JP2017219653A - 反射防止膜およびそれを有する光学素子、光学系、光学機器 - Google Patents

反射防止膜およびそれを有する光学素子、光学系、光学機器 Download PDF

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Abstract

【課題】波長帯域特性と入射角度特性に優れた反射防止膜およびそれを有する光学素子、光学系、光学機器を提供すること。【解決手段】錐台形状ないしは略錐台形状が使用最短波長よりも小さなピッチで規則的に配列した微細構造体を有する反射防止膜であって、該微細構造体は、実質的な屈折率が300nm以下の厚さにわたって連続的に変化するとみなせる領域を有しており、光学基板と該サブ波長構造体との間には基板側から順に、屈折率が1.58〜1.72の範囲にある第1層、屈折率が1.90〜2.40の範囲にある第2層、屈折率が1.38〜1.62の範囲にある第3層からなる誘電体薄膜が形成されていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、レンズ等の光学基板に形成される反射防止膜、およびそれを有する光学素子、光学系、光学機器に関する。
従来から光学素子の表面には、入射光の光量損失を低減させるために、反射防止対策が施されている。
例えば、カメラ用レンズに対する反射防止対策としては、マルチコーチと呼ばれる誘電体多層膜が広く用いられている。これは屈折率の異なる薄膜をそれぞれ適切な膜厚で積層することで、各膜の表面・界面で発生する反射波の振幅と位相を調整し、それらを干渉させることで反射光を低減させる、というのがその仕組みである。したがって、特定の波長および入射角の光線に対しては優れた反射防止性能を発揮することが可能である。
しかし、設計に用いた特定の光線とは波長や入射角の異なる光線では干渉条件が崩れるため、可視域全域のような広い波長帯域や0〜60° のような大きな入射角度範囲にわたって高い反射防止性能を実現するのは困難であった。
一方、近年広く普及しているデジタルカメラでは、従来の写真フィルムに比べて表面反射率が高いCCDやCMOSなどのイメージセンサーを使用している。そのため、センサー面で反射した光が再びレンズ面に到達・反射し、再度センサー面に到達することで「デジタルゴースト」と呼ばれる特定の不要光が発生しやすい。
さらに近年のデジタルカメラ用レンズは、高い画質の達成はもちろん、高スペック(ズーム倍率や明るさ)や携帯性(小型・軽量であること)も同時に求められるため、異常分散ガラスや非球面レンズ、曲率の大きなレンズ等を多用する傾向にある。これらの中でも曲率の大きなレンズは、周辺部で大きな角度の光線が入射・出射するため、従来のマルチコートでは反射を十分に低減することができず、フレアやゴースト等の撮影画像の品質を低下させる不要光が発生する場合があった。
このような状況を背景として、マルチコートよりも波長帯域特性・入射角度特性に優れた、高性能な反射防止膜の開発が求められている。
特許文献1は、真空蒸着法を用いて形成した3層の誘電体薄膜の上に、ゾル−ゲル法でフッ化マグネシウム層を形成した反射防止膜を開示しており、各層の屈折率と膜厚を適切に設定することで優れた反射防止特性が得られるとしている。
また、特許文献2は、微細凹凸構造体の外側に透明性材料からなる被覆層を備えたことで、反射防止性能を維持した上で、耐高温・高湿環境性および耐擦傷性に優れた反射防止膜を開示している。
特許第4433390号公報 特開2012-189846号公報
しかしながら、特許文献1に開示された反射防止膜は、入射角0° の光線において、波長500〜600nmの範囲で、反射率が0.3〜0.4%程度の値となっており、ゴーストを抑制するための十分な反射防止性能が実現できていない。さらに入射角60° の光線においては、波長400〜620nmの範囲では2%程度、波長650〜700nmの範囲では2.5%を超える反射率となっており、優れた入射角度特性を実現しているとは言えない。
また特許文献2は、その実施例4において、入射角0° の光線において、波長400〜700nmの範囲で、反射率が0.2%程度以下の特性を開示している。しかし入射角0° 以外の反射率特性を開示しておらず、入射角度特性が不明である。本出願人は特許文献2の実施例4について数値検証を行ったが、入射角45° の反射率特性は大きく低下していた。
そこで、本発明の目的は、以下に示す≪反射率規格1≫を満たすような、優れた波長帯域特性と入射角度特性を両立した反射防止膜およびそれを有する光学素子、光学系、光学機器を提供することにある。ただし、波長400〜430nmの間に関しては波長400nmでの規格値と波長430nmでの規格値とを直線で結んだ値、波長670〜700nmの間に関しては波長670nmでの規格値と波長700nmでの規格値とを直線で結んだ値を規格とする。
≪反射率規格1≫
入射角度0〜30° の範囲の光線において、
(1)波長430〜670nmの範囲において、反射率0.1%以下
(2)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率0.2%以下
入射角度45° の光線において、
(3)波長430〜670nmの範囲において、反射率0.3%以下
(4)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率0.4%以下
入射角度60° の光線において、
(5)波長430〜670nmの範囲において、反射率2.0%以下
(6)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率2.5%以下
上記の目的を達成するために、本発明に係る反射防止膜は、
錐台形状ないしは略錐台形状が使用最短波長よりも小さなピッチで規則的に配列した微細構造層を有する反射防止膜であって、該微細構造層は、実質的な屈折率が300nm以下の厚さにわたって連続的に変化するとみなせる領域を有しており、光学基板と該サブ波長構造体との間には基板側から順に、屈折率が1.58〜1.72の範囲にある第1層、屈折率が1.90〜2.40の範囲にある第2層、屈折率が1.38〜1.62の範囲にある第3層からなる誘電体薄膜が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、優れた波長帯域特性と入射角度特性を両立した反射防止膜、およびそれを有する光学系、光学機器を提供することができる。
