以下、図面を参照しながらポケットコイルマットレスの製造方法の実施形態について説明する。以下の説明では、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るポケットコイルマットレス1の斜視図である。図2は、ポケットコイルマットレス1のコイルスプリングの配置を示す平面図である。図1及び図2に示されるように、ポケットコイルマットレス1は、第1方向D1及び第2方向D2に延在する直方体状を呈する。第1方向D1はポケットコイルマットレス1の長手方向であり、第2方向D2はポケットコイルマットレス1の幅方向である。以下では、第1方向D1及び第2方向D2に直交する方向(図2の紙面に直交する方向)を上下方向として説明する。
ポケットコイルマットレス1は、ポケットコイルマットレス1の表面を構成する外布2と、複数のコイルスプリング20が縦横に連結されて形成されたコイルスプリング集合体10とを備えている。コイルスプリング集合体10は外布2に収容されている。コイルスプリング集合体10は、第1方向D1及び第2方向D2に延びる長方形状であってコイルスプリング20を囲んで保持する金属製の枠材を上下に備えている。
コイルスプリング集合体10と外布2との間には、コイルスプリング集合体10の上面及び下面のそれぞれを覆った状態で上記枠材に連結される網目状の内布と、コイルスプリング集合体10の四側面を覆った状態でコイルスプリング集合体10に連結される側面布と、内布の上面に位置する発泡ウレタン等の内容物と、が設けられている。但し、コイルスプリング集合体10と外布2との間に設けられるものについては、上記に限定されず適宜変更可能である。
コイルスプリング集合体10は、第1方向D1に並ぶコイルスプリング20が連結されて形成された複数のコイルスプリング群11を備える。コイルスプリング群11は、コイルスプリング集合体10の全体に亘って第1方向D1に延びている。コイルスプリング群11は、第1方向D1に並べられた複数のコイルスプリング20を有する。コイルスプリング群11において各コイルスプリング20は布袋22(図7参照)に収容されており、コイルスプリング20を収容する複数の布袋22が超音波溶着で接合されることによってコイルスプリング群11が形成されている。布袋22は例えば不織布によって構成されている。
コイルスプリング20は、布袋22への収容前の高さが互いに異なる複数種類のコイルスプリングを含んでおり、本実施形態では図3に示されるように3種類のコイルスプリング20A,20B,20Cを含んでいる。3種類のコイルスプリング20A,20B,20Cのうち、コイルスプリング20Aが最も硬く、コイルスプリング20Cが最も柔らかく、コイルスプリング20Bはコイルスプリング20Aより柔らかく且つコイルスプリング20Cよりも硬い。
コイルスプリング20A,20B,20Cは、例えば、互いに同一の鋼線から製造されており、その鋼線の長さも互いに同一である。コイルスプリング20A,20B,20Cは、布袋22への収容前における巻きの角度が互いに異なっている。具体的には、コイルスプリング20Aの鋼線の巻きの角度が最も大きく、コイルスプリング20Bの鋼線の巻きの角度が次に大きく、コイルスプリング20Cの鋼線の巻きの角度が最も小さい。
これにより、布袋22への収容前において、コイルスプリング20Aの高さが最も高く、コイルスプリング20Bの高さが次に高く、コイルスプリング20Cの高さが最も低い。そして、布袋22に収容されたときに、コイルスプリング20Aが最も硬く、コイルスプリング20Bが次に硬く、そしてコイルスプリング20Cが最も柔らかくなる。また、コイルスプリング20A,20B,20Cの巻き径は互いに同一である。
