JP2017183016A - バナジウムレドックス二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】陰イオン交換膜のイオン選択性及び耐久性が良好であり、充放電を繰り返した場合に正極から負極へのイオンの移動が抑制され、クーロン効率及び容量維持率が良好であるバナジウムレドックス二次電池を提供する。【解決手段】電池1は、バナジウムイオン、又はバナジウムを含むイオンを含有する活物質を含む電極50及び電極60と、電極50及び電極60を区画するイオン交換膜7とを備える。イオン交換膜7は陰イオン交換膜であり、325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度が0.12mol/cc以上0.2mol/cc以下であり、小角X線散乱により測定したドメインサイズが1nm以上25nm以下である。【選択図】図2
Description
本発明は、活物質として、バナジウムイオン又はバナジウムを含むイオンを含有し、活物質による酸化還元反応を利用して充放電を行うバナジウムレドックス二次電池に関する。
二次電池は、デジタル家電製品、電気自動車、ハイブリッド自動車及び太陽光発電設備等に広く用いられている。この電池として、リチウムイオン二次電池、バナジウムレドックス二次電池(特許文献1)等が挙げられる。バナジウムレドックス二次電池は、2組の酸化還元対を利用して、イオンの価数変化によって充放電を行う。活物質としては、バナジウムイオン又はバナジウムを含むイオンが用いられる。
バナジウムレドックス二次電池は、活物質、導電助剤としての炭素材料、及び硫酸等の酸性電解液を有する電極と、電極が配される銅等の導電体とを備える電極材を、極性が異なる電極材がイオン交換膜を介して対向する状態で複数並設し、外装袋に収容することにより構成される。このバナジウムレドックス二次電池は、さらにケースに収容されることもある。
特許文献1等のバナジウムレドックス二次電池において、炭化水素系の陰イオン交換膜が多く用いられているが、イオン選択性が不十分であり、長期間の耐酸化性を有さず、耐久性も不十分であるという問題がある。
このようなイオン交換膜を備えるバナジウムレドックス二次電池に対し充放電を繰り返した場合のクーロン効率及び容量維持率は不十分であり、サイクル特性の向上が求められている。
このようなイオン交換膜を備えるバナジウムレドックス二次電池に対し充放電を繰り返した場合のクーロン効率及び容量維持率は不十分であり、サイクル特性の向上が求められている。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、陰イオン交換膜のイオン選択性及び耐久性が良好であり、充放電を繰り返した場合に正極から負極へのイオンの移動が抑制されており、クーロン効率及び容量維持率が良好であるバナジウムレドックス二次電池を提供することを目的とする。
本発明に係るバナジウムレドックス二次電池は、バナジウムイオン、又はバナジウムを含むイオンを含有する活物質を含む正極及び負極と、前記正極及び前記負極を区画する陰イオン交換膜とを備えるバナジウムレドックス二次電池において、前記陰イオン交換膜の325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度は、0.12mol/cc以上0.2mol/cc以下であり、小角X線散乱により測定したドメインサイズが1nm以上25nm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、陰イオン交換膜のイオン選択性及び耐久性が良好であり、該イオン交換膜を備えるバナジウムレドックス二次電池は、充放電を繰り返した場合に正極から負極へのイオンの移動が抑制され、クーロン効率及び容量維持率が良好であり、サイクル特性が良好である。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
1.バナジウムレドックス二次電池
図1及び図2に示すように、実施の形態1に係るバナジウムレドックス二次電池1(以下、電池1という)は、外装袋2と、外装袋2の周縁部の一部から突出した正極端子3及び負極端子4と、正極の電極材5と、負極の電極材6とを備える。正極端子3,負極端子4は、基端部側がシール材30,40に覆われた状態で、外装袋2の周縁部の一部から突出している。この電池1単体、又は該電池1と他の電池1とを組み合わせてケース(不図示)に収容してもよい。
1.バナジウムレドックス二次電池
図1及び図2に示すように、実施の形態1に係るバナジウムレドックス二次電池1(以下、電池1という)は、外装袋2と、外装袋2の周縁部の一部から突出した正極端子3及び負極端子4と、正極の電極材5と、負極の電極材6とを備える。正極端子3,負極端子4は、基端部側がシール材30,40に覆われた状態で、外装袋2の周縁部の一部から突出している。この電池1単体、又は該電池1と他の電池1とを組み合わせてケース(不図示)に収容してもよい。
電極材5は、電極50、導電体51、保護層52、及びシーラント54を備える。
導電体51は角型平板状をなし、前記外装袋2の、図2における下側の半体22の上面に配されており、導電体51の上面は保護層52により覆われている。保護層52の上面の周縁部の内側には、活物質、導電助剤としての炭素材料、バインダ、及び水系電解液を有する角型平板状の電極50が設けられている。
シーラント54は縁部を有する枠状をなし、前記周縁部及び半体22に接着されており、半体22及び保護層52とにより導電体51を封止する。
導電体51は角型平板状をなし、前記外装袋2の、図2における下側の半体22の上面に配されており、導電体51の上面は保護層52により覆われている。保護層52の上面の周縁部の内側には、活物質、導電助剤としての炭素材料、バインダ、及び水系電解液を有する角型平板状の電極50が設けられている。
シーラント54は縁部を有する枠状をなし、前記周縁部及び半体22に接着されており、半体22及び保護層52とにより導電体51を封止する。
以下、電極材5の各部、及び外装袋2の半体22について詳述する。
半体22は電解液非透過性である。半体22は、合成樹脂層及び金属層を含有するラミネートシートからなるのが好ましい。
合成樹脂層の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド等が挙げられる。金属層の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、ステンレス、チタン、チタン合金等が挙げられる。
半体22の厚みは特に限定されないが、15〜250μmであるのが好ましい。厚みが15〜250μmである場合、十分な強度を有するとともに、電池の体積エネルギー密度が向上する。
