次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示のダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、図2は、発進装置1の要部を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(本実施形態では、内燃機関)EGを備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンEGのクランクシャフトに連結されるフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、ハイブリッドトランスミッション、あるいは減速機である変速機(動力伝達装置)TMの入力軸ISに固定される動力出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8等を含む。
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸CA(軸心、図2参照)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸CAから当該中心軸CAと直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定される図示しないポンプシェルと、ポンプシェルの内面に配設された複数のポンプブレード(図示省略)とを有する。タービンランナ5は、タービンシェル50(図2参照)と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード(図示省略)とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6(図1参照)が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレードを有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ60により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ60を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
ロックアップクラッチ8は、油圧式単板クラッチとして構成されており、図2に示すように、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジンEG側(図中左側)の内壁面近傍に配置されると共にダンパハブ7に対して回転自在かつ軸方向に移動自在に嵌合されるロックアップピストン80を有する。ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面には、摩擦材81が貼着されており、ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、作動油供給路や入力軸ISに形成された油路等を介して図示しない油圧制御装置に接続されるロックアップ室85が画成される。発進装置1では、図示しない油圧制御装置によりポンプインペラ4やタービンランナ5が配置される流体室9内の油圧をロックアップ室85内の油圧よりも高くすることで、ロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させてダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結することができる。また、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室85内の油圧を流体室9内の油圧よりも高くすることで、ロックアップクラッチ8を解放してフロントカバー3とダンパハブ7との連結を解除することができる。なお、ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチであってもよい。
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、中間部材(中間要素)14と、ドリブン部材(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11と中間部材14との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1と、それぞれ対応する第1スプリングSP1と直列に作用して中間部材14とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2と、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第3スプリングSP3とを含む。
本実施形態では、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに第3スプリングSP3として、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されている。これにより、アークコイルスプリングを用いた場合に比べて、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに第3スプリングSP3を軸心に沿ってより適正に伸縮させることができる。この結果、ドライブ部材11(入力要素)とドリブン部材15(出力要素)との相対変位が増加していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対変位が減少していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクとの差すなわちヒステリシス(接触による摩擦)を低減化することが可能となる。また、本実施形態において、第1および第2スプリングSP1,SP2は、互いに異なるばね定数を有する。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2のばね定数は、同一であってもよい。
図2に示すように、ダンパ装置10のドライブ部材11は、ロックアップクラッチ8に近接するように配置される環状の第1入力プレート12と、タービンランナ5に近接するように配置される環状の第2入力プレート13とを含む。第1および第2入力プレート12,13は、ダンパ装置10の軸方向に沿って互いに対向するように複数のリベット90を介して連結される。更に、第1および第2入力プレート12,13の外周部には、複数の凹部が周方向に間隔をおいて形成されており、各凹部は、ロックアップピストン80の外周から軸方向に延出された複数の係合爪の対応する何れかと係合する。これにより、第1および第2入力プレート12,13、すなわちドライブ部材11は、ロックアップピストン80に一体回転するように連結され、ロックアップクラッチ8の係合によりフロントカバー3(エンジンEG)と当該ドライブ部材11とが連結されることになる。
図2および図3に示すように、第1入力プレート12は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓(弾性体収容窓)12wiと、それぞれ円弧状に延びると共に各内側スプリング収容窓12wiの径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓(第2弾性体収容窓)12woと、複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部(当接部)12ciと、複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部(第2当接部)12coとを有する。内側スプリング当接部12ciは、周方向に沿って互いに隣り合う内側スプリング収容窓12wiの間に1個ずつ設けられ、ダンパ装置10の径方向に延在する。外側スプリング当接部12coは、各外側スプリング収容窓12woの周方向における両側に1個ずつ設けられる。また、各外側スプリング収容窓12woは、第3スプリングSP3の自然長よりも長い周長を有し、対応する内側スプリング当接部12ciの径方向外側に設けられる。
