JP2017218995A - 気体圧縮機 - Google Patents

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竜介 山田
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英輝 柳川
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Keisuke Nakazawa
圭佑 中澤
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大騎 竹差
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Abstract

【課題】停止されると直ちに冷媒ガスの逆流を防止できる気体圧縮機を提供する。
【解決手段】内部空間と外部空間とを仕切るハウジング10と、ハウジング10の外部から内部への気体の通路となる吸入ポート12aと、吸入ポート12aを通るハウジング10の内部空間への気体(R)の流入を許し、かつ吸入ポート12aを通るハウジング10の外部空間への気体の逆流を防止する逆止弁70と、逆止弁70を介して流入した気体を吸入し圧縮して吐出する圧縮機構部60と、を備える気体圧縮機(100)である。逆止弁70は、気体の流入を許す開放位置と気体の逆流を防止する閉鎖位置とで移動される弁体71と、弁体71を閉鎖位置へ向けて押し付けるばね部材(72)と、を有し、逆止弁70では、吸入ポート12aを最も開放するときのばね部材における全開時ばね荷重Pを0.4(N)以上に設定する。
【選択図】図5

Description

本発明は、気体圧縮機に関する。
空気調和システム(以下、空調システムともいう)は、冷却媒体の循環経路上に気体圧縮機を用いている。その気体圧縮機は、ハウジングの吸入ポートを通じて、低圧の冷媒ガス(気体)を吸入し、吸入した冷媒ガスをハウジングの内部に収容した圧縮機構部で高圧に圧縮し、得られた高圧の冷媒ガスを吐出ポートを通じて外部に吐出する。
空調システムは、気体圧縮機で圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷やして液化し、それを膨張弁で低圧化して蒸発器に送り出し、蒸発器で周囲の空気から吸熱して気化させる際の熱交換により周囲の空気を冷却する。この空調システムは、その気化した低圧の冷媒ガスを気体圧縮機に戻して再び圧縮し、これらの行程を繰り返すことで空気を冷却する。そして、空調システムは、設定温度を維持するように気体圧縮機の駆動と停止とを適宜繰り返す。ここで、気体圧縮機は、停止された際、吐出ポート側の高温で高圧の冷媒ガスが圧縮機構部内を通り吸入ポートから蒸発器側へと逆流する虞がある。すると、空調システムでは、気体圧縮機から逆流する冷媒ガスにより蒸発器等が温められるので、再び駆動する際に気体圧縮機に吸入させる冷媒ガスの温度の上昇を招いてしまう。
このため、気体圧縮機では、停止された際の冷媒ガスの蒸発器側への逆流を防止すべく、吸入ポートに逆止弁を設けているものがある(例えば、特許文献1参照)。この気体圧縮機は、停止された際、逆止弁が吸入ポートを閉鎖するので、吸入ポートを通して蒸発器側へと冷媒ガスが逆流することを逆止弁で防止できる。
特開2003−166486号公報
ところで、空調システムでは、気体圧縮機を停止すると、その直後に騒音が発生してしまう。これは、気体圧縮機において、停止に伴い吸入側の冷媒ガスの圧力が急激に上昇し、その高圧の冷媒ガスを吸入ポートから蒸発器へと逆流させることで、空調システムにおける蒸発器に繋がる配管の急激な圧力変動が生じ、それに伴い騒音が発生するものと考えられる。ここで、気体圧縮機では、吸入ポートに逆止弁を設けているが、上記した吸入側の圧力上昇が急激に生じるので、逆止弁が吸入ポートを閉鎖する前に圧力変動を招く冷媒ガスの逆流が生じていると考えられる。
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたもので、停止されると直ちに冷媒ガスの逆流を防止できる気体圧縮機を提供することを目的とする。