半体22は電解液非透過性である。半体22は、合成樹脂層及び金属層を含有するラミネートシートからなるのが好ましい。
合成樹脂層の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド等が挙げられる。金属層の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、ステンレス、チタン、チタン合金等が挙げられる。
半体22の厚みは特に限定されないが、15〜250μmであるのが好ましい。厚みが15〜250μmである場合、十分な強度を有するとともに、電池の体積エネルギー密度が向上する。
導電体51の平面面積は半体22の平面面積より小さい。
導電体51は、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属箔からなるのが好ましい。厚みは、5〜100μmであるのが好ましい。厚みが100μm以下である場合、電池の体積エネルギー密度、重量エネルギー密度が向上する。
導電体51は、周縁部の一部から突出したタブ(不図示)を有し、タブの先端部は正極端子3に接続されている。
導電体51は、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属箔からなるのが好ましい。厚みは、5〜100μmであるのが好ましい。厚みが100μm以下である場合、電池の体積エネルギー密度、重量エネルギー密度が向上する。
導電体51は、周縁部の一部から突出したタブ(不図示)を有し、タブの先端部は正極端子3に接続されている。
保護層52は、導電体51の一面に、グラファイトシートを例えば導電性の接着シートを介し設けてなる。保護層52の厚みは1〜100μmであるのが好ましい。この場合、電極50と導電体51との電気伝導性の低下を抑制でき、電池1の内部抵抗を小さくすることができる。
なお、保護層52の材質はグラファイトシートには限定されない。保護層52は導電性かつ電解液非透過性であればよく、導電性フィルム、シート状の導電性ゴムを用いることにしてもよい。また、導電体51の一面に黒鉛でコーティングすることにより、保護層52を形成することにしてもよい。また、水系電解液が酸性又はアルカリ性ではなく、導電体51が腐食等される虞がない場合は、保護層52を備えていなくてもよい。
なお、保護層52の材質はグラファイトシートには限定されない。保護層52は導電性かつ電解液非透過性であればよく、導電性フィルム、シート状の導電性ゴムを用いることにしてもよい。また、導電体51の一面に黒鉛でコーティングすることにより、保護層52を形成することにしてもよい。また、水系電解液が酸性又はアルカリ性ではなく、導電体51が腐食等される虞がない場合は、保護層52を備えていなくてもよい。
なお、本実施の形態において、以後、符号を付さずに単に「集電体」と記載するときは、「導電体51(又は61)及び保護層52(又は62)」、又は「導電体51(又は61)単体」、を意味する。
電極50は、上述したように保護層52の上面の周縁部の内側に、即ち保護層52の上面の周縁部以外の部分に設けられている。
電極50においては、導電助剤としての炭素材料に、酸化還元反応によって、5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウム(V)イオン、又は5価及び4価の間で酸化数が変化するVを含むイオンを含有するバナジウム固体塩を正極活物質として含有する固体状の化合物を含む析出物が担持されている。
電極50においては、導電助剤としての炭素材料に、酸化還元反応によって、5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウム(V)イオン、又は5価及び4価の間で酸化数が変化するVを含むイオンを含有するバナジウム固体塩を正極活物質として含有する固体状の化合物を含む析出物が担持されている。
5価及び4価の間で酸化数が変化する前記Vを含むイオンとしては、VO2+(IV)、VO2 +(V )が例示される。
正極用の活物質であるバナジウム化合物としては、硫酸酸化バナジウム(IV)(VOSO4 ・nH2 O)、硫酸酸化バナジウム(V)((VO2 )2 SO4 ・nH2 O)を挙げることができる。なお、nは0から5の整数を示す。
正極用の活物質であるバナジウム化合物としては、硫酸酸化バナジウム(IV)(VOSO4 ・nH2 O)、硫酸酸化バナジウム(V)((VO2 )2 SO4 ・nH2 O)を挙げることができる。なお、nは0から5の整数を示す。
バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVDF/HFP)等が挙げられる。
電極50の炭素材料としては、アセチレンブラック,ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック、及びグラファイト等が挙げられる。炭素材料は1種又は2種以上を用いることができる。
電極50に含まれる水系電解液は、硫酸水溶液であるのが好ましい。硫酸水溶液として、例えば濃度が90質量%未満の硫酸を用いることができる。電解液は、電池のSOCを0〜100%まで取り得るのに過不足のない量である。電解液の量は、例えばバナジウム化合物100gに対して、2M(mol/L)の硫酸70mLである。
電極50に含まれる水系電解液は、硫酸水溶液であるのが好ましい。硫酸水溶液として、例えば濃度が90質量%未満の硫酸を用いることができる。電解液は、電池のSOCを0〜100%まで取り得るのに過不足のない量である。電解液の量は、例えばバナジウム化合物100gに対して、2M(mol/L)の硫酸70mLである。
シーラント54は上述したように枠状をなし、角筒状の枠本体の上端部に、内側に張り出した内側縁部54aを備え、枠本体の下端部に、外側に張り出した外側縁部54bを備える。即ち、シーラント54は平面視で、内側縁部54a(電極50の外側部分)の外側に、外側縁部54bが位置するように構成されている。
シーラント54の内側縁部54aは保護層52の上面の周縁部に接着されており、内側縁部54aの内側面は電極50の側面に接着されている。
外側縁部54bは半体22の導電体51側の面の、導電体51の外側に接着されている。これにより、導電体51及び保護層52は、半体22とシーラント54とに挟着されている。即ち、半体22、保護層52、及びシーラント54により、導電体51は封止された状態で、導電体51は半体22に固定されている。なお、導電体51の側面はシーラント54に接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
