JP2017219519A - 熱可塑性ポリエステルの延性低下による寿命の推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性ポリエステル材料の延性が失われることによる寿命を推定する方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル材料の寿命の推定法は、(a)熱可塑性ポリエステルの試験片を準備する工程と、(b)未劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量(C0)と、未劣化熱可塑性ポリエステルの屋外暴露試験を行い、該試験の期間(t)における劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量(C(t))を1H−NMRで測定し、次式ln(C0/C(t))=kt(式1)からkを算出し、劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量が任意の値を下回るまでの屋外暴露期間を算出し、熱可塑性ポリエステルの推定の寿命を得る工程を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性ポリエステルの延性低下による寿命を推定する方法に関する。
熱可塑性ポリエステルは柔軟性と強靭性を有する材料であり、フィルムや包装材、衣料用の繊維等、幅広く利用されている。熱可塑性ポリエステル材料を屋外で使用すると、紫外線、雨、温度、湿度等の影響で劣化し、材料の特徴の一つである延性が失われる。そこで、屋外暴露試験による熱可塑性ポリエステル材料の寿命の評価が実施されている。これは、材料を実際に屋外に設置し、試験期間の経過に応じて試料を回収し、その都度、引張試験を実施することで材料の延性低下を評価する手法である。この手法で主に問題となるのが、材料の劣化が十分に進行し、寿命が判定できるようになるまでに長い試験期間を要することである。
屋外暴露試験よりも、短期間で材料の性能を評価する手法としては、促進耐候性試験等の室内加速試験がある。しかし、これらは、実際の屋外環境における劣化を再現できているとは言えず、試験結果の信頼性は屋外暴露試験に劣る(非特許文献1)。また、屋外環境における材料の寿命(耐久年数)を評価したい場合、促進耐候性試験の結果を屋外環境の耐久年数に換算するのは容易でない。促進耐候性試験と屋外暴露試験の試験期間の対応関係は材料ごとに異なるため、予め材料ごとに両試験を実施し対応関係を求めておく必要がある。従って、現状では、熱可塑性ポリエステル材料の屋外での寿命を正確に評価するためには、長期の屋外暴露試験の実施が必要である。
また、材料の延性を評価するために実施する引張試験は、破壊試験である。従って、試験片を多数用意する必要があること、信頼性のある結果を得るために測定回数を多く確保する必要があることなどから、作業量の多さという観点からも問題がある。
飯田眞司, 塗料の研究,147,2007. A. M. Ilarduya and S. M. Guerra, Macromol. Chem. Physics, 2014, 215, 2138-2160. 西岡利勝, 高分子分析入門, 講談社, 2010. M. Day,D. M. Wiles, J. Appl. Polym. Sci., 1972, 16, 191-202. W. Wang, A. Taniguchi and T. Okada etc., J. Appl. Polym. Sci., 1998, 67, 705-714.
本発明は、熱可塑性ポリエステルの短期の屋外暴露試験と、当該短期の屋外暴露試験の試料の1H−NMR測定から熱可塑性ポリエステル材料の延性が失われることによる寿命を推定する方法を提供することを目的とする。
本発明は、屋外環境において熱可塑性ポリエステル材料の延性が失われることによる寿命の推定方法に関する。この方法では、熱可塑性ポリエステルの短期の屋外暴露試験を実施し、熱可塑性ポリエステルに含まれるエーテル構造の暴露試験による分解量を定量することで、材料の性能が失われるまで屋外暴露試験を継続せず、熱可塑性ポリエステル試料の延性の評価を繰り返し行うことなく、屋外環境において熱可塑性ポリエステル材料の延性が失われることによる寿命の推定方法を提供する。
本発明は、以下の工程を含む熱可塑性ポリエステル材料の寿命の推定方法である。
(a)熱可塑性ポリエステルの試験片を準備する工程と、
(b)未劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量(C0)と、前記未劣化熱可塑性ポリエステルの屋外暴露試験を行い、該試験の期間(t)における劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量(C(t))とを1H−NMRで測定し、熱可塑性ポリエステルの全構成ユニットに対するモル%として定量して、下記(式1)に示す近似式でkを算出し、
ln(C0/C(t))=kt (式1)
劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量が任意の値を下回るまでの屋外暴露期間を算出し、熱可塑性ポリエステルの寿命を得る工程
を含む。
本発明では、1H−NMRの測定は、トリフルオロ酢酸の重溶媒又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノールの重溶媒と、重クロロホルムの混合溶媒を用いて行うことが好ましい。
本発明によれば、長期間屋外暴露試験を実施することなく、暴露試験期間が異なる試料の延性評価をその都度繰り返すことなく、熱可塑性ポリエステルの延性が失われるまでの寿命の推定が可能である。
ln(C0/C(t))から推定の寿命(T)を求めるグラフである。 屋外暴露試験後のPET試料の拡大1H−NMRスペクトル(溶媒:トリフルオロ酢酸−d/クロロホルム−d混合溶媒)である。 屋外暴露試験後のPET試料の拡大1H−NMRスペクトル(溶媒:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2/クロロホルム−d混合溶媒)である。 屋外暴露試験後のPET試料の1H−NMRスペクトル(溶媒:トリフルオロ酢酸−d/クロロホルム−d混合溶媒)である。 屋外暴露試験後のPET試料の1H−NMRスペクトル(溶媒:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2/クロロホルム−d混合溶媒)である。 短期屋外暴露試験における屋外暴露時間とln(C0/C(t))の関係を示すグラフである。 長期の屋外暴露試験における屋外暴露時間とln(C0/C(t))の関係を示すグラフである。
本発明を以下に説明する。本明細書において、未劣化熱可塑性ポリエステルとは、寿命を求めたい未知試料を含めた屋外暴露試験を行う前の熱可塑性ポリエステルをいい、劣化熱可塑性ポリエステルとは、未劣化熱可塑性ポリエステルとを屋外暴露試験により劣化させたものをいう。
本発明は、以下の工程を含む熱可塑性ポリエステル材料の寿命の推定法である。
(a)熱可塑性ポリエステルの試験片を準備する工程と、
(b)未劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量(C0)と、前記未劣化熱可塑性ポリエステルの屋外暴露試験を行い、該試験の期間(t)における劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量(C(t))とを1H−NMRで測定し、熱可塑性ポリエステルの全構成ユニットに対するモル%として定量して、下記(式1)に示す近似式でkを算出し、
ln(C0/C(t))=kt (式1)
劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量が任意の値を下回るまでの屋外暴露期間を算出し、熱可塑性ポリエステルの寿命を得る工程。
工程(a)では、熱可塑性ポリエステルの試験片を準備する。本発明の方法に用いることができる熱可塑性ポリエステルには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを挙げることができる。熱可塑性ポリエステルを所定の大きさの試験片に切断して、試料を作成する。試験片の大きさは特に限定されないが、後述する促進耐候性試験を行うのに十分な大きさとする。例えば、PET試料の場合、15cm×7.5cm×0.5mmなどの大きさを例に挙げることができる。
工程(b)では、まず、1H−NMRの測定で、未劣化及び劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量を測定する。
ここで、本発明では、熱可塑性ポリエステルを測定の対象としているが、熱可塑性ポリエステルは、その製造の過程で、熱可塑性ポリエステルの原料であるアルキレングリコール同士(例えば、PETではエチレングリコール、PTTではトリメチレングリコール、PBTでは1、4−ブタンジオールなど)が縮合したエーテル構造を含む2価アルコールが生じ、このエーテル構造を含むアルコールがポリエステル構造に取り込まれた熱可塑性ポリエステルが生じる。例えば、PETでは、ジエチレングリコールが取り込まれた下記構造を有するポリマーが副生する。
Figure 2017219519
本発明では、このエーテル構造を有する熱可塑性ポリエステルのエーテル構造の1H−NMRからその量を定量する。なお、上記エーテル構造に着目するのは、屋外暴露試験で起こるような紫外線による熱可塑性ポリエステルの分解による劣化は、エステル結合の分解よりもエーテル結合の分解の方が、大きな影響を持つ場合があることを本発明者らがつきとめたことによる。
なお、熱可塑性ポリエステルの1H−NMRの研究は、非特許文献3に記載されており、熱可塑性ポリエステルの構造と1H−NMRスペクトルのピークとの間の帰属が報告されている。
次に、記熱可塑性ポリエステルを短期の屋外暴露試験により劣化させる。屋外暴露試験は、上記熱可塑性ポリエステルを用い、南面45°の暴露架台に設置して行う。
