JP2017226618A - リュープロレリンの経皮吸収型製剤 - Google Patents

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高山 幸三
Kozo Takayama
幸三 高山
誉子 小幡
Yoshiko Obata
誉子 小幡
水野 敬三
Keizo Mizuno
敬三 水野
吉田 雅毅
Masaki Yoshida
雅毅 吉田
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Abstract

【課題】リュープロレリンの経皮吸収型製剤を提供する。
【解決手段】リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分とし、テルペン類から選択される少なくとも1種を含むリュープロレリン経皮吸収型製剤。
【選択図】図1

Description

本発明は、リュープロレリンの経皮吸収型製剤に関する。
リュープロレリン酢酸塩は、LH−RHアゴニスト(黄体形成ホルモン放出ホルモン誘導体)であり、子宮内膜症、子宮筋腫、閉経前乳癌、前立腺癌、中枢性思春期早発症等に適用される医薬である。長期に渡って持続的に投与することが求められる。初期には1日1回投与であったが、現在では徐放性製剤の開発により1ヶ月毎、3ヶ月毎、6ヶ月毎と長い間隔で投与すれば済むようになり、患者の負担は軽減されてきている。しかしながら、上記徐放性製剤の投与形態は皮下注射である。
長期に渡って投与し続けることが求められる医薬は、注射による投与や経口投与が患者の負担になったり、身体に違和感を与える等、患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を低下させたりすることがある。このような問題を改善する手段の1つとして経皮投与が模索されてきている。
本発明者らは、従来、注射剤や経口投与剤であった医薬を、皮膚を傷つけることの無い経皮吸収型製剤とする可能性を探る研究を行ってきた。
例えば、パーキンソン症候群の治療薬であるL−dopa(L−3−4−ジヒドロキシフェニルアラニン;分子量197.19)や、非麻薬性の合成鎮痛薬であるトラマドール(トランス−(±)−2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1−(3−メトキシフェニル)シクロヘキサノール;分子量263.4)は、水溶性であり、経皮吸収され難く、経皮吸収剤にはできないと言われていたが、水溶性基剤と皮膚吸収促進剤(ケミカル・エンハンサーとも呼ばれる)を組み合わせることで経皮吸収を可能にできることを報告している(特許文献1、2)。
しかし、皮膚吸収促進剤を用いて経皮吸収させられる薬物の分子量の上限は500程度と言われている。水溶性で高分子量の薬物については、上記のような皮膚吸収促進剤を用いて経皮吸収させることができた例はこれまで報告されたことは無く、皮膚吸収促進剤を用いて、経皮吸収型製剤にすることは不可能と考えられていた。
分子量が500を超える水溶性の薬物を経皮投与する手段としては、剣山型マイクロニードルやエレクトロポレーション(電気穿孔法)等の一時的に皮膚を傷つけて医薬を皮膚内に導入する方法が知られている。
特開2000−38338号公報 特開2006−36687号公報
上述したように、リュープロレリンは長期に渡って持続的な投与を必要とする医薬であり、徐放性製剤の開発により皮下注射による投与の間隔は以前に比べて非常に長くなってはいるが、患者の注射時の苦痛、皮下注射であるために違和感がある等の課題は解決されていない。
そこで、リュープロレリンを経皮吸収型製剤にできれば、適用が容易で、患者の身体的負担が少なく、長期間の繰り返し投与に適しており、上記課題を解決できる。
しかしながら、リュープロレリン酢酸塩は水溶性であり、かつ分子量が1269.45と大きく、上述したように、従来の当業者の認識ではリュープロレリンを経皮吸収させることは不可能と考えられていた。
本発明の目的は、リュープロレリンの経皮吸収型製剤を提供することである。
本発明によれば、以下のリュープロレリンの経皮吸収型製剤が提供される。
1.リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分とし、テルペン類から選択される少なくとも1種を含むリュープロレリン経皮吸収型製剤。
2.前記リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩が、リュープロレリン酢酸塩である、1に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
3.前記テルペン類が、メントール、o−エチルメントール、リモネン、シネオール、テルピネオール、イソメントール、メントン、ピペリトン、プレゴン、イオノン、カルボン、カンフル及びボルネオールからなる群から選択される、1又は2に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
4.前記テルペン類が、l−メントールを含む、1〜3のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
5.さらに、アルコール類から選択される少なくとも1種を含有する、1〜4のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
6.前記アルコール類が、イソプロパノールを含む5に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
7.さらに、水溶性基剤を含有する、1〜6のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
8.前記水溶性基剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、マクロゴール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルメロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン及びメチルビニールエーテル・無水マレイン酸共重合体からなる群から選択される7に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