本発明の反射防止膜の屈折率構造の概略図 本発明の反射防止膜の模式断面図 実施例1の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例2の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例3の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例4の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例5の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例6の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例7の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 比較例1の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例8の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例9の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例10の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例11の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例12の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例13の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例14の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例15の反射防止膜の屈折率構造および反射率特性 実施例16の光学系の光学断面図 実施例17の光学機器の模式図 本発明の反射防止膜の模式断面図(微細構造膜の形状が鈍った場合) 鈍った形状の微細構造膜を錐台形に置換する方法を示す模式図
本発明の実施の形態を添付の図面にもとづいて説明する。説明中の屈折率は、すべて波長550nmにおける値である。ただし、実施例16の光学設計値(数値実施例1)のみ、d線(波長587.56nm)での値である。
図1は本発明の反射防止膜の屈折率構造を概略的・模式的に示したものである。図2は本発明の反射防止膜の断面を模式的に示したものであり、レンズ等の光学基板上に本発明の反射防止膜を適用した光学素子の表面部分を拡大して示したものである。
光学基板11は、屈折率Nsubが1.45〜2.20の値を有する部材であり、その上に反射防止膜12が形成されている。反射防止膜12は、誘電体薄膜層13および微細構造層14からなり、光学基板11側から順に、第1層101、第2層102、第3層103、第4層104、第5層105から構成されている。
第1層101は屈折率N1が1.58〜1.72、膜厚D1が20.0〜150.0nmの値を有する薄膜層である。第2層102は屈折率N2が1.90〜2.40、膜厚D2が3.0〜30.0nmの値を有する薄膜層である。第3層103は屈折率N3が1.38〜1.62、膜厚D3が100.0nm以下の値を有する薄膜層である。第4層104は屈折率N4が1.30〜1.65、膜厚D4が100.0nm以下の値を有する薄膜層である。第5層105は、膜厚D5が120.0〜280.0nmの値を有し、ボトム(基板側)部分での屈折率が1.18〜1.42の範囲の値N5bからトップ(頂点側)部分での屈折率が1.015〜1.15の範囲の値N5tまで実質的に連続に変化する領域を有している。また、各屈折率は以下の式を満たすことが好ましい。
0.24 ≦ N2-N1 ≦ 0.72
0.42 ≦ N2-N3 ≦ 0.82
|N3-N4| ≦ 0.20
0.06 ≦ N4-N5b ≦ 0.32
0.08 ≦ N5b-N5t ≦ 0.48
ここで、「実質的に変化する」と表現したのは、第5層を形成する媒質の屈折率そのものが連続的に変化するのではなく、サブ波長構造体の空間占有率が、厚さ方向に連続的に変化することで、「有効屈折率」が連続に変化することを意味している。これは、光が自らの波長よりも小さなサイズの微細凹凸構造体を、その空間占有率に応じた「有効屈折率」を有する媒質として認識する性質によるものである。
有効屈折率Neffは、波長よりも微細な凹凸構造を形成している材質の屈折率をNmとし、その材質の空間占有率をffとしたとき、Bruggemanの式
を用いて算出することができる。すなわち、波長よりも小さなピッチで空間占有率が連続的に変化するような構造体では、実質的な屈折率(有効屈折率)が連続的に変化する膜を形成することができる。
また本発明では、上述の屈折率および膜厚を満たす反射防止膜であれば製法は特に限定しないが、例えば第1層〜第3層は蒸着法やスパッタリング法等のドライ成膜法を用いると良い。また、第4層および第5層はナノインプリントなどの転写法を用いれば、同時に2層を一体で形成することができ、好適である。
上述のような屈折率構造をとることで、本発明の反射防止膜は、下記に示した≪反射率規格1≫を満たすような波長帯域特性と入射角度特性を両立した高い性能を実現することができる。
≪反射率規格1≫
入射角度0〜30° の範囲の光線において、
(1)波長430〜670nmの範囲において、反射率0.1%以下
(2)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率0.2%以下
入射角度45° の光線において、
(3)波長430〜670nmの範囲において、反射率0.3%以下
(4)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率0.4%以下
入射角度60° の光線において、
(5)波長430〜670nmの範囲において、反射率2.0%以下
(6)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率2.5%以下
ここで、本発明が高性能の基準とした反射率規格について説明する。
本発明の反射防止膜は、波長430〜670nmでの反射率特性を重視しており、波長400〜430nmおよび波長670〜700nmでの特性は規格を緩和したものとしている。これは、デジタルカメラ等で使用されるCCDやCMOSなどのイメージセンサーの分光感度特性を考慮したものである。すなわちカメラ用のイメージセンサーは、人間が見た映像を忠実に再現するため、波長430〜670nmの範囲では高い感度が有しているが、波長400〜430nmおよび波長670〜700nmでの感度は低くなるように設定されている。
したがって波長400〜430nmおよび波長670〜700nmでの反射率特性が多少高くても、フレアやゴーストなどの不要光が撮影画像に影響を与えることがほとんどないため、同波長帯域の反射率規格は緩和することが可能である。また、本発明の反射防止膜において、より好ましくは各膜の屈折率および膜厚を
1.60 ≦ Nsub ≦ 2.20、
1.60 ≦ N1 ≦ 1.70、
24.0nm ≦ D1 ≦ 65.0nm、
1.90 ≦ N2 ≦ 2.40、
3.0nm ≦ D2 ≦ 25.0nm、
1.40 ≦ N3 ≦ 1.60、
D3 ≦ 90.0nm、
1.30 ≦ N4 ≦ 1.65、
D4 ≦ 90.0nm、
1.20 ≦ N5b≦ 1.42、
1.015 ≦ N5t ≦ 1.06、
170.0nm ≦ D5 ≦280.0nm
0.30 ≦ N2-N1 ≦ 0.66
0.48 ≦ N2-N3 ≦ 0.76
|N3-N4| ≦ 0.15
0.08 ≦ N4-N5b ≦ 0.28
