以下に、開示するマイクロ波プラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
(第1の実施形態)
第1の実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置は、1つの実施形態において、処理空間を画成する処理容器と、処理空間に導入される処理ガスをプラズマ化するためのマイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、マイクロ波を複数の導波管へ分配する分配器と、処理空間を密閉するように処理容器に設けられ、分配器によって複数の導波管へ分配されるマイクロ波を処理空間へ放射するアンテナと、複数の導波管の各々の電圧をモニタするモニタ部と、モニタ部によってモニタされた電圧のモニタ値と予め定められた電圧の基準値との差に対応する分配器の分配比の制御値を、差と、該差に対応する分配器の分配比の制御値とを対応付けて記憶する記憶部から取得し、取得した制御値に基づいて分配器の分配比を制御する制御部とを備えた。
また、第1の実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置は、1つの実施形態において、複数の導波管のうち少なくともいずれか一つの特定の導波管に設けられ、設定されるシフト量だけ特定の導波管の電圧の位相をシフトする位相シフタをさらに備え、制御部は、分配器の分配比の制御とは別に、モニタ部によってモニタされた電圧のモニタ値を用いて、特定の導波管の電圧の位相と、複数の導波管のうち特定の導波管以外の他の導波管の電圧の位相とが逆位相となるように、位相シフタのシフト量を制御する。
また、第1の実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置は、1つの実施形態において、マイクロ波発生器によって発生されるマイクロ波を分配器へ導く導波管と、導波管に設けられ、マイクロ波発生器側のインピーダンスと、アンテナ側のインピーダンスとを整合するチューナとをさらに備えた。
また、第1の実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置は、1つの実施形態において、処理容器とアンテナとの組みを複数備え、分配器は、処理容器とアンテナとの複数の組みの各々に対応する複数の導波管へマイクロ波を分配し、アンテナは、分配器によって複数の導波管の各々へ分配されるマイクロ波を、当該アンテナに組み合わされた処理容器の処理空間へ放射し、制御部は、記憶部から取得した制御値に基づいて分配器の分配比を制御する。
また、第1の実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置は、1つの実施形態において、分配器を複数備え、複数の分配器は、マイクロ波発生器によって発生されるマイクロ波を複数の導波管へ段階的に順次分配し、記憶部は、分配器ごとに、差と、該差に対応する分配器の分配比の制御値とを対応づけて記憶し、制御部は、記憶部から取得した制御値に基づいて複数の分配器の各々の分配比を個別に制御する。
また、第1の実施形態におけるマイクロ波供給方法は、1つの実施形態において、処理空間を画成する処理容器と、処理空間に導入される処理ガスをプラズマ化するためのマイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、マイクロ波を複数の導波管へ分配する分配器と、処理空間を密閉するように処理容器に設けられ、分配器によって複数の導波管へ分配されるマイクロ波を処理空間へ放射するアンテナとを備えたマイクロ波プラズマ処理装置を用いたマイクロ波供給方法であって、複数の導波管の各々の電圧をモニタし、モニタされた電圧のモニタ値と予め定められた電圧の基準値との差に対応する分配器の分配比の制御値を、差と、該差に対応する分配器の分配比の制御値とを対応付けて記憶する記憶部から取得し、取得した制御値に基づいて分配器の分配比を制御する。
(第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置)
図1は、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の外観構成の一例を示す図である。図2は、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の内部構成の一例を示す図である。なお、図2では、説明の便宜上、マイクロ波プラズマ処理装置の一部が省略されている。
図1及び図2に示すように、マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器100、マイクロ波発生器400、分配器500、スロットアンテナ200及び誘電体窓300を有する。また、マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器100内に、基板Wが載置される支持台101と、図示しないガス供給源から開口部102Aを介して処理ガスを処理容器100内に供給するガスシャワー102を有する。
処理容器100は、支持台101に載置される基板Wに対してプラズマ処理を行うための処理空間Sを画成する。また、処理容器100には、真空ポンプなどの排気系と接続される開口103が形成される。
マイクロ波発生器400は、処理空間Sに供給される処理ガスをプラズマ化するためのマイクロ波を発生する。具体的には、マイクロ波発生器400は、マグネトロン402を有し、陰極−陽極間に電圧を印加した状態でマグネトロン402を発振させることにより、マイクロ波を発生する。マイクロ波発生器400には、マイクロ波発生器400と分配器500とを結ぶ導波管602が接続されている。導波管602は、分配器500に接続され、マイクロ波発生器400によって発生されるマイクロ波を分配器500に導く。
導波管602には、アイソレータ604、方向性結合器606及びチューナ608が設けられる。アイソレータ604は、スロットアンテナ200側からのマイクロ波の反射波をサーキュレータにより分離し、分離した反射波をダミー負荷により熱に変換する。方向性結合器606は、マイクロ波の進行波及び反射波の一部を分岐して検出器610に出力する。検出器610は、方向性結合器606から入力されるマイクロ波をアナログ信号に変換し、アナログ信号をマイクロ波発生器400へ出力する。マイクロ波発生器400へ出力されるアナログ信号は、マイクロ波発生器400のマグネトロン402の発振制御に用いられる。
チューナ608は、マイクロ波発生器400側のインピーダンスと、スロットアンテナ200側のインピーダンスとを整合する。マイクロ波発生器400によって発生されるマイクロ波は、導波管602内を伝搬し、アイソレータ604、方向性結合器606及びチューナ608を介して、分配器500に導波される。