9.前記リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩の濃度が、0.1〜15重量%の範囲である1〜8のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
10.前記テルペン類の濃度が、1.0〜20.0重量%の範囲である1〜9のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
11.前記アルコール類の濃度が、1.0〜50.0重量%である1〜10のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
12.前記リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩と前記テルペン類の濃度比が、1:3〜1:8の範囲である1〜11のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
13.前記テルペン類と前記アルコール類の濃度比が、3:20〜4:15の範囲である1〜12のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
本発明によれば、リュープロレリンの経皮吸収型製剤が提供できる。
試験例1のin vitro皮膚透過性試験による単位面積当たりの酢酸リュープロレリンの累積皮膚透過量を経時的に測定した結果を示すグラフである。 試験例2のin vitro皮膚透過性試験による単位面積当たりの酢酸リュープロレリンの累積皮膚透過量を経時的に測定した結果を示すグラフである。 試験例2における酢酸リュープロレリンの皮膚透過量(Flux;μg/h/cm)を求めたグラフである。 試験例3のin vitro皮膚透過性試験による単位面積当たりの酢酸リュープロレリンの累積皮膚透過量を経時的に測定した結果を示すグラフである。 試験例3における酢酸リュープロレリンの皮膚透過量(Flux;μg/h/cm)を求めたグラフである。
本発明のリュープロレリン経皮吸収型製剤(以下、本発明の製剤という)は、リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分とし、テルペン類から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
本発明者らは、酢酸リュープロレリンを経皮吸収型製剤とするため、皮膚吸収促進剤としてテルペン類であるメントールを適用してみたところ、驚くべきことに顕著な皮膚透過が確認された。界面活性剤として汎用されるTween80や外用剤の基剤に用いられるミリスチン酸イソプロピル(IPM)では、リュープロレリンは殆ど皮膚透過が確認されなかったことからも極めて特異的な結果であった。
本発明の製剤で用いるリュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩としては、リュープロレリン酢酸塩(酢酸リュープロレリンと呼ぶこともある)が好ましい。リュープロレリン酢酸塩は下記の化学構造を有する。
Figure 2017226618
本発明で用いるテルペン類は、従来、皮膚吸収促進剤として用いられてきた化合物であってよい。本願明細書では、テルペン類を「皮膚吸収促進剤」と呼ぶこともある。
テルペン類としては、モノテルペン、ジテルペン及びセスキテルペンが好ましく、その中でもメントール、o−エチルメントール、リモネン、シネオール、テルピネオール、イソメントール、メントン、ピペリトン、プレゴン、イオノン、カルボン、カンフル、ボルネオール等が好ましい。皮膚に対する刺激が少ないメントールがより好ましく、その異性体であるl−メントールが特に好ましい。
テルペン類は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の製剤は、さらにアルコール類から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等が好ましい。アルコール類は、イソプロパノールを含むことが特に好ましい。
本発明の製剤は、さらに水溶性基剤を含有することが好ましい。本発明で用いる水溶性基剤は、水溶性で高分子量のリュープロレリン酢酸塩を、均一かつ安定して含有できるものであればよく、日本薬局方で規定されている軟膏剤の基剤のうち、基剤そのものが極めて水に溶けやすいものが挙げられる。
水溶性基剤の具体例としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシビニルポリマー、マクロゴール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルメロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、メチルビニールエーテル・無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びヒドロキシエチルセルロース(HEC)が好ましい。
本発明の製剤は、さらに必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は特に限定されず、各種の剤型において通常使用されている、安定剤、乳化剤、有機溶剤、着色剤、芳香剤、界面活性剤、緩衝剤、pH調整剤、保存剤等が挙げられる。
本発明の製剤の剤形は特に限定されず、経皮吸収可能な剤形であればよい。例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、エアロゾール、スプレー剤、貼付剤、テープ剤、パッチ剤、プラスター剤等の通常用いられている外用剤が挙げられる。
本発明の製剤は前記有効成分等を基剤と均質に混和し、支持体又はライナー(剥離体)に展延してなる経皮吸収製剤であることが好ましい。また、必要に応じて放出調節膜を用いた経皮吸収製剤としてもよい。
