〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、以下の特定の項目(実施形態)における構成について、それが他の項目で説明されている構成と同じ場合、その説明を省略する場合がある。また、説明の便宜上、各項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
本発明に係る一実施形態について、図1〜図19に基づいて説明すれば、以下の通りである。
<舌運動計測機器の構成>
まず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態1に係る舌運動計測機器10の構成について説明する。図1の(a)および(b)は、舌運動計測機器10の概略構成を示す図である。図2の(a)および(b)は、舌運動計測機器10の計測対象領域Kを示す図である。図2の(c)および(d)は、舌運動計測機器10の使用状態を示す図である。図3の(a)および(b)は、舌運動計測機器10に備えられたセンサの、被検者1の口腔4への配置のバリエーションを示す図である。
舌運動計測機器10は、被検者1(図2の(b)および図7の(b)参照)の舌2の運動機能を計測するためのデバイスであり、図1の(a)に示すように、第1機器11、第2機器12および舌運動情報取得部13を備えている。第1機器11および第2機器12は、ともにプラスチックで成形されているが、例えば軽量な金属で成形されていてもよい。第1機器11は、第1固定部(第1固定部材)11aおよび第1把持部11bを備えている。また、第2機器12は、第2固定部(第2固定部材)12aおよび第2把持部12bを備えている。
第1固定部11aおよび第2固定部12aはともに、図1の(b)に示すような、被検者1の口角3に係止可能な、略C字型に湾曲した形状の部材である。また、第1把持部11bおよび第2把持部12bは、ともに図1の(a)に示すような板状の部材であり、被検者1および検査者(不図示)が把持できる程度の大きさ・厚さとなっている。換言すれば、第1機器11と第2機器12とは、同一の外形形状となっており、被検者1の口角3のいずれに第1機器11および第2機器12を用いても計測上の問題がないように配慮されている。なお、第1機器11と第2機器12とが同一の外形形状であるのが必須でないことは、言うまでもない。また、第1固定部11aおよび第2固定部12aの形状は、上述のような、被検者1の口角3に係止可能な略C字型に湾曲した形状に限定されず、それぞれ被検者1の口角3に装着可能な形状であればよい。
さらに、図1の(b)に示すように、第1固定部11aには、被検者1の舌2の接触を検知するセンサ(第1センサ)11cが設けられている。さらに、第2固定部12aにも、第1固定部11aと同様に、被検者1の舌2の接触を検知するセンサ(第2センサ)12cが設けられている。具体的には、センサ11cの接触面11c−1に被検者1の舌2が接触することにより、センサ11cへの接触が検知され、センサ12cの接触面12c−1に被検者1の舌2が接触することにより、センサ12cへの接触が検知される(図2の(c)および(d)参照)。センサ11cおよび12cとしては、例えば、対象物の接触による静電容量変化を検知することにより、接触の有無を検知する感圧センサなどが用いられる。
図2の(c)および(d)に示すように、センサ11cは、第1固定部11aを被検者1の口角3の一方に係止した状態において被検者1の舌2が接触可能な、第1固定部11aの部位に配置されている。センサ12cについても、第2固定部12aを被検者1の口角3の他方に係止した状態において被検者1の舌2が接触可能な、第2固定部12aの部位に配置されている。また、センサ11cおよび12cは、被検者1の口角3のそれぞれに固定された状態において、センサ11cの接触面11c−1とセンサ12cの接触面12c−1とが互いに対向するように、第1固定部11aおよび第2固定部12aに配置されている。
舌運動情報取得部13は、センサ11cの検知結果およびセンサ12cの検知結果から、被検者1の2つの口角3の間における、被検者1の舌2の運動に係る情報である舌運動情報を取得する。舌運動情報取得部13は、図1の(a)に示すように、配線14によってセンサ11cおよび12cと電気的に接続されており、この2つのセンサからの各検知結果を有線通信によって取得する。ただし、センサ11cおよび12cと舌運動情報取得部13とを配線14により電気的に接続することは必須ではなく、例えば種々の近距離無線通信等を利用した無線通信によって、舌運動情報取得部13がセンサ11cおよび12cから各検知結果を取得してもよい。本実施形態では、舌運動情報取得部13は、所定の計測時間中における被検者1の舌2のセンサ11cおよび12cへの接触、および計測開始から各接触までの所要時間を、舌運動情報として取得する。
なお、舌運動情報取得部13については、その機能を実現するブロックを図1の(a)において示している。当該ブロックは、あくまで舌運動計測機器10が舌運動情報取得部13を備えているという点を明確にするために図示しており、舌運動情報取得部13に係る形状や配置位置等の物理的構成を示すものではない。すなわち、舌運動情報取得部13は、前述の機能を実行するICチップ等を任意の位置に配置することにより実現される。
図2の(a)および(b)に示すように、舌運動計測機器10は、被検者1の口腔4、および被検者1が舌2を口腔4外に突き出した際の可動範囲が計測対象領域Kとなる。この計測対象領域K内における被検者1の舌2の各種運動が、舌運動計測機器10が被検者1の舌2の運動機能を計測するための計測対象運動となる。本実施形態では、被検者1の舌2をセンサ11cおよび12cのそれぞれに接触させることにより、当該舌2がセンサ11cおよび12cの間を反復移動する動作が計測対象運動となる(詳細は後述)。
本実施形態では、図2の(c)および(d)に示すように、被検者1または検査者は、第1機器11の第1把持部11bを把持した状態で(不図示)、第1機器11の第1固定部11aを被検者1の口角3の一方に係止する。また、被検者1または検査者は、第2機器12の第2把持部12bを把持した状態で(不図示)、第2機器12の第2固定部12aを口角3の他方に係止する。そして、被検者1または検査者は、第1把持部11bを左方向(紙面向かって左方向)に引っ張るとともに、第2把持部12bを右方向(紙面向かって右方向)に引っ張ることにより、被検者1の口腔4の開口領域4aを拡張する。このような、第1機器11および第2機器12によって被検者1の口腔4の開口領域4aが拡張された状態を計測時基準状態とする。
