JP2017214250A - セメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】外部設備を不要とし、鉄筋の腐食が抑制される、導電性材料を用いたセメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体の提供。【解決手段】鉄筋コンクリート構造物等に用いられるセメント硬化物において、導電性を有する導電性材料と、イオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料とを含有するセメント硬化物。このセメント硬化物は、金属材料が、これに含まれる金属と鉄との電位差により犠牲陽極として機能する結果、鉄筋コンクリート構造物等に用いたときに鉄筋の腐食の進行を抑制する鉄筋コンクリート構造体。【選択図】なし
Description
この発明はセメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体に関し、特に、鉄筋コンクリート構造物等に用いられるセメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体に関するものである。
コンクリートの弱点は脆性的で、圧縮力に対しては強いが引張力に対しては弱い。このため、構造部材としては引張側を鉄筋で補強したり、プレストレス(PC)工法により引張側に圧縮力を付与したりする方法でその対応が図られている。構造部材としては、外力(例えば、自動車・列車荷重、土圧、水圧等)に抵抗できるものの、外力作用時によるひび割れ(RC)や乾燥収縮等によるひび割れは生じやすい。又、鉄筋周辺以外は基本的には無筋状態となるため、経年劣化した構造物ではコンクリート中の鉄筋の腐食膨張により、周りのコンクリートが押し出され、浮き、剥離、剥離片の落下に結びつく。最近の事例では鉄道における高架橋からの落下がマスコミでも取り上げられ、記憶に新しいところである。又、道路・鉄道トンネルでは、出入り口と地山の緩いところを除いて、覆工は鉄筋で補強されていない(無筋コンクリート)。このための剥離・剥落事故が多くなっている。
我が国における繊維補強コンクリートの歴史は比較的古く、コンクリート舗装を対象としたひび割れ、角落ち対策と靱性を目的とした鋼繊維補強コンクリートが、約40年前から用いられるようになった。一方、トンネルでは新幹線におけるコンクリート片の落下事故を契機として、現在では繊維等を用いた対策も積極的に図られている。
最近における繊維補強コンクリートは、上記の剥離・剥落対策等に加えコンクリート構造物の長寿命化・高耐久化、高機能化と補修・補強技術への適用へと拡大されつつある。繊維補強による、ひび割れの抑制とひび割れの分散機能(一部の繊維補強コンクリート)による長寿命化・高耐久化(劣化因子等の物質透過抑制)、引張応力作用下における引張力の分担機能による高機能化(軽量化)への途が検討されている。繊維の種類としては、(高張力)鋼、ポリプロピレン(PP)、(高強度)ポリエチレン(PE)、ビニロン(PVA)、アラミド、ナイロン及び炭素繊維等と多種多様なものが検討されている。剥落対策、ひび割れ抑制、高性能・高機能化等、繊維導入の目的により、繊維種の選定や繊維径・繊維長・混入量の検討が図られている。
炭素繊維は高い引張強度と弾性率を有していることから、高機能化材料やコンクリート構造物の補修材料としての活用が有望である。高い比強度や弾性率の特性を活かした、航空機や自動車等の分野への利用は周知の通りである。これと相まって、使用後の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からの繊維の抽出技術もほぼ確立してきたことから、廉価で品質の良いリサイクル炭素繊維が市場に投入されることも予測される。このような背景から、今後、炭素繊維を用いた繊維補強コンクリートへの期待が高い。
しかし、上記のような繊維補強セメント硬化物は、補強材料として炭素繊維等を用いるため、材料特性上、導電性が高くなってしまう。そのため、炭素繊維補強セメント硬化物による鉄筋コンクリート構造物においては、電気化学的に酸化還元反応が促進され、鉄筋の発錆(腐食)の進行を早めてしまう問題があった。
即ち、以下のような反応が促進されることにより、いわゆる赤錆(Fe2O3、FeOOH等)の生成が促進される。
アノードにおいて、Fe→Fe2++2e−
カソードにおいて、O2+2H2O+4e−→4OH−
更に、アノードで生じた鉄イオンとカソードで生じた水酸化物イオンとが反応し、
2Fe2++4OH−→2Fe(OH)2
2Fe(OH)2+1/2O2+H2O→2Fe(OH)3
2Fe(OH)3→Fe2O3+3H2O
又は、2Fe(OH)3→2FeOOH+2H2O
このようにして生成された赤錆によって鉄筋の腐食が進行した鉄筋コンクリート構造物は、鉄筋が細くなったり腐食ひび割れが発生したりして性能が劣化し、構造物の安全性に問題が生じてしまう。
