JP2017213222A - 吸収性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸収体の高い液吸収速度の保持と、表面シートの液残りの更なる低減とを両立する吸収性物品を提供する。【手段】表面シート、裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に配された吸収体を備える吸収性物品であって、前記吸収体が液膜開裂剤を含む吸収性物品。【選択図】図1

Description

本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
生理用ナプキン等の吸収性物品は、通常、表面シート、裏面シート及び両シート間の吸収体を有し、表面シート側の面を着用者の肌に当てて使用される。このような吸収性物品において、排泄液が表面シートから素早く吸収体へと透過され、液が肌に触れないようにすることが、基本的な吸収性能として求められる。特に、吸収体は、前記吸収性能にとって重要な液保持機能を担っており、種々の提案がされてきた。
例えば、特許文献1には、吸収体における液拡散性を高める観点から、吸収性コアの非肌当接面側に不織布シートを配した吸収体が記載されている。前記不織布シートは、親水性繊維を主に含む2つの繊維層の間にパルプ繊維層を挟んだ積層構造を有する。
また、特許文献2には、薄型の吸収体としての吸収性シートが記載されている。該吸収性シートは、繊維集合体と繊維ウエブとを有し、高吸収性ポリマーを内部に分散配置した一体構成を有する。これにより、吸収性シートは、高吸収性ポリマーの固定性がよく、液の透過性が向上し、ゲルブロッキングも抑えられるとされる。また、該吸収性シートには、湿潤強度を付与する観点から、熱溶融性接着繊維または紙力補強剤を含む。
特開2015−213643号公報 特開平8−246395号公報
吸収体は、吸収性物品において、液を保持するとともに、表面シートなどの肌面側の部材から排泄液(例えば経血や尿。単に液体ともいう。)を引き抜く作用を有する。排泄液を引き抜く力が強いと、表面シートの液残りが低減して、表面の汚れが抑えられる。また、液残り量が少ない程、吸収性物品の使用中及び交換時にドライ性を実感しやすくなる。排泄液を引き抜く力は、吸収体の毛管力によって生じ、毛管力は吸収体の密度に比例して強くなる。
また、吸収体は、表面シートのドライ性の観点から、表面シートから移行してくる排泄液を吸収体内で遅滞なく迅速に受領処理することも重要である。すなわち、液吸収速度が速いほど、排泄液が出た直後のドライ性を実感しやすくなる。しかし、液吸収速度は、前述した吸収体の密度を高めると低下する傾向にある。これは、吸収体の密度を高めるほど、吸収体内部での液が拡散する通路が狭まるためである。この吸収速度は、前記密度によっては、排泄液の初期受領時は十分であっても、繰り返し排泄液を受けるにつれ、目詰まりを起こして低下する場合もある。
このように、吸収性物品内の吸収体において、表面シートの液残り等の低減のための吸収体の高密度化と、排泄液を迅速に処理する吸収速度の向上とが両立し難い。
本発明は、上記の問題点に鑑み、吸収体の高い液吸収速度の保持と、表面シートの液残りの更なる低減とを両立する吸収性物品に関する。
本発明は、表面シート、裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に配された吸収体を備える吸収性物品であって、前記吸収体が液膜開裂剤を含む吸収性物品を提供する。
本発明の吸収性物品は、吸収体の高い液吸収速度の保持と、表面シートの液残りの更なる低減とを両立することができる。
本発明に係る吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンを肌面方向から模式的に示した一部切欠斜視図である。 繊維間の隙間に形成された液膜を示す模式図である。 (A1)〜(A4)は本発明に係る液膜開裂剤が液膜を開裂していく状態を側面から模式的に示す説明図であり、(B1)〜(B4)は本発明に係る液膜開裂剤が液膜を開裂していく状態を上方から模式的に示す説明図である。
本発明に係る吸収性物品について、その好ましい実施形態としての生理用ナプキン10を示し、図面を参照しながら以下に説明する。
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、これと反対側を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。着用時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。この前端部と後端部とを結ぶ方向、つまり着用者の腹側部から股下部を介して背側部に亘る方向を、吸収性物品の縦方向(Y方向)という。この縦方向と直交する方向を横方向(X方向)という。また、吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚みという。
図1に示すように、本実施形態の生理用ナプキン10(以下、単にナプキン10ともいう。)は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される液保持性の吸収体3を有する。表面シート1と吸収体3との間に液透過性のセカンドシート4が配置されている。ナプキン10において、セカンドシート4が無い形態であってもよい。さらに、生理用ナプキン10の肌当接面側には、表面シート1から吸収体3にかけて圧搾した防漏溝5が配されており、該防漏溝5は平面視、環形状をなしている。
前述したセカンドシート4は、液透過性を有し、表面シート1ある排泄液を積極的に引き抜いて表面シート1下で液拡散をし、これにより吸収体3に対して、広い面で液の引き渡しをする機能を有する。また、セカンドシート4は、表面シート1と吸収体3との間に一定の距離を確保して、吸収体3から表面シート1への液戻りを抑制する機能を有する。 このような機能を有するセカンドシート4は、吸収体3を構成する部材でなく、独立した部材である。すなわち、セカンドシート4は、上記の液戻り抑制機能を有することから、液を保持する吸収性コアに当接しておらず、該吸収性コアに当接するコアラップシートや基材シートとは異なる部材である。
ナプキン10は、縦方向(Y方向)と、該縦方向と直交する横方向(X方向)とを有する、縦長形状である。ナプキン10は、表面シート1側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部側から臀部側にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインに沿う方向に向けて配して着用される。
ナプキン10は、縦方向(Y方向)において、着用者の排泄部を覆う股下部C、股下部Cよりも前方の下腹部側に対応する前方部F、後方の臀部側に対応する後方部Rを有する。股下部Cには、幅方向中央に、排泄液を直接受ける液吸収領域C1がある。本実施形態における股下部Cは、生理用ナプキン10を縦方向に3領域の区分したときの中央の領域である。なお、この区分は、股下部Cを基準に前方部F及び後方部Rが決められる。そのため、使用目的等によって設定される吸収性物品の長さにより区分位置が異なる。例えば、臀部を覆う幅広の後方フラップを有する吸収性物品の場合、股下部Cは、ナプキンの前方寄りとなる。
次に、吸収体3について詳述する。
吸収体3は、吸収性物品において通常とり得る種々の構成とすることができる。少なくとも、吸収体は、繊維材料を有する。例えば、吸収体3が、パルプ繊維の集合体(ウエブ)からなる吸収性コア、又は該パルプ繊維及び高吸水性ポリマー材(いわゆるSAPと呼ばれる表面架橋された高分子材料)の集合体からなる吸収性コアと、これを被覆するコアラップシートとからなる場合、前記繊維材料は、前記パルプ繊維及びコアラップシートの構成材料を意味する。また、吸収体3が、前記高吸水性ポリマー材の集合体からなる吸収性コアを基材シートで挟持して固定させた吸収性シートである場合、前記繊維材料からなるコアラップシートは、前記基材シートを意味する。これらの繊維材料は、液の吸収保持の観点から親水性を有するものであれば、天然繊維、合成繊維及び半合成繊維のいずれであってもよい。
繊維材料は、吸収体3の構成部材(パルプ繊維の集合体、コアラップシート、基材シートなど)おいて、繊維同士の間に隙間を形成している。繊維間の隙間が、吸収体内における液体の拡散及び透過の通路となる。ただし、吸収体3においては、繊維間のみならず、繊維と高吸水性ポリマーとの間の隙間、高吸水性ポリマー同士の間の隙間など、吸収体を構成する構成素材間の隙間が通路となる。このような隙間の大きさ、言い換えると吸収体3の密度が、吸収体内部における通路の大きさを決める。また、吸収体3の密度が毛管力の強さを決める。
吸収体3は液膜開裂剤を含有する。これにより、排泄液を吸収した吸収体3内において上記の液体の拡散ないし透過の経路(以下、液通路ともいう。)を確保する。
前記液膜開裂剤とは、液、例えば、経血等の高粘性の液や尿などの排泄液が、吸収体に触れて、吸収体3を構成する材料間ないし材料表面(特に、繊維間ないしは繊維表面)に形成される液膜を開裂させたりして、液膜の形成を阻害する剤のことをいい、形成された液膜を開裂させる作用と、液膜の形成を阻害する作用とを有する。前者は主たる作用、後者は従たる作用ということができる。液膜の開裂は、液膜開裂剤の、液膜の層の一部を押しのけて不安定化せる作用によりなされる。この液膜開裂剤の作用により、液体が吸収体3の構成材料間(特に繊維間)の狭い領域に留まることなく通過し、吸収体内を拡散しやすくなる。これにより、排泄液を一度に多量に受けたり、繰り返し受けたりする場合でも、吸収体3の高い液吸収速度を保持することができる。そのため、吸収体3の密度を高めて構成材料間の隙間を狭め、表面シート側の液を強く引き抜く毛管力を高めても、吸収体の高い液吸収速度を保持することができる。すなわち、吸収体の高密度化による表面シートの液残り低減と、高い液吸収速度とを両立することができる。また、吸収体の高密度化による薄型化も実現でき、ナプキン10の装着性の向上の観点から好ましい。
(液膜を消失させる性質)
