JP2017205002A - モーター駆動式の走行装置 - Google Patents
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Abstract
Description
安全のために、電磁ブレーキに電源を入れてブレーキを解除した場合は同時にモーターを電源から遮断するように回路を構成することが考えられる。しかしそれでも、例えば走行装置が斜面で停止している場合に車体のスイッチを押して電磁ブレーキに通電しブレーキを解除すると、車体の傍でスイッチを押した人に向かって車体が動く可能性があり、危険である。人の体重を超える程の車体重量があればなおさら危険である。予期せぬ車体の動きで傍にいる人が転倒したり巻き込まれたりして負傷する危険がある。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、予期せぬ車体の動きを抑制して安全にブレーキを解除できるモーター駆動式走行装置を提供するものである。
(実施の形態1)
≪モーター駆動式走行装置としての自律走行車両≫
図1は、この発明のモーター駆動式走行装置の一態様である自律走行車両の外観を示す側面図である。図2は、図1に示す自律走行型車両の概略構成を示すブロック図である。
電動車台部10の前端部上には距離検出部12が設けられ、電動車台部10の後端部上にはWi‐Fiアンテナ71および警告灯72が設けられている。電動車台部10の左右側面および後端面にはCCDカメラ73が設けられている。昇降機構部50の先端部における監視カメラ60の後方位置にはGPSアンテナ74が設けられている。また、側面のCCDカメラ73の近傍に、ブレーキ解除スイッチ120が設けられている。
距離検出部12としては、所定の距離測定領域内の2次元空間または3次元空間に、レーザーを出射し、前記距離測定領域内の複数の測点における距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、あるいはLaser Imaging Detection and Ranging:ライダー)を用いることができる。
そして、システムコントローラ100はこの発明に係るブレーキ制御回路100bの機能を包含する。ブレーキ制御回路100bは、動作切換回路102Lおよび動作切換回路102Rを制御する。
走行中、自律走行型車両1は、特に、監視カメラ60や距離検出部12等を利用して、指示者の姿勢を認識して、その姿勢に予め対応づけられた指示に基づいて、電動車台部10の進行方向前方の状態を確認しながら自走する。例えば、前方に、障害物や段差等が存在することを検出した場合には、障害物に衝突することなどを防止するために、静止、回転、後退、前進等の動作を行って進路を変更し、指示に対応する機能を実行する。
システムコントローラ100は、モーター41Lおよび41Rの回転速度を、駆動輪である前輪31Lおよび31Rの直径と駆動系の減速ギア比とに基づいて、自律走行型車両1の走行速度に変換する。そして、動力制御やブレーキ制御によって自律走行型車両1の走行を制御する。
図1に示す自律走行型車両1は、一例で車体の全長が約1.4メートル、全幅が約0.85メートル、車輪の径が約0.4メートル、車体重量が約200キログラム、モーター41Lおよび41Rの定格出力がそれぞれ400ワットである。
続いて、自律走行型車両1におけるブレーキ解除について説明する。
図3は、図2に示す自律走行型車両1のブレーキ解除に係る構成の詳細を示すブロック図である。図2において前輪、モーター、動作切換回路、電磁ブレーキ等は左右1対で構成されるが、図3には対をなす構成要素のうちの左の1組だけを代表で示している。右の1組は省略しているが、左と同様の構成である。左の1組だけを代表で図示している点は、図9および図13も同様である。
なお、自律走行装置に限らず、人が運転するモーター駆動式の走行装置でも、上述のような電磁ブレーキが搭載され、手押し等の際にブレーキ解除スイッチでブレーキを解除する場合が考えられる。
