に類似するまたは実質的に異なる長さの配列をアライメント内にギャップを挿入することにより比較してもよく、そのようなギャップは、例えば、GAPが使用する比較アルゴリズムにより決定される。本明細書で使用するように、「保存的置換」とは、アミノ酸をその側鎖が類似する生化学的特性を有する(例えば、脂肪族の、芳香族の、正電荷を帯びた)他のアミノ酸で置換することであり、当業者には周知である。次に、非保存的置換とは、アミノ酸をその側鎖が類似する生化学的特性を持たない(例えば、疎水性残基を極性残基で置き換えること)他のアミノ酸で置換することである。保存的置換は典型的には、もはや同一ではないがそれでも高度に類似している配列が得られることになる。保存的置換によって、gly、ala;val、ile、leu、met;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;cys、met;およびphe、tyr、trpなどの組合せが意図される。
「欠失」は、親ポリペプチドまたは核酸のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比べた場合に、それぞれ1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド残基がないアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化としてここでは定義される。タンパク質という状況内では、欠失は約2、約5、約10、約20まで、約30まで、もしくは約50まで、またはそれよりも多いアミノ酸の欠失を含むことが可能である。タンパク質またはその断片は1つよりも多い欠失を含有することがある。GPCRという状況内では、欠失はループ欠失、またはNおよび/もしくはC末端欠失、またはその組合せであってもよい。当業者には明らかであるように、GPCRのNおよび/またはC末端欠失は、GPCRのアミノ酸配列の切断または切断型GPCRとも呼ばれる。
「挿入」または「付加」とは、親タンパク質またはその断片のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比べた場合、それぞれ1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド残基の付加を生じているアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化である。「挿入」とは一般に、ポリペプチドのアミノ酸配列内での1つまたは複数のアミノ酸残基の付加のことであり、「付加」とは挿入であってよくあるいはNもしくはC末端または両末端での付加されるアミノ酸残基のことである。タンパク質またはその断片という状況では、挿入または付加は通常、約1、約3、約5、約10、約20まで、約30まで、もしくは約50まで、またはそれよりも多いアミノ酸の挿入または付加である。タンパク質またはその断片は1つよりも多い挿入を含有することがある。
「置換」は、本明細書で使用されるように、1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドを、親タンパク質またはその断片のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比べた場合、それぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドで置き換えることから生じる。タンパク質またはその断片は、タンパク質の活性には実質的になんの効果も及ぼさない保存的アミノ酸置換を有することがあることが理解されている。保存的置換によって、gly、ala;val、ile、leu、met;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;cys、met;およびphe、tyr、trpなどの組合せが意図される。
用語「組換え」は細胞、核酸、タンパク質またはベクターとの関連で使用される場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸もしくはタンパク質の変化により改変されていること、あるいは細胞がそのようにして改変された細胞に由来することを示している。したがって、例えば、組換え細胞は細胞の天然(非組換え)型内には見られない核酸もしくはポリペプチドを発現する、または他の方法では異常に発現される、過小発現される、過剰発現されるもしくは全く発現されない天然の遺伝子を発現する。
本明細書で使用されるように、用語「発現」とは、遺伝子のヌクレオチド配列に基づいてポリペプチドが産生されるプロセスのことである。プロセスには転写と翻訳の両方が含まれる。
本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」とは、調節配列が対象の遺伝子に近接していて対象の遺伝子を制御する連鎖、ならびにトランスでまたは離れて作用して対象の遺伝子を制御する調節配列のことである。例えば、DNA配列は、それがプロモーターの転写開始部位に関して下流でプロモーターにライゲートされており、そのDNA配列を通じて転写伸長を進行させる場合には、プロモーターに作動可能に連結されている。シグナル配列のDNAは、ポリペプチドの輸送に関与する前タンパク質として発現される場合には、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されている。DNA配列の調節配列への連鎖は、典型的には、当業者には既知である制限エンドヌクレアーゼを使用して適切な制限部位でのライゲーションまたはその代わりに挿入されたアダプターもしくはリンカーにより達成される。
本明細書で使用される用語「調節配列」とは、それが作動可能に連結されているコード配列の発現に作用するのに必要なポリヌクレオチド配列のことである。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後イベントおよび翻訳を制御する配列である。発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングなどの効率的なRNAプロセッシングシグナルおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質安定性を増強する配列;および必要に応じてタンパク質分泌を増強する配列が含まれる。そのような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なる。用語「制御配列」は、最小でも、その存在が発現には不可欠であるすべての成分を含むことを意図しており、その存在が有利となる追加の成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことが可能である。
本明細書で使用される用語「ベクター」とは、それが連結されている別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を指すことを意図している。ベクターは、ファージ、ウイルス、プラスミド、ファージミド、コスミド、バクミドまたは人工染色体さえも含むがこれらに限定されないいかなる適切な種類でもよい。ある種のベクターはそれが導入される宿主細胞において自律複製が可能である(例えば、宿主細胞において機能する複製起点を有するベクター)。他のベクターは宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることが可能であり、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種の好ましいベクターは対象のある種の遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。適切なベクターは、プロモーター、エンハンサー、終結配列などの調節配列を所望通りにおよび特定の宿主生物(例えば、細菌細胞、酵母細胞)に従って有する。典型的には、本発明に従った組換えベクターは少なくとも1つの「キメラ遺伝子」または「発現カセット」を含む。発現カセットは一般には、(転写の5’から3’方向に)好ましくはプロモーター領域、ポリヌクレオチド配列、転写開始領域と作動可能に連結されている本発明のその相同体、変異体または断片、ならびにRNAポリメラーゼの停止シグナルおよびポリアデニル化シグナルを含む終結配列を含むDNA構築物である。これらの領域のすべてが、形質転換される、原核または真核細胞などの生体細胞において作動することができるはずであることは理解される。転写開始領域を含み、好ましくはRNAポリメラーゼ結合部位およびポリアデニル化シグナルを含むプロモーター領域は、形質転換される生体細胞にとり固有であってもよく、またはその領域が生体細胞内で機能的である別の供給源由来であってもよい。
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用されるように、組換えベクターが導入されている細胞を指すことを意図している。そのような用語は特定の対象細胞だけではなく、そのような細胞の子孫も指すことを意図していることは理解されるべきである。突然変異または環境の影響のために後世においてある種の改変が起こることがあるので、そのような子孫は実際には親細胞とは同一ではないことがあるが、それでも本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲に含まれる。宿主細胞は単離された細胞でも培養で増殖された細胞株でもよく、または生体組織もしくは生物に存在する細胞でもよい。特に、宿主細胞は細菌起源または真菌起源であるが植物起源または哺乳動物起源であってもよい。単語「宿主細胞」、「組換え宿主細胞」、「発現宿主細胞」、「発現宿主系」、「発現系」は同じ意味を有することが意図されており、本明細書では互換的に使用される。
「Gタンパク質共役受容体」または「GPCR」は、共通の構造モチーフを共有するポリペプチドであり、22〜24の疎水性アミノ酸の領域を7個有し、これらの領域はそれぞれが膜にまたがっている7個のアルファヘリックスを形成している。それぞれのスパンは番号により、すなわち、膜貫通型1(TM1)、膜貫通型2(TM2)、等により識別される。膜貫通型へリックスは、細胞膜の外側または「細胞外」側の膜貫通型2と膜貫通型3の間、膜貫通型4と膜貫通型5の間、および膜貫通型6と膜貫通型7の間のアミノ酸の領域により結合されており、領域はそれぞれ「細胞外」領域1、2および3(EC1、EC2およびEC3)と呼ばれる。膜貫通型へリックスは、細胞膜の内側または「細胞内」側の膜貫通型1と膜貫通型2の間、膜貫通型3と膜貫通型4の間、および膜貫通型5と膜貫通型6の間のアミノ酸の領域によっても結合されており、領域はそれぞれ「細胞内」領域1、2および3(IC1、IC2およびIC3)と呼ばれる。受容体の「カルボキシ」(「C」)末端は細胞内の細胞内スペースにあり、「アミノ」(「N」)末端は細胞の外側の細胞外スペースにある。GPCR構造および分類は当技術分野では一般に周知であり、GPCRのさらなる考察は、Probst, DNA Cell Biol. 1992 11:1-20; Marchese et al Genomics 23: 609-618, 1994および以下の書籍:Jurgen Wess (Ed) Structure-Function Analysis of G Protein-Coupled Receptors published by Wiley Liss (1st edition; October 15, 1999); Kevin R. Lynch (Ed) Identification and Expression of G Protein-Coupled Receptors published by John Wiley & Sons (March 1998) and Tatsuya Haga (Ed), G Protein-Coupled Receptors, published by CRC Press (September 24, 1999); and Steve Watson (Ed) G-Protein Linked Receptor Factsbook, published by Academic Press (1st edition; 1994)に見られる。
用語「生物活性のある」とは、GPCRに関しては、GPCRが天然に存在するGPCRの生化学的機能(例えば、結合機能、シグナル伝達機能、またはリガンド結合の結果としての立体構造を変化させる能力)を有することである。
一般に、GPCRに関連しての用語「天然に存在する」は、天然に産生されるGPCR(例えば、ヒトなどの野生型哺乳動物により)を意味する。そのようなGPCRは天然に見出される。GPCRに関して用語「天然に存在しない」は、天然に存在しないGPCRを意味する。突然変異を通じて構成的に活性になった天然に存在するGPCR、および天然に存在する膜貫通型受容体の変異体、例えば、エピトープタグ付きGPCRおよびその天然のN末端を欠くGPCRが天然に存在しないGPCRの例である。天然に存在するGPCRの天然に存在しないバージョンは、天然に存在するGPCRと同じリガンドにより活性化される場合が多い。本発明の状況内での天然に存在するまたは天然には存在しないGPCRの非限定的例は、特にオピオイド受容体については、本明細書でさらに提供される。
「エピトープ」とは、本明細書で使用されるように、ポリペプチドの抗原決定基のことである。エピトープは、エピトープに独特の空間立体構造に3つのアミノ酸を含むことができると考えられる。一般にエピトープは少なくとも4、5、6、7個のそのようなアミノ酸からなり、さらに通常では、少なくとも8、9、10個のそのようなアミノ酸からなる。アミノ酸の空間立体構造を決定する方法は当技術分野では既知であり、例えば、X線結晶解析および多次元核磁気共鳴が含まれる。「立体構造エピトープ」とは、本明細書で使用されるように、ポリペプチドの折り畳まれた三次元立体構造に独特である空間立体構造にアミノ酸を含むエピトープのことである。一般に、立体構造エピトープは、タンパク質の折り畳み構造において集合している線形配列において不連続なアミノ酸からなる。しかし、立体構造エピトープは、ポリペプチドの折り畳まれた三次元立体構造に独特の(かつ変性状態では存在しない)立体構造をとるアミノ酸の線形配列からなることもある。
用語タンパク質の「立体構造」または「立体構造状態」とは、一般に、タンパク質がいかなる瞬間にでもとりうる範囲の構造のことである。当業者であれば、立体構造または立体構造状態の決定基には、タンパク質のアミノ酸配列(改変されたアミノ酸を含む)に反映されるタンパク質一次構造およびタンパク質を取り囲む環境が含まれることは認識するであろう。タンパク質の立体構造または立体構造状態は、タンパク質二次構造(例えば、中でも、αヘリックス、βシート)、三次構造(例えば、ポリペプチド鎖の三次元折り畳み)、および四次構造(例えば、ポリペプチド鎖と他のタンパク質サブユニットの相互作用)などの構造上の特長にも関係する。中でも、リガンド結合、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、または疎水基の結合などのポリペプチド鎖の翻訳後および他の修飾は、タンパク質立体構造に影響することが可能である。さらに、pH、塩濃度、イオン強度、および周囲の溶液の浸透圧などの環境要因ならびに中でも他のタンパク質および補助因子との相互作用はタンパク質立体構造に影響することが可能である。タンパク質の立体構造状態は、活性もしくは別の分子への結合についての機能的アッセイにより、または中でもX線結晶解析、NMR、もしくはスピン標識などの物理的方法により決定することができる。タンパク質立体構造および立体構造状態の一般的考察では、1つはCantor and Schimmel, Biophysical Chemistry, Part I: The Conformation of Biological. Macromolecules,.W.H. Freeman and Company, 1980, and Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties, W.H. Freeman and Company, 1993に言及される。
「機能的立体構造」または「機能的立体構造状態」とは、本明細書で使用されるように、タンパク質が、特に活性なしから最大活性に及ぶダイナミックレンジの活性を有する異なる立体構造状態を有することである。「機能的立体構造状態」は、活性なしを含むいかなる活性でも有するタンパク質のいかなる立体構造状態も網羅することを意図しており、タンパク質の変性状態を網羅することを意図してはいないことは明らかなはずである。機能的立体構造の非限定的例には、活性立体構造または非活性立体構造(本明細書でさらに定義される)が含まれる。特定クラスの機能的立体構造は「新薬の開発につながるような立体構造」と定義され、一般に標的タンパク質の独特の治療的に関連のある立体構造状態のことである。例として、ミューオピオイド受容体のアゴニスト結合活性立体構造は、疼痛に関係するこの受容体の新薬の開発につながるような立体構造に一致する。したがって、新薬の開発につながることは、治療徴候に応じて特定の立体構造に限定されることは理解されるであろう。さらに多くの詳細は本明細書でさらに提供される。
本明細書で使用されるように、用語「活性立体構造」および「活性型」とは、活性であるように折り畳まれているGPCR、特にオピオイド受容体のことである。GPCRは、受容体のアゴニストを使用して活性立体構造に入れることが可能である。例えば、その活性立体構造のGPCRは、ヘテロ三量体Gタンパク質に結合し、Gタンパク質のヌクレオチド交換を触媒して下流シグナル伝達経路を活性化する。活性化されたGPCRは、不活性GDP結合型のヘテロ三量体Gタンパク質に結合し、Gタンパク質にそのGDPを放出させて、GTPが結合できるようにする。GTPが結合することを可能にするこのプロセスから生じる一過性の「ヌクレオチド遊離」状態が存在する。GTPが結合した後は、受容体とGタンパク質は解離し、GTP結合Gタンパク質に、アデニリルシクラーゼ、イオンチャネル、RAS/MAPK、等などの下流シグナル伝達経路を活性化させる。用語「不活性立体構造」および「不活性型」とは、不活性であるように折り畳まれているGPCR、特にオピオイド受容体のことである。GPCRは、受容体のインバースアゴニストを使用して不活性立体構造に入れることが可能である。例えば、その不活性立体構造のGPCRは高親和性でヘテロ三量体Gタンパク質に結合することはない。用語「活性立体構造」および「不活性立体構造」は本明細書でさらに説明されることになる。
GPCRの機能的立体構造状態に関して用語「安定化させる」または「安定化された」とは、本明細書で使用されるように、GPCRと本発明に従った結合剤の相互作用の効果のために、GPCRタンパク質が他の方法であれば帯びることができると考えられる可能な立体構造のサブセットでのGPCRタンパク質の保持またはホールディングのことである。この状況内では、タンパク質の特定の立体構造または立体構造状態に選択的に結合する結合剤とは、そのタンパク質が帯びる可能性のある他の立体構造または立体構造状態よりも高い親和性で立体構造または立体構造状態のサブセットのタンパク質に結合する結合剤のことである。当業者であれば、タンパク質の特定の立体構造または立体構造状態に特異的にまたは選択的に結合する結合剤はこの特定の立体構造または立体構造状態を安定化することは認識するであろう。
用語「親和性」とは、本明細書で使用されるように、受容体とリガンドの平衡状態をその結合により形成される複合体の存在のほうに移行させるように、リガンドが受容体上の抗原に結合する程度のことである。したがって、例えば、抗原標的と抗体(断片)が比較的等しい濃度で結合している場合、高親和性の抗体(断片)は、平衡状態を高濃度の得られる複合体のほうに移行させるように利用できる抗原に結合することになる。結合ドメインと抗原標的の間の親和性を記述するのは一般に解離定数を使用する。典型的には、解離定数は10−5Mより低い。好ましくは、解離定数は10−6Mより低く、さらに好ましくは10−7Mより低い。最も好ましくは、解離定数は10−8Mより低い。リガンドとその標的タンパク質の間の親和性を記述する他の方法は会合定数(Ka)、阻害定数(Ki)、または最大半量抑制濃度(IC50)もしくは最大半量有効濃度(EC50)を測定することによってリガンドの効力を間接的に評価することによる。本発明の範囲内では、リガンドは、GPCR上の立体構造エピトープに結合する結合剤、好ましくは抗体などの免疫グロブリン、またはVHHもしくはナノボディなどの免疫グロブリン断片であってよい。
用語「特異性」とは、本明細書で使用されるように、結合剤、特に免疫グロブリンまたはVHHもしくはナノボディなどの免疫グロブリン断片が異なる抗原に対して1つの抗原に優先的に結合する能力のことであり、必ずしも高親和性を意味しない。
用語「特異的に結合する」および「特異的結合」とは、本明細書で使用されるように、一般には、結合剤、特に抗体などの免疫グロブリン、またはVHHもしくはナノボディなどの免疫グロブリン断片が異なる抗原の均一な混合物に存在する特定の抗原に優先的に結合する能力のことである。ある種の実施形態では、特異的結合相互作用は、いくつかの実施形態では、約10〜100倍またはそれよりも多い(例えば、約1000または10,000倍を超えて)、試料中において望ましい抗原と望ましくない抗原を識別することになる。GPCR、特にオピオイド受容体の立体構造状態の範囲という状況内では、用語は特に、結合剤(本明細書に定義される)が、別の立体構造状態と比べた場合、GPCRの特定の立体構造状態を優先的に認識するおよび/または結合する能力のことである。
本明細書で使用されるように、本発明の状況での用語「立体構造選択性結合剤」とは、立体構造選択的に標的タンパク質に結合する結合剤のことである。タンパク質の特定の立体構造または立体構造状態に選択的に結合する結合剤とは、そのタンパク質が帯びる可能性のある他の立体構造または立体構造状態よりも高い親和性で立体構造または立体構造状態のサブセットのタンパク質に結合する結合剤のことである。当業者であれば、タンパク質の特定の立体構造または立体構造状態に選択的に結合する結合剤はこの特定の立体構造または立体構造状態のタンパク質を安定化するまたは保持することは認識されるであろう。例えば、活性状態の立体構造選択性結合剤であれば活性な立体構造状態のGPCRに優先的に結合し、不活性な立体構造状態のGPCRには結合しないまたは結合してもわずかであり、したがって、前記活性な立体構造状態に対してより高い親和性を有することになり、または逆も同じである。用語「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、「優先的に結合する」、およびその文法的等価物は本明細書では互換的に使用される。用語「立体構造的に特異的な」または「立体構造的に選択的な」も本明細書では互換的に使用される。
本明細書で使用される用語「化合物」または「試験化合物」または「候補化合物」または「薬物候補化合物」は、スクリーニングアッセイまたは創薬アッセイなどのアッセイにおいて試験される、天然に存在するまたは合成の任意の分子を記述する。したがって、これらの化合物は有機または無機化合物を含む。化合物には、低分子量を特徴とするポリヌクレオチド、脂質またはホルモン類似物が含まれる。他の生体高分子有機試験化合物には、約2〜約40アミノ酸を含む小ペプチドまたはペプチド様分子(ペプチド模倣体)および抗体、抗体断片または抗体コンジュゲートなどの約40〜約500アミノ酸を含む大きなポリペプチドが含まれる。試験化合物はタンパク質スキャフォールドでもよい。ハイスループット目的で、十分な範囲の多様性を提供するコンビナトリアルまたはランダム化ライブラリーなどの試験化合物ライブラリーを使用することができる。例には、天然化合物ライブラリー、アロステリック化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体断片ライブラリー、合成化合物ライブラリー、断片ベースのライブラリー、ファージディスプレイライブラリーなどが含まれるがこれらに限定されない。さらに詳細な説明はさらに本明細書に見出せる。
本明細書で使用されるように、用語「リガンド」とは、GPCR、特にオピオイド受容体に特異的に結合する分子を意味する。リガンドは、限定する目的ではなく、ポリペプチド、脂質、小分子、抗体、抗体断片、核酸、炭水化物であってよい。リガンドは合成でも天然に存在しているものでもよい。リガンドには、リガンドであって、未変性のGPCRに対する内在性天然リガンドである「天然リガンド」も含まれる。本発明の状況内で、リガンドはGPCRに細胞内でまたは細胞外で結合してもよい。リガンドはアゴニスト、部分的アゴニスト、インバースアゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレーターでもよく、オルソステリック部位でまたはアロステリック部位で結合してもよい。特定の実施形態では、リガンドは「立体構造選択性リガンド」または「立体構造特異的リガンド」でもよく、そのようなリガンドは立体構造選択的にGPCRに結合することを意味する。立体構造選択性リガンドは、GPCRが帯びる可能性がある他の立体構造よりも高い親和性でGPCRの特定の立体構造に結合する。明確にするために、ニュートラルアンタゴニストは立体構造選択性リガンドとは考えていない。なぜならば、ニュートラルアンタゴニストはGPCRの異なる立体構造を識別しないからである。
