JP2017213222A - 吸収性物品 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、吸収体における液拡散性を高める観点から、吸収性コアの非肌当接面側に不織布シートを配した吸収体が記載されている。前記不織布シートは、親水性繊維を主に含む2つの繊維層の間にパルプ繊維層を挟んだ積層構造を有する。
また、特許文献2には、薄型の吸収体としての吸収性シートが記載されている。該吸収性シートは、繊維集合体と繊維ウエブとを有し、高吸収性ポリマーを内部に分散配置した一体構成を有する。これにより、吸収性シートは、高吸収性ポリマーの固定性がよく、液の透過性が向上し、ゲルブロッキングも抑えられるとされる。また、該吸収性シートには、湿潤強度を付与する観点から、熱溶融性接着繊維または紙力補強剤を含む。
また、吸収体は、表面シートのドライ性の観点から、表面シートから移行してくる排泄液を吸収体内で遅滞なく迅速に受領処理することも重要である。すなわち、液吸収速度が速いほど、排泄液が出た直後のドライ性を実感しやすくなる。しかし、液吸収速度は、前述した吸収体の密度を高めると低下する傾向にある。これは、吸収体の密度を高めるほど、吸収体内部での液が拡散する通路が狭まるためである。この吸収速度は、前記密度によっては、排泄液の初期受領時は十分であっても、繰り返し排泄液を受けるにつれ、目詰まりを起こして低下する場合もある。
このように、吸収性物品内の吸収体において、表面シートの液残り等の低減のための吸収体の高密度化と、排泄液を迅速に処理する吸収速度の向上とが両立し難い。
前述したセカンドシート4は、液透過性を有し、表面シート1ある排泄液を積極的に引き抜いて表面シート1下で液拡散をし、これにより吸収体3に対して、広い面で液の引き渡しをする機能を有する。また、セカンドシート4は、表面シート1と吸収体3との間に一定の距離を確保して、吸収体3から表面シート1への液戻りを抑制する機能を有する。 このような機能を有するセカンドシート4は、吸収体3を構成する部材でなく、独立した部材である。すなわち、セカンドシート4は、上記の液戻り抑制機能を有することから、液を保持する吸収性コアに当接しておらず、該吸収性コアに当接するコアラップシートや基材シートとは異なる部材である。
ナプキン10は、縦方向(Y方向)において、着用者の排泄部を覆う股下部C、股下部Cよりも前方の下腹部側に対応する前方部F、後方の臀部側に対応する後方部Rを有する。股下部Cには、幅方向中央に、排泄液を直接受ける液吸収領域C1がある。本実施形態における股下部Cは、生理用ナプキン10を縦方向に3領域の区分したときの中央の領域である。なお、この区分は、股下部Cを基準に前方部F及び後方部Rが決められる。そのため、使用目的等によって設定される吸収性物品の長さにより区分位置が異なる。例えば、臀部を覆う幅広の後方フラップを有する吸収性物品の場合、股下部Cは、ナプキンの前方寄りとなる。
繊維材料は、吸収体3の構成部材(パルプ繊維の集合体、コアラップシート、基材シートなど)おいて、繊維同士の間に隙間を形成している。繊維間の隙間が、吸収体内における液体の拡散及び透過の通路となる。ただし、吸収体3においては、繊維間のみならず、繊維と高吸水性ポリマーとの間の隙間、高吸水性ポリマー同士の間の隙間など、吸収体を構成する構成素材間の隙間が通路となる。このような隙間の大きさ、言い換えると吸収体3の密度が、吸収体内部における通路の大きさを決める。また、吸収体3の密度が毛管力の強さを決める。
前記液膜開裂剤とは、液、例えば、経血等の高粘性の液や尿などの排泄液が、吸収体に触れて、吸収体3を構成する材料間ないし材料表面(特に、繊維間ないしは繊維表面)に形成される液膜を開裂させたりして、液膜の形成を阻害する剤のことをいい、形成された液膜を開裂させる作用と、液膜の形成を阻害する作用とを有する。前者は主たる作用、後者は従たる作用ということができる。液膜の開裂は、液膜開裂剤の、液膜の層の一部を押しのけて不安定化せる作用によりなされる。この液膜開裂剤の作用により、液体が吸収体3の構成材料間(特に繊維間)の狭い領域に留まることなく通過し、吸収体内を拡散しやすくなる。これにより、排泄液を一度に多量に受けたり、繰り返し受けたりする場合でも、吸収体3の高い液吸収速度を保持することができる。そのため、吸収体3の密度を高めて構成材料間の隙間を狭め、表面シート側の液を強く引き抜く毛管力を高めても、吸収体の高い液吸収速度を保持することができる。すなわち、吸収体の高密度化による表面シートの液残り低減と、高い液吸収速度とを両立することができる。また、吸収体の高密度化による薄型化も実現でき、ナプキン10の装着性の向上の観点から好ましい。
本発明で用いられる液膜開裂剤は、液膜を消失させる性質を有しており、斯かる性質により、該液膜開裂剤を血漿成分を主体とする試験液又は人工尿(組成:尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.110質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水(約96.88質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07質量%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したもの)に適用した場合に液膜消失効果を発現し得る。ここでいう液膜消失効果には、試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体について、該構造体の液膜形成を阻害する効果と、形成された該構造体を消失させる効果との双方が含まれ、少なくとも一方の効果を発現する剤は、液膜消失効果を発現し得る性質を有していると言える。
前記試験液は、脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト製)から抽出された液体成分である。具体的には、100mLの脱繊維馬血を温度22℃、湿度65%の条件下で1時間静置すると、該脱繊維馬血は上層と下層とに分離するところ、この上層が前記試験液である。上層は主に血漿成分を含み、下層は主に血球成分を含む。上層と下層とに分離した脱繊維馬血から上層のみを取り出すには、例えばトランスファーピペット(日本マイクロ株式会社製)を用いることができる。