外側縁部54bは半体22の導電体51側の面の、導電体51の外側に接着されている。これにより、導電体51及び保護層52は、半体22とシーラント54とに挟着されている。即ち、半体22、保護層52、及びシーラント54により、導電体51は封止された状態で、導電体51は半体22に固定されている。なお、導電体51の側面はシーラント54に接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
シーラント54の材料としては、例えばポリプロピレン又はポリエチレン等が挙げられる。ポロプロピレン又はポリエチレン等を用いることにより、熱溶着で容易に導電体51を封止することが可能となる。
電極材6は電極材5と同様の構成を有し、電極60、導電体61、保護層62、及びシーラント64を備える。導電体61は角型平板状をなし、外装袋1の半体21の図2における下面に配されており、導電体61の下面は保護層62により覆われている。保護層62の下面の周縁部の内側には、活物質、炭素材料、バインダ、及び水系電解液を有する角型平板状の電極60が設けられている。シーラント64は枠状をなし、角筒状の枠本体の下端部に、内側に張り出した内側縁部64aを備え、枠本体の上端部に、外側に張り出した外側縁部64bを備える。内側縁部64aは前記周縁部に接着され、外側縁部64bは半体21に接着され、シーラント64は半体21及び保護層62とにより導電体61を封止する。
電極材6の導電体61は、周縁部の一部から突出したタブ(不図示)を有し、タブの先端部は負極端子4に接続されている。
電極材6の導電体61、保護層62、及びシーラント64は電極材5と同様の材料を用いてなる。
電極材6の導電体61は、周縁部の一部から突出したタブ(不図示)を有し、タブの先端部は負極端子4に接続されている。
電極材6の導電体61、保護層62、及びシーラント64は電極材5と同様の材料を用いてなる。
電極60においては、導電助剤としての炭素材料に、酸化還元反応によって、2価及び3価の間で酸化数が変化するVイオン、又は2価及び3価の間で酸化数が変化するVを含むイオンを含有するバナジウム固体塩を負極活物質として含有する固体状の化合物を含む析出物が担持されている。
2価及び3価の間で酸化数が変化する前記Vイオンとしては、V2+(II)、V3+(III )が例示される。
負極用の活物質であるバナジウム化合物としては、硫酸バナジウム(II)(VSO4 ・nH2 O)、硫酸バナジウム(III )(V2 (SO4 )3 ・nH2 O)が挙げられる。なお、nは0から10の整数を示す。
負極用の活物質であるバナジウム化合物としては、硫酸バナジウム(II)(VSO4 ・nH2 O)、硫酸バナジウム(III )(V2 (SO4 )3 ・nH2 O)が挙げられる。なお、nは0から10の整数を示す。
前記イオン交換膜7はシーラント54の内側縁部54aの上面、及びシーラント64の内側縁部64aの下面に接着されている。
イオン交換膜7は陰イオン交換膜であり、水素イオン(プロトン)又は硫酸イオンを通過させることができる。
イオン交換膜7は陰イオン交換膜であり、水素イオン(プロトン)又は硫酸イオンを通過させることができる。
イオン交換膜7の325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度は、0.12mol/cc以上0.2mol/cc以下である。前記架橋密度の下限値は0.125mol/cc、上限値は0.175mol/ccであるのがより好ましい。
イオン交換膜7の小角X線散乱により測定したドメインサイズは1nm以上25nm以下である。具体的に説明すると、ドメインサイズは反射X線小角散乱法により求める。イオン交換膜7にX線を斜入射した際の散乱強度の角度依存性を計測する。散乱強度の角度依存性はイオン交換膜7内のポアサイズとその分布状態に依存しており、球状モデルとΓ分布を仮定した散乱X線強度式により散乱プロファイルをフィッティングして解析することができる。そのようにして求めた細孔径分布により平均的なポアサイズを算出し、それをドメインサイズと定義している。
ドメインサイズの下限値を1nmにしている理由について、以下に説明する。バナジウム透過性を有するので、イオン交換膜7のドメインサイズは0ではない。バナジウムイオンの半径は、一般に1Å(0.1nm)以下である。実際には水分子等が水和しているが、これを考慮しても一桁のÅのオーダーである。細孔径が小さい方がバナジウムイオンが透過しにくいことは明らであるので、バナジウムイオンの半径を考慮し、該半径より大きなサイズとして、下限値を1nmにしている。
ドメインサイズの上限値は24nmであるのがより好ましい。
ドメインサイズの上限値は24nmであるのがより好ましい。
架橋密度が0.12mol/cc以上0.2mol/cc以下であり、ドメインサイズは1nm以上25nm以下である場合、イオン交換膜7のイオン選択性及び耐久性が良好である。
イオン交換膜7のV5+の透過性は、55μmol以下であるのが好ましい。これによりV5+イオンが正極から負極へ移動して容量が低下することが抑制される。V5+の透過性は51μmol/(cm2 ・week)以下であるのがより好ましく、35μmol/(cm2 ・week)以下であるのがさらに好ましく、12μmol/(cm2 ・week)以下であるのが特に好ましい。
イオン交換膜7の面積抵抗値は、0.75Ω・cm2 以上3.2Ω・cm2 以下であるのが好ましい。この場合、良好なイオン選択性を有し、かつプロトンを良好に通過させることができる。前記面積抵抗値の下限値は0.78Ω・cm2 であるのがより好ましく、上限値は3Ω・cm2 であるのがより好ましい。
イオン交換膜7の厚みは、3μm以上45μm以下であるのが好ましい。この場合、電池1の充電電流容量維持率及び放電電流容量維持率が良好である。前記厚みの下限値は5μmであるのがより好ましく、10μmであるのがさらに好ましい。前記厚みの上限値は40μmであるのがより好ましく、20μmであるのがさらに好ましい。
イオン交換膜7は炭化水素系のイオン交換膜であるのが好ましい。この場合、イオン選択性がより良好である。
以上のように構成された電池1の電極材5の電極50と電極材6の電極60との間において、下記式(1)及び(2)の反応が生じる。
正極:VOX2 ・nH2 O(s)⇔VO2 X・(n−1)H2 O(s)+HX+H+ +e- (1)
負極:VX3 ・nH2 O(s)+H++e- ⇔VX2 ・nH2 O(s)+HX (2)
式中、Xは1価の陰イオンを表す。Xがm価の陰イオンである場合、結合係数(1/m)が考慮される。nは種々の値をとり得る。
正極:VOX2 ・nH2 O(s)⇔VO2 X・(n−1)H2 O(s)+HX+H+ +e- (1)