更に、第1入力プレート12は、各内側スプリング収容窓12wiの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(弾性体支持部)12aと、各内側スプリング収容窓12wiの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(弾性体支持部)12bと、各外側スプリング収容窓12woの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(第2弾性体支持部)12eと、各外側スプリング収容窓12woの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(第2弾性体支持部)12fとを有する。
第2入力プレート13は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓(弾性体収容窓)13wiと、それぞれ円弧状に延びると共に各内側スプリング収容窓13wiの径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓(第2弾性体収容窓)13woと、複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部(当接部)13ciと、複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部(第2当接部)13coとを有する。図3に示すように、内側スプリング当接部13ciは、周方向に沿って互いに隣り合う内側スプリング収容窓13wiの間に1個ずつ設けられ、ダンパ装置10の径方向に延在する。外側スプリング当接部13coは、各外側スプリング収容窓13woの周方向における両側に1個ずつ設けられる。また、各外側スプリング収容窓13woは、図3に示すように、第3スプリングSP3の自然長よりも長い周長を有し、対応する内側スプリング当接部13ciの径方向外側に設けられる。
更に、第2入力プレート13は、各内側スプリング収容窓13wiの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(弾性体支持部)13aと、各内側スプリング収容窓13wiの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(弾性体支持部)13bと、各外側スプリング収容窓13woの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(第2弾性体支持部)13eと、各外側スプリング収容窓13woの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部(第2弾性体支持部)13fとを有する。
中間部材14は、板状の環状部材であり、発進装置1の外周に近接するように第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置される。図2および図3に示すように、中間部材14は、環状部140と、環状部140の内周面から周方向に間隔をおいて径方向内側に突出する複数(本実施形態では、例えば120°間隔で3個)の内側スプリング当接部(当接部)14ciと、環状部140の外周面から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出された複数(本実施形態では、例えば120°間隔で3個)の突出部141と、各突出部141に形成された円弧状に延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング収容窓(弾性体収容窓)14wと、複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部(第2当接部)14coとを有する。図2に示すように、内側スプリング当接部14ciは、ダンパ装置10の径方向に延在する。外側スプリング当接部14coは、各スプリング収容窓14wの周方向における両側に1個ずつ設けられる。更に、各スプリング収容窓14wは、図3に示すように、第3スプリングSP3の自然長に応じた周長を有する。
ドリブン部材15は、板状の環状部材であり、タービンシェル50と共に複数のリベットを介してダンパハブ7に固定されると共に、中間部材14(環状部140)により包囲されるように)第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置される。すなわち、ドリブン部材15は、径方向からみて中間部材14と少なくとも部分的に軸方向に重なるように第1および第2入力プレート12,13の間に配置される。図2および図3に示すように、ドリブン部材15は、外周部から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出された複数(本実施形態では、例えば120°間隔で3個)のスプリング当接部(当接部)15cを有する。図2に示すように、スプリング当接部15cは、ダンパ装置10の径方向に延在する。更に、ドリブン部材15は、外周部とダンパハブ7に固定される内周部との間で軸方向に延びる短尺の筒状部15xを有する。図2に示すように、筒状部15xの外周面は、ドライブ部材11の第2入力プレート13の内周面を径方向に支持する。これにより、ドライブ部材11は、ドリブン部材15を介してダンパハブ7により回転自在に支持(調心)される。
図2に示すように、第1および第2スプリングSP1,SP2は、複数のリベット90を介して連結された第1および第2入力プレート12,13の互いに対向する内側スプリング収容窓12wiおよび13wiに、対をなすように(直列に作用するように)1個ずつ配置される。また、ダンパ装置10の取付状態(組み立て完了後であってダンパ装置10が作動しておらず、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態)において、ドライブ部材11(第1および第2入力プレート12,13)の内側スプリング当接部12ciおよび13ciは、軸方向に対向すると共にそれぞれ互いに異なる内側スプリング収容窓12wi,13wiに配置されて対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部に当接する。更に、ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各内側スプリング当接部14ciは、共通の内側スプリング収容窓12wi,13wiに配置されて互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部に当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材15の各スプリング当接部15cは、ドライブ部材11の内側スプリング当接部12ci,13ciと同様に、対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部に当接する。
