JP2017213799A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラインヘッド備えた記録装置を使用した場合に、つなぎスジが目立たず、均一性及び発色性に優れた画像を記録することが可能な、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを吐出するラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、前記インクを記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法である。樹脂が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する、酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂であり、インクの粘度が、2.5mPa・s以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びそれに用いるインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録装置は、低電力、低コスト、及び省スペースという利点を活かし、オフィスなどでの利用が増加しつつある。インクジェット記録装置に採用されている記録ヘッドの走査方式として、シリアル方式を挙げることができる。シリアル方式では、用紙送り方向(主走査方向)に対して直交する方向(副走査方向)に記録ヘッドを繰り返し移動させて画像を記録する。シリアル方式の記録ヘッドは比較的小さいため、記録装置本体を小型化することができる。また、近年では、記録速度(スループット)のさらなる向上のため、吐出口の配列幅を用紙の最大幅相当まで延ばした記録ヘッド、すなわち、ラインヘッドを採用した記録装置が開発されている。シリアル方式とは異なり、ラインヘッド方式では記録ヘッドの移動は行わずに、用紙の搬送のみが行われるため、記録速度の向上に有利である。
また、オフィス用途のインクジェット用の水性インクとしては、耐水性の観点から、色材として顔料を用いた顔料インクが主として使用されている。しかし、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いて顔料インクで画像を記録すると、以下のようなラインヘッド特有の課題が生ずる。すなわち、隣接して配置された記録素子基板(チップ)同士の境目部分におけるノズル列の不連続な箇所で記録された画像に、主走査方向に沿った縦スジ(以下、「つなぎスジ」とも記す)が入りやすくなる。シリアルヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いて記録する場合に、記録部分のつなぎ目における白すじの発生を抑制すべく、表面張力を制御した顔料インクが提案されている(特許文献1)。
特開2008−308664号公報
本発明者らは、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、引用文献1で提案された顔料インクで記録した画像の「つなぎスジ」について評価した。その結果、つなぎスジの発生は抑制されるものの、画像の発色性が低下しやすくなることが判明した。また、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、顔料インクで記録した場合、顔料の沈降に起因して画像の均一性が低下するといった新たな課題が生ずることがわかった。均一性の低下は、インクの粘度を高め、顔料の沈降を生じにくくすることで改善しうる。しかし、インクの粘度上昇に伴って、得られる画像につなぎスジが目立つようになることが判明した。
したがって、本発明の目的は、ラインヘッドを備えた記録装置を使用した場合に、つなぎスジが目立たず、均一性及び発色性に優れた画像を記録することが可能な、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを吐出するラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記樹脂が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する、酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂であり、前記インクの粘度が、2.5mPa・s以上であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、ラインヘッドを備えた記録装置を使用した場合に、つなぎスジが目立たず、均一性及び発色性に優れた画像を記録することが可能な、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
ラインヘッドの一例を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。 ラインヘッドにより画像を記録するイメージ図である。 インクジェット記録装置の一例を示す模式図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、顔料及び樹脂を含有する水性インクと、水性インクを吐出するラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、水性インクを記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法である。そして、樹脂が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する、酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂であり、インクの粘度が、2.5mPa・s以上であることを特徴とする。このような構成とすることで、つなぎスジが目立たず、均一性及び発色性に優れた画像を記録することが可能であるとともに、吐出安定性にも優れているといった効果を得ることができる。このような効果を得ることができる理由について、本発明者らは以下のように推測している。
ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置で記録した画像に発生しやすい「つなぎスジ」は、ラインヘッドの記録素子基板の端部に位置するノズルにおいて、気流に伴って生ずるインクの吐出よれに主に起因する。吐出よれの影響を減らすには、インクのドット径を大きくすることが有効である。従来の顔料インクの場合、一般的には、界面活性剤の種類や添加量を調整することによってインクのドット径を大きくすることができる。しかし、界面活性剤の種類や添加量の調整によってインクのドット径を大きくすると、記録媒体の垂直方向(内部)へのインクの浸透性が高くなり過ぎる場合がある。このため、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置のような記録速度が速いシステムにおいては、得られる画像の発色性が低下しやすくなる。これに対して、本発明のインクジェット記録方法によれば、画像の発色性を損なうことなく、インク滴のドット径を大きくすることが可能である。これは、以下のようなメカニズムによると推測される。
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクに含有されるウレタン樹脂は、酸価が30mgKOH/g以上であり水溶性が高いため、インク中においてほぼ溶解した状態で存在している。また、ウレタン樹脂は、その分子中にウレタン結合に起因する水素結合部位を有するため、普通紙などの記録媒体に含まれるセルロースとの間で水素結合による相互作用を生ずる。このため、ウレタン樹脂は記録媒体に対して高い吸着性を示す。
したがって、ウレタン樹脂の高い水溶性と記録媒体に対する高い吸着性により、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、記録媒体に対する濡れ性が特異的に高いと考えられる。このため、記録媒体に付与されたインク滴は、記録媒体の表面で迅速に濡れ広がり、ドット径が大きくなりやすい。また、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、従来のインクと異なり、記録媒体の垂直方向(内部)への浸透性を高めることなく、ドット径を大きくすることが可能であるため、発色性に優れた画像を記録することができる。以上のようなメカニズムによって、本発明のインクジェット記録方法によれば、つなぎスジが目立たず、発色性に優れた画像を記録することができると考えられる。また、このような効果は、顔料が沈降しにくい、2.5mPa・s以上と粘度の比較的高いインクを用いた場合であっても得ることができる。
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、顔料及び樹脂を含有する水性インクと、その内部に水性インクが充填された、水性インクを吐出するラインヘッドとを備える。インクに含まれる樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する、酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂である。そして、インクの粘度は、2.5mPa・s以上である。以下、図面を参照しつつ、本発明のインクジェット記録装置の詳細について説明する。
図2は、ラインヘッドにより画像を記録するイメージ図である。また、図3は、インクジェット記録装置の一例を示す模式図である。図3に示す記録装置M4000では、記録装置本体にラインヘッド(記録ヘッドH1000)が固定されており、記録媒体47を矢印45の方向に搬送して記録する方式が採用されている。記録装置M4000は、例えば、イエローインク用の記録ヘッドH1000Y、マゼンタインク用の記録ヘッドH1000M、シアンインク用の記録ヘッドH1000C、及びブラックインク用の記録ヘッドH1000Bkを備える。
図3に示す記録ヘッドH1000Y〜H1000Rは、記録装置M4000に載置された記録ヘッドホルダ42によって固定されている。図2及び3では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色、さらには反応液を別々の記録ヘッドから吐出する構成を示している。勿論、一つの記録素子基板に設けられた複数の吐出口列のそれぞれから、複数のインク、さらには反応液を吐出して画像を記録する構成であってもよい。
インクジェット記録装置は、インク中の色材を凝集させる成分を含有する反応液を記録媒体に付与する手段を備えていてもよい。反応液を記録媒体に付与する手段としては、塗布方式によって反応液を記録媒体に塗布する手段や、吐出方式で反応液を記録媒体に付与する手段などを挙げることができる。塗布方式によって反応液を記録媒体に塗布する手段では、例えば、従来公知のローラなどの塗布部材を用いて反応液を記録媒体に塗布する。また、吐出方式で反応液を記録媒体に付与する手段では、例えば、図3に示すような、反応液用のラインヘッド(記録ヘッドH1000R)などの吐出デバイスを用いて反応液を記録媒体に付与する。図1に示すように、4色のインクに対応して4つの記録ヘッドを設ける場合、反応液を記録媒体に付与する手段を別途設けることができる。
インクジェット記録装置は、ラインヘッド内のインクの温度を制御する手段を備えていてもよい。ラインヘッド内のインクの温度は、例えば、ラインヘッドの温度を制御する手段によって制御することができる。ラインヘッドの温度を制御する手段としては、例えば、記録ヘッドに接触するように配設される温度調整用のヒータや、インク吐出用のヒータなどを挙げることができる。インク吐出用のヒータによってラインヘッドの温度を制御(加熱又は加温)するには、例えば、インクが吐出しない程度の電流を繰り返し通電すればよい。ラインヘッド及びラインヘッド内のインクの温度は、例えば、ラインヘッドに設けた温度センサーで読み取ることができる。ラインヘッドの温度は40〜70℃に調整されることが好ましい。
給紙カセット46は、その中に普通紙などの記録媒体47が収納されており、装置本体に着脱自在に装着されている。ピックアップローラ48は、給紙カセット46内に収納された記録媒体47のうち、最上面の1枚を送り出す部材である。搬送ローラ49は、ピックアップローラ48より送り出された記録媒体47を搬送路50へと搬送する部材である。また、搬送路50の出口側に配設された搬送ローラ51は、搬送ベルト44に載せた状態で、記録媒体47を記録ヘッドH1000の方向へと搬送する部材である。
