JP2017220511A - 磁化固定方法及び強磁性素子の製造方法 - Google Patents

磁化固定方法及び強磁性素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の強磁性体の磁化を複数の方向に容易に固定できる磁化反転方法を提供する。【解決手段】本実施形態にかかる磁化固定方法は、複数の強磁性体に対して、いずれか一つの加熱配線が近接するように複数の加熱配線を配設する配設工程と、外部磁場を印加しながら、前記複数の加熱配線のうち1又は複数の加熱配線を加熱し、前記複数の強磁性体のうち加熱された加熱配線に近接する強磁性体の磁化を固定する磁化固定工程と、を有し、前記磁化固定工程を複数回行い、前記複数の強磁性体の磁化を複数の方向に固定する。【選択図】図1

Description

本発明は、磁化固定方法及び強磁性素子の製造方法に関する。
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子が知られている。一般に、TMR素子は、GMR素子と比較して素子抵抗が高いものの、TMR素子の磁気抵抗(MR)比は、GMR素子のMR比より大きい。そのため、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)用の素子として、TMR素子に注目が集まっている。
MRAMは、絶縁層を挟む二つの強磁性層の互いの磁化の相対角が変化するとTMR素子の素子抵抗が変化するという特性を利用してデータの読み書きを行う。安定した読み書きのためには、基準となる強磁性層(固定層)の保磁力は大きいことが好ましく、固定層の磁化は一方向に固定される。
固定層の磁化は、一般にアニールしながら外部磁場を印加することで一方向に固定される。強磁性転移温度(キュリー温度)に近づくにつれて固定層の磁化の熱揺らぎは大きくなり、飽和磁化が減少する。そのため、強磁性体への外部磁場の影響が大きくなり、常温で外部磁場を印加するよりも大きな保磁力が得られる。
しかしながら、1つのウェハ上に複数の磁気抵抗効果素子を形成し、加熱した場合、全ての磁気抵抗効果素子が一律に加熱される。そのため、いずれの固定層の磁化も同一の方向に固定される。素子の汎用性を高めるためには、磁化が固定される方向の自由度は高い方が好ましい。そのため、複数の磁気抵抗効果素子の固定層の磁化の方向を、複数の方向固定できる方法が求められ、検討が行われている。
例えば、キュリー温度が異なる強磁性体を用いて、異なる温度領域で磁化を固定する方法がある。まず、すべての強磁性体のキュリー温度以上の温度領域で、一の方向の外部磁場を印加し、固定層の磁化を一の方向に固定する。その後、一部の強磁性体のキュリー温度以上でその他の強磁性体のキュリー温度以下の温度領域で、一の方向と異なる方向の外部磁場を印加する。キュリー温度が高い強磁性体の磁化は一の方向のまま固定され、キュリー温度が低い強磁性体の磁化は、一の方向と異なる方向に固定される。つまり、複数の強磁性体の磁化の向きを異なる方向に固定できる。
また例えば、レーザー光を用いて磁化を固定する方法も検討されている(例えば、特許文献1及び2)。レーザー光により一つの強磁性体を局所的に加熱し、外部磁場を印加する。局所的に加熱された強磁性体の磁化のみが固定されるため、それぞれの磁化の向きを自由に固定できる。
特開平4−23293号公報 特開2001−67660号公報
しかしながら、強磁性体のキュリー温度の違いを利用する場合は、キュリー温度の充分異なる強磁性体を用いる必要がある。選択できる強磁性体の自由度は低く、多数の方向に磁化を固定することは現実的に難しい。また精密な温度制御が必要であり、容易に複数の方向に磁化を固定することができない。