これにより、各第1スプリングSP1の一端部は、ドライブ部材11の対応する内側スプリング当接部12ci,13ciに当接し、各第1スプリングSP1の他端部は、中間部材14の対応する内側スプリング当接部14ciに当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2の一端部は、中間部材14の対応する内側スプリング当接部14ciに当接し、各第2スプリングSP2の他端部は、ドライブ部材11の対応する内側スプリング当接部12ci,13ciに当接する。更に、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1の上記一端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部15cにも当接し、各第2スプリングSP2の上記他端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部15cにも当接する。
この結果、ドリブン部材15は、複数の第1スプリングSP1と、中間部材14と、複数の第2スプリングSP2とを介してドライブ部材11に連結され、互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、中間部材14の内側スプリング当接部14ciを介して直列に連結される。本実施形態において、それぞれ複数の第1および第2スプリングSP1,SP2は、図3に示すように、発進装置1やダンパ装置10の中心軸CAと各第1スプリングSP1の軸心の端部との距離と、発進装置1等の中心軸CAと各第2スプリングSP2の軸心の端部との距離とが等しくなるように、中心軸CAを中心とする予め定められたピッチ円PC上に配列される。
また、第1入力プレート12の複数のスプリング支持部12aは、図2からわかるように、径方向外側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップクラッチ8側の内周部を支持(ガイド)可能である。複数のスプリング支持部12bは、径方向内側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップクラッチ8側の外周部を支持(ガイド)可能である。更に、第2入力プレート13の複数のスプリング支持部13aは、図2からわかるように、径方向外側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ側の内周部を支持(ガイド)可能である。複数のスプリング支持部13bは、径方向内側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ側の外周部を支持(ガイド)可能である。
本実施形態において、第1入力プレート12の複数のスプリング支持部12b、第2入力プレート13の複数のスプリング支持部13b、および中間部材14は、ドライブ部材11等の回転に伴って第1および第2スプリングSP1,SP2が遠心力により径方向外側に移動した際に、第1および第2スプリングSP1,SP2が当該環状部140の内周面によって径方向外側から支持されるように当該環状部140の内周面に接触し、かつ対応するスプリング支持部12b,13bに接触しないように形成される。また、スプリング支持部12b,13b(および12a,13a)は、第1、第2スプリングSP1,SP2がダンパ装置10の軸方向に移動した際に、当該第1、第2スプリングSP1,SP2と接触するように形成される。
一方、第3スプリングSP3は、図2に示すように、中間部材14の各スプリング収容窓14w内に配置される。ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各外側スプリング当接部14coは、第3スプリングSP3の対応する端部に当接する。これにより、各第3スプリングSP3の両端部は、ダンパ装置10の取付状態において、対応する一対の外側スプリング当接部14coにより支持される。また、本実施形態において、第3スプリングSP3は、第1および第2スプリングSP1,SP2よりもダンパ装置10の径方向における外側に、当該径方向からみて第1および第2スプリングSP1,SP2と重なるように配置される。これにより、ダンパ装置10ひいては発進装置1の軸長をより短縮化することが可能となる。
更に、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3のロックアップクラッチ8側の側部は、第1入力プレート12の対応する外側スプリング収容窓12woの周方向における中央部付近に位置し、各第3スプリングSP3のタービンランナ側の側部は、第2入力プレート13の対応する外側スプリング収容窓13woの周方向における中央部付近に位置する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3と、その両側に位置するドライブ部材11(第1および第2入力プレート12,13)の外側スプリング当接部12co,13coとの間には、図3に示すように、予め定められた周方向の間隔が形成され、両者が当接することはない。従って、各第3スプリングSP3の両側に位置する外側スプリング当接部12coおよび13coの一方は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されているときに当該ドライブ部材11および中間部材14の相対捩れ角が大きくなるのに伴って第3スプリングSP3の一方の端部に当接することになる。
また、第1入力プレート12の複数のスプリング支持部12eは、図2からわかるように、径方向外側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する第3スプリングSP3のロックアップクラッチ8側の内周部を支持(ガイド)可能である。複数のスプリング支持部12fは、径方向内側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する第3スプリングSP3のロックアップクラッチ8側の外周部を支持(ガイド)可能である。更に、第2入力プレート13の複数のスプリング支持部13eは、図2からわかるように、径方向外側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する第3スプリングSP3のタービンランナ側の内周部を支持(ガイド)可能である。複数のスプリング支持部13fは、径方向内側に向かうにつれて中間部材14から軸方向に離間するように形成されており、それぞれ対応する第3スプリングSP3のタービンランナ側の外周部を支持(ガイド)可能である。
更に、第1入力プレート12の複数のスプリング支持部12fには、図2および図4に示すように、ダンパ装置10の取付状態での第3スプリングSP3の位置に対応した部分を両端部よりも径方向外側に膨らませることにより膨出部12faが形成されている。同様に、第2入力プレート13の複数のスプリング支持部13fには、図2に示すように、ダンパ装置10の取付状態での第3スプリングSP3の位置に対応した部分を両端部よりも径方向外側に膨らませることにより膨出部13faが形成されている。膨出部12fa,13faは、第3スプリングSP3の自然長と同程度若しくは当該自然超よりも若干長い周長を有し、ダンパ装置10の取付状態において中間部材14のスプリング収容窓14w内で最も径方向外側に位置した第3スプリングSP3と接触しないように形成される。また、スプリング支持部12f、13fは、膨出部12fa,13faが両側に位置する部分と滑らかに連続すると共に、第1および第2入力プレート12,13と中間部材14との相対捩れ角が大きくなるのに伴って膨出部12fa,13faの両側の部分が第3スプリングSP3と接触するように形成されている。
また、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制する回転規制ストッパとして、中間部材14とドリブン部材15との相対回転を規制する第1ストッパ(出力側ストッパ)21と、ドライブ部材11と中間部材14との相対回転を規制する第2ストッパ(入力側ストッパ)22とを含む。本実施形態において、第1ストッパ21は、中間部材14の各内側スプリング当接部14ciの先端に形成された複数のストッパ当接部14sと、ドリブン部材15の各スプリング当接部15cの径方向内側に形成された複数のストッパ当接部15sとにより構成される(図3参照)。