図1は、ラインヘッドの一例を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。図1に示すように、ラインヘッド(記録ヘッドH1000)は、記録素子ユニットH1400と、記録素子ユニットH1400にインクを供給するための液体供給ユニットであるインク供給ユニットH1500とを備える。インク供給ユニットH1500は、インク室(図示せず)に記録装置などの外部からインクを供給するために外部と接続する接続口H1710が形成された接続部H1700を備える。また、記録素子ユニットH1400は、記録素子基板H1100、支持基板H1200、及び配線部材H1300で構成されている。
支持基板H1200は、記録素子基板H1100及び配線部材H1300を保持して固定する部材であり、インク供給ユニットH1500から供給されるインクを記録素子基板H1100に供給するインク供給孔H1210が形成されている。複数の記録素子基板H1100は、支持基板H1200の主面に予め定められた位置精度で配置され、固定されている。また、複数の記録素子基板H1100は、隣接する記録素子基板H1100間で吐出口列の方向に沿って吐出口が連続して配置されるように、支持基板H1200上に千鳥状に配置されている。このように、隣接する記録素子基板H1100のつなぎ目の吐出口を重複させて記録素子基板H1100を配置することによって記録素子基板の位置ずれなどによる画像への影響を補正可能とし、記録幅が長尺なフルラインタイプの記録ヘッドを実現している。
配線部材H1300は、記録素子基板H1100に設けられた記録素子を駆動させる電気的な信号や電力を、記録ヘッドH1000の外部(記録装置)から記録素子基板H1100へと伝達するため、記録素子基板H1100と電気的に接続されている。配線部材H1300としては、フレキシブル配線基板などの可撓性を有するプリント配線基板が用いられる。そして、可撓性を有する配線部材H1300は、記録素子基板H1100と記録装置との電気的接続が容易に行えるよう折り曲げられ、インク供給ユニットH1500に固定されている。
ラインヘッドのインク吐出機構としては、力学的エネルギーを利用した機構や、インクに熱エネルギーを作用させて吐出する機構などがある。本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェット記録装置のラインヘッドは、いずれのインク吐出機構を採用したものであってもよい。力学的エネルギーを利用した吐出機構を有するラインヘッドは、通常、複数のノズルを有するノズル基板と、ノズルの吐出口に対向して配置された圧電材料及び導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクとを備える。そして、印加電圧により圧力発生素子を変位させることで、ノズルからインクを吐出することができる。また、インクに熱エネルギーを作用させて吐出する機構を有するラインヘッドは、例えば、インクに膜沸騰を生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を有する、サーマルインクジェット方式のラインヘッドである。
(インク)
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、顔料及び樹脂を含有する。
[顔料]
顔料としては、カーボンブラックなどの無機顔料及び有機顔料を挙げることができる。顔料としては、インクジェット記録用のインクに使用可能な公知の顔料をいずれも使用することができる。顔料としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプの顔料、及び顔料の粒子表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散顔料)などを用いることができる。樹脂分散タイプの顔料としては、高分子分散剤を使用した樹脂分散型顔料、顔料の粒子の表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル型顔料、及び顔料の粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合した樹脂結合型自己分散顔料などがある。なお、分散方法の異なる顔料を併用することもできる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インク中の顔料の平均粒子径は、50nm以上300nm以下であることが好ましい。本明細書における「平均粒子径」とは、動的光散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定される値を意味する。後述の実施例においては、動的光散乱方式の粒度分布測定装置として、商品名「ナノトラックUPA150EX」(日機装製)を使用してD50を測定した。顔料の粒子径分布の50%累積値D50(nm)は、体積基準の粒子径の平均値(体積平均粒子径)である。
[ウレタン樹脂]
インクに含有される樹脂は、酸価が30mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下のウレタン樹脂である。酸価が30mgKOH/g未満のウレタン樹脂は水溶性が低いため、つなぎスジの抑制効果及び吐出安定性が不十分になる。
ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する。このようなウレタン樹脂は、ポリイソシアネートポリオール、及び酸基を有するジオールを反応させて得ることができる。ウレタン樹脂は上記の各ユニットの他に、鎖延長剤などに由来するユニットを有していてもよい。
ポリイソシアネートは、その分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや、芳香族ポリイソシアネートを挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