カソードにおいて、O2+2H2O+4e−→4OH−
更に、アノードで生じた鉄イオンとカソードで生じた水酸化物イオンとが反応し、
2Fe2++4OH−→2Fe(OH)2
2Fe(OH)2+1/2O2+H2O→2Fe(OH)3
2Fe(OH)3→Fe2O3+3H2O
又は、2Fe(OH)3→2FeOOH+2H2O
このようにして生成された赤錆によって鉄筋の腐食が進行した鉄筋コンクリート構造物は、鉄筋が細くなったり腐食ひび割れが発生したりして性能が劣化し、構造物の安全性に問題が生じてしまう。
尚、鉄筋の腐食を防止するため、鉄筋構造物に電流を印加して、鉄の電位を不感域まで卑方向に変化させる電気防食法(カソード防食法)が従来存在する。しかしながら、この方法には外部電源や外部に接続した流電陽極等の外部設備が必要となり、手間やコストがかかると共に、使用に適した設置条件が限定されているという問題がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、外部設備を不要とし、鉄筋の腐食が抑制される、導電性材料を用いたセメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、鉄筋コンクリート構造物等に用いられるセメント硬化物において、導電性を有する導電性材料と、イオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料とを含有することを特徴とするものである。
このように構成すると、金属材料がセメント硬化物中において犠牲陽極として機能する。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、導電性材料は、補強材料を含み、補強材料は、セメント硬化物の総量100体積%において0.1体積%〜20.0体積%含有されるものである。
このように構成すると、セメント硬化物の靱性が安定して向上する。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、補強材料は、炭素繊維であるものである。
このように構成すると、補強材料の化学的安定性が向上すると共にセメント硬化物の靱性が効果的に向上する。
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、金属材料は、セメント硬化物の総量100体積%において0.1体積%〜20.0体積%含有されるものである。
このように構成すると、セメント硬化物中において犠牲陽極として機能する作用が安定して発揮される。
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、金属材料は、チタンであるものである。
このように構成すると、金属材料はセメント硬化物組成材料としての強度、弾性特性や耐食性及びコスト面で優秀となる。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、チタンは、チタン粉末であるものである。
このように構成すると、練混ぜ工程におけるセメント硬化物中の分散性に優れると共に、体積あたりの表面積が大きくなる。
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のセメント硬化物を用いて建設された、鉄筋コンクリート構造体である。
このように構成すると、鉄筋コンクリート構造体中において金属材料が犠牲陽極として機能する。
以上説明したように、請求項1記載の発明は、金属材料がセメント硬化物中において犠牲陽極として機能するため、鉄筋コンクリート構造物等に用いたときに鉄筋の腐食の進行が抑制される。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、セメント硬化物の靱性が安定して向上するため、セメント硬化物を用いた鉄筋コンクリート構造体をより薄く構成することができる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、補強材料の化学的安定性が向上すると共にセメント硬化物の靱性が効果的に向上するため、安定的かつ効果的にセメント硬化物の靱性が向上する。
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、セメント硬化物中において犠牲陽極として機能する作用が安定して発揮されるため、鉄筋コンクリート構造物等にセメント硬化物を用いたときに鉄筋の腐食の進行がより効果的に抑制される。