本発明で用いられる液膜開裂剤は、液膜を消失させる性質を有しており、斯かる性質により、該液膜開裂剤を血漿成分を主体とする試験液又は人工尿(組成:尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.110質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水(約96.88質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07質量%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したもの)に適用した場合に液膜消失効果を発現し得る。ここでいう液膜消失効果には、試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体について、該構造体の液膜形成を阻害する効果と、形成された該構造体を消失させる効果との双方が含まれ、少なくとも一方の効果を発現する剤は、液膜消失効果を発現し得る性質を有していると言える。
前記試験液は、脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト製)から抽出された液体成分である。具体的には、100mLの脱繊維馬血を温度22℃、湿度65%の条件下で1時間静置すると、該脱繊維馬血は上層と下層とに分離するところ、この上層が前記試験液である。上層は主に血漿成分を含み、下層は主に血球成分を含む。上層と下層とに分離した脱繊維馬血から上層のみを取り出すには、例えばトランスファーピペット(日本マイクロ株式会社製)を用いることができる。
ある剤が前記の「液膜を消失させる性質」を有するか否かは、当該剤が適用された前記試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体が発生しやすい状態にした場合の、該構造体即ち液膜の量の多少で判断される。すなわち、前記試験液又は人工尿を、温度25℃に調整し、その後、スクリュー管(株式会社マルエム製 No.5 胴径27mm、全長55mm)に10g入れて、標準サンプルを得る。また、測定サンプルとして、標準サンプルと同じものに、25℃に予め調整した測定対象の剤を0.01g添加したものを得る。標準サンプルと測定サンプルをそれぞれ前記スクリュー管の上下方向に2往復強く振とうした後、水平面上に速やかに載置する。このサンプルの振とうにより、振とう後のスクリュー管の内部には、前記構造体の無い液体層(下層)と、該液体層の上に形成された多数の該構造体からなる構造体層(上層)とが形成される。振とう直後から10秒経過後に、両サンプルの構造体層の高さ(液体層の液面から構造体層上面までの高さ)を測定する。そして、標準サンプルの構造体層の高さに対して、測定サンプルの構造体層の高さが90%以下となった場合、測定対象の剤は液膜開裂効果を有しているとする。
本発明で用いられる液膜開裂剤は、前記の性質に当てはまる単一の化合物若しくは前記の性質に当てはまる単一の化合物の複数の組み合わせ、又は複数の化合物の組み合わせによって前記の性質を満たす(液膜の開裂を発現し得る)剤である。つまり液膜開裂剤とは、あくまで前記定義によるところの液膜開裂効果があるものに限定した剤のことである。したがって、吸収性物品中に適用されている化合物に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、液膜開裂剤と区別する。
なお、液膜開裂剤及び第三成分について、「単一の化合物」とは、同じ組成式を有するが、繰り返し単位数が異なることにより、分子量が異なる化合物を含める概念である。
液膜開裂剤の作用により、吸収体3内の液通路を確保し得るので、吸収体3の密度は任意に設定することが可能となる。特に、吸収体3の密度は、繊維間の液通路の確保、液吸収性の十分な発現、及び毛管力による表面シートの液残り防止の観点から、0.06g/cm以上が好ましく、0.08g/cm以上がより好ましく、0.10g/cm以上が更に好ましい。また、吸収体3の密度は、通液速度向上の観点から、0.20g/cm以下が好ましく、0.18g/cm以下がより好ましく、0.15g/cm以下が更に好ましい。
液膜開裂剤は、吸収体3を構成し、吸収体3内の隙間に隣接する構成材料の表面に塗工して含有される。特に、微細な隙間を形成する繊維に含有されることがより好ましい。液の拡散及び透過の経路を確保し、かつ、吸収体3内部での液保持性を担保する観点からは、吸収体3の厚み方向において、肌当接面側及び非肌当接面側のいずれか一方の面側に偏在して含有されていることが好ましく、肌当接面及び非肌当接面のいずれか一方の面に含有されていることがより好ましい。特に、液の透過経路の観点から、肌当接面側により近い部材に含有されていることが好ましい。具体的には、吸収体3の肌当接面側寄りの厚みの30%以内に含有されることが好ましく、吸収体3の肌当接面側の外表面に含有されることがより好ましい。より具体的には、吸収体3の肌当接面側の外表面をなす前記コアラップシート、又は、基材シートに含有されることが特に好ましい。特に、前記高吸水性ポリマー材の集合体からなる吸収性コアを基材シートで挟持して固定させた吸収性シートからなる吸収体の肌当接面側の表面に、液膜開裂剤を含有させることが好ましい。これにより、吸収体の高い液吸収速度の保持と表面シートの液残りの更なる低減を、吸収体の薄型化による物品の装着性の向上とともに実現することができる。
また、吸収体3の平面方向において、液膜開裂剤が含有される範囲は、前記平面領域の全体でもよく一部でもよい。一部とする場合、少なくとも、液を最も多く受け止める部分であることが好ましい。例えば、経血等の排泄液を直接受け止める、着用者の排泄部に対応した液吸収領域C1である。
吸収体3が液膜開裂剤を含有する又は含むとは、主に吸収体3内の構成材料の表面に付着させることをいう。ただし、液膜開裂剤は、構成材料の表面に残存する限り、構成材料内に内包しているようなものや、内添により構成材料内部に存在しているようなものがあってもよい。液膜開裂剤を構成材料の表面に付着させる方法としては、通常用いられる各種の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、浸漬等が挙げられる。これらの処理は、吸収体3として組み立てられる前の構成材料に対して行っても良いし、組み立てられた後に行ってもよい。液膜開裂剤が表面に付着した構成材料は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、繊維樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。また、前記付着方法を用いて構成材料へ付着させる場合、液膜開裂剤を希釈せずに用いてもよく、必要により液膜開裂剤を溶媒に溶解させた液膜開裂剤を含む溶液、ないしは液膜開裂剤の乳化液、分散液を用いてもよい。
前記液膜開裂剤は、吸収体3において後述する液膜開裂効果を有するためには、液膜開裂剤が体液に触れた際に液状として存在する必要がある。この点から、液膜開裂剤の融点は40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。さらに、本発明に係る液膜開裂剤の融点は−220℃以上が好ましく、−180℃以上がより好ましい。
前記液膜開裂剤の、吸収体3の質量に対する含有割合(OPU)は、液通路の確保の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましい。また、前記液膜開裂剤の、吸収体3の質量に対する含有割合(OPU)は、表面材やセカンドシートとの接着強度維持の観点から、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
以下、液膜開裂剤についてより詳細に説明する。なお、ここでは液膜開裂剤の塗布対象を繊維として説明する。ただし、塗布対象は、繊維に限定されず、吸収体3を構成する材料であれば特に制限されない。
液膜開裂剤は、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が15mN/m以上で、水溶解度が0g以上0.025g以下である。
液膜開裂剤が有する「表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数」とは、上記のような経血や尿等の排泄液を想定した液体に対する拡張係数をいう。該「拡張係数」とは、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で後述の測定方法により得られる測定値から、下記式(1)に基づいて求められる値である。なお、式(1)における液膜は「表面張力が50mN/mの液体」の液相を意味し、繊維間や繊維表面で膜を張った状態の液体、膜を張る前の状態の液体の両方を含み、単に液体とも言う。また、式(1)の表面張力は、液膜及び液膜開裂剤の気相との界面における界面張力を意味し、液相間の、液膜開裂剤の液膜との界面張力とは区別する。この区別は、本明細書の他の記載においても同様である。
S=γ−γ−γwo ・・・・・ (1)
γ:液膜(液体)の表面張力
γ:液膜開裂剤の表面張力
γwo:液膜開裂剤の液膜との界面張力
式(1)から分かるとおり、液膜開裂剤の拡張係数(S)は、液膜開裂剤の表面張力(γ)が小さくなることで大きくなり、液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)が小さくなることで大きくなる。この拡張係数が15mN/m以上であることで、液膜開裂剤は、繊維間の狭小領域で生じる液膜の表面上での移動性、すなわち拡散性の高いものとなる。この観点から、前記液膜開裂剤の拡張係数は、20mN/m以上がより好ましく、25mN/m以上が更に好ましく、30mN/m以上が特に好ましい。一方、その上限は特に制限されるものではないが、式(1)より表面張力が50mN/mの液体を用いた場合は上限値が50mN/m、表面張力が60mN/mの液体を用いた場合は上限値が60mN/m、表面張力が70mN/mの液体を用いた場合には上限値が70mN/mといったように、液膜を形成する液体の表面張力が上限となる。そこで、本発明では、表面張力が50mN/mの液体を用いている観点から、50mN/m以下である。
