JP2017206417A - Aei型ゼオライトの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゼオライトを量産化する際に使用する撹拌槽型反応器で水熱合成を行い、不純物量が少なく、かつ結晶性の高いAEI型ゼオライトを得るための製造方法を提供する。【解決手段】アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、AEI型のゼオライトの製造方法に関し、詳しくは、撹拌槽型反応器の中でAEI型ゼオライトを製造する方法に関する。
ゼオライトはその骨格構造に由来する細孔による分子ふるい効果やイオン交換能、触媒能、吸着能などの特性をもっており、現在、吸着材、イオン交換剤、工業触媒、環境触媒として幅広く利用されている。
例えば排ガス用触媒であれば、銅などの金属を担持させたゼオライト、具体的にはCHA型アルミノシリケートゼオライトやシリコアルミノホスフェート(SAPO)ゼオライトを用いたものが開発されている。このAEI型、CHA型のような表記は、IZA(International Zeolite Association)が定めるゼオライトの骨格構造を規定するコード
である。
AEI型ゼオライトは、ゼオライトの細孔の大きさはCHA型と同じだが、より触媒活性の高い構造であることが知られている。AEI型ゼオライトをSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒に使用した例としては、特許文献1に記載されている。
また、自動車等の排気ガス処理用のSCR触媒として用いる場合、特にスタート時のような低温での動作時の排気ガスの処理を確実に行うためには、Si/Al比の低いゼオライトが好適に使用できることが判っている。これはアルミノシリケート系のゼオライトの場合、活性点となる遷移金属等の配位箇所がアルミニウムサイトになるため、活性点が多くなるSi/Al比の低い触媒の方が有利であることによる。
またAEI型ゼオライトの一般的な製造方法としては、特許文献2に記載されている製造方法が基本になるものである。ここには、具体的な製造方法として、Y型ゼオライト(Framework density:12.7T/1000Å)とコロイダルシリカを原料とし、ここに有機構造規定剤(SDA)として、例えばDMDMPOH(N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド)を加え、NaOH存在下で撹拌し、8日間水熱合成することにより、AEI型ゼオライトを得ている。この特許文献2では、アルミニウム原子原料として、Y型ゼオライトを使用せず、硫酸アルミニウムや、水酸化アルミニウム等を用いても合成が可能だとしているが、実際には実施例も全てがY型ゼオライトを原料として、SDAを変えるなどして実験したものである。このように、一般的には、実際にはY型ゼオライトを使用しないと、AEI型ゼオライトを合成することはできないのが現在の技術常識である。これは例えば非特許文献1などに、「Al(OH)を原料に用いた合成を試みたが、結晶性酸化物は得られなかった」との記載があることからも裏付けられる。
また特許文献1でも、特許文献2を引用しており、Y型ゼオライトを原料としている。
一方、特許文献3では、安価な硝酸アルミニウムを原料としてAEI型ゼオライトを製造する方法として、硝酸アルミニウムとTEOS(テトラエチルオルトシリケート)を用い、これをSDAと混合した後、フッ酸を添加することにより、AEI型ゼオライトが得られることを開示している。特許文献3に開示されている方法は、フッ酸を使用することにより、Alがなるべくゼオライト中にとりこまれないようにしてSi/Al比が200以上のAEI型ゼオライトを製造する方法である。
また特許文献4には、CHA型またはAEI型ゼオライトの原料として、酸化アルミニ
ウムが記載されているが、実施例ではAEI型ゼオライトを実際に製造できたことは示していない。また、特許文献4では、ドライゲルコンバージョン法と言われる、ゼオライト合成の原料混合物を乾燥して得られるドライゲルを、水蒸気もしくは揮発性有機アミンを含む水蒸気で処理してゼオライトに結晶化する製造方法を用いている。この方法では、均質なゼオライトを工業的に大量生産することはまだ難しく、実績のある水熱合成法で製造できることが望まれている。
また、非特許文献2ではリン含有構造規定剤とY型ゼオライトを含む原料からAEI型ゼオライトを合成する方法を開示している。しかし、リン化合物を構造規定剤に用いた場合、構造規定剤を除去するために合成されたゼオライトを焼成すると、有害な五酸化二リンが発生する可能性があり、また抽出等の処理でリンを除去する場合は工程が複雑化するため、リン含有構造規定剤を用いる方法は工業的には望ましくない方法である。
また、これらのいずれの方法を用いても、Si/Al比を7程度までしか下げることができず、特許文献5はAEI型アルミノシリケートゼオライトの発明であり、その比較例3では、Y型ゼオライトを原料に用い、Si/Al比が5.5のAEI型アルミノシリケートゼオライトを製造したことが記載されているものの、水熱耐久処理後にほとんど活性が無くなってしまうなど、結晶性が極めて低いものしか得ることができていない。このため任意のSi/Al比のAEI型ゼオライトを製造できる製造方法、特により低いSi/Al比を有し、高い構造安定性も有するAEI型ゼオライトと、その製造方法が求められていた。
これらの課題を解決するため本発明者らは、先にAl原料として水酸化アルミニウムを用いることで、反応器の腐食が問題となるフッ化水素を使用することなく、また、ホスフォニウム塩を使用することなく、工業的に大量生産可能な水熱合成条件でAEI型ゼオライトの製造を可能とした発明を出願した(特許文献6)。更に、この製造方法で製造したAEI型ゼオライトは、Si/Al比が6.5以下であり、更にAl含有量が多いにもかかわらず高い構造安定性を持つAEI型ゼオライトである。
しかし、該特許文献6に記載の合成は、いずれも小スケール(数十グラム)の反応器を用い、反応器を回転することにより内容物を混合しながら水熱合成した結果である。通常、耐圧反応器を回転させながらの水熱合成は、設備の安全上、ゼオライトの量産化スケールでは行わない。従って、特許文献6に記載の水熱合成条件でAEI型ゼオライトを量産化することが可能であるかは明らかにされていなかった。
国際公開WO2013/159825号 米国特許第5958370号公報 国際公開WO2005/063624号 特表2010−514662号公報 国際公開WO2015/005369号 特願2015−228030号
Chemical,Communications、48、8264−8266. Chemistry Letters(2014)、Vol.43、No.3 P302−304
通常、ゼオライトを小スケールで合成する際は、反応器を回転させて内容物を混合するか、あるいは反応器を静置状態にして水熱合成を行う。一方、ゼオライトを大量に製造する際には、撹拌槽型反応器を用いて水熱合成を行われる。
撹拌槽型反応器を用いた合成では、反応物質の性状により、反応物質の混合状態を均一にすることが困難な場合が知られている。例えば、粘性の高い反応物質では、物質あるいは熱移動速度などが遅くなり、不均一な混合状態となる。その結果、反応後に目的物が得られないことがある。
そこで、特許文献6に記載の合成方法で、撹拌槽型反応器を用いて水熱合成を行ったところ、反応後に得られた固形物中にはAEI型ゼオライト以外の不純物が大量に混在し、さらに不純物の生成に原料を取られたことにより、AEI型ゼオライトの結晶成長が不十分であった。これは反応器内で均一に内容物を混合することが出来なかった結果と考えられる。
本発明の課題は、撹拌槽型反応器を用いて不純物量が少なく、かつ結晶性の高いAEI型ゼオライトを得るための製造方法を提供することにある。
本発明者らは、撹拌槽型反応器を用いてAEI型ゼオライトを製造する方法について鋭意検討の結果、反応前混合物中のナトリウム原子とカリウム原子の比率を調製することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、
前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