また、計測時基準状態において、第1固定部11aによってセンサ11cが固定された被検者1の口角3の一方が第1計測点となり、第2固定部12aによってセンサ12cが固定された被検者1の口角3の他方が第2計測点となる。換言すれば、第1機器11の第1固定部11aは、第1計測点にセンサ11cを固定するための固定用部材といえ、第2機器12の第2固定部12aは、第2計測点にセンサ12cを固定するための固定用部材といえる。
なお、本実施形態では、被検者1の口角3の一方が第1計測点となり、被検者1の口角3の他方が第2計測点となっているが、第1計測点および第2計測点が被検者1の口腔4のどの部位になるかはこの場合に限定されない。例えば、図3の(a)に示すように、計測時基準状態において、被検者1の上口唇5aにおける口角3の一方の近傍にセンサ11c配置され、当該上口唇5aにおける口角3の他方の近傍にセンサ12cが配置されるように、センサ11cが第1固定部11aに設けられ、センサ12cが第2固定部12aに設けられていてもよい。この場合、被検者1の上口唇5aにおける口角3の一方の近傍が第1計測点となり、当該上口唇5aにおける口角3の他方の近傍が第2計測点となる。また、第1固定部11aおよび第2固定部12aの形状は、それぞれ被検者1の上口唇5aに装着可能な形状になっている(不図示)。さらに、センサ11cの接触面11c−1およびセンサ12cの接触面12c−1は、それぞれ鉛直下方向(紙面向かって下方向)を向くこととなる。
また例えば、図3の(b)に示すように、計測時基準状態において、本実施形態のように被検者1の口角3の一方を第1計測点としつつ、被検者1の上口唇5aにおける口角3の他方の近傍にセンサ12cが配置されるように、センサ12cが第2固定部12aに設けられていてもよい。この場合、被検者1の上口唇5aにおける口角3の他方の近傍が第2計測点となり、第2固定部12aの形状は被検者1の上口唇5aに装着可能な形状になっている(不図示)。また、センサ11cの接触面11c−1は、本実施形態と同様に右方向(紙面向かって右方向)を向き、センサ12cの接触面12c−1は鉛直下方向を向くこととなる。
さらに、被検者1が舌2を口腔4外に突き出した際に舌先が接触できる2つの異なる箇所の一方にセンサ11cが配置され、他方にセンサ12cが配置されるように、センサ11cが第1固定部11aに設けられ、センサ12cが第2固定部12aに設けられていてもよい(図2の(b)参照)。この場合、上述した舌先が接触できる2つの異なる箇所の一方が第1計測点となり、当該2つの異なる箇所の他方が第2計測点となる。また、第1固定部11aおよび第2固定部12aの形状はそれぞれ、例えば被検者1の口腔4のいずれかの部位に装着可能であり、かつ、被検者1が舌2を口腔4外に突き出した際に、舌先がセンサ11cの接触面11c−1およびセンサ12cの接触面12c−1に接触できるような形状になっている(不図示)。
換言すれば、舌運動計測機器10は、計測対象領域K内における少なくとも2つの箇所のそれぞれを第1計測点および第2計測点とすることができる。
また、本実施形態では、被検者1の舌2をセンサ11cおよび12cにそれぞれ接触させることにより、当該舌2がセンサ11cおよび12cの間を反復移動する動作を計測対象運動としているが、被検者1の舌2のセンサへの接触は必須ではない。例えば、計測対象運動として、被検者1の舌2をセンサ11cまたは12cのいずれか一方にのみ接触させ、他方には近接させる動作を反復継続させてもよい。また例えば、計測対象運動として、センサ11cおよび12cにそれぞれ近接させる動作を反復継続させてもよい。
これらの場合、センサ11cおよび12cには、例えば、被検者1の口角3(第1計測点および第2計測点)と、被検者1の舌2との距離を検知する距離センサ(不図示)が用いられる。距離センサは、例えば赤外線方式または超音波形式であり、発光素子(不図示)から近赤外線を発して、検出対象(静止物)からの反射光をPSD(Position Sensitive Detector;半導体位置検出素子)で検出する構成になっている。
なお、距離センサ以外に、例えば、光電センサをセンサ11cおよび12cとして用いてもよい。また例えば、高周波誘導式センサ、静電容量式センサ、マグネットセンサ、音波センサ(音響式)、超音波センサ(音響式)、レーザセンサ(光学式)、圧力センサをセンサ11cおよび12cとして用いてもよい。さらには、距離計測のためのカメラを、センサ11cおよびセンサ12cとして用いてもよい。換言すれば、舌運動計測機器10の第1機器11に設けられたセンサ11cは、第1計測点に対する被検者1の舌2の接近を検知するセンサであればよい。また、舌運動計測機器10の第2機器12に設けられたセンサ12cは、第2計測点に対する被検者1の舌2の接近を検知するセンサであればよい。
センサ11cおよび12cによる被検者1の舌2の「接近」の検知は、例えば、本実施形態のように被検者1の舌2の「接触」を検知したり、上述した被検者1の舌2との「距離」を検知することにより実現可能である。なお、本明細書において、「接近」の文言については、計測点に対して被検者1の舌2が接近した結果、計測点と当該舌2との距離がゼロになり、計測点と当該舌2とが接触することも含む概念として用いている。
また、舌運動計測機器10の形状、特に、第1固定部11aおよび第2固定部12aの形状について、および各固定部に設けられるセンサの個数・配置については、様々なバリエーションが想定される。以下、図4を参照して、第1固定部11aおよび第2固定部12aのバリエーションについて説明する。図4の(a)〜(e)は、第1固定部11aおよび第2固定部12aのバリエーションの概略構成を示す図である。
