JP2017227382A - ウィック - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸発部における冷却効率を向上させ得るウィックを実現する。【解決手段】ウィック52は、ループヒートパイプの蒸発器2で用いられる。ウィック52は、筒状の多孔質体である。ウィック52のY軸方向の一方が開口し、他方が閉口している。ウィック52は、多孔質体で囲まれた内部空間58に液相の流体を導入可能である。ウィック52を構成している多孔質体は、粒子が結合材で結合された構造を有しており、内部空間58と外部空間54を連通する連通孔を有している。ウィック52は、多孔質体内において、粒子間における結合材の面積をA1とし、多孔質体内の空隙に露出している粒子と結合材の面積をA2としたときに、0.1<A2/A1<20の関係を満足している。【選択図】図2
Description
本明細書に開示する技術は、ループヒートパイプのウィックに関する。
高温部で流体を液相から気相に変化させ、低温部で気相から液相に変化させることにより、熱移動を行うループヒートパイプが知られている。特許文献1は、高温部で用いる蒸発器の構造を開示している。蒸発器は、金属製の筒状ケースと、筒状ケース内に配置されているウィックを備えている。ウィックは、筒状の多孔質体であり、軸方向(長手方向)の一端が開口し、他端が閉口している。ウィックは、多孔質体で囲まれた内部空間に液相の流体を導入可能である。液相の流体は、毛細管現象により、ウィックの内部空間から外部空間に移動する。流体は、多孔質体内で、多孔質体を構成する材料から受熱し、液相から気相に変化する。気相の流体は、ウィックの外部空間に設けられている気相流路を通って低温部(凝縮部)に移動する。
ウィックを構成する多孔質体は、典型的に、粒子同士を結合材で結合した構造を有している。これにより、ウィックの形態を維持している。液相流体は、ウィック内(多孔質体内)において、多孔質体(粒子及び結合材)から受熱し、気相に変化する。そのため、多孔質体と流体(液相流体)の接触面積が大きいほど、液相から気相へ効率よく変化すると考えられる。しかしながら、多孔質体と流体の接触面積を大きくするだけでは、蒸発部の冷却効率が低下する現象が起こる。そのため、従来は、多孔質体の材料(材質,粒度等)毎に、気孔率等を経験的に調整し、所望する冷却効果が得られるウィックを製造している。本明細書は、新たな指標に基づいて多孔質体の構造を設計し、蒸発部における冷却効率を向上させ得るウィックを実現する技術を提供する。
本発明者らは、蒸発部における冷却効率を向上させる要因として、多孔質体を構成している粒子間の伝熱について着目した。粒子間の伝熱が良好であれば、ウィックの温度が上昇しやすくなり、ウィックから流体に熱が伝わり易くなる。粒子間の伝熱は、粒子同士を結合している結合材の影響を受ける。粒子間の結合材の体積が大きくなるに従い、粒子間の伝熱が良好になり、ウィックの温度が上昇しやすくなる。より具体的には、結合材のうち、粒子間を結ぶ方向に直交する断面の面積が最も小さい部分(いわゆる、ボトルネック部分)の面積が大きくなるに従い、粒子間の伝熱が良好になる。以下の説明では、結合材のボトルネック部分の面積を「結合材の面積」と称する。
しかしながら、結合材の面積を増加させ続けると、ウィックの温度は良好に上昇するにも係らず、冷却効率が低下する(すなわち、流体の液相から気相への変化が起こりにくくなる)ことが判明した。この現象は、結合材の面積が増えるに従い、粒子と結合材の接触面積が増加する結果、流体が接触し得る多孔質体(粒子及び結合材)の表面積が減少することに起因することが判明した。粒子間における結合材の面積をA1とし、流体が接触し得る多孔質体の表面積(すなわち、多孔質体内の空隙に露出している粒子と結合材の面積)をA2としたときに、A1とA2の比には、適切な範囲が存在することが判明した。
本明細書で開示するウィックは、上記知見に基づくものであり、ループヒートパイプの蒸発器で用いることができる。そのウィックは、筒状の多孔質体であり、軸方向の一端が開口しているとともに他端が閉口している。ウィックは、多孔質体で囲まれた内部空間に液相の流体を導入可能である。ウィックを構成している多孔質体は、粒子が結合材で結合された構造を有しており、内部空間と外部空間を連通する連通孔を有している。本明細書で開示するウィックでは、粒子間における結合材の面積をA1とし、多孔質体内の空隙に露出している粒子と結合材の面積をA2としたときに、0.1<A2/A1<20の関係を満足している。
