JP2017189771A - 微粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属や酸化物、医薬品や食品、化粧品などの生体摂取物、顔料などの産業界の用途に、結晶子径を制御された微粒子の製造方法を提供する。【解決手段】対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において、微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させる。その後、排出させた吐出液中において、析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる。微粒子の製造方法において、上記の2工程を含むことによって、均一かつ均質な微粒子を得る。【選択図】図5

Description

本発明は、微粒子の製造方法に関する。
金属や酸化物、医薬品や食品、化粧品などの生体摂取物、顔料などの微粒子が、産業界の広い分野において必要とされている。
微粒子の特性は、粒子径、粒子形状以外に、その結晶子径によっても、その融点、磁性、電気特性、熱特性などが変化する。例えば、積層セラミックスコンデンサーに用途の導電ペーストに用いられるニッケル微粒子は、ニッケル粒子内の結晶子径が大きいことによって、熱収縮が抑制された内部電極を形成することができると言われている(特許文献1)。また鉄微粒子は、その結晶子径を制御することによって、保磁力を制御できると言われている。(特許文献2)その他、誘導体薄膜に用いられるチタン酸バリウムなどでは、微粒子における結晶子径が小さくなりすぎると目的とする特性が得られないなど、結晶子径と微粒子の特性とは密接な関係があることが知られている。そのため、微粒子についてはその粒子径を制御するだけでなく、結晶子径を制御することが必要とされている。
一般に結晶子とは、単結晶とみなせる最大の集まり、または単結晶と見なせる微細結晶のことを言い、結晶子の大きさのことを結晶子径という。結晶子径の測定方法には、電子顕微鏡を用いて格子縞を確認し、結晶子径を特定する方法や、X線回折装置を用いて回折パターンとScherrerの式より結晶子径を算出する方法などがある。
微粒子の結晶子径の制御方法については、金属単体、金属イオン、金属化合物やそれらを溶媒に溶解した金属溶液を、特許文献3に示したようなソルボサーマル法に供する方法や、特許文献4〜6で示したような亜臨界または超臨界状態で水熱処理する方法や不活性雰囲気下で熱処理する方法などが挙げられるが、これらの方法では耐熱性、耐圧力性に優れた装置や不活性雰囲気下であることを必要とし、さらに処理に時間を要するため、エネルギーコストが高くなるなどの問題点がある。
本願出願人によって、特許文献7に記載されたような対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で微粒子の原料を溶解した微粒子原料流体と微粒子を析出させるための析出用溶媒とを混合する微粒子の製造方法が提供された。
しかし、特許文献7に記載されたような方法を用いた場合であっても、結晶子径を制御すること、特に目的の大きさまでに成長させることが困難な場合があり、結晶子径を制御された微粒子を作製することが課題であった。
特開2007−197836号公報 特開2010−24478号公報 特開2008−30966号公報 特開2008−289985号公報 特開2010−24478号公報 特開2011−11956号公報 国際公開WO2009/008393号パンフレット
本発明はこのことに鑑み、微粒子の製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、 微粒子の製造方法において、(I)対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において、微粒子を析出させ、上記析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させる第1の工程と、(II)前記吐出液中において、前記析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程との上記少なくとも2つの工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願の請求項2に係る発明は、上記析出させた微粒子が結晶性の微粒子であることを特徴とする、請求項1記載の微粒子の製造方法を提供する。
また、本願の請求項3に係る発明は、少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解または分子分散させた原料流体と、前記被析出物質を微粒子として析出させるための析出流体とを、上記薄膜流体中で混合し、前記被析出物質の微粒子を析出させることを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願の請求項4に係る発明は、上記原料流体は、上記被析出物質として少なくとも1種類の金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解した金属流体であり、上記析出流体は、還元性物質を少なくとも1種類含む還元性流体であり、上記析出させた微粒子が金属微粒子であることを特徴とする請求項3に記載の微粒子の製造方法を提供する。
また、本願の請求項5に係る発明は、上記の第2の工程において、上記析出させた微粒子の粒子径の成長度合いよりも、上記析出させた微粒子の核の成長度合いまたは上記析出させた微粒子の結晶子径の成長度合いの方が大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微粒子の製造方法を提供する。
また、本願の請求項6に係る発明は、上記の第2の工程において、上記析出させた微粒子の粒子径を変化させずに、上記析出させた微粒子の核の大きさまたは上記析出させた微粒子の結晶子径を変化させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微粒子の製造方法を提供する。
また、本願の請求項7に係る発明は、上記の第2の工程において、上記吐出液を吐出直後の温度で10分間以上保温することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の微粒子の製造方法を提供する。
また本発明の請求項8に係る発明は、前記第2の工程は、一端に流入口を有し他端に流出口を有する管状容器内に、前記流入口から前記吐出液を導入し、上記管状容器内において上記析出させた微粒子の核または結晶子を成長させるものであることを特徴とする請求項1〜7の何れか記載の微粒子の製造方法を提供する。
また本発明の請求項9に係る発明は、上記管状容器内に、混合器を設け、上記管状容器内の流体を混合することを特徴とする、請求項8記載の微粒子の製造方法を提供する。
また本願の請求項10に係る発明は、上記第1の工程と、上記第2の工程とを連続的に行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか記載の微粒子の製造方法を提供する。
また本願の請求項11に係る発明は、上記管状容器に温度調節機構を設け、上記管状容器内の流体の温度を制御することを特徴とする請求項8または9に記載の微粒子の製造方法を提供する。
また本願の請求項12に係る発明は、上記管状容器の長さ及び/またはその径を調整することによって、上記管状容器内の流体の上記管状容器内での滞留時間を制御することを特徴とする請求項8,9,11のいずれか記載の微粒子の製造方法である。
上記本発明の実施の態様の一例を示せば、被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第1処理用面を備えた第1処理用部と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第2処理用面を備えた第2処理用部とを備え、これらの処理用部を相対的に回転させる回転駆動機構とを備え、上記の各処理用面は、上記の圧力が付与された被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記の圧力が付与された被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成し、この薄膜流体中において微粒子を析出させて、析出させた微粒子を含む吐出液を排出させる第1の工程と、吐出液中において析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程とを含む微粒子の製造方法として実施することができる。
また、上記本発明の実施の態様の一例を示せば、上記の被処理流動体のうちの少なくともいずれか1種の流体が上記薄膜流体を形成しながら上記両処理用面間を通過し、上記少なくともいずれか1種の流体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方が、上記の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記少なくともいずれか1種の流体とは異なる少なくとも1種の流体を、上記開口部から上記処理用面の間に導入し、上記の被処理流動体を上記薄膜流体中で混合し、この薄膜流体中において微粒子を析出させて、析出させた微粒子を含む吐出液を排出させる第1の工程と、吐出液中において析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程を含む微粒子の製造方法として実施することができる。
本発明は、従来の製造方法では困難であった、均一かつ均質な微粒子を析出させ、それら析出させた微粒子の結晶子を目的の結晶子径にまで成長させた均一かつ均質な微粒子を得ることを可能とし、また結晶子径が制御された微粒子を、これまで以上に簡単且つ連続的に製造する事を可能とした。さらに、簡単な処理条件の変更によって、得られる微粒子の結晶子径を制御することが可能となったため、これまで以上に低コスト、低エネルギーで目的に応じた異なる結晶子径の微粒子を作り分ける事が可能となり、安価且つ安定的に微粒子を提供する事ができる。特に、特許文献7に記載された微粒子の製造方法を用いた場合であっても、均一かつ均質に結晶子径を制御された微粒子を連続して作製することができる。
