JP2017190256A - 炭酸カルシウム複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】リン1gあたりの吸油量を向上させた炭酸カルシウム複合体を提供する。
【解決手段】本発明の炭酸カルシウム複合体は、カルサイト型炭酸カルシウムと、
カルサイト型炭酸カルシウムの外周に形成される水酸アパタイト層、とからなり、リンの重量に対する吸油量が、15ml/g以上である
【選択図】なし

Description

本発明は、カルシウムとリンとの反応物を含む炭酸カルシウム複合体に関する。
石灰石(炭酸カルシウム)は、国内で産出される数少ない資源で、石灰石での利用、焼成して生石灰(酸化カルシウム)として利用、生石灰を水と反応させた消石灰(水酸化カルシウム)として利用、さらには消石灰の乳液を二酸化炭素ガスと反応させた炭酸カルシウムとしての利用が行われている。
石灰石での利用としては、粘土とともに焼結させてセメントとする以外にも、そのまま粉砕した砕石や、紙・プラスチックなどのへの増量材的なフィラー(充填剤)などがある。
生石灰(酸化カルシウム)は、土壌改良剤や製鉄・製紙などの工業用途などへも使用され、消石灰(水酸化カルシウム)は、中和剤や肥料などへ使用されている。また、水酸化カルシウムが炭酸化されることで、炭酸カルシウムが得られる。
例えば、消石灰である水酸化カルシウム水懸濁液を二酸化炭素ガスと反応させて炭酸化することで、炭酸カルシウムが得られる。この炭酸カルシウムは、プラスチック・ゴム・シーラントなどの工業用のフィラーとして使用される。粉砕された石灰石も同じように炭酸カルシウムと呼ばれる。したがって、両者を区別するために、石灰石を粉砕した炭酸カルシウムを重質炭酸カルシウムと呼び、水酸化カルシウム水懸濁液を二酸化炭素ガスと反応させた炭酸カルシウムを軽質炭酸カルシウムと呼び分けられるのが一般的である。
しかし、重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムとでは、性状に大きな違いがある。重質炭酸カルシウムは、石灰石を粉砕したものなので粒子径サイズがせいぜいミクロンオーダーであり粒度分布も幅広くなる。また、形状も不均一であり表面が角ばっている。したがって、重質炭酸カルシウムは増量を主目的とするフィラーとして使用されるケースが多い。
これに対して、軽質炭酸カルシウムは水酸化カルシウム水懸濁液と二酸化炭素ガスとの炭酸化反応の諸条件、例えば反応温度や反応時間などを変えることで、球状、立方体状、紡錘状、針状、板状など種々の形状のものが得られ、その形状により、分散性、流動性、光輝性、配向性などの特性が得られる。また、粒子サイズを制御でき、粒度分布幅を非常に小さくすることも可能であり、白色性も高いという利点を有している。軽質炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムとは違って増量のみでなく、種々の機能を発揮するフィラーとして工業的に利用されている。
一方で、炭酸カルシウムは、中性ではなく弱アルカリ性であるので、皮膚や人体への刺激性があるという問題を有している。このため、上述のように炭酸カルシウムが、工業製品、化粧品、美容製品などの添加剤として使用される場合には、刺激性を回避するために適用用途が限られる問題を有している。また、炭酸カルシウムは表面に官能基を有していないので、水素結合などの他物質との相互作用が期待できない。このため、吸着性能に劣り、生体活性に劣る問題も有している。
更に、炭酸カルシウムは、油分を吸収する吸油性が不十分である。この吸油性が不十分であると、工業製品の添加剤に使用される場合には、吸収しきれない油分が漏れ出す問題もある。
このような状況で、炭酸カルシウムと水酸アパタイトを複合する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
特開2006−44966号公報 特開平11−180705号公報 特開平09−183617号公報
特許文献1〜3は、炭酸カルシウムと水酸アパタイトの複合体を開示している。
炭酸カルシウムと水酸アパタイトの複合体が形成されると、水酸アパタイト層は、官能基を有する。この官能基は、吸着性能を高め、生体活性を高めることができる。この結果、樹脂や紙などの工業製品に添加される場合には、混合時の他の物質との親和性が高まり、製造される工業製品の耐久性や加工性を高めることができる。あるいは、化粧料に添加される場合には、官能基による吸着性や生体活性の高まりで、肌へのなじみがよくなり肌への種々の悪影響を低減できる効果がある。
特許文献1〜3の技術のように、炭酸カルシウムとリン酸カルシウムである水酸アパタイトを複合することで、炭酸カルシウムの表面特性を変え、これまでの炭酸カルシウムでは得られない反応性、親和性を付与することは、資源である石灰石の高付加価値化にもつながる。
特許文献1は、水酸化カルシウム水懸濁液に炭酸ガスを導入し、炭酸ガスの導入開始から、懸濁液がpH7〜8となる炭酸化終了までの間にリン酸の混合を行う技術を開示する。このリン酸の混合を開始することで、水酸アパタイトと炭酸カルシウムの複合粒子の製造方法を開示している。
特許文献1に開示される技術は、吸油量の増大を考慮していない。特許文献1の(0006)段には、脱水・乾燥・粉末化などの取り扱いに優れた10μm程度の複合体を目標としている。また、使用する消石灰は消石灰を粒状にした0.5〜2mmの粒径のものを使用しており、本来のあるべき粉末状の消石灰の使用ではない。このように、複合体の粒径が大きいことで、体積あたりの表面積が小さく、油分を取り込む隙間も少ない状態である。すなわち、特許文献1に開示される複合体は、吸油量の検討や考慮がなく、仮に使用しても粒径等の状況から、吸油量は少ないと考えられる。
特許文献2は、カルシウム含有固体物質を、リン酸イオンを含みかつpH7.0以上の水溶液と接触させる多孔質水酸アパタイトを少なくとも表層に有する固体物質の製造方法を開示する。
しかしながら、カルシウム含有固体物質としての炭酸カルシウム源として、石灰石、貝殻、ウニ殻、サンゴなどが使用されており、複合体の核となる炭酸カルシウムの粒径が極めて大きくなる。粒径が大きいと、特許文献1と同様に、体積当たりの表面積が小さくなり、吸油量が小さくなってしまう。
特許文献3は、複数のパラメータと関係式を満足する粒子からなる多孔質炭酸カルシウム系化合物を開示する。ここで、吸油量としては、複合体100gあたり50ml〜300mlである。特許文献3は、特許文献1、2と異なり、吸油量についての言及や考慮はあるが、100gあたりの吸油量が上述程度では、工業製品や化粧料に混合する複合体としては不十分である。
特に、特許文献3は、化粧品への利用展開のみを考慮しており、油分漏えいなどを生じさせない工業製品に複合体を混合する場合に対応しきれていない。
例えば、工業製品に混合する場合においては、油分漏えいを防止するには、更に高い吸油量が必要である。特許文献3に開示される技術は、この点までの考慮をしていない。
また、特許文献3に開示される化合物は、分散性や粒径分布幅などのパラメータも合せた炭酸カルシウム系化合物である。特許文献3の(0008)段には、リン酸化合物の反応量をある以上にさせることで、変曲点が生じてBET比表面積がそれ以上大きくならないことが記載されている。
BET比表面積と吸油量には直線関係があることから、リン酸化合物との反応量を増加させても有用なリンを吸油量増加に結び付けることができない。このため、特許文献3の化合物は、当該文献に記載の実施例に基づいて、吸油量は、最大200ml/100gであり、リン酸の使用量から算出されるリン1gあたりの吸油量は13ml/gを下回っている。この程度では、工業製品においても化粧料においても、十分な吸油量とは言い難い問題がある。
特に、リンは、高価かつ希少な資源である。リンの単位量に対する吸油量が低いことは、十分な吸油量を有する複合体を製造するにあたって、高価かつ希少なリンを、多く使用することになってしまう。これは、当然に製造される複合体を高コストにしてしまう問題がある。また、更に言えば、リンを多く使用する必要があり、地球環境や希少資源にとって好ましくない問題がある。
以上のように、特許文献1〜3の技術は、吸油量の検討や考慮の開示が無いか、少ない吸油量でしかない、問題を有している。
ここで、炭酸カルシウムと水酸アパタイトの複合体は、上述したように、樹脂や紙などの工業製品に混合される。このような工業製品は、混合物の一つとして油分が添加される。
製造された工業製品は、添加されるこの油分が、製造後に染み出るなどの問題を発生させることがある。このような油分の漏出は、混合される炭酸カルシウムと水酸アパタイトの複合体によって低減されることが求められる。しかしながら、特許文献1〜2の複合体は、吸油量を向上させる技術を開示も考慮もしていない。特許文献3は、吸油量が複合体100gあたり50ml〜300mlであって、高い吸油量やこれを実現する技術を想定、開示していない。
このため、特許文献1〜3の炭酸カルシウム複合体などは、工業製品に添加される場合でも、製造後の工業製品の油分の漏出を防止できない問題がある。製造後の工業製品から油分が漏出してしまうと、工業製品の品質、使い勝手、使用後の完成品の質などに悪影響を与える問題もある。
また、吸油量の小さい炭酸カルシウム複合体が化粧料などの生体用に使用される場合には、肌からの皮脂の吸着が充分でなく、肌へのなじみが弱くなる。更には、吸着できなかった皮脂は悪臭の原因ともなる。吸油量の検討や考慮のない特許文献1〜2、低い吸油量の技術である特許文献3の炭酸カルシウム複合体は、生体用に使用される場合には、このような問題を有している。
更には、これらの複合体を製造する工程でリンを使用するが、リンは高価で希少な資源である。このリンの使用量に対する吸油量が少ない場合には、資源効率やコスト効率が悪い問題を生じさせてしまう。
すなわち、炭酸カルシウムを添加材として工業利用や生体利用する場合には、(1)高い吸油量、(2)高価で希少な資源であるリン1gあたりの高い吸油量が実現されていることが必要である。特許文献1〜3のような従来技術は、この(1)、(2)を実現できておらず、工業利用や生体利用での利用後の不十分さ(油の漏えいや生体との馴染みの弱さ、コスト問題)を、有していた。
本発明は、これらの課題に鑑み、リン1gあたりの吸油量を向上させた炭酸カルシウム複合体を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明の炭酸カルシウム複合体は、カルサイト型炭酸カルシウムと、
前記カルサイト型炭酸カルシウムの外周に形成される水酸アパタイト層、とからなり、
リンの重量に対する吸油量が、15ml/g以上である。
本発明の炭酸カルシウム複合体は、工業利用や生体利用のいずれであっても、従来技術の問題を生じさせにくいレベルでの十分な吸油量を実現できる。加えて、高価で希少な資源であるリン1gあたりでの高い吸油量を実現できる。
また、リン1gあたりの高い吸油量を実現できることで、炭酸カルシウム複合体の製造コストを抑えることができる。
この高い吸油量によって、炭酸カルシウム複合体が工業製品に混合される場合でも、製造後の油分吸着力が高く、油分の漏えいを低減できる。また、化粧料などの生体用に混合される場合には、皮脂の吸着力が高くなる。
また、本発明の炭酸カルシウム複合体は、正リン酸を添加するだけで水酸アパタイト層を形成できるので、製造コストを低減でき、広い供給を実現できる。