液膜開裂剤が有する「水溶解度」とは、脱イオン水100gに対する液膜開裂剤の溶解可能質量(g)であり、後述の測定方法に基づいて、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で測定される値である。この水溶解度が0g以上0.025g以下であることで、液膜開裂剤は、溶解しにくく液膜との界面を形成して、上記の拡散性をより効果的なものとする。同様の観点から、液膜開裂剤の水溶解度は、0.0025g以下が好ましく、0.0017g以下がより好ましく、0.0001g未満が更に好ましい。また、前記水溶解度は小さいほどよく、0g以上であり、液膜への拡散性の観点から、1.0×10−9g以上とすることが実際的である。なお、上記の水溶解性は、水分を主成分とする経血や尿等に対しても当てはまるものと考えられる。
上記の、液膜(表面張力が50mN/mの液体)の表面張力(γ)、液膜開裂剤の表面張力(γ)、液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)、及び液膜開裂剤の水溶解度は、次の方法により測定される。
なお、測定対象の吸収体が生理用品や使い捨ておむつなどの吸収性物品に組み込まれたものである場合は次のように取り出して測定を行う。すなわち、吸収性物品において、測定対象の吸収体と他の部材との接合に用いられる接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱めた後に、測定対象の吸収体を丁寧に剥がして取り出す。この取り出し方法は、本発明の吸収性物品に係る種々の測定において適用される。
また、繊維に付着した液膜開裂剤について測定する場合、まず液膜開裂剤が付着した繊維をヘキサンやメタノール、エタノールなどの洗浄液で洗浄し、その洗浄に用いた溶媒(液膜開裂剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させて取り出す。このときの取り出した物質の質量は、液膜開裂剤の繊維質量に対する含有割合(OPU)を算出するときに適用される。取り出した物質の量が表面張力や界面張力の測定には少ない場合、取り出した物質の構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定する。また、液膜開裂剤が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。そして、その物質が市販品であれば調達、市販品でなければ合成することにより十分な量を取得し、表面張力や界面張力を測定する。特に、表面張力と界面張力の測定に関しては、上記のようにして取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
(液膜(液体)の表面張力(γ)の測定方法)
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、プレート法(Wilhelmy法)により、白金プレートを使用して測定することができる。その際の測定装置としては、自動表面張力計「CBVP−Z」(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いることができる。白金プレートは、純度99.9%、大きさが横25mm、縦10mmのものを用いる。
なお、液膜開裂剤に関する下記測定では、前述した「表面張力が50mN/mの液体」は、上記の測定方法を用いて、脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例えば、花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW−L120)を加えて、表面張力50±1mN/mに調整された溶液を用いる。
(液膜開裂剤の表面張力(γ)の測定方法)
液膜の表面張力(γ)の測定と同様に、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、プレート法により、同じ装置を使用して測定することができる。この測定に際し、前述のとおり、取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
(液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)の測定方法)
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、ペンダントドロップ法により測定できる。その際の測定装置としては、自動界面粘弾性測定装置(TECLIS−ITCONCEPT社製、商品名THE TRACKERや、KRUSS社、商品名DSA25S)を用いることができる。ペンダントドロップ法では、ドロップが形成されると同時に表面張力が50mN/mの液体に含まれたノニオン系界面活性物質の吸着が始まり、時間経過で界面張力が低下していく。そのため、ドロップが形成された時(0秒時)の界面張力を読み取る。また、この測定に際し、前述のとおり、取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
また界面張力の測定時に、液膜開裂剤と表面張力が50mN/mの液体の密度差が非常に小さい場合や、粘度が著しく高い場合、界面張力値がペンダントドロップの測定限界以下の場合には、ペンダントドロップ法による界面張力測定が困難になる場合がある。その場合には、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、スピニングドロップ法により測定することで、測定が可能となる。その際の測定装置としては、スピニングドロップ界面張力計(KURUSS社製、商品名SITE100)を用いることができる。また、この測定についても、ドロップの形状が安定化した時の界面張力を読み取り、取得した液膜開裂剤が固体である場合には、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
尚、双方の測定装置で界面張力を測定可能な場合は、より小さな界面張力値を測定結果として採用する。
(液膜開裂剤の水溶解度の測定方法)
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、100gの脱イオン水をスターラーで撹拌しながら、取得した液膜開裂剤を徐々に溶解していき、溶けなくなった(浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた)時点での溶解量を水溶解度とする。具体的には、0.0001g毎に剤を添加して測定する。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とする。なお、液膜開裂剤が界面活性剤の場合、「溶解」とは単分散溶解とミセル分散溶解の両方を意味し、浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた時点での溶解量が水溶解度となる。
液膜開裂剤は、上記の拡張係数と水溶解度とを有することで、液膜の表面上で、溶解することなく広がり、液膜の中心付近から液膜の層を押しのけることができる。これにより、液膜を不安定化させて開裂する。
ここで、本実施形態の吸収体3における液膜開裂剤の前記作用について、図2及び3を参照して具体的に説明する。
図2に示すように、繊維間の狭い領域においては、経血等の粘性の高い液や尿などの排泄液は、液膜82を張りやすい。これに対し、液膜開裂剤は次のようにして液膜を不安定化して破り、形成を阻害して、不織布中からの排液を促す。まず、図3(A1)及び(B1)に示すように、不織布の繊維81が有する液膜開裂剤83が、液膜82との界面を保ったまま、液膜82の表面上を移行する。次いで、液膜開裂剤83は、図3(A2)及び(B2)に示すように、液膜82の一部を押しのけて厚み方向へと侵入し、図3(A3)及び(B3)に示すように、液膜82を徐々に不均一で薄い膜へと変化させていく。その結果、液膜82は、図3(A4)及び(B4)に示すように、はじけるようにして穴が開き開裂される。開裂された経血等の液は、液滴となってなお不織布の繊維間を通過しやすくなり、液残りが低減される。また、上記の液膜開裂剤の液膜に対する作用は、繊維間の液膜に対する場合に限らず、繊維表面にまとわりついた液膜に対しても同様に発揮される。すなわち、液膜開裂剤は、繊維表面にまとわりついた液膜上を移行して該液膜の一部を押しのけ、液膜を開裂させることができる。また、液膜開裂剤は、繊維表面にまとわりついた液膜に対しては、繊維に付着した位置で移動せずともその疎水作用によっても液膜を開裂させ、形成を阻害することができる。
このように本発明に係る液膜開裂剤は、液膜の表面張力を下げるなどの液改質をするのではなく、繊維間や繊維表面に生じる液膜自体を押しのけながら開裂し、阻害することで溜まった液の排液を促す。これにより、吸収体3内の液通路を確保することができ、液吸収速度が高まって、表面シート1及びセカンドシート4から吸収体3への液の移行速度が高まる。その結果、表面シート1上の液流れ、表面シート1への液戻りが抑制されてドライ性が高まる。さらに、吸収体3の密度を高めた場合に、毛管力による液の引き込み作用との相乗効果で、表面シート1の液残り量及び時間が低減し、さらにドライ性が高められる。特に、粘性の高い経血など繊維間に留まりやすい液の吸収速度を高めることができる。そして、表面シートにおける赤み等の汚れが目立ちにくく、吸収力を実感できる、安心で信頼性の高い吸収性物品となる。
前記液膜開裂剤は、さらに、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下であることが好ましい。すなわち、前述した式(1)における拡張係数(S)の値を定める1変数である「液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)」が20mN/m以下であることが好ましい。「液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)」を低く抑えることで、液膜開裂剤の拡張係数が上がり、繊維表面から液膜中心付近へ液膜開裂剤が移行しやすくなり、前述の作用がより明確となる。この観点から、液膜開裂剤の「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」は、17mN/m以下がより好ましく、13mN/m以下が更に好ましく、10mN/m以下がより更に好ましく、9mN/m以下が特に好ましく、1mN/m以下がとりわけ好ましい。一方、その下限は特に制限されるものではなく、液膜への不溶性の観点から0mN/mより大きければよい。なお、界面張力が0mN/m、すなわち溶解する場合には、液膜と液膜開裂剤間での界面を形成することができないため、式(1)は成り立たず、剤の拡張は起きない。
