本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
図1,2において、車両としてのダンプカーVの車体フレーム1には、上面に開口部Oを有する荷箱2が傾動可能に軸支されており、この荷箱2と車体フレーム1間には、荷箱2を後方へ強制的に傾動させる周知の駆動機構(図示せず)が介装される。また荷箱2の左,右側板3,3の各上縁部には、荷箱2の開口部Oの少なくとも一部(実施形態では開口部Oの左右両外側部)を開閉し得る左右一対のシートSがそれぞれ取付けられる。
このシートSは、布等のシート素材4と、このシート素材4を所定の長方形状に保形する方形枠状のシート枠5とより構成され、そのシート枠5の、前後方向に延びる基端軸部5aは、左,右側板3,3の各上縁部に間隔をおいて設けた複数の軸受部6に回動自在に支承される。
前記基端軸部5aには、荷箱2の前端部に取付けた左右一対の電動式モータMの出力軸が減速機構7を介して連動連結される。従って、その左右少なくとも一方のモータMを一方向へ回転駆動すると、同側のシートSを、前記軸受部6より垂下して側板3の外面に沿って延びる開き位置Soから、前記軸受部6より水平外向きに延びる中間水平位置Shと、前記軸受部6より鉛直に起立する中間起立位置Svを経て、前記軸受部6より水平内向きに延びる閉じ位置Scまで強制的に閉成揺動させることができ、また左右少なくとも一方のモータMを他方向へ回転駆動すると、上記の逆の経路で同側のシートSを強制的に開放揺動させることができる。
左右の各モータMは、正転時及び逆転時にそれぞれ入力端子となる第1,第2受電部Ma,Mbを有する正,逆転可能な直流モータより構成される。そして、図4には、左右の各モータMを駆動制御して左右のシートSの開閉制御を行う制御回路Cの一例が示されるが、この回路説明については、後述する。尚、その制御回路Cは、左右のシートSの開閉制御を各独立して行うべく、左右の各シートSに対応して、同様の回路構成のものが2組設けられる。
またダンプカーVの運転席、例えばインストルメントパネルには、操作者がシートSを任意で開閉操作するためのコントローラ8が設けられる(図3参照)。このコントローラ8の操作部には、各モータMの正,逆転を選択可能で且つ電源スイッチを兼ねる正,逆転選択スイッチSWm、並びに左右のモータMを個別に回転駆動させる左用駆動スイッチSWa及び右用駆動スイッチSWbの各操作ノブが配設される。
正,逆転選択スイッチSWmは、3位置に切替え保持可能なトグルスイッチより構成される。また、左右の各駆動スイッチSWa,SWbは、操作ノブを1回押すとオン状態となり、その後、手を離して操作ノブが元位置に戻ってもオン状態が続くモーメンタリスイッチより構成される。尚、上記オン状態は、正,逆転選択スイッチSWmを中立位置に切換えることでオフ状態となる。
而して、正,逆転選択スイッチSWmの操作ノブが中立位置にあるときには、コントローラ8の電源がオフとなってモータMが停止状態に保持される。また同操作ノブが中立位置を挟んで一方側の正転選択位置又は他方側の逆転選択位置にあるときには、コントローラ8の電源がオンとなり且つモータMの正転又は逆転が選択可能である。そこで例えば、正,逆転選択スイッチSWmが正転選択位置に保持された状態において、左用駆動スイッチSWaの操作ノブが押圧操作されると、左シートS用の制御回路Cが左側のモータMを正転駆動させて左側のシートSが開放動作し、また右用駆動スイッチSWbの操作ノブが押圧操作されると、右シートS用の制御回路Cが右側のモータMを正転駆動させて右側のシートSが開放動作する。
また、正,逆転選択スイッチSWmが逆転選択位置に保持された状態において、左用駆動スイッチSWaの操作ノブが押圧操作されると、左シートS用の制御回路Cが左側のモータMを逆転駆動させて左側のシートSが閉じ動作し、また右用駆動スイッチSWbの操作ノブが押圧操作されると、右シートS用の制御回路Cが右側のモータMを逆転駆動させて右側のシートSが閉じ動作する。
次に図4を併せて参照して、前記制御回路Cの一例について説明する。尚、この制御回路Cは、前述のように左右のシートSの開閉制御を各独立して行うべく、左右の各モータMに対応して同様の回路構成のものが、バッテリ10とアース9(例えば車体フレーム1)間において2組設けられる。
次に、その1組について、回路構成を以下に説明する。尚、以下の説明は、モータM及びシートSが左右何れであるかを特に述べないで行う。
