JP2017217693A - 鉛フリーはんだ合金 - Google Patents

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真行 濱田
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健司 東
順庸 瀧川
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順庸 瀧川
徳照 上杉
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徳照 上杉
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雄基 森
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Abstract

【課題】高温度で長時間保持した場合の強度減少率が低く、従って、高温で長時間使用しても十分な接合強度を得ることができる鉛フリーはんだ合金の提供。
【解決手段】0.004〜0.20質量%未満、好ましくは0.05〜0.15質量%のAuを含み、残部がSnおよび不可避不純物であり、その他の成分として、Ag:1質量%以下、Cu:2質量%以下、Ni:0.001〜0.5質量%を更に含み、その上、0.001〜0.3質量%のP、0.001〜0.3質量%のGa又は0.001〜0.3質量%のGeから選される1つ以上を含む、固溶強化型で、高温長時間保持後の強度減少率の小さい、鉛フリーはんだ合金。
【選択図】図3

Description

本発明は、錫(Sn)を主成分とする鉛フリーはんだ合金に関する。
環境負荷の観点から、鉛を含有する従来のはんだ合金に代えて、鉛を含有しない種々の鉛フリーはんだ合金が利用されている。このような鉛フリーはんだ合金として工業的には、Sn−3Ag−0.5Cu、Sn−1Ag−0.7CuおよびSn−0.7Cuが多く用いられている。
これらの合金では、微細な粒子状の金属間化合物であるAgSn(但し、Sn−0.7Cuを除く)およびCuSnを形成する。すなわち、AgおよびCuのSnへの最大固溶限は、それぞれ、0.1および0.01質量%以下と極めて低く、固溶できないAgおよびCuが上述のAgSnおよびCuSnの微細な金属間化合物粒子として晶出する。この金属間化合物粒子は、分散粒子すなわち第二相粒子として分散強化に寄与する。この結果、これらの鉛フリーはんだ合金では高い強度を得ることができ、これによりはんだ付け時に高い接合強度を得ることができる。
電子機器に搭載される実装基板は使用時には、電子部品の発熱または使用される環境により125℃程度の高温に長時間曝される場合がある。これらの鉛フリーはんだ合金をこのような高温である程度の時間以上保持すると、第二相粒子であるAgSnおよびCuSnは凝集・粗大化してしまう。
そして、第二相粒子が、凝集・粗大化すると分散強化の効果が低くなり、鉛フリーはんだ合金の強度が低下する。例えば、Sn−3Ag−0.5Cuの押出材を温度125℃で1000時間保持した場合、第二相粒子の平均粒子径は2倍以上に粗大化し、強度は20%も低下する。このようなはんだ合金の強度低下は、はんだ接合部の接合強度の低下につながる。
接合信頼性の評価方法の1つとしてはんだ付け後と、例えば125℃で500時間のような高温で長時間保持(時効処理)した後の接合強度を測定し高温長時間保持による接合強度の減少率を評価する方法が用いられる。
つまり、125℃で500時間保持後の強度の絶対値が高くても、強度の減少率が大きいと、より長時間保持した後には強度が低くなってしまい、接合部の破断(瞬間的な衝撃による破断や熱応力による熱疲労破壊など)を生ずる場合がある。
Sn−Ag−Cu系およびSn−Cu系のはんだ合金では、上述した第二相粒子の凝集・粗大化による強度低下が、高温での保持時間の増大と共に大きくなる傾向がある。
このため、Sn−Ag−Cu系およびSn−Cu系のはんだ合金を用いても高温での長時間使用により強度が低下するため、十分な接合強度を長期間に亘り得られない場合がある。実際、高い接合信頼性が要求される、医療機器および航空機用電子機器では現在でもSn−Pbはんだが使用されているものもある。