上記のように、本実施形態では、コイルスプリング20A,20B,20Cを形成する鋼線、及びコイルスプリング20A,20B,20Cの巻き径が互いに同一であるため、互いに硬さが異なるコイルスプリング20A,20B,20Cを容易に製造することが可能である。また、図3では、コイルスプリング20それぞれのピッチ(コイルスプリング20の軸線方向の間隔)が等間隔である例を示しているが、コイルスプリング20のピッチは等間隔でなくてもよい。例えば、コイルスプリング20の軸線方向の一端側及び他端側のピッチが軸線方向中央部分のピッチより狭くてもよい。すなわち、軸線方向の一端から軸線方向の中央部分に向かうにつれてコイルスプリング20のピッチが徐々に広くなると共に、軸線方向の中央部分から軸線方向の他端に向かうにつれてコイルスプリング20のピッチが徐々に狭くなってもよい。これにより、軸線方向の一端及び他端においてコイルスプリング20の間隔が狭くなるので、コイルスプリング20を布袋22に収容したときに布袋22を一層破れにくくすることができる。
また、図2に示されるように、コイルスプリング群11は、複数の組を有しており、本実施形態では、例えば5分割された5つの組A1〜A5を有する。各組A1〜A5は少なくとも1以上のコイルスプリング20によって構成される。組A1〜A5のそれぞれには、コイルスプリング20A,20B,20Cのうち、互いに同一種類のコイルスプリング20A,20B,20Cが配置される。これにより、例えば、組A1及び組A5には中程度の硬さのコイルスプリング20B、組A2及び組A4には柔らかめのコイルスプリング20C、組A3には硬めのコイルスプリング20A、がそれぞれ配置されている。
このようにコイルスプリング20A,20B,20Cの配置を行うことにより、例えば、コイルスプリング集合体10のうち、組A1を成す5×13の領域及び組A5を成す8×13の領域には中程度の硬さのコイルスプリング20Bが配置され、組A2を成す5×13の領域及び組A4を成す5×13の領域には柔らかいコイルスプリング20Cが配置され、組A3を成す7×13の領域には硬いコイルスプリング20Aが配置されている。
以上のように構成される複数のコイルスプリング群11は、第2方向D2に並べられており、例えば接着剤によって互いに接着されている。このように複数のコイルスプリング群11が接着されることによってコイルスプリング集合体10が形成されている。
次に、ポケットコイルマットレス1の製造方法について図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4のフローチャートは、ポケットコイルマットレス1の製造方法の一一例を示している。
まず、ポケットコイルマットレス1を使用する使用者Nのデータ取得を行う工程を実行する(ステップS1)。ステップS1では、例えば図5に示されるように、使用者Nの身長H1、使用者Nの腰骨の高さH2、及び、使用者Nの脚の付け根(臀部の下端)の高さH3を測定する。図5において、長さLはポケットコイルマットレス1の第1方向D1の長さ(使用者Nの身体が延びる方向の長さ)を示している。
このように身長H1及び高さH2,H3を測定した後には、これらの値から、ポケットコイルマットレス1の長さと使用者Nの身長との差B1、使用者Nの頭頂部から使用者Nの腰骨までの長さB2、及び、使用者Nの臀部の長さ(高さ)B3、を算出する。そして、算出した各値から、組A1〜A5の長さを算出する。
組A1〜A5の長さを算出する具体的な方法は、長さLを195cm、身長H1を160cm、高さH2を100cm、高さH3を70cmとすると、下端に足の領域を25cm足して、H1を185cm、H2を125cm、H3を95cmとする。そして、長さLとH1との差10cmを組A1の長さ、H1とH2との差60cmを組A2の長さ、H2とH3との差30cmを組A3の長さ、H3と足の領域との差70cmを組A4の長さ、足の領域25cmを組A5の長さ、とする。
以上のように組A1〜A5の長さを算出した後には、例えば図6に示される設定装置30を用いて、組A1〜A5それぞれの長さに相当する組A1〜A5それぞれのコイルスプリング20の個数を設定する(ステップS2)。そして、組A1〜A5で用いるコイルスプリング20の硬さ(コイルスプリング20A,20B,20Cのどれを配置するか)を設定する(ステップS3)。
設定装置30は、組A1〜A5それぞれのコイルスプリング20の数を設定するチェックボックス31a〜31dと、コイルスプリング20の硬さを選択する硬さ選択ボタン32a〜32eと、コイルスプリング20の製造を開始する製造開始ボタン33と、コイルスプリング20の製造を中止する製造中止ボタン34とを備えている。なお、設定装置30の画面のレイアウト、並びに、組A1〜A5のコイルスプリング20の数及び組A1〜A5のコイルスプリング20の硬さを設定する手段については、図6の例に限定されず適宜変更可能である。