まず、未劣化熱可塑性ポリエステルの1H−NMRを測定し、未劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量C0を求める。C0は、1H−NMRを用いて測定し、熱可塑性ポリエステルの全構成ユニットに対するモル%として定量する。
次に、熱可塑性ポリエステルの引張試験の破断伸びがa%未満となる点を、この熱可塑性ポリエステルの「寿命」と定義する(一般に、aの値は、熱可塑性ポリエステルの用途に応じて任意に定めることができる。)。このa%未満となる劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量が、未劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量(初期値)のb%となった点に対応するとする(このbは別途、促進耐候性試験等で劣化させた熱可塑性ポリエステルに対して引張試験を実施して決定するのが望ましい。)。
次に、熱可塑性ポリエステルの屋外暴露試験を、熱可塑性ポリエステルのエーテル構造が、初期値のc%(b<c<100)となるまで実施し(c≦90が好適に用いられる)、途中の任意の試験期間(t)で試料を回収する。なお、季節変動による影響を防ぐために、屋外暴露試験は最低1年間実施することが望ましい。また、本発明による寿命の推定の精度を上げるために、複数回の試料を回収して、屋外暴露試験を行うことが望ましい。本明細書において、熱可塑性ポリエステルの劣化を屋外暴露試験により検討する場合、当該暴露試験を熱可塑性ポリエステルのエーテル構造が、初期値のc%(b<c<100)となるまで行う場合を、短期の屋外暴露試験と称する。また、屋外暴露試験を熱可塑性ポリエステルの上記「寿命」まで(エーテル構造が初期値のb%になるまで)行う場合を、長期の屋外暴露試験と称する。
このようにして得られた劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量C(t)を1H−NMRを用いて測定する。そして、(式1)に示す近似式でkを算出する。
この近似式を用いてよい理由は、実施例において詳述するが、熱可塑性ポリエステルのエーテル構造の分解の速度論的解析に基づくものである。
ln(C0/C(t))=kt (式1)
具体的には、測定したln(C0/C(t))の値と暴露期間(t)の値について、横軸に暴露期間、縦軸にln(C0/C(t))をプロットする(例えば図1参照)。得られたプロットを、(式1)に当てはめ、kの値を算出する。
また、「寿命」における劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量(C)は、未劣化の熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量のb%であるから、下式(式2)で表せる。
C=C0×b/100 (式2)
従って、「寿命」における(式1)の左辺は、(式3)のように表せる。
ln(C0/C(t))=ln(100/b) (式3)
先に(式1)から得られたkの値と、ln(C0/C(t))にln(100/b)を代入して、これを解くと、推定の寿命Tを算出することができる。
以上のように、本発明では、短期の屋外暴露試験で、暴露期間が、未劣化及び劣化熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量から算出されるln(C0/C(t))と線形関係を有することに着目し、推定の寿命Tを求める。
以上のように、推定の寿命Tの算出は、上述のような短期の屋外暴露試験を実施し、これにより図1に示すグラフからkの値を求め、推定の寿命を算出することにより行う。
(実施例)
PETフィルム(15cm×7.5cm×0.5mm)を8枚用意した。このPETフィルムの「寿命」として、引張試験の破断伸びa%=10%未満を定義する。この「寿命」は、熱可塑性ポリエステルのエーテル構造(以下では単にエーテル構造とも称する)の量が初期値のb%=70%となった点に対応するとする。
ここでは、別途、促進耐候性試験で劣化させた試料の引張試験を実施し、a=10に対応する値としてb=70を決定した。このように、aとbの対応関係は別途決定することが望ましいが、a=10とする場合は、b=70としてもよい。これは、引張試験の破断伸びが10%未満となったとき、熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量が初期値の70%となっていることを意味する。
本実施例の促進耐候試験は、JISK5600−7−8に準じ、UVBランプを用いて実施した。
このように、熱可塑性ポリエステルのエーテル構造量の30%程度が劣化により失われ、初期値の70%程度となると、エーテル構造の存在によりもたらされていた熱可塑性ポリエステル分子の柔軟性が失われる。これに加えて、熱可塑性ポリエステルのエーテル構造の光分解によって生成したラジカルによる架橋構造の生成が進み、PETは延性を失い、破断伸びが10%未満となる。本発明者らはこのことを明らかにした。
