JP2017182043A - 光選択透過フィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】可視光領域の光線透過率を高く維持しつつ、近赤外線領域の光線を広範囲にわたってカットすることができる吸収層を備えた光選択透過フィルターを提供する。【解決手段】近赤外線吸収色素を含有する吸収層を有する光選択透過フィルターであって、前記吸収層が、(A)波長680nm〜800nmの範囲において、透過率が連続して3%以下となる波長帯の幅が35nm〜120nm、(B)前記波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50が630nm〜650nmの範囲にある、(C)波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率が85%以上、との特性を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、光選択透過フィルターに関し、特に近赤外領域の光線をカットすることができる光選択透過フィルターに関する。
携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、ビデオカメラ、表示素子(LED等)等の撮像装置には、被写体の光を電気信号等に変換して出力する撮像素子が通常使用されている。このような撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサ)およびレンズを備えるとともに、高性能化のため、画像処理等の妨げとなる光学ノイズ(例えばゴーストやフレア)を除去するための近赤外線カットフィルターを備える場合がある。このような近赤外線カットフィルターには通常、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜が設けられており、誘電体多層膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層の各層の厚みを調整することにより、所望の近赤外領域の光線の入射をカットすることができる。
ところで、誘電体多層膜は入射角によってカット波長域あるいは透過波長域が変化し、入射角が垂直方向から斜め方向に変化すると、カット波長域あるいは透過波長域が短波長側にシフトする。そのため誘電体多層膜では、斜め方向の入射光に対しては、近赤外領域の光線を十分にカットできなかったり、あるいは可視光領域の光線もカットして色味が変化する事態が生じうる。そこで、光学特性の入射角依存性を低減するために、近赤外線カットフィルターに近赤外線吸収色素を含有する吸収層を設けることがなされている。例えば、特許文献1,2には、700nm前後の波長域に極大吸収波長を有するスクアリリウム化合物を含有する吸収層を備えた近赤外線カットフィルター(光選択透過フィルター)が開示されている。
特開2014−148567号公報 特開2012−008532号公報
上記のように、従来、近赤外線吸収色素を含有する吸収層を備えた光選択透過フィルターが様々検討されているが、吸収層の高機能化が求められている。具体的には、吸収層がより広範囲の近赤外領域の光線を選択的に吸収できるようにして、光学特性の角度依存性を低減できる光選択透過フィルターが求められている。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可視光領域の光線透過率を高く維持しつつ、近赤外線領域の光線を広範囲にわたってカットすることができる吸収層を備えた光選択透過フィルターを提供することにある。
前記課題を解決することができた本発明の光選択透過フィルターとは、近赤外線吸収色素を含有し、次の(A)〜(C)を満たす吸収層を有するところに特徴を有する。
(A)波長680nm〜800nmの範囲において、透過率が連続して3%以下となる波長帯の幅が35nm〜120nm
(B)前記波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50が630nm〜650nm
(C)波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率が85%以上
本発明の光選択透過フィルターは、上記の(A)〜(C)を満たす吸収層を有するため、可視光領域の光線透過率を高く維持しつつ、近赤外領域の光線を広範囲にわたって効果的にカットすることができる。そのため、吸収層上に誘電体多層膜を設けた場合の光学特性の入射角依存性を大きく低減することができる。
近赤外線吸収色素としては、可視光領域の光線透過率を全体的に高めて、色味の変化を抑えることが容易な点から、下記式(1)で表されるスクアリリウム化合物または下記式(2)で表されるクロコニウム化合物を含有することが好ましい。
Figure 2017182043
[式(1)および式(2)中、R1〜R4はそれぞれ独立して、下記式(3)で示される構造単位を表す。]
Figure 2017182043
[式(3)中、環Aは、4〜9員の不飽和炭化水素環を表し;環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し;Xは水素原子、有機基または極性官能基を表し;Yは有機基または極性官能基を表し;*は式(1)中の4員環または式(2)中の5員環との結合部位を表し;nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。]
本発明はまた、吸収層上に誘電体多層膜を有する光選択透過フィルターも提供する。当該光選択透過フィルターは、近赤外領域の光線を効果的にカットして、画像処理等における光学ノイズを低減する観点から、波長800nm〜1000nmの範囲の平均透過率が1%以下であることが好ましい。
本発明はまた、本発明の光選択透過フィルターを有する撮像素子も提供する。
本発明の光選択透過フィルターは、可視光領域の光線透過率を高く維持しつつ、近赤外領域の光線を広範囲にわたって効果的にカットすることができるため、吸収層上に誘電体多層膜を設けた場合に、光学特性の入射角依存性を大きく低減することができる。
近赤外線吸収色素としてオキソカーボン系化合物を含有する吸収層を基板上に形成したフィルターの透過スペクトルを表す。
本発明の光選択透過フィルターは、近赤外線吸収色素を含有する吸収層を有し、前記吸収層が、(A)波長680nm〜800nmの範囲において、透過率が連続して3%以下となる波長帯の幅が35nm〜120nm、(B)前記波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50が630nm〜650nmの範囲にある、(C)波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率が85%以上、との特性を満たすものである。
本発明の光選択透過フィルターは、吸収層が、波長680nm〜800nmの範囲において、透過率が連続して3%以下となる波長帯(以下、「吸収波長帯」と称する場合がある)の幅が35nm〜120nmとなるように構成されているため、近赤外領域の光線を効果的にカットすることができ、撮像素子において画像処理の妨げとなる光学ノイズを好適に除去することができる。特に、吸収波長帯の幅が35nm以上と、広い波長範囲にわたって近赤外領域の光線をカットすることができるため、吸収層上に誘電体多層膜を設けた場合の光学特性の入射角依存性を大きく低減することができる。例えば、従来よりも大きい入射角に対しても、所望の波長範囲の近赤外線をカットしたり、あるいは透過光の色味の変化を抑えることができる。吸収波長帯の幅は、光学特性の入射角依存性をより低減する点から、40nm以上が好ましく、45nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。一方、光学ノイズの除去という点からは、必要以上に広い波長範囲の光線をカットすることは求められないことから、吸収波長帯の幅は120nm以下であれば十分であり、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましい。また、このように吸収波長帯の幅の上限を定めることにより、可視光領域の光線透過率を高めることが容易になる。