本発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 (A)は図1に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。 (A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。 本発明の他の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 実施例3において作製されたニッケル微粒子のSEM写真である。
以下に、本発明の実施の形態の一例について、具体的に説明する。
(原料流体)
本発明における原料流体は、原料である被析出物質を、後述する溶媒に溶解または分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
本発明における被析出物質は特に限定されないが、有機物や無機物、有機無機の複合物などが挙げられ、例えば、金属元素や非金属元素の単体、またそれらの化合物などが挙げられる。化合物としては、塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機化合物や、それらの水和物や有機溶媒和物などが挙げられる。これらは単一の被析出物質であっても良く、2種類以上が混合された混合物であっても良い。
なお、上記の被析出物質は、出発原料として用いられる被析出物質と、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質の状態は同じであっても異なっていてもよい。例えば、出発原料として用いられる被析出物質が金属化合物であって、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質が上記金属化合物を構成する金属の単体であってもよく、出発原料として用いられる被析出物質が金属単体であって、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質も同じ金属単体であってもよい。さらに、出発原料として用いられる被析出物質が単数または複数種の金属化合物の混合物であって、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質が、出発原料として用いられる被析出物質である単数または複数種の金属化合物と、析出流体に含まれる被析出物質を析出させるための単数または複数種の物質とが反応して得られた物質であってもよい。
(析出流体)
本発明における析出流体は、原料流体と混合して上記被析出物質を微粒子として析出させるものである。析出流体としては、後述する溶媒を単独でまたは二種以上を混合して用いても良く、上記被析出物質を析出させるための物質として、下記の物質を上記溶媒中に含むものであっても良い。特に限定されないが、例えば、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機または有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩または化合物などが挙げられる。また、上記被析出物質を還元することができる還元性物質、例えば、金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解して得られる金属溶液中に含まれる、金属及び/または金属化合物、好ましくは金属イオンを還元することができる還元性物質も挙げられる。上記還元性物質は特に限定されないが、ヒドラジンまたはヒドラジン一水和物、ホルムアルデヒド、スルホキシル酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム金属塩、水素化トリエチルホウ素金属塩、グルコース、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、ジメチルホルムアミド、ピロガロール、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO・HO)、ロンガリットC(NaHSO・CHO・2HO)、金属の化合物またはそれらのイオン、好ましくは遷移金属の化合物またはそれらのイオン(鉄、チタンなど)などが挙げられる。上記に挙げた還元性物質には、それらの水和物や有機溶媒和物、または無水物などを含む。これらの被析出物質を析出させるための物質は、それぞれ単体で使用しても良く、二種以上が混合された混合物として使用しても良い。
(溶媒)
本発明における原料流体や析出流体に用いる溶媒としては特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また上記アルコール系有機溶媒やポリオール系有機溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元性物質としても働く利点があり、特に、金属微粒子を作製する場合には有効である。上記溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、二種以上を混合して使用しても良い。特に、析出流体に関しては、上述の通り、上記溶媒を単独で析出流体として用いることも可能である。
本発明における原料流体及び/又は析出流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいても実施できる。
以下、本発明の具体的な実施の形態として、金属微粒子の製造方法を例に説明する。しかし本発明は、金属微粒子の製造方法に限定されるものはない。
(金属溶液及び金属)
本発明における金属流体は、金属及び/または金属化合物を上記の溶媒に溶解したものであり、上記の原料流体となる。
本発明における金属は、特に限定されない。好ましくは化学周期表上における全ての金属である。金属元素としては、例えば、Ti、Fe、W、Pt、Au、Cu、Ag、Pb、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Cr、Mo、Re、In、Ir、Os、Y、Tc、Pd、Rh、Sc、Ga、Al、Bi、Na、Mg、Ca、Ba、La、Ce、Nd、Ho、Euなどの金属元素が挙げられる。また、本発明においては、これらの金属元素に加えて、B、Si、Ge、As、Sb、C、N、O、S、Te、Se、F、Cl、Br、I、Atの非金属元素を挙げることができる。それらの金属について、単一の元素であっても良く、複数の金属元素からなる合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。当然、卑金属と貴金属の合金としても実施できる。
(金属化合物)
また、上記の金属(上記に列挙した非金属元素をも含む)の単体に加えて、それら金属の化合物である金属化合物を上記の溶媒に溶解したものを金属流体として用いることができる。本発明における金属化合物としては特に限定されないが、例えば、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物、またはそれら金属化合物の水和物や有機溶媒和物などが挙げられる。金属塩としては、特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩、またはそれら金属塩の水和物や有機溶媒和物などや、有機化合物としては金属のアルコキシドなどが挙げられる。これらの金属化合物は単独で使用しても良く、複数以上が混合された混合物として使用しても良い。また、上記の金属及び/または金属化合物は、上記の溶媒に溶解された金属流体として用いる事が好ましい。
(還元性物質及び還元性流体)
本発明における還元性流体は、上記に挙げた還元性物質を少なくとも1種類含むものとする。また、上記の還元性物質を溶媒と混合または溶解して、還元性物質溶液としたものを還元性流体として使用することが好ましい。この場合、還元性流体が析出流体となる。
本発明における金属溶液及び/または還元性流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでも実施できる。
(流体処理装置)
本発明においては、上記原料流体と析出流体、または金属溶液と還元性流体との混合を
接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する方法を用いて行うことが好ましく、
する事によって被析出物質の微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させることが好ましい。また、本発明においては、例えば、本願出願人による、特許文献7に示される装置と同様の原理の装置を用いて、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させることが好ましい。このような原理の装置を用いる事によって、均一且つ均質に微粒子を作製する事が可能である。
以下、図面を用いて上記流体処理装置の実施の形態について説明する。
図1〜図3に示す流体処理装置は、特許文献3に記載の装置と同様であり、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
図2(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
前記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
さらに、この図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(図1においては上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1、2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、図2(B)や図3(B)に示すように円形状であってもよく、図示しないが、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。また、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
なお、処理用面1,2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