例えば、図4の(a)および(b)に示すように、第1固定部11aおよび第2固定部12aに、それぞれ2つの凸部50を設けてもよい。2つの凸部50は、第1固定部11aにおいてセンサ11cを挟み込むような位置に、第2固定部12aにおいてセンサ12cを挟み込むような位置に、それぞれ配置される。このような凸部50を各センサの周囲に設けることにより、被検者1が、当該凸部50への舌2の接触を通じて、舌2が各センサに近接していることを明確に認識できるようになる。したがって、被検者1が、自身の舌2をより確実に各センサに接触・接近させることができる。なお、凸部50の形状・個数・配置が上述の場合の限定されないことは言うまでもない。
また例えば、図4の(c)に示すように、2つの凸部50に換えて、センサ11cおよび12cの周囲をそれぞれ取り囲むような筒形状の突出部60を設けてもよい。この突出部60を設けることによっても、上述の凸部50を設けるのと同様の効果が得られる。
また例えば、図4の(d)および(e)に示すように、第1固定部11aにセンサ11cを2つ直列的に設け、第2固定部12aにセンサ12cを2つ直列的に設けてもよい。この場合、第1機器11および第2機器12において、被検者1の舌2が2つのセンサのいずれかに接触すれば、当該2つのセンサで構成されるセンサ群に被検者1の舌2が接触したとして、以後の処理がなされる。このようにセンサ11cおよび12cを2つずつ設けることで、被検者1の舌2の接触・接近を検知できる範囲が拡大し、当該接触・接近をより確実に検知することができる。なお、センサの個数・配置が上述の場合に限定されないことは言うまでもない。
<舌運動計測機器を用いた舌運動機能の計測>
次に、図5〜図7を参照して、舌運動計測機器10を用いた舌運動機能の計測について説明する。図5の(a)〜(c)は、舌運動計測機器10を用いた舌運動機能の計測方法(以下、「舌運動機能計測方法」と略記する)を示す図である。図6は、舌運動機能計測方法を実施した場合の計測結果の一例を示す図である。図7は、舌運動機能計測方法を実施した場合の計測結果を利用した、舌運動機能の評価方法の一例を示す図である。
舌運動機能計測方法は、具体的には以下のように実施される。
(1) まず、図5の(a)に示すように、第1機器11および第2機器12によって被検者1の口腔4の開口領域4aを拡張するとともに、被検者1の口角3の一方(第1計測点)にセンサ11cを固定し、当該口角3の他方(第2計測点)にセンサ12cを固定することにより、計測時基準状態を作出する。
(2) 次に、図5の(b)および(c)に示すように、検査者の指示に従って、被検者1が、舌2をセンサ11cとセンサ12cとに交互に接触させる動作を繰り返す。すなわち、計測対象運動として、被検者1の舌2をセンサ11cおよび12cのそれぞれに接触させることにより、被検者1の舌2が第1計測点と第2計測点との間を反復移動する。この時、舌運動情報取得部13は、被検者1の舌2のセンサ11cおよび12cへの接触の有無、被検者1の舌2がセンサ11cおよび12cに接触している時間・接触していない時間、計測開始から各接触までの所要時間を舌運動情報として取得する。
(3) 所定の計測時間が経過するまで(2)に示す動作を繰り返した後、舌運動計測機器10を用いた舌運動機能の計測は終了する。
ここで、舌運動機能計測方法の実施中、センサ11cおよびセンサ12cの検知結果、すなわち舌運動情報取得部13が取得した舌運動情報に基づいて、図6に示すようなグラフ(縦軸:第1計測点および第2計測点と被検者1の舌2との距離、横軸:計測開始からの所要時間)が、例えば、舌運動情報取得部13と無線通信(有線通信でもよい)を行うことにより舌運動情報を受信する情報処理装置(不図示)における、表示部の画面上に表示される。
具体的には、図7に示すように、センサ11cおよび12cへの接触への有無を判定する際の基準値となる接触判定閾値がグラフの縦軸に設定され(予め、情報処理装置の記憶部に記憶させておいてもよいし、操作入力部からユーザ入力してもよい)、グラフの縦軸の値が接触判定閾値以下になる当該グラフの領域において、被検者1の舌2がセンサ11cおよび12cに接触したと判定される。また、センサ11cへの接触を表すグラフの縦軸の値と、センサ12cへの接触を表すグラフの縦軸の値とが、ともに接触判定閾値よりも大きな値を示している領域が、センサ11cおよび12cの間の移動時間となる。検査者は、このグラフを用いて被検者1の舌2の運動機能を評価する。
例えば、所定の計測時間中に計測された被検者1の舌2の各移動時間を用いて、当該舌2の平均移動速度を算出する。さらに、所定の計測時間中に計測されたセンサ11cおよび12cへの各接触回数をカウントすることにより、被検者1の舌2の筋力・筋持久力・俊敏性等を評価することができる。また例えば、上述したセンサ11cおよび12cへの各接触回数と、検査者が実際にセンサ11cおよび12cへの接触を指示した回数との差分を算出することにより、あるいはセンサ11cへの接触回数とセンサ12cへの接触回数との差分を算出することにより、被検者1の舌2の動作の正確性等を評価することができる。
なお、図7に示すグラフにおいては、当該グラフの縦軸の値が一瞬だけ接触判定閾値以下になる箇所が発生する場合がある。このような箇所については、被検者1の舌2のセンサ11cおよび12cへの接触が不十分であると見做して、センサ11cおよび12cへの接触回数にカウントしないこととする。
<舌運動計測機器の変形例>
次に、図8〜図10を参照して、舌運動計測機器10の変形例について説明する。図8の(a)は、舌運動計測機器10の変形例の概略構成を示す図である。図8の(b)は、図8の(a)に示す舌運動計測機器10を被検者1の口唇5に装着した状態を示す図である。また、図9の(a)は、舌運動計測機器10の他の変形例の概略構成を示す図である。図9の(b)および(c)は、図9の(a)に示す舌運動計測機器10を被検者1の口唇5に装着した状態を示す図である。さらに、図10の(a)は、舌運動計測機器10の他の変形例の概略構成を示す正面図である。図10の(b)は、図10の(a)に示す舌運動計測機器10の概略構成を示す側面図である。図10の(c)は、図10の(a)に示す舌運動計測機器10を被検者1の口唇5に装着した状態を示す図である。
本実施形態に係る舌運動計測機器10において、計測対象領域K内におけるセンサ11cおよびセンサ12cの配置位置および固定方法については、第1機器11の第1固定部11aおよび第2機器12の第2固定部12aによって被検者1の口角3のそれぞれに固定する態様以外にも、様々な変形例が想定される。