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、金属材料はセメント硬化物組成材料としての強度、弾性特性や耐食性及びコスト面で優秀となるため、使用勝手が向上する。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、練混ぜ工程におけるセメント硬化物中の分散性に優れると共に、体積あたりの表面積が大きくなるため、反応性が良くなり効果的かつ安定的にセメント硬化物中において犠牲陽極として機能する。
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、鉄筋コンクリート構造体中において金属材料が犠牲陽極として機能するため、その内部に配された鉄筋の腐食の進行が抑制される。そのため、靱性が高くひび割れ等の発生を抑制すると共に、内部に配された鉄筋の腐食の進行も抑制された鉄筋コンクリート構造体となる。
本実施の形態のセメント硬化物は、鉄筋コンクリート構造物等に用いられるセメント硬化物において、導電性を有する導電性材料と、イオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料とを含有することを特徴とするものである。
このようにして構成された本実施の形態に係るセメント硬化物は、金属材料が、これに含まれる金属と鉄との電位差により犠牲陽極として機能する結果、鉄筋コンクリート構造物等に用いたときに鉄筋の腐食の進行を抑制することができる。又、導電性材料及び金属材料を含有しないセメント硬化物と比べ、靱性が向上したものとなる。
又、本実施の形態では、金属材料はセメント硬化物に少なくとも含有されていれば良いが、本実施の形態に係るセメント硬化物の総量100体積%において0.1体積%〜20.0体積%含有されていることが好ましく、0.2体積%〜10.0体積%含有されていることがより好ましく、0.5体積%〜3.0体積%含有されていることが更に好ましい。金属材料の含有率が低すぎると全体として金属材料が犠牲陽極として機能しづらく鉄筋の腐食を防止する効果が弱くなるのに加え、練混ぜによってセメント硬化物中に分散させる際にムラができ、鉄筋の腐食を防止する効果が十分に発揮されない部分が発生する虞があるため好ましくない。又、金属材料の含有率が高すぎると練混ぜが困難となるため好ましくない。従って、上記数値範囲内であれば安定してセメント硬化物中の犠牲陽極として機能することができるため、鉄筋コンクリート構造物等にセメント硬化物を用いたときの鉄筋の腐食の進行をより効果的に抑制することができる。
尚、本実施の形態では、セメント硬化物は、セメント、水、必要に応じて加える骨材及び混和材料から構成され、これらを練混ぜその他の方法によって混合し硬化させたものをいう。例えば、モルタル、コンクリート、セメントミルク等が挙げられる。
又、上述したセメントとしては、例えば鉄筋コンクリート構造物の施工において広く使用される普通、早強等の各種ポルトランドセメントが挙げられるが、各種混合セメント等、その他の種類のセメントを用いても良い。
更に、上述した水は、セメントを十分に練ることができる水であれば良く、従ってそのような混練り水としては例えば海水も含まれ得る。
更に、本実施の形態では、セメントに含まれる砂や、セメントに対する水の割合、即ち砂セメント比(S/C)や水セメント比(W/C)は、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
更に、上述した混和材料は、作業性や強度・耐久性の向上、凝結速度や導電性の調整等を目的としてセメント硬化物に混和される材料をいう。例えばAE剤、減水剤、増粘剤、収縮低減剤、導電性材料、補強材料、金属材料等が挙げられ、必要に応じて適宜選択すれば良く、又、その他の混和材料を更に用いても良い。
更に、本実施の形態では、導電性を有する導電性材料とは、電気抵抗値が10Ω・cm以下の導電性材料をいい、例えば炭素繊維、カーボンブラック、ナノファイバー類、金属繊維、金属で表面被覆した合成繊維やガラス繊維、各種の炭素粉末(例えば、石油精製時の副産物、木材・竹等の天然由来のもの)等が挙げられる。
更に、上述した補強材料は、セメント硬化物の主に靱性を高めるために添加される混和材料をいい、導電性材料に含まれ得る。そして、炭素繊維であることが、セメント硬化物の化学的安定性や引張強度、靱性の向上とひび割れ抑制という点において優秀であるため好ましい。即ち、これによって効果的かつ安定的にセメント硬化物の靱性を向上させることができる。
更に、本実施の形態に係るセメント硬化物の総量100体積%において、補強材料は0.1体積%〜20.0体積%含有されていることが好ましく、0.2体積%〜10.0体積%含有されていることがより好ましく、0.5〜3.0体積%含有されていることが更に好ましい。補強材料の含有率が低すぎるとセメント硬化物の靱性が向上せず、高すぎるとフレッシュコンクリートの流動性が低下してしまうため好ましくない。従って、上記数値範囲内であれば安定してセメント硬化物の靱性を向上させることができるため、鉄筋コンクリート構造物等にセメント硬化物を用いたときのひび割れ等をより効果的に抑制することができる。