上記装置においては、析出・沈殿または結晶化のような処理が、図1に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間で強制的に均一混合しながら起こる。処理された被処理物の粒子径や単分散度は処理用部10、20の回転数や流速、処理用面1,2間の距離や、被処理流動体の原料濃度、または被処理流動体の溶媒種等を適宜調整することにより、制御することができる。
以下、上記の装置を用いて行う微粒子の析出に関する具体的な態様について説明する。
上記の装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間に形成される薄膜流体中で、少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解させた原料流体と、析出流体とを混合させ、微粒子を析出させる。
上記の微粒子の析出は、本願の図1または図4に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間で強制的に均一混合しながら起こる。
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として析出流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体である第1流体膜を作る。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解させた原料流体を、上記処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、均一な核生成を行う事が出来る。
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、第1流体、第2流体、第3流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、析出反応及び微粒子の粒子径をより精密に制御することができる。なお、各導入部へ導入する被処理流動体(第1流体〜第3流体)の組み合わせは、任意に設定できる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
さらに、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
(分散剤等)
また、本発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の界面活性剤及び分散剤は、原料流体もしくは析出流体、またはその両方に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、原料流体とも析出流体とも異なる第3の流体に含まれていてもよい。
(処理用面間における微粒子生成と結晶子)
一般的に微粒子の作製は、核または核が結晶性の場合には結晶子が生成する工程と、その核及び/または結晶子が粒子として集合及び/または成長する工程とから成る。一般的に微粒子は、複数の核または結晶子からなる場合が多い。微粒子の核または結晶子が生成する工程においては、原料流体に溶解していた被析出物質に由来する分子やイオン、クラスター等が、析出流体と混合された結果、溶解度の変化や、析出流体との反応によって、核または結晶子として析出する。その後、核または結晶子が生成した原料流体と析出流体との混合液中において、核または結晶子が集合体となり、さらに未だ分子やイオン、クラスター等として存在する被析出物質が、先に析出した核または結晶並びにそれらの集合体を発端として析出することで、粒子が成長する。これまで、上記の、対向して配設された、接近・離反可能な、一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面1,2間の極微小な空間にできる薄膜流体中おいて原料流体と析出流体とを混合することにより、上記の分子やイオン、クラスター等の拡散を促進させることができるため、均一かつ均質な核生成及び粒子成長を可能とし、均一かつ均質な微粒子の製造を可能としてきた。しかし、処理用面間において生成した微粒子における結晶子について、目的の大きさまで成長させることが困難な場合があった。結晶子の成長は、上記粒子と同様に、一つの結晶子が成長する場合と、複数の結晶子の集合体における結晶子間の境目において、拡散が起こることで成長が起こる場合、もしくはその両方の場合がある。本発明においては、上記の処理用面1,2間から排出された吐出液に含まれる微粒子の結晶子を成長させて目的の微粒子を得る工程を、上記の処理用面1,2間より吐出させた吐出液中において行うことによって、より結晶子径が制御しやすく、また大きな結晶子を作製することを可能とした。さらにこれによって、上記の処理用面1,2間にできる薄膜流体中において析出させた微粒子を含む流体の処理用面1,2間における滞留時間をこれまで以上に短くすることを可能とした。言い換えると、一定時間における、処理流量をこれまで以上に増加することを可能とした。よって、本発明においては、上記の、接近・離反可能な処理用面1,2間において、均一かつ均質な微粒子を生成させ、その微粒子を含む流体を処理用面1,2間より吐出液として排出させた後、結晶子を成長させることによって実施できる。本発明においては、上述の通り、核または結晶子には、上記少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において生成させた微粒子の核または結晶子や、生成させた微粒子の核または結晶子を上記処理用面間にできる薄膜流体中においてある程度の大きさにまで成長させた成長途中の微粒子などの上記薄膜流体中において析出される種々のものが含まれる。
本発明における微粒子は、結晶性であってもアモルファスであってもまたは一部分アモルファスを含む結晶性の微粒子であっても良い。核についても同様に結晶性であってもアモルファスであっても良いが、結晶性の場合には結晶子と記載する。また、核または結晶子は、成長の途中においてその結晶性に変化を伴っても実施できる。例えば、アモルファスの核を発端として、アモルファスの微粒子を析出させ、その後の核の成長によって、結晶性の核(結晶子)となって微粒子についても結晶性の微粒子となっても良い。また、結晶子を発端として結晶性の微粒子を析出させ、その後の成長によって、その結晶型が変化する場合なども含む。
(処理用面間より吐出させた後の結晶子の成長)
本発明は、上記処理用面1,2間より排出させた吐出液中の微粒子に含まれる、当該核または結晶子を成長させることで実施できる。
本発明における成長の工程を行う手段の一例としては、上記に説明した装置の処理用面1,2間より排出させた吐出液をビーカーやタンクのような空容器等で回収し、成長と成長の完了をさせることで実施できる。その際、容器に回収された吐出液を攪拌してもよく、攪拌のための装置並びに方法については特に限定されない。
吐出液が回収され、容器への導入開始から成長の完了まで、吐出液は逐次混合された状態となるため、貯蔵などの吐出液を滞留させる容器では成長の進行度合いに影響し、不均一な成長や新たな核の生成の原因となる可能性がある。このため、本発明においては、上記の処理用面間より吐出させた吐出液を、一端に流入口を有し他端に流出口を有する管状容器等に導入し、管状容器内において成長の工程を完了させることが好ましい。具体的には、図4に示すように、処理用面1,2間より排出させた吐出液を捕集するためのベッセル61を設け、ベッセル61の下端に管状容器62を接続する。この接続箇所が管状容器の入口63となる。ベッセル61に接続された管状容器62内に管状容器入口63から吐出液を導入し、管状容器62内において、吐出液に含まれる微粒子の核または結晶子を成長させることで実施できる。上記の方法においては、上記処理用面1,2間にできる薄膜流体中において微粒子を析出させて、微粒子を含む流体を吐出液として排出させる工程と、管状容器62内に管状容器の入口63から吐出液を導入し、管状容器内にて吐出液に含まれる微粒子の結晶子を成長させて目的の微粒子を得る工程とを連続的に行うことができる。また、後述するように、管状容器62にミキサーを内蔵したり、管状容器62に温度調整機構65を設けてもよい。さらに、原料流体とも析出流体とも異なる第3の流体を供給するための供給装置66を設け、その開口部67をベッセル61内に配位して、吐出液とともに第3の流体を管状容器62に導入して両者を混合させてもよい。
また、吐出液が回収され、容器への導入開始から成長の工程を完了させるまでにその成長の進行度合いを制御できる流体を吐出液と混合することで成長を制御しても良い。それによって、上記の処理用面1,2間において析出させた均一かつ均質な微粒子の核または結晶子を、均一かつ均質な状態として成長させることが可能である。本発明においては、処理用面間において生成させた微粒子の核または結晶子を、処理用面間より吐出させた後に、前記微粒子の核または結晶子よりもその径を大きく成長させることによって実施できる。
なお、核または結晶子の成長は、必ずしも完了するまで行う必要はなく、核または結晶子が目的の径にまで成長した段階でその成長を終了させてもよい。成長を終了させる手段は、特に限定されない。
核または結晶子の成長と成長の完了を確認するための手段としては、特に制限されない。例えば、電子顕微鏡を用いて格子縞を確認し、結晶子径を特定する方法や、X線回折装置を用いて回折パターンとScherrerの式より結晶子径を算出する方法などがある。
本発明において作製される目的の微粒子が結晶性の微粒子であり、上記処理用面1,2間にできる薄膜流体中において析出される微粒子が結晶性の微粒子または結晶子であることが好ましい。しかし、本発明は結晶性の微粒子並びに結晶子に限定されるものでは無い。
(管状容器)
本発明において、微粒子の核または結晶子を成長させるための管状容器としては、一端に流入口を有し他端に流出口を有するものであれば特に限定されない。微粒子作製における成長工程において、処理用面1,2間より排出させた吐出液及び吐出液に含まれる微粒子や微粒子の核または結晶子他の物質とは不活性な材質からなる管状容器が好ましい。また、管状容器の径についても、特に限定されない。処理用面1,2間から吐出される吐出液を入口63から滞り無く導入し、出口64から排出できる径であることが好ましい。また、管状容器の長さにおいても特に限定されないが、処理用面1,2間から排出された吐出液が管状容器に導入されてから排出されるまでに、上記成長の工程を完了できる管状容器の長さであることが好ましい。また、吐出液は、上記の処理用面1,2間から排出されたのち、速やかに管状容器62に導入される。