「オルソステリックリガンド」とは、本明細書で使用されるように、GPCRの活性部位、特にオピオイド受容体に結合するリガンド(天然でも合成でも)のことであり、その有効性、または言い換えると、前記リガンドが特定の経路を通じたシグナル伝達に対して及ぼす効果に従ってさらに分類される。本明細書で使用されるように、「アゴニスト」とは、受容体タンパク質に結合することにより、その受容体シグナル伝達活性を増加させるリガンドのことである。完全アゴニストは最大タンパク質刺激が可能であり、部分的アゴニストは飽和濃度でさえ完全活性を誘発することができない。部分的アゴニストは、さらに強いアゴニストの結合を妨げることにより「ブロッカー」としての機能も果たすことが可能である。「アンタゴニスト」は、「ニュートラルアンタゴニスト」とも呼ばれるが、いかなる活性も刺激することなく受容体に結合するリガンドのことである。「アンタゴニスト」は、他のリガンドの結合を妨げ、したがって、アゴニスト誘導活性をブロックするその能力のために「ブロッカー」としても知られる。さらに、「インバースアゴニスト」とは、アゴニスト効果をブロックすることに加えて、受容体の基礎または構成的活性を非リガンド化タンパク質の活性よりも下に抑えるアンタゴニストのことである。
本明細書で使用されるリガンドは、受容体シグナル伝達活性のサブセット、例えば、GPCRの場合は、Gタンパク質またはβアレスチン機能の選択的活性化を選択的に刺激する能力を有する「偏ったリガンド」でもよい。そのようなリガンドは「偏ったリガンド」、「偏ったアゴニスト」または「機能的に選択性のアゴニスト」として知られる。さらに詳細には、リガンドバイアスは、異なるシグナルに異なる相対的有効性で複数の受容体活性をリガンド刺激することを特徴とする不完全バイアス(非絶対的選択性)でもよく、または別の既知の受容体タンパク質活性を全く刺激せずに1つの受容体タンパク質活性をリガンド刺激することを特徴とする完全なバイアスであってもよい。
別の種類のリガンドはアロステリックレギュレーターとして知られている。「アロステリックレギュレーター」あるいは「アロステリックモジュレーター」、「アロステリックリガンド」または「エフェクター分子」とは、本明細書で使用されるように、GPCR、特にオピオイド受容体のアロステリック部位(すなわち、タンパク質活性部位とは物理的に異なる調節部位)で結合するリガンドのことである。オルソステリックリガンドとは対照的に、アロステリックモジュレーターは、内在性リガンドも結合しているとしても受容体タンパク質に異なる部位で結合してその機能を改変するので、非競合的である。タンパク質の活性を増強するアロステリックレギュレーターは、本明細書では「アロステリック活性化因子」または「陽性アロステリックモジュレーター」(PAM)と呼ばれ、タンパク質の活性を減少させるアロステリックレギュレーターは、本明細書では「アロステリック阻害因子」あるいは「陰性アロステリックモジュレーター」(NAM)と呼ばれる。
本明細書で使用されるように、用語「決定する」、「測定する」、「評価する」、「アッセイする」は互換的に使用されており、定量的決定と定性的決定の両方を含む。
用語「抗体」は、免疫グロブリンまたは抗原結合が可能であるその任意の断片を意味することが意図されている。用語「抗体」とは、単鎖抗体および結合ドメインが1つだけの抗体のことでもある。
本明細書で使用されるように、抗体という状況での用語「相補性決定領域」または「CDR」とは、H(重)鎖またはL(軽)鎖の可変領域(それぞれVHおよびVLとも略記される)のことであり、抗原標的に特異的に結合できるアミノ酸配列を含有する。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造に対する抗体の基本的特異性を説明する。そのような領域は「超可変領域」とも呼ばれる。CDRは可変領域内の非近接の一続きのアミノ酸を表すが、種とは無関係に、可変重鎖および軽鎖領域内のこれらの重要なアミノ酸配列の位置は、可変鎖のアミノ酸配列内に類似する位置を有することが分かっている。すべての正準抗体の可変重鎖および軽鎖はそれぞれが3つのCDR領域を有し、それぞれが、それぞれの軽鎖(L)と重鎖(H)についてその他の鎖(L1、L2、L3、H1、H2、H3と名付けられる)とは近接していない。免疫グロブリン単一可変ドメイン、特にナノボディは、一般に4つの「フレームワーク配列もしくは領域」またはFRおよび3つの「相補性決定領域」またはCDRを含むと考えることができる単一アミノ酸鎖を含む。ナノボディは3つのCDR領域を有し、それぞれがその他(CDR1、CDR2、CDR3と名付けられる)とは近接していない。FRとCDR配列の描写は、例えば、VドメインおよびV様ドメインについてのIMGT独自の付番方式に基づくことが可能である(Lefranc et al. 2003, Developmental and Comparative Immunology 27:55)。
詳細な説明
オピオイド受容体およびオピオイド受容体を含む複合体に対する結合剤
本発明の第1の態様は、オピオイド受容体ファミリー(ORまたはOP受容体)のGPCRに向けられているおよび/または特異的に結合することができる結合剤に関する。好ましい実施形態によれば、本発明はオピオイド受容体ファミリー(ORまたはOP受容体)のGPCRに向けられているおよび/または特異的に結合することができる立体構造選択性結合剤に関する。
本明細書で使用されるように、「オピオイド受容体」とはGPCR(本明細書で定義されている)のスーパーファミリーに、さらに詳細にはファミリーA GPCRに属する受容体のことであり、μ(ミューまたはMOPまたはMor1)、δ(デルタまたはDOP)、κ(カッパまたはKOP)オピオイド受容体、および最後にNOPと名付けられた4種が含まれる。表1も参照されたい。オピオイド受容体のアミノ酸配列(およびアミノ酸配列をコードするcDNAのヌクレオチド配列)は、例えば、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)を照会することにより容易に入手可能である。ヒト遺伝子のHGNC標準化命名法;異なる生物由来の異なるアイソフォームの受託番号はUniprot(www.uniprot.org)から入手可能である。表4も参照されたい。さらに、受容体命名法の包括的概要、オピオイド受容体に関する薬理学的、機能的および病態生理学的情報はIUPHARデータベース(http://www.iuphar-db.org/)から検索可能である。
好ましい実施形態によれば、本発明の結合剤はオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する。オピオイド受容体の性質は本発明にとって決定的に重要というわけではなく、真菌(酵母を含む)、線虫、ウイルス、昆虫、植物、トリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ)、爬虫類または哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、スナネズミ、イヌ、ネコ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、クジラ、サル、ラクダ、またはヒト)を含むいかなる生物由来でもよい。好ましくは、オピオイド受容体は哺乳動物起源、さらに好ましくは、ヒト起源である。
特定の実施形態では、本発明の結合剤は、ヒトミューオピオイド受容体(配列番号50)などのミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する。別の特定の実施形態では、本発明の結合剤は、ヒトデルタオピオイド受容体(配列番号54)などのデルタオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の結合剤は、ヒトカッパオピオイド受容体(配列番号53)などのカッパオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の結合剤は、ヒトノシセプチン受容体(配列番号55)などのノシセプチン受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する。好ましくは、本発明の結合剤は、ミューオピオイド受容体、特にヒトミューオピオイド受容体(配列番号50)に向けられているおよび/または特異的に結合する。特定の実施形態によれば、ヒトミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤は、デルタオピオイド受容体とおよび/またはカッパオピオイド受容体とおよび/またはノシセプチン受容体と交差反応性である。別の特定の実施形態によれば、ヒトミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤は、デルタオピオイド受容体ともカッパオピオイド受容体ともノシセプチン受容体とも交差反応性ではない。
結合剤の必要条件は、オピオイド受容体、特にミューオピオイド受容体に特異的に結合する(本明細書で定義される)その能力である。したがって、結合剤はオピオイド受容体のいかなる立体構造エピトープ(本明細書で定義される)にも向けることができる。「立体構造エピトープ」に特異的に結合する結合剤は、折り畳まれたタンパク質の三次(すなわち、三次元)構造に特異的に結合し、はるかに減少した(すなわち、少なくとも2、5、10、50または100の係数で)親和性で線形(すなわち、折り畳まれていない、変性した)タンパク質に結合する。特に、前記立体構造エピトープは、オピオイド受容体の細胞内もしくは細胞外領域、または膜内領域、またはドメインもしくはループ構造の一部でもよい。したがって、特定の実施形態によれば、結合剤はオピオイド受容体の細胞外領域、ドメイン、ループもしくは他の細胞外立体構造エピトープに向けることができるが、好ましくは、膜貫通ドメインの細胞外部分に、またはさらに好ましくは、膜貫通ドメインを連結している細胞外ループに向けられる。代わりに、結合剤はオピオイド受容体の細胞内領域、ドメイン、ループもしくは他の細胞内立体構造エピトープに向けることができるが、好ましくは、膜貫通ドメインの細胞内部分に、またはさらに好ましくは、膜貫通ドメインを連結している細胞内ループに向けられる。他の特定の実施形態では、結合剤は、内在性オルソステリックアゴニストを含むがこれに限定されない、天然のリガンドの結合部位の一部を形成する立体構造エピトープに向けることができる。さらに他の実施形態では、結合剤は、Gタンパク質結合部位またはβアレスチン結合部位を含むがこれらに限定されない、下流シグナル伝達タンパク質のための結合部位に含まれる立体構造エピトープ、特に細胞内エピトープに向けることができる。
特定の一実施形態では、オピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤は、受容体の細胞外立体構造エピトープに結合する。さらに特定の実施形態では、オピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤は、オピオイド受容体に結合しているオルソステリックリガンドを置換することができる、またはオルソステリックリガンドのオピオイド受容体への結合を妨げる。好ましい実施形態によれば、本発明の結合剤はオピオイド受容体上のオルソステリックリガンドを特異的に置換することができ、リガンド結合シグナルの平均置換は少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%またはそれよりも多い。平均置換の割合はいくつかの方法で、例えば、当技術分野で既知のリガンド置換アッセイにより決定することが可能である(実施例のセクションも参照)。オピオイド受容体のオルソステリックリガンドは本明細書でさらに説明され、当技術分野では周知である。
別の特定の実施形態では、オピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤は、受容体の細胞内立体構造エピトープに結合する。
結合剤は好ましくは、特定の立体構造のオピオイド受容体を安定化することができることは理解されるであろう。用語「安定化する」、または文法的に等価な用語は、上文で定義したように、構造(例えば、立体構造状態)および/または特定の生物活性(例えば、細胞内シグナル伝達活性、リガンド結合親和性、等)に関してオピオイド受容体の安定性が増すことを意味する。構造および/または特定の生物活性に関して安定性が増すことに関連して、これは、活性についての機能的アッセイ(例えば、Ca2+放出、cAMP生成または転写活性、βアレスチン動員、等)もしくはリガンド結合によって、または中でも、X線結晶解析、NMR、もしくはスピン標識などの物理的方法によって容易に決定することができる。用語「安定化する」には、変性剤または変性条件により誘導される非生理的条件下で受容体の熱安定性が増加することも含まれる。用語「熱安定化する(thermostabilize)」、「熱安定化する(thermostabilizing)」、「熱安定性を増加する」とは、本明細書で使用されるように、受容体の熱動力学的特性というよりむしろ機能的特性のことであり、加熱、冷却、凍結、化学的変性剤、pH、洗剤、塩、添加剤、プロテアーゼまたは温度を含むがこれらに限定されない熱的および/または化学的アプローチにより誘導される不可逆的変性に対するタンパク質の抵抗性のことである。不可逆的変性が起きると、タンパク質の機能的立体構造の折り畳みが不可逆的に解けて、生物活性を失い、変性タンパク質は凝集してしまう。熱に対する安定性の増加に関連して、これは、リガンド結合を測定することにより、または温度の増加での折り畳みの解けに対して感受性である蛍光、CDまたは光散乱などの分光学的方法を使用することにより容易に決定することが可能である。結合剤は機能的立体構造状態のオピオイド受容体の熱安定性の増加によって測定される安定性を少なくとも2℃、少なくとも5℃、少なくとも8℃、さらに好ましくは、少なくとも10℃または15℃または20℃増加することができることが好ましい。洗剤に対するまたはカオトロープに対する安定性の増加と関連して、典型的にはオピオイド受容体は、試験洗剤または試験カオトロープ剤の存在下で限定された時間インキュベートされ、その安定性は、場合により上で考察した増加する温度で、例えば、リガンド結合または分光学的方法を使用して決定される。あるいは、結合剤は、オピオイド受容体の機能的立体構造状態の安定性を極端なpHまで増加することができる。極端なpHとの関連では、典型的な試験pHは、例えば、6〜8の範囲、5.5〜8.5の範囲、5〜9の範囲、4.5〜9.5の範囲で、さらに具体的には、4.5〜5.5の範囲で(低pH)または8.5〜9.5の範囲で(高pH)で選択されることになる。用語「(熱)安定化する((thermo)stabilize)」、「(熱)安定化する((thermo)stabilizing)」、「(熱)安定性を増加する」とは、本明細書で使用されるように、脂質粒子または脂質層(例えば、脂質単層、脂質二重層など)に包埋されているオピオイド受容体におよび洗剤中に可溶化されているオピオイド受容体に当て嵌まる。
したがって、本発明の結合剤は、結合剤が結合するとオピオイド受容体の特定の立体構造を安定化することが特に想定されている。本発明の特定の一実施形態によれば、オピオイド受容体は活性な立体構造に対して立体構造選択性である結合剤が結合すると活性な立体構造で安定化される。用語「活性な立体構造」とは、本明細書で使用されるように、Gタンパク質依存性シグナル伝達およびGタンパク質非依存性シグナル伝達(例えば、βアレスチンシグナル伝達)を含む、細胞内エフェクター系にシグナル伝達を向かわせる受容体立体構造の範囲のことである。したがって、「活性な立体構造」は、アゴニスト立体構造、部分的アゴニスト立体構造または偏ったアゴニスト立体構造を含む、ある範囲のリガンド特異的立体構造を包含する。代わりに、オピオイド受容体は、不活性立体構造に対して立体構造選択性である結合剤が結合すると不活性な立体構造で安定化される。用語「不活性な立体構造」とは、本明細書で使用されるように、シグナル伝達を細胞内エフェクター系に向かわせないまたはブロックする受容体立体構造の範囲のことである。したがって、「不活性な立体構造」はインバースアゴニスト立体構造を含む、ある範囲のリガンド特異的立体構造を包含する。リガンドの結合部位は活性なまたは不活性な立体構造を得るのに決定的に重要ではないことは理解されるであろう。したがって、オルソステリックリガンドならびにアロステリックモジュレーターは、活性なまたは不活性な立体構造のオピオイド受容体を等しく活性化することができる可能性がある。本発明の特定の実施形態によれば、オピオイド受容体を安定化することができる結合剤は、オルソステリック部位でもアロステリック部位でも結合することができる。他の特定の実施形態では、オピオイド受容体を安定化することができる結合剤は、オルソステリック部位でもアロステリック部位でも結合することによる、アゴニスト立体構造選択性リガンド、または部分的アゴニスト立体構造選択性リガンドまたは偏ったアゴニスト立体構造選択性リガンド、またはインバースアゴニスト立体構造選択性リガンドでもよい。
一般に、オピオイド受容体の活性立体構造を安定化する結合剤は、結合剤が非存在下での(または偽結合剤の存在下での)受容体と比べた場合、アゴニストに対する、さらに詳細には完全アゴニスト、部分的アゴニストまたは偏ったアゴニストに対する受容体の親和性を増加するまたは増強することになる。その上、オピオイド受容体の活性立体構造を安定化する結合剤は、結合剤が非存在下での(または偽結合剤の存在下での)受容体と比べた場合、インバースアゴニストに対する受容体の親和性を減少させることになる。これとは対照的に、オピオイド受容体の不活性立体構造を安定化する結合剤は、インバースアゴニストに対する受容体の親和性を増強し、結合剤が非存在下での(または偽結合剤の存在下での)受容体と比べた場合、アゴニストに対する、特に完全アゴニスト、部分的アゴニストまたは偏ったアゴニストに対する受容体の親和性を減少させることになる。リガンドに対する親和性の増加または減少は、EC50、IC50、Kd、Kiまたは当業者には既知である親和性または効力についての他の任意の基準の、それぞれ、減少または増加により測定することができる。オピオイド受容体の特定の立体構造を安定化する結合剤は、受容体に結合すると、立体構造選択性リガンドの親和性を少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、さらに好ましくは、少なくとも100倍、さらに好ましくは少なくとも1000倍またはそれよりも多く増加させるまたは減少させることができることが特に好ましい。特定のシグナル伝達経路を始動させる/阻害する立体構造選択性リガンドの親和性測定は、天然リガンド、小分子、ならびに生物学的製剤を含むいかなる種類のリガンドでも用いて;オルソステリックリガンドならびにアロステリックモジュレーターを用いて;単一化合物ならびに化合物ライブラリーを用いて;リード化合物または断片を用いて;等で実行することができる。
特に好ましい実施形態によれば、オピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する本発明の結合剤はGタンパク質模倣物である。用語「Gタンパク質模倣物」とは、本明細書で使用されるように、オピオイド受容体に結合すると、天然のGタンパク質がオピオイド受容体に結合するのと類似する程度にオルソステリックまたはアロステリックアゴニストに対する受容体の親和性を増強する結合剤のことである。好ましくは、Gタンパク質模倣物である結合剤は、オピオイド受容体のGタンパク質結合部位を占有することになる。オピオイド受容体の天然のGタンパク質はGiタンパク質であることは理解されるであろう。好ましい実施形態では、オピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する本発明の結合剤はGiタンパク質模倣物である(実施例のセクションでも説明される)。
本発明の結合剤が結合することになるオピオイド受容体は天然に存在するまたは天然には存在しない(すなわち、ヒトにより改変された)受容体(本明細書に定義されている)でもよいことは理解されるであろう。特に、オピオイド受容体の野生型多形変異体およびアイソフォーム、ならびに異なる種にわたるオルソログは天然に存在するタンパク質の例であり、中でも、例えばおよび限定なしで、哺乳動物に、さらに具体的にはヒトに、またはウイルスに、または植物に、または昆虫に見出される。そのような受容体は天然に見出される。例えば、「ヒトミューオピオイド受容体」は、Genbank受託番号NM_000914の天然に存在する「ヒトミューオピオイド受容体」に少なくとも95%同一である(例えば、少なくとも95%または少なくとも98%同一である)アミノ酸配列を有する。突然変異を起こし天然に存在するオピオイド受容体の変異体である野生型オピオイド受容体は、天然には存在しないタンパク質の例である。天然には存在しないオピオイド受容体の非限定的例には、限定なしで、突然変異により構成的に活性になったオピオイド受容体、ループ欠失のあるオピオイド受容体、Nおよび/またはC末端欠失のあるオピオイド受容体、そのアミノ酸またはヌクレオチド配列との関連で置換、挿入もしくは付加、またはその任意の組合せのあるオピオイド受容体、あるいは天然に存在するオピオイド受容体の他の変異体が含まれる。キメラもしくはハイブリッド構造、例えば、1つのオピオイド受容体由来のNおよび/もしくはC末端と別のオピオイド受容体のループのあるキメラオピオイド受容体を含む、またはGPCR結晶化において役立つものとしてのT4リソザイム、フラボドキシン、キシラナーゼ、ルブレドキシンもしくはチトクロムbなどの部分に融合しているオピオイド受容体を含む標的オピオイド受容体も、本発明の範囲内に含まれる(Chun et al. 2012および特許出願の国際公開第2012/158555号パンフレット、国際公開第2012/030735号パンフレット、国際公開第2012/148586号パンフレットにも記載されている)。本発明の範囲内の特定の実施形態によれば、天然には存在しないオピオイド受容体は、対応する天然に存在するオピオイド受容体に少なくとも80%同一である、少なくとも90%同一である、少なくとも95%同一であるまたは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有することができる。
したがって、好ましい実施形態によれば、結合剤は天然に存在するオピオイド受容体ならびに天然には存在しないオピオイド受容体の両方を認識することができる。これはある種の状況では、および目的または適用に応じて特に有利である。例えば、および説明目的だけのために、本発明の結合剤により可能になる特定の立体構造に安定化されたオピオイド受容体の結晶を得る可能性を増加するために、立体構造に影響を与えずにまたは最小限の影響を与えるだけであるタンパク質工学(例えば、アゴニストに対する親和性が増加した活性な立体構造)を実施することが望ましい場合がある。または、代わりにもしくはさらに、オピオイド受容体の細胞発現レベルを増加するために、もしくは安定性を増加するために、対象の受容体にある種の突然変異を導入することも検討してよいであろう。
用語「結合剤」は、本明細書で使用されるように、特異的な分子間相互作用を使用してオピオイド受容体に結合することができるタンパク質性(タンパク質、タンパク質様またはタンパク質含有)分子の全体または一部を意味する。特に、用語「結合剤」は、Gタンパク質、アレスチン、内在性リガンド、またはその変異体もしくは誘導体(断片を含む)などの、オピオイド受容体の天然に存在する結合パートナーを含むことを意味しない。さらに具体的には、用語「結合剤」とは、ポリペプチド、さらに詳細にはタンパク質ドメインのことである。適切なタンパク質ドメインとは、全体的タンパク質構造のうち、自己安定化しており、タンパク質鎖の残りとは独立して折り畳まれ、「結合ドメイン」と呼ばれることが多いエレメントである。そのような結合ドメインは、約25アミノ酸から500アミノ酸およびそれよりも多くまで長さは変動する。多くの結合ドメインは折り畳みに分類することが可能であり、認識可能で、同定可能な三次元構造体である。いくつかの折り畳みは多くの異なるタンパク質において一般的なので、特別な名称が付けられている。非限定的例は、中でも、3ヘリックスまたは4ヘリックス束、アルマジロリピートドメイン、ロイシンリッチリピートドメイン、PDZドメイン、SUMOまたはSUMO様ドメイン、カドヘリンドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、ホスホチロシン結合ドメイン、プレクストリン相同ドメイン、src相同2ドメインから選択される結合ドメインである。したがって、結合ドメインは、天然に存在する分子由来、例えば、自然もしくは適応免疫系の成分由来でもよく、または結合ドメインは完全に人工的に設計されていてもよい。
一般に、結合ドメインは免疫グロブリンベースでも可能であり、または微生物タンパク質、プロテアーゼ阻害因子、毒素、フィブロネクチン、リポカリン、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質またはリピートモチーフタンパク質を含むがこれらに限定されないタンパク質に存在するドメインをベースとすることが可能である。当技術分野で知られている結合ドメインの特定の例には、抗体、重鎖抗体(hcAb)、単一ドメイン抗体(sdAb)、ミニボディ、ラクダ重鎖抗体由来可変ドメイン(VHHまたはナノボディ)、サメ抗体由来新抗原受容体の可変ドメイン(VNAR)、アルファボディ、プロテインA、プロテインG、デザインドアンキリンリピートドメイン(DARPin)、フィブロネクチンIII型リピート、アンチカリン、ノッチン、操作CH2ドメイン(ナノボディ)、操作SH3ドメイン、アフィボディ、ペプチドおよびタンパク質、リポペプチド(例えば、ペプデューシン(pepducin))が含まれるがこれらに限定されない(例えば、Gebauer & Skerra, 2009; Skerra, 2000; Starovasnik et al., 1997; Binz et al., 2004; Koide et al., 1998; Dimitrov, 2009; Nygren et al. 2008;国際公開第2010066740号パンフレット参照)。選択方法を使用して特定種類の結合ドメインを作製する場合、ランダム化された潜在的相互作用残基を含有するコンセンサスまたはフレームワーク配列を含むコンビナトリアルライブラリーを使用して、タンパク質などの対象の分子への結合についてスクリーニングすることが多い。