拡張係数はその式からもわかるように、対象となる液の表面張力により、その数値が変化する。例えば、対象液の表面張力が72mN/m、液膜開裂剤の表面張力が21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は50.8mN/mとなる。
また、対象液の表面張力が30mN/m、液膜開裂剤の表面張力21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は8.8mN/mとなる。
いずれの場合においても、拡張係数が大きい剤ほど、液膜開裂効果は大きくなる。
本明細書では、表面張力50mN/mにおける数値を定義したが、表面張力が異なったとしても、その各物質同士の拡張係数の数値の大小関係に変化はないことから、体液の表面張力が仮に、日ごとの体調などで変化したとしても、拡張係数が大きい剤ほど優れた液膜開裂効果を示す。
また、液膜開裂剤の表面張力は、30mN/m以下が好ましく、25mN/m以下がより好ましく、22mN/m以下が更に好ましい。また、前記表面張力は小さいほどよく、その下限は特に限定されるものではない。液膜開裂剤の耐久性の観点から、1mN/m以上が実際的である。
本実施形態の生理用ナプキン10の吸収体3は、上記の液膜開裂剤に加え、さらにリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。これにより、繊維表面の親水性が高まり、濡れ性が向上することによって、液膜と液膜開裂剤が接する面積が大きくなること、そして、血液や尿は生体由来のリン酸基を有する界面活性物質を有することから、リン酸基を有する界面活性剤を併用することで、活性剤の相溶性に起因して、さらに血液や尿に含まれるリン脂質との親和性もよいため、液膜開裂剤が液膜に移行しやすくなり、液膜の開裂がさらに促進される。液膜開裂剤とリン酸エステル型のアニオン界面活性剤との含有比率は、質量比(液膜開裂剤:リン酸エステル型のアニオン界面活性剤)で、1:1〜19:1が好ましく、2:1〜15:1がより好ましく、3:1〜10:1が更に好ましい。特に、前記含有比率は、質量比で、5:1〜19:1が好ましく、8:1〜16:1がより好ましく、11:1〜13:1が更に好ましい。
リン酸エステル型のアニオン界面活性剤としては特に制限なく用いられる。例えば、その具体例としては、アルキルエーテルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステルなどが挙げられる。その中でも、アルキルリン酸エステルが液膜との親和性を高めると同時に不織布の加工性を付与する機能の観点から好ましい。
アルキルエーテルリン酸エステルとしては、特に制限なく種々のものを用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミチルエーテルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミトレイルエーテルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。また、ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン及びこれ等の構成モノマーが共重合されたものなどが挙げられる。なお、アルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルエーテルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキルリン酸エステルの具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステル等の飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステル等の不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。尚、アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類等が挙げられる。アルキルリン酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記のような液膜開裂剤、又は液膜開裂剤とリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を含んだ吸収性コアやコアラップシート、基材シートの構成繊維の接触角が90度以下であることが好ましく、80度以下であることがより好ましく、70度以下であることが更に好ましい。これにより、繊維表面が親水的になり、濡れる面積が増加し、液膜開裂剤が液膜へ移行しやすくなる。
上記の接触角の測定は、次の方法により行うことができる。
すなわち、吸収性コアやコアラップシート、基材シートの所定の部位から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。温度25度、相対湿度(RH)65%の測定条件で行う。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー株式会社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。不織布から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
次に、液膜開裂剤の具体例について説明する。これらは前述した特定の数値範囲にあることで水に溶けないか水難溶性の性質を有し、前記液膜開裂の作用をする。これに対し、従来の繊維処理剤として使用される界面活性剤などは実用上、水に対して溶解して使用する基本的には水溶性のものであり、本発明の液膜開裂剤ではない。
液膜開裂剤としては、質量平均分子量が500以上の化合物が好ましい。この質量平均分子量は液膜開裂剤の粘度に大きく影響する。液膜開裂剤は、粘度を高く保つことで、液が該構成材料を通過する際に流れ落ちにくく、吸収体3における液膜開裂効果の持続性を保つことができる。液膜開裂効果を十分に持続させる粘度とする観点から、液膜開裂剤の質量平均分子量は、1000以上がより好ましく、1500以上が更に好ましく、2000以上が特に好ましい。一方、液膜開裂剤が配された構成材料から液膜への液膜開裂剤の移行性、即ち拡散性を保持する粘度とする観点から、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。この質量平均分子量の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)「CCPD」(商品名、東ソー株式会社製)を用いて測定される。測定条件は下記のとおりである。また、換算分子量の計算はポリスチレンで行う。
分離カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl3
溶媒流速:1.0ml/min
分離カラム温度:40℃
また、液膜開裂剤としては、後述するように、下記の構造X、X−Y、及びY−X−Yからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有する化合物が好ましい。
構造Xは、>C(A)−〈Cは炭素原子を示す。また、<、>及び−は結合手を示す。以下、同様。〉、−C(A)−、−C(A)(B)−、>C(A)−C(R)<、>C(R)−、−C(R)(R)−、−C(R−、>C<及び、−Si(RO−、−Si(R)(R)O−のいずれかの基本構造が、繰り返されるか、もしくは2種以上が組み合わされた構造のシロキサン鎖、又はその混合鎖を表す。構造Xの末端には、水素原子、又は、−C(A)、−C(A)B、−C(A)(B)2、−C(A)−C(R、−C(RA、−C(R、また、−OSi(R、−OSi(R(R)、−Si(R、−Si(R(R)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する。
上記のRやRは各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6〜20が好ましい。例えば、フェニル基が好ましい。)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)などの各種置換基を示す。A、Bは各々独立に、水酸基やカルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基などの酸素原子や窒素原子を含む置換基を示す。構造X内にR、R、A、Bが各々複数ある場合はそれらは互いに同一でも異なっていてもよい。また、連続するC(炭素原子)やSi間の結合は、通常、単結合であるが、二重結合や三重結合を含んでいてもよく、CやSi間の結合には、エーテル基(−O−)、アミド基(−CONR−:Rは水素原子または一価の基)、エステル基(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、カーボネート基(−OCOO−)などの連結基を含んでもよい。一つのC及びSiが、他のC又はSiと結合している数は、1つ〜4つで、長鎖のシリコーン鎖(シロキサン鎖)又は混合鎖が分岐していたり、放射状の構造を有している場合があってもよい。
Yは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子から選ばれる原子を含む、親水性を有する親水基を表す。例えば、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、ポリオキシアルキレン基(オキシアルキレン基の炭素数は1〜4が好ましい。例えば、ポリオキシエチレン(POE)基、ポリオキシプロピレン(POP)基が好ましい。)、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホベタイン基(これらのベタイン基は、各ベタイン化合物から水素原子を1つ取り除いてなるベタイン残基をいう。)、4級アンモニウム基などの親水基単独、もしくは、その組み合わせからなる親水基などである。これらの他にも、後述するMで挙げた基及び官能基も挙げられる。なお、Yが複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