本発明の気体圧縮機は、内部空間と外部空間とを仕切るハウジングと、前記ハウジングの外部から内部への気体の通路となる吸入ポートと、前記吸入ポートを通る前記ハウジングの内部空間への前記気体の流入を許し、かつ前記吸入ポートを通る前記ハウジングの外部空間への前記気体の逆流を防止する逆止弁と、前記逆止弁を介して流入した前記気体を吸入し圧縮して吐出する圧縮機構部と、を備え、前記逆止弁は、前記気体の流入を許す開放位置と前記気体の逆流を防止する閉鎖位置とで移動される弁体と、前記弁体を前記閉鎖位置へ向けて押し付けるばね部材と、を有し、前記逆止弁では、前記吸入ポートを最も開放するときの前記ばね部材における全開時ばね荷重を0.4(N)以上に設定することを特徴とする。
本発明に係る気体圧縮機によれば、停止されると直ちに冷媒ガスの逆流を防止できる。
本発明に係る気体圧縮機の一実施形態に係る実施例1のコンプレッサ100の構成を縦断面で示す説明図である。 図1のI−I線に沿って得られた断面で示す説明図である。 フロントヘッド12におけるフロントサイドブロック20に対向する面を示す説明図である。 図3に示す逆止弁70の周辺を拡大して示す説明図である。 図4のII−II線に沿って得られた断面で示す説明図である。 全開時ばね荷重P(N)およびばね荷重質量比Ra(N/kg)に対する聴感試験結果の関係を示す表である。
以下、本発明に係る気体圧縮機の一例としてのベーンロータリ式コンプレッサ100(以下では単にコンプレッサ100という)について、図面を参照しつつ説明する。
実施例1のコンプレッサ100は、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう車両の空気調和システム(以下では単に空調システムという)の一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等とともに、冷却媒体の循環経路上に設けられる。このコンプレッサ100は、空調システムの蒸発器から気体状の冷却媒体としての冷媒ガスG(気体)を取り入れ、その取り入れた冷媒ガスGを圧縮し、圧縮した冷媒ガスGを空調システムの凝縮器に供給する。凝縮器は、圧縮された冷媒ガスと周囲の空気等との間で熱交換することで放熱させて当該冷媒ガスを液化させ、その高圧で液状の冷媒を膨張弁に送り出す。高圧で液状の冷媒は、膨張弁で低圧化されて蒸発器に送り出される。その低圧の液状の冷媒は、蒸発器で周囲の空気から吸熱して気化し、この気化に伴う熱交換により蒸発器の周囲の空気を冷却する。気化した低圧の冷媒ガスGは、再びコンプレッサ100に取り入れられて圧縮され、以下、上記行程を繰り返す。
そのコンプレッサ100は、図1に示すように、低圧の冷媒ガスGを内部に吸入し、高圧に圧縮して吐出する圧縮機構部60と、圧縮機構部60を内部に収容するハウジング10と、を備える。ハウジング10は、一方の端部が閉じたケース11と、ケース11の開放された端部11bを覆うフロントヘッド12と、を備える。このハウジング10では、フロントヘッド12がケース11の端部11bを覆う状態で、内部に圧縮機構部60を収容する空間を形成する。その圧縮機構部60は、ロータ50(回転体)と回転軸51と5枚のベーン58(図2参照)とシリンダ40とフロントサイドブロック(FB)20とリアサイドブロック(RB)30とを備える。
そのロータ50は、円柱状を呈し、回転軸51が取り付けられ、その軸心Cを回転中心として回転軸51とともに回転可能とされる。各ベーン58は、ロータ50において軸心Cを中心とする回転方向で見て等角度間隔に設けられた5つの溝に進退可能に設けられ、そのロータ50の外周面から突出可能とされる。シリンダ40は、内周面49の断面輪郭形状が概略楕円形状に形成された筒状を呈し、その内周面49でロータ50の外周面を外方から囲む(図2参照)。フロントサイドブロック20とリアサイドブロック30とは、筒状のシリンダ40の各端面および円柱状のロータ50の各端面を覆って設けられる。
このように、圧縮機構部60は、シリンダ40とその一方の端面に対応する端部のフロントサイドブロック20と他方の端面に対応する端部のリアサイドブロック30とで仕切られた空間に、各ベーン58が設けられたロータ50と回転軸51の一部とを収容して構成される。これにより、圧縮機構部60の内部では、軸心C(回転軸51)を中心とする回転対称に、断面輪郭が概略三日月状の2つのシリンダ室53、54が形成される(図2参照)。