好ましい実施形態によれば、本発明の結合剤は自然または適応免疫系に由来することを特に想定している。好ましくは、前記結合剤は免疫グロブリン由来である。好ましくは、本発明に従った結合剤は抗体または抗体断片に由来する。用語「抗体(Ab)」とは一般に、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子にコードされているポリペプチド、またはその機能的断片のことであり、当業者には既知である。抗体は、それぞれの対が1つの「軽」鎖(約25kDa)と1つの「重」鎖(約50kDa)を有する2つの同一の対のポリペプチド鎖を含む従来の4鎖免疫グロブリンを含むことを意味する。典型的には、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)は相互作用して抗原結合部位を形成する。用語「抗体」は、単鎖全抗体および抗原結合断片を含む、全抗体を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)およびVLまたはVHドメインのどちらかを含むまたはVLまたはVHドメインのどちらかからなる断片、ならびにそれらの任意の組合せまたは標的抗原に結合することができる免疫グロブリンペプチドの任意の他の機能的部分を含むがこれらに限定されない抗原結合抗体断片であってよい。用語「抗体」は、本明細書でさらに定義されるように、免疫グロブリン単一可変ドメインを含む重鎖抗体、またはその断片を含むことも意味する。
用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、抗原結合部位が、(典型的には2つの免疫グロブリン可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成している従来の免疫グロブリンまたはその断片とは異なっている)単一免疫グロブリンドメイン上に存在し、それによって形成されている分子を定義している。しかしながら、用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、抗原結合部位が単一可変ドメインで形成されている従来の免疫グロブリンの断片を確かに含むことは明らかなはずである。好ましくは、本発明の範囲内の結合剤は免疫グロブリン単一可変ドメインである。
一般に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、好ましくは以下の式(1):
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4(1)
に従って、4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)および3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)または任意の適切なその断片(通常、相補性決定領域のうちの少なくとも1つを形成するアミノ酸残基のうちの少なくともいくつかを含有する)を含むアミノ酸配列である。4つのFRと3つのCDRを含む免疫グロブリン単一可変ドメインは当業者には既知であり、非限定的例として、Wesolowski et al. 2009に記載されている。免疫グロブリン単一可変ドメインの典型的な、しかし非限定的な例には、単一抗原結合単位を形成することができる限り、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VLドメイン配列)もしくはその適切な断片、または重鎖可変ドメイン配列(例えば、VHドメイン配列またはVHHドメイン配列)もしくはその適切な断片が含まれる。したがって、好ましい実施形態によれば、結合剤は、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VLドメイン配列)または重鎖可変ドメイン配列(例えば、VHドメイン配列)である免疫グロブリン単一可変ドメインであり、さらに具体的には、免疫グロブリン単一可変ドメインは従来の4鎖抗体由来である重鎖可変ドメイン配列または重鎖抗体由来である重鎖可変ドメイン配列である。免疫グロブリン単一可変ドメインは、ドメイン抗体、または単一ドメイン抗体、または「dAB」もしくは「dAb」、またはナノボディ(本明細書で定義されている)、または別の免疫グロブリン単一可変ドメイン、またはそのいずれか1つの任意の適切な断片であってもよい。単一ドメイン抗体の一般的な記述は、以下の書籍"Single domain antibodies", Methods in Molecular Biology, Eds. Saerens and Muyldermans, 2012, Vol 911を参照する。免疫グロブリン単一可変ドメインは一般に、4つの「フレームワーク配列」またはFRおよび3つの「相補性決定領域」またはCDR(上文で定義されている)を含むと考えることができる単一アミノ酸鎖を含む。免疫グロブリン単一可変ドメインのフレームワーク領域もその抗原への結合に貢献できることは明白なはずである(Desmyter et al 2002; Korotkov et al. 2009)。CDR配列(およびしたがってFR配列も)の描写は、VドメインおよびV様ドメインについてのIMGT独自の付番方式に基づくことが可能である(Lefranc et al. 2003)。
代わりに、FRおよびCDR配列の描写は、Riechmann and Muyldermans (2000)の論文でラクダ由来のVHHドメインに適用されたKabat付番方式を使用することにより実行することが可能である。
その最も広い意味での結合剤としての免疫グロブリン単一可変ドメインは特定の生物学的供給源または特定の調製方法に限定されないことは注目するべきである。用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト、サメ、ラクダ可変ドメインを含む、異なる起源の可変ドメインを包含する。特定の実施形態によれば、免疫グロブリン単一可変ドメインはサメ抗体(いわゆる免疫グロブリン新抗原受容体またはIgNAR)由来であり、さらに具体的には軽鎖を欠く天然に存在する重鎖サメ抗体由来であり、VNARドメイン配列として知られている。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメインはラクダ抗体由来である。さらに好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメインは軽鎖を欠く天然に存在する重鎖ラクダ抗体由来であり、VHHドメイン配列またはナノボディとして知られている。
特に好ましい実施形態によれば、本発明の結合剤は、ナノボディ(本明細書でされに定義され、VHHを含むがこれに限定されない)である免疫グロブリン単一可変ドメインである。用語「ナノボディ(Nb)」とは、本明細書で使用されるように、単一ドメイン抗原結合断片である。用語は特に、天然に存在する重鎖抗体由来の単一可変ドメインのことであり、当業者には既知である。ナノボディは通常、ラクダに見られる重鎖のみ抗体(軽鎖を欠く)由来であり(Hamers-Casterman et al. 1993; Desmyter et al. 1996)、したがって、VHH抗体またはVHH配列と呼ばれることが多い。ラクダは旧世界ラクダ(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))および新世界ラクダ(例えば、アルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、グアナコ(Lama guanicoe)およびビクーニャ(Lama vicugna))を含む。ナノボディ(Nanobody)(登録商標)およびナノボディーズ(Nanobodies)(登録商標)は、Ablynx NV(Belgium)の登録商標である。VHHまたはナノボディの追加の記述は、以下の書籍"Single domain antibodies", Methods in Molecular Biology, Eds. Saerens and Muyldermans, 2012, Vol 911を、特に、the Chapter by Vincke and Muyldermans (2012)をならびに特許出願の非限定的一覧を参照し、特許出願は一般的背景技術として言及され、the Vrije Universiteit Brusselの国際公開第94/04678号パンフレット、国際公開第95/04079号パンフレット、国際公開第96/34103号パンフレット;Unileverの国際公開第94/25591号パンフレット、国際公開第99/37681号パンフレット、国際公開第00/40968号パンフレット、国際公開第00/43507号パンフレット、国際公開第0065057号パンフレット、国際公開第01/40310号パンフレット、国際公開第01/44301号パンフレット、欧州特許出願公開第134231号明細書および国際公開第02/48193号パンフレット;the Vlaams Instituut voor Biotechnologie (VIB)の国際公開第97/49805号パンフレット、国際公開第01/21817号パンフレット、国際公開第03/035694号パンフレット、国際公開第03/054016号パンフレットおよび国際公開第03/055527号パンフレット;Ablynx N.V.による国際公開第04/041867号パンフレット、国際公開第04/041862号パンフレット、国際公開第04/041865号パンフレット、国際公開第04/041863号パンフレット、国際公開第04/062551号パンフレット、国際公開第05/044858号パンフレット、国際公開第06/40153号パンフレット、国際公開第06/079372号パンフレット、国際公開第06/122786号パンフレット、国際公開第06/122787号パンフレットおよび国際公開第06/122825号パンフレットならびにAblynx N.V.による追加公開特許出願が含まれる。当業者であれば承知しているように、ナノボディは、特に(Kabat付番方式によれば)フレームワーク配列の1つまたは複数に1つまたは複数のラクダ科「ホールマーク残基」が存在することに特徴付けられ、これは例えば、国際公開第08/020079号パンフレット、ページ75、表A−3に記載されており、この特許文献は参照により本明細書に組み込まれる。その最も広い意味での本発明のナノボディは、特定の生物学的供給源または特定の調製方法に限定されないことは注目するべきである。例えば、ナノボディは一般に、(1)天然に存在する重鎖抗体のVHHドメインを単離することにより、(2)天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現により、(3)天然に存在するVHHドメインの「ヒト化」によりもしくはそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現により、(4)任意の動物種由来の、特にヒト由来などの哺乳動物種由来の天然に存在するVHドメインの「ラクダ化」によりもしくはそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現により、(5)当技術分野に記載されている「ドメイン抗体」もしくは「Dab」の「ラクダ化」により、またはそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現により、(6)タンパク質、ポリペプチドもしくはそれ自体が既知の他のアミノ酸配列を調製するための合成もしくは半合成技法を使用することにより、(7)それ自体が既知の核酸合成のための技法を使用してナノボディをコードする核酸を調製し、続いてそのようにして得られた核酸の発現によって、ならびに/あるいは(8)前記のもののうちの1つまたは複数の任意の組合せにより得ることが可能である。ナノボディのヒト化および/またはラクダ化を含む、ナノボディのさらなる説明は、例えば、国際公開第08/101985号パンフレットおよび国際公開第08/142164号パンフレット、ならびにさらに本明細書に見出すことができる。天然の標的の立体構造エピトープに結合する特定のクラスのナノボディはXapeonesと呼ばれ、特にここで想定している。Xapeone(商標)はVIB and VUB(Belgium)の商標である。Xapeone(商標)は、薬物標的を独特な立体構造に束縛するラクダ単一ドメイン抗体である。
本発明の範囲内で、用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、「ヒト化」または「ラクダ化」されている可変ドメイン、特に「ヒト化」または「ラクダ化」されているナノボディも包含する。例えば、「ヒト化」も「ラクダ化」も、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインをコードするヌクレオチド配列を提供し、次に、それ自体既知のやり方で、前記ヌクレオチド配列中の1つまたは複数のコドンを、新しいヌクレオチド配列が、それぞれ本発明の「ヒト化」または「ラクダ化」免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするように変化させることにより実施することが可能である。次に、この核酸は、本発明の所望の免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように、それ自体既知のやり方で発現させることが可能である。代わりに、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列に基づいて、それぞれ本発明の所望のヒト化またはラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列を設計し、次にそれ自体既知のペプチド合成のための技法を使用して新規に合成することが可能である。その上、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に基づいて、それぞれ本発明の所望のヒト化またはラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を設計し、次にそれ自体既知の核酸合成のための技法を使用して新規に合成することが可能であり、その後、このようにして得られた核酸は本発明の所望の免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように、それ自体既知のやり方で発現させることが可能である。天然に存在するVH配列または好ましくはVHH配列から開始して、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/または同一物をコードする核酸を得るための他の適切な方法および技法は、当業者からは明らかであり、例えば、本発明のナノボディまたはナノボディをコードするヌクレオチド配列もしくは核酸を提供するように、1つもしくは複数の天然に存在するVH配列のうちの1つもしくは複数の部分(例えば、1つまたは複数のFR配列および/またはCDR配列)、1つもしくは複数の天然に存在するVHH配列のうちの1つもしくは複数の部分(例えば、1つまたは複数のFR配列またはCDR配列)、および/または1つもしくは複数の合成もしくは半合成配列を適切なやり方で組み合わせることを含むことができる。
追加の特定の実施形態によれば、本発明は、ミューオピオイド受容体を標的とし、以下の式(1):
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4(1)
に従って、4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)および3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)を含むアミノ酸配列を含み、
CDR1は
a)配列番号13〜18、76
b)配列番号13〜18、76に少なくとも80%アミノ酸同一性を有するポリペプチド
c)配列番号13〜18、76と3、2または1つのアミノ酸の差異を有するポリペプチド
からなる群から選択され、
CDR2は
a)配列番号25〜30、78
b)配列番号25〜30、78に少なくとも80%アミノ酸同一性を有するポリペプチド
c)配列番号25〜30、78と3、2または1つのアミノ酸の差異を有するポリペプチド
からなる群から選択され、
CDR3は
a)配列番号37〜42、80
b)配列番号37〜42、80に少なくとも80%アミノ酸同一性を有するポリペプチド
c)配列番号37〜42、80と3、2または1つのアミノ酸の差異を有するポリペプチド
からなる群から選択される、
立体構造選択性結合剤、特に立体構造選択性免疫グロブリン単一可変ドメインを包含する。
本発明の特定の実施形態では、ミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインはナノボディまたはVHHであり、前記ナノボディは配列番号1〜6、74からなる群から選択されるアミノ酸配列またはその変異体を有する。特に好ましい実施形態では、本発明は、以下の式(1):
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4(1)
に従って、4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)および3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)を含むアミノ酸配列を含み、
CDR1は配列番号13であり、CDR2は配列番号25であり、CDR3は配列番号37である、またはCDR1は配列番号14であり、CDR2は配列番号26であり、CDR3は配列番号38である、またはCDR1は配列番号15であり、CDR2は配列番号27であり、CDR3は配列番号39である、またはCDR1は配列番号16であり、CDR2は配列番号28であり、CDR3は配列番号40である、またはCDR1は配列番号17であり、CDR2は配列番号29であり、CDR3は配列番号41である、またはCDR1は配列番号18であり、CDR2は配列番号30であり、CDR3は配列番号42である、またはCDR1は配列番号76であり、CDR2は配列番号78であり、CDR3は配列番号80である、
免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する。
さらに好ましくは、ミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤、特に免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1〜6、74からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。特定の一実施形態では、本発明の結合剤は配列番号1〜6、74により定義される。
特に、ミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤で、とりわけGタンパク質模倣物(上文で定義されている)として特徴付けられている結合剤の非限定的例は、配列番号1〜4からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである。ミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤で、とりわけ細胞外立体構造エピトープに結合することで特徴付けられている結合剤の非限定的例は、配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである。ミューオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤で、とりわけ細胞内立体構造エピトープに結合することで特徴付けられている結合剤の非限定的例は、配列番号6、74からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである。
本発明の範囲内には、免疫グロブリン単一可変ドメインの天然もしくは合成類似物、突然変異体、変異体、対立遺伝子、断片の一部(本明細書では集合的に「変異体」と呼ばれる)、特に本明細書で定義されるナノボディ、および特に配列番号1〜6の免疫グロブリン単一可変ドメインの変異体もある(表2〜3参照)。したがって、本発明の一実施形態によれば、その最も広い意味での用語「本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「本発明のナノボディ」はそのような変異体も網羅する。一般に、そのような変異体では、本明細書で定義される本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインと比べた場合、1つまたは複数のアミノ酸残基が置換されている、欠失しているおよび/または付加されていることがある。そのような置換、挿入または欠失はFRのうちの1つもしくは複数におよび/またはCDRのうちの1つもしくは複数に、特に配列番号1〜6、74の免疫グロブリン単一可変ドメインのFRおよびCDRの変異体に行うことができる(表2〜3参照)。変異体は、本明細書で使用されるように、PILEUPおよびBLASTなどのアルゴリズムを使用することにより電子的に測定することが可能である場合、それぞれのまたは任意のフレームワーク領域およびそれぞれのまたは任意の相補性決定領域が、基準配列中の対応する領域(すなわち、FR1_変異体対FR1_基準、CDR1_変異体対CDR1_基準、FR2_変異体対FR2_基準、CDR2_変異体対CDR2_基準、FR3_変異体対FR3_基準、CDR3_変異体対CDR3_基準、FR4_変異体対FR4_基準)に少なくとも80%同一性、好ましくは少なくとも85%同一性、さらに好ましくは90%同一性、さらに好ましくは95%同一性、またはさらに好ましくは99%同一性を示している配列である。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは米国立バイオテクノロジー情報センターを通して一般に公開されている(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。免疫グロブリン単一可変ドメインの1つまたは複数の配列のCDRのアミノ酸配列のアミノ酸同一性の程度を決定するため、フレームワーク領域を形成するアミノ酸残基は無視されることは理解されるであろう。同様に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの1つまたは複数の配列のFRのアミノ酸配列のアミノ酸同一性の程度を決定するため、相補性領域を形成するアミノ酸残基は無視される。免疫グロブリン単一可変ドメインのそのような変異体は、効力/親和性が改良されている可能性があるので特に有利であることがある。
非限定的例を用いれば、置換は、例えば、保存的置換(本明細書で定義されている)でもよく、および/またはアミノ酸残基は、別のVHHドメインの同じ位置に天然に存在する別のアミノ酸残基により置換することができる。したがって、免疫グロブリン単一可変ドメインの特性を改善する、あるいは免疫グロブリン単一可変ドメインの所望の特性をまたは所望の特性の釣り合いもしくは組合せを損なわない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインがもはやその意図する使用に適さなくなる程度まで)いずれか1つもしくは複数の置換、欠失もしくは挿入、またはその任意の組合せは本発明の範囲内に含まれる。当業者であれば一般に、本明細書の開示に基づいて、および場合により、例えば、限られた数の可能な置換を導入し、こうして得られた免疫グロブリン単一可変ドメインの特性に対するその影響を判定することを含むある程度の通例の実験後に適切な置換、欠失もしくは挿入、またはその適切な組合せを決定し選択することができるであろう。
「多価」型であり、化学的にまたは組換えDNA技法により、2つまたはそれよりも多い一価免疫グロブリン単一可変ドメインを互いに結合することにより形成される免疫グロブリン単一可変ドメインも本発明の範囲内に包含される。多価構築物の非限定的例には、「二価」構築物、「三価」構築物、「四価」構築物、などが含まれる。多価構築物内に含まれる免疫グロブリン単一可変ドメインは同一でも異なっていてもよい。別の特定の実施形態では、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは「多特異性」型であり、そのうちの少なくとも1つは特異性が異なる2つまたはそれよりも多い免疫グロブリン単一可変ドメインを互いに結合することにより形成される。多特異性構築物の非限定的例には、「二特異性」構築物、「三特異性」構築物、「四特異性」構築物、などが含まれる。このことをさらに説明するため、本発明の任意の多価または多特異性(本明細書で定義されている)免疫グロブリン単一可変ドメインを、同じ抗原上の2つもしくはそれよりも多い異なるエピトープに、例えば、オピオイド受容体の2つもしくはそれよりも多い異なるエピトープに適切に向けることができる、または2つもしくはそれよりも多い異なる抗原に、例えば、オピオイド受容体のエピトープおよびオピオイド受容体の天然の結合パートナー(例えば、Gタンパク質、βアレスチン)のエピトープに向けることができる。特に、本発明の一価免疫グロブリン単一可変ドメインは、それが標的受容体に、500nM未満、好ましくは200nM未満、さらに好ましくは、500pM未満などの10nM未満の親和性で結合することになる。本発明の多価または多特異性免疫グロブリン単一可変ドメインは、所望の受容体に対する増加した結合活性および/もしくは改善された選択性、ならびに/またはそのような多価もしくは多特異性免疫グロブリン単一可変ドメインの使用により得ることができる他の任意の所望の特性もしくは所望の特性の組合せも有する(またはそれについて操作および/もしくは選択する)ことができる。特定の実施形態では、本発明のそのような多価または多特異性結合ドメインは、GPCRのシグナル伝達活性を調節するのに改良された有効性も有することができる(またはそのために操作するおよび/または選択することができる)(さらに本明細書も参照)。
