前記課題を解決するためになされた第1の発明は、道路に設置された路側装置であって、航法衛星から送信される衛星信号を受信する衛星信号受信部と、前記衛星信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、前記衛星信号を直接波で受信可能な可視領域に関する可視領域情報を格納する情報格納部と、前記可視領域情報および前記航法衛星の位置情報に基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定する受信状態判定部と、自装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を、周辺の移動端末装置に送信する無線通信部と、を備えた構成とする。
これによると、路側装置は固定されていることから、路側装置における可視領域が変化しないため、航法衛星の位置と可視領域とを比較することで、路側装置において受信した衛星信号が直接波か否かを精度よくかつ簡易に判定することができる。そして、路側装置において衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルに関する衛星受信情報を移動端末装置に提供することで、移動端末装置において、自装置か受信した衛星信号が直接波か否かを精度よく判定することができ、直接波を優先的に用いて移動端末装置での測位精度を向上させることができる。
また、第2の発明は、さらに、前記可視領域情報および前記航法衛星の位置情報、並びに前記受信レベル測定部で測定される受信レベルに基づき、前記可視領域の変化を検知して、その検知結果に基づいて前記可視領域を補正する可視領域補正部を備えた構成とする。
これによると、建造物が新たに建造されるなどして障害物の状況が変化したり、路側装置の姿勢が変化したりして、可視領域が変化した場合でも、可視領域を補正することで、自装置で受信した衛星信号が直接波か否かの判定を精度よく行うことができる。
また、第3の発明は、前記可視領域情報は、前記衛星信号を直接波で受信可能な直接波領域、および前記衛星信号を回折波で受信可能な回折波領域に関する情報を含み、前記受信状態判定部は、前記可視領域情報および前記航法衛星の位置情報に基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波、回折波および反射波のいずれであるかを判定し、前記無線通信部は、自装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベル、および回折波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を前記移動端末装置に送信する構成とする。
これによると、路側装置で受信した衛星信号が直接波、回折波および反射波のいずれであるかを判定して、直接波の受信レベルおよび回折波の受信レベルを移動端末装置に提供するため、移動端末装置において、自装置が受信した衛星信号が直接波、回折波および反射波のいずれであるかを精度よく判定することができるため、直接波および回折波を優先的に用いて移動端末装置での測位精度をより一層向上させることができる。
また、第4の発明は、さらに、前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を、他の路側装置との間で送受信する情報交換部を備え、前記無線通信部は、前記他の路側装置から受信した前記衛星受信情報を、周辺の前記移動端末装置に送信する構成とする。
これによると、衛星信号を直接波で受信することができない路側装置において、衛星信号を直接波で受信することができる路側装置から、衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを取得して、その受信レベルを周辺の移動端末装置に提供することができる。
また、第5の発明は、航法衛星から送信される衛星信号に基づいて自装置の測位を行う移動端末装置であって、前記衛星信号を受信する衛星信号受信部と、前記衛星信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、路側装置から送信される衛星受信情報を受信する無線通信部と、前記衛星受信情報に含まれる、前記路側装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベル、および自装置で受信した前記衛星信号の受信レベルに基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定する受信状態判定部と、前記受信状態判定部の判定結果に基づいて、測位計算を行う測位計算部と、を備えた構成とする。
これによると、路側装置において衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルに基づいて、自装置で受信した衛星信号が直接波か否かを精度よく判定することができるため、直接波を優先的に用いて移動端末装置での測位精度を向上させることができる。
また、第6の発明は、前記受信状態判定部は、前記路側装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルに基づいて、直接波判定閾値を設定し、前記受信レベル測定部で測定された受信レベルを前記直接波判定閾値と比較して、自装置において受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定する構成とする。
これによると、自装置において受信した衛星信号が直接波か否かを簡単に判定することができる。
また、第7の発明は、前記受信状態判定部は、自装置で受信した前記衛星信号が直接波、回折波および反射波のいずれであるかを判定し、前記測位計算部は、前記衛星信号を直接波で受信した航法衛星の観測値を優先して測位計算に使用し、前記衛星信号を直接波で受信した航法衛星の総数が、測位が可能になる必要数に達しない場合には、前記衛星信号を回折波で受信した航法衛星の観測値を優先して測位計算に使用し、前記衛星信号を直接波で受信した航法衛星および前記衛星信号を回折波で受信した航法衛星の総数が、前記必要数に達しない場合には、前記衛星信号を反射波で受信した航法衛星の観測値を測位計算に使用する構成とする。
これによると、移動端末装置が受信した衛星信号が直接波、回折波および反射波のいずれであるかを判定し、直接波、回折波、反射波の順に優先して用いるため、移動端末装置での測位精度をより一層向上させることができる。
また、第8の発明は、航法衛星から送信される衛星信号に基づいて移動端末装置の測位を行う衛星測位システムであって、道路に設置された路側装置と、前移動端末装置と、を備え、前記路側装置は、前記衛星信号を受信する衛星信号受信部と、前記衛星信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、前記衛星信号を直接波で受信可能な可視領域に関する可視領域情報を格納する情報格納部と、前記可視領域情報および前記航法衛星の位置情報に基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定する受信状態判定部と、自装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を、周辺の前記移動端末装置に送信する無線通信部と、を備え、前記移動端末装置は、前記衛星信号を受信する衛星信号受信部と、前記衛星信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、前記路側装置から送信される前記衛星受信情報を受信する無線通信部と、前記衛星受信情報に含まれる、前記路側装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベル、および自装置で受信した前記衛星信号の受信レベルに基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定する受信状態判定部と、前記受信状態判定部の判定結果に基づいて、測位計算を行う測位計算部と、を備えた構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、移動端末装置において受信した衛星信号が直接波か否かを簡易にかつ精度よく判定して、直接波を優先的に用いて測位精度の向上を実現することができる。