分配器500は、導波管602から入力されるマイクロ波を複数の導波管へ分配する。本実施形態では、分配器500は、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。例えば、分配器500は、1つの入力ポートと2つの出力ポートを含むT字型導波管を有し、T字型導波管内に設けられた可動短絡板の位置を移動させることによって、導波管602から入力ポートに入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。また、分配器500によるマイクロ波の分配に用いられる分配比は、可変である。分配器500の分配比の制御値は、例えば、後述する制御部708によって入力される。すなわち、分配器500は、制御部708によって入力される分配比の制御値を用いて、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。
スロットアンテナ200は、処理空間Sを密閉するように処理容器100に設けられる。スロットアンテナ200の処理容器100側の面に誘電体窓300が設けられる。スロットアンテナ200は、マイクロ波を伝送するための2つの独立した導波路である内側導波路及び外側導波路を内部に有する。内側導波路及び外側導波路は、2つの導波管612,613にそれぞれ接続されている。スロットアンテナ200は、分配器500によって2つの導波管612,613へ分配されるマイクロ波を内側導波路及び外側導波路を介して誘電体窓300へ伝送し、伝送したマイクロ波を誘電体窓300を介して処理空間Sへ放射する。スロットアンテナ200から処理空間Sへ放射されるマイクロ波は、処理空間Sに供給される処理ガスを電離し、処理ガスのプラズマを励起させる。なお、スロットアンテナ200の全体構成の一例については、後述する。
また、マイクロ波プラズマ処理装置10は、図1に示すように、記憶部702、モニタ部704、位相シフタ706及び制御部708を有する。
記憶部702は、分配器500によるマイクロ波の分配対象である2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値と予め定められた該電圧の基準値との差であるモニタ差と、モニタ差に対応する分配器500の分配比の制御値とを対応付けて記憶する。図3は、第1実施形態における記憶部によって記憶される情報の例を示す図である。例えば、図3に示すように、記憶部702は、モニタ差と、制御値とを対応付けて記憶する。モニタ差は、分配器500によるマイクロ波の分配対象である2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値と予め定められた該電圧の基準値との差であるモニタ差を示す。制御値は、モニタ差に対応する分配器500の分配比の制御値を示す。例を挙げると、記憶部702は、モニタ差「D1」と、制御値「C1」とを対応付けて記憶する。また、モニタ差「D2」と、制御値「C2」とを対応付けて記憶する。
モニタ部704は、2つの導波管612,613にそれぞれ設けられた電圧センサ622,623を用いて、2つの導波管612,613の各々の電圧をモニタし、導波管内の定在波の検出結果であるモニタ値を制御部708に出力する。ここで、モニタ部704によってモニタされるモニタ値としては、例えば、電圧のPeak to Peak値であるVppや、電圧の中間値であるVdc等が挙げられる。Vppは、導波管内で発生する定在波の大きさを表し、Vdcは、導波管内で発生する定在波のオフセット量を表す。
位相シフタ706は、2つの導波管612,613のうち一方の導波管613に設けられ、設定されるシフト量だけ導波管613の電圧の位相をシフトする。また、位相シフタ706に設定されるシフト量は、制御部708によって制御される。
制御部708は、モニタ部704によってモニタされた2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値をモニタ部704から取得する。制御部708は、2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値と基準値との差であるモニタ差を算出する。基準値は、図示しない入力インタフェース等からレシピ条件として入力される。ここで、制御部708は、2つの導波管612,613のうちいずれか一方の導波管の電圧のモニタ値と1つの基準値との差をモニタ差として算出しても良い。また、制御部708は、2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値の平均値を求め、求めた平均値と1つの基準値との差をモニタ差として算出しても良い。また、制御部708は、2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値の比を求め、求めた比と1つの基準値との差をモニタ差として算出しても良い。そして、制御部708は、算出したモニタ差に対応する分配器500の分配比の制御値を、記憶部702から取得し、取得した制御値に基づいて分配器500の分配比を制御する。例を挙げると、制御部708は、モニタ差が「D1」である場合に、制御値「C1」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500に出力する。
また、制御部708は、2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値を用いて、導波管612の電圧の位相と、導波管613の電圧の位相とが逆位相となるように、位相シフタ706のシフト量を制御する。すなわち、制御部708は、導波管612の電圧の位相と、導波管613の電圧の位相とを適切に設定することで、2つの導波管612,613からスロットアンテナ200内の内側導波路及び外側導波路を介して誘電体窓300の中央側及び周縁側へ伝送されるマイクロ波どうしを逆位相で相殺させる。
ここで、図1及び図2に示したスロットアンテナ200の全体構成の一例について説明する。図4〜図6は、第1の実施形態におけるスロットアンテナの全体像の一例を示す外観図である。図4〜図6に示す例では、記載の便宜上、誘電体窓300については図示していない。図4〜図6に示すように、スロットアンテナ200は、同軸導波管201と、冷却プレート202と、スロットアンテナ板203と、処理ガスを処理容器100内に供給するガス供給孔204と、同軸導波管201を冷却するための冷却管205及び冷却管206と、スロットアンテナ200に処理ガスが供給されるガス流入孔207とを有する。
スロットアンテナ板203は、例えば、薄板状であって、円板状である。スロットアンテナ板203には、複数のマイクロ波透過スロット203c及び複数のマイクロ波透過スロット203bが形成される。スロットアンテナ板203の板厚方向の両面は、それぞれ平らであることが好ましい。スロットアンテナ板203は、板厚方向に貫通し、スロットアンテナ板203の内周側に設けられる複数のマイクロ波透過スロット203cと、外周側に設けられる複数のマイクロ波透過スロット203bとを有する。複数あるマイクロ波透過スロット203cの各々は、互いに交差又は直交する方向に延びる長孔である2つのスロット203f,203gを含んでいる。複数あるマイクロ波透過スロット203bの各々は、互いに交差又は直交する方向に延びる長孔である2つのスロット203d,203eを含んでいる。複数あるマイクロ波透過スロット203cは、それぞれ、内周側の周方向に所定の間隔に配置され、複数あるマイクロ波透過スロット203bは、外周側の周方向に所定の間隔に配置される。