さらに、および本発明の結合剤を発現するのに使用される宿主生物に応じて、結合剤内の欠失および/または置換は、例えば、翻訳後修飾のための1つまたは複数の部位(例えば、1つまたは複数のグリコシル化部位)が取り除かれるように設計することができ、これは当業者の能力の範囲内である。代わりに、置換または挿入は、官能基の結合のための1つまたは複数の部位を導入するように設計することができる(本明細書でさらに説明される)。
結合剤は、一般的には、オピオイド受容体の天然に存在するまたは合成の類似物、変異体、突然変異体、対立遺伝子、部分、断片、およびアイソフォームのすべてに、または少なくとも、本発明の結合剤が結合するオピオイド受容体の抗原決定基(複数可)またはエピトープ(複数可)と基本的に同じである1つまたは複数の抗原決定基またはエピトープを含有するオピオイド受容体の類似物、変異体、突然変異体、対立遺伝子、部分、断片およびアイソフォームに結合することができるとも予想される。
別の態様では、本発明は、オピオイド受容体(上文に定義されている)とオピオイド受容体に向けられているおよび/または特異的に結合する結合剤(上文に定義されている)を含む複合体も提供する。非限定的例として、安定な複合体はサイズ排除クロマトグラフィーにより精製することができる。一実施形態によれば、上記の複合体は、少なくとも1つの他の受容体リガンド、好ましくは立体構造選択性リガンド(本明細書で定義されている)をさらに含む。リガンドの非限定的例には、完全アゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、天然の結合パートナー、アロステリックモジュレーターなどが含まれる。限定する目的なしで、これをさらに説明すると、ミューオピオイド受容体のアゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、スフェンタニル、フェンタニル、エトニタゼン、DAMGO、PL017、(−)−メサドン、モルヒネが含まれる。ミューオピオイド受容体のアンタゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、ナルトレキソン、ナルメフェン、ジプレノルフィン、CTAPが含まれる。その上、限定する目的なしで、カッパオピオイド受容体のアゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、(−)−ブレマゾシン、(−)−シクラゾシン、エトルフィンが含まれる。カッパオピオイド受容体のアンタゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、ナルトリンドール、ナルトレキソン、ノルビナルトルフィミンが含まれる。その上、デルタオピオイド受容体のアゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、ジプレノルフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、モルヒネが含まれる。デルタオピオイド受容体のアンタゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、ナルトリンドール、ナルトレキソン、ナロキソンが含まれる。その上、限定する目的なしで、NOP受容体のアゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、Ro64−6198、Ac−RYYRWK−NH2、UFP−112が含まれる。NOP受容体のアンタゴニストは当技術分野では既知であり、中でも、SB 612111、ペプチドIII−BTDが含まれる。追加の例はIUPHARデータベース(http://www.iuphar-db.org/)で見ることができる。推定内在性リガンドは表1に収載されている(上記参照)。
好ましい実施形態では、本発明に従った結合剤および/または複合体は、洗剤に可溶化されたなどの可溶化された形態である。代わりの好ましい実施形態では、本発明に従った結合剤および/または複合体は固体支持体に固定化されている。固体支持体ならびに固定化のための方法および技法の非限定的例は、さらに詳細に説明されている。さらに別の実施形態では、本発明に従った結合剤および/または複合体は、生物、組織、細胞、細胞株、または前記生物、組織、細胞もしくは細胞株由来の膜組成物もしくはリポソーム組成物を含む、細胞組成物中にある。膜またはリポソーム組成物の例には、細胞小器官、膜調製物、ウイルス、ウイルス様リポ粒子などが含まれるがこれらに限定されない。細胞組成物または膜様もしくはリポソーム組成物は天然または合成脂質を含むことができることは認識されるであろう。さらに別の好ましい実施形態では、複合体は結晶性である。したがって、複合体の結晶、ならびに前記結晶を作製する方法も提供され、この方法は下ではるかに詳細に説明される。好ましくは、本発明に従った複合体および受容体リガンドの結晶性の形態が想定されている。
オピオイド受容体に対する結合剤のスクリーニングおよび選択
結合剤、特に免疫グロブリン単一可変ドメインはいくつかの方法で同定することができ、この後VHHについて非限定的に説明することになる。VHHの天然または合成ライブラリー(例えば、そのようなライブラリーについては、国際公開第9937681号パンフレット、国際公開第0043507号パンフレット、国際公開第019019号パンフレット、国際公開第03025020号パンフレットおよび国際公開第03035694号パンフレット参照)は機能的立体構造のオピオイド受容体に対する結合剤を含有することがあるが、本発明の好ましい実施形態は、動物の免疫系をその特定の立体構造の受容体にしかない立体構造エピトープに曝露する、場合によっては、受容体リガンドに結合している機能的立体構造のオピオイド受容体(例えば、その活性立体構造状態の受容体に向けられた抗体を産生するためのアゴニスト結合オピオイド受容体)を用いたラクダ科の免疫化を含む。場合によっては、特定のリガンドは化学的架橋により対象の受容体に結合させることが可能である。したがって、本明細書でさらに説明されるように、そのようなVHH配列は、好ましくはラクダの一種をオピオイド受容体で、好ましくは機能的立体構造の受容体で適切に免疫化することにより(すなわち、免疫応答を起こすおよび/または前記受容体に向けられた重鎖抗体を産生するために)、前記ラクダから適切な生体試料(例えば、血液試料またはB細胞の任意の試料)を入手することにより、および前記試料から始めて前記受容体に向けられたVHH配列を作製することにより作製するまたは入手することが可能である。そのような技法は当業者には明らかであろう。所望のVHH配列を得るためのさらに別の技法は、重鎖抗体を発現することができるトランスジェニック哺乳動物を適切に免疫化し(すなわち、免疫応答を起こすおよび/または機能的立体構造状態のオピオイド受容体に向けられた重鎖抗体を産生するために)、前記トランスジェニック動物から適切な生体試料(例えば、血液試料またはB細胞の任意の試料)を入手し、次にそれ自体が既知の任意の適切な技法を使用して、前記試料から始めて前記受容体に向けられたVHH配列を作製することを含む。例えば、この目的のために、国際公開第02085945号パンフレットおよび国際公開第04049794号パンフレットに記載されている重鎖抗体発現マウスならびにさらなる方法および技法を使用することが可能である。
オピオイド受容体を用いた動物の免疫化では、受容体は、宿主細胞において組換え型のタンパク質を発現させ、親和性クロマトグラフィーを使用してタンパク質を精製することを用いることができる従来の方法および/または抗体ベースの方法を使用して産生し精製することができる。特定の実施形態では、バキュロウイルス/Sf9系を発現のために用いることができるが、他の発現系(例えば、細菌、酵母または哺乳動物細胞系)も使用することができる。オピオイド受容体のようなGPCRを発現し精製するための例となる方法は、例えば、中でも、Kobilka (1995), Eroglu et al (2002), Chelikani et al (2006) and the book "Identification and Expression of G Protein-Coupled Receptors" (Kevin R. Lynch (Ed.), 1998)に記載されている。オピオイド受容体などのGPCRは、リン脂質小胞でも再構成することができる。同様に、活性なGPCRをリン脂質小胞で再構成するための方法は既知であり、中でも、Luca et al (2003), Mansoor et al (2006), Niu et al. (2005), Shimada et al. (2002), and Eroglu et al. (2003)に記載されている。ある種の場合、GPCRとリン脂質はリン脂質中高密度で再構成することができる(例えば、1mgのリン脂質あたり1mgの受容体)。特定の実施形態では、リン脂質小胞はGPCRが活性であることを確認するために試験することができる。多くの場合、GPCRはリン脂質小胞内に両配向で(正常な配向で、および細胞内ループが小胞の外側にある「上下逆の」配向で)存在することができる。他の免疫化方法には、限定せずに、オピオイド受容体またはその画分を発現している完全な細胞の使用、オピオイド受容体をコードしている核酸配列を用いたワクチン接種(例えば、DNAワクチン接種)、オピオイド受容体を発現しているウイルスまたはウイルス様粒子を用いた免疫化、など(例えば、国際公開第2010070145号パンフレット、国際公開第2011083141号パンフレットに記載されている)が含まれる。
いかなる適切な動物でも、特に中でもウサギ、マウス、ラット、ラクダ、ヒツジ、ウシ、サメ、ブタなどの哺乳動物、またはニワトリもしくはシチメンチョウなどのトリは、免疫応答を生じるのに適した当技術分野では周知の技法のうちのいずれかを使用して免疫化することができる。
オピオイド受容体の機能的立体構造状態の立体構造エピトープに特異的に結合する、非限定的例としての、VHHまたはナノボディの選択は、例えば、その表面で重鎖抗体を発現する細胞(例えば、適切に免疫化されたラクダから得られたB細胞)、もしくはその表面でgenIIIとナノボディの融合物を表示するバクテリオファージ、もしくは接合因子タンパク質Aga2pの融合物を表示する酵母細胞のセット、コレクションもしくはライブラリーをスクリーニングすることにより、VHH配列もしくはナノボディ配列の(未処理もしくは免疫)ライブラリーをスクリーニングすることにより、またはVHH配列もしくはナノボディ配列をコードする核酸配列の(未処理もしくは免疫)ライブラリーをスクリーニングすることにより実施することができ、これらはすべてそれ自体既知のやり方で実施することができ、その方法は場合によっては、例えば、および限定なしで、親和性成熟のステップ、所望のアミノ酸配列を発現するステップ、所望の抗原(この場合は、特定の立体構造のオピオイド受容体)に結合することについておよび/または所望の抗原に対する活性についてスクリーニングするステップ、所望のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列を決定するステップ、1つまたは複数のヒト化する置換を導入するステップ、適切な多価および/もしくは多特異性形式でフォーマットするステップ、所望の生物学的および/もしくは生理的特性についてスクリーニングするステップ(すなわち、当技術分野で既知の適切なアッセイを使用して)などの1つまたは複数の他の適切なステップ、ならびに/または任意の適切な順番でのそのようなステップの1つもしくは複数の任意の組合せをさらに含むことができる。
例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、放射性リガンド結合アッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、ファージディスプレイなどを含む、種々の方法を使用して、結合剤と標的オピオイド受容体の間の特異的な結合(本明細書で定義されている)を決定することができ、これらの方法は当技術分野では常識であり、例えば、Sambrook et al. (2001), Molecular Cloning, A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYで考察されており、実施例のセクションにおいてさらに説明される。この目的のために、本明細書においてされに記載されるように、多くの場合、ペプチド標識、核酸標識、化学標識、蛍光標識、または高周波タグなどの独特の標識またはタグを使用することは認識されるであろう。
結合剤の特に好ましい選択方法は、例えば、国際公開第2012/007593号パンフレットに記載されている通りである。代わりの好ましい実施形態では、立体構造選択性結合剤の選択は、細胞表面に繋ぎ止められた細胞外結合剤のライブラリーを含む細胞の集団から、その活性な立体構造のオピオイド受容体またはその不活性な立体構造のオピオイド受容体のどちらかに特異的に結合しているが両方に同時には結合しない細胞を選択する細胞選別を使用することによっても実施することが可能である。限定する目的ではなく、(立体構造選択性)結合剤の選択は実施例のセクションでもさらに説明される。
結合剤の修飾
本発明の結合剤は、本明細書でさらに説明するように、さらに修飾することができるおよび/または他の部分を含むことができる(または他の成分と融合させることが可能である)。修飾の例、ならびに、修飾することが可能である本発明の結合剤内のアミノ酸残基の例(すなわち、タンパク質骨格上、しかし好ましくは側鎖上のいずれか)、そのような修飾を導入するのに使用することが可能な方法および技法、ならびにそのような修飾の潜在的使用および利点は、当業者には明らかであろう。例えば、そのような修飾は、1つまたは複数の官能基、残基または部分を結合剤中にまたは結合剤上に導入すること(例えば、共有結合によりまたは別の適切なやり方で)を含むことができる。そのような官能基のおよびその官能基を導入するための技法の例は当業者には明らかであり、一般に、当技術分野で言及されるあらゆる官能基および技法、ならびに医薬タンパク質の修飾のために、特に抗体または抗体断片(ScFvおよび単一ドメイン抗体を含む)の修飾のためにそれ自体が既知の官能基および技法を含むことが可能であり、これらについては例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)を参照する。再び当業者には明らかになるように、そのような官能基は、例えば、結合剤に直接(例えば、共有的に)、または場合によっては、適切なリンカーもしくはスペーサーを介して連結することができる。
医薬タンパク質の半減期を増加させるおよび/または免疫原性を減少させるための最も広く使用されている技法の1つは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはその誘導体(例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)またはmPEG)などの適切な薬理学的に許容されるポリマーの結合を含む。一般に、抗体および抗体断片((単一)ドメイン抗体およびScFvを含む)のために当技術分野で使用されるペグ化などの、適切ないかなる形態のペグ化も使用することが可能であり、例えば、Chapman, Nat. Biotechnol., 54, 531-545 (2002); by Veronese and Harris, Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 453-456 (2003), by Harris and Chess, Nat. Rev. Drug. Discov., 2, (2003)および国際公開第04060965号パンフレットを参照する。タンパク質のペグ化のための種々の試薬は、例えば、Nektar Therapeutics、USAからも市販されている。好ましくは、部位特異的ペグ化が、特にシステイン残基を介して使用される(例えば、Yang et al., Protein Engineering, 16, 10, 761-770 (2003)を参照)。例えば、この目的のために、PEGは結合剤中の天然に存在するシステイン残基に結合させることができる、または結合剤は、PEGの結合のために1つもしくは複数のシステイン残基を適切に導入するように修飾することができる、またはPEGの結合のための1つもしくは複数のシステイン残基を含むアミノ酸配列を結合剤のNおよび/もしくはC末端に融合させることができ、すべてが当業者にはそれ自体既知のタンパク質工学の技法を使用する。好ましくは、本発明の結合剤では、5000を超える、例えば10000を超え、200000未満、例えば100000未満、例えば20000〜80000の範囲の分子量を有するPEGが使用される。別の、通常は好ましさが少ない修飾は、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドを発現するために使用される宿主細胞に応じて、通常は同時翻訳および/または翻訳後修飾の一部として、N連結またはO連結グリコシル化を含む。結合剤の半減期を増加させるための別の技法は、二機能構築物(例えば、1つは標的オピオイド受容体に向けられるナノボディおよび1つはアルブミンなどの血清タンパク質に向けられる)にするまたは結合剤とペプチド(例えば、アルブミンなどの血清タンパク質に向けられるペプチド)の融合物にする操作を含むことができる。
通常は好ましさが少ない修飾は、本発明の結合剤を発現するために使用される宿主細胞に応じて、通常は同時翻訳および/または翻訳後修飾の一部として、N連結またはO連結グリコシル化を含む。
さらに別の修飾は、標識された結合剤の意図された使用に応じて、1つまたは複数の検出可能な標識または他のシグナル発生基もしくは部分の導入を含むことができる。こうした標識を結合させる、使用する、および検出するための適切な標識および技法は当業者には明らかであり、例えば、蛍光標識(例えば、IRDye800、VivoTag800、フルオレセイン、イソチオシアン酸、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミン、ならびにEuまたはランタニド系列由来の他の金属などの蛍光金属)、リン光標識、化学発光標識もしくは生物発光標識(例えば、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ジオキセタンまたはGFPおよびその類似物)、放射性同位元素、金属、金属キレートもしくは金属陽イオンまたはin vivo、in vitroもしくはin situ診断および画像処理での使用に特に適している他の金属もしくは金属陽イオン、ならびに発色団および酵素(例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタVステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファグリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ビオチンアビジンペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、ガタラーゼ、グルコースVIリン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ)が含まれるがこれらに限定されない。他の適切な標識は当業者には明らかであり、例えば、NMRまたはESR分光法を使用して検出することが可能な部分が含まれる。本発明のそのような標識化された結合剤は、特異的な標識の選択に応じて、例えば、in vitro、in vivoまたはin situアッセイ(ELISA、RIA、EIAおよび他の「サンドイッチアッセイ」、等などのそれ自体既知の免疫アッセイを含む)、ならびにin vivo診断および画像処理目的のために使用することができる。当業者には明らかであるように、別の修飾は、例えば、上で言及した金属または金属陽イオンのうちの1つをキレート化するためにキレート基を導入することを含むことができる。適切なキレート基は、例えば、限定せずに、2,2’,2”−(10−(2−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリ酢酸(DOTA)、2,2’−(7−(2−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7−トリアゾナン−1,4−ジイル)ジ酢酸(NOTA)、ジエチル−エネトリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)が含まれる。さらに別の修飾は、ビオチン−(ストレプト)アビジン結合対などの特異的な結合対の1部分である官能基の導入を含むことができる。そのような官能基を使用して、結合剤を、結合対の残りの半分に結合している別のタンパク質、ポリペプチドまたは化学化合物に、すなわち結合対の形成を通じて連結することができる。例えば、本発明の結合剤はビオチンにコンジュゲートする、およびアビジンまたはストレプトアビジンにコンジュゲートしている別のタンパク質、ポリペプチド、化合物または担体に連結させることができる。例えば、そのようなコンジュゲートした結合剤は、例えば、検出可能なシグナル発生剤がアビジンまたはストレプトアビジンにコンジュゲートしている診断系においてレポーターとして使用することができる。そのような結合対は、例えば、製薬目的に適している担体を含む、担体に本発明の結合剤を結合させるのにも使用することができる。1つの非限定的例はリポソーム製剤であり、Cao and Suresh, Journal of Drug Targetting, 8, 4, 257 (2000)により記載されている。そのような結合対を使用して、治療的活性剤を本発明の結合剤に連結させることもできる。
結合剤が特定の官能基、残基または部分(上文に記載されている)を結合剤に連結することにより修飾される場合、多くの場合リンカー分子が使用されることになる。好ましい「リンカー分子」または「リンカー」は1〜200アミノ酸長のペプチドであり、典型的には、しかし、必ずしもそうではないが、不定形で柔軟であるように選択されるまたは設計される。例えば、特定の二次構造を形成しないアミノ酸を選択することが可能である。または、アミノ酸は安定な三次構造を形成しないように選択することが可能である。または、アミノ酸リンカーはランダムコイルを形成することもできる。そのようなリンカーには、Gly、Ser、Thr、Gln、Gluが豊富な合成ペプチドまたはさらに天然タンパク質の不定形領域と多くの場合会合しているアミノ酸が含まれるがこれらに限定されない(Dosztanyi, Z., Csizmok, V., Tompa, P., & Simon, I. (2005). lUPred: web server for the prediction of intrinsically unstructured regions of proteins based on estimated energy content. Bioinformatics (Oxford, England), 21(16), 3433-4.)。適切なリンカー配列の非限定的例には、(GS)5(GSGSGSGSGS;配列番号56)、(GS)10(GSGSGSGSGSGSGSGSGSGS;配列番号57)、(G4S)3(GGGGSGGGGSGGGGS;配列番号58)、ラマIgG2ヒンジ(AHHSEDPSSKAPKAPMA;配列番号59)またはヒトIgAヒンジ(SPSTPPTPSPSTPPAS;配列番号60)リンカーが含まれる。
したがって、特定の実施形態によれば、アミノ酸(AA)リンカー配列は、0〜200AA、0〜150AA、0〜100AA、0〜90AA、0〜80AA、0〜70AA、0〜60AA、0〜50AA、0〜40AA、0〜30アミノ酸、0〜20AA、0〜10アミノ酸、0〜5アミノ酸のペプチドである。短いリンカーの配列の例には、PPP、PPまたはGSが含まれるがこれらに限定されない。
ある種の適用では、リンカー分子が1つまたは複数の特定の配列モチーフを含むまたは1つまたは複数の特定の配列モチーフからなるのが有利であることがある。例えば、タンパク質切断部位を、検出可能な標識または部分を放出することができるように、リンカー分子内に導入することが可能である。有用な切断部位は当技術分野では既知であり、配列IEGR(配列番号61)を有する第Xa因子切断部位、配列LVPR(配列番号62)を有するトロンビン切断部位、配列DDDDK(配列番号63)を有するエンテロキナーゼ切断部位、またはプレシジョン(PreScission)−もしくは3C切断部位LEVLFQGP(配列番号64)などのプロテアーゼ切断部位を含む。
代わりに、結合剤が、タンパク質修飾のための化学酵素的方法を使用して検出可能な標識または部分に連結される場合、in vivoまたはin vitroで共有結合分子を生成するのに使用される酵素または合成化学に応じて、異なる化学的実体のリンカー部分が存在しうる(Rabuka 2010, Curr Opin Chem Biol 14: 790-796に概説されている)。
発現系
他の一態様では、本発明は上文に記載される本発明の結合剤のいずれかをコードする核酸配列を含む核酸分子に関する。さらに、本発明は、本発明の結合剤のいずれかをコードする核酸配列を含む発現ベクター、ならびにそのような発現ベクターを発現する宿主細胞も想定している。適切な発現系には、細菌もしくは酵母における構成的および誘導性発現系、バキュロウイルス、セムリキ森林ウイルスおよびレンチウイルスなどのウイルス発現系、または昆虫もしくは哺乳動物細胞における一過性トランスフェクションが含まれる。本発明の結合剤のクローニングおよび/または発現は、当業者に知られている技法に従って実行することが可能である。