吸収波長帯の幅は、波長680nm〜800nmの範囲で測定ピッチ1nmごとに吸収層の透過率を測定することにより求める。測定ピッチ(1nm)未満における波長の透過率の値は、1nmピッチの透過率の測定値から線形補間することにより算出する。上記以外の波長範囲の透過率も、測定ピッチ1nmごとに測定する。
吸収波長帯の短波長側の境界、すなわち吸収波長帯において透過率が3%以下となる最も短い波長は710nm以下であることが好ましく、705nm以下がより好ましく、700nm以下がさらに好ましい。吸収波長帯の短波長側の境界がこのような波長域に形成されていれば、入射角によらず、画像処理における光学ノイズを好適に除去しやすくなる。吸収波長帯の短波長側の境界の下限値としては、可視光領域の光線透過率を高める点から、680nm以上が好ましい。一方、吸収波長帯の長波長側の境界、すなわち吸収波長帯において透過率が3%以下となる最も長い波長は738nm以上であることが好ましく、740nm以上がより好ましく、743nm以上がさらに好ましい。吸収波長帯の長波長側の境界がこのような波長域に形成されていれば、誘電体多層膜によりカットする波長域を可視光領域からある程度離れて設定することができ、より大きい入射角であっても色味の変化を抑えることができる。吸収波長帯の長波長側の境界の上限値は800nm以下であれば特に限定されないが、780nm以下であってもよく、760nm以下でもよい。
吸収層は、吸収波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50が630nm〜650nmの範囲にあるように構成されている。吸収層の波長λ50が630nm〜650nmの範囲に存在すれば、近赤外領域の光線を選択的にカットしつつ、赤色領域の可視光も高い透過率で透過させることができ、透過光の色味を実際のものに近付けることができる。なお、波長λ50およびその前後では、吸収層は吸収極大ピークを有しないことが好ましく、例えば、波長600nm〜680nmの範囲において、吸収層の透過率(透過スペクトル)は単調減少に推移することが好ましい。
吸収層は、波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率が85%以上となるように構成されている。そのため、吸収層は可視光領域の光線を紫色領域から赤色領域にかけての広い波長範囲で高い可視光透過率を示すものとなる。
本発明の光選択透過フィルターは、吸収層が上記(A)〜(C)の特性を満たすため、可視光領域の光線透過率を高く維持しつつ、近赤外領域の光線を広範囲にわたって効果的にカットすることができ、吸収層上に誘電体多層膜を設けた場合の光学特性の入射角依存性を大きく低減することができる。
吸収層に含まれる近赤外線吸収色素は、吸収層に上記(A)〜(C)の特性を付与できるものであれば、有機色素であっても、無機色素であっても、有機無機複合色素(例えば、金属原子またはイオンが配位した有機化合物)であっても、特に限定されない。吸収層には、近赤外線吸収色素が1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。なお、所望の光学特性が発揮されるように分子設計することが容易な点から、近赤外線吸収色素としては有機色素または有機無機複合色素を用いることが好ましく、中でも、近赤外領域の光線を効果的に吸収し、可視光透過率を高めることが容易な点から、近赤外線吸収色素としてオキソカーボン系化合物を用いることが好ましい。
オキソカーボン系化合物は、炭素酸化物を基本骨格として含む化合物であれば特に限定されないが、近赤外領域に吸収波長を有し、可視光領域の光線透過率が比較的高い化合物として広く知られているスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物を用いることが好ましい。吸収層に含まれるオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム化合物であってもよいし、クロコニウム化合物であってもよいし、両者が含まれていてもよい。吸収層に含まれるオキソカーボン系化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
スクアリリウム化合物としては、下記式(1)で表されるスクアリリウム骨格を有する化合物が具体的に示され、クロコニウム化合物としては、下記式(2)で表されるクロコニウム骨格を有する化合物が具体的に示される。下記式(1)および式(2)において、R1〜R4はそれぞれ独立して有機基を表す。
Figure 2017182043
オキソカーボン系化合物としては、上記式(1)および式(2)において、R1〜R4がそれぞれ独立して、下記式(3)で示される構造単位を有する化合物を用いることが好ましい。
Figure 2017182043
式(3)中、環Aは、4〜9員の不飽和炭化水素環を表し、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、Xは、水素原子、有機基または極性官能基を表し、Yは、有機基または極性官能基を表し、*は式(1)中の4員環または式(2)中の5員環との結合部位を表す。nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。
このようなオキソカーボン系化合物を用いれば、可視光領域の光線の平均透過率を高めることが容易になり、また近赤外領域の吸収波形のショルダーピーク(特に吸収波長帯の短波長側のショルダーピーク)を大幅に低減して、光学特性を改善できる。そのため、近赤外領域の吸収性能を高めるために吸収層中の近赤外線吸収色素濃度を高めても、可視光領域の光線透過率を高く維持することが容易になり、また可視光領域の色味の変化も抑えることもできる。さらに、環Bのπ共役系を適宜設定することにより、オキソカーボン系化合物の吸収波長を容易に調整できる。
なお、スクアリリウム化合物とクロコニウム化合物は、それぞれ共鳴関係にある化合物が存在している場合があり、式(1)で表されるスクアリリウム化合物と式(2)で表されるクロコニウム化合物には、これらと共鳴関係にある化合物も含まれる。例えば、式(3)の構造単位を有する式(1)のスクアリリウム化合物には、共鳴関係にある化合物として下記式(1a),(1b)で表される化合物等が挙げられ、これら共鳴関係にある化合物も含まれる。式(3)の構造単位を有する式(2)のクロコニウム化合物には、共鳴関係にある化合物として下記式(2a)〜(2c)で表される化合物等が挙げられ、これら共鳴関係にある化合物も含まれる。
Figure 2017182043
Figure 2017182043