例えば、舌運動計測機器10は、図8の(a)および(b)に示すように、係止部10a、第1ヒレ部10bおよび第2ヒレ部10cを備え、第2ヒレ部10cにセンサ11cおよびセンサ12cが配置された構成であってもよい。
係止部10aは、被検者1の口唇5の口腔4内側に係止可能な、かつ被検者1の口腔4の開口領域4aを拡張する程度の大きさの略O字形状の部位である。また、第1ヒレ部10bは、係止部10aを被検者1の口唇5の口腔4内側に係止した状態において、係止部10aにおける被検者1の上口唇5aに対応する部位から、被検者1の口腔4外に向けて鉛直上方に突出するように形成されたヒレ形状の部位である。さらに、第2ヒレ部10cは、係止部10aを被検者1の口唇5の口腔4内側に係止した状態において、係止部10aにおける被検者1の下口唇5bに対応する部位から、被検者1の口腔4外に向けて鉛直下方に突出するように形成されたヒレ形状の部位である。第1ヒレ部10bと第2ヒレ部10cとは、側面視においてハの字形状を形成する。
また、第2ヒレ部10cにおける、被検者1の下口唇5bと対向しない側の表面の両端面には、一方にセンサ11cが、他方にセンサ12cがそれぞれ配置されている。すなわち、この変形例に係る舌運動計測機器10を用いる場合、センサ11cおよびセンサ12cは、計測対象領域K内における下口唇5bよりも若干前方の位置に配置されることとなる(図8の(b)参照)。
なお、図8に示す舌運動計測機器10においては、2つのセンサ(センサ11cおよびセンサ12c)がそれぞれ個別に設けられているが、例えば、1つのセンサのみが設けられている構成を採用してもよい。この場合、当該1つのセンサは、第1計測点と被検者1の舌2との接触を検知する第1センサ(センサ11cに対応)と、第2計測点と被検者1の舌2との接触を検知する第2センサ(センサ12cに対応)とが一体化され、2つの計測点における接触を検知できる構成になっている(不図示)。換言すれば、本発明に係る舌運動計測機器においては、第1計測点と被検者1の舌2との接触を検知する第1センサと、第2計測点と被検者1の舌2との接触を検知する第2センサとが、両者が一体化された1つのセンサで実現されていてもよい。
また例えば、舌運動計測機器10は、図9の(a)に示すように挿入部70を備え、当該挿入部70にセンサ11cおよびセンサ12cが設けられた構成であってもよい。挿入部70は、図9の(b)および(c)に示すように、被検者1の口腔4の開口領域4aを拡張しつつ当該開口領域4aに挿入可能な、楕円の筒形状の部位である。そして、挿入部70の内面における、当該挿入部70を開口領域4aに挿入した状態において被検者1の口角3の一方に対応する位置にセンサ11cが、他方に対応する位置にセンサ12cが、それぞれ配置されている。
この変形例に係る舌運動計測機器10においては、被検者1が口を開けた状態、すなわち口腔4の開口領域4aを拡張した状態で挿入部70を開口領域4a内に挿入し、被検者1が挿入部70の外面を歯6で噛むことにより、各センサが所定の位置に固定される。また、舌運動機能の計測時には、被検者1の舌2を挿入部70の中空領域に挿入し、左右に動かすことで、各センサに接触・接近させる。
このような筒形状の挿入部70を各センサの固定に用いることにより、被検者1が顎を動かすことによって各センサに接触・接近することを回避でき、各センサの誤検知を低減することができる。なお、被検者1が舌2を左右に動かし易いように、挿入部70における各センサの配置箇所付近の部位について、口腔4の内部側に配置される部分を削ってもよい。
挿入部70の形状は、上述のような楕円の筒形状である必要ななく、例えば円筒形状であってもよい。さらには、図10の(a)〜(c)に示すような、一対の板状の挿入部(第1挿入部71、第2挿入部72)を挿入部70の代わりに用いてもよい。この場合、第1挿入部71にセンサ11cが設けられ、第2挿入部72にセンサ12cが設けられる。また、各挿入部の固定時に被検者1が各挿入部を噛み易くするために、各挿入部における短手側の両端面には、それぞれ直方体形状の台座73が取付けられる。台座73の短手方向の長さが各挿入部の厚さよりも長く、台座73の長手方向の長さが各挿入部の短手方向の長さよりも長くなるように設計する。舌運動機能の計測時には、図10の(c)に示すように、第1挿入部71を被検者1の口角3の一方付近に配置し、第2挿入部72を他方付近に配置した上で、各台座73を歯6で噛むことによって各センサが所定の位置に固定される。
<情報処理装置の構成>
次に、図11を参照して、情報処理装置100の構成について説明する。図11は、情報処理装置100の主要部の構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、被検者1の舌2の運動機能を計測する際に、被検者1の舌2に係る運動を補助するための装置である。情報処理装置100は、図11に示すように、送受信部101、アンテナ部102、表示部103、スピーカ部104、カメラ部105、操作入力部106、マイク部107、記憶部108および制御部110を備えている。
なお、本実施形態では、情報処理装置100は、舌運動計測機器10との間で無線通信を行うことにより、当該舌運動計測機器10から舌運動情報を取得することを想定している。しかし、情報処理装置100は、第1計測点における被検者1の舌2の接触を検知する第1センサの検知結果と、第2計測点における被検者1の舌2の接触を検知する第2センサの検知結果とに基づいて、被検者1の舌2の運動機能を計測する全ての計測機器と併用することができる(第1計測点および第2計測点は計測対象領域K内に設定される)。
また、本実施形態では、被検者1の舌2をセンサ11cおよび12cのそれぞれに接触させることにより、被検者1の舌2が第1計測点と第2計測点との間を反復移動する運動を舌運動計測機器10の計測対象運動、すなわち情報処理装置100を用いた舌運動機能計測の対象となる被検者1の舌2の運動として想定している。しかし、情報処理装置100は、例えば、第1計測点と第2計測点との間で行われる被検者1の舌2の移動動作(センサ11cおよび12cには接触しない)からも、被検者1の舌2の運動機能を計測することができる。換言すれば、情報処理装置100は、第1計測点および第2計測点に対する舌の接近動作から、被検者1の舌2の運動機能を計測することができる。