言い換えれば、複数のマイクロ波透過スロット203cは、2つのスロット203f,203gが、スロットアンテナ板203の円周方向に沿って複数配置されて形成された内側スロット群203c−1となる。また、複数のマイクロ波透過スロット203bは、内側スロット群203c−1よりもスロットアンテナ板203の径方向の外側において、2つのスロット203d,203eが、スロットアンテナ板203の円周方向に沿って複数配置されて形成された外側スロット群203b−1となる。
内側スロット群203c−1は、後述する内側導波路によって誘電体窓300の中心側に導かれるマイクロ波を透過させ、外側スロット群203b−1は、後述する外側導波路によって誘電体窓300の周縁側に導かれるマイクロ波を透過させる。
図7は、第1の実施形態におけるスロットアンテナの詳細な構成の一例を示す断面図である。図8及び図9は、図7に示すスロットアンテナの断面図の一部を拡大した断面図である。図8及び図9は、それぞれ、図7における破線及び実線で囲んだ部分に相当する。図8及び図9に示すように、スロットアンテナ200は、冷却プレート202と、中間金属体208と、スロットアンテナ板203と、同軸導波管201と、モード変換器215,216とを有する。
図7〜図9に示すように、冷却プレート202は、同軸導波管201の後述する中間導体201bの外形面との間に間隔を空けて設けられる。冷却プレート202は、冷媒を流通させるための流通孔202cを有する。冷却プレート202は、中間金属体208や誘電体窓300の冷却に用いられる。
中間金属体208は、冷却プレート202の処理容器100側に間隔を空けて設けられる。中間金属体208は、中間金属体208の処理容器100側の面を中心側の部分と外周側の部分とに分けるドーナッツ状の凸部208fを有する。また、中間金属体208の厚さは、好ましくは一定である。より詳細には、中間金属体208の厚さは、凸部208fが設けられた箇所を除き、同一であることが好ましい。
スロットアンテナ板203は、中間金属体208の処理容器100側に凸部208fと接触しながら設けられる。スロットアンテナ板203は、スロットアンテナ板203の処理容器100側の面に、マイクロ波を放射するためのスロットとして、凸部208fと接触する部分より中心側の部分に設けられるマイクロ波透過スロット203cと、凸部208fと接触する部分より外周側の部分に設けられるマイクロ波透過スロット203bとを有する。
同軸導波管201は、冷却プレート202と中間金属体208とに連続して貫通する貫通孔に設けられる。図7に示す例では、同軸導波管201の処理容器100側の端部が貫通孔内に位置する。貫通孔は、中間金属体208において、凸部208fにより形成される中心側の部分に設けられる。
また、同軸導波管201は、内側導体201aと、中間導体201bと、外側導体201cとを有する。内側導体201aと中間導体201bと外側導体201cとは、それぞれ、円筒状であり、好ましくは、径方向の中心が一致するように設けられる。内側導体201aと中間導体201bとは、内側導体201aの外形面と中間導体201bの内径面との間に間隔を空けて設けられる。また、中間導体201bと外側導体201cとは、中間導体201bの外形面と外側導体201cの内径面との間に間隔を空けて設けられる。
モード変換器215は、分配器500によるマイクロ波の分配対象となる2つの導波管のうち一方の導波管612に接続されるとともに、中間導体201bの中空部分に設けられる内側導体201aと中間導体201bとの間の空間に接続される。モード変換器215は、導波管612から伝送されるマイクロ波のモードを変換し、モード変換後のマイクロ波を内側導体201aと中間導体201bとの間の空間に供給する。
モード変換器216は、分配器500によるマイクロ波の分配対象となる2つの導波管のうち他方の導波管613に接続されるとともに、外側導体201cの中空部分に設けられる中間導体201bと外側導体201cとの間の空間に接続される。モード変換器216は、導波管613から伝送されるマイクロ波のモードを変換し、モード変換後のマイクロ波を中間導体201bと外側導体201cとの間の空間に供給する。
ここで、同軸導波管201では、内側導体201aの中空部分は、ガス供給孔204に流入された処理ガスをガス流入孔207に供給する供給路となる。また、同軸導波管201では、中間導体201bの中空部分に設けられる内側導体201aと中間導体201bとの間の空間と、外側導体201cの中空部分に設けられる中間導体201bと外側導体201cとの間の空間とが、それぞれ、導波管612,613からのマイクロ波を伝送する。すなわち、内側導体201aの外形面と中間導体201bの内径面とで形成される中空部分、及び、中間導体201bの外形面と外側導体201cの内径面とで形成される中空部分とが、それぞれ、マイクロ波を伝送する。
同軸導波管201の端部には、第1の部材213及び第2の部材214が設けられる。 例えば、第1の部材213は、同軸導波管201の内側導体201aの処理容器100側の端部に設けられる。貫通孔を有する第1の部材213は、スロットアンテナ板203と中間金属体208との間の空間のうち凸部208fより中心側にある中心側空間へと突出する第1の段差部213aを有する。第1の段差部213aにおける径の長さは、中間導体201bの内径以下となる。また、図9に示す例では、第1の部材213は、ガス供給孔204と固定される。
また、例えば、第2の部材214は、同軸導波管201の中間導体201bの処理容器100側の端部に設けられる。貫通孔を有する第2の部材214は、中間金属体208と冷却プレート202との間の空間へと突出する第3の段差部214aを有する。第3の段差部214aにおける径の長さは、外側導体201cの内径以下となる。また、図9に示す例では、中間金属体208に固定される。
図9に示すように、第1の部材213及び第2の部材214は、テーパ状ではなく、段差を有する形状となっている。また、第1の部材213は、中間金属体208と間隔を空けて設けられ、第2の部材214は、冷却プレート202と間隔を空けて設けられる。
なお、貫通孔と、同軸導波管201と、第1の部材213及び第2の部材214との関係の一例について補足する。図9に示す例では、同軸導波管201の内側導体201aは、冷却プレート202に設けられた貫通孔を貫通する。また、中間導体201bは、端部が冷却プレート202の貫通孔の内部にあり、中間導体201bの端部に第2の部材214が設けられる。また、同軸導波管201の外側導体201cの端部は、冷却プレート202に固定される。
また、図9に示す例では、同軸導波管201の内側導体201aは、端部が中間金属体208の貫通孔の内部にあり、内側導体201aの端部に第1の部材213が設けられる。また、同軸導波管201の中間導体201bと冷却プレート202の貫通孔の側面202bとの間には間隔があり、同軸導波管201の内側導体201aと中間金属体208の貫通孔の側面208cとの間には間隔があり、それぞれマイクロ波を伝送する導波路の一部を形成している。
図10は、第1の実施形態における中間金属体の一例を示す誘電体窓側から見た外観図である。図11は、第1の実施形態における中間金属体の一例を示す冷却プレート側から見た外観図である。
