JP2017206417A - Aei型ゼオライトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
である。
また、自動車等の排気ガス処理用のSCR触媒として用いる場合、特にスタート時のような低温での動作時の排気ガスの処理を確実に行うためには、Si/Al比の低いゼオライトが好適に使用できることが判っている。これはアルミノシリケート系のゼオライトの場合、活性点となる遷移金属等の配位箇所がアルミニウムサイトになるため、活性点が多くなるSi/Al比の低い触媒の方が有利であることによる。
また特許文献1でも、特許文献2を引用しており、Y型ゼオライトを原料としている。
ウムが記載されているが、実施例ではAEI型ゼオライトを実際に製造できたことは示していない。また、特許文献4では、ドライゲルコンバージョン法と言われる、ゼオライト合成の原料混合物を乾燥して得られるドライゲルを、水蒸気もしくは揮発性有機アミンを含む水蒸気で処理してゼオライトに結晶化する製造方法を用いている。この方法では、均質なゼオライトを工業的に大量生産することはまだ難しく、実績のある水熱合成法で製造できることが望まれている。
しかし、該特許文献6に記載の合成は、いずれも小スケール(数十グラム)の反応器を用い、反応器を回転することにより内容物を混合しながら水熱合成した結果である。通常、耐圧反応器を回転させながらの水熱合成は、設備の安全上、ゼオライトの量産化スケールでは行わない。従って、特許文献6に記載の水熱合成条件でAEI型ゼオライトを量産化することが可能であるかは明らかにされていなかった。
撹拌槽型反応器を用いた合成では、反応物質の性状により、反応物質の混合状態を均一にすることが困難な場合が知られている。例えば、粘性の高い反応物質では、物質あるいは熱移動速度などが遅くなり、不均一な混合状態となる。その結果、反応後に目的物が得られないことがある。
そこで、特許文献6に記載の合成方法で、撹拌槽型反応器を用いて水熱合成を行ったところ、反応後に得られた固形物中にはAEI型ゼオライト以外の不純物が大量に混在し、さらに不純物の生成に原料を取られたことにより、AEI型ゼオライトの結晶成長が不十分であった。これは反応器内で均一に内容物を混合することが出来なかった結果と考えられる。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、
前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
[2] 前記混合物中の、水に対する、水以外の成分の水酸基の合計のモル比が、0.021以上0.030以下であることを特徴とする[1]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[3] 前記混合物がゼオライト種結晶を含み、前記ゼオライト種結晶のFramework densityが14T/1000Å以上であり、前記ゼオライト種結晶がInternational Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含む
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[4] 前記ゼオライト種結晶が、AEI型又はCHA型の構造を有することを特徴とする[3]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法は、アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とする。
本発明により製造されるAEI型ゼオライト(以下、「本発明のAEI型ゼオライト」と称す場合がある。)とは、International Zeolite Association(IZA)が定める
ゼオライトの骨格構造を規定するコードでAEI構造のものを示す。その構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定する場合には、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じるため、IZAの規定に記載されたAEI構造の各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
X線回折における主だったピークとしては、例えば、線源にCuKα線を用いた場合、2θ=9.5°±0.2°に110面のピーク、2θ=16.1°±0.2°に202及び−202面のピーク(非常に近いので重なることが多い)、16.9°±0.2°に022面のピーク、20.6°±0.2°に310面のピークなどが挙げられる。
イトであるが、好ましくはアルミノシリケートゼオライトである。アルミノシリケートゼオライトは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素(O)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていてもよい。
アルミノシリケートゼオライトの骨格構造を構成しているMe、AlおよびSiの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、Me、Al、Siの合計に対するMeのモル比をx、Alのモル比をy、Siのモル比をzとすると、xは通常0以上であり、0.3以下である。xがこの上限値以下とすることで、合成時に不純物が混入しにくく好ましい。
また前記yは通常0.001以上であり、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05であり、通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。
また前記zは通常0.5以上であり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.75以上であり、通常0.999以下であり、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.98である。