ウレタン樹脂には、必要に応じて1種又は2種以上のポリイソシアネートを用いることができる。上記のポリイソシアネートのなかでも、脂環族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。また、脂環族ポリイソシアネートのなかでも、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。これらのポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、及びその他のポリオールを挙げることができる。また、これらの混合物を用いることもできる。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの少なくともいずれかを用いることが好ましい。これらのポリオールを用いることで、記録媒体に対するインクの濡れ性がより高まるので、つなぎスジがより目立たない画像を記録することができる。また、これらのポリオールを用いると、吐出安定性をさらに向上させることができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸などの酸成分と、ポリアルキレングリコール、2価アルコール、又は3価以上の多価アルコールとのエステルを挙げることができる。酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などを挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、上記の芳香族ジカルボン酸の水素添加物などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、琥珀酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アルキル琥珀酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸などを挙げることができる。また、これらの酸成分の酸無水物、アルキルエステル、又は酸ハライドなどの反応性誘導体などもポリエステルポリオールを構成する酸成分として用いることができる。上記の酸成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体などを挙げることができる。2価アルコールとしては、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタンなどを挙げることができる。3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。上記のポリエステルポリオールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキサイドと、ポリアルキレングリコール、2価アルコール、又は3価以上の多価アルコールとの付加重合物を挙げることができる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体などを挙げることができる。2価アルコールとしては、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタンなどを挙げることができる。3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどを挙げることができる。上記のポリエーテルポリオールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネートジオールとしては、1,6−ヘキサンジオールを基本骨格として有するものの他に、公知の方法で製造されるポリカーボネートジオールを用いることができる。公知の方法で製造されるポリカーボネートジオールとしては、例えば、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートなどのカーボネート成分又はホスゲンと、脂肪族ジオール成分とを反応させて得られるポリカーボネートジオールを挙げることができる。上記のポリカーボネートジオールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸基を有するジオールは、その分子中に、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などの酸基を有する。酸基を有するジオールの炭素数は、1以上7以下であることが好ましい。酸基を有するジオールの炭素数が8以上であると、ウレタン樹脂のソフトセグメントに酸基が存在しやすくなる。このため、ウレタン樹脂の強靭性と柔軟性のバランスが崩れてしまい、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が不足する場合がある。
酸基を有するジオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
ウレタン樹脂を製造する際には、ポリイソシアネートに由来するユニット中のウレタン結合を形成しなかったイソシアネート基(残存イソシアネート基)と反応しうる鎖延長剤を用いてもよい。鎖延長剤としては、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ジメチロールウレア及びその誘導体、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ビスヘキサメチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの多価アミン化合物、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどを挙げることができる。