その回転軸51では、ロータ50の一方の端面から突出した部分がフロントサイドブロック20の軸受に回転自在に支持されるとともに動力伝達機構80に連結され、ロータ50の他方の端面から突出した部分がリアサイドブロック30の軸受に回転自在に支持される。その動力伝達機構80は、例えば車両のエンジンの駆動力を受けて回転軸51を回転させて、各ベーン58が設けられたロータ50を回転させる。すると、各ベーン58は、図2に示すように、ロータ50の外周面から突出されて、シリンダ40の内周面49に押し当てられる。これにより、各シリンダ室53、54は、ロータ50に等角度間隔に設けられた各ベーン58により複数の圧縮室48に仕切られ、実施例1では5枚のベーン58により5つ(そのうちの1つは両シリンダ室53、54に跨る)の圧縮室48に仕切られる。この各圧縮室48は、各シリンダ室53、54において、ロータ50(回転軸51)の1回転の間に容積が増減することで、吸入行程、圧縮行程、吐出行程という一連のサイクルを行う。その2つのシリンダ室53、54における各吸入行程、各圧縮行程および各吐出行程は、回転軸51の軸心Cを挟んで回転角度180[度]だけずれた範囲に設定されている。これにより、圧縮機構部60は、回転軸51の軸心C回りの1回転の間に、各圧縮室48が吸入行程、圧縮行程、吐出行程という一連のサイクルを2回(2サイクル)行う。
ハウジング10では、図1に示すように、圧縮して高圧とした冷媒ガスGを凝縮器へと吐出する吐出ポート11aがケース11に設けられ、蒸発器からの低圧の冷媒ガスGを内部に吸入する吸入ポート12aがフロントヘッド12に設けられる。このハウジング10の内部には、吸入ポート12aを通じて吸入した低圧の冷媒ガスGが導入される空間である吸入室13と、吐出ポート11aを通じて吐出される高圧の冷媒ガスGが通過する空間である吐出室14と、が設けられる。その吸入室13は、フロントヘッド12と圧縮機構部60のフロントサイドブロック20とにより仕切られて形成され、吐出室14は、ケース11と圧縮機構部60のリアサイドブロック30とにより仕切られて形成される。
吸入室13と各シリンダ室53、54とは、図2に示すように、フロントサイドブロック20に形成した吸入孔22、23を介して、各圧縮室48の容積が増大する行程に通じる。これにより、吸入行程(容積が増大する行程)の圧縮室48に、吸入室13の冷媒ガスGが供給される。また、吐出室14と各圧縮室48とは、シリンダ40に形成した吐出孔44およびリアサイドブロック30に形成した連通孔を介して、各圧縮室48の容積が減少する行程に通じる。これにより、圧縮行程の終盤に相当する吐出行程で、各圧縮室48から高圧の冷媒ガスGが吐出室14に吐出される。図1に示すように、各圧縮室48と吐出室14との間の冷媒ガスGの経路上に、その吐出された冷媒ガスGに混ざった冷凍機油Rを分離するための油分離器65が設けられる。この分離された冷凍機油Rは、吐出室14の冷媒ガスGの圧力が作用して高圧とされ、各ベーン58が設けられたロータ50の各溝の奥(底)側に供給されて各ベーン58のシリンダ40の内周面49への押し当て(所謂ベーン背圧)に利用される。このハウジング10(コンプレッサ100)では、図3に示すように、フロントヘッド12の吸入ポート12aに、吸入室13からの冷媒ガスGの逆流を防止する逆止弁70が設けられる。
逆止弁70は、図5に示すように、吸入ポート12aに形成された円筒状の周壁17に設けられ、弁体71とばね部材としてのコイルスプリング72とストッパ部材73とを備える。その弁体71は、吸入ポート12aの周壁17に内接して設けられ、内接状態を維持しつつ吸入ポート12aの軸心C1方向に移動可能とされる。コイルスプリング72は、無負荷状態において最も伸びて、一端側(一端座巻部)と他端側(他端座巻部)とを接近させる動作(圧縮)に抗する弾性力を発揮する圧縮コイルスプリングで構成される。このコイルスプリング72は、図5を正面視して、下端が吸入ポート12aの底面に接しつつ上端が弁体71に接して設けられ、上方へと押す力を弁体71に付与する。ストッパ部材73は、図5を正面視して、吸入ポート12aの上側に設けられ、弁体71と接することで吸入ポート12a内での当該弁体71の上側の限界位置を規定する。