制御回路Cは、バッテリ10及びアース9間に互いに並列に介装された第1,第2接続路11,12と、第1接続路11に互いに直列に設けられて第1接続路11を個別に開閉する常開型の第1正転用開閉手段13及び第1逆転用開閉手段15と、第2接続路12に互いに直列に設けられて第2接続路12を個別に開閉する常開型の第2正転用開閉手段14及び第2逆転用開閉手段16と、それらの開閉手段13〜16を開閉制御可能な制御装置としての電子制御ユニットUとを備える。
電子制御ユニットUは、CPUの他、CPUと連係するメモリ、ハードディスク及びタイマー手段T(図4ではCPU及びタイマー手段Tを除き何れも不図示)や、後述する制限回路40を含むものであって、本実施形態ではコントローラ8に内蔵されており、且つバッテリ10からの電力で作動する。
第1接続路11の、第1正転用開閉手段13及び第1逆転用開閉手段15間からは第1通電路21が、また第2接続路12の、第2正転用開閉手段14及び第2逆転用開閉手段16間からは第2通電路22がそれぞれ分岐している。第1通電路21は、モータMの上記第1受電部Ma(即ちモータ逆転時に入力側となる端子)に、また第2通電路22は、モータMの上記第2受電部Mb(即ちモータ正転時の入力側となる端子)にそれぞれ接続される。
更に第1通電路21及び第2通電路22には、モータMの回転時にモータM、従って第1,第2通電路21,22を流れる電流(即ちモータの負荷電流)を検出する第1,第2検出センサとしての第1,第2電流計SE1,SE2がそれぞれ設けられる。
本実施形態においては、第1,第2電流計SE1,SE2として、安全上の観点から、第1,第2通電路21,22を流れる電流を電圧に変換して検出する電圧計がそれぞれ用いられるが、その場合でも、各通電路21,22を流れる電流の増減変化は、上記電圧計の計測値(検出電圧)の増減変化にリニアに対応する。尚、必要に応じて、第1,第2通電路21,22を流れる電流を電流計で直接検出することも可能である。
第1,第2正転用開閉手段13,14及び第1,第2逆転用開閉手段15,16は、互いに協働して本発明の通電遮断手段Xを構成するものであって、電子制御ユニットUから第1,第2正転用信号路23,24及び第1,第2逆転用信号路25,26をそれぞれ経て各々出力される通電指令信号に基づいて個別に開閉制御される。而して、各開閉手段13〜16は、通常は開放状態に保持されて対応する接続路11,12を遮断しており、また各開閉手段13〜16に通電指令信号(出力電圧)が印加されたときには閉成状態に切換わって、対応する接続路11,12を導通させ、モータMへの通電を可能とする。
また本実施形態では、第2正転用信号路24及び第1逆転用信号路25が、CPUから延びる共通信号路30に並列に接続されており、これに対し、第1正転用信号路23及び第2逆転用信号路26はCPUに直接(即ち共通信号路を介さずに)接続される。
そして、第2正転用信号路24には、共通信号路30(即ち後述する制限回路40)からの出力信号と第1正転用信号路23からの出力信号とが両方入力されたときだけ第2正転用開閉手段14に通電指令信号を出力する第1アンド回路31が設けられる。また、第1逆転用信号路25には、共通信号路30(即ち後述する制限回路40)からの出力信号と第2逆転用信号路26からの出力信号とが両方入力されたときだけ第1逆転用開閉手段15に通電指令信号を出力する第2アンド回路32が設けられる。
また電子制御ユニットUには、コントローラ8の前述の各スイッチSWm,SWa,SWbが接続される。そして、電子制御ユニットUは、バッテリ10から給電されており、且つコントローラ8の各スイッチSWm,SWa,SWbへの操作入力に基づいてモータMを駆動制御可能である。
例えば、正,逆転選択スイッチSWmが正転選択位置に選択保持された状態で、左右何れかの駆動スイッチSWa又はSWbが押圧操作されてオン状態になると、その押圧操作された駆動スイッチに対応した電子制御ユニットUのCPUからは、共通信号路30に対して制御信号即ち一定電圧の電流指令値aが出力されると共に、第1正転用信号路23に対して通電指令信号が出力される。これに応じて、第2正転用開閉手段14へは第1アンド回路31から通電指令信号が出力され、また第1正転用開閉手段13へは通電指令信号がCPUから直接出力されるため、その両開閉手段13,14が閉成状態となる。それにより、バッテリ10から、第2接続路12の上流部、第2通電路22、モータM、第1通電路21及び第1接続路11の下流部を経てアース9に至るモータ正転用回路が導通してモータMを正転駆動する。