さらに、鎖延長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらの鎖延長剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ウレタン樹脂は、従来、一般的に用いられている方法によって製造することができる。ウレタン樹脂の製造方法としては、例えば、以下に示す方法を挙げることができる。まず、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールを、イソシアネート基が過剰になるような当量比で、沸点が100℃以下の有機溶剤の存在下又は非存在下で反応させる。これにより、その分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る。次いで、得られたウレタンプレポリマー中の酸基を中和剤によって中和する。その後、中和したウレタンプレポリマーを鎖延長剤の水溶液に投入して反応させる。系内に有機溶剤が含まれる場合には有機溶剤を除去すれば、ウレタン樹脂を含む液体を得ることができる。
中和剤としては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミンなど有機塩基を用いることができる。ウレタン樹脂としては、アルカリ金属の水酸化物によって中和されているものを用いることが好ましい。アルカリ金属の水酸化物で酸基が中和されたウレタン樹脂を用いると、アミン類で中和されたウレタン樹脂を用いた場合に比して、より優れたつなぎスジ抑制効果及び吐出安定性を得ることができる。
中和剤の使用量は、ウレタンプレポリマー中の酸基1molに対して、0.5〜1.0molとすることが好ましく、0.8〜1.0molとすることがさらに好ましい。中和剤の使用量が上記の範囲を超えると、ウレタン樹脂の溶解状態が不安定化したり、粘度が上昇したりすることがある。このため、作業性が低下する場合がある。
ウレタン樹脂の組成、分子量、及び酸価については、従来公知の方法によって解析することができる。例えば、インクを遠心分離して得られる沈降物と上澄み液を分析することで、ウレタン樹脂の組成、分子量、及び酸価を解析することができる。また、顔料は有機溶剤に不溶であるため、有機溶剤で抽出してウレタン樹脂を分離することもできる。インクの状態でもウレタン樹脂の分析は可能であるが、インクから抽出したウレタン樹脂を分析すると精度をより高めることができる。具体的には、インクを80,000rpmで遠心分離して得た上澄み液を、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)を使用して分析する。これにより、ウレタン結合固有の吸収波長から、ポリイソシアネート及びポリオールの種類を容易に解析することができる。
上澄み液を塩酸などで酸析し、乾燥させて得た酸析物をクロロホルムなどに溶解し、核磁気共鳴法(NMR)により測定することで、ポリオールの分子量を解析ことができる。また、ウレタン樹脂の酸価は、滴定法により測定することができる。後述する実施例では、ウレタン樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用し、水酸化カリウムエタノール滴定液によって電位差滴定することで、ウレタン樹脂の酸価を測定した。また、ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPCによるウレタン樹脂の重量平均分子量の測定条件は以下に示す通りである。
・装置:Alliance GPC 2695(Waters製)
・カラム:Shodex KF−806Mの4連カラム(昭和電工製)
・移動相:THF(特級)
・流速:1.0mL/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料溶液の注入量:0.1mL
・検出器:RI(屈折率)
・ポリスチレン標準試料:PS−1及びPS−2(Polymer Laboratories製)(分子量:7,500,000、2,560,000、841,700、377,400、320,000、210,500、148,000、96,000、59,500、50,400、28,500、20,650、10,850、5,460、2,930、1,300、580の17種)。
インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。ウレタン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上100,000以下であることが好ましい。
[水溶性有機溶剤]
インクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、インクジェット記録方法に適用されるインクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。水溶性有機溶剤の具体例としては、炭素数1乃至4のアルキルアルコール類、アミド類、ケトン又はケトアルコール類、エーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素原子数が2乃至6のアルキレングリコール類、アルキルエーテルアセテート類、多価アルコールのアルキルエーテル類、含窒素化合物類などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。通常「水溶性有機溶剤」とは液体を意味するが、本発明においては、25℃(常温)で固体であるものも水溶性有機溶剤に含めることとする。インクに汎用であり、25℃で固体である水溶性有機溶剤の具体例としては、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、尿素、数平均分子量1,000のポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
[その他の成分]
インクには、上記成分の他に、必要に応じて種々の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、尿素やエチレン尿素などの含窒素化合物、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などを挙げることができる。
[インクの物性]
インクの粘度は2.5mPa・s以上である。インクの粘度が2.5mPa・s未満であると、顔料が沈降しやすく、画像の均一性が低下してしまう。顔料の沈降をさらに抑制し、画像の均一性をさらに向上させる観点からは、インクの粘度は2.8mPa・s以上であることが好ましく、5.0mPa・s以下であることが好ましい。また、インクの表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液A)