[2] 前記混合物中の、水に対する、水以外の成分の水酸基の合計のモル比が、0.021以上0.030以下であることを特徴とする[1]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[3] 前記混合物がゼオライト種結晶を含み、前記ゼオライト種結晶のFramework densityが14T/1000Å以上であり、前記ゼオライト種結晶がInternational Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含む
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[4] 前記ゼオライト種結晶が、AEI型又はCHA型の構造を有することを特徴とする[3]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
本発明によれば、ゼオライトを量産化する際に用いられる撹拌槽型反応器を用いて、不純物量が少なく、かつ結晶性の高いAEI型ゼオライトを製造することが可能となる。
本発明に用いられる代表的な撹拌槽型反応器の概略図である。 代表的なAEI型ゼオライト、MER型ゼオライト、サニディンのXRDパターンである。 本発明の実施例1及び比較例1で製造されたAEI型ゼオライトのXRDチャートである。 実施例12の触媒1A、1Bの触媒活性の評価結果を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。また、本発明の実施態様は適宜組み合わせることもできる。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
[AEI型ゼオライトの製造方法]
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法は、アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とする。
<AEI型ゼオライト>
本発明により製造されるAEI型ゼオライト(以下、「本発明のAEI型ゼオライト」と称す場合がある。)とは、International Zeolite Association(IZA)が定める
ゼオライトの骨格構造を規定するコードでAEI構造のものを示す。その構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定する場合には、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じるため、IZAの規定に記載されたAEI構造の各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
X線回折における主だったピークとしては、例えば、線源にCuKα線を用いた場合、2θ=9.5°±0.2°に110面のピーク、2θ=16.1°±0.2°に202及び−202面のピーク(非常に近いので重なることが多い)、16.9°±0.2°に022面のピーク、20.6°±0.2°に310面のピークなどが挙げられる。
ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定義するゼオラ
イトであるが、好ましくはアルミノシリケートゼオライトである。アルミノシリケートゼオライトは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素(O)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていてもよい。
アルミノシリケートゼオライトの骨格構造を構成しているMe、AlおよびSiの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、Me、Al、Siの合計に対するMeのモル比をx、Alのモル比をy、Siのモル比をzとすると、xは通常0以上であり、0.3以下である。xがこの上限値以下とすることで、合成時に不純物が混入しにくく好ましい。
また前記yは通常0.001以上であり、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05であり、通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。
また前記zは通常0.5以上であり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.75以上であり、通常0.999以下であり、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.98である。
y、zが上記範囲内であると、合成が容易で、触媒として用いた場合に十分な酸点があり十分な活性が得られやすい。
他の原子Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMeは、周期表第3又は第4周期に属する元素である。
上述の通り、本発明においては、zは通常0.5以上であることから、骨格構成元素の半分以上がSiであり、所謂SAPO(シリコアルミノフォスフェート)は含まない。
<種結晶>
本発明において、Framework densityが14T/1000Å以上のゼオライト(以下、このゼオライトを「本発明で添加するゼオライト」と称す場合がある。)を、種結晶として添加することが好ましい。ここで、Framework densityは、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revised Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値であり、骨格密度を表す値である。
即ち、Framework densityは、ゼオライトの単位体積1000Åあたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
種結晶としてFramework densityが14T/1000Å以上のゼオライトを用いることにより、AEI型ゼオライトの結晶核の生成を促進する効果があり、その結果、合成時間を短縮することができる。これは、Framework densityが14T/1000Å以上のゼオライトが、水熱合成前の原料混合物中で、完全に各元素のイオンに分解するのではなく、数個の分子がつながったエンブリオの形となって、混合物中に溶けている状態になり、AEI型ゼオライトの水熱合成の進行を補助しているためと推測される。原料混合物中で完全に各元素単体のイオンになりにくいという点において、Framework densityは14.1T/1000Å以上であることが好ましく、14.2T/1000Å以上であることがより好ましく、14.3T/1000Å以上であることが更に好ましく、14.4T/1000Å以上であることが特に好ましい。ただしFramework densityが過度に大きいと本発明で添加するゼオライトが溶解しない状態で混合物中に存在するため、本発明で添加するゼオライトのFramework densityは通常20T/1000Å以下、より好ましくは19T/1000Å以下、更に好ましくは18.5T/1000Å以下、特に18T/1000Å以下であることが好ましい。
また、上記本発明で添加するゼオライトの作用機構の観点から、Framework densityが14T/1000Å以上のゼオライトの中でも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6r(二重6員環)を骨格中に含むものが好ましい。
具体的にはInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの骨
格構造を規定するコードで、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、GME、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SZR、WENであり、より好ましくはAEI、AFT、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、LTL、MWW、SAV、更に好ましくはAEI、AFT、CHA、特に好ましくはCHA型およびAEI型ゼオライトである。