本発明の製剤におけるリュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩(以下、まとめてリュープロレリンということがある)の濃度は、通常0.1〜15重量%の範囲である。リュープロレリン濃度が0.1重量%未満ではたと経皮吸収が良好であったとしても有効な血中濃度に達しないおそれがある。15重量%を超えると基剤に完全に溶解できず、均一なゲルが作製できないおそれがある。
リュープロレリンの濃度の下限は0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%であってよく、上限は10重量%、8重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1.5重量%、1.2重量%であってよい。
本発明の製剤におけるテルペン類の濃度は、通常1.0〜20.0重量%の範囲である。テルペン類濃度が1.0重量%未満ではリュープロレリンの経皮吸収に寄与できないおそれがあり、20.0重量%を超えると基剤に溶解しきれず、均一なゲルが作製できないおそれがある。
テルペン類濃度の下限は2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%であってよく、上限は15.0重量%、10.0重量%、8.0重量%、7.5重量%、7.0重量%、6.5重量%、6.0重量%であってよい。
テルペン類がl−メントールである場合、その濃度範囲は、3.5〜7.5重量%であることが好ましく、4.0〜7.0重量%であることがより好ましく、4.5〜7.0重量%であることがさらに好ましい。
本発明の製剤がアルコール類を含有する場合、その濃度は通常1.0〜50.0重量%の範囲である。アルコール類濃度が1.0重量%未満であるとテルペン類の基剤への溶解が不完全となるおそれがあり、50.0重量%を超えると皮膚を損傷するおそれがある。
アルコール類の濃度の下限は5.0重量%、10.0重量%、15.0重量%、17.0重量%、18重量%、19重量%、20重量%であってよく、上限は40.0重量%、35重量%、30重量%であってよい。
アルコール類がイソプロパノールの場合、その濃度範囲は、5.0〜40.0重量%であることが好ましく、10〜35重量%であることがより好ましく、20〜30重量%であることがさらに好ましい。
本発明の製剤に用いる水溶性基剤の濃度は、通常0.5〜5.0重量%であり、0.8〜3.5重量%が好ましく、1.0〜2.5重量%がより好ましい。水溶性基剤濃度が0.5重量%未満では安定なゲルが作製できず、5.0重量%を超えると水に溶けきらずに固形分が残るおそれがある。
高い経皮吸収が期待できる、本発明の製剤におけるリュープロレリン、テルペン類、アルコール類、水溶性基剤等の好ましい濃度比率は、各成分の水への溶解度、各成分相互間の溶解度によって変動するため、成分の種類、剤形等に合わせて適宜選択すればよい。
リュープロレリンとテルペン類の濃度比(リュープロレリン:テルペン類)は、1:3〜1:8の範囲であることが好ましい。上記範囲であるとリュープロレリンの経皮吸収が良好となる。
テルペン類の濃度は、当該テルペン類のアルコール類への溶解度未満の量で用いることが好ましく、より好ましくはアルコール類への溶解度よりもやや低い濃度である。テルペン類の濃度がアルコール類への溶解度を超えると析出してしまい、リュープロレリンの経皮吸収に寄与できる分子の数が逆に減少するおそれがある。
一般に、テルペン類と前記アルコール類の濃度比(テルペン類:アルコール類)は、3:20〜4:15の範囲であることが好ましい。上記範囲であるとテルペン類が皮膚吸収促進剤として有効に作用し、リュープロレリンの経皮吸収が良好となる。
例えば、テルペン類がl−メントールであり、アルコール類がイソプロパノールである場合、その濃度比(l−メントール:イソプロパノール)は、3:20〜4:15であることが好ましい。
例えば、リュープロレリン濃度が1重量%である場合、イソプロパノール濃度が20重量%であれば、l−メントール濃度は4.5〜5.5重量%程度であり、イソプロパノール濃度が30重量%であれば、l−メントール濃度は4.5〜7.5重量%程度が好ましい。
本発明の製剤は、実施例に記載の方法に準じ、当業界で公知の手段で適宜修飾した方法で製造することができる。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1及び2:酢酸リュープロレリン含有ヒドロゲルの調製
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、酢酸リュープロレリンを、それぞれが1重量%となるように精製水を加えて12時間放置して膨潤させてリュープロレリン含有ゲル状基剤とした。これとは別にイソプロパノール(IPA)にl−メントールを溶解した溶液を調製した。この溶液を攪拌しながら上記ゲル状基剤に徐々に加え、均質なヒドロゲルとした。尚、成分の配合量の増減に伴って使用する水の量を加減し、総量が100重量%となるようにし、表1に示す割合で各成分を含有するヒドロゲルを得た。
比較例1及び2
l−メントールの代わりに、界面活性剤として汎用されるTween80、及び、外用剤の基剤に用いられるミリスチン酸イソプロピル(IPM)を用い、表1に示す割合で各成分を含有するヒドロゲルを得た。
Figure 2017226618
試験例1:in vitro皮膚透過性試験
7週齢の雄性ヘアレスマウス摘出皮膚をフランツ型拡散セルに皮膚角質層がドナー側、皮膚基底膜がレシーバー側となるように装着した。ドナーセルには実施例、比較例及びコントロール(対照)で調製したヒドロゲル1g適用し、レシーバーセルにpH7.4のリン酸緩衝生理食塩液(PBS)16mL満たし、レシーバーセルから2時間ごとに20μL溶液を分取して、酢酸リュープロレリンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量した。
HPLCは、第十六改正日本薬局方の記載に準拠して実施した。尚、試験は各々3回行い、平均値±標準偏差を求めた。各処方における単位面積当たりの酢酸リュープロレリンの累積皮膚透過量を経時的に測定した。結果を図1に示す。
図1に示すように、酢酸リュープロレリンは、コントロールでは予測通り殆ど皮膚透過できず、また、界面活性剤として汎用されるTween80や外用剤の基剤に用いられるミリスチン酸イソプロピル(IPM)を用いても殆ど皮膚透過できなかった。これに対し、5%のl−メントールの添加により酢酸リュープロレリンの皮膚透過は顕著に増大した。これまでに酢酸リュープロレリンの経皮吸収が確認された例は無く、この結果は新規な知見であり、当業者であっても予測できない結果である。
