図1は、本発明の一の実施の形態に係る医療用ガウン1を示す図である。医療用ガウン1は、外科手術等の際に医師および看護師等が着用するガウンである。医療用ガウン1は、例えば、不織布等により形成された使い捨て外衣である。図1は、着用前の医療用ガウン1を広げた状態で示す背面図である。図1では、医療用ガウン1の着用者に接する内面とは反対側の外面を手前にして医療用ガウン1を描いている。図2は、着用前の医療用ガウン1を広げた状態で示す正面図である。図2では、医療用ガウン1の内面を手前にして医療用ガウン1を描いている。図3は、着用者が着用した状態の医療用ガウン1の前面側を示す正面図である。図4は、着用者が着用した状態の医療用ガウン1の背面側を示す背面図である。
医療用ガウン1は、着用者の前側で左右の部位を閉じる前閉じタイプのガウンである。医療用ガウン1は、前面部2と、背面部3と、一対の袖部4と、上固定部71と、側縁固定部72とを備える。前面部2は、着用者の前面を覆う。背面部3は、着用者の背面を覆う。一対の袖部4は、前面部2および背面部3の左右方向の両側に繋がる。一対の袖部4には、着用者の両腕が挿入される。各袖部4は、着用者の腕のうち肩部から手首近傍に至る部位を覆う。詳細には、各袖部4は、着用者の腕のうち、手首と肘との中間の部位から肩部に至る部位を覆う。
前面部2は、内前面部21と、外前面部22とを備える。内前面部21は、背面部3の左右方向の一方側から着用者の前面に広がり、着用者の前面を覆う。外前面部22は、背面部3の左右方向の他方側から着用者の前面に広がる。換言すれば、外前面部22は、背面部3の左右両側の端部のうち、内前面部21が繋がる側とは反対側に繋がる。外前面部22は、内前面部21の前側にて内前面部21に重なるとともに着用者の前面を覆う。図1ないし図3に示す例では、内前面部21は、着用者の右側において背面部3に繋がり、外前面部22は、着用者の左側において背面部3に繋がる。
内前面部21は、着用者の胸部、腹部、腰部前面および両脚の前面を覆う。図3に示す例では、内前面部21は、着用者の胸部の左肩部近傍を除く略全体を覆う。また、内前面部21は、着用者の腹部の略全体、腰部前面の略全体、および、両脚の前面のうち脚の付け根部から膝下に至る部位を覆う。
外前面部22は、内前面部21の前側において、着用者の胸部、腹部、腰部前面および両脚の前面を覆う。図3に示す例では、外前面部22は着用者の胸部の略全体、着用者の腹部の略全体、腰部前面の略全体、および、両脚の前面のうち脚の付け根部から膝下に至る部位を覆う。外前面部22は、内前面部21の前面の略全体を覆う。外前面部22の上縁は、着用者の喉元にて左右方向に略平行に延びる。
背面部3は、連続する1枚のシート状の部位である。背面部3は、着用者の背部、腰部背面(臀部を含む。)および両脚の背面を覆う。図4に示す例では、背面部3は、着用者の背部の略全体、腰部背面の略全体、および、両脚の背面のうち脚の付け根部から膝下に至る部位を覆う。
内前面部21、外前面部22および背面部3は、例えば、疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)にて形成された不織布製である。内前面部21、外前面部22および背面部3は、例えば、複数種類の不織布が積層された積層構造を有する。
上固定部71は、着用者の左右方向の上記一方側(すなわち、図3に示す例では、着用者の右側)にて、外前面部22の上部を内前面部21の上部に着脱自在に固定する。図3に示す例では、上固定部71は、外前面部22の略水平に延びる上端縁に沿って、着用者の肩部の略全長に亘って連続して外前面部22の上端部に設けられる。上固定部71は、例えば、面ファスナである。具体的には、上固定部71は、第1係止部711と、第1係止部711が着脱自在に係止可能な第2係止部712とを備える。例えば、第1係止部711は、多数の微小フック構造を有するフック部材であり、第2係止部712は、多数の微小ループ構造を有するループ部材である。第1係止部711は、外前面部22の着用者側の面である内面に配置される。第2係止部712は、内前面部21の着用者とは反対側の面である外面に配置される。