式(3)中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環を表す。環Aは、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に結合する炭素原子とピロール環のα位の炭素原子との間に二重結合を有するとともに、ピロール環のα位の炭素とβ位の炭素を含んで構成される不飽和炭化水素環である。環Aは、前記二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有していてもよく、好ましくは不飽和結合(二重結合)を1個のみ有する。環Aは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。
オキソカーボン系化合物は、環Aを有することにより、分子どうしの会合が促進され、その結果、近赤外領域の吸収波形の短波長側のショルダーピークを大幅に低減することが可能となり、光学特性を改善することができる。また、オキソカーボン系化合物が環Aを有していれば、分子歪みによってπ−π*遷移のバンドギャップが狭くなり、かつ環Bによってπ電子系が広範囲に広がることができるため、吸収波長の長波長化を達成することができる。
環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
環Aは置換基Yを有していてもよい。置換基Yとしては、有機基または極性官能基が挙げられる。置換基Yの数nは0〜6であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)である。nが2以上である場合、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。nは、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数である。nが1以上である場合、環Aを構成する炭素原子に結合する水素原子はYで置換されることになる。
Yで表される有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基(アリール基と縮環したものを含む)、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2R)、カルボキシ基(カルボン酸基)、ハロゲノアルキル基、シアノ基等が挙げられる(アミド基とスルホンアミド基の置換基Rとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられる)。また極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。Yで表される置換基としては、中でも、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、アリール基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、アルキル基または水酸基がより好ましく、これにより、オキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。具体的には、Yで表される置換基として、メチル基、エチル基、水酸基等が好ましく挙げられる。
置換基Yの数nが2以上であり、Yが複数存在する場合には、各Yは同じであってもよいし異なっていてもよい。またnが2以上である場合、複数のYは各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個のYが1個の炭素原子に結合していてもよい。
環Aの一部を構成するピロール環のβ位の炭素原子には、水素原子、有機基または極性官能基が結合している(式(3)におけるX)。式(3)中、Xの有機基と極性官能基としては、置換基Yで例示した有機基や極性官能基が挙げられる。中でも、式(3)のXとしては、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましく、これにより、オキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。Xがアルキル基またはアリール基である場合、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
式(3)中、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む置換基を有していてもよい縮合環を表す。芳香族炭化水素環は、炭素原子と水素原子から構成され、芳香族性を有する環構造であり、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。芳香族複素環は、N(窒素原子)、O(酸素原子)およびS(硫黄原子)から選ばれる1種以上の原子を環構造に含み、芳香族性を有するものであり、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。芳香族複素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。これらの環構造を含む縮合環は、芳香族炭化水素環と芳香族複素環とが縮環した構造を有するものであり、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。環Bのπ共役系を適宜設定することにより、オキソカーボン系化合物の吸収波長を容易に調整することができる。
環Bは置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、置換基Yで例示した有機基や極性官能基が挙げられる。環Bに結合する置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜2のアルキルチオ基)、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基、インドリニル基等の電子供与性基や;ハロゲノ基(好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基(カルボン酸基)、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホ基(スルホン酸基)、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましい。これらの中でも、電子吸引性基がより好ましく、ハロゲノ基が特に好ましい。なお、環Bは置換基を有さなくてもよい。環Bが置換基を有する場合、その数は1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、さらに好ましくは1である。
環Bは、式(4):−CH=CH−Ra1(式(4)中、Ra1は、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロアリール基を表す)で表されるエチレン含有基や、式(5):−CH=N−Ra2(式(5)中、Ra2は、置換基を有していてもよいアミノ基を表す)で表されるイミン含有基を有することも好ましい。
式(4)中、Ra1の脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは不飽和である。このような脂肪族炭化水素基としては、−(CH=CH)k−(kは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である)で表される繰り返し単位を有する基が好ましく、例えばビニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは1〜10のものが挙げられる。式(4)中、Ra1のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、ヘテロアリール基としては、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。