このように、中間部材14の各内側スプリング当接部14ciの先端にストッパ当接部14sを形成すると共に、径方向からみて中間部材14と少なくとも部分的に軸方向に重なるドリブン部材15にストッパ当接部15sを形成することで、第1ストッパ21を設けるのに伴うダンパ装置10の軸長の増加を抑制することが可能となる。ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各ストッパ当接部14sと、それに対応するドリブン部材15のストッパ当接部15sとの間には、予め定められた周方向の間隔が形成される。そして、中間部材14とドリブン部材15との相対捩れ角が大きくなるのに伴ってストッパ当接部14sとストッパ当接部15sとが当接すると、中間部材14とドリブン部材15との相対回転および各第2スプリングSP2の撓みが規制されることになる。
第2ストッパ22は、ドライブ部材11の第1および第2入力プレート12,13を連結する複数のリベット90と、各リベット90に装着されたローラ95と、中間部材14に形成された複数の突出部141とにより構成される(図3参照)。ダンパ装置10の取付状態において、複数のリベット90およびローラ95は、互いに隣り合う2つの突出部141の周方向における間に、当該2つの突出部141の側面に当接しないように配置される。そして、ドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角が大きくなるのに伴ってローラ95が対応する突出部141の側面に当接すると、ドライブ部材11と中間部材14との相対回転および各第1スプリングSP1および各第3スプリングSP3の撓みが規制されることになる。
本実施形態において、第2ストッパ22は、図3に示すように、中間部材14のストッパ当接部14sとドリブン部材15のストッパ当接部15sとを含む第1ストッパ21よりもダンパ装置10の径方向における外側に配置される。このように、第1および第2ストッパ21,22をダンパ装置10の径方向にずらして配置することで、中間部材14とドリブン部材15との相対捩れ角およびドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角の双方をより大きくとることができる。この結果、ドリブン部材15に対するドライブ部材11の最大捩れ角をθmaxより大きくして、ダンパ装置10をより低剛性化することが可能となる。
また、本実施形態において、第1ストッパ21は、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクTmax(第3の値)よりも小さい予め定められたトルクT1(第1の値)に達した段階で中間部材14とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成される。更に、本実施形態において、ダンパ装置10の取付状態における第3スプリングSP3の端部とドライブ部材11の外側スプリング当接部12co,13coとの周方向の間隔は、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される入力トルクが上記トルクT1よりも大きく、かつトルクTmaxよりも小さい予め定められたトルクT2(第2の値)に達した段階で、ドライブ部材11等の正回転方向(車両前進時(エンジンEG)の回転方向、図3における太線矢印参照)における後側に位置する外側スプリング当接部12co,13coが対応する第3スプリングSP3の一方(回転方向後側)の端部に当接するように定められる。また、第2ストッパ22は、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクTmaxに達した段階でドライブ部材11と中間部材14との相対回転を規制するように構成される。これにより、ダンパ装置10は、3段階(3ステージ)の減衰特性を有することになる。なお、第2ストッパ22は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制するものであってもよい。
次に、図5および図6を参照しながら、ドライブ部材11の内側スプリング当接部12ci,13ci、中間部材14の内側スプリング当接部14ciおよびドリブン部材15のスプリング当接部15cの設計手順について説明する。なお、以下の説明において、「内側スプリング当接部」を適宜「スプリング当接部」という。
スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cの第1スプリングSP1に対応した半部の設計に際しては、まず、図5に示すように、予め定められた最大収縮量だけ軸心Saに沿って収縮させた第1スプリングSP1を、当該軸心Saの両端(両側の端点)がピッチ円PC上に位置する(ピッチ円PCと交わる)ように当該ピッチ円PC上に位置決めする。なお、最大収縮量は、第1スプリングSP1が完全に収縮したときの自然長からの収縮量であってもよく、それよりも小さい値であってもよい。次いで、スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cの第1スプリングSP1との当接面CF(平坦面)を、第1スプリングSP1の軸方向における中心とダンパ装置10の中心軸CAとを通る中心線Lcと平行に延在すると共に第1スプリングSP1の外周側端部Eoおよび内周側端部Eiの双方(図5および図6参照)に接するようにピッチ円PC上に位置決めする。更に、ピッチ円PCと交わる軸心Saの端点とダンパ装置10の中心軸CAとを結ぶ線分Lsと、上記当接面CFとのなす角度を、スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cすなわち当接面CFの傾斜角度φとして定める。
続いて、図5に示すように、自然長の第1スプリングSP1を、軸方向における中心が中心線Lc上に位置すると共に軸心Saの両端(端点)がピッチ円PC上に位置する(ピッチ円PCと交わる)ように当該ピッチ円PC上に位置決めする。更に、最大収縮量だけ収縮した第1スプリングSP1との当接面CFと上記線分Lsとを一体に中心軸CAの周りに回転させ、当接面CFを自然長の第1スプリングSP1の外周側端部Eoに接することなく内周側端部(Ei)に接するように位置決めする。図5の例において、スプリング当接部14ciの当接面CFは、中心軸CAの周りに図中反時計方向に回転させられ、スプリング当接部12ci,13ciおよび15cの当接面CFは、中心軸CAの周りに図中時計方向に回転させられる。そして、上記中心線Lcと線分Lsとのなす角度を設計上の基準角度θrefとして定めると共に、図5における角度θimを中間部材14に対するドライブ部材11の設計上の最大捩れ角として定める。更に、図示を省略するが、スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cの第2スプリングSP2に対応した半部についても、上述の手順と同様にして、第2スプリングSP2との当接面CFの傾斜角度φや基準角度θrefが定められる。
上述のようにして第1および第2スプリングSP1,SP2側の傾斜角度φおよび基準角度θrefを定めることで、ピッチ円PCや傾斜角度φ、基準角度θrefに基づいて、ダンパ装置の構成部材の諸元(スペース制約)等を考慮しながら、スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cの最終形状を決定することができる。