本発明の実施の形態1における炭酸カルシウム複合体の模式図である。 本発明の実施の形態1における炭酸カルシウム複合体の製造工程の工程図である。 本発明の実施の形態2における実施例3の炭酸カルシウム複合体のSEM写真である。 本発明の実施例3の炭酸カルシウム複合体のX線回折結果を示す図面である。
本発明の第1の発明に係る炭酸カルシウム複合体は、カルサイト型炭酸カルシウムと、前記カルサイト型炭酸カルシウムの外周に形成される水酸アパタイト層、とからなり、リンの重量に対する吸油量が、15ml/g以上である。
この構成により、高価で希少である物質のリンを単位とした吸油量を向上させ、工業製品や化粧料に混合する際に、油分を蓄えることでのメリットを供する炭酸カルシウム複合体が実現できる。
本発明の第2の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第1の発明に加えて、カルシウムとリン(Ca/P)のモル比率が、1.8〜25である。
この構成により、炭酸カルシウム複合体の吸油量を、リン1gあたり15ml以上にできる。特に、最終的に得られる炭酸カルシウム複合体に含まれるリンの量を相対的に減らすことができ、リン1gあたりの吸油量を向上させることができる。
本発明の第3の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第1または第2の発明に加えて、前記炭酸カルシウム複合体全体の重量に対する吸油量が、150ml/100g以上である。
この構成により、高価で希少である物質のリンを単位とした吸油量を向上させ、工業製品や化粧料に混合する際に、油分を蓄えることでのメリットを供する炭酸カルシウム複合体が実現できる。
本発明の第4の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記炭酸カルシウムは、X線回折で測定した結晶子サイズが70nm未満である。
この構成により、本発明の炭酸カルシウム複合体は、体積に対する表面積等を大きくでき、吸油量を高めることができる。
本発明の第5の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記炭酸カルシウムは、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を一部に含む製造工程で製造された。
この構成により、水酸化カルシウム水懸濁液から、炭酸カルシウムと、カルシウムとリンの反応物を生成できる。この生成によって、炭酸カルシウム複合体が製造できる。
本発明の第6の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第5の発明に加えて、前記二酸化炭素ガスを添加する前から前記炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点において、前記水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満の正リン酸および正リン酸塩の少なくとも一方を加える第1添加工程を、更に備える前記製造工程で製造された。
この構成により、本発明の炭酸カルシウム複合体は、体積に対する表面積等を大きくでき、吸油量を高めることができる。
本発明の第7の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第6の発明に加えて、前記第1添加工程の後で、前記水酸化カルシウム水懸濁液に、正リン酸を添加する第2添加工程を更に備え、前記第2添加工程は、前記水酸アパタイト層を形成する。
この構成により、本発明の炭酸カルシウム複合体は、体積に対する表面積等を大きくでき、吸油量を高めることができる。また、結晶子サイズを70nm未満にすることができ、吸油量を高めることができる。
本発明の第8の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第7の発明に加えて、前記第2添加工程開始時の、前記水酸化カルシウム水懸濁液の工程管理温度が、25℃以上85℃以下である。
この構成により、本発明の炭酸カルシウム複合体は、体積に対する表面積等を大きくでき、吸油量を高めることができる。また、結晶子サイズを70nm未満にすることができ、吸油量を高めることができる。
本発明の第9の発明に係る炭酸カルシウム複合体では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、前記水酸アパタイト層は、鱗片形状を有する。
この構成により、油分を蓄える空間を増加させて、吸油量を高めることができる。
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
(全体概要)
実施の形態1における炭酸カルシウム複合体は、カルサイト型炭酸カルシウムと、カルサイト型カルシウムの外周に形成される水酸アパタイト層からなる。図1は、本発明の実施の形態1における炭酸カルシウム複合体の模式図である。図1に示される通り、炭酸カルシウム複合体1は、カルサイト型炭酸カルシウム2と、この外周に形成される水酸アパタイト層3と、からなる。
この炭酸カルシウム複合体は、リンを含有する。このとき、炭酸カルシウム複合体1は、リンの重量に対する吸油量が、15ml/g以上である。すなわち、炭酸カルシウム複合体は、リン1gあたりの吸油量を、15ml以上とする。
このリン1gあたり15ml/g以上の吸油量を有することで、実施の形態1における炭酸カルシウム複合体は、工業製品に混合される場合でも、製造後の油分吸着力が高く、油分の漏えいを低減できる。また、化粧料に混合される場合には、皮脂の吸着力が高く、肌へのなじみが高くなる。
このように、実施の形態1における炭酸カルシウム複合体は、高い吸油量を有することで、工業製品に混合される場合でも、製造後の油分吸着力が高く、油分の漏えいを低減できる。また、化粧料に混合される場合には、皮脂の吸着力が高く、肌へのなじみが高くなる。
(製造方法)
実施の形態1における炭酸カルシウム複合体は、次のような製造方法によって製造される。図2は、本発明の実施の形態1における炭酸カルシウム複合体の製造工程の工程図である。以下に、図2を用いて、製造工程の概要を説明する。なお、各工程の詳細については、必要に応じて、本発明の炭酸カルシウム複合体の吸油量への好影響などを説明する際に、追加して説明する。
まず、水酸化カルシウム水懸濁液が準備される。水酸化カルシウム水懸濁液は、市販されている消石灰を懸濁液として使用してもよいし、生石灰を水と混合して消化工程を経て、水酸化カルシウム水懸濁液を得てもよい。
次いで、この水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程が実施される。
ここで、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが水酸化カルシウム水懸濁液に添加される前から、炭酸化工程が終了するまでの間のいずれかの時点において、正リン酸および正リン酸塩の少なくとも一方が添加される第1添加工程が実施される。この第1添加工程において正リン酸および正リン酸塩の少なくとも一方が添加されることで、炭酸化工程が進んで炭酸カルシウムが得られ、合わせて、結晶子サイズが70μm未満となるように調整される。
この炭酸化工程と第1添加工程によって、水酸化カルシウム水懸濁液において、カルサイト型炭酸カルシウムの粒が生成される。これらの工程終了後においては、懸濁液中に、粒状のカルサイト型炭酸カルシウムが含まれた状態となる。なお、第1添加工程が用いられない場合でも、カルサイト型炭酸カルシウムの粒が生成される。
第1添加工程は、最終的に得られる炭酸カルシウムの結晶子サイズを70nm未満に小さくする効果を奏する。この炭酸カルシウムの結晶子サイズを70nm未満に小さくすることで、最終的に得られる炭酸カルシウム複合体のリン1gあたりの吸油量を増加15ml以上とすることができる。
いずれかの工程を経た炭酸カルシウム水懸濁液に、正リン酸が添加される第2添加工程が実施される。この第2添加工程によって、粒状の炭酸カルシウムの外周に、水酸アパタイト層が形成される。
最終的に、脱水乾燥させることで、水酸アパタイト層が外周に形成された炭酸カルシウム複合体が得られる。
15ml/g以上の吸油量を有することで、炭酸カルシウム複合体が、工業製品に混合される場合には、製造後の油分吸着力が高く、油分の漏えいを低減できるレベルとなる。この吸油量よりも低い場合には、油分の漏えいを十分に防止できない。あるいは、炭酸カルシウム複合体が、化粧料に混合される場合には、皮脂の吸着力が高く、肌へのなじみが高くなる。この吸油量よりも低い場合には、吸油量が小さいことで、皮脂への吸着力が不十分となり、肌へのなじみが弱くなってしまう。
このため、リン1gあたりの吸油量が、15ml/g以上であることが、炭酸カルシウム複合体が工業製品や化粧料に混合されて、種々の問題点を解決しつつ、より高い混合効果を発揮できるレベルである。
この吸油量を実現する種々の工夫について説明する。
(炭酸カルシウムの結晶子サイズ)
上述の吸油量を実現するためには、炭酸カルシウム複合体を構成する炭酸カルシウムの結晶子サイズが、X線回折で測定した結果として、70nm以下であることが好ましい。図1のように、炭酸カルシウム複合体1は、粒状の炭酸カルシウム2と、外周に形成される水酸アパタイト層3とからなる。
この図1に示される炭酸カルシウム2の結晶子サイズが、X線回折で測定した結果として、70nm以下であることが好ましい。炭酸カルシウムは、X線回折で測定した結晶子サイズにおいて、70nmを超えると炭酸カルシウム複合体のリン1gあたりの吸油量が15ml/gを下回ることになるので好ましくない。
(炭酸化工程の開始温度)
ここで、炭酸カルシウム複合体1における炭酸カルシウム2の結晶子サイズを70nm以下にするには、上述した水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程における水酸化カルシウム水懸濁液の温度である開始温度を、75℃以下にする。
開始温度が75℃以下であれば、得られる炭酸カルシウム2の結晶子サイズは、70nmにできる。この結果、炭酸カルシウム複合体のリン1gあたりの吸油量を、15ml以上とできる。
(第1添加工程とその制御)
第1添加工程において、正リン酸および正リン酸塩の少なくとも一方を水酸化カルシウム水懸濁液に添加することにより、炭酸カルシウム複合体のリン1gあたりの吸油量を、15ml/g以上にできる。
第1添加工程は、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する前から炭酸化工程の完了までのいずれかの時点で、正リン酸もしくは正リン酸塩を、水酸化カルシウム水懸濁液に混合する。
第1添加工程においては、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加される。添加される正リン酸もしくは正リン酸塩が、この量に調整されることで、結晶子サイズを70nm以下としつつ、最終的に得られる炭酸カルシウム複合体のリン1gあたりの吸油量を15ml以上とできる。
(第2添加工程とその制御)