更に、上述した炭素繊維としては、例えばポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が挙げられる。又、その平均繊維直径が1μm〜50μmであるものが好ましく、3μm〜10μmであるものがより好ましい。更に、その平均カット長が10μm〜200mmであるものが好ましく、30μm〜100mmであるものがより好ましい。
更に、上述したカーボンブラックは、粉末状、プレス状、粒状等のいかなる形態(かさ密度)のものでも良く、その種類は例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
更に、イオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料とは、例えばクロム、亜鉛、マンガン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム等のイオン化傾向が鉄よりも大きい金属から主に構成される混和材料が挙げられる。又、金属は粉末状、板状、塊状等のいかなる形態で用いても良い。更に、これらのいずれかの金属を含む合金を用いても良い。但し、亜鉛及びアルミニウムはセメント硬化物内の強アルカリ条件下において水素ガスを発生させてしまうため、クロム、マンガン、チタン、マグネシウム、ナトリウム、リチウム等が好ましい。
ここで、セメント硬化物中において金属材料に求められる性能は、硬化前後における化学的安定性と硬化後における物理的特性(強度(圧縮、引張、付着等)、弾性率、熱膨張率等)が重要となる。これらの点において、チタンは、クロムやマンガンよりもイオン化傾向が高いため犠牲陽極としての性能が高く、又、マグネシウムのように海水や薄い酸との反応で溶解して水素ガスを発生してしまうことがなく、更に、ナトリウムのように水と激しく反応してしまうことがなく、更に、リチウムよりもコスト面で有利であり、更に、腐食による体積膨張率が著しく小さいため、金属材料として好適である。即ち、上述した金属材料は、セメント硬化物組成材料としての強度、弾性特性や耐食性及びコスト面で優秀であることから、チタンであることが好ましい。
更に、上述したチタンは、例えばJIS1種〜JIS4種の純チタンやチタン合金等が挙げられる。
更に、上述したチタンは、チタン粉末であることが好ましい。このように構成すると、練混ぜ工程におけるセメント硬化物中の分散性に優れると共に、体積あたりの表面積が大きくなるため、反応性が良くなる。従って、効果的かつ安定的にセメント硬化物中において犠牲陽極として機能することから、鉄筋腐食抑制作用の向上を図ることができる。
更に、上述したチタン粉末は、レーザー回折散乱法による平均粒子径が10μm〜500μmであるものが好ましい。又、製造工程において脱水素を行わない水素化チタン粉末でも良い。
本実施の形態では、例えばまずセメント、水及び混和材料(導電性材料及び補強材料を除く)を先行練りしたセメントペーストに対して上述した導電性材料及び補強材料を添加する。その際、セメントペーストに細骨材(砂)を添加してモルタルとして使用しても良く、あるいは、セメントペーストに細骨材(砂)及び粗骨材(砂利)を添加してコンクリートとして使用しても良い。尚、導電性材料、補強材料又は金属材料を添加する工程の時期及び方法はこれに限定されず、セメント硬化物中に分散させることができればその他の時期及び方法でも良い。
そして上述した導電性材料、補強材料及び金属材料を含有したセメントペーストを鉄筋周辺に流し込み、硬化させることで、本実施の形態に係るセメント硬化物が構成される。硬化させる際、所望の形状に成形し鉄筋コンクリート構造物等を新規に生産しても良く、あるいは、施工から年数が経過した鉄筋コンクリート構造物等の補修や改築に用いても良い。例えばセメント硬化物をコンクリートとすれば、本実施の形態に係るセメント硬化物を用いた鉄筋コンクリート構造体が構成される。
そして、上述した鉄筋コンクリート構造体は、鉄筋コンクリート構造体中において導電性材料又は補強材料と金属材料と鉄筋とがネットワーク(接点)を形成し、金属材料が犠牲陽極として機能するため、その内部に配された鉄筋の腐食の進行が抑制されたものとなる。そのため、靱性が高くひび割れ等の発生を抑制すると共に、その内部に配された鉄筋の腐食の進行も抑制された鉄筋コンクリート構造体となる。又、強度や耐久性を従来の鉄筋コンクリート構造物と同程度に確保しつつ、厚さを薄くすることも可能である。
更に、本実施の形態において、鉄筋とは、鉄板や円柱状の鉄製構造物等の、少なくともその表面が鉄からなる構造物をいう。尚、鉄筋については、セメント硬化物に埋設される前の処理の如何については問わない。従って、埋設前の鉄筋の表面には例えば不動態被膜が形成されていても良い。