ここで、スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cの設計に際しては、図5において二点鎖線で示すように、最大収縮量だけ収縮した第1スプリングSP1との当接面CFと上記線分Lsとを一体に中心軸CAの周りに回転させて、当該当接面CFが軸方向からみて自然長の第1スプリングSP1の軸心Saの端点と重なる(交わる)ときの中心線Lcと線分Lsとのなす角度を基準角度θrefとして定めることも考えられる。ただし、このようにして基準角度θrefを定めた場合、図5からわかるように、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態(取付状態を含む)で荷重が付与されることにより第1スプリングSP1等が撓んで(収縮して)いることになる。
本発明者らの研究によれば、このようにドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態で第1および第2スプリングSP1,SP2が撓んでいる場合、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で伝達されるトルクがゼロとなるゼロ点を含む低トルク域で、伝達されるトルクに対してダンパ装置の捩れ剛性が高くなってしまい、エンジン等からのトルク変動を十分に減衰し得なくなることが判明している。すなわち、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態で第1および第2スプリングSP1,SP2が撓んでいる場合、低トルク域におけるダンパ装置10の捩れ角θとドライブ部材11とドリブン部材15との間で伝達されるトルクTとの関係が図7において細線で示すようなものとなる。このため、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で伝達されるトルクが大きくならないと、第1および第2スプリングSP1,SP2を更に撓ませることができなくなってしまい、それにより第1および第2スプリングSP1,SP2によってエンジンEG等からのトルク変動を十分に減衰し得なくなる。なお、図7において、実線は、エンジンのトルクがドライブ部材に伝達される状態(正駆動状態)でのダンパ特性を示し、破線は、エンジンのトルクがドライブ部材に伝達されずにドリブン部材側からドライブ部材側にトルクが伝達される状態(逆駆動状態)でのダンパ特性を示す。
これに対して、ダンパ装置10において、それぞれ径方向に延在するスプリング当接部12ci,13ci,14ciおよび15cは、自然長の第1および第2スプリングSP1,SP2の軸心Saの両端(端点)が予め定められたピッチ円PC上に位置する状態で、対応する第1または第2スプリングSP1,SP2の外周側端部Eoに接することなく内周側端部Eiに接するように形成される。これにより、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態(取付状態を含む)で、直線型コイルスプリングである第1および第2スプリングSP1,SP2を自然長に維持することが可能となり、図7において太線で示すように、上記低トルク域でダンパ装置10の捩れ剛性を低下させて第1および第2スプリングSP1,SP2を撓ませやすくすることができる。
また、ダンパ装置10において、スプリング当接部12ci,13ci,14ciおよび15cは、最大収縮量だけ収縮した第1および第2スプリングSP1,SP2の軸心Saの両端(端点)がピッチ円PC上に位置する状態で、対応する第1または第2スプリングSP1,SP2の外周側端部Eoおよび内周側端部Eiに接するように形成される。これにより、スプリング当接部12ci,13ci,14ciおよび15cによって第1および第2スプリングSP1,SP2を軸心に沿ってより適正に押圧することが可能となるので、ダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることができる。
引き続き、図1および図8等を参照しながら、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
発進装置1では、ロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際、図1からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5およびダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達するまで、複数の第1スプリングSP1、中間部材14および複数の第2スプリングSP2を介してドリブン部材15およびダンパハブ7に伝達される。この間、直列に作用する第1および第2スプリングSP1,SP2により、エンジンEGからのトルクの変動が減衰(吸収)される(第1ステージ)。
また、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1になると、上述のように、第1ストッパ21により、中間部材14とドリブン部材15との相対回転および各第2スプリングSP2の撓みが規制される。これにより、入力トルクが上記トルクT1以上になると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、複数の第1スプリングSP1、中間部材14、撓みが規制された第2スプリングSP2、第1ストッパ21、ドリブン部材15およびダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。また、エンジンEGからのトルクの変動は、複数の第1スプリングSP1により減衰(吸収)されることになる(第2ステージ)。
更に、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT1を超えた後、当該入力トルクが上記トルクT2(>T1)になると、ドライブ部材11の上記正回転方向における後側の外側スプリング当接部12co,13coが対応する第3スプリングSP3の一方の端部に当接する。これにより、各第3スプリングSP3は、図8に示すように、中間部材14の正回転方向における前側の外側スプリング当接部14coとドライブ部材11の正回転方向における後側の外側スプリング当接部12co,13coとの間で伸縮しながら、対応する第1スプリングSP1と並列に作用してドライブ部材11と中間部材14との間でトルクを伝達する。
すなわち、入力トルクが上記トルクT2以上になると、エンジンEGからのトルクは、図8に示すように、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、並列に作用する第1スプリングSP1および第3スプリングSP3、中間部材14、撓みが規制された第2スプリングSP2、第1ストッパ21、ドリブン部材15およびダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。そして、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT2からトルクTmaxまでの範囲に含まれる間、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、並列に作用する第1スプリングSP1および第3スプリングSP3により減衰(吸収)されることになる(第3ステージ)。これにより、並列に作用する第1および第3スプリングSP1,SP3により、ドライブ部材11に伝達された大きなトルク変動を吸収することが可能となる。