0.20 ≦ N5b-N5t ≦ 0.42
の範囲内で設定することで、≪反射率規格1≫よりもさらに優れた≪反射率規格2≫を満たすことができる。
≪反射率規格2≫
入射角度0〜30° の範囲の光線において、
(1)波長430〜670nmの範囲において、反射率0.05%以下
(2)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率0.15%以下
入射角度45° の光線において、
(3)波長430〜670nmの範囲において、反射率0.2%以下
(4)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率0.3%以下
入射角度60° の光線において、
(5)波長430〜670nmの範囲において、反射率1.5%以下
(6)波長400nmおよび700nmにおいて、反射率2.0%以下
そして、本発明の反射防止膜を形成した光学素子をカメラ用レンズなどの光学系に使用することで、フレアやゴーストなどの不要光・有害光の発生を抑制した高品位な光学系、光学装置が実現できる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明していくが、各実施例の屈折率・膜厚は、一覧として表1にまとめて示してある。
[実施例1]
図3(a)は本発明実施例1の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH79、屈折率Nsubは2.011である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は26.4nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は17.5nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は64.1nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、214.1nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.290、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図3(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図3(b)、(c)に、本実施例の反射防止膜の反射率特性を示す。図3(c)は図3(b)の縦軸(反射率)のフルスケールを3.0%から0.5%に拡大した図である。
本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.03%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、 入射角60°の光線では1.2%以下という極めて優れた性能を達成している。
本実施例における第1層101は酸化アルミニウム(Al2O3)であるが、屈折率が1.58〜1.72の範囲の誘電体薄膜であれば、これに代用することができる。ただし第1層は、外部からの湿度の透過や硝材内部からのアルカリ成分などの溶出を抑制する能力が求められるため、酸化アルミニウム乃至は酸窒化珪素(SiON)を用いることが好ましい。
本実施例における第2層102は5酸化タンタル(Ta2O5)であるが、これも屈折率が1.90〜2.40の範囲の誘電体薄膜であればこれに代用することができる。例えば、酸化チタニウム(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化珪素(SiN)、酸窒化珪素などを単体ないしはこれらの混合材料として用いることができる。第1層および第2層の両方に酸窒化珪素を用いる場合は、酸素および窒素の混合比率を制御することで上述の屈折率範囲を満たすようにすれば良い。
本実施例における第3層103は酸化珪素(SiO2)であるが、これも屈折率が1.38〜1.62の範囲の誘電体薄膜であればこれに代用することができる。例えば、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸窒化珪素を用いることができる。
また本発明では、誘電体薄膜13の成膜方法は限定しない。真空蒸着法やスパッタリング法、分子線エピタキシー(MBE)法、プラズマCVD法など任意の方法を用いることができる。誘電体薄膜の形成においては、材料が同じでも成膜条件(基板温度や到達真空度など)に応じて屈折率および屈折率分散が若干変動してしまう。そのような場合は、上記の膜の光学膜厚(屈折率×物理膜厚)の値が一致するように膜厚を修正すれば、ほぼ同様の高い性能が得られる。
微細構造層14は、アクリルを主成分とする樹脂(屈折率1.493)にナノインプリント法で微細凹凸形状を転写することで形成した膜である。第5層105は微細凹凸形状が転写された部分であり、第4層104は構造が転写されずに下部に残った下地層である。ナノインプリント法においては、数nmから数十nm程度の下地層(残膜層)が形成されてしまう。この下地層の厚さは成形する光学基板(レンズ)の形状(曲率半径や大きさ)、成形条件(転写する材料の粘度や成形時の圧力など)などによって変化し、任意の値に制御することは困難な場合がある。
そこで、本発明では、第3層103の屈折率N3を転写材料(微細構造層14)の屈折率N4と近い値の層とし、反射防止膜の設計上、第3層と第4層は2層で1層と同等の役割を果たすようにしている。すなわち第4層の膜厚は基板形状や成形条件によってある値に決まってしまうが、第3層の膜厚を制御することで、合計の膜厚を任意の値に制御することが可能となるため、高い反射防止性能を安定して実現することができる。
また、第5層の微細構造は、円錐台形状(円錐の頂点を切り落とした形状)をピッチ300nm以下で規則的に配列したものである。ボトム部分での空間充填率(FFb)を60%、トップ部分での空間充填率(FFt)を4%としたことで有効屈折率が1.290から1.018にわたって連続的に変化する層となっている。
本実施例ではFFbを60%、FFtを4%としたが、本発明はこれに限定されず、上述のN5b、N5tの屈折率範囲を満たす任意の空間充填率を適用することができる。しかしナノインプリントにおいて、型の製法や耐久性、成形後の離型性を考慮すると100%に近いFFbや0%に近いFFtの実現は実質困難である。そこで本発明では、
38% ≦ FFb ≦ 82%
3% ≦ FFt ≦ 25%
となるように設定している。さらに微細構造層14の凹凸の高さ(膜厚)は高いほど反射防止性能(とくに大きな入射角での性能)を高くすることができる。
しかし凹凸の高さを大きくすると、成形時の離型性が低くなることから、本発明では、
120.0nm ≦ D5 ≦ 300.0nm
となるように設定している。離型性の観点では、高さだけではなく、アスペクト比(高さ/ピッチ)も重要である。アスペクト比が2以上になると離型性が低くなるため、ピッチは100〜300nmの範囲内にすることが好ましい。