ある剤が前記の「液膜を消失させる性質」を有するか否かは、当該剤が適用された前記試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体が発生しやすい状態にした場合の、該構造体即ち液膜の量の多少で判断される。すなわち、前記試験液又は人工尿を、温度25℃に調整し、その後、スクリュー管(株式会社マルエム製 No.5 胴径27mm、全長55mm)に10g入れて、標準サンプルを得る。また、測定サンプルとして、標準サンプルと同じものに、25℃に予め調整した測定対象の剤を0.01g添加したものを得る。標準サンプルと測定サンプルをそれぞれ前記スクリュー管の上下方向に2往復強く振とうした後、水平面上に速やかに載置する。このサンプルの振とうにより、振とう後のスクリュー管の内部には、前記構造体の無い液体層(下層)と、該液体層の上に形成された多数の該構造体からなる構造体層(上層)とが形成される。振とう直後から10秒経過後に、両サンプルの構造体層の高さ(液体層の液面から構造体層上面までの高さ)を測定する。そして、標準サンプルの構造体層の高さに対して、測定サンプルの構造体層の高さが90%以下となった場合、測定対象の剤は液膜開裂効果を有しているとする。
本発明で用いられる液膜開裂剤は、前記の性質に当てはまる単一の化合物若しくは前記の性質に当てはまる単一の化合物の複数の組み合わせ、又は複数の化合物の組み合わせによって前記の性質を満たす(液膜の開裂を発現し得る)剤である。つまり液膜開裂剤とは、あくまで前記定義によるところの液膜開裂効果があるものに限定した剤のことである。したがって、吸収性物品中に適用されている化合物に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、液膜開裂剤と区別する。
なお、液膜開裂剤及び第三成分について、「単一の化合物」とは、同じ組成式を有するが、繰り返し単位数が異なることにより、分子量が異なる化合物を含める概念である。
また、吸収体3の平面方向において、液膜開裂剤が含有される範囲は、前記平面領域の全体でもよく一部でもよい。一部とする場合、少なくとも、液を最も多く受け止める部分であることが好ましい。例えば、経血等の排泄液を直接受け止める、着用者の排泄部に対応した液吸収領域C1である。
前記液膜開裂剤は、吸収体3において後述する液膜開裂効果を有するためには、液膜開裂剤が体液に触れた際に液状として存在する必要がある。この点から、液膜開裂剤の融点は40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。さらに、本発明に係る液膜開裂剤の融点は−220℃以上が好ましく、−180℃以上がより好ましい。
S=γw−γo−γwo ・・・・・ (1)
γw:液膜(液体)の表面張力
γo:液膜開裂剤の表面張力
γwo:液膜開裂剤の液膜との界面張力
なお、測定対象の吸収体が生理用品や使い捨ておむつなどの吸収性物品に組み込まれたものである場合は次のように取り出して測定を行う。すなわち、吸収性物品において、測定対象の吸収体と他の部材との接合に用いられる接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱めた後に、測定対象の吸収体を丁寧に剥がして取り出す。この取り出し方法は、本発明の吸収性物品に係る種々の測定において適用される。
また、繊維に付着した液膜開裂剤について測定する場合、まず液膜開裂剤が付着した繊維をヘキサンやメタノール、エタノールなどの洗浄液で洗浄し、その洗浄に用いた溶媒(液膜開裂剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させて取り出す。このときの取り出した物質の質量は、液膜開裂剤の繊維質量に対する含有割合(OPU)を算出するときに適用される。取り出した物質の量が表面張力や界面張力の測定には少ない場合、取り出した物質の構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定する。また、液膜開裂剤が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。そして、その物質が市販品であれば調達、市販品でなければ合成することにより十分な量を取得し、表面張力や界面張力を測定する。特に、表面張力と界面張力の測定に関しては、上記のようにして取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、プレート法(Wilhelmy法)により、白金プレートを使用して測定することができる。その際の測定装置としては、自動表面張力計「CBVP−Z」(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いることができる。白金プレートは、純度99.9%、大きさが横25mm、縦10mmのものを用いる。
なお、液膜開裂剤に関する下記測定では、前述した「表面張力が50mN/mの液体」は、上記の測定方法を用いて、脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例えば、花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW−L120)を加えて、表面張力50±1mN/mに調整された溶液を用いる。
液膜の表面張力(γw)の測定と同様に、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、プレート法により、同じ装置を使用して測定することができる。この測定に際し、前述のとおり、取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、ペンダントドロップ法により測定できる。その際の測定装置としては、自動界面粘弾性測定装置(TECLIS−ITCONCEPT社製、商品名THE TRACKERや、KRUSS社、商品名DSA25S)を用いることができる。ペンダントドロップ法では、ドロップが形成されると同時に表面張力が50mN/mの液体に含まれたノニオン系界面活性物質の吸着が始まり、時間経過で界面張力が低下していく。そのため、ドロップが形成された時(0秒時)の界面張力を読み取る。また、この測定に際し、前述のとおり、取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