また、管状容器内にミキサーを内蔵したものであっても良い。例えば、静止型混合器(スタティックミキサー)のようなものを管状容器内に設けた構造のものでも実施できる。さらに、管状容器の中の吐出液の温度を調節する機構を持つものでも実施できる。それによって、成長の進行を制御しやすくなる利点がある。温度を調節する機構並びに方法としては特に限定されないが、ジャケット構造やの二重管構造として、温度調節用の熱媒・冷媒などを用いても良いし、コイル式熱交換器、例えば商品名、Mコイル(エム・テクニック製)のような構造としても実施できる。その他、ペルチェ素子などを用いる方法や、直接加熱・冷却する方法でも実施できる。管状容器内に上記処理用面1,2間から排出された吐出液を導入する機構としては、特に限定されないが、ポンプや圧縮気体の圧力により導入する方法や、管状容器内を回転容積式のポンプのような形状としても実施できる。その他、重力を利用して、管状容器の上から下に処理用面1,2間から排出された吐出液を通過させるような方法も実施できる。
また、本発明においては、上記の、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において、2種類以上の流体を混合して微粒子を析出させることに限定するものでは無い。例えば、少なくとも1種類の被析出物質を溶解した原料流体を上記の処理用面1,2間に導入し、温度変化によって溶解度を変化させたり、原料流体に溶解させた被析出物質を反応させたりして微粒子を析出させ、その後、上記の処理用面1,2間から吐出された吐出液中において微粒子の核または結晶子を成長させることでも実施できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、「中央から」というのは、図1又は図4に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、第1導入部d1から導入される、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、図1又は図4に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、微粒子の粒子径については、10箇所の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,走査速度1.6°/minである。
実施例として、図1又は図4に示すように、特許文献3に示された装置と同様の原理の装置を用いて、処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で金属流体と還元性流体とを混合し、薄膜流体中で金属微粒子の微粒子を析出させ、その後、当該微粒子の核または結晶子を成長させることによって、目的の金属微粒子を得た。
(実施例:ニッケル)
中央から第1流体の金属流体としてニッケル溶液(4.69wt% 硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)/ 81.12wt% エチレングリコール(EG)/ 0.80wt% ポリエチレングリコール600(PEG600)/ 13.39 wt% 純水(HO)を、供給圧力=0.29MPaG、回転数3600rpm、143℃、800ml/min.で送液しながら、第2流体の還元性流体として、還元性物質溶液(10wt% 水酸化カリウム(KOH)/20wt% 純水(HO)/70wt% ヒドラジン一水和物(HMH))を25℃、60ml/min.で処理用面1,2間に導入し、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合した。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前)にて測定した。また、pHメーターを用いて測定した、第1流体のpHは4.12であり、pH試験紙を用いて測定した、第2流体のpHは14以上であった。処理用面1,2間から排出させた直後の吐出液は95℃であり、黒色であった。
(実施例1〜5:ニッケル)
実施例1〜5として、上記の条件で処理用面1,2間から排出させたニッケル微粒子を含む吐出液を20秒間、一つの容器に回収した。回収中に吐出液が黄緑色の濁った状態から黒色に変化する様子が確認され、20秒間回収を行い、回収を完了させた約20秒後に目視による吐出液の色の変化は無くなり、その時の吐出液の温度は95℃であった。オイルバスを用いて、回収完了後の吐出液の温度を95℃に保温し、120分間保持した。吐出直後、95℃での保温を10分間、30分間、60分間、120分間したものについサンプリングし、ニッケル微粒子を回収するために、室温になるまで静置した(室温までの冷却時間、約10分間)。その後、ニッケル微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、25℃の条件で大気圧にて乾燥した。乾燥後粉体のXRD測定の結果、FCC型のNiと一致する結晶構造を持つことがわかり、さらに粉体を HNO3で溶解させた溶液のICP測定より、不純物のない、ニッケル微粒子が作製されたことがわかった。図5に実施例3において得られたニッケル微粒子のSEM写真を示す。上記、吐出液回収完了直後、直後より10分後、30分後、60分後、120分後の全ての100m程度のニッケル微粒子が均一に作製できていることを確認した。
得られたニッケル微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。装置はPANalytical製、X‘Pert PRO MPDを使用し、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)、0.016step/10secで測定し、得られたニッケル回折パターンの44.5°付近のピークにシェラー式を当てはめて、シリコン多結晶盤は、47.3°に確認されるピークを使用した。得られた結晶子径を表1に示す。
表1より、処理用面間において析出させたニッケル微粒子を95℃で保持することによって、結晶子が大きくなることがわかった。目的の微粒子を作製するに際し、処理用面間において微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を処理用面より吐出させる工程と、処理用面間より吐出させた微粒子を含む分散液を処理することによって、微粒子の結晶子径を制御できることがわかった。
(実施例6〜9:ニッケル)
実施例6〜9として、図4の装置に示すように、管状容器62に接続された吐出液を捕集するためのベッセル61を設置した。また、管状容器62は、ウォーターバス65に浸した。中央から第1流体の金属流体としてニッケル溶液(4.99wt% 硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)/ 95.01 wt% 純水(HO)を、供給圧力=0.30MPaG、回転数3000rpm、98℃で送液しながら、第2流体の還元性流体として、還元性物質溶液(15wt% 水酸化ナトリウム(NaOH)/34wt% 純水(HO)/51wt% ヒドラジン一水和物(HMH))を53℃で処理用面1,2間に導入し、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合した。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前)にて測定した。また、pHメーターを用いて測定した、第1流体のpHは4.52であり、pH試験紙を用いて測定した、第2流体のpHは14以上であった。ニッケル溶液と還元剤溶液とを処理用面1,2間において、体積比、1:1の割合で混合させ、ニッケル微粒子の微粒子を含む流体を吐出液として処理用面1,2間より排出させ、吐出液を連続的に管状容器入口63から管状容器内へ導入させ、管状容器出口64より排出させた。吐出液はベッセル61内に停滞することなく、連続的に排出された。管状容器出口64から排出された吐出液の温度が95℃となるように、オイルバス65の温度を設定した。実施例1〜5と同様の作業にてニッケル微粒子を回収し、XRD測定並びにSEM観察を行った。XRD測定結果、SEM観察結果共に、実施例1〜5と同様に不純物のない、ニッケル微粒子が作製されたことがわかった。吐出液の管状容器62内の滞留時間を変更した実施例を、得られた結晶子径と合わせて表2に示す。
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
61 ベッセル
62 管状容器
63 管状容器の入口
64 管状容器の出口
65 温度調節機構、オイルバス
66 供給装置
67 開口部
本発明は、微粒子の製造方法に関する。
金属や酸化物、医薬品や食品、化粧品などの生体摂取物、顔料などの微粒子が、産業界の広い分野において必要とされている。
微粒子の特性は、粒子径、粒子形状以外に、その結晶子径によっても、その融点、磁性、電気特性、熱特性などが変化する。例えば、積層セラミックスコンデンサーに用途の導電ペーストに用いられるニッケル微粒子は、ニッケル粒子内の結晶子径が大きいことによって、熱収縮が抑制された内部電極を形成することができると言われている(特許文献1)。また鉄微粒子は、その結晶子径を制御することによって、保磁力を制御できると言われている。(特許文献2)その他、誘導体薄膜に用いられるチタン酸バリウムなどでは、微粒子における結晶子径が小さくなりすぎると目的とする特性が得られないなど、結晶子径と微粒子の特性とは密接な関係があることが知られている。そのため、微粒子についてはその粒子径を制御するだけでなく、結晶子径を制御することが必要とされている。
一般に結晶子とは、単結晶とみなせる最大の集まり、または単結晶と見なせる微細結晶のことを言い、結晶子の大きさのことを結晶子径という。結晶子径の測定方法には、電子顕微鏡を用いて格子縞を確認し、結晶子径を特定する方法や、X線回折装置を用いて回折パターンとScherrerの式より結晶子径を算出する方法などがある。