構造X−Y及びY−X−Yにおいて、Yは、X、又はXの末端の基に結合する。YがXの末端の基に結合する場合、Xの末端の基は、例えばYとの結合数と同数の水素原子等が取り除かれてYと結合する。
この構造において、親水基Y、A、Bを具体的に説明した基から選択して前述の拡張係数、水溶解度、界面張力を満たすことができる。こうして、目的の液膜開裂効果を発現する。
上記の液膜開裂剤は、構造Xがシロキサン構造である化合物が好ましい。さらに、液膜開裂剤において、上記の構造X、X−Y、Y−X−Yの具体例として、下記(1)〜(11)式で表される構造を、任意に組み合せたシロキサン鎖からなる化合物が好ましい。さらに、この化合物が前述した範囲の質量平均分子量を有することが液膜開裂作用の観点から好ましい。
Figure 2017213222
式(1)〜(11)において、M、L、R21、及びR22は次の1価又は多価(2価又はそれ以上)の基を示す。R23、及びR24は次の1価若しくは多価(2価又はそれ以上)の基、又は単結合を示す。
は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、もしくはそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基を有する基や、エリスリトール基、キシリトール基、ソルビトール基、グリセリン基もしくはエチレングリコール基などの複数の水酸基を有する親水基(エリスリトール等の複数の水酸基を有する上記化合物から水素原子を1つ取り除いてなる親水基)、水酸基、カルボン酸基、メルカプト基、アルコキシ基(炭素数1〜20が好ましい。例えばメトキシ基が好ましい。)、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、スルホン酸基、4級アンモニウム基、スルホベタイン基、ヒドロキシスルホベタイン基、ホスホベタイン基、イミダゾリウムベタイン基、カルボベタイン基、エポキシ基、カルビノール基、(メタ)アクリル基、又はそれらを組み合わせた官能基を示す。なお、Mが多価の基である場合、Mは、上記各基又は官能基から、さらに1つ以上の水素原子を除いた基を示す。
は、エーテル基、アミノ基(Lとして採りうるアミノ基は、>NR(Rは水素原子または一価の基)で表される。)、アミド基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基の結合基を示す。
21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、アルキル基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6〜20が好ましい。例えばフェニル基が好ましい。)、フルオロアルキル基、もしくはアラルキル基、又はそれらを組み合わせた炭化水素基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)を示す。なお、R22及びR23が多価の基である場合、上記炭化水素基から、さらに1つ以上の水素原子又はフッ素原子を除いた多価炭化水素基を示す。
また、R22又はR23がMと結合する場合、R22又はR23として採りうる基は、上記各基、上記炭化水素基又はハロゲン原子の他に、R32として採りうるイミノ基が挙げられる。
液膜開裂剤は、なかでも、Xとして、(1)、(2)、(5)及び(10)式のいずれかで表される構造を有し、Xの末端、又はXの末端とYとからなる基として、これらの式以外の上記式のいずれかで表される構造を有する化合物が好ましい。さらに、X、又はXの末端とYとからなる基が、上記(2)、(4)、(5)、(6)、(8)及び(9)式のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有するシロキサン鎖からなる化合物が、好ましい。
上記化合物の具体例として、シリコーン系の界面活性剤の有機変性シリコーン(ポリシロキサン)が挙げられる。例えば、反応性の有機基で変性された有機変性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、ジオール変性、カルビノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性のものが挙げられる。また、非反応性の有機基で変性された有機変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性(ポリオキシアルキレン変性を含む)、メチルスチリル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性のものなどが挙げられる。これらの有機変性の種類に応じて、例えば、シリコーン鎖の分子量、変性率、変性基の付加モル数など適宜変更することで、上記の液膜開裂作用を奏する拡張係数を得ることができる。ここで、「長鎖」とは、炭素数が12以上であるものをいい、好ましくは12〜20であるものをいう。また、「高級」とは、炭素数が6以上であるものをいい、好ましくは6〜20であるものをいう。
その中でも、ポリオキシアルキレン変性シリコーンやエポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ジオール変性シリコーンなど、変性シリコーンである液膜開裂剤が少なくとも一つの酸素原子を変性基中に有する構造を有する変性シリコーンが好ましく、特にポリオキシアルキレン変性シリコーンが好ましい。ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、ポリシロキサン鎖を有することで、繊維の内部に浸透し難く表面に残りやすい。また、親水的なポリオキシアルキレン鎖を付加したことにより、水との親和性が高まり、界面張力が低いため、前述した液膜表面上での移動が起きやすく好ましい。そのため、前述した液膜表面上での移動が起きやすく好ましい。また、ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、エンボス等の熱溶融加工が施されても、その部分において繊維の表面に残りやすく液膜開裂作用は低減し難い。特に液が溜まりやすいエンボス部分において液膜開裂作用が十分に発現するので好ましい。
ポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、下記式[I]〜[IV]で表されるものが挙げられる。さらに、このポリオキシアルキレン変性シリコーンが前述した範囲の質量平均分子量を有することが液膜開裂作用の観点から好ましい。
Figure 2017213222
Figure 2017213222
Figure 2017213222
Figure 2017213222
式中、R31は、アルキル基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2エチル−ヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)を示す。R32は、単結合又はアルキレン基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。)を示し、好ましくは前記アルキレン基を示す。複数のR31、複数のR32は各々において、互いに同一でも異なってもよい。M11は、ポリオキシアルキレン基を有する基を示し、ポリオキシアルキレン基が好ましい。上記のポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、又はこれらの構成モノマーが共重合されたものなどが挙げられる。m、nは各々独立に1以上の整数である。なお、これら繰り返し単位の符号は、各式(I)〜(IV)において別々に決められるものであり、必ずしも同じ整数を示すものではなく異なっていてもよい。
また、ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、ポリオキシエチレン変性及びポリオキシプロピレン変性のいずれか又は双方の変性基を有するものであってもよい。また、水に溶けない、かつ低い界面張力を有するにはシリコーン鎖のアルキル基R31にメチル基を有することが望ましい。この変性基、シリコーン鎖をもつものとしては、特に制限するものではないが、例えば特開2002−161474の段落[0006]及び[0012]に記載のものがある。より具体的には、ポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーンや、ポリオキシエチレン(POE)変性シリコーン、ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーンなどが挙げられる。POE変性シリコーンとしては、POEを3モル付加したPOE(3)変性ジメチルシリコーンなどが挙げられる。POP変性シリコーンとしては、POPを10モル、12モル、又は24モル付加したPOP(10)変性ジメチルシリコーン、POP(12)変性ジメチルシリコーン、POP(24)変性ジメチルシリコーンなどが挙げられる。
前述の液膜開裂剤の拡張係数と水溶解度は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンにおいて例えば、ポリオキシアルキレン基の付加モル数(ポリオキシアルキレン変性シリコーン1モルに対する、ポリオキシアルキレン基を形成するオキシアルキレン基の結合数)、下記変性率等により、所定の範囲にすることができる。この液膜開裂剤において、表面張力及び界面張力も同様にして、それぞれ、所定の範囲にすることができる。