図1ないし図4に示すように、前面部2は、上突出部23をさらに備える。上突出部23は、外前面部22の上部から上方または前方に突出する。上突出部23は、例えば、上固定部71近傍に設けられる。上突出部23は、例えば略帯状の部位であり、着用者により把持可能である。上突出部23は、例えば、外前面部22の上縁から上方に突出する。上突出部23は、例えば、外前面部22の外面の上固定部71に重なる位置から前方に突出してもよい。
図3および図4に示す例では、上突出部23は、着用者の右肩を跨いで背面側(すなわち、後側)へと延び、背面部3の外面に着脱自在に固定される。例えば、上突出部23の先端部、および、背面部3のうち上突出部23の先端部と重なる部位に面ファスナ231,232が設けられ、当該面ファスナ231,232により、上突出部23が背面部3の外面に着脱自在に固定される。背面部3の面ファスナ232は、例えば、左右方向の上記一方側(すなわち、着用者の右側)の肩部に配置される。背面部3に設けられる面ファスナ232は、上突出部23に設けられる面ファスナ231よりも大きい。これにより、背面部3において上突出部23を固定する位置を、着用者の体型等に合わせて容易に調節することができる。
図3に示すように、側縁固定部72は、着用者の左右方向の上記一方側(すなわち、着用者の右側)にて、外前面部22の側縁部を内前面部21に着脱自在に固定する。図3に示す例では、側縁固定部72は、外前面部22の略上下方向に延びる側縁に沿って、外前面部22の側縁部の略全長に亘って連続して設けられる。側縁固定部72は、例えば、上固定部71と同様の面ファスナである。具体的には、側縁固定部72は、第1係止部721と、第1係止部721が着脱自在に係止可能な第2係止部722とを備える。例えば、第1係止部721は、多数の微小フック構造を有するフック部材であり、第2係止部722は、多数の微小ループ構造を有するループ部材である。第1係止部721は、外前面部22の内面に配置される。第2係止部722は、内前面部21の外面に配置される。
図1ないし図4に示すように、前面部2は、中央突出部24をさらに備える。中央突出部24は、外前面部22の側縁の上下方向の中央部から側方に突出する。中央突出部24は、例えば略帯状の部位であり、着用者により把持可能である。図3および図4に示す例では、中央突出部24は、着用者の右脇腹部を跨いで背面側へと延び、背面部3の外面に着脱自在に固定される。例えば、中央突出部24の先端部、および、背面部3のうち中央突出部24の先端部と重なる部位に面ファスナ241,242が設けられ、当該面ファスナ241,242により、中央突出部24が背面部3の外面に着脱自在に固定される。背面部3に設けられる面ファスナ242は、中央突出部24に設けられる面ファスナ241よりも大きい。これにより、背面部3において中央突出部24を固定する位置を、着用者の体型等に合わせて容易に調節することができる。
図1および図2に示すように、医療用ガウン1は、第1紐部73と、第2紐部74とを備える。第1紐部73の一方の端部は、内前面部21の上下方向の中央部において、内前面部21の側縁部に固定される。第2紐部74の一方の端部は、外前面部22の上下方向の中央部において、外前面部22の内面に固定される。第2紐部74の一方の端部は、例えば、外前面部22の内面のうち、外前面部22と背面部3との境界部近傍に固定される。また、第2紐部74の一方の端部は、上下方向に関し、例えば、着用者が腕を下側に伸ばした状態において着用者の肩部と肘との間に位置する。後述するように、医療用ガウン1が着用者により着用される際には、第1紐部73と第2紐部74とが結ばれる。
第1紐部73と結ばれる前の第2紐部74は、他方の端部が外前面部22の側縁から側方に突出した状態で、外前面部22に取り外し可能に仮固定されている。医療用ガウン1では、例えば、外前面部22の側縁部の内面に粘着材が設けられ、第2紐部74の上記他方の端部近傍の部位が、当該粘着材を介して外前面部22の内面に粘着されることにより、第2紐部74が外前面部22に仮固定される。第2紐部74の仮固定は、上記他方の端部が把持されて外前面部22の内面から離れる方向に引っ張られることにより容易に解除される。第2紐部74の仮固定の解除は、第2紐部74、外前面部22、および、第2紐部74の上記一方の端部と外前面部22との接続部が破損することなく行われる。