ここで、面積A1と面積A2について説明する。図4は、ウィックを構成している多孔質体の断面モデルを示している。図5は、図4の部分拡大図を示している。なお、図4は、同じサイズの粒子70が、結合材72で接合された状態を示している。図4に示すように、同じサイズの粒子70で構成された多孔質体であっても、切断面に現れる粒子70のサイズは異なる(粒子中心部の断面は大きく現れ、端部の断面は小さく現れる)。同様に、切断面に現れる結合材72のサイズも、切断する場所によって異なって現れる。切断面に現れた面積A1の平均値を算出すれば、特定の範囲の面積A1(例えば、単位体積当たりの面積)を算出することができる。同様に、切断面に現れた面積A2の平均値を算出すれば、特定の範囲の面積A2を算出することができる。
なお、流体は、結合材72と接触していない部分の粒子70の表面(多孔質体内の空隙に露出している部分の粒子の表面)、および、粒子70と接触していない部分の結合材72の表面(多孔質体内の空隙に露出している部分の結合材の表面)と接触し得る。これらの表面の面積が、「面積A2」に相当する。以下の説明では、流体が接触し得るこれらの表面を「ウィックの表面」と称し、面積A2を「ウィックの表面積」と称することがある。
面積A1と面積A2の算出方法を説明する。図5に示すように、まず、隣り合う粒子70と、粒子70,70を接合している結合材72について、粒子70と結合材72の界面74を特定する。次に、界面74,74間の中点78同士を結んだ線80の長さL80を測定する。典型的に、界面74,74間において、結合材72の断面積は、中点78部分が最も小さくなる。すなわち、中点78部分は、結合材72のボトルネック部分であることが多い。そのため、長さL80は、結合材72の断面において、最も厚さが薄い部分の長さを現わす。複数の粒子70,70間について長さL80を測定し、その測定値の平均値L80aveを算出する。次に、粒子70の空隙に露出している部分(結合材72と接していない部分)について、界面74,74間の中点76を特定し、隣り合う粒子70の中点76,76間における粒子70と結合材72の表面82の長さL82を測定する。複数の粒子70,70間について長さL82を測定し、その測定値の平均値L82aveを算出する。その後、L82ave/L80aveを算出することにより、A2/A1を算出することができる(A2/A1=L82ave/L80ave)。
なお、多孔質体全体の面積A1及び面積A2は、L82及びL80の積分値(内部空間と外部空間の間の多孔質体の厚みによる積分値)である。しかしながら、上記したように、切断面には、粒子及び結合材の様々な部分の切断面が現れる。また、本明細書では、面積A1及び面積A2そのものの数値でウィックの構造を規定するのではなく、面積A1と面積A2の比でウィックの構造を規定する。そのため、1つの切断面において「L82ave/L80ave」を算出すれば、多孔質体全体の「A2/A1」を算出したものと同様の結果を得ることができる。特に限定されるものではないが、L82ave及びL80aveは、各々20個のL82及びL80の測定値から算出することができる。なお、L82及びL80は、例えば、多孔質体の断面をSEMで観察し、SEM画像に現れた粒子70と結合材72を測定することにより得られる。また、SEM画像における粒子70と結合材72は、反射電子像、組成の差によって区別することができる。
上記したように、本明細書で開示するウィックは、0.1<A2/A1<20の関係を満足している。一般的に、A2/A1が小さくなることは、面積A1(L80ave)が増加することを意味する。その結果、粒子間の伝熱が早くなり、ウィックの温度は上昇しやすくなる。しかしながら、面積A1が増加すると、相対的に面積A2(L82ave)が小さくなる。流体に接触し得るウィックの表面積が減少し、ウィックから流体への伝熱が起こりにくくなる。0.1<A2/A1の範囲では、ウィックの温度上昇により、面積A2の減少の影響を補うことができる。しかしながら、A2/A1≦0.1になると、面積A2の減少(流体に熱を伝えるウィック表面積の減少)の影響をウィックの温度上昇で補うことができなくなる。A2/A1≦0.1になると、流体が液相から気相に変化する速度が低下し、蒸発器の冷却効率が低下する。また、A2/A1≦0.1になると、高温のウィックに対して少量の流体が接することになる。そのため、流体が急激に加熱され、突沸が生じることがある。