また界面張力の測定時に、液膜開裂剤と表面張力が50mN/mの液体の密度差が非常に小さい場合や、粘度が著しく高い場合、界面張力値がペンダントドロップの測定限界以下の場合には、ペンダントドロップ法による界面張力測定が困難になる場合がある。その場合には、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、スピニングドロップ法により測定することで、測定が可能となる。その際の測定装置としては、スピニングドロップ界面張力計(KURUSS社製、商品名SITE100)を用いることができる。また、この測定についても、ドロップの形状が安定化した時の界面張力を読み取り、取得した液膜開裂剤が固体である場合には、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
尚、双方の測定装置で界面張力を測定可能な場合は、より小さな界面張力値を測定結果として採用する。
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、100gの脱イオン水をスターラーで撹拌しながら、取得した液膜開裂剤を徐々に溶解していき、溶けなくなった(浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた)時点での溶解量を水溶解度とする。具体的には、0.0001g毎に剤を添加して測定する。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とする。なお、液膜開裂剤が界面活性剤の場合、「溶解」とは単分散溶解とミセル分散溶解の両方を意味し、浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた時点での溶解量が水溶解度となる。
図2に示すように、繊維間の狭い領域においては、経血等の粘性の高い液や尿などの排泄液は、液膜82を張りやすい。これに対し、液膜開裂剤は次のようにして液膜を不安定化して破り、形成を阻害して、不織布中からの排液を促す。まず、図3(A1)及び(B1)に示すように、不織布の繊維81が有する液膜開裂剤83が、液膜82との界面を保ったまま、液膜82の表面上を移行する。次いで、液膜開裂剤83は、図3(A2)及び(B2)に示すように、液膜82の一部を押しのけて厚み方向へと侵入し、図3(A3)及び(B3)に示すように、液膜82を徐々に不均一で薄い膜へと変化させていく。その結果、液膜82は、図3(A4)及び(B4)に示すように、はじけるようにして穴が開き開裂される。開裂された経血等の液は、液滴となってなお不織布の繊維間を通過しやすくなり、液残りが低減される。また、上記の液膜開裂剤の液膜に対する作用は、繊維間の液膜に対する場合に限らず、繊維表面にまとわりついた液膜に対しても同様に発揮される。すなわち、液膜開裂剤は、繊維表面にまとわりついた液膜上を移行して該液膜の一部を押しのけ、液膜を開裂させることができる。また、液膜開裂剤は、繊維表面にまとわりついた液膜に対しては、繊維に付着した位置で移動せずともその疎水作用によっても液膜を開裂させ、形成を阻害することができる。
拡張係数はその式からもわかるように、対象となる液の表面張力により、その数値が変化する。例えば、対象液の表面張力が72mN/m、液膜開裂剤の表面張力が21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は50.8mN/mとなる。
また、対象液の表面張力が30mN/m、液膜開裂剤の表面張力21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は8.8mN/mとなる。
いずれの場合においても、拡張係数が大きい剤ほど、液膜開裂効果は大きくなる。
本明細書では、表面張力50mN/mにおける数値を定義したが、表面張力が異なったとしても、その各物質同士の拡張係数の数値の大小関係に変化はないことから、体液の表面張力が仮に、日ごとの体調などで変化したとしても、拡張係数が大きい剤ほど優れた液膜開裂効果を示す。
アルキルエーテルリン酸エステルとしては、特に制限なく種々のものを用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミチルエーテルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミトレイルエーテルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。また、ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン及びこれ等の構成モノマーが共重合されたものなどが挙げられる。なお、アルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルエーテルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキルリン酸エステルの具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステル等の飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステル等の不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。尚、アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類等が挙げられる。アルキルリン酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