広く用いられているSn−Ag−Cu系およびSn−Cu系の鉛フリーはんだ合金では、このような問題があることから、鉛フリーはんだとして用いることができる別の合金系が検討されており、それらの1つとしてSn−Au鉛フリーはんだ合金が知られている。
例えば、特許文献1は、濡れ性に優れ、かつボイドの発生が少ないSn−Au二元系のはんだペーストを開示している。特許文献2は、リフローはんだ付け時のピーク温度を調整するためにSn−Au二元系の混合粉末を用いたソルダペーストを開示している。特許文献3は熱伝導性に優れるSn−Au二元系合金を開示している。
特開2008−137017号公報 特開2011−167761号公報 特開昭54−122653号公報
特許文献1の鉛フリーはんだ合金は、Auを6.5〜9.8質量%含有しており、AuのSnへの最大固溶限である0.7質量%を大きく超えている。固溶しないAuは金属間化合物を形成し第二相粒子として存在する。このため、特許文献1の鉛フリーはんだ合金でも第二相粒子の凝集・粗大化が起こり、高温長時間保持による強度減少率が大きく、このため十分な接合信頼性を得ることができない場合がある。
特許文献2の鉛フリーはんだ合金は、はんだ付け後のAuが30〜45質量%である。はんだ付け後の接合部の組織は、Snと金属間化合物(AuSnとAuSn)で構成されており、特許文献1と同様に第二相粒子(AuSnとAuSn)の凝集・粗大化が起こり、高温長時間保持による強度減少率が大きく、このため十分な接合信頼性を得ることができない場合がある。
特許文献3には、Auを0.3〜10質量%含有する放熱効果に優れる鉛フリーはんだ合金が開示されている。しかし、Au量が0.3質量%であっても125℃程度の温度では、全てのAuが固溶することができず、第二相粒子が存在する。そして特許文献1と同様に第二相粒子の凝集・粗大化が起こり、高温長時間保持による強度減少率が大きく、このため十分な接合信頼性を得ることができない場合がある。
そこで、本発明は、高温度で長時間保持した場合の強度減少率が低く、従って、高温で長時間使用しても十分な接合強度を得ることができる鉛フリーはんだ合金を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、0.004質量%以上、0.20質量%未満のAuを含み、残部がSnおよび不可避不純物である鉛フリーはんだ合金である。
本発明の態様2は、0.05質量%以上、0.15質量%以下のAuを含む態様1に記載の鉛フリーはんだ合金である
本発明の態様3は、1.0質量%以下(0質量%を含まず)のAgをさらに含む態様1または2に記載の鉛フリーはんだ合金である。
本発明の態様4は、2.0質量%以下(0質量%を含まず)のCuをさらに含む態様1〜3の何れかに記載の鉛フリーはんだ合金である。
本発明の態様5は、0.001質量%以上、0.5質量%以下のNiをさらに含む態様1〜4の何れかに記載の鉛フリーはんだ合金である。
本発明の態様6は、0.001質量%以上、0.3質量%以下のP、0.001質量%以上、0.3質量%以下のGa、および0.001質量%以上、0.3質量%以下のGeから成る群から選択される少なくとも1つ以上をさらに含む態様1〜5の何れかに記載の鉛フリーはんだ合金である。
本発明の態様7は、Sb、Co、Fe、Mn、CrおよびMoから成る群から選択される少なくとも1つ以上をさらに含み、Sb含有量が5質量%以下、Co、Fe、Mn、CrおよびMoの合計含有量が1質量%以下である態様1〜6の何れかに記載の鉛フリーはんだ合金である。
本発明に係る鉛フリーはんだ合金は、高温度で長時間保持した場合の強度減少率が低い。従って、高温で長時間使用しても強度の低下が少なく、よって高温で長時間使用しても十分に高い接合強度を得ることができる。
図1は、実施例1、実施例2、比較例4、比較例5、比較例6のそれぞれのサンプルのX線回折結果を示す。 図2は、実施例1、実施例2、実施例8、比較例5および比較例6のそれぞれの時効前サンプルのSEMによる金属組織観察結果(反射電子像)を示す。 図3は、実施例1、実施例2、実施例8、比較例5および比較例6のそれぞれの時効後サンプルのSEMによる金属組織観察結果(反射電子像)を示す。