負極:VX3 ・nH2 O(s)+H++e- ⇔VX2 ・nH2 O(s)+HX (2)
式中、Xは1価の陰イオンを表す。Xがm価の陰イオンである場合、結合係数(1/m)が考慮される。nは種々の値をとり得る。
前記式(1)及び(2)の反応を利用してバナジウムレドックス二次電池1を用いたバナジウムレドックス二次電池の充放電が行われる。このとき、正極端子3,負極端子4を介して、外部の負荷又は充電器等との間で充放電が行われる。式(1)及び(2)の反応においてイオン交換膜7を介して、電極50,60間でプロトンが移動する。
なお、電極材5のバナジウム化合物としてVOSO4 ・nH2 Oを用い、電極材6のバナジウム化合物としてV2 (SO4 )3 ・nH2 Oを用いた場合の各物質の反応を以下に示す。
正極:2VOSO4 ・nH2 O(s)⇔(VO2 )2 SO4 ・(n−2)H2 O(s)+H2 SO4 +2H+ +2e- (3)
負極:V2 (SO4 )3 ・nH2 O(s)+2H+ +2e- ⇔2VSO4 ・nH2 O(s)+H2 SO4 (4)
正極:2VOSO4 ・nH2 O(s)⇔(VO2 )2 SO4 ・(n−2)H2 O(s)+H2 SO4 +2H+ +2e- (3)
負極:V2 (SO4 )3 ・nH2 O(s)+2H+ +2e- ⇔2VSO4 ・nH2 O(s)+H2 SO4 (4)
2.バナジウムレドックス二次電池の製造方法
以下、本発明の電池1の製造方法について説明する。
電池1は、正極の電極材5と負極の電極材6とを各別に作製するのではなく、単一の電極材を作製した後、正極側及び負極側のいずれに用いるかを使い分けし、電池1の組立後の通電によって、正極の電極材5及び負極の電極材6を形成することができる。電極50,60の厚みを変える場合等においては、電極材5,6を各別に作製する。
以下、本発明の電池1の製造方法について説明する。
電池1は、正極の電極材5と負極の電極材6とを各別に作製するのではなく、単一の電極材を作製した後、正極側及び負極側のいずれに用いるかを使い分けし、電池1の組立後の通電によって、正極の電極材5及び負極の電極材6を形成することができる。電極50,60の厚みを変える場合等においては、電極材5,6を各別に作製する。
まず、炭素材料に、3価のバナジウム化合物としてのV2 (SO4 )3、4価のバナジウム化合物としてのVOSO4 、及びバインダを配合し、攪拌機により混合することにより混合粉を得る。炭素材料、活物質、及びバインダの組成は、要求される容量、乾燥条件、及び外部環境(気温、湿度)等に応じて決定する。
次に、前記混合粉に水系電解液を配合し、プラネタリーミキサ等を用いて混練することにより、混練物を得る。
前記混練物はロールプレス等により圧延成形され、電極形状に打ち抜かれて集電体に配置される。ここで、集電体としては、上述の「導電体51(又は61)単体」、及び「導電体51(又は61)及び保護層52(又は62)」等が挙げられる。
上述したように、電極材を電極材5用,電極材6用に使い分ける。電極材5の電極50と電極材6の電極60との間にイオン交換膜7を配し、シーラント54,64を電極50,60の周囲に配する。
電極材5の集電体側に外装袋2の半体22を、電極材6の集電体側に半体21を配し、熱プレス等により、半体22,電極材5,イオン交換膜7,電極材6、及び半体21を一体化する。
電極材5の集電体側に外装袋2の半体22を、電極材6の集電体側に半体21を配し、熱プレス等により、半体22,電極材5,イオン交換膜7,電極材6、及び半体21を一体化する。
そして、半体21,22の周縁部の一部から正極端子3及び負極端子4が突出する状態で、周縁部を圧接し、接着することにより外装袋2が形成され、電池1が得られる。なお、半体21,22は最初から一体化されていてもよい。
電池の組み立て後の通電により、正極の電極材5のバナジウム化合物の価数が4価、負極の電極材6のバナジウム化合物の価数が3価になる。
以上のように構成された本実施の形態に係る電池1は、上述したようにイオン交換膜7のイオン選択性及び耐久性が良好であり、充放電を繰り返した場合に正極から負極へのイオンの移動が抑制され、クーロン効率及び容量維持率が良好であり、サイクル特性が良好である。
また、本実施の形態においては、導電体51は、シーラント54、保護層52、及び半体22により封止され、電極50はイオン交換膜7と、シーラント54aとにより包囲されているので、電極50に含まれる酸性の電解液が導電体51に接触することがなく、導電体51の腐食が防止されている。同様に、導電体61は、シーラント64、保護層62、及び半体21により封止され、電極60はイオン交換膜7と、シーラント64aとにより包囲されているので、電極60に含まれる酸性の電解液が導電体61と反応することがなく、導電体61の腐食が防止されている。
また、本実施の形態においては、導電体51は、シーラント54、保護層52、及び半体22により封止され、電極50はイオン交換膜7と、シーラント54aとにより包囲されているので、電極50に含まれる酸性の電解液が導電体51に接触することがなく、導電体51の腐食が防止されている。同様に、導電体61は、シーラント64、保護層62、及び半体21により封止され、電極60はイオン交換膜7と、シーラント64aとにより包囲されているので、電極60に含まれる酸性の電解液が導電体61と反応することがなく、導電体61の腐食が防止されている。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
1.電池の製造
[実施例1]
炭素材料としてのカーボンブラック(「ケッチェンブラック(登録商標)EC600JD」、株式会社ライオン製)を2800℃で焼成したもの2.93gに、3価のバナジウム化合物としてのV2 (SO4 )3・nH2 O(自社製)を2.89g、4価のバナジウム化合物としてのVOSO4 ・nH2 O(新興化学株式会社製)を2.5g、バインダとしてのPTFE(「6−J」、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を0.08g配合して、上述の混合粉を得た。
次に、この混合粉2.0gに1M硫酸1.28mLを配合して混練し、上述の混練物を得た。該混練物をロールプレス等により圧延成形し、打ち抜いて電極を得た。電極は電極50用,電極60用に分けて作製した。電極50の厚みは180μm、電極60の厚みは130μmである。
銅箔からなる導電体にグラファイトシートを接着して集電体を得た。
該集電体に電極50,60を夫々配置して電極材を作製した。