またレーザーを用いた場合は、局所的な点で加熱がされるため、複数の強磁性体の磁化をすべて固定するのに時間がかかる。またレーザーが照射された箇所が十分加熱されているかを工程中で確認することが難しく、製品を作製する最終段階まで素子に問題があるか確認することができない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の強磁性体の磁化を複数の方向に容易に固定できる磁化反転方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、複数の強磁性体に対して複数の加熱配線を所定の配置で配設し、加熱する加熱配線を選択することで、複数の強磁性体の磁化を複数の方向に容易に固定できる新たな磁化固定方法を見出した。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかる磁化固定方法は、複数の強磁性体のそれぞれに対して、いずれか一つの加熱配線が最近接するように複数の加熱配線を配設する配設工程と、外部磁場を印加しながら、前記複数の加熱配線のうち1又は複数の加熱配線を加熱し、前記複数の強磁性体のうち加熱された加熱配線に近接する強磁性体の磁化を固定する磁化固定工程と、を有し、前記磁化固定工程を印加する前記外部磁場を変えながら複数回行い、前記複数の強磁性体の磁化を複数の方向に固定する。
(2)上記態様にかかる磁化固定方法において、前記複数の強磁性体のうち同一の方向に磁化を固定する強磁性体に対し、1本の加熱配線を配設してもよい。
(3)上記態様にかかる磁化固定方法において、前記複数の強磁性体に対して、いずれか一つの加熱配線を接触させてもよい。
(4)上記態様にかかる磁化固定方法において、隣接する強磁性体の間に、遮熱体を設けてもよい。
(5)上記態様にかかる磁化固定方法における前記強磁性体と積層方向重なる位置において、前記複数の加熱配線を交差させない構成にしてもよい。
(6)上記態様にかかる磁化固定方法における前記強磁性体と積層方向重なる位置において、前記加熱配線を狭窄させてもよい。
(7)上記態様にかかる磁化固定方法において、加熱した加熱配線の抵抗値を測定する工程をさらに有してもよい。
(8)第1の態様にかかる強磁性素子の製造方法は、上記態様にかかる磁化固定方法を用いる。
本発明の一態様に係る磁化固定方法によれば、複数の強磁性体の磁化を複数の方向に容易に固定できる。
本実施形態にかかる磁化固定方法を説明するための斜視模式図である。 配設工程における複数の加熱配線の配置を説明するための模式図である。 本実施形態にかかる磁化固定方法において、加熱配線の間に遮熱体を設けた例を示す断面模式図である。 本実施形態にかかる磁化固定方法において、加熱配線の一部が狭窄する例を示す断面模式図である。 磁壁駆動型MRAMの一例の断面模式図である。 本実施形態にかかる強磁性素子の製造方法の一例を説明するための模式図である。
以下、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
「磁化固定方法」
図1は、本実施形態にかかる磁化固定方法を説明するための斜視模式図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる磁化固定方法は、複数の加熱配線1を複数の強磁性体2に対して配設する配設工程と、外部磁場を印加しながら所定の加熱配線1を加熱し、所定の強磁性体2の磁化を固定する磁化固定工程と、を有する。磁化固定工程は、加熱する加熱配線1を変えながら複数回行われる。図1では、加熱配線1の両端には、電極パッド3を設けている。
(配設工程)
配設工程では、複数の加熱配線1を複数の強磁性体2に対して所定の配置で配設する。図2は、配設工程における複数の加熱配線の配置を説明するための模式図である。図2は、図示略の基板に対して強磁性体2が積層されている積層方向から加熱配線1及び強磁性体2を平面視した図である。
配設工程では、まず各強磁性体の磁化を固定したい方向を決定する。図2では、強磁性体ごとに固定したい磁化方向を矢印で図示した。図2では、磁化を固定する方向を4方向として、それぞれ第1磁化方向Ma、第2磁化方向Mb、第3磁化方向Mc、第4磁化方向Mdとして図示した。磁化を固定する方向は、図2に示す4方向には限られず、2以上の複数の方向であれば、任意に選択できる。
以下、図2を例に説明するが、第1磁化方向Maに磁化を固定する強磁性体を第1強磁性体2A、第2磁化方向Mbに磁化を固定する強磁性体を第2強磁性体2B、第3磁化方向Mcに磁化を固定する強磁性体を第3強磁性体2C、第4磁化方向Mdに磁化を固定する強磁性体を第4強磁性体2Dという。