y、zが上記範囲内であると、合成が容易で、触媒として用いた場合に十分な酸点があり十分な活性が得られやすい。
他の原子Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMeは、周期表第3又は第4周期に属する元素である。
上述の通り、本発明においては、zは通常0.5以上であることから、骨格構成元素の半分以上がSiであり、所謂SAPO(シリコアルミノフォスフェート)は含まない。
本発明において、Framework densityが14T/1000Å3以上のゼオライト(以下、このゼオライトを「本発明で添加するゼオライト」と称す場合がある。)を、種結晶として添加することが好ましい。ここで、Framework densityは、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revised Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値であり、骨格密度を表す値である。
即ち、Framework densityは、ゼオライトの単位体積1000Å3あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
具体的にはInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの骨
格構造を規定するコードで、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、GME、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SZR、WENであり、より好ましくはAEI、AFT、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、LTL、MWW、SAV、更に好ましくはAEI、AFT、CHA、特に好ましくはCHA型およびAEI型ゼオライトである。
なお、本発明において添加するゼオライトは、骨格構成元素の半分以上がSiであるアルミノシリケート以外に、骨格構造にSi及び/またはAl、並びにそれ以外の元素を含むゼオライト(アルミノフォスフェート等)であっても良い。
。
アルミニウム源としては、通常、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドなどが用いられる。また、FAU型ゼオライト(た
とえば、Y型ゼオライト)やCHA型ゼオライトなどのアルミニウム含有ゼオライトをア
ルミニウム源として用いてもよい。
これらのアルミニウム源のうち、反応性の面で、好ましくは硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトであり、より好ましくは水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトである。
本発明に用いられるケイ素原子原料としては、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができ、Si含有量の多いゼオライトを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、他の成分と十分均一に混合できる形態のものであって、特に水に溶解しやすい原料が好ましく、コロイダルシリカ、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルが好ましい。
アルカリ金属原子は、有機構造規定剤と配位できなかったアルミニウムに対して電荷補償のために配位し、有機構造規定剤と同様に結晶成長を補助する効果がある。
本発明に用いられるアルカリ金属原子原料には、ナトリウム原子原料及びカリウム原子原料を含む。混合物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のアルカリ金属原子を含むことができる。他のアルカリ金属原子としては、特に限定はなく、ゼオライト合成に用いる公知のものが使用できるが、例えば、リチウム、ルビジウム、セシウムが挙げられるが、これらは2種以上併用してもよい。
れていてもよい。
ナトリウム原子原料の使用量は、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、更に好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.05以上、とりわけ好ましくは0.08以上であり、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.18以下、更に好ましくは0.17以下、特に好ましくは0.16以下、とりわけ好ましくは0.15以下である。
カリウム原子は、ナトリウム原子とイオン半径が異なるため、カリウム原子原料の使用量は、ナトリウム原子原料の使用量と異なる。カリウム原子原料の使用量は、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上、更に好ましくは0.13以上、特に好ましくは0.14以上、とりわけ好ましくは0.15以上であり、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.23以下、更に好ましくは0.22以下、特に好ましくは0.20以下、とりわけ好ましくは0.18以下である。
カリウムはアルカリ性が強いため、カリウムが多すぎると、混合物の粘性を高くする傾向にある。そのため、撹拌槽型反応器内では、撹拌翼周辺のみの部分的な混合状態となりやすく、水熱合成後に得られた固形物には不純物が混在する。そのため、適度にナトリウムを加えて粘性を低下させる必要がある。従って、原料混合物中のナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比は、11以下であり、好ましくは10であり、より好ましくは8以下であり、更に好ましくは7以下であり、特に好ましくは6以下である。