金属間化合物からなる第二相粒子によりSnマトリクスを強化すると、上述のように高温で長時間保持した際に第二相粒子の凝集・粗大化を生じ、強度の減少率が大きくなり、この結果、はんだ付け後は十分な強度を有していても高温で長時間保持した後の接合強度が十分でなくなる。
一方、合金元素を含まずに純Snを用いると、はんだ付け後の強度が低く、高温度長時間保持する前に既に十分な接合強度を得ることができない。
そこで本発明者は固溶強化により、はんだ付け後の十分な強度を得ることを検討した。すなわち、所定の元素をその元素の固溶限以下の量で添加することで、はんだ付け後の強度を確保し、かつこのような固溶元素の大半を高温で長時間保持した後も固溶したままとし、第二相粒子の凝集・粗大化を生じさせずに、よって強度の減少率を低く抑制することを検討した。
まず、Snに添加した場合、より大きな固溶強化の効果を得ることができる元素が何であるかを検討した。Sn基単相合金の転位の上昇運動律速の高温変形構成式を検討した結果、最大固溶限まで添加した場合にSnの積層欠陥エネルギーを大きく減少させることができる元素ほど、より大きな固溶強化の効果を得ることができること見いだした。そして、第一原理計算により、Al、Zn、Ga、In、Sb、Au、Bi、それぞれについて、固溶量と積層欠陥エネルギーの関係を求めたところ、Auによる積層欠陥エネルギー低下の効果が、他の元素と比べて顕著であることを見いだした。
さらに鋭意検討した結果、少ない量のAuを添加することで上述の他の元素では得られない固溶強化の効果が得られること、そして高温で長時間保持した際の強度減少率が小さいことを見いだし、本発明に至ったものである。
特許文献1〜3に示すように、従来からSnにAuを添加した鉛フリーはんだ合金は知られていた。しかし、これらは、上述したように固溶限をかなり超過した量のAuを含み、この結果、第二相粒子が形成され、これが凝集・粗大化するため、強度の減少率を低くすることが困難であった。
また、これらの鉛フリーはんだ合金では多くの量のAuを含むため、高コストとなってしまう。これに対して、本発明の鉛フリーはんだ合金では、詳細を後述するようにAuの含有量が少ないため、コスト面でもメリットがある。
以下に、本発明の鉛フリーはんだ合金について詳述する。
1.組成
本発明の鉛フリーはんだ合金の組成について説明する。
1−1.Au(金)含有量
本発明の鉛フリーはんだ合金は、0.004質量%以上、0.20質量%未満のAuを含んでいる。これにより、固溶したAuにより固溶強化を図ると共に、多量の第二相粒子が晶出または析出し高温で長時間保持した後、凝集・粗大化するのを抑制できる。
Au含有量が0.004質量%より少ないと固溶するAu量が少なく、固溶強化の効果を十分に得ることができない。このためAu量は0.004質量%以上とした。
一方、125℃におけるSnに対するAu合金の固溶限は0.2質量%であるため、Au量が0.2質量%以上になると相当な量の第二相粒子が晶出または析出し、これが高温で長時間保持されると凝集・粗大化し、強度の減少率が大きくなることから、Au量を0.20質量%未満とした。
Au量は好ましくは、0.05質量%以上である。これにより鋳造等の製造条件のばらつきがある場合でもより確実に固溶強化の効果を得ることができるからである。また、Au量は好ましくは、0.15質量%以下である。これにより鋳造等の製造条件のばらつきがある場合でもより確実に第二相粒子の晶出を抑制できるからである。
なお、Au量を0.2質量%未満としても、例えば鋳造の際の非平衡状態で形成されたAuSnが組織中に残存する等の理由により、本発明の鉛フリーはんだ合金は少量の第二相粒子を含む場合がある。しかし、このような場合でも第二相粒子の量は少量であるため、高温度長時間の保持により凝集・粗大化するものではない。
1−2.残部
本発明の1つの好ましい実施形態では、残部はSnおよび不可避不純物から成る。
しかし、本発明の鉛フリーはんだ合金はこれに限定されるものでなく、鉛フリーはんだ合金として機能し、かつ十分に低い強度減少率(例えば、125℃で500時間時効後の強度減少率が10%以下)を有する限りSnとAuと不可避不純物以外の成分(その他の元素)を含んでもよい。
以下にその他の成分の好ましい実施形態を説明する。
1−3.その他の成分
(1)Ag(銀)