上記観点から、該ポリオキシアルキレン基の付加モル数が1以上であるものが好ましい。1未満では、上記の液膜開裂作用にとって界面張力が高くなることにより、拡張係数が小さくなることから液膜開裂効果が弱くなってしまう。この観点から、付加モル数は3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。一方、付加モル数は多すぎると親水的になって水溶解度が高くなってしまう。この観点から、付加モル数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
変性シリコーンの変性率は、低すぎると親水性が損なわれるため、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、高すぎると水に溶けてしまうため、95%以下が好ましく、70%以下がより好ましく40%以下が更に好ましい。なお、前記変性シリコーンの変性率とは、変性シリコーン1分子中のシロキサン結合部の繰り返し単位の総個数に対する、変性したシロキサン結合部の繰り返し単位の個数の割合である。例えば、上記式[I]及び[IV]では(n/m+n)×100%であり、式[II]では、(2/m)×100%であり、式[III]では(1/m)×100%である。
また、前述の拡張係数及び水溶解度は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンにおいて、それぞれ、上記したもの以外にも、変性基を水可溶性のポリオキシエチレン基と水不溶性のポリオキシプロピレン基及びポリオキシブチレン基を併用すること、水不溶性のシリコーン鎖の分子量を変化させること、変性基としてポリオキシアルキレン変性に加えてアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、カルビノール基などを導入すること等により、所定の範囲に設定できる。
この液膜開裂剤として用いられるポリアルキレン変性シリコーンは、吸収体3の質量に対する含有割合として(Oil Per Unit)、0.02質量%以上5.0質量%以下含有されることが好ましい。該ポリアルキレン変性シリコーンの含有割合が多すぎることによる表面シートやセカンドシートとの接着強度の低下を防ぐため、前記含有割合(OPU)は、1.0質量%以下がより好ましく、0.40質量%以下が更に好ましい。また、該ポリアルキレン変性シリコーンによる液膜開裂効果を十分に発揮する観点から、前記含有割合(OPU)は、0.04質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。
本実施形態の生理用ナプキン10の吸収体3において、上述した液膜開裂剤の他に、必要により他の成分を含有させてもよい。
なお、含有される液膜開裂剤やリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を同定する場合は、上記の液膜(表面張力が50mN/mの液体)の表面張力(γw)等の測定方法で述べた同定の方法を用いることができる。
また、液膜開裂剤の成分が主鎖がシロキサン鎖を有する化合物又は炭素原子数1以上20以下の炭化水素化合物である場合、その繊維質量に対する含有割合(OPU)は、前述の分析手法により得た物質の質量を基に、その液膜開裂剤の含有量を繊維の質量で割ることにより求めることができる。
生理用ナプキン10の吸収体3は、液膜開裂剤の上記作用により、密度に関係なく、すなわち構成材料間の隙間の大きさに関係なく、高い液吸収速度が保持される。特に、吸収体3の肌当接面側にできるだけ近い部位に液膜開裂剤が含有されていると、肌当接面側の液通路をより確実に確保して同時に非肌当接面側での液保持を可能にし、全体として液の高い吸収速度が保持される。この高い液吸収速度の保持は、吸収体3の密度を高めた場合により効果的である。特に、吸収性物品の装着性の観点から求められる吸収体3の薄型化は、吸収体3の高密度をもたらすことから、薄型化された吸収体において液膜開裂剤が効果的に作用する。すなわち、吸収体3の液膜面積率、特に吸収体3の肌当接面側の液膜面積率が減少すると、吸収体3の構成部材間の隙間にある液が取り除かれて、液吸収速度が高く保持される。その結果、表面シート1で受領された排泄液が素早く吸収体3への移行し、排泄後も着け心地の良い吸収性物品となる。
また、吸収体3において、液吸収速度の向上と両立し得る高密度化により、表面シート1の液残り量がより高いレベルで低減されて、排泄後の吸収性物品の付け心地の向上に寄与し得る。該液残り量は、表面シート1全体に保持されている液量を意味する。吸収体3の液膜面積率が小さくなれば、一概に比例的とまではいかないが、表面シート1の液残りは低減する。また、表面シート1の液残り量の低減は、部材の白さを示すL値としても表すことができる。表面シート1のL値は、吸収体3の液膜が破れることで、表面シート1の液残り量が低下し、数値が高まる傾向にあり、視覚的に白さが際立ちやすくなる。
液膜開裂剤を含む吸収体3は、構成繊維を細くしても液膜面積率低下させ、毛管力を高めて、表面シート1の液残り量を低減し、L値を高くできる。これにより、ナプキン10は、液残り低減と液吸収速度の向上と両立に加え、ドライ性を高レベルで実現することができる。
(液膜面積率の測定方法)
前述した液膜面積率は、次の方法により測定することができる。
吸収体3を、肌当接面側からマイクロスコープ「VHX−1000」(商品名、株式会社キーエンス製)により撮影する。撮像した画像から画像解析ソフト「NewQube」(商品名、ネクサス社製)を用いて解析する。解析は、まずRGBカラー画像をモノクロ256階調の画像に変換する。そして、その画像を用いて二値化処理することにより液膜を表す黒い部分のみ抽出することで、液膜部分の面積を算出する。これを画像の面積に対する百分率で示したものを液膜面積率とする。液膜面積率が小さいほど、繊維間の液膜開裂効果が大きいことを示している。
本実施形態の生理用ナプキン10において、液膜開裂剤が吸収体3の構成繊維に含有する場合、少なくとも一部の繊維交絡点付近又は繊維融着点付近に液膜開裂剤が局在化していることが好ましい。ここでいう液膜開裂剤の「局在」とは、構成繊維の表面全体に均等に液膜開裂剤が付着した状態ではなく、各繊維の表面よりも繊維交絡点付近又は繊維融着点付近に偏って付着している状態をいう。具体的には、繊維表面(交絡点間あるいは融着点間の繊維表面)に比べて交絡点や融着点付近の液膜開裂剤濃度が高いと定義することができる。その際、繊維交絡点付近又は繊維融着点付近に存在する液膜開裂剤は、繊維交絡点又は繊維融着点を中心に繊維間の空間を部分的に被覆するように付着されていてもよい。交絡点や融着点付近の液膜開裂剤濃度は濃い程良い。該濃度は、用いる液膜開裂剤の種類や使用する繊維の種類、他の剤と混合する場合の有効成分割合等により変わってくるため一義的に定められないが、前述した液膜開裂作用を発揮する観点から適宜定めることができる。
液膜開裂剤の局在によって、液膜開裂作用がより発現しやすくなる。すなわち、繊維交絡点付近又は繊維融着点付近は特に液膜が生じやすい場所であるため、その場所に、より多くの液膜開裂剤があることで液膜に直接的に作用しやすくなる。
このようは液膜開裂剤の局在は、吸収体3の、液膜開裂剤を含有する構成繊維における繊維交絡点付近又は繊維融着点付近の30%以上で生じていることが好ましく、40%以上で生じていることがより好ましく、50%以上で生じていることが更に好ましい。なかでも、繊維交絡点または繊維融着点同士の距離が比較的短いところは繊維間の空間が小さく特に液膜が生じやすい。そのため、繊維間の空間が小さいところの繊維交点付近又は繊維融着点付近に選択的に液膜開裂剤が局在していると特に液膜開裂作用が効果的に発現し好ましい。また、上記のような選択的な局在の場合、液膜開裂剤は、比較的小さな繊維間空間に対する被覆率を大きくし、比較的大きな繊維間空間に対する被覆率を小さくすることが好ましい。これにより、吸収体3の液通路を確保しつつ、毛管力が大きく液膜が生じやすい部分での開裂作用を効果的に発現することができ、不織布全体における液残り低減効果が高くなる。
(液膜開裂剤の局在状態の確認方法)
上記の液膜開裂剤の局在状態は、以下の方法により確認することができる。
まず、不織布を5mm×5mmにカットし、試料台にカーボンテープを用いて取り付ける。試料台を走査型電子顕微鏡(S4300SE/N、株式会社日立製作所製)に無蒸着の状態で入れ、低真空もしくは真空状態にする。アニュラー形反射電子検出器(付属品)を用いて検出を行うことにより、原子番号の大きいほど反射電子を放出しやすいことから、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)やポリエステル(PET)を主に構成する炭素原子や水素原子より原子番号の大きい酸素原子やケイ素原子を多く含む液膜開裂剤が塗工された部分が白く写るので、白さによって局在の状態を確認できる。なお、その白さは原子番号が大きいか、または付着量が多いほど白さが増す。
吸収体3の製造方法において、液膜開裂剤を含有させる前の原料吸収体は、吸収性物品において通常用いられ方法により製造することができる。また、原料吸収体への液膜開裂剤の含有させる方法として、液膜開裂剤単体、もしくは前記液膜開裂剤を含む溶液(希釈液)を塗布する方法が挙げられる。なお、前記液膜開裂剤を含む溶液にリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を混合していてもよい。その場合の液膜開裂剤とリン酸エステル型のアニオン界面活性剤との含有比率は前述のとおりであることが好ましい。前記溶媒としては、水溶解度の極めて小さい液膜開裂剤を、不織布に塗工しやすいように溶媒中に適度に溶解または分散させて乳化させることができるものを特に制限なく用いることができる。例えば、溶解させるものとしてエタノール、メタノール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒、もしくは乳化液とする場合には当然ながら水も溶媒ないしは分散媒体として用いることができ、乳化させる時に使用する乳化剤としてアルキルリン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキルベタイン、アルキルスルホコハク酸ナトリウムなどを含む各種界面活性剤が挙げられる。