また、ダンパ装置10では、ドライブ部材11、中間部材14およびドリブン部材15のスプリング当接部12ci,13ci,14ciおよび15cが上述のように設計されている。従って、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態(取付状態を含む)で、直線型コイルスプリングである第1および第2スプリングSP1,SP2を自然長に維持することが可能となり、上述のような低トルク域でダンパ装置10の捩れ剛性を低下させて第1スプリングSP1や第2スプリングSP2を撓ませやすくすることができる。これにより、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で伝達されるトルクが非常に小さくなる正駆動状態から逆駆動状態への移行時や逆駆動状態から正駆動状態への移行時におけるダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。この結果、正駆動状態から逆駆動状態への移行時や逆駆動状態から正駆動状態への移行時に、ダンパ装置10(発進装置1)に連結される変速機TMにおいて異音が発生するのを良好に抑制することができる。
更に、ダンパ装置10では、ドライブ部材11等が回転する際に、第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部に当接する内側スプリング当接部14ciを有する中間部材14の環状部140の内周面によって第1および第2スプリングSP1,SP2が径方向外側から支持される。これにより、ドライブ部材11等の回転に応じて第1および第2スプリングSP1,SP2が撓む際に、当該第1および第2スプリングSP1,SP2と環状部140との間で発生する引き摺りトルク(摩擦力)を、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓み量に応じたものだけにすることができる。すなわち、ダンパ装置10では、ドライブ部材11等が回転する際にドライブ部材11の一部やドリブン部材15の一部によって第1および第2スプリングSP1,SP2が径方向外側から支持される場合のように、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対捩れ角に対応した第1および第2スプリングSP1,SP2の移動量に応じた引き摺りトルクが発生することはない。この結果、特にドライブ部材11とドリブン部材15との間で伝達されるトルクが比較的小さいときに、第1および第2スプリングSP1,SP2に作用する摺動抵抗(摩擦力)をより小さくすることができるので、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されなくなったときに第1および第2スプリングSP1,SP2を自然長に戻しやすくして低トルク域での振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
また、ドライブ部材11を構成する第1および第2入力プレート12,13には、それぞれ対応する内側スプリング収容窓12wi,13wiの外周に沿って延在すると共に、第1、第2スプリングSP1,SP2がダンパ装置10の軸方向に移動した際に、当該第1、第2スプリングSP1,SP2と接触するように複数のスプリング支持部12b,13b(および12a,13a)が形成されている。これにより、ドライブ部材11、中間部材14およびドリブン部材15が回転する際に第1および第2スプリングSP1,SP2に作用する摺動抵抗をより小さくしつつ、第1および第2スプリングSP1,SP2の軸方向への移動を規制することが可能となる。
更に、ダンパ装置10において、第1および第2入力プレート12,13のスプリング支持部12f,13fは、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないとき(取付状態を含む)に第3スプリングSP3と接触せず、かつ第1および第2入力プレート12,13と中間部材14との相対捩れ角が大きくなるのに伴って第3スプリングSP3を径方向外側から支持するように形成されている。これにより、上述のような低トルク域で第1および第2入力プレート12,13と第3スプリングSP3との間で発生する引き摺りトルク(摩擦力)を減らして第1スプリングSP1や第2スプリングSP2を撓ませやすくすると共に、低トルク域を通過した後に、第1および第2入力プレート12,13と第3スプリングSP3との間で発生する引き摺りトルクにより自励振動を減衰することが可能となる。
また、ダンパ装置10では、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないとき(取付状態を含む)の第1および第2入力プレート12,13の外側スプリング当接部12co,13coと第3スプリングSP3の一方の端部との間隔が、ドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角に応じて定まることになる。従って、ドライブ部材11およびドリブン部材15の一方により第3スプリングSP3の両端が支持される場合(例えば、上記特許文献1参照)に比べて、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないときの外側スプリング当接部12co,13coと第3スプリングSP3の端部との間隔を短くすることが可能となる。加えて、第3スプリングSP3を第1および第2スプリングSP1,SP2よりもダンパ装置10の径方向における外側に配置することで、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないときの外側スプリング当接部12co,13coと第3スプリングSP3の端部との間隔を充分に確保することができる。これにより、第3スプリングSP3を第1スプリングSP1と並列に作用させるために、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対捩れ角を小さくする必要がなくなるので、ドリブン部材15に対するドライブ部材11の最大捩れ角θmaxをより大きくしてダンパ装置10を低剛性化することが可能となる。
なお、上記ダンパ装置10において、スプリング当接部12ci,13ci、14ciおよび15cは、何れも図5に示すように形成されるが、これに限られるものではない。すなわち、第1ステージ、すなわちドライブ部材11とドリブン部材15との間で伝達されるトルクがゼロとなるゼロ点を含む低トルク域(第1ステージ)で主に振動を減衰すると共に第2ステージ以降に撓みが規制される第2スプリングSP2に対応したスプリング当接部14ciおよび15c(少なくとも第2スプリングSP2側の半部)のみが図5に示すように形成されてもよい。また、図5に示すようなスプリング当接部は、互いに直列に作用する第1および第2スプリングSP1,SP2の一方が他方の径方向外側に配置されるダンパ装置に適用されてもよい。更に、図5に示すようなスプリング当接部は、第1および第2スプリングSP1,SP2がドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転に応じて圧縮されて並列に作用するダンパ装置に適用されてもよい。この場合も、第1および第2スプリングSP1,SP2の一方は、他方の径方向外側に配置されてもよく、第1ステージで主に振動を減衰すると共に第2ステージ以降に撓みが規制される第1および第2スプリングSP1,SP2の一方に対応したスプリング当接部のみが図5に示すように形成されてもよい。
また、ダンパ装置10では、ドライブ材11が第1および第2入力プレート12,13を含むと共に、ドリブン部材15が中間部材14に包囲されるように配置されるが、これに限られるものではない。すなわち、ダンパ装置10において、ドリブン部材15が2枚のプレート部材を含むものとされると共に、ドライブ部材11が中間部材14に包囲されるように配置されてもよい。更に、ダンパ装置10において、タービンランナ5は、ドリブン部材15およびダンパハブ7に連結されるがこれに限られるものではなく、ドライブ部材11あるいは中間部材14に連結されてもよい。