一方、正,逆転選択スイッチSWmが逆転選択位置に選択保持された状態で、左右何れかの駆動スイッチSWa又はSWbが押圧操作されてオン状態になると、その押圧操作された駆動スイッチに対応した電子制御ユニットUのCPUからは、共通信号路30に対して制御信号即ち一定電圧の電流指令値aが出力されると共に、第2逆転用信号路26に対して通電指令信号が出力される。これに応じて第1逆転用開閉手段15へは第2アンド回路32から通電指令信号が出力され、また第2逆転用開閉手段16へは通電指令信号がCPUから直接出力されるため、その両開閉手段15,16が閉成状態となる。それにより、バッテリ10から、第1接続路11の上流部、第1通電路21、モータM、第2通電路22及び第2接続路12の下流部を経てアース9に至るモータ逆転用回路が導通して、モータMを逆転駆動する。
而して、電子制御ユニットUは、モータMが正転又は逆転駆動される場合においてモータMの負荷電流が所定の停止電流値I1 を超えたときに、その超えた状態の継続時間tをユニットU内のタイマー手段Tで計測し、且つその継続時間tが所定時間t0 以上となったか否かをCPUにおいて判定する。この場合、所定時間t0 としては、モータ起動時の突入電流が停止電流値I1 を超える時間よりも長い時間(例えば100m秒)がCPUにおいて予め設定される。そして、このCPU及び上記タイマー手段Tは、互いに協働して本発明の停止手段50を構成する。
即ち、停止手段50は、上記継続時間tが所定時間t0 以上となった場合だけ通電遮断手段Xに対し通電を停止させる(即ち通電を遮断し続ける)ための信号を出力(本実施形態では、CPUから共通信号路30に出力される前記電流指令値aの出力を停止すると共に、CPUから第1正転用開閉手段13及び第2逆転用開閉手段16への通電指令信号の出力も停止)するものであって、外乱等に因る負荷電流の短時間の上昇(ノイズ、例えば突入電流)に対して通電を即座には全停止しないノイズ対応機能を発揮し得るものである。従って、後述するように、負荷電流が所定の停止電流値I1 を短時間(即ち上記所定時間t0 よりも短い時間)だけ超えた場合には、モータMへの通電が全停止状態とはならず、シートSの開閉動作は中断しない。
更に電子制御ユニットUは、モータMが正転又は逆転駆動される場合においてモータMへの通電を断続的に制限するように作動可能な制限手段としての制限回路40を備えている。この制限回路40は、モータMの駆動過程で、モータMの負荷電流が上記停止電流値I1 よりも高い所定の制限電流値I3 に近づいた時期(特に本実施形態では停止電流値I1 よりも高く且つ制限電流値I3 よりも低い制限開始電流値I2 を超えたとき)に作動状態となる。そして、制限回路40は、これが作動状態になると、たとえ上記電流指令値aが出力状態にあってもモータMへの通電が断続的に遮断されるように通電遮断手段Xを制御する(より具体的に言えば、開閉手段14,15に対し出力される通電指令信号を断続的に出力停止させる通電抑制機能を発揮する)。尚、上記制限電流値I3 としては、モータMの起動時に通常想定される突入電流と略同じか又はそれに比較的近い電流値が設定される。
この制限回路40は、これの上記作動状態ではモータMの負荷電流が上記制限電流値I3 に近づくにつれて通電の遮断時間tX を長くする遮断時間調整機能を有している。この調整機能により、モータMの負荷電流が制限電流値I3 に近づくと、負荷電流の上昇が制限電流値I3 と同じか又は僅かに低い程度の電流値に抑制可能となり、これにより、例えば、モータ起動時の突入電流も制限電流値I3 と同じか又は僅かに低い程度の電流値に抑えられる。
また制限回路40は、後述するように一定の振幅・周期の波形信号と負荷電流とに基づいて、モータMへの通電を断続的に遮断する制御の開始時期(本実施形態では該開始時期を定めるのに用いる制限開始電流値I2 )、及び通電の遮断時間tX を設定する。
次に制限回路40の一例について具体的に説明する。この制限回路40は、電子制御ユニットU内の上記した共通信号路30に設けられる。