また、第9の発明は、航法衛星から送信される衛星信号に基づいて移動端末装置の測位を行う衛星測位方法であって、道路に設置された路側装置において、前記衛星信号を受信し、前記衛星信号の受信レベルを測定し、前記衛星信号を直接波で受信可能な可視領域に関する可視領域情報、および前記航法衛星の位置情報に基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定し、自装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を、周辺の前記移動端末装置に送信し、前記移動端末装置において、前記衛星信号を受信し、前記衛星信号の受信レベルを測定し、前記路側装置から送信される前記衛星受信情報を受信し、前記衛星受信情報に含まれる、前記路側装置で前記衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベル、および自装置で受信した前記衛星信号の受信レベルに基づいて、自装置で受信した前記衛星信号が直接波か否かを判定し、その判定結果に基づいて、測位計算を行う構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、移動端末装置において受信した衛星信号が直接波か否かを簡易にかつ精度よく判定して、直接波を優先的に用いて測位精度の向上を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る無線通信システム(衛星測位システム)の全体構成図である。
この無線通信システムは、GNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)を構成する複数の航法衛星1と、道路に設置される路側装置2と、歩行者が所持する歩行者端末装置(移動端末装置)3および携帯情報端末装置4と、車両に搭載される車載端末装置(移動端末装置)5およびカーナビゲーション装置6と、センター装置8と、を備えている。
航法衛星1は、GNSS、具体的には、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムを構成するものであり、送信時刻や軌道情報(位置情報)などを含む衛星信号(航法信号)を送信する。
路側装置2は、歩行者端末装置3との間で路歩間通信を行う通信機能と、車載端末装置5との間で路車間通信を行う通信機能と、を備えており、歩行者端末装置3や車載端末装置5から取得した歩行者や車両の位置情報などを、別の歩行者端末装置3や車載端末装置5に提供する。また、路側装置2は、路側ネットワークを介してセンター装置8との間で通信を行う通信機能を備えており、センター装置8から取得した安全運転支援情報(信号情報、規制情報、道路情報など)を車載端末装置5に提供する。
歩行者端末装置3は、航法衛星1から送信される衛星信号を受信して、その衛星信号に基づいて歩行者の位置情報を取得する衛星測位機能と、路側装置2との間で路歩間通信を行う通信機能と、車載端末装置5との間で歩車間通信を行う通信機能と、を備えており、これらの機能で取得した歩行者および車両の位置情報などに基づいて、歩行者に車両が衝突する可能性が高いか否かを判定する危険判定を行う。
携帯情報端末装置4は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブル端末などである。歩行者端末装置3および携帯情報端末装置4は相互に接続されており、歩行者端末装置3において、衝突の可能性が高いものと判定されると、事故回避のための歩行者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や振動など)を携帯情報端末装置4に行わせる。なお、歩行者端末装置3自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。
車載端末装置5は、航法衛星1から送信される衛星信号を受信して、その衛星信号に基づいて自車両の位置情報を取得する衛星測位機能と、歩行者端末装置3との間で歩車間通信を行う通信機能と、路側装置2との間で路車間通信を行う通信機能と、他の車載端末装置5との間で車車間通信を行う通信機能と、を備えており、これらの機能で取得した歩行者、自車両および他車両の位置情報などに基づいて、自車両が歩行者や他車両に衝突する可能性が高いか否かを判定する危険判定を行う。
カーナビゲーション装置6は、運転者に対して経路案内を行うものである。車載端末装置5およびカーナビゲーション装置6は相互に接続されており、車載端末装置5において、衝突の可能性が高いものと判定されると、事故回避のための運転者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や画面表示など)をカーナビゲーション装置6に行わせる。なお、車載端末装置5自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。
なお、車載端末装置5は、運転者が所持する携帯情報端末装置4と接続されて、運転者に対する注意喚起などの出力動作を携帯情報端末装置4に行わせるようにしてもよい。
また、歩行者端末装置3は、携帯情報端末装置4に内蔵されたものとしてもよく、また、車載端末装置5は、カーナビゲーション装置6に内蔵されたものとしてもよい。
この無線通信システムでは、所要の情報を含むメッセージを、路側装置2と歩行者端末装置3との間で送受信し、また、路側装置2と車載端末装置5との間で送受信し、また、歩行者端末装置3と車載端末装置5との間で送受信し、また、車載端末装置5同士で送受信し、このメッセージの送受信を、ITS無線通信、すなわち、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば700MHz帯や5.8GHz帯)を利用した無線通信(ITS通信)により行う。
ここで、本実施形態では、路側装置2と歩行者端末装置3との間でメッセージを送受信する場合を路歩間通信とし、路側装置2と車載端末装置5との間でメッセージを送受信する場合を路車間通信とし、歩行者端末装置3と車載端末装置5との間でメッセージを送受信する場合を歩車間通信とし、車載端末装置5同士でメッセージを送受信する場合を車車間通信としているが、路歩間通信、路車間通信、歩車間通信および車車間通信で送受信されるメッセージは、共通の仕様(データ構成)に基づくものである。
さて、歩行者端末装置3や車載端末装置5の周辺に、建造物などの障害物が存在すると、航法衛星1から送信される衛星信号が障害物で遮断される他に、衛星信号が障害物の壁面で反射した上で歩行者端末装置3や車載端末装置5に到達する場合がある。このように歩行者端末装置3や車載端末装置5において衛星信号を反射波で受信した場合には、観測値(擬似距離)が大きな誤差を含む可能性があるため、反射波の場合の観測値をそのまま測位計算に使用すると、測位精度が大きく低下する。
このため、歩行者端末装置3や車載端末装置5において、受信した衛星信号が直接波か反射波かを判定して、その判定結果に基づいて測位計算を行う。すなわち、反射波の場合の観測値を測位計算に使用しないようにし、あるいは、反射波の場合の観測値を補正した上で測位計算を実施したり、直接波か反射波かに応じた重み付けを行った測位計算を実施したりすることで、測位精度を向上させることができる。
ところが、歩行者端末装置3や車載端末装置5では、受信した衛星信号が直接波か反射波かを精度よく判定することが難しい。すなわち、受信した衛星信号が反射波である場合、衛星信号の受信レベルが低下することから、衛星信号の受信レベルを所定の閾値と比較することで、受信した衛星信号が直接波か反射波かを判定することが考えられるが、衛星信号の受信レベルは、天候などの伝搬環境に影響されるため、一定の閾値で直接波か反射波かを精度よく判定することが難しい。
そこで、本実施形態では、路側装置2に、航法衛星1から送信される衛星信号を受信する機能を設けて、受信した衛星信号の受信レベルを測定する。また、路側装置2は固定されているため、周辺の障害物の状況に基づいて、衛星信号を直接波で受信可能な可視領域を予め設定して、この可視領域と航法衛星1の現在の位置とを比較することで、自装置で受信した衛星信号が直接波か否かを判定する。そして、衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を、路側装置2から歩行者端末装置3および車載端末装置5に提供する。
