[本発明の基本的構成]
本発明の実施形態を説明するに先立ち、本発明の基本的構成の例及び関連する現象について図1を用いて説明する。図1は、本発明による光源装置の基本的構成の例を説明する図である。
図1に示すように、本発明による光源装置は、ポンプパルス光を出力するポンプパルス光源101と、パラメトリック利得媒質103とを有している。パラメトリック利得媒質103は、光パラメトリック効果によりポンプパルス光とは異なる波長を有する信号パルス光(又はアイドラーパルス光)を増幅する媒質である。本明細書では、ポンプパルス光がパラメトリック利得媒質内で発生させるパラメトリック利得帯域において、短波長側を信号光、長波長側をアイドラー光と呼び、パルス光であることを示す場合に短波長側を信号パルス光、長波長側をアイドラーパルス光と呼ぶ。また、前記パラメトリック利得媒質は、少なくとも二つ以上の偏光の異なる伝搬軸を有する。パラメトリック利得媒質は、より具体的には非線形光ファイバー等の非線形光導波路である。
信号パルス光(又はアイドラーパルス光)は、パラメトリック効果によりパラメトリック利得媒質103で生成されるものであってもよいし、外部の光源からポンプパルス光と合波されてパラメトリック利得媒質103に入力されるものであってもよい。信号パルス光(又はアイドラーパルス光)が外部から入力される場合、本発明による光源装置は、ポンプパルス光とは異なる波長を有する信号パルス光(又はアイドラーパルス光)を出力する信号パルス光源106を有する。さらに、この場合、本発明による光源装置は、ポンプパルス光源101から出力されたポンプパルス光と、信号パルス光源106から出力された信号パルス光とを合波してパラメトリック利得媒質103に入力する例えば光合波素子である光合波部102を有する。
ポンプパルス光源101より出力された光角周波数ω1を有するポンプパルス光104は、光合波部102を伝搬してパラメトリック利得媒質103へ入射される。また、光角周波数ωSを有する信号パルス光105(光角周波数ω3を有する信号パルス光又は光角周波数ω4を有するアイドラーパルス光)が光合波部102を介してパラメトリック利得媒質103へ入射される。この際、ポンプパルス光104と信号パルス光105は、パラメトリック利得媒質103のそれぞれ異なる伝搬軸を伝搬するように偏光を調整した状態で入射される。また、ポンプパルス光104と信号パルス光105は、時間的に重なるように調整されて入射される。すなわち、ポンプパルス光104と信号パルス光105とは、光合波部102により合波されてパラメトリック利得媒質103に入力される。
ここで、まず、波長分散について説明する。光を伝搬する光導波路は、光導波路を構成する物質の有する屈折率と、光導波路の構造によって決定される波長分散を有する。波長分散β(ω)は以下の数式(1)で定義される。
ここで、ωは光角周波数、n(ω)は光導波路の有効屈折率、cは真空中の光速を表わす。つまり、波長分散β(ω)は、光角周波数ωの光が光導波路を1m伝搬した際に、どれだけの位相ずれを生じるかを意味している。
上記の数式(1)をテーラー展開すると、以下の数式(2)が得られる。
ここで、ω0はテーラー展開の中心光角周波数である。一次の分散であるβ1(ω)は群速度の逆数を表わし、パルス光の中心光角周波数がωの時の、パルス光の光導波路内での伝搬速度と関係する。また、二次の分散であるβ2(ω)は、伝搬するパルス光の光導波路内での時間的な広がりを意味する。
光導波路が光の伝搬方向に沿って径が変化したり、密度や構成物質が変化したりすると、伝搬する光の偏光に状態に応じて、伝搬する光の感じる屈折率が変化する。例えば、複屈折性を有する媒質中では、屈折率nは複屈折軸に沿って異なる。複屈折性を有する媒質は、進相軸及び遅相軸の二つの伝搬軸を有していると呼ばれる。そのため、分散βも複屈折軸によって異なる。
次に、光パラメトリック効果について説明する。
本発明では、光パラメトリック効果によるエネルギー遷移による光増幅を行う。
光パラメトリック効果による利得の発生は、四光波混合に基づいている。媒質にレーザー光を入射したとき、入射されたレーザー光に対して媒質内の電子応答によって分極が生じる。入射したレーザー光の強度が大きくなり、電場強度が大きくなると、電子応答による分極は、入射したレーザー光に対して非線形となる。このとき生じる非線形な分極により、入射したレーザー光とは異なる波長の光が生成される。光ファイバーのような反転対称性を持つ媒質中では、偶数次の非線形感受率は零となるため、奇数次の非線形感受率による非線形効果が表れる。特に3次の非線形感受率χ
(3)の値が大きく、主要な分極・非線形効果を与える。四光波混合は3次の非線形感受率により説明される。以下、レーザーの伝搬方向をz軸方向とする。z軸と直交する方向をx軸として、x軸方向のレーザー電場によって引き起こされるx軸方向の3次の分極P
xxxx (3)は、誘電率ε
0を用いて次の数式(3)で表わされる。
このとき、入射レーザー電場E
xは、3つの異なる光角周波数ω
1、ω
2、ω
3のレーザー電場の和として以下の数式(4)で表される。
ここで、β(ω1)、β(ω2)、β(ω3)は、それぞれ光角周波数ω1、ω2、ω3の成分を有する光の伝搬定数である。また、c.c.は、その前の全ての光の複素共役をあらわす。
P
xxxx (3)には、光角周波数ω
4=ω
1+ω
2−ω
3を持つ振動成分の項が以下の数式(5)に示すように現れる。
つまり、3つの異なる光角周波数ω
1、ω
2、ω
3のレーザー光を入力することで、これらとは異なる光角周波数ω
4を有する光が発生されることを意味している。
光角周波数ω
4を持つレーザー光が出力されるためには、媒質内の各点で発生するシグナル光が強めあうことが条件として必要である。この条件は、以下の数式(6)で表わされ、位相整合条件と呼ばれる。
さらに、非線形光学効果による位相変調が生じるため、位相整合条件は以下の数式(7)のように表わすことができる。
ここで、ω
1=ω
2とした場合、すなわち入射するポンプパルス光の波長が一つの場合は縮退四光波混合と呼ばれ、その場合でも光パラメトリック効果は起こり、数式(7)を書きなおすと、以下の数式(8)となる。
ポンプパルス光のみを媒質に入力した場合でも、ω3及びω4の光角周波数を有するレーザー光を発生させることができる(光パラメトリック発生、Optical Parametric Generator;OPG)。
また、縮退四光波混合においても、ω1の光角周波数を有するポンプパルス光と同時にω3の光角周波数を有するシグナル光を入射した場合、ω1の光角周波数を有する光からω3の光角周波数を有する光へエネルギー遷移が生じる。このような現象を用いた光増幅器は、光パラメトリック増幅器(Optical Parametric Amplifier;OPA)と呼ばれる。シグナル光に代えてω4の光角周波数を有するアイドラー光を入射した場合も同様のエネルギー遷移が生じる。
さらに、OPAを利得として共振器を構成することでパラメトリック光を増幅して発振させることが可能である。このような共振器は、光パラメトリック共振器(Optical Parametric Oscillator;OPO)と呼ばれる。
また、パラメトリック利得スペクトルは、以下の数式(9)で表わされる(“Fiber Optical Parametric Amplifiers, Oscillators and Related Devices”, Michel E. Marhic, Cambridge university press)。
Lは光導波路の長さである。また、γは光導波路の非線形係数を表し、光導波路を構成する媒質の非線形屈折率n2、光角周波数ω、光導波路のコア径Aeffにより決定される。
数式(9)及び(10)より、以下の数式(11)が導かれる。
パラメトリック利得スペクトルの中心光周波数は以下の数式(12)を満たす。
Δβは数式(6)より計算される。以下では、Δω=|ω
3−ω
1|=|ω
4−ω
1|とする。偏光軸が同一の場合には、数式(6)は、以下の数式(13)となる。
本発明では、位相整合条件を、ポンプパルス光と信号光(又はアイドラー光)とで偏光軸が直交している場合にまで拡張した。偏光軸が直交している場合には、以下の数式(14)となる。
ここで、P及びSは、光導波路の伝搬定数の異なる伝搬軸を表わしている。偏波保持特性を有する偏波保持光ファイバーであれば、伝搬定数の異なる伝搬軸として、Fast軸(進相軸)及びSlow軸(遅相軸)の二軸を有している。P及びSの組合せは、PがFast軸、SがSlow軸の組合せでもよいし、PがSlow軸、SがFast軸の組合せでもよい。
数式(12)及び数式(14)より、0次の分散の項である2(βP(ω1)−βS(ω1))によるパラメトリック利得の波長帯域の拡張が可能であることが分かった。このことは、非特許文献2で代表されるような光パラメトリック効果を用いた波長変換光源では示されたことはなかった。そこで、本発明では、パラメトリック利得を与えるポンプパルス光と、ポンプパルス光とは波長が異なりパラメトリック利得を受ける信号パルス光を、伝搬定数が異なる2つの伝搬軸にそれぞれ入射する。これにより、本発明では、パラメトリック利得波長帯域を変えることが可能となる。このように、ポンプパルス光及び信号パルス光の偏光を制御することで、広帯域なパラメトリック利得波長帯域を得ることができる。したがって、本発明によれば、光源装置において、波長可変帯域の広帯域化を実現することができる。
また、パルス光を用いたパラメトリック増幅では、ω1の光角周波数を有する光とω3(又はω4)の光角周波数を有する光が時間的に重なっていなければならない。ω1の光角周波数を有するポンプパルス光とω3の光角周波数を有する信号光(又はω4の光角周波数を有するアイドラー光)の両方がパルス光である場合には、分散により伝搬速度が異なるため、重なり合っている長さ(時間)は限られている。これをウォークオフ長と呼ぶ。本発明では、上記のように、パラメトリック利得を与えるポンプパルス光と、ポンプパルス光とは波長が異なりパラメトリック利得を受ける信号パルス光を、伝搬定数が異なる伝搬軸にそれぞれ入射する。そしてさらに、群速度が一致し、かつパラメトリック利得波長が対応するポンプパルス光と信号パルス光とを組み合わせる。このことで、ポンプパルス光のパラメトリック利得を大きくできるパルス光の強度の高い状態で重ね合わせたまま伝搬させ、信号パルス光へのエネルギー変換を大きくできる。本発明では、複屈折軸の違いによって伝搬速度を一致させて相互作用長を延ばすことで、光パラメトリック効果によってポンプパルス光とは異なる波長を有する信号パルス光(またはアイドラーパルス光)を高出力化することが可能となる。したがって、本発明によれば、光源装置において、光出力の高出力化を実現することができる。
なお、信号パルス光に代えてアイドラーパルス光を用いた場合も、信号パルス光の場合と同様にして、光源装置において、波長可変帯域の広帯域化及び光出力の高出力化を実現することができる。
一般的に、非線形波長変換技術では、パルス光を用いることで高いエネルギー密度が得られ、高い非線形光学効果を得る。また、ポンプとなるポンプパルス光と、波長変換されエネルギーを受ける信号パルス光との相互作用長が長いほど、非線形光学効果が大きくなる。光ファイバーを用いた非線形波長変換技術では、光ファイバー長によって相互作用長を長くとることが可能となる。しかし、光ファイバーが有する波長分散によって、波長の異なるポンプパルス光と信号パルス光の伝搬速度が異なり、伝搬するほどにパルス光のピーク位置がずれてしまい、結果として相互作用長が限定されてしまう。
そこで、非特許文献1では、複屈折特性を有する光ファイバーを用いることで、相互作用長を長くし、非線形光学効果を大きくしている。また、非特許文献1では、ソリトンシフトを利用して、ポンプパルス光と信号パルス光の波長を長波長へシフトしている。このような非特許文献1では、相互位相変調(Cross phase modulation;XPM)を積極的に利用することで、パルストラッピングという現象を引き起こしている。非特許文献1で生じるパルストラッピングは、エネルギーを与えるポンプパルス光がソリトン伝搬する。そのような場合、ポンプパルス光は、以下の数式(15)で与えられるソリトン次数Nが0.5<N<1.5の範囲となるようなパルス形状で入射される。
ここで、γは非線形係数を表し、光導波路を構成する媒質の非線形屈折率n2、光角周波数ω、光導波路のコア径Aeffにより決定される。P0はパルス光のピーク強度、TFWHMはパルス光の時間の半値全幅、β2はパルス光の中心波長に対する光導波路の二次の波長分散値を表わす。また、光導波路は異常分散特性を有する。つまり、β2は負の値である。
ソリトン伝搬は、異常分散と、非線形光学効果の一つである自己位相変調(Self−phase modulation;SPM)とのつり合いで生じる。具体的には、まず、異常分散によってパルス光内の長波長成分がパルス光の後方へ、短波長がパルス光の前方へ位相がずれる現象がある。一方、SPMによってパルス光の前方部が長波長化、後方部が短波長化する現象があり、これは見掛け上正常分散を与えているといえる。この二つの現象がつり合い、パルス光がその形を維持して伝搬することをソリトン伝搬という。
また、パルストラッピングでは、信号パルス光はXPMによってポンプパルス光に捉えられる。具体的には、まず、信号パルス光が、異なる複屈折軸間で群速度が一致する波長よりもわずかに長波長にあるとする。そのような場合、光導波路は異常分散を有するので、信号パルス光は、ポンプパルス光よりも遅れて伝搬することになる。すると、信号パルス光は、ポンプパルス光の後方部に位置することとなる。このため、信号パルス光は、XPMにより短波長化して伝搬速度が速くなり、その結果、ポンプパルス光に追いつく。一方、信号パルス光が、異なる複屈折軸間で群速度が一致する波長よりもわずかに短波長にあるとする。そのような場合、光導波路は異常分散を有するので、信号パルス光は、ポンプパルス光よりも速く伝搬することになる。すると、信号パルス光は、ポンプパルス光の前方部に位置することとなる。このため、信号パルス光は、XPMにより長波長化して伝搬速度が遅くなり、その結果、ポンプパルス光に追いつかれる。このような現象が引き続き起きることで、信号パルス光は、常にポンプパルス光に捉われ続けることとなる。
さらに、非特許文献1では、ソリトン自己周波数シフトと呼ばれる現象により、ポンプパルス光の中心波長が長波長化する。これは、ポンプパルス光内でラマン効果が起こり、ポンプパルス光自身の中で短波長成分から長波長成分へエネルギーが遷移することで生じる。このことに伴い、信号パルス光も、ポンプパルス光に捉われ続けながら長波長化する。また、ラマン効果によりポンプパルス光から信号パルス光へエネルギーが遷移し、その結果、ポンプパルス光強度が下がり、信号パルス光強度が上がる。