微粒子の結晶子径の制御方法については、金属単体、金属イオン、金属化合物やそれらを溶媒に溶解した金属溶液を、特許文献3に示したようなソルボサーマル法に供する方法や、特許文献4〜6で示したような亜臨界または超臨界状態で水熱処理する方法や不活性雰囲気下で熱処理する方法などが挙げられるが、これらの方法では耐熱性、耐圧力性に優れた装置や不活性雰囲気下であることを必要とし、さらに処理に時間を要するため、エネルギーコストが高くなるなどの問題点がある。
本願出願人によって、特許文献7に記載されたような対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で微粒子の原料を溶解した微粒子原料流体と微粒子を析出させるための析出用溶媒とを混合する微粒子の製造方法が提供された。
しかし、特許文献7に記載されたような方法を用いた場合であっても、結晶子径を制御すること、特に目的の大きさまでに成長させることが困難な場合があり、結晶子径を制御された微粒子を作製することが課題であった。
特開2007−197836号公報 特開2010−24478号公報 特開2008−30966号公報 特開2008−289985号公報 特開2010−24478号公報 特開2011−11956号公報 国際公開WO2009/008393号パンフレット
本発明はこのことに鑑み、微粒子の製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本願発明は、 微粒子の製造方法において、(I)対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において、微粒子を析出させ、上記析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させる第1の工程と、(II)前記吐出液中において、前記析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程との上記少なくとも2つの工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願発明は、上記析出させた微粒子が結晶性の微粒子であることを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願発明は、少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解または分子分散させた原料流体と、前記被析出物質を微粒子として析出させるための析出流体とを、上記薄膜流体中で混合し、前記被析出物質の微粒子を析出させることを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願発明は、上記原料流体は、上記被析出物質として少なくとも1種類の金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解した金属流体であり、上記析出流体は、還元性物質を少なくとも1種類含む還元性流体であり、上記析出させた微粒子が金属微粒子であることを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願発明は、上記の第2の工程において、上記析出させた微粒子の粒子径の成長度合いよりも、上記析出させた微粒子の核の成長度合いまたは上記析出させた微粒子の結晶子径の成長度合いの方が大きいことを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願発明は、上記の第2の工程において、上記析出させた微粒子の粒子径を変化させずに、上記析出させた微粒子の核の大きさまたは上記析出させた微粒子の結晶子径を変化させることを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また、本願発明は、上記の第2の工程において、上記吐出液を吐出直後の温度で10分間以上保温することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また本発明は、前記第2の工程は、一端に流入口を有し他端に流出口を有する管状容器内に、前記流入口から前記吐出液を導入し、上記管状容器内において上記析出させた微粒子の核または結晶子を成長させるものであることを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また本発明は、上記管状容器内に、混合器を設け、上記管状容器内の流体を混合することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また本願発明は、上記第1の工程と、上記第2の工程とを連続的に行うことを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また本願発明は、上記管状容器に温度調節機構を設け、上記管状容器内の流体の温度を制御することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
また本願発明は、上記管状容器の長さ及び/またはその径を調整することによって、上記管状容器内の流体の上記管状容器内での滞留時間を制御することを特徴とする微粒子の製造方法である。
上記本発明の実施の態様の一例を示せば、被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第1処理用面を備えた第1処理用部と、上記少なくとも2つの処理用面のうち第2処理用面を備えた第2処理用部とを備え、これらの処理用部を相対的に回転させる回転駆動機構とを備え、上記の各処理用面は、上記の圧力が付与された被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記の圧力が付与された被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が上記薄膜流体を形成し、この薄膜流体中において微粒子を析出させて、析出させた微粒子を含む吐出液を排出させる第1の工程と、吐出液中において析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程とを含む微粒子の製造方法として実施することができる。
また、上記本発明の実施の態様の一例を示せば、上記の被処理流動体のうちの少なくともいずれか1種の流体が上記薄膜流体を形成しながら上記両処理用面間を通過し、上記少なくともいずれか1種の流体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方が、上記の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記少なくともいずれか1種の流体とは異なる少なくとも1種の流体を、上記開口部から上記処理用面の間に導入し、上記の被処理流動体を上記薄膜流体中で混合し、この薄膜流体中において微粒子を析出させて、析出させた微粒子を含む吐出液を排出させる第1の工程と、吐出液中において析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程を含む微粒子の製造方法として実施することができる。
本発明は、従来の製造方法では困難であった、均一かつ均質な微粒子を析出させ、それら析出させた微粒子の結晶子を目的の結晶子径にまで成長させた均一かつ均質な微粒子を得ることを可能とし、また結晶子径が制御された微粒子を、これまで以上に簡単且つ連続的に製造する事を可能とした。さらに、簡単な処理条件の変更によって、得られる微粒子の結晶子径を制御することが可能となったため、これまで以上に低コスト、低エネルギーで目的に応じた異なる結晶子径の微粒子を作り分ける事が可能となり、安価且つ安定的に微粒子を提供する事ができる。特に、特許文献7に記載された微粒子の製造方法を用いた場合であっても、均一かつ均質に結晶子径を制御された微粒子を連続して作製することができる。
本発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 (A)は図1に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。 (A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。 本発明の他の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 実施例3において作製されたニッケル微粒子のSEM写真である。
以下に、本発明の実施の形態の一例について、具体的に説明する。
(原料流体)
本発明における原料流体は、原料である被析出物質を、後述する溶媒に溶解または分子分散(以下、単に、溶解とする。)したものである。
本発明における被析出物質は特に限定されないが、有機物や無機物、有機無機の複合物などが挙げられ、例えば、金属元素や非金属元素の単体、またそれらの化合物などが挙げられる。化合物としては、塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機化合物や、それらの水和物や有機溶媒和物などが挙げられる。これらは単一の被析出物質であっても良く、2種類以上が混合された混合物であっても良い。
なお、上記の被析出物質は、出発原料として用いられる被析出物質と、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質の状態は同じであっても異なっていてもよい。例えば、出発原料として用いられる被析出物質が金属化合物であって、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質が上記金属化合物を構成する金属の単体であってもよく、出発原料として用いられる被析出物質が金属単体であって、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質も同じ金属単体であってもよい。さらに、出発原料として用いられる被析出物質が単数または複数種の金属化合物の混合物であって、後述する析出流体との混合によって析出される被析出物質が、出発原料として用いられる被析出物質である単数または複数種の金属化合物と、析出流体に含まれる被析出物質を析出させるための単数または複数種の物質とが反応して得られた物質であってもよい。
(析出流体)