一方、AEI型の結晶構造はd6rが配列して出来ているが、カリウムはd6rにちょうど取り込まれる大きさのため、d6rを生成し易くする効果がある。カリウムが形成したd6r中に含まれるアルミニウム原子に構造規定剤が配位して、AEI型ゼオライトが形成し易くなると考えられる。そのため原料混合物中のナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比は、0.5以上であり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは1.0以上である。
ナトリウム原子原料及びカリウム原子原料は、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、上記範囲となる様に配合する。
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)としては、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)やテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)などのAEI型ゼオライトのSDAとして公知の各種の物質を使用することができる。また、例えば特許文献2に記載の窒素含有系有機構造規定剤として、以下のような物質を使用することができる。
。
しかし、前述の通り、リン化合物は、合成されたゼオライトを焼成してSDAを除去する時に有害物質である五酸化二リンを発生する可能性があるため、好ましくは窒素含有系有機構造規定剤である。
水の使用量は、結晶が生成しやすいという観点から、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上であり、特に好ましくは17以上である。この範囲にすると、結晶がより生成しやすく好ましい。また廃液処理にかかるコストダウンの効果を十分得るために、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。
撹拌槽型反応器内で原料混合物が均一になるように撹拌するためには、原料混合物の粘性が重要である。すなわち、水に対するOHモル比が高い原料混合物では、粘性が高く、撹拌槽型反応器では、原料混合物が不均一な状態となる。そのため、水熱合成時にAEI型ゼオライト以外の不純物が生成し、不純物に原料が消費され、原料混合物の組成が変わることで、AEI型ゼオライトへの結晶成長を阻害する。従って、原料混合物を均一な状態に撹拌するには、水に対する、水以外の成分のOHの合計のモル比は、通常0.030以下、好ましくは0.029以下、より好ましくは0.028以下、更に好ましくは0.027以下であり、特に好ましくは0.026以下に調整する必要がある。ここで言うOHモルは水以外の成分の水酸基の合計のモルを示している。ここで言う「水以外の成分」には、種結晶は含めない。
一方、水に対するOHモル比を低くすると、原料混合物の基質濃度が下がり反応性が低下する。そのため、結晶化が進行しにくく、AEI型ゼオライトが得られなくなる。反応時間を長くすることでAEI型ゼオライトを得られることもあるが、反応時間が長くなると製造コストが高くなるため長時間の合成は望まれない。従って、原料混合物をAEI型ゼオライトに結晶成長させるためには、水に対する、水以外の成分のOHの合計のモル比は、通常0.021以上、好ましくは0.022以上、より好ましくは0.023以上、更に好ましくは0.024以上であり、特に好ましくは0.025以上にする必要がある。
本発明の製造方法においては、以上に述べた、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し得られた混合物に、本発明で添加するゼオライトを十分に混合し、得られた反応前混合物を水熱合成する。
これらの原料の混合順序は、本発明で添加するゼオライトを含め特に限定はないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にケイ素原子原料、アルミニウム原子原料を添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、有機構造規定剤、及びアルカリ金属原子原料を混合してアルカリ溶液を調製した後、このアルカリ溶液へアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、本発明で添加するゼオライトの順番で添加して混合することが好ましい。
上記のようにして調製された反応前混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成することが好ましい。特に、スケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となりやすい。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが好ましい。熟成温度は通常100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
水熱合成は、上記のようにして調製された反応前混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲル(以下、「反応前混合物」又は「これを熟成して得られる水性ゲル」を、「水熱合成前のゲル」と称することがある。)を耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
上記の条件で反応させることにより、目的とするAEI型ゼオライトの収率が向上し、異なるタイプのゼオライトが生成し難くなるため好ましい。