更に、本実施の形態において、鉄筋コンクリート構造物等とは、その内部に上述した鉄筋を配しモルタル、コンクリート、セメントミルク又はこれらの混合により構成された構造物をいい、例えばいわゆる鉄筋コンクリート構造物、鉄筋モルタル構造物、鉄骨コンクリート構造物、鉄骨鉄筋コンクリート構造物等が挙げられる。
更に、本実施の形態では、セメント硬化物に亜硝酸リチウムを併せて使用しても良い。これによって、アルカリ骨材反応が抑制されるため、鉄筋の腐食の進行を更に抑制することができる。
更に、本実施の形態では、各条件について上述のように列挙した例を、単体で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
以下、実施例に基づいて本発明について具体的に説明する。尚、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
I.供試体の作製
実施例1種及び比較例2種のセメント硬化物(モルタル)供試体を、以下の表1に示す使用材料及び配合に従って各2体作製した。この各2体を実施例1、2、比較例1、2及び比較例3、4とした。
I.供試体の作製
実施例1種及び比較例2種のセメント硬化物(モルタル)供試体を、以下の表1に示す使用材料及び配合に従って各2体作製した。この各2体を実施例1、2、比較例1、2及び比較例3、4とした。
実施例1、2は、供試体の総量100体積%において補強材料を1.0体積%、及び金属材料を1.0体積%含有するものである。
比較例1、2は、供試体の総量100体積%において補強材料を1.0体積%含有し、金属材料を含有しないものである。
比較例3、4は、補強材料及び金属材料を含有しないものである。
(1)供試体の配合及び使用材料
(1)供試体の配合及び使用材料
W/Cは、水セメント質量比を表す。
W/Pは、水粉体質量比を表す。
セメントは、住友大阪セメント株式会社製の早強ポルトランドセメントを使用した。
石灰石粉は、清水工業株式会社製の商品名「ネオフロー(登録商標)80」を使用した。
高性能AE減水剤は、BASFジャパン株式会社製の商品名「マスターグレニウム(登録商標)SP8HU」を使用した。
増粘剤は、信越化学工業株式会社製の商品名「左官用hiメトローズ」を使用した。
補強材料は、炭素繊維であり、東レ株式会社製の商品名「トレカ(登録商標)カットファイバー」、品番「T010−006」(平均繊維直径7μm、平均カット長6mm)を使用した。
金属材料は、チタン粉末であり、トーホーテック株式会社製の品種「TS−150」(平均粒子径150μm)を使用した。
収縮低減剤は、太平洋マテリアル株式会社製の製品名「太平洋テトラガード」を使用した。
又、鉄筋は、長さ133mmのD10(異形棒鋼SD−295A)を使用した。尚、鉄筋の表面は黒皮で被膜されていた。
(2)供試体の作製
練混ぜ方法は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法に規定するホバートミキサ」により行った。
a.実施例1、2のモルタルの練混ぜ
セメント、水、各種混和材料(炭素繊維を除く)及びチタン粉末の混合物を3分間先行練りした後に炭素繊維を添加した。そして、低速で1分間、次に高速で3分間調整しながら練混ぜした。このようにして実施例1、2に用いるモルタルを練混ぜした。
b.比較例1、2のモルタルの練混ぜ
セメント、水、各種混和材料(炭素繊維を除く)の混合物を3分間先行練りした後に炭素繊維を添加した。そして、低速で3分間、次に高速で2分間調整しながら練混ぜした。このようにして比較例1、2に用いるモルタルを練混ぜした。
c.比較例3、4のモルタルの練混ぜ
セメント、水、各種混和材料の混合物を3分間練混ぜした。このようにして比較例3、4に用いるモルタルを練混ぜした。
d.モルタル供試体の成形
図1は供試体の正面図であって、鉄筋の配置を示すものである。
(2)供試体の作製
練混ぜ方法は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法に規定するホバートミキサ」により行った。
a.実施例1、2のモルタルの練混ぜ
セメント、水、各種混和材料(炭素繊維を除く)及びチタン粉末の混合物を3分間先行練りした後に炭素繊維を添加した。そして、低速で1分間、次に高速で3分間調整しながら練混ぜした。このようにして実施例1、2に用いるモルタルを練混ぜした。
b.比較例1、2のモルタルの練混ぜ
セメント、水、各種混和材料(炭素繊維を除く)の混合物を3分間先行練りした後に炭素繊維を添加した。そして、低速で3分間、次に高速で2分間調整しながら練混ぜした。このようにして比較例1、2に用いるモルタルを練混ぜした。
c.比較例3、4のモルタルの練混ぜ
セメント、水、各種混和材料の混合物を3分間練混ぜした。このようにして比較例3、4に用いるモルタルを練混ぜした。
d.モルタル供試体の成形
図1は供試体の正面図であって、鉄筋の配置を示すものである。