図1ないし図4に示すように、医療用ガウン1は、さらに、一対の手袋部5を備える。一対の手袋部5は、一対の袖部4の先端部に接続され(すなわち、固定され)、一対の袖部4の先端部の開口を密閉する。一対の手袋部5は、一対の袖部4とは別部材である。手袋部5の指先部とは反対側の端縁部は、袖部4の先端部に全周に亘って隙間無く接合される。好ましくは、一対の袖部4の先端部が一対の手袋部5の内部に挿入された状態で、一対の袖部4の先端部の外面と一対の手袋部5の内面とが固定されることにより、一対の手袋部5が一対の袖部4の先端部に接続される。袖部4と手袋部5との固定は、例えば、超音波接合により行われる。袖部4と手袋部5との固定は、超音波接合以外の様々な方法(例えば、熱圧着、縫製または接着剤による接着)により行われてもよい。
一対の手袋部5の内部空間は、一対の袖部4の内部空間と連通する。一対の手袋部5の内部空間には、着用者の両手が挿入される。図1ないし図4に示す例では、一対の手袋部5には、着用者の両手および両手首が挿入される。一対の手袋部5は、好ましくは、弾性部材製である。手袋部5は、例えば、天然ゴム製または合成ゴム製である。一対の手袋部5は、内部空間に挿入された着用者の両手に密着する。図3および図4に示す例では、一対の手袋部5の指先部とは反対側の端縁はそれぞれ、着用者の手首と肩部との間に位置する。詳細には、一対の手袋部5の端縁はそれぞれ、着用者の手首と肘との間に位置する。
図1および図3に示すように、医療用ガウン1は、さらに、シート状の保護部材6を備える。保護部材6は、前面部2に取り外し可能に取り付けられる。具体的には、保護部材6は、前面部2の外前面部22の外面に取り外し可能に取り付けられる。保護部材6は、例えば、粘着材を介して前面部2に取り付けられる。保護部材6の取り付けに使用される粘着材の粘着力は比較的小さいため、保護部材6は、前面部2を破損することなく容易に前面部2から取り外す(すなわち、剥がす)ことができる。保護部材6の前面部2への取り付けは、粘着材による粘着以外の様々な方法により行われてもよい。
保護部材6は、例えば、プラスチック製のフィルムである。保護部材6として、プラスチック製のフィルム以外の様々な部材が利用されてもよい。保護部材6は、好ましくは透光性を有し、より好ましくは透明である。これにより、医療用ガウン1のうち保護部材6に覆われた部位を目視することができるため、医療用ガウン1の着用が容易となる。保護部材6は、例えば、略矩形状である。保護部材6は、少なくとも着用者の胸部の前側にて、前面部2の外面を覆う。図3に示す例では、保護部材6は、着用者の胸部および腹部の前側にて、外前面部22の外面を覆う。また、保護部材6は、上固定部71および側縁固定部72と前後方向に重なる。保護部材6の形状は、様々に変更されてよい。
保護部材6の縁部には、把持可能な摘まみ部61が設けられる。摘まみ部61は、例えば、略帯状の部材である。摘まみ部61の一方の端部は保護部材6の縁部に固定される。摘まみ部61の他方の端部は、保護部材6の外縁から外側に突出する。摘まみ部61の他方の端部は、前面部2から前方に離間している。摘まみ部61の形状および構造は様々に変更されてよい。また、摘まみ部61の他方の端部は、必ずしも保護部材6の外縁から外側に突出する必要はない。摘まみ部61は、例えば、前側に折り返された保護部材6の角部であってもよい。
図3に示す例では、摘まみ部61は、着用者の左右方向の上記他方側(すなわち、着用者の左側)において、保護部材6の上部の縁部に設けられる。摘まみ部61は、上下方向に延びる略帯状である。摘まみ部61の下端部は、保護部材6の上部の縁部に固定されている。摘まみ部61の上端部は、保護部材6の上縁から上方に突出し、外前面部22から前方に離間している。
次に、医療用ガウン1の着用について説明する。ここでは、着用者が独力で(すなわち、介助者による介助無しで)医療用ガウン1を着用する場合について説明する。医療用ガウン1を着用する際には、まず、図5に示すように、着用者の両腕が一対の袖部4に挿入される。また、着用者の両手は、一対の手袋部5に挿入される。換言すれば、一対の手袋部5を着用者の両手に装着する。これにより、着用者が両手の指を自由に動かすことが可能となり、医療用ガウン1の着用作業を容易に行うことができる。図5に示す状態では、内前面部21と外前面部22とは、着用者の前側において左右に離間しており、互いに固定されていない状態である。