ここで、図10及び図11を用いて、中間金属体208について更に説明する。図10に示すように、中間金属体208は、ドーナッツ状の凸部208fを有する。この結果、中間金属体208は、ドーナッツ状の凸部208fにおいてスロットアンテナ板203と接触することになる。言い換えると、中間金属体208のドーナッツ状の凸部208fが、スロットアンテナ板203の上面に設けられる。
ここで、中間金属体208は、中間金属体208の中心側からドーナッツ状の凸部208fまでの範囲において、中間金属体208の下面208dとスロットアンテナ板203の上面203aとの間に中心側空間が形成される。中心側空間は、図7に示す例では、後述する内側遅波板209が設けられる空間及び空の空間211とに相当する。また、中間金属体208は、中間金属体208の外周から中間金属体208のドーナッツ状の凸部208fまでの範囲において、中間金属体208の下面208eとスロットアンテナ板203の上面203aとの間に外周側空間が形成される。外周側空間は、図7に示す例では、後述する外側遅波板210bが設けられる空間に対応する。
また、図11に示すように、中間金属体208は、冷却プレート202と1つ又は複数の凸部208gを有する。ここで、中間金属体208は、1つ又は複数の凸部208gにおいて、冷却プレート202と接触している。言い換えると、冷却プレート202は、中間金属体208の1つ又は複数の凸部208g上に設けられる。すなわち、中間金属体208と冷却プレート202とは、1つ又は複数の凸部208gを除いて、中間金属体208の外形面と冷却プレート202との間に間隔を空けて設けられる。言い換えると、1つ又は複数の凸部208gを除いて、冷却プレートの下面202aと中間金属体208の上面208a及び側面208bとの間に間隔を空けて設けられる。
ここで、冷却プレート202は、中間金属体208と冷却プレート202との間の空間に突出する凸部202dを有する。凸部202dは、中間金属体208とは接触していない。
また、中間金属体208と冷却プレート202とは、中間金属体208に設けられる1つ又は複数の1つ又は複数の凸部208gにおいて接触している。言い換えると、中間金属体208と冷却プレート202とは、中間金属体208の1つ又は複数の凸部208gを除いて間隔を空けて設けられる。なお、中間金属体208は、冷却プレート202と中間金属体208とが接触している1つ又は複数の凸部208gを介して、冷却プレート202の流通孔202cと連結している流通孔が設けられることで、中間金属体208の冷却能力を向上しても良い。また、1つ又は複数の凸部208gは、外側遅波板210が設けられていない箇所に設けられることが好ましい。
また、スロットアンテナ200は、中間金属体208の外形面上の一部分に、遅波板が設けられる。具体的には、スロットアンテナ200は、内側遅波板209と外側遅波板210とを有する。
図12は、第1の実施形態におけるスロットアンテナに設けられる処理ガスの供給路及びマイクロ波の導波路を示す図である。図12の矢印301は、スロットアンテナ200に設けられる処理ガスの供給路を示し、矢印302は、スロットアンテナ板203の内周側に設けられた内側スロット群203c−1へと供給されるマイクロ波の導波路を示し、矢印303は、スロットアンテナ板203の外周側に設けられた外側スロット群203b−1へと供給されるマイクロ波の導波路を示す。
図12の矢印301に示すように、スロットアンテナ200では、図示しない処理ガス供給源から処理ガスがガス流入孔207に供給されると、冷却プレート202及び中間金属体208を貫通している内側導体201aの中空部分を通って、ガス供給孔204から処理ガスが処理容器100内に供給される。
また、図12の矢印302に示すように、スロットアンテナ200は、内側導体201aと中間導体201bとの間の空間を介して、スロットアンテナ板203と中間金属体208との間の空間のうち凸部208fより中心側にある中心側空間においてマイクロ波を伝送することでマイクロ波透過スロット203c(内側スロット群203c−1)にマイクロ波を伝送する導波路である内側導波路を有する。また、内側導波路には、マイクロ波透過スロット203c(内側スロット群203c−1)の上部に内側遅波板209が設けられる。
すなわち、内側導波路では、モード変換器215を介して導波管612から供給されるマイクロ波は、内側導体201aの外形面と中間導体201bの内径面とで形成される中空部分と、内側導体201aの外形面と中間金属体208に設けられる貫通孔の側面208cとで形成される中空部分と、第1の部材213と中間金属体208との間の空間と、中間金属体208の下面とスロットアンテナ板203の上面とで形成される空の空間212と、内側遅波板209とを順に通った上で、マイクロ波透過スロット203c(内側スロット群203c−1)から誘電体窓300の中心側へマイクロ波が放出される。
また、図12の矢印303に示すように、スロットアンテナ200は、中間導体201bと外側導体201cとの間の空間と、中間金属体208と冷却プレート202との間の空間とを順に介して、スロットアンテナ板203と中間金属体208との間の空間のうち凸部208fより外周側にある外周側空間においてマイクロ波を伝送することでマイクロ波透過スロット203b(外側スロット群203b−1)にマイクロ波を伝送する導波路である外側導波路を有する。外側導波路には、マイクロ波透過スロット203b(外側スロット群203b−1)の上部に外側遅波板210が設けられる。また、内側導波路と外側導波路とは、互いに連通しない。
すなわち、外側導波路では、モード変換器216を介して導波管613から供給されるマイクロ波は、中間導体201bの外形面と外側導体201cの内径面とで形成される中空部分と、中間導体201bの外形面と冷却プレート202の側面202bとで形成される中空部分と、第2の部材214と冷却プレート202との間の空間と、中間金属体208の上面208aと冷却プレート202の下面202aとで形成される空の空間211と、外側遅波板210aと、外側遅波板210bとを順に通った上で、マイクロ波透過スロット203b(外側スロット群203b−1)から誘電体窓300の周縁側へマイクロ波が放出される。
このように、内側導波路と外側導波路とを互いに連通しない構成を採用することによって、内側導波路と外側導波路との間におけるマイクロ波の干渉を回避することが可能となる。
なお、本第1の実施形態では、内側導波路と外側導波路とは、互いに連通しない例を示したが、これに限らず、内側導波路と外側導波路とは、マイクロ波が透過しない程度の通孔を介して互いに連通してもよい。
図13は、第1の実施形態における中間金属体と内側遅波板及び外側遅波板との関係を示す誘電体窓側から見た外観図である。図14は、第1の実施形態における中間金属体と内側遅波板及び外側遅波板との関係を示す冷却プレートから見た外観図である。
図13及び図14に示すように、内側遅波板209は、中心側空間のうち、マイクロ波透過スロット203cの上部を含む一部又は全ての部分に設けられる。また、内側遅波板209は、好ましくは、中心側空間において内側遅波板209と内側遅波板209が設けられていない空の空間211との界面において、内側遅波板209が傾斜もしくは段差を有する。