イオン交換膜7として、陰イオン交換膜(「VX−10」、FuMA−Tech社製、厚み10μm)を用いた。該イオン交換膜7の架橋密度(mol/cc)は下記の表1の通りである。
電極材5の電極50と電極材6の電極60との間にイオン交換膜7を配し、上述のようにして実施例1の電池1を作製した。
[実施例1]
炭素材料としてのカーボンブラック(「ケッチェンブラック(登録商標)EC600JD」、株式会社ライオン製)を2800℃で焼成したもの2.93gに、3価のバナジウム化合物としてのV2 (SO4 )3・nH2 O(自社製)を2.89g、4価のバナジウム化合物としてのVOSO4 ・nH2 O(新興化学株式会社製)を2.5g、バインダとしてのPTFE(「6−J」、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を0.08g配合して、上述の混合粉を得た。
次に、この混合粉2.0gに1M硫酸1.28mLを配合して混練し、上述の混練物を得た。該混練物をロールプレス等により圧延成形し、打ち抜いて電極を得た。電極は電極50用,電極60用に分けて作製した。電極50の厚みは180μm、電極60の厚みは130μmである。
銅箔からなる導電体にグラファイトシートを接着して集電体を得た。
該集電体に電極50,60を夫々配置して電極材を作製した。
イオン交換膜7として、陰イオン交換膜(「VX−10」、FuMA−Tech社製、厚み10μm)を用いた。該イオン交換膜7の架橋密度(mol/cc)は下記の表1の通りである。
電極材5の電極50と電極材6の電極60との間にイオン交換膜7を配し、上述のようにして実施例1の電池1を作製した。
表1に、実施例1及び後述する実施例2〜5のイオン交換膜7の架橋密度(mol/cc)、面積抵抗値[Ω・cm2 ]、ドメインサイズ[nm]を示す。そして、V5+イオンの透過性[mol/(cm2 ・week)]、耐久日数[日]、S元素[mg]、V元素[mg]、S/V[mol比率]、及びサイクル特性[クーロン効率(%)、容量維持率(%)]を求めた結果を併せて示す。
[実施例2]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、200℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の電池1を作製した。
[実施例3]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、300℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の電池1を作製した。
[実施例4]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、350℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の電池1を作製した。
[実施例5]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、400℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の電池1を作製した。
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、200℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の電池1を作製した。
[実施例3]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、300℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の電池1を作製した。
[実施例4]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、350℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の電池1を作製した。
[実施例5]
イオン交換膜7をN2 雰囲気下、400℃で2時間焼成して架橋密度を調整したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の電池1を作製した。
2.電池の物性の測定
各実施例の電池1の物性は以下のようにして測定した。
各実施例の電池1の物性は以下のようにして測定した。
(1)架橋密度
架橋密度は、個体粘弾性アナライザーを用いて測定した。
測定装置及び測定条件を以下に示す。
測定装置 :ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製
個体粘弾性アナライザー RSA−G2
温度 :300℃,325℃,350℃の各温度
測定モード:引っ張りモード
動的測定
昇温速度 :5℃/min
周波数 :10Hz
雰囲気 :窒素気流中
算出式は、以下の通りである。
算出式 n=E‘/3RT
n:架橋密度(mol/cc)
R:気体定数(8.31×107 dyn・cm/k・mol)
T:平坦領域貯蔵弾性率の絶対温度(K)
E‘:平坦領域貯蔵弾性率(dyn/cm2 )
架橋密度は、個体粘弾性アナライザーを用いて測定した。
測定装置及び測定条件を以下に示す。
測定装置 :ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製
個体粘弾性アナライザー RSA−G2
温度 :300℃,325℃,350℃の各温度
測定モード:引っ張りモード
動的測定
昇温速度 :5℃/min
周波数 :10Hz
雰囲気 :窒素気流中
算出式は、以下の通りである。
算出式 n=E‘/3RT
n:架橋密度(mol/cc)
R:気体定数(8.31×107 dyn・cm/k・mol)
T:平坦領域貯蔵弾性率の絶対温度(K)
E‘:平坦領域貯蔵弾性率(dyn/cm2 )
(2)面積抵抗値
イオン交換膜7の面積抵抗値は、AGCエンジニアリング株式会社のイオン交換膜抵抗測定器を用いて測定した。
抵抗の測定条件は、以下の通りである。
電解液:0.5M硫酸
周波数:1kHz
イオン交換膜7の面積抵抗値は、AGCエンジニアリング株式会社のイオン交換膜抵抗測定器を用いて測定した。
抵抗の測定条件は、以下の通りである。
電解液:0.5M硫酸
周波数:1kHz
(3)ドメインサイズ
ドメインサイズは、試料を必要面積にカットし、Siウエハ上にセッティングして小角X線散乱により測定した。
測定装置及び測定条件を以下に示す。
測定装置 :株式会社リガク製 ATX−G型
表面構造評価用 多機能X線回折装置
測定光学系 :Out of Plane
入射光学系(I):人工多層膜放物面ミラー (半地幅0.057deg.)