第1添加工程に続いて、第2添加工程が実施される。第2添加工程は、第1添加工程の終了した水酸化カルシウム水懸濁液に、正リン酸を添加する。この第2添加工程によって、炭酸カルシウムの外周に、水酸アパタイト層が形成される。
ここで、第2添加工程開始時の、水酸化カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが好適である。工程管理温度が、この範囲に制御されることで、製造される炭酸カルシウム複合体は、リン1gあたりの吸油量を15ml以上とできる。
また、第2添加工程によって、炭酸カルシウムの外周に水酸アパタイト層が形成される。このとき、第2添加工程開始時の水酸化カルシウム水懸濁液の工程管理温度が、25℃以上85℃以下に制御されることで、形成される水酸アパタイト層は、鱗片形状を有するようになる。
鱗片状であることで、水酸アパタイト層3は、多くの場所に細かな空間を形成できる。この空間は、鱗片状の水酸アパタイトの結晶によって周囲の一部を囲まれており、完全に閉じてはいないが周囲を囲まれた空間となる。このため、油分を蓄えやすい形態である。
また、この細かな空間は、多数の場所に形成される。このため、一つの炭酸カルシウム複合体1において、多数の、囲まれた細かな空間が形成される。このように、囲まれた細かな空間は、油分を蓄えることのできる多数の空間である。
水酸アパタイト層3が、鱗片状であることで、油分を蓄えやすい空間が多数形成される。結果として、水酸アパタイト層3を有する炭酸カルシウム複合体1は、リン1gあたりの吸油量を高くすることができる(15ml/g以上とできる)。
(カルシウムとリンのモル比率の制御)
上述したように、水酸化カルシウム水懸濁液に、第1添加工程および第2添加工程のそれぞれで、正リン酸や正リン酸塩が添加される。すなわち、製造される炭酸カルシウム複合体は、カルシウムとリンを含む。
このとき、製造される炭酸カルシウム複合体においては、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、1.8〜25であることが好適である。この範囲にモル比率が制御されることで、製造される炭酸カルシウム複合体は、リン1gあたりの吸油量を、15ml以上とできる。
必要に応じて、炭酸化工程を経て得られる炭酸カルシウム水懸濁液を、脱水乾燥させて粉末化した後で、再度水溶される再水溶工程が、第2添加工程前に実施されてもよい。第2添加工程は、この再水溶工程で得られる水酸化カルシウム水懸濁液に、正リン酸を添加することもできる。
(炭酸カルシウム複合体全体での吸油量)
炭酸カルシウム複合体は、全体の重量に対する吸油量を、150ml/100g以上である。リン1gあたりの吸油量が、15ml以上であることで、高コストで貴重なリンに対する吸油量を高めることができる。これに合わせて、炭酸カルシウム複合体全体での吸油量を、150ml/100g以上とできることで、高い吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を実現できる。
このように、リン1gあたりおよび全体として高い吸油量を有することで、炭酸カルシウム複合体は、工業製品に混合される場合には、製造後の油分吸着力が高く、油分の漏えいを低減できるレベルとなる。この吸油量よりも低い場合には、油分の漏えいを十分に防止できない。あるいは、炭酸カルシウム複合体が、化粧料に混合される場合には、皮脂の吸着力が高く、肌へのなじみが高くなる。
また、リン1gあたりの高い吸油量を実現できることで、環境負荷も軽減できる。
なお、本発明の炭酸カルシウム複合体は、カルサイト型炭酸カルシウムとその外周の水酸アパタイト層からなり、リン1gあたりの吸油量が15ml以上であるものであるが、この物理的・化学的構造を有するための製造方法での定義が必要となる。このため、製造方向(製造工程)によって、本発明の炭酸カルシウム複合体が定義される。
以上のように、実施の形態1における炭酸カルシウム複合体は、リン1gあたりおよび全体での吸油量を高めることができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明した炭酸カルシウム複合体における、発明者による実施例等について説明する。
まず、製作された実施例等の結果を確認するそれぞれの実験(結晶子サイズ、炭酸カルシウム複合体の吸油量、リン1gあたりの吸油量)方法について説明する。
(結晶子サイズの確認実験方法)
炭酸カルシウム(カルサイト型炭酸カルシウムである)の結晶子サイズは、(104)面反射によりJADEを用いて測定した。リガク社製のX線回折装置MultiFlexを用いた測定条件を下記に示す。
管球:Cu
単色化:モノクロメーター(Kα線)
電圧:40kV
電流:30mA
(104)面反射:ピークトップ10000カウント以上
(炭酸カルシウム複合体の吸油量の測定方法)
炭酸カルシウム複合体の吸油量が、本発明の炭酸カルシウム複合体の重要な要素である。この吸油量は、次の条件で測定された。
JIS K5101に準じて、試料2gを精秤し、添加した煮アマニ油量を小数点2桁まで読み取り、試料100gでの吸油量を算出した。
(炭酸カルシウム複合体の、リン1gあたりの吸油量)
本発明の炭酸カルシウム複合体は、高価で希少な物質であるリン1gあたりでの吸油量を高める(15ml/g以上)を実現する。このため、このリン1gあたりの吸油量を測定する必要があり、次の条件で測定した。
リン酸との反応後、ろ液中にリンが存在しないことをICP発光分析装置にて確認し、使用したリンの量から複合体中のリンの重量%を算出し、複合体の吸油量をリンの重量%で除して求めた。
(炭酸化工程での炭酸化率の測定方法)
炭酸化工程の所定時の時期に乳液をサンプリングし、1mol/Lの塩酸滴定により炭酸化率を測定する。フェールフタレイン指示薬により、水酸化カルシウムと反応する塩酸量を求める。次いで、メチルオレンジ指示薬により、炭酸カルシウムと反応する塩酸量を求める。滴定した塩酸総量に対する炭酸カルシウムと反応した塩酸量を100分率(%)で求めて、炭酸化率とする。
(基本的な炭酸カルシウム複合体の製造工程)
実施例等における炭酸カルシウム複合体のそれぞれは、必要となる条件を変えること以外においては、次のような基本的な製造工程で製造される。
原料としては、純度96%の消石灰(Ca(OH))と、純度85%の正リン酸(HPO)が用意される。46.25gの消石灰に水を加えて、15℃の700mlの水酸化カルシウム水懸濁液が得られる。ここで、懸濁液の混合具合を高めるために、タービン羽根を用いて500rpmで撹拌される。
正リン酸が水で薄められて40mlの水溶液とされる。この正リン酸の水溶液が、水酸化カルシウム水懸濁液に添加される(第1添加工程)。この状態での水酸化カルシウム水懸濁液に、100%の二酸化炭素ガスを、1.2L/分の流量で加える(炭酸化工程)。
このようにして、炭酸化工程と第1添加工程が行われ、カルサイト型炭酸カルシウムが得られる。なお、第1添加工程で添加される正リン酸は、水酸化カルシウム水懸濁液に対して、15wt%未満である。
次いで、炭酸化工程の終わった水酸化カルシウム水懸濁液が、65℃の温度で加熱保持されて、タービン羽根を用いて、350rpmで撹拌される。24gの正リン酸が水で薄められて90mlの正リン酸の水溶液が得られる。この正リン酸の水溶液が、水酸化カルシウム水懸濁液に添加される(第2添加工程)。
この第2添加工程を経て、炭酸カルシウムの外周に水酸アパタイト層が形成された炭酸カルシウム複合体が製造される。次から説明する実施例等は、必要な条件を変える以外においては、この製造工程で製造されたものである。
(実験その1:炭酸カルシウムの結晶子サイズによる違いの確認)
(実験目的と方法)
基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で説明した製造方法において、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を変えながら炭酸カルシウム複合体を製造する。このように炭酸化開始温度を変えながら製造することで、製造される炭酸カルシウム複合体の結晶子サイズがさまざまに変更できる。この結晶子サイズの異なる炭酸カルシウム複合体の実施例、比較例の吸油量を、上述した方法で測定することで、結晶子サイズと吸油量との関係(結晶子サイズによって吸油量が増加しうること)を、実験その1では確認した。
表1は、実験その1の結果を示す表である。
表1には、実施例1〜実施例12および比較例1の実験条件と実験結果を示している。具体的には、表1は、条件を変更した炭酸化工程の開始する際の炭酸化開始温度、炭酸カルシウム複合体全体での100gあたりの吸油量、リン1gあたりの吸油量、炭酸カルシウム結晶子サイズ、およびカルシウムとリンのモル比率(Ca/P)を、示している。
以下に、実施例1〜実施例12、比較例1の製造と結果について説明する。
(実施例1)
実施例1は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、5℃として炭酸化工程が実現された。この5℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例1である。
実施例1の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、28.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、264mlであり、リン1gあたりの吸油量は、22.2mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例1の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例2)
実施例2は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、10℃として炭酸化工程が実現された。この10℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例2である。
実施例2の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、29.8nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、283mlであり、リン1gあたりの吸油量は、23.8mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例2の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例3)
実施例3は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、15℃として炭酸化工程が実現された。この15℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例3である。
実施例3の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、293mlであり、リン1gあたりの吸油量は、24.7mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例3の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例4)