すなわち、図7〜図14に示すように、内側遅波板209は、中間金属体208の下面208dとスロットアンテナ板203の上面203aとの間に設けられた空間を埋めるように、中間金属体208の凸部208fから内周側に所定の長さに渡って設けられる。この結果、中間金属体208の下面208dとスロットアンテナ板203の上面203aとの間に設けられた空間のうち、中間金属体208の凸部208fから内周側にある部分において、中間金属体208の凸部208fから所定の長さにある範囲については内側遅波板209が設けられており、中間金属体208の貫通孔から内側遅波板209が設けられる箇所までは空の空間211となる。また、内側遅波板209は、空間211との界面において、好ましくは、斜めの形状を有する。
図13及び図14に示すように、外側遅波板210は、外周側空間と、中間金属体208と冷却プレート202との間の空間の一部とに連続して設けられる。例えば、外側遅波板210は、外周側空間に設けられる第1の外側遅波板210bと、第1の外側遅波板210bの端部から連続するように設けられて中間金属体208と冷却プレート202との間の空間の一部に設けられる第2の外側遅波板210aとを有する。
すなわち、図7〜図14に示すように、外側遅波板210bは、中間金属体208の下面208eとスロットアンテナ板203の上面203aとの間に設けられた空間を埋めるように設けられる。また、外側遅波板210aは、冷却プレート202の下面202aと中間金属体208の上面208a及び側面208bとの間に設けられた空間を埋めるように、外側遅波板210bの端部から所定の長さに渡って設けられる。
また、外側遅波板210aは、中間金属体208の上面208aのうち、中間金属体208の外周部から所定の長さの範囲まで設けられる。この結果、中間金属体208の上面208aと冷却プレート202の下面202aとの間に設けられた空間のうち、中間金属体208の貫通孔から外側遅波板210aが設けられる箇所までは空の空間212となる。冷却プレート202と中間金属体208とが接触している1つ又は複数の1つ又は複数の凸部208gは、中間金属体208の貫通孔から外側遅波板210aが設けられるまでの空の空間212に設けられる。また、外側遅波板210は、中間金属体208と冷却プレート202との間の空間において、外側遅波板210と外側遅波板210が設けられていない部分との界面において、中心側に向かって突出する第2の段差部210abを有する。好ましくは、内側導波路において外側遅波板210が設けられる長さが、外側導波路において内側遅波板209が設けられる長さより長くなる。
外側導波路と、中間金属体208に設けられる1つ又は複数の1つ又は複数の凸部208gとの関係について説明する。上述したように、中間金属体208と冷却プレート202とは、中間金属体208に設けられる1つ又は複数の1つ又は複数の凸部208gにおいて接触している。ここで、複数の1つ又は複数の凸部208gは、空の空間211に設けられる。言い換えると、複数の1つ又は複数の凸部208gは、外側遅波板210に囲まれていない。
次に、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10を用いたプラズマ供給方法について説明する。図15は、第1の実施形態に係るプラズマ供給方法の流れの例を示すフローチャートである。
図15に示すように、モニタ部704は、2つの導波管612,613にそれぞれ設けられた電圧センサ622,623を用いて、2つの導波管612,613の各々の電圧をモニタする(ステップS101)。モニタ部704によってモニタされる電圧のモニタ値としては、例えば、電圧のPeak to Peak値であるVppや、電圧の中間値であるVdc等が挙げられる。Vppを例に挙げると、モニタ部704は、Vpp値をモニタ値として検出する。
制御部708は、モニタ部704によるモニタによって得られるモニタ値を取得する(ステップS102)。そして、制御部708は、取得したモニタ値と基準値との差であるモニタ差を算出する(ステップS103)。そして、制御部708は、算出したモニタ差に対応する分配比の制御値を記憶部702から取得する(ステップS104)。そして、制御部708は、記憶部702から取得した分配比の制御値に基づいて、分配器500の分配比制御を実行させる(ステップS105)。例を挙げると、制御部708は、Vpp値をモニタ部704から取得し、取得したVpp値と基準値との差であるモニタ差「D1」を算出し、算出したモニタ差に対応する制御値「C1」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500に出力する。このとき、分配器500は、得られた制御値を用いて、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。
また、制御部708は、取得したモニタ値を用いて、導波管612の電圧の位相と、導波管613の電圧の位相とが適切な位相となるように、位相シフタ706のシフト量を制御する(ステップS106)。適切な位相とは,誘電体窓300の中央側及び周縁側へ伝送されるマイクロ波どうしを相殺させるために逆位相とすることである。
制御部708は、処理を終了する場合には(ステップS107肯定)、プラズマ供給処理の実行を終了する。一方、処理を終了しない場合には(ステップS107否定)、制御部708は、再度、2つの導波管612,613の各々の電圧をモニタする(ステップS108)。そして、モニタ値を取得した制御部708は、モニタ値に変動があるか否かを判定する(ステップS109)。制御部708は、モニタ値に変動がある場合には(ステップS109肯定)、ステップS103以降の処理を実行することで動的に分配比の最適化を実行する。一方、制御部708は、モニタ値に変動がない場合には(ステップS109否定)、処理をステップS107に戻す。
以上、第1の実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置10は、スロットアンテナ200の内側導波路及び外側導波路に接続される2つの導波管へマイクロ波を分配する分配器を有し、2つの導波管の電圧のモニタ値に対応する分配器の制御値を記憶部から取得し、取得した制御値を用いて分配器の分配比を制御する。このため、マイクロ波プラズマ処理装置10は、スロットアンテナ200の内側導波路及び外側導波路に最適な分配比でマイクロ波を分配しつつ、スロットアンテナ200の内側スロット群及び外側スロット群からマイクロ波を処理空間Sに個別に放射することができる。その結果、マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器内の処理空間Sでマイクロ波により励起されるプラズマの分布の均一性を保つことが可能である。
また、第1の実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置10は、スロットアンテナ200の内側導波路及び外側導波路に接続される2つの導波管の電圧のモニタ値を用いて、2つの導波管の電圧の位相が互いに適切な位相となるように、一方の導波管の位相をシフトする。このため、マイクロ波プラズマ処理装置10は、スロットアンテナ200の内側導波路及び外側導波路に接続される2つの導波管からスロットアンテナ200内の内側導波路及び外側導波路を介して誘電体窓300へ導波されるマイクロ波をアンテナ下部の誘電体窓にて逆位相として干渉を抑えることができる。その結果、マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器内の処理空間Sでマイクロ波により励起されるプラズマの分布の均一性をより適切に保つことが可能である。