1.0質量%以下(0質量%を含まず)のAgを含んでよい。Sn−Au二元系はんだ合金は、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金に比べると融点が高くなる。一部の電子部品では耐熱性に劣るものもあり、このような電子部品をはんだ付けする場合には、はんだの融点が、低い方が良い。そこで、融点降下を目的としてAgを添加してもよい。しかし、Ag含有量が1.0質量%より多いと、相当な量の金属間化合物(第二相粒子)が晶出し、これが高温長時間での保持の際に凝集・粗大化し、強度の減少率が大きくなる虞がある。このため、Agを添加する場合、その含有量は1.0質量%以下、好ましくは0.3質量%以下とする。
(2)Cu(銅)
2.0質量%以下(0質量%を含まず)のCuを含んでよい。CuはAgと同様に、融点降下の効果を有する。しかし、Cuが2.0質量%より多いと、相当な量の金属間化合物(第二相粒子)が晶出し、これが高温長時間での保持の際に凝集・粗大化し、強度の減少率が大きくなる虞がある。このため、Cuを添加する場合、その含有量は、2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下とする。
なお、AgとCuを同時に添加することでより確実に融点を下げることができる。
(3)Ni(ニッケル)
0.001質量%以上、0.5質量%以下のNiを含んでよい。
Niは、はんだ付けの際に端子に含まれるCuがはんだ内に溶け込む(拡散する)、所謂、Cu喰われを抑制する効果を有する。
また、Niは、はんだ付け後、高温で長時間保持された際の金属間化合物の成長を抑制する効果がある。この効果は、特にCu、Ag等のSn、Au以外の添加元素が含まれている場合により顕著に表れる。
Ni量が0.001質量%より少ないとこれらの効果を十分に得ることができない。一方、Ni量が0.5質量%より多いと液相線温度が上昇し耐熱性が低い電子部品のはんだ付けに適さない場合がある。
(4)P(リン)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)
P:0.001質量%以上、0.3質量%以下、Ga:0.001質量%以上、0.3質量%以下、およびGe:0.001質量%以上、0.3質量%以下のいずれか1つ以上を含んでよい。
Pは、本発明の鉛フリーはんだ合金をディップはんだ付けおよびフローはんだ付けで用いる際に酸化物(ドロス)の生成を抑制する効果を有する。十分な効果を得るためにはPの含有量は0.001質量%以上とする。また、Pの含有量が0.3%を超えた場合、溶融はんだ表面の粘性が増してはんだ付け時にブリッジ等の欠陥を生じさせる場合がある。Pの添加による悪影響を回避するためにPの含有量は0.3質量%以下とする。Pを含有量は、好ましくは0.001質量%以上、0.1質量%以下である。
溶融はんだの温度がより高い状況では、GaまたはGeの一方または両方を用いることにより効果的にドロスの生成を抑制できる。
十分な効果を得るためにはGa含有量は0.001質量%以上とする。また、Gaの含有量が0.3%を超えた場合、Pと同様に溶融はんだ表面の粘性が増してはんだ付け時にブリッジ等の欠陥を生じさせる場合がある。Gaの添加による悪影響を回避するためにGaの含有量は0.3質量%以下とする。Gaの含有量は、好ましくは0.001質量%以上、0.1質量%以下である。
十分な効果を得るためにはGeの含有量は0.001質量%以上とする。また、Geの含有量が0.3%を超えた場合、PやGaと同様に溶融はんだ表面の粘性が増してはんだ付け時にブリッジ等の欠陥を生じさせる場合がある。Geの添加による悪影響を回避するためにGeの含有量は0.3質量%以下とする。Geの含有量は、好ましくは0.001質量%以上、0.1質量%以下である。
なお、P、GaおよびGeは、単独で添加してもよいが、より確実にドロスの生成を抑制するためにP、GaおよびGeから選択される2つ以上を添加してもよい。また、P、GaおよびGeから選択される1つ以上を添加する際に、上述の組成範囲内のNiも併せて添加することでドロスの生成を抑制する効果を向上できる。
(5)Sb(アンチモン)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)およびMo(モリブデン)