非特許文献1に記載された技術を波長可変光源に用いる場合、出力波長の制御は、以下の方法が挙げられる。
まず、入力するポンプパルス光のエネルギーを変えることが挙げられる。
ポンプパルス光のエネルギーを変えることで、一定の光導波路中で生じるラマン効果による短波長成分から長波長成分へのエネルギーシフト量が変化し、その結果、出力波長が変化する。
また、光導波路の長さを変えることが挙げられる。
ラマン効果によるソリトン自己周波数シフトは、光導波路長が長いほどシフト量が大きくなる。したがって、光導波路の長さに応じてシフト量が変化し、その結果、出力波長が変化する。
また、入力するポンプパルス光と信号パルス光の波長を変えることが挙げられる。
ラマン効果による周波数シフト量は、ある一定の長さの光導波路中では、大きくは異ならないが波長によってわずかに異なる。そのため、入力波長に応じて出力波長も変化する。
しかしながら、ソリトンパルス光であるポンプパルス光を用いる非特許文献1では、上述のようにポンプパルス光のパワーが限定されていた。具体的には、非特許文献1のようなソリトン伝搬を用いたパルストラッピング技術を用いる場合、入射するパルス光は光導波路の異常分散領域である必要があり、かつ、ソリトン次数Nが0.5<N<1.5である必要があった。パルスエネルギーをE
pとし、パルス形状をSech2型とすると、ピーク強度P
0は、おおよそE
p/T
FWHMとなる。数式(15)にP
0=E
p/T
FWHMを代入し、0.5<N<1.5の条件を考えると、E
p・T
FWHMについて、以下の数式(16−1)で表わされる範囲が得られる。
したがって、ポンプパルス光のパルスエネルギー及び時間幅は限定されている。
なお、本発明において、ポンプパルス光は、上記のようにパルスエネルギー及び時間幅が限定されないものであることが好ましく、具体的には以下の数式(16−2)を満たすものであることが好ましい。
ただし、上記数式(16−2)中、γは非線形光導波路の非線形係数、TFWHMはポンプパルス光のパルス時間幅、Epはポンプパルス光のパルスエネルギー、β2は非線形光導波路の二次の分散である。
一方で、例えば非特許文献2に記載されるような光パラメトリック波長変換技術では、ポンプパルス光と信号パルス光(又はアイドラーパルス光)とを同時に非線形ファイバーに入射する。その時、光パラメトリック効果によってポンプパルス光から信号パルス光(又はアイドラーパルス光)へエネルギーが遷移し、信号パルス光(又はアイドラーパルス光)が増幅されて出力される。非特許文献2では、ポンプパルス光、又は信号パルス光(若しくはアイドラーパルス光)の中心波長や共振器長を変化させることで出力される波長を制御する。非特許文献2で代表される光パラメトリック波長変換技術では、光パラメトリック増幅での出力光強度を高めるために、これまではポンプパルス光の強度を大きくしていた。また、信号パルス光(又はアイドラーパルス光)のスペクトル形状を保つために、XPMを抑制する必要があった。
このように、光パラメトリック波長変換技術では、XPMを抑制するため、上記で説明したようなパルストラッピングを生じることは困難となる。また、XPMを抑制するために、ポンプパルス光の時間幅を大きくしなければならない。さらに、位相整合条件を満足するために、ポンプパルス光の波長がゼロ分散波長付近となるような光導波路が用いられており、|β2|が非常に小さい。つまり、パラメトリック利得を用いた波長変換では、高出力化のために、ソリトン次数Nが1.5を大きく超えるようなポンプパルス光を入力する必要がある。したがって、高出力なパラメトリック利得を得ることと、非特許文献1のようなパルストラッピングとを組み合わせることは困難である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、実施形態の説明では、同様の構成要素については、適宜、同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態による光源装置について図2乃至図4を用いて説明する。図2は、第1の実施形態による光源装置を説明する図である。図3は、第1の実施形態による光源装置で用いた非線形光導波路の有効屈折率曲線を示すグラフである。図4は、第1の実施形態による光源装置でのポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長を示すグラフである。
第1の実施形態による光源装置は、OPAを構成するものである。第1の実施形態による光源装置は、図2に示すように、ポンプパルス光を出力するポンプパルス光源201と、信号パルス光を出力する信号パルス光源209とを有している。また、第1の実施形態による光源装置は、入力端としての2つの入力ポート及び出力端としての1つの出力ポートを有する光合波器207と、非線形光導波路208とを有している。
ポンプパルス光源201は、出力したポンプパルス光が光合波器207に入力されるように、光合波器207の一方の入力ポートに光学的に接続されている。また、信号パルス光源209は、出力した信号パルス光が光合波器207に入力されるように、光合波器207の他方の入力ポートに光学的に接続されている。また、光合波器207の出力ポートには、光合波器207により合波されたポンプパルス光及び信号パルス光が非線形光導波路208に入力されるように、非線形光導波路208の一端が光学的に接続されている。非線形光導波路208の他端は、光源装置の出力光となる光が出力される出力端になっている。
ポンプパルス光源201は、波長可変光源であり、中心波長が1020nm〜1080nmまで波長可変であり、平均パワー5W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が1psのポンプパルス光210を出力する。ポンプパルス光源201は、イッテルビウム(Yb)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザー202、光ファイバー増幅器203、高非線形光ファイバー204、波長フィルター205、及び光ファイバー増幅器206を有している。
モードロックファイバーレーザー202の出力端は、光ファイバー増幅器203の入力端に光学的に接続されている。光ファイバー増幅器203の出力端は、高非線形光ファイバー204の一端に光学的に接続されている。高非線形光ファイバー204の他端は、波長フィルター205を介して、光ファイバー増幅器206の入力端に接続されている。光ファイバー増幅器206の出力端は、ポンプパルス光源201の出力光であるポンプパルス光が出力される出力端になっている。
ポンプパルス光源201において、モードロックファイバーレーザー202から出力された光は、光ファイバー増幅器203によって増幅されて高出力化される。光ファイバー増幅器203により高出力化された光は、高非線形光ファイバー204によって広帯域化される。そして、波長フィルター205による切り出しにより、高非線形光ファイバー204により広帯域化された光から所定の波長範囲の光が切り出される。波長フィルター205により切り出された光は、光ファイバー増幅器206によって増幅されて高出力化された後、ポンプパルス光210として出力される。ポンプパルス光源201は、ポンプパルス光210の波長を変えることができる波長可変光源として構成されている。
ただし、ポンプパルス光源201は、上述の構成に限定されるものではない。ポンプパルス光源201は、その他のファイバーレーザーから生成された光を増幅して出力するものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したパルス光を出力するものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。また、光ファイバー増幅器206は、光合波器207と非線形光導波路208との間の非線形光導波路208の直前に設けられていても良い。このことで、光ファイバー増幅器206から非線形光導波路208までの間にある光導波路内での非線形光学効果によるポンプパルス光の波形歪みを抑制できる。
信号パルス光源209は、665nm〜775nmの信号パルス光211を出力するものである。信号パルス光源209の構成は、特に限定されるものではないが、例えば後述するようにして665nm〜775nmの信号パルス光211を生成する。
光合波器207は、光合波部として機能し、ポンプパルス光210が入力される第1の入力ポート及び信号パルス光211が入力される第2の入力ポートを有している。また、光合波器207は、出力ポートを有している。光合波器207は、第1の入力ポートに入力されたポンプパルス光と第2の入力ポートに入力された信号パルス光とを合波して出力ポートから出力し、合波したポンプパルス光及び信号パルス光を非線形光導波路208に入力するように構成されている。光合波器207としては、例えば、偏波ビームコンバイナが用いられている。なお、光合波器207は、偏波ビームコンバイナに限定されるものではなく、ファイバーカプラーや波長分割多重カプラー(WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラー)であっても良い。あるいは、偏波ビームスプリッタやダイクロイックミラーを用いた空間光学系でも良い。
非線形光導波路208は、光パラメトリック増幅を生じる光導波路であり、具体的には、偏波保持特性を有する偏波保持フォトニック結晶ファイバー(LMA−PM−5、NKT Photonics)が用いられている。非線形光導波路208では、光パラメトリック効果によってポンプパルス光から信号パルス光へエネルギーが移動する。
このように、第1の実施形態では、パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208として偏波保持フォトニック結晶ファイバー(LMA−PM−5、NKT Photonics)を用いた。光導波路の分散特性は、データシートにより知ることができる。しかし、2次の分散よりも低次の分散については知ることが難しい。本発明では、以下の方法で0次の分散及び1次の分散を見積もった。また、各軸に沿った分散特性は、実際に測定することでも知ることができる。
まず、1次の分散特性は、セルマイアの多項式近似を用いて、以下の数式(17)で近似できる。
ここでλは波長であり、単位はμmである。A、B、C、Dは、それぞれ定数である。上記数式(17)を一回微分すると、二次の分散は以下の数式(18)となる。
ここでcは真空中の光速である。また、数式(17)を積分すると、以下の数式(19)を得る。式(19)中のFは定数である。
また、分散特性D
isとβ
2は、以下の数式(20)で示される関係がある。
データシートより読み取った分散特性Disから数式(20)を用いてβ2のデータを取得し、最小二乗法によってフィッティングすることで、A、B、D、Eを求めた。
次に、屈折率についてのセルマイアの近似多項式である以下の数式(21)を用いて、光ファイバーの材料に依存した屈折率を求めた。
光ファイバーのコア部を伝搬する光は、エヴァネッセント波に見られるように、クラッド部に一部しみ出しながら伝搬していると考えられる。用いている光導波路はフォトニック結晶ファイバーであるので、クラッド部が空気である。光ファイバーに用いられているガラスの屈折率はおよそ1.45であり、空気は1である。一般的に、フォトニック結晶ファイバーの有効屈折率は、コアの屈折率に対して1%程度下がる。そこで、数式(21)を用いて計算された屈折率から1%だけ減じた屈折率を有効屈折率として、ある波長λ1とλ2について有効屈折率を求めた。屈折率と分散の関係は数式(1)で表わされるので、ある波長λ1とλ2について、CとFの数式が得られ、連立方程数式を解くことでCとFを求めた。こうして、Fast軸について有効屈折率曲線を求めた。
Slow軸については、データシートにFast軸とSlow軸との屈折率差を示すBirefringence(Δn)の値が示されており、上述した方法で求めた有効屈折率曲線にΔnを足すことで求めた。
こうして偏波保持フォトニック結晶ファイバーのFast軸及びSlow軸のそれぞれについて求めた有効屈折率曲線を図3に示す。
上記第1の実施形態による光源装置では、次のようにして短波長へ拡大した光パラメトリック増幅を行って光出力の高出力化を実現することができる。
ポンプパルス光源101から出力されたポンプパルス光210は、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207の第1の入力ポートに入力される。さらに、光合波器207に入力されたポンプパルス光210は、光合波器207の出力ポートから出力され、偏波保持フォトニック結晶ファイバーである非線形光導波路208のSlow軸を伝搬するように非線形光導波路208の一端に入力される。
こうして、ポンプパルス光源101により、ポンプパルス光210を1020nm〜1080nmまで中心波長を変えて非線形光導波路208に入力する。
図4に示すように、ポンプパルス光210と信号パルス光211とが同一軸を伝搬する場合、中心波長がおよそ680nm〜820nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得る。一方、本実施形態のようにポンプパルス光210がSlow軸を伝搬し、信号パルス光211がFast軸を伝搬して両パルス光が直交して伝搬する場合、中心波長がおよそ665nm〜775nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得ることが可能となる。つまり、パラメトリック利得波長帯域を短波長側へ拡張することが可能となる。
そこで、本実施形態では、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の第2の入力ポートに、中心波長が665nm〜775nmの信号パルス光211をポンプパルス光210と同期して入力する。信号パルス光211は、信号パルス光源209より出力される。
信号パルス光211は以下によって生成した。Erファイバーレーザー出力である1550nmのパルス光を、高非線形性を有する光導波路に入射することで1300nm〜1550nmをカバーするように広帯域化した。そして、周期的分極反転ニオブ酸リチウム(Periodically Poled Lithium Niobate;PPLN)によって波長変換した。さらに、波長フィルターを用いて中心波長が665nm〜775nmの信号パルス光を得た。ただし、信号パルス光はこの形態に限定されるものではなく、半導体レーザー出力でも良いし、Ti:Sapphireレーザー出力でも良い。