例えば、チェックボックス31aには組A1のコイルスプリング20の数、チェックボックス31bには組A1,A2のコイルスプリング20の数の和、チェックボックス31cには組A1〜A3のコイルスプリング20の数の和、チェックボックス31dには組A1〜A4のコイルスプリング20の数の和、をそれぞれ入力する。そして、硬さ選択ボタン32a〜32eのそれぞれにおいて、組A1〜A5を成すコイルスプリング20の硬さを三段階(硬い、普通、柔らかい)から選択する。
このように、組A1〜A5それぞれのコイルスプリング20の数と硬さとを設定した後には、製造開始ボタン33を押してコイルスプリング20の製造を開始して、コイルスプリング群11を生成する(ステップS4)。ステップS4及び次のステップS5の工程はコイルスプリング製造装置によって自動的に実行される。
ステップS4では、図7(a)に示されるように、鋼線Mを引っ張り出して鋼線Mを切断して螺旋状にすることにより、設定装置30で設定した硬さのコイルスプリング20A,20B,20Cを順次製造する。図6で設定した例の場合、硬いコイルスプリング20Aを3個製造し、次に柔らかいコイルスプリング20Cを7個製造し、続いて硬いコイルスプリング20Aを8個製造し、更に柔らかいコイルスプリング20Cを7個製造し、最後に硬いコイルスプリング20Aを5個製造する。
このように、設定装置30で設定した硬さのコイルスプリング20A,20B,20Cを順次製造した後には、図7(b)に示されるように、製造したコイルスプリング20A,20B,20Cを順次布袋22に押し込んで収容する。このとき、超音波熱溶着によって布袋22を封止すると共に複数の布袋22を接合して連結する。
そして、図8に示されるように、複数の布袋22を接合してコイルスプリング群11を完成させた後には、コイルスプリング集合体10を製造する工程(ステップS5)に移行する。このステップS5は、ステップS4を実行しながらステップS4と並行して行う。すなわち、コイルスプリング群11の生成と、コイルスプリング集合体10の製造との少なくとも一部が並行して行われる。
ステップS5では、図2に示されるように、第1方向D1に延びる複数のコイルスプリング群11を第2方向D2に並べて、接着剤をコイルスプリング群11に塗布して、複数のコイルスプリング群11を順次接合させていく。そして、全てのコイルスプリング群11を接合した時点でコイルスプリング集合体10が完成する。
コイルスプリング集合体10を製造した後には、コイルスプリング集合体10を所定の枠に入れ込み安定させた状態としてコイルスプリング集合体10に枠材をビスで装着させる。そして、コイルスプリング集合体10の上面及び下面のそれぞれに網目状の内布を取り付け、内布の上面に内容物を乗せると共にコイルスプリング集合体10の四側面を側面布で囲んでコイルスプリング集合体10の側面に側面布をビスで固定させる。
その後、例えば、専用の縫込み装置で外布2を縫い込んでいくことによって(ステップS6)、ポケットコイルマットレス1を完成させる。ポケットコイルマットレス1を完成させた後には、検査及び包装済みのポケットコイルマットレス1を保管庫に保管し、その後、ポケットコイルマットレス1を保管庫から出荷及び搬送して一連の工程が終了する。
次に、本実施形態に係るポケットコイルマットレス1の製造方法から得られる効果について説明する。
本実施形態に係るポケットコイルマットレス1の製造方法では、コイルスプリング集合体10が複数の組A1〜A5を有し、組A1〜A5を構成するコイルスプリング20の数と、組A1〜A5のコイルスプリング20の硬さとを設定する。組A1〜A5ごとにコイルスプリング20の数と硬さとを設定した後には、コイルスプリング群11の生成とコイルスプリング集合体10の製造とを自動的に行う。従って、組A1〜A5ごとにコイルスプリング20の数と硬さとを設定すれば、コイルスプリング群11の生成とコイルスプリング集合体10の製造を自動的に行うことができるので、第1方向D1及び第2方向D2にコイルスプリング20が配列されたコイルスプリング集合体10の製造を容易に行うことができる。よって、ポケットコイルマットレス1の製造を効率よく行うことができ、ポケットコイルマットレス1を早期に提供することができる。
