JP2017202033A - 多糖止血剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】血液由来材料を使用せずに、血液を強固に凝固させることができる止血剤を提供する。【解決手段】複数個の構成ユニットからなるヒアルロン酸等の多糖を原料とし、その構成ユニットの少なくとも一部にアルデヒド基及び疎水基を導入した多糖止血剤。多糖に導入されたアルデヒド基により血中のたんぱく質を凝固させるとともに、同じく導入された疎水基により血球を凝固させる。【選択図】なし
Description
本発明は止血剤に関し、特に血液を強固に凝固させる多糖止血剤に関する。
手術等で使用される止血剤としては、フィブリノーゲンを含有する第1液とトロンビンを含有する第2液とを使用直前に混合するかあるいは患部にそれぞれ塗布することで、人体で起こる血液凝固と同じ作用でフィブリン膜を形成して止血するフィブリン糊が従来から使用されてきた。しかし、フィブリン糊は血液製剤であるため、ウィルス等による感染のリスクを排除できない。
このリスクのない止血剤として、血液由来成分を含まない薬剤により患部表面に膜を形成するものが提案、使用されている。例えば株式会社ビーエムジーから提供されているLYDEX(非特許文献1)は、アルデヒド化デキストランと無水コハク酸処理ポリリジンの2つの成分を使用直前に混合することで、デキストラン側のアルデヒト基とポリリジン側のアミノ基とが常温で反応してシッフ塩基を形成させ、これによってこれら2種類の分子が結合してできるネットワーク構造がもたらすゲル状物を生体用の接着剤、止血剤として使用する。
このように患部を膜等で被覆して止血するものとは異なる手法として、出血箇所に薬剤を塗布等することにより、液凝固による止血と同じように、出血した血液自体を凝固させる手法が提案されている。例えば、非特許文献2では、疎水基を導入したキトサンを投入することによって、血液中に含まれる細胞成分(赤血球、血小板など)を疎水基によるアンカーリング効果で物理架橋することにより、出血した血液自体を凝固させる手法が記載されている。
この手法によれば、出血した血液自体を凝固させるため、止血直後に凝固体が部分的にはがれたり破損した場合でも、まだ完全に凝固していない血液が漏出しにくい等の利点がある一方で、架橋されるのは血液中の細胞成分だけであるので、血液の大部分を占める血漿成分が分離して染み出す可能性がある。
本発明の課題は、血液自体を凝固させるとともに、血液中の血漿成分に対しても凝固作用が働く止血剤を提供することにある。
本発明の一側面によれば、複数個の構成ユニットからなる多糖中の前記構成ユニットの少なくとも一部にアルデヒド基及び疎水基を導入した多糖止血剤が与えられる。
ここで、前記多糖はヒアルロン酸であってよい。
また、前記疎水基はイミノ基を介して疎水基を導入することによって得られてよい。
また、アルデヒド基導入率が5〜50mol%/モノマーユニットの範囲であってよい。
また、疎水化率が2〜60mol%/モノマーユニットの範囲であってよい。
また、疎水性基が炭素数6〜18のアルキル基であってよい。
本発明の他の側面によれば、多糖中の一部のジオールの酸化的開裂反応によりアルデヒド化を行い、前記アルデヒド化によって導入されたアルデヒド基を、疎水基を有するアミンと還元アミノ化を行うことにより前記多糖の疎水化を行い、前記多糖中の残余のジオールの少なくとも一部を酸化的開裂反応によりアルデヒド化を行う、上記何れかの多糖止血剤の製造方法が与えられる。
ここで、前記多糖はヒアルロン酸であってよい。
また、前記ヒアルロン酸はヒアルロン酸ナトリウムの形態で前記製造方法の原料として使用してよい。
また、前記酸化的開裂反応は前記多糖を過ヨウ素酸ナトリウムと反応させることにより行ってよい。
また、前記疎水基を有するアミンはドデシルアミンであり、前記還元アミノ化はピコリンボランを使用して行ってよい。
ここで、前記多糖はヒアルロン酸であってよい。
また、前記疎水基はイミノ基を介して疎水基を導入することによって得られてよい。
また、アルデヒド基導入率が5〜50mol%/モノマーユニットの範囲であってよい。
また、疎水化率が2〜60mol%/モノマーユニットの範囲であってよい。
また、疎水性基が炭素数6〜18のアルキル基であってよい。
本発明の他の側面によれば、多糖中の一部のジオールの酸化的開裂反応によりアルデヒド化を行い、前記アルデヒド化によって導入されたアルデヒド基を、疎水基を有するアミンと還元アミノ化を行うことにより前記多糖の疎水化を行い、前記多糖中の残余のジオールの少なくとも一部を酸化的開裂反応によりアルデヒド化を行う、上記何れかの多糖止血剤の製造方法が与えられる。