Sb、Co、Fe、Mn、CrおよびMoから成る群から選択される少なくとも1つ以上を含んでよい。
機械的な接合強度を特に重視する場合、すなわち、はんだ付け後の強度および高温で長時間保持後の強度の絶対値を特に重視する場合、凝集・粗大化を起こさない程度の量の第二相粒子(例えば、Snとの金属間化合物)を形成するようにSb、Co、Fe、Mn、CrおよびMoの中から選択される1種以上の元素を添加することができる。
形成された第二相粒子が凝集・粗大化を起こさないように、Sbを添加する場合、含有量は5質量%以下とする。同じ理由から、Co、Fe、Mn、CrおよびMoから選択される1つ以上を添加する場合は、Co、Fe、Mn、CrおよびMoの合計含有量を1質量%以下とする。
2.特性
本発明の鉛フリーはんだ合金は、上述のように、はんだ付け後(高温で長時間保持する前)の強度に対する、高温で長時間保持後の強度の減少率が小さい。高温での長時間保持の代表的な条件として、実装基板のはんだ接合部が曝される可能性がある最高温度と同レベルである125℃で500時間保持(125℃×500℃の時効)することを挙げることができる。
また、強度として、流動応力を挙げることができる。流動応力とは、例えば、室温(25℃)で1×10−3−1のような一定のひずみ速度でおいて引張試験を行った際の真ひずみが0.1の時の応力をいう。
本発明の鉛フリーはんだ合金では、例えば、125℃×500℃の時効後の流動応力の減少率(時効前の流動応力から時効後の流動応力を引いた値を時効前の流動応力で除した値)が10%以下、好ましくは5%以下と優れた値を示す。後述するに、比較例1〜3として示される従来のSn−Ag−Cu系およびSn−Cu系の鉛フリーはんだ合金の減少率が11.2%以上であることと比べると、明らかに強度の減少率が少ない。
また、後述の実施例で詳述するように本発明の鉛フリーはんだ合金は、はんだ濡れ性(広がり率)およびはんだ付け作業性に影響する固相線温度と液相線温度の温度幅(温度幅が小さいほど凝固が速やかに完了し作業性がよくなる)についても従来の鉛フリーはんだ合金と概ね同程度で実用上、問題なく使用できるレベルにある。
本発明の鉛フリーはんだ合金は、棒、線、ペレット、ディスク、ワッシャー、ボールおよび粉末を含む任意の形態であってよく、また粉末状にした本発明の鉛フリーはんだ合金を用いてソルダペーストを得てよい。
本発明の鉛フリーはんだ合金をフロー工法による連続はんだ付けに長時間使用すると、浴組成が変動することがある。その場合には不足する元素を単独または他の成分との合金として添加することにより、浴組成を本発明の範囲内に調整することができる。
1.はんだ合金鋳造
はんだ合金の鋳造:
炭素坩堝にSnを投入し、シリコニット炉で加熱しSnを溶解させる。溶解したSnに表1に示す目標合金組成を狙って、Ag、Cu、Au、その他の元素の順に合金元素を添加する。炭素棒を用いて一定時間攪拌し、内径30mmの鋳鉄製金型を用いて水冷鋳造し、はんだ合金を製造した。これにより実施例1〜15および比較例1〜6の鋳造サンプルを得た。
得られた鋳造サンプルの一部をドリルで削り、細かく切って組成分析用サンプルを作成し、これを秤量し、酸で溶解した。組成分析用サンプルが酸に完全に溶解したのを確認後、酸をメスフラスコに移し、標線まで水で薄め分析用試料とした。作製した分析用試料は、誘導結合プラズマ分析(ICP)を用いて組成分析を行った。成分分析結果を実際組成として表1に記載した。
残部はSnと不可避不純物
2.評価
(1)流動応力および減少率
実施例1〜10および比較例1〜6のサンプルについて125℃×500時間の時効の前後の流動応力を測定した。時効前の流動応力がはんだ付け後の強度に相当し、時効後の流動応力が高温で長時間保持した後の強度に相当する。
具体的には、実施例1〜10および比較例1〜6、それぞれの鋳造サンプルについて、組織の均質化を目的とした熱処理(150〜180℃)を実施し、その後、熱間押出により直径12mmのロッドに成形した。そしてこれらのロッドサンプルは、ひずみ取り熱処理(150〜180℃)を施した後、旋盤にて平行部直径が4mmで平行部長さが12mmの丸棒引張試験片に加工した。