次いで、各強磁性体2に対して複数の加熱配線1を配設する。加熱配線1は、1つの強磁性体2に対して、最近接する加熱配線1が一つとなるように配設する。
例えば、まず図2に示すように、第1磁化方向Maに磁化を固定したい第1強磁性体2Aに対して第1加熱配線1Aを配設する。
1本の第1加熱配線1Aを、複数の第1強磁性体2Aにわたって配設してもよい。加熱配線1の本数を減らすことで、加熱手段を簡素化できる。また後述する磁化固定工程において、1本の加熱配線1を加熱するだけで、複数の強磁性体2の磁化を一度に同一の方向に配向させることができる。図1のように、同一の方向に磁化が固定される強磁性体2の配置が複雑でなければ、同一の方向に磁化を固定する強磁性体2に対し、1本の加熱配線1を配設することが好ましい。
また加熱配線1と強磁性体2とは、接触させることが好ましい。加熱配線1と強磁性体2とが接触すれば、強磁性体2の加熱効率を高めることができる。また複数の加熱配線1を配設する際に、強磁性体2に対して最近接する加熱配線1をより明確に決定することができる。
次いで、第2強磁性体2Bに対して第2加熱配線1Bを、第3強磁性体2Cに対して第3加熱配線1Cを、第4強磁性体2Dに対して第4加熱配線1Dを、順に配設する。
例えば、第2加熱配線1Bは、第2強磁性体2Bに対しては最近接し、第2強磁性体2B以外の強磁性体2に対しては、第1加熱配線1A、第3加熱配線1C、第4加熱配線1Dのいずれかより近接しないように配設する。
第3加熱配線1C及び第4加熱配線1Dについても、第2加熱配線1Bと同様に、所定の強磁性体2に対しては最近接となり、その他の強磁性体2に対しては最近接とならないように配置する。
このように加熱配線1を配設すると、第1強磁性体2Aに対して最近接する加熱配線1は第1加熱配線1A、第2強磁性体2Bに対して最近接する加熱配線1は第2加熱配線1B、第3強磁性体2Cに対して最近接する加熱配線1は第3加熱配線1C、第4強磁性体2Dに対して最近接する加熱配線1は第4加熱配線1Dとなる。
なお、上記では、第1加熱配線1Aを配設した後に、第2加熱配線1B、第3加熱配線1C及び第4加熱配線1Dを配設したが、上述の配設ルールを満たせば、一度にこれらを配設してもよい。
(磁化固定工程)
磁化固定工程では、外部磁場を印加しながら所定の加熱配線1を加熱し、所定の強磁性体2の磁化を固定する。加熱配線1の加熱は、例えば、電極パッド3を介した加熱配線1への電流印加により行うことができる。
例えば、図2においては、まず第1加熱配線1Aを加熱する。第1加熱配線1Aを加熱すると、第1加熱配線1Aに近接する第1強磁性体2Aが加熱され、第1強磁性体2Aの磁化が不安定になる。これに対し、第1強磁性体2A以外の強磁性体2は、第1強磁性体2Aに比べて充分加熱されないため、磁化が固定されたままとなる。
この状態で外部磁場を印加すると、加熱されて不安定となった第1強磁性体2Aの磁化は、外部磁場の影響を受けて第1磁化方向Maを向く。これに対し、第1強磁性体2A以外の強磁性体2の磁化は固定されているため、第1磁化方向Maを向かない。
次いで、第1加熱配線1Aの加熱を止め、十分に冷却した後、第2加熱配線1Bを加熱する。第2加熱配線1Bを加熱すると、第1加熱配線1Aと同様に、第2加熱配線1Bに近接する第2強磁性体2Bが加熱され、第2強磁性体2Bの磁化が不安定になる。これに対し、第2強磁性体2B以外の強磁性体2は、第2強磁性体2Bに比べて充分加熱されないため、磁化は固定されたままとなる。
この状態で、第1磁化方向Maを固定した際に用いた外部磁場と異なる磁場を印加すると、加熱された第2強磁性体2Bの磁化は、第2磁化方向Mbを向く。これに対し、第2強磁性体2B以外の強磁性体2の磁化は固定されているため、第2磁化方向Mbを向かない。そのため、第1磁化方向Maに固定された第1強磁性体2Aの磁化の向きは変動しない。
同様に、第3加熱配線1Cを加熱し外部磁場を印加すると、第3強磁性体2Cの磁化の向きが第3磁化方向Mcに固定され、第4加熱配線1Dを加熱し外部磁場を印加すると、第4強磁性体2Dの磁化の向きが第4磁化方向Mdに固定される。なお、外部磁場は、それぞれ異なる磁場を印加する。