ここで、前記多糖はヒアルロン酸であってよい。
また、前記ヒアルロン酸はヒアルロン酸ナトリウムの形態で前記製造方法の原料として使用してよい。
また、前記酸化的開裂反応は前記多糖を過ヨウ素酸ナトリウムと反応させることにより行ってよい。
また、前記疎水基を有するアミンはドデシルアミンであり、前記還元アミノ化はピコリンボランを使用して行ってよい。
本発明によれば、血液を強固に凝固させることができ、また血液由来材料を使用することによるウイルスや細菌感染の危険性のない止血剤が提供される。
本発明の一実施例によれば、アルデヒド基を導入したヒアルロン酸等の多糖の疎水化物を用いて、組織界面に対して優れたシーリング効果を発揮する止血剤が提供される。
ここで、この止血剤におけるアルデヒド基導入率([実際にアルデヒド基が導入された多糖中のモノマーユニット]/[多糖中のモノマーユニットの全数])及び疎水化率([実際に疎水基が導入された多糖中のモノマーユニット]/[多糖中のモノマーユニットの全数])は好ましくは夫々5〜50mol%/モノマーユニット及び2〜60mol%/モノマーユニットの範囲である。アルデヒド基の導入は、多糖中の一部のジオールの酸化的開裂反応により行う。また、疎水基は好ましくはイミノ基を介して多糖に導入される。疎水基として以下の実施例ではドデシル基を使用したが、好ましくは炭素数が6〜18のアルキル基を使用する。
この止血剤は外科用シーラントとして使用することができる。疎水基は疎水性相互作用により生体軟組織に対し浸透能をもつことから、多糖に導入した疎水基が血中の細胞に対してアンカー効果を示し血液凝固を促進することが期待される。更に、生体中に存在する多糖を使用することで、出血部位の治癒後に止血剤を生体自体の分泌する酵素によって容易に分解・吸収させることが可能となる。
以下の実施例では、多糖の例としてヒアルロン酸を使用し、アルデヒド化/疎水化ヒアルロン酸を合成して、その止血剤としての特性を検証する。ヒアルロン酸は生体中に存在する物質であるため、生体に対する悪影響は非常に小さいと考えられ、また止血後、出血箇所の治癒に伴って生体内で酵素的に分解されるため、手術の際等に使用する止血剤として使い勝手が良い。なお、当然のことではあるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、ヒアルロン酸以外の多糖を使用してもよいし、また他の手法を用いて疎水化、アルデヒド化を行うこともできる。
[実験1:アルデヒド化された疎水化ヒアルロン酸(C12)の合成]
<ヒアルロン酸へのアルデヒド基導入>
ヒアルロン酸ナトリウム(HyA、Mw:1,000,000)5.0gを脱イオン水中に濃度1.0wt%となるように溶解した。過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)を用いて、ヒアルロン酸内ジオールの酸化的開裂反応によりアルデヒド化した。過ヨウ素酸ナトリウムとヒアルロン酸との混合比率を3通りに調製することで、3種類のアルデヒド基導入率([実際にアルデヒド基が導入されたヒアルロン酸モノマーユニット]/[ヒアルロン酸モノマーユニットの全数])となるようにアルデヒド化を行った。所定の量のNaIO4を添加し、6時間反応(遮光・室温)させた。エチレングリコールを10ml添加して1時間撹拌することで反応を停止させた後に、分子量により副生成物とアルデヒド化ヒアルロン酸の分離を行った。具体的には透析膜MWCO3500を用いて、分子量3500以下の生成物を取り除いた。脱イオン水中にて24時間以上の透析を2度行った後に、エバポレーターにて濃縮し、凍結乾燥することでアルデヒド化ヒアルロン酸(Ald−HyA)を得た。表1に示すように、3種類のアルデヒド基導入率2.8mol%、11.0mol%及び53.6mol%のAld−HyAを夫々Ald−HyA(1)、Ald−HyA(2)及びAld−HyA(3)と呼ぶ。
<ヒアルロン酸へのアルデヒド基導入>