また、ポケットコイルマットレス1は、組A1〜A5のコイルスプリング20の数(組A1〜A5の領域の長さ)を変更できると共に、組A1〜A5ごとにコイルスプリング20の硬さを変えることもできる。よって、使用者Nの身体に応じてポケットコイルマットレス1の硬さを変えることができるので、使用者Nに適合したポケットコイルマットレス1を早期に提供することができる。
また、第1方向D1はポケットコイルマットレス1の長手方向であり、第2方向D2はポケットコイルマットレス1の幅方向である。よって、コイルスプリング群11は長手方向に並べられた複数のコイルスプリング20によって構成され、コイルスプリング群11は幅方向に沿って並べられる。従って、ポケットコイルマットレス1の長手方向の位置に応じてコイルスプリング20の硬さを設定することができるので、使用者Nがポケットコイルマットレス1に寝た場合における使用者Nの身体の部位に応じてコイルスプリング20の硬さを設定できる。よって、使用者Nの身体に一層適合したポケットコイルマットレス1を製造することができる。
また、コイルスプリング群11を自動的に生成する工程と、コイルスプリング集合体10を自動的に製造する工程との少なくとも一部は並行して実行される。従って、コイルスプリング群11の生成とコイルスプリング集合体10の製造とを並行して行うので、ポケットコイルマットレス1の製造を一層効率よく行うことができる。
また、本実施形態に係るポケットコイルマットレス1の製造方法では、使用者Nの身長、腰骨の位置、及び臀部の高さを測定し、その結果から組A1〜A5を構成するコイルスプリング20の数と、組A1〜A5のコイルスプリング20の硬さとを設定する。従って、使用者Nの身体の状況に応じたポケットコイルマットレス1を効率よく製造できるので、ポケットコイルマットレス1のオーダーメイド化を推進させることができる。
また、設定装置30によって組A1〜A5のコイルスプリング20の硬さを設定した後に、自動的にコイルスプリング集合体10を製造するので、一層早くポケットコイルマットレス1を製造することができる。従って、ポケットコイルマットレス1のオーダーメイドを行うにあたり、使用者Nに適合したポケットコイルマットレス1を早期に納品することができるので、ポケットコイルマットレス1の使用者Nの満足感を高めることもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよい。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、前述の実施形態では、5つの組A1〜A5を有する例について説明したが、組の数は、5つに限定されず適宜変更可能である。また、ポケットコイルマットレスに配置するコイルスプリング20の数及び配置態様についても、前述した例に限定されず適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、コイルスプリング20の硬さの種類が3種類である例について説明したが、2種類又は4種類以上のコイルスプリング20を備えていてもよい。
また、前述の実施形態では、身長H1及び高さH2,H3の測定結果から組A1〜A5の長さを算出し、その算出結果に基づいて組A1〜A5それぞれのコイルスプリング20の数と硬さとを設定する例について説明した。しかしながら、この例に限られず、身長H1及び高さH2,H3の測定結果から自動的にコイルスプリング20の数と硬さとを設定してもよい。
また、前述の実施形態では、第1方向D1がポケットコイルマットレス1の長手方向であり、第2方向D2がポケットコイルマットレス1の幅方向である例について説明した。ここで、第1方向及び第2方向は、互いに直交していなくてもよい。また、例えば、第1方向がポケットコイルマットレスの幅方向、第2方向がポケットコイルマットレスの長手方向であってもよい。