ブレーキ制御回路100bは、モーター電源リレー121L、モータードライバ122L、ブレーキ電源リレー123Lおよびブレーキドライバ124Lのブレーキ解除に係る動作を制御する。
ブレーキ解除スイッチ120は、電磁ブレーキ103Lが作動して自律走行型車両1が停止した状態において、ユーザーの操作によりブレーキを解除するためのスイッチである。
多段スイッチとは、このように操作量に応じて複数段階の状態をとるスイッチである。ただし、シャッターボタンのようなプッシュ式のスイッチに限定されるものでない。例えば、ロータリー式あるいはレバー式など、他のタイプのスイッチであってもよい。なお、この実施形態における多段スイッチは、操作をやめると可逆的に元の状態に戻る自己復帰型のスイッチであることが安全上極めて好ましい。以下、プッシュ式のスイッチを代表例として説明する。
自律走行型車両1を手押しするためにブレーキ解除スイッチ120を操作するユーザーの視点からすると、手押しを始めようとしてブレーキ解除スイッチ120を軽く押した最初の段階(第1段階)においては、電磁ブレーキ103Lが解除されるもののショートブレーキがかかって車体が動きにくい状態になる。
その状態から車体を大きく動かそうとしてさらにブレーキ解除スイッチ120を深く押し込むと(第2段階の操作)ショートブレーキが解除され、軽い力で車体を動かすことができるようになる。
以上のように、状況に応じてユーザーがブレーキ解除スイッチ120の操作量を調整して、ブレーキの解除を調整できる。
多段スイッチを用いることで、ブレーキ解除スイッチ120の操作量と制動力とが連動し、段階的に制動力が弱くなるためユーザーは直感的に制動力を調整できる。
図5および図6は、モータードライバ122Lの基本的構成を示す説明図である。
図5は直流ブラシモーターのドライバとして多用されるフルブリッジ回路の構成を示している。図5でTr1〜Tr4は、スイッチとして機能するトランジスタ素子を示している。システムコントローラ100は、各トランジスタ素子のオンおよびオフを制御する。例えば、モーター41Lを正転させる場合はTr1とTr4とをオンしてTr2とTr3とをオフする。逆転させる場合は、Tr1とTr4とをオフしてTr2とTr3とをオンする。なお、Tr4(またはTr1)をモーター41Lの機械的な応答時間よりも十分短い周期でオンおよびオフさせてそのデューティー比(1周期内のオン期間の割合)を制御することによりモーター41Lの正転時の回転速度が制御できる。PWM(Pulse Width Modulation)制御と呼ばれる手法である。逆転時はTr3(またはTr2)をオンおよびオフさせる。
ショートブレーキと似たものに発電ブレーキがある。モーター端子を外部で短絡するショートブレーキに代えて、発電ブレーキはモーター端子間に抵抗を接続し、その抵抗でエネルギーを消費する。接続する抵抗の値によって電流の大きさが変わるので、抵抗値の選択により制動力を選択することができる。なお、ショートブレーキに比べて発電ブレーキは回路を流れる電流が抵抗分だけ小さくなるので、制動力はショートブレーキよりも弱くなる。
図7Aに示すように、直流ブラシモーターの場合はシステムコントローラ100がTr1とTr2とをオフしてTr3とTr4とをオンする。モーター41Lで発生した電力がモーター41Lで消費するようにモーター41Lの巻き線とTr3とTr4とを経て短絡電流が流れ、モーター41Lに制動力がはたらいてモーター軸が回転しにくくなる。
Tr3(またはTr4)をモーター41Lの機械的な応答時間よりも十分短い周期でオンおよびオフさせてそのデューティー比を制御すると短絡電流の平均値(時間平均)が変わり、制動力が変わる。これは、発電ブレーキで抵抗値を変えることに相当する。
以上、ショートブレーキについて述べた。