本発明における析出流体は、原料流体と混合して上記被析出物質を微粒子として析出させるものである。析出流体としては、後述する溶媒を単独でまたは二種以上を混合して用いても良く、上記被析出物質を析出させるための物質として、下記の物質を上記溶媒中に含むものであっても良い。特に限定されないが、例えば、塩酸や硫酸、硝酸や王水、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの無機または有機の酸のような酸性物質や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリや、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類などの塩基性物質、上記の酸性物質や塩基性物質の塩または化合物などが挙げられる。また、上記被析出物質を還元することができる還元性物質、例えば、金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解して得られる金属溶液中に含まれる、金属及び/または金属化合物、好ましくは金属イオンを還元することができる還元性物質も挙げられる。上記還元性物質は特に限定されないが、ヒドラジンまたはヒドラジン一水和物、ホルムアルデヒド、スルホキシル酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム金属塩、水素化トリエチルホウ素金属塩、グルコース、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、ジメチルホルムアミド、ピロガロール、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO・HO)、ロンガリットC(NaHSO・CHO・2HO)、金属の化合物またはそれらのイオン、好ましくは遷移金属の化合物またはそれらのイオン(鉄、チタンなど)などが挙げられる。上記に挙げた還元性物質には、それらの水和物や有機溶媒和物、または無水物などを含む。これらの被析出物質を析出させるための物質は、それぞれ単体で使用しても良く、二種以上が混合された混合物として使用しても良い。
(溶媒)
本発明における原料流体や析出流体に用いる溶媒としては特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また上記アルコール系有機溶媒やポリオール系有機溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元性物質としても働く利点があり、特に、金属微粒子を作製する場合には有効である。上記溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、二種以上を混合して使用しても良い。特に、析出流体に関しては、上述の通り、上記溶媒を単独で析出流体として用いることも可能である。
本発明における原料流体及び/又は析出流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでいても実施できる。
以下、本発明の具体的な実施の形態として、金属微粒子の製造方法を例に説明する。しかし本発明は、金属微粒子の製造方法に限定されるものはない。
(金属溶液及び金属)
本発明における金属流体は、金属及び/または金属化合物を上記の溶媒に溶解したものであり、上記の原料流体となる。
本発明における金属は、特に限定されない。好ましくは化学周期表上における全ての金属である。金属元素としては、例えば、Ti、Fe、W、Pt、Au、Cu、Ag、Pb、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Cr、Mo、Re、In、Ir、Os、Y、Tc、Pd、Rh、Sc、Ga、Al、Bi、Na、Mg、Ca、Ba、La、Ce、Nd、Ho、Euなどの金属元素が挙げられる。また、本発明においては、これらの金属元素に加えて、B、Si、Ge、As、Sb、C、N、O、S、Te、Se、F、Cl、Br、I、Atの非金属元素を挙げることができる。それらの金属について、単一の元素であっても良く、複数の金属元素からなる合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。当然、卑金属と貴金属の合金としても実施できる。
(金属化合物)
また、上記の金属(上記に列挙した非金属元素をも含む)の単体に加えて、それら金属の化合物である金属化合物を上記の溶媒に溶解したものを金属流体として用いることができる。本発明における金属化合物としては特に限定されないが、例えば、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物、またはそれら金属化合物の水和物や有機溶媒和物などが挙げられる。金属塩としては、特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩、またはそれら金属塩の水和物や有機溶媒和物などや、有機化合物としては金属のアルコキシドなどが挙げられる。これらの金属化合物は単独で使用しても良く、複数以上が混合された混合物として使用しても良い。また、上記の金属及び/または金属化合物は、上記の溶媒に溶解された金属流体として用いる事が好ましい。
(還元性物質及び還元性流体)
本発明における還元性流体は、上記に挙げた還元性物質を少なくとも1種類含むものとする。また、上記の還元性物質を溶媒と混合または溶解して、還元性物質溶液としたものを還元性流体として使用することが好ましい。この場合、還元性流体が析出流体となる。
本発明における金属溶液及び/または還元性流体には、分散液やスラリーなどのように、固体や結晶の状態のものを含んでも実施できる。
(流体処理装置)
本発明においては、上記原料流体と析出流体、または金属溶液と還元性流体との混合を接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する方法を用いて行うことが好ましく、上記薄膜流体中で原料流体と析出流体とを混合する事によって被析出物質の微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させることが好ましい。また、本発明においては、例えば、本願出願人による、特許文献7に示される装置と同様の原理の装置を用いて、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させることが好ましい。このような原理の装置を用いる事によって、均一且つ均質に微粒子を作製する事が可能である。
以下、図面を用いて上記流体処理装置の実施の形態について説明する。
図1〜図3に示す流体処理装置は、特許文献3に記載の装置と同様であり、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
図2(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
前記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
さらに、この図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(図1においては上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1、2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、図2(B)や図3(B)に示すように円形状であってもよく、図示しないが、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。また、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
なお、処理用面1,2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
上記装置においては、析出・沈殿または結晶化のような処理が、図1に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間で強制的に均一混合しながら起こる。処理された被処理物の粒子径や単分散度は処理用部10、20の回転数や流速、処理用面1,2間の距離や、被処理流動体の原料濃度、または被処理流動体の溶媒種等を適宜調整することにより、制御することができる。
以下、上記の装置を用いて行う微粒子の析出に関する具体的な態様について説明する。
上記の装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間に形成される薄膜流体中で、少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解させた原料流体と、析出流体とを混合させ、微粒子を析出させる。
上記の微粒子の析出は、本願の図1または図4に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間で強制的に均一混合しながら起こる。
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として析出流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体である第1流体膜を作る。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解させた原料流体を、上記処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、均一な核生成を行う事が出来る。
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、第1流体、第2流体、第3流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、析出反応及び微粒子の粒子径をより精密に制御することができる。なお、各導入部へ導入する被処理流動体(第1流体〜第3流体)の組み合わせは、任意に設定できる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
さらに、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