流動応力は、均熱性が保てるように3分割炉が付属された引張試験機にて、ひずみ速度が一定になるようコンピュータで制御しつつ、試験温度25℃、ひずみ速度1×10−3−1の条件において引張試験を行って求めた。引張試験機に取り付けたロードセルより測定した荷重から、試験片に負荷された応力を算出し、ひずみ量が真ひずみで0.1となったときの応力を流動応力とした。
上述の丸棒試験片を用いて、時効前の流動応力を測定した。
次に別の上述の丸棒試験片を125℃のオイルバスに浸漬し、500時間の時効処理を行い、この時効後の丸棒引張試験片を用いて、時効後の流動応力を測定した。
時効前の流動応力および時効後の流動応力の測定結果を表2に示す。時効前の流動応力については、現在工業的に用いられている鉛フリーはんだである比較例1〜比較例3のサンプルの中で最も低い値である23.5MPaを合格とし、表2には、合格したものを「○」、不合格のものを「×」で示した。
得られた時効前の流動応力と時効後の流動応力を用いて、流動応力の減少率を計算した。流動応力の減少率は下記の式により求めた。

流動応力の減少率=100×(A−B)/A

ここで、Aは時効前の流動応力であり、Bは時効後の流動応力である。
時効後の流動応力の方が時効前の流動応力より上がっている場合は、流動応力の減少率はマイナスの値となる。
得られた、結果を表2に示す。流動応力の減少率10%以下を合格とし、表2には、合格したものを「○」、不合格のものを「×」で示した。
表2から分かるように純Snである比較例4は、時効前の流動応力が低い。また、流動応力の減少率について、本発明の実施例に係るサンプルは全て10%以下と良好であるのに対して、比較例サンプルは全て、流動応力の減少率が10%を超える大きな値となっている。
(2)密度
表1に示した全てのサンプルについて、それぞれの鋳造サンプルに組織の均質化を目的とした熱処理(150〜180℃)を実施し、その後、熱間押出により直径12mmのロッドを成形し、長さ1cmの試験片を切り出した。切り出した試験片を用いて、アルキメデス法により密度を測定した。測定結果を表3に示す。
何れのサンプルも正常な密度値を示している。
(3)広がり率
表1に示した全てのサンプルについて、それぞれの鋳造サンプル(φ30mm)を厚さ1cmに切断し、厚さ1.5mmに圧延した後、φ6mmのペレット状に打ち抜ぬいた。得られたペレット状サンプルをアルコールで洗浄した30×30×0.3mmのCu板上に置き、さらに液体フラックスを1滴滴下させて試験片とした。
ペレット状サンプルは電子天秤で測定した質量(m)とアルキメデス法により測定した密度(d)から、あらかじめ体積(V=m/d)を算出しておいた。試験片を250℃に設定したソルダバスに浮かせて20秒間加熱することにより試験片のはんだ(ペレット状サンプル)を溶融させた後、水平に保ちながら引き上げ、冷却してはんだを凝固させた。
体積と、マイクロメータで測定した凝固後の試験片のはんだの高さ(H)と、試験に用いたはんだを球とみなした場合の直径(D=1.24V1/3)から広がり率(S=(D−H)/D×100)を算出した。得られた結果を表3に示す。広がり率は一般的に70%を下回ると、実際のはんだ付け作業の際にぬれの悪さを実感することが多いと言われている。そこで広がり率が70%以上を合格とし、表3には、合格したものを「○」、不合格のものを「×」で示した。何れのサンプルも良好な広がり率(はんだ濡れ性)を有していることがわかる。
(4)融点
固相線温度と液相線温度は、はんだ付け時の条件設定において重要なパラメータである。そこで、JIS Z 3198―1に準拠して測定した。実施例1〜10および比較例1〜6の鋳造サンプルからドリルで削りだした数gの切粉をアルミ製のパンに装填し、示唆熱分析装置により吸熱ピークと発熱ピークを分析し固相線温度を測定した。液相線温度は溶融状態から冷却曲線を測定し、冷却曲線より求めた。
測定結果を表4に示す。いずれのサンプルも適正な固相線温度および液相線温度を有する。AgおよびCuの少なくとも一方を含む、実施例3〜10のサンプルでは、固相線温度と液相線温度が低くなっており、耐熱性が低い電子部品のはんだ付けに容易に用いることができることを示している。