歩行者端末装置3および車載端末装置5では、路側装置2から取得した衛星受信情報、すなわち、路側装置2において衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルに基づいて、自装置で受信した衛星信号が直接波か反射波かの判定を行い、この判定結果に基づいて直接波を優先的に用いて測位計算を行う。これにより、歩行者端末装置3および車載端末装置5での測位精度を向上させることができる。
このとき、ITS通信(路歩間通信および路車間通信)により衛星受信情報を含むメッセージを路側装置2からブロードキャストで送信し、この路側装置2から送信されるメッセージは、ITS通信の通信圏内に存在する歩行者端末装置3および車載端末装置5で受信される。ITS通信の通信距離は100mから200m程度であるため、路側装置2から送信されるメッセージは、衛星信号の受信環境が路側装置2と類似した歩行者端末装置3および車載端末装置5で受信される。このため、歩行者端末装置3および車載端末装置5では、自装置で受信した衛星信号が直接波か反射波かの判定を精度よく行うことができる。
なお、以下では、路側装置2から衛星受信情報を歩行者端末装置3に提供して、歩行者端末装置3での測位精度を向上させる例について説明するが、歩行者端末装置3の場合と同様に、路側装置2から衛星受信情報を車載端末装置5に提供して、車載端末装置5での測位精度を向上させるようにしてもよい。
次に、路側装置2の可視領域(衛星信号を直接波で受信可能な天空範囲)について説明する。図2は、路側装置2の可視領域の一例を示す説明図である。
本実施形態では、図2(A)に示すように、路側装置2において、航法衛星1から送信される衛星信号を直接波で受信可能な天空範囲である可視領域(直接波受信可能領域)が設定される。図2(B)に示すように、路側装置2の天空には建造物などの障害物が存在し、この障害物が存在する領域では、航法衛星1が障害物の影になり、航法衛星1から送信される衛星信号を直接波で受信することができない。そこで、本実施形態では、この障害物が存在する領域を不可視領域として、この不可視領域を除く天空範囲を可視領域に設定する。
路側装置2では、可視領域と航法衛星1の位置(仰角および方位角)とを比較して、航法衛星1から送信される衛星信号を直接波で受信したか否かを判定する。すなわち、航法衛星1が可視領域内に位置する場合には、直接波と判定し、航法衛星1が可視領域内に位置しない、すなわち、航法衛星1が不可視領域内に位置する場合には、反射波と判定する。
なお、この可視領域を設定するにあたっては、路側装置2の天空をカメラで撮像して、その撮像画像を画像処理することにより、可視領域を取得すればよい。また、作業者が撮像画像を目視で観察して可視領域を設定するようにしてもよい。
次に、衛星受信情報について説明する。図3は、衛星受信情報を示す説明図であり、図3(A)に、路側装置2において取得した自装置に関する衛星受信情報を示し、図3(B)に、路側装置2から歩行者端末装置3に提供される路側装置2に関する衛星受信情報を示し、図3(C)に、歩行者端末装置3において更新された路側装置2に関する衛星受信情報を示し、図3(D)に、歩行者端末装置3において取得した自装置に関する衛星受信情報を示す。
路側装置2では、可視領域(図2参照)と航法衛星1の位置(仰角および方位角)とを比較して、受信した衛星信号が直接波であるか否かを判定する。そして、図3(A)に示すように、衛星番号、受信レベル、仰角、方位角、受信状態(直接波または反射波)を含む衛星受信情報が航法衛星1ごとに生成される。この衛星受信情報は、路側装置2において衛星信号を受信する度に更新される。
また、路側装置2では、図3(B)に示すように、各航法衛星1の衛星受信情報から通知情報を生成して、その通知情報を含むメッセージを歩行者端末装置3に路歩間通信で送信する。本実施形態では、受信状態が直接波となる航法衛星1の衛星受信情報のみを抽出して通知情報を生成する。この通知情報を含むメッセージの送信は、所定のタイミング(例えば1秒または数秒間隔)で定期的に行われる。なお、車載端末装置5は移動速度が高いため、車載端末装置5に対しては、歩行者端末装置3の場合より短い間隔で送信するようにするとよい。
歩行者端末装置3では、路側装置2から路歩間通信で送信されるメッセージを受信すると、メッセージに含まれる各航法衛星1の衛星受信情報に基づいて、図3(C)に示すように、自装置に保持された路側装置2に関する衛星受信情報を更新する。このとき、該当する航法衛星1の衛星受信情報に更新時刻を付加する。この衛星受信情報の更新は、路側装置2から送信される衛星受信情報を含むメッセージを受信する度に行われる。
また、歩行者端末装置3では、航法衛星1から送信される衛星信号を受信すると、その衛星信号の受信レベルを測定する。そして、図3(C)に示す衛星受信情報に含まれる路側装置2で衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルに基づいて、直接波判定閾値を設定して、その直接波判定閾値と、自装置で衛星信号を受信した場合の受信レベルとを比較して、自装置において受信した衛星信号が直接波か否かを判定する。そして、図3(D)に示すように、受信状態判定結果(直接波または反射波)および判定時刻を含む衛星受信情報を生成して、自装置に保持された自装置に関する衛星受信情報を更新する。
また、歩行者端末装置3では、図3(D)に示す自装置に関する衛星受信情報に基づいて測位計算を行う。このとき、受信状態が直接波となる航法衛星1の観測値(擬似距離)を優先して測位計算に使用し、選択した航法衛星1の総数が、測位が可能になる必要数に達しない場合には、受信状態が反射波となる航法衛星1の観測値も測位計算に使用する。
なお、本実施形態では、航法衛星1の仰角および方位角を含む衛星受信情報を路側装置2から歩行者端末装置3に送信するようにしたが、航法衛星1の仰角および方位角は歩行者端末装置3においても取得することができるため、航法衛星1の仰角および方位角を含まない衛星受信情報を路側装置2から歩行者端末装置3に送信するようにしてもよい。
また、本実施形態では、衛星信号を直接波で受信した航法衛星1に関する衛星受信情報のみを路側装置2から歩行者端末装置3に送信するようにしたが、衛星信号を反射波で受信した航法衛星1に関する衛星受信情報も路側装置2から歩行者端末装置3に送信するようにしてもよい。このようにすると、歩行者端末装置3において、自装置で受信可能な航法衛星1を探索する場合に、直接波で受信した航法衛星1を優先するように優先順位を付けて、航法衛星1の探索を効率よく行うことができる。
次に、路側装置2の概略構成について説明する。図4は、路側装置2の概略構成を示すブロック図である。
路側装置2は、衛星信号受信部11と、ITS通信部(無線通信部)12と、ネットワーク通信部13と、制御部14と、情報格納部15と、を備えている。
衛星信号受信部11は、航法衛星1から送信される衛星信号を受信する。
ITS通信部12は、歩行者端末装置3との間でITS通信(路歩間通信)によりメッセージを送受信し、車載端末装置5との間でITS通信(路車間通信)によりメッセージを送受信する。
ネットワーク通信部13は、路側ネットワークを介してセンター装置8との間で通信を行う。このネットワーク通信部13により、信号情報、規制情報、道路情報などの安全運転支援情報をセンター装置8から取得して、その安全運転支援情報をITS通信により車載端末装置5に提供する。
情報格納部15は、衛星信号に含まれる航法衛星1の軌道情報(位置情報)、衛星信号を直接波で受信可能な天空範囲である可視領域に関する可視領域情報、衛星信号受信部11で受信した衛星信号の受信レベルや受信状態などを含む自装置に関する衛星受信情報、および制御部14で実行されるプログラムなどを格納する。
制御部14は、受信レベル測定部21と、受信状態判定部22と、衛星受信情報管理部23と、を備えている。この制御部14はプロセッサで構成され、制御部14の各部は、情報格納部15に格納されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