光合波器207に入力された信号パルス光211は、ポンプパルス光210と合波されて光合波器207の出力ポートから出力され、非線形光導波路208のFast軸を伝搬するように非線形光導波路208の一端に入力される。
こうして、本実施形態により、短波長側へ拡大した光パラメトリック増幅を行うことが可能である。非線形光導波路208の他端からは、短波長側へ拡大した光パラメトリック増幅によるパラメトリック利得で生じた光が出力光として出力される。
なお、光源装置の出力端である非線形光導波路208の他端に、光合波器207として用いた第1の偏波ビームコンバイナとは別に、第2の偏波ビームコンバイナを偏波ビームスプリッタとして用いるために接続しても良い。第2の偏波ビームコンバイナによって、光パラメトリック効果によってエネルギーを変換せずに残った残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光を分離する。このことで、非線形光導波路208以外で生じるXPMの影響を低減し又は除去することが可能となり、パラメトリック利得で生じる光の歪みを抑制できる。
また、第1及び第2の偏波ビームコンバイナは、ファイバーカプラーやWDMカプラーでも良い。あるいは、偏波ビームスプリッタやダイクロイックミラーを用いた空間光学系でも良い。このことで、偏波ビームコンバイナの波長依存特性を低減することが可能となる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態による光源装置について図5を用いて説明する。図5は、第2実施形態による光源装置を説明する図である。
第2の実施形態による光源装置は、OPOを構成するものである。第2の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第1の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。第2の偏波ビームコンバイナは、第1の偏波ビームコンバイナと逆向きに接続されており、これにより偏波ビームスプリッタとして働く。光分離器401は、光分離部として機能し、光パラメトリック効果によってエネルギーを変換せずに残った残ポンプパルス光406と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。光分離器401の第1の出力ポートからはパラメトリック利得で生じた光が出力される。光分離器401の第2の出力ポートからは、残ポンプパルス光406が出力される。
光分離器401の第1の出力ポートには、光ファイバーカプラーである光取り出し器402が光学的に接続されている。パラメトリック利得で生じた光は、光取り出し部として機能する光取り出し器402によって、出力光405として一部が取り出される。出力光405は、光取り出し器402の第1の出力ポートから出力される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、光取り出し器402の第2の出力ポートから出力され、信号パルス光403として第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207の第2の入力ポートに入力される。光取り出し器402の第2の出力ポートは、光合波器207の第2の入力ポートに光学的に接続されている。
光取り出し器402と光合波器207との間には、光遅延器404が挿入されている。光遅延器404は、光合波器207の入力ポートに入力する信号パルス光を遅延させることができ、その信号パルス光の遅延時間を調整することができる。光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光210とパラメトリック利得で生じた信号パルス光403とをタイミングを合わせて同期して重ねる。タイミングを合わせて重ねられたポンプパルス光210と信号パルス光403とは、光合波器207により合波されて非線形光導波路208の一端に入力される。
なお、ポンプパルス光源201から出力されるポンプパルス光の繰返し周波数と、本実施形態で構成した共振器の共振周波数が一致するように共振器の長さが調整されている場合には、光遅延器404を設けなくても良い。あるいは、ポンプパルス光の繰返し周波数を調整して、本実施形態で構成する共振器の共振周波数と合わせる構成とすれば、光遅延器404を設けなくても良い。これは、例えば、モードロックファイバーレーザー202内に光遅延器を設けて光路長を調整する、あるいは、CW光を強度変調することでポンプパルス光を生成する場合には、変調周波数を調整することで実現できる。
ここで、光合波器207として用いた第1の偏波ビームコンバイナ、及び光分離器401として用いた第2の偏波ビームコンバイナは、光ファイバーカプラーやWDMカプラーでも良い。あるいは、偏波ビームスプリッタやダイクロイックミラーを用いた空間光学系でも良い。このことで、偏波ビームコンバイナの波長依存特性を低減することが可能となる。
また、第1の実施形態と同様に、非線形光導波路208の直前に光ファイバー増幅器等の光増幅器を配置し、共振器内にポンプパルス光を増幅する機構を設けても良い。このことで、高出力なポンプパルス光がポンプパルス光源から非線形光導波路までの間で受ける非線形光学効果を低減し、ポンプパルス光の波形歪みを抑制することができる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力かつ短波長で波長可変な波長変換出力が得られる。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態による光源装置について図6を用いて説明する。図6は、第3の実施形態における、ポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長、及び、光導波路のSlow軸と直交するFast軸において、ポンプパルス光波長と群速度が一致する波長を示すグラフである。
第3の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有しているが、ポンプパルス光源201及び信号パルス光源209が以下に述べるように第1の実施形態とは異なっている。なお、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208としては、第1の実施形態と同様に、偏波保持フォトニック結晶ファイバー(LMA−PM−5、NKT Photonics)が用いられている。
第3の実施形態において、ポンプパルス光源201は、中心波長1150nm、平均パワー1W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が10psのパルス光を出力する。ポンプパルス光源201では、イッテルビウム(Yb)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザーと光ファイバー増幅器によって高出力化された光を、異常分散特性を有した高非線形光ファイバーによって長波長化する。
ただし、ポンプパルス光源201は、上述の構成に限定されるものではない。ポンプパルス光源201は、正常分散を有する高非線形光ファイバーによって広帯域化された光から1150nmの光を切り出して出力するものでも良い。その他のファイバーレーザーから光を生成し、その光を増幅して出力するものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したパルス光を出力するものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、第1の実施形態と同様に、偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。そして、ポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる光導波路である非線形光導波路208に入力される。ここで、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のSlow軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
上記第1の実施形態で求めた有効屈折率曲線と、入力するポンプパルス光の特性とから、ポンプパルス光の中心波長に対して変化するパラメトリック利得の中心波長を求めた。また、非線形光導波路のSlow軸と直交するFast軸において、入力するポンプパルス光の中心波長と群速度が一致する波長を求めた。それらをプロットしたものを図6に示す。中心波長1150nmのポンプパルス光をSlow軸に入力することで、Fast軸に中心波長950nmのパラメトリック利得が得られ、かつ、群速度が一致している。
本実施形態では、信号パルス光源209から、950nmの中心波長を有する信号パルス光が出力される。950nmの中心波長を有する信号パルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。そして、信号パルス光は、パラメトリック利得を生じる非線形光導波路208に入力される。ここで、信号パルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
信号パルス光は、ポンプパルス光と同期され、光合波器207によりポンプパルス光と合波されて非線形光導波路208の一端に入力される。ポンプパルス光と同期して信号パルス光を入力することで、非線形光導波路208では、パラメトリック利得によって信号パルス光が増幅される。また、非線形光導波路208では、ポンプパルス光の群速度と信号パルス光の群速度とが一致しているため、ウォークオフすることなく両パルス光が伝搬して信号パルス光が増幅される。
一方、位相整合条件より、ポンプパルス光から信号パルス光へエネルギーが遷移する非線形光導波路208の長さが求められる。この長さを超えると、逆に信号パルス光からポンプパルス光へエネルギーが遷移する。本実施形態では、その長さはおよそ1mであり、ウォークオフに関係なく、ポンプパルス光及び信号パルス光をこの長さの非線形光導波路208に十分に伝搬させることができる。
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態による光源装置について説明する。
第4の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第4の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第3の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力な波長変換出力が得られる。
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態による光源装置について図4を用いて説明する。図4は、第5の実施形態による光源装置でのポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長を示すグラフである。
第5の実施形態による光源装置は、OPAを構成するものであり、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有している。光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208としては、第1の実施形態と同じ偏波保持フォトニック結晶ファイバー(LMA−PM−5、NKT Photonics)を用いた。ポンプパルス光源201は、第1の実施形態と同じ光源である。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、光合波器207に入力されたポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208の一端に入力される。ここで、第1の実施形態とは異なり、本実施形態では、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
ここで、ポンプパルス光を1020nm〜1080nmまで中心波長を変えて非線形光導波路に入力した場合を考える。この場合、図4に示したように、ポンプパルス光と信号パルス光とが同一軸を伝搬すると、中心波長がおよそ680nm〜820nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得る。一方、本実施形態のようにポンプパルス光がFast軸を伝搬し、信号パルス光がSlow軸を伝搬して両パルス光が直交して伝搬する場合、中心波長がおよそ725nm〜1000nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得ることが可能となる。つまり、パラメトリック利得波長帯域を長波長側へ拡張することが可能となる。
そこで、本実施形態では、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに、725nm〜1000nmの信号パルス光をポンプパルス光と同期して入力する。信号パルス光は、信号パルス光源209より出力される。
信号パルス光は、以下によって生成した。Erファイバーレーザー出力である1550nmのパルス光を、高非線形性を有する光導波路に入射することで1450nm〜2000nmをカバーするように広帯域化した。そして、PPLNによって波長変換した。さらに、波長フィルターを用いて725nm〜1000nmの信号パルス光を得た。ただし、信号パルス光はこの形態に限定されるものではなく、半導体レーザー出力でも良いし、Ti:Sapphireレーザー出力でも良い。
光合波器207に入力された信号パルス光211は、ポンプパルス光210と合波されて光合波器207の出力ポートから出力され、非線形光導波路208のSlow軸を伝搬するように非線形光導波路208の一端に入力される。
こうして、本実施形態により、長波長側へ拡大した光パラメトリック増幅を行うことが可能である。非線形光導波路208の他端からは、長波長側へ拡大した光パラメトリック増幅によるパラメトリック利得で生じた光が出力光として出力される。
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態による光源装置について説明する。