また同様に、ナノインプリントにおいて型の製法を考えると、厳密な錐台形を実現することは困難であり、実際には図21に示したようにボトム部分およびトップ部分が鈍って丸味を帯びた形状となってしまう。そのような場合は、図22に示したように錐台形の形状からズレが生じ始めたポイント201から上の部分を、錐形の傾きをそのまま延長して形成できる同体積の錐台形202(図中破線で記載)に置換することで、ほぼ等価の錐台形状に換算することができる。ボトム部分についても同じ考え方を適用すれば良い。
すなわち微細構造層の形状が丸味を帯びた形状になってしまう場合、上述の方法で置換した錐台形形状が先に説明したような数値範囲に入るように設定すれば、本発明の効果を得ることができる。微細構造の配列については、六方配列、正方配列など、上述の屈折率の範囲を満たせばどのような配列でも良い。錐台形の形状も、円錐台、楕円錐台、多角錐台などどのような形状でも上述の屈折率の範囲を満たせばどのような形状でも良い。
また本実施例では、微細構造層14の材料としてアクリルを主成分とする樹脂を用いたが、本発明はこれに限定されない。アクリル以外の材料として、ポリカーボネイトやポリスチレン、シクロオレフィンポリマーなど、上述の屈折率条件、膜厚条件を満たし、微細構造が転写・形成可能な光学材料であれば何を用いても本発明の効果を発現することができる。硬化方式についても紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などいずれの方法でも良い。また、スピンオングラス(SOG)などのゾル−ゲル材料を用いても良い。
[実施例2]
図4(a)は本発明実施例2の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は30.9nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は12.4nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は64.3nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、223.6nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.310、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図4(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図4(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.025%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、入射角60°の光線では1.2%以下という極めて優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを64%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例3]
図5(a)は本発明実施例3の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH65V、屈折率Nsubは1.808である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は37.1nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は8.8nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は62.9nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、235.8nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.341、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図5(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図5(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.025%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、 入射角60°の光線では1.2%以下という極めて優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを70%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例4]
図6(a)は本発明実施例4の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAL14、屈折率Nsubは1.700である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は54.8nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は3.5nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は58.9nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、243.6nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.361、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図6(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図6(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.04%以下、入射角45°の光線では0.10%以下、入射角60°の光線では1.3%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを74%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例5]