入射光学系(II):第1スリット(幅0.1mm、高さ10mm)
第2スリット(幅0.05mm、高さ10mm)
受光光学系(検出部):RSスリット(幅0.1mm、高さ10mm)
GSスリット(幅0.1mm、高さ10mm)
走査軸 :2θ/ω連続
サンプリングステップ:0.02deg./step
サンプリング速度 :0.1deg./min
オフセット角度 :Δω=−0.1deg.
ドメインサイズは、試料を必要面積にカットし、Siウエハ上にセッティングして小角X線散乱により測定した。
測定装置及び測定条件を以下に示す。
測定装置 :株式会社リガク製 ATX−G型
表面構造評価用 多機能X線回折装置
測定光学系 :Out of Plane
入射光学系(I):人工多層膜放物面ミラー (半地幅0.057deg.)
入射光学系(II):第1スリット(幅0.1mm、高さ10mm)
第2スリット(幅0.05mm、高さ10mm)
受光光学系(検出部):RSスリット(幅0.1mm、高さ10mm)
GSスリット(幅0.1mm、高さ10mm)
走査軸 :2θ/ω連続
サンプリングステップ:0.02deg./step
サンプリング速度 :0.1deg./min
オフセット角度 :Δω=−0.1deg.
3.電池の性能評価
各実施例の電池1の性能評価は、以下のようにして行った。
(1)V5+の透過性
V5+の透過性は、イオン交換膜7を縦置きに配し、一面が、5価のバナジウム化合物としての硫酸酸化バナジウム(V)((VO2 )2 SO4 ・nH2 O)の1Mの水溶液に、硫酸を遊離硫酸濃度が2Mとなるように配合した溶液に接触し、他面が2Mの硫酸溶液に接触するようにして、室温で1週間放置したときの、V5+の透過量をICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。表1中、実施例4及び5のV5+の透過性の数値は「0.0」にしているが、検出限界である。
各実施例の電池1の性能評価は、以下のようにして行った。
(1)V5+の透過性
V5+の透過性は、イオン交換膜7を縦置きに配し、一面が、5価のバナジウム化合物としての硫酸酸化バナジウム(V)((VO2 )2 SO4 ・nH2 O)の1Mの水溶液に、硫酸を遊離硫酸濃度が2Mとなるように配合した溶液に接触し、他面が2Mの硫酸溶液に接触するようにして、室温で1週間放置したときの、V5+の透過量をICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。表1中、実施例4及び5のV5+の透過性の数値は「0.0」にしているが、検出限界である。
(2)耐久日数
耐久日数は、0.5MのV5+/4M硫酸溶液にイオン交換膜7を浸漬させて60℃で放置したときの、形状を維持した日数である。
耐久日数は、0.5MのV5+/4M硫酸溶液にイオン交換膜7を浸漬させて60℃で放置したときの、形状を維持した日数である。
図3は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度とV5+の透過性との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸はV5+の透過性[μmol/cm2 ・week]である。
図4は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と耐久日数との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は耐久日数[日]である。
表1、図3及び図4より、細孔径が小さく、325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度が0.12mol/cc〜0.2mol/ccであるイオン交換膜7は、V5+の透過性が低下しており、かつ長期間の耐酸化性を有し、良好な耐久日数を有することが分かる。架橋密度が大きくなるのに従い、V5+の透過性が低下し、耐久日数が大きくなっている。即ち、架橋密度の下限値は0.15mol/ccが好ましく、0.16mol/ccがより好ましい。
図4は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と耐久日数との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は耐久日数[日]である。
表1、図3及び図4より、細孔径が小さく、325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度が0.12mol/cc〜0.2mol/ccであるイオン交換膜7は、V5+の透過性が低下しており、かつ長期間の耐酸化性を有し、良好な耐久日数を有することが分かる。架橋密度が大きくなるのに従い、V5+の透過性が低下し、耐久日数が大きくなっている。即ち、架橋密度の下限値は0.15mol/ccが好ましく、0.16mol/ccがより好ましい。
(3)サイクル試験におけるイオン移動の有無の確認(イオン選択性の評価)
イオン選択性及び後述するサイクル特性の評価のための充放電プログラムを下記の表2に示す。
イオン選択性及び後述するサイクル特性の評価のための充放電プログラムを下記の表2に示す。
表2に示すように、3.5mAで1.45VまでCC充電し、5秒間休止した後、35mAで0.8VまでCC放電を行い、5秒間休止することを1サイクルとし、300サイクルの充放電を実施した。
300サイクル後の電池1を解体し、電極(正極)50及び電極(負極)60に含まれるS元素及びV元素の重量をICPにより夫々測定した。
S元素のV元素に対するmol比率(S/V)を求めた。
S元素のV元素に対するmol比率(S/V)を求めた。
図5は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と正極S元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は正極S元素量[mg]である。
図6は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と負極S元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は負極S元素量[mg]である。
図7は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と正極V元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は正極V元素量[mg]である。
図8は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と負極V元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は負極V元素量[mg]である。
図9は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と正極S/V(mol比率)との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は正極S/V[mol比率]である。