本発明で添加するゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、本発明において添加するゼオライトは、骨格構成元素の半分以上がSiであるアルミノシリケート以外に、骨格構造にSi及び/またはAl、並びにそれ以外の元素を含むゼオライト(アルミノフォスフェート等)であっても良い。
本発明において、本発明で添加するゼオライトの使用量は、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)がすべてSiOであるとした時のSiOに対して通常0.1重量%以上であり、また反応をより円滑に進めるために、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、特に好ましくは4重量%以上である。また、本発明で添加するゼオライトの使用量の上限は特に限定されないが、コストダウンの効果を十分得るために通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である
なお、本発明で添加するゼオライトは、水熱合成後に焼成を行っていない未焼成品でも水熱合成後に焼成を行った焼成品でもよいが、ゼオライトが結晶の核としての機能を発現するためにはアルカリに対して溶解しにくい方がよいため、焼成品よりも未焼成品を用いるのが好ましい。ただし、原料混合物中の組成あるいは温度条件によっては、未焼成のゼオライトが溶解せず、結晶の核としての機能を発現できない場合がある。このような場合、溶解性を高くするため焼成によりSDAを除去したゼオライトを用いるとよい。
<アルミニウム原子原料>
アルミニウム源としては、通常、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドなどが用いられる。また、FAU型ゼオライト(た
とえば、Y型ゼオライト)やCHA型ゼオライトなどのアルミニウム含有ゼオライトをア
ルミニウム源として用いてもよい。
これらのアルミニウム源のうち、反応性の面で、好ましくは硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトであり、より好ましくは水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトである。
アルミニウム原子原料の使用量は、反応前混合物ないしはこれを熟成して得られた水性ゲルの調製しやすさや生産効率の点から、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するアルミニウム原子原料中のアルミニウム(Al)のモル比で通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.08以上である。また上限は特に限定されないが、水性ゲル中にアルミニウム原子原料を均一に溶解させる点から通常2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.4以下、最も好ましくは0.2以下である。
<ケイ素原子原料>
本発明に用いられるケイ素原子原料としては、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができ、Si含有量の多いゼオライトを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、他の成分と十分均一に混合できる形態のものであって、特に水に溶解しやすい原料が好ましく、コロイダルシリカ、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルが好ましい。
<アルカリ金属原子原料>
アルカリ金属原子は、有機構造規定剤と配位できなかったアルミニウムに対して電荷補償のために配位し、有機構造規定剤と同様に結晶成長を補助する効果がある。
本発明に用いられるアルカリ金属原子原料には、ナトリウム原子原料及びカリウム原子原料を含む。混合物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のアルカリ金属原子を含むことができる。他のアルカリ金属原子としては、特に限定はなく、ゼオライト合成に用いる公知のものが使用できるが、例えば、リチウム、ルビジウム、セシウムが挙げられるが、これらは2種以上併用してもよい。
アルカリ金属原子原料としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。アルカリ金属原子原料は、1種でも2種以上含ま
れていてもよい。
ナトリウム原子原料の使用量は、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、更に好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.05以上、とりわけ好ましくは0.08以上であり、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.18以下、更に好ましくは0.17以下、特に好ましくは0.16以下、とりわけ好ましくは0.15以下である。
カリウム原子は、ナトリウム原子とイオン半径が異なるため、カリウム原子原料の使用量は、ナトリウム原子原料の使用量と異なる。カリウム原子原料の使用量は、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上、更に好ましくは0.13以上、特に好ましくは0.14以上、とりわけ好ましくは0.15以上であり、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.23以下、更に好ましくは0.22以下、特に好ましくは0.20以下、とりわけ好ましくは0.18以下である。
<ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比>
カリウムはアルカリ性が強いため、カリウムが多すぎると、混合物の粘性を高くする傾向にある。そのため、撹拌槽型反応器内では、撹拌翼周辺のみの部分的な混合状態となりやすく、水熱合成後に得られた固形物には不純物が混在する。そのため、適度にナトリウムを加えて粘性を低下させる必要がある。従って、原料混合物中のナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比は、11以下であり、好ましくは10であり、より好ましくは8以下であり、更に好ましくは7以下であり、特に好ましくは6以下である。
一方、AEI型の結晶構造はd6rが配列して出来ているが、カリウムはd6rにちょうど取り込まれる大きさのため、d6rを生成し易くする効果がある。カリウムが形成したd6r中に含まれるアルミニウム原子に構造規定剤が配位して、AEI型ゼオライトが形成し易くなると考えられる。そのため原料混合物中のナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比は、0.5以上であり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは1.0以上である。
ナトリウム原子原料及びカリウム原子原料は、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、上記範囲となる様に配合する。
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)としては、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)やテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)などのAEI型ゼオライトのSDAとして公知の各種の物質を使用することができる。また、例えば特許文献2に記載の窒素含有系有機構造規定剤として、以下のような物質を使用することができる。
N,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−9−アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナン、N,N−ジメチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジエチル−2−エチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−2−エチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチル−2−エチルピペリジニウムカチオン、2,6−ジメチル−1−アゾニウム[5.4]デカンカチオン、N−エチル−N−プロピル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン等。このうち特に好ましい窒素含有系有機構造規定剤としては、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムカチオンが好ましく、具体的には、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい
また、リン含有系有機構造規定剤として非特許文献2に記載されている、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような物質を使用することができる。
しかし、前述の通り、リン化合物は、合成されたゼオライトを焼成してSDAを除去する時に有害物質である五酸化二リンを発生する可能性があるため、好ましくは窒素含有系有機構造規定剤である。
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機構造規定剤の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常0.01以上、好ましくは0.03以上、好ましくは0.08以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上である。また、コストダウンの効果を十分得るために、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
<水>
水の使用量は、結晶が生成しやすいという観点から、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上であり、特に好ましくは17以上である。この範囲にすると、結晶がより生成しやすく好ましい。また廃液処理にかかるコストダウンの効果を十分得るために、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。
<水に対する、水以外の成分のOHの合計のモル比>
撹拌槽型反応器内で原料混合物が均一になるように撹拌するためには、原料混合物の粘性が重要である。すなわち、水に対するOHモル比が高い原料混合物では、粘性が高く、撹拌槽型反応器では、原料混合物が不均一な状態となる。そのため、水熱合成時にAEI型ゼオライト以外の不純物が生成し、不純物に原料が消費され、原料混合物の組成が変わることで、AEI型ゼオライトへの結晶成長を阻害する。従って、原料混合物を均一な状態に撹拌するには、水に対する、水以外の成分のOHの合計のモル比は、通常0.030以下、好ましくは0.029以下、より好ましくは0.028以下、更に好ましくは0.027以下であり、特に好ましくは0.026以下に調整する必要がある。ここで言うOHモルは水以外の成分の水酸基の合計のモルを示している。ここで言う「水以外の成分」には、種結晶は含めない。
一方、水に対するOHモル比を低くすると、原料混合物の基質濃度が下がり反応性が低下する。そのため、結晶化が進行しにくく、AEI型ゼオライトが得られなくなる。反応時間を長くすることでAEI型ゼオライトを得られることもあるが、反応時間が長くなると製造コストが高くなるため長時間の合成は望まれない。従って、原料混合物をAEI型ゼオライトに結晶成長させるためには、水に対する、水以外の成分のOHの合計のモル比は、通常0.021以上、好ましくは0.022以上、より好ましくは0.023以上、更に好ましくは0.024以上であり、特に好ましくは0.025以上にする必要がある。
<原料の混合(反応前混合物の調製)>
本発明の製造方法においては、以上に述べた、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し得られた混合物に、本発明で添加するゼオライトを十分に混合し、得られた反応前混合物を水熱合成する。
これらの原料の混合順序は、本発明で添加するゼオライトを含め特に限定はないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にケイ素原子原料、アルミニウム原子原料を添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、有機構造規定剤、及びアルカリ金属原子原料を混合してアルカリ溶液を調製した後、このアルカリ溶液へアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、本発明で添加するゼオライトの順番で添加して混合することが好ましい。
なお、本発明においては、上記のアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、水及び本発明で添加するゼオライト以外に、ゼオライトの合成を助けるための成分となる補助剤、たとえば反応を促進させる酸成分や、ポリアミンのような金属の安定化剤などの他の添加剤を必要に応じて任意の工程で添加混合して反応前混合物を調製してもよく、又後述のように水熱合成時に、触媒として働く、銅などの金属を添加してもよい。
<熟成>
上記のようにして調製された反応前混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成することが好ましい。特に、スケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となりやすい。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが好ましい。熟成温度は通常100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
<水熱合成>
水熱合成は、上記のようにして調製された反応前混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲル(以下、「反応前混合物」又は「これを熟成して得られる水性ゲル」を、「水熱合成前のゲル」と称することがある。)を耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上であって、通常230℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは190℃以下である。反応時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上、特に好ましくは1日以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日以下、更に好ましくは5日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
上記の条件で反応させることにより、目的とするAEI型ゼオライトの収率が向上し、異なるタイプのゼオライトが生成し難くなるため好ましい。
<撹拌槽型反応器>
本発明に用いられる撹拌槽型反応器とは、槽内の撹拌翼によって内容物を撹拌混合させて反応を進行させる装置である。攪拌翼の形式としては特に限定されるものではないが、アンカー翼、パドル翼、スクリュー翼、タービン翼などがあげられる。槽内に邪魔板(バッフル)を設置しても良い。邪魔板は槽内の液流れを上下循環流れに変換し、槽内の混合を促進する効果がある。邪魔板の形式としては特に限定されるものではないが、平板邪魔板、傾斜邪魔板、フィンガー邪魔板などが上げられる。邪魔板幅[m]は、撹拌槽径[m]に対して通常0.01〜0.15倍である。邪魔板を設置する場合は、反応器内に通常2〜8か所設置する。
撹拌槽型反応器内に用いる撹拌翼と邪魔板は、均一な混合を可能とするように組み合わせればよく、特には限定されない。
撹拌槽型反応器の詳細については培風館工業反応装置P.201〜228に記載されている。代表的な撹拌槽型反応器について図1に示した。
<AEI型ゼオライトの回収>
上記の水熱合成後、生成物であるAEI型ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属原子の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