その共通信号路30の途中には、モータMを前述のように正転又は逆転させる時にCPUから出力される一定の電流指令値aに対し、電流計SE1,SE2が出力する計測値を引き算する加算回路27が設けられる。即ち、本実施形態では、モータMの回転時にCPUから共通信号路30に出力された上記電流指令値a(一定電圧)と、電流計SE1,SE2が出力する計測値(即ち前述の電圧計の検出電圧)を負に反転させたものとを加算した電圧が加算回路27から出力される。而して、電流指令値aは、上記制限電流値I3 を決定するための値となることから、制限電流値I3 が異なる複数機種のモータMに対しては、モータ毎に異なる電流指令値aが設定される。
また、共通信号路30には、加算回路27の下流側で且つ第2正転用信号路24及び第1逆転用信号路25の上流側において比較回路28が設けられる。この比較回路28は、モータMの回転時に振幅・周期(例えば周波数が10kHz)が一定である波形信号としての三角波状の電圧信号を出力し続ける波形信号生成回路29からの出力電圧と、上記加算回路27からの出力電圧とを比較する。そして、この比較回路28は、モータMの負荷電流が比較的小さくて後者の電圧が前者の電圧よりも高いときは、アンド回路31,32に対し所定信号を出力し、またモータMの負荷電流が増大して後者の電圧が前者の電圧以下に低下したときは上記所定信号の出力を停止させる。
このように本実施形態の制限回路40は、上記した波形信号生成回路29、並びに共通信号路30上の加算回路27及び比較回路28を少なくとも含む。
而して、第1アンド回路31は、これに比較回路28からの上記所定信号と、第1正転用信号路23からの出力信号とが両方とも入力された場合は所定の通電指令信号を出力して第2正転用開閉手段14を閉じ動作させ、また、そうでない場合は上記通電指令信号の出力を停止させることで上記第2正転用開閉手段14を開き動作させて第2接続路12を遮断する。一方、第2アンド回路32は、これに比較回路28からの上記所定信号と、第2逆転用信号路26からの出力信号とが両方とも入力された場合は所定の通電指令信号を出力して第1逆転用開閉手段15を閉じ動作させ、また、そうでない場合は上記通電指令信号の出力を停止させることで第1逆転用開閉手段15を開き動作させて第1接続路11を遮断する。
次に本実施形態の作用を説明する。いま、コントローラ8の正,逆転選択スイッチSWmが正転選択位置に選択保持された状態で、左右少なくとも一方の駆動スイッチSWa,SWbが押圧操作されてオン状態になると、その押圧操作された駆動スイッチに対応した電子制御ユニットUのCPUからは、共通信号路30に対し所定の電流指令値aが出力されると共に第1正転用信号路23に対し所定の通電指令信号が出力される。これに応じて前述の如く第1,第2正転用開閉手段13,14が閉じ動作すると、バッテリ10から、第2接続路12の上流部、第2接続路22、モータM、第1接続路21及び第1接続路11の下流部を経てアース9に至るモータ正転用回路が導通して、モータMを正転駆動しシートSを開放させる。
このようなモータMの正転動作を、シートSの閉じ位置Scから開き位置Soに至るまで行う場合の、負荷電流の時間変化の一例を図5のタイミングチャート(実線参照)で示す。尚、この負荷電流の経時変化において、最初の急激なピークはモータMの起動時における突入電流を示し、また最後のピークは、シートSが開き位置So(開き限界)に到達したことに伴い負荷電流の急増が制限電流値I3 付近で頭打ちとなった状態を示し、更にその直後の電流急減は、上記継続時間t0 が経過したことにより通電が遮断されたことを意味する。
一方、正,逆転選択スイッチSWmが逆転選択位置に選択保持された状態で、左右何れかの駆動スイッチSWa又はSWbが押圧操作されてオン状態になると、その押圧操作された駆動スイッチに対応した電子制御ユニットUのCPUからは、共通信号路30に対し所定の電流指令値aが出力されると共に第2逆転用信号路26に対し所定の通電指令信号が出力される。これに応じて前述の如く第1,第2逆転用開閉手段15,16が閉じ動作すると、バッテリ10から、第1接続路11の上流部、第1接続路21、モータM、第2接続路22及び第2接続路12の下流部を経てアース9に至るモータ逆転用回路が導通して、モータMを逆転駆動しシートSを閉成させる。
尚、このようなモータMの逆転動作をシートSの開き位置Soから閉じ位置Scに至るまで行う場合の負荷電流の時間変化は、その初期と終期においては、モータMの上記正転時と同様であるが、その中間の期間は、図5の鎖線に示すカーブとなる。