(分散剤等)
また、本発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の界面活性剤及び分散剤は、原料流体もしくは析出流体、またはその両方に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、原料流体とも析出流体とも異なる第3の流体に含まれていてもよい。
(処理用面間における微粒子生成と結晶子)
一般的に微粒子の作製は、核または核が結晶性の場合には結晶子が生成する工程と、その核及び/または結晶子が粒子として集合及び/または成長する工程とから成る。一般的に微粒子は、複数の核または結晶子からなる場合が多い。微粒子の核または結晶子が生成する工程においては、原料流体に溶解していた被析出物質に由来する分子やイオン、クラスター等が、析出流体と混合された結果、溶解度の変化や、析出流体との反応によって、核または結晶子として析出する。その後、核または結晶子が生成した原料流体と析出流体との混合液中において、核または結晶子が集合体となり、さらに未だ分子やイオン、クラスター等として存在する被析出物質が、先に析出した核または結晶並びにそれらの集合体を発端として析出することで、粒子が成長する。これまで、上記の、対向して配設された、接近・離反可能な、一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面1,2間の極微小な空間にできる薄膜流体中おいて原料流体と析出流体とを混合することにより、上記の分子やイオン、クラスター等の拡散を促進させることができるため、均一かつ均質な核生成及び粒子成長を可能とし、均一かつ均質な微粒子の製造を可能としてきた。しかし、処理用面間において生成した微粒子における結晶子について、目的の大きさまで成長させることが困難な場合があった。結晶子の成長は、上記粒子と同様に、一つの結晶子が成長する場合と、複数の結晶子の集合体における結晶子間の境目において、拡散が起こることで成長が起こる場合、もしくはその両方の場合がある。本発明においては、上記の処理用面1,2間から排出された吐出液に含まれる微粒子の結晶子を成長させて目的の微粒子を得る工程を、上記の処理用面1,2間より吐出させた吐出液中において行うことによって、より結晶子径が制御しやすく、また大きな結晶子を作製することを可能とした。さらにこれによって、上記の処理用面1,2間にできる薄膜流体中において析出させた微粒子を含む流体の処理用面1,2間における滞留時間をこれまで以上に短くすることを可能とした。言い換えると、一定時間における、処理流量をこれまで以上に増加することを可能とした。よって、本発明においては、上記の、接近・離反可能な処理用面1,2間において、均一かつ均質な微粒子を生成させ、その微粒子を含む流体を処理用面1,2間より吐出液として排出させた後、結晶子を成長させることによって実施できる。本発明においては、上述の通り、核または結晶子には、上記少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において生成させた微粒子の核または結晶子や、生成させた微粒子の核または結晶子を上記処理用面間にできる薄膜流体中においてある程度の大きさにまで成長させた成長途中の微粒子などの上記薄膜流体中において析出される種々のものが含まれる。
本発明における微粒子は、結晶性であってもアモルファスであってもまたは一部分アモルファスを含む結晶性の微粒子であっても良い。核についても同様に結晶性であってもアモルファスであっても良いが、結晶性の場合には結晶子と記載する。また、核または結晶子は、成長の途中においてその結晶性に変化を伴っても実施できる。例えば、アモルファスの核を発端として、アモルファスの微粒子を析出させ、その後の核の成長によって、結晶性の核(結晶子)となって微粒子についても結晶性の微粒子となっても良い。また、結晶子を発端として結晶性の微粒子を析出させ、その後の成長によって、その結晶型が変化する場合なども含む。
(処理用面間より吐出させた後の結晶子の成長)
本発明は、上記処理用面1,2間より排出させた吐出液中の微粒子に含まれる、当該核または結晶子を成長させることで実施できる。
本発明における成長の工程を行う手段の一例としては、上記に説明した装置の処理用面1,2間より排出させた吐出液をビーカーやタンクのような空容器等で回収し、成長と成長の完了をさせることで実施できる。その際、容器に回収された吐出液を攪拌してもよく、攪拌のための装置並びに方法については特に限定されない。
吐出液が回収され、容器への導入開始から成長の完了まで、吐出液は逐次混合された状態となるため、貯蔵などの吐出液を滞留させる容器では成長の進行度合いに影響し、不均一な成長や新たな核の生成の原因となる可能性がある。このため、本発明においては、上記の処理用面間より吐出させた吐出液を、一端に流入口を有し他端に流出口を有する管状容器等に導入し、管状容器内において成長の工程を完了させることが好ましい。具体的には、図4に示すように、処理用面1,2間より排出させた吐出液を捕集するためのベッセル61を設け、ベッセル61の下端に管状容器62を接続する。この接続箇所が管状容器の入口63となる。ベッセル61に接続された管状容器62内に管状容器入口63から吐出液を導入し、管状容器62内において、吐出液に含まれる微粒子の核または結晶子を成長させることで実施できる。上記の方法においては、上記処理用面1,2間にできる薄膜流体中において微粒子を析出させて、微粒子を含む流体を吐出液として排出させる工程と、管状容器62内に管状容器の入口63から吐出液を導入し、管状容器内にて吐出液に含まれる微粒子の結晶子を成長させて目的の微粒子を得る工程とを連続的に行うことができる。また、後述するように、管状容器62にミキサーを内蔵したり、管状容器62に温度調整機構65を設けてもよい。さらに、原料流体とも析出流体とも異なる第3の流体を供給するための供給装置66を設け、その開口部67をベッセル61内に配位して、吐出液とともに第3の流体を管状容器62に導入して両者を混合させてもよい。
また、吐出液が回収され、容器への導入開始から成長の工程を完了させるまでにその成長の進行度合いを制御できる流体を吐出液と混合することで成長を制御しても良い。それによって、上記の処理用面1,2間において析出させた均一かつ均質な微粒子の核または結晶子を、均一かつ均質な状態として成長させることが可能である。本発明においては、処理用面間において生成させた微粒子の核または結晶子を、処理用面間より吐出させた後に、前記微粒子の核または結晶子よりもその径を大きく成長させることによって実施できる。
なお、核または結晶子の成長は、必ずしも完了するまで行う必要はなく、核または結晶子が目的の径にまで成長した段階でその成長を終了させてもよい。成長を終了させる手段は、特に限定されない。
核または結晶子の成長と成長の完了を確認するための手段としては、特に制限されない。例えば、電子顕微鏡を用いて格子縞を確認し、結晶子径を特定する方法や、X線回折装置を用いて回折パターンとScherrerの式より結晶子径を算出する方法などがある。
本発明において作製される目的の微粒子が結晶性の微粒子であり、上記処理用面1,2間にできる薄膜流体中において析出される微粒子が結晶性の微粒子または結晶子であることが好ましい。しかし、本発明は結晶性の微粒子並びに結晶子に限定されるものでは無い。
(管状容器)
本発明において、微粒子の核または結晶子を成長させるための管状容器としては、一端に流入口を有し他端に流出口を有するものであれば特に限定されない。微粒子作製における成長工程において、処理用面1,2間より排出させた吐出液及び吐出液に含まれる微粒子や微粒子の核または結晶子他の物質とは不活性な材質からなる管状容器が好ましい。また、管状容器の径についても、特に限定されない。処理用面1,2間から吐出される吐出液を入口63から滞り無く導入し、出口64から排出できる径であることが好ましい。また、管状容器の長さにおいても特に限定されないが、処理用面1,2間から排出された吐出液が管状容器に導入されてから排出されるまでに、上記成長の工程を完了できる管状容器の長さであることが好ましい。また、吐出液は、上記の処理用面1,2間から排出されたのち、速やかに管状容器62に導入される。
また、管状容器内にミキサーを内蔵したものであっても良い。例えば、静止型混合器(スタティックミキサー)のようなものを管状容器内に設けた構造のものでも実施できる。さらに、管状容器の中の吐出液の温度を調節する機構を持つものでも実施できる。それによって、成長の進行を制御しやすくなる利点がある。温度を調節する機構並びに方法としては特に限定されないが、ジャケット構造やの二重管構造として、温度調節用の熱媒・冷媒などを用いても良いし、コイル式熱交換器、例えば商品名、Mコイル(エム・テクニック製)のような構造としても実施できる。その他、ペルチェ素子などを用いる方法や、直接加熱・冷却する方法でも実施できる。管状容器内に上記処理用面1,2間から排出された吐出液を導入する機構としては、特に限定されないが、ポンプや圧縮気体の圧力により導入する方法や、管状容器内を回転容積式のポンプのような形状としても実施できる。その他、重力を利用して、管状容器の上から下に処理用面1,2間から排出された吐出液を通過させるような方法も実施できる。
また、本発明においては、上記の、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において、2種類以上の流体を混合して微粒子を析出させることに限定するものでは無い。例えば、少なくとも1種類の被析出物質を溶解した原料流体を上記の処理用面1,2間に導入し、温度変化によって溶解度を変化させたり、原料流体に溶解させた被析出物質を反応させたりして微粒子を析出させ、その後、上記の処理用面1,2間から吐出された吐出液中において微粒子の核または結晶子を成長させることでも実施できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、「中央から」というのは、図1又は図4に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、第1導入部d1から導入される、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、図1又は図4に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。