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される入力要素(11)と、中間要素(14)と、出力要素(15)と、前記入力要素(11)と前記中間要素(14)との間に配置される複数の第1弾性体(SP1)と、前記中間要素(14)と前記出力要素(15)との間に配置されて前記第1弾性体(SP1)と直列に作用する複数の第2弾性体(SP2)とを含むダンパ装置(10)において、前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)は、何れも直線型コイルスプリングであり、前記入力要素(11)、前記中間要素(14)および前記出力要素(15)は、それぞれ径方向に延在すると共に対応する前記第1または第2弾性体(SP1,SP2)の端部に当接する当接部(12ci,13ci,14ci,15c)を有し、少なくとも何れか一対の前記当接部(12ci,13ci,14ci,15c)が、自然長の前記第1または第2弾性体(SP1,SP2)の軸心(Sa)の両端が予め定められたピッチ円(PC)上に位置する状態で、対応する前記第1または第2弾性体(SP1,SP2)の外周側端部(Eo)に接することなく内周側端部(Ei)に接するように形成されたものである。
本発明者らの研究によれば、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていない状態(取付状態を含む)で第1および第2弾性体が撓んでいる(第1および第2弾性体に荷重が付与されている)場合、入力要素と出力要素との間で伝達されるトルクがゼロとなるゼロ点を含む低トルク域で、伝達されるトルクに対してダンパ装置の捩れ剛性が高くなってしまい、エンジン等からのトルク変動を十分に減衰し得なくなることが判明した。すなわち、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていない状態で第1および第2弾性体が撓んでいる場合、入力要素と出力要素との間で伝達されるトルクが大きくならないと、第1および第2弾性体を更に撓ませることができなくなってしまい、それにより第1および第2弾性体によってエンジン等からのトルク変動を十分に減衰し得なくなる。これを踏まえて、それぞれ径方向に延在する入力要素、中間要素および出力要素の当接部の少なくとも何れか一対は、自然長の第1または第2弾性体の軸心の両端が予め定められたピッチ円上に位置する状態で、対応する第1または第2弾性体の外周側端部に接することなく内周側端部に接するように形成される。これにより、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていない状態(取付状態を含む)で、直線型コイルスプリングである第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方を自然長に維持することが可能となり、上記低トルク域でダンパ装置の捩れ剛性を低下させて第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方を撓ませやすくすることができる。この結果、本開示のダンパ装置では、入力要素と出力要素との間で伝達されるトルクが小さくなる低トルク域での振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
また、前記少なくとも何れか一対の前記当接部(12ci,13ci,14ci,15c)は、予め定められた最大収縮量だけ収縮した前記第1または第2弾性体(SP1,SP2)の軸心(Sa)の両端が前記ピッチ円(PC)上に位置する状態で、対応する前記第1または第2弾性体(SP1,SP2)の前記外周側端部(Eo)および前記内周側端部(Ei)に接するように形成されてもよい。これにより、入力要素、中間要素および出力要素の当接部の少なくとも何れか一対によって第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方を軸心に沿ってより適正に押圧することが可能となるので、ダンパ装置の振動減衰性能をより向上させることができる。
更に、前記入力要素(11)および前記出力要素(15)の一方は、前記ダンパ装置(10)の軸方向に沿って互いに対向すると共に互いに連結される2枚のプレート部材(12,13)を含んでもよく、前記中間要素(14)は、環状部(140)と、前記環状部(140)から周方向に間隔をおいて径方向内側に延出されて前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)の間で両者の端部に当接する複数の前記当接部(14ci)とを有すると共に、前記2枚のプレート部材(12,13)の前記軸方向における間に配置されてもよく、前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)は、前記入力要素(11)、前記中間要素(14)および前記出力要素(15)が回転する際に、前記環状部(140)の内周面により径方向外側から支持されてもよい。
かかるダンパ装置では、入力要素等が回転する際に、第1および第2弾性体が、当該第1および第2弾性体の間で両者の端部に当接する当接部を有する中間要素の環状部によって径方向外側から支持される。これにより、入力要素等の回転に応じて第1および第2弾性体が撓む際に、当該第1および第2弾性体と環状部との間で発生する引き摺りトルク(摩擦力)を、第1および第2弾性体の撓み量に応じたものだけにすることができる。この結果、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達される際に、第1および第2弾性体に作用する摺動抵抗(摩擦力)をより小さくすることができるので、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されなくなったときに第1および第2弾性体を自然長に戻しやすくして低トルク域での振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
また、前記2枚のプレート部材(12,13)の各々は、それぞれ一対の前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)を収容する複数の弾性体収容窓(12wi,13wi)と、それぞれ対応する前記弾性体収容窓(12wi,13wi)の外周に沿って延在すると共に対応する前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)の前記ダンパ装置(10)の軸方向への移動を規制する複数の弾性体支持部(12b,13b)とを有してもよい。これにより、入力要素、中間要素および出力要素が回転する際に第1および第2弾性体に作用する摺動抵抗をより小さくしつつ、第1および第2弾性体の軸方向への移動を規制することが可能となる。
更に、前記入力要素は、前記2枚のプレート部材を含んでもよい。
また、前記ダンパ装置(10)は、直線型コイルスプリングである複数の第3弾性体(SP3)を更に含んでもよく、前記中間要素(14)は、それぞれ対応する前記第3弾性体(SP3)の端部に当接する複数の第2当接部(14co)を有してもよく、前記2枚のプレート部材(12,13)の各々は、それぞれ前記第3弾性体(SP3)を収容する複数の第2弾性体収容窓(12wo,13wo)と、それぞれ対応する前記第3弾性体(SP3)の端部に当接する複数の第2当接部(12co,13co)と、それぞれ対応する前記第2弾性体収容窓(12wo,13wo)の外周に沿って延在する複数の第2弾性体支持部(12f,13f)とを有してもよく、前記2枚のプレート部材(12,13)の前記第2弾性体支持部(12f,13f)は、少なくとも前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクが伝達されていないときに前記第3弾性体(SP3)と接触せず、かつ前記2枚のプレート部材(12,13)と前記中間要素(14)との相対捩れ角が大きくなるのに伴って前記第3弾性体(SP3)を径方向外側から支持するように形成されてもよい。
