JP2017184675A - 油脂類を低水分状態でリパーゼに作用させ、起泡性および/または乳化性をもつ素材を製造する方法とその製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】油脂類を、低水分状態でリパーゼに作用させ、起泡性および/または乳化性をもつ素材を製造する方法とその製品を提供する。【解決手段】油脂類または油脂類と糖質を、低水分状態、すなわち、油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼと反応させることにより、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の糖質−油脂類−リパーゼ反応物を製造し、前記潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材に、アルカリ性成分ないし素材を添加して、起泡化、乳化、粉末化し、反応物全体を食品素材として用いることができる製品を製造する。【効果】潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の糖質、油脂類−リパーゼ反応物と、起泡性および/または乳化性をもち、粉末化、安定化した糖質−油脂類−リパーゼ反応物を製造し、反応物全体を食品素材として利用できる製品を提供することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、「油脂類原料」を単独または組み合せて、さらには「糖質原料」を混合し、リパーゼの存在下で、低水分状態、すなわち油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼを反応させて、潜在的に起泡性および/または乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物または同糖質−油脂類−リパーゼ反応物を製造し、これらの前駆素材に、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡性、乳化性をもつ素材を製造し、反応物全体を食品素材とする方法に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、油脂類原料を、低水分状態で、油脂関連酵素のリパーゼに作用させ、各種糖質原料を同時に作用させた後、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡性、乳化性をもつ素材を製造し、反応物全体を、そのまま、または乾燥させ、ペースト状または粉末状にして安定性の高い食品素材とする方法に関するものである。本明細書では、「油脂類原料」を油脂類、「糖質原料」を糖質と記載することがある。
リパーゼは、種類が多く、極めて多くの反応に関与するので、その学術的研究例、実用的開発例、実用化例は膨大である。本発明は、特定の反応条件下で、リパーゼ反応を亢進させ、油脂類の特性を変換して、より広範な利用範囲をもつ素材の製造法を鋭意検討して、安全な新規素材を安価に製造し、提供できることを示したものである。関連の従来技術を検索した結果では、本発明に類似したものは、本発明者らの発明以外のものでは見あたらない。また、従来、製パン、醸造食品などは、水分量を少なくして製造することがあり、各種の酵素が関与しているが、混合系での反応で、本発明のように明確な条件は設定することができない。本発明の方法は、従来の製造法の一部に組み合わせて用いることもできる。
ここで、先行技術文献を見てみると、非特許文献1では、リパーゼによる各種反応方法が報告されており、該文献には、リパーゼは、加水分解、エステル交換、エステル化、アルコリシス、酸分解、アミノリシスの反応に関与し、油脂、トリグリセリド、エステル類を含む各種基質に作用し、溶媒に対して耐性を示し、広範囲に利用でき、特に、エステル交換、加水分解、エステル化は、食品加工などには有用である、と記述されており、さらに、これと関連する従来技術として、極めて多くの実用例があることが示されている。
非特許文献2では、ポリプロピレン素材で固定化したリパーゼ製剤を用いて、カプリン酸エチルとグリセロール(水分含有率4%)を40℃で撹拌、反応させて、グリセリドを合成する方法が報告されている。しかし、先行技術文献には、「低水分状態でのリパーゼ反応」に関する文献は見あたらず、それに関連する文献として、「有機溶媒不使用」でのリパーゼ反応による各種素材・成分合成についての非特許文献2のような文献が数件が見いだされる。他に多数の、低水分状態にして反応する方法も提案されている。
非特許文献3では、長鎖アルコール(ステアリルアルコール)、メチルエステル(オレイン酸メチル)を混合し、固定化リパーゼ(Lipozyme IM)でエステル交換反応(アルコール部交換反応)させてワックスを合成する方法が報告されている。しかし、該方法は、溶媒は、無添加で、酵素濃度0.12〜2%、温度55〜65℃での反応という特定条件での反応に係るものである。
非特許文献4では、「solid−to−solid synthesis」として、固形の反応基質混合物に水10%を加えてThermoase PS 160を用いて反応させる方法が報告されており、反応は、飽和基質液相で進み、生成物は沈澱すると説明されている。
非特許文献5では、グルコース−脂肪酸モノエステルを合成する方法が報告されており、グルコースと脂肪酸または脂肪酸メチルエステルを混合し、ポリプロピレンEP 100固定化リパーゼを用いて反応させている。この文献では、エチルメチルケトンまたはアセトン中、減圧下60℃の反応で、収率は、90%以上で、溶媒が揮散して収率が高くなり、食品素材として利用しやすいと説明されている。
非特許文献6では、リパーゼ水溶液と脂肪酸を溶解させたエタノール溶液とを混合し、遠心分離の後、沈殿物を凍結乾燥して脂肪酸修飾リパーゼを調製する方法が報告されており、この文献では、この脂肪酸修飾リパーゼを用いて、トリオレインとパルミチン酸との間でエステル交換反応をヘキサン中で行い、その活性を評価することが示されている。しかし、この方法は、脂肪酸修飾リパーゼによる反応を特徴とするものである。
非特許文献7では、アクリル樹脂で固定化したリパーゼであるNovozym 435を用いて、4−メチルオクタン酸と各種ポリエチレングリコールを混合し、各種水分活性でモノまたはジエステルに変換する方法が報告されている。しかし、この方法は、同定化リパーゼによる反応を特徴とするものである。
その他、非特許文献8には、「イオン液体を媒体とする酵素反応」に関する方法が、また、非特許文献9には、「超臨界CO中での酵素反応による有用物質の合成」に関する方法が報告されているが、これらは、特殊な手法による酵素反応を目指したものもあり、研究開発として注目はされるが、現時点での実用化は困難と考えられる。
次に、特許文献1では、「油脂又は脂肪酸エステル、アルコール、および水からなるO/Wエマルジョン溶液中、又は脂肪酸、アルコール、および水からなるO/Wエマルジョン溶液中で、化学修飾リパーゼを用いて、エステル交換反応又はエステル化反応を行うことにより、脂肪酸エステルを製造する」方法が提案されている。しかし、該方法は、本発明とは、化学修飾リパーゼを用いることを必須の構成要件としている点で別異のものである。
特許文献2では、本発明者らが開発し、特許出願した、擬似粉末状態での酵素反応に関する技術として、「穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、リパーゼを該穀粉又は澱粉に対して所定の水分含有率並びに油脂含有率の擬似粉末状態で反応させて、油脂を水解することにより、これら反応混合物から構成される食品素材を製造することを特徴とする該食品素材の製造方法」が提案されている。
特許文献3では、「澱粉粒、セルロース粉末を担体として、リパーゼを作用させる方法」が提案されている。しかし、該方法では、「リパーゼの反応にも適用でき、例えば、粉末担体に基質の脂肪酸と糖アルコールを噴霧混合し、50〜60℃で密閉静置反応すれば、脂肪酸エステルを製造することができる」、と説明されており、脂肪酸と糖アルコールを混合して脂肪酸エステルを製造することを目的とするものである。