送受信部101は、アンテナ部102を介して、舌運動情報の他、例えば音声データなどの各種データの送受信を行う。スピーカ部104は、音声データを含む情報を再生する機能と、被検者1および検査者に聞こえるように音声を出力するスピーカとを備えた再生部である。カメラ部105は、被写体を撮像する撮像部である。操作入力部106は、入力された被検者1および検査者の操作を取得するものである。操作入力部106としては、後述する「開始・終了ボタン」および「閾値設定ボタン」(ともに表示部103に表示される)が該当する。マイク部107は、舌運動機能の計測中における被検者1の音声を集音する集音器である。記憶部108は、送受信部101から送信された舌運動情報の他、制御部110が実行する各種の制御プログラム等を記憶するものである。記憶部108は、例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。
表示部103は、被検者1の舌2の運動機能を計測する際に、被検者1の口唇5を模した計測対象画像(画像)Iを表示する。また、表示部103は、情報処理装置100に装備されている各種機能(アプリケーションソフト等)が実行されることに起因する画像等の各種画像も表示する。
制御部110は、情報処理装置100を統括的に制御するものであり、指示情報提示部111、補助舌運動情報取得部112および結果情報提示部113を備えている。
指示情報提示部111は、舌運動機能の計測中に、第1計測点である被検者1の口角3の一方、および第2計測点である被検者1の口角3の他方に対する舌の接触動作(接近動作)を指示する接触指示情報(接近指示情報)を被検者1に提示する。本実施形態では、接触指示情報の提示方法として、接触指示情報を音声データに変換してスピーカ部104から音声出力する。なお、提示方法として例えば、表示部103に表示された計測対象画像Iにおける、第1計測点および第2計測点に対応する部分に、矢印の画像(不図示)を重畳させてもよい。
なお、舌運動計測機器10が、第1計測点と第2計測点との間で行われる被検者1の舌2の移動動作を計測対象運動としている場合、指示情報提示部111は、第1計測点と第2計測点との間における被検者1の舌2の移動動作(接近動作)を指示する移動指示情報(接近指示情報)を提示してもよい。また、計測対象運動として、上述した接触動作と移動動作とが混在している場合であれば、指示情報提示部111は、接触指示情報と移動指示情報とを両方提示してもよい。換言すれば、指示情報提示部111は、接触指示情報および移動指示情報を含む、第1計測点および第2計測点に対する舌の接近動作を指示する接近指示情報を提示すればよい。
補助舌運動情報取得部112は、舌運動機能の計測中における被検者1の舌2および口腔4の動きが把握できるように、カメラ部105によって撮像された被検者1の口腔4付近の画像データを取得する。また、補助舌運動情報取得部112は、舌運動機能の計測中に被検者1が発話した音声の音量・音域等の変化を把握するために、マイク部107によって集音された被検者1の音声データも取得する。取得した画像データおよび音声データは、被検者1に舌2の運動機能を計測するための補助的情報となる補助舌運動情報として後述する結果情報提示部113に送信される。
なお、補助舌運動情報取得部112は、上述した画像データのみを取得してもよいし、音声データのみを取得してもよい。さらには、被検者1の舌2の運動機能を計測する上で補助舌運動情報の取得は必須ではないことから、情報処理装置100は、補助舌運動情報取得部112を備えていなくてもよい。
結果情報提示部113は、舌運動機能の計測中に、舌運動計測機器10を構成する第1機器11のセンサ11c、および第2機器12のセンサ12cのそれぞれから、被検者1の舌2の接触(接近)を示す接触情報(接近情報)を受信する。接触情報を受信した結果情報提示部113は、当該接触情報に基づいて、被検者1の舌2の接触動作(接近動作)に係る結果を示す結果情報として受信結果画像I1を生成する。受信結果画像I1は、結果情報提示部113が接触情報を受信した旨の結果を示す画像であり、例えば丸印(図13の(c)参照)で表される。そして、結果情報提示部113は、表示部103に表示された計測対象画像Iにおける接触情報を送信した方のセンサの配置位置に対応する部分に、生成した受信結果画像I1を重畳させて表示させる。
また、結果情報提示部113は、受信した接触情報に基づいて、計測開始から当該接触情報に対応する被検者1の舌2の接触までの総接触回数(センサ11cへの総接触回数とセンサ12cへの総接触回数との合計値)、および当該接触情報に対応する被検者1の舌2の接触とその1回前の接触との間の所要時間を、表示部103に表示させる。
また、結果情報提示部113は、補助舌運動情報取得部112から受信した補助舌運動情報に基づいて、舌運動機能の計測中における被検者1の舌2等の動作を示す画像をリアルタイムで表示部103に表示する(不図示)。さらに、結果情報提示部113は、上述の補助舌運動情報に基づいて、舌運動機能の計測中における被検者1の音声の音量等の変化をグラフにして表示部103に表示する(不図示)。
さらに、結果情報提示部113は、所定の計測時間が経過したか否かを判定する。そして、所定の計測時間を経過したと判定した場合、結果情報提示部113は、舌運動機能の計測が終了したことを被検者1および検査者に報知するための音声を、スピーカ部104から出力させる。なお、スピーカ部104からの音声出力に換えて、例えば、表示部103に舌運動機能の計測が終了したことが判るような画像を表示させてもよい。
なお、舌運動計測機器10が、第1計測点と第2計測点との間で行われる被検者1の舌2の移動動作(接近動作)を計測対象運動としている場合、結果情報提示部113は、例えば、センサ11cおよびセンサ12cと、被検者1の舌2との距離が最も短くなったことを示す距離情報(接近情報)を受信してもよい。この場合、結果情報提示部113は、距離情報に基づいて受信結果画像I1を生成し、計測対象画像Iにおける近接情報を送信した方のセンサの配置位置に対応する部分に受信結果画像I1を重畳させる。換言すれば、結果情報提示部113は、各センサへの接触および各計測点との距離を含む、被検者1の舌2の接近を示す接近情報を受信し、当該接近情報に基づいて受信結果画像I1を生成するものであればよい。