すなわち、吸収性コアやコアラップシート、基材シートの所定の部位から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。温度25度、相対湿度(RH)65%の測定条件で行う。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー株式会社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。不織布から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
分離カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl3
溶媒流速:1.0ml/min
分離カラム温度:40℃
構造Xは、>C(A)−〈Cは炭素原子を示す。また、<、>及び−は結合手を示す。以下、同様。〉、−C(A)2−、−C(A)(B)−、>C(A)−C(R1)<、>C(R1)−、−C(R1)(R2)−、−C(R1)2−、>C<及び、−Si(R1)2O−、−Si(R1)(R2)O−のいずれかの基本構造が、繰り返されるか、もしくは2種以上が組み合わされた構造のシロキサン鎖、又はその混合鎖を表す。構造Xの末端には、水素原子、又は、−C(A)3、−C(A)2B、−C(A)(B)2、−C(A)2−C(R1)3、−C(R1)2A、−C(R1)3、また、−OSi(R1)3、−OSi(R1)2(R2)、−Si(R1)3、−Si(R1)2(R2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する。
上記のR1やR2は各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6〜20が好ましい。例えば、フェニル基が好ましい。)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)などの各種置換基を示す。A、Bは各々独立に、水酸基やカルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基などの酸素原子や窒素原子を含む置換基を示す。構造X内にR1、R2、A、Bが各々複数ある場合はそれらは互いに同一でも異なっていてもよい。また、連続するC(炭素原子)やSi間の結合は、通常、単結合であるが、二重結合や三重結合を含んでいてもよく、CやSi間の結合には、エーテル基(−O−)、アミド基(−CONRA−:RAは水素原子または一価の基)、エステル基(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、カーボネート基(−OCOO−)などの連結基を含んでもよい。一つのC及びSiが、他のC又はSiと結合している数は、1つ〜4つで、長鎖のシリコーン鎖(シロキサン鎖)又は混合鎖が分岐していたり、放射状の構造を有している場合があってもよい。
Yは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子から選ばれる原子を含む、親水性を有する親水基を表す。例えば、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、ポリオキシアルキレン基(オキシアルキレン基の炭素数は1〜4が好ましい。例えば、ポリオキシエチレン(POE)基、ポリオキシプロピレン(POP)基が好ましい。)、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホベタイン基(これらのベタイン基は、各ベタイン化合物から水素原子を1つ取り除いてなるベタイン残基をいう。)、4級アンモニウム基などの親水基単独、もしくは、その組み合わせからなる親水基などである。これらの他にも、後述するM1で挙げた基及び官能基も挙げられる。なお、Yが複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
構造X−Y及びY−X−Yにおいて、Yは、X、又はXの末端の基に結合する。YがXの末端の基に結合する場合、Xの末端の基は、例えばYとの結合数と同数の水素原子等が取り除かれてYと結合する。
この構造において、親水基Y、A、Bを具体的に説明した基から選択して前述の拡張係数、水溶解度、界面張力を満たすことができる。こうして、目的の液膜開裂効果を発現する。
M1は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、もしくはそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基を有する基や、エリスリトール基、キシリトール基、ソルビトール基、グリセリン基もしくはエチレングリコール基などの複数の水酸基を有する親水基(エリスリトール等の複数の水酸基を有する上記化合物から水素原子を1つ取り除いてなる親水基)、水酸基、カルボン酸基、メルカプト基、アルコキシ基(炭素数1〜20が好ましい。例えばメトキシ基が好ましい。)、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、スルホン酸基、4級アンモニウム基、スルホベタイン基、ヒドロキシスルホベタイン基、ホスホベタイン基、イミダゾリウムベタイン基、カルボベタイン基、エポキシ基、カルビノール基、(メタ)アクリル基、又はそれらを組み合わせた官能基を示す。なお、M1が多価の基である場合、M1は、上記各基又は官能基から、さらに1つ以上の水素原子を除いた基を示す。
L1は、エーテル基、アミノ基(L1として採りうるアミノ基は、>NRC(RCは水素原子または一価の基)で表される。)、アミド基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基の結合基を示す。