そして、モータMの正転・逆転の際の負荷電流が電流計SE1,SE2で計測され、その計測値は、電子制御ユニットUのCPU及び制限回路40にフィードバックされる。
而して、モータMの正転又は逆転中において、[1]外乱、例えば突入電流の発生や、シートSにその開閉途中で石等の障害物が当たったり突風が吹く等してモータMの負荷が一時的に急増した場合や、[2]シートSが開き位置So又は閉じ位置Scに到達する等してそれ以上開閉動作し得なくなった場合には、モータMの負荷電流が急激に増大変化して所定の停止電流値I1 を超える事態となる。
その場合、負荷電流が停止電流値I1 を超えた状態の継続時間tが電子制御ユニットUにより計測されるが、上記[1]の場合は、継続時間tが所定時間t0 (例えば100m秒)より短く、CPUは、電流指令値aと、信号路23又は26への通電指令信号とを出力し続けるため、モータMへの通電状態が継続する。また上記[2]の場合は、継続時間tが所定時間t0 (例えば100m秒)以上となるのに応じて、CPUは直ちに前記電流指令値aの出力と、信号路23又は26への通電指令信号の出力とを停止する。これにより、電子制御ユニットUから閉じ動作中の開閉手段14又は15に対し通電指令信号が出力されなくなるので、それまで閉じ動作していた開閉手段14又は15が開かれて、モータMへの通電が全停止となる。
尚、上記継続時間tのカウント(計測)は、負荷電流が停止電流値I1 を超える度毎に(即ち負荷電流が停止電流値I1 を超えた時点でその都度)、それ以前のカウント時間をリセット(即ちそれ以前にカウントされた時間データを消去)した上で、開始される。例えば、上記継続時間tのカウント開始から短い期間であって上記所定時間t0 に達する前に負荷電流がまた停止電流値I1 を超えたときは、それまでのカウント時間をリセットして、継続時間tのカウントを0秒から開始する。
かくして、モータMの負荷電流が所定の停止電流値I1 を超えたときは、その超えた状態が所定時間t0 継続するのを確認した上で、通電遮断手段XがモータMへの通電を全停止させるため、モータMの負荷電流が上昇し続けることによるモータMや通電回路部の焼付き発生を防止可能となるばかりか、外乱等に起因してモータMの負荷電流が瞬間的に(即ち所定時間t0 よりも短い時間だけ)停止電流値I1 を超えた場合でも、モータMへの通電が即座に全停止されてしまう不都合を回避できて、その外乱等でシートSの開閉動作が一時的に中断するのを効果的に防止できる。これにより、モータMの過負荷状態が続くことを回避しながらシートSをスムーズに開閉動作させることができる。
ところで、本実施形態の電子制御ユニットUは、モータMの負荷電流が上記停止電流値I1 よりも高く且つ所定の制限電流値I3 よりも低い制限開始電流値I2 を超えると、モータMへの通電を制限するよう作動する制限回路40を備えており、この制限回路40は、これが作動状態になったときは、たとえ上記電流指令値aが出力状態にあってもモータMへの通電を断続的に遮断し得るように通電遮断手段X(特に開閉手段14,15)を制御する。しかも制限回路40は、これの作動状態では、負荷電流が上記制限電流値I3 に近づくにつれて上記通電の遮断時間tX を長くなるよう設定して負荷電流の増大を抑制する。
次に、この制限回路40による通電抑制機能について、図6のタイミングチャートで説明する。尚、図6の(A)〜(D)は、外乱(例えばシートSの開放位置So又は閉じ位置Scへの到達)に因りモータMの負荷電流が急増して上記制限開始電流値I2 を超えたときに、制限回路40がモータMへの通電を断続的に遮断する通電抑制機能を開始する前後の比較的短い期間の状態を示す。
特に図6の(A)は、モータMの負荷電流が増大したときの電流計SE1,SE2の計測値を負に反転させたものと上記電流指令値aとの加算値(即ち加算回路27の出力)の時間変化を示している。また図6の(B)は、比較回路28内で、上記加算値と波形信号生成回路29からの三角波状信号とを重ね合わせて比較する処理をイメージ化して示している。尚、判り易くするために、図6下段に示す図5対応図からも明らかなように、時間幅(横軸)をかなり拡大し且つ電流変化(縦軸)もかなり誇張して描いている。