続いて、外前面部22を前方へと拡げた状態で、着用者が内前面部21を左右方向の上記一方側から上記他方側へと(図5中では、着用者の右側から左側へと)拡げ、図6に示すように、内前面部21の内面を着用者の前面に接触させる。また、着用者は、外前面部22の側縁から突出している第2紐部74の端部(図5参照)を把持して引っ張ることにより、第2紐部74の外前面部22への仮固定を解除する。そして、外前面部22の内面から延びる第2紐部74と、内前面部21の側縁部から延びる第1紐部73とが着用者により結ばれることにより、内前面部21の側縁部が外前面部22の内面に固定される。これにより、着用者にとって好ましい程度に、内前面部21を着用者の前面にフィットさせることができる。
次に、着用者は、上突出部23を把持し、内前面部21の前側において、外前面部22を左右方向の上記他方側から上記一方側へと(図6中では、着用者の左側から右側へと)拡げる。そして、外前面部22の内面を内前面部21の外面に接触させる。
続いて、着用者は、上固定部71により外前面部22の上部を内前面部21の上部に固定する。具体的には、上固定部71の第1係止部711を第2係止部712上に重ね、第1係止部711を第2係止部712へと押し当てることにより、第1係止部711を第2係止部712に固定する。第1係止部711を第2係止部712へと押し当てる際には、例えば、着用者の手等により、保護部材6および外前面部22を介して第1係止部711が第2係止部712に向かって押圧される。上述のように、保護部材6は上固定部71と重なっているため、着用者の手が直接的に外前面部22に接触することが防止される。上固定部71により外前面部22の上部を内前面部21の上部に固定する際には、上突出部23を後方へと引っ張ることにより、第1係止部711が第2係止部712へと押し当てられてもよい。
上固定部71の第1係止部711の固定位置を変更したい場合には、例えば、上突出部23を前方に引っ張って第1係止部711を第2係止部712から剥がし、第1係止部711の位置を調整した後、第1係止部711を第2係止部712へと再度押し当てる。これにより、外前面部22の上部の位置を容易に調節することができる。第1係止部711が第2係止部712に固定されると、着用者は、上突出部23を後方へと引っ張り、上突出部23の先端部の面ファスナ231を、背面部3の面ファスナ232(図4参照)へと押し当てて固定する。
また、着用者は、側縁固定部72により、着用者の左右方向の上記一方側(図6中では、着用者の右側)にて、外前面部22の側縁部を内前面部21に固定する。具体的には、側縁固定部72の第1係止部721を第2係止部722上に重ね、第1係止部721を第2係止部722へと押し当てることにより、第1係止部721を第2係止部722に固定する。第1係止部721を第2係止部722へと押し当てる際には、例えば、着用者の手等により、保護部材6および外前面部22を介して第1係止部721が第2係止部722に向かって押圧される。上述のように、保護部材6は側縁固定部72と重なっているため、着用者の手が直接的に外前面部22に接触することが防止される。
側縁固定部72の第1係止部721の固定位置を変更したい場合には、例えば、中央突出部24を把持して前方に引っ張って第1係止部721を第2係止部722から剥がし、第1係止部721の位置を調整した後、第1係止部721を第2係止部722へと再度押し当てる。これにより、外前面部22の側縁部の位置を容易に調節することができる。第1係止部721が第2係止部722に固定されると、着用者は、中央突出部24を後方へと引っ張り、中央突出部24の先端部の面ファスナ241を、背面部3の面ファスナ242(図4参照)へと押し当てて固定する。これにより、図3に示すように、外前面部22が内前面部21へと固定され、前面部2が着用者の腰回りにフィットする。