R21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、アルキル基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1〜20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6〜20が好ましい。例えばフェニル基が好ましい。)、フルオロアルキル基、もしくはアラルキル基、又はそれらを組み合わせた炭化水素基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)を示す。なお、R22及びR23が多価の基である場合、上記炭化水素基から、さらに1つ以上の水素原子又はフッ素原子を除いた多価炭化水素基を示す。
また、R22又はR23がM1と結合する場合、R22又はR23として採りうる基は、上記各基、上記炭化水素基又はハロゲン原子の他に、R32として採りうるイミノ基が挙げられる。
液膜開裂剤は、なかでも、Xとして、(1)、(2)、(5)及び(10)式のいずれかで表される構造を有し、Xの末端、又はXの末端とYとからなる基として、これらの式以外の上記式のいずれかで表される構造を有する化合物が好ましい。さらに、X、又はXの末端とYとからなる基が、上記(2)、(4)、(5)、(6)、(8)及び(9)式のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有するシロキサン鎖からなる化合物が、好ましい。
その中でも、ポリオキシアルキレン変性シリコーンやエポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ジオール変性シリコーンなど、変性シリコーンである液膜開裂剤が少なくとも一つの酸素原子を変性基中に有する構造を有する変性シリコーンが好ましく、特にポリオキシアルキレン変性シリコーンが好ましい。ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、ポリシロキサン鎖を有することで、繊維の内部に浸透し難く表面に残りやすい。また、親水的なポリオキシアルキレン鎖を付加したことにより、水との親和性が高まり、界面張力が低いため、前述した液膜表面上での移動が起きやすく好ましい。そのため、前述した液膜表面上での移動が起きやすく好ましい。また、ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、エンボス等の熱溶融加工が施されても、その部分において繊維の表面に残りやすく液膜開裂作用は低減し難い。特に液が溜まりやすいエンボス部分において液膜開裂作用が十分に発現するので好ましい。
上記観点から、該ポリオキシアルキレン基の付加モル数が1以上であるものが好ましい。1未満では、上記の液膜開裂作用にとって界面張力が高くなることにより、拡張係数が小さくなることから液膜開裂効果が弱くなってしまう。この観点から、付加モル数は3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。一方、付加モル数は多すぎると親水的になって水溶解度が高くなってしまう。この観点から、付加モル数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
変性シリコーンの変性率は、低すぎると親水性が損なわれるため、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、高すぎると水に溶けてしまうため、95%以下が好ましく、70%以下がより好ましく40%以下が更に好ましい。なお、前記変性シリコーンの変性率とは、変性シリコーン1分子中のシロキサン結合部の繰り返し単位の総個数に対する、変性したシロキサン結合部の繰り返し単位の個数の割合である。例えば、上記式[I]及び[IV]では(n/m+n)×100%であり、式[II]では、(2/m)×100%であり、式[III]では(1/m)×100%である。
また、前述の拡張係数及び水溶解度は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンにおいて、それぞれ、上記したもの以外にも、変性基を水可溶性のポリオキシエチレン基と水不溶性のポリオキシプロピレン基及びポリオキシブチレン基を併用すること、水不溶性のシリコーン鎖の分子量を変化させること、変性基としてポリオキシアルキレン変性に加えてアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、カルビノール基などを導入すること等により、所定の範囲に設定できる。
また、液膜開裂剤の成分が主鎖がシロキサン鎖を有する化合物又は炭素原子数1以上20以下の炭化水素化合物である場合、その繊維質量に対する含有割合(OPU)は、前述の分析手法により得た物質の質量を基に、その液膜開裂剤の含有量を繊維の質量で割ることにより求めることができる。
また、吸収体3において、液吸収速度の向上と両立し得る高密度化により、表面シート1の液残り量がより高いレベルで低減されて、排泄後の吸収性物品の付け心地の向上に寄与し得る。該液残り量は、表面シート1全体に保持されている液量を意味する。吸収体3の液膜面積率が小さくなれば、一概に比例的とまではいかないが、表面シート1の液残りは低減する。また、表面シート1の液残り量の低減は、部材の白さを示すL値としても表すことができる。表面シート1のL値は、吸収体3の液膜が破れることで、表面シート1の液残り量が低下し、数値が高まる傾向にあり、視覚的に白さが際立ちやすくなる。
液膜開裂剤を含む吸収体3は、構成繊維を細くしても液膜面積率低下させ、毛管力を高めて、表面シート1の液残り量を低減し、L値を高くできる。これにより、ナプキン10は、液残り低減と液吸収速度の向上と両立に加え、ドライ性を高レベルで実現することができる。
前述した液膜面積率は、次の方法により測定することができる。
吸収体3を、肌当接面側からマイクロスコープ「VHX−1000」(商品名、株式会社キーエンス製)により撮影する。撮像した画像から画像解析ソフト「NewQube」(商品名、ネクサス社製)を用いて解析する。解析は、まずRGBカラー画像をモノクロ256階調の画像に変換する。そして、その画像を用いて二値化処理することにより液膜を表す黒い部分のみ抽出することで、液膜部分の面積を算出する。これを画像の面積に対する百分率で示したものを液膜面積率とする。液膜面積率が小さいほど、繊維間の液膜開裂効果が大きいことを示している。