実施例4は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、20℃として炭酸化工程が実現された。この20℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例4である。
実施例4の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、35.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、252mlであり、リン1gあたりの吸油量は、21.2mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例4の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例5)
実施例5は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、25℃として炭酸化工程が実現された。この25℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例5である。
実施例5の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、40.8nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、236mlであり、リン1gあたりの吸油量は、19.9mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例5の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例6)
実施例6は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、30℃として炭酸化工程が実現された。この30℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例6である。
実施例6の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、40.9nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、213mlであり、リン1gあたりの吸油量は、17.9mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例6の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例7)
実施例7は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、35℃として炭酸化工程が実現された。この35℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例7である。
実施例7の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、40.4nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、212mlであり、リン1gあたりの吸油量は、17.9mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例7の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例8)
実施例8は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、40℃として炭酸化工程が実現された。この40℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例8である。
実施例8の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、54.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、230mlであり、リン1gあたりの吸油量は、19.4mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例8の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例9)
実施例9は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、50℃として炭酸化工程が実現された。この50℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例9である。
実施例9の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、60.4nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、224mlであり、リン1gあたりの吸油量は、18.9mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例9の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例10)
実施例10は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、60℃として炭酸化工程が実現された。この60℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例10である。
実施例10の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、62.5nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、242mlであり、リン1gあたりの吸油量は、20.4mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例10の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例11)
実施例11は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、70℃として炭酸化工程が実現された。この70℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例11である。
実施例11の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、68.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、219mlであり、リン1gあたりの吸油量は、18.4mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例11の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(実施例12)
実施例12は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、75℃として炭酸化工程が実現された。この75℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例12である。
実施例12の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、68.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、224mlであり、リン1gあたりの吸油量は、18.9mlである。
このように、結晶子サイズが70nm未満であることで、実施例12の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。
(比較例1)
比較例1は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程を開始する際の炭酸化開始温度を、95℃として炭酸化工程が実現された。この95℃の炭酸化開始温度での炭酸化工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が比較例1である。
比較例1の炭酸カルシウム複合体では、表1に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、71.2nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、145mlであり、リン1gあたりの吸油量は、12.2mlである。
このように、結晶子サイズが70nm以上であることで、比較例1の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以下であり、リン1gあたりでは15ml以下であって、いずれの基準も満たさない。
以上のように、実験その1から、炭酸カルシウムのX線回折による結晶子サイズが、70nm未満であることが、吸油量(全体およびリン1gあたり)を高めることに好適であることが確かめられた。
また、実験その1により、炭酸化開始温度は、75℃以下であることが好ましい。なお、カルシウムとリンとのモル比率(Ca/P)は、いずれも2.6である。
(実験その2:第1添加工程での正リン酸添加量による違い)
(実験目的と方法)
実験その2は、第1添加工程(炭酸化工程に合わせて正リン酸を加える工程)で添加される、正リン酸の添加量による違いを実験した。上述した基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で説明した製造方法において、第1添加工程で添加する正リン酸の量(水酸化カルシウム水懸濁液に対する量)を変えながら炭酸カルシウム複合体を製造した。このように量を変えながら製造することで、製造される炭酸カルシウム複合体の吸油量が変化することを確認し、第1添加工程で添加される正リン酸の量の最適値を確認した。
表2は、実験その2の結果を示す表である。
表2には、実施例13〜実施例18および比較例2、3の実験条件と実験結果を示している。具体的には、表2は、条件を変更した第1添加工程での正リン酸の添加量、炭酸カルシウム複合体全体での100gあたりの吸油量、リン1gあたりの吸油量、炭酸カルシウム結晶子サイズ、およびカルシウムとリンのモル比率(Ca/P)を、示している。
以下に、実施例13〜実施例18、比較例2、3の製造と結果について説明する。
(実施例13)
実施例13は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して正リン酸は、添加されていない。
実施例13の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、49.8nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、194mlであり、リン1gあたりの吸油量は、18.1mlである。