また、第1の実施形態では、チューナ608が、マイクロ波発生器400側のインピーダンスと、スロットアンテナ200側のインピーダンスとを整合する。その結果、マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器内の処理空間Sでマイクロ波により励起されるプラズマの分布の均一性をより適切に保つことが可能である。
(変形例1)
次に、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の変形例1について説明する。図16は、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の変形例1の外観構成の一例を示す図である。変形例1に係るマイクロ波プラズマ処理装置10aは、処理容器とスロットアンテナとの組みを複数備える点、及び分配器500が処理容器とスロットアンテナとの複数の組みの各々に対応する複数の導波管へマイクロ波を分配する点等が、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10と異なる。したがって、図16において、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10と同様の構成については、説明を省略する。
図16に示すように、変形例1のマイクロ波プラズマ処理装置10aは、図1に示した処理容器100及びスロットアンテナ200に代えて、処理容器100aとスロットアンテナ200aとの組みを複数備える。本変形例1では、マイクロ波プラズマ処理装置10aは、処理容器100aとスロットアンテナ200aとの組みを2つ備える。
分配器500は、処理容器100aとスロットアンテナ200aとの複数の組みの各々に対応する複数の導波路へマイクロ波を分配する。本変形例1では、分配器500は、処理容器100aとスロットアンテナ200aとの2つの組みの各々に対応する2つの導波管612,613へマイクロ波を分配する。
スロットアンテナ200aは、導波管612又は導波管613に接続される1つの導波路を内部に有する。スロットアンテナ200aは、分配器500によって2つの導波管612,613の各々へ分配されるマイクロ波を内部の導波路を介して誘電体窓300へ伝送し、伝送したマイクロ波を当該スロットアンテナ200aに組み合わされた処理容器100aの処理空間Sへ放射する。
制御部708は、モニタ部704によってモニタされた2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値をモニタ部704から取得する。そして、制御部708は、2つの導波管612,613の各々の電圧のモニタ値と基準値との差であるモニタ差を算出する。そして、制御部708は、算出したモニタ差に対応する分配器500の分配比の制御値を記憶部702から取得し、取得した制御値に基づいて分配器500の分配比を制御する。
例えば、記憶部702が、モニタ差「D1」と制御値「1:1」とを対応付けて記憶しているものとする。この場合、制御部708は、モニタ差に対応する分配器500の分配比の制御値「1:1」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500に出力する。これにより、分配器500は、得られた制御値「1:1」を用いて、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。導波管612に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100aとスロットアンテナ200aとの2つの組みのうち一方の組みに対応するスロットアンテナ200aから処理容器100a内の処理空間Sへ放射される。導波管613に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100aとスロットアンテナ200aとの2つの組みのうち他方の組みに対応するスロットアンテナ200aから処理容器100a内の処理空間Sへ放射される。
変形例1のマイクロ波プラズマ処理装置10aによれば、処理容器とスロットアンテナとの2つの組みの各々に対応する2つの導波管に最適な分配比でマイクロ波を分配しつつ、各スロットアンテナから各処理容器の処理空間Sにマイクロ波を個別に放射することができる。その結果、マイクロ波プラズマ処理装置10aは、各処理容器の処理空間Sでマイクロ波により励起されるプラズマを均等な状態に保つことが可能となる。さらに、マイクロ波プラズマ処理装置10aは、1つのマイクロ波発生器から発生されるマイクロ波を複数の処理容器へ同時に供給することができるので、装置規模の増大を抑えることが可能となる。
(変形例2)
次に、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の変形例2について説明する。図17は、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の変形例2の外観構成の一例を示す図である。変形例2に係るマイクロ波プラズマ処理装置10bは、処理容器とスロットアンテナとの組みを複数備える点、及び分配器を複数備える点等が、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10と異なる。したがって、図17において、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10と同様の構成については、説明を省略する。
図17に示すように、変形例2のマイクロ波プラズマ処理装置10bは、図1に示した処理容器100及びスロットアンテナ200に代えて、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの組みを複数備える。本変形例2では、マイクロ波プラズマ処理装置10bは、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの組みを3つ備える。
また、変形例2のマイクロ波プラズマ処理装置10bは、分配器を複数備える。本変形例2では、マイクロ波プラズマ処理装置10bは、2つの分配器500a,500bを備える。2つの分配器500a,500bは、導波管602から入力されるマイクロ波を複数の導波管へ段階的に順次分配する。すなわち、分配器500aは、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。分配器500aによって導波管612へ分配される一方のマイクロ波は、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの3つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。分配器500aによって導波管613へ分配される他方のマイクロ波は、分配器500bに供給される。分配器500bは、導波管613を介して分配器500aから入力されるマイクロ波を2つの導波管614,615へ分配する。分配器500bによって導波管614へ分配される一方のマイクロ波は、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの3つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。分配器500bによって導波管615へ分配される他方のマイクロ波は、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの3つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。