発電ブレーキの場合は、図8Aおよび図8Bに示すように、モーター41Lの駆動時はスイッチTrBをオンし、スイッチTrAをオフしてバッテリー40の電圧をモーター41Lの端子に印加する。一方、ブレーキ動作中はモーター41Lが発電した電力を消費する抵抗Rをモーター41Lの端子間に挿入する。具体的には、抵抗Rに電流が流れるようにスイッチTrAをオンし、バッテリー40からの電流が抵抗Rに流れないようにスイッチTrBをオフする。これにより、モーター41Lから発生したエネルギーを抵抗Rで消費され、モーター軸に制動がかかる。
実施の形態1では、ブレーキ解除スイッチ120が2段階の操作を受付ける多段スイッチであるとして説明した。これに限らず、ブレーキ解除スイッチ120が少なくとも3段階の操作量を検出する多段スイッチであってもよい。システムコントローラ100は、操作量が第1段階から次の段階へ進むにつれてモーターによる制動力を弱めるように制御してもよい。
また、図9は図3にない傾斜センサ109を有する。ただし、傾斜センサ109はこの実施形態における必須の構成要素ではない。傾斜センサ109を用いる態様については、実施の形態5で述べる。
実施の形態1、2で、ブレーキ解除スイッチ120は多段スイッチであるが、それに代えて通常のオンオフ・スイッチを適用する態様も考えられる。
この実施形態で、ブレーキ解除スイッチ120それ自体はオンおよびオフの何れかの状態をとる単純なスイッチである。
ただし、この実施形態においてシステムコントローラ100は、タイマー回路100tを用いてブレーキ解除スイッチ120が押されている期間(オンの期間)を計測する。そして、オン期間の長さに応じて短絡電流を流すトランジスタ素子のデューティー比を変化させる。
さらに、オン状態のブレーキ解除スイッチ120をオフにした場合に、トランジスタ素子のデューティー比を次第に大きくして制動力を徐々に強めるようにしてもよい。
実施の形態3で述べたような、時間の経過と共に制動力を弱めるPWM制御を、実施の形態1や2の多段スイッチと組み合わせてもよい。両者を組み合わせることで、ブレーキ解除スイッチ120スイッチの操作量に応じて複数の段階の制動力を得、かつ、操作量が次の段階(例えば第1段階から第2段階および/または第2段階から第1段階)へ進む際に制動力を徐々に変化させて、車体を滑らかに加速あるいは減速させることが可能である。
この実施形態では、図9に示す傾斜センサ109で自律走行型車両1の走行方向における車体の傾き(水平面に対する傾きの度合い)を計測し、傾きの大きさ(傾きの度合い)に応じてショートブレーキの制動力を補正する。
この態様によれば、システムコントローラ100は、斜面の途中で停止している自律走行型車両1を手押しするためにブレーキを解除する場合、水平面で停止している場合に比べてトランジスタ素子をオンおよびオフするデューティー比を小さくし、ショートブレーキの制動力を強くする。詳細には、第1段階をはじめ最終段階未満の操作量におけるトランジスタ素子のオンオフのデューティー比(即ちショートブレーキの制動力)を、車体が水平面にある場合に比べて斜面にある場合は強くする。これによって、自重によって車体が斜面を下ろうとするのを抑制する。
この態様によれば、走行方向における車体の傾き度合いが大きいほど、車体が斜面を下ろうとするのを強い制動力で抑制できる。よって、予期せぬ車体の動きを抑制して安全にブレーキを解除できる。
図1に示す自律走行型車両1において、ブレーキ解除スイッチ120は電動車台部10の側面に配置されている。これに代えて、車体の前部と後部にブレーキ解除スイッチ120を設けてもよい。
図12は、図1と異なり車体の前部にブレーキ解除スイッチ120Fが設けられ、車体の後部にブレーキ解除スイッチ120Tが設けられた自律走行車両の外観を示す側面図である。図12に示す自律走行型車両1は、車体の前部にブレーキ解除スイッチ120Fを備えると共に、同じ機能を有するブレーキ解除スイッチ120Tを車体の後部に備える。
車体が前進もしくは後進している状態で停止する場合が多いことを考慮すると、斜面で停止した場合を考慮して、ブレーキ解除スイッチ120を車体の前部と後部に配置することが好ましい。