このように、実施例13の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(実施例14)
実施例14は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して3wt%の正リン酸が添加された。3wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例14である。
実施例14の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、33.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、267mlであり、リン1gあたりの吸油量は、22.5mlである。
このように、実施例14の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満である3wt%の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(実施例15)
実施例15は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して4wt%の正リン酸が添加された。4wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例15である。
実施例15の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、33.5nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、278mlであり、リン1gあたりの吸油量は、23.4mlである。
このように、実施例15の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満である4wt%の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(実施例3)
実施例3は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して5wt%の正リン酸が添加された。4wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例3である(実験その1で説明した実施例3である)。
実施例3の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、293mlであり、リン1gあたりの吸油量は、24.7mlである。
このように、実施例3の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満である5wt%の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(実施例16)
実施例16は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して6wt%の正リン酸が添加された。6wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例16である。
実施例16の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.2nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、282mlであり、リン1gあたりの吸油量は、23.8mlである。
このように、実施例16の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満である6wt%の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(実施例17)
実施例17は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して8wt%の正リン酸が添加された。8wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例17である。
実施例17の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、26.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、271mlであり、リン1gあたりの吸油量は、22.8mlである。
このように、実施例17の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満である8wt%の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(実施例18)
実施例18は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して10wt%の正リン酸が添加された。10wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が実施例18である。
実施例18の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、28.2nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、240mlであり、リン1gあたりの吸油量は、20.2mlである。
このように、実施例18の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程で添加される正リン酸が、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満である10wt%の正リン酸もしくは正リン酸塩が添加されることが、基準となる吸油量を実現するのに適していることが確認された。
(比較例2)
比較例2は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%の正リン酸が添加された。15wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が比較例2である。
比較例2の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、50.4nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、174mlであり、リン1gあたりの吸油量は、14.7mlである。
比較例2の炭酸カルシウム複合体は、全体での吸油量は、基準である150ml/100gを超えているが、リン1gあたりの吸油量では、基準である15mlをわずかに割っている。このため、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%の正リン酸が第1添加工程で添加されることは、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体にとって好ましくない。
リン1gあたりの吸油量が、基準をわずかに割っていることと実施例18などを考慮すると、第1添加工程で添加される正リン酸は、水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満の量であることが適している。
(比較例3)
比較例3は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第1添加工程で、水酸化カルシウム水懸濁液に対して30wt%の正リン酸が添加された。30wt%の正リン酸が添加される第1添加工程を含んで製造された炭酸カルシウム複合体が比較例3である。
比較例3の炭酸カルシウム複合体では、表2に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、59.1nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、156mlであり、リン1gあたりの吸油量は、13.1mlである。
比較例3の炭酸カルシウム複合体は、全体での吸油量は、基準である150ml/100gを超えているが、リン1gあたりの吸油量では、基準である15mlをわずかに割っている。このため、水酸化カルシウム水懸濁液に対して30wt%の正リン酸が第1添加工程で添加されることは、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体にとって好ましくない。
以上のように、実験その2から、第1添加工程においては、水酸化カルシウム水懸濁液に対して、15wt%未満の正リン酸が添加されることが、基準とする吸油量の実現のために必要であることが確認された。
(実験その3:第1添加工程のタイミング)
(実験目的と方法)
実験その3は、第1添加工程(炭酸化工程に合わせて正リン酸を加える工程)の添加タイミングによる違いを実験した。上述した基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で説明した製造方法において、第1添加工程で添加する正リン酸の添加タイミングを変えながら炭酸カルシウム複合体を製造した。このようにタイミングを変えながら製造することで、炭酸化工程と第1添加工程との最適なタイミング関係を確認した。
表3は、実験その3の結果を示す表である。
表3には、実施例3、実施例19〜実施例22の実験条件と実験結果を示している。具体的には、表3は、条件を変更した第1添加工程のタイミング、炭酸カルシウム複合体全体での100gあたりの吸油量、リン1gあたりの吸油量、炭酸カルシウム結晶子サイズ、およびカルシウムとリンのモル比率(Ca/P)を、示している。
以下に、実施例3、実施例19〜実施例22の製造と結果について説明する。
(実施例3)
実施例3は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程での水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が0%のタイミングで、第1添加工程が実施された。この炭酸化率0%のタイミングで第1添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例3である(実験その1で説明した実施例3である)。
実施例3の炭酸カルシウム複合体では、表3に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、293mlであり、リン1gあたりの吸油量は、24.7mlである。
このように、実施例3の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程は、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが添加される前から炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点で実施されることが、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を製造するのに必要である。