液膜開裂剤の局在によって、液膜開裂作用がより発現しやすくなる。すなわち、繊維交絡点付近又は繊維融着点付近は特に液膜が生じやすい場所であるため、その場所に、より多くの液膜開裂剤があることで液膜に直接的に作用しやすくなる。
このようは液膜開裂剤の局在は、吸収体3の、液膜開裂剤を含有する構成繊維における繊維交絡点付近又は繊維融着点付近の30%以上で生じていることが好ましく、40%以上で生じていることがより好ましく、50%以上で生じていることが更に好ましい。なかでも、繊維交絡点または繊維融着点同士の距離が比較的短いところは繊維間の空間が小さく特に液膜が生じやすい。そのため、繊維間の空間が小さいところの繊維交点付近又は繊維融着点付近に選択的に液膜開裂剤が局在していると特に液膜開裂作用が効果的に発現し好ましい。また、上記のような選択的な局在の場合、液膜開裂剤は、比較的小さな繊維間空間に対する被覆率を大きくし、比較的大きな繊維間空間に対する被覆率を小さくすることが好ましい。これにより、吸収体3の液通路を確保しつつ、毛管力が大きく液膜が生じやすい部分での開裂作用を効果的に発現することができ、不織布全体における液残り低減効果が高くなる。
上記の液膜開裂剤の局在状態は、以下の方法により確認することができる。
まず、不織布を5mm×5mmにカットし、試料台にカーボンテープを用いて取り付ける。試料台を走査型電子顕微鏡(S4300SE/N、株式会社日立製作所製)に無蒸着の状態で入れ、低真空もしくは真空状態にする。アニュラー形反射電子検出器(付属品)を用いて検出を行うことにより、原子番号の大きいほど反射電子を放出しやすいことから、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)やポリエステル(PET)を主に構成する炭素原子や水素原子より原子番号の大きい酸素原子やケイ素原子を多く含む液膜開裂剤が塗工された部分が白く写るので、白さによって局在の状態を確認できる。なお、その白さは原子番号が大きいか、または付着量が多いほど白さが増す。
上記の原料吸収体に対して塗布する方法としては、この不織布の製造方法に用いられるものを特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、グラビア方式、フレキソ方式、ディッピング方式による塗布等などが挙げられる。
前述した繊維交絡点付近又は繊維融着点付近への液膜開裂剤の局在化の観点からは、スプレーによる塗布方法、フレキソ方式による塗布方法が特に好ましい。
また、原料吸収体としては、吸収性物品において通常用いられる種々の構成とするができる。特に、液膜開裂剤の局在化の観点から繊維材料を含むことが好ましく、少なくとも肌当接面側で繊維材料の交絡点や融着点がある繊維材料がより好ましい。
また、吸収体3としては、シート状にしたものでもよい。前記シート状のものとしては、例えば、親水性繊維を原料として製造された紙やパルプシートなどがある。また、二枚の基材シート(吸収紙又は不織布)の間に高吸水性ポリマー材の集合体からなる吸収性コアを挟持固定した吸水性シート(例えば、特開平8−246395号に記載の吸水性シートや特開2004−275225号に記載のポリマーシート)などがある。
前記繊維集合体の繊維や前記親水性繊維は、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプや植物パルプ等の天然繊維、キュプラやレーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類等の合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(1)表面シート試料の作製
繊度4.2dtexの熱伸長性繊維と繊度3.3dtexの熱融着性芯鞘複合繊維を有する繊維ウエブを用いて、次の方法により実施例1の表面シート試料を作製した。
まず、前記繊維ウエブに対して、ヒートエンボス加工によって線状の凹部を格子状に形成する。このとき、前記凹部では、熱伸長性繊維は圧着または融着されて熱熱伸長されないで固定されていた。次いで、エアスルー加工により前記凹部以外の部分に存する熱伸長性繊維を伸長して凸部を作製した。これにより、一方の面が凹凸面となる不織布を形成した。該不織布を生理用ナプキン用の寸法に裁断して実施例1の表面シート試料とした。該表面シート試料の厚みを1.0mmとした。
次のようにしてセカンドシート試料を作製した。
まず、芯部がポリエチレンテレフタレート樹脂、鞘部がポリエチレン樹脂からなり、繊度が2.2dtexの熱融着性芯鞘複合繊維を用い、136℃でエアスルー加工することによりエアスルー不織布を作成し、その後エンボス加工を施した。エンボス加工は、ドット状のエンボス部が形成され且つエンボス部の面積率が25%になるように行った。
(3−1)原料吸収体の作製
市販の生理用ナプキン(花王株式会社製:ロリエ Super Slimguard、2012年製)から、コールドスプレーを用いて、慎重に表面材とセカンドシート及びバックシートを取り除き、原料吸収体Aを得た。原料吸収体Aは、高吸水性ポリマー材の集合体と、該高吸水性ポリマー材の集合体の肌当接面側及び非肌当接面側を被覆する基材シートとからなるものであった。
得られた原料吸収体Aの液吸収部の厚みは3.2mmであり、密度は0.15cm/g3であった。原料吸収体Aの質量は3.4gであった。
(3−2)液膜開裂剤の塗工液の調製
ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製 KF−6015)で、構造X−YにおけるXが−Si(CH3)2O−からなるジメチルシリコーン鎖、Yが−(C2H4O)−からなるPOE鎖からなり、POE鎖の末端基がメチル基(CH3)であり、変性率が20%、ポリオキシエチレン付加モル数が3、質量平均分子量が4000の液膜開裂剤を溶質エタノールに溶解させ液膜開裂剤の有効成分0.06質量%の希釈液を塗工液として作製した。