受信レベル測定部21は、衛星信号受信部11で受信した衛星信号の受信レベルを測定する。この受信レベルとしては、例えば、CNR(carrier‐noise ratio:搬送波対雑音比)を測定すればよい。また、受信レベル測定部21では、受信レベルのフィルタ処理、具体的には、過去複数回の受信レベルによる平均化フィルタ、低域フィルタ、統計的予測処理などが行われる。
受信状態判定部22は、情報格納部15に格納された航法衛星1の現在の軌道情報(位置情報)および可視領域情報に基づいて、衛星信号受信部11で受信した衛星信号が直接波か否かを判定する。具体的には、航法衛星1の現在の位置(仰角、方位角)と可視領域とを比較して、航法衛星1が可視領域内に位置する場合に、直接波と判定し、航法衛星1が可視領域内に位置しない場合に、反射波と判定する。
衛星受信情報管理部23では、衛星信号受信部11で衛星信号を受信する度に、受信状態判定部22での判定結果に基づいて、情報格納部15に格納された自装置に関する衛星受信情報を更新する(図3(A)参照)。
また、衛星受信情報管理部23では、所定の通知タイミングで定期的に、情報格納部15に格納された自装置に関する衛星受信情報から通知情報を生成して、その通知情報を含むメッセージがITS通信部12から歩行者端末装置3に送信される。本実施形態では、受信状態が直接波となる航法衛星1の衛星受信情報のみを抽出して、通知情報を生成する(図3(B)参照)。
次に、歩行者端末装置3の概略構成について説明する。図5は、歩行者端末装置3の概略構成を示すブロック図である。
歩行者端末装置3は、衛星信号受信部31と、ITS通信部(無線通信部)32と、制御部33と、情報格納部34と、入出力部35と、を備えている。
衛星信号受信部31は、航法衛星1から送信される衛星信号を受信する。
ITS通信部32は、路側装置2との間でITS通信(路歩間通信)によりメッセージを送受信し、車載端末装置5との間でITS通信(歩車間通信)によりメッセージを送受信する。
情報格納部34は、地図情報、路側装置2で受信した衛星信号の受信レベルや受信状態などを含む路側装置2に関する衛星受信情報、衛星信号受信部31で受信した衛星信号の受信レベルや受信状態などを含む自装置に関する衛星受信情報、および制御部33で実行されるプログラムなどを格納する。
入出力部35は、携帯情報端末装置4との間で情報の入出力を行う。この入出力部35から出力される情報に基づいて、携帯情報端末装置4において、歩行者に対する注意喚起などのための出力動作が行われる。
制御部33は、危険判定部41と、衛星受信情報管理部42と、受信レベル測定部43と、受信状態判定部44と、測位計算部45と、を備えている。この制御部33は、プロセッサで構成され、制御部33の各部は、情報格納部34に格納されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
危険判定部41は、ITS通信部32で車載端末装置5から取得した車両の位置情報と、測位計算部45で取得した歩行者の位置情報と、情報格納部34から取得した地図情報とに基づいて、注意喚起が必要か否か、すなわち、歩行者に車両が衝突する可能性が高いか否かを判定する。
衛星受信情報管理部42は、ITS通信部32で衛星受信情報を含むメッセージを受信する度に、情報格納部34に格納された路側装置2に関する衛星受信情報を更新する(図3(C)参照)。また、衛星受信情報管理部42では、衛星信号受信部31で衛星信号を受信する度に、受信状態判定部44での判定結果に基づいて、情報格納部34に格納された自装置に関する衛星受信情報を更新する(図3(D)参照)。
また、衛星受信情報管理部42は、路側装置2に関する衛星受信情報の中で、更新がないまま所定時間経過した航法衛星1の衛星受信情報を不要な情報と判断して、その衛星受信情報を情報格納部34から削除する。ここで、歩行者端末装置3が移動することで、衛星受信情報の提供元の路側装置2から歩行者端末装置3が離れると、路側装置2から取得した衛星受信情報が長期間更新されない状態となり、このような衛星受信情報は不要であるため、削除することができる。
受信レベル測定部43は、衛星信号受信部31で受信した衛星信号の受信レベルを測定する。この受信レベルとしては、例えば、CNR(carrier‐noise ratio:搬送波対雑音比)を測定すればよい。また、受信レベル測定部43では、受信レベルのフィルタ処理、具体的には、過去複数回の受信レベルによる平均化フィルタ、低域フィルタ、統計的予測処理などが行われる。
受信状態判定部44は、受信レベル測定部43で測定された自装置での受信レベルLpを直接波判定閾値Ltと比較して、受信状態が直接波か否か、すなわち、自装置において衛星信号を直接波で受信したか否かを判定する。ここで、受信レベルLpが直接波判定閾値Lt以上となる場合(Lp≧Lt)には、自装置において衛星信号を直接波で受信したものと判定し、受信レベルLpが直接波判定閾値Lt未満となる場合(Lp<Lt)には、自装置において衛星信号を反射波で受信したものと判定する。
また、受信状態判定部44は、受信状態の判定に先だって、その判定対象となる航法衛星1に関して路側装置2において衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルLrに基づいて直接波判定閾値Ltを設定する。本実施形態では、次式のように、路側装置2での受信レベルLrに補正値αに加算して直接波判定閾値Ltを算出する。
Lt=Lr+α
補正値αは、路側装置2と歩行者端末装置3との間での受信特性やレベル測定精度の違いを反映したものであり、この補正値αにより路側装置2での受信レベルLrを補正することで、歩行者端末装置3での受信レベルを推定して、その値を直接波判定閾値Ltとする。
ここで、航法衛星1が天頂(真上)に位置し、路側装置2および歩行者端末装置3のいずれにおいても、衛星信号を直接波で受信することが想定される場合の受信レベルを推定して、その基準となる受信レベルと路側装置2での受信レベルとを比較して、両者の差分を求め、その差分に測定ばらつきを加味して補正値αを決定すればよい。
例えば、航法衛星1からの衛星信号を路側装置2において直接波で受信したときの受信レベルと、同一の航法衛星1からの衛星信号を歩行者端末装置で受信したときの受信レベルとを比較して、両者の差分を求め、その差分の中で最も小さい値を補正値αに設定する。ただし、歩行者端末装置3において一度も衛星信号を直接波で受信することができない場合もあり、このような場合に備えて、補正値αの有効範囲を予め設定しておくようにしてもよい。
また、路側装置2において一度も衛星信号を直接波で受信することができなかった航法衛星1では、路側装置2での直接波の受信レベルが不明であるため、前記のような手法では直接波判定閾値を設定することができない。そこで、このような場合には、衛星信号を直接波で受信することができた他の航法衛星1の受信レベルから、対象となる航法衛星1の受信レベルを予測するようにしてもよい。
なお、路側装置2における衛星信号の受信特性のばらつきは大きくないと考えられるため、補正値αを決定する条件が満たされない場合には、直近に使用した補正値αを使用するようにしてもよい。
このように受信状態判定部44は、路側装置2に関する衛星受信情報に基づいて直接波判定閾値を航法衛星1ごとに設定するが、この直接波判定閾値の設定は、路側装置2から衛星受信情報を取得したタイミングで実施するようにしてもよく、また、歩行者端末装置3の受信状態判定部44において、受信状態判定を行うタイミングで実施するようにしてもよい。
測位計算部45は、情報格納部34に格納された自装置に関する衛星受信情報に基づいて、各航法衛星1の受信状態に応じた測位計算を実施して、自装置の位置情報を取得する。このとき、受信状態が直接波となる航法衛星1の観測値(擬似距離)を優先して測位計算に使用し、選択した航法衛星1の総数が、測位が可能になる必要数に達しない場合には、受信状態が反射波となる航法衛星1の観測値も測位計算に使用する。ここで、受信状態が異なる観測値が混在する場合には、例えば、各航法衛星1の受信状態に応じた重み付けを行った最小自乗法による測位計算を実施するとよい。
例えば、最小自乗測位アルゴリズムでは、受信状態が直接波、反射波となる観測値が混在する場合には、直接波の航法衛星1の誤差比例係数を1に設定し、反射波の航法衛星1の誤差比例係数を2に設定して、測位計算を行うとよい。