特許文献4では、「脂肪酸エステルを製造する方法」が提案されており、該特許文献4でも、「リパーゼの反応にも適用でき、例えば、粉末担体に基質の脂肪酸と糖アルコールを噴霧混合し、50〜60℃で密閉静置反応すれば、脂肪酸エステルを製造できる」、と説明されており、上記特許文献3と同内容である。このように、先行技術によれば、リパーゼの逆反応を利用する場合には、修飾リパーゼを用いる方法を採用するのが主流であり、従来、通常のリパーゼを用いて、簡便な方法および条件で、リパーゼの逆反応を亢進させて、各種反応物を生成させることは極めて困難とされていた。
特許文献5では、「擬似粉末状態でリパーゼを逆反応させて油脂類−アルコール類複合体組成物を製造する方法およびその複合体組成物からなる食品素材」が提案されている。しかし、該方法は、アルコール類(分子中にリパーゼ逆反応が可能なOH基をもつものも含まれる)と油脂類を擬似粉末状態でリパーゼを逆反応させる方法であり、その原料構成の点で、本発明とは別異のものである。
この文献の[0001]には、「本発明は、粉末基材と、反応基質の油脂類原料(DHA、EPA関連素材を除く)とアルコール類原料を撹拌混合し、油脂関連酵素のリパーゼの存在下で、乾量基準含水率20〜200[d.b.%]の条件の擬似粉末状態でリパーゼの逆反応を亢進させ、反応物全体を食品素材として用いることを可能とする、油脂類−アルコール類複合体組成物の製造方法とその複合体組成物からなる食品素材に関するものであり、擬似粉末状態での酵素反応をPara−Powder State Enzyme Reaction:PPSER(パッセール)と呼称する」、とあり、また、該特許文献5の[0002]には、「本発明では、粉末基材の重量をWd、水、油脂などの液状物体の重量をWwとし、Md=Ww×100/Wdを乾量基準含有率[d.b.%]と定義して用いることとする。」とあり、この文献の方法は、本発明の方法とは基本的に別異のものであることが明らかである。
特許文献6では、「擬似粉末状態でリパーゼを逆反応させて油脂類−メントール、コレステロールまたはポリフェノー類複合体組成物を製造する方法およびその複合体組成物からなる食品素材」が提案されている。しかし、該方法は、上記特許文献5の方法において、アルコール類を特定したことを特徴とするものである。
特開2006−50954号公報;「修飾リパーゼを用いた脂肪酸エステルの製造方法」 特願2013−222823;「乳化能をもつ食品素材を製造する方法及びその食品素材」 特許第5282252号公報;「澱粉粒又はセルロース粉末固定化リパーゼの製造方法、乳化素材の製造方法及び乳化剤」 特開2009−060875号公報;「糖質と糖質以外の食品成分を混合して大気中で高温処理して機能性素材を製造する方法及びその素材」 特願2014−199272;「擬似粉末状態でリパーゼを逆反応させて油脂類−アルコール類複合体組成物を製造する方法およびその複合体組成物からなる食品素材」 特願2014−199422;「擬似粉末状態でリパーゼを逆反応させて油脂類−メントール、コレステロールまたはポリフェノー類複合体組成物を製造する方法およびその複合体組成物からなる食品素材」
R Aravindanら:「Lipase applications in food industry」,Indian Journal of Biotechnology,Vol6,pp141−158(2007) Anna Millqvist Furebyら:「Glyceride synthesis in a solvent−free system」,Journal of the American Oil Chemists’ Society,Volume73,Issue11,pp1489−1495(1996) N.Goma−Doncescu and M.D.Legoy:「An original transesterification route for fatty acid ester production from vegetable oils in a solvent−free system」,Journal of the American Oil Chemists’ Society,Volume74,Issue9,pp1137−1143(1997) Marku s Erbeldingerら:「Scale−up of Enzymatic Solid−to−Solid Peptide Synthesis and Enzyme Recovery」,AIChE Journal,Vol.47,No.2,pp500−508(2001) Youchun Yanら:「Lipase−catalyzed solid−phase synthesis of sugar fatty acid esters: Removal of byproducts by azeotropic distillation」,Enzyme and Microbial Technology,Volume25,Issues8−9,pp725−728(1999) 丸山 達生:「Lipase activation for modification of fats and oils(油脂の改質を目的としたリパーゼの高活性化)」,東京大学学位論文,2002.03.29 N.W.J.T.Heinsman ら:「ESTERIFICATION OF 4−METHYLOCTANOIC ACID WITH POLYETHYLENE GLYCOL AT DIFFERENT aw 」,Biocatalysis and Biotransformation,2001,Vol.9,No.3,pp181−189(2001) 伊藤 敏幸:「イオン液体を媒体とする酵素反応の開発」,科研費報告書,平成22年5月20日 松田知子:「超臨界CO2中での酵素反応による有用物質の合成」,科研費報告書,平成22年5月31日
一般に、加工・化工製品については、酵素処理による製造の際には、液状反応を行うのが通常であり、反応終了後、生成物を取り出し、そのままの状態で濃縮・乾燥して製品を製造し、また、固定化酵素を用いる場合にも、通液して製造する。しかし、この種の製造方法では、水を多量に必要とし、しかも安定性の高い乾燥品を得るためには、生成物の濃縮・乾燥工程を必要とし、生産コストの上昇と環境負荷の増大が、製品価格に影響する。濃縮のみで液状製品とすることもできる例もあるが、品質保持、保存、取り扱いの面からは、乾燥粉末にすることが望まれる。
一般に、粉末状でも酵素反応は進むと考えられ、糖質関連酵素で粉末状態を保持するための糖質と反応用原料の等量混合物に酵素を添加したものの水分含有率は、澱粉、穀粉では14〜50%であり、リパーゼ反応の場合も、水分含有率20〜50%の範囲で酵素反応が進むと考えられる。しかし、リパーゼ反応を利用して有用素材を生成させる場合、リパーゼ反応を亢進する条件や、油脂類および/またはその他の素材の選択・組合せの条件を設定することが必要であると考えられる。
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、リパーゼ反応を利用して有用素材を生成させるべく鋭意研究を積み重ねた結果、リパーゼ反応を亢進する条件や、油脂類および/または糖質成分・素材の選択・組合せの条件を設定することで所期の目的を達成できることを見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、油脂類を単独または2種以上混合して、さらに糖質を添加して、低水分状態で、リパーゼに作用させ、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材を生成させる方法、油脂類にアルカリ性の成分ないし素材を混合して、低水分状態で、リパーゼ反応を亢進させて、起泡性、乳化性をもつ新規素材を製造する方法、およびその反応物からなる素材を提供することを目的とするものである。起泡性をもつということは、界面活性効果を示すということでもあり、起泡性を求めない場合は、振盪撹拌せず、穏和な撹拌または消泡の処理を加えればよく、本発明は、両者の素材を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)油脂類を、単独または2種以上組み合わせて、リパーゼの存在下で、低水分状態で酵素リパーゼを反応させることにより、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物を製造する方法であって、