上記の原料吸収体に対して塗布する方法としては、この不織布の製造方法に用いられるものを特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、グラビア方式、フレキソ方式、ディッピング方式による塗布等などが挙げられる。
前述した繊維交絡点付近又は繊維融着点付近への液膜開裂剤の局在化の観点からは、スプレーによる塗布方法、フレキソ方式による塗布方法が特に好ましい。
また、原料吸収体としては、吸収性物品において通常用いられる種々の構成とするができる。特に、液膜開裂剤の局在化の観点から繊維材料を含むことが好ましく、少なくとも肌当接面側で繊維材料の交絡点や融着点がある繊維材料がより好ましい。
本実施形態の生理用ナプキン10の構成部材の素材としては、この種の物品に採用されるものを特に制限なく用いることができる。
吸収体3としては、この種の物品に用いられるものを特に制限することなく任意に採用できる。例えば、親水性の繊維集合体からなる吸収性コアをコアラップシートで被覆してなるものなどが挙げられる。前記吸収性コアにはさらに高吸水性ポリマーが含有されていてもよい。前記コアラップシートの素材としては、親水性繊維を原料として製造された紙やパルプシート、親水性の不織布などが挙げられる。
また、吸収体3としては、シート状にしたものでもよい。前記シート状のものとしては、例えば、親水性繊維を原料として製造された紙やパルプシートなどがある。また、二枚の基材シート(吸収紙又は不織布)の間に高吸水性ポリマー材の集合体からなる吸収性コアを挟持固定した吸水性シート(例えば、特開平8−246395号に記載の吸水性シートや特開2004−275225号に記載のポリマーシート)などがある。
前記繊維集合体の繊維や前記親水性繊維は、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプや植物パルプ等の天然繊維、キュプラやレーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類等の合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
表面シート1は、液透過性であり、この種の物品に用いられるものを特に制限なく用いることができる。排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水性のサーマルボンド不織布が好ましく、特にエアスルー不織布が好ましい。親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。
裏面シート2の素材としては、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布との貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。
セカンドシート4は不織布からなり、該不織布は上記の毛管力を具備し得るものを特に制限なく採用できる。例えば、エアスルー不織布、エアレイド不織布、サクションヒートボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられる。特に、液透過の観点から、エアスルー不織布、エアレイド不織布、ケミカルボンド不織布が好ましく用いられる。これらの不織布が、疎水性の繊維(例えば熱融着性繊維)から構成されている場合には、前述した繊維処理剤を用いて親水化させることが好ましい。セカンドシート4をなす不織布の坪量は、20g/m2以上50g/m2以下であることが、装着感を損なわず且つセカンドシート4が有する保水性や液拡散性を損なわない点から好ましい。また、セカンドシート4の厚みは、好ましくは0.4mm以上2.0mm以下、更に好ましくは0.4mm以上1.5mm以下である。
本実施形態の生理用ナプキン10は、吸収体3に前記液膜開裂剤を含有するものであれば、他の部材構成や形状は特に前述したもの限定されない。例えば、本発明の吸収性物品は、防漏溝5を環状ではなく、複数に分離した溝の組み合わせであってもよい。また、後方部Rに、着用者の臀部を覆うように長く広がる後部フラップ部等を有するものであってもよく、股下部Cに、下着のクロッチに固定させる一対のウイング部を有するものであってもよい。さらに、表面シート1上の縦方向(Y方向)の両側に、排泄液の横漏れを防ぐ、撥水性のサイドシートが配されていてもよい。また、裏面シート2の非肌当接面側に、下着に固定する粘着部を有していてもよく、さらに該粘着部を剥離可能に覆う剥離シートなどがあってもよい。
また、本発明の吸収性物品は、上記の生理用ナプキンに限定されるものではなく、排泄液を吸収保持する種々のものとすることができる。例えば、パンティライナーや失禁パッド、おむつ、尿とりパッドなどであってもよい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。また、拡張係数、界面張力、表面張力及び水溶解度は、前述のとおり、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で測定したものである。下記実施例における、液膜開裂剤の表面張力、水溶解度及び界面張力は、前述の測定方法により行った。なお、下記表中における、「−」は、項目名に示される剤を用いないこと、項目に該当する値を有さないこと等を意味する。
(実施例1)
(1)表面シート試料の作製
繊度4.2dtexの熱伸長性繊維と繊度3.3dtexの熱融着性芯鞘複合繊維を有する繊維ウエブを用いて、次の方法により実施例1の表面シート試料を作製した。
まず、前記繊維ウエブに対して、ヒートエンボス加工によって線状の凹部を格子状に形成する。このとき、前記凹部では、熱伸長性繊維は圧着または融着されて熱熱伸長されないで固定されていた。次いで、エアスルー加工により前記凹部以外の部分に存する熱伸長性繊維を伸長して凸部を作製した。これにより、一方の面が凹凸面となる不織布を形成した。該不織布を生理用ナプキン用の寸法に裁断して実施例1の表面シート試料とした。該表面シート試料の厚みを1.0mmとした。
(2)セカンドシート試料の作製
次のようにしてセカンドシート試料を作製した。
まず、芯部がポリエチレンテレフタレート樹脂、鞘部がポリエチレン樹脂からなり、繊度が2.2dtexの熱融着性芯鞘複合繊維を用い、136℃でエアスルー加工することによりエアスルー不織布を作成し、その後エンボス加工を施した。エンボス加工は、ドット状のエンボス部が形成され且つエンボス部の面積率が25%になるように行った。
(3)吸収体試料の作製
(3−1)原料吸収体の作製
市販の生理用ナプキン(花王株式会社製:ロリエ Super Slimguard、2012年製)から、コールドスプレーを用いて、慎重に表面材とセカンドシート及びバックシートを取り除き、原料吸収体Aを得た。原料吸収体Aは、高吸水性ポリマー材の集合体と、該高吸水性ポリマー材の集合体の肌当接面側及び非肌当接面側を被覆する基材シートとからなるものであった。
得られた原料吸収体Aの液吸収部の厚みは3.2mmであり、密度は0.15cm/gであった。原料吸収体Aの質量は3.4gであった。
(3−2)液膜開裂剤の塗工液の調製
ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製 KF−6015)で、構造X−YにおけるXが−Si(CHO−からなるジメチルシリコーン鎖、Yが−(CO)−からなるPOE鎖からなり、POE鎖の末端基がメチル基(CH)であり、変性率が20%、ポリオキシエチレン付加モル数が3、質量平均分子量が4000の液膜開裂剤を溶質エタノールに溶解させ液膜開裂剤の有効成分0.06質量%の希釈液を塗工液として作製した。
上記のポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンは、表面張力21.0mN/m、水溶解度0.0001g未満であった。また、ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンの、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数は28.8mN/mであり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は、0.2mN/mであった。これらの数値は、前述の測定方法により測定した。その際、「表面張力が50mN/mの液体」は、100gの脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW−L120)をマイクロピペット(ACURA825、Socorex Isba SA社製)で3.75μL添加し、表面張力を50±1mN/mに調整した溶液を用いた。また、水溶解度は、0.0001g毎に剤を添加して測定した。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とした。それ以外の数値についても同様の方法により測定した。
(3−3)吸収体試料の作製
原料吸収体Aの肌当接面側に対して、前記液膜開裂剤の塗布液をスプレーにより塗布し、自然乾燥させて実施例1の吸収体試料(吸収体A)を作製した。これにより、実施例1の吸収体試料では、少なくとも肌当接面側の表面に液膜開裂剤が含有されていた。液膜開裂剤であるポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンの、吸収体試料の質量に対する含有割合(OPU)は1.0質量%とした。
(実施例2)
(1)表面シート試料及びセカンドシート試料の作製
実施例1と同様にして、実施例2の表面シート試料及びセカンドシート試料を作製した。
(2)吸収体試料の作製
液膜開裂剤として下記のものを溶質エタノールに溶解させ、液膜開裂剤の有効成分3.0質量%とした塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の吸収体試料(吸収体A)を作製した。実施例1の吸収体試料においても、少なくとも肌当接面側の表面に液膜開裂剤が含有されていた。
<液膜開裂剤>
ポリプロピレングリコール(花王株式会社製 消泡剤No.1)で、構造XにおけるXがPOP鎖からなるものであり、ポリオキシプロピレン基のモル数が52、質量平均分子量が3000の液膜開裂剤。
前記液膜開裂剤は下記の性質を有していた。
表面張力:32.7mN/m
水溶解度:0.0001g未満