即ち、停止状態でブレーキ解除スイッチ120Fまたは120Tが操作されてブレーキが解除され、ブレーキが解除された状態で前輪31Lまたは31Rが回転し始めた場合、ブレーキ制御回路100bは、その回転方向が回転を許容する方向であればそのまま回転させる。しかし、回転を阻止すべき方向であれば、動作切換回路102Lおよび102Rを制動に切換えて前輪31Lおよび31Rの回転を阻止する。
ここで、例えば、車体前部に配置されたブレーキ解除スイッチ120Fが操作された場合に、前輪31Lおよび31Rの回転を許容する方向が、車体が前進する方向か後退する方向かは、設計者が予め設定する。その設定は、ブレーキ解除スイッチ120Fを操作するユーザーが自律走行型車両1の車体を押して移動させることを前提とするのか、車体を引っ張って移動させることを前提とするのかによる。
一方、取っ手部が、車体を引っ張ることを前提に設計されたものであれば、例えば車体前部のブレーキ解除スイッチ120Fが操作された場合に許容する回転方向は、車体が前進する回転方向である。また、車体後部のブレーキ解除スイッチ120Tが操作された場合に許容する回転方向は、車体が後退する回転方向である。それらと逆方向の回転は阻止するように設定される。
この実施形態によれば、ブレーキ制御回路100bは、ブレーキ解除スイッチ120Tが操作された場合に、車体を前進させる方向の車輪回転は許容するが、車体を後退させる方向の車輪の回転は阻止するように設定される。よって、ブレーキが解除された直後は、下り方向に車体が若干後退するとしても、すぐにモーターによる制動力が働く。一方、ユーザーが下り方向から車体を押して前進させる際には、前進方向の車輪の回転が許容されるので、ユーザーは一人であっても安全に車体を移動させることができる。
一方、車体を引っ張って移動させることを前提としている場合、ブレーキ制御回路100bは、車体前方のブレーキ解除スイッチ120Fが操作された場合に車体を前進させる方向の車輪回転は許容するが、車体を後退させる方向の車輪の回転は阻止するように設定される。
ブレーキ解除スイッチ120として多段スイッチを用いる態様や1個のオンオフ・スイッチを適用する態様について述べたが、多段スイッチに代えて複数のオンオフ・スイッチを用いる態様も考えられる。
この実施形態では、実施の形態1における操作の各段階(第1段階、第2段階)に対応してオンオフ・スイッチを用いる態様を説明する。
この実施形態で、ブレーキ解除スイッチ120は、2つのオンオフ・スイッチから構成される。電磁ブレーキ解除スイッチ120aとショートブレーキ解除スイッチ120bである。
さらに、ショートブレーキ解除スイッチ120bが押されると、システムコントローラ100はショートブレーキを解除する。
しかし、ショートブレーキ解除スイッチ120bのみが押された場合、システムコントローラ100は何もしない。即ち、電磁ブレーキ103Lもショートブレーキも解除しない。ブレーキ解除スイッチ120の操作手順を誤っても、ユーザーに危険がおよばないようにするためである。
この態様によれば、操作の各段階に対応したスイッチを設けることで、ユーザーがブレーキ解除の状態を容易に認識できる。複数人で車体を手押しする場合などは、ブレーキの状況を各人が認識できることが好ましく、そういう状況に適しているといえる。
図15は、この発明に係る自律走行車両の図1と異なる態様を示す左側面図である。図15において図1に対応する構成要素には図1と同じ符号を付している。
図1では、自律走行車両の前輪31L、後輪32Lの何れにもタイヤ付きホイールが用いられていた。これに対して図15に示すこの実施形態の自律走行型車両1の場合、後輪32Lとしてオムニホイール(登録商標)が用いられている。図示しない右側面の後輪32Rも同様である。
左右の後輪32Lおよび32Rをオムニホイールにすることにより、旋回時に左右の後輪32Lおよび32Rは車軸を回転させることなく左右方向へスムーズに移動することができる。よって、図15に示す自律走行型車両1は、タイヤ付きホイールの左右の前輪31Lおよび31Rを相互に逆方向に同じ回転数で回転させると、平面視で左の前輪31Lと右の前輪31Rとの中間点を旋回軸として小さなトルクでもスムーズに定置旋回できる。
