JP2017200681A - 塗装条件設定方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】任意の膜厚及び任意の下地色において、膜厚を微小変動させたときの塗色の変動を算出する。そして、前記塗色の変動が所定範囲内となる膜厚及び下地色の範囲を設定する。そして、前記膜厚及び下地色の範囲内における最小の膜厚と、これに対応する下地色を、膜厚及び下地色の最適値として設定する。
【選択図】図5
Description
材料データベースは、各種顔料あるいは各種光輝材を単体で含む塗膜の光学特性に関する情報である。材料データベースは、図2に示す手順を経て作成される。以下、各手順を詳しく説明する。
まず、明度の異なる複数の下地を用意し、測定部2により、各下地の表面の変角分光反射率係数を測定する。本実施形態では、白色の下地(以下、白下地W)および黒色の下地(以下、黒下地B)の表面の変角分光反射率係数RW、RBを測定する。白下地W及び黒下地Bは、例えば図1に示すように矩形の平板からなる。図示例では、白下地W及び黒下地Bが一体化されているが、これらを別体に設けてもよい。
次に、白下地Wおよび黒下地B上に、各種顔料を単体で含む複数種の塗料を塗布し、塗膜を形成する。顔料は、一般に赤、青、黄、黒、白といった色彩を付与する為に、塗料中に分散されている微粒子である。本実施形態では、まず、白下地W及び黒下地Bの上に、顔料P1、P2、P3・・・をそれぞれ単体で所定の濃度で含む塗料を所定の膜厚(例えば15μm)で塗布する。尚、塗膜の表面は光沢が不足し、表面の散乱が後の反射率の計測に悪影響を及ぼすことがあるので、例えばクリアコートを所定の膜厚(例えば数十μm)で塗装してもよい。そして、測定部2により、各下地W,B上の、各種顔料P1、P2・・・を単体で含む塗膜の表面の変角分光反射率係数(RP1,W、RP1,B)、(RP2,W、RP2,B)・・・を測定すると共に、当該塗膜の膜厚XP1、XP2・・・を測定する。
次に、白下地Wおよび黒下地B上に、各種光輝材を単体で含む複数種の塗料を塗布し、塗膜を形成する。光輝材は、メタリック系塗料に含まれる金属光輝材と、パール系塗料に含まれる干渉性光輝材とに大別される。金属光輝材は、一般にアルミ等の金属のフレークで、鱗状を成し、平均径は数μm〜100μm程度である。金属光輝材は光を透過しない。一方、干渉性光輝材は、パール色を呈する材料で、微粉砕された雲母(マイカ)の表面に、屈折率の異なる酸化金属を1層〜多層コーティングされたものである。屈折率の異なる複数層間の界面でFresnelの反射が生じ、これにより生じる光の干渉を利用して、パール色(照明と受光の角度によって色相が異なる)を呈する。
次に、各下地W,Bの変角分光反射率係数RW、RB、顔料P1のみを有する塗膜の変角分光反射率係数(RP1,W、RP1,B)及び膜厚XP1から、顔料P1のみを有する塗膜の、任意の膜厚及び任意の下地色(明度)における、受光角度θごと、波長λごとの散乱係数SP1及び吸収係数KP1を算出する。この散乱係数SP1及び吸収係数KP1は、顔料の光学モデル(クベルカ・ムンク理論)に基づいて算出することができる。散乱係数SP1及び吸収係数KP1の算出は、測定部2に内蔵された演算部(図示省略)、あるいはコンピュータ3の演算部6で行われる。同様に、顔料P2、P3・・・を単体で含む各塗膜の、任意の膜厚及び任意の下地色(明度)における、受光角度θごと、波長λごとの散乱係数SP2、SP3・・・及び吸収係数KP2、KP3・・・を算出する。尚、計測した変角分光反射率係数は、表面のクリア層と空気との界面で生じるFresnelの反射によって引き起こされる、表面での鏡面反射及び内部の鏡面反射の影響を受けることがある。従って、計測した変角分光反射率係数を、Saundersonの補正方法等により、上記の鏡面反射の影響を受けない理想的な反射の状態に補正してもよい。