第6の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第6の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第5の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力かつ長波長で波長可変な波長変換出力が得られる。
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態による光源装置について図7を用いて説明する。図7は、第7の実施形態による光源装置における、ポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長、及び、光導波路のSlow軸と直交するFast軸において、ポンプパルス光波長と群速度が一致する波長を示すグラフである。
第7の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有しているが、ポンプパルス光源201及び信号パルス光源209が以下に述べるように第1の実施形態とは異なっている。なお、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208としては、第1の実施形態と同様に、偏波保持フォトニック結晶ファイバー(LMA−PM−5、NKT Photonics)が用いられている。
第7の実施形態において、ポンプパルス光源201は、中心波長1150nm〜1300nm、平均パワー5.1W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が1psのパルス光を出力する。ポンプパルス光源201では、イッテルビウム(Yb)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザーと光ファイバー増幅器によって高出力化されたパルス光を、異常分散特性を有する高非線形光ファイバーに入力する。異常分散特性を有する高非線形光ファイバー内で、ソリトン自己周波数シフトが生じ、長波長側へシフトしたパルス光を得る。入力するパルス光の強度を変調することで、出力される波長が制御され、波長可変なポンプパルス光を得られる。
ただし、ポンプパルス光源は上述の構成に限定されるものではなく、正常分散を有する高非線形光ファイバーによって広帯域化された光から1150nm〜1300nmの光を切出しても良い。その他のファイバーレーザーから生成して増幅したものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、ポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる光導波路である非線形光導波路208に入力される。ここで、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
上記第1の実施形態で求めた有効屈折率曲線と、入力するポンプパルス光の特性とから、ポンプパルス光の中心波長に対して変化するパラメトリック利得の中心波長を求めた。また、非線形光導波路のFast軸と直交するSlow軸において、入力するポンプパルス光の中心波長と群速度が一致する波長を求めた。それらをプロットしたものを図7に示す。中心波長1150nm〜1300nmのポンプパルス光をFast軸に入力することで、Slow軸に中心波長1100nm〜1280nmのパラメトリック利得が得られ、かつ、群速度が一致している。
本実施形態では、信号パルス光源209から、1100nm〜1280nmの中心波長を有する信号パルス光が出力される。1100nm〜1280nmの中心波長を有する信号パルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに入力される。そして、信号パルス光は、パラメトリック利得を生じる非線形光導波路208に入力される。ここで、信号パルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のSlow軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。つまり、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、偏波ビームコンバイナである光合波器207の入力ポートをポンプパルス光と信号パルス光とで入れ替えている。
信号パルス光は、ポンプパルス光と同期され、光合波器207によりポンプパルス光と合波されて非線形光導波路208の一端に入力される。ポンプパルス光と同期して信号パルス光を入力することで、非線形光導波路208では、パラメトリック利得によって信号パルス光が増幅される。また、非線形光導波路208では、ポンプパルス光の群速度と信号パルス光の群速度とが一致しているため、ウォークオフすることなく両パルス光が伝搬して信号パルス光が増幅される。
一方、位相整合条件より、ポンプパルス光から信号パルス光へエネルギーが遷移する非線形光導波路208の長さが求められる。この長さを超えると、逆に信号パルス光からポンプパルス光へエネルギーが遷移する。本実施形態では、その長さはおよそ1mであり、ウォークオフに関係なく、ポンプパルス光及び信号パルス光をこの長さの非線形光導波路208に十分に伝搬させることができる。
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態による光源装置について説明する。
第8の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第8の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第7の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力で波長可変な波長変換出力が得られる。
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態による光源装置について図8及び図9を用いて説明する。図8は、第9の実施形態による光源装置で用いた非線形光導波路の有効屈折率曲線を示すグラフである。図9は、第9の実施形態による光源装置でのポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長を示すグラフである。
第9の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有しているが、ポンプパルス光源201、信号パルス光源209、及び非線形光導波路208が以下に述べるように第1の実施形態とは異なっている。
第9の実施形態において、ポンプパルス光源201は、中心波長が1020nm〜1080nmまで波長可変であり、平均パワー10W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が0.8psのポンプパルス光を出力する。ポンプパルス光源201では、イッテルビウム(Yb)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザーと光ファイバー増幅器によって高出力化された光を、高非線形光ファイバーによって広帯域化する。広帯域化された光から所定の波長範囲の光を波長フィルターによって切り出し、切り出すスペクトルの中心波長を変化させることで、波長可変出力を得る。そして、その出力を、Ybをドープした光ファイバーを用いた光ファイバー増幅器によって増幅する。こうして、上述のような出力特性を有するポンプパルス光を得る。
ただし、ポンプパルス光源201は、上述の構成に限定されるものではない。ポンプパルス光源201は、その他のファイバーレーザーから1060nmの光を生成し、その光を増幅して出力するものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したパルス光を出力するものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。あるいは、Ybをドープした光ファイバーを用いたモードロックレーザーの共振器内に波長可変フィルターを設けた波長可変レーザーでも良い。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、ポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる光導波路である非線形光導波路208に入力される。ここで、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のSlow軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
本実施形態では、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208として、偏波保持特性を有する偏波保持フォトニック結晶ファイバー(PM−PCF、竹永勝宏、外4名、「広帯域偏波保持フォトニック結晶ファイバ」、フジクラ技報、株式会社フジクラ、2005年4月、No. 108、p.6−9)を用いた。光導波路の有効屈折率を図8に示す。有効屈折率の曲線に基づいて異なる複屈折軸での分散βを求めることができる。
有効屈折率曲線と、入力するポンプパルス光の特性とから、ポンプパルス光の中心波長に対して変化するパラメトリック利得スペクトルの中心波長を求めた。
ポンプパルス光は、1020nm〜1080nmまで中心波長を変えて非線形光導波路208に入力した。図9に示すように、ポンプパルス光と信号パルス光とが同一のSlow軸を伝搬する場合、中心波長がおよそ700nm〜790nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得る。一方、本実施形態のようにポンプパルス光がSlow軸を伝搬し、信号パルス光がFast軸を伝搬して両パルス光が直交して伝搬する場合、およそ695nm〜760nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得ることが可能となる。つまり、パラメトリック利得波長帯域を短波長側へ拡張することが可能となる。
そこで、本実施形態では、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに、中心波長が695nm〜760nmの信号パルス光をポンプパルス光と同期して入力する。信号パルス光は、信号パルス光源209より出力される。
信号パルス光は、以下によって生成した。Erファイバーレーザー出力である中心波長1550nmのパルス光を、高非線形性を有する光導波路に入射することで1390nm〜1520nmをカバーするように広帯域化した。そして、PPLNによって波長変換した。さらに、波長フィルターを用いて中心波長が695nm〜760nmの信号パルス光を得た。ただし、信号パルス光はこの形態に限定されるものではなく、半導体レーザー出力でも良いし、Ti:Sapphireレーザー出力でも良い。
光合波器207に入力された信号パルス光は、ポンプパルス光210と合波されて光合波器207の出力ポートから出力され、非線形光導波路208のFast軸を伝搬するように非線形光導波路208の一端に入力される。
こうして、本実施形態により、短波長側へ拡大した光パラメトリック増幅を行うことが可能である。非線形光導波路208の他端からは、短波長側へ拡大した光パラメトリック増幅によるパラメトリック利得で生じた光が出力光として出力される。
[第10の実施形態]
本発明の第10の実施形態による光源装置について説明する。
第10の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第10の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第9の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力かつ短波長で波長可変な波長変換出力が得られる。
[第11の実施形態]
本発明の第11の実施形態による光源装置について図10を用いて説明する。図10は、第11の実施形態による光源装置における、ポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長、及び、光導波路のSlow軸と直交するFast軸において、ポンプパルス光波長と群速度が一致する波長を示すグラフである。
第11の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有しているが、ポンプパルス光源201及び信号パルス光源209が以下に述べるように第1の実施形態とは異なっている。なお、光パラメトリック増幅を生じる光導波路としては、第9の実施形態と同様の偏波保持フォトニック結晶ファイバー(PM−PCF)が用いられている。
第11の実施形態において、ポンプパルス光源201は、中心波長1060nm、平均パワー1W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が10psのパルス光を出力する。ポンプパルス光源201では、イッテルビウム(Yb)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザーと光ファイバー増幅器によって高出力化された光を、高非線形光ファイバーによって広帯域化する。広帯域化された光から所定の波長範囲の光を波長フィルターによって切り出し、切り出すスペクトルの中心波長を1060nmとした。そして、Ybをドープした光ファイバーを用いた光ファイバー増幅器によって増幅する。こうして、上述のような出力特性を有するポンプパルス光を得る。
ただし、ポンプパルス光源201は、上述の構成に限定されるものではない。ポンプパルス光源201は、その他のファイバーレーザーから1060nmの光を生成し、その光を増幅して出力するものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したパルス光を出力するものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。あるいは、Ybをドープした光ファイバーを用いたモードロックレーザーの共振器内に波長可変フィルターを設けた波長可変レーザーでも良い。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、ポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる光導波路である非線形光導波路208に入力される。ここで、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のSlow軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