なお、図15の自律走行型車両1において、左右の後輪32Lおよび32Rとして、オムニホールの代わりにメカナムホイール(登録商標)を用いてもよい。
また、図15では、駆動輪が左右の前輪31Lおよび31Rで従動輪が左右の後輪32Lおよび32Rであって後輪がオムニホイールであるが、駆動輪が後輪32Lおよび32Rであってタイヤ付きホイールで、従動輪が前輪31Lおよび31Rであってオムニホイールであってもよい。
ブレーキ制御回路100bは、速度センサ101Lおよび101Rで前輪31Lおよび前輪31Rの回転速度および回転方向をそれぞれ検出する。ブレーキが解除された状態で外力によって前輪31Lおよび31Rが互いに回転しようとする場合、ブレーキ制御回路100bは、速度センサ101Lおよび101Rでそれぞれの車輪が回転し始めたことおよびその方向を検出する。そして動作切換回路102Lおよび102Rを制御し、モーター41Lおよび41Rに制動をかける。
ここで、例えば、車体左側面に配置されたブレーキ解除スイッチ120Lが操作された場合に、前輪31Lおよび31Rの回転を許容する方向が、平面視で車体が時計回りに旋回する方向か反時計回りに旋回する方向かは、設計者が予め設定する。その設定は、ブレーキ解除スイッチ120Lを操作するユーザーが自律走行型車両1の車体側部を押して旋回させることを前提とするのか、車体側部を引っ張って旋回させることを前提とするのかによる。
一方、車体を引っ張って移動させることを前提としている場合、ブレーキ制御回路100bは、車体前方のブレーキ解除スイッチ120Fが操作された場合に車体を前進させる方向の車輪回転は許容するが、車体を後退させる方向の車輪の回転は阻止するように設定される。
この実施形態によれば、自律走行型車両1が傾斜面で停止した場合でも、ユーザーが車体の側部を押してあるいは引っ張って車体を旋回させる方向の車輪回転は許容するが、逆方向に車体を旋回させる車輪回転は阻止されるので、ユーザーが一人で車体を旋回させても危険ではない。
図15に示す自律走行型車両1は、前後左右のブレーキ解除スイッチ120F、120T、120L、120Rの近傍に、ユーザーが手を引っ掛けて車体を引っ張るためのそれぞれに対応する取っ手部131F、131T、131L、131Rを有している(車体右側方の取っ手部131Rは図15に不図示)。
ブレーキ解除スイッチの近傍に、対応する取っ手部が配置されているので、ユーザーは何れかのブレーキ解除スイッチを操作する際に、操作をしながら自律走行型車両1の車体に力をかけて引っ張り易く、一人でブレーキ解除スイッチを操作しながら車体を移動あるいは旋回させることも容易でありかつ危険ではない。
また、図15に示す態様の他、取っ手部の実施形態として種々の形状や形態が考えられる。例えば、車体の一部に凹部が形成され、その凹部に手を引っ掛けて車体を引っ張るようなものも考えられる。
さらなる変形例を図16に示す。図16は、バンパーが取っ手部の機能を兼ねる態様である。即ち、ブレーキ解除スイッチ120Tは後部のバンパー130Tが車体と対向する側に配置されている。ユーザーは、後部のバンパー130Tと車体との間に手を引っ掛けて車体を引っ張ることができる。前部についても同様である。前部のブレーキ解除スイッチ120Fは前部のバンパー130Fが車体と対向する側に配置されている。ただし、図16では前部のバンパー130Fに隠れてブレーキ解除スイッチ120Fが図示されていない。
(i)この発明によるモーター駆動式の走行装置は、車体と、ショートブレーキまたは発電ブレーキとして車体の制動を行い得る走行駆動用のモーターと、前記モーターと別に前記車体を制動する電磁ブレーキと、前記モーターにより走行駆動するか制動を行うかを切換える動作切換回路と、前記モーターおよび前記電磁ブレーキのブレーキ解除に係る操作を受付けるブレーキ解除スイッチと、前記ブレーキ解除スイッチが操作されている間その操作に応答して前記モーターおよび前記電磁ブレーキを制御するブレーキ制御回路とを備えることを特徴とする。