(実施例19)
実施例19は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程での水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が20%のタイミングで、第1添加工程が実施された。この炭酸化率20%のタイミングで第1添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例19である。
実施例19の炭酸カルシウム複合体では、表3に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、34.4nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、277mlであり、リン1gあたりの吸油量は、23.3mlである。
このように、実施例19の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程は、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが添加される前から炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点で実施されることが、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を製造するのに必要である。
(実施例20)
実施例20は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程での水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が50%のタイミングで、第1添加工程が実施された。この炭酸化率50%のタイミングで第1添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例20である。
実施例20の炭酸カルシウム複合体では、表3に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、28.0nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、278mlであり、リン1gあたりの吸油量は、23.4mlである。
このように、実施例20の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程は、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが添加される前から炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点で実施されることが、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を製造するのに必要である。
(実施例21)
実施例21は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程での水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が75%のタイミングで、第1添加工程が実施された。この炭酸化率75%のタイミングで第1添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例21である。
実施例21の炭酸カルシウム複合体では、表3に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、24.9nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、268mlであり、リン1gあたりの吸油量は、22.6mlである。
このように、実施例21の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程は、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが添加される前から炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点で実施されることが、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を製造するのに必要である。
(実施例22)
実施例22は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、炭酸化工程での水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が100%のタイミングで、第1添加工程が実施された。この炭酸化率100%のタイミングで第1添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例22である。
実施例22の炭酸カルシウム複合体では、表3に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、34.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、211mlであり、リン1gあたりの吸油量は、17.8mlである。
このように、実施例22の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第1添加工程は、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが添加される前から炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点で実施されることが、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を製造するのに必要である。
以上の実験その3の結果から、第1添加工程は、炭酸化工程での二酸化炭素ガスが添加される前から炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点で実施されることが、基準となる吸油量を有する炭酸カルシウム複合体を製造するのに必要であることが確認された。
(実験その4:第2添加工程での炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度)
最初に用意される水酸化カルシウム水懸濁液は、炭酸化工程で炭酸化され、炭酸カルシウム水懸濁液となる。このため、第2添加工程では、炭酸カルシウム水懸濁液となったものに、正リン酸が添加される。このため、ここでは、第2添加工程での工程管理温度は、水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化が終了した炭酸カルシウム水懸濁液におけるものとして説明する。
(実験目的と方法)
実験その4は、第2添加工程(水酸アパタイト層を形成するための正リン酸の添加工程)での、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度の違いを実験した。上述した基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で説明した製造方法において、工程管理温度を変えながら炭酸カルシウム複合体を製造した。このように工程管理温度を変えながら製造することで、吸油量の基準を実現するための、工程管理温度の最適範囲を確認した。
表4は、実験その4の結果を示す表である。
表4には、実施例3、実施例23〜実施例27の実験条件と実験結果を示している。具体的には、表4は、条件を変更した工程管理温度、炭酸カルシウム複合体全体での100gあたりの吸油量、リン1gあたりの吸油量、炭酸カルシウム結晶子サイズ、およびカルシウムとリンのモル比率(Ca/P)を、示している。
以下に、実施例3、実施例23〜実施例27の製造と結果について説明する。
(実施例23)
実施例23は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第2添加工程を開始する際の、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度を25℃として第2添加工程が実施された。工程管理温度を25℃として第2添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例23である。
実施例23の炭酸カルシウム複合体では、表4に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、30.4nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、240mlであり、リン1gあたりの吸油量は、20.2mlである。
このように、実施例23の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第2添加工程が開始される際の炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例24)
実施例24は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第2添加工程を開始する際の、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度を45℃として第2添加工程が実施された。工程管理温度を45℃として第2添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例24である。
実施例24の炭酸カルシウム複合体では、表4に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、29.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、289mlであり、リン1gあたりの吸油量は、24.3mlである。
このように、実施例24の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第2添加工程が開始される際の水酸化カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例25)
実施例25は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第2添加工程を開始する際の、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度を55℃として第2添加工程が実施された。工程管理温度を55℃として第2添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例25である。
実施例25の炭酸カルシウム複合体では、表4に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.5nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、302mlであり、リン1gあたりの吸油量は、25.4mlである。