次に、各下地W,Bの変角分光反射率係数RW、RB、光輝材E1のみを有する塗膜の変角分光反射率係数(RE1,W、RE1,B)及び膜厚XE1から、光輝材E1のみを有する塗膜の被覆率PE1を算出する。この被覆率PE1に基づいて、任意の膜厚及び任意の下地色(明度)における、受光角度θごと、波長λごとの変角分光反射率係数RE1を算出する。被覆率PE1及び変角分光反射率係数RE1の算出は、測定部2に内蔵された演算部(図示省略)、あるいはコンピュータ3の演算部6で行われる。同様に、光輝材E2、E3・・・を単体で含む各塗膜の被覆率PE2、PE3・・・、及び、任意の膜厚及び任意の下地色(明度)における、受光角度θごと、波長λごとの変角分光反射率係数RE2、RE3・・・を算出する。
以上のステップS1〜S5で得られた各データが、入力部4を介してコンピュータ3の記憶部5に伝達され、材料データベースとして記憶される(図3参照)。各データは、測定あるいは算出後すぐにコンピュータ3の記憶部5に転送してもよいし、測定部2内のメモリに一旦格納した後、最後にまとめて記憶部5に転送してもよい。
次に、図4に示す手順を経て塗色を再現する再現計算手段を構築し、この再現計算手段をコンピュータ3にインストールする。以下、塗色の算出の各手順を詳しく説明する。
まず、塗装対象物(例えば自動車のボデー)のデザイン段階において、当該塗装対象物の塗色を決定すると共に、その塗色を出すための試作塗料を作製する。そして、白下地W及び黒下地Bの上に、所定の膜厚(例えば15μm)で試作塗料を塗布して塗膜を形成する。尚、塗膜の表面に、クリアコートを所定の膜厚(例えば数十μm)で塗装してもよい。そして、測定部2により、白下地W及び黒下地B上に形成された試作塗料の塗膜の表面の変角分光反射率係数RC,W、RC,Bを測定すると共に、当該塗膜の膜厚XCを測定する。
次に、試作塗料の組成を定量する。具体的には、ステップS7で測定した試作塗料の塗膜の変角分光反射率係数RC,W、RC,Bと、記憶部5に記憶された材料データベースとから、試作塗料の組成を定量する。詳しくは、試作塗料の塗膜の変角分光反射率係数RC,W、RC,Bと、材料データベースに含まれる、各下地W,B上の各種顔料P1、P2・・・の変角分光反射率係数(RP1,W、RP1,B)、(RP2,W、RP2,B)・・・、及び各種光輝材E1、E2・・・の変角分光反射率係数(RE1,W、RE1,B)、(RE2,W、RE2,B)・・・とを比較することで、試作塗料に含まれる顔料及び光輝材の種類及び配合比を算出する。尚、試作資料の組成が予め分かっている場合は、ステップS7(白下地W及び黒下地B上への試作塗料の塗布、及び変角分光反射率係数RC,W、RC,Bの測定)及びステップS8(試作塗料の定量)を省略することもできる。
次に、試作塗料の塗膜に含まれた顔料に起因する散乱係数及び吸収係数を算出する。具体的には、材料データベースのうち、試作塗料に含まれた顔料(例えばP1及びP3)の散乱係数SP1、SP3に、試作塗料における各顔料の配合比を掛けた上で、これらを合成することにより、試作塗料に含まれる顔料に起因する散乱係数SPが算出される。同様に、選択した顔料P1,P3の吸収係数KP1、KP3に、試作塗料における各顔料の配合比を掛けた上で、これらを合成することにより、試作塗料に含まれる顔料に起因する吸収係数KPが算出される。こうして得られた散乱係数SP及び吸収係数KPから、任意の膜厚及び任意の下地色における、試作塗料に含まれる顔料に起因する変角分光反射率係数RPが算出される。尚、ステップS4で、理想状態の変角分光反射率係数に補正した場合、その逆関数を用いて、実際の状態の変角分光反射率係数に補正してもよい。
次に、試作塗料の塗膜に含まれた光輝材に起因する変角分光反射率係数を算出する。具体的には、材料データベースのうち、試作塗料に含まれた光輝材(例えばE2及びE4)の変角分光反射率係数RE2、RE4に、試作塗料における各光輝材の配合比を掛けた上で、これらを合成することにより、任意の膜厚及び任意の下地色における、試作塗料に含まれる光輝材に起因する変角分光反射率係数REが算出される。