水熱合成反応液から分離回収したSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用したSDA等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後、焼成等を行ってSDA等を含有しないゼオライトを得ることができる。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを触媒(触媒担体も含む)や吸着材等の用途で使用する場合、必要に応じてこれらを除去した後に使用に供する。
<SDAを含む濾液リサイクル>
AEI型ゼオライトを回収した後に得られる水熱合成反応液には、未反応のSDAが含まれる。本発明の製造方法においては、未反応のSDAを含む水熱合成反応液を用いて、本発明の水熱合成前のゲルと同じ仕込み組成となるように不足分のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、SDA、および水を加えて混合物を調製し、水熱合成することでAEI型ゼオライトを製造しても良い。
SDA及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方の除去処理は、酸性溶液やSDA分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いたイオン交換処理、熱分解処理を採用することができ、これらの処理を組合せて用いてもよい。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液などの有機溶剤により抽出したりする等の方法により、含有されるSDA等を除去することができる。製造性の面で焼成によるSDA等の除去が好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上であり、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。不活性ガスとしては、窒素などを用いることができる。
SCR触媒は窒素酸化物を含む排ガスの浄化性能と650℃以上の水熱耐久性が求められている。結晶性に差が無ければ、Si/Al比が低いゼオライトは、Si/Al比の高い触媒よりも活性点が多いため、窒素酸化物を含む排ガスに対して高い浄化性能を持つことが利点である。例えば、トラックでは700℃以下と比較的低温で、水蒸気を含むガス雰囲気下にSCR触媒として用いるため、水蒸気による骨格内Alの脱Alは進行しにくい。従って窒素酸化物を含む排ガスの浄化性能が優先され、ゼオライト骨格中の活性点が多い、Si/Al比が6.5以下のゼオライトの使用が望まれる。一方でSi/Al比の高いゼオライトは、ゼオライト骨格中のAl量が少ないことから水蒸気を含む高温のガス雰囲気下でも構造が崩壊しにくい利点がある。ディーゼル乗用車やガソリン車では800℃以上で水蒸気を含むガス雰囲気下にSCR触媒として用いるため、高い水蒸気耐性を求められる。従ってSi/Al比が6.5を超え、より好ましくは、10以上のゼオライトを使用することが望まれる。
以上より、SCR触媒の使用される環境によって、最適なSi/Al比を選択するのが
良く、本発明は該Si/Al比を任意の値で得られる方法として、有効である。
本発明の製造方法によって得られたAEI型ゼオライトの比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなることから、300〜1000m/gが好ましく、より好ましくは350〜800m/g、更に好ましくは400〜750m/gである。なお、本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトの比表面積は、BET法により測定される。
本発明の製造方法によって得られたAEI型ゼオライトは、その結晶性に優れている。このことは、160℃以上のアンモニア吸着量で測定できる酸量により明らかである。本発明のAEI型ゼオライトの酸量は、好ましくは0.5〜3.0mmol/g、より好ましくは0.7〜3.0mmol/g、更に好ましく0.8〜3.0mmol/g、特に好ましくは1.0〜3.0mmol/g、最も好ましくは1.0〜2.5mmol/gである。
本発明により製造されたAEI型ゼオライトのイオン交換能を、アルカリ金属原子原料、あるいはアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、有機構造規定剤、及び本発明で添加するゼオライトに含まれるアルカリ金属原子由来のアルカリ金属部分を、H型やNH型に変換して用いることもでき、その方法は公知の技術を採用することができる。例えば、NHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは塩酸などの酸で、通常、室温から100℃で処理後、水洗する方法などにより行うことができる。
[AEI型ゼオライトの用途]
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトの用途としては特に制限はないが、触媒、吸着材、分離材料などとして、好適に用いられる。前述の特許文献1にも記載があるように、AEI型ゼオライトは特に自動車等の排ガス浄化用触媒等に好適に用いられる。特にSi/Al比が6.5以下のものは高い触媒活性が得られる。
<金属元素後担持による耐水熱性向上>
本発明の製造方法によって得られたAEI型ゼオライトの耐水熱性を向上させる方法として、水熱合成後のAEI型ゼオライトもしくはAEI型ゼオライトに後述する触媒として使用するための金属(例えばCu)を担持した触媒にさらに特定の金属(=M)を担持する方法が上げられる。耐水熱性を向上させるために担持する金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce),鉄(Fe)のいずれか、もしくはこれらの金属を2種類以上混合して用いてもよい。またAEI型ゼオライトの水熱合成前のゲルにこれらの金属の塩を加えて、金属を含有したAEI型ゼオライトを製造しても良い。この場合、通常、遷移金属の硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらの塩のうち、水に対する溶解性の観点から、無機酸塩、有機酸塩が好ましい。
これらの金属を担持させる効果としては、ゼオライト骨格中のアルミニウム(Al)に金属が配位することで、水蒸気からの保護効果が得られるものと考えられる。これらの金属含有量は、アルミニウムに対する金属のモル比として0.0001以上、好ましくは0.0005以上、より好ましくは、0.001以上、更に好ましくは0.005以上である。また上限は特に限定されないが、触媒として使用する場合は活性点となる遷移金属もイオン交換する必要があるため、通常1以下、好ましくは0.95以下、更に好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下である。
<排ガス処理用触媒>
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを含む触媒は、バインダーと混合し、造粒して用いることやハニカム状等の所定の形状に成形して用いることができる。具体的には例えば、該触媒をシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーや、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混合した後、造粒するかまたは押出法や圧縮法等によりハニカム状等の所定の形状に成形し、続いて焼成することにより、粒状の触媒やハニカム触媒、触媒成形品が得られる。
また、シートやハニカム等の基材に塗布して用いてもよい。具体的には、例えば、本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを含む触媒とシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された基材の表面に塗布し、焼成することにより作製され、好ましくはこの際にハニカム形状の基材に塗布することにより、触媒が塗布されたハニカム状のハニカム触媒を得ることができる。
ここでは排ガス処理用触媒を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよいことは言うまでもない。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを含む触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒等のNOxの選択的還元触媒として有効である。