上記のポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンは、表面張力21.0mN/m、水溶解度0.0001g未満であった。また、ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンの、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数は28.8mN/mであり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は、0.2mN/mであった。これらの数値は、前述の測定方法により測定した。その際、「表面張力が50mN/mの液体」は、100gの脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW−L120)をマイクロピペット(ACURA825、Socorex Isba SA社製)で3.75μL添加し、表面張力を50±1mN/mに調整した溶液を用いた。また、水溶解度は、0.0001g毎に剤を添加して測定した。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とした。それ以外の数値についても同様の方法により測定した。
(3−3)吸収体試料の作製
原料吸収体Aの肌当接面側に対して、前記液膜開裂剤の塗布液をスプレーにより塗布し、自然乾燥させて実施例1の吸収体試料(吸収体A)を作製した。これにより、実施例1の吸収体試料では、少なくとも肌当接面側の表面に液膜開裂剤が含有されていた。液膜開裂剤であるポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンの、吸収体試料の質量に対する含有割合(OPU)は1.0質量%とした。
(1)表面シート試料及びセカンドシート試料の作製
実施例1と同様にして、実施例2の表面シート試料及びセカンドシート試料を作製した。
(2)吸収体試料の作製
液膜開裂剤として下記のものを溶質エタノールに溶解させ、液膜開裂剤の有効成分3.0質量%とした塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の吸収体試料(吸収体A)を作製した。実施例1の吸収体試料においても、少なくとも肌当接面側の表面に液膜開裂剤が含有されていた。
<液膜開裂剤>
ポリプロピレングリコール(花王株式会社製 消泡剤No.1)で、構造XにおけるXがPOP鎖からなるものであり、ポリオキシプロピレン基のモル数が52、質量平均分子量が3000の液膜開裂剤。
前記液膜開裂剤は下記の性質を有していた。
表面張力:32.7mN/m
水溶解度:0.0001g未満
表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数:16.3mN/m
表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力:1.0mN/m
(1)表面シート試料の作製
厚みを1.2mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の表面シート試料を作製した。
(2)セカンドシート試料の作製
実施例1と同様にして、実施例3のセカンドシート試料を作製した。
(3)吸収体試料の作製
パルプ繊維の集合体4.1gと高吸水性ポリマー0.17gからなる吸収性コアをセルロース繊維からなるコアラップシートで包んだものを原料吸収体(パルプ吸収体)として作製した。該原料吸収体の厚みは4.6mmであり、密度は0.06cm/g3であった。原料吸収体の質量は4.8gであった。
前記原料吸収体の肌当接面側に対し、実施例1で用いた液膜開裂剤を実施例1と同様にして塗布して、実施例3の吸収体試料(パルプ吸収体)を作製した。実施例3の吸収体試料においては、少なくとも肌当接面側のコアラップシートに液膜開裂剤が含有されていた。
原料吸収体Aに液膜開裂剤を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の吸収体試料を作製した。また、表面シート試料及びセカンドシート試料については、実施例1と同様にして作製した。
原料吸収体(パルプ吸収体)に液膜開裂剤を含有させなかった以外は、実施例3と同様にして、比較例2の吸収体試料を作製した。また、表面シート試料及びセカンドシート試料については、実施例1と同様にして作製した。
表面シート試料、セカンドシート試料及び原料吸収体Aは、実施例1と同様にして作製した。
前記原料吸収体Aは液膜開裂剤を含有させずに、そのまま参考例1の吸収体試料とした。
セカンドシート試料に対し、実施例2で用いた液膜開裂剤を実施例2と同様にして塗布した。塗布後のセカンドシート試料の質量に対する、液膜開裂剤の含有割合(OPU)は1.0質量%とした。
<1>実施例1〜2、比較例1、参考例1
下記の評価は、次のようにして生理用ナプキン試料を作製して行った。
すなわち、実施例1及び比較例1用として、市販の生理用ナプキン(花王株式会社製:ロリエ Super Slimguard、2012年製)の構成部材である、表面シート、セカンドシート、吸収体及び裏面シートのうち、表面シート及び吸収体を取り除いたものを準備した。次いで、準備した各生理用ナプキンに対し、実施例1〜2、比較例1、参考例1それぞれの吸収体試料、セカンドシート試料及び表面シート試料を所定位置に載置して、周囲を固定した。これらをそれぞれ実施例1〜2、比較例1、参考例1の生理用ナプキン試料とした。
<2>実施例3、比較例2
下記の評価は、次のようにして尿吸収用ナプキン試料を作製して行った。
すなわち、実施例3、比較例2用として、市販の尿吸収用ナプキン(花王株式会社製:吸水フリーディ消臭プラス ナプキンタイプ 中量用 22.5cm、2013年製)の構成部材である、表面シート、セカンドシート、吸収体及び裏面シートのうち、表面シート、セカンドシート及び吸収体を取り除いたものを準備した。次いで、準備した各生理用ナプキンに対し、実施例3、比較例2それぞれの吸収体試料、セカンドシート試料及び表面シート試料を所定位置に載置して、周囲を固定した。これらをそれぞれ実施例3、比較例2の尿吸収用ナプキン試料とした。
<実施例1〜2、比較例1、参考例1>