その後、着用者は、摘まみ部61の端部を摘まみ、摘まみ部61を前方へと引っ張って保護部材6を前面部2から取り外す。これにより、図7に示すように、着用者による医療用ガウン1の着用が終了する。
以上に説明したように、医療用ガウン1は、背面部3と、一対の袖部4と、内前面部21と、外前面部22と、上固定部71とを備える。背面部3は、着用者の背面を覆う。一対の袖部4は、背面部3の左右方向の両側に繋がる。一対の袖部4には、着用者の両腕が挿入される。内前面部21は、背面部3の左右方向の一方側から着用者の前側に広がり、着用者の前面を覆う。外前面部22は、背面部3の左右方向の他方側から着用者の前側に広がり、内前面部21の前側にて内前面部21に重なるとともに着用者の前面を覆う。上固定部71は、着用者の左右方向の上記一方側にて外前面部22の上部を内前面部21の上部に着脱自在に固定する。これにより、着用者は、腕を背面側に回すことなく清潔性を維持した状態で、医療用ガウン1を独力で容易に着用することができる。また、着用者の前側において内前面部21と外前面部22とを重ねる(すなわち、医療用ガウン1の生地を二重に重ねる)ことにより、患者の血液や体液等の飛沫により着用者が汚染されることを抑制することができる。
上述のように、上固定部71は、外前面部22の上端部において肩部の略全長に亘って連続して設けられる。これにより、外前面部22の上部を内前面部21に強固に固定することができる。さらに、患者の血液や体液等の飛沫が、外前面部22の上端縁から内側に進入して内前面部21に付着することを防止または抑制することができる。
上固定部71は、必ずしも、肩部の略全長に亘って連続して設けられる必要はない。上固定部71は、例えば、外前面部22の上端部において肩部の略全長に亘って断続的に設けられてもよく、外前面部22の上端部の一部のみに設けられてもよい。いずれの場合であっても、外前面部22の上部を内前面部21に強固に固定することができる。上固定部71は、外前面部22の上端部のうち少なくとも側縁近傍の部位(すなわち、外前面部22の側縁近傍の上側の角部)には設けられることが好ましい。これにより、外前面部22の上側の角部が内前面部21から離間して動くことを防止することができる。
上述のように、上固定部71は、第1係止部711と、第1係止部711が着脱自在に係止可能な第2係止部712とを備える面ファスナである。第1係止部711は、外前面部22の内面に配置される。第2係止部712は、内前面部21の外面に配置される。これにより、外前面部22の上部の固定を容易とすることができる。また、外前面部22の上部の位置調整を容易に行うこともできる。
上固定部71は、外前面部22の上部を、必ずしも内前面部21の上部に固定する必要はない。上固定部71は、外前面部22の上部を、着用者の左右方向の上記一方側(図3中では、着用者の右側)にて背面部3の上部に着脱自在に固定してもよい。具体的には、外前面部22の上部は、背面部3の右肩部に着脱自在に固定される。換言すれば、医療用ガウン1では、外前面部22の上部は、上固定部71により、着用者の左右方向の上記一方側にて内前面部21の上部または背面部3の上部に着脱自在に固定される。いずれの場合であっても、上述のように、着用者が医療用ガウン1を独力で容易に着用することができる。
外前面部22の上部が背面部3の上部に固定される場合、上固定部71の第2係止部712は、背面部3の外面に配置される。すなわち、第2係止部712は、内前面部21の外面または背面部3の外面に配置される。いずれの場合であっても、上固定部71が、第1係止部711と、第1係止部711が着脱自在に係止可能な第2係止部712とを備える面ファスナであることにより、外前面部22の上部の固定を容易とすることができる。また、外前面部22の上部の位置調整を容易に行うこともできる。
医療用ガウン1は、外前面部22の上部から突出する把持可能な上突出部23をさらに備える。医療用ガウン1を着用する際に上突出部23を把持することにより、着用者は、外前面部22の内面に触れることなく清潔性を維持した状態で、外前面部22の上部を固定位置へと容易に移動させることができる。また、上固定部71による外前面部22の上部の固定位置を変更する場合においても、上突出部23を把持して上固定部71による固定の解除、および、再固定を行うことにより、清潔性を維持した状態で、外前面部22の上部の位置を容易に調節することができる。