本発明に用いられる撹拌槽型反応器とは、槽内の撹拌翼によって内容物を撹拌混合させて反応を進行させる装置である。攪拌翼の形式としては特に限定されるものではないが、アンカー翼、パドル翼、スクリュー翼、タービン翼などがあげられる。槽内に邪魔板(バッフル)を設置しても良い。邪魔板は槽内の液流れを上下循環流れに変換し、槽内の混合を促進する効果がある。邪魔板の形式としては特に限定されるものではないが、平板邪魔板、傾斜邪魔板、フィンガー邪魔板などが上げられる。邪魔板幅[m]は、撹拌槽径[m]に対して通常0.01〜0.15倍である。邪魔板を設置する場合は、反応器内に通常2〜8か所設置する。
撹拌槽型反応器内に用いる撹拌翼と邪魔板は、均一な混合を可能とするように組み合わせればよく、特には限定されない。
撹拌槽型反応器の詳細については培風館工業反応装置P.201〜228に記載されている。代表的な撹拌槽型反応器について図1に示した。
上記の水熱合成後、生成物であるAEI型ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属原子の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを触媒(触媒担体も含む)や吸着材等の用途で使用する場合、必要に応じてこれらを除去した後に使用に供する。
AEI型ゼオライトを回収した後に得られる水熱合成反応液には、未反応のSDAが含まれる。本発明の製造方法においては、未反応のSDAを含む水熱合成反応液を用いて、本発明の水熱合成前のゲルと同じ仕込み組成となるように不足分のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、SDA、および水を加えて混合物を調製し、水熱合成することでAEI型ゼオライトを製造しても良い。
以上より、SCR触媒の使用される環境によって、最適なSi/Al比を選択するのが
良く、本発明は該Si/Al比を任意の値で得られる方法として、有効である。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトの用途としては特に制限はないが、触媒、吸着材、分離材料などとして、好適に用いられる。前述の特許文献1にも記載があるように、AEI型ゼオライトは特に自動車等の排ガス浄化用触媒等に好適に用いられる。特にSi/Al比が6.5以下のものは高い触媒活性が得られる。
本発明の製造方法によって得られたAEI型ゼオライトの耐水熱性を向上させる方法として、水熱合成後のAEI型ゼオライトもしくはAEI型ゼオライトに後述する触媒として使用するための金属(例えばCu)を担持した触媒にさらに特定の金属(=M)を担持する方法が上げられる。耐水熱性を向上させるために担持する金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce),鉄(Fe)のいずれか、もしくはこれらの金属を2種類以上混合して用いてもよい。またAEI型ゼオライトの水熱合成前のゲルにこれらの金属の塩を加えて、金属を含有したAEI型ゼオライトを製造しても良い。この場合、通常、遷移金属の硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらの塩のうち、水に対する溶解性の観点から、無機酸塩、有機酸塩が好ましい。
本発明の製造方法によって製造されたAEI型ゼオライトを含む触媒は、バインダーと混合し、造粒して用いることやハニカム状等の所定の形状に成形して用いることができる。具体的には例えば、該触媒をシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーや、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混合した後、造粒するかまたは押出法や圧縮法等によりハニカム状等の所定の形状に成形し、続いて焼成することにより、粒状の触媒やハニカム触媒、触媒成形品が得られる。
ここでは排ガス処理用触媒を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよいことは言うまでもない。
AEI型ゼオライトに遷移金属を担持させる場合、イオン交換法、含侵法などの方法を用いると、大量の廃液を排出するため廃液処理の問題、ゼオライト浸漬スラリーの濾過、洗浄などを要するため、工程数が多くなりがちである。これに対して、遷移金属原料である遷移金属酸化物や遷移金属塩をゼオライト合成工程のゲルに導入することにより、遷移金属を含むAEI型ゼオライトを一工程で合成すること(以下「ワンポット合成法」と称
すことがある)が可能である。
またゲル中で遷移金属を安定化させるためにポリアミンを用いて錯塩を形成させても良い。錯塩の形成に用いるポリアミンとしては、一般式H2N−(CnH2nNH)x−H(式中
、nは2〜6の整数、xは2〜10の整数)で表されるポリアミンが好ましい。
このようなポリアミンとしては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが安価であるため好ましく、中でもトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、分岐状のポリアミンを含んでいてもよい。
ワンポット合成法を用いる場合には、遷移金属、あるいは遷移金属とポリアミンを用いる以外は、本発明のAEI型ゼオライトの製造方法に従い、遷移金属を含有したAEI型ゼオライトを得ることができる。
遷移金属原子原料としては、金属種、或いは化合物種の異なるものの2種以上を併用してもよい。
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、触媒使用時には、アンモニア、尿素、ヒドラジン、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びギ酸アンモニウム等の窒素含有化合物(但し、窒素酸化物を除く)、炭化水素等の公知の還元剤を使用してもよい。具体的には、本発明の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