本発明に従った「宿主細胞」は、いかなる原核または真核生物でも可能である。好ましい実施形態によれば、宿主細胞は真核細胞であっていかなる真核生物でも可能であるが、特定の実施形態では酵母、植物、哺乳動物および昆虫細胞が想定されている。使用する細胞の性質は典型的には、結合剤を産生する容易さおよび費用、所望のグリコシル化特性、結合剤の起源、意図する用途、またはそのいかなる組合せにでも依拠することになる。哺乳動物細胞は、例えば、複雑なグリコシル化を達成するのに使用することができるが、哺乳動物細胞系でタンパク質を産生するのは対費用効果が高くないことがある。植物および昆虫細胞、ならびに酵母は典型的には高い産生レベルを達成し、こちらのほうが対費用効果は高いが、哺乳動物タンパク質の複雑なグリコシル化パターンを模倣するには追加の修飾が必要になることがある。酵母細胞はタンパク質の発現のために使用されることが多い。なぜならば、酵母細胞は経済的に培養できて、高いタンパク質収率を与え、適切に改変された場合には、適切なグリコシル化パターンを有するタンパク質を産生することができるからである。さらに、酵母は、迅速な形質転換、検証済みのタンパク質局在化戦略、および容易な遺伝子ノックアウト技法を可能にする確立した遺伝学を提供する。昆虫細胞もオピオイド受容体を含むGPCRを発現する魅力的な系である。なぜならば、昆虫細胞は哺乳動物GPCRシグナル伝達に干渉することのない発現系を提供するからである。タンパク質産生のための真核細胞またはグリコシル化経路が改変されている細胞株を含む真核細胞株が当技術分野では周知であり、非限定的例はこの後提供される。
それに続く単離および/または精製のためにタンパク質を内部に持ち、発現し、産生するのに適している動物または哺乳動物宿主細胞には、CHO−K1(ATCC CCL−61)、DG44(Chasin et al., 1986; Kolkekar et al., 1997)、CHO−K1 Tet−On細胞株(Clonthech)、ECACC85050302と命名されたCHO(CAMR、Salisbury、Wiltshire、UK)、CHOクローン13(GEIMG、Genova、IT)、CHOクローンB(GEIMG、Genova、IT)、ECACC93061607と命名されたCHO−K1/SF(CAMR、Salisbury、Wiltshire、UK)、ECACC92052129と命名されたRR−CHOK1(CAMR、Salisbury、Wiltshire、UK)、ジヒドロ葉酸レダクターゼネガティブCHO細胞(CHO/-DHFR, Urlaub and Chasin, 1980)、およびdpl2.CHO細胞(米国特許第5721121号明細書)などのチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO);SV40により形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS細胞、COS−7、ATCC CRL−1651);ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293細胞、または293T細胞、または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., 1977, J. Gen. Virol., 36:59、またはGnTI KO HEK293S細胞、Reeves et al. 2002);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL−10);サル腎臓細胞(CV1、ATCC CCL−70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1578;VERO、ATCC CCL−81);マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, 1980, Biol. Reprod., 23:243-251);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL−2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL−34);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL−75);ヒトヘパトーマ細胞(HEP−G2、HB8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562、ATCC CCL−51);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL−1442);TRI細胞(Mather, 1982);MCR5細胞;FS4細胞が含まれる。特定の実施形態によれば、細胞は、Hek293細胞またはCOS細胞から選択される哺乳動物細胞である。
例となる非哺乳動物細胞株には、Sf9細胞/バキュロウイルス発現系などの昆虫細胞(例えば、概説、Jarvis, Virology Volume 310, Issue 1, 25 May 2003, Pages 1-7)、タバコ細胞、トマト細胞、トウモロコシ細胞、藻類細胞などの植物細胞、またはサッカロミセス(Saccharomyces)種、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)種、ハンゼヌラ(Hansenula)種、ヤロウイア(Yarrowia)種もしくはピキア(Pichia)種などの酵母が含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態によれば、真核細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)種(例えば、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)種(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ハンゼヌラ(Hansenula)種(例えば、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))、ヤロウイア(Yarrowia)種(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))、クルイベロミセス(Kluyveromyces)種(例えば、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis))、ピキア(Pichia)種(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))、またはコマガタエラ(Komagataella)種(例えば、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris))由来の酵母細胞である。特定の実施形態によれば、真核細胞はピキア(Pichia)細胞であり、最も詳細な実施形態では、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞である。
標的細胞(例えば、哺乳動物細胞)のトランスフェクションは、Sambrook and Russel (Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Edition, Volume 3, Chapter 16, Section 16.1-16.54)により概要を述べられている原理に従って実行することが可能である。さらに、ウイルス形質導入も、アデノウイルスベクターなどの試薬を使用して実施することが可能である。適切なウイルスベクター系、調節領域および宿主細胞の選択は当業者のレベル内の周知の事実である。得られたトランスフェクトされた細胞は、標準的慣行に従って後の使用のために培養維持されるまたは凍結される。
したがって、本発明の別の態様は、本発明に従った結合剤を産生するための方法であって、少なくとも
a)本発明に従った結合剤をコードする核酸を適切な細胞発現系(上文で定義されている)において発現するステップと、場合により
b)前記結合剤を単離するおよび/または精製するステップと
を含む方法に関する。
上記結合剤ならびに結合剤を含む複合体は、(その最も広い意味で)スクリーニングおよび創薬に特に有用であり、そのすべてがこの時点で本明細書でさらに詳述される。
適用
本明細書に記載される結合剤は、例えばおよび限定なしで、(1)結合すると、結合剤が特定の立体構造の受容体を維持するオピオイド受容体を捕捉するおよび/または精製するための、(2)結合剤と複合体化し、場合により別の立体構造選択性受容体リガンドにさらに結合しているオピオイド受容体の共結晶化研究および高分解能構造解析のための、(3)リガンド特徴付け、化合物スクリーニング、および(構造ベースの)創薬のための、(4)治療薬としてまたは診断的用途のための、(5)バイオセンサーとしての、種々の状況および適用において使用することが可能であり、これらすべての適用は下でさらに詳細に記載される。
機能的立体構造のオピオイド受容体の捕捉、分離および精製方法
別の態様では、本発明は、上記結合剤のいずれかを利用することにより、機能的立体構造の、好ましくは活性または不活性立体構造のオピオイド受容体を捕捉するおよび/または精製するための方法を提供する。特定の立体構造の受容体を捕捉および/または精製すると、中でも、それに続く結晶化、リガンド特徴付けおよび化合物スクリーニング、免疫化が可能になる。
したがって、特定の実施形態では、本発明は、活性または不活性立体構造のオピオイド受容体を捕捉するための本発明に従った結合剤の使用に関する。場合により、しかし必ずしもそうではないが、上記特定の立体構造の受容体の捕捉は別の立体構造選択性受容体リガンド(例えば、オルソステリックリガンド、アロステリックリガンド、Gタンパク質またはアレスチンなどの天然結合パートナーなど)と複合体化している受容体の捕捉を含むことがある。
したがって、本発明は、機能的立体構造のオピオイド受容体を捕捉する方法であって、
(i)本発明に従った結合剤を、オピオイド受容体を含む溶液に接触させるステップと、
(ii)結合剤をオピオイド受容体に特異的に結合させて、オピオイド受容体を機能的立体構造で捕捉するステップと
を含む方法も提供する。
さらに具体的には、本発明は、機能的立体構造のオピオイド受容体を捕捉する方法であって、
(i)複数の立体構造のオピオイド受容体を含有する溶液を、本発明に従った固定化された結合剤を有する固体支持体に適用するステップと、
(ii)結合剤をオピオイド受容体に特異的に結合させて、オピオイド受容体を機能的立体構造で捕捉するステップと
(iii)弱い結合のまたは非結合の分子を取り除くステップと
を含む方法も想定している。
上記方法のいずれでも、上記方法のステップ(ii)において形成される複合体であって、結合剤と特定の立体構造のオピオイド受容体を含む前記複合体を単離するステップをさらに含むことができることは認識されるであろう。
オピオイド受容体を単離するおよび/精製するための上記方法には、限定なしで、中でも、親和性クロマトグラフィー、親和性精製、免疫沈降、タンパク質検出、免疫化学、表面ディスプレイ、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの親和性ベースの方法が含まれ、これらの方法はすべて当技術分野では周知である。
構造ベースの薬物設計における結晶学および適用
本発明の一態様は、オピオイド受容体のX線結晶学および構造ベースの薬物設計でのその適用における本発明の結合剤の有用性に関する。当技術分野で入手可能なミューオピオイド受容体の不活性状態構造では、薬理学者は現在、活性状態に選択的に結合してオピオイド受容体を活性化することになるリガンドなどの、立体構造選択性リガンドの開発を導く実験データを有している。しかし、コンピュータ上でのスクリーニングのためのこれらの高分解能構造の価値は限られている。一方および説明として、アゴニスト結合受容体結晶は、オピオイド受容体の活性状態の三次元表示を提供することができる。これらの構造は、リガンド結合とGタンパク質相互作用部位を結びつける立体構造変化を明らかにする役に立ち、より正確な機構上の仮説および最終的には新しい治療薬をもたらすことになる。リガンド活性化GPCRに固有の立体構造柔軟性があれば、そのような状態を安定化させることは容易ではない。そのような試みは、受容体の活性な立体構造状態に対して特異的である結合剤の付加によるアゴニスト結合受容体立体構造の安定化から利益を得ることが可能である。その点については、Gタンパク質様の挙動を示しアゴニスト結合に関して協調的な特性を見せる結合剤が見出されることが本発明の特定の利点である(実施例のセクションも参照)。これは、創薬を導くのに役立つうえで大いに有利になるであろう。特に、効力、選択性、または薬理動態パラメータを改善するために、薬理活性または生物活性がありその化学構造が化学修飾の出発点として使用されるリード化合物に結合している受容体の構造を得るための方法は非常に価値があり本明細書で提供されている。当業者であれば、本発明の結合剤は、この結合剤が立体構造選択性受容体リガンドに対する親和性を実質的に増加することができるので、受容体:結合剤と結合剤により誘導される新薬の開発につながるような立体構造に対して選択性であるリード化合物の共結晶化に特に適していることは認識されるであろう。
したがって、結合剤が受容体上の立体構造エピトープに結合し、このようにして、その特定の立体構造の受容体を安定化し、その立体構造柔軟性を減少させ、その極性表面を増加させて、受容体:結合剤複合体の結晶化を促進することは本発明の結合剤の特定の利点である。本発明の結合剤は、標的オピオイド受容体の立体構造不均一性を最小限に抑えることにより秩序だった結晶を得る可能性を高める独特のツールである。
したがって、一実施形態によれば、結晶化目的のために本発明の結合剤を使用することが想定される。有利には、結合剤の選択により保証されるように、受容体が特定の受容体立体構造、さらに詳細には治療的に関連のある受容体立体構造(例えば、活性な立体構造)に捕らわれている、結合剤とオピオイド受容体の複合体から結晶を形成させることが可能である。結合剤は、受容体に結合すると細胞外領域の柔軟性も減少させて、秩序だった結晶を成長させることになる。特に、ナノボディを含む、免疫グロブリン単一可変ドメインはこの目的に特に適している結合剤である。なぜならば、前記ドメインは立体構造エピトープに結合し、従来の抗体またはFab’などのそれに由来する断片とは違って柔軟なリンカー領域を欠く、単一の強固な球状ドメインで構成されているからである。
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明は、結合剤と結合剤が特異的に結合するオピオイド受容体の複合体を結晶化して最終的に複合体の構造を解明するためのツールとして有用である結合剤を提供する。特定の実施形態によれば、本発明は、結合剤、結合剤が特異的に結合することになるオピオイド受容体、およびもう1つの立体構造選択性受容体リガンド(上文で定義されている)の複合体を結晶化することも想定している。したがって、本発明に従った結合剤と特定の立体構造に維持されているオピオイド受容体を含む複合体は、膜タンパク質のための種々の特殊な結晶化方法のいずれかを使用して結晶化することができ、その方法の多くはCaffrey (2003 & 2009)に概説されている。大まかに言えば、その方法は、結晶化に先立って複合体に脂質を添加することを含む脂質ベースの方法である。そのような方法は、他の膜タンパク質を結晶化するために以前使用されたことがある。脂質立法相結晶方法およびバイセル結晶化方法を含むこれらの方法の多くは、小胞(小胞融合方法)、円板型ミセル(バイセル方法)、ならびに液晶または中間相(メソまたは立方相方法)としての脂質および洗剤の自発的自己集合特性を利用する。液晶立方相結晶化方法は、例えば、Landau et al. 1996; Gouaux 1998; Rummel et al. 1998; Nollert et al. 2004, Rasmussen et al. 2011a and bに記載されており、これらの論文はこれらの方法の開示のために参照により組み込まれる。バイセル結晶化方法は、例えば、Faham et al. 2005; Faham et al. 2002に記載されており、これらの論文はこれらの方法の開示のために参照により組み込まれる。
別の実施形態では、本発明は、結合剤と複合体化した、および場合によってはもう1つの受容体リガンドと複合体化したオピオイド受容体の構造を解析するための本明細書に記載される結合剤の使用に関する。本明細書で使用される「構造を解析する」とは、タンパク質の原子の配置または原子座標を決定することであり、X線結晶学などの生物物理学的方法により実行されることが多い。
多くの場合、回折品質の結晶を得ることはその原子分解能構造を解析する鍵となる関門である。したがって、特定の実施形態によれば、本明細書に記載される結合剤を使用して、受容体:結合剤複合体の結晶構造を解析できるように結晶の回折品質を改良することが可能である。
したがって、本発明は、機能的立体構造のオピオイド受容体の結晶構造を決定する方法であって、
a)本発明に従った結合剤および標的オピオイド受容体、ならびに場合によっては受容体リガンドを準備するステップと、
b)結合剤、オピオイド受容体、および場合によっては受容体リガンドの複合体を形成させるステップと、
c)ステップb)の前記複合体を結晶化して、結晶を形成するステップと
を含む方法を包含する。
結晶構造の前記決定はX線結晶学などの生物物理的方法により実行することができる。方法は、結晶の原子座標(上文で定義されている)を得るためのステップをさらに含むことができる。
リガンドスクリーニングおよび創薬
化合物スクリーニングおよび免疫化を含む、本発明の結合剤を利用することができる他の適用が特に想定されており、本明細書でさらに記載されることになる。
化合物スクリーニング、リード最適化および創薬の過程において(ペプチドおよび抗体発見を含む)、種々の化合物特徴および種々の細胞経路に対するその効果(すなわち、有効性、特異性、毒性および薬物代謝)に関する同時情報を提供するもっと迅速で、もっと効果的で、もっと安価で特に情報豊富なスクリーニングアッセイが要求される。したがって、対象のタンパク質の新しい特異的リガンド、好ましくは潜在的な新薬候補になる可能性のある立体構造選択性リガンドを同定するために多数の化合物を迅速で安価にスクリーニングする必要性が存在する。本発明は、オピオイド受容体を機能的立体構造に、好ましくは活性なまたは不活性な立体構造に安定化させるまたはロックする結合剤を提供することによってこの問題を解決する。これにより、オピオイド受容体の受容体アゴニスト、インバースアゴニスト、アンタゴニストおよび/またはモジュレーターならびに阻害剤について迅速で確実にスクリーニングし、区別することが可能になり、したがって、所望の薬理特性を持つリガンドを同定する可能性が増す。特に、結合剤、結合剤を含む複合体、複合体を含む宿主細胞、ならびに宿主細胞培養物またはそれに由来する膜調製物は、提供され、そのための特定の好みは上文にすでに記載されており、特にこの目的に適しており、その後種々の状況においてスクリーニングのための免疫原または選択試薬として使用することが可能である。
これをさらに説明するため、オピオイド受容体の活性な立体構造を認識する本発明に従った結合剤は、好ましくは、アゴニストについてスクリーニングするスクリーニングアッセイにおいて使用されることになる。なぜならば、結合剤はインバースアゴニストまたはアンタゴニストと比べてアゴニストに対する受容体の親和性を増加させるからである。相反的に、オピオイド受容体の不活性状態の立体構造を安定化させる結合剤は、アゴニストまたはアンタゴニストと比べてインバースアゴニストに対する受容体の親和性を増加させることになる。そのような結合剤は好ましくは、インバースアゴニストについてスクリーニングするのに使用されることになる。
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明は、最終的には潜在的な新薬候補をもたらす可能性のあるオピオイド受容体の結合パートナーを求めるスクリーニングおよび/または同定プログラムにおける、本発明に従った、および上文に記載される、結合剤、結合剤を含む複合体、複合体を含む宿主細胞、宿主細胞培養物またはそれに由来する膜調製物の使用を包含する。
一実施形態によれば、本発明は、立体構造選択性化合物を同定する方法であって、
(i)オピオイド受容体と受容体に特異的に結合する結合剤を含む複合体を準備するステップと、
(ii)試験化合物を準備するステップと、
(iii)試験化合物が受容体に対して立体構造選択性化合物であるかどうかを評価するステップと
を含む方法を想定している。
結合剤、複合体、宿主細胞、宿主細胞培養物およびその膜調製物に対する特定の好みは、本発明の前の態様に関して上で定義されている通りである。
好ましい実施形態では、本明細書に記載されるスクリーニング方法のいずれかで使用される結合剤、オピオイド受容体または結合剤とオピオイド受容体を含む複合体は、それぞれのタンパク質の機能性が十分に保持されるように、全細胞、または膜抽出物もしくはその画分などの細胞(小器官)抽出物として提供される、あるいは脂質層もしくは小胞(天然および/または合成脂質を含む)、高密度リポ粒子、またはナノディスクなどの任意のナノ粒子に組み込むことができる、あるいはウイルスまたはウイルス様粒子(VLP)として提供される。膜断片または膜洗浄抽出物からのGPCRの調製物のための方法は、Cooper (2004)で詳細に概説されており、参照により本明細書に組み込まれる。代わりに、受容体および/または複合体は洗剤で可溶化することもできる。リポソーム再構成レポーター調製物の非限定的例は実施例のセクションでも提供される。
受容体の結合パートナーを調べるハイスループットスクリーニングが好まれることが多い。これは、本発明に従った結合剤、オピオイド受容体または結合剤とオピオイド受容体を含む複合体のいずれかを、整列させるあるいは多重化することができる適切な固体表面または支持体へ固定化させることにより促進することができる。適切な固体支持体の非限定的例には、ビーズ、カラム、スライド、チップまたはプレートが含まれる。
さらに詳細には、固体支持体は粒子性(例えば、ビーズまたは顆粒で一般には抽出カラムで使用される)あるいは平坦でも、ひだ状でもまたは中空の繊維もしくは管でも可能であるシート形態(例えば、膜もしくはフィルター、ガラスもしくはプラスチックスライド、マイクロタイターアッセイプレート、ディップスティック、キャピラリー充填装置またはこの種のもの)でもよい。以下のマトリックスは例として挙げられており網羅するものではなく、そのような例には、シリカ(多孔質非晶質シリカ)、すなわち、Biotage(Dyax Corp.の一部門)から供給される60A不規則シリカ(32〜63μmまたは35〜70μm)を含有するカートリッジのFLASHシリーズ、アガロースもしくはポリアクリルアミド支持体、例えば、Amersham Pharmacia Biotechが供給するセファロースレンジの製品、またはBio−Radが供給するAffi−Gel支持体が含まれうる。さらに、Bio−Radが供給する耐圧Affi−Prep支持体などのマクロ多孔質ポリマーがある。利用しうる他の支持体には、デキストラン、コラーゲン、ポリスチレン、メタクリル酸、アルギン酸カルシウム、制御細孔ガラス、アルミニウム、チタニウム、および多孔質セラミックスが含まれる。代わりに、固体表面は質量依存性センサーの一部、例えば、表面プラズモン共鳴検出器を含むことができる。市販の支持体の追加の例は、例えば、Protein Immobilisation, R.F. Taylor ed.., Marcel Dekker, Inc., New York, (1991)で考察されている。
固定化は非共有結合性でも共有結合性でもよい。特に、結合剤、オピオイド受容体または結合剤とオピオイド受容体を含む複合体の固体表面上での非共有結合性固定化または吸着は、当業者には既知である標準技法に従って結合剤に結合された分子タグ(例えば、ビオチンタグ、ヒスチジンタグ、等)を認識する抗体、またはストレプトアビジンもしくはアビジン、または金属イオンのいずれかを用いた表面被覆を経て起こることができる。
特に、結合剤、オピオイド受容体または結合剤とオピオイド受容体を含む複合体は、従来のカップリング化学を使用した共有結合性架橋結合により固体表面に結合させることができる。固体表面は共有結合に適した架橋可能な残基を自然に含んでいてもよく、固体表面は当技術分野で周知の方法に従って被覆するまたは誘導体化して適切な架橋可能な基を導入してもよい。特定の一実施形態では、化学的スペーサーアームを含有しない反応性部分を経て所望のマトリックスに直接共有結合することに続いて、固定化したタンパク質の機能性は十分に保持される。固体支持体上への抗体(断片)の固定化法に関する追加の例およびさらに詳細な情報はJung et al. (2008)で考察されており、同様に、膜受容体固定化方法はCooper (2004)で概説されている。これら2つの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
分子生物学の進歩のおかげで、特に部位特異的変異誘発によって、タンパク質配列中の特定のアミノ酸残基の突然変異が可能になっている。特定のアミノ酸(既知のまたは推測される構造を有するタンパク質中の)をリジンまたはシステイン(または他の所望のアミノ酸)に突然変異すると、例えば、共有結合のための特異的部位を提供することが可能になる。特定のタンパク質を再操作して、化学結合に関与している表面で利用できるアミノ酸の分布を変化させ(Kallwass et al, 1993)、実質的に結合したタンパク質の配向を制御することも可能である。類似するアプローチを本発明に従った結合剤に、ならびに複合体中に含まれるかどうかに関わらず、立体構造的に安定化したオピオイド受容体に適用して、したがって天然のまたは非天然のアミノ酸のどちらかを含有する他のペプチドテイルまたはドメインを付加せずに方向付けられた固定化の手段を提供することが可能である。抗体またはナノボディなどの抗体断片の場合、抗体(断片)の抗原結合活性の破壊を最小化するフレームワーク領域への突然変異の導入が好ましい。