上記第9の実施形態で求めた有効屈折率曲線と、入力するポンプパルス光の特性とから、ポンプパルス光の中心波長に対して変化するパラメトリック利得の中心波長を求めた。また、非線形光導波路のSlow軸と直交するFast軸において、入力するポンプパルス光の中心波長と群速度が一致する波長を求めた。それらをプロットしたものを図10に示す。中心波長1060nmのポンプパルス光をSlow軸に入力することで、Fast軸に中心波長800nmのパラメトリック利得が得られ、かつ、群速度が一致している。
そこで、本実施形態では、信号パルス光源209から、800nmの中心波長を有する信号パルス光が出力される。800nmの中心波長を有する信号パルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに入力される。そして、信号パルス光は、パラメトリック利得を生じる非線形光導波路208に入力される。ここで、信号パルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
信号パルス光は、ポンプパルス光と同期され、光合波器207によりポンプパルス光と合波されて非線形光導波路208の一端に入力される。ポンプパルス光と同期して信号パルス光を入力することで、非線形光導波路208では、パラメトリック利得によって信号パルス光が増幅される。また、非線形光導波路208では、ポンプパルス光の群速度と信号パルス光の群速度とが一致しているため、ウォークオフすることなく両パルス光が伝搬して信号パルス光が増幅される。
なお、信号パルス光である中心波長800nmの光は、Erファイバーレーザー出力である中心波長1550nmのパルス光を1600nmに波長シフトし、PPLNによって800nmに波長変換した光を用いた。ただし、中心波長800nmの光はこの形態に限定されるものではなく、半導体レーザー出力でも良いし、Ti:Sapphireレーザー出力でも良い。
ポンプパルス光と信号パルス光とが同一偏光軸であった場合、1060nmと800nmとでは、およそ1ps/mの群速度差がある。このため、この場合、10psのパルス幅のピーク付近(時間の半値全幅の1/10)では、1m程度でウォークオフしてしまう。しかし、本実施形態によって、1m以上伝搬させることが可能となり、中心波長800nmの信号パルス光を大きく増幅することが可能となる。
[第12の実施形態]
本発明の第12の実施形態による光源装置について説明する。
第12の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第12の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第11の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力な800nmの波長変換出力が得られる。
[第13の実施形態]
本発明の第13の実施形態による光源装置について図9を用いて説明する。図9は、第13の実施形態による光源装置でのポンプパルス光波長に対するパラメトリック利得スペクトルの中心波長を示すグラフである。
第13の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有している。ただし、ポンプパルス光源201としては、第9の実施形態で用いた光源と同様の光源を用いた。
また、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208としては、第9の実施形態で用いた光ファイバーと同様の光ファイバーを用いた。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、光合波器207に入力されたポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208の一端に入力される。ここで、第1の実施形態とは異なり、本実施形態では、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
ポンプパルス光は、1020nm〜1080nmまで中心波長を変えて非線形光導波路に入力した。図9に示すように、ポンプパルス光と信号パルス光とが同一のSlow軸を伝搬する場合、中心波長がおよそ700nm〜790nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得る。一方、本実施形態のようにポンプパルス光がFast軸を伝搬し、信号パルス光がSlow軸を伝搬して両パルス光が直交して伝搬する場合、中心波長がおよそ850nm〜960nmまでのパラメトリック利得スペクトルを得ることが可能となる。つまり、パラメトリック利得波長帯域を長波長側へ拡張することが可能となる。
そこで、本実施形態では、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに、中心波長が850nm〜960nmの信号パルス光をポンプパルス光と同期して入力する。信号パルス光は、信号パルス光源209より出力される。
信号パルス光は、以下によって生成した。Erファイバーレーザー出力である中心波長1550nmのパルス光を、異常分散特性と高非線形性を有する光導波路に入射することで1700nm〜1920nmをカバーするように波長シフトするソリトン自己周波数光源を用いた。波長は、入力する中心波長1550nmのパルス光の強度で制御した。そして、PPLNによって850nm〜960nmの中心波長へ波長変換した。ただし、信号パルス光はこの形態に限定されるものではなく、半導体レーザー出力でも良いし、Ti:Sapphireレーザー出力でも良い。
本実施形態により、長波長側へ拡大したパラメトリック増幅を行うことが可能である。
[第14の実施形態]
本発明の第14の実施形態による光源装置について説明する。
第14の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第14の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第13の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光を分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力かつ短波長で波長可変な波長変換出力が得られる。
[第15の実施形態]
本発明の第15の実施形態による光源装置について説明する。
第15の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有している。ただし、ポンプパルス光源201としては、第9の実施形態で用いた光源と同様の光源を用いた。ここで、ポンプパルス光の中心波長は、1035nmに固定した。また、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208としては、第9の実施形態で用いた光ファイバーと同様の光ファイバーを用いた。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、光合波器207に入力されたポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208の一端に入力される。ここで、第1の実施形態とは異なり、本実施形態では、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
上記第9の実施形態で求めた有効屈折率曲線と、入力するポンプパルス光の特性とから、ポンプパルス光の中心波長に対して変化するパラメトリック利得の中心波長を求めた。また、非線形光導波路のFast軸と直交するSlow軸において、入力するポンプパルス光の中心波長と群速度が一致する波長を求めた。中心波長1035nmのポンプパルス光をFast軸に入力することで、Slow軸に中心波長750nmのパラメトリック利得が得られ、かつ、群速度が一致する。
そこで、本実施形態では、信号パルス光源209から、750nmの中心波長を有する信号パルス光が出力される。750nmの中心波長を有する信号パルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに入力される。そして、信号パルス光は、パラメトリック利得を生じる非線形光導波路208に入力される。ここで、信号パルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のSlow軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
信号パルス光は、ポンプパルス光と同期され、光合波器207によりポンプパルス光と合波されて非線形光導波路208の一端に入力される。ポンプパルス光と同期して信号パルス光を入力することで、非線形光導波路208では、パラメトリック利得によって信号パルス光が増幅される。また、非線形光導波路208では、ポンプパルス光の群速度と信号パルス光の群速度とが一致しているため、ウォークオフすることなく両パルス光が伝搬して信号パルス光が増幅される。
なお、信号パルス光である中心波長750nmの光は、以下のように生成したものを用いた。Erファイバーレーザー出力である1550nmのパルス光を広帯域化した。そして、広帯域化した光から1500nmを波長フィルターによって切り出して得た光を、PPLNによって750nmに波長変換することにより、信号パルス光を得た。ただし、中心波長750nmの光はこの形態に限定されるものではなく、半導体レーザー出力でも良いし、Ti:Sapphireレーザー出力でも良い。
ポンプパルス光と信号パルス光とが同一偏光軸であった場合、1035nmと750nmとでは、およそ2ps/mの群速度差がある。このため、この場合、0.8psのパルス幅のピーク付近(時間の半値全幅の1/10)では、0.04m程度でウォークオフしてしまう。しかし、本実施形態によって、0.04m以上ポンプパルス光と信号パルス光とを重ねて伝搬させることが可能となり、中心波長750nmの信号パルス光を大きく増幅することが可能となる。
[第16の実施形態]
本発明の第16の実施形態による光源装置について説明する。
第16の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第16の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第15の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光を分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、第2の実施形態と同様に、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力な750nmの波長変換出力が得られる。
[第17の実施形態]
本発明の第17の実施形態による光源装置について説明する。
第17の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の図2に示す構成を有しているが、ポンプパルス光源201、信号パルス光源209が以下に述べるように第1の実施形態とは異なっている。また、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208としては、第9の実施形態で用いた光ファイバーと同様の光ファイバーを用いた。
第17の実施形態において、ポンプパルス光源201は、中心波長1530nm、平均パワー15W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が1psのポンプパルス光を出力する。ポンプパルス光源201では、エルビウム(Er)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザーと光ファイバー増幅器によって高出力化された光を、高非線形光ファイバーによって広帯域化する。広帯域化された光から所定の波長範囲の光を波長フィルターによって切り出し、切り出すスペクトルの中心波長を1530nmにすることで出力を得る。そして、その出力を、Erをドープした光ファイバーを用いた光ファイバー増幅器によって増幅する。こうして、上述のような出力特性を有するポンプパルス光を得る。
ただし、ポンプパルス光源201は、上述の構成に限定されるものではなく、その他のファイバーレーザーから1530nmを生成し、その光を増幅して出力するものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したパルス光を出力するものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。あるいは、Erをドープした光ファイバーを用いたモードロックレーザーの共振器内に波長可変フィルターを設けた波長可変レーザーでも良い。
ポンプパルス光源201から出力されたポンプパルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の1つの入力ポートに入力される。そして、光合波器207に入力されたポンプパルス光は、光パラメトリック増幅を生じる非線形光導波路208の一端に入力される。ここで、第1の実施形態とは異なり、本実施形態では、ポンプパルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のFast軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
上記第9の実施形態で求めた有効屈折率曲線と、入力するポンプパルス光の特性とから、ポンプパルス光の中心波長に対して変化するパラメトリック利得の中心波長を求めた。また、非線形光導波路のFast軸と直交するSlow軸において、入力するポンプパルス光の中心波長と群速度が一致する波長を求めた。中心波長1530nmのポンプパルス光をFast軸に入力することで、Slow軸に中心波長1600nmのパラメトリック利得が得られ、かつ、群速度が一致する。