上記低水分状態での酵素反応として、油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼ反応を行うことを特徴とする上記油脂類−リパーゼ反応物の製造方法。
(2)油脂類を単独または2種以上組み合わせて、これに糖質を添加して、リパーゼの存在下で、低水分状態で酵素反応を行うことにより、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の糖質−油脂類−リパーゼ反応物を製造する方法であって、
上記低水分状態での酵素反応として、油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼ反応を行うことを特徴とする上記糖質−油脂類−リパーゼ反応物の製造方法。
(3)前記(1)または(2)で得られる、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物または同糖質−油脂類−リパーゼ反応物に、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡化、乳化および粉末化し、反応物全体を食品素材とすることを特徴とする、起泡性、乳化性をもつ油脂類−リパーゼ反応物または同糖質−油脂類−リパーゼ反応物の製造方法。
(4)油脂類として、植物性油脂の、なたね油、大豆油、パーム油、ヤシ油、サラダ油、リセッタ、コーン油、べに花油、オリーブ油、ごま油、ヒマワリ油、こめ油、亜麻仁油を用いる、あるいは、動物性油脂の、魚油、鯨油、馬油、ラード、バターを用いる、あるいは、脂肪酸の、DHA、EPA、アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、またはリノレン酸を用いる、前記(1)または(2)に記載の方法。
(5)糖質として、キシロース、フルクトース、アセチルグルコサミン、グルコース、マルトース、可溶性澱粉、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、トウモロコシ澱粉、コメ澱粉、コメ粉(上新粉)、またはセルロースを用いる、前記(2)に記載の方法。
(6)アルカリ性の成分ないし素材として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ソーダ灰、炭酸Ca(シーシェルCa)、カルマグS、リン酸Ca(焼成ポニカル)、または灰の抽出液を用いる、前記(3)に記載の方法。
(7)糖質として、穀粉または澱粉を用い、α−アミラーゼおよび/またはグルコシダーゼを併用する、前記(2)に記載の方法。
(8)穀粉として、米粉、白米ぬか、または小麦粉であり、澱粉が、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、またはサゴ澱粉である、前記(7)に記載の方法。
(9)糖質として、セルロースを用い、セルラーゼを併用する、前記(5)に記載の方法。
(10)アルカリ性の素材として、灰の抽出液を添加する、前記(3)に記載の方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、油脂類を単独または2種以上組み合わせて、リパーゼの存在下で、低水分状態、すなわち油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼを反応させ、潜在的に気泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物を製造し、これにアルカリ性の成分ないし素材を添加することにより、起泡性、乳化性をもつ油脂類−リパーゼ反応物を製造する方法であり、そのまま、酵素失活、殺菌を兼ねて、105℃で、30分程度処理すれば反応物全体を食品素材として利用することが可能な製品とすることができる。
油脂類には、室温でラード、バターのような固形状のものや、パーム油のようなゾル−ゲル状のものもあるが、加温して、溶解状態にした時に、これらは、液状油脂のなたね油やこめ油に混合し、沸騰水浴中で振盪すれば、溶解し、扱いやすくなる。植物油脂とラード、牛脂など動物油脂を組合せたものでも、本発明の方法を適用することができる。また、濃縮方法などを工夫すれば、本発明の範囲外の油脂類乾量基準含水率でも、利用できる可能性はある。
このようにして製造した反応物は、アルカリ性成分ないし素材を添加すれば、潜在的に起泡性、乳化性をもつ素材(潜在的機能をもつ製品)にすることができる。したがって、この油脂類−リパーゼ反応物に、アルカリ性の成分、素材を添加することにより、起泡性、乳化性をもつ素材(油脂類−リパーゼ反応物または糖質−油脂類−リパーゼ反応物)とすることができ、これら反応物全体を、食品素材として用いることができる。
アルカリ性の成分ないし素材の添加量には、制限はなく、少量でも起泡性、乳化性は発現する。製品の安定化を考慮すれば、適度なpHにすることが望ましく、好適な添加量を知ることが望ましい。また、この場合、アルカリ性であれば、成分ないし素材の種類に制限はなく、例えば、アンモニアやアミン、アルカリ金属の炭酸塩や燐酸塩なども適用できる。灰の抽出液は、例えば、籾殻、稻藁、麦藁、おが屑、剪定屑を燃焼させて得た灰を、15%(w/v)程度の分散液として、よく振盪撹拌した後、遠心分離して得たものを使用する。本発明では、梅の木剪定屑を燃焼させて得た灰を好適に利用することができる。
本発明では、上記の油脂類−リパーゼ反応物を製造する際に、糖質を用いることで、多様な素材を製造することもできる。糖質の種類は多く、その特性は多様であり、本発明で用いる糖質の種類に制限はないが、製品の粉末化、安定化には、スクロース、マルトースなどマルトオリゴ糖、ソルビトールなど糖アルコール、多糖類で効果を発現する。また、多糖類は、その加水分解酵素を併用して反応させることもできる。特に、セルロースは、リパーゼ作用で部分的に可溶・分散化するので、セルラーゼと併用して、さらに可溶化・分散化を進めることができ、また、糖質を2種以上組み合わせて用いることもできる。
ここで、本発明で用いる酵素について具体的に説明すると、リパーゼ系酵素の種類は、学術的には極めて多く、EC番号(酵素番号、Enzyme Commission numbers)、EC.3.−(加水分解酵素)、EC.3.1.−(エステル加水分解酵素)、EC.3.1.1.−(カルボン酸エステル加水分解酵素)、EC 3.1.1.3 トリアシルグリセロール リパーゼ[EC 3 Hydrolases、EC 3.1 Acting on Ester Bonds、EC 3.1.1 Carboxylic Ester Hydrolases、EC 3.1.1.3 triacylglycerol lipase]のように分類され、トリアシルグリセロール リパーゼは、各種微生物などに見出され、膨大な数になっている(http://www.brenda−enzymes.info/php/result_flat.php4?ecno=3.1.1.3)。
「既存添加物名簿収載品目リスト」には、番号:305 名称:ホスホリパーゼ 品名/別名:ホスファチダーゼ レシチナーゼ 基原・製法・本質:動物のすい臓若しくはアブラナ科キャベツ(Brassica oleracea LINNE)より、冷時〜室温時水で抽出して得られたもの、または糸状菌(Aspergillus oryzae,Aspergillus niger)、担子菌(Corticium)、放線菌(Actinomadura,Nocardiopsis)若しくは細菌(Bacillus)の培養液より、冷時〜室温時水で抽出して得られたもの、除菌したもの、冷時〜室温時濃縮したもの、またはこれより含水エタノール若しくは含水アセトンで処理して得られたもの、樹脂精製後、アルカリ性水溶液で処理したもの、とある。