式(5)中、Ra2のアミノ基は、置換または無置換のいずれであってもよい。置換基を有するアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基等が挙げられる。Ra2のアミノ基に結合するアルキル基やアリール基としては、置換基Xで例示したアルキル基やアリール基が挙げられる。
式(3)で示される構造単位を有するオキソカーボン系化合物は、例えば、下記式(6)で表されるピロール環含有化合物を、スクアリン酸またはクロコン酸と反応させることにより製造することができる。なお、下記式(6)中、環A、環B、X、Yおよびnは、上記の式(3)における意味と同じである。
Figure 2017182043
原料として用いるピロール環含有化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成でき、例えば、ベンジルヒドラジン塩酸塩とシクロアルカノンとの反応により合成できる。このとき、2位に置換基を有するシクロアルカノンを用いることにより置換基Xを導入することができ、また2位以外の位置に置換基を有するシクロアルカノンを用いれば、環Aに置換基Yを導入することができる。環Bの構造は、ベンジルヒドラジン塩酸塩の代わりに他の芳香族ヒドラジン塩酸塩を使用することにより、変えることができる。ピロール環含有化合物はまた、例えば次の論文に記載の合成法によっても合成することができる:Sajjadifar et al.,“New 3H-Indole Synthesis by Fischer's Method. Part I”, Molecules, Vol.15, p.2491-2498 (2010)。
スクアリリウム化合物は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、次の論文に記載の合成法によってスクアリリウム化合物を合成することができる:Serguei Miltsov et al.,“New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines”, Tetrahedron Letters, Vol.40, Issue 21, p.4067-4068 (1999)。
クロコニウム化合物の合成方法は特に限定されないが、ピロール環含有化合物とクロコン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法でクロコニウム化合物を合成することができる。
上記の反応により得られたオキソカーボン系化合物は、必要に応じて、ろ過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製してもよい。
吸収層は、上記式(3)で示される構造単位以外の構造を有するオキソカーボン系化合物を含んでいてもよい。そのようなオキソカーボン系化合物としては、上記式(1)において、R1とR2の少なくとも一方が、スクアリリウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または芳香族複素環であるスクアリリウム化合物や、上記式(2)において、R3とR4の少なくとも一方が、クロコニウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または芳香族複素環であるクロコニウム化合物が好ましい(ただし、上記式(3)で示される構造単位を有するオキソカーボン系化合物は除く)。このようなスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物を用いることにより、π共役系がスクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格から芳香族炭化水素環または芳香族複素環にかけて広がって、近赤外領域の光線を効果的にカットしやすくなる。より好ましくは、上記式(1)において、R1とR2の両方が、スクアリリウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または芳香族複素環であるスクアリリウム化合物、および、上記式(2)において、R3とR4の両方が、クロコニウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または芳香族複素環クロコニウム化合物である。置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環や置換基を有していてもよい芳香族複素環としては、上記の環Bで例示した環構造およびその置換基が示される。また、上記式(1)においてR1とR2はスクアリリウム骨格以外の部分で互いに繋がっていてもよく、上記式(2)においてR3とR4はクロコニウム骨格以外の部分で互いに繋がっていてもよい。
オキソカーボン系化合物としては、上記式(3)で示される構造単位を有するオキソカーボン系化合物を主成分として含有することが好ましく、これにより、上記(A)〜(C)の特性を満たす吸収層を形成することが容易になる。具体的には、オキソカーボン系化合物の総量100質量%に対して、R1〜R4として上記式(3)で示される構造単位を有するオキソカーボン系化合物の含有率が50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
吸収層は、オキソカーボン系化合物以外の色素が含まれていてもよい。吸収層中に含まれていてもよい色素としては、例えば、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。これら他の色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なお、吸収層が上記(A)〜(C)の特性を満たすようにする点からは、他の色素の含有量は多くない方が好ましく、例えば他の色素の含有量は、オキソカーボン系化合物と他の色素の合計100質量%に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
吸収層は近赤外線吸収色素のみから構成されていてもよく、樹脂等のマトリックスに近赤外線吸収色素が配合されて形成されてもよい。中でも、吸収層の透過スペクトルが上記(A)〜(C)を満たすように調整することが容易な点から、吸収層は後者のように構成されることが好ましく、具体的には吸収層は近赤外線吸収色素と樹脂を含有することが好ましい。
吸収層中のオキソカーボン系化合物の含有量は、所望の光学性能に応じて適宜調整すればよいが、吸収層が上記(A)〜(C)の特性を満足するように形成することが容易な点から、吸収層100質量%中、オキソカーボン系化合物の含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、また30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。このように吸収層中のオキソカーボン系化合物の含有量を調整することにより、吸収層が近赤外領域に吸収波長帯を十分広い範囲で有しやすくなるとともに、可視光領域の光線透過率を高めやすくなる。なお後述するように、吸収層を透明基板上に形成するような場合は、樹脂層を薄く形成することができるため、吸収層中のオキソカーボン系化合物の含有量をある程度高くすることが好ましく、例えば、吸収層中のオキソカーボン系化合物の含有量を3質量%以上とすることが好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。