そこで、本実施形態では、信号パルス光源209から、1600nmの中心波長を有する信号パルス光が出力される。1600nmの中心波長を有する信号パルス光は、偏波ビームコンバイナである光合波器207の別の入力ポートに入力される。ここで、信号パルス光は、その偏光軸が非線形光導波路208のSlow軸と一致するように非線形光導波路208の一端に入力される。
信号パルス光は、ポンプパルス光と同期され、光合波器207によりポンプパルス光と合波されて非線形光導波路208の一端に入力される。ポンプパルス光と同期して信号パルス光を入力することで、非線形光導波路208では、パラメトリック利得によって信号パルス光が増幅される。また、非線形光導波路208では、ポンプパルス光の群速度と信号パルス光の群速度とが一致しているため、ウォークオフすることなく両パルス光が伝搬して信号パルス光が増幅される。
なお、信号パルス光である中心波長1600nmの光は、Erファイバーレーザー出力である中心波長1550nmのパルス光を長波長シフトさせた光を用いた。ただし、中心波長1600nmの光はこの形態に限定されるものではなく、Erファイバーレーザー出力である中心波長1550nmのパルス光を広帯域化し、1600nmを波長フィルターによって切り出した光でも良いし、半導体レーザー出力でも良い。
ポンプパルス光と信号パルス光とが同一偏光軸であった場合、1530nmと1600nmではおよそ10ps/mの群速度差がある。このため、この場合、1psのパルス幅のピーク付近(時間の半値全幅の1/10)では、0.01m程度でウォークオフしてしまう。しかし、本実施形態によって、0.01m以上ポンプパルス光と信号パルス光とを重ねて伝搬させることが可能となり、中心波長1600nmの信号パルス光を大きく増幅することが可能となる。
なお、光源装置の出力端である非線形光導波路208の他端に、光合波器207として用いた第1の偏波ビームコンバイナとは別に、第2の偏波ビームコンバイナを偏波ビームスプリッタとして用いるために接続しても良い。第2の偏波ビームコンバイナによって、光パラメトリック効果によってエネルギーを変換せずに残った残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光を分離する。このことで、非線形光導波路208以外で生じるXPMの影響を低減し又は除去することが可能となり、パラメトリック利得で生じる光の歪みを抑制できる。
また、第1及び第2の偏波ビームコンバイナは、ファイバーカプラーやWDMカプラーでも良い。あるいは、偏波ビームスプリッタやダイクロイックミラーを用いた空間光学系でも良い。このことで、偏波ビームコンバイナの波長依存特性を低減することが可能となる。
[第18の実施形態]
本発明の第18の実施形態による光源装置について説明する。
第18の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の図5に示す構成を有している。ただし、第18の実施形態において、ポンプパルス光源201、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207、非線形光導波路208は、第17の実施形態と同じものを用いた。
非線形光導波路208の出力端である他端は、第2の実施形態と同様に、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
パラメトリック利得で生じた光は、第2の実施形態と同様に、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得で生じた光の残りの一部は、第2の実施形態と同様に、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。
光取り出し器402と光合波器207との間には、光遅延器404が挿入されており、光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
本実施形態により、共振器が構成され、1600nmの波長を有する高出力な波長変換出力を得ることができる。
[第19の実施形態]
本発明の第19の実施形態による光源装置について図11を用いて説明する。図11は、第19の実施形態による光源装置を説明する図である。
第19の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の基本的構成を有する。さらに、第19の実施形態による光源装置は、第1の実施形態による光源装置において、図11に示すように、光合波器207により合波されたポンプパルス光及び信号パルス光の偏光を90度回転させることが可能な偏光回転機構501を有している。
偏光回転機構501は、偏光回転部として機能し、偏波ビームコンバイナである光合波器207とパラメトリック利得を与える非線形光導波路208との間に設けられている。光合波器207により合波されてその出力ポートから出力されたポンプパルス光及び信号パルス光は、偏光回転機構501により偏光が90度回転された後、非線形光導波路208の一端に入力される。
偏光回転機構501は、例えば、光合波器207の合波したポンプパルス光及び信号パルス光を出力する出力ポートと光ファイバーである非線形光導波路208の一端とを接触させて、少なくとも一方を物理的に回転する構成を有している。あるいは、偏光回転機構501は、次のような構成を有するものであってもよい。すなわち、偏光回転機構501は、光合波器207の合波した光を出力する出力ポートから出力する光を平行ビームとする第1のレンズと、その平行ビームを集光して非線形光導波路208の一端に入力する第2のレンズとを有する空間光学系を構成する。そして、偏光回転機構501は、第1のレンズと第2のレンズとの間に挿入された例えば半波長板のような偏光を回転させる機構を有し、この機構により、光合波器207により合波されたポンプパルス光及び信号パルス光の偏光を回転する。
第19の実施形態による光源装置では、上記偏光回転機構501により、ポンプパルス光及び信号パルス光が伝搬する非線形光導波路208の複屈折軸が互いに異なる第1の場合と第2の場合とを切り替えて両パルス光を非線形光導波路208に入力できる。すなわち、第1の場合は、ポンプパルス光を非線形光導波路208のSlow軸へ、一方信号パルス光を非線形光導波路208のFast軸へ入力する場合である。また、第2の場合は、ポンプパルス光を非線形光導波路208のFast軸へ、一方信号パルス光を非線形光導波路208のSlow軸へ入力する場合である。偏光回転機構501により、ポンプパルス光及び信号パルス光の波長帯に応じて、第1の場合と第2の場合とを切り替えることができる。
ポンプパルス光源201は、第1の実施形態と同様の光源を用いた。つまり、ポンプパルス光源201は、中心波長が1020nm〜1080nmまで波長可変であり、平均パワー5W、繰返し光周波数40MHz、パルスの時間幅が1psのポンプパルス光を出力する。ポンプパルス光源201は、イッテルビウム(Yb)をドープした光ファイバーを用いたモードロックファイバーレーザー202と光ファイバー増幅器203によって高出力化された光を、高非線形光ファイバー204によって広帯域化する。そして、波長フィルター205による切り出しにより、高非線形光ファイバー204により広帯域化された光から所定の波長範囲の光が切り出される。波長フィルター205により切り出された光は、光ファイバー増幅器206によって増幅されて高出力化された後、ポンプパルス光として出力される。ポンプパルス光源201は、ポンプパルス光の波長を変えることができる波長可変光源として構成されている。ただし、ポンプパルス光源201は上述の構成に限定されるものではなく、その他のファイバーレーザーから生成された光を増幅して出力するものでも良い。あるいは、レーザーダイオード(LD)の出力を変調してパルス化したパルス光を出力するものでも良いし、ファイバーレーザーではないモードロックレーザー等でも良い。
図4に示したように、ポンプパルス光を1020nm〜1080nmまで中心波長を変えて非線形光導波路に入力した場合を考える。この場合、ポンプパルス光を非線形光導波路のSlow軸へ偏光軸が一致するように、信号パルス光を非線形光導波路のFast軸へ偏光軸が一致するように入力すると、中心波長が655nm〜775nmまでのパラメトリック利得スペクトルが得られる。一方で、ポンプパルス光を非線形光導波路のFast軸へ偏光軸が一致するように、信号パルス光を非線形光導波路のSlow軸へ偏光軸が一致するように入力すると、中心波長が725nm〜1000nmまでのパラメトリック利得スペクトルが得られる。
そこで、本実施形態では、光源装置から出力される出力光をモニタリングして、そのモニタリング結果に基づき、ポンプパルス光及び信号パルス光が伝搬する複屈折軸を切り替える。このための構成として、本実施形態による光源装置は、光取り出し器502と、光スペクトラムアナライザ503と、制御部504とをさらに有している。
光取り出し器502は、光源装置の出力光が出力される非線形光導波路208の他端に光学的に接続されている。光取り出し器502は、出力光の一部を取り出して光スペクトラムアナライザ503に入力する。光取り出し器502としては、光ファイバーカプラー等を用いることができる。
光スペクトラムアナライザ503は、光取り出し器502から入力される出力光の一部に基づき、信号パルス光の波長をモニタリングする。光スペクトラムアナライザ503は、信号パルス光の波長に応じた信号を出力して制御部504に入力する。
制御部504は、光スペクトラムアナライザ503から入力される信号に基づき、信号パルス光の波長に応じて、以下のように偏光回転機構501及びポンプパルス光源201の動作を制御する。
信号パルス光の中心波長が655nm以上750nm未満の間では、制御部504は、次のように偏光回転機構501及びポンプパルス光源201の動作を制御する。まず、制御部504は、ポンプパルス光が非線形光導波路208のSlow軸へ偏光軸が一致して入力され、信号パルス光が非線形光導波路208のFast軸へ偏光軸が一致して入力されるように偏光回転機構501の動作を制御する。そして、制御部504は、ポンプパルス光の波長が信号パルス光の波長と合うように1020nm〜1070nmの波長帯に中心波長を有するポンプパルス光を出力するようにポンプパルス光源201の動作を制御する。
一方、信号パルス光の中心波長が750nm以上1000nm以下の間では、制御部504は、次のように偏光回転機構501及びポンプパルス光源201の動作を制御する。まず、制御部504は、ポンプパルス光が非線形光導波路208のFast軸へ偏光軸が一致して入力され、信号パルス光が非線形光導波路208のSlow軸へ偏光軸が一致して入力されるように偏光回転機構501の動作を制御する。そして、制御部504は、ポンプパルス光の波長を信号パルス光の波長と合うように1030nm〜1080nmの波長帯に中心波長を有するポンプパルス光を出力するようにポンプパルス光源201の動作を制御する。本実施形態ではポンプパルス光と信号パルス光の偏光軸に依存して得られるパラメトリック利得帯域の655nm〜775nmと725nm〜1000nmで重なっている725nm〜775nmの中心波長である750nmを切換え波長とした。しかし、パラメトリック利得帯域が重なっている725nm〜775nmの間であれば、どの波長を切換え波長として選択してもよい。
本実施形態によって、パラメトリック利得波長帯域を短波長側及び長波長側に拡張し、広帯域の信号パルス光を増幅することが可能となる。
[第20の実施形態]
本発明の第20の実施形態による光源装置について図12を用いて説明する。図12は、第20の実施形態による光源装置を説明する図である。
第20の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の基本的構成を有する。さらに、第20の実施形態による光源装置では、第19の実施形態と同様の偏光回転機構501を有している。
本実施形態では、偏光回転機構501が次のように設けられている。すなわち、偏光回転機構501は、非線形光導波路208と光分離器401との間に設けられている。非線形光導波路208の出力端である他端は、偏光回転機構501を介して、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401と光学的に接続されている。光分離器401は、第2の実施形態と同様に、残ポンプパルス光と、パラメトリック利得で生じた光とを分離する。
非線形光導波路208と光分離器401との間に設けられた偏光回転機構501は、非線形光導波路208の他端から出力される、合波されたポンプパルス光及び信号パルス光の偏光を90度回転させることが可能になっている。偏波回転機構は、第19の実施形態と同様の構成を有するものとすることができる。また、偏光回転機構501は、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力されるポンプパルス光の偏光軸に合わせて、第2の偏波ビームコンバイナである光分離器401で残ポンプパルス光が取り出されるように制御される。
非線形光導波路208でパラメトリック利得により生成された光は、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得により生成された光の残りの一部は、光遅延器404を通して、第1の偏波ビームコンバイナである光合波器207に入力される。光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
さらに、本実施形態では、非線形光導波路208で生成される655nm〜775nm又は725nm〜1000nmの中心波長を有する信号パルス光を光合波器207に入力する前に、偏光回転機構501により、その偏光を回転させる。これにより、信号パルス光がポンプパルス光と偏光軸が一致する場合と、直交する場合とに制御することで、パラメトリック利得波長を制御できる。
なお、パラメトリック利得波長の制御は、例えば、第19の実施形態と同様の光取り出し器502、光スペクトラムアナライザ503、及び制御部504を用いて行うことができる。この場合、光取り出し器502は、光取り出し器402から出力される出力光の一部を取り出して光スペクトラムアナライザ503に入力する。
光スペクトラムアナライザ503は、光取り出し器502から入力される出力光の一部に基づき、信号パルス光の波長をモニタリングする。光スペクトラムアナライザ503は、信号パルス光の波長に応じた信号を出力して制御部504に入力する。