また、モーターは、車体を走行させるための駆動源となるものである。その具体的な態様は、例えば、電池を電源とする直流のブラシモーターやブラシレスモーターである。ショートブレーキは、モーターの端子を短絡してモーターの巻き線に電流を流すことにより、モーターの軸回転を電気エネルギーに変換しその電気エネルギーを短絡回路で消費させてブレーキとして機能させるものである。発電ブレーキはモーターの端子間に抵抗を接続して巻き線と抵抗を流れる回路で電気エネルギーを消費させてブレーキとして機能させるものである。一般にショートブレーキは発電ブレーキに比べて大きな電流が流れるので強い制動力が得られる。一方、発電ブレーキはモーター端子間に挿入する抵抗の大きさを変えることによって種々の制動力が得られる。ただし、ショートブレーキであってもモータードライバのスイッチング素子をPWB制御することによって発電ブレーキと同様に種々の制動力が得られる。
ブレーキ解除スイッチは、上述の電磁ブレーキに通電することによってブレーキを解除するためのスイッチである。
ブレーキ制御回路は、電磁ブレーキおよびモーターのブレーキ動作を制御するものである。その具体的な態様は、例えば、コンピューターを用いた制御回路である。
(ii)前記ブレーキ解除スイッチは操作量に応じて少なくとも2段階の切換を行う多段スイッチであり、前記ブレーキ制御回路は、前記ブレーキ解除スイッチへの第1段階の操作に応答して前記電磁ブレーキのブレーキを解除すると共に前記モーターによる制動を実施し、最終段階の操作に応答して前記モーターによる制動を解除してもよい。
このようにすれば、前記ブレーキ解除スイッチへの第1段階の操作では、前記電磁ブレーキのブレーキを解除すると共に前記モーターによる制動が行われるので、ユーザーは電磁ブレーキを解除する際の予期せぬ車体の動きを抑制して安全にブレーキを解除できる。
(iii)前記ブレーキ解除スイッチは、少なくとも3段階の切換を行うものであり、前記ブレーキ制御回路は、前記ブレーキ解除スイッチの操作量が第1段階から段階を増すにつれて前記モーターによる制動力が弱まるように制御してもよい。
このようにすれば、ブレーキ解除スイッチの操作量が第1段階から最終段階にかけて増すにつれてモーターによる制動力が弱まるので、ユーザーはスイッチの操作量を調整しながらブレーキを徐々に解除できる。よって、予期せぬ車体の動きを抑制して安全にブレーキを解除できる。
このようにすれば、平均電流を変えることで制動力の強弱を調整できる。
このようにすれば、ブレーキ解除スイッチに多段階スイッチを用いなくても、ブレーキを徐々に解除できる。よって、予期せぬ車体の動きを抑制して安全にブレーキを解除できる。
このようにすれば、斜面の途中で車体が停止している場合に、走行方向における車体の傾き度合いが大きいほど、自重で車体が斜面を下ろうとするのを強い制動力で抑制できる。よって、予期せぬ車体の動きを抑制して安全にブレーキを解除できる。
このようにすれば、車体の前部と後部の両方にブレーキ解除スイッチが配置されているので、斜面の途中で車体が停止している場合に斜面の上側のブレーキ解除スイッチを操作することによって安全にブレーキを解除できる。
この場合、各スイッチのオンおよびオフの状態が目視で確認できることが好ましい。このようにすれば、ブレーキ解除の各段階の操作を異なるスイッチで行うので、例えば複数の者が協働して走行装置を手押しで移動させる場合でも、それぞれの者は各スイッチの状態を見てブレーキ解除の操作の段階を確認ながらブレーキ解除および手押しによる走行装置の移動作業を行える。
例えば、坂道で下り方向から上り方向へユーザーが車体を押して移動させる際、ブレーキ解除ボタンを押して全ての車輪のブレーキが解除されると、自重で車体が下り方向へ移動しようとするので、下り方向で車体を押す人を轢いてしまう虞がある。