医療用ガウン1では、上述のように、上突出部23が背面部3の外面に着脱自在に固定される。これにより、外前面部22の上部がさらに強固に固定される。その結果、上固定部71による外前面部22の上部の固定が意図せず解除されることを抑制することができる。また、上突出部23が着用者の動きに合わせて動くことが防止されるため、上突出部23が着用者の作業の妨げになること(例えば、着用者の視界を遮ること)を防止することもできる。
上突出部23は、必ずしも背面部3の外面に固定される必要はなく、例えば、内前面部21の外面に着脱自在に固定されてもよい。換言すれば、医療用ガウン1では、上突出部23は、内前面部21の外面または背面部3の外面に着脱自在に固定される。いずれの場合であっても、上述のように、上固定部71による外前面部22の上部の固定が意図せず解除されることを抑制することができる。また、上突出部23が着用者の作業の妨げになることを防止することもできる。
上述のように、医療用ガウン1では、側縁固定部72をさらに備える。側縁固定部72は、着用者の左右方向の上記一方側にて、外前面部22の側縁部を内前面部21に着脱自在に固定する。これにより、外前面部22の側縁部が、内前面部21から離間することを防止することができる。このように、外前面部22の上部および側縁部が内前面部21に固定されることにより、内前面部21の前側に重ねられた外前面部22がずれることを防止または抑制することができる。また、側縁固定部72が、外前面部22の側縁部の略全長に亘って連続して設けられることにより、外前面部22を内前面部21に強固に固定することができる。さらに、患者の血液や体液等の飛沫が、外前面部22の側縁から内側に進入して内前面部21に付着することを防止または抑制することができる。
側縁固定部72は、必ずしも、外前面部22の側縁部の略全長に亘って連続して設けられる必要はない。側縁固定部72は、例えば、外前面部22の側縁部の略全長に亘って断続的に設けられてもよく、外前面部22の側縁部の一部のみに設けられてもよい。いずれの場合であっても、外前面部22の側縁部が、内前面部21から離間することを防止することができる。側縁固定部72は、外前面部22の側縁部のうち、少なくとも上下方向の中央部には設けられることが好ましい。これにより、少なくとも着用者の胸部の前方において、内前面部21の前側に重ねられた外前面部22がずれることを防止または抑制することができる。
医療用ガウン1は、外前面部22の側縁から側方に突出する把持可能な中央突出部24をさらに備える。中央突出部24は、背面部3の外面に着脱自在に固定される。これにより、前面部2の上下方向の中央部を、着用者の腰回りに密着させることができる。その結果、着用者の動き易さを向上することができる。また、腰回りを好適に締め付けつつ医療用ガウン1を着用することができるため、医療用ガウン1の着用感を向上することもできる。
中央突出部24は、必ずしも背面部3の外面に固定される必要はなく、例えば、内前面部21の外面に着脱自在に固定されてもよい。換言すれば、医療用ガウン1では、中央突出部24は、内前面部21の外面または背面部3の外面に着脱自在に固定される。いずれの場合であっても、上述のように、前面部2の上下方向の中央部を、着用者の腰回りに密着させることができる。その結果、着用者の動き易さを向上することができるとともに、医療用ガウン1の着用感を向上することもできる。
医療用ガウン1は、第1紐部73と、第2紐部74とをさらに備える。第1紐部73の一方の端部は、内前面部21の側縁部に固定される。第2紐部74の一方の端部は、外前面部22の内面に固定される。そして、第1紐部73と第2紐部74とが結ばれることにより、内前面部21の側縁部が外前面部22の内面に固定される。また、第1紐部73と結ばれる前の第2紐部74は、他方の端部が外前面部22の側縁から突出した状態で、外前面部22に取り外し可能に仮固定されている。これにより、医療用ガウン1の着用時に着用者が第1紐部73と第2紐部74とを結ぶ際に、第2紐部74の上記他方の端部を、外前面部22の内面に触れることなく清潔性を維持した状態で、容易に把持することができる。