都合の良いことに、固定化されたタンパク質は、免疫アッセイ、例えば、ELISAなどの免疫吸着過程、または本発明に従った固定化されたタンパク質を、当技術分野では慣習的な標準方法に従って試験試料に接触させることによる免疫親和性精製過程において使用することができる。代わりに、および特にハイスループット目的では、固定化されたタンパク質は整列させるあるいは多重化することが可能である。好ましくは、本発明に従った固定化されたタンパク質は、オピオイド受容体の特定の立体構造に選択的に結合する化合物のスクリーニングおよび選択のために使用される。
結合剤または標的オピオイド受容体のいずれでも、適用の種類または実行する必要があるスクリーニングの種類に応じて固定化できることは認識されるであろう。その上、結合剤(受容体の特定の立体構造エピトープを標的とする)の選択により、受容体の配向およびしたがって化合物同定の所望の結果、例えば、前記立体構造的に安定化した受容体の細胞外部分、膜内部分または細胞内部分に特異的に結合する化合物が決定されることになる。
代わりの実施形態では、試験化合物(または試験化合物のライブラリー)はチップ表面などの固体表面に固定化することができるが、結合剤およびオピオイド受容体は、例えば、洗浄液中でまたは膜様調製物中で提供される。
したがって、特定の一実施形態では、本発明に従った結合剤が固定化される固体支持体は上記のスクリーニング方法のいずれかにおいて使用するために提供される。
最も好ましくは、例えば、溶液中でのファージディスプレイ選択プロトコル、または放射性リガンド結合アッセイにおいては、結合剤も、オピオイド受容体も、試験化合物も固定化されない。
創薬のためのスクリーニングアッセイは固相アッセイ(例えば、ビーズ、カラム、スライド、チップまたはプレート)または液相アッセイ、例えば、放射性リガンド結合アッセイなどの結合アッセイでも可能である。ハイスループットアッセイでは、96、384または1536ウェルフォーマットにおいて1日で最大数千の異なる化合物をスクリーニングすることが可能である。例えば、マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルを使用して、選択された潜在的モジュレーターに対する個別のアッセイを行うことができる、または濃度効果もしくはインキュベーション時間効果が観察されるのであれば、5〜10ウェルごとに単一モジュレーターを試験することが可能である。したがって、単一の標準マイクロタイタープレートで約96モジュレーターをアッセイすることが可能である。1日当たり多くのプレートをアッセイすることが可能であり、最大約6000、20000、50000またはそれよりも多くの異なる化合物についてのアッセイスクリーニングが今日では可能になっている。好ましくは、オピオイド受容体立体構造選択性化合物についてのスクリーニングは、宿主細胞、または宿主細胞培養物、またはそれ由来の膜調製物から始めて実施されることになる。
当技術分野で、例えば、Sambrook et al. (2001), Molecular Cloning, A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYで一般的な方法である、例えば、フローサイトメトリー、放射性リガンド結合アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、表面プラズモン共鳴アッセイ、チップベースのアッセイ、免疫細胞蛍光法(immunocytofluorescence)、酵母ツーハイブリッド技術およびファージディスプレイを含む、種々の方法を使用して安定化したオピオイド受容体と試験化合物の間の結合を判定することができる。試験化合物と膜タンパク質の間の結合を検出する他の方法には、イオンスプレー質量分析/HPLC方法を用いる限外濾過または他の(生物)物理学的および分析的方法が含まれる。例えば、当業者には周知である蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)方法も使用することができる。本明細書でさらに記載されるように、結合した試験化合物は、ペプチド標識、核酸標識、化学的標識、蛍光標識、または放射性同位元素標識などの化合物と会合している独特の標識またはタグを使用して検出することが可能であることは認識されるであろう。
試験される化合物は、タンパク質、糖、核酸または脂質などのいかなる小化学化合物、または巨大分子であっても可能である。典型的には、試験化合物は、小化学化合物、ペプチド、抗体またはその断片になる。いくつかの例では、試験化合物は試験化合物のライブラリーでもよいことは認識されるであろう。特に、アゴニスト、アンタゴニストまたはインバースアゴニストおよび/またはモジュレーターなどの治療化合物を求めるハイスループットスクリーニングアッセイは本発明の一部を形成する。ハイスループット目的では、アロステリック化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体ライブラリー、断片ベースのライブラリー、合成化合物ライブラリー、天然化合物ライブラリー、ファージディスプレイライブラリーなどの化合物ライブラリーまたはコンビナトリアルライブラリーを使用することができる。そのようなライブラリーを調製するおよびスクリーニングするための方法論は当業者には既知である。
試験化合物は場合によって検出可能な標識に共有結合していても非共有結合していてもよい。適切な検出可能な標識およびその標識を結合させ、使用し、検出するための技法は当業者には明らかであり、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、工学的または化学的手段により検出可能であるいかなる組成物でも含まれるがこれらに限定されない。有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、ダイナビーズ)、蛍光色素(例えば、すべてのAlexa Fluor色素、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、およびコロイド金などの比色標識または着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、等)ビーズが含まれる。そのような標識を検出する手段は当業者には周知である。したがって、例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出することができ、蛍光マーカーは射出イルミネーションを検出する光検知器を使用して検出することができる。酵素標識は典型的には、酵素に基質を与え、基質上の酵素の作用により生成される反応産物を検出することにより検出され、比色標識は着色標識を可視化するだけで検出される。他の適切で検出可能な標識は、結合剤に関連する本発明の第1の態様という状況内で以前記載された。
したがって、特定の実施形態によれば、上記スクリーニング方法のいずれかにおいて使用される試験化合物は、上文で定義されているように、ポリペプチド、ペプチド、小分子、天然産物、ペプチド模倣物、核酸、脂質、リポペプチド、炭水化物、抗体またはFab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)およびVLまたはVHドメインのどちらかを含む断片、重鎖抗体(hcAb)、単一ドメイン抗体(sdAb)、ミニボディ、ラクダ重鎖抗体由来の可変ドメイン(VHHまたはナノボディ)、サメ抗体由来の新抗原受容体の可変ドメイン(VNAR)などのそれに由来する任意の断片、アルファボディを含むタンパク質骨格、プロテインA、プロテインG、デザインドアンキリンリピートドメイン(DARPins)、フィブロネクチンIII型リピート、アンチカリン、ノッチン、操作されたCH2ドメイン(ナノ抗体)を含む群から選択される。
好ましい一実施形態では、ハイスループットスクリーニング方法は、多数の潜在的治療リガンドを含有するコンビナトリアル化学的またはペプチドライブラリーを提供することを含む。次に、そのような「コンビナトリアルライブラリー」または「化合物ライブラリー」は、本明細書に記載される1つまたは複数のアッセイにおいてスクリーニングして、所望の特徴的な活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定する。「化合物ライブラリー」は、通常、ハイスループットスクリーニングにおいて最終的に使用される蓄えられた化学物質のコレクションである。「コンビナトリアルライブラリー」は、試薬などのいくつかの化学的「構成要素」を組み合わせることにより、化学的合成または生物学的合成のいずれかによって生み出される多種多様な化学化合物のコレクションである。コンビナトリアルライブラリーの調製およびスクリーニングは当業者には周知である。このようにして同定された化合物は従来の「リード化合物」として役立つことが可能である、またはそれ自体潜在的もしくは実際の治療薬として使用することが可能である。したがって、追加の一実施形態では、本明細書の上文に記載されるスクリーニング方法は、特定の立体構造のオピオイド受容体に選択的に結合することが明らかにされた試験化合物を改変して、改変された試験化合物が特定の立体構造で存在する場合の受容体に結合するかどうかを判定することをさらに含む。
一実施形態では、化合物がオピオイド受容体の受容体リガンド(本明細書で定義されている)への結合を変化させるかどうかが判定される。受容体のそのリガンドへの結合は、本明細書に記載される当技術分野では既知の標準リガンド結合方法を使用してアッセイすることが可能である。例えば、リガンドは放射性標識されていても蛍光的に標識されていてもよい。アッセイは全細胞でまたは細胞から得られた膜でまたは洗剤で可溶化された水溶性受容体で実行することができる。化合物は、標識されたリガンドへの結合を変化させるその能力により特徴付けられることになる。化合物は、例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、50倍、100倍の係数で、受容体とそのリガンドとの間の結合を減少させることもあれば、受容体とそのリガンドとの間の結合を増加させることもある。
したがって、さらに特定の実施形態によれば、本発明の結合剤とオピオイド受容体と受容体リガンドを含む複合体は、上記スクリーニング方法のいずれにおいても使用することができる。好ましくは、受容体リガンドは、小分子、ポリペプチド、抗体またはそれ由来の任意の断片、天然産物などを含む群から選択される。さらに好ましくは、上文に記載されるように、受容体リガンドは完全アゴニスト、もしくは部分的アゴニスト、偏ったアゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニストである。
特定の実施形態によれば、上記スクリーニング方法のいずれかにおいて使用される試験化合物は生体試料として提供される。特に、試料は個人から採取したいかなる適切な試料でも可能である。例えば、試料は血液、血清、血漿、髄液などの体液であってよい。
対象の特定の立体構造のオピオイド受容体への結合を確証することに加えて、受容体に対する化合物の機能的効果を判定することも望ましい。例えば、化合物がオピオイド受容体に結合して、受容体の生物学的機能、特に下流受容体シグナル伝達が調節される(活性化されるまたは阻害される)ことがある。細胞内シグナル伝達のこのような調節はオルソステリックにまたはアロステリックに起こることがある。化合物は、受容体シグナル伝達を活性化するもしくは増加するように、または代わりに受容体シグナル伝達を減少させるもしくは阻害するように、オピオイド受容体に結合することができる。化合物は、受容体の構成的活性を遮断するようにオピオイド受容体に結合することもできる。化合物は、アロステリック調節を媒介するようにオピオイド受容体に結合することもできる(例えば、アロステリック部位で受容体に結合する)。このように、化合物は、受容体中の異なる領域(例えば、アロステリック部位)に結合することにより受容体機能を調節することができる。例えば、George et al. 2002; Kenakin 2002; Rios et al. 2001を参照する。本発明の化合物は、受容体媒介シグナル伝達の持続時間を延ばすようにまたは受容体−リガンド親和性を増加することにより受容体シグナル伝達を増強するように、オピオイド受容体に結合することもできる。さらに、化合物は、受容体機能的ホモマーまたはヘテロマーの集合を阻害するまたは増強するように、オピオイド受容体に結合することもできる。化合物および/または化合物を含む組成物の有効性は、関与する特定の疾患または障害に応じて、任意の適切なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイおよび/もしくはそれ自体既知の動物モデル、またはそれらの任意の組合せを使用して試験することが可能である。
本発明に従った結合剤、複合体、宿主細胞およびその誘導体はさらに操作することができ、したがって、細胞ベースのアッセイの開発または改良のための特に有用なツールとなることは認識されるであろう。細胞ベースのアッセイは、新しい生物学的標的の作用機序および化学化合物の生物活性を評価するのに極めて重要である。例えば、限定するためではなく、GPCRについての現在の細胞ベースのアッセイには、経路活性化の基準(Ca2+放出、cAMP生成または転写活性)、GFPを用いてGPCRおよび下流エレメントをタグ付けすることによるタンパク質輸送の測定、ならびにフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)または酵母2ハイブリッドアプローチを使用するタンパク質間相互作用の直接基準が含まれる。
さらに、抗体、特にオピオイド受容体に対する立体構造選択性の抗体を産生するために、オピオイド受容体と前記受容体に向けられているおよび/もしくは特異的に結合する結合剤を含む複合体を用いて、または前記複合体もしくはその誘導体を含む宿主細胞を用いて動物を免疫化するのは特に有利である可能性がある。したがって、そのような免疫化方法もここでは想定されている。抗体をin vivoで産生するための方法は当技術分野では既知であり、上文でも記載されている。いかなる適切な動物でも、例えば、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、ヒツジ、ウシ、ブタなどの哺乳動物、またはニワトリもしくはシチメンチョウなどのトリ、またはサメなどの魚類は、免疫応答を生じるのに適している当技術分野で周知の技法のいずれでも使用して免疫化することができる。免疫化に続いて、細菌、酵母、繊維状ファージ、リボソームもしくはリボソームサブユニットまたは他のディスプレイ系で発現される、免疫グロブリン遺伝子、またはその部分をコードする発現ライブラリーを当技術分野の周知の技法に従って作製することが可能である。それだけではなく、作製される抗体ライブラリーは、上文に記載されるスクリーニング方法のいずれかにおいて使用するための適切な試験化合物のコレクションを含む。本明細書の上記の通りに産生された抗体は、特定の立体構造のオピオイド受容体を特異的に検出する有用な診断ツールでもあり、したがって、本発明の一部も形成する可能性がある。
一実施形態では、オピオイド受容体とオピオイド受容体に向けられているおよび/もしくは特異的に結合する結合剤を含む複合体は、上記スクリーニング方法のいずれかによる、受容体に結合する抗体または抗体断片を含む結合剤の選択のために使用することができる。当業者であれば、非限定的例として、そのような結合剤は、中でも、その表面上で結合剤を発現している細胞のセット、コレクションもしくはライブラリー、またはその表面でgenIIIと結合剤の融合物を表示しているバクテリオファージ、または接合因子タンパク質(Aga2p)に融合物を表示している酵母細胞をスクリーニングすることにより、あるいはリボソームディスプレイにより選択することが可能であることは認識するであろう。
治療および診断的用途
本発明の追加の態様は、本発明に従った治療有効量の結合剤および薬学的に許容される担体、アジュバントまたは希釈剤のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物に関する。
「担体」、または「アジュバント」、特に「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容されるアジュバント」は、単独では組成物を受けている個体に有害な抗体の産生を誘導しないし保護も誘発しない任意の適切な賦形剤、希釈剤、担体および/またはアジュバントである。したがって、薬学的に許容される担体は本質的に無毒性で非治療的であり、当業者には既知である。適切な担体またはアジュバントは典型的には以下の網羅的ではない一覧:タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体および不活性ウイルス粒子などの大きなゆっくりと代謝される巨大分子に含まれる化合物のうちの1つまたは複数を含む。担体またはアジュバントは、非限定的例として、リンゲル液、ブドウ糖液またはハンクス液でもよい。不揮発性油およびオレイン酸エチルなどの非水溶液も使用することができる。好ましい賦形剤は、生理食塩水中5%ブドウ糖である。賦形剤は、バッファーおよび保存剤を含む、等張性および化学的安定性を増強する物質などの少量の添加剤を含有していてもよい。
本発明に従った結合剤またはその医薬組成物の投与は、経口、吸入または非経口投与によってもよい。特定の実施形態では、結合剤は、クモ膜下腔内または脳室内投与を通じて送達される。活性化合物は単独で投与してもよいし、または好ましくは医薬組成物として処方してもよい。タンパク質結合ドメインにより認識される抗原を発現するある種の疾患または障害を治療するのに有効な量は、治療している障害の性質および重症度ならびに哺乳動物の体重などの通常の要因に依拠する。しかし、単位用量は通常、タンパク質結合ドメインまたはその医薬組成物の0.1mg〜1g、例えば、0.1〜500mg、例えば、0.1〜50mg、または0.1〜2mgの範囲になる。単位用量は通常、月に1回、週に1回、週2回、1日1回または2回以上、例えば、1日に2、3または4回、さらに通常なら1日1〜3回投与されることになる。結合剤またはその医薬組成物が、単位用量経口、非経口または吸入組成物などの単位用量組成物の形態で投与されるのが大いに好ましい。そのような組成物は混合により調製され、経口、吸入または非経口投与に適切に適応され、したがって、錠剤、カプセル、経口液体調製物、粉末、顆粒、ロゼンジ、再構成可能な粉末、注射および注入液もしくは懸濁液または坐薬またはエアロゾルの形態でもよい。経口投与用の錠剤およびカプセルは通常、単位用量で提供され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤化剤、潤滑剤、崩壊剤、着色料、香味料、および湿潤剤などの従来の賦形剤を含有する。錠剤は、当技術分野の周知の方法に従って被覆することができる。使用するのに適した充填剤には、セルロース、マンニトール、ラクトースおよび他の類似の薬剤が含まれる。適切な崩壊剤には、デンプン、ポリビニルピロリドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体が含まれる。適切な潤滑剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウムが含まれる。適切な薬学的に許容される湿潤剤にはラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。これらの固体経口組成物は、配合する、充填する、錠剤化するなど従来の方法により調製することができる。反復配合操作を使用して、大量の充填剤を用いてそれらの組成物全体に活性剤を分布させることができる。そのような操作は、当然のことながら、当技術分野では慣習的である。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、またはエリキシルの形態でもよく、あるいは使用前の水または他の適切なビヒクルを用いた再構成のための乾燥品として提供することもできる。そのような液体調製物は、懸濁剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは硬化食用脂;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を含むことができる)、例えば、アーモンド油、ヤシ油、グリセリンのエステルなどの油性エステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;保存剤、例えば、メチルもしくはプロピルp−ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸などの従来の添加剤、および必要な場合には、従来の香味料または着色料を含有することができる。経口製剤には、腸溶コーティングを有する錠剤または顆粒などの従来の徐放性製剤も含まれる。好ましくは、吸入のための組成物は、ネブライザー用のスナッフまたはエアロゾルもしくは溶液として、あるいはガス注入用の極微小粉末として、単独でのまたはラクトースなどの不活性担体と組み合わせての気道への投与のために提供される。そのような場合、活性化合物の粒子は、50ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満、例えば、2〜5ミクロンなどの1〜5ミクロンの径を適切に有する。好ましい吸入用量は、0.05〜2mg、例えば、0.05〜0.5mg、0.1〜1mgまたは0.5〜2mgの範囲になる。非経口投与では、本発明の化合物および無菌ビヒクルを含有する流体単位用量が調製される。活性化合物は、ビヒクルおよび濃度に応じて、懸濁していても溶解していてもよい。非経口溶液は通常、適切なバイアルまたはアンプル内に充填して密封する前に化合物をビヒクルに溶解してフィルター殺菌することにより調製される。有利には、局部麻酔薬、保存剤および緩衝剤などのアジュバントもビヒクルに溶解させる。安定性を増強するために、組成物は、バイアルに充填し真空下で水分を取り除いた後に凍結することが可能である。非経口懸濁液は、化合物を溶解させる代わりにビヒクルに懸濁させ、無菌ビヒクルに懸濁させる前にエチレンオキシドに曝露することにより減菌することを除けば、実質的に同じやり方で調製される。有利には、活性化合物の均一な分布を促進するために、界面活性剤または湿潤剤を組成物中に含む。必要に応じて、少量の気管支拡張薬、例えば、イソプレナリン、イソエタリン、サルブタモール、フェニレフリンおよびエフェドリンなどの交感神経刺激アミン;テオフィリンおよびアミノフィリンなどのキサンチン誘導体ならびにプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドならびにACTHなどの副腎刺激薬を含んでいてもよい。一般的なやり方のように、組成物は通常、関係する医学的処置において使用するための書かれたまたは印刷された説明書が添付されることになる。
生物学的製剤の場合、結合剤の細胞内への送達は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質について記載されている通りに実施することができる。エピトープが細胞外である場合、結合剤は細胞外部分に結合することによりその機能を働かせることができ、細胞内送達の必要はない。本明細書に記載される本発明の結合剤はオピオイド受容体の細胞内立体構造エピトープを標的とすることができる。これらの結合剤を細胞の内側で効果的で安全な治療薬として使用するためには、細胞内送達を当技術分野で既知のタンパク質形質導入または送達系により増強することができる。タンパク質形質導入ドメイン(PTD)は、生物学的膜を超えて移動するその能力で薬物送達分野ではかなりの関心を集めてきた。PTDは比較的短い(1〜35アミノ酸)配列であり、タンパク質およびそれがコンジュゲートしている、複合体化しているまたは融合している他の巨大分子カーゴにこの明らかな移動能力を与える(Sawant and Torchilin 2010)。例えば、HIV由来TATペプチド(YGRKKRRQRRR)は、小分子からタンパク質、ペプチド、種々の医薬ナノ担体および造影剤に及ぶ種々の薬剤の細胞内送達に広く使用されてきた。代わりに、受容体媒介エンドサイトーシス機構も細胞内薬物送達に使用することが可能である。例えば、トランスフェリン受容体媒介内部移行経路は効率的な細胞取り込み経路であり、薬物およびタンパク質の部位特異的送達に利用されてきた(Qian et al. 2002)。これは、化学的にはトランスフェリンを治療薬もしくはタンパク質とコンジュゲートさせることにより、または遺伝的には治療ペプチドもしくはタンパク質をトランスフェリンの構造内に注入することにより達成される。天然に存在するタンパク質(イオン結合タンパク質トランスフェリンなどの)は薬物ターゲティングというこの分野では非常に有用である。なぜならば、これらのタンパク質は生分解性で、非毒性で非免疫原性だからである。さらに、これらのタンパク質は、その受容体が細胞表面に大量に存在するので、部位特異的ターゲティングを達成することが可能である。さらに他の送達系には、限定する目的ではなく、ポリマーベースのおよびリポソームベースの送達系が含まれる。
本発明の結合剤および同結合剤を含む組成物の効力は、関係する特定の疾患または障害に応じて、任意の適切なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイおよび/もしくはそれ自体既知の動物モデル、またはその任意の組合せを使用して試験することが可能である。
本発明の別の態様は、オピオイド受容体シグナル伝達活性を調節するための上文に記載される結合剤または医薬組成物の使用に関する。