更に、番号:349 名称:リパーゼ 品名/別名:脂肪分解酵素 簡略名または類別名:エステラーゼ 基原・製法・本質:動物若しくは魚類の臓器、または動物の舌下部より、冷時〜微温時水で抽出して得られたもの、または糸状菌(Aspergillus awamori,Aspergillus nigerAspergillus oryzaeAspergillus phoenicisAspergillus usamiiGeotrichum candidumHumicolaMucor javanicusMucor mieheiPenicillium camembertiiPenicillium chrysogenumPenicillum roquefortiiRhizomucor mieheiRhizopus delemarRhizopus japonicusRhizopus mieheiRhizopus niveus,Rhizopus oryzae)、放線菌(Streptomyces)、細菌(Alcaligenes,ArthrobactorChromobacterium viscosumPseudomonasSerratia marcescens)または酵母(Candida)の培養液より、冷時〜微温時水で抽出して得られたもの、除菌したもの、冷時〜室温時濃縮したもの、またはエタノール、含水エタノール若しくはアセトンで処理して得られたものである、とある。
市販品としては、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 酵素研究ユニットが、2011年6月にアンケートした調査結果がある(http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/koso/3_shishitu3_1.index.html)。
本発明でリパーゼとして用いられる酵素製剤は、通常のリパーゼであり、例えば、1998年の天野製薬(現天野エンザイム株式会社)製のもの、2010年、2012年に製造されたもの、以下のL1〜L11などがあり、本発明者らは、これらは、多少の差異はあるものの、同様の反応効果を奏することを確認している。本発明の方法では、主として、以下に示す酵素剤の中で最も効果が高かったL8:リパーゼAY「アマノ」30SD、2012を用い、その粉末酵素材の蒸留水1%溶液を使用した。本酵素液を以後、LEと略称する。
L1:リパーゼF−AP15、1998(略号;酵素の緒記号、入手年 組成など)
L2:リパーゼM「アマノ」10、1998
L3:リパーゼA「アマノ」6、2010 リパーゼ:48.0% 食品素材:52.0%
L4:リパーゼAY「アマノ」30G、2010 リパーゼ:20.0% グアーガム:0.4% 食品素材:79.6%
L5:リパーゼR「アマノ」、2010 リパーゼ:20.0% 食品素材:80.0(原材料の一部にゼラチンを含む)
L6:リパーゼG「アマノ」50、2010 リパーゼ:50.0% 食品素材:50.0%(原材料の一部にゼラチンを含む)
L7:リパーゼAY「アマノ」30、1998
L8:リパーゼAY「アマノ」30SD、2012
L9:リパーゼGW「アマノ」50、2012
L10:リパーゼDF「アマノ」15、2012
L11:ニューラーゼF、2012

ナガセケムテック株式会社製のリパーゼ以下の3種についても検討した。
PLA2 ナガセ 10P/R、
デナベイク RICH、
PLA2 ナガセ L/R
本発明において、油脂類を低水分状態でリパーゼに作用させるとは、低水分状態、すなわち油脂類を油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼを反応させることを意味するものとして定義する。本発明でいう「低水分状態」とは、油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%]として特定の数値範囲で規定される状態であり、具体的には、油脂類に対しての水分添加量で見ると、油脂類50mgに対する水分添加量が2〜200μLの割合(μL単位の水分/mg単位の油脂類)のことをいう。本発明の方法は、酵素反応論的には、広義のLow Moisture State Enzyme Reactionと英訳されるので、該反応の略称をLMER(ロメール)とし、本発明では、この低水分状態酵素反応を「希水酵素反応」と称し、「ロメール法」、「ロメール素材」の用語を用いることがある。また、本発明では、希水を微水と称することがあり、上位の用語として、希水反応、希水処理、微水反応、微水処理と称することがあり、関連する特殊な反応として特許文献5の擬似粉末反応がある。
本明細書では、原料が、油脂類、水、リパーゼで製造される製品は、前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物(油脂類希水反応前駆素材または油脂類ロメール前駆素材と略記することがある)であり、さらに糖質を添加して製造される製品は、前駆素材の糖質−油脂類−リパーゼ反応物(糖質−油脂類希水反応前駆素材または糖質−油脂類ロメール前駆素材と略記することがある)である。これら前駆素材は、アルカリ性の成分、素材無添加では、潜在的に起泡性、乳化性をもつ素材であり、これらに、アルカリ性の成分、素材を添加することにより、起泡性、乳化性をもつ油脂類−リパーゼ反応物(油脂類希水反応素材または油脂類ロメール素材と略記することがある)、糖質−油脂類−リパーゼ反応物(糖質−油脂類希水反応素材または糖質−油脂類ロメール素材と略記することがある)を製造することができる。
本発明では、油脂類の重量をWd、水の重量をWwとし、Md=Ww×100/Wdを、油脂類乾量基準含有率[d.b.%]と定義して用いることとする。添加・混合する糖質の量は任意であり、Mdには関与しない。本発明において、「低水分状の態酵素反応(希水酸素反応)」とは、低水分状態、すなわち油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼ反応を行うことを意味する。本明細書で用いる用語について説明すると、「起泡性」とは、本発明の製剤を水溶液に添加・撹拌・混合したときの発生する泡の量から判定する特性のことを意味し、「乳化性」とは、水中油滴(O/W)型、または油中水滴(W/O)型エマルションにおいて、互いに溶け合わない(相溶しない)液体からなる分散液を形成する特性のことを意味し、本明細書では、該乳化性を「乳化性・均一分散性」と記載することがある。
試験区分は、無試験(無処理)区を「Bnk」、対照試験区を「Ref」、試験区を「Exp」と略称する。また、本発明の実験で用いた試薬類は、断らない限り、試薬特級のものである。粉末基材、油脂類は、市販食品素材を用いた。反応時間hは「時間」、dは「日」である。糖質の略号は、次の通りであり、グルコース:Glc、マルトース:G2、ショ糖:Suc、油脂類の略号は、次の通りである。オレイン酸:OLA、エイコサペンタエン酸:EPA、ドコサヘキサエン酸:DHA、リパーゼ:LEを適宜用いることがある。
pHはpH試験紙(TEST PAPER ADVANTEC GRADE UNIV pH 1−11)を用いてチェックしたものである。また、吸光度は、分光光度計 HITACHI U−2900 UV/VIS Spectrophotometerを用い、水2mLを入れた吸光度測定用セルに反応液200μLを添加・混合して測定し、その測定値を11倍して表示したものである。
本発明により、以下のような格別の効果が奏される。
(1)各種油脂類を単独または2種以上組み合わせて、低水分状態で、リパーゼを作用させ、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物を製造することができる。