なお、本実施形態では、航法衛星1から送信される衛星信号から各航法衛星1の軌道情報を取得するようにしたが、A−GPS(Assisted GPS)におけるアシストサーバーから、セルラー通信などの他の通信媒体を介して、各航法衛星1の軌道情報を取得するようにしてもよい。
また、本実施形態では、車載端末装置5の構成に関する説明を省略するが、車載端末装置5は、入出力部35が、カーナビゲーション装置6との間で情報の入出力を行う点を除き、歩行者端末装置3と同様である。
次に、路側装置2で行われる衛星信号受信時の処理の手順について説明する。図6は、路側装置2で行われる衛星信号受信時の処理の手順を示すフロー図である。
路側装置2では、まず、衛星信号受信部11において、衛星信号を受信すると(ST101でYes)、受信レベル測定部21において、衛星信号受信部11で受信した衛星信号の受信レベルを測定する(ST102)。衛星信号受信部11で受信した衛星信号に含まれる衛星番号および軌道情報、ならびに受信レベル測定部21で測定された受信レベルは、情報格納部15に格納される。
次に、受信状態判定部22において、衛星信号を受信した航法衛星1に関する現在の軌道情報(仰角および方位角)と、可視領域情報とを情報格納部34から取得して、その軌道情報と可視領域情報とに基づいて、航法衛星1が可視領域内に位置するか否かを判定する(ST103)。
ここで、航法衛星1が可視領域内に位置する場合には(ST103でYes)、衛星受信情報管理部23において、受信状態を直接波に設定して(ST104)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報(図3(A)参照)を更新する(ST106)。一方、航法衛星1が可視領域内に位置しない場合に(ST103でNo)、受信状態を反射波に設定して(ST105)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST106)。
次に、衛星受信情報を通知するタイミングか否かを判定し(ST107)、衛星受信情報を通知するタイミングであれば(ST107でYes)、衛星受信情報管理部23において、衛星受信情報を含む通知情報(図3(B)参照)を生成し(ST108)、ITS通信部12において、通知情報を含むメッセージを路歩間通信で歩行者端末装置3に送信する(ST109)。一方、衛星受信情報を通知するタイミングでない場合に(ST107でNo)、衛星信号の受信(ST101)に戻り、衛星受信情報を通知するタイミングになるまで、前記の動作を繰り返す。
次に、歩行者端末装置3で行われるメッセージ受信時の処理の手順について説明する。図7は、歩行者端末装置3で行われるメッセージ受信時の処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置3では、まず、ITS通信部32において、路側装置2から送信される衛星受信情報を含むメッセージを受信すると(ST201でYes)、衛星受信情報管理部42において、メッセージに含まれる衛星受信情報に基づいて、情報格納部34に格納された路側装置2に関する衛星受信情報(図3(C)参照)を更新する処理を行う(ST202)。
次に、衛星受信情報管理部42において、更新がないまま所定時間経過した航法衛星1の衛星受信情報を不要な情報と判断して、その衛星受信情報を情報格納部34から削除する処理を行う(ST203)。
次に、歩行者端末装置3で行われる衛星信号受信時の処理の手順について説明する。図8は、歩行者端末装置3で行われる衛星信号受信時の処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置3では、まず、衛星信号受信部31において、衛星信号を受信すると(ST301でYes)、受信レベル測定部43において、衛星信号受信部31で受信した衛星信号の受信レベルを測定する(ST302)。衛星信号受信部31で受信した衛星信号に含まれる衛星番号および軌道情報、ならびに受信レベル測定部43で測定した受信レベルは、情報格納部34に格納される。
次に、受信状態判定部44において、受信レベル測定部43で測定した受信レベルを直接波判定閾値と比較して、受信した衛星信号が直接波であるか否かを判定する(ST303)。ここで、受信した衛星信号が直接波である場合には(ST303でYes)、受信状態を直接波に設定して(ST304)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報(図3(D)参照)を更新する(ST306)。
一方、受信した衛星信号が直接波でない場合には(ST303でNo)、受信状態を反射波に設定して(ST305)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報(図3(D)参照)を更新する(ST306)。
次に、歩行者端末装置3の測位計算部45で行われる処理の手順について説明する。図9は、歩行者端末装置3の測位計算部45で行われる処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置3では、測位計算部45において、まず、自装置に関する衛星受信情報(図3(D)参照)を情報格納部34から取得して、受信状態が直接波である航法衛星1を全て選択する(ST401)。そして、選択した航法衛星1の総数が、測位が可能になる所定の必要数(例えば4)以上となるか否かを判定する(ST402)。ここで、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となる場合には(ST402でYes)、選択した航法衛星1の観測値(擬似距離)に基づいて測位計算を行って自装置の位置情報を取得する(ST405)。
一方、選択した航法衛星1が必要数未満となる場合には(ST402でNo)、次に、受信状態が反射波である航法衛星1を全て選択する(ST403)。そして、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となるか否かを判定する(ST404)。ここで、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となる場合には(ST404でYes)、選択した航法衛星1の観測値(擬似距離)に基づいて測位計算を行って自装置の位置情報を取得する(ST405)。なお、ST403において、受信状態が反射波である航法衛星1を全て選択するとしたが、直接波である航法衛星1だけでは測位が可能になる必要数に達しない場合に、必要数に不足する数だけ、反射波である航法衛星1を追加するようにしてもよい。
一方、選択した航法衛星1が必要数未満となる場合には(ST404でNo)、測位不能として処理を終了する。
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。図10は、航法衛星1の仰角と衛星信号の受信レベルとの関係を示す説明図である。
第1実施形態では、路側装置2での直接波の受信レベルを含む衛星受信情報を、路側装置2から歩行者端末装置3に送信して、歩行者端末装置3において、路側装置2での直接波の受信レベルに基づいて直接波判定閾値を設定するようにしたが、受信レベルの測定時点から現時点までの経過時間が長すぎる場合には、航法衛星1の位置(仰角、方位角)が現時点の航法衛星1の位置と大きく異なるため、その受信レベルをそのまま、直接波判定閾値を設定する際の基準として用いることができない。
そこで、本変形例では、過去の測定時点での航法衛星1の位置と、その測定時点での直接波の受信レベルと、現時点での航法衛星1の位置とに基づいて、現時点での直接波の受信レベルを推定して、推定した直接波の受信レベルに基づいて直接波判定閾値を設定する。
図10に示すように、衛星信号の受信レベルは、航法衛星1の仰角が大きくなるのに応じて大きくなる特性を有している。そこで、図10に示す仰角と受信レベルとの関係を表すテーブルや、仰角から受信レベルを算出する関係式を用意しておき、このテーブルや関係式を用いて、測定時点での航法衛星1の仰角の場合の受信レベルから、現時点での航法衛星1の仰角の場合の受信レベルを推定する。この受信レベルの推定には、例えば、最小自乗推定などの手法を用いればよい。
なお、図10に示す仰角と受信レベルとの関係は、例えば次式のような近似式で表すことができる。
受信レベル=A×仰角2+B×仰角
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