一方、A2/A1が大きくなることは、面積A1が減少することを意味する。そのため、一般的に、A2/A1が大きくなるに従い、粒子間の伝熱が遅くなり、ウィックの温度が上昇しにくくなる。しかしながら、面積A1が減少すると、相対的に面積A2が大きくなる。流体に接触し得るウィックの表面積が増加し、ウィックから流体への伝熱が起こりやすくなる。そのため、A2/A1<20の範囲では、流体に接触し得るウィックの表面積の増加により、面積A1の減少の影響を補うことができる。しかしながら、20≦A2/A1になると、面積A1の減少(粒子間で熱を伝える接合材の面積の減少)の影響をウィックの表面積の増加で補うことができなくなる。20≦A2/A1になると、流体が液相から気相に変化する速度が低下し、蒸発器の冷却効率が低下する。なお、20≦A2/A1になると、粒子間を接合する接合材の強度が低下し、多孔質体(ウィック)の強度が低下することがある。
上記したように、本明細書で開示するウィックは、筒状の多孔質体である。多孔質体で囲まれた部分には空間が存在する。また、多孔質体の内部にも空間(空隙)が存在する。本明細書では、多孔質体で囲まれた空間を「ウィックの内部空間」と称し、多孔質体の内部を「ウィックの内部」と称して区別する。
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
本明細書で開示するウィックは、ループヒートパイプの蒸発器で用いることができる。ループヒートパイプは、蒸発器と、凝縮器と、蒸気管と、液管を備えていてよい。この場合、蒸気管は蒸発器の出口と凝縮器の入口に接続され、液管は凝縮器の出口と蒸発器の入口に接続される。蒸発器は高温部に配置され、凝縮器は低温部に配置される。ループヒートパイプ内には、流体(作動流体)が封入される。流体は、蒸発器で液相から気相に変化し、凝縮器で気相から液相に変化する。そのため、蒸気管を気相流体(蒸気)が通過し、液管を液相流体(液体)が通過する。なお、液管の中間に、液相流体を一時的に貯留するためのリザーバタンクを配置してもよい。
蒸発器は、ケースと、ケース内に配置されるウィックを備えている。ウィックは、ケース内に嵌められていてよい。ケースとウィックの間には、気相流体が移動するための流路が設けられている。流路は、ウィックの軸方向(長手方向)の一端から他端まで伸びていてよい。なお、ウィックの周方向において、1個の流路が設けられていてもよいし、複数の流路が設けられていてもよい。ケースの内周面に複数の溝を設け(あるいは、ケースの内周面に複数の突起を設け)、複数の流路が形成されていてよい。また、ウィックの外周面に複数の溝を設け(あるいは、ウィックの外周面に複数の突起を設け)、複数の流路が形成されていてもよい。ケースとウィックの各々の製造、ケースとウィックの組み立て性を考慮すると、ウィックの外周面に複数の溝を設け、複数の流路を実現することが好ましい。
ケースは、熱伝導率の高い材料、例えば、金属製であってよい。ケースの好ましい材料として、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、それらの合金、あるいは、SUS(ステンレススチール)等が挙げられる。
ウィックは、柱状である。ウィックは、角柱状であってもよいし、円柱状であってもよい。高強度、均一な熱伝導を実現するという観点より、ウィックは円柱状であることが好ましい。ウィックは筒状であり、内側には空間(ウィックの内部空間)が存在する。また、ウィックは、多孔質体である。ウィックを構成する多孔質体は、流体に対して毛細管現象を発現する連通孔を含んでいる。連通孔は、ウィックの内部空間と外部空間を連通している。ウィックの内部空間は、多孔質体で囲まれた空間である。ウィックの軸方向の一端は開口しており、他端は閉口している。ウィックの開口端より、液相流体が内部空間に導入される。ウィックの他端は閉口されているので、ウィックの内部空間の液相流体は、毛細管現象によってウィックの内部に移動する。ウィックの内部では、液相流体が気相流体に変化する。気相流体は、ウィックの外部空間に移動する。ウィックの材料は、樹脂、金属、セラミックス等を用いることができる。良好な強度、耐久性が得られるという観点より、ウィックの材料は金属またはセラミックスが好ましい。また、良好な耐熱性、耐食性も得られるという観点よりウィックの材料はセラミックスが特に好ましい。