スロットアンテナ200bは、導波管612、導波管614又は導波管615に接続される1つの導波路を内部に有する。スロットアンテナ200bは、導波管612、導波管614又は導波管615へ分配されるマイクロ波を内部の導波路を介して誘電体窓300へ伝送し、伝送したマイクロ波を当該スロットアンテナ200bに組み合わされた処理容器100bの処理空間Sへ放射する。
記憶部702は、分配器ごとに、マイクロ波の分配対象である2つの導波管の各々の電圧のモニタ値と予め定められた電圧の基準値との差であるモニタ差と、モニタ差に対応する分配器の分配比の制御値とを対応付けて記憶する。例えば、記憶部702は、分配器500aに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:2(=導波管612:導波管613)」とを対応付けて記憶する。また、例えば、記憶部702は、分配器500bに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」とを対応付けて記憶する。
モニタ部704は、導波管612,614,615それぞれに設けられた電圧センサ622,623a,623bを用いて、導波管612,614,615の各々の電圧をモニタし、モニタ値を制御部708に出力する。
制御部708は、記憶部702から取得した制御値に基づいて複数の分配器の各々の分配比を個別に制御する。具体的には、制御部708は、モニタ部704によってモニタされた導波管612,614,615の各々の電圧のモニタ値をモニタ部704から取得する。そして、制御部708は、導波管612,614,615の各々の電圧のモニタ値と基準値との差であるモニタ差を算出する。そして、制御部708は、算出したモニタ差に対応する分配器の分配比の制御値を記憶部702から取得し、取得した制御値に基づいて複数の分配器の各々の分配比を個別に制御する。
例えば、記憶部702が、分配器500aに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:2(=導波管612:導波管613)」とを対応付けて記憶し、かつ、分配器500bに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」とを対応付けて記憶しているものとする。この場合、制御部708は、モニタ差に対応する分配器500aの分配比の制御値「1:2(=導波管612:導波管613)」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500aに出力する。さらに、制御部708は、モニタ差に対応する分配器500bの分配比の制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500bに出力する。これにより、分配器500aは、得られた制御値「1:2(=導波管612:導波管613)」を用いて、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。導波管612に分配された33.3%分のマイクロ波は、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの3つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200bから処理容器100b内の処理空間Sへ放射される。導波管613に分配された66.6%分のマイクロ波は、分配器500bに供給される。分配器500bは、得られた制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」を用いて、導波管613を介して分配器500aから入力されるマイクロ波を2つの導波管614,615へ分配する。導波管614に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの3つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200bから処理容器100b内の処理空間Sへ放射される。導波管615に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100bとスロットアンテナ200bとの3つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200bから処理容器100b内の処理空間Sへ放射される。
変形例2のマイクロ波プラズマ処理装置10bによれば、処理容器とスロットアンテナとの3つの組みの各々に対応する3つの導波管に最適な分配比でマイクロ波を分配しつつ、各スロットアンテナから各処理容器の処理空間Sにマイクロ波を個別に放射することができる。その結果、マイクロ波プラズマ処理装置10bは、各処理容器の処理空間Sでマイクロ波により励起されるプラズマを均等な状態に保つことが可能となる。さらに、マイクロ波プラズマ処理装置10bは、1つのマイクロ波発生器から発生されるマイクロ波を複数の処理容器へ同時に供給することができるので、装置規模の増大を抑えることが可能となる。
(変形例3)
次に、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の変形例3について説明する。図18は、第1の実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の変形例3の外観構成の一例を示す図である。変形例3に係るマイクロ波プラズマ処理装置10cは、処理容器とスロットアンテナとの組みを複数備える点、及び分配器を複数備える点等が、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10と異なる。したがって、図18において、図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置10と同様の構成については、説明を省略する。
図18に示すように、変形例3のマイクロ波プラズマ処理装置10cは、図1に示した処理容器100及びスロットアンテナ200に代えて、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの組みを複数備える。本変形例3では、マイクロ波プラズマ処理装置10cは、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの組みを4つ備える。