(2)各種油脂類を単独または2種以上組み合わせ、これに糖質を添加して、低水分状態で、リパーゼを作用させ、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の糖質−油脂類−リパーゼ反応物を製造することができる。
(3)潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物または同糖質−油脂類−リパーゼ反応物に、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡化、乳化、粉末化して、反応物全体を食品素材とすることができる。
(4)糖質として、米粉、白米ぬか、小麦粉、澱粉を用い、α−アミラーゼおよび/またはグルコシダーゼを併用して、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡性、乳化性をもつ糖質−油脂類−リパーゼ反応物素材を製造することができる。
(5)糖質として、セルロースを用い、セルラーゼを併用して、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡性、乳化性をもつ糖質−油脂類−リパーゼ反応物素材を製造することができる。
(6)起泡性および/または乳化性をもつ油脂類−リパーゼ反応物からなる食品素材を提供することができる。
(7)起泡性および/または乳化性をもつ糖質−油脂類−リパーゼ反応物からなる食品素材を提供することができる。
(8)油脂類、糖質の種類を選択することにより、任意の特異的な特性を有する起泡性および/または乳化性をもつ食品素材を提供することができる。
Aは、水分添加量の変化による反応系の外観観察、Bは、水とアルカリを加え、振盪撹拌後の外観観察をそれぞれを示す。 水添加量の変化による起泡性、乳化性の変動を示す。 Aは、活性酵素添加系、Bは、失活酵素添加系、Cは、各種油脂類のアルカリ処理による起泡性をそれぞれ示す。 Aは、活性酵素添加系、Bは、失活酵素添加系をそれぞれ示す。 Aは、活性酵素添加系、Bは、失活酵素添加系をそれぞれ示す。 Aは、活性酵素添加系(アルカリ無添加)、Bは、活性酵素添加系、Cは、失活酵素添加系をそれぞれ示す。 着色度(上図:活性酵素添加系、下図:失活酵素添加系)を示す。 Aは、アルカリ添加量による起泡性、乳化性の変化、Bは、各種アルカリ素材、成分添加による起泡性、乳化性をそれぞれ示す。
次に、試験例を示して、本発明について具体的に説明する。以下の試験例において、水は、蒸留水を用いた。原料の油脂類、脂肪酸、糖質は、市販品をそのまま用いた。
試験例1
本試験例では、本発明の低水分状態酵素反応[=LMER(ロメール法)]での水分量による各種変化[ショ糖+ヤシ油+水量変動]を調べた。
油脂としてヤシ油を50mg、水を0〜5mL添加して検討した。具体的には、ヤシ油50mgとショ糖(Suc)250mgの混合物に、水0 10 20 50 100 200 500μL 1mL 5mLを添加し、反応系全体を観察した。
なお、水分添加量0 10 20μLでは、リパーゼ粉末酵素約0.5mgをバイアルに入れ、水を0 10 20μLを加えた。50μL以上の実験では、1%濃度のリパーゼ溶液(蒸留水に溶解した)50μLを分注し、これに、水を0 50 150μL・・・のように添加して試験区とした。
密閉系で、40℃で、3h反応させた後、水を各5mL、4.99mL・・・4mL、0mLのように加えて、試験液総量を5mLにし(この時点でのpHは、全ての試験区で約7)、振盪撹拌後、1N NaOH 170μLを添加(この時点でのpHは、水分添加量20、50、100μLの試験区では、約9、これ以外の試験区では、11以上)、振盪撹拌直後と10分間放置後などで、外観を観察比較した。図1にその結果を示す。
図中、Aは、水分添加量の変化による反応系の外観観察、Bは、反応後、水総量として5mL、1N NaOH 170μLを加え、振盪撹拌10分後の外観観察をそれぞれ示す。
図2に、水添加量の変化による起泡性、乳化性の変動を示す。これは、水添加量(μL)による起泡性を、バイアルの空隙に占める泡の厚さ(cm)、乳化性−均一な乳白濁度を600nmの波長で測定した値をグラフで示したものである。
Ref、Bnkの泡厚と吸光度は、各4.0と3.3、0と0.7をそれぞれ示した。
なお、図中、Bの7は、Ref:Suc250mg+ヤシ油50mg+LE50μLで、密閉系で、40℃、3h反応後、沸騰水浴中で10分間加熱処理し、水5mLを添加し、1N NaOH 170μLを添加・振盪撹拌し、10分後の観察結果である。8は、Bnk:Suc250mg+ヤシ油50mg+失活LE50μLで、密閉系で、40℃、3h反応後、沸騰水浴中で10分間加熱処理し、水5mL添加し、1N NaOH 170μLを添加・振盪撹拌し、10分後の観察結果である。
また、水添加量5mL(グラフ横軸)での泡厚と吸光度は、0.5と1.1であった。
本発明で用いている技術の、低水分状態酵素反応(Low Moisture Enzyme Reaction;LMER ロメール法)は、既に、本発明者らによって提案されている擬似粉末状態の酵素反応(PPSER法)の上位技術であり、本発明者らが、水の量による酵素反応の動態を観察している過程で見出したものである。この技術は、酵素の反応環境には、「希水の世界」も存在するということを示すものである。
油脂類原料については、油脂類には各種の素材、成分があり、その特性も多様である。本発明で利用できる油脂類に制限はなく、食品素材の製造には、多量に入手でき、取り扱いが容易で、食味がよく、健康、生理機能にも優れた素材・成分であることが望ましい。これらの要望に合った素材・成分としては、なたね油、パーム油、大豆油、こめ油、ヤシ油、サラダ油、リセッタ、オレイン酸、リノール酸、EPA、DHAなどをあげることができるが、その他の植物油である、ごま油、オリーブ油、ベニハナ油、ヒマワリ油、アマニ油、ココナッツ油、カカオバターなど、動物油脂である、肝油、魚油、鯨油、鶏油、馬油、ラード、牛脂、豚脂、バターなど、極めて他種多様である。室温で油状の油脂は、そのまま用いることができ、ゾル・ゲル状の油脂は、そのまま、練り込んでもよいが、少しの加温で溶解するものであれば、溶解して、溶けているうちに用いたり、他の液状油脂と混合して用いることもできる。エタノールに溶解して用いることもできる。
エッセンスオイルなどでも本発明の方法を適用することができる。酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、コハク酸ナトリウムなどの有機酸塩、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機酸塩、脂肪酸塩、酢酸エチルなど、R−COOX(Xはナトリウムなどの金属原子、エチル基など)の構造をもつエステルなども利用可能であり、また、油脂類と他の成分を混合した素材も利用することができる。
試験例2
本試験例では、油脂または多価不飽和脂肪酸単独でのリパーゼ反応による起泡性、乳化性の発現[各種油脂類単独+水量(100[d.b.%]油脂類乾量基準含水率)]を調べた。
図3に、その結果を示す。図3において、1〜11は、各区試験区No.を示し、各試験区における油脂の種類は、1.なたね油、2.パーム油、3.大豆油、4.こめ油、5.ヤシ油、6.サラダ油、7.リセッタ、8.OLA、9.リノール酸、10.EPA、11.DHAであり、油脂類50mg+1%活性酵素溶液50μLまたは油脂類50mg+1%失活酵素溶液50μLで、密閉系で、40℃、2d反応後、1N NaOH溶液170μLを添加撹拌混合し、水5mLを添加・振盪撹拌し、10分間放置後、観察した。
図中、Aは、活性酵素添加系、Bは、失活酵素添加系、Cは、各種油脂類の1N NaOH溶液170μL添加処理による起泡性をそれぞれ示す。