なお、前記アンモニアとしては、外部から排気浄化システム内に導入したアンモニアや、外部から排気浄化システム内に導入した尿素から生成させたアンモニアを用いることができる。また、排気浄化システム内で排ガスからアンモニアを生成させて用いることもできる。
以下の実施例及び比較例において得られたゼオライトの分析及び性能評価は以下の方法により行った。
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<装置仕様及び測定条件>
粉末XRD測定装置仕様及び測定条件は以下の通りである。
大倉理研社製 全自動粉体比表面積測定装置(装置名:AMS1000)を用いて、流通式一点法により測定を行った。
標準試料であるゼオライト中のケイ素原子とアルミニウム原子含有量、及び含有された銅原子の元素分析は以下の通りとした。
ゼオライト試料を塩酸水溶液に加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子と銅原子の含有量(重量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。
この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライトよりなる触媒試料中のケイ素原子、アルミニウム原子及び銅原子の含有量(重量%)を求めた。ICP分析は、株式会社堀場製作所製 装置名:ULTIMA 2Cを用いて行った。XRFは、株式会社島津製作所製 装置名:EDX−700を用いて行った。
調製した触媒試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整粒した触媒試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に下記表2の組成のガスを空間速度SV=200000/hで流通させながら、触媒層を加熱した。175℃、200℃、250℃、300℃、400℃、又は500℃の各温度において、出口NO濃度が一定となったとき、
NO浄化率(%)
={(入口NO濃度)−(出口NO濃度)}/(入口NO濃度) ×100
の値によって、触媒試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
水熱処理後の触媒活性を評価するために、触媒試料3gに800℃、10体積%の水蒸気を、空間速度SV=3000/hで、5時間通じ、水蒸気処理を行った。
[粉体中のAEI型ゼオライトの割合の算出方法]
固形物中のAEI型ゼオライトの割合は、以下の方法に従って算出した。
水熱合成後、濾過により生成した結晶を回収し、回収した結晶を乾燥した後の焼成前の固形物についてXRDを測定した。図2に代表的なAEI型ゼオライト、MER型ゼオライト、サニディンのXRDパターンを示した。
固形物中のAEI型ゼオライトの割合の算出にはそれぞれの代表ピークのピーク面積を用いて下記の式で算出した。
固形物中のAEI型ゼオライトの割合の算出式:
[AEI型ゼオライトのピーク面積]/([AEI型ゼオライトのピーク面積] +[MER型ゼオライトのピーク面積]+[サニディンのピーク面積])
ここでピーク面積とは、それぞれ指定した範囲にあるピークの面積値であり、ピーク範囲は下記に示した。なお、ピーク範囲は、他の成分と被らない範囲を選出した。
・AEI型ゼオライト:9.2〜9.8°
・MER型ゼオライト:12.4〜12.7°
・サニディン :26.6〜26.9°
[実施例1]
64.5gの水と、アモルファスAl(OH)3(Al2O3 53.5重量%、Aldrich社製)19gを加えたものに、4gのNaOH(和光純薬製)と、13gのKOH(和光純薬製)と、有機構造規定剤(SDA)として195gのN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド20%水溶液(セイケム社製)と、20gの水を混合し、撹拌して溶解させて透明溶液とした。その後、これにスノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)188gを加えて室温で5分間撹拌した後、種結晶として8gの未焼成品のCHA型ゼオライト(Framework density:14.5T/1000Å3:Si/Al2(SAR)=23)を20gの水に膨潤させた後に混合し、最後に20gの水を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
下記に種結晶以外の原料混合物のモル組成比を示した。
1SiO2:0.08Al2O3:0.1NaOH:0.15KOH:17.5H2O:0.2SDA
実施例2〜11において、使用原料、仕込み量、水熱合成条件及び撹拌方法を表5に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の手順にてゼオライトの合成を行った。
表5中、各原料の使用量(g)の下のカッコ内の数値は、それぞれ以下のものを示す。
Al(OH)3:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するAlのモル比
NaOH:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するNaのモル比
KOH:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するKのモル比
SDA:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対するSDAのモル比
水:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiに対する水のモル比
種結晶:本発明で添加する種結晶以外の原料混合物に含まれるSiをすべてSiO2に換算した量に対する本発明で添加するゼオライトの割合(重量%)
なお、シリカ源に含まれる微量のNaOHも考慮して上記モル比を算出している。
実施例1〜11で製造された粉体は、いずれも高い割合でAEI型ゼオライトを含んでいることが確認できた。