酸価が140mgKOH/g、重量平均分子量が10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を10%水酸化カリウム水溶液で中和した。比表面積が220m2/g、DBP吸油量が105mL/100gのカーボンブラック10部、中和したスチレン−アクリル酸共重合体(固形分)5部、及び水70部を混合した。サンドグラインダーを用いて得られた混合物を1時間分散させた後、遠心分離処理して粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した。これにより、樹脂によって水中に分散されたカーボンブラックを含有する顔料分散液Aを得た。顔料分散液Aの顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は5.0%、及びpHは10.0であり、顔料の平均粒子径は120nmであった。
(顔料分散液B)
カーボンブラックに代えてC.I.ピグメントブルー15:3を用いたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様にして顔料分散液Bを得た。顔料分散液Bの顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は5.0%、及びpHは10.0であり、顔料の平均粒子径は107nmであった。
(顔料分散液C)
カーボンブラックに代えてC.I.ピグメントレッド122を用いたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様にして顔料分散液Cを得た。顔料分散液Cの顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は5.0%、及びpHは10.0であり、顔料の平均粒子径は120nmであった。
(顔料分散液D)
カーボンブラックに代えてC.I.ピグメントイエロー74を用いたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様にして顔料分散液Dを得た。顔料分散液Dの顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は5.0%、pHは10.0であり、顔料の平均粒子径は120nmであった。
(顔料分散液E)
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、溶液の温度を常に10℃以下に保った状態として、5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、比表面積が220m2/g、DBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。15分間撹拌して得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、得られた粒子を十分に水洗した後、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散カーボンブラックを得た。得られた自己分散カーボンブラックに水を加え、顔料(自己分散カーボンブラック)の含有量が10.0%となるように分散させて分散液を調製した。
これにより、カーボンブラックの粒子表面に−C63−(COONa)2基が導入された自己分散カーボンブラックが水中に分散した顔料分散体を得た。イオン交換法により顔料分散体のナトリウムイオンをカリウムイオンに置換することによって、カーボンブラックの粒子表面に−C63−(COOK)2基が導入された自己分散カーボンブラックが水中に分散した顔料分散液Eを得た。顔料分散液Eの顔料の含有量は10.0%、pHは10.0であり、顔料の平均粒子径は120nmであった。
<顔料の平均粒子径の測定方法>
動的光散乱方式の粒度分布測定装置(商品名「ナノトラックUPA150EX」、日機装製)を用いて測定したD50の値を顔料の平均粒子径とした。顔料の粒子径分布の50%累積値D50(nm)は、体積基準の粒子径の平均値(すなわち、体積平均粒子径)に相当する。
<ウレタン樹脂を含む液体の調製>
表1に示す種類及び使用量(部)のポリオールをメチルエチルケトンに溶解させた後、表1に示す使用量(部)のイソホロンイソシアネート及びジメチロールプロピオン酸を加え、75℃で1時間反応させてウレタンプレポリマー溶液を得た。ポリオールの数平均分子量は、いずれも2,000であった。表1中、「PPG」はポリプロピレングリコール、「PTMG」はポリテトラメチレングリコール、「PC」はポリカーボネートジオール、及び「PES」はポリエステルポリオールをそれぞれ示す。
得られたウレタンプレポリマー溶液を60℃まで冷却した後、表1に示す種類の中和剤の水溶液を加えてカルボキシ基を中和した。40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌して乳化させた。表1に示す使用量(部)のエチレンジアミンを加え、30℃で12時間鎖延長反応を行った。FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで、加熱減圧してメチルエチルケトンを留去し、重量平均分子量30,000のウレタン樹脂を20.0%含む液体を得た。また、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いた前述の電位差滴定により、ウレタン樹脂の酸価を測定した。
Figure 2017213799
<インクの調製>
表2−1及び2−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過し、インク1〜21を調製した。また、調製した各インクの粘度を、粘度計(E型粘度計、商品名「RE85L」、東機産業製)を用いて25℃で測定した。測定した各インクの粘度を表2−1及び2−2の下段に示す。表2−1及び2−2中、「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。また、「SF420」(スーパーフレックス420)は第一工業製薬製の水系ウレタン樹脂の商品名である。