試験例2
l−メントールの濃度を3重量%から6重量%まで変化させた以外は実施例1と同様にして酢酸リュープロレリン含有ヒドロゲルを調製し、試験例1と同様にして酢酸リュープロレリンの累積皮膚透過量を経時的に測定した。結果を図2に示す。尚、試験は各々5回行い、平均値±標準偏差を求めた。
図2に示すように、l−メントールの濃度が3重量%では殆ど経皮吸収は見られないが、4、5及び6重量%では経皮吸収が見られる。
また、上記結果から、酢酸リュープロレリンの皮膚透過量(Flux;μg/h/cm)を求めた。結果を図3に示す。
ここで、皮膚透過量(Flux)とは、累積透過量−時間曲線のプロットを直線回帰して得られた回帰直線の傾きである。
試験例3
イソプロパノールの濃度を30重量%とし、l−メントールの濃度を4重量%から8重量%まで変化させた以外は実施例1と同様にして酢酸リュープロレリン含有ヒドロゲルを調製し、試験例1と同様にして酢酸リュープロレリンの累積皮膚透過量を経時的に測定し、皮膚透過量(Flux)を算出した。結果を図4及び図5に示す。尚、試験は各々5回行い、平均値±標準偏差を求めた。
図4に示すように、イソプロパノールの濃度を30重量%と高くすると、l−メントールがいずれの濃度でも、イソプロパノールの濃度が20重量%の場合に比べて高い経皮吸収が見られた。
イソプロパノールの濃度が20重量%の場合には、l−メントールの濃度が6重量%よりも5重量%の方が経皮吸収が大きい(図2)のに対し、イソプロパノールの濃度が30重量%の場合には、6時間を超えると、6重量%の方が経皮吸収が大きくなる(図4)ことがわかる。
また、イソプロパノールの濃度が30重量%の場合には、l−メントールの濃度が7重量%では、2時間経過後は5重量%よりも高い経皮吸収が見られた。
図3及び図5に示す皮膚透過量(Flux)のグラフから、酢酸リュープロレリン含有ヒドロゲルによって皮膚が損傷されていないこと、及び酢酸リュープロレリンの皮膚吸収には、l−メントール及びイソプロパノールの至適濃度があることがわかる。例えば、イソプロパノールの濃度が20重量%のときには、l−メントールの濃度は5重量%付近が好適であり、イソプロパノールの濃度が30重量%のときにはl−メントールの濃度は6〜7重量%付近が好適であることがわかる。
本発明によれば、リュープロレリンの経皮吸収型製剤が提供でき、患者の身体的負担の軽減、臨床における新たな、かつ有用な剤形の選択肢として期待できる。

Claims (13)

  1. リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分とし、テルペン類から選択される少なくとも1種を含むリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  2. 前記リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩が、リュープロレリン酢酸塩である、請求項1に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  3. 前記テルペン類が、メントール、o−エチルメントール、リモネン、シネオール、テルピネオール、イソメントール、メントン、ピペリトン、プレゴン、イオノン、カルボン、カンフル及びボルネオールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  4. 前記テルペン類が、l−メントールを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  5. さらに、アルコール類から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  6. 前記アルコール類が、イソプロパノールを含む請求項5に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  7. さらに、水溶性基剤を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  8. 前記水溶性基剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、マクロゴール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルメロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン及びメチルビニールエーテル・無水マレイン酸共重合体からなる群から選択される請求項7に記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  9. 前記リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩の濃度が、0.1〜15重量%の範囲である請求項1〜8のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  10. 前記テルペン類の濃度が、1.0〜20.0重量%の範囲である請求項1〜9のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  11. 前記アルコール類の濃度が、1.0〜50.0重量%である請求項1〜10のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  12. 前記リュープロレリン又はその薬理学的に許容可能な塩と前記テルペン類の濃度比が、1:3〜1:8の範囲である請求項1〜11のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
  13. 前記テルペン類と前記アルコール類の濃度比が、3:20〜4:15の範囲である請求項1〜12のいずれかに記載のリュープロレリン経皮吸収型製剤。
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