また、本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトにSi及びAl以外の金属を含有させてなる排ガス処理用触媒も、NOxの選択的還元触媒として、特に有効である。このような排ガス処理用触媒として、ゼオライトに含有させる金属元素としては遷移金属が好ましく、中でも、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)等の中の群から選ばれる。更に好ましくは、鉄または銅の中から選ばれ、最も好ましくはCu(銅)である。これらの金属の2種以上を組み合わせて含有させてもよい。Si及びAl以外の金属の含有量は、Si及びAl以外の金属を含有させてなるAEI型ゼオライト全量中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。
特にゼオライトに含有させる金属が銅(Cu)であった場合には、触媒中の銅の含有量として、0.1重量%以上、10重量%以下が好ましく、より好ましい範囲は上述のとおりである。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトに、上記の金属を含有させる方法としては、特に限定されないが、一般的に用いられるイオン交換法、含浸担持法、沈殿担持法、固相イオン交換法、CVD法、噴霧乾燥法等、好ましくは、固相イオン交換法、含浸担持法、噴霧乾燥法により、AEI型ゼオライトに金属を担持させる方法が好ましい。
<遷移金属を含有したAEI型ゼオライトの合成方法>
AEI型ゼオライトに遷移金属を担持させる場合、イオン交換法、含侵法などの方法を用いると、大量の廃液を排出するため廃液処理の問題、ゼオライト浸漬スラリーの濾過、洗浄などを要するため、工程数が多くなりがちである。これに対して、遷移金属原料である遷移金属酸化物や遷移金属塩をゼオライト合成工程のゲルに導入することにより、遷移金属を含むAEI型ゼオライトを一工程で合成すること(以下「ワンポット合成法」と称
すことがある)が可能である。
遷移金属としては、特に限定されるものではないが、上述の排ガス処理用触用途、吸着材用途やその他の触媒用途での特性の点から、通常、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)等の3−12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表8、9、11族、より好ましくは8、11族である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
またゲル中で遷移金属を安定化させるためにポリアミンを用いて錯塩を形成させても良い。錯塩の形成に用いるポリアミンとしては、一般式H2N−(Cn2nNH)x−H(式中
、nは2〜6の整数、xは2〜10の整数)で表されるポリアミンが好ましい。
上記式において、nは2〜5の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。xは2〜6の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、4が特に好ましい。
このようなポリアミンとしては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが安価であるため好ましく、中でもトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、分岐状のポリアミンを含んでいてもよい。
ワンポット合成法を用いる場合には、遷移金属、あるいは遷移金属とポリアミンを用いる以外は、本発明のAEI型ゼオライトの製造方法に従い、遷移金属を含有したAEI型ゼオライトを得ることができる。
遷移金属原子原料としては特に限定されず、通常、上記金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましく、より具体的には例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩酸塩等が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いてもよい。
遷移金属原子原料としては、金属種、或いは化合物種の異なるものの2種以上を併用してもよい。
AEI型ゼオライトに上記金属を担持させた後は、好ましくは300℃〜900℃、より好ましくは350℃〜850℃、さらに好ましくは400℃〜800℃で、1秒〜24時間、好ましくは10秒〜8時間、さらに好ましくは30分〜4時間程度焼成することが好ましい。この焼成は必ずしも必要ではないが、焼成を行うことにより、ゼオライトの骨格構造に担持させた金属の分散性を高めることができ、触媒活性の向上に有効である。
また、本発明の一実施形態である触媒は、主に原料に由来するアルカリ金属原子、例えばナトリウム、カリウム、セシウム等を含んでいてもよい。このうち容易に除去できるナトリウムに関しては、特に限定されないが、比較的除去の難しいカリウム、セシウム等に関しては、触媒中のアルミニウムに対するモル比として、0.001以上、1.0以下であることが好ましい。即ち、触媒から無理に除去することにより、ゼオライトの骨格などにダメージを与えることを防ぐ点から、触媒中のアルミニウムに対するカリウム及び/又はセシウムのモル比は、上述の範囲が好ましい。
また、本発明によって得られた触媒の比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなることから、300〜1000m/gが好ましく、より好ましくは350〜800m/g、更に好ましくは400〜750m/gである。なお、触媒の比表面積は、後述の実施例の項に記載されるBET法により測定される。
<排気浄化システム>
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、触媒使用時には、アンモニア、尿素、ヒドラジン、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びギ酸アンモニウム等の窒素含有化合物(但し、窒素酸化物を除く)、炭化水素等の公知の還元剤を使用してもよい。具体的には、本発明の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトは、窒素酸化物浄化用触媒用途以外に、例えば、本発明の窒素酸化物浄化用触媒を用いて窒素酸化物の浄化を行った後段の工程において、窒素酸化物浄化で消費されなかった余剰の還元剤(例えばアンモニア)を酸化する酸化触媒用途に用いることができる。このように、本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを含む触媒は酸化触媒として余剰の還元剤を酸化し、排ガス中の還元剤を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを該担体として使用したり、また、窒素酸化物の選択的還元触媒として使用される、本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトに、例えば鉄及び/又は銅を担持した触媒に更に該白金族等の金属を担持したりすることもできる。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを含む触媒は様々な排気浄化システムにおいて用いることができる。該排気浄化システムとしては、アンモニアを選択還元型窒素酸化物浄化触媒に吸着させ、吸着されたアンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択還元する工程を含む排気浄化方法であって、更に、前記アンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択還元する工程の下流に、余剰のアンモニアを酸化する工程を含んでいてもよい。
なお、前記アンモニアとしては、外部から排気浄化システム内に導入したアンモニアや、外部から排気浄化システム内に導入した尿素から生成させたアンモニアを用いることができる。また、排気浄化システム内で排ガスからアンモニアを生成させて用いることもできる。