第1実施形態では、歩行者端末装置3において、受信状態が直接波と反射波とのいずれであるかを判定するようにしたが、本変形例では、受信状態が直接波と回折波と反射波とのいずれであるかを判定する。
回折波は、電波が障害物の直近を通る伝搬経路で発生するものであり、観測値(擬似距離)の信頼性が、反射波より高いものの、直接波より低くなる。このため、受信状態を直接波、回折波および反射波の3つに分けて、測位計算において、直接波となる航法衛星1の観測値を優先して採用し、直接波となる航法衛星1の総数が、測位が可能になる所定の必要数(例えば4)に達しない場合には、回折波となる航法衛星1の観測値を優先して採用することで、測位精度を向上させることができる。
歩行者端末装置3の受信状態判定部44では、直接波を判定する直接波判定閾値Lt1と、回折波を判定する回折波判定閾値Lt2との2つの閾値を設定し、受信レベル測定部21で測定された自装置での受信レベルLpを直接波判定閾値Lt1および回折波判定閾値Lt2と比較して、受信状態が直接波と回折波と反射波とのいずれであるかを判定する。
具体的には、自装置での受信レベルLpが直接波判定閾値Lt1以上となる場合には(Lp≧Lt1)、直接波と判定する。また、自装置での受信レベルLpが、直接波判定閾値Lt1未満となり、かつ、回折波判定閾値Lt2以上となる場合には(Lt2≦Lp<Lt1)、回折波と判定する。受信した衛星信号の受信レベルLpが回折波判定閾値Lt2未満となる場合には(Lp<Lt2)、反射波と判定する。
直接波判定閾値Lt1は、第1実施形態と同様に、路側装置2での直接波の受信レベルに基づいて決定すればよい。また、回折波判定閾値Lt2は、次式のように、直接波判定閾値Lt1から補正値βを減算して算出すればよい。
Lt1=Lr+α
Lt2=Lt1−β=Lr+α−β
ここで、補正値βは、補正値αと同様に、路側装置2と歩行者端末装置3との間での受信特性やレベル測定精度の違いを反映したものであり、補正値αと同様の要領で決定すればよい。ちなみに、回折波の受信レベルは直接波の受信レベルより3乃至4(dBHz)程度低下し、反射波の受信レベルは直接波の受信レベルより5乃至6(dBHz)程度低下することから、この受信レベルの低下状況に基づいて、補正値βを決定することができる。
次に、第2実施形態に係る歩行者端末装置3で行われる衛星信号受信時の処理の手順について説明する。図11は、歩行者端末装置3で行われる衛星信号受信時の処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置3では、まず、第1実施形態(図8参照)と同様に、衛星信号の受信(ST301)および受信レベルの測定(ST302)を行う。
次に、受信状態判定部44において、受信レベル測定部43で測定した受信レベルを直接波判定閾値と比較して、受信した衛星信号が直接波であるか否かを判定する(ST303)。ここで、受信した衛星信号が直接波である場合には(ST303でYes)、受信状態を直接波に設定して、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST306)。
一方、衛星信号を直接波で受信していない場合には(ST303でNo)、次に、受信レベル測定部43で測定した受信レベルを回折波判定閾値と比較して、受信した衛星信号が回折波であるか否かを判定する(ST321)。ここで、受信した衛星信号が回折波である場合には(ST321でYes)、受信状態を回折波に設定して(ST322)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST306)。
一方、受信した衛星信号が回折波でない場合には(ST321でNo)、受信状態を反射波に設定して、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST306)。
次に、第2実施形態に係る歩行者端末装置3の測位計算部45で行われる処理の手順について説明する。図12は、歩行者端末装置3の測位計算部45で行われる処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置3では、測位計算部45において、まず、自装置に関する衛星受信情報(図3(D))を情報格納部34から取得して、受信状態が直接波である航法衛星1を全て選択する(ST401)。そして、選択した航法衛星1の総数が、測位が可能になる所定の必要数(例えば4)以上となるか否かを判定する(ST402)。ここで、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となる場合には(ST402でYes)、選択した航法衛星1の観測値(擬似距離)に基づいて測位計算を行って自装置の位置情報を取得する(ST405)。
一方、選択した航法衛星1の総数が必要数未満となる場合には(ST402でNo)、次に、受信状態が回折波である航法衛星1を全て選択する(ST421)。そして、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となるか否かを判定する(ST422)。ここで、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となる場合には(ST422でYes)、選択した航法衛星1の測定結果(擬似距離)に基づいて測位計算を行って自装置の位置情報を取得する(ST405)。なお、ST421において、受信状態が回折波である航法衛星1を全て選択するとしたが、直接波である航法衛星1だけでは測位が可能になる必要数に達しない場合に、必要数に不足する数だけ、回折波である航法衛星1を追加するようにしてもよい。
一方、選択した航法衛星1が必要数未満となる場合には(ST422でNo)、次に、受信状態が反射波である航法衛星1を全て選択する(ST403)。そして、選択した航法衛星1の総数が必要数以上となるか否かを判定する(ST404)。ここで、選択した航法衛星1が必要数以上となる場合には(ST404でYes)、選択した航法衛星1の測定結果(擬似距離)に基づいて測位計算を行う(ST405)。なお、ST403において、必要数に不足する数だけ、反射波である航法衛星1を追加するようにしてもよい。
一方、選択した航法衛星1が必要数未満となる場合には(ST404でNo)、測位不能として処理を終了する。
このように本実施形態では、測位計算において、直接波となる航法衛星1の観測値(擬似距離)を優先して採用し、直接波となる航法衛星1の総数が、測位が可能になる必要数に達しない場合に、回折波となる航法衛星1の観測値を優先して採用する。このため、測位計算では、受信状態が異なる観測値が混在する場合があり、この場合、受信状態に応じた重み付けを行った測位計算を実施するとよい。
例えば、最小自乗測位アルゴリズムでは、受信状態がそれぞれ直接波、回折波および反射波となる観測値が混在する場合には、直接波の航法衛星1の誤差比例係数を1に設定し、回折波の航法衛星1の誤差比例係数を2に設定し、反射波の航法衛星1の誤差比例係数を3に設定して、測位計算を行うとよい。
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。図13は、第2実施形態の変形例に係る路側装置2の可視領域を示す説明図である。
第2実施形態では、路側装置2において、受信した衛星信号が直接波か反射波かを判定して、直接波の受信レベルを歩行者端末装置3に提供し、歩行者端末装置3において、路側装置2での直接波の受信レベルに基づいて、直接波を判定する直接波判定閾値Lt1と、回折波を判定する回折波判定閾値Lt2とを設定して、この2つの閾値Lt1,Lt2に基づいて、受信状態が直接波と回折波と反射波とのいずれであるかを判定するようにしたが、本変形例では、路側装置2において、受信した衛星信号が直接波と回折波と反射波とのいずれであるかを判定して、直接波の受信レベルおよび回折波の受信レベルを歩行者端末装置3に提供し、歩行者端末装置3において、路側装置2での直接波の受信レベルに基づいて直接波判定閾値Lt1を設定し、路側装置2での回折波の受信レベルに基づいて回折波判定閾値Lt2を設定する。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、図2に示したように、天空を可視領域と不可視領域とに区分して、航法衛星1が可視領域に位置するか否かに応じて、受信した衛星信号が直接波と反射波とのいずれであるかを判定するようにしたが、本変形例では、図13に示すように、可視領域と不可視領域との境界部分に回折波領域を設定し、回折波領域を除く可視領域を直接波領域に設定して、航法衛星1が直接波領域および回折波領域に位置するか否かにより、受信した衛星信号が直接波と回折波と反射波とのいずれであるかを判定する。