図7(a)は本発明実施例5の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製L-BAL43、屈折率Nsubは1.588である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は130.6nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は4.0nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は61.2nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、232.0nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.351、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図7(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図7(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.035%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、入射角60°の光線では1.2%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを72%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例6]
図8(a)は本発明実施例6の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-BSL7、屈折率Nsubは1.518である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は119.7nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は7.7nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は67.6nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、215.4nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.320、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図8(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図8(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格1≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.07%以下、入射角45°の光線では0.12%以下、 入射角60°の光線では1.3%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを66%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例7]
図9(a)は本発明実施例6の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-FPL51、屈折率Nsubは1.498である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は117.6nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は8.6nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は69.0nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、211.9nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.310、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図9(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図9(b)、(c)にに示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格1≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.08%以下、入射角45°の光線では0.13%以下、入射角60°の光線では1.3%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを64%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[比較例1]
図10は本発明の比較例1であり、実施例1〜7に対する比較のために記載したものである。図10(a)は比較例1の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。比較例1は実施例1〜7に対する比較として、適用範囲から外れる低屈折率光学基板に、本発明の反射防止膜を形成したものである。本比較例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-FPL53であり、屈折率Nsubは1.440である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は113.2nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は11.4nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は72.1nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、203.3nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.279、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図10(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図10(b)、(c)に、本比較例の反射防止膜の反射率特性を示す。
本比較例の反射防止膜は、本発明の反射防止膜の構成において、優れた性能を実現すべく、種々検討を重ねたものの、本発明が達成課題とする≪反射率規格1≫を満たすことができなかった。本発明の反射防止膜は、屈折率1.450以下の光学基板には適用することができない。
[実施例8]
図11(a)は本発明実施例8の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は30.2nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は13.0nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は68.0nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、190.0nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.290、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.040に向かって、図11(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図11(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.04%以下、入射角45°の光線では0.10%以下、入射角60°の光線では1.4%以下という極めて優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを60%、FFtを9%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例9]