ヒアルロン酸ナトリウム(HyA、Mw:1,000,000)5.0gを脱イオン水中に濃度1.0wt%となるように溶解した。過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)を用いて、ヒアルロン酸内ジオールの酸化的開裂反応によりアルデヒド化した。過ヨウ素酸ナトリウムとヒアルロン酸との混合比率を3通りに調製することで、3種類のアルデヒド基導入率([実際にアルデヒド基が導入されたヒアルロン酸モノマーユニット]/[ヒアルロン酸モノマーユニットの全数])となるようにアルデヒド化を行った。所定の量のNaIO4を添加し、6時間反応(遮光・室温)させた。エチレングリコールを10ml添加して1時間撹拌することで反応を停止させた後に、分子量により副生成物とアルデヒド化ヒアルロン酸の分離を行った。具体的には透析膜MWCO3500を用いて、分子量3500以下の生成物を取り除いた。脱イオン水中にて24時間以上の透析を2度行った後に、エバポレーターにて濃縮し、凍結乾燥することでアルデヒド化ヒアルロン酸(Ald−HyA)を得た。表1に示すように、3種類のアルデヒド基導入率2.8mol%、11.0mol%及び53.6mol%のAld−HyAを夫々Ald−HyA(1)、Ald−HyA(2)及びAld−HyA(3)と呼ぶ。
<ヒアルロン酸の疎水化>
次に、アルデヒド化した上記3種類のAld−HyA(1)〜(3)の疎水化処理を行って、夫々疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−A(1)〜(3)を得た。ヒアルロン酸の疎水化はドデシルアミンCH3(CH2)11NH2(Dodecylamine;C12)を用いて行った。合成したAld−HyA4.0gを脱イオン水中に濃度1.0%(w/v)となるように溶解した。その後、反応時の溶媒がH2O:EtOH=7:3となるように、エタノールを加えた。導入したアルデヒド基を全てドデシルアミンと反応させるため、Ald−HyA中のアルデヒド基:ドデシルアミンが1:1(モル比)となるようにドデシルアミンを加えた。2時間撹拌後、ピコリンボランPic−BH3を加えて18時間撹拌することで、アルデヒド基とドデシルアミンとの脱水縮合を行って、ヒアルロン酸に疎水性のドデシル基を導入した。エバポレーターにてHyA濃度5%(w/v)以上になるように濃縮して、充分に冷却した後に、氷冷EtOH/酢酸エチル(AcOEt)混合液中に滴下した。3度の洗浄を行った後に、疎水化ヒアルロン酸(hm−HyA)を凍結乾燥して得た。上述のアルデヒド基導入処理によって導入した全てのアルデヒド基をドデシルアミンと反応させたことにより、合成した疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−A(1)〜(3)の疎水化率([実際にドデシル基が導入されたヒアルロン酸モノマーユニット]/[ヒアルロン酸モノマーユニットの全数])はそれぞれ原料のアルデヒド化ヒアルロン酸Ald−HyA(1)〜(3)のアルデヒド基導入率と同じ2.8mol%/モノマーユニット、11.0mol%/モノマーユニット及び53.6mol%/モノマーユニットとなった。
次に、アルデヒド化した上記3種類のAld−HyA(1)〜(3)の疎水化処理を行って、夫々疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−A(1)〜(3)を得た。ヒアルロン酸の疎水化はドデシルアミンCH3(CH2)11NH2(Dodecylamine;C12)を用いて行った。合成したAld−HyA4.0gを脱イオン水中に濃度1.0%(w/v)となるように溶解した。その後、反応時の溶媒がH2O:EtOH=7:3となるように、エタノールを加えた。導入したアルデヒド基を全てドデシルアミンと反応させるため、Ald−HyA中のアルデヒド基:ドデシルアミンが1:1(モル比)となるようにドデシルアミンを加えた。2時間撹拌後、ピコリンボランPic−BH3を加えて18時間撹拌することで、アルデヒド基とドデシルアミンとの脱水縮合を行って、ヒアルロン酸に疎水性のドデシル基を導入した。エバポレーターにてHyA濃度5%(w/v)以上になるように濃縮して、充分に冷却した後に、氷冷EtOH/酢酸エチル(AcOEt)混合液中に滴下した。3度の洗浄を行った後に、疎水化ヒアルロン酸(hm−HyA)を凍結乾燥して得た。上述のアルデヒド基導入処理によって導入した全てのアルデヒド基をドデシルアミンと反応させたことにより、合成した疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−A(1)〜(3)の疎水化率([実際にドデシル基が導入されたヒアルロン酸モノマーユニット]/[ヒアルロン酸モノマーユニットの全数])はそれぞれ原料のアルデヒド化ヒアルロン酸Ald−HyA(1)〜(3)のアルデヒド基導入率と同じ2.8mol%/モノマーユニット、11.0mol%/モノマーユニット及び53.6mol%/モノマーユニットとなった。
<疎水化ヒアルロン酸へのアルデヒト基導入>