各評価用の生理用ナプキン試料の表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、さらにおもりを重ねて5g/cm2一定荷重を掛けた。その際、前記透過孔が各生理用ナプキンン試料の表面シート上の縦横中央付近に位置するようにした。前記透過孔には、高さ6cmの筒状の注入口を設けた。
斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から経血に相当する脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)4.0gを流し込んだ。なお、前記馬脱繊維血液の粘度は、東機産業株式会社のTVB10形粘度計にて、30rpmの条件下で調整した。馬血は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を、8.0cPになるように調整した。
4.0gの脱繊維馬血を流し込んでから液柱が無くなるまでの速度を液吸収速度とした。
<実施例3、比較例2>
前記脱繊維馬血に代えて、人工尿(尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.11質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号0.010質量%、水96.88質量%及びPOEラウリルエーテル約0.07質量%の割合で配合したもので、表面張力が53±1mN/m(25℃)に調整されたもの)を30g一括で流し込むことで測定を行った以外は上記<実施例1〜2、比較例1、参考例1>の場合と同様にして液吸収速度の試験を行った。
上記の(加圧下液吸収速度)の試験において液吸収開始から1分経過後、アクリル板及び重りを取り除いた。次いで、実施例1〜2、比較例1及び参考例1の生理用ナプキン試料、実施例3及び比較例2の尿吸収用ナプキン試料それぞれから端部のみにコールドスプレーを吹きかけ、端部から表面シート試料及びセカンドシート試料を慎重に取り出し、該表面シート試料及びセカンドシート試料の質量(W1)を測定した。その後表面シート試料及びセカンドシート試料を水で洗浄し、電気乾燥機100℃の環境下にて十分乾燥した後に、質量(W2)を測定した。吸収後の質量(W1)と、乾燥後の重量(W2)との差(W1−W2)を算出した。以上の操作を3回行い、3回の平均値を表面シート試料及びセカンドシート試料合計の液残り量(mg)とした。液残り量は、装着者の肌がどの程度濡れるかの指標となるものであり、液残り量が少ないほど程、良い結果である。
上記の(表面シートの液残り量)で取り出した、実施例1〜2、比較例1及び参考例1の各表面シート試料、実施例3及び比較例2の各表面シート試料について、日本電色工業株式会社製の簡易型分光色差計NF333を用いて、脱繊維馬血又は人工尿を投入した位置におけるL値を測定した。
L値(明度)はその値が大きいほど、色が白に近づき、表面シート(不織布試料)に赤みが見えにくいことを示す。すなわち、繊維間における液残りが少ないことを示す。
これに対し、同じ脱繊維馬血を用いた実施例1は、加圧下吸収速度49.1で、比較例1よりも15%以上優れた吸収速度を有していた。また、実施例1は、液残り量149.3gで、比較例1よりも26%以上も抑制されており、L値56で、比較例1よりも約20%も高く汚れが目立たなかった。
同様に、脱繊維馬血を用い、種類の異なる液膜開裂剤を用いた実施例2においても、加圧下吸収速度、液残り量及びL値の全てにおいて、比較例1よりも優れた結果を示していた。
また、人工尿を用いた比較例2は、加圧下吸収速度6.5秒、液残り量155mg、L値66であった。比較例2が比較例1より良い結果を示したのは、脱繊維馬血よりも粘度が低いことによると考えられる。
これに対し、同じ人工尿を用いた実施例3は、液残り量81mgで、比較例2の約半分にまで低減していた。実施例3の加圧下吸収速度は7.4秒で、粘度が経血よりも小さい人工尿を用いたため、比較例2と実質差がなかった。
なお、脱繊維馬血を用いた参考例1については、吸収体3への液膜開裂剤の含有がなかったため、加圧下吸収速度は実施例1及び2の方が優れていた。また、参考例1はセカンドシートに液膜開裂剤を含有させていたため、表面シートから吸収体へと繋ぐ液通路が確保されて、液残り量が比較例1よりも低く抑えられており、L値も比較例1よりも高く汚れが目立たなかった。
2 裏面シート
3 吸収体
4 セカンドシート
5 防漏溝
10 生理用ナプキン
81 繊維
82 液膜
83 液膜開裂剤
Claims (7)
- 表面シート、裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に配された吸収体を備える吸収性物品であって、
前記吸収体が液膜開裂剤を含む吸収性物品。 - 前記吸収体は、吸収性コアと少なくとも該吸収性コアの肌当接面側に配されたコアラップシートとを有し、該コアラップシートが前記液膜開裂剤を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
- 前記液膜開裂剤は、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が15mN/m以上で、水溶解度が0g以上0.025g以下である請求項1又は2記載の吸収性物品。
- 前記液膜開裂剤の、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記液膜開裂剤が、前記吸収体の肌当接面及び非肌当接面のいずれかの面に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記液膜開裂剤の表面張力が30mN/m以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記吸収体の密度が0.10g/cm3以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
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