ウィック(多孔質体)は、粒子(骨材)が結合材で結合された構造を備えている。粒子として、炭化珪素(SiC),アルミナ(Al2O3)等を用いることができる。また、結合材として、珪素(Si),ガラス,コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2),ムライト(Al6O13Si2),ホウ素(B),炭素(C)等を用いることができる。なお、ガラスは、シリカ(SiO2),マグネシア(MgO),カルシア(CaO)等で構成されていてよい。また、結合材は、結合材自体が溶融して粒子同士を結合することより、多孔質体を製造する際の「助剤」と表現することもできる。なお、特に限定されるものではないが、粒子と結合材の組み合わせは、炭化珪素と珪素,炭化珪素とホウ素,炭化珪素と炭素,アルミナとガラスが好ましい。これらの組み合わせは、ウィック(多孔質体)の熱伝導率を好適な範囲に調整することができる。ウィックの熱伝導率が低すぎるとウィック内で流体の気化が起こりにくくなり、高すぎると、ウィックの熱がウィックを収容しているケースに伝達し、ケースで流体の気化が発生することがある。また、粒子のサイズは、後述する多孔質体の気孔径より大きく、気孔径の20倍以下であることが好ましい。
ウィックの内部において、粒子間における結合材の面積をA1とし、ウィックの表面積(多孔質体内の空隙に露出している粒子と結合材の面積)をA2としたときに、0.1<A2/A1<20の関係を満足していることが好ましい。なお、0.5<A2/A1<15であることがより好ましく、0.7<A2/A1<10であることがさらに好ましく、1.0<A2/A1<10であることが特に好ましい。なお、「A2/A1」は、上記した粒子及び結合材の種類により、好ましい適用範囲が異なる。例えば、SiC(粒子)とSi(結合材)の組み合わせは、高い熱伝導率が得られる組み合わせなので、「A2/A1」の適用範囲が広い。一例として、「SiC+Si」の場合、0.1<A2/A1<20であることが好ましく、0.5<A2/A1<15であることがより好ましく、1.0<A2/A1<10であることが特に好ましい。また、アルミナとガラスの組み合わせは、「SiC+Si」より熱伝導率が低い組み合わせである。そのため、「アルミナ+ガラス」の場合、0.5<A2/A1<15であることが好ましく、0.7<A2/A1<10であることがより好ましく、1.2<A2/A1<7であることが特に好ましい。
ウィックの気孔率は、35%以上であることが好ましい。気孔率が35%未満の場合、ウィックの内部における液相流体の移動抵抗が大きくなり、流体がスムーズに移動しにくくなることがある。ウィックの気孔率は、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることが特に好ましい。また、ウィックの気孔率は、70%以下であることが好ましい。気孔率が70%を超えると、強度が低下し、液相流体が移動する際の抵抗によってウィックが損傷することが起こり得る。ウィックの気孔率は、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが特に好ましい。なお、上記した「A2/A1」の適用範囲は、気孔率の影響を受けない。すなわち、ウィックの気孔率が35%であっても、70%であっても、「A2/A1」の好ましい適用範囲は上記した通りである。
また、ウィックの気孔径は、液相流体の移動抵抗が増大することを抑制するため、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、特に好ましくは1.0μm以上である。また、ウィックの気孔径は、毛細管力を維持するために、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以下であり、特に好ましくは3μm以下である。なお、気孔径は、細孔径分布を測定し、平均細孔径を計算することによって得られる。気孔径(平均細孔径)は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
凝縮器は、放熱によって流体が気相から液相に変化する構造を備えている。特に限定されるものではないが、凝縮器は、金属製の単管であってよい。あるいは、凝縮器は、蒸発器と同様に、ケースと、ケース内に配置されるウィックを備えた構造であってもよい。この場合、凝縮器のケース及びウィックは、上記した蒸発器のケース及びウィックで説明した範囲内のものを適宜選択することができる。