弁体71が内接する吸入ポート12aの周壁17には、図4に示すように、吸入室13に通じる2つの開口18、19が形成される。その吸入室13では、開口18に通じる第1流路15と、開口19に通じる第2流路16と、が形成される。その第1流路15は、一方のシリンダ室53に通じる吸入孔22(図2参照)と吸入端部15aで接続し、第2流路16は、他方のシリンダ室54に通じる吸入孔23(図2参照)と吸入端部16aで接続する。このため、吸入ポート12aの周壁17は、開口18から第1流路15および吸入孔22を経て一方のシリンダ室53に通じる経路と、開口19から第2流路16および吸入孔23を経て他方のシリンダ室54に通じる経路と、に分岐させている。
逆止弁70の弁体71は、図5に示すように、圧縮機構部60が作動していないときは、コイルスプリング72によりストッパ部材73に押し当てられて、周壁17の分岐させる箇所(開口18、19)よりも上方に位置する。このとき、弁体71は、自らよりも上方の空間と、開口18、19と、を閉鎖(開度がゼロである)する。これを、以下では弁体71における閉鎖位置という。そして、逆止弁70の弁体71は、圧縮機構部60が作動すると、吸入室13が負圧になり、コイルスプリング72の押す力に抗して下方へと吸入ポート12aの軸心C1に沿って移動される。すると、弁体71は、自らよりも上方の空間を、開口18、19を介して第1流路15や第2流路16と通じさせ、吸入孔22、23を経てシリンダ室53、54に通じさせる。これを、以下では弁体71における開放位置という。ここで、吸入室13では、圧縮機構部60の回転軸51の回転速度が速くなるほど圧力が低下するので、コイルスプリング72の押す力に抗して弁体71が下方に移動する量が大きくなる。すると、弁体71は、圧縮機構部60の回転軸51の回転速度が速くなるほど下方に移動し、開口18、19のうちの実質的に遮っていない面積(弁体71の開度)を増大させる。
このように、弁体71(逆止弁70)は、圧縮機構部60が作動していないときは閉鎖位置となり、蒸発器と吸入室13との間での冷媒ガスGの行き来を防止する。また、弁体71(逆止弁70)は、圧縮機構部60が作動すると開放位置となり、冷媒ガスGの蒸発器から吸入室13への流入を可能としつつ、弁体71の開度を変化させる。このため、弁体71(逆止弁70)は、圧縮機構部60が作動していないとき(閉鎖位置)の冷媒ガスGの蒸発器への逆流を防止する機能と、圧縮機構部60が作動しているとき(開放位置)の冷媒ガスGの吸入室13への流量を調整する機能と、を有する。
ここで、従来の気体圧縮機(コンプレッサ)の技術の課題について説明する。この技術の課題は、実施例1のコンプレッサ100であっても逆止弁70のコイルスプリング72における全開時ばね荷重Pやばね荷重質量比Ra(図6参照)を後述するように設定しなければ同様の課題を有するので、コンプレッサ100を用いて説明する。コンプレッサ100は、上述した空調システムの一部を構成しており、その動作に応じて適宜駆動および停止される。その空調システムでは、コンプレッサ100が停止されると、その停止の直後に騒音が発生してしまう。これは、次のことが原因と考えられる。
冷媒ガスGのような流体を循環させる循環経路では、その途中で循環が遮断されると、流体の運動エネルギーにより遮断された箇所の圧力が急激に上昇することが知られている。空調システムに用いられたコンプレッサ100では、停止されると、吸入室13の冷媒ガスGの圧力が急激に上昇し、吸入室13と吸入ポート12aの外側(蒸発器に繋がる配管)との間に圧力差が生じる。すると、コンプレッサ100では、その高圧の冷媒ガスGが吸入ポート12aから蒸発器へと逆流し、当該蒸発器に繋がる配管における圧力変動を招いてしまう。すると、その配管では、圧力変動により当該配管を震わせる加振力が発生することで衝撃音が発生し、この衝撃音を騒音として伝えてしまう。ここで、コンプレッサ100では、吸入ポート12aに逆止弁70を設けて冷媒ガスGの逆流を防止しているが、上記した吸入室13の圧力上昇が急激に生じるので、逆止弁70が吸入ポート12aを閉鎖する前に圧力変動を招く冷媒ガスGの逆流が生じていると考えられる。