図を参照して、円柱状の鉄筋2は、上面を除いて15mm被りとなるように、40mm×40mm×136mmの角柱状の供試体1の平面視中央位置に配置される。
上述したa〜cの工程により練混ぜしたモルタルを、鋼製の40mm×40mm×160mmの角柱状のモルタル供試体成形用型に詰め、図1に示すような供試体を成形した。
供試体は成型日翌日に脱型し、湿潤状態とするために湿布養生を1週間行った後、気中養生とした。合計5週間の養生を経て、実施例1、2、比較例1、2及び比較例3、4の供試体を作製した。
II.電食試験
(1)電食試験の方法
次に、上記Iで作製した各供試体を用いて、セメント硬化物(モルタル)の腐食電流を測定するため電食試験を行った。
II.電食試験
(1)電食試験の方法
次に、上記Iで作製した各供試体を用いて、セメント硬化物(モルタル)の腐食電流を測定するため電食試験を行った。
図2は電食試験の様子を示す模式図である。
図を参照して、電食試験は、電解水4としてNaCl3%溶液を用いた。又、電源6として2個の1.5V単一乾電池を用いた。更に、縦横40mm×160mm、厚さ0.3mmの銅板5を電極として用いた。
そして、供試体1及び銅板5を液面から10mm露出するようにして電解水4に浸漬し、銅板5は、供試体1に対して5mmの距離にスポンジ7を介して確保しながら結束した。又、鉄筋2を正極、銅板5を負極とし、半田付けして接続した。
尚、半田付けは、モルタルを打設する前に行うことで熱による影響が出ないように配慮した。
このようにして直流3Vを通電する電食試験を開始し、日に1回電流値を株式会社島津理化製の電流計(HQ−5N)により測定し、24時間当たりの積算電流値とした。
実施例1、比較例1及び比較例3は16日経過後に鉄筋の発錆状況について確認するため電食試験を終了し、実施例2、比較例2及び比較例4は30日経過後、同様に電食試験を終了した。
(2)電食試験の結果
a.積算電流値
電食試験において測定した積算電流値の結果を図3及び下記の表2に示す。
(2)電食試験の結果
a.積算電流値
電食試験において測定した積算電流値の結果を図3及び下記の表2に示す。
図3は積算電流値の推移を示すグラフである。又、表2は16日目及び30日目における積算電流値の数値を示したものである。
尚、比率において(*1)で示した実施例1、比較例1及び比較例3の数値(%)は、16日目の比較例1の積算電流値を100%としたときの比率を表す。
又、比率において(*2)で示した実施例2、比較例2及び比較例4の数値(%)は、30日目の比較例2の積算電流値を100%としたときの比率を表す。
まず図3を参照して、電食試験1日目〜30日目において常に実施例1、2は比較例1、2より積算電流値が小さかった。
次に表2を参照して、16日目において、実施例1と比較例1とを参照して、実施例1は比較例1に対して積算電流値が72.1%に抑えられ、有意な差がついた。
又、30日目において、実施例2と比較例2とを参照して、実施例2は比較例2に対して積算電流値が72.8%に抑えられ、有意な差がついた。
積算電流値が小さいということは鉄筋の腐食性が抑制されているということであるため、以上の結果から、チタン粉末を含有した実施例1、2は、チタン粉末を含有しない比較例1、2より鉄筋の腐食が抑制されたことがわかった。
b.腐食量及び腐食率
電食試験30日経過後の実施例2及び比較例2について、腐食量を測定し、それに伴って腐食率を算出した。
b.腐食量及び腐食率
電食試験30日経過後の実施例2及び比較例2について、腐食量を測定し、それに伴って腐食率を算出した。
腐食量の測定方法としては、30日経過後の実施例2及び比較例2の供試体から鉄筋を取り出し、60℃に保った10%のクエン酸二アンモニウム水溶液に鉄筋を4日間浸漬し、錆を除去した。そして、電食試験前の鉄筋質量(単位:g)と電食試験後の鉄筋質量(単位:g)を測定し、その差を腐食減量(単位:g)とした。
表中、鉄筋有効質量(単位:g)は、電食試験前の鉄筋(長さ133mm)に対して、供試体より上に露出した部分(長さ12mm分)と液面より上の部分(長さ10mm分)とを補正し有効質量としたものである。(71.6×111/133=59.8等)
腐食率(%)は、(腐食減量)/(鉄筋有効質量)より算出し、鉄筋の腐食の程度を示す。
腐食率(%)は、(腐食減量)/(鉄筋有効質量)より算出し、鉄筋の腐食の程度を示す。
腐食量比(%)は、30日経過後の比較例2の腐食減量を100%としたときの、実施例2の比率を示す。
表3を参照して、腐食率は実施例2が比較例2より有意に小さかった。
又、腐食量比は実施例2が比較例2の73.3%と小さく、有意な差がついた。
以上の結果から、チタン粉末を含有した実施例2は、チタン粉末を含有しない比較例2よりも鉄筋の腐食の進行が抑制されたことがわかった。
又、上記aの結果と併せて、実施例2は、比較例2よりも鉄筋の腐食の進行が抑制されたことが確認された。