上述のように、医療用ガウン1は、一対の手袋部5をさらに備える。一対の手袋部5は、一対の袖部4の先端部に接続されて、一対の袖部4の先端部の開口を密閉する。また、着用者の両手が挿入される一対の手袋部5の内部空間は、一対の袖部4の内部空間と連通する。これにより、着用者は、医療用ガウン1の袖部4に腕を挿入した際に、手袋部5を併せて手に装着することができる。
例えば、袖部に手袋が接続されていない医療用ガウンを着用する際には、着用者は、袖部に腕を挿入したときに手を先端部開口から出さず、袖部の内側から袖部の生地を介して医療用ガウンの紐等を把持して介助者に渡している。しかしながら、袖部の内側では指を自由に動かすことができないため、医療用ガウンの着用に手間がかかる。
これに対し、上述の医療用ガウン1では、袖部4に腕を挿入した際に手袋部5も装着することができるため、指を自由に動かして医療用ガウン1の各部位を取り扱うことができる。その結果、医療用ガウン1の独力での着用を、さらに容易とすることができる。
上述のように、一対の手袋部5は、一対の袖部4とは別部材である。そして、一対の袖部4の先端部が、一対の手袋部5の内部に挿入された状態で、一対の袖部4の先端部の外面と、一対の手袋部5の内面とが固定されことにより、一対の手袋部5が、一対の袖部4の先端部に接続される。このため、手袋部5に手を挿入する際に、手袋部5と袖部4との接続部に指等が引っかかることを防止または抑制することができる。その結果、医療用ガウン1の着用を容易とすることができるとともに、手袋部5と袖部4との接続部が着用時に破損することを防止または抑制することができる。
一対の手袋部5は弾性部材製であり、着用者の両手に密着する。一対の手袋部5の指先部とは反対側の端縁はそれぞれ、着用者の手首と肩部との間に位置する。これにより、袖部4が着用者の手の近傍で膨らんで着用者の視野を妨げることを防止することができる。また、袖部4が着用者の手の近傍で膨らんで術野や手術器具等に接触することを防止することもできる。
上述のように、医療用ガウン1は、シート状の保護部材6をさらに備える。保護部材6は、前面部2に取り外し可能に取り付けられる。保護部材6は、着用者の胸部の前側にて前面部2の外面を覆う。これにより、医療用ガウン1の着用時に、医療用ガウン1の前面部2のうち着用者の胸部を覆う部位(すなわち、前面部2の胸部)を清潔に維持することができる。また、医療用ガウン1の着用完了後に保護部材6を取り外すことにより、医療用ガウン1の前面部2の胸部が清潔な状態で、外科手術等の処置を開始することができる。
医療用ガウン1では、保護部材6がプラスチック製のフィルムであるため、浮遊物等が保護部材6を通過して前面部2の胸部に到達することを防止することができる。これにより、医療用ガウン1の前面部2の胸部の清潔性を向上することができる。また、保護部材6を軽量化することができるため、着用時の医療用ガウン1の取り扱いを容易とすることができる。さらには、保護部材6を薄くすることができるため、製造時に医療用ガウン1を容易に畳むこともできる。
上述のように、保護部材6は、粘着材を介して前面部2に取り付けられる。これにより、保護部材6を前面部2から容易に剥がすことができる。
医療用ガウン1では、保護部材6の縁部に、前面部2から離間する把持可能な摘まみ部61が設けられる。着用者は、摘まみ部61を摘まんで引っ張ることにより、前面部2に直接的に触れることなく、保護部材6を前面部2からさらに容易に剥がすことができる。また、摘まみ部61は、着用者の左右方向の上記他方側において、保護部材6の上部の縁部に設けられる。このように、摘まみ部61が、着用者の左右方向における上固定部71とは反対側に設けられることにより、摘まみ部61を摘まんで保護部材6を剥がす際に、上固定部71による外前面部22の固定が意図せず解除されることを抑制することができる。
上述の医療用ガウン1では、様々な変更が可能である。