Figure 2017213799
Figure 2017213799
<評価>
図2及び3に示す構成を有する、サーマル方式の記録ヘッドH1000を備えた記録装置M4000(インクジェット記録装置)を用意した。そして、このインクジェット記録装置を使用して以下に示す各評価を行った。以下に示す評価基準で、「A」、「B」を許容できるレベルとし、「C」、「D」を許容できないレベルとした。インクの吐出に先立って行ったインクの温度調整の有無を表3に示す。本実施例においては、解像度が600dpi×600dpiであり、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの体積が5.5pLのインクを2滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。ラインヘッド内に充填されたインクの温度は、インクの温度調整を行ったときは50℃であり、インクの温度調整を行わなかったときは25℃であった。
(つなぎスジ)
各インクを充填したインクカートリッジを上記のインクジェット記録装置に装着し、PPC用紙(商品名「ブライトホワイト」、ヒューレッドパッカード製)に20cm×20cmのベタ画像(記録デューティ100%)を記録した。1日放置後のベタ画像を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって「つなぎスジ」を評価した。結果を表3に示す。
A:画像に縦スジがなかった。
B:画像に縦スジが若干あったが、目立ってはいなかった。
C:画像に縦スジがあり、目立っていた。
(均一性)
各インクを充填したインクカートリッジを60℃で60日間静置した後、上記のインクジェット記録装置に装着した。そして、PPC用紙(商品名「ブライトホワイト」、ヒューレッドパッカード製)に20cm×20cmのベタ画像(記録デューティ100%)を記録した。1日放置後のベタ画像を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって「均一性」を評価した。評価結果を表3に示す。
A:画像にムラがなかった。
B:画像にムラがほとんどなかった。
C:画像にムラがあった。
(発色性)
各インクを充填したインクカートリッジを上記のインクジェット記録装置に装着し、以下に示す4種類の記録媒体(PPC用紙)に2cm×2cmのベタ画像(記録デューティ100%)を記録した。
・GF−500(キヤノン製)
・4024(ゼロックス製)
・ブライトホワイト(ヒューレッドパッカード製)
・ハンマーミルジェットプリント(インターナショナルペーパー製)
反射濃度計(商品名「マクベスRD−918」、マクベス製)を使用して1日放置後のベタ画像の光学濃度を測定し、以下に示す評価基準にしたがって「発色性」を評価した。結果を表3に示す。
A:4種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が1.30以上であった。
B:4種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が1.25以上1.30未満であった。
C:4種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が1.20以上1.25未満であった。
D:4種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が1.20未満であった。
(吐出安定性)
各インクを充填したインクカートリッジを上記のインクジェット記録装置に装着し、PPC用紙(商品名「ブライトホワイト」、ヒューレッドパッカード製)に20cm×20cmのベタ画像(記録デューティ100%)を記録した。
1日放置後のベタ画像を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって「吐出安定性」を評価した。結果を表3に示す
A:画像にカスレがなかった。
B:画像にカスレがほとんどなかった。
C:画像にカスレがあった。
D:画像に顕著なカスレがあった。
Figure 2017213799

Claims (6)

  1. 顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを吐出するラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記樹脂が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する、酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂であり、
    前記インクの粘度が、2.5mPa・s以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記ウレタン樹脂の酸基が、アルカリ金属の水酸化物によって中和されている請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記インクの粘度が、2.8mPa・s以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水性インクを加温して吐出する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 顔料及び樹脂を含有する水性インクと、その内部に前記水性インクが充填された、前記水性インクを吐出するラインヘッドと、を備えたインクジェット記録装置であって、
    前記樹脂が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有する、酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂であり、
    前記インクの粘度が、2.5mPa・s以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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