上述のように、複数の加熱配線1を用いると、加熱配線1に近接する所定の強磁性体2のみを加熱することができ、所定の強磁性体2のみの磁化を所定の方向に固定できる。そして、加熱する加熱配線1を順に変更することで、複数の強磁性体2の磁化方向を任意の方向に固定することができる。
加熱配線1により加熱した際の強磁性体2の温度は、強磁性体2のキュリー温度以上であることが好ましい。強磁性体2のキュリー温度以上に強磁性体2を加熱し、外部磁場を印可した状態で冷却すると、磁化方向の固定が容易になり、固定後の強磁性体の保磁力も高まる。
また所定の加熱配線1を加熱した際に、所定の強磁性体以外の強磁性体2への加熱の影響を少なくすることが好ましい。例えば、第1加熱配線1Aを加熱した際に、第1加熱配線1Aで発生した熱が、第2強磁性体2B、第3強磁性体2C及び第4強磁性体2Dへ与える影響を少なくすることが好ましい。
例えば、図3に示すように、強磁性体2の間に遮熱体4を挿入してもよい。強磁性体2の間に遮熱体4を設けることで、所定の加熱配線1を加熱した際に、加熱しない強磁性体2に熱が伝達することを抑制する。また遮熱体4に絶縁性を有する材料を用いると、遮熱体4を強磁性素子の層間絶縁膜として機能させることもできる。
また例えば、複数の加熱配線1が、強磁性体2と積層方向重なる位置において交差しないように配設してもよい。このように加熱配線1を配設することで、一度固定された磁化の向きが後工程で変動することを避け、安定的な磁化固定を行うことができる。
例えば、第1加熱配線1Aと第2加熱配線1Bが第1強磁性体2A上で交差している場合を例に説明する。第1加熱配線1Aを加熱し、第1強磁性体2Aの磁化を第1磁化方向Maに固定した後、第2加熱配線1Bを加熱する。この際、第2加熱配線1Bで生じた熱は、第1加熱配線1Aへ伝達し、第1加熱配線1Aを発熱させる。その結果、第1加熱配線1Aに近接する第1強磁性体2Aの磁化が不安定になり、外部磁場の影響を受けて第2磁化方向Mbに向く可能性がある。
それぞれの加熱配線1が、他の加熱配線1へ影響を及ぼすことを避けるためには、いずれの位置においても加熱配線1同士は積層方向から見て交差しないことが好ましく、互いに交点(接点)を有さないことがより好ましい。
また加熱配線1を加熱する順番を考慮して、複数の加熱配線1の配置を検討してもよい。例えば、後に加熱される加熱配線1は、先に加熱される加熱配線1により磁化が固定される強磁性体2へ加熱の影響を及ぼさない位置に、配設することが好ましい。
例えば、図2において、第1加熱配線1A、第2加熱配線1B、第3加熱配線1C,第4加熱配線1Dの順に加熱する場合を例に説明する。
第2加熱配線1Bは、第1加熱配線1Aにより第1磁化方向Maに磁化固定された第1強磁性体2Aへ加熱の影響を及ぼさない位置であれば、いずれの位置に配設されていてもよい。第2加熱配線1Bを加熱することにより、第3強磁性体2Cまたは第4強磁性体2Dの磁化が第2磁化方向Mbに固定されたとしても、第3強磁性体2Cまたは第4強磁性体2Dを加熱する後工程で、磁化を上書きできる。
また、加熱効率を高めるために、加熱配線1の形状を変えてもよい。例えば、図4に示すように、強磁性体と積層方向重なる位置において、加熱配線1を狭窄させてもよい。
例えば、加熱配線1の加熱を電流印加により行う場合、加熱配線1を狭窄すると狭窄部sに電流集中が生じる。そのため、加熱配線1において狭窄部sが最も発熱し、その他の部分の発熱が抑制される。すなわち、加熱配線1を狭窄させることで、所定の強磁性体2近傍のみを加熱し、その他の強磁性体2への熱の影響を抑制できる。
(抵抗測定工程)
加熱配線1を加熱する際は、加熱配線1の抵抗値を測定する抵抗測定工程をさらに有することが好ましい。加熱配線1の抵抗値を測定しておくことで、加熱配線1が充分発熱しているかを工程の途中で確認することができる。
例えば、レーザーによるアニールの場合、レーザー照射された強磁性体2が充分発熱しているかを確認することが難しい。そのため、強磁性体2の磁化が所定の方向に固定されているかは、強磁性体素子を組みあがった後の特性で確認するしかない。すなわち、後工程を全て流す必要があり、歩留りが低下する。