図12(a)は本発明実施例9の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は29.2nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は13.6nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は73.0nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、161.2nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.249、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.072に向かって、図12(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図12(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格1≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.06%以下、入射角45°の光線では0.15%以下、入射角60°の光線では1.6%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを52%、FFtを16%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例10]
図13(a)は本発明実施例10の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は28.4nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は14.1nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は77.6nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、139.2nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.199、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.115に向かって、図13(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図13(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格1≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.07%以下、入射角45°の光線では0.17%以下、入射角60°の光線では1.8%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については実施例1と同じである。第5層において、FFbを42%、FFtを25%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例11]
図14(a)は本発明実施例11の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は29.7nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は12.7nmである。
第3層103の膜厚D3は0nm、すなわち本実施例では、第3層が無い構成となっている。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は85.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、223.3nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.310、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図14(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図14(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.025%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、入射角60°の光線では1.2%以下という優れた性能を達成している。第1層101、第2層102、微細構造層14の材料については、実施例1と同じである。第5層において、FFbを64%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
本実施例で示したとおり、微細構造層14における第4層104(下地層)の膜厚を任意に制御できる場合、第3層103を削減できる。しかし実際には、ナノインプリント法などにより微細構造層14を形成した場合、下地層の膜厚を高精度で制御することは困難である。したがって、第4層104は成形法に応じて、制御が容易な膜厚で設定し、蒸着法やスパッタリング法など、膜厚制御が容易な方法で第3層を設けることで第3層および第4層の合計の膜厚を制御した方が好ましい。
[実施例12]
図15(a)は本発明実施例12の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は31.2nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は12.3nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は85.2nmである。
第4層104の膜厚D4は0nm、すなわち本実施例では、第4層が無い構成となっている。
第5層105の膜厚D5は、223.9nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.310、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図15(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図15(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.025%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、入射角60°の光線では1.2%以下という優れた性能を達成している。誘電体薄膜13および微細構造層14の材料については、実施例1と同じである。第5層において、FFbを64%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