また(C)は、波形信号生成回路29からの三角波状信号が上記加算値よりも低い状態のときだけ比較回路28(従ってアンド回路31又は32)から通電指令信号がパルス状に断続的に出力されている状態を示しており、その出力変化に基づいて開閉手段14,15を断続的に開・閉動作させることができる。また(D)は、(A)〜(C)と同時期のモータ負荷電流(即ち通電路21,22を流れる電流)の経時変化を示す。
而して、上記した開閉手段14,15に対する断続的な開閉制御は、モータMの負荷電流が停止電流値I1 を超えた後(即ち上記継続時間tの計時中)、制限電流値I3 に達する少し前に(即ち波形信号生成回路29からの三角波状信号が上記加算値よりも低下した時点から)制御が開始されるものであり、従って、その制御開始時点でのモータMの負荷電流値が上記制限開始電流値I2 となる。
こうして、モータMの負荷電流が制限開始電流値I2 を超えると、波形信号生成回路29からの三角波状信号に対し上記加算値が低い期間と高い期間とが短い周期で交互に繰り返される。これにより、比較回路28(従ってアンド回路31,32)からは制御信号の非出力状態と出力状態が短い周期で交互に繰り返されるため、その出力停止期間に対応してモータMへの通電が断続的に遮断される。この場合、負荷電流が制限開始電流値I2 よりも高い所定の制限電流値I3 に近づく(即ち上記加算値が低くなる)につれて波形信号生成回路29からの三角波状信号に対し上記加算値が低い期間が長くなり、この期間に対応して、比較回路28(従ってアンド回路31,32)からの通電指令信号の断続的な出力停止期間が段々と長くなる。従って、モータMの負荷電流が制限電流値I3 に近づくにつれて、モータMへの通電の遮断時間tX が長く設定されることとなって、負荷電流の増大が無理なく的確に抑制可能となる。
かくして、制限電流値I3 を低めに抑えたとしても、突入電流が停止電流値I1 を超える時間よりも上記所定時間t0 を長く設定することで、突入電流に因る通電遮断の事態を回避しつつ、モータMの負荷電流の上昇を制限電流値I3 と同等又はそれより僅かに低い程度に確実に抑制可能となり、例えば、モータ起動時の突入電流も、制限電流値I3 と同等又はそれより僅かに低い程度に抑えられる。これにより、過大電流に因るモータMや通電回路部の焼付き発生を未然に効果的に防止し得ることは元より、停止電流値I1 を突入電流よりも十分高く設定する必要はなくなるため、負荷電流が過度に増大する頻度を抑えてモータM等の耐久性向上が図られる。
また、上記のように負荷電流が制限電流値I3 に至る少し前から(即ち制限開始電流値I2 を超えると)モータMへの通電が断続的に遮断される通電抑制制御が実行されるが、その制御過程では、制限電流値I3 に近づくにつれて通電遮断時間tX を長くすることで、負荷電流の増大が制限電流値I3 直前で頭打ちとなるよう抑制されるため、モータMへの通電を完全に停止する前にモータMの回転(延いてはシート開閉動作)を減速可能として、シート開閉速度の急変に因るショックを抑えることができる。
そして、このような負荷電流の断続的な通電抑制の最中に上記継続時間tが所定時間t0 以上となるのが確認されると、モータMへの通電が全停止となる。
尚、上記した制限回路40による断続的な通電抑制機能は、モータMの起動時においても突入電流が制限開始電流値I2 を瞬間的に超えることで開始されるが、この場合は、突入電流が直後に急減するため、波形信号生成回路29からの三角波状信号に対し加算回路27の出力(即ち上記加算値)が低い期間は、モータ起動時の極く短時間だけで終了することとなって、制限回路40による通電抑制機能は短時間で終了する。このとき、突入電流が停止電流値I1 を超える時間よりも上記所定時間t0 が長く設定されている関係で、モータMへの通電は停止しない。
ところで電流計SE1,SE2は、ダンプカーVの運転席内のコントローラ8内又はその付近に配設されており、この電流計SE1,SE2と荷箱2側のモータMとの間を接続する外部配線が車体外面に広範囲に亘り露出状態で取り回される場合が多い。特にダンプカーVの場合は、荷箱2を後方にダンプさせるため、上記外部配線を、車体後端部に位置するダンプヒンジの周辺を経由して長く取り回す必要がある。