PETフィルムの未劣化試料のエーテル構造量C0は、材料表層から0.05mm程度までを5mg削りとり(測定試料は3〜10mgが好適に用いられる)、1H−NMR測定を実施し、PETの全構成ユニットに対するモル%として定量した。1H−NMRにより測定したC0は、C0=5.8mol%であった。なお、表層から0.05mmの試料を測定するのは、屋外環境における熱可塑性ポリエステルフィルムの劣化は主に表層0.05mmまでの部分で起こるとされているためである(非特許文献5)。
1H−NMRの測定条件は以下の通りである(非特許文献2及び3)。測定溶媒には、トリフルオロ酢酸−dとクロロホルム−dを、体積比1:1から1:10で混合したもの、又は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2とクロロホルム−dを体積比1:1で混合させたものを好適に用いることができる。1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2/クロロホルム−d混合溶媒を用いる場合は、室温で測定するとエーテル構造のピークと他のピークが分離できないため加温して測定する必要がある。測定温度は、トリフルオロ酢酸−d/クロロホルム−d混合溶媒では室温を、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2/クロロホルム−d混合溶媒では50℃を好適に用いることができる。
トリフルオロ酢酸−d/クロロホルム−d混合溶媒で測定した場合には、δ4.1ppm付近に(図2の1H−NMRを参照)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2/クロロホルム−d混合溶媒で測定した場合は、δ3.95ppm付近に(図3の1H−NMRを参照)検出されるトリプレット状のピークが、エーテル構造の酸素原子に直結する炭素原子上のプロトンのピーク(4H分)として検出される。また、いずれの測定条件においても、δ8.1ppm付近に現れるピークが、PETの芳香環上の4個のプロトン(4H分)のピークである(図4及び図5の1H−NMRを参照)。この芳香環上の4H分のピークの積分値を分母として、エーテル構造の酸素原子に直結する炭素原子上のプロトン4H分のピークの積分値から、エーテル構造の含有量を求める。
未劣化試料を測定したところ、芳香環上の4Hのピークの積分値を100としたときに、エーテル構造のピークの積分値が5.8であったことから、未劣化試料においてエーテル構造が5.8モル%存在していることが確認できた。ここで、前述のエーテル構造のピークのやや低磁場より(トリフルオロ酢酸−d/クロロホルム−d混合溶媒で測定した場合のδ4.15ppm付近および、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール−d2/クロロホルム−d混合溶媒で測定した場合のδ4.00ppm付近)に現れるトリプレット状のピークは、高分子鎖のアルコール末端CH2OHの炭素原子上のプロトンのピーク(2H分)であることを補足しておく(図2及び図3参照)。
本実施例では、短期の屋外暴露試験は、エーテル構造量が、初期値のc%=90%(b<c<100)となるまで実施することとした(c≦90が好適に用いられる)。なお、季節変動による影響を防ぐために、屋外暴露試験は最低1年実施することとした。本実施例において、長期及び短期の屋外暴露試験は、実施期間のみ異なるものであり、南面45°の暴露架台に設置して実施した。
また、推定の寿命の精度を上げるために、半年に1回試料の回収を実施し、1H−NMR測定を行い、エーテル構造の含有量C(t)を求めることとした。屋外暴露開始から1.5年経過した時点で、エーテル構造が未劣化試料の5.8モル%の90%である5.22モル%を下回ったので、ここまでの測定結果から寿命を推定することとした。1H−NMRによる未劣化PET試料及び屋外暴露試験を実施したPET試料のエーテル構造量を測定した結果、及び、ln(C0/C(t))を算出した結果を表1に示す。
Figure 2017219519
上記の短期の屋外暴露試験について、暴露期間とln(C0/C(t))の関係を図6に示すようにプロットし、(式1)で近似して、kの値を求める。
ln(C0/C(t))=kt (式1)
k=0.0885が得られた。
また、「寿命」におけるCは、以下の式で表せる。
C=C0×b/100
ここで、b=70%であるので、「寿命」における(式1の)の左辺は下式のとおりである。
ln(C0/C(t))=ln(100/b)=ln(100/70)
次に、(式1):ln(C0/C(t))=ktに、得られたkの値および、ln(C0/C(t))=ln(100/70)を代入すると、ln(100/70)=0.0885tとなる。これを解くと、t=4.0となる。
以上のとおり、1.5年の短期の屋外暴露試験で、材料の推定の寿命(T)が4.0年と求められた。なお、長期の屋外暴露試験で測定した実際の寿命は4.5年であり、概ね寿命が推定できていることが確認できる。