またこれらの原料混合物中のOH/H20モル比は、0.022〜0.027であり、特許文献6の実施例(OH/H20モル比=0.025〜0.042)り低い範囲でも、AEI型ゼオライトが合成できることを明らかにした。
アモルファスAl(OH)3(Al2O3 53.5重量%、Aldrich社製)15gと、13gのKOH(和光純薬製)と、有機構造規定剤(SDA)として121gのN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド20%水溶液(セイケム社製)を混合し、撹拌して溶解させて透明溶液とした。その後、これにスノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)159gと20gの水を加えて室温で5分間撹拌した後、種結晶として6gの未焼成品のCHA型ゼオライト(Framework
density:14.5T/1000Å3:Si/Al2=23)を20gの水に膨潤させ
た後に混合し、最後に45gの水を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
下記に種結晶以外の原料混合物のモル組成比を示した。
1SiO2:0.08Al2O3:0.02NaOH:0.30KOH:15H2O:0.15SDA
また粉体2のBET比表面積を測定した結果、136m2/gであった。この粉体2の比表面積が低い結果から、粉体2にCuを担持して触媒調製を行っても、十分な活性が得られることはない。
比較例2、3において、使用原料、仕込み量、水熱合成条件及び撹拌方法を表5に示す通り変更した以外は、比較例1と同様の手順にてゼオライトの合成を行った。
比較例2、3ではゼオライトを合成することは出来なかった。比較例2は、反応温度以外は特許文献6の実施例20に記載されている合成条件を用いて撹拌槽型反応器で製造した結果である。
1.3gの水と、有機構造規定剤(SDA)として10.8gのN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド(セイケム社製、20%水溶液)と、0.2gのNaOH(和光純薬製)と、0.1gのKOH(和光純薬製)を混合したものに、アモルファスAl(OH)3(Al2O3 53.5重量%、Aldrich社製)0.4gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにスノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)5.1gを加えて室温で5分間撹拌した後、0.1gの未焼成品のAEI型ゼオライト(Framework density:15.1T/1000Å3:SAR=14)を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
1SiO2:0.05Al2O3:0.16NaOH:0.05KOH:21H2O:0.43SDA
[実施例12]
実施例1で合成したゼオライト中のNaイオン、Kイオンを除去するために、焼成したゼオライト7.0gを1MのNH4NO3水溶液70gに分散させ、80℃で2時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライトを回収し、1Lのイオン交換水で洗浄を行った。その後、前記のイオン交換と洗浄を更に繰り返し2回行った。得られた粉体を100℃で12時間乾燥して、NH4型の粉体1Aを得た。
を68gの水に溶解して酢酸銅(II)水溶液を調製し、粉体1Bを該酢酸銅(II)水溶液中に分散させ、60℃で4時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライト(粉体1C)を回収し、2Lのイオン交換水で洗浄を行って、得られた粉体を100℃で12時間乾燥した後、空気中にて550℃で3時間焼成することにより、Cu含有AEI型ゼオライトよりなる触媒1Aを得た。XRF分析による触媒1AのCuの含有量は3.1重量%であった。
これらの結果は特許文献6に記載のSi/Al比が低くても結晶性の良いAEI型ゼオライトが合成できている結果と合致するものであり、撹拌槽型反応器を用いた水熱合成でも特許文献6と同様に高い触媒性能を持つAEI型ゼオライトであることが確認された。
Claims (4)
- アルカリ金属原子原料、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、及び水を含む混合物を水熱合成する工程を含む、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、
前記水熱合成を撹拌槽型反応器の中で行い、
前記混合物中の、ナトリウム原子に対するカリウム原子のモル比が、0.5以上12以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。 - 前記混合物中の、水に対する、水以外の成分の水酸基の合計のモル比が、0.021以上0.030以下であることを特徴とする請求項1に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
- 前記混合物がゼオライト種結晶を含み、前記ゼオライト種結晶のFramework densityが
14T/1000Å以上であり、前記ゼオライト種結晶がInternational Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むことを特徴とする請求項1または2に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。 - 前記ゼオライト種結晶が、AEI型又はCHA型の構造を有することを特徴とする請求項3に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
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