次に、第2実施形態の変形例に係る路側装置2で行われる衛星信号受信時の処理の手順について説明する。図14は、路側装置2で行われる衛星信号受信時の処理の手順を示すフロー図である。
路側装置2では、まず、第1実施形態(図6参照)と同様に、衛星信号の受信(ST101)および受信レベルの測定(ST102)を行う。
そして、受信状態判定部22において、衛星信号を受信した航法衛星1に関する現在の軌道情報(仰角および方位角)と、可視領域情報とを情報格納部から取得して、その軌道情報と可視領域情報とに基づいて、航法衛星1が直接波領域内に位置するか否かを判定する(ST121)。
ここで、航法衛星1が直接波領域内に位置する場合に(ST121でYes)、衛星受信情報管理部23において、受信状態を直接波に設定して(ST122)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST106)。一方、航法衛星1が直接波領域内に位置しない場合に(ST121でNo)、次に、航法衛星1が回折波領域内に位置するか否かを判定する(ST123)。ここで、航法衛星1が回折波領域内に位置する場合に(ST123でYes)、受信状態を回折波に設定して(ST124)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST106)。一方、航法衛星1が回折波領域内に位置しない場合に(ST123でNo)、受信状態を反射波に設定して(ST125)、対象となる航法衛星1の衛星受信情報を更新する(ST106)。
以降の処理(ST107〜ST109)は第1実施形態(図6参照)と同様である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図15は、第3実施形態に係る路側装置2の概略構成を示すブロック図である。
第1実施形態では、路側装置2において、航法衛星1の位置と可視領域とを比較することで、衛星信号を直接波で受信したか否かを判定するようにしたが、可視領域が変化する場合がある。例えば、建造物が新たに建造されるなどして障害物の状況が変化すると、可視領域が部分的に変化する。また、衝突物や地震などによる外力により、路側装置2、特に衛星信号受信部11の姿勢が変化した場合には、可視領域が全体的に変化する。このように可視領域が変化すると、直接波か否かの判定を精度よく行うことができない。
そこで、本実施形態では、路側装置2に可視領域補正部25が設けられている。この可視領域補正部25では、可視領域情報および航法衛星1の位置情報と、受信レベル測定部21で測定された受信レベルとの対応に基づいて、航法衛星1が可視領域に位置するのに受信レベルが反射波の受信レベルである、あるいは、航法衛星1が不可視領域に位置するのに受信レベルが直接波の受信レベルであるといった異常により可視領域の変化を検知して、その検知結果に基づいて可視領域を補正する。
なお、路側装置2のその他の構成は第1実施形態(図4参照)と同様である。また、歩行者端末の構成は第1実施形態(図5参照)と同様である。
次に、路側装置2の可視領域補正部25で行われる処理の概要について説明する。図16は、路側装置2の可視領域補正部25で行われる処理の概要を示す説明図である。図17は、路側装置2の姿勢が変化した場合の例を示す説明図である。図18は、障害物が追加された場合の例を示す説明図である。
航法衛星1は時間の経過に伴って移動し、航法衛星1が可視領域に位置する場合には、測定された受信レベルは直接波の受信レベルとなり、航法衛星1が不可視領域に位置する場合には、測定された受信レベルが反射波の受信レベルとなる。
ここで、建造物が新たに建造されるなどして障害物が追加された場合には、可視領域で異常な測定結果が得られる。すなわち、航法衛星1が可視領域に位置するにも拘わらず、測定された受信レベルが反射波の受信レベルとなる。一方、建造物が撤去されるなどして障害物が除去された場合には、不可視領域で異常な測定結果が得られる。すなわち、航法衛星1が不可視領域に位置するにも拘わらず、測定された受信レベルが直接波の受信レベルとなる。また、路側装置2の姿勢が変化した場合にも、可視領域で異常な測定結果となったり、不可視領域で異常な測定結果となったりする。
また、不可視領域で正常な測定結果が得られたときの航法衛星1の位置の中で直近の位置(最も新しい位置)を取得して、この航法衛星1の位置(第1の位置)と、可視領域または不可視領域で異常な測定結果が得られたときの航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔を求めると、この間隔の大小により、障害物の状況の変化(障害物の追加や除去)と、路側装置2の姿勢の変化とを判別することができる。
図16(A)は、建造物が新たに建造されるなどして障害物が追加された場合である。この場合、不可視領域で正常な測定結果が得られた後に、一旦、可視領域で正常な測定結果が得られ、その後、可視領域で異常な測定結果が得られる。このため、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で最も新しい直近の位置(第1の位置)と、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔が大きくなる。これにより、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置に障害物が追加されたものと判断することができる。そこで、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置が除外されるように可視領域を縮小する補正を行う。
図17に示す例で説明すると、図17(A−1)に示す航法衛星1の位置が、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で直近の位置(第1の位置)であり、図17(A−2)に示す航法衛星1の位置が、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)であり、図17(A−1)に示す航法衛星1の位置と図17(A−2)に示す航法衛星1の位置との間隔が大きくなる。このため、図17(A−2)に示す航法衛星1の第2の位置に障害物が追加されたものと判断して、図17(B)に示すように、航法衛星1の第2の位置が除外されるように可視領域を縮小する補正を行う。
図16(B)は、建造物が撤去されるなどして障害物が除去された場合である。この場合、不可視領域で正常な測定結果が得られた後に、一旦、可視領域で正常な測定結果が得られ、その後、不可視領域で異常な測定結果が得られる。このため、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で最も新しい直近の位置(第1の位置)と、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔が大きくなる。これにより、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置に存在した障害物が除去されたものと判断することができる。そこで、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の第2の位置が含まれるように可視領域を拡大する補正を行う。
図16(C)は、路側装置2の姿勢が変化した場合である。この場合、不可視領域で正常な測定結果が得られた直後に、不可視領域で異常な測定結果が得られる。このため、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で最も新しい直近の位置(第1の位置)と、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔が小さくなる。これにより、路側装置2の姿勢が変化して、可視領域が全体的にずれたものと判断することができる。そこで、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の第2の位置が含まれるように可視領域を全体的にずらす補正を行う。