本実施例で示したとおり、微細構造層14における第4層104(下地層)が無い場合でも、第3層103の膜厚を制御することで、高性能の達成は可能である。しかし実際には、ナノインプリント法などにより微細構造層14を形成した場合、下地層の膜厚をゼロにすることは困難である。したがって、第4層104は成形法に応じて、制御が容易な膜厚で設定し、蒸着法やスパッタリング法など、膜厚制御が容易な方法で第3層を設けることで第3層および第4層の合計の膜厚を制御した方が好ましい。
[実施例13]
図16(a)は本発明実施例13の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.694、膜厚D1は25.5nmである。
第2層102の屈折率N2は2.323、膜厚D2は6.8nmである。
第3層103の屈折率N3は1.597、膜厚D3は65.5nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、236.0nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.392、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図16(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図16(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.04%以下、入射角45°の光線では0.10%以下、入射角60°の光線では1.3%以下という極めて優れた性能を達成している。
本実施例における第1層101は酸窒化珪素(SiON)である。酸素と窒素の比率を適切に調整することで、屈折率1.694を実現している。本実施例における第2層102は酸化チタン(TiO2)である。また、第3層103は酸窒化珪素(SiON)である。第1層同様に、酸素と窒素の比率を適切に調整することで、屈折率1.493を実現している。微細構造層14は、実施例1同様アクリルを主成分とする樹脂(屈折率1.493)にナノインプリント法で微細凹凸形状を転写することで形成した膜である。第5層において、FFbを80%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例14]
図17(a)は本発明実施例14の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.601、膜厚D1は29.3nmである。
第2層102の屈折率N2は1.938、膜厚D2は20.8nmである。
第3層103の屈折率N3は1.407、膜厚D3は61.7nmである。
第4層104の屈折率N4は1.493、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、211.7nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.249、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図17(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図17(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.03%以下、入射角45°の光線では0.08%以下、入射角60°の光線では1.2%以下という極めて優れた性能を達成している。
本実施例における第1層101は酸窒化珪素(SiON)である。第2層102も同じく酸窒化珪素(SiON)である。それぞれ酸素と窒素の比率を適切に調整することで、屈折率1.601および屈折率1.938を実現している。また、第3層103は酸化珪素(SiO2)である。成膜条件を調整して膜の密度を下げることで、屈折率1.407を実現している。第5層において、FFbを52%、FFtを4%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例15]
図18(a)は本発明実施例15の反射防止膜の屈折率構造を示したものである。
本実施例における光学基板11は、株式会社オハラ製S-LAH58、屈折率Nsubは1.888である。
第1層101の屈折率N1は1.651、膜厚D1は30.7nmである。
第2層102の屈折率N2は2.127、膜厚D2は13.2nmである。
第3層103の屈折率N3は1.487、膜厚D3は53.2nmである。
第4層104の屈折率N4は1.588、膜厚D4は20.0nmである。
第5層105の膜厚D5は、233.3nmであり、ボトム部分での屈折率(N5b)が1.367、から、トップ部分の屈折率(N5t)1.018に向かって、図18(a)に示したようなプロファイルで連続的に変化している。
図18(b)、(c)に示したように、本実施例の反射防止膜は、可視波長帯域全域(波長400〜700nm)にわたって、高い反射防止性能を発揮しており、先に示した≪反射率規格2≫を満たしている。とくに波長430〜670nmの帯域において、入射角0〜30°の光線では0.03%以下、入射角45°の光線では0.09%以下、入射角60°の光線では1.2%以下という極めて優れた性能を達成している。誘電体薄膜13の材料については、実施例1と同じである。微細構造層14は、ポリカーボネイトを主成分とする樹脂(屈折率1.588)であり、ナノインプリント法で微細凹凸形状を転写することで形成した膜である。第5層において、FFbを64%、FFtを9%とし、上記の屈折率構造を実現している。
[実施例16]
図19は本発明の反射防止膜を有する光学素子(レンズ)を光学系に適用した場合の光学断面図である。本光学系のレンズ設計値は[数値実施例1]に示してある。第9面は非球面であり、光軸方向をZ軸、光軸直交方向をY軸としたとき、以下の式で表記される面である。
図19において、1001は光学系であり、焦点距離8〜15mmのカメラ用魚眼ズームレンズである。また、1002は撮像素子またはフィルム、1003は絞り、1004は副絞りである。この光学系において、光学素子(レンズ)11の像側面に本発明の実施例3に記載の反射防止膜12を設けている。
本発明の光学素子11の像側面は、外周部分での半開角が80°を超える大きな角度を有しており、そのため周辺部では大きな角度で光線が入射・射出する。しかし実施例3に記載の反射防止膜を設けたことで、波長430〜670nmの波長帯域、入射角0〜60°の入射角度範囲で良好な反射防止性能を実現しているあため、フレアやゴーストなどの有害光の発生を低減した高品位な光学系を実現することができる。