なお、乳化性をEmulsion forming valueとし、その程度を− ± + ++ +++(無 微 低 中 高)と表示する。吸光度:乳化性程度の関係は、0−2:− 2−4:+ 4−6:++ 6以上:+++、2−は2以上、−4は4未満を表す。乳化性優劣の程度は、高数値のものを優れたものとした。
起泡性は、Foam forming valueとし、その程度を− ± + ++ +++(無 微 低 中 高)と表示する。泡厚(cm):起泡性程度の関係は、0:− 0−0.5:± 0.5−1cm:+ 1−2cm:++ 2cm以上+++とした。
なお、バイアル全長8cm、蓋部分2cm、空隙4.5cm、液層5mLでは、2.5cmである。
以下は、起泡性、乳化性、pHを各油脂類について、比較が容易なように並べたものである。
表1のAに、起泡性実験番号1〜11とその結果、Bに、乳化性実験番号1〜11とその結果、Cに、pH実験番号とその結果をそれぞれ示す。
図および表に示すように、活性酵素添加系では、起泡性の発現は一様に高く、失活酵素添加系では8、9を除けばほとんど発現しない。乳化性は、3、5、7、8、10、11で、活性酵素添加系で高く、逆に失活酵素添加系2の乳化性が活性酵素添加系のものより高く、活性酵素添加系での乳化性が「無」となるのが注目される。
pHをみると、活性酵素添加系では、pH7〜8であり、1N NaOH溶液を添加した後でも、その値を維持していた。失活酵素添加系では、8のOLAのみ、pH7を維持しているが、他は全て、10μLという少量の1N NaOH溶液でも、pH11以上になり、二重結合の数による作用の差異が注目される。活性リパーゼ反応後の試験区では、pHが7〜8であり、アルカリ液の添加量を多少変えても、そのpHが変化しないことから、リパーゼ反応により、緩衝作用をもつ成分が生成している可能性があると考えられる。
因みに、なたね油50mg+1%失活酵素溶液50μLで、密閉系で40℃で、3h処理後、1N NaOH溶液170μLを添加撹拌混合し、水5mLを添加・振盪撹拌し、10分間放置に後観察した結果では、起泡性は±、乳化性は−、pHは11であった。また、各油脂類50mgを採取、水5mL添加、1N NaOH溶液170μLを添加し、撹拌混合して室温で放置10分後、外観観察した結果は、以下に示すように、オレイン酸、リノール酸は起泡性であるが、用いたその他の油脂類では起泡性を示さなかった。
試験例3
本試験例では、糖質の種類をショ糖に固定し、油脂類の種類を替えて、リパーゼ反応させたときの起泡性と乳化性[ショ糖+各種油脂類]を調べた。
糖質の種類をSucに固定し、油脂類を替え、反応系をSuc+各種油脂類±LE(+LEは活性酵素添加、−LEは失活酵素添加)のようにして検討した。密閉系で40℃で反応を3h行い、1N NaOH溶液170μLを加えて、水5mLを添加し、振盪撹拌して10分後に起泡性、乳化性、pHを観察チェックした。油脂の種類は、実験番号1〜9のうち、1.なたね油、2.パーム油、3.大豆油、4.こめ油、5.ヤシ油、6.リセッタ、7.OLA、8.EPA、9.DHAである。図4に、その結果を示す。
図中、Aは、活性酵素添加系、Bは、失活酵素添加系をそれぞれ示す。
表2のAに、起泡性実験番号1〜9とその結果、Bに、乳化性実験番号1〜9とその結果、Cに、pH実験番号1〜9とその結果をそれぞれ示す。
油脂類にSucを添加して、リパーゼに作用させても、その混合物は、起泡性になる。乳化性は、Sucの添加によりSuc無添加・油脂単独とは異なる実験区もあるが、総じて油脂単独実験区と同等であることが分かった。特に、Sucの添加でパーム油では起泡性は小さくなり、逆に乳化性は高くなり、EPAとDHAの乳化性は小さくなることが注目された。
試験例4
本試験例では、糖質の種類をソルビトールに替え、各種油脂類でリパーゼ反応したときの起泡性と乳化性[ソルビトール+各種油脂類]を調べた。
試験例3に準じて、糖質としてSorでもリパーゼ反応が亢進するかを検討した。その結果を図5に示す。
図中、Aは、活性酵素添加系、Bは、失活酵素添加系をそれぞれ示す。
表3のA〜Cに、起泡性実験番号1〜9とその結果、Bに、乳化性実験番号1〜9とその結果、Cに、pH実験番号1〜9とその結果をそれぞれ示す。
その結果、より反応亢進することが認められた。特に、パーム油で、乳化性が高くなり、起泡性は、全ての油脂類に認められた。
試験例5
本試験例では、油脂類をなたね油に固定し、各種糖質の添加でリパーゼ反応させたときの起泡性と乳化性[なたね油+各種糖質]を調べた。
糖質の種類により、起泡性、乳化性に差異が認められることから、各種糖質による検討を行うために、油脂類をなたね油に固定し、糖質を選択して、なたね油+各種糖質±LEで起泡性と乳化性はどのように変化するかを以下のようにして実験した。
各糖質250mgを秤量採取し、なたね油50mgを加え、1%LE50μLまたは失活1%LE50μLを添加して、撹拌混合し、密閉系で40℃で反応を3時間、水5mL添加し、1N NaOH溶液170μLを加えて、振盪撹拌した10分後に、pH試験紙でpHをチェックし、起泡性、乳化性を観察した。図6のA〜Cに、活性酵素添加系(アルカリ無添加、活性酵素添加系、および失活酵素添加系の結果をそれぞれ示す。
なお、図6〜7において、1〜17は、各試験区No.を示し、各試験区における選択使用した糖質の種類とその略号は、1.キシロース Xyl、2.フルクトース Fru、3.アセチルグルコサミン GNAc、4.グルコース Glc、5.マルトース一水物 G2・HO、6.可溶性澱粉 Gn、7.ソルビトール Sor、8.エリスリトール Er、9.キシリトール XylOH、10.マンニトール ManOH、11.スクロース Suc、12.ラクトース Lac、13.トレハロース Tr、14.トウモロコシ澱粉 CS、15.糯米澱粉 WRS、16.コメ粉(上新粉) RP、17.セルロース Cel である。
B1は、なたね油50mg+LE50μLを、密閉系で40℃で反応を3時間行い、沸騰水浴中で10分間加熱処理し、水5mLを添加・振盪撹拌し、1N NaOHを170μL添加し、振盪撹拌し、室温で10分間放置後観察したものである。
B1’ は、なたね油50mg+失活LE50μLを密閉系で40℃で反応を3時間行い、沸騰水浴中で10分間加熱処理し、水5mLを添加・振盪撹拌し、1N NaOHを170μL添加し、振盪撹拌し、室温で10分間放置後観察したものである。
図7に、着色度(上図:活性酵素添加系、下図:失活酵素添加系)の結果を示す。
表4に、各種糖質の添加での各種機能の変化を示す。
起泡性は、図6Aに示すように、活性酵素添加系であっても、アルカリを添加しなければ「無」であり、乳化性も6、14、15、17で高いが、アルカリ添加で図6Bに示すように、総じて高くなることが分かった。
着色度は、4週間、バイアルを密栓して室温に放置後、観察したものであり、特に、マルトースとラクトースで高く、キシロース、フルクトース、アセチルグルコサミン、グルコース、可溶性澱粉での着色が認められた。総じて、失活酵素添加系で高く、糖質添加、リパーゼ反応で、安定性が高くなり、乳化性も安定に維持された。このように、油脂類と糖質の組合せで、起泡性、乳化性は各様になるので、目的に応じて、適宜組合せを選択すればよい。
糖質原料については、この他の糖質成分、素材でも、本発明の方法を適用することができ、例えば、穀物類、マメ類、果実類、葉菜類、茎菜類、花菜類、イモ類、茶類、キノコ類、藻類、微細藻類などの農産物またはこれらの加工の際に排出される廃棄物・副産物から得られる疎水性食品素材・成分に、本発明の方法を適用すれば各種新素材が生産できる。具体的には、米、麦、柚子、蜜柑、パイナップル、ハーブ、お茶などの加工の際に排出される米糠、麩、皮、種など廃棄物・副産物などに、ヘキサン、アセトン、アルコールの有機溶媒溶液を添加、抽出し、有機溶媒を蒸散(回収)した後の残留物、さらには油脂類を添加して、本発明の方法を適用すれば、機能性をもつ起泡性・乳化性の素材を生産できる。このように、本発明の方法は、農産物、食品原料を可及的全体を利用して、環境負荷を限りなく少なくすることにも貢献でき、最終残留物は、畑地に還元し、土地改良に利用することもできる。アルコール類は、糖質関連酵素を並行作用させて、部分的にアルコール−グルコシドに変換して、それらを含有する食品素材とすることもできる。