かかるダンパ装置では、2枚のプレート部材の第2当接部が対応する第3弾性体の端部に当接すると、当該第3弾性体が第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と並列に作用するようになるので、第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と第3弾性体とにより、入力要素に伝達された大きなトルク変動を吸収することができる。加えて、このダンパ装置において、2枚のプレート部材の第2弾性体支持部は、少なくとも入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときに第3弾性体と接触せず、2枚のプレート部材と中間要素との相対捩れ角が大きくなるのに伴って第3弾性体を径方向外側から支持するように形成されている。これにより、上記低トルク域で2枚のプレート部材と第3弾性体との間で発生する引き摺りトルク(摩擦力)を減らして第1弾性体や第2弾性体を撓ませやすくすると共に、低トルク域を通過した後に、2枚のプレート部材と第3弾性体との間で発生する引き摺りトルクにより自励振動を減衰することが可能となる。
更に、前記中間要素(14)の前記第2当接部(14co)は、少なくとも前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクが伝達されていないときに前記第3弾性体(SP3)の両端部を支持するように設けられてもよく、前記2枚のプレート部材(12,13)の前記第2当接部(12co,13co)は、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクが伝達されているときに前記2枚のプレート部材(12,13)と前記中間要素(14)との相対捩れ角が大きくなるのに伴って、対応する前記第3弾性体(SP3)の一方の端部に当接するように設けられてもよい。かかるダンパ装置では、少なくとも入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときの上記2枚のプレート部材の第2当接部と第3弾性体の一方の端部との間隔が、入力要素および出力要素の一方と中間要素との相対捩れ角に応じて定まることになる。従って、入力要素および出力要素の一方により第3弾性体の両端が支持される場合に比べて、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときの2枚のプレート部材の第2当接部と第3弾性体の一方の端部との間隔を短くすることが可能となる。これにより、第3弾性体を第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と並列に作用させるために、入力要素と出力要素との相対捩れ角を小さくする必要がなくなるので、出力要素に対する入力要素の最大捩れ角を大きくしてダンパ装置を低剛性化することができる。
また、前記入力要素(11)および前記出力要素(15)の他方は、前記中間要素(14)の前記環状部(140)により包囲されるように前記2枚のプレート部材(12,13)の前記軸方向における間に配置されてもよく、前記中間要素(14)の前記当接部(14ci)の先端には、前記中間要素(14)と前記入力要素(11)および前記出力要素(15)の他方との相対捩れ角が増加するのに伴って、前記入力要素(11)および前記出力要素(15)の他方の一部に当接するストッパ当接部(14s)が形成されてもよい。これにより、中間要素と入力要素および出力要素の他方との相対回転を規制するストッパを設けるのに伴うダンパ装置の軸長の増加を抑制することが可能となる。
更に、前記入力要素および前記出力要素の前記一方は、前記入力要素(11)であってもよく、前記入力要素および前記出力要素の前記他方は、前記出力要素(15)であってもよく、前記中間要素(14)の前記ストッパ当接部(14s)は、前記入力要素(11)に伝達されるトルクが第1の値になると前記出力要素(15)の一部(15s)に当接してもよく、前記2枚のプレート部材(12,13)の前記第2当接部(12co,13co)は、前記入力要素(11)に伝達されるトルクが前記第1の値よりも大きい第2の値になると前記第3弾性体(SP3)の一方の端部に当接してもよい。これにより、ダンパ装置に3段階の減衰特性をもたせることが可能となる。
また、前記中間要素(14)は、前記環状部(140)から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出された複数の突出部(141)と、前記突出部(141)のそれぞれに形成されると共に前記第3弾性体(SP3)を収容する複数の弾性体収容窓(14w)とを有してもよく、前記2枚のプレート部材(12,13)は、前記中間要素(14)の隣り合う前記突出部(141)の周方向における間に配置される連結部材(90,95)を介して互いに連結されてもよく、前記連結部材(90,95)は、前記入力要素(11)に伝達されるトルクが前記第2の値よりも大きい第3の値になると前記突出部(141に当接してもよい。かかるダンパ装置では、中間要素と出力要素との相対回転を規制するストッパと、入力要素と中間要素との相対回転を規制するストッパとがダンパ装置の径方向にずらして配置されることになる。これにより、中間要素と出力要素との相対捩れ角および入力要素と中間要素との相対捩れ角の双方をより大きくとることができるので、出力要素に対する入力要素の最大捩れ角をより大きくして、ダンパ装置をより低剛性化することが可能となる。
そして、前記出力要素(15)は、変速機(TM)の入力軸(IS)に作用的(直接的または間接的に)に連結されてもよい。
本開示の他のダンパ装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される入力要素(11)と、出力要素(15)と、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクを伝達する弾性体(SP1,SP2)とを含むダンパ装置(10)において、前記弾性体(SP1,SP2)は、直線型コイルスプリングであり、前記入力要素(11)および前記出力要素(15)は、それぞれ径方向に延在すると共に対応する前記弾性体(SP1,SP2)の端部に当接する当接部を有し、少なくとも何れか一対の前記当接部は、自然長の前記弾性体(SP1,SP2)の軸心(Sa)の両端が予め定められたピッチ円(PC)上に位置する状態で、対応する前記弾性体(SP1,SP2)の外周側端部(Eo)に接することなく内周側端部(Ei)に接するように形成されたものである。
かかるダンパ装置においても、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていない状態(取付状態を含む)で、直線型コイルスプリングである弾性体を自然長に維持することが可能となる。これにより、入力要素と出力要素との間で伝達されるトルクがゼロとなるゼロ点を含む低トルク域で、ダンパ装置の捩れ剛性を低下させて弾性体を撓ませやすくすることができる。この結果、このダンパ装置においても、当該低トルク域での振動減衰性能をより向上させることが可能となる。この場合、弾性体は、入力要素と出力要素との相対回転に応じて圧縮されて並列に作用するものであってもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。