このように、実施例25の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第2添加工程が開始される際の炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例3)
実施例3は、実験その1、その3で説明した通りの結果である。実施例3は、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度を65℃として製造された炭酸カルシウム複合体である。
工程管理温度が65℃の場合も、基準となる吸油量を実現している。
(実施例26)
実施例26は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第2添加工程を開始する際の、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度を75℃として第2添加工程が実施された。工程管理温度を75℃として第2添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例26である。
実施例26の炭酸カルシウム複合体では、表4に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、31.2nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、231mlであり、リン1gあたりの吸油量は、19.5mlである。
このように、実施例26の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第2添加工程が開始される際の炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例27)
実施例27は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、第2添加工程を開始する際の、炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度を85℃として第2添加工程が実施された。工程管理温度を85℃として第2添加工程が実施されて製造された炭酸カルシウム複合体が、実施例27である。
実施例26の炭酸カルシウム複合体では、表4に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、199mlであり、リン1gあたりの吸油量は、16.8mlである。
このように、実施例27の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、第2添加工程が開始される際の炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
以上のように、実験その4から、第2添加工程が開始される際の炭酸カルシウム水懸濁液の工程管理温度は、25℃以上85℃以下であることが、基準となる吸油量の実現のために必要であることが確認された。
(実験その5:カルシウムとリンのモル比率による違い)
(実験目的と方法)
実験その5は、最終的に製造される炭酸カルシウム複合体のカルシウムとリンのモル比率(Ca/P)の違いによる結果を実験した。上述した基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法において、モル比率を変えるように添加する正リン酸の量を調整して、複数の実施例等の炭酸カルシウム複合体を製造した。
このようにモル比率の違いによる、吸油量などの違いを確認し、基準となる吸油量を実現するモル比率の最適範囲を確認した。
表5は、実験その5の結果を示す表である。
表5には、比較例4、比較例5、実施例28〜実施例39の実験条件と実験結果を示している。具体的には、表5は、条件を変更したカルシウムとリンのモル比率(Ca/P)、炭酸カルシウム複合体全体での100gあたりの吸油量、リン1gあたりの吸油量、炭酸カルシウム結晶子サイズを示している。
以下に、比較例4、比較例5、実施例28〜実施例40の製造と結果について説明する。
(比較例4)
比較例4は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、1.68である、炭酸カルシウム複合体である。
比較例4の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、275mlであり、リン1gあたりの吸油量は、14.9mlである。
比較例4の炭酸カルシウム複合体では、全体の100gあたりの吸油量は、基準である150ml/100g以上を満たしているが、リン1gあたりでは基準である15ml以上を満たしていない。
このため、カルシウムとリンのモル比率が、1.68の場合には、基準となる吸油量を実現できないことが確認された。
(実施例28)
実施例28は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、1.82である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例28の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、313mlであり、リン1gあたりの吸油量は、18.5mlである。
このように、実施例28の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が1.82であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例29)
実施例29は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、1.92である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例29の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、47.1nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、313mlであり、リン1gあたりの吸油量は、19.5mlである。
このように、実施例29の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が1.92であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例30)
実施例30は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、2.01である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例30の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、37.8nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、318mlであり、リン1gあたりの吸油量は、20.7mlである。
このように、実施例30の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が2.01であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例31)
実施例31は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、2.21である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例31の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、37.1nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、313mlであり、リン1gあたりの吸油量は、22.4mlである。
このように、実施例31の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が2.21であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例32)
実施例32は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、2.40である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例32の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、30.2nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、307mlであり、リン1gあたりの吸油量は、23.9mlである。
このように、実施例32の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が2.40であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例33)
実施例33は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、2.59である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例33の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、27.7nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、293mlであり、リン1gあたりの吸油量は、24.6mlである。
このように、実施例33の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が2.59であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例3)
実施例3は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、2.60である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例3の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、32.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、293mlであり、リン1gあたりの吸油量は、24.7mlである。
このように、実施例34の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が2.60であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例34)