試験例5
本試験例では、油脂類をなたね油に固定して、リパーゼ反応を行い、各種アルカリ素材、成分を添加したときの起泡性と乳化性[なたね油+ソルビトール+各種アルカリ素材、成分]を調べた。
先ず、なたね油50mg+Sor250mg+LE50μL、を密閉系で、40℃で3時間反応させ、沸騰水浴中で10分間加熱処理した検体を、8点準備した。水5mLを添加・振盪撹拌し、1N NaOHを、0 25μL 50μL 100μL 150μL 170μLのように添加して、振盪撹拌し、室温で10分間放置後、観察した。図8に、その結果を示す。
図6において、1〜9は、各試験区No.を示し、各試験で用いたアルカリ素材、成分は、1.NaHCO、2.NaCO、3.KCO、4.KHPO、5.KHPO、6.ソーダ灰、7.炭酸Ca シーシェルCa、8.カルマグS、9.リン酸Ca 焼成ポニカル、である。
図中、Aは、アルカリ添加量による起泡性、乳化性変化、Bは、各種アルカリ素材、成分添加による起泡性、乳化性をそれぞれ示す。
R1は、なたね油50mg+失活LE50μLを反応と同様条件で処理したものであり、
R2は、なたね油50mg+水50μLを反応と同様の条件で処理したものである。
失活は、Sor250mg+なたね油50mg+失活LE50μLを、反応と同様の条件で処理したものである。
Bは、なたね油50mgを室温で3h放置後、1N NaOH170μLを添加すると同時に水5mLを添加して、撹拌観察したものである。
アルカリ添加量は、5μL、10μLでも、起泡性、乳化性は発現し、pHも7程度になる。
なたね油50mg+LE50μLで、同様に反応処理した場合も、ほぼ同等な結果であった。
なたね油50mg+LE50μLを、密閉系で40℃で3h反応させ、沸騰水浴中で10分間失活処理した後、各アルカリ素材10mg(10−11mg)を添加、撹拌しながら、水5mLを添加、振盪撹拌し、室温に放置し、10分間後に観察した結果を下に示す。
図に示すように、各素材、成分により、起泡性、乳化性に差異があるので、求めに応じて選択すればよい。
本発明の製造方法で得られるロメール素材について説明すると、当該素材は、油脂類に少量の水分を添加してリパーゼを作用させて製造されるもので、油脂類と水が反応することにより、油脂類が柔らかいペースト状に変換されて、このままの状態で瓶や缶に詰めたものは、油脂類ロメール前駆素材として菓子製造、飲料製造の際に、各種の素材と共に用いることができる。起泡性、乳化性を求める場合はアルカリ素材、成分とともに用いる。油脂類に糖質を添加して製造されるものは糖質−油脂類ロメール前駆素材、糖質−油脂類ロメール素材として各種の食品製造用に利用することができる。製麺、製パン、製飯、製菓、飲料製造と利用範囲は広範である。
油脂特有の臭いを改善するには、お茶、ハーブティーのエタノール溶液抽出物を乾燥し、各種油脂類と混合して、リパーゼ反応すればよい。さらに、ハートイーズ乾燥粉末抽出物、植物由来甘味素材、エッセンスオイルも利用できる。
ロメール法なる技術そのものも、油脂類以外の原料と油脂類を混合したり、油脂類を含む原料に直接、適度な水分に調整してリパーゼを作用させ、求める食品を製造することに利用できる。素材、成分の機能を変換することも可能である。例えば、醸造食品製造、製パン、製麺、製飯の際に低水分でリパーゼを作用させて、品質向上、味質改良をすることが期待できる。アミノ酸、ペプチド、タンパク質関連酵素の希水反応も本発明の方法を敷衍して行うことも可能と推論される。広くは、生理機能成分(酵素類を含めて)の機能亢進、抑制に希水反応が関与し、多くの利用面が見いだせるものと期待される。
酵素を単独または2種以上を組合せ、基質も単独または2種以上を組合せれば、多様な食品素材・成分、製品を生産可能である。さらに、糖質、タンパク質、脂質、核酸、その他ポリフェノールなどの生理活性物質、各種関連酵素を適宜組み合わせて、希水反応による多様な複合体素材(ハイブリッド素材)生産が可能であると推測される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
蓋付きの瓶に、2gのなたね油と、天野エンザイム株式会社製リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液2mLを入れて、よく撹拌し、瓶を蓋で密封し、40℃で18時間静置反応させた。この場合、油脂類乾量基準含水率は100[d.b.%]であった。反応後、そのまま、105℃で、30分間加熱することにより酵素失活加熱処理して、グリース状の製品を得た。
なたね油の替わりに、パーム油、大豆油、こめ油、ヤシ油、サラダ油、リセッタ、オレイン酸、リノール酸、EPA、またはDHAを用いた以外は同様にして、類似のグリース状の製品を得た。この他に、油脂類として、オリーブ油、またはごま油を用いて、同様にして、類似のグリース状の製品を得た。(油脂類−リパーゼ反応物、前駆素材)
なたね油とヤシ油の等量混合油脂、およびこめ油とパーム油の等量混合油脂を用いて、実施例1と同様にして、同様のグリース状の製品を得た。
油脂類として、EPAまたはDHAを用い、お茶の50%エタノール抽出−乾燥物に入れて処理した以外は実施例1と同様にして、異臭のないEPA、DHA製品を得た。
なお、お茶の50%エタノール抽出−乾燥物は、緑茶2gに50%エタノール溶液を10mLを添加し、室温で、時々撹拌しながら18時間抽出し、その上清5mLを採取し、105℃て乾燥して調製した物である。
蓋付き瓶に、2gのなたね油と、ソルビトール10g、リパーゼAY「アマノ」30SD(天野エンザイム株式会社製)の0.1%酵素水溶液2mLを入れて、よく撹拌混合し、瓶を蓋で密封し、40℃で、18時間静置反応させた。この場合、油脂類乾量基準含水率は100[d.b.%]であった。反応後、蓋をあけて、105℃で、30分間加熱することにより酵素失活加熱乾燥処理して、白色粉末の製品を得た。(糖質−油脂類ロメール前駆素材)
本発明に適用できる糖質としては、特に制限はないが、例えば、エリスリトール、キシリトール、糯米澱粉を用いて製造した製品では、乳化性に優れ、安定性も高いものであった。
蓋付き瓶に、2gのなたね油、ショ糖1gと糯米澱粉1gを入れ、天野エンザイム株式会社製リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液2mLを入れて、よく撹拌混合し、蓋で密封し、40℃で、18時間静置反応させた。この場合、油脂類乾量基準含水率は100[d.b.%]であった。反応後、蓋をあけて、105℃で、30分間加熱することにより酵素失活加熱乾燥処理して白色粉末の製品を得た。(糖質−油脂類ロメール前駆素材)
天野エンザイム株式会社製リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液2mLを、リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液1mL+天野エンザイム株式会社製α−アミラーゼ(クライスターゼL1)0.1%酵素水溶液1mLとした以外は、実施例5と同様にして、溶解性、甘味に優れ、口当たりのよい製品を得た。
α−アミラーゼ(クライスターゼL1)0.1%酵素水溶液0.5mL+グルコアミラーゼ(グルクザイムAF6)0.1%酵素水溶液0.5mL+0.1%リパーゼ水溶液1mLを添加して、さらに溶解性を向上させることができた。
[α−アミラーゼ(クライスターゼL1)0.1%酵素水溶液0.5mL+グルコアミラーゼ(グルクザイムAF6)0.1%酵素水溶液0.5mL]の代わりに、サイクロデキストリン合成酵素(天野エンザイム株式会社製コンチザイム−CGTase)0.1%酵素水溶液1mL]を添加して、安定性を向上させることができた。