これに対し、加熱配線1の抵抗値変化は、極めて簡単に測定できる。電流印加により加熱配線1の加熱を行う場合は、電流印加と共に、抵抗値を測定すればよい。加熱配線1の抵抗値と温度の関係は、較正曲線を事前に得ることで、簡単に確認できる。そのため、加熱配線1の抵抗値変化を測定することで、強磁性体2が充分加熱されているかを判断することができる。
上述のように、本実施形態にかかる磁化固定方法によれば、複数の強磁性体の磁化方向を任意の方向に、容易に固定することができる。
「強磁性素子の製造方法」
強磁性素子は、強磁性体を用いた素子である。例えば、磁気センサは、外部から印加される磁場の角度を正確に求めるために、2つ以上の方向に磁化が固定された磁化固定層が必要になる。また例えば、磁壁駆動型又は磁壁移動型と呼ばれるMRAMは、磁壁が駆動する磁壁駆動層に対して磁壁を供給する反平行な2つの磁化固定層が必要となる。
例えば、図5は、磁壁駆動型MRAMの一例の断面模式図である。図5に示す磁壁駆動型MRAM20の断面模式図である。磁壁駆動型MRAM20は、磁壁駆動層11と、第1磁化固定層12と、第2磁化固定層13と、第3磁化固定層14と、非磁性層15とを有する。
磁壁駆動層11の磁壁DWの位置が変化することで、第3磁化固定層14の磁化M1に対して平行な磁化M5と反平行な磁化M4の割合が変化する。その結果、“0”状態と“1”状態との間での情報の書き換えが可能である。磁化M5と磁化M4の比率は、第1磁化固定層12の磁化M2及び第2磁化固定層13の磁化M3から供給されるスピンの量によって変化する。
図5にも示すように、磁化M2と磁化M3は、異なる方向に磁化が固定されている。以下、図5に示す磁壁駆動型MRAMの例を基に、強磁性素子の製造方法について説明する。
図6は、図5に示す磁壁駆動型MRAMの製造方法を模式的に示した図である。図6(a)に示すように、まず図6(a)に示すように、基板21上に第1磁化固定層12と第2磁化固定層13とを積層する。積層方法は、公知の方法を用いることができ、例えばスパッタ等を用いることができる。
第1磁化固定層12及び第2磁化固定層13は、図1における強磁性体2に対応する。第1磁化固定層12及び第2磁化固定層13は、公知の強磁性体を用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。
また、より高い出力を得るためにはCoFeSiなどのホイスラー合金を用いることが好ましい。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSiやCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。
第1磁化固定層12及び第2磁化固定層13は、複数の積層構造であってもよい。例えば、反強磁性層、第一強磁性層、磁気結合層、第二強磁性層の順に積層された構造が挙げられる。反強磁性層はMnPtやMnIrなどが挙げられる。第一強磁性層及び第二強磁性層はCo−Fe、Co−Fe−B、CoFeSi、CoMnSiやCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。磁気結合層はRuが挙げられる。
次いで、図6(b)に示すように、第1磁化固定層12と第2磁化固定層13の間に、層間絶縁膜16を形成する。層間絶縁膜16は、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法(化学気相成長法)等の公知の方法で得ることができる。層間絶縁膜16には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等を用いることができる。いずれも遮熱性が高く、図3における遮熱体4に対応する。
また図6(c)に示すように、第1磁化固定層12及び第2磁化固定層13のそれぞれに対応する部分に、加熱配線1を形成する。加熱配線1も公知の方法で作製できる。加熱配線1には、高抵抗率を有し、耐火金属であるタングステン等を用いることが好ましい。