合成したhm−HyA(1)〜(3)に再度アルデヒド基を導入した。すなわち、上述したようにヒアルロン酸へ最初にアルデヒド基を導入し、導入されたアルデヒト基を全て疎水基に置換後、ここでヒアルロン酸を開環させてアルデヒド基を導入するという操作を行った。NaIO4:HyA比率は1:1にて行い、合成方法は最初のアルデヒド基導入と同じ方法を用い、夫々アルデヒド基導入疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−HyA(1)〜(3)を得た。
合成したhm−HyA(1)〜(3)に再度アルデヒド基を導入した。すなわち、上述したようにヒアルロン酸へ最初にアルデヒド基を導入し、導入されたアルデヒト基を全て疎水基に置換後、ここでヒアルロン酸を開環させてアルデヒド基を導入するという操作を行った。NaIO4:HyA比率は1:1にて行い、合成方法は最初のアルデヒド基導入と同じ方法を用い、夫々アルデヒド基導入疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−HyA(1)〜(3)を得た。
<結果>
上のようにして作製したAld−HyA、hm−HyA及びAld−hm−HyAのアルデヒド基導入率、疎水化率、収率等をまとめて以下の表1〜表3に示す。
上のようにして作製したAld−HyA、hm−HyA及びAld−hm−HyAのアルデヒド基導入率、疎水化率、収率等をまとめて以下の表1〜表3に示す。
表1:ヒアルロン酸アルデヒドの合成
表2:疎水化ヒアルロン酸の合成
表3:疎水化ヒアルロン酸アルデヒドの合成
[実験2:アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸の止血能評価]
アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−HyAの止血能を、ラットの全血を用いて評価した。また、この止血能をHyA、Ald−HyA及びhm−HyAの止血能と比較した。以下では実験1においてhm−HyA(1)、hm−HyA(2)及びhm−HyA(3)と略記した疎水化ヒアルロン酸を夫々2.8C12−HyA、11C12−HyA及び54C12−HyAと略記し、またAld−hm−HyA(1)、Ald−hm−HyA(2)及びAld−hm−HyA(3)と略記したアルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸を夫々Ald−2.8C12−HyA、Ald−11C12−HyA及びAld−54C12−HyAと略記する。
アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸Ald−hm−HyAの止血能を、ラットの全血を用いて評価した。また、この止血能をHyA、Ald−HyA及びhm−HyAの止血能と比較した。以下では実験1においてhm−HyA(1)、hm−HyA(2)及びhm−HyA(3)と略記した疎水化ヒアルロン酸を夫々2.8C12−HyA、11C12−HyA及び54C12−HyAと略記し、またAld−hm−HyA(1)、Ald−hm−HyA(2)及びAld−hm−HyA(3)と略記したアルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸を夫々Ald−2.8C12−HyA、Ald−11C12−HyA及びAld−54C12−HyAと略記する。
止血試験では、濃度1.0wt%アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸溶液を用いて、その止血効果をラット全血により検討した。ラット血液を採取した後に、全血1mlを、アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸溶液に添加した。これを撹拌した後に、ゲル化する時間を計測した。更に、比較例として、同濃度の疎水化ヒアルロン酸溶液、アルデヒド基を導入したヒアルロン酸(Ald−HyA(3)を使用)溶液及びヒアルロン酸溶液、更にPBSに対して同じ止血試験を行った。表4にこれらの凝固時間を示す。また、図1に充分な時間経過後のこれらの止血試験結果の外観写真を示す。図2にはアルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸溶液についての止血試験結果の容器底部の拡大写真を示す。
表4:アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸及び比較例についてのラット全血凝固時間