次に、ステップS9で求めた、試作塗料に含まれる顔料に起因する変角分光反射率係数RPと、ステップS10で求めた、試作塗料に含まれる光輝材に起因する変角分光反射率係数REとを合成することにより、試作塗料の塗膜の、任意の膜厚及び任意の下地色における変角分光反射率係数Rを算出する。そして、この変角分光反射率係数Rに基づいて、任意の膜厚及び任意の下地色における、試作塗料の塗膜の塗色(例えば、三刺激値XYZやL*a*b*値)を算出する。以上のステップS8〜S11により試作塗料を用いた塗膜の塗色を再現する再現計算手段(プログラム)が、コンピュータ3の演算部6に予めインストールされる。
(ステップS12)
次に、再現計算手段がインストールされた演算部6により、膜厚及び下地色の最適値を設定する。具体的には、図5に示すように、まず、再現計算手段を用いて、膜厚及び下地色(例えば明度L*)を変動させながら反復計算を行い、設定された範囲内における任意の膜厚及び任意の下地色において、塗膜の膜厚を微小変動させたときの塗色の変動を算出する。例えば、膜厚が10〜20μm、下地の明度L*が2〜90の範囲内のあらゆる膜厚及び下地の明度において、膜厚を±1μm変動させたときの塗色の変動を算出する。
次に、膜厚を微小変動させたときの塗色の変動が所定範囲内となる、膜厚及び下地色の許容範囲が設定される。これにより、この許容範囲内の膜厚及び下地色であれば、塗装条件の変動等により膜厚が製品ごとあるいは部位ごとに微妙に変動した場合でも、この膜厚変動が引き起こす塗色の変動を抑えて、目標色と一致し、且つ、均一な塗色を得ることができる。図6のグラフでは、全ての受光角度θにおいて、塗色の変動が所定値以下の領域(色が所定よりも濃い領域。図中に散点で囲まれた領域。)が、膜厚及び下地色の許容範囲となる。
上記で設定した膜厚及び下地色の範囲内において、最小の膜厚と、これに対応する下地色とが、膜厚及び下地色の最適値となる。図6では、散点で囲まれた許容範囲のうち、膜厚が最小となる点(×印)の膜厚及び下地色が最適値となる。
2 測定部
3 コンピュータ
4 入力部
5 記憶部
6 演算部
7 表示部
W 白下地
B 黒下地
Claims (3)
- 顔料及び光輝材を含む試作塗料を下地の上に塗装する際の、塗膜の膜厚及び下地色の最適条件をシミュレーションにより設定するための方法であって、
任意の膜厚及び任意の下地色において、膜厚を微小変動させたときの塗色の変動を算出する工程と、
前記塗色の変動が所定範囲内となる膜厚及び下地色の範囲を設定する工程と、
前記膜厚及び下地色の範囲内における最小の膜厚、及びこれに対応する下地色を、膜厚及び下地色の最適値として設定する工程とを備えた塗装条件設定方法。 - 各種顔料を単体で含む複数種の塗膜の、任意の膜厚及び任意の下地色における散乱係数及び吸収係数と、各種光輝材を単体で含む複数種の塗膜の、任意の膜厚及び任意の下地色における変角分光反射率係数とを含む材料データベースを作成する工程と、
前記材料データベースと前記試作塗料の組成とから、前記試作塗料に含まれる顔料に起因する変角分光反射率係数と、前記試作塗料に含まれる光輝材に起因する変角分光反射率係数とを算出する工程と、
前記試作塗料に含まれる顔料に起因する変角分光反射率係数と、前記試作塗料に含まれる光輝材に起因する変角分光反射率係数とを合成することにより、任意の膜厚及び任意の下地色における塗色を再現する再現計算手段を構築する工程とを有し、
前記再現計算手段を用いて反復計算を行うことにより、膜厚及び下地色の最適値を求める請求項1に記載の塗装条件設定方法。 - 顔料及び光輝材を含む試作塗料を下地の上に塗装する際の、塗膜の膜厚及び下地色の最適条件を、コンピュータに設定させるためのプログラムであって、
任意の膜厚及び任意の下地色において、膜厚を微小変動させたときの塗色の変動を算出する工程と、
前記塗色の変動が所定範囲内となる膜厚及び下地色の範囲を設定する工程と、
前記膜厚及び下地色の範囲内における最小の膜厚、及びこれに対応する下地色を、膜厚及び下地色の最適値として設定する工程とを、コンピュータに実行させるためのプログラム。
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