図18に示す例で説明すると、図18(A−1)に示す航法衛星1の位置が、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で直近の位置(第1の位置)であり、図18(A−2)に示す航法衛星1の位置が、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)であり、図18(A−1)に示す航法衛星1の位置と図18(A−2)に示す航法衛星1の位置との間隔が小さくなる。このため、路側装置2の姿勢が変化して、可視領域が全体的にずれたものと判断して、図18(B)に示すように、航法衛星1の第1の位置が含まれず第2の位置が含まれるように可視領域を全体的にずらす補正を行う。
図16(D)も、路側装置2の姿勢が変化した場合である。この場合、不可視領域で正常な測定結果が得られた直後に、可視領域で異常な測定結果が得られる。このため、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で最も新しい直近の位置(第1の位置)と、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔が小さくなる。これにより、路側装置2の姿勢が変化して、可視領域が全体的にずれたものと判断することができる。そこで、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の第2の位置が除外されるように可視領域を全体的にずらす補正を行う。
次に、路側装置2の可視領域補正部25で行われる処理の手順について説明する。図19は、路側装置2の可視領域補正部25で行われる処理の手順を示すフロー図である。
まず、可視領域で異常な測定結果となる、すなわち、可視領域に位置するにも拘わらず、測定された受信レベルが反射波の受信レベルとなる航法衛星1があるか否かを判定する(ST501)。
ここで、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1がある場合には(ST501でYes)、次に、その航法衛星1について、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で直近の位置(最も新しい位置)を取得して、この航法衛星1の位置(第1の位置)と、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔Dを求めて、その間隔Dが所定の閾値Dt以上であるか否かを判定する(ST503)。
ここで、間隔Dが所定の閾値Dt以上である場合(ST503でYes)、すなわち、図16(A)に示す場合には、障害物が追加されたものと判断して、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)が可視領域から除外されるように可視領域を縮小する補正を行う(ST505)。
一方、間隔Dが所定の閾値Dt未満である場合(ST503でNo)、すなわち、図16(D)に示す場合には、路側装置2の姿勢が変化したものと判断して、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)が可視領域から除外されるように可視領域を全体的にずらす補正を行う(ST507)。
また、可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1がない場合には(ST501でNo)、次に、不可視領域で異常な測定結果となる、すなわち、不可視領域に位置するにも拘わらず、測定された受信レベルが直接波の受信レベルとなる航法衛星1があるか否かを判定する(ST502)。
ここで、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1がある場合には(ST502でYes)、次に、その航法衛星1について、不可視領域で正常な測定結果となる航法衛星1の位置の中で直近の位置(最も新しい位置)を取得して、この航法衛星1の位置(第1の位置)と、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)との間隔Dを求めて、その間隔Dが所定の閾値Dt以上であるか否かを判定する(ST504)。
ここで、間隔Dが所定の閾値Dt以上である場合(ST504でYes)、すなわち、図16(B)に示す場合には、障害物が除去されたものと判断して、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)が可視領域に含まれるように可視領域を拡大する補正を行う(ST506)。
一方、間隔Dが所定の閾値Dt未満である場合(ST504でNo)、すなわち、図16(C)に示す場合には、路側装置2の姿勢が変化したものと判断して、不可視領域で異常な測定結果となる航法衛星1の位置(第2の位置)が可視領域に含まれるように可視領域を全体的にずらす補正を行う(ST507)。
このようにして可視領域の補正が行われるが、この可視領域の補正を定期的に実施することで、障害物の状況が変化したり路側装置2の姿勢が変化したりした場合でも、可視領域の精度を維持することができる。また、路側装置2の設置時などで設定された当初の可視領域の精度が低い場合、特に可視領域の境界部分の精度が低い場合に、可視領域の補正を定期的に実施して、可視領域を随時更新することで、可視領域の境界部分の精度を向上させることができる。
なお、本実施形態では、航法衛星1の位置が可視領域か否かの情報と受信レベルの異常により可視領域の変化を検知して、可視領域を補正するようにしたが、路側装置2の姿勢の変化による可視領域の変化に対しては、傾斜センサーにより路側装置2の傾き(姿勢変化)を検出し、路側装置2の傾きの方向および角度に基づいて、可視領域をずらす補正を行うようにしてもよい。また、定期的に路側装置2の上空をカメラで撮像して、その撮像画像の画像処理により、可視領域の変化を検知するようにしてもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図20は、第4実施形態に係る無線通信システム(衛星測位システム)の全体構成図である。
路側装置2は、通常、道路の交差点ごとに設置されており、この複数の路側装置2では、可視領域(衛星信号を直接波で受信可能な天空範囲)が互いに異なる。このため、ある路側装置2では、ある航法衛星1の衛星信号を直接波で受信することができない場合でも、少し離れた別の路側装置2では、その航法衛星1の衛星信号を直接波で受信することができる場合がある。
そこで、本実施形態では、各航法衛星1の衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを含む衛星受信情報を、複数の路側装置2の間で交換する。これにより、衛星信号を直接波で受信することができない路側装置2において、衛星信号を直接波で受信することができる路側装置2から、衛星信号を直接波で受信した場合の受信レベルを取得して、周辺の歩行者端末装置3や車載端末装置5に提供することができる。
この場合、受信環境が類似する、すなわち、衛星信号を直接波で受信できた場合に受信レベルが同等となる範囲内に存在する路側装置2の間で衛星受信情報を交換するとよい。
また、路側装置2は、路側ネットワークを介して相互に接続されており、この路側ネットワークを介して、周辺に存在する複数の路側装置2の間で衛星受信情報を交換することができる。また、センター装置8を介して衛星受信情報を交換するようにしてもよい。なお、比較的近い距離に設置されている路側装置2の間では、ITS通信により衛星受信情報を含むメッセージをブロードキャストで送信することで、衛星受信情報を交換するようにしてもよい。また、セルラー通信により路側装置2の間で衛星受信情報を交換するようにしてもよい。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
例えば、前記の実施形態では、路側装置2、歩行者端末装置3、および車載端末装置5がITS通信により情報交換を行うものとしたが、ITS通信以外の通信方式による無線通信を行うものであってもよい。