蓋付き瓶に、2gのなたね油とセルロース10g、天野エンザイム株式会社製リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液2mLを入れて、よく撹拌混合し、蓋で密封し、40℃で、18時間静置反応した。この場合、油脂類乾量基準含水率は100[d.b.%]であった。反応後、蓋をあけて、105℃で、30分間加熱することにより、酵素失活加熱乾燥処理して、白色粉末の製品を得た。(糖質−油脂類ロメール前駆素材)
天野エンザイム株式会社製リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液2mL代わりに、リパーゼAY「アマノ」30SDの0.1%酵素水溶液1mL+ナガセケムテックス製セルラーゼ(セルラーゼSS)の1%酵素水溶液1mLを入れて、よく撹拌混合し、蓋で密封し、40℃で、18時間静置反応した。この場合、油脂類乾量基準含水率は100[d.b.%]であった。反応後、蓋をあけて、105℃で、30分間加熱することにより、酵素失活加熱乾燥処理して、白色粉末の製品を得た。
ナガセケムテックス製セルラーゼ(セルラーゼSS)の1%酵素水溶液1mLの代わりにセルラーゼ(セルラーゼSS)の1%酵素水溶液0.5mL+エイチビイアイ製ヘミセルラーゼ(セルロシンHC)0.5mLにした以外は、実施例7と同様にして、さらに分散・溶解性に優れた製品を得た。
請求項3、5対応
実施例1から3までの製品に、1N NaOH溶液250μLを添加撹拌して、水への分散・溶解の際に起泡性、乳化性を示す製品にすることができた。ただし、パーム油単独でリパーゼ反応させ、アルカリを添加したものでは、乳化性を示す製品にはならなかった。(油脂類ロメール素材)
実勢例4から9までの製品に、ソーダ灰10mgをよく撹拌混合することにより、水への分散・溶解の際に起泡性、乳化性を示す製品にすることができた。(糖質−油脂類ロメール素材)
(食品素材としての応用例1)
飲料−乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料への利用
実施例1に準じて、なたね油の代わりにリセッタを用いて製造した製品に、ソーダ灰10mgを加えて撹拌混合したものに、原料牛乳、お茶原料液、コーヒー原料液を各20mLを加えて振盪撹拌して食品素材を得た。製品は、均一分散液となり、室温4週間放置しても乳化性は保持できた。
リセッタの代わりに、EPA、DHAを用いた場合も、同様にして、健康志向製品が得られた。
(食品素材としての応用例2)
菓子製造への利用を目的として、実施例4で製造した製品に、ソーダ灰を10mg加えて撹拌混合したものに、薄力粉12gと1%食塩水24mLを添加して撹拌混合した。2分して成形し、180℃のオーブンで12分焙焼することにより、クッキー様菓子を製造した。
うどんは、糯米澱粉−こめ油−ソーダ灰を用いて製造される糖質−油脂類ロメール素材12gに、同量の薄力粉を1%食塩水6mLを加えて、撹拌混合し、成形して、10分間ほど茹でることにより、食味のよい製品が得られた。
以上詳述したように、本発明は、油脂類を、低水分状態、すなわち油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の条件下で、リパーゼを作用させ、起泡性、乳化性を潜在的にもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物(油脂類ロメール前駆素材と呼称)を製造することができ、これに糖質を組み合わせることにより、起泡性、乳化性を潜在的にもつ前駆素材の糖質−油脂類−リパーゼ反応物(糖質−油脂類ロメール前駆素材と呼称)を製造することができる。
また、本発明は、上記反応物に、アルカリ性成分ないし素材を添加して、起泡化、乳化、粉末化し、反応物全体を食品素材とすることができ(油脂類ロメール素材、糖質−油脂類ロメール素材と呼称)、これらの製品は、食品製造に広範に利用することができ、例えば、小麦粉にロメール素材を加えて、お菓子作りに、また、水を少量加えて、ドロ状、糊状にして、玄米粉、白米粉の利用拡大に寄与できる。
また、本発明では、究極の利用法として、油脂類の液に、直接リパーゼ溶液を少量加えて、撹拌混合して反応させるだけでよく、これに、小麦粉、米粉など、糖質を添加して反応させれば、製パン用、製麺用、醸造食品製造用にすることができ、要すれば、アルカリ素材、成分を添加混合することにより、起泡性、乳化性を付与できる。本発明に係るロメール法の技術は、上記のような物作りへの適用に限らず、緩衝作用も観測されることから、各種素材、成分の官能基などを安定に処理して被覆し、例えば、健康に不都合な影響を及ぼす特性を変換することや、医薬の副作用などを軽減することも可能である、という産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. 油脂類を、単独または2種以上組み合わせて、リパーゼの存在下で、低水分状態で酵素リパーゼを反応させることにより、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物を製造する方法であって、
    上記低水分状態での酵素反応として、油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼ反応を行うことを特徴とする上記油脂類−リパーゼ反応物の製造方法。
  2. 油脂類を単独または2種以上組み合わせて、これに糖質を添加して、リパーゼの存在下で、低水分状態で酵素反応を行うことにより、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の糖質−油脂類−リパーゼ反応物を製造する方法であって、
    上記低水分状態での酵素反応として、油脂類乾量基準含水率4〜400[d.b.%](油脂類50mgに対しての水添加量2〜200μL)の範囲で、リパーゼ反応を行うことを特徴とする上記糖質−油脂類−リパーゼ反応物の製造方法。
  3. 請求項1または2で得られる、潜在的に起泡性、乳化性をもつ前駆素材の油脂類−リパーゼ反応物または同糖質−油脂類−リパーゼ反応物に、アルカリ性の成分ないし素材を添加して、起泡化、乳化および粉末化し、反応物全体を食品素材とすることを特徴とする、起泡性、乳化性をもつ油脂類−リパーゼ反応物または同糖質−油脂類−リパーゼ反応物の製造方法。
  4. 油脂類として、植物性油脂の、なたね油、大豆油、パーム油、ヤシ油、サラダ油、リセッタ、コーン油、べに花油、オリーブ油、ごま油、ヒマワリ油、こめ油、亜麻仁油を用いる、あるいは、動物性油脂の、魚油、鯨油、馬油、ラード、バターを用いる、あるいは、脂肪酸の、DHA、EPA、アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、またはリノレン酸を用いる、請求項1または2に記載の方法。
  5. 糖質として、キシロース、フルクトース、アセチルグルコサミン、グルコース、マルトース、可溶性澱粉、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、トウモロコシ澱粉、コメ澱粉、コメ粉(上新粉)、またはセルロースを用いる、請求項2に記載の方法。
  6. アルカリ性の成分ないし素材として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ソーダ灰、炭酸Ca(シーシェルCa)、カルマグS、リン酸Ca(焼成ポニカル)、または灰の抽出液を用いる、請求項3に記載の方法。
  7. 糖質として、穀粉または澱粉を用い、α−アミラーゼおよび/またはグルコシダーゼを併用する、請求項2に記載の方法。
  8. 穀粉として、米粉、白米ぬか、または小麦粉であり、澱粉が、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、またはサゴ澱粉である、請求項7に記載の方法。
  9. 糖質として、セルロースを用い、セルラーゼを併用する、請求項5に記載の方法。
  10. アルカリ性の素材として、灰の抽出液を添加する、請求項3に記載の方法。
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