このため、その外部配線が他物との接触等に起因して絶縁が破損し短絡する恐れがあり、その場合には、短絡箇所(図4で符号SP1,SP2で例示)よりも上流側の接続路21,22に過電流が流れる恐れがあるが、短絡箇所よりも下流側の接続路21,22にある電流計SE1,SE2では過電流を検出できない。例えば、モータMの負荷電流検出のために仮に第1電流計SE1のみを設けると、それがモータMの正転時(即ち開閉手段13,14が閉じ動作)に短絡箇所SP1又はSP2より下流側になって過電流を検出できなくなり、また、仮に第2電流計SE2のみを設けると、それがモータMの逆転時(即ち開閉手段15,16が閉じ動作)に短絡箇所SP1又はSP2より下流側になって過電流を検出できなる事態を招く虞れがある。
しかしながら本実施形態では、第1,第2接続路21,22の何れにも、モータMの負荷電流を別々に検出し得る一対の電流計SE1,SE2が個別に設けられるので、モータ正転時と逆転時でモータMに流れる負荷電流が逆方向となっても、車両荷箱2上のモータMに繋がる上記外部配線の短絡に起因した過電流を何れかの電流計SE1,SE2で的確に検出可能となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、前記実施形態では、通電遮断手段Xを構成する開閉手段13,14;15,16としてFET(電界効果トランジスタ)を用いたものを示したが、通電遮断手段Xを構成する開閉手段は実施形態に限定されず、同様の回路開閉機能を果たす種々の電子部品(例えばリレースイッチ等)の使用も可能である。
また、前記実施形態では、荷箱2が搭載される車両としてダンプカーVを例示したが、本発明は、ダンプカー以外の種々の荷箱付き車両にも実施可能である。
また、前記実施形態では、シートSを荷箱2の左右の側板3に開閉揺動可能に軸支したものを示したが、本発明は、荷箱2の前板(例えばフロントパネル)または後板(例えばテールゲート)にシートを開閉揺動可能に軸支した荷箱付き車両にも実施可能である。
また、前記実施形態では、シートSの開閉を任意に操作入力するためのコントローラ8を車両運転席に配設したものを示したが、コントローラの設置場所は、実施形態に限定されず、作業員が任意操作可能な適宜部位、例えば車体フレーム1又は荷箱3の適所に設置してもよい。また前記実施形態では、電流計SE1,SE2をコントローラ8内又はその付近に設けたものを示したが、この電流計の設置場所も実施形態に限定されない。
また前記実施形態では、第2正転用信号路24及び第1逆転用信号路25に対し制限回路40を共通化して回路構成の簡素化を図るために、第2正転用信号路24及び第1逆転用信号路25をCPUに並列に接続する共通信号路30に制限回路40を設けたものを示したが、本発明では、第2正転用信号路24及び第1逆転用信号路25をCPUに直接(即ち共通信号路30を介さずに)接続して、その各々の信号路24,25に制限回路40を連係させるようにしてもよい。
また前記実施形態では、モータMへの通電を断続的に遮断制御する通電抑制制御の開始時期を決める制限開始電流値I2 として、一定の振幅・周期の波形信号(即ち波形信号生成回路29の出力)とモータMの負荷電流に基づいて設定される変数を用いたものを示したが、本発明では、制限開始電流値I2 として、停止電流値I1 よりも高く且つ制限電流値I3 よりも低い一定値を用いてもよい。
また前記実施形態では、制限開始電流値I2 が停止電流値I1 よりも高く且つ制限電流値I3 よりも低い値となるように電流指令値aや波形信号生成回路29の出力波形信号等を設定したものを示したが、本発明では、制限開始電流値I2 が停止電流値I1 よりも低い値となるように電流指令値aや波形信号生成回路29の出力波形信号等を設定してもよい。但し、その場合でも、モータMへの通電が完全に停止するときの負荷電流は、停止電流値I1 よりも高く且つ制限電流値I3 よりも低い値となるように設定される。
また、前記実施形態では、モータMの負荷電流が所定の停止電流値I1 を超えた場合において、更にその負荷電流が制限電流値I3 に近づく(即ち制限開始電流値I2 を超える)と、制限手段としての制限回路40によりモータMへの通電を断続的に遮断することで通電を抑制するものを示したが、本発明は、制限回路40を省略したもの(即ち、モータMの負荷電流が停止電流値I1 を超えた場合において、その超えた状態の継続時間tが所定時間t0 以上となるまでの期間に、負荷電流が制限電流値I3 に近づいても(即ち制限開始電流値I2 を超えても)上記のような通電抑制、即ち断続的な通電遮断を実行しないもの)にも実施可能である。