また、結果情報提示部113が受信結果画像I1を生成し、計測対象画像Iの所定の部分に重畳させることは必須ではない。例えば、結果情報提示部113は、受信した接触情報に基づいて、接触情報を送信した方のセンサの配置位置に対応する計測点に接触した旨を報知する音声データを、結果情報として生成してもよい。この場合、結果情報提示部113は、生成した音声データに基づいてスピーカ部104から音声出力させる。換言すれば、結果情報提示部113は、被検者1および検査者が、被検者1の舌2の接近動作に係る結果を容易に認識できるような形式・方法で結果情報を提示するものであればよい。
<情報処理装置を用いた舌運動機能の計測>
次に、図12〜図18を参照して、情報処理装置100を用いた舌運動機能の計測について説明する。図12は、情報処理装置100の表示部103に表示される、舌運動機能の計測開始前の画像を示す図である。図13の(a)〜(c)は、情報処理装置100を用いて舌運動機能を計測した場合における、舌運動中に表示部103に表示される画像を示す図である。図14の(a)および(b)は、情報処理装置100の表示部103に表示されるグラフを用いた、舌接触の判定方法を示す図である。図15の(a)および(b)は、情報処理装置100の表示部103に表示されるグラフを用いた、舌接触の判定方法の他の例を示す図である。図16の(a)〜(c)は、図14に示すグラフを用いた舌接触の判定における、閾値の変更方法を示す図である。図17の(a)および(b)は、情報処理装置100を用いて舌運動機能を計測した場合における、当該計測の終了方法を示す図である。図18は、情報処理装置100を用いて舌運動機能を計測した場合における、計測結果を記録したファイルの一例を示す図である。
情報処理装置100を用いた舌運動機能の計測は、具体的には以下のように実施される。
(1) まず、計測開始前は、図12に示すような計測準備画像が表示部103に表示される。具体的には、表示部103の中央付近に計測対象画像Iを表す「舌動き画面」が表示される。また、表示部103における「舌動き画面」の鉛直下側の領域には、センサ12cと被検者1の舌2との接触の有無を判定するための第1グラフG1、およびセンサ11cと当該舌2との接触の有無を判定するための第2グラフG2を表す「グラフ画面」が表示される。第1グラフG1および第2グラフG2において、縦軸は各センサと被検者1の舌2との距離を表し、横軸は計測時間を表す。
さらに、表示部103における「舌動き画面」の鉛直上側の領域の左側端部には、舌運動機能の計測の開始/終了を入力する「開始・終了ボタン」が表示される。この「開始・終了ボタン」をタップすることで、情報処理装置100に装備された舌運動機能計測のための諸機能が作動/作動終了する。また、上述の領域の右側端部には、センサ11cおよび12cと被検者1の舌2との接触の有無を判定するための第1接触判定閾値および第2接触判定閾値を設定する「閾値設定ボタン」が表示される。
(2) 次に、図13の(a)に示すように、「開始・終了ボタン」における「START」の表示をタップすることで、情報処理装置100に装備された舌運動機能計測のための諸機能が作動する。同時に被検者1は、検査者の指示に従って舌運動機能計測のための計測対象運動を開始する。
計測中において、被検者1の舌2がセンサ11cおよび12cのいずれにも接触していない状態では、表示部103に表示された画像は、図13の(b)に示すように計測準備画像と同一のままである。一方、被検者1の舌2がセンサ11cまたは12cのいずれかに接触した場合、表示部103には、図13の(c)に示すように、計測対象画像Iにおける接触を検知した方のセンサの配置位置に対応する部分、すなわち計測対象画像Iの口角のいずれか一方に、丸印の受信結果画像I1が重畳されて表示される。
また、図13の(b)および(c)に示すように、計測中は、「舌動き画面」内における計測対象画像Iの鉛直上側の領域に、計測開始から直近の接触までの総接触回数(センサ11cへの総接触回数とセンサ12cへの総接触回数との合計値)、および当該直近の接触とその1回前の接触との間の所要時間が表示される。
(3) 計測中において、被検者1の舌2がセンサ11cに接触した場合、「グラフ画面」内に表示された第1グラフG1は、図14の(a)に示すように、接触している時間に対応するグラフ線の部分について、縦軸の数値が著しく小さくなる。また、「グラフ画面」内に表示された第2グラフG2についても、被検者1の舌2がセンサ12cに接触した場合、図14の(b)に示すように、接触している時間に対応するグラフ線の部分について、縦軸の数値が著しく小さくなる。検査者は、このような第1グラフG1および第2グラフG2の変化を確認して、被検者1の舌2がセンサ11cおよび12cに接触したか否かを判定する。
具体的には、図14の(a)および(b)に示すように、第1グラフG1および第2グラフG2にはそれぞれ、予め第1接触判定閾値および第2接触判定閾値(第1接触判定閾値<第2接触判定閾値)を表す各グラフの横軸と平行な2つの直線が設定される。第1接触判定閾値および第2接触判定閾値は、ともに被検者1の舌2とセンサとの所定の距離を表し、各グラフのグラフ線における第1接触判定閾値を表す直線と第2接触判定閾値を表す直線とで囲まれる領域内に含まれる部分が、センサ11cおよび12cと被検者1の舌2との接触を表す(図中の丸印で囲まれた部分参照)。
したがって、検査者は、第1グラフG1および第2グラフG2の各グラフ線において、第1接触判定閾値を表す直線と第2接触判定閾値を表す直線とで囲まれる領域内に含まれる部分があるか否かを確認することで、センサ11cおよび12cと被検者1の舌2との接触の有無を判定する。
また、第1グラフG1および第2グラフG2の各グラフ線において、被検者1の舌2と各センサとの距離が第2接触判定閾値以下になってから再び第2接触判定閾値を超えるまでの間の区間が、各センサに被検者1の舌2が接触し続けていた状態を表す。そして、この区間の時間が、各センサに被検者1の舌2が接触し続けていた時間となる。したがって、各センサと被検者1の舌2との距離が一旦第2接触判定閾値以下になって以降は、当該距離が第2接触判定閾値を超えない範囲で増減しても接触回数としてカウントせず、再び第2接触判定閾値を超えた時点で1回の接触回数としてカウントする。