c.鉄筋表面の発錆状況
まず、16日経過後の実施例1及び比較例1について、それぞれ鉄筋を取り出し、発錆状況を目視で確認した。
c.鉄筋表面の発錆状況
まず、16日経過後の実施例1及び比較例1について、それぞれ鉄筋を取り出し、発錆状況を目視で確認した。
その結果、実施例1の鉄筋表面は、赤錆が目視で0%で、コーティングされたような艶のある外観であった。これに対し、比較例1の鉄筋表面は、赤錆が目視で30%程度の面積を占める外観であった。
これによって、チタン粉末を含む実施例1は、チタン粉末を含まない比較例1よりも鉄筋の発錆が抑制されていることがわかった。
d.まとめ
以上の結果から、導電性を有する補強材料(炭素繊維)とイオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料(チタン粉末)とを含有するセメント硬化物(モルタル)は、金属材料を含有しないものと比べ、鉄筋の発錆が抑制され、鉄筋の腐食の進行が抑制されることがわかった。
d.まとめ
以上の結果から、導電性を有する補強材料(炭素繊維)とイオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料(チタン粉末)とを含有するセメント硬化物(モルタル)は、金属材料を含有しないものと比べ、鉄筋の発錆が抑制され、鉄筋の腐食の進行が抑制されることがわかった。
1…供試体
2…鉄筋
4…電解水
5…銅板
6…電源
7…スポンジ
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
2…鉄筋
4…電解水
5…銅板
6…電源
7…スポンジ
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
Claims (7)
- 鉄筋コンクリート構造物等に用いられるセメント硬化物において、
導電性を有する導電性材料と、
イオン化傾向が鉄よりも大きい金属材料とを含有することを特徴とする、セメント硬化物。 - 前記導電性材料は、補強材料を含み、
前記補強材料は、前記セメント硬化物の総量100体積%において0.1体積%〜20.0体積%含有される、請求項1記載のセメント硬化物。 - 前記補強材料は、炭素繊維である、請求項2記載のセメント硬化物。
- 前記金属材料は、前記セメント硬化物の総量100体積%において0.1体積%〜20.0体積%含有される、請求項1から請求項3のいずれかに記載のセメント硬化物。
- 前記金属材料は、チタンである、請求項1から請求項4のいずれかに記載のセメント硬化物。
- 前記チタンは、チタン粉末である、請求項5記載のセメント硬化物。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載のセメント硬化物を用いて建設された、鉄筋コンクリート構造体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016109752A JP2017214250A (ja) | 2016-06-01 | 2016-06-01 | セメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体 |
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JP2016109752A JP2017214250A (ja) | 2016-06-01 | 2016-06-01 | セメント硬化物及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造体 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2017214250A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023133069A1 (en) * | 2022-01-04 | 2023-07-13 | Tesla Nanocoatings, Inc. | Anticorrosive non-skid coating composition |
-
2016
- 2016-06-01 JP JP2016109752A patent/JP2017214250A/ja active Pending
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WO2023133069A1 (en) * | 2022-01-04 | 2023-07-13 | Tesla Nanocoatings, Inc. | Anticorrosive non-skid coating composition |
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