本発明のコンプレッサ100は、このような騒音の発生を防止するために、停止されると直ちに吸入ポート12aを閉鎖すべく、逆止弁70の弁体71が直ちに閉鎖位置となるように構成する。具体的には、次のような構成とする。コンプレッサ100では、停止された際に弁体71を直ちに閉鎖位置へと動き出させる観点から、逆止弁70のコイルスプリング72における全開時ばね荷重P(N)を後述する所定値以上とする。その全開時ばね荷重P(N)とは、逆止弁70において弁体71が最も後退して2つの開口18、19すなわち吸入ポート12aが最も開放された状態、換言するとコイルスプリング72が最も撓んだ(縮んだ)状態である全開時(全開状態)において、コイルスプリング72が弁体71を閉鎖位置へ向けて押す力を言う。ここで、コンプレッサ100では、停止されると、動作時と比較して吸入室13の負圧が弱まり(圧力が高くなり)、逆止弁70の弁体71よりも上方の空間との圧力の差が小さくなる。このため、コンプレッサ100では、当該圧力の差よりもコイルスプリング72における全開時ばね荷重P(N)が大きくなると弁体71が閉鎖位置へと動き出すので、全開時ばね荷重P(N)を大きくすることで弁体71の閉鎖位置への動き出しを早めることができる。
出願人は、この逆止弁70のコイルスプリング72における全開時ばね荷重P(N)の所定値の設定のために、次のように騒音の発生の有無の試験を行った。その試験は、車両の空調システムを構成すべくコンプレッサ100を設け、その車内における騒音の確認を人の聴覚(聴感)により行う。そのコンプレッサ100では、上記した構成の逆止弁70において0.8gの弁体71を用いるものとし、全開まで撓んだ(縮んだ)状態のコイルスプリング72における全開時ばね荷重P(N)を段階的に変化させる。この聴覚(聴感)による試験結果(聴感試験結果)を図6の表に示す。その図6の表は、左欄に段階的に変化させた全開時ばね荷重P(N)を示し、中欄にばね荷重質量比Ra(N/kg)を示し、右欄に聴感試験結果を示す。そのばね荷重質量比Raは、コイルスプリング72における全開時ばね荷重P(N)の弁体71の質量(kg)に対する比、すなわち全開時ばね荷重Pを弁体71の質量で除算した値とする。また、聴感試験結果は、上記したように車内での人の聴覚での騒音の発生の有無を判断したもので、騒音が発生している場合には×で、騒音が気にならない場合には△で、騒音を確認できない場合には○で、それぞれ示す。その騒音が気にならない(△)とは、この聴感試験は騒音の確認のために行っているため当該騒音に敏感になっているが、意識しなければなかなか解らない程度まで低減された状態をいう。
この聴感試験では、図6に示すように、全開時ばね荷重Pを、0.4(N)とすることで騒音が気にならなくなり(△)、このときのばね荷重質量比Raが500(N/kg)である。また、この聴感試験では、全開時ばね荷重Pを、0.7(N)とすることで騒音が確認できなくなり(○)、このときのばね荷重質量比Raが875(N/kg)である。このため、本発明のコンプレッサ100は、基本的に実質的な騒音の発生を防止すべく全開時ばね荷重Pを0.4(N)以上とし、より好適には全開時ばね荷重Pを0.7(N)以上とすることで騒音の発生をより確実に防止する。また、本発明のコンプレッサ100は、基本的に実質的な騒音の発生を防止すべくばね荷重質量比Raを500(N/kg)以上とし、より好適にはばね荷重質量比Raを875(N/kg)以上とすることで騒音の発生をより確実に防止する。
ここで、全開時ばね荷重Pは、コイルスプリング72におけるばね定数(N/mm)と、全開状態のコイルスプリング72における撓み(縮み)量(全開撓み量)(mm)と、を乗算した値で示すことができる。このため、全開時ばね荷重Pの設定は、ばね定数を高めることと、全開撓み量を大きくすることと、を適宜組み合わせることで実現できる。実施例1のコンプレッサ100(逆止弁70)は、従来のコンプレッサ(気体圧縮機)に比べてばね定数を高めることで、全開時ばね荷重Pを上記した所定値(0.4(N)で、より好適には0.7(N))以上とする。また、実施例1のコンプレッサ100(逆止弁70)は従来のコンプレッサ(気体圧縮機)に比べてばね定数を高めることで、ばね荷重質量比Raを上記した所定値(500(N/kg)で、より好適には875(N/kg))以上とする。ここで、実施例1のコンプレッサ100(逆止弁70)は、全開時ばね荷重Pを0.4(N)としかつばね荷重質量比Raを500(N/kg)とすることや、全開時ばね荷重Pを0.7(N)としかつばね荷重質量比Raを875(N/kg)とすることのように、全開時ばね荷重Pとばね荷重質量比Raとの双方を併せて設定してもよい。この双方を併せた設定には、弁体71の質量(kg)を鑑みてばね定数や全開撓み量を設定することで実現できる。実施例1のコンプレッサ100は、一例として、全開時ばね荷重Pを0.4(N)としかつばね荷重質量比Raを500(N/kg)とする。