本発明の触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、更に好ましくは5000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは400000/h以下、更に好ましくは200000/h以下であり、温度は通常100℃以上、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは150℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下、更に好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下で用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔分析・評価〕
以下の実施例及び比較例において得られたゼオライトの分析及び性能評価は以下の方法により行った。
[粉末XRDの測定]
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<装置仕様及び測定条件>
粉末XRD測定装置仕様及び測定条件は以下の通りである。
Figure 2017206417
[BET比表面積の測定]
大倉理研社製 全自動粉体比表面積測定装置(装置名:AMS1000)を用いて、流通式一点法により測定を行った。
[Cu含有量とゼオライト組成の分析]
標準試料であるゼオライト中のケイ素原子とアルミニウム原子含有量、及び含有された銅原子の元素分析は以下の通りとした。
ゼオライト試料を塩酸水溶液に加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子と銅原子の含有量(重量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。
この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライトよりなる触媒試料中のケイ素原子、アルミニウム原子及び銅原子の含有量(重量%)を求めた。ICP分析は、株式会社堀場製作所製 装置名:ULTIMA 2Cを用いて行った。XRFは、株式会社島津製作所製 装置名:EDX−700を用いて行った。
[触媒活性の評価]
調製した触媒試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整粒した触媒試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に下記表2の組成のガスを空間速度SV=200000/hで流通させながら、触媒層を加熱した。175℃、200℃、250℃、300℃、400℃、又は500℃の各温度において、出口NO濃度が一定となったとき、
NO浄化率(%)
={(入口NO濃度)−(出口NO濃度)}/(入口NO濃度) ×100
の値によって、触媒試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
Figure 2017206417
[触媒の水蒸気処理方法]
水熱処理後の触媒活性を評価するために、触媒試料3gに800℃、10体積%の水蒸気を、空間速度SV=3000/hで、5時間通じ、水蒸気処理を行った。
[粉体中のAEI型ゼオライトの割合の算出方法]
固形物中のAEI型ゼオライトの割合は、以下の方法に従って算出した。
水熱合成後、濾過により生成した結晶を回収し、回収した結晶を乾燥した後の焼成前の固形物についてXRDを測定した。図2に代表的なAEI型ゼオライト、MER型ゼオライト、サニディンのXRDパターンを示した。
固形物中のAEI型ゼオライトの割合の算出にはそれぞれの代表ピークのピーク面積を用いて下記の式で算出した。
固形物中のAEI型ゼオライトの割合の算出式:
[AEI型ゼオライトのピーク面積]/([AEI型ゼオライトのピーク面積] +[MER型ゼオライトのピーク面積]+[サニディンのピーク面積])
ここでピーク面積とは、それぞれ指定した範囲にあるピークの面積値であり、ピーク範囲は下記に示した。なお、ピーク範囲は、他の成分と被らない範囲を選出した。
・AEI型ゼオライト:9.2〜9.8°
・MER型ゼオライト:12.4〜12.7°
・サニディン :26.6〜26.9°
〔ゼオライトの合成〕
[実施例1]
64.5gの水と、アモルファスAl(OH)(Al 53.5重量%、Aldrich社製)19gを加えたものに、4gのNaOH(和光純薬製)と、13gのKOH(和光純薬製)と、有機構造規定剤(SDA)として195gのN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド20%水溶液(セイケム社製)と、20gの水を混合し、撹拌して溶解させて透明溶液とした。その後、これにスノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)188gを加えて室温で5分間撹拌した後、種結晶として8gの未焼成品のCHA型ゼオライト(Framework density:14.5T/1000Å:Si/Al(SAR)=23)を20gの水に膨潤させた後に混合し、最後に20gの水を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
下記に種結晶以外の原料混合物のモル組成比を示した。
1SiO:0.08Al:0.1NaOH:0.15KOH:17.5HO:0.2SDA
この反応前混合物を撹拌槽型反応器に入れ、185℃で撹拌させながら(200rpm)、1日水熱合成を行った。この時、撹拌槽型反応器にはアンカー翼を用い、邪魔板は使用しなかった。水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、ゼオライト中の有機物を除去するために、600℃の空気気流下で6時間焼成した(粉体1)。得られた粉体1のXRDを測定したところ、格子面間隔表示で、表3に示すような位置にピーク及び相対強度を有するXRDパターンを示すAEI型のゼオライトを合成することができたことが確認された。この粉体1のXRDパターンを図3に示す。図3中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。また焼成前の粉体中のAEI型ゼオライトの割合は86%、Si/Al比は5.3であった。
Figure 2017206417
[実施例2〜11]
実施例2〜11において、使用原料、仕込み量、水熱合成条件及び撹拌方法を表5に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の手順にてゼオライトの合成を行った。
表5中、各原料の使用量(g)の下のカッコ内の数値は、それぞれ以下のものを示す。
Al(OH):本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するAlのモル比
NaOH:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するNaのモル比
KOH:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するKのモル比
SDA:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するSDAのモル比
水:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対する水のモル比
種結晶:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiをすべてSiOに換算した量に対する本発明で添加するゼオライトの割合(重量%)
なお、シリカ源に含まれる微量のNaOHも考慮して上記モル比を算出している。
実施例1〜11で製造された粉体は、いずれも高い割合でAEI型ゼオライトを含んでいることが確認できた。
またこれらの原料混合物中のOH/H0モル比は、0.022〜0.027であり、特許文献6の実施例(OH/H0モル比=0.025〜0.042)り低い範囲でも、AEI型ゼオライトが合成できることを明らかにした。
[比較例1]