例えば、上固定部71では、面ファスナのループ部材である第2係止部712が省略され、フック部材である第1係止部711が前面部2または背面部3に直接的に係止されてもよい。また、上固定部71は、必ずしも面ファスナである必要はない。上固定部71は、例えば、外前面部22の上部の内面に設けられた粘着材であってもよく、外前面部22の上部および内前面部21の上部に設けられた一組または複数組の紐またはホック(好ましくは、耐熱性ホック)であってもよい。側縁固定部72でも、面ファスナのループ部材である第2係止部722が省略され、フック部材である第1係止部721が前面部2に直接的に係止されてもよい。また、側縁固定部72は、必ずしも面ファスナである必要はない。側縁固定部72は、例えば、外前面部22の側縁に沿って外前面部22の内面に設けられた粘着材であってもよく、外前面部22の側縁部および内前面部21の外面に設けられた一組または複数組の紐またはホック(好ましくは、耐熱性ホック)であってもよい。
上突出部23の内前面部21の外面または背面部3の外面への固定は、面ファスナのフック部材とループ部材との係止には限定されず、ループ部材が省略され、フック部材により直接的に係止されてもよい。また、上突出部23の上記固定は、面ファスナ以外の方法(例えば、粘着材による粘着)により行われてもよい。上突出部23は、必ずしも内前面部21または背面部3に固定されなくてもよい。上突出部23は、省略されてもよい。中央突出部24の内前面部21の外面または背面部3の外面への固定も、面ファスナのフック部材とループ部材との係止には限定されず、ループ部材が省略され、フック部材により直接的に係止されてもよい。また、中央突出部24の上記固定は、面ファスナ以外の方法(例えば、粘着材による粘着)により行われてもよい。中央突出部24は、省略されてもよい。
第2紐部74の外前面部22への仮固定は、粘着材による粘着以外の様々な方法により行われてもよい。また、第2紐部74は、必ずしも外前面部22の内面に仮固定される必要はない。
医療用ガウン1では、例えば、第1紐部73および第2紐部74に代えて、図8に示すように、面ファスナ75が設けられてもよい。面ファスナ75は、互いに着脱自在に係止可能な2つの係止部751,752を備える。係止部751は、内前面部21の上下方向の中央部において、内前面部21の側縁部の外面に配置される。係止部752は、外前面部22の上下方向の中央部において、外前面部22の内面に配置される。医療用ガウン1を着用する際には、内前面部21の内面を着用者の前面に接触させ、外前面部22の係止部752を内前面部21の係止部751上に重ね、外前面部22の外面側から係止部752を係止部751へと押し当てる。これにより、係止部751と係止部752とが互いに係止され、面ファスナ75により、着用者の左側(すなわち、左右方向の上記他方側)にて、内前面部21の側縁部が外前面部22の内面に着脱自在に固定される。これにより、医療用ガウン1の着用時に着用者が外前面部22の内面に触れることなく清潔性を維持した状態で、内前面部21の側縁部を外前面部22の内面に固定することができる。
一対の手袋部5と一対の袖部4との接続部の構造は、様々に変更されてよい。例えば、一対の袖部4の先端部の内面と、一対の手袋部5の外面とが固定されてもよい。また、一対の手袋部5は、必ずしも一対の袖部4と別部材である必要はない。一対の手袋部5は、一対の袖部4と同材料により一対の袖部4に連続する一繋がりの部材として形成されてもよい。
一対の手袋部5は、弾性部材製には限定されず、他の様々な材料により形成されてもよい。また、一対の手袋部5の端縁はそれぞれ、必ずしも手首と肩部との間に位置する必要はなく、例えば、手首に位置していてもよい。
医療用ガウン1では、摘まみ部61の位置は、保護部材6の縁部において様々に変更されてよい。また、摘まみ部61は省略されてもよい。
医療用ガウン1は、上述の構成以外に様々な構成を備えていてもよい。例えば、医療用ガウン1は、着用者の喉元に位置する外前面部22の上端縁から上方に広がって着用者の顔の下半分を覆うマスク部を備えていてもよい。
医療用ガウン1では、一対の袖部4の先端部に一対の手袋部5は接続されていなくてもよい。この場合、着用者は、例えば医療用ガウン1の着用完了後に、医療用ガウン1とは別に準備された手袋を両手に装着する。
医療用ガウン1では、前面部2に取り付けられる保護部材6は省略されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。