この実施例1のコンプレッサ100では、上述したように、停止されて圧縮機構部60が作動していないときは、逆止弁70において弁体71がコイルスプリング72によりストッパ部材73に押し当てられた閉鎖位置となる。また、コンプレッサ100では、起動されて圧縮機構部60が作動すると、吸入室13が負圧になることで逆止弁70において弁体71がコイルスプリング72の押す力に抗して下方へ移動した開放位置となる。そして、コンプレッサ100は、吸入ポート12aを通じて低圧の冷媒ガスGを吸入室13に流入させ、その冷媒ガスGを圧縮機構部60で圧縮して吐出室14へと吐出し、その高圧の冷媒ガスGを吐出ポート11aを通じて吐出する。すると、空調システムは、コンプレッサ100で圧縮した冷媒ガスGを用いて上記行程を繰り返すことで車内の冷却を行う。
その空調システムは、車内が設定温度となるとコンプレッサ100を停止させて過度の冷却を防止し、車内が設定温度よりもある程度高い温度となると再びコンプレッサ100を駆動することを繰り返す。このとき、コンプレッサ100は、逆止弁70における全開時ばね荷重P(N)を上記した所定値以上としているので、停止されると直ちに弁体71が閉鎖位置へと動き出し、逆止弁70を直ちに閉鎖状態として吸入ポート12aを遮断する。これにより、このコンプレッサ100を用いた空調システムでは、コンプレッサ100を停止する際に騒音が発生することを防止できる。
本発明に係る実施例1のコンプレッサ100では、以下の各効果を得ることができる。
コンプレッサ100は、逆止弁70における全開時ばね荷重Pを0.4(N)以上としているので、停止されると直ちに弁体71を閉鎖位置へと動き出させることができ、逆止弁70を直ちに閉鎖状態として吸入ポート12aを遮断できる。このため、コンプレッサ100は、停止されると直ちに吸入ポート12aから蒸発器への高圧の冷媒ガスGの逆流を防止でき、用いられた空調システムでの騒音の発生を防止できる。
コンプレッサ100は、逆止弁70における全開時ばね荷重Pをより好適な例として0.7(N)以上とするので、停止された際の弁体71の閉鎖位置への動き出しをより早めることができ、逆止弁70をより早く閉鎖状態として吸入ポート12aを遮断できる。このため、コンプレッサ100は、停止された直後の吸入ポート12aから蒸発器への高圧の冷媒ガスGの逆流をより確実に防止でき、用いられた空調システムでの騒音の発生をより確実に防止できる。
コンプレッサ100は、逆止弁70におけるばね荷重質量比Raを500(N/kg)以上としているため、弁体71の質量(kg)の影響も考慮しているので、停止された際の弁体71の閉鎖位置への動き出しを確実に早めることができ、逆止弁70を直ちに閉鎖状態として吸入ポート12aを遮断できる。このため、コンプレッサ100は、停止されると直ちに吸入ポート12aから蒸発器への高圧の冷媒ガスGの逆流を防止でき、用いられた空調システムでの騒音の発生を防止できる。加えて、コンプレッサ100は、逆止弁70において、全開時ばね荷重Pを0.4(N)以上としかつばね荷重質量比Raを500(N/kg)以上とすることで、停止された際の弁体71の閉鎖位置への動き出しをより確実に早めることができる。
コンプレッサ100は、逆止弁70におけるばね荷重質量比Raをより好適な例として875(N/kg)以上とするため、弁体71の質量(kg)の影響も考慮しているので、停止された際の弁体71の閉鎖位置への動き出しをより確実に早めることができ、逆止弁70をより早く閉鎖状態として吸入ポート12aを遮断できる。このため、コンプレッサ100は、停止された直後の吸入ポート12aから蒸発器への高圧の冷媒ガスGの逆流をより確実に防止でき、用いられた空調システムでの騒音の発生をより確実に防止できる。加えて、コンプレッサ100は、逆止弁70において、全開時ばね荷重Pを0.7(N)以上としかつばね荷重質量比Raを875(N/kg)以上とすることで、停止された際の弁体71の閉鎖位置への動き出しをより確実に早めることができる。