なお、本実施形態では、2つの接触判定閾値を設定しているが、例えば、第1接触判定閾値のみを設定し、第1グラフG1および第2グラフG2の各グラフ線における第1接触判定閾値を下回った部分が、センサ11cおよび12cと被検者1の舌2との接触を表すとしてもよい。
また例えば、図15の(a)に示すように、第1グラフG1および第2グラフG2の各グラフ線において、被検者1の舌2と各センサとの距離が第2接触判定閾値以下になり接触回数1回としてカウントした後、再び当該距離が第2接触判定閾値以下になるまでの時間が所定の時間(第3接触判定閾値とする)を経過しない場合、再び第2接触判定閾値以下になった区間については接触回数に含めないとしてもよい(図中の×印参照)。
一方、図15の(b)に示すように、被検者1の舌2と各センサとの距離が第2接触判定閾値以下になり接触回数1回としてカウントした後、再び当該距離が第2接触判定閾値以下になるまでの時間が第3接触判定閾値を経過する場合、再び第2接触判定閾値以下になった区間についても1回の接触回数としてカウントするようにしてもよい。このような判定方法を採用することにより、例えば、被検者1の舌2が一旦各センサに接触した後、舌2の震え等によって実際の接触回数よりも多くカウントされるといった誤判定を回避することができる。
(4) 計測中において、第1接触判定閾値および第2接触判定閾値は、それぞれ任意に変更することができる。具体的には、図16の(a)に示すような「閾値設定ボタン」における「i」の表示をタップすることで、図16の(b)に示すような閾値設定用画像が表示部103に表示される。そして、閾値設定用画像のキーボードを模した部分における数値キーに対応する箇所をタップすることで、被検者1または検査者が所望する第1接触判定閾値および第2接触判定閾値の各値を入力することができる。入力完了後、閾値設定用画像のOKボタンを模した部分をタップすることで、図16の(c)に示すように、計測準備画像(図9参照)が再び表示部103に表示される。
(5) 次に、舌運動機能の計測が終了した後、図17の(a)に示すように「開始・終了ボタン」における「STOP」の表示をタップすることで、接触情報(計測開始からの各所要時間、各所要時間毎のセンサ11cおよび12cの各センサ値)、および被検者1の音声データ等がファイルに記録される。なお、「STOP」の表示は、計測開始時に「開始・終了ボタン」における「START」の表示をタップすることによって当該「START」の表示が「STOP」の表示に変更され、表示部103に表示される。
また、「STOP」の表示をタップすると、図17の(b)に示すように、上述の接触情報および音声データ等が保存されたファイルのファイル名(図中の、「000000_000.csv」)と、「OK」の表示とが表示部103に表示される。そして、「OK」の表示をタップすることで、情報処理装置100に装備された舌運動機能計測のための諸機能が作動終了する。
上述の接触情報が記録されたファイルは、例えば図18に示すような形式で表示部103に表示させることができる。ファイル名の命名規則については、例えば当該ファイルが作成された日付を「〜年〜月〜日_〜時〜分〜秒.cvs」の形式で表すことにより命名する。また、各センサ値の間隔は、図14に示すファイルでは0.05秒で設定されている。なお、ファイル名の命名規則およびセンサ値の間隔等が任意に変更できる点については、言うまでもない。
<情報処理装置における受信結果画像の表示方法>
次に、図19を参照して、情報処理装置100における受信結果画像I1の表示方法について説明する。図19は、情報処理装置100における受信結果画像I1の表示方法を示すフローチャートである。
図19に示すように、舌運動機能の計測開始後、まず指示情報提示部111は、接触指示情報に係る音声をスピーカ部104から出力させる(ステップ10、以下、「S10」と略記する:指示情報提示工程)。次に、センサ11cおよび12cは、被検者1の舌2が当該2つのセンサのいずれかに接触したかを検知する(S11:接触検知工程)。
センサ11cまたは12cのいずれかが、被検者1の舌2が接触したことを検知した場合(S11でYES(以下、「Y」と略記する))、当該接触を検知した方のセンサは、結果情報提示部113に接触情報を送信する(S12:接触情報送信工程)。
一方、センサ11cおよび12cのいずれも、被検者1の舌2が接触したことを検知しない場合(S11でNO(以下、「N」と略記する))、センサ11cおよび12cは、被検者1の舌2が接触していない旨の検知結果を示す情報を結果情報提示部113に送信する。当該情報を受信した結果情報提示部113は、センサ11cおよび12cに接触していない時間が一定の時間(予め記憶部108に記憶、あるいは操作入力部106からユーザ入力)継続したか否かを判定する(S16:非接触時間継続判定工程)。
S16でYと判定した場合、それまで表示されていた受信結果画像I1を消去した後(S17:受信結果画像消去工程)、後述するS14の処理に移行する。一方、S16でNと判定した場合、それまで表示されていた受信結果画像I1を残存させたまま、S14の処理に移行する。
次に、接触情報を受信した結果情報提示部113は、当該接触情報に基づいて受信結果画像I1を生成し、表示部103に表示された計測対象画像Iにおける接触情報を送信した方のセンサの配置位置に対応する部分に、当該受信結果画像I1を重畳させる(S13:受信結果画像重畳工程)。
次に、結果情報提示部113は、予め設定された所定の計測時間(予め、所定の計測時間に係るデータが記憶部108に格納されている。なお、被検者1または検査者が操作入力部106から操作入力してもよい)を経過したか否かを判定する(S14:計測終了判定工程)。S14でNと判定した場合、結果情報提示部113は、所定の経過時間を経過していない旨の判定結果を示す情報を指示情報提示部111に送信する。当該情報を受信した指示情報提示部111は、再び接触指示情報に係る音声をスピーカ部104から出力させる(S10)。