図10は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と負極S/V(mol比率)との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は負極S/V[mol比率]である。
図6は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と負極S元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は負極S元素量[mg]である。
図7は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と正極V元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は正極V元素量[mg]である。
図8は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と負極V元素量との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は負極V元素量[mg]である。
図9は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と正極S/V(mol比率)との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は正極S/V[mol比率]である。
図10は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と負極S/V(mol比率)との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は負極S/V[mol比率]である。
表1、及び図5〜10より、架橋密度が0.12mol/cc〜0.2mol/ccであるイオン交換膜7を用いた実施例の電池1は、上述したようにV5+の透過性が低いので、正極から負極へのV及びSの移動が少ないことが分かる。架橋密度が高い程、正極から負極へのV及びSの移動が抑制されており、架橋密度の下限値は0.15mol/ccが好ましく、0.16mol/ccがより好ましい。
(4)サイクル特性
表1の容量維持率は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合の、(300サイクル目の放電電流容量)を(50サイクル目の放電電流容量)で除することにより求めた。
表1のクーロン効率は、300サイクル目のクーロン効率である。
表1の容量維持率は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合の、(300サイクル目の放電電流容量)を(50サイクル目の放電電流容量)で除することにより求めた。
表1のクーロン効率は、300サイクル目のクーロン効率である。
図11は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合のサイクル数と放電容量との関係を示すグラフであり、横軸はサイクル数、縦軸は放電容量[mAh]である。
図12は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合のサイクル数と容量維持率との関係を示すグラフであり、横軸はサイクル数、縦軸は容量維持率[%]である。ここで、各サイクル数における容量維持率は、各サイクル数における放電電流容量を50サイクル目の放電電流容量で除することにより求めている。
図13は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合のサイクル数とクーロン効率との関係を示すグラフであり、横軸はサイクル数、縦軸はクーロン効率[%]である。
図12は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合のサイクル数と容量維持率との関係を示すグラフであり、横軸はサイクル数、縦軸は容量維持率[%]である。ここで、各サイクル数における容量維持率は、各サイクル数における放電電流容量を50サイクル目の放電電流容量で除することにより求めている。
図13は、上述の充放電プログラムにより充放電を繰り返した場合のサイクル数とクーロン効率との関係を示すグラフであり、横軸はサイクル数、縦軸はクーロン効率[%]である。
図14は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度と容量維持率との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸は容量維持率[%]である。
図15は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度とクーロン効率との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸はクーロン効率[%]である。
表1、及び図11〜15より、架橋密度が0.12mol/cc〜0.2mol/ccであるイオン交換膜7を用いた実施例の電池1は、充放電を繰り返した場合に、良好な放電容量、容量維持率及びクーロン効率を有することが分かる。容量維持率及びクーロン効率は、架橋密度が高い程、良好である。即ち、架橋密度の下限値は0.15mol/ccが好ましく、0.16mol/ccがより好ましい。
図15は、325℃における貯蔵弾性率から求めたイオン交換膜7の架橋密度とクーロン効率との関係を示すグラフであり、横軸は架橋密度[mol/cc]、縦軸はクーロン効率[%]である。
表1、及び図11〜15より、架橋密度が0.12mol/cc〜0.2mol/ccであるイオン交換膜7を用いた実施例の電池1は、充放電を繰り返した場合に、良好な放電容量、容量維持率及びクーロン効率を有することが分かる。容量維持率及びクーロン効率は、架橋密度が高い程、良好である。即ち、架橋密度の下限値は0.15mol/ccが好ましく、0.16mol/ccがより好ましい。
(5)厚み依存性試験
イオン交換膜7の厚みを変えた場合の、イオン交換膜の厚みと、充電及び放電の電流容量維持率との関係を調べた。
評価に用いたイオン交換膜7は、下記の4種である。
「VX−05」(FuMA−Tech社製):厚み5μm
「VX−10」(FuMA−Tech社製):厚み10μm
「VX−20」(FuMA−Tech社製):厚み20μm
「VX−40」(FuMA−Tech社製):厚み40μm
全てのイオン交換膜7は、N2 雰囲気下、400℃で2時間焼成し、325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度を0.175mol/ccに調整している。
イオン交換膜7の厚みを変えた場合の、イオン交換膜の厚みと、充電及び放電の電流容量維持率との関係を調べた。
評価に用いたイオン交換膜7は、下記の4種である。
「VX−05」(FuMA−Tech社製):厚み5μm
「VX−10」(FuMA−Tech社製):厚み10μm
「VX−20」(FuMA−Tech社製):厚み20μm
「VX−40」(FuMA−Tech社製):厚み40μm