また、変形例3のマイクロ波プラズマ処理装置10cは、分配器を複数備える。本変形例3では、マイクロ波プラズマ処理装置10cは、3つの分配器500a,500b,500cを備える。3つの分配器500a,500b,500cは、導波管602から入力されるマイクロ波を複数の導波管へ段階的に順次分配する。すなわち、分配器500aは、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。分配器500aによって導波管612へ分配される一方のマイクロ波は、分配器500cへ供給される。分配器500aによって導波管613へ分配される他方のマイクロ波は、分配器500bへ供給される。分配器500bは、導波管613を介して分配器500aから入力されるマイクロ波を2つの導波管614,615へ分配する。分配器500bによって導波管614へ分配される一方のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。分配器500bによって導波管615へ分配される他方のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。分配器500cは、導波管612を介して分配器500aから入力されるマイクロ波を2つの導波管616,617へ分配する。分配器500cによって導波管616へ分配される一方のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。分配器500cによって導波管617へ分配される他方のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちいずれか一つの組みに供給される。
スロットアンテナ200cは、導波管614、導波管615、導波管616又は導波管617に接続される1つの導波路を内部に有する。スロットアンテナ200cは、導波管614、導波管615、導波管616又は導波管617へ分配されるマイクロ波を内部の導波路を介して誘電体窓300へ伝送し、伝送したマイクロ波を当該スロットアンテナ200cに組み合わされた処理容器100cの処理空間Sへ放射する。
記憶部702は、分配器ごとに、マイクロ波の分配対象である2つの導波管の各々の電圧のモニタ値と予め定められた電圧の基準値との差であるモニタ差と、モニタ差に対応する分配器の分配比の制御値とを対応付けて記憶する。例えば、記憶部702は、分配器500aに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管612:導波管613)」とを対応付けて記憶する。また、例えば、記憶部702は、分配器500bに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」とを対応付けて記憶する。また、例えば、記憶部702は、分配器500cに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管616:導波管617)」とを対応付けて記憶する。
モニタ部704は、導波管614,615,616,617それぞれに設けられた電圧センサ623a,623b,622a,622bを用いて、導波管614,615,616,617の各々の電圧をモニタし、モニタ値を制御部708に出力する。
制御部708は、記憶部702から取得した制御値に基づいて複数の分配器の各々の分配比を個別に制御する。具体的には、制御部708は、モニタ部704によってモニタされた導波管614,615,616,617の各々の電圧のモニタ値をモニタ部704から取得する。そして、制御部708は、導波管614,615,616,617の各々の電圧のモニタ値と基準値との差であるモニタ差を算出する。そして、制御部708は、算出したモニタ差に対応する分配器の分配比の制御値を記憶部702から取得し、取得した制御値に基づいて複数の分配器の各々の分配比を個別に制御する。
例えば、記憶部702が、分配器500aに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管612:導波管613)」とを対応付けて記憶し、かつ、分配器500bに対して、モニタ差「D1」と、制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」とを対応付けて記憶し、かつ、分配器500cに対して、モニタ差「D2」と、制御値「1:1(=導波管616:導波管617)」とを対応付けて記憶しているものとする。この場合、制御部708は、モニタ差に対応する分配器500aの分配比の制御値「1:1(=導波管612:導波管613)」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500aに出力する。さらに、制御部708は、モニタ差に対応する分配器500bの分配比の制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500bに出力する。さらに、制御部708は、モニタ差に対応する分配器500cの分配比の制御値「1:1(=導波管616:導波管617)」を記憶部702から取得し、取得した制御値を分配器500cに出力する。これにより、分配器500aは、得られた制御値「1:1(=導波管612:導波管613)」を用いて、導波管602から入力されるマイクロ波を2つの導波管612,613へ分配する。導波管612に分配された50%分のマイクロ波は、分配器500cへ供給される。導波管613に分配された50%分のマイクロ波は、分配器500bへ供給される。分配器500bは、得られた制御値「1:1(=導波管614:導波管615)」を用いて、導波管613を介して分配器500aから入力されるマイクロ波を2つの導波管614,615へ分配する。導波管614に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200cから処理容器100c内の処理空間Sへ放射される。導波管615に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200cから処理容器100c内の処理空間Sへ放射される。分配器500cは、得られた制御値「1:1(=導波管616:導波管617)」を用いて、導波管612を介して分配器500aから入力されるマイクロ波を2つの導波管616,617へ分配する。導波管616に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200cから処理容器100c内の処理空間Sへ放射される。導波管617に分配された50%分のマイクロ波は、処理容器100cとスロットアンテナ200cとの4つの組みのうちの一つの組みに対応するスロットアンテナ200cから処理容器100c内の処理空間Sへ放射される。
変形例3のマイクロ波プラズマ処理装置10cによれば、処理容器とスロットアンテナとの4つの組みの各々に対応する4つの導波管に最適な分配比でマイクロ波を分配しつつ、各スロットアンテナから各処理容器の処理空間Sにマイクロ波を個別に放射することができる。その結果、マイクロ波プラズマ処理装置10cは、各処理容器の処理空間Sでマイクロ波により励起されるプラズマを均等な状態に保つことが可能となる。さらに、マイクロ波プラズマ処理装置10cは、1つのマイクロ波発生器から発生されるマイクロ波を複数の処理容器へ同時に供給することができるので、装置規模の増大を抑えることが可能となる。