本実施例では、光学系の一例としてカメラ用魚眼ズームレンズの場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、焦点距離の長い標準レンズや望遠レンズでも良く、さらには双眼鏡などの観察光学系に用いても良い。
[実施例17]
図20は本発明の光学系を光学装置(カメラ)に適用した場合の概略図である。図20において、デジタルカメラ2001は、本発明の反射防止膜を用いた光学系1001を用いたことで、フレアやゴースト等の有害光の発生を低減しているため、高品位な画像を得ることができる。
[数値実施例1]
11 光学基板(レンズ)、12 反射防止膜、13 誘電体薄膜層、14 微細構造層、
101 第1層、102 第2層、103 第3層、104 第4層(下地層)、
105 第5層(微細構造層)、1001 光学系、1002 像面(撮像素子またはフィルム)、
1003 絞り、1004 副絞り、2001 光学装置(カメラ)

Claims (11)

  1. 錐台形状ないしは錐台形状が使用最短波長よりも小さなピッチで規則的に配列した微細構造体を有する反射防止膜であって、
    該微細構造体は、屈折率が300nm以下の厚さにわたって連続的に変化するとみなせる領域を有しており、
    光学基板と該サブ波長構造体との間には基板側から順に、
    屈折率が1.58〜1.72の範囲にある第1層、
    屈折率が1.90〜2.40の範囲にある第2層、
    屈折率が1.38〜1.62の範囲にある第3層
    からなる誘電体薄膜が形成されていることを特徴とする反射防止膜。
  2. 該反射防止膜が形成される光学基板(レンズ)の屈折率をNsubとし、光学基板から順に、
    屈折率がN1、膜厚がD1の値を有する第1層、
    屈折率がN2、膜厚がD2の値を有する第2層、
    屈折率がN3、膜厚がD3の値を有する第3層、
    屈折率がN4の値を有する材料
    から形成され、膜厚がD4の値を有する第4層(下地層)と、
    周期が300nm以下で、膜厚(微細構造の高さ)がD5である第5層(微細構造層)とが一体(同素材)で形成されており、
    第5において、微細構造層の下部での空間充填率をFFb、有効屈折率をN5b、上部での空間充填率をFFt、有効屈折率をN5tとしたとき、
    各膜の屈折率および膜厚が以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
    1.45 ≦ Nsub ≦ 2.20、
    1.58 ≦ N1 ≦ 1.72、
    20.0nm ≦ D1 ≦ 150nm、
    1.90 ≦ N2 ≦ 2.40、
    3.0nm ≦ D2 ≦ 30.0nm、
    1.38 ≦ N3 ≦ 1.62、
    D3 ≦ 100.0nm、
    1.30 ≦ N4 ≦ 1.65、
    D4 ≦ 100.0nm、
    1.18 ≦ N5b ≦ 1.42、
    1.015 ≦N5t ≦ 1.15、
    120.0nm ≦ D5 ≦ 300.0nm
    0.24 ≦ N2-N1 ≦ 0.72
    0.42 ≦ N2-N3 ≦ 0.82
    |N3-N4| ≦ 0.20
    0.06 ≦ N4-N5b ≦ 0.32
    0.08 ≦ N5b-N5t ≦ 0.48
  3. 該反射防止膜が形成される光学基板(レンズ)の屈折率をNsubとし、光学基板から順に、
    屈折率がN1、膜厚がD1の値を有する第1層、
    屈折率がN2、膜厚がD2の値を有する第2層、
    屈折率がN3、膜厚がD3の値を有する第3層、
    屈折率がN4の値を有する材料
    から形成され、膜厚がD4の値を有する第4層(下地層)と、
    周期が300nm以下で、膜厚(微細構造の高さ)がD5である第5層(微細構造層)とが一体(同素材)で形成されており、
    第5において、微細構造層の下部での空間充填率をFFb、有効屈折率をN5b、上部での空間充填率をFFt、有効屈折率をN5tとしたとき、
    各膜の屈折率および膜厚が以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
    1.60 ≦ Nsub ≦ 2.20、
    1.60 ≦ N1 ≦ 1.70、
    24.0nm ≦ D1 ≦ 65.0nm、
    1.90 ≦ N2 ≦ 2.40、
    3.0nm ≦ D2 ≦ 25.0nm、
    1.40 ≦ N3 ≦ 1.60、
    D3 ≦ 90.0nm、
    1.30 ≦ N4 ≦ 1.65、
    D4 ≦ 90.0nm、
    1.20 ≦ N5b ≦ 1.42、
    1.015 ≦N5t ≦ 1.06、
    170.0nm ≦ D5 ≦ 280.0nm
    0.30 ≦ N2-N1 ≦ 0.66
    0.48 ≦ N2-N3 ≦ 0.76
    |N3-N4| ≦ 0.15
    0.08 ≦ N4-N5b ≦ 0.28
    0.20 ≦ N5b-N5t ≦ 0.42
  4. 前記第1層は、酸化アルミニウム(Al2O3)乃至は酸窒化珪素(SiON)のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の反射防止膜。
  5. 前記第2層は、5酸化タンタル(Ta2O5)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(SiN)、酸窒化珪素(SiON)のいずれか一つ乃至はこれらの混合材料からなる膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の反射防止膜。
  6. 前記第3層は、シリカ(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸窒化珪素(SiON)のいずれか一つ乃至はこれらの混合材料からなる膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の反射防止膜。
  7. 前記第3層および第4層は、エネルギー硬化性樹脂材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の反射防止膜。
  8. 前記第3層および第4層は、ゾル−ゲル法で形成された無機材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の反射防止膜。
  9. 請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の反射防止膜が形成されていることを特徴とする光学素子。
  10. 請求項9に記載の光学素子を有することを特徴とする光学系。
  11. 請求項10に記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020038311A (ja) * 2018-09-05 2020-03-12 ミツミ電機株式会社 撥水性反射防止構造体

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