本明細書に記載される本発明の結合剤は、受容体シグナル伝達を活性化するもしくは増加するように、または代わりに受容体シグナル伝達を減少させるもしくは阻害するようにオピオイド受容体に結合することができる。本発明の結合剤は、受容体の構成的活性を遮断するように受容体に結合することもできる。本発明の結合剤はアロステリック調節を媒介するように受容体に結合することもできる(すなわち、アロステリック部位で受容体に結合する)。このように、本発明の結合剤は、受容体の異なる領域(例えば、アロステリック部位)に結合することにより受容体機能を調節することができる。例えば、George et al. (2002), Kenakin (2002) and Rios et al. (2001)を参照する。本発明の結合剤は、受容体媒介シグナル伝達の持続時間を延長するように、または受容体−リガンド親和性を増加させることによって受容体シグナル伝達を増強するように受容体に結合することもできる。さらに、本発明の結合剤は、受容体機能的ホモマーまたはヘテロマーの集合を阻害するまたは増強するように受容体に結合することもできる。
特定の一実施形態では、上文に記載される結合剤または医薬組成物はGタンパク質媒介シグナル伝達を遮断する。
別の実施形態では、本発明は、オピオイド受容体関連疾患、特にオピオイド受容体関連疾患徴候の治療において使用するための上文に記載される結合剤または医薬組成物も想定している。
したがって、いくつかの上記結合剤が治療上の有効性を有しており、状態について対象を治療するためにその状態を有する対象に前記結合剤を投与できることは理解されるであろう。結合剤の治療上の有効性は、その受容体を経るシグナル伝達が状態と関連しているのだから、結合剤が結合するオピオイド受容体により判定することができる。結合剤は、中でも、疼痛などのオピオイド受容体媒介状態の治療のために用いることができる。On−line mendelian Inheritance in Manデータベースでの追加の例となるオピオイド受容体関連状態は、NCBIのワールドワイドウェブサイトで見出される。したがって、本発明の特定の実施形態は、オピオイド受容体関連疾患または障害の治療のための結合剤または医薬組成物の使用も企図している。
ある種の実施形態では、結合剤は、他の原体と組み合わせて使用するための共治療剤として、例えば、そのような薬物の治療活性の増強剤としてまたはそのような薬物の必要な投薬もしくは潜在的な副作用を減らす手段として用いることができる。結合剤は、固定された医薬組成物中のその他の原体と混ぜ合わせてもよいし、またはその他の原体と別々に、前に、同時にもしくは後で投与してもよい。一般論として、これらのプロトコルは、オピオイド受容体関連疾患もしくは障害に罹っている個体に、オピオイド受容体を調節する有効量の結合剤を投与して、宿主において受容体を調節して障害について個体を治療することを含む。
オピオイド受容体の活性の減少が望ましいいくつかの実施形態では、受容体の活性を減少させる1つまたは複数の化合物を投与することができ、オピオイド受容体の活性の増加が望ましい場合には、受容体活性を増加させる1つまたは複数の化合物を投与することができる。
主題となる方法によれば、様々な個体が治療可能である。一般に、そのような個体は哺乳動物または哺乳類であり、これらの用語は、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳綱内である生物を記載するのに広く使用される。多くの実施形態では、個体はヒトになる。主題となる治療方法は典型的にはそのような障害を抱える個人でまたはそのような障害を回避する願望を抱えた個人で実施される。
さらに別の実施形態によれば、上文に記載されるように、結合剤はオピオイド受容体関連疾患徴候の診断または予後にも有用である可能性がある。
パーツのキット
本発明のさらに別の態様は、オピオイド受容体を標的とする結合剤を含むキットまたは本発明に従ったオピオイド受容体を標的とする結合剤を含む宿主細胞もしくは宿主細胞培養物もしくは膜調製物を含むキットに関する。キットは、バッファー、分子タグ、ベクター構築物、基準試料物質、ならびに適切な固体支持体などの試薬の組合せをさらに含むことができる。そのようなキットは本明細書に記載される本発明の適用のいずれにも有用でありうる。例えば、キットは化合物スクリーニング適用に有用な試験化合物(のライブラリー)を含んでいてもよい。
[実施例]
組換えマウスMor1の過剰発現および精製
天然のμオピオイド受容体(Mor1)の立体構造エピトープと相互作用するVHHを同定するため、Sf9昆虫細胞において組換えMor1を過剰発現させた。マウスのMor1アミノ酸配列(uniprotコードp42866)は昆虫細胞内での組換え発現および精製のために最適化し、一番端のN末端では、アミノ酸配列DYKDDDDA(配列番号69)をコードするフラッグタグを導入し、アミノ酸残基2〜5(DSSA)(配列番号70)は切断した。TEV切断部位「ENLYFQ」(配列番号71)をG51および1358直後の3C部位「LEVLFQGP」(配列番号72)の後に導入した。一番端のC末端では、配列DIHHHHHH(配列番号73)をコードするヒスチジンタグを導入した。昆虫細胞における組換え発現に使用された組換えマウスMor1変異体の完全なコード配列(デルタmMor1)は表4に提供されており、WTマウスMor1、デルタmMor1およびWTヒトMor1のアミノ酸配列アライメントは図1に描かれている。
組換えマウスMor1を精製するため、BestBac発現系(Expression Systems)を製造業者の使用説明書に従って使用して、デルタmMor1をSf9昆虫細胞において発現させる。N末端フラッグタグ付きデルタmMor1の組換え発現は、1−4E6/mlの密度で新たに増殖させたSf9細胞の培養物に200倍希釈P2デルタmMor1バキュロウイルスストックを感染させることにより達成した。感染した細胞は27℃で48〜60時間(130rpm)培養し、500×gで5分間の遠心分離により収穫した。デルタmMor1を過剰発現している細胞は氷冷PBSで2度洗浄し、再び遠心分離によりペレット化し−80℃で保存するまたは直ちに処理した。
デルタmMor1は洗剤を使用してこれらのペレットから可溶化し、折り畳まれた受容体を安定化させるMor1リガンドを使用して、ニッケルと抗フラッグ抗体を使用する親和性クロマトグラフィーステップにより精製した(Manglik et al 2012)。N末端およびC末端は酵素的タンパク質分解により取り除き、トランクデルタmMor1が得られた。最後に、トランクデルタmMor1は、サイズ排除クロマトグラフィーを経てそれに続くポリッシングステップにより均一になるまで精製する。
受容体がM1フラッグレジンに結合した後、以前記載された通りに(Kruse et al 2013)バッファー中の洗剤を段階的交換により0.1%ドデシルマルトシド(DDM)から0.01%ラウリルマルトースネオペンチルグリコール(MNG;Anatrace)に交換した。洗剤交換ステップの最後に、受容体は20mLのリガンドなしバッファー(0.01%のMNG、0.001%のコレステロールヘミスクシネート、25mM HEPES pH7.5 100mM NaCl)で洗浄する。受容体はフラッグペプチドを添加して溶出させた。アゴニスト(Dmt1−Dalda)でドープした精製トランクデルタmMor1を、合成脂質(DOPC、CHS Avanti極性脂質)からなり、β2ARについて以前記載された膜模倣環境において(Rasmussen 2011b)トランクデルタmMor1を安定化させる脂質A(Sigma)を含有する脂質小胞内に再構成した。リポソーム再構成されたトランクデルタmMor1は、免疫化(実施例3)、ファージディスプレイによるMor1特異的VHHの同定(実施例4)またはELISAによるこれらVHHのMor1特異性の確認(実施例5)のために使用するのに先立って−80℃でアリコートに保存した。
マウスMor1を過剰発現しているSf9昆虫細胞の膜調製物および組換え受容体の薬理特性
機能的Mor1受容体を含有する膜は、組換えN末端フラッグタグ付きデルタmMor1を発現しているSf9細胞(実施例1)から調製することが可能である。これらの膜を調製するため、新たに増殖させたSf9細胞培養物に標的遺伝子を発現している200倍希釈P2バキュロウイルスストックを3E6細胞/mlの密度で感染させる。感染した細胞は27℃で48〜72時間(130rpm)培養し、500×gおよび室温(RT)で5分間の遠心分離により収穫した。デルタmMor1を過剰発現している細胞は、1.5mM EDTAを補充した氷冷PBS pH7.4で2度洗浄し、再び遠心分離によりペレット化し−80℃で保存した。インタクトなSf9細胞の表面上でのN末端フラッグタグ付きマウスMor1(デルタmMor1)の過剰発現(48時間インキュベーション)は、FITC標識フラッグタグ特異的mAbのTopro3を蓄積しない細胞への特異的結合を測定することによりフローサイトメトリーを経てモニターした。
フローサイトメトリー実験では、2.5E5の新たに収穫したデルタmMor1過剰発現Sf9細胞は96ウェルV字底培養プレート(Greiner)に移し、250μlのFACSバッファー(PBS+10%ウシ胎仔血清)で洗浄する。無関係なクラスB GPCR(偽GPCR)を発現しているSf9細胞は負の対照として含まれた。上清を取り除いた後、細胞は1μgの抗フラッグタグマウスmAbクローンM2(Sigma、カタログ番号F3165)を含有する100μlのFACSバッファーと一緒に4℃で1時間インキュベートする。過剰なmAbを取り除くため、細胞は250μlの氷冷FACSバッファーで2度洗浄し、上清は取り除いた。これに続いて、細胞は1μgのヤギ−抗マウスFITCコンジュゲート二次検出mAb(eBiosciences、カタログ番号11−4011−85)を含有する氷冷FACSバッファーと一緒に4℃で最小限で30分間インキュベートした。細胞は250μlの氷冷FACSバッファーで2度洗浄し、上清は取り除いた。フローサイトメトリーでの分析直前に、細胞は1μMのTopro3(Molecular Probes、カタログ番号T3605)を補充した200μlの氷冷FACSバッファー中に再懸濁し、透過性の細胞集団からインタクトな細胞を区別した。FITC蛍光に起因する平均細胞蛍光強度(MCF)は、Topro3染色に続いて透過性とインタクトな細胞集団について独立的にゲートをかけた(およそ50対50比のインタクトと透過性細胞)。抗フラッグタグ検出の結果生じる細胞蛍光は、FlowJoソフトウェア(TreeStar Inc.、OR、USA)を使用して試料ごとに計算し、図2に描いている。デルタmMOr1でトランスフェクトされたインタクトなまたは透過性のSf9細胞のMCFは、偽受容体でトランスフェクトした細胞のまたは二次抗体のみで染色したデルタmMor1感染細胞のMCFよりも有意に高かった。インタクトな非透過性デルタmMor1細胞上の強い特異的シグナルにより、バキュロウイルス感染Sf9細胞の表面でのMor1の組換え過剰発現が確かめられる(図2)。
機能的なMorを含有する膜を調製するため、−80℃のアリコートの1E7デルタmMor1 Sf9細胞を1mlの氷冷75mMのTris HCl pH7.4、1mMのEDTA、5mMのMgCl2に再懸濁し、ロイペプチン(10μg/ml最終)および0.2mMのPMSFプロテアーゼ阻害剤を補充した。この細胞懸濁液は低容量のUltraturrax細胞ミキサー(IKA)を用いて6 10秒パルスを適用して氷上でホモジナイズした。細胞ホモジネートは予冷却遠心機において15000×gで35分間遠心分離した。上清は捨て、膜ペレットは75mMのTris HCl pH7.4、1mMのEDTA、5mMのMgCl2、10%のサクロースに再懸濁し、次に使用するまで−80℃で保存した。膜調製物の全タンパク質含有量は、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific Pierce、カタログ番号23225)を製造業者の使用説明書に従って使用して決定した。Sf9細胞で発現された(72時間インキュベーション)組換えデルタmMor1の機能性は、放射性リガンド競合アッセイによって評価し、選択性リガンドのMor1への特異的結合を測定することにより天然Mor1折り畳みを立証した。
これらの膜調製物に存在する組換えMor1の薬理特性は、放射性リガンドとして[3H]−ジプレノルフィン、中性Mor1アンタゴニスト(Perkin Elmer)および非放射性競合物質として漸増濃度のDmt1−Dalda(アゴニスト)またはナロキソン(アンタゴニスト)を使用してManglik et al (2012)により記載された通りに放射性リガンド競合アッセイにおいて評価した。
7μgの全タンパク質を含有するデルタmMor1/Sf9膜アリコートを、結合バッファーとして1%のBSAを含有する75μLのTBS(75mMのTris HCl pH7.4、1mMのEDTA、5mMのMgCl2、100mMのNaCl)に希釈する。続いて、1%のBSAを含有する25μLのTBSに希釈した段階希釈の非放射性競合物質アゴニストDmt1−Daldaまたはアンタゴニストナロキソンを添加する。続いて、1%のBSAおよび5nMの[3H]−ジプレノルフィン(最終濃度1nM)を含有する25μlのTBSを添加し、反応混合液は室温で1時間インキュベートする。膜結合[3H]−ジプレノルフィンは、すべての試料をWhatman GF/Cフィルター(Perkin Elmer、カタログ番号6005174)(1%BSAを含むTBSに予浸漬しておく)上を通過させることにより、96ウェルFilterMate収穫器(Perkin Elmer)上の非結合放射性リガンドから分離する。次に、フィルターは冷TBSで洗浄し、続いて50℃で1時間乾燥させる。35μlのシンチレーション液(MicroScint(商標)−、Perkin Elmer)を添加後、フィルター上に保持されている放射活性(cpm)をWallac MicroBeta Triluxシンチレーション計数器を使用して測定した。図3は、漸増濃度の非放射性競合リガンドの関数での受容体に結合している残留放射性リガンド(%で)を与えている。グラフ中のそれぞれの値は少なくとも4データ点の平均を表している。IC50値は非線形回帰分析により、対数(アゴニスト)対応答−Prism(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用する可変スロープ(4パラメータ)方程式で決定した。アゴニストおよびアンタゴニストのIC50はそれぞれ511nMおよび49nMとして計算し、Dmt1−Daldaおよびナロキソンが組換えデルタmMor1を含有する膜と特異的に相互作用することを示している。
ラマにおけるミューオピオイド受容体特異的液性免疫応答の誘導およびVHHレパートリーのクローニング
すべてのラマ免疫化実験は動物愛護と動物実験に関する欧州法に従って実施し、地元の免疫化施設に付属する倫理委員会による認可を受けていた。すべてのラマは熟練の獣医スタッフにより取り扱われた。
ラマにおいて天然のミューオピオイド1受容体に対する液性免疫応答を作り出すため、異なるMor1免疫原を用いる3種の平行免疫化戦略に従った。ラマ・ブランコ(Llamas Blanco)、ジャンパー(Jumper)およびビーナス(Venus)は、それぞれリポソーム内で再構成された精製マウスMor1(トランクデルタmMor1、実施例1において調製)、野生型ヒトMor1を過剰発現しているCHO細胞で調製された膜(Perkin Elmer製のWT hMor1/CHO膜、カタログ番号ES−542−M400UA)およびマウスMor1を過剰発現しているSf9昆虫細胞で調製された膜(デルタmMor1/Sf9、実施例2において調製)を用いて免疫化した。
すべてのラマは、表5に提供される免疫化計画に従って2週間の間隔をあけてそれぞれの免疫原を皮下に注射された。注射に先立って、免疫原は、高親和性Mor1アゴニストDmt1−Dalda(20〜200μM最終)およびGTPγS(100μM最終)と一緒に最小限で1時間氷上でプレインキュベートした。ラマ・ブランコ(Llamas Blanco)およびジャンパー(Jumper)では、免疫原は、同じ流入領域リンパ節近くの隣接しているが重複していないスポットでアジュバントGERBU LQと一緒に別々に注射された。ラマ・ビーナス(Llama Venus)の免疫化ではアジュバントは使用しなかった。免疫前(最初の免疫原投与の直前に収集される、0日目)および免疫(47日目)血清試料を収集して、血清転換をモニターした。ラマ・ブランコ(Llamas Blanco)およびジャンパー(Jumper)においてMor1特異的血清転換をモニターするため、段階希釈の免疫前および免疫後血清試料のトランクデルタmMor1リポソームへの結合をELISAによって評価した。これらのELISAでは、トランクデルタmMor1リポソームまたは無関係なGPCR(100μlの2μg/ml溶液)を含有する偽リポソームは、4℃で終夜、96ウェルMaxisorpプレート(Nunc)上に固相固定化する。プレートは洗浄バッファー(100nMのDmt1−Daldaを補充されたPBS)で3回洗浄した。ウェルは1μMのDmt1−Daldaを補充された250μlの2%PBSM(2%の市販の脱脂粉乳を含有するPBS;Nestle)を用いて室温で2時間ブロックした。洗浄バッファー中での3回洗浄後、固定化されたリポソームは段階希釈の免疫前および免疫血清(希釈された血清試料は100μLの0.1%PBSMおよび1μMのDmt1−Dalda中で調製された)と一緒に室温で1時間インキュベートした。洗浄バッファー中での3洗浄ステップ後、固定化された試料に結合しているラマIgGは、ヤギ抗ラマHRPコンジュゲート(0.1%PBSMおよび1μMのDmt1−Dalda中1μg/mlを100μl)を使用して検出した。ヤギ抗ラマ_HRPコンジュゲート(Bethyl Laboratories、カタログ番号A160−100P)は従来のものおよびラマの重鎖のみIgGに結合する。TMB one溶液(Promega、カタログ番号G7431)を使用して比色シグナルを発色させた。10分間の発色後、反応は100μlの1M H2SO4を添加することにより停止させ吸光度をOD405nmで測定した。血清転換結果は図4に描いている(上および中グラフ)。トランクデルタmMor1リポソームで免疫化されたラマ・ブランコ(Llama Blanco)では、固定化されたトランクデルタmMor1リポソーム上の免疫血清(47日目)について得られたシグナルは、免疫前血清を用いてまたは偽受容体を含有するリポソーム上で得られるシグナルと比べると系統的に高く、強いMor1特異的血清転換を示している(図4、上パネル)。WT hMor1/CHO膜で免疫化されたラマ・ジャンパー(Llama Jumper)では、固定化されたトランクデルタmMor1リポソーム上の免疫血清(47日目)について得られたシグナルは、免疫前血清を用いてまたは4.5E3倍血清希釈まで偽受容体を含有するリポソーム上で得られるシグナルと比べると高さは最小限で2倍であり、低いがMor1特異的血清転換を示唆している(図4、中パネル)。
ラマ・ブランコ(Llamas Blanco)およびジャンパー(Jumper)では、Mor1特異的血清転換は、デルタmMOr1でトランスフェクトされたSf9細胞を染色する免疫前(0日目)および免疫(47日目)血清の能力を比較することによりフローサイトメトリーによっても評価した。偽GPCRでトランスフェクトされた偽細胞は、負の対照として使用した。Sf9細胞は、実施例2に記載されている通りに(結合したラマIgGが検出されたことは除く)100および1600倍希釈の血清で染色した。結合したラマIgGは、1μgのヤギ抗ラマIgG(Bethyl Laboratories、カタログ番号A160−100A−5)を二次ロバ抗ヤギIgG PEコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch Labs、カタログ番号705−116−147)と組み合わせて使用して検出した。ラマ・ブランコ(Llama Blanco)では、免疫血清(47日目)によって引き起こされる平均蛍光(Topro3を蓄積しないインタクトな細胞の蛍光のみを測定した)は、免疫前血清を用いてまたは偽を発現している細胞上で得られるシグナルと比べると有意に高かった(図4、下のパネル)。蛍光増加は用量依存性であり、デルタmMor1上の蛍光>>偽GPCR感染Sf9細胞で、液性免疫応答がMor1に誘導されていることが確かめられる。フローサイトメトリーによるラマ・ジャンパー(Llama Jumper)での検出可能な血清転換は測定されていない。
免疫化後、それぞれの免疫化されたラマのVHHレパートリーはファージディスプレイベクター中にクローニングし、3つの別々のライブラリーを得た。ディスプレイベクターは、ヘルパーファージ感染後、ファージの先端部でタンパク質III融合物としてVHHを表示している組換えファージ粒子の産生を可能にするが、大腸菌(E. coli)の周辺質での可溶性VHHの発現も可能にする。VHHレパートリーのクローニングでは、100mlの血液を最後の免疫化(47日目)の5日後に収集し、末梢血リンパ球(PBL)はLeucosep管(Greiner、カタログ番号227 288)を製造業者の使用説明書に従って、およびPardon et al (2014)に記載される通りに使用して密度勾配遠心分離により分離した。全RNAは、RNeasy Midiキット(Qiagen、カタログ番号75142)を製造業者の使用説明書に従って使用して、PBLから抽出した。
cDNAは、SuperScript III First−Strand Synthesis Systemキット(Life Technologies、カタログ番号18080−051)を製造業者の使用説明書に従って使用して、40〜60μgの全RNAおよびdN6ランダムプライマーから開始して合成した。鋳型としてcDNAを使用して、VHHレパートリーのコード配列を、少数の改変でPardon et al (2014)に記載される通りにネステッドPCRを経てRT−PCRにより増幅させる。適応させたプライマーセットを使用して、増幅させたVHHレパートリーは、ファージディスプレイベクターpXAP100中でSfil−BstEII断片としてライゲートさせた。pXAP100はpMES4(genbankGQ907248)に類似しているがC末端His6−cMycタグを含有しており、Sfil−BstEIIによるVHHレパートリーのクローニングを可能にする。大腸菌(E. coli)TG1細胞内へのエレクトロポレーション後、4E8(Blanco)、4E8(Jumper)または1.2E9(Venus)クローンを含有する3つの別々のライブラリーが作製された。ライブラリーごとに、VHHのサイズに応じた最小割合のインサートは91%を超えていた(ライブラリー当たり最小限で23のランダムに選び取ったクローンについて評価した)。ライブラリーはPardon et al (2014)に記載される通りに救済され、組換えファージ粒子はさらに使用するまでPBS+20%グリセリン中に−80℃で保存した。
異なる受容体調節挙動を有するMor1特異的VHHを濃縮するための平行パニングアプローチ
パニング実験は個々のライブラリーで実施した。Mor1特異的VHHは、Verheesen and Laeremans (2012)により記載される通りにファージディスプレイおよびパニングのプロセスにより免疫ライブラリーから濃縮される。
標的の活性な立体構造に対して選択性であるVHHを同定するため、すべてのインキュベーションおよび洗浄ステップを飽和量のアゴニストDmt1−Daldaの存在下で実施して、受容体をそのアゴニスト結合活性状態立体構造に安定化させる。1〜10μMのDmt1−Daldaの存在下でトランクデルタmMor1リポソーム(実施例1)を含有する10μg/ml PBSの100μlを、96ウェルMaxisorp ELISAプレート(Nunc、カタログ番号439454)上に4℃で終夜固相固定化させた。非結合リポソームは250μlの洗浄バッファー(0.1〜1μMのDmt1−Daldaアゴニストを含有するPBS)を用いて3洗浄ステップにより取り除いた。ウェルは、1〜10μMのDmt1−Daldaを補充された2%PBSM(2%の市販の脱脂粉乳を含有するPBS;Nestle)の250μlを用いて室温で2時間ブロックした。洗浄バッファー中5回の洗浄後、100μlの0.1%PBSMおよび1〜10μMのDmt1−Dalda中に希釈した1E11〜1E12ファージ粒子は、室温で2時間インキュベートした。リポソームを再構成する脂質に結合する結合剤を除去するため、別々のMor1リポソーム被覆ウェルも、リポソームで再構成された過剰な(30μg/ml)偽GPCRを含有するファージ溶液と一緒にインキュベートした。両方のパニング条件では、非結合ファージは洗浄バッファー中20回の洗浄ステップにより取り除いた。結合しているファージは100μlの0.25mg/mlトリプシン溶液と一緒に室温で20分間ウェルをインキュベートすることにより溶出した。いかなるMor1エピトープ(オルソステリックリガンドとは無関係)とも相互作用するVHHを同定するため、Mor1アゴニストを添加しない条件下で平行選択を実施した。
ファージ溶出に続いて、Mor1濃縮ファージサブレパートリーは大腸菌(E.coli)TG1中に再感染させ、特定の選択ウェル中の溶出したファージの量を計算する滴定を実施する(Mor1濃縮の判定を可能にする、下参照)。ファージ粒子を産生するための重感染したTG1細胞の終夜増殖後、ファージは培養上清から回収し、濃縮し、ラウンド1について上に記載されるのと同じ濃縮戦略に従って第2ラウンドのパニングのために使用する。2ラウンドのパニング後、組換えVHHを発現している468の個々のTG1クローンを、VHHコード遺伝子の配列分析を含めて、さらに分析するために選び取った。TG1クローンはMor1リポソームにとり組換えファージの強い濃縮を示す条件からのみ選び取った(>10)。Mor1濃縮は、偽リポソームで被覆された平行ウェルと比べてMor1含有選択ウェルから溶出したファージの数の比として計算した。
VHHを安定化させる活性状態を求めるスクリーニング:異なるMor1リガンド調節挙動を有するVHHのパネルを同定するためのFACSベースの結合アッセイ