全てのイオン交換膜7は、N2 雰囲気下、400℃で2時間焼成し、325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度を0.175mol/ccに調整している。
サイクル特性の評価のための充放電プログラムを下記の表3に示す。
表3のモード1においては、6.25mAで1.47VまでCC充電した後、5秒間休止し、6.25mAで1.16VまでCC放電を行うことを1サイクルとし、20サイクルの充放電を実施した。モード2においては、6.25mAで1.47VまでCC充電した後、18.75mAで1.16VまでCC放電を行う1サイクルの充放電を実施した。以下、同様にして充放電を行った。
図16は、イオン交換膜7の厚みを変えた場合の、イオン交換膜の厚みと、充電及び放電の電流容量維持率との関係を示すグラフである。
放電電流容量維持率は、表3のモード1〜7を実施し、1mA/cm2 における放電電流容量に対する、10mA/cm2 における放電電流容量の比率を求めたものである。具体的には、表3におけるモード1の20サイクル目の結果及びモード4の結果より算出した。なお、電極の面積は6.25cm2 である。
充電電流容量維持率は、表3のモード8〜14を実施し、1mA/cm2 における充電電流容量に対する、10mA/cm2 における充電電流容量の比率を求めたものである。具体的には、表3におけるモード8の2サイクル目の結果及びモード11の結果より算出した。
放電電流容量維持率は、表3のモード1〜7を実施し、1mA/cm2 における放電電流容量に対する、10mA/cm2 における放電電流容量の比率を求めたものである。具体的には、表3におけるモード1の20サイクル目の結果及びモード4の結果より算出した。なお、電極の面積は6.25cm2 である。
充電電流容量維持率は、表3のモード8〜14を実施し、1mA/cm2 における充電電流容量に対する、10mA/cm2 における充電電流容量の比率を求めたものである。具体的には、表3におけるモード8の2サイクル目の結果及びモード11の結果より算出した。
図16より、イオン交換膜7の厚みが3μm以上45μm以下である場合、電池は良好な放電電流容量維持率及び充電電流容量維持率を有することが分かる。
厚みの上限値は40μmであるのが好ましく、20μmであるのがより好ましく、10μmであるのがさらに好ましい。
厚みの上限値は40μmであるのが好ましく、20μmであるのがより好ましく、10μmであるのがさらに好ましい。
以上より、本実施の形態に係る電池1は、イオン交換膜7のイオン選択性が良好であり、かつ耐酸化性を有し、耐久性が良好であり、正極から負極へのイオンの移動が抑制され、良好なサイクル特性を有することが確認された。
以上のように、本発明に係るバナジウムレドックス二次電池は、バナジウムイオン、又はバナジウムを含むイオンを含有する活物質を含む正極及び負極と、前記正極及び前記負極を区画する陰イオン交換膜とを備えるバナジウムレドックス二次電池において、前記陰イオン交換膜の325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度は、0.12mol/cc以上0.2mol/cc以下であり、小角X線散乱により測定したドメインサイズが1nm以上25nm以下であることを特徴とする。
本発明においては、陰イオン交換膜のイオン選択性及び耐久性が良好であり、該イオン交換膜を備えるバナジウムレドックス二次電池は、充放電を繰り返した場合に正極から負極へのイオンの移動が抑制され、クーロン効率及び容量維持率が良好であり、サイクル特性が良好である。
本発明に係るバナジウムレドックス二次電池は、上述のバナジウムレドックス二次電池において、前記正極はV5+イオンを含み、前記陰イオン交換膜のV5+の透過性は、55μmol/(cm2 ・week)以下であることを特徴とする。
本発明においては、V5+イオンが正極から負極へ移動して容量が低下することが抑制されている。
本発明に係るバナジウムレドックス二次電池は、上述のバナジウムレドックス二次電池において、前記陰イオン交換膜の面積抵抗値は、0.75Ω・cm2 以上3.2Ω・cm2 以下であることを特徴とする。
本発明においては、陰イオン交換膜が良好なイオン選択性を有し、かつプロトンを良好に通過させることができる。
本発明に係るバナジウムレドックス二次電池は、上述のバナジウムレドックス二次電池において、前記陰イオン交換膜の厚みは、3μm以上45μm以下であることを特徴とする。
本発明においては、充電電流容量維持率及び放電電流容量維持率が良好である。
本発明に係るバナジウムレドックス二次電池は、上述のバナジウムレドックス二次電池において、前記陰イオン交換膜は、炭化水素系のイオン交換膜であることを特徴とする。
本発明においては、イオン選択性がより良好である。
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、バナジウムレドックス二次電池は、一対の電極材を備える場合に限定されず、複数対の電極材を備えることにしてもよい。
また、シーラント54、64を備える場合に限定されない。
例えば、バナジウムレドックス二次電池は、一対の電極材を備える場合に限定されず、複数対の電極材を備えることにしてもよい。
また、シーラント54、64を備える場合に限定されない。
1 バナジウムレドックス二次電池
2 外装袋
3 正極端子
4 負極端子
5、6 電極材
50 電極(正極)
60 電極(負極)
51、61 導電体
52、62 保護層
54、64 シーラント
7 イオン交換膜
2 外装袋
3 正極端子
4 負極端子
5、6 電極材
50 電極(正極)
60 電極(負極)
51、61 導電体
52、62 保護層
54、64 シーラント
7 イオン交換膜
Claims (5)
- バナジウムイオン、又はバナジウムを含むイオンを含有する活物質を含む正極及び負極と、前記正極及び前記負極を区画する陰イオン交換膜とを備えるバナジウムレドックス二次電池において、
前記陰イオン交換膜の325℃における貯蔵弾性率から求めた架橋密度は、0.12mol/cc以上0.2mol/cc以下であり、
小角X線散乱により測定したドメインサイズが1nm以上25nm以下であることを特徴とするバナジウムレドックス二次電池。 - 前記正極はV5+イオンを含み、
前記陰イオン交換膜のV5+の透過性は、55μmol/(cm2 ・week)以下であることを特徴とする請求項1に記載のバナジウムレドックス二次電池。 - 前記陰イオン交換膜の面積抵抗値は、0.75Ω・cm2 以上3.2Ω・cm2 以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバナジウムレドックス二次電池。
- 前記陰イオン交換膜の厚みは、3μm以上45μm以下であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のバナジウムレドックス二次電池。
- 前記陰イオン交換膜は、炭化水素系のイオン交換膜であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のバナジウムレドックス二次電池。
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