Ald−54C12−HyAについては12分半、Ald−11C12−HyAは13分程度のゲル化時間が観測された。表4からわかるように、これらのAld−hm−HyAについてはPBS及びHyAと比較してゲル化時間が僅かに減少していた。ゲル化の際にAld−HyAについて特徴的な現象が観られ、血中の透明な部分のみでゲル化を引き起こしていた(図1,図2)。これは、アルデヒド化のみを行い、疎水基を有していないAld−HyAでは、そのアルデヒド基の多くが血中内タンパク質と反応して、血球についてはほぼ凝固を起こさないためであると考えられる。これに対して、Ald−hm−HyAの方は、図2に示すようにゲル化が血中タンパク質だけではなくフィブリン凝集塊の形態で血球にまで及んでいることからわかるように、血球に対してはその疎水基のアンカー効果によって凝固を引き起こすことによって、血漿と血球の両者を凝固させたと考えられる。
図1に示す止血試験結果のうちのHyA,Ald−HyA、Ald−54C12−HyA及びAld−54C12−HyAにより形成されたゲルを容器の外部に取り出して並べた写真を図3に示す。これから容易にわかるように、アルデヒド基を導入した疎水化ヒアルロン酸Ald−54C12−HyAによって形成されたゲルは他の3種類のゲルに比較して強く凝固しており、また他の3種のゲルはその周囲に液体がかなり染み出しているのに対して、Ald−54C12−HyAによって形成されたゲルはそのような染み出しは非常に少ない。これは、血中タンパク質と血球の両者を凝固させることによって血液中のより多くの成分を凝固させるとともに、これにより血液中の液体をゲル内部に保持する能力が高くなったことによると考えられる。
以上説明したように、本発明の多糖止血剤は血液それ自体を強固に凝固させることができるため、手術用の止血剤等、多くの用途に利用されることが期待される。
http://bmg-inc.com/en/prod_and_res/research/lydex.html
M. Dowling et al., "A self-assembling hydrophobically modified chitosan capable of reversible hemostatic action", Biomaterials 32 (2011) 3351-3357.
Claims (11)
- 複数個の構成ユニットからなる多糖中の前記構成ユニットの少なくとも一部にアルデヒド基及び疎水基を導入した多糖止血剤。
- 前記多糖はヒアルロン酸である、請求項1に記載の多糖止血剤。
- 前記疎水基はイミノ基を介して疎水基を導入することによって得られる、請求項1または2に記載の多糖止血剤。
- アルデヒド基導入率が5〜50mol%/モノマーユニットの範囲である、請求項2または3に記載の多糖止血剤。
- 疎水化率が2〜60mol%/モノマーユニットの範囲である、請求項2から4の何れかに記載の多糖止血剤。
- 疎水性基が炭素数6〜18のアルキル基である、請求項2から5の何れかに記載の多糖止血剤。
- 多糖中の一部のジオールの酸化的開裂反応によりアルデヒド化を行い、
前記アルデヒド化によって導入されたアルデヒド基と疎水基とを有するアミンと還元アミノ化を行うことにより前記多糖の疎水化を行い、
前記多糖中の残余のジオールの少なくとも一部を酸化的開裂反応によりアルデヒド化を行う、
請求項1から6の何れかに記載の多糖止血剤の製造方法。 - 前記多糖はヒアルロン酸である、請求項7に記載の多糖止血剤の製造方法。
- 前記ヒアルロン酸はヒアルロン酸ナトリウムの形態で前記製造方法の原料として使用する、請求項8に記載の多糖止血剤の製造方法。
- 前記酸化的開裂反応は前記多糖を過ヨウ素酸ナトリウムと反応させることにより行う、請求項7から9の何れかに記載の多糖止血剤の製造方法。
- 前記疎水基を有するアミンはドデシルアミンであり、前記還元アミノ化はピコリンボランを使用して行う、請求項7から10の何れかに記載の多糖止血剤の製造方法。
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
WO2020122007A1 (ja) * | 2018-12-14 | 2020-06-18 | 株式会社ビーエムジー | 2反応剤型のシート状組織接着補強材 |
CN114569781A (zh) * | 2022-03-02 | 2022-06-03 | 上海交通大学 | 一种多糖缀合物止血材料、制备方法及其应用 |
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2016
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