そして形成された加熱配線1のうち一方の第1加熱配線1Aを加熱する。第1加熱配線1Aの加熱により、第1磁化固定層12の磁化が不安定になる。この状態で、外部磁場を印加することにより第1磁化固定層12の磁化M2が一の方向に固定される。
次いで、残りの第2加熱配線1Bを加熱しながら外部磁場を印加することで、第2磁化固定層13の磁化M3を、第1磁化固定層12の磁化M2と異なる方向に固定する。すなわち、上述の磁化固定方法を用いることで、強磁性素子に異なる方向に磁化が固定された磁化固定層を形成することができる。
次いで、図6(d)に示すように、加熱配線1を除去する。加熱配線1の除去は、例えば、化学機械研磨(CMP)等を用いて行うことができる。
最後に、図6(e)に示すように、磁壁駆動層11、非磁性層15、第3磁化固定層14を順に積層し、磁壁駆動型MRAM20を作製することができる。
ここで、加熱配線1はその他の部分と比較して硬く、CMP研磨を用いて除去しても削りムラ等の履歴が残る。この履歴は、磁壁駆動型MRAM20を作製した後においても評価できる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)等で素子の断面の連続性を確認すると、研磨を行った部分に連続性の破れが確認される。すなわち、界面に連続性の破れ等が確認される場合は、本実施形態にかかる強磁性素子の製造方法を利用したと推認できる。
上述のように、本実施形態にかかる強磁性素子の製造方法によれば、任意の方向に磁化が固定された磁化固定層を有する強磁性素子を容易に得ることができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
1…加熱配線、1A…第1加熱配線、1B…第2加熱配線、1C…第3加熱配線、1D…第4加熱配線、2…強磁性体、2A…第1強磁性体、2B…第2強磁性体、2C…第3強磁性体、2D…第4強磁性体、3…電極パッド、4…遮熱体、s…狭窄部、20…磁壁駆動型MRAM、11…磁壁駆動層、12…第1磁化固定層、13…第2磁化固定層、14…第3磁化固定層、15…非磁性層、Ma…第1磁化方向、Mb…第2磁化方向、Mc…第3磁化方向、Md…第4磁化方向、M1,M2,M3,M4,M5…磁化

Claims (8)

  1. 複数の強磁性体のそれぞれに対して、いずれか一つの加熱配線が最近接するように複数の加熱配線を配設する配設工程と、
    外部磁場を印加しながら、前記複数の加熱配線のうち1又は複数の加熱配線を加熱し、前記複数の強磁性体のうち加熱された加熱配線に近接する強磁性体の磁化を固定する磁化固定工程と、を有し、
    前記磁化固定工程を印加する前記外部磁場を変えながら複数回行い、前記複数の強磁性体の磁化を複数の方向に固定する磁化固定方法。
  2. 前記複数の強磁性体のうち同一の方向に磁化を固定する強磁性体に対し、1本の加熱配線を配設する請求項1に記載の磁化固定方法。
  3. 前記複数の強磁性体に対して、いずれか一つの加熱配線を接触させる請求項1又は2のいずれかに記載の磁化固定方法。
  4. 隣接する強磁性体の間に、遮熱体を設ける請求項1から3のいずれか一項に記載の磁化固定方法。
  5. 前記強磁性体と積層方向重なる位置において、前記複数の加熱配線を交差させない請求項1から4のいずれか一項に記載の磁化固定方法。
  6. 前記強磁性体と積層方向重なる位置において、前記加熱配線が狭窄する請求項1から5のいずれか一項に記載の磁化固定方法。
  7. 加熱した加熱配線の抵抗値を測定する工程をさらに有する請求項1から6のいずれか一項に記載の磁化固定方法。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の磁化固定方法を用いた強磁性素子の製造方法。
JP2016112610A 2016-06-06 2016-06-06 磁化固定方法及び強磁性素子の製造方法 Active JP6668956B2 (ja)

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