次に、本発明の1H−NMRの測定において、エーテル構造に着目する理由、及び、(式1)の近似式を用いることができる理由を説明する
<エーテル構造に着目する理由>
本発明では、熱可塑性ポリエステルを測定の対象としているが、熱可塑性ポリエステルは、その製造の過程で、熱可塑性ポリエステルの原料であるアルキレングリコール同士(例えば、PETではエチレングリコール、PTTではトリメチレングリコール、PBTでは1、4−ブタンジオールなど)が縮合したエーテル構造を含む2価アルコールが生じる。そして、このエーテル構造を含むアルコールがポリエステル構造に取り込まれた熱可塑性ポリエステルが生じる。例えば、PETでは、ジエチレングリコールが取り込まれた下記構造を有するポリマーが副生する。
Figure 2017219519
このようなエーテル構造はPETに限らず熱可塑性ポリエステルでみられるが、その含有量は概ね10モル%以下と少ない。このため、従来、熱可塑性ポリエステルの劣化試料の分析では、芳香族カルボン酸末端のみが着目され、劣化による上記エーテル構造の分解は見過ごされてきた(非特許文献4)。しかしながら、エーテル構造は、エステル構造よりも光で分解されやすいため、劣化による分子鎖の切断量を正確に評価するには、エステル構造の分解だけでなく、エーテル構造の分解も評価する必要がある。
エーテル構造が光分解すると、分子鎖切断や架橋が生じる。これに加えて、熱可塑性ポリエステル材料のエーテル構造部分が材料に柔軟性をもたらす働きを持っているため、その柔軟性が、エーテル構造の分解で失われると考えられる。このようなことから、熱可塑性ポリエステル材料の延性が失われると考えられる。
更に、エーテル構造部分は、エステル構造部分に比較して水素結合を形成しにくいので、エーテル構造の存在が高分子鎖に柔軟性をもたらし、材料の延性にも寄与していると考えられる。
<(式1)の近似式を用いることができる理由>
エーテル構造の光分解は一次反応であり、その反応速度は、屋外暴露試験の開始からの期間を「t」とし、その時点での材料表面の単位体積あたりのエーテル構造量をC(t)[mol%](1H−NMRで測定しているエーテル構造量に対応する)とすると、下式(式2)で表される。
dC(t)/dt=−kC(t) (式2)
(但し:k:反応速度定数)
屋外暴露試験の開始時点、即ちt=0の時のC(t)をC(0)=C0として、エーテル構造の初期量としてこれを解くと、(式1)が得られる。
ln(C0/C(t))=kt (式1)
反応速度定数kは、材料に照射される光の波長分布と強度、および材料の表面温度に依存し、屋外環境で1年以上の暴露試験を実施する場合、年ごとの日射量や気温の変動は無視できる程度であることから一定とみなせる。また、劣化試料におけるエーテル構造量を前述の手法で測定し、横軸に暴露期間、縦軸にln(C0/C(t))をプロットすると、プロットは直線状に分布し、(式1)の近似式を適用してよいこととなる。
また、以下に示す長期の屋外暴露試験で得られたエーテル構造量[C(t)]、ln(C0/C(t))及び試験期間(t)を求めると、表2に示すようになった。
Figure 2017219519
表2の結果を短期の屋外暴露試験の場合と同様に横軸に暴露期間、縦軸にln(C0/C(t))をプロットすると、図7が得られる。このプロットから得られるkの値は、0.0894であった。
以上の長期の屋外暴露試験の結果を参照すると、短期の屋外暴露試験で得られた(式1)のkの値は、長期の屋外暴露試験の結果とよく一致しており、kの値もほぼ同じ値であった。従って、本発明の寿命推定方法のkの値を得る手段は、有効なものであると確認できる。

Claims (2)

  1. 熱可塑性ポリエステル材料の寿命の推定方法であって、
    (a)熱可塑性ポリエステルの試験片を準備する工程と、
    (b)未劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量(C0)と、前記未劣化熱可塑性ポリエステルの屋外暴露試験を行い、該試験の期間(t)における劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量(C(t))とを1H−NMRで測定し、熱可塑性ポリエステルの全構成ユニットに対するモル%として定量して、下記(式1)に示す近似式でkを算出し、
    ln(C0/C(t))=kt (式1)
    劣化熱可塑性ポリエステルの分子構造に含まれるエーテル構造量が任意の値を下回るまでの屋外暴露期間を算出し、熱可塑性ポリエステルの推定の寿命を得る工程
    を含む熱可塑性ポリエステルの寿命の推定方法。
  2. 前記工程(c)の1H−NMRの測定を、トリフルオロ酢酸の重溶媒又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノールの重溶媒と、重クロロホルムの混合溶媒を用いて行う請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルの寿命の推定方法。
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