コンプレッサ100は、逆止弁70における全開時ばね荷重Pを設定するために、従来のコンプレッサ(気体圧縮機)に比べてコイルスプリング72のばね定数(N/mm)を高めている。このため、コンプレッサ100は、ばね定数の異なるコイルスプリング72を用いるだけで従来のコンプレッサからの設計変更を招くことなく実現でき、従来のコンプレッサから大きくなることを防止できる。また、コンプレッサ100は、従来のコンプレッサに比べて、逆止弁70において閉鎖位置での弁体71のストッパ部材73への押し当て力(全閉時ばね荷重)を高めることができるので、起動時の各ベーン58のロータ50からの飛び出しを向上させることができる。これは、以下のことによる。従来のコンプレッサでは、停止されていると吸入室13の圧力がベーン背圧よりも高くなることで、ロータ50が回転しても各ベーン58が適切に飛び出さなくなることがある。これに対し、コンプレッサ100は、従来のコンプレッサに比べて全閉時ばね荷重が高いため、駆動された際の逆止弁70の開くタイミングを従来のコンプレッサよりも遅くできる。これにより、コンプレッサ100は、起動された圧縮機構部60の作動により吸入室13が負圧となることを補助することができ、吸入室13の圧力をベーン背圧よりも低くすることができるので、起動時の各ベーン58のロータ50からの飛び出しを向上させることができる。
コンプレッサ100は、従来のコンプレッサ(気体圧縮機)に比べてコイルスプリング72の全開撓み量(mm)を大きくすることで、逆止弁70における全開時ばね荷重Pを設定することができる。このため、コンプレッサ100は、従来のコンプレッサから逆止弁70におけるコイルスプリング72の全開撓み量を調整するだけで容易に実現できる。
コンプレッサ100は、従来のコンプレッサ(気体圧縮機)に比べてコイルスプリング72のばね定数(N/mm)を高めつつ全開撓み量(mm)を大きくすることで、逆止弁70における全開時ばね荷重Pを設定することができる。このため、コンプレッサ100は、全閉時ばね荷重や全体の大きさやストッパ部材73の強度等を鑑みて、適宜ばね定数と全開撓み量とを調整して全開時ばね荷重Pを設定できるので、設計の自由度を確保して最適な組み合わせを模索できる。
コンプレッサ100は、停止されると直ちに弁体71を閉鎖位置として吸入ポート12aから蒸発器への高圧の冷媒ガスGの逆流を防止できるので、従来のコンプレッサに比べて用いられた空調システムの効率を向上できる。これは、以下のことによる。吸入ポート12aから逆流する高圧の冷媒ガスGは高温であるため、この冷媒ガスGが蒸発器やそこに繋がる配管の温度上昇を招く。ここで、空調システムでは、蒸発器で空気の冷却を行うので車内の温度上昇を招く虞があるとともに、蒸発器やそこに繋がる配管の温度上昇に基づきコンプレッサを再び駆動するタイミングを判断するので当該タイミングが早まる虞がある。また、空調システムでは、蒸発器やそこに繋がる配管の温度が上昇すると、そこに存在する冷媒ガスGの温度上昇を招き、再び駆動する際にコンプレッサが吸入する冷媒ガスGの温度の上昇を招いてしまうので、コンプレッサでの圧縮効率等を低下させる虞がある。このため、コンプレッサ100は、従来のコンプレッサに比べて用いられた空調システムの効率を向上できる。
したがって、コンプレッサ100は、停止されると直ちに冷媒ガスGの逆流を防止できる。
以上、本発明の気体圧縮機(コンプレッサ)を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲や各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
なお、実施例1では、本発明に係る気体圧縮機(コンプレッサ)の一例としてのコンプレッサ100について説明した。しかしながら、内部空間と外部空間とを仕切るハウジングと、前記ハウジングの外部から内部への気体の通路となる吸入ポートと、前記吸入ポートを通る前記ハウジングの内部空間への前記気体の流入を許し、かつ前記吸入ポートを通る前記ハウジングの外部空間への前記気体の逆流を防止する逆止弁と、前記逆止弁を介して流入した前記気体を吸入し圧縮して吐出する圧縮機構部と、を備え、前記逆止弁は、前記気体の流入を許す開放位置と前記気体の逆流を防止する閉鎖位置とで移動される弁体と、前記弁体を前記閉鎖位置へ向けて押し付けるばね部材と、を有し、前記逆止弁では、前記吸入ポートを最も開放するときの前記ばね部材における全開時ばね荷重を0.4(N)以上に設定する気体圧縮機であればよく、実施例1の構成に限定されない。