表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数:16.3mN/m
表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力:1.0mN/m
(実施例3)
(1)表面シート試料の作製
厚みを1.2mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の表面シート試料を作製した。
(2)セカンドシート試料の作製
実施例1と同様にして、実施例3のセカンドシート試料を作製した。
(3)吸収体試料の作製
パルプ繊維の集合体4.1gと高吸水性ポリマー0.17gからなる吸収性コアをセルロース繊維からなるコアラップシートで包んだものを原料吸収体(パルプ吸収体)として作製した。該原料吸収体の厚みは4.6mmであり、密度は0.06cm/gであった。原料吸収体の質量は4.8gであった。
前記原料吸収体の肌当接面側に対し、実施例1で用いた液膜開裂剤を実施例1と同様にして塗布して、実施例3の吸収体試料(パルプ吸収体)を作製した。実施例3の吸収体試料においては、少なくとも肌当接面側のコアラップシートに液膜開裂剤が含有されていた。
(比較例1)
原料吸収体Aに液膜開裂剤を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の吸収体試料を作製した。また、表面シート試料及びセカンドシート試料については、実施例1と同様にして作製した。
(比較例2)
原料吸収体(パルプ吸収体)に液膜開裂剤を含有させなかった以外は、実施例3と同様にして、比較例2の吸収体試料を作製した。また、表面シート試料及びセカンドシート試料については、実施例1と同様にして作製した。
(参考例1)
表面シート試料、セカンドシート試料及び原料吸収体Aは、実施例1と同様にして作製した。
前記原料吸収体Aは液膜開裂剤を含有させずに、そのまま参考例1の吸収体試料とした。
セカンドシート試料に対し、実施例2で用いた液膜開裂剤を実施例2と同様にして塗布した。塗布後のセカンドシート試料の質量に対する、液膜開裂剤の含有割合(OPU)は1.0質量%とした。
(評価)
<1>実施例1〜2、比較例1、参考例1
下記の評価は、次のようにして生理用ナプキン試料を作製して行った。
すなわち、実施例1及び比較例1用として、市販の生理用ナプキン(花王株式会社製:ロリエ Super Slimguard、2012年製)の構成部材である、表面シート、セカンドシート、吸収体及び裏面シートのうち、表面シート及び吸収体を取り除いたものを準備した。次いで、準備した各生理用ナプキンに対し、実施例1〜2、比較例1、参考例1それぞれの吸収体試料、セカンドシート試料及び表面シート試料を所定位置に載置して、周囲を固定した。これらをそれぞれ実施例1〜2、比較例1、参考例1の生理用ナプキン試料とした。
<2>実施例3、比較例2
下記の評価は、次のようにして尿吸収用ナプキン試料を作製して行った。
すなわち、実施例3、比較例2用として、市販の尿吸収用ナプキン(花王株式会社製:吸水フリーディ消臭プラス ナプキンタイプ 中量用 22.5cm、2013年製)の構成部材である、表面シート、セカンドシート、吸収体及び裏面シートのうち、表面シート、セカンドシート及び吸収体を取り除いたものを準備した。次いで、準備した各生理用ナプキンに対し、実施例3、比較例2それぞれの吸収体試料、セカンドシート試料及び表面シート試料を所定位置に載置して、周囲を固定した。これらをそれぞれ実施例3、比較例2の尿吸収用ナプキン試料とした。
(加圧下液吸収速度)
<実施例1〜2、比較例1、参考例1>
各評価用の生理用ナプキン試料の表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、さらにおもりを重ねて5g/cm一定荷重を掛けた。その際、前記透過孔が各生理用ナプキンン試料の表面シート上の縦横中央付近に位置するようにした。前記透過孔には、高さ6cmの筒状の注入口を設けた。
斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から経血に相当する脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)4.0gを流し込んだ。なお、前記馬脱繊維血液の粘度は、東機産業株式会社のTVB10形粘度計にて、30rpmの条件下で調整した。馬血は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を、8.0cPになるように調整した。
4.0gの脱繊維馬血を流し込んでから液柱が無くなるまでの速度を液吸収速度とした。
<実施例3、比較例2>
前記脱繊維馬血に代えて、人工尿(尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.11質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号0.010質量%、水96.88質量%及びPOEラウリルエーテル約0.07質量%の割合で配合したもので、表面張力が53±1mN/m(25℃)に調整されたもの)を30g一括で流し込むことで測定を行った以外は上記<実施例1〜2、比較例1、参考例1>の場合と同様にして液吸収速度の試験を行った。
(加圧下液注入後1分経過後の表面シート試料及びセカンドシート試料の液残り量)
上記の(加圧下液吸収速度)の試験において液吸収開始から1分経過後、アクリル板及び重りを取り除いた。次いで、実施例1〜2、比較例1及び参考例1の生理用ナプキン試料、実施例3及び比較例2の尿吸収用ナプキン試料それぞれから端部のみにコールドスプレーを吹きかけ、端部から表面シート試料及びセカンドシート試料を慎重に取り出し、該表面シート試料及びセカンドシート試料の質量(W1)を測定した。その後表面シート試料及びセカンドシート試料を水で洗浄し、電気乾燥機100℃の環境下にて十分乾燥した後に、質量(W2)を測定した。吸収後の質量(W1)と、乾燥後の重量(W2)との差(W1−W2)を算出した。以上の操作を3回行い、3回の平均値を表面シート試料及びセカンドシート試料合計の液残り量(mg)とした。液残り量は、装着者の肌がどの程度濡れるかの指標となるものであり、液残り量が少ないほど程、良い結果である。
(加圧下液注入後1分経過後のL値)
上記の(表面シートの液残り量)で取り出した、実施例1〜2、比較例1及び参考例1の各表面シート試料、実施例3及び比較例2の各表面シート試料について、日本電色工業株式会社製の簡易型分光色差計NF333を用いて、脱繊維馬血又は人工尿を投入した位置におけるL値を測定した。
L値(明度)はその値が大きいほど、色が白に近づき、表面シート(不織布試料)に赤みが見えにくいことを示す。すなわち、繊維間における液残りが少ないことを示す。
上記実施例及び比較例の成分構成、及び該実施例及び比較例についての各評価の結果は下記表1のとおりである。
Figure 2017213222
上記表1に示す通り、脱繊維馬血を用いた比較例1は、加圧下吸収速度58.8秒、加圧下注入1分後液残り量(表面シート及びセカンドシート)203.9mg、加圧下注入1分後L値47であった。
これに対し、同じ脱繊維馬血を用いた実施例1は、加圧下吸収速度49.1で、比較例1よりも15%以上優れた吸収速度を有していた。また、実施例1は、液残り量149.3gで、比較例1よりも26%以上も抑制されており、L値56で、比較例1よりも約20%も高く汚れが目立たなかった。
同様に、脱繊維馬血を用い、種類の異なる液膜開裂剤を用いた実施例2においても、加圧下吸収速度、液残り量及びL値の全てにおいて、比較例1よりも優れた結果を示していた。
また、人工尿を用いた比較例2は、加圧下吸収速度6.5秒、液残り量155mg、L値66であった。比較例2が比較例1より良い結果を示したのは、脱繊維馬血よりも粘度が低いことによると考えられる。
これに対し、同じ人工尿を用いた実施例3は、液残り量81mgで、比較例2の約半分にまで低減していた。実施例3の加圧下吸収速度は7.4秒で、粘度が経血よりも小さい人工尿を用いたため、比較例2と実質差がなかった。
なお、脱繊維馬血を用いた参考例1については、吸収体3への液膜開裂剤の含有がなかったため、加圧下吸収速度は実施例1及び2の方が優れていた。また、参考例1はセカンドシートに液膜開裂剤を含有させていたため、表面シートから吸収体へと繋ぐ液通路が確保されて、液残り量が比較例1よりも低く抑えられており、L値も比較例1よりも高く汚れが目立たなかった。
1 表面シート
2 裏面シート
3 吸収体
4 セカンドシート
5 防漏溝
10 生理用ナプキン
81 繊維
82 液膜
83 液膜開裂剤

Claims (7)

  1. 表面シート、裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に配された吸収体を備える吸収性物品であって、
    前記吸収体が液膜開裂剤を含む吸収性物品。
  2. 前記吸収体は、吸収性コアと少なくとも該吸収性コアの肌当接面側に配されたコアラップシートとを有し、該コアラップシートが前記液膜開裂剤を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記液膜開裂剤は、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が15mN/m以上で、水溶解度が0g以上0.025g以下である請求項1又は2記載の吸収性物品。
  4. 前記液膜開裂剤の、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記液膜開裂剤が、前記吸収体の肌当接面及び非肌当接面のいずれかの面に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記液膜開裂剤の表面張力が30mN/m以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  7. 前記吸収体の密度が0.10g/cm以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
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