実施例34は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、3.00である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例34の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、26.2nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、279mlであり、リン1gあたりの吸油量は、27.1mlである。
このように、実施例34の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が3.00であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例35)
実施例35は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、3.20である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例35の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、29.0nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、273mlであり、リン1gあたりの吸油量は、28.3mlである。
このように、実施例35の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が3.20であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例36)
実施例36は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、5.00である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例36の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、23.5nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、217mlであり、リン1gあたりの吸油量は、35.1mlである。
このように、実施例36の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が5.00であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例37)
実施例37は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、8.00である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例37の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、22.5nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、164mlであり、リン1gあたりの吸油量は、42.4mlである。
このように、実施例37の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が8.00であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例38)
実施例38は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、15.0である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例38の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、22.9nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、160mlであり、リン1gあたりの吸油量は、74.2mlである。
このように、実施例38の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が15.0であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(実施例39)
実施例39は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、25.0である、炭酸カルシウム複合体である。
実施例39の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、20.6nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、153mlであり、リン1gあたりの吸油量は、129.3mlである。
このように、実施例39の炭酸カルシウム複合体の吸油量は、全体では150ml/100g以上であり、リン1gあたりでは15ml以上であって、いずれの基準も満たしている。すなわち、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が25.0であることは、基準となる吸油量を満たすことが分かる。このように、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要である。
(比較例5)
比較例5は、基本的な炭酸カルシウム複合体の製造方法で製造され、製造された炭酸カルシウム複合体において、カルシウムとリンのモル比率(Ca/P)が、30.0である、炭酸カルシウム複合体である。
比較例5の炭酸カルシウム複合体では、表5に示される通り、炭酸カルシウムのX線回折で測定した結晶子サイズが、20.3nmであり、炭酸カルシウム複合体100gあたりの吸油量は、148mlであり、リン1gあたりの吸油量は、143.5mlである。
比較例5の炭酸カルシウム複合体では、全体の100gあたりの吸油量は、基準である150ml/100g以上を満たしていない。すなわち、カルシウムとリンのモル比率が25を超えて、30.0となると、基準となる吸油量を実現できないことが確認された。
以上の実験その5によって、カルシウムとリンのモル比率が1.8〜25であることが、基準となる吸油量の実現のために必要であることが確認された。
(物性の確認)
発明者は、製造した炭酸カルシウム複合体の物性も確認した。図3は、本発明の実施の形態2における実施例3の炭酸カルシウム複合体のSEM写真である。図3から明らかな通り、実施例3の炭酸カルシウム複合体の外周には、水酸アパタイト層が形成されている。更に、この水酸アパタイト層は、鱗片形状を有している。
水酸アパタイト層が、このように鱗片形状を有していることで、炭酸カルシウム複合体は、多くの隙間空間を有し、油分を蓄えることが容易となる。この結果、炭酸カルシウム複合体は、高い吸油量を実現できる。
(X線回折での確認)
図4は、本発明の実施例3の炭酸カルシウム複合体のX線回折結果を示す図面である。本結果から分かるとおり、炭酸カルシウム複合体は、CaCOおよびCa(PO(OH)のそれぞれにピークを有しており、炭酸カルシウムと水酸アパタイト層を有していることが確認された。本発明の実施例は、炭酸カルシウムと水酸アパタイト層を備える構造を有することが確認された。
(組成物)
実施の形態1、2で説明された炭酸カルシウム複合体が添加されることで、様々な組成物が実現できる。炭酸カルシウム複合体は、充填剤などとして添加されて、様々な組成物を実現できる。
この組成物としては、例えば、顔料、化粧料、美容剤、歯磨き剤、塗料、研磨剤および研磨助剤のいずれかである。添加された炭酸カルシウム複合体が、高い吸油量を有することで、これらの組成物は、様々なメリットを実現できる。
なお、実施の形態1、2で説明した炭酸カルシウム複合体は、本発明を説明する一例であり、これらに限定されるとの意図ではない。
1 炭酸カルシウム複合体
2 炭酸カルシウム
3 水酸アパタイト層

Claims (13)

  1. カルサイト型炭酸カルシウムと、
    前記カルサイト型炭酸カルシウムの外周に形成される水酸アパタイト層、とからなり、
    リンの重量に対する吸油量が、15ml/g以上である、炭酸カルシウム複合体。
  2. カルシウムとリン(Ca/P)のモル比率が、1.8〜25である、請求項1記載の炭酸カルシウム複合体。
  3. 前記炭酸カルシウム複合体全体の重量に対する吸油量が、150ml/100g以上である、請求項1または2記載の炭酸カルシウム複合体。
  4. 前記炭酸カルシウムは、X線回折で測定した結晶子サイズが70nm未満である、請求項1から3のいずれか記載の炭酸カルシウム複合体。
  5. 前記炭酸カルシウムは、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を一部に含む製造工程で製造された、請求項1から4のいずれか記載の炭酸カルシウム複合体。
  6. 前記二酸化炭素ガスを添加する前から前記炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点において、前記水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満の正リン酸および正リン酸塩の少なくとも一方を加える第1添加工程を、更に備える前記製造工程で製造された、請求項5記載の炭酸カルシウム複合体。
  7. 前記第1添加工程の後で、前記水酸化カルシウム水懸濁液に、正リン酸を添加する第2添加工程を更に備え、前記第2添加工程は、前記水酸アパタイト層を形成する、請求項6記載の炭酸カルシウム複合体。
  8. 前記第2添加工程開始時の、前記水酸化カルシウム水懸濁液の工程管理温度が、25℃以上85℃以下である、請求項7記載の炭酸カルシウム複合体。
  9. 前記水酸アパタイト層は、鱗片形状を有する、請求項1から9のいずれか記載の炭酸カルシウム複合体。
  10. 請求項1から10のいずれか記載の炭酸カルシウム複合体が添加された組成物。
  11. 前記組成物は、顔料、化粧料、美容剤、歯磨き剤、塗料、研磨剤および研磨助剤のいずれかである、請求項9記載の組成物。
  12. カルサイト型炭酸カルシウムと、
    前記カルサイト型炭酸カルシウムの外周に形成される水酸アパタイト層、とからなる炭酸カルシウム複合体の製造方法であって、
    水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程と、
    前記二酸化炭素ガスを添加する前から前記炭酸化工程が終了するまでのいずれかの時点において、前記水酸化カルシウム水懸濁液に対して15wt%未満の正リン酸および正リン酸塩の少なくとも一方を加える第1添加工程と、
    前記第1添加工程の後で、前記水酸化カルシウム水懸濁液に、正リン酸を添加する第2添加工程と、を備え、
    リンの重量に対する吸油量が、15ml/g以上である炭酸カルシウム複合体の製造方法。
  13. 前記第2添加工程開始時の、前記水酸化カルシウム水懸濁液の工程管理温度が、25℃以上85℃以下である、請求項12記載の炭酸カルシウム複合体の製造方法。
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