上記構成によれば、例えば、上り方向に対応したブレーキ解除スイッチが操作されるとブレーキ制御回路は、下り方向への車体の移動を阻止するが上り方向へは車体が移動可能なように制御する。このようにすれば、ユーザーは例えば傾斜面で車体が停止した状態にあって下り方向から車体を押して上り方向へ移動させる場合でも、車体を安全かつスムーズに移動させることが可能であって、一人で車体を動かすことも危険ではない。
一方、ユーザーが車体を押すのではなく引っ張って移動させる態様も考えられる。車体を引っ張って移動させることを前提にした場合、ブレーキ制御回路は操作されたブレーキ解除スイッチの方向へ車体が進むことのみ許容するように制御すればよい。
車体を押して移動させることを前提とするか、引っ張って移動させることを前提とするかは、設計者が決める事項である。
このようにすれば、前進、後退のみならず旋回についてもユーザーは例えば傾斜面で車体が停止した状態にあっても、車体を安全かつスムーズに旋回させることが可能であって、一人で旋回させることも危険ではない。
(xii)前記ブレーキ制御回路は、前記モーターを用いた制動によって前記車輪の回転を阻止してもよい。
このようにすれば、ユーザーは取っ手部を持って力をかけ、車体を容易に移動させることができる。また、取っ手部の近傍にブレーキ解除ボタンが配置されるので、一人でもブレーキ解除ボタンを操作しながら取っ手部を持ち、容易かつ安全に車体を移動させることができる。
このようにすれば、ユーザーはバンパーを持って引っ張り、車体を容易に移動させることができる。また、バンパーの車体側にブレーキ解除ボタンが配置されるので、一人でもブレーキ解除ボタンを操作しながらバンパーを持ち、容易かつ安全に車体を移動させることができる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
100:システムコントローラ、 100b:ブレーキ制御回路、 100t:タイマー回路、 101L,101R:速度センサ、 102L,102R:動作切換回路、 103L,103R:電磁ブレーキ、 109:傾斜センサ、 120,120F,120T,120L,120R:ブレーキ解除スイッチ、 120a:電磁ブレーキ解除スイッチ、 120b:ショートブレーキ解除スイッチ、 121L:モーター電源リレー、 122L:モータードライバ、 123L:ブレーキ電源リレー、 124L:ブレーキドライバ、 130F,130T:バンパー、 131F,131T,131L:取っ手部
Claims (14)
- 車体と、
ショートブレーキまたは発電ブレーキとして車体の制動を行い得る走行駆動用のモーターと、
前記モーターと別に前記車体を制動する電磁ブレーキと、
前記モーターにより走行駆動するか制動を行うかを切換える動作切換回路と、
前記モーターおよび前記電磁ブレーキのブレーキ解除に係る操作を受付けるブレーキ解除スイッチと、
前記ブレーキ解除スイッチが操作されている間その操作に応答して前記モーターおよび前記電磁ブレーキを制御するブレーキ制御回路とを備えるモーター駆動式の走行装置。 - 前記ブレーキ解除スイッチは操作量に応じて少なくとも2段階の切換を行う多段スイッチであり、
前記ブレーキ制御回路は、前記ブレーキ解除スイッチへの第1段階の操作に応答して前記電磁ブレーキのブレーキを解除すると共に前記モーターによる制動を実施し、最終段階の操作に応答して前記モーターによる制動を解除する請求項1に記載の走行装置。 - 前記ブレーキ解除スイッチは、少なくとも3段階の切換を行うものであり、
前記ブレーキ制御回路は、前記ブレーキ解除スイッチの操作量が第1段階から段階を増すにつれて前記モーターによる制動力が弱まるように制御する請求項1または2に記載の走行装置。 - 前記ブレーキ制御回路は、前記モーターに流れる電流の大きさの時間平均を制御することによって制動力を制御する請求項3に記載の走行装置。