吸収層に含まれる樹脂は、公知の樹脂を用いることができる。吸収層を構成する樹脂としては、透明性が高い樹脂であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、シクロオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアリレート樹脂等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。これらの中でも、透明性や耐熱性に優れる点から、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素化芳香族ポリマーが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。なお、カルボニル基含有環構造には、イミド基などのカルボニル基誘導体基を含有する構造も含む。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004−168882号公報、特開2008−179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007−31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリイミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
ポリアリレート樹脂は、2価フェノール化合物と2塩基酸(例えば、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸)とを重縮合して得られる重合体であり、主鎖の繰り返し単位に芳香族環とエステル結合とを含む繰り返し単位を有する。ポリアリレート樹脂は、例えば、クラレ社製のベクトラン(登録商標)、ユニチカ社製のUポリマー(登録商標)やユニファイナー(登録商標)等を用いることができる。
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物(プレポリマー)を硬化剤や硬化触媒の存在下で架橋することで硬化可能な樹脂である。エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オグソール(登録商標)PG−100)、三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)828EL)や水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)YX8000)、ダイセル社製の脂環式液状エポキシ化合物(セロキサイド(登録商標)2021P)等を用いることができる。
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(−SO2−)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P−1700等を用いることができる。
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008−181121号公報に記載されたものを用いることができる。
吸収層を構成する樹脂はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより、吸収層の耐熱性を高めることができる。樹脂のガラス転移温度は、例えば、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。前記樹脂のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、吸収層を形成する際の成形加工性を高める点から、例えば380℃以下が好ましい。
吸収層は、例えば、350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物(紫外線吸収剤)を含んでいてもよい。これらの化合物の存在により、350nm〜400nm波長域の光に起因する樹脂の劣化を抑制することができる。350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズを用いることができる。
吸収層は、任意の有機微粒子または無機微粒子を含有してもよい。有機微粒子または無機微粒子は、例えば、吸収層に、屈折率や導電性等に関する機能を付与するために用いられる。吸収層の高屈折率化や導電性付与に有用な微粒子の具体例として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。一方、吸収層の低屈折率化に有用な微粒子の具体例として、フッ化マグネシウム、シリカ、中空シリカ等が挙げられる。防眩性付与に有用な微粒子の具体例としては、上記の微粒子に加え、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン等の無機微粒子:シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びこれらの共重合樹脂等の有機微粒子が挙げられる。吸収層は、これらの微粒子を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
吸収層には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、分散剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。また、吸収層に含まれる樹脂を硬化させるための硬化触媒や硬化速度調整剤が含まれていてもよい。
樹脂を含有する吸収層は、少なくとも樹脂成分と赤外線吸収色素とを含有する樹脂組成物から形成することができる。樹脂組成物は、射出成形等の成形に用いることのできる熱可塑性樹脂組成物であってもよく、スピンコート法や溶媒キャスト法等により塗工できるよう塗料化された樹脂組成物であってもよい。樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。
樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、当該樹脂組成物を、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形等をすることにより吸収層を形成することができる。この方法では、樹脂成分として熱可塑性樹脂を用い、当該熱可塑性樹脂にオキソカーボン系化合物を配合し、加熱成形することにより、吸収層を形成することができる。例えば、ベース樹脂の粉体またはペレットにオキソカーボン系化合物を添加し、150℃〜350℃程度に加熱し、溶解させた後、成形するとよい。また樹脂を混練する際に、紫外線吸収剤、可塑剤等、通常の樹脂成形に用いる添加剤を加えてもよい。
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、赤外線吸収色素を含む液状またはペースト状の樹脂組成物を、透明基板(例えば、樹脂板、フィルム、ガラス板等)上に塗工することで、透明基板上に吸収層を形成することができる。透明基板は、可視光線透過性を有するものであれば特に限定なく用いることができる。塗料化された樹脂組成物としては、例えば赤外線吸収色素を、樹脂を含む溶媒(溶剤)に溶解させたものや、赤外線吸収色素を数μm以下に微粒化して樹脂のエマルジョン中に分散したもの等が挙げられる。なお、厚みの薄い吸収層を形成することが容易な点から、樹脂組成物は溶媒を含むものが好ましい。