制御部504は、光スペクトラムアナライザ503から入力される信号に基づき、信号パルス光の波長に応じて、偏光回転機構501の動作を制御する。こうして、パラメトリック利得波長を制御することができる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力な波長変換出力が得られる。さらに、広帯域な波長可変帯域が得られる。
[第21の実施形態]
本発明の第21の実施形態による光源装置について図13を用いて説明する。図13は、第21の実施形態による光源装置を説明する図である。
第21の実施形態による光源装置は、OPAを構成し、第1の実施形態と同様の基本的構成を有する。ただし、第21の実施形態による光源装置では、光合波器207として、偏波ビームコンバイナの替わりに、WDMカプラーが用いられており、WDMカプラーによりポンプパルス光と信号パルス光とを合波する。ここで、光合波器207は、WDMカプラーに限定されるものではなく、ダイクロイックミラーを用いた空間光学系でも良い。光合波器207として用いるWDMカプラー等としては、偏光依存特性がないものを選ぶ。このことで、ポンプパルス光及び信号パルス光を任意の偏光で組み合わせて非線形光導波路208に入力させることが可能となる。
さらに、第21の実施形態による光源装置は、図13に示すように、ポンプパルス光源201の出力端とWDMカプラーである光合波器207との間に、ポンプパルス光の偏光を制御する偏光回転機構501−1が設けられている。偏光回転機構501−1は、光合波器207の1つの入力ポートの直前に設けられている。
また、信号パルス光源209の出力端とWDMカプラーである光合波器207との間には、信号パルス光の偏光を制御する偏光回転機構501−2が設けられている。偏光回転機構501−2は、光合波器207の別の入力ポートの直前に設けられている。
偏光回転機構501−1、501−2は、偏光回転部として機能し、第19の実施形態で説明した偏光回転機構501と同様の構成とすることができる。偏光回転機構501−1は、例えば、光合波器207のポンプパルス光が入力される入力ポートとポンプパルス光源201の出力端とを接触させて、少なくとも一方を物理的に回転する構成を有している。また、偏光回転機構501−2は、例えば、光合波器207の信号パルス光が入力される別の入力ポートと信号パルス光源209の出力端とを接触させて、少なくとも一方を物理的に回転する構成を有している。あるいは、偏光回転機構501−1、501−2は、次のような構成を有するものであってもよい。すなわち、偏光回転機構501−1、501−2は、光源から出力する光を平行ビームとする第1のレンズと、その平行ビームを集光して光合波器207の入力ポートに入力する第2のレンズとを有する空間光学系を構成する。そして、偏光回転機構501−1、501−2は、第1のレンズと第2のレンズとの間に挿入された例えば半波長板のような偏光を回転させる機構を有し、この機構により、光源から出力されたポンプパルス光又は信号パルス光の偏光を回転する。このような偏光回転機構501−1、501−2により、ポンプパルス光と信号パルス光との偏光方向の組み合せを様々に変えて、非線形光導波路208へ入力できる。
本実施形態によれば、ポンプパルス光と信号パルス光とが伝搬する非線形光導波路208の偏光軸の組み合せによって、パラメトリック利得スペクトルを変えることができる。そして、ポンプパルス光の波長を変えることなく、光パラメトリック増幅により増幅される信号パルス光の波長を選択することが可能となる。また、ポンプパルス光の波長を制御することで、広帯域にパラメトリック利得スペクトルを変化させることが可能となる。
[第22の実施形態]
本発明の第22の実施形態による光源装置について図14を用いて説明する。図14は、第22の実施形態による光源装置を説明する図である。
第22の実施形態による光源装置は、OPOを構成し、第2の実施形態と同様の基本的構成を有する。ただし、第22の実施形態による光源装置では、第21の実施形態と同様に、光合波器207として、第1の偏波ビームコンバイナの替わりに、第1のWDMカプラーが用いられている。さらに、光分離器401として、第2の偏波ビームコンバイナの替わりに、第2のWDMカプラーが用いられている。なお、光合波器207及び光分離器401は、それぞれWDMカプラーに限定されるものではなく、ダイクロイックミラーを用いた空間光学系でも良い。
さらに、第22の実施形態による光源装置は、図14に示すように、ポンプパルス光源201の出力端と第1のWDMカプラーである光合波器207との間に、ポンプパルス光の偏光を制御する偏光回転機構501−1が設けられている。また、光遅延器404の出力端と第1のWDMカプラーである光合波器207との間には、信号パルス光の偏光を制御する偏光回転機構501−2が設けられている。偏光回転機構501−1、501−2は、第21の実施形態と同様の構成とすることができる。
本実施形態では、第2のWDMカプラーである光分離器401によって残ポンプパルス光が分離されて取り出される。非線形光導波路208でパラメトリック利得により生成された光は、光ファイバーカプラーである光取り出し器402によって、出力光として一部が取り出される。パラメトリック利得により生成された光の残りの一部は、光遅延器404を通して、第1のWDMカプラーである光合波器207に入力される。光遅延器404を制御することで、繰返し入力されるポンプパルス光とパラメトリック利得で生じる光とをタイミングを合わせて同期して重ねる。
さらに、本実施形態では、非線形光導波路208で生成される655nm〜775nm又は725nm〜1000nmの中心波長を有する光を、偏光回転機構501−2により、その偏光を回転させて光合波器207に入力することができる。また、ポンプパルス光を、偏光回転機構501−1により、その偏光を回転させて光合波器207に入力することができる。こうして、本実施形態では、信号パルス光とポンプパルス光とが入力される光導波路のそれぞれの偏光軸をそれぞれに制御することで、パラメトリック利得波長を制御できる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力な波長変換出力が得られる。さらに、広帯域な波長可変帯域が得られる。
[第23の実施形態]
本発明の第23の実施形態による光源装置について説明する。
第23の実施形態による光源装置は、第22の実施形態と同様の構成を有している。ただし、第23の実施形態による光源装置では、光合波器207及び光分離器401として用いるWDMカプラーは、それぞれ1100nm未満の波長を有する光と1100nm以上の波長を有する光を合波・分岐するものにした。
ポンプパルス光を1020nm〜1080nmまで中心波長を変えて非線形光導波路に入力した場合、ポンプパルス光と信号パルス光が同一軸を伝搬すると、中心波長がおよそ2042nm〜1580nmまでのパラメトリック利得スペクトルが得られる。また、ポンプパルス光と信号パルス光が直交して伝搬すると、中心波長がおよそ1715nm〜1168nmまでのパラメトリック利得スペクトルが得られる。
非線形光導波路208で生成される2042nm〜1580nm又は1715nm〜1168nmの中心波長を有する光を、偏光回転機構501−2により、その偏光を回転させて光合波器207に入力することができる。こうして、信号パルス光がポンプパルス光と偏光軸が一致する場合と、直交する場合とに制御することで、パラメトリック利得波長を制御できる。
本実施形態により、共振器が構成され、高出力な波長変換出力が得られる。さらに、広帯域な波長可変帯域が得られる。
[第24の実施形態]
本発明の第24の実施形態による光源装置について図15を用いて説明する。図15は、第24の実施形態による光源装置を説明する図である。
第24の実施形態による光源装置は、第3の実施形態による光源装置において、図15に示すように、ポンプパルス光の強度を調節する強度調節部として機能する強度変調器601をさらに設けたものである。強度変調器601は、ポンプパルス光源と偏波ビームコンバイナである光合波器207との間に設けられている。
強度変調器601としては、透過率可変なアッテネータを用いた。ただし、強度変調器601はこれに限定されるものではない。強度変調器601としては、可変強度変調器を用いることができ、例えば、電気光学効果を利用した変調方式による強度変調器でも良いし、増幅率可変な光増幅器でも良い。増幅率可変な光増幅器は、例えば、その光増幅器に入力する励起エネルギーによって増幅強度を調節することができる。また、ポンプパルス光のピークパワーを制御すれば良いので、強度変調器601としては、ポンプパルス光のチャープを制御してパルス幅を変える機構でも良い。例えば、強度変調器601は、サーキュレータと反射型チャープファイバブラッググレーティング(CFBG)を設け、CFBGを引き延ばしてチャープ量を制御して、ポンプパルス光のチャープ量を調節するチャープ調節機構等を用いたものでも良い。
さらに、本実施形態では、信号パルス光の波長をモニタリングして、そのモニタリング結果に基づき、強度変調器601の動作を制御する。このための構成として、本実施形態による光源装置は、光取り出し器602と、光スペクトラムアナライザ603と、制御部604とをさらに有している。
光取り出し器602は、信号パルス光源209と偏波ビームコンバイナである光合波器207との間に設けられている。光取り出し器602としては、光ファイバーカプラー等を用いることができる。光取り出し器602は、信号パルス光の一部を取り出して光スペクトラムアナライザ603に入力する。
光スペクトラムアナライザ603は、光取り出し器602から入力される信号パルス光の一部に基づき、信号パルス光の波長をモニタリングする。光スペクトラムアナライザ603は、信号パルス光の波長に応じた信号を出力して制御部604に入力する。なお、光スペクトラムアナライザ603に代えて、分光器を用いても良い。
制御部604は、光スペクトラムアナライザ603から入力される信号に基づき、信号パルス光の波長に応じて、強度変調器601及びポンプパルス光源201の動作を制御する。
数式10及び数式11より、ポンプパルス光のピーク強度を変調することで、パラメトリック利得波長を変化させることが可能である。
そこで、本実施形態では、入力される信号パルス光の波長を光スペクトラムアナライザ603でモニタリングし、その波長が変化した場合に、制御部604は、強度変調器601及びポンプパルス光源201の動作を制御する。これにより、ポンプパルス光の強度及び波長を調節する。すなわち、群速度が一致するパラメトリック利得波長を生じさせるように、強度変調器601により、ポンプパルス光の強度を調節する。さらに、ポンプパルス光の波長を調節することで、群速度を一致させることができる。
本実施形態によって、信号パルス光の波長が揺らいでも、上述のようにポンプパルス光の強度及び波長を調節することで、信号パルス光を大きく増幅できる。
なお、信号パルス光の波長をモニタリングするための信号パルス光の取り出しは、光合波器207への入力前のカプラーによる取り出しに限定されるものではない。そのほか、光源装置から出力された出力光の一部を取り出して光スペクトラムアナライザによってモニタリングしても良い。
なお、本実施形態は、第3の実施形態のみならず、他の実施形態でも適用できる。
[第25の実施形態]
本発明の第25の実施形態による光源装置について図16を用いて説明する。図16は、第25の実施形態による光源装置を説明する図である。
第25の実施形態による光源装置は、第4の実施形態による光源装置において、図16に示すように、ポンプパルス光の強度を調節する強度変調器601をさらに設けたものである。強度変調器601は、第24の実施形態で述べたものである。
OPOを構成する光源装置では、共振器構造をしているため、ポンプパルス光の波長が揺らぐと、生成されるパラメトリック利得波長も変化する。そこで、ポンプパルス光の強度を制御することで、パラメトリック利得波長を制御し、パラメトリック利得波長と群速度が一致する波長とが一致するようにできる。
本実施形態において、ポンプパルス光の強度の調節は、光源装置から出力される、増幅された信号パルス光の強度に基づいて行う。このための構成として、本実施形態による光源装置は、光取り出し器702と、強度計703と、制御部704とをさらに有している。
光取り出し器702は、光源装置の出力光が出力される光取り出し器402の出力端に設けられている。光取り出し器702としては、光ファイバーカプラー等を用いることができる。光取り出し器702は、光取り出し器402から出力される出力光の一部を取り出して強度計703に入力する。
強度計703は、光取り出し器702から入力される出力光の一部に基づき、信号パルス光の強度をモニタリングする。強度計703は、信号パルス光の強度に応じた信号を出力して制御部704に入力する。
制御部704は、強度計703から入力される信号に基づき、信号パルス光の強度に応じて、強度変調器601の動作を制御する。
本実施形態では、強度計703により、信号パルス光の強度をモニタリングする。信号パルス光の強度が低下した場合には、制御部704は、群速度が一致していないと判断し、強度変調器601の動作を制御してポンプパルス光の強度を調節する。
本実施形態によって、ポンプパルス光の波長が揺らいでも、ポンプパルス光の強度を調節することで、信号パルス光を大きく増幅できる。
本実施形態は、第4の実施形態のみならず他の実施形態でも適用できる。
[第26の実施形態]
本発明の第26の実施形態による光源装置について図17を用いて説明する。図17は、第26の実施形態による光源装置を説明する図である。
第26の実施形態による光源装置は、第4の実施形態による光源装置において、ポンプパルス光の波長を調節するための構成をさらに設けたものである。
OPOを構成する光源装置では、共振器構造をしているため、ポンプパルス光の強度が揺らぐと、生成されるパラメトリック利得波長も変化する。そこで、ポンプパルス光の波長を制御することで、パラメトリック利得波長を制御し、パラメトリック利得波長と群速度が一致する波長が一致するようにできる。
本実施形態において、ポンプパルス光の波長の調節は、光源装置から出力される、増幅された信号パルス光の強度に基づいて行う。このための構成として、本実施形態による光源装置は、光取り出し器702と、強度計703と、制御部704とをさらに有している。
光取り出し器702は、光源装置の出力光が出力される光取り出し器402の出力端に設けられている。光取り出し器702としては、光ファイバーカプラー等を用いることができる。光取り出し器702は、光取り出し器402から出力される出力光の一部を取り出して強度計703に入力する。
強度計703は、光取り出し器702から入力される出力光の一部に基づき、信号パルス光の強度をモニタリングする。強度計703は、信号パルス光の強度に応じた信号を出力して制御部704に入力する。