- 前記ブレーキ制御回路は前記ブレーキ解除スイッチの操作に応答して前記電磁ブレーキのブレーキを解除すると共に前記モーターによる制動を実施し、時間の経過と共に前記モーターによる制動力を段階的に弱めるように制御する請求項1に記載の走行装置。
- 前記車体の走行方向における傾きの度合いを検出する傾斜センサをさらに備え、
前記ブレーキ制御回路は、前記傾斜センサが検出した車体の傾き度合いが大きいほど前記モーターによる制動力を強くするように制御する請求項1〜5の何れか一つに記載の走行装置。 - 前記ブレーキ解除スイッチは、少なくとも車体の前部と後部とに配置された自己復帰型のスイッチであり、
前記ブレーキ制御回路は、何れかのブレーキ解除スイッチが受け付けた操作に応答して前記モーターおよび前記電磁ブレーキを制御する請求項1〜6の何れか一つに記載の走行装置。 - 前記ブレーキ解除スイッチは、少なくとも第1スイッチと第2スイッチを含む複数のスイッチからなり、
前記ブレーキ制御回路は、前記第1スイッチが受け付けた操作に応答して前記電磁ブレーキのブレーキを解除すると共に前記モーターによる制動を実施し、その後、前記第2スイッチが受け付けた操作に応答して前記モーターによる制動を解除する請求項1に記載の走行装置。 - 前記ブレーキ解除スイッチは、車体が移動可能な複数の方向に対応して異なる箇所にそれぞれ配置され、
前記ブレーキ制御回路は、何れのブレーキ解除スイッチが操作されたかに応じて、ブレーキを解除して車体を移動可能とする方向を限定する請求項1〜6の何れか一つに記載の走行装置。 - 前記車体を走行させる車輪およびその車輪の回転速度および回転方向を検出する速度センサをさらに備え、
前記ブレーキ解除スイッチは、前記車体の少なくとも前方および後方にそれぞれ配置され、
前記ブレーキ制御回路は、前記モーターの駆動が停止しかつ何れかのブレーキ解除スイッチが操作されてブレーキが解除され車輪が回転しようとするとき、前方のブレーキ解除スイッチが操作されている場合は車体を前進させる方向の車輪の回転を阻止し車体の後退のみ許容し、後方のブレーキ解除スイッチが操作されている場合は車体を前進させる方向の車輪の回転を阻止し車体の後退のみ許容するように制御するか、若しくは、前方のブレーキ解除スイッチが操作されている場合は車体を後退させる方向の車輪の回転を阻止し車体の前進のみ許容し、後方のブレーキ解除スイッチが操作されている場合は車体を後退させる方向の車輪の回転を阻止し車体の前進のみ許容するように制御する請求項9に記載の走行装置。 - 前記ブレーキ解除スイッチは、さらに前記車体の左側方および右側方にそれぞれ配置され、
前記ブレーキ制御回路は、前記モーターの駆動が停止しかつ何れかのブレーキ解除スイッチが操作されてブレーキが解除され車輪が回転しようとするとき、車体右側方のブレーキ解除スイッチが操作されている場合は車体右側を押して車体が旋回する方向または車体右側を引っ張って車体が旋回する方向の何れか一方向の車輪の回転のみを許容して逆方向の車輪の回転を阻止し、車体左側方のブレーキ解除スイッチが操作されている場合は車体左側を押して車体が旋回する方向または車体左側を引っ張って車体が旋回する方向の何れか一方向の車輪の回転のみを許容して逆方向の車輪の回転を阻止するように制御する請求項10に記載の走行装置。 - 前記ブレーキ制御回路は、前記モーターを用いた制動によって前記車輪の回転を阻止する請求項9〜11の何れか一つに記載の走行装置。
- 衝突から前記車体を保護するバンパーと、
ユーザーが押すかまたは引いて前記車体を移動させるために前記車体または前記バンパーに配置される取っ手部とをさらに備え、
前記ブレーキ解除スイッチは、前記取っ手部またはその近傍に配置される請求項1〜112の何れか一つに記載の走行装置。 - 衝突から前記車体を保護すべく車体の外側に配置されるバンパーをさらに備え、
前記ブレーキ解除スイッチは、前記バンパーの車体側に配置される請求項1〜12の何れか一つに記載の走行装置。
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