溶媒としては、有機溶剤を用いることが好ましく、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。溶媒の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量をこのような範囲内に調整することにより、赤外線吸収色素濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
塗料化された樹脂組成物の塗工方法としては、スピンコート法、溶媒キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等が好適に用いられる。これらの中でも、スピンコート法が、薄くて均一な厚みの吸収層を形成しやすい点で、好ましく用いられる。スピンコート法では、例えば、塗料化された樹脂組成物を透明基板上に載せた後、室温(25℃)付近で、回転数500rpm〜4000rpmで10秒〜60秒間程度回転させることにより、透明基板上に薄くて均一な厚みの塗膜を形成することができる。その後、例えば150℃〜350℃で加熱することにより、吸収層を形成することができる。
吸収層の厚さは特に限定されず、光選択透過フィルターの所望の光学性能や強度に応じて適宜調整すればよい。なお、薄くて高強度の光選択透過フィルターを得ることが容易な点から、吸収層は透明基板上に設けることが好ましく、このように光選択透過フィルターを形成することにより吸収層も薄く形成することができる。この場合の吸収層の厚さは、例えば3μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、これにより厚さの薄い光選択透過フィルターとすることができる。本発明の光選択透過フィルターは、このように厚さの薄い吸収層であっても、近赤外領域の光線を効果的にカットすることができる。吸収層の厚さの下限としては、例えば0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。なお、吸収層は3μmよりも厚く形成することも当然可能である。
透明基板としては、ガラス基板を用いることが好ましい。吸収層をガラス基板上に設けることにより、耐熱性に優れた光選択透過フィルターを得ることができる。このようにして得られた光選択透過フィルターは、例えば、半田リフローにより、光選択透過フィルターを電子部品に実装することが可能となり、電子部品の小型化を図ることができる。またガラス基板は、高温にさらされても割れや反りが起こりにくいため、吸収層との密着性を確保しやすくなる。
ガラス基板は、透明な(すなわち可視光線透過性を有する)板状のガラスであれば、特に制限なく用いることができる。ガラス基板に用いられるガラスは、二酸化ケイ素を主成分とするものが好ましく、ケイ素と酸素以外の原子あるいはイオンを含有していてもよい。このような原子やイオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、鉄、銀、銅、コバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、およびこれらのイオンが挙げられる。ガラス基板の厚みは、例えば、強度を確保する点から、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、また薄型化の点から、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
吸収層が透明基板上に形成される場合、吸収層は、透明基板(ガラス基板)の片面のみに設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。また、透明基板と吸収層の間には別の層が設けられていてもよく、当該別の層としては、吸収層と透明基板との密着性を高めるためのプライマー層等が挙げられる。
吸収層が透明基板上に設けられる場合、吸収層の透過率は、吸収層単体の透過スペクトルを測定することにより求めてもよいし、透明基板上に吸収層を形成した吸収層積層基板の透過スペクトルと透明基板の透過スペクトルをそれぞれ測り、吸収層積層基板の透過スペクトルを透明基板の透過スペクトルで補正することにより、吸収層の正味の透過スペクトルを求めてもよい。後者の場合、吸収層積層基板の透過スペクトルと透明基板の透過スペクトルをそれぞれ対数(log10)変換し、その差分を指数変換することにより、吸収層の正味の透過スペクトルを求めることができ、具体的には次式に基づき吸収層の透過率を求めることができる:吸収層の透過率(%)=10^[log10(吸収層積層基板の透過率)−log10(透明基板の透過率)]×100。
本発明の光選択透過フィルターには、吸収層上に誘電体多層膜を有するものも含まれる。誘電体多層膜は吸収層上に設けられ、吸収層が透明基板上に形成される場合は、誘電体多層膜は吸収層の透明基板とは反対側に設けられることが好ましい。誘電体多層膜によって所望の波長範囲の光線を透過させたりカットすることができ、光選択透過フィルターに、反射防止膜(可視光反射防止膜)、赤外線反射膜、紫外線反射膜等としての機能を付与することができる。誘電体多層膜はこれら2つ以上の機能を備えることもできる。本発明の光選択透過フィルターにおいては、誘電体多層膜が、少なくとも可視光反射防止膜と赤外線反射膜としての機能を有することが好ましい。
誘電体多層膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層して形成することができる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択されることが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択されることが好ましい。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ、SiOx(x=1〜2))、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
誘電体多層膜は、蒸着膜として形成することができる。誘電体多層膜の蒸着は公知の方法により行えばよい。例えば、蒸発源の加熱手段としては、抵抗加熱、電子ビーム加熱、高周波誘導加熱、レーザビーム加熱等の公知の加熱手段を用いることができる。蒸着の際の真空度は5×10-2Pa以下(絶対圧)とすることが好ましく、蒸着温度は、例えば80℃以上300℃以下とすることが好ましい。なお蒸着としては、イオンアシスト蒸着を用いることが好ましく、これにより緻密かつ平滑性の高い誘電体多層膜を形成しやすくなり、所望の光学性能を付与させやすくなる。イオンアシストとしては、イオン銃、イオンプレーティング、プラズマ銃等を用いることができる。
誘電体多層膜の厚みは特に限定されず、例えば0.01μm〜10μmの範囲であればよい。誘電体多層膜の層数は、反射防止膜や赤外線反射膜としての光学性能を発揮させる観点から、例えば2層〜80層であることが好ましい。
光選択透過フィルターが誘電体多層膜を有する場合、光選択透過フィルターは波長800nm〜1000nmの範囲の平均透過率が1%以下であることが好ましい。このように形成された光選択透過フィルターは、上記(A)、(B)の特性と相まって、近赤外領域の光線を効果的にカットすることができ、画像処理における光学ノイズを好適に除去することができる。一方、可視光領域については、波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率が80%以上であることが好ましく、これにより可視光領域の光線をより高い透過率で透過させることができる。