Rasmussen et al (2011b) and Kruse et al (2013)により記載されているGタンパク質模倣VHHに類似して、細胞内Mor1立体構造エピトープと相互作用することによりマウスMor1の活性状態をアロステリックに安定化するVHHに我々は特に興味を持った。そのようなナノボディはアゴニストに対する受容体の親和性を増加すると予想され、交換的に、受容体に結合するアゴニストはナノボディに対する親和性を増加する。Gタンパク質模倣VHHを同定するため、負の対照として偽受容体を発現している細胞を含めて、フローサイトメトリーによりDmt1−Daldaアゴニストの存在下でまたは非存在下でデルタmMor1を発現しているSf9細胞に結合するVHH(天然のままの周辺質抽出物として)を比較的に評価した。
周辺質抽出物の調製では、モノクローナルVHHをコードしているクローンを、1mlの選択性液体培養物(100μg/mlのアンピシリンを含有する2×TY)を含有する96ディープウェルプレートにおいて別々に増殖させ、VHH発現はPardon et al (2014)に記載される通りに誘導した。VHHは、TG1細胞の周辺質において可溶性His6−cMyc−タグ付きタンパク質として発現される。フローサイトメトリーアッセイでは、2.5E5の新たに収穫したデルタmMor1/Sf9または偽GPCR過剰発現Sf9細胞を96ウェルV字底培養プレート(Greiner、カタログ番号651101)に移し、250μlのFACSバッファー(PBS+10%ウシ胎仔血清)で洗浄する。VHH結合では、細胞は、1μgの抗c−Mycタグ検出マウスmAbクローン9E10(Roche、カタログ番号11 667 203 001)と一緒に4℃で30分間予め混合した5倍希釈の周辺質および20μMのMor1リガンドを含有する100μlのFACSバッファーと一緒に4℃で1時間インキュベートする。周辺質抽出物ごとに、4種の平行インキュベーション条件、デルタmMor1/Sf9細胞+Dmt1−Daldaアゴニスト(条件1);デルタmMor1/Sf9細胞+ナロキソンアンタゴニスト(条件2);いかなるリガンドもないデルタmMor1/Sf9細胞(条件3);いかなるリガンドもない偽GPCR発現Sf9細胞(条件4)を評価する。VHH結合後、細胞は、過剰のリガンドと一緒にまたはそれなしで、250μlの氷冷FACSバッファーで2度洗浄した。リガンドが適用された条件では、洗浄バッファーはその都度2μMの対応するリガンドを補充した。蛍光染色では、細胞は引き続いて、20μMの適切なMor1リガンドの存在下で/非存在下で、1μgのヤギ抗マウスFITCコンジュゲート二次検出mAbを含有する氷冷FACSバッファーと一緒に4℃で最小限30分間インキュベートした。細胞は250μlの適切な洗浄バッファー(FACSバッファー+/−2μMの対応するリガンド)で2度洗浄した。フローサイトメトリーでのVHH結合の分析直前に、細胞は20μMの適切なMor1リガンドの存在下で/非存在下で、1μMのTopro3(Molecular Probes、カタログ番号T3605)を含有する200μlの氷冷FACSバッファーに再懸濁した。FlowJoソフトウェアを使用して、VHH結合により引き起こされる平均細胞蛍光強度(MCF)(FITC蛍光)を、4種の平行条件ごとに透過性およびインタクトな細胞集団について独立してゲートをかけた。デルタmMor1との特異的な相互作用を示し異なるアミノ酸配列を有するVHHクローンのMCF値は図5、上パネルに提示している。
この解析に基づいて、3つの群のVHHを区別する。第1群のVHH(「プロファイルI」)はアゴニストを上回って、Mor1発現昆虫細胞への著しい結合を示すだけである(および偽GPCR発現Sf9上では低い背景蛍光シグナルを示している)。これらはVHHを安定化させる候補活性状態である(XA8633、XA8639、XA8641およびXA8643)。これらのVHHのうちの2つ(XA8633およびXA8643)の典型的なMCFプロファイルは図5に示している。透過性/インタクトな細胞集団のTopro3媒介ゲーティングは、これらのVHHが細胞内エピトープと相互作用することを示しており、Mor1特異的シグナルは透過性細胞上のみで検出される(灰色バー、アゴニストの存在下で)がインタクトな細胞上では検出されない(黒色バー、アゴニストの存在下で)。配列解析に続いて、「プロファイルI」に属し異なるアミノ酸配列を示す4つのVHHを同定した。これらのVHHはすべて同じ配列ファミリーに属すが配列は異なっている。VHH配列ファミリーは、高度に類似するCDR3アミノ酸配列(同一長および80%を超える配列同一性)を有する抗体断片の群として定義される。同じ配列ファミリーに属するVHHは同じB細胞分化系列に由来し、類似するエピトープと相互作用すると予測される。これらの「プロファイルI」VHHはすべて候補Gタンパク質模倣VHHである。なぜならば、i)アゴニストの存在下でのみ強いMor1結合を示し、ii)細胞内Mor1エピトープと相互作用するからである。プロファイルIの独特なMor1 VHHすべてのアミノ酸配列アライメントは図7に提供される。
Gタンパク質模倣VHHの同定に加えて、このスクリーニングアッセイは、他のリガンド調節効果または受容体機能にも立体構造にも影響を与えない単純な結合剤までも有するMor1特異的VHHの極めて多様なパネルの同定を可能にする。「プロファイルII」はXA8635が例証している(図5):このVHHは受容体の細胞外部分と相互作用し、アゴニスト的またはアンタゴニスト的リガンドの両方により置換される。Mor1結合剤すべての配列解析後、「プロファイルII」に属するいくつかのクローンが同定され、すべてが同じ独特のアミノ酸配列を有していた(図7)。XA8727のような「プロファイルIII」を有するクローンはMor1の細胞内部分と相互作用し(インタクトなMor1細胞上にはMor1特異的シグナルはない)、それでもアゴニストまたはアンタゴニストの存在下では著しい結合を示す(図5)。配列解析に続いて、「プロファイルIII」に属するクローンはすべて同じ独特のアミノ酸配列を示した(図7)。
Mor1特異的VHHを同定するための平行方法として、リポソーム内で再構成されていない洗剤可溶性オピオイド受容体をファージディスプレイ選択のために使用した。選択は過剰量のDmt1−Daldaの存在下、ライブラリーブランコ(Blanco)上で実施し、モノクローナルVHHは、本実施例に記載されるのと類似して、フローサイトメトリーによってMor1特異性について評価した。もう1度、XA8633と同じ配列ファミリーに属する「プロファイルI」VHHを同定した。さらに、新しい配列ファミリーに属する新しい「プロファイルIII」VHHを同定した(XA9644、配列番号74)。
Mor1特異性を評価するための別のアプローチとして、ELISAによって、リポソームに再構成されたトランクデルタmMor1への結合についてVHHの周辺質抽出物を評価した。フローサイトメトリーによりMor1特異的クローンとして同定されたVHHアミノ酸配列変異体のすべてを試験し、ELISAにおいてMor1に結合することを確かめた:XA8633、XA8639、XA8641およびXA8643(プロファイルI)、XA8635(プロファイルII)ならびにXA8727(プロファイルIII)。ELISAでは、トランクデルタmMor1リポソームまたは偽リポソーム(10μMのDmt1−Daldaを補充された100μlの2μg/ml溶液)を4℃で終夜96ウェルMaxisorpプレートに固相固定化する。プレートは洗浄バッファー(1μMのDmt1−Daldaを補充されたPBS)で3回洗浄した。ウェルは10μMのDmt1−Daldaを補充された250μlの2%PBSM(2%の市販の脱脂粉乳を含有するPBS;Nestle)を用いて室温で2時間ブロックした。洗浄バッファー中での3回洗浄後、0.1%PBSM中のVHHを含有する5倍希釈の周辺質100μl(0.1%の市販の脱脂粉乳を含有するPBS;Nestle)と10μMのDmt1−Daldaを室温で1時間インキュベートした。洗浄バッファー中でのさらに3回の洗浄ステップ後、結合したVHHは一次抗cMyc mAb、続いて二次ヤギ抗マウスAPコンジュゲート(0.1%PBSM中100μlの1μg/mlと10μMのDmt1−Daldaの両方)インキュベーションを使用して検出した。DNPP(Sigma、カタログ番号71768)を使用して比色シグナルを発色させた。吸光度はOD405nmで測定し、結果は図6に描いている。試験したVHHすべての吸光度値は偽リポソームと比べるとトランクデルタmMor1リポソーム上では最小限で3倍であり、試験したVHHすべてがMor1に特異的に結合していることを強く示している。試験されたVHHはすべて、リポソーム中で再構成されるトランクデルタmMor1への特異的結合を確証している。トランクデルタmMor1はそのNおよびC末端で切断されているので、これらのVHHは細胞外または細胞内Mor1立体構造エピトープと相互作用する可能性が極めて高い。
ディスプレイベクターpXAP100は、大腸菌(E.coli)株WK6の周辺質における可溶性C末端His6−cMycタグ付きタンパク質としてのVHHの誘導性周辺質発現を再クローニングしなくても可能にする。さらなる特徴付けのため、VHH発現構築物を大腸菌(E.coli)株WK6に形質転換させ、VHHは固定化された金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)により精製した。培養物は、バッフル付フラスコ内で、0.1%グルコースおよび100μg/mlアンピシリンを含有するTB培地において37℃でOD600=0.5〜1まで増殖させる。100μg/mlのアンピシリンおよび10mMのIPTG(最終濃度1mM)を含有するTB培地の10分の1体積を添加する。VHHはTalonビーズ(Clontech)を製造業者の使用説明書に従って使用して、IMACにより精製する。次に、精製したタンパク質はPBSに対して透析し、回転濃縮する。すべてのVHHでは、SDS−PAGEおよびそれに続くクーマシー染色によって判断した場合、純度は90%以上であった。
「プロファイルI」のVHHはMor1のアゴニスト結合活性状態を安定化する
精製に続いて、1μMのXA8633の細胞表面発現Mor1(デルタmMor1/Sf9)への結合を、周辺質抽出物をインキュベートせず、精製したXA8633を添加する以外は、正確に実施例5において記載される通りにフローサイトメトリーによって評価した。精製したXA8633を使用して、周辺質を用いて得られた蛍光プロファイル(図5)と比べて同一の蛍光プロファイルを検出する(図8)。Rasmussen et al (2011b) and Kruse et al (2013)により記載されているGタンパク質模倣VHHに類似して、細胞内Mor1立体構造エピトープと相互作用することによりマウスMor1の活性化状態をアロステリックに安定化するVHHはアゴニストに対する受容体の親和性を増加すると予想される。
「プロファイルI」に属しているVHHがMor1のアゴニスト結合活性状態を安定化することができることをさらに確証するため、Rasmussen et al (2011b) and Kruse et al (2013)により記載されている放射性リガンド競合アッセイを実施し、XA8633のMor1への結合がMORアゴニストDmt1−Daldaに対する受容体の親和性を増加することを確かめた。Mor1−XA8633複合体の薬理特性を分析するため、デルタmMor1/Sf9膜を過剰な精製されたVHH、単一濃度のアンタゴニスト的な放射性リガンド[3H]−ジプレノルフィン(中性Mor1アンタゴニスト)、および競合物質として特徴がはっきりしているMor1アゴニスト(Dmt1−Dalda)の希釈系列と一緒にプレインキュベートした。75μlの体積中で、8.33μMのVHHは、結合バッファーとして1%BSAを含有するTBS(75mMのTris HCl pH7.4、1mMのEDTA、5mMのMgCl2、100mMのNaCl)中で室温で30分間7μgのSf9/マウスデルタmMor1膜と一緒にプレインキュベートする。次に、冷アゴニスト競合物質Dmt1−Dalda(10−12〜10−5Mの範囲)の段階希釈を含有する25μlの結合バッファーを添加する。続いて、25μlの結合バッファー中の5nMの[3H]−ジプレノルフィン放射性リガンド(1nM最終濃度)を添加し、反応混合液は室温で1時間インキュベートする。受容体結合[3H]−ジプレノルフィンは、すべての試料をWhatman GF/Cフィルター(1%BSAを含むTBSに予浸漬しておく)上を通過させることにより、96ウェルFilterMate収穫器上の非結合放射性リガンドから分離し、冷TBS中で洗浄する。実施例2に記載される通りにフィルターを調製し、cpmを測定した。候補活性化状態安定化ナノボディXA8633対偽VHHの存在下での残留放射性リガンド結合の割合を計算し図9に提示している。グラフ上のデータはそれぞれの値(3データポイントの平均)の平均±標準誤差を表している。IC50値は、非線形回帰分析により、対数(アゴニスト)対応答−Prism(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用する可変スロープ(4パラメータ)方程式で決定した。XA8633または偽VHH(CA4910)の存在下で、計算したIC50はそれぞれ5.7E−8および5.5E−7Mである。5μMのXA8633の存在下では、Mor1アゴニストDmt1−DaldaのIC50は、偽VHHCA4910と比べて約10分の1であり(左側に移動)、XA8633がその受容体に対するDmt1−Daldaアゴニストの親和性を増加することを示している。したがって、XA8633はMor1受容体のアゴニスト結合活性状態を安定化する。
「プロファイルII」VHHはミューオピオイド受容体に結合しているオルソステリックリガンドを置換する
「プロファイルI」VHHに関して、1μMの精製されたXA8635(プロファイルII)の細胞表面発現Mor1(デルタmMor1/Sf9)への結合は、実施例6に記載されるフローサイトメトリーにより評価した。その上精製されたXA8635では、周辺質を用いて得られた蛍光プロファイル(図5)と比べて同一の蛍光プロファイルを検出する(図8)。Mor1リガンド(アゴニストまたはアンタゴニスト)の存在下では、XA8635は、Mor1を過剰発現しているインタクトなおよび透過性のSf9細胞に特異的に結合するその能力を失い、XA8635が、オルソステリックポケットへのリガンドの結合を妨げることによりMor1シグナル伝達の阻害因子であることを示唆している。
放射性リガンド競合アッセイは少数の改変で、実施例6に記載される通りに実施し、5μgのWTヒトhMor1/CHO膜または7μgのデルタmMor1/Sf9膜を濃度範囲の精製されたXA8635および1nMの放射性リガンド(アゴニストは添加せず)と一緒にインキュベートした。混合物は室温で1時間インキュベートし、洗浄後、フィルター結合放射性リガンドを測定した。放射性リガンド置換の用量依存性増加は両方の膜タイプ上でXA8635について実証されており(図10)、このVHHがヒトとマウスMor1オルソログの両方と相互作用することを示し、このVHHがオルソステリックポケットへのリガンドの結合を妨げることを再び確証している。
二価XA8635およびヒトMor1との交差反応性
二価XA8635発現構築物は、9GSリンカーにより分離されたXA8635の遺伝的頭尾融合物を作製することにより生み出した(表2)。XA8635は、鋳型としてXA8635cDNAを有するディスプレイ構築物pXAP100を使用して再増幅させた。プライマーセットXAP1−FW−MfelおよびVHH1−Rv−BamHlを使用してN末端VHHを増幅させ、C末端VHH増幅のためにはVHH2−FW−BamHlとVHH2−Rv−BstEllを組み合わせた(表6)。Mfel−BstEll消化された発現ベクターにおいてそれぞれMfel−BamHlおよびBamHl−BstEll断片としてNおよびC末端VHHをクローニングするために、適切な制限酵素認識配列を個々のプライマー内に導入する。プライマーVHH1−Rv−BamHlおよびVHH2−FW−BamHlは、BamHl消化後GSリンカーのコード配列を組み込む。両方のVHH断片を増幅するため、5ngの鋳型および標準PCR試薬は以下の増幅反応:94℃で2分、[94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分]を25サイクルおよび94℃で7分間において使用した。アンプリコンはWizard SV Gel and PCR Clean−up System(Promega、カタログ番号A9282)を製造業者の使用説明書に従って使用して精製し、それに続いて適切なセットの酵素を用いて二重消化した。消化し精製したインサートおよびベクター断片は単一のライゲーション混合物にライゲートし、構築物XA8635−9GS−XA8635を得た。それに続いてライゲーションは大腸菌(E.coli)WK6内に形質転換し、配列分析により正確な二価XA8635を同定することが可能になった。ベクター骨格は、C末端にcMyc−His6タグを含有する可溶性XA8635−9GS−XA8635の発現を可能にする。二価VHHは実施例5に記載する通りに発現され精製されて、単一IMAC精製ステップ後の3L培養物から95%を超える純度(クーマシー染色)の精製されたタンパク質を9.9mg得た。一価および二価XA8635の結合は、実施例5において記載されたのと類似して(しかし、いかなるMor1リガンドも非存在下で)、Mor過剰発現CHO細胞対親非トランスフェクトCHO細胞上でフローサイトメトリーにより評価した。Mor過剰発現CHO細胞への用量依存性特異的結合は一価および二価XA8635について実証され、別々のアッセイにおいて、XA8635がヒトおよびマウスMor1オルソログに交差反応性であることを確証している。1μMでは、二価XA8635は、一価XA8635に対しておおよそ34%増の蛍光を示した(図11)。
「プロファイルI」VHH XA8639はGタンパク質模倣性であり、アゴニスト結合活性状態ミューオピオイド受容体−XA8639−BU72複合体の高分解能構造をX線結晶学により解析することが可能である
多くのリガンド活性化GPCRの活性状態は、完全アゴニストに結合しているときでも、比較的不安定である。活性状態はGPCRとその同族Gタンパク質の相互作用により安定化することが可能である。この安定化は、GPCRがその同族Gタンパク質と複合体化しているときのほうがアゴニストに対する親和性が高いことに反映されている。Mor1の場合、アゴニスト親和性はGタンパク質Giに結合しているときは220倍増強され(図12、上パネル)、活性状態Mor1受容体立体構造の安定化を示している。Mor1アゴニストに対する高親和性状態を安定化するXA8639の能力を調べた。
精製されたMor1は、3対2のモル比のアポリポタンパク質A1とPOPC/POPG(Avanti Polar Lipids)で構成された高密度リポタンパク質(HDL)粒子に再構成され、ナノボディの存在下または非存在下でアゴニスト競合アッセイを実施した。競合アッセイでは、0.02nMの機能的受容体と2.3nMの[3H]−ジプレノルフィン(DPN)を結合バッファー(100mMのNaCl、25mMのHEPES pH7.4、0.1%BSA)中で指示された濃度のBU72およびXA8639またはGタンパク質と一緒に混合した。ヘテロ三量体Giは、バキュロウイルス系(Expression System)を使用してHighFive昆虫細胞においてヒトGαi1、ヒトGβ1およびGγ2サブユニットを同時発現することにより調製した。Gタンパク質は以前記載された通りに精製した(Rasmussen 2011b)。反応物は室温で4時間インキュベートし、その後0.1%ポリエチレンイミンで処理された濾紙上に48ウェル収穫器(Brandle)により濾過した。放射性リガンド活性は、液体シンチレーション計数により測定した。データはPrism(GraphPad Software)により処理し解析した。
5μMのナノボディXA8639の存在下で、BU72の阻害定数(Ki)は1.5nMから8.5pMに移動する(図12、下パネル)。したがって、XA8639はBU72に対する親和性を176倍増強し、Giで観察された増強に匹敵する。
アゴニスト−Mor1−XA8639複合体結晶形成のための精製されたMor1の品質を改良するため、細胞外表面に結合しオルソステリック結合ポケットへと伸長する「プロファイルII」XA8635を使用して機能選択を実施した。リガンドのないMor1を1対2.5倍の化学量論的過剰なXA8635と混合した。XA8635は高親和性(およそ12nMのKi)で受容体に結合する。XA8635結合受容体はニッケル樹脂に再ロードし、20mMのイミダゾール補充されたリガンドなしバッファーで洗浄した。機能的なMor1−XA8635複合体は250mMのイミダゾール、0.01%のMNG、0.001%のコレステロールヘミスクシナート、25mMのHEPES pH7.5および100mMのNaClを含有するバッファーで溶出した。次に、BU72およびXA8639を過剰に添加した。BU72がXA8635を置換しBU72−MOR−XA8639複合体が形成された。混合物は濃縮しサイズ排除クロマトグラフィーにかけてBU72−MOR−XA8639複合体を遊離のXA8635およびXA8639から分離した。精製された複合体は結晶化を試みる前におよそ50mg/mLまで濃縮した。
活性状態のMor1を結晶化するため、Mor1−Gi複合体の構造を得るための試みは成功しなかった。Gタンパク質安定化に代わるものは、Gタンパク質模倣ナノボディ(ラクダ可変ドメイン抗体断片)の使用であった。精製されたMor1は、タンパク質溶液(50mg/ml)と脂質を1対1.5比(w対w)で組み合わせることによりモノオレインとコレステロールの10対1混合物(w対w、Sigma)内に再構成した。タンパク質と脂質はガラス注射器(Art Robbins Instruments)内に充填し均一になるまで混ぜ合わせた。30nLの試料は96ウェルガラスプレート上に分注し、Gryphon LCPロボット(Art Robbins Instruments)を使用して500nLの沈殿剤液で表面を覆った。結晶は、15〜25%のPEG300、0.1MのHEPES pH7.0〜7.5、1%の1,2,3−ヘプタントリオール、0.5〜1.0%のポリエチレングリコール400(Hampton Research)および0.1〜0.3Mの(NH4)2HPO4の混合液中で成長した。結晶は2日後に観察され1週間でフルサイズに達した。結晶は網状格子ループ(MiTeGen)を用いて収穫し、液体窒素中に瞬間冷凍した。ループはAdvanced Photon SourceGM/CAビームライン23ID−Bおよび23ID−Dでスクリーニングした。データは、5%減衰および0.5〜1秒間曝露で10μmビームを使用して収集した。0.1〜0.5度の発振幅を使用し、4つの結晶からの回折像を合併して最終データセットを作製した。
Bu72とNb39に結合しているMor1の結晶は、脂質二重層を模倣する脂質媒体であるモノオレイン中間相において得られた。4つの結晶からの回折データを合併することにより2.1Åまでの完全なデータセットを入手し、構造は、探索モデルとして不活性MORおよびナノボディを使用する分子置換により決定した。回折像は縮尺しXDSにより処理した(Kabsch, W. et al 2010)。構造は、Phaserにおける探索モデルとしての不活性MOR(タンパク質データバンク受託番号4DKL)およびNb80(タンパク質データバンク受託番号3P0G)の構造との分子置換により決定した(McCoy et al 2007)。モデルはCootで再構築し(Emsley et al. 2004)、Phenix(Afonine 2012)を使用して分解能2.1Åまで精密にし、図はPyMolを使用して調製した。
予想通り、XA8639は細胞内表面に結合する(図13)。結晶格子では、XA8639は、層と隣接するXA8639−Mor1複合体の間の大多数の充填による相互作用を媒介し、充填による相互作用は細胞外表面に関係していない(データは示していない)。第1の膜貫通(TM)へリックス1(TM1)の細胞外末端、TM2および第1の細胞外ループ(ECL1)と関係している弱い二量体充填による相互作用(460Å2の埋没表面積)が観察されている。これは、不活性状態の結晶構造において観察されるTM5とTM6に関係するもっと広範囲な平行二量体相互作用(1460Å2)と対照をなしている。不活性構造において観察される二量体相互作用が、活性状態で我々が観察する立体構造変化と適合しないと考えられることは興味深い。XA8639は、Nb80−β2AR複合体およびNb9−8−M2R複合体と比べた場合、Mor1のコア内に同じくらい深くは貫入していない(Kruse et al. 2013; Rasmussen et al. 2011b)。XA8639は、Mor1のICL2、ICL3およびICL4由来の残基と主に水素結合を通じて相互作用する。主にその相補性決定領域(CDR)との相互作用を通じて活性状態を安定化するNb80およびNb9−8とは違って、Mor1はXA8639のフレームワークとより広範な相互作用があり、CDR2およびCDR3からの寄与はごくわずかである(図13)。
細胞外表面上の不活性Mor1と活性Mor1の間の構造上の差異は比較的小さく、例外は近位N末端である。活性化すると観察されるMor1の細胞質表面の立体構造変化は、β2AR、M2Rおよびロドプシンについて観察される立体構造変化と類似しており、TM6の大きな外側への動き、TM5のもっと小さな外側への動き、およびTM7の内側への動きである。TM3の細胞内末端での保存されているDRYモチーフはGPCRを不活性状態に維持するのに役割を果たしている。活性状態でのこれらの保存されたアミノ酸との相互作用は、NPxxYとの相互作用ほどよく保存されていない。ロドプシンでは、ERYはTM6におけるE2476.30とのイオン性相互作用を通じてロドプシンを不活性立体構造に維持している。Mor1の不活性状態では、R1653.50はY2525.58と水素結合を形成し、TM5の内側への動きを安定化しており、M2R、β2AR−G複合体およびメタロドプシンIIについて観察されることと類似している。