また、実施例1では、逆止弁70において吸入ポート12aを形成する周壁17に開口18、19を設ける構成としているが、例えば、開口18、19と同様の開口を有し弁体71を移動可能に受け入れる円筒状のケースを吸入ポート12aに設けてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。また、周壁17(ケースの場合も同様)に設ける開口の数は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
さらに、実施例1では、0.8gの弁体71を用いて全開時ばね荷重Pを0.7(N)以上することでばね荷重質量比Raを875(N/kg)以上としていたが、ばね荷重質量比Raを875(N/kg)以上とするものであれば、弁体71の質量や全開時ばね荷重Pは適宜設定してもよく、実施例1の構成に限定されない。同様に、逆止弁70において、ばね荷重質量比Raを500(N/kg)以上とするものであれば、弁体71の質量や全開時ばね荷重Pは適宜設定してもよく、実施例1の構成に限定されない。
実施例1では、コンプレッサ100をベーンロータリ形式の気体圧縮機としているが、本発明に係る気体圧縮機は、例えば、斜板式の気体圧縮機、スクロール形式の気体圧縮機等のようにベーンロータリ形式以外の形式の気体圧縮機でもよく、実施例1の構成に限定されない。
10 ハウジング
12a 吸入ポート
60 圧縮機構部
70 逆止弁
71 弁体
72 (ばね部材の一例としての)コイルスプリング
100 (気体圧縮機の一例としての)ベーンロータリ式コンプレッサ
G (気体の一例としての)冷媒ガス
P 全開時ばね荷重
Ra ばね荷重質量比

Claims (6)

  1. 内部空間と外部空間とを仕切るハウジングと、
    前記ハウジングの外部から内部への気体の通路となる吸入ポートと、
    前記吸入ポートを通る前記ハウジングの内部空間への前記気体の流入を許し、かつ前記吸入ポートを通る前記ハウジングの外部空間への前記気体の逆流を防止する逆止弁と、
    前記逆止弁を介して流入した前記気体を吸入し圧縮して吐出する圧縮機構部と、を備え、
    前記逆止弁は、前記気体の流入を許す開放位置と前記気体の逆流を防止する閉鎖位置とで移動される弁体と、前記弁体を前記閉鎖位置へ向けて押し付けるばね部材と、を有し、
    前記逆止弁では、前記吸入ポートを最も開放するときの前記ばね部材における全開時ばね荷重を0.4(N)以上に設定することを特徴とする気体圧縮機。
  2. 前記逆止弁では、前記ばね部材における前記全開時ばね荷重を0.7(N)以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
  3. 前記逆止弁では、前記ばね部材における前記全開時ばね荷重の前記弁体の質量に対する比で示すばね荷重質量比を500(N/kg)以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
  4. 内部空間と外部空間とを仕切るハウジングと、
    前記ハウジングの外部から内部への気体の通路となる吸入ポートと、
    前記吸入ポートを通る前記ハウジングの内部空間への前記気体の流入を許し、かつ前記吸入ポートを通る前記ハウジングの外部空間への前記気体の逆流を防止する逆止弁と、
    前記逆止弁を介して流入した前記気体を吸入し圧縮して吐出する圧縮機構部と、を備え、
    前記逆止弁は、前記気体の流入を許す開放位置と前記気体の逆流を防止する閉鎖位置とで移動される弁体と、前記弁体を前記閉鎖位置へ向けて押し付けるばね部材と、を有し、
    前記逆止弁では、前記吸入ポートを最も開放するときの前記ばね部材における全開時ばね荷重の前記弁体の質量に対する比で示すばね荷重質量比を875(N/kg)以上に設定することを特徴とする気体圧縮機。
  5. 前記逆止弁では、前記ばね部材における前記全開時ばね荷重を0.7(N)以上に設定することを特徴とする請求項4に記載の気体圧縮機。
  6. 前記逆止弁では、前記ばね部材のばね定数を設定することで前記全開時ばね荷重の設定を満たすことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の気体圧縮機。
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