光選択透過フィルターは、上記に説明した吸収層、透明基板、誘電体多層膜以外に、他の層(膜)を有していてもよい。他の層(膜)としては、防眩性を有する層、傷付き防止性能を有する層、金属膜、その他の機能を有する透明基材等が挙げられる。
光選択透過フィルターの厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、例えば、撮像素子の小型化への要請に十分に応えることができる。光選択透過フィルターの厚みは、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは150μm以下であり、また30μm以上が好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、撮像素子用途に特に好適である。本発明には、光選択透過フィルターを有する撮像素子も含まれる。撮像素子は、固体撮像素子やイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号に変換し、電気信号として出力する電子部品である。撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)を有し、レンズを有していてもよい。撮像素子は、例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に用いられる。撮像素子は、本発明の光選択透過フィルターを1または2以上含み、必要に応じて、さらに他の部材を有していてもよい。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(1)光選択透過フィルターの製造原料の調製
(1−1)調製例1(スクアリリウム化合物1の合成)
300mLの4つ口フラスコに、フェニルヒドラジン塩酸塩4.30g(0.040mol)、2−メチルシクロオクタノン5.58g(0.040mol)、溶媒として酢酸50gを仕込み、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、還流条件にて2時間反応させた。反応終了後、分液漏斗に反応液と酢酸エチル80mLと水120mLとを入れ、激しく撹拌して有機相のみを抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。溶媒留去後、真空乾燥機を用いてさらに60℃で12時間乾燥し、中間原料1(11a−メチル−7,8,9,10,11,11a−ヘキサヒドロ−6H−シクロオクタ[b]インドール)を7.00g得た。500mLの4口フラスコに、得られた中間原料1を3.52g(0.017mol)、スクアリン酸0.94g(0.008mmol)、1−ブタノール33g、トルエン33gを加え、窒素流通下(10mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて3時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をエバポレーターで濃縮し、得られた固形物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、精製された単離物をさらにメタノール中で再結晶して、表1に示すスクアリリウム化合物1を0.04g得た。
(1−2)調製例2(スクアリリウム化合物2の合成)
調製例1において、フェニルヒドラジン塩酸塩の代わりに4−クロロフェニルヒドラジン塩酸塩を5.37g(0.030mol)用い、2−メチルシクロオクタノンの代わりに2−メチルシクロヘキサノンを3.37g(0.030mol)用いた以外は、調製例1と同様にして中間原料2(6−クロロ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール)を4.73g得た。次いで、中間原料2を4.61g(0.021mol)用い、スクアリン酸の量を1.20g(0.011mol)とした以外は、調製例1と同様にして反応を行った。反応終了後、得られた反応液からエバポレーターにより溶媒を留去した後、そこにメタノールを加えて、還流条件にて撹拌しながら晶析および洗浄処理を行った。得られた溶液を室温まで冷却した後、ろ過を行い、得られた固形物を真空乾燥機を用いて乾燥し、表1に示すスクアリリウム化合物2を2.1g得た。
(1−3)調製例3(スクアリリウム化合物3の合成)
調製例1において、フェニルヒドラジン塩酸塩の代わりに4−(メチルスルホニル)フェニルヒドラジン塩酸塩を2.27g(0.01mol)用い、2−メチルシクロオクタノンの代わりに2−プロピルシクロヘキサノンを1.40g(0.01mol)用いた以外は、調製例1と同様にして中間原料3(4a−プロピル−6−(メチルスルホニル)−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール)を2.1g得た。次いで、中間原料3を2.1g(0.0072mol)用い、スクアリン酸の量を0.41g(0.0036mol)とした以外は、調製例1と同様にして反応を行った。その後、調製例2と同様に精製、乾燥することで、表1に示すスクアリリウム化合物3を0.2g得た。
(1−4)調製例4(スクアリリウム化合物4の合成)
米国特許第5,543,086号明細書のFormula 17に開示されるスクアリリウム化合物を参考に、表1に示すスクアリリウム化合物4を合成した。
Figure 2017182043
(1−5)調製例5(フッ素化芳香族樹脂の調製)
温度計、冷却管、ガス導入管、および、撹拌機を備えた反応器に、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル16.74質量部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン10.5質量部、炭酸カリウム4.34質量部、ジメチルアセトアミド90質量部を仕込んだ。反応器に仕込んだ混合物を80℃に加温し、8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく撹拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物をろ別し、蒸留水およびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族樹脂を得た。フッ素化芳香族樹脂のガラス転移点温度(Tg)は242℃であり、数平均分子量(Mn)は70,770であった。なお、数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算にて求めた。
(2)光選択透過フィルターの製造例
(2−1)実施例1