蒸気管および液管の材料は、流体の種類、ループヒートパイプを使用する環境(温度等)に応じて、適宜選択することができる。例えば、蒸気管および液管の各々は、樹脂製、金属製、あるいはセラミックス(セラミックス緻密体)製であってよい。なお、流体は、水、アンモニア、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の一例として、アセトン、アルコール、フロン、グリコールエーテル類、ナフタレン、ジエチルジフェニル等を用いることができる。流体は、ループヒートパイプが使用される温度域で液相から気相に変化するものを適宜選択することができる。
図1を参照し、ループヒートパイプ100について説明する。ループヒートパイプ100は、蒸発器2と、蒸気管4と、凝縮器6と、液管8と、リザーバ10を備えている。蒸気管4は、蒸発器2の出口2bと凝縮器6の入口6aの間を接続している。また、液管8は、凝縮器6の出口6bと蒸発器2の入口2aの間を接続している。リザーバ10は、液管8の中間に接続されている。ループヒートパイプ100内には、流体(作動流体)が封止されている。
蒸発器2は、高温部に配置される。蒸発器2には、液管8より液相流体が導入される。蒸発器2では、液相流体が加熱されて気相流体に変化する。気相流体は、蒸気管4内を矢印20方向に移動し、凝縮器6に導入される。蒸発器2の詳細は後述する。
凝縮器6は、低温部に配置される。凝縮器6では、気相流体が冷却されて液相流体に変化する。液相流体は、液管8内を矢印30方向に移動し、蒸発器2に導入される。なお、液相流体は、リザーバ10に一時的に貯留された後、蒸発器2に導入される。リザーバ10により、蒸発器2への液相流体の導入量が安定する。流体がループヒートパイプ100内を循環することによって、高温部から低温部に熱が移動する。
図2及び図3を参照し、蒸発器2について説明する。蒸発器2は、ケース50と、ウィック52を備えている。ケース50は金属製であり、ウィック52はセラミックス製である。詳細は後述するが、ウィック52は、SiC粒子(骨材)がSi(結合材)で接合された構造を備えている。ケース50は、円筒状であり、長手方向(Y軸方向)の一端に入口2aが設けられており、他端に出口2bが設けられている。入口2aは液管8と接続しており、出口2bは蒸気管4と接続している(図1も参照)。ウィック52は、円筒状であり、ケース50内に配置されている。ウィック52は、Y軸方向の一方の端部52aが開口しており、他方の端部52bが閉口している。端部52aは、入口2a側で、入口2aを囲った状態でケース50に接触している。そのため、ウィック52の内部空間58は、液管8と連通している。なお、端部52bは、ケース50と非接触である。
ウィック52の外周は、ケース50の内周と接触している(図3を参照)。ウィック52は、焼きばめによって、ケース50内に嵌められている。また、複数の溝60が、ウィック52の外周に設けられている。図3は、一例として、4個の溝60を示している。溝60は、Y軸方向の一端から他端まで伸びている。溝60によって、ケース50の内周とウィック52の外周の間に、部分的な空間54が形成される。空間54は、気相流体の流路であり、出口2bと連通している。
内部空間58には、液管8から液相流体が導入される。矢印32は、液相流体の流れを示している。液相流体は、毛細管現象によって、内部空間58から外部空間(空間54)に向かって、ウィック52の内部を矢印34方向に移動する。ウィック52の内部では、液相流体がウィック52(ウィックの表面)から受熱し、液相流体が気相流体に変化する。気相流体は、空間54を出口2bに向けて矢印36方向に移動する。また、気相流体は、矢印38に示すように、出口2bを通じて蒸気管4(図1を参照)に移動する。
図4を参照し、ウィック52の構造を説明する。ウィック52は、多孔質体であり、複数の粒子(SiC)70が結合材(Si)72で結合された構造を備えている。なお、図4から明らかなように、粒子70の表面には、結合材72が接合していない部分が存在する。粒子70の表面の一部は、ウィック52の内部の空隙に露出している。流体は、ウィック52の空隙部分を移動しながら、ウィック52の表面(空隙に露出している粒子70と結合材72の表面)から受熱する。ウィック52では、上記した面積A1と面積A2の比が、「A2/A1=5」に調整されている。
ウィック52の利点を説明する。ウィック52は、「A2/A1=5」に調整されている。すなわち、ウィック52は、粒子70,70間における結合材の面積A1と、ウィック52の内部の空隙に露出している粒子70と結合材の面積A2が、0.1<A2/A1<20の関係を満足している。そのため、粒子70,70間の伝熱と、ウィック52から流体への伝熱がバランスし、ウィック52内で流体が液相から気相へ効率よく変化する。そのため、蒸発器2における冷却能力が向上し、効率よく蒸発器2から凝縮器6へ熱を移動させることができる。