アモルファスAl(OH)(Al 53.5重量%、Aldrich社製)15gと、13gのKOH(和光純薬製)と、有機構造規定剤(SDA)として121gのN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド20%水溶液(セイケム社製)を混合し、撹拌して溶解させて透明溶液とした。その後、これにスノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)159gと20gの水を加えて室温で5分間撹拌した後、種結晶として6gの未焼成品のCHA型ゼオライト(Framework
density:14.5T/1000Å:Si/Al=23)を20gの水に膨潤させ
た後に混合し、最後に45gの水を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
下記に種結晶以外の原料混合物のモル組成比を示した。
1SiO:0.08Al:0.02NaOH:0.30KOH:15HO:0.15SDA
この反応前混合物を撹拌槽型反応器に入れ、185℃で撹拌させながら(200rpm)、1日水熱合成を行った。この時、撹拌槽型反応器にはアンカー翼を用い、邪魔板は使用しなかった。水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、ゼオライト中の有機物を除去するために、600℃の空気気流下で6時間焼成した。得られた粉体のXRDを測定したところ、格子面間隔表示で、表4に示すような位置にピーク及び相対強度を有するXRDパターンを示す不純物を含み、かつ結晶成長が不十分なAEI型の粉体2だった。この粉体2のXRDパターンを図3に示す。図3中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。焼成前の粉体中のAEI型ゼオライトの割合は47%であり、高い割合で不純物が混在している事が確認できた。
また粉体2のBET比表面積を測定した結果、136m/gであった。この粉体2の比表面積が低い結果から、粉体2にCuを担持して触媒調製を行っても、十分な活性が得られることはない。
Figure 2017206417
[比較例2、3]
比較例2、3において、使用原料、仕込み量、水熱合成条件及び撹拌方法を表5に示す通り変更した以外は、比較例1と同様の手順にてゼオライトの合成を行った。
比較例2、3ではゼオライトを合成することは出来なかった。比較例2は、反応温度以外は特許文献6の実施例20に記載されている合成条件を用いて撹拌槽型反応器で製造した結果である。
[比較例4]
1.3gの水と、有機構造規定剤(SDA)として10.8gのN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド(セイケム社製、20%水溶液)と、0.2gのNaOH(和光純薬製)と、0.1gのKOH(和光純薬製)を混合したものに、アモルファスAl(OH)(Al 53.5重量%、Aldrich社製)0.4gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにスノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)5.1gを加えて室温で5分間撹拌した後、0.1gの未焼成品のAEI型ゼオライト(Framework density:15.1T/1000Å:SAR=14)を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、170℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した固形物を回収した。回収した固形物を100℃で12時間乾燥した後、XRDを測定したところ、ピークは得られず、アモルファスであることを確認した。下記に種結晶以外の原料混合物のモル組成比を示した。
1SiO:0.05Al:0.16NaOH:0.05KOH:21HO:0.43SDA
比較例4は、小スケールで反応器を回転させる方式で水熱合成を実施した結果である。小スケールでAEI型ゼオライトが合成出来ない混合物組成で撹拌槽型反応器を用いて水熱合成を行っても、通常AEI型ゼオライトが得られることは無い。
Figure 2017206417
〔触媒の調製・触媒活性の評価〕
[実施例12]
実施例1で合成したゼオライト中のNaイオン、Kイオンを除去するために、焼成したゼオライト7.0gを1MのNHNO3水溶液70gに分散させ、80℃で2時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライトを回収し、1Lのイオン交換水で洗浄を行った。その後、前記のイオン交換と洗浄を更に繰り返し2回行った。得られた粉体を100℃で12時間乾燥して、NH型の粉体1Aを得た。
2.1gのCu(OAc)・HO(キシダ化学製)を68gの水に溶解して、酢酸銅(II)水溶液を得た。粉体1Aをこの酢酸銅(II)水溶液中に分散させ、60℃で4時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライト(粉体1B)を回収し、2Lのイオン交換水で洗浄を行った。その後、改めて2.1gのCu(OAc)・HO(キシダ化学製)
を68gの水に溶解して酢酸銅(II)水溶液を調製し、粉体1Bを該酢酸銅(II)水溶液中に分散させ、60℃で4時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライト(粉体1C)を回収し、2Lのイオン交換水で洗浄を行って、得られた粉体を100℃で12時間乾燥した後、空気中にて550℃で3時間焼成することにより、Cu含有AEI型ゼオライトよりなる触媒1Aを得た。XRF分析による触媒1AのCuの含有量は3.1重量%であった。
触媒1Aを、前述の方法で水蒸気処理して得られた触媒を触媒1Bとした。
触媒1A、1Bの触媒活性の評価結果を
表6及び図4に示した。
Figure 2017206417
撹拌槽型反応器を用いて水熱合成したAEI型ゼオライトにCuを担持した触媒1Aは、いずれも175〜500℃の間で良好なNO浄化率を示した。また通常は排ガス処理用の触媒を水熱処理すると、特にゼオライトの結晶性が低い場合は、結晶構造の崩壊、あるいは活性点として担持したCuの配位状態が変わることによりNO浄化活性は低下するが、触媒1Bは高い活性を維持していることを確認した。以上の結果から、撹拌槽型反応器を用いて合成したAEI型ゼオライトは結晶性が高いと考えられる。
これらの結果は特許文献6に記載のSi/Al比が低くても結晶性の良いAEI型ゼオライトが合成できている結果と合致するものであり、撹拌槽型反応器を用いた水熱合成でも特許文献6と同様に高い触媒性能を持つAEI型ゼオライトであることが確認された。
本発明により、ゼオライトを量産する際に用いる撹拌槽型反応器を用いても高性能なAEI型ゼオライトを得ることができ、排ガス処理やその他、触媒や分離膜等の材料として工業的に幅広い分野で好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、
    前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、
    前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
  2. 前記混合物中の、水に対する、水以外の成分の水酸基の合計のモル比が、0.021以上0.030以下であることを特徴とする請求項1に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
  3. 前記混合物がゼオライト種結晶を含み、前記ゼオライト種結晶のFramework densityが
    14T/1000Å以上であり、前記ゼオライト種結晶がInternational Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むことを特徴とする請求項1または2に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
  4. 前記ゼオライト種結晶が、AEI型又はCHA型の構造を有することを特徴とする請求項3に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
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