(pH測定)
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子製のJSM−7500Fを使用した。観察条件としては、観察倍率を1万倍以上とし、微粒子の粒子径については、10箇所の平均値を採用した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置X‘Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は,Cu対陰極,管電圧45kV,管電流40mA,走査速度1.6°/minである。
実施例として、図1又は図4に示すように、特許文献3に示された装置と同様の原理の装置を用いて、処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で金属流体と還元性流体とを混合し、薄膜流体中で金属微粒子の微粒子を析出させ、その後、当該微粒子の核または結晶子を成長させることによって、目的の金属微粒子を得た。
(実施例:ニッケル)
中央から第1流体の金属流体としてニッケル溶液(4.69wt% 硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)/ 81.12wt% エチレングリコール(EG)/ 0.80wt% ポリエチレングリコール600(PEG600)/ 13.39 wt% 純水(HO)を、供給圧力=0.29MPaG、回転数3600rpm、143℃、800ml/min.で送液しながら、第2流体の還元性流体として、還元性物質溶液(10wt% 水酸化カリウム(KOH)/20wt% 純水(HO)/70wt% ヒドラジン一水和物(HMH))を25℃、60ml/min.で処理用面1,2間に導入し、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合した。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前)にて測定した。また、pHメーターを用いて測定した、第1流体のpHは4.12であり、pH試験紙を用いて測定した、第2流体のpHは14以上であった。処理用面1,2間から排出させた直後の吐出液は95℃であり、黒色であった。
(実施例1〜5:ニッケル)
実施例1〜5として、上記の条件で処理用面1,2間から排出させたニッケル微粒子を含む吐出液を20秒間、一つの容器に回収した。回収中に吐出液が黄緑色の濁った状態から黒色に変化する様子が確認され、20秒間回収を行い、回収を完了させた約20秒後に目視による吐出液の色の変化は無くなり、その時の吐出液の温度は95℃であった。オイルバスを用いて、回収完了後の吐出液の温度を95℃に保温し、120分間保持した。吐出直後、95℃での保温を10分間、30分間、60分間、120分間したものについサンプリングし、ニッケル微粒子を回収するために、室温になるまで静置した(室温までの冷却時間、約10分間)。その後、ニッケル微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、純水にて洗浄する作業を3回行い、25℃の条件で大気圧にて乾燥した。乾燥後粉体のXRD測定の結果、FCC型のNiと一致する結晶構造を持つことがわかり、さらに粉体を HNO3で溶解させた溶液のICP測定より、不純物のない、ニッケル微粒子が作製されたことがわかった。図5に実施例3において得られたニッケル微粒子のSEM写真を示す。上記、吐出液回収完了直後、直後より10分後、30分後、60分後、120分後の全ての100m程度のニッケル微粒子が均一に作製できていることを確認した。
得られたニッケル微粒子の結晶子径をXRD測定より算出した。装置はPANalytical製、X‘Pert PRO MPDを使用し、測定範囲は10〜100[°2Theta](Cu)、0.016step/10secで測定し、得られたニッケル回折パターンの44.5°付近のピークにシェラー式を当てはめて、シリコン多結晶盤は、47.3°に確認されるピークを使用した。得られた結晶子径を表1に示す。
表1より、処理用面間において析出させたニッケル微粒子を95℃で保持することによって、結晶子が大きくなることがわかった。目的の微粒子を作製するに際し、処理用面間において微粒子を析出させ、析出させた微粒子を含む流体を処理用面より吐出させる工程と、処理用面間より吐出させた微粒子を含む分散液を処理することによって、微粒子の結晶子径を制御できることがわかった。
(実施例6〜9:ニッケル)
実施例6〜9として、図4の装置に示すように、管状容器62に接続された吐出液を捕集するためのベッセル61を設置した。また、管状容器62は、ウォーターバス65に浸した。中央から第1流体の金属流体としてニッケル溶液(4.99wt% 硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)/ 95.01 wt% 純水(HO)を、供給圧力=0.30MPaG、回転数3000rpm、98℃で送液しながら、第2流体の還元性流体として、還元性物質溶液(15wt% 水酸化ナトリウム(NaOH)/34wt% 純水(HO)/51wt% ヒドラジン一水和物(HMH))を53℃で処理用面1,2間に導入し、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合した。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前)にて測定した。また、pHメーターを用いて測定した、第1流体のpHは4.52であり、pH試験紙を用いて測定した、第2流体のpHは14以上であった。ニッケル溶液と還元剤溶液とを処理用面1,2間において、体積比、1:1の割合で混合させ、ニッケル微粒子の微粒子を含む流体を吐出液として処理用面1,2間より排出させ、吐出液を連続的に管状容器入口63から管状容器内へ導入させ、管状容器出口64より排出させた。吐出液はベッセル61内に停滞することなく、連続的に排出された。管状容器出口64から排出された吐出液の温度が95℃となるように、オイルバス65の温度を設定した。実施例1〜5と同様の作業にてニッケル微粒子を回収し、XRD測定並びにSEM観察を行った。XRD測定結果、SEM観察結果共に、実施例1〜5と同様に不純物のない、ニッケル微粒子が作製されたことがわかった。吐出液の管状容器62内の滞留時間を変更した実施例を、得られた結晶子径と合わせて表2に示す。
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
61 ベッセル
62 管状容器
63 管状容器の入口
64 管状容器の出口
65 温度調節機構、オイルバス
66 供給装置
67 開口部

Claims (12)

  1. 微粒子の製造方法において、
    (I)対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中において、微粒子を析出させ、上記析出させた微粒子を含む流体を吐出液として排出させる第1の工程と、
    (II)前記吐出液中において、前記析出させた微粒子の核または結晶子を成長させる第2の工程との、
    上記少なくとも2つの工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法。
  2. 上記析出させた微粒子が結晶性の微粒子であることを特徴とする、請求項1記載の微粒子の製造方法。
  3. 少なくとも1種類の被析出物質を溶媒に溶解または分子分散させた原料流体と、前記被析出物質を微粒子として析出させるための析出流体とを、上記薄膜流体中で混合し、前記被析出物質の微粒子を析出させることを特徴とする、請求項1に記載の微粒子の製造方法。
  4. 上記原料流体は、上記被析出物質として少なくとも1種類の金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解した流体であり、
    上記析出流体は、還元性物質を少なくとも1種類含む還元性流体であり、
    上記析出させた微粒子が金属微粒子であることを特徴とする請求項3に記載の微粒子の製造方法。
  5. 上記の第2の工程において、上記析出させた微粒子の粒子径の成長度合いよりも、上記析出させた微粒子の核の成長度合いまたは上記析出させた微粒子の結晶子径の成長度合いの方が大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微粒子の製造方法。
  6. 上記の第2の工程において、上記析出させた微粒子の粒子径を変化させずに、上記析出させた微粒子の核の大きさまたは上記析出させた微粒子の結晶子径を変化させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微粒子の製造方法。
  7. 上記の第2の工程において、上記吐出液を吐出直後の温度で10分間以上保温することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の微粒子の製造方法。
  8. 前記第2の工程は、一端に流入口を有し他端に流出口を有する容器内に、前記流入口から前記吐出液を導入し、
    上記管状容器内において上記析出させた微粒子の核または結晶子を成長させるものであることを特徴とする請求項1〜7の何れか記載の微粒子の製造方法。
  9. 上記管状容器内に、混合器を設け、上記管状容器内の流体を混合することを特徴とする、請求項8に記載の微粒子の製造方法。
  10. 上記第1の工程と、上記第2の工程とを連続的に行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか記載の微粒子の製造方法。
  11. 上記管状容器に温度調節機構を設け、上記管状容器内の流体の温度を制御することを特徴とする請求項8または9に記載の微粒子の製造方法。
  12. 上記管状容器の長さ及び/またはその径を調整することによって、上記管状容器内の流体の上記管状容器内での滞留時間を制御することを特徴とする請求項8、9、11のいずれか記載の微粒子の製造方法。
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