「A2/A1」と流体の気相変化の起こり易さとの関係を説明する。図6は、ウィックを構成する多孔質体の「A2/A1」を変化させたときの、流体が液相から気相へ変化する位置の変化を示している。グラフの横軸はA2/A1を示し、縦軸はウィック厚み(内部空間から外部空間までの距離)を「1」としたときの内部空間からの距離を示している。例えば、縦軸が「0」の場合は内部空間の表面であり、「1」の場合は外部空間の表面であり、「0.5」の場合は、内部空間と外部空間の中点である。縦軸の数値が小さい程、ウィック内において、流体が液相から気相に変化する速度が速い。
図6に示すように、A2/A1を大きくしていくと、およそ「A2/A1=1」までは状態変化(液相→気相)の位置が内部空間側に移動し、「A2/A1=1〜10」までの間は状態変化の位置がほぼ変わらず、「A2/A1=10」を超えると状態変化の位置が外部空間側に移動する。「A2/A1≦0.1」,「20≦A2/A1」では、状態変化の位置が0.7を超えている。すなわち、「A2/A1≦0.1」,「20≦A2/A1」の場合、ウィックの厚み方向において、70%を液相が占めている。流体は、ウィックの厚みの70%まで液相のままウィック内を移動し、厚みの70%を超えて気相に変化する。このような場合、ウィック内において気相流体が存在しうる空間が狭くなり、気相流体から液相流体に加わる圧力が上昇し、内部空間からウィックの内部への液相流体の移動が妨げられることが起こり得る。
0.1<A2/A1<20の範囲では、ウィックの厚みの70%未満の位置で流体が液相から気相に変化する。これにより、気相流体が存在しうる空間が増加し、気相流体から液相流体に加わる圧力が緩和する。その結果、液相流体の移動が妨げられず、蒸発器の冷却効率を良好にすることができる。なお、図6に示すように、0.5<A2/A1<15の範囲では、ウィックの厚みの60%未満の位置で流体が液相から気相に変化する。また、1<A2/A1<10の範囲では、ウィックの厚みの50%未満の位置で流体が液相から気相に変化する。気相流体から液相流体への圧力が一層緩和され、流体の状態変化が効率よく行われる。さらに、蒸発器の冷却効率が向上する。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:蒸発器
52:ウィック
70:粒子
72:結合材
100:ループヒートパイプ
52:ウィック
70:粒子
72:結合材
100:ループヒートパイプ
Claims (4)
- ループヒートパイプの蒸発器で用いるウィックであって、
前記ウィックは、筒状の多孔質体であり、軸方向の一端が開口しているとともに他端が閉口しており、多孔質体で囲まれた内部空間に液相の流体を導入可能であり、
前記多孔質体は、粒子が結合材で結合された構造を有しており、内部空間と外部空間を連通する連通孔を有しており、
前記粒子間における結合材の面積をA1とし、
前記多孔質体内の空隙に露出している粒子と結合材の面積をA2としたときに、
0.1<A2/A1<20の関係を満足している、ウィック。 - 前記多孔質体の気孔率が、40%以上60%以下である請求項1に記載のウィック。
- 前記粒子がSiCであり、前記結合剤がSiであり、0.5<A2/A1<15の関係を満足している請求項1又は2に記載のウィック。
- 前記粒子がアルミナであり、前記結合剤がガラスであり、0.7<A2/A1<10の関係を満足している請求項1又は2に記載のウィック。
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JP2016123871A JP2017227382A (ja) | 2016-06-22 | 2016-06-22 | ウィック |
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---|---|---|---|
JP2016123871A JP2017227382A (ja) | 2016-06-22 | 2016-06-22 | ウィック |
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CN115523780A (zh) * | 2021-06-01 | 2022-12-27 | 山东大学 | 一种蒸汽槽道环路热管 |
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