また、はんだ付け作業性に影響する固相線温度と液相線温度の幅も、大きいものでも従来の鉛フリーはんだと同程度の10℃前後となっており、適正な範囲であることがわかる。
(5)X線回折
実施例1、実施例2、比較例4、比較例5および比較例6の熱間押出後にひずみ取り熱処理を施したサンプルについて、X線回折を行った。
図1は、実施例1、実施例2、比較例4、比較例5、比較例6のそれぞれのサンプルのX線回折結果を示す。
図1より分かるように、比較例5および比較例6には明確なAuSnのピークが確認され、実施例2でもAuSnのピークが確認された。Auの含有量が最大固溶限(約0.7質量%)よりも低い実施例2および比較例5でもAuSnが確認されたが、これらは鋳造の際の非平衡状態で形成されたAuSnが組織中に残存しているものと考えられる。
(6)金属組織観察
実施例1、実施例2、実施例8、比較例5および比較例6のサンプルについて、時効前後の金属組織を走査型電子顕微鏡により観察した。
・時効前の金属組織
上述の時効前の流動応力の測定に用いた丸棒試験片と同じ方法で作成した丸棒引張試験片について走査電子顕微鏡(SEM)により組織観察を行った。図2は、実施例1、実施例2、実施例8、比較例5および比較例6のそれぞれの時効前サンプルのSEMによる金属組織観察結果(反射電子像)を示す。
実施例1はSnマトリクスの結晶粒のみ観察された。一方、実施例2と比較例5と比較例6の組織写真では、Snマトリクス以外に第二相粒子(AuSn)が確認された。また、実施例8ではAuSnとは色調の異なる第二相粒子が観察された。
・時効後の金属組織
上述の時効後の流動応力の測定に用いた丸棒試験片と同じ方法で作成した丸棒引張試験片について走査電子顕微鏡(SEM)により組織観察を行った。図3は、実施例1、実施例2、実施例8、比較例5および比較例6のそれぞれの時効後サンプルのSEMによる金属組織観察結果(反射電子像)を示す。
実施例1は時効前後で変化はないが、実施例2では時効後の第二相粒子(AuSn)が減少した。すなわち、凝集・粗大化は認められなかった。これは、鋳造時に形成されたAuSnが時効中に分解しAuが再固溶しているものと考えられる。この推測は、表2で実施例2の時効後の流動応力が時効前の流動応力に比べ向上していることからも裏付けられる。
比較例5と比較例6では、時効により第二相粒子(AuSn)の凝集・粗大化が起きたことが分かる。
実施例8では、第二相粒子の顕著な凝集・粗大化は確認されなかった。これは適切な量のAu、AgおよびCuの添加によるものと考えられる。

Claims (7)

  1. 0.004質量%以上、0.20質量%未満のAuを含み、残部がSnおよび不可避不純物である鉛フリーはんだ合金。
  2. 0.05質量%以上、0.15質量%以下のAuを含む請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
  3. 1.0質量%以下(0質量%を含まず)のAgをさらに含む請求項1または2に記載の鉛フリーはんだ合金。
  4. 2.0質量%以下(0質量%を含まず)のCuをさらに含む請求項1〜3の何れか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
  5. 0.001質量%以上、0.5質量%以下のNiをさらに含む請求項1〜4の何れか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
  6. 0.001質量%以上、0.3質量%以下のP、0.001質量%以上、0.3質量%以下のGa、および0.001質量%以上、0.3質量%以下のGeから成る群から選択される少なくとも1つ以上をさらに含む請求項1〜5の何れか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
  7. Sb、Co、Fe、Mn、CrおよびMoから成る群から選択される少なくとも1つ以上をさらに含み、Sb含有量が5質量%以下、Co、Fe、Mn、CrおよびMoの合計含有量が1質量%以下である請求項1〜6の何れか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
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