また前記実施形態では、電子制御ユニットUがコントローラ8に内蔵されるものを例示したが、電子制御ユニットUの設置部位は実施形態に限定されず、コントローラ8の外の車両適所(例えば運転席、荷箱、荷箱近傍の車体フレーム上等)に設置してもよい。
また前記実施形態では、波形信号生成回路29から出力される波形信号を三角波信号としたものを示したが、本発明では、その他の波形信号、例えば正弦波信号や矩形波信号を用いることも可能である。
また前記実施形態では、車両荷箱上のモータMに繋がる外部配線の短絡時に過電流を確実に検出可能とするために、モータMを挟む一対の通電路21,22に、モータの負荷電流を別々に検出し得る一対の検出センサSE1,SE2をそれぞれ設けたものを示したが、本発明は、何れか一方の通電路21又は22にのみ電流計SE1又はSE2を設けるものに適用してもよい。
また、前記実施形態では、モータMの負荷電流が所定の停止電流値I1 を超えたときに、その超えた状態の継続時間tが所定時間t0 以上となるのに応じてモータMへの通電を停止する制御を、モータMへの通電開始時点より実行するものを示したが、本発明では、斯かる制御を、モータMへの通電開始時点よりも後で実行開始するようにしてもよい。例えば、モータMへの通電開始時点から、突入電流が流れ終わる時点までの所要時間の経過後に上記制御を実行開始するように設定すれば、モータ起動時に突入電流が停止電流値I1 を所定時間t0 以上に渡り超えても、モータMの通電を停止しないようにできる。これにより、例えば、突入電流が停止電流値I1 を超える時間よりも所定時間t0 を仮に短く設定した場合でも、突入電流に因るモータMへの通電停止を回避しながら、突入電流に相当する過大電流を制限回路40で抑制可能となる。そして、このように所定時間t0 を、突入電流が停止電流値I1 を超える時間よりも短く設定することも、前記実施形態のように所定時間t0 を、突入電流が停止電流値I1 を超える時間よりも長く設定することも可能となるため、それだけ所定時間t0 の設定自由度が高くなる。
また本実施形態では、制限手段としての制限回路40として、負荷電流が制限電流値I3 に近づいた(即ち制限電流値I3 よりも低い制限開始電流値I2 を超えた)ときに作動状態となって、モータMへの通電を断続的に遮断する制御を開始するものを示したが、本発明では、負荷電流が制限電流値I3 に近づく前から(例えば、モータMへの通電が開始された当初より)制限手段即ち制限回路40が作動状態となって、上記通電を断続的に遮断する制御を開始するようにしてもよい。この場合、例えば、モータMへの通電を、一定の周期及び一定の通電遮断時間で断続的に制御するPWM制御をモータMへの通電開始直後より実行することでモータMを一定の最大速度で回転駆動し、その実行中に負荷電流が制限電流値I3 に近づいたときは、負荷電流が制限電流値I3 に近づくにつれて上記通電の遮断時間を長くするようにしてもよい。尚、上記場合には、上記制限開始電流値I2 を用いなくても、通電を断続的に遮断する制御を開始可能である。
また前記実施形態では、モータMの負荷電流が停止電流値I1 を超えた状態の継続時間tを計測し且つその継続時間tが所定時間t0 以上となるのに応じてモータMへの通電停止の指令信号を通電遮断手段X(即ち開閉手段13〜16)に出力する停止手段50を、CPU及びタイマー手段Tで構成したものを示したが、本発明では、CPUとは別の停止回路に、タイマー手段Tで計測された上記継続時間tが所定時間t0 以上となったか否かの判断機能を担わせ、継続時間tが所定時間t0 以上になるのに応じて上記停止回路から通電遮断手段X(即ち開閉手段13〜16)に通電停止の指令信号を出力するようにしてもよい。このように停止手段は、CPUを用いても、或いはCPUとは別の停止回路を用いてもそれぞれ構成可能であるため、それだけ設計の自由度を高めることができる。
また前記実施形態では、モータMへの通電を断続的に遮断し且つその通電の遮断時間tX が、所定の制限電流値I3 に負荷電流が近づくにつれて長くなるように通電遮断手段X(即ち開閉手段13〜16)を制御する制限手段を、CPUとは別の制限回路40で構成したものを示したが、本発明では、斯かる制限回路40を省略して、制限回路40の機能と同等の機能をCPUに担わせるようにしてもよい。このように制限手段は、制限回路40を用いても、或いはCPUに兼用させてもそれぞれ構成可能であるため、それだけ設計の自由度を高めることができる。