一方、S14でYと判定した場合、結果情報提示部113は、舌運動機能の計測が終了したことを被検者1および検査者に報知するための音声を、スピーカ部104から出力させる(S15:計測終了報知工程)。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図20に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
<舌運動計測機器の構成>
図20を参照して、本発明の実施形態2に係る舌運動計測機器20の構成について説明する。図20の(a)は、舌運動計測機器20の概略構成を示す図である。図20の(b)は、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態における、当該舌運動計測機器20に備えられた各センサの配置を示す図である。
図20の(a)に示すように、舌運動計測機器20は、第1固定部21a、第1把持部21b、第1被覆部21d、第2固定部22a、第2把持部22b、第2被覆部22dおよび接続部23を備えている。
また、舌運動計測機器20は、計測対象領域K内において、被検者1の上口唇5aにおける口角3の一方の近傍を第1計測点とし、当該上口唇5aにおける口角3の他方の近傍を第2計測点とする。また、被検者1の下口唇5bにおける口角3の一方の近傍(第1計測点の鉛直下側)を第3計測点とし、当該下口唇5bにおける口角3の他方の近傍(第2計測点の鉛直下側)を第3計測点とする(図20の(b)参照)。
なお、計測対象領域K内における第1計測点〜第4計測点の設定は上述の場合に限定されず、例えば、第1計測点の設定位置と第2計測点の設定位置とを入れ替えたり、第3計測点の設定位置と第4計測点の設定位置とを入れ替えたりしてもよい。換言すれば、計測対象領域K内において、被検者1の上口唇5aにおける2つの異なる部位の一方が第1計測点、他方が第2計測点となり、被検者1の下口唇5bにおける2つの異なる部位の一方が第3計測点、他方が第4計測点となっていればよい。
第1固定部21aおよび第2固定部22aは、ともに、被検者1の口角3の口腔4内側に係止可能な、かつ被検者1の口腔4の開口領域4aを拡張する程度の大きさの略C字形状の部位である。また、第1固定部21aおよび第2固定部22aのそれぞれにおける略C字形状の2つの先端部は、互いに対向している。
なお、第1固定部21aおよび第2固定部22aの形状・大きさは、上述の場合に限定されない。また、舌運動計測機器20は、第1固定部21aおよび第2固定部22aといった、物理的に分離した2つの固定部材を備えていること、および接続部23を備えていることが必須でもない。換言すれば、舌運動計測機器20は、少なくとも被検者1の口角3に装着可能な形状・大きさの固定部材を備えていればよい。
第1固定部21aにおける略C字形状の2つの先端部について、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で口腔4内側を向く面には、一方にセンサ11cが、他方にセンサ21cが設けられている。図20の(b)に示すように、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で、センサ11cは第1計測点に固定され、センサ21cは第3計測点に固定される。
また、第2固定部22aにおける略C字形状の2つの先端部について、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で口腔4内側を向く面には、一方にセンサ12cが、他方にセンサ22cが設けられている。図20の(b)に示すように、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で、センサ12cは第2計測点に固定され、センサ21cは第4計測点に固定される。
センサ21cは、第3計測点に対する被検者1の舌2の接触を検知する。また、センサ22cは、第4計測点に対する被検者1の舌2の接触を検知する。センサ21cおよび22cともに、センサ11cおよび12cと同様の感圧センサ等が用いられる。また、センサ11c、12c、21cおよび22cは、全て配線14によって舌運動情報取得部13と電気的に接続されている(不図示)。
第1被覆部21dは、第1固定部21aと連なって形成されており、第1固定部21aよりも若干サイズを大きくした略C字形状の部位である。第1被覆部21dは、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で、被検者1の口角3の一方およびその近傍を覆う。また、第2被覆部22dは、第2固定部22aと連なって形成されており、第2固定部22aよりも若干サイズを大きくした略C字形状の部位である。第2被覆部22dは、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で、被検者1の口角3の他方およびその近傍を覆う。第1被覆部21dにおけるセンサ21c側の部位と、第2被覆部22dにおけるセンサ22c側の部位とは、舌運動計測機器20を被検者1の口腔4に装着した状態で鉛直下側に凸となるように湾曲した形状の接続部23によって接続されている。
第1把持部21bおよび第2把持部22bは、ともに図20の(a)に示すような板状の部材であり、被検者1および検査者が把持できる程度の大きさ・厚さとなっている。また、第1把持部21bは、第1被覆部21dの外側部から突出するように形成され、第2把持部22bは、第2被覆部22dの外側部から突出するように形成されている。舌運動機能計測時においては、被検者1または検査者が第1把持部21bおよび第2把持部22bを引っ張ることにより、被検者1の口腔4の開口領域4aを拡張する(図20の(b)参照)。
このような舌運動計測機器20を舌運動機能計測に用いることにより、被検者1の舌2を、4つの計測点間で様々なバリエーションの運動をさせることができ、より多くの種類の舌運動情報を取得することができる。それゆえ、被検者1の舌2の運動機能をより精緻に計測することができる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置100の制御ブロック(特に制御部110)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、情報処理装置100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。