制御部704は、第25の実施形態とは異なり、強度計703から入力される信号に基づき、信号パルス光の強度に応じて、ポンプパルス光源201の動作を制御する。
本実施形態では、強度計703により、信号パルス光の強度をモニタリングする。信号パルス光の強度が低下した場合には、制御部704は、群速度が一致していないと判断し、ポンプパルス光源201の動作を制御してポンプパルス光の波長を調節する。
本実施形態によって、ポンプパルス光の強度が揺らいでも、ポンプパルス光の波長を調節することで、信号パルス光を大きく増幅できる。
本実施形態は、第4の実施形態のみならず、他の実施形態でも適用できる。
[第27の実施形態]
上述の第1〜第26の実施形態では、直交した偏光軸を有する非線形光導波路を用いていたため、ポンプパルス光と信号パルス光とをそれぞれの軸に沿って伝搬するように、ほぼ90度偏光が異なる状態で入力した。しかしながら、フォトニック結晶ファイバー(PCF)等では、30度あるいは60度ごとに異なる伝搬軸を有する光ファイバーも存在する。そのような光ファイバーを非線形光導波路として用いた場合、パラメトリック利得を生成する非線形光導波路は、少なくとも2つ以上の伝搬軸を有する非線形光導波路となる。このような場合、第21の実施形態で述べたものと同様の構成とし、入力するポンプパルス光及び信号パルス光の偏光軸をそれぞれ制御することで、パラメトリック利得波長を変えることが可能となる。
[第28の実施形態]
第28の実施形態による情報取得装置について図18を用いて説明する。図18は、第28の実施形態による情報取得装置を説明する図である。第28の実施形態では、被検体である測定対象の情報を取得する情報取得装置として、誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering;SRS)を検出してイメージングを行うSRS顕微鏡について説明する。
SRS顕微鏡である第28の実施形態による情報取得装置2000は、中心波長が互いに異なる2つのパルス光を射出する光源部2001と、光源部2001から射出された光を測定対象1016に照射する照射部2002とを有している。また、情報取得装置2000は、照射部2002により光が照射された測定対象1016からの光を検出する検出部2003を有している。さらに、情報取得装置2000は、検出部2003の検出結果に基づき画像を形成する処理装置として機能するPC1022を有している。
光源部2001は、シード光源1001と、Ybドープ光ファイバー増幅器1002と、偏波保持フォトニック結晶ファイバー1003と、アイソレーター1004と、光ファイバーカプラー1005とを有している。
また、光源部2001は、第1のパルス光を得るための構成として、波長フィルター1006と、Ybドープ光ファイバー増幅器1007と、繰返し周波数逓倍器1010と、Ybドープ光ファイバー増幅器1011と、OPO1012とを有している。OPO1012は、第12の実施形態による光源装置である。
さらに、光源部2001は、中心波長が第1のパルス光とは異なる第2のパルス光を得るための構成として、波長可変フィルター1008と、Ybドープ光ファイバー増幅器1009と、光遅延器1017とを有している。
シード光源1001は、Ybファイバーレーザーであり、中心波長1030nm、スペクトル幅8nm、出力10mW、繰返し周波数40MHzの出力光を出力するものである。
シード光源1001からの出力光は、Ybドープ光ファイバー増幅器1002を伝搬し、スペクトル幅が30nmまで広げられる。また、Ybドープ光ファイバー増幅器1002により、出力光の出力は150mWとなる。
Ybドープ光ファイバー増幅器1002の出力光は、融着された長さ3mの偏波保持フォトニック結晶ファイバー1003(LMA−PM−5、NKT Photonics)を伝搬し、波長帯域が1010nm〜1080nmまで広げられる。その後、出力光は、アイソレーター1004を伝搬し、光ファイバーカプラー1005によって2つに分岐される。
光ファイバーカプラー1005により分岐された光の一方である第1のパルス光は、波長フィルター1006及びYbドープ光ファイバー増幅器1007を通して、中心波長が1060nmになる。
光ファイバーカプラー1005により分岐された光の別の一方である第2のパルス光は、波長可変フィルター1008及びYbドープ光ファイバー増幅器1009を通して、中心波長が1020nm〜1070nmの可変特性を有するものとなる。
第1のパルス光は、繰返し周波数逓倍器1010によって80MHzの繰返し周波数を有するパルス光列となる。繰返し周波数逓倍器1010は、例えば、第1のパルス光を光ファイバーカプラーによって分岐し、一方を半周期だけずらして再度合波する構成である。そして、繰返し周波数逓倍器1010の出力光は、Ybドープ光ファイバー増幅器1011に入力されて増幅される。Ybドープ光ファイバー増幅器1011により増幅された光は、第12の実施形態によるOPO1012に入力される。こうして、OPO1012により、第1のパルス光として中心波長800nmの出力光を得る。
光源部2001は、さらにダイクロイックミラー1013を有している。中心波長1020nm〜1070nmの波長可変特性を有する第2のパルス光と、中心波長800nmの第1のパルス光は、ダイクロイックミラー1013によって合波されて光源部2001から出力される。光源部2001から出力された光は、照射部2002に入力される。
照射部2002は、XYスキャニングミラー1014と、照射用対物レンズ1015とを有している。
光源部2001から照射部2002に入力された第1のパルス光及び第2のパルス光は、XYスキャニングミラー1014によって照射方向が制御されて、照射用対物レンズ1015を通って測定対象1016に照射される。第1のパルス光と第2のパルス光は時間的に重ね合わされるように、少なくとも一方が光遅延器を伝搬してタイミングが調整される。例えば、図18に示す構成では、第2のパルス光が光遅延器1017を伝搬することによりタイミングが調整される。
照射部2002により測定対象1016に照射された光は、測定対象1016を透過して検出部2003により検出される。
検出部2003は、受光用対物レンズ1018と、波長フィルター1019と、光検出器1020と、ロックインアンプ検出器1021とを有している。
測定対象1016を透過した光は、受光用対物レンズ1018によって集光される。そして、受光用対物レンズ1018により集光された光のうち、波長フィルター1019により中心波長800nmの第1のパルス光だけが透過される。こうして透過された第1のパルス光は、光検出器1020によって検出される。光検出器1020は、第1のパルス光を受光してその強度に応じた電気信号を出力する受光部としての受光素子を含んでいる。光検出器1020から出力された電気信号は、ロックインアンプ検出器1021によって40MHzの周波数成分だけが取り出され、振幅情報を得る。
XYスキャニングミラー1014の座標情報と振幅情報とを用いてPC1022によって画像を構成することで、2次元画像が得られる。
ここで、第2のパルス光と第1のパルス光との周波数差が、測定対象1016中の物質のラマン周波数と一致した場合、ラマン効果によって第2のパルス光から第1のパルス光へエネルギーが遷移するSRSが生じる。したがって、第2のパルス光の波長と、測定対象中の物質とによって振幅情報が変化するため、第2のパルス光の中心波長を変えることで、異なる物質を識別してイメージングを行うことが可能となる。これをSRSイメージングと呼ぶ。本実施形態によって、SRSイメージングを実現できる。
なお、本実施形態では、2つのパルス光を被検体に照射し、前記被検体にて反射される光、前記被検体を透過する光、前記被検体において発せられる光の少なくとも1つを検出し、前記被検体の情報を取得する情報取得装置として、SRS顕微鏡を例に説明した。しかし、これに限定されるものではなく、CARS顕微鏡、蛍光顕微鏡、内視鏡等の各種分光情報を得る情報取得装置にも、本実施形態と同様に第1乃至第27の実施形態のいずれかの光源装置を用いることができる。上記第1乃至第27の実施形態による光源装置を光源部に用い、2つのパルス光を被検体に照射し、前記被検体にて反射される光、前記被検体を透過する光、前記被検体において発せられる光の少なくとも1つを検出する情報取得装置を構成することができる。
[第29の実施形態]
本発明の第29の実施形態による情報取得装置について図19を用いて説明する。図19は、第29の実施形態による情報取得装置を説明する図である。
第29の実施形態による情報取得装置は、SRS顕微鏡であり、第28の実施形態による情報取得装置とほぼ同様の構成を有している。ただし、図19に示すように、第29の実施形態による情報取得装置3000では、第2の実施形態によるOPO1032が、第12の実施形態によるOPO1012に代えて用いられている。第2の実施形態によるOPO1032は、Ybドープ光ファイバー増幅器1009と光遅延器1017との間に設けられている。
シード光源1001は、Ybファイバーレーザーであり、中心波長1030nm、スペクトル幅8nm、出力10mW、繰返し周波数40MHzの出力光を出力するものである。
シード光源1001からの出力光は、Ybドープ光ファイバー増幅器1002を伝搬し、スペクトル幅が30nmまで広げられる。また、Ybドープ光ファイバー増幅器1002により、出力光の出力は150mWとなる。
Ybドープ光ファイバー増幅器1002の出力光は、融着された長さ3mの偏波保持フォトニック結晶ファイバー1003(LMA−PM−5、NKT Photonics)を伝搬し、波長帯域が1010nm〜1080nmまで広げられる。その後、出力光は、アイソレーター1004を伝搬し、光ファイバーカプラー1005によって2つに分岐される。
光ファイバーカプラー1005により分岐された光の一方である第1のパルス光は、波長フィルター1006及びYbドープ光ファイバー増幅器1007を通して、中心波長が1030nmになる。第1のパルス光は、第28の実施形態と同様に、繰返し周波数逓倍器1010を用い、光ファイバーカプラーによって分岐し、一方を半周期だけずらして再度合波することで80MHzの繰返し周波数を有するパルス光列となる。繰返し周波数逓倍器1010の出力光は、Ybドープ光ファイバー増幅器1011に入力されて増幅される。こうして、Ybドープ光ファイバー増幅器1011の出力光を、中心波長1030nmの第1のパルス光として得る。
一方、光ファイバーカプラー1005により分岐された光の別の一方である第2のパルス光は、波長可変フィルター1008及びYbドープ光ファイバー増幅器1009を通して、中心波長が1020nm〜1080nmの可変特性を有するものとなる。そして、Ybドープ光ファイバー増幅器1009により増幅された光は、第2の実施形態によるOPO1032に入力される。こうして、OPO1032により、第2のパルス光として、中心波長665nm〜775nmの出力光を得る。
中心波長665nm〜775nmの波長可変特性を有する第2のパルス光と、中心波長1030nmの第1のパルス光は、ダイクロイックミラー1013によって合波されて光源部2001から出力される。光源部2001から出力された光は、照射部2002に入力される。この時、測定対象1016中で第1のパルス光と第2のパルス光とが時間的に重なるように、光遅延器1017を制御する。
光源部2001から照射部2002に入力された第1のパルス光及び第2のパルス光は、XYスキャニングミラー1014によって照射方向が制御されて、照射用対物レンズ1015を通って測定対象1016に照射される。第1のパルス光と第2のパルス光は時間的に重ね合わされるように、少なくとも一方が光遅延器を伝搬してタイミングが調整される。例えば、図19に示す構成では、第2のパルス光が光遅延器1017を伝搬することによりタイミングが調整される。
照射部2002により測定対象1016に照射された光は、測定対象1016を透過して検出部2003により検出される。
測定対象1016を透過した光は、受光用対物レンズ1018によって集光される。そして、受光用対物レンズ1018により集光された光のうち、波長フィルター1019により中心波長1030nmの第1のパルス光だけが透過される。こうして透過された第1のパルス光は、第28の実施形態と同様に光検出器1020によって検出される。光検出器1020から出力された電気信号は、ロックインアンプ検出器1021によって40MHzの周波数成分だけが取り出され、振幅情報を得る。
XYスキャニングミラーの1014座標情報と振幅情報とを用いてPC1022によって画像を構成することで、2次元画像が得られる。
こうして、本実施形態によっても、第28の実施形態と同様にSRSイメージングを実現することができる。本実施形態によれば、第28の実施形態と比較して、より周波数差の大きい物質を識別することが可能なSRSイメージングを実現できる。
なお、本実施形態でも、2つのパルス光を被検体に照射し、前記被検体にて反射される光、前記被検体を透過する光、前記被検体において発せられる光の少なくとも1つを検出し、前記被検体の情報を取得する情報取得装置として、SRS顕微鏡を例に説明した。しかし、これに限定されるものではなく、CARS顕微鏡、蛍光顕微鏡、多光子顕微鏡、内視鏡などの各種分光情報を得る情報取得装置にも、本実施形態と同様に第1乃至第27の実施形態のいずれかの光源装置を用いることができる。上記第1乃至第27の実施形態による光源装置を光源部に用い、2つのパルス光を被検体に照射し、前記被検体にて反射される光、前記被検体を透過する光、前記被検体において発せられる光の少なくとも1つを検出する情報取得装置を構成することができる。また、本実施形態で用いたYbドープ光ファイバー増幅器は、Ybドープ光ファイバー増幅器である必要はなく、半導体を用いた光増幅器でも良い。
[変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上述の第1の実施形態から第29の実施形態として述べた構成を任意に組み合わせる変形をしてもよい。
また、上記実施形態では、パラメトリック利得媒質として、偏波保持フォトニック結晶ファイバーである非線形光導波路を用いた場合を例に説明したが、パラメトリック利得媒質は、これに限定されるものではない。パラメトリック利得媒質として、種々のものを用いることができる。
また、上記実施形態では、ポンプパルス光と異なる波長を有する光として信号パルス光を用いた場合を例に説明したが、ポンプパルス光と異なる波長を有する光として、アイドラー光を用いることもできる。