ジクロロベンゼン92.5質量部に調製例5で作製したフッ素化芳香族樹脂7.5質量部を溶解させた樹脂溶液に、近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物1を0.375質量部加えて溶解し、ろ過により不溶分等を取り除くことにより、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をガラス基板(SCHOTT社製、D263Teco、60mm×60mm×0.3mm、平均透過率91%)上に0.6cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−D7)を用い、0.2秒間かけて1200回転(rpm)にし、20秒間その回転数で保持し、その後0.2秒間かけて0回転にして、ガラス基板上に成膜した。樹脂組成物を成膜したガラス基板を、精密恒温器(ヤマト科学社製、DH611)を用いて100℃で3分間初期乾燥した後に、イナートオーブン(ヤマト科学社製、DN610I)を用いて50℃で30分間窒素置換した後、15分程度で200℃に昇温し、200℃で30分間窒素雰囲気下で追加乾燥することにより、ガラス基板上に吸収層を形成したフィルターを得た。ガラス基板上に形成した吸収層の厚みは2μmであった。なお、吸収層の厚みは、吸収層を形成したガラス基板の厚みとガラス基板単独の厚みをそれぞれマイクロメーターにより測定し、両者の差から吸収層の厚みを求めた。
(2−2)実施例2
近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物1を0.375質量部とスクアリリウム化合物4を0.188質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に吸収層を形成したフィルターを得た。吸収層の厚みは2μmであった。
(2−3)実施例3
トルエン88質量部にシクロオレフィン系樹脂A(ポリプラスチックス社製、TOPAS(登録商標)5013)12質量部を溶解させた樹脂溶液に、近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物1を0.78質量部とスクアリリウム化合物2を0.42質量部加えて溶解し、ろ過により不溶分等を取り除くことにより、樹脂組成物を得た。このようにして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に吸収層を形成したフィルターを得た。吸収層の厚みは2μmであった。
(2−4)実施例4
キシレン70質量部にシクロオレフィン系樹脂B(JSR社製、アートン(登録商標)樹脂、RX4500)30質量部を溶解させた樹脂溶液に、近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物1を0.06質量部とスクアリリウム化合物4を0.03質量部加えて溶解し、ろ過により不溶分等を取り除くことにより、樹脂組成物を得た。このようにして得られた樹脂組成物を、溶媒キャスト法を用いて乾燥後の厚みが100μmとなるようにガラス基板上に塗布し、120℃で30分乾燥して溶媒除去してフィルム化し、ガラス基板より剥離した。剥離したフィルムをさらに150℃で30分間窒素下で乾燥し、吸収層のみからなるフィルターを得た。
(2−5)実施例5
近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物1を0.072質量部とスクアリリウム化合物4を0.036質量部用いた以外は、実施例4と同様にして吸収層のみからなるフィルターを得た。
(2−6)実施例6
キシレン85質量部にシクロオレフィン系樹脂Bを15質量部溶解させた樹脂溶液に、近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物1を0.9質量部とスクアリリウム化合物3を1.41質量部加えて溶解し、ろ過により不溶分等を取り除くことにより、樹脂組成物を得た。このようにして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に吸収層を形成したフィルターを得た。なお、乾燥は100℃で10分のみ行った。吸収層の厚みは2μmであった。
(2−7)比較例1
近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物4を0.188質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてガラス基板上に吸収層を形成した。吸収層の厚みは2μmであった。
(2−8)比較例2
近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物4を0.375質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてガラス基板上に吸収層を形成した。吸収層の厚みは2μmであった。
(3)各フィルターの評価
(3−1)フィルターの透過率の測定方法
上記の実施例1〜6と比較例1〜2で形成した各フィルターについて、分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)を用いて、透過スペクトル(吸収スペクトル)を測定ピッチ1nmで測定し、波長200nm〜1100nmにおける光線透過率を求めた。このときのベースラインは空気であり、つまり空気の透過率を100%として測定した。この測定結果から、可視光領域における透過率の指標として、波長420nm〜550nmにおいて測定ピッチ1nmごとに測定した131個の透過率の平均値から、波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率(Tave)を求めた。また、近赤外領域の吸収性能の指標として、波長680nm〜800nmの範囲において透過率が連続して3%以下となる波長帯の幅(吸収波長帯幅)と、当該波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50を求めた。
(3−2)吸収層の透過率の測定方法
上記の実施例1〜3、6と比較例1〜2でガラス基板上に吸収層を形成した各フィルターについて、分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)を用いて、透過スペクトル(吸収スペクトル)を測定ピッチ1nmで測定し、波長200nm〜1100nmにおける光線透過率を求めた。このときのベースラインはガラス基板であり、つまりガラス基板の透過率を100%として測定した。この測定結果から、可視光領域における透過率の指標として、波長420nm〜550nmにおいて測定ピッチ1nmごとに測定した131個の透過率の平均値から、波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率(Tave)を求めた。また、近赤外領域の吸収性能の指標として、波長680nm〜800nmの範囲において透過率が連続して3%以下となる波長帯の幅(吸収波長帯幅)と、当該波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50を求めた。なお、実施例4〜5で形成したフィルターは吸収層のみから構成されているため、ガラス基板をベースラインにするのではなく、空気をベースラインとした。
(3−3)結果
実施例および比較例で作製したフィルターとそれに含まれる吸収層の透過率の測定結果を表2に示し、実施例2と比較例2のフィルターの各透過スペクトルを図1に示した。実施例1〜6で作製したフィルターの吸収層は、波長680nm〜800nmの範囲において、透過率が連続して3%以下となる吸収波長帯幅がいずれも45nm以上となり、透過率50%となる波長λ50が630nm〜650nmの範囲となり、可視光領域の平均透過率(Tave)が85%以上となった。実施例1〜6では、可視光領域の光線透過率を高く維持しつつ、近赤外領域の光線を広範囲にわたって効果的にカットすることができ、光学特性の入射角依存性を大きく低減することができた。一方、比較例1、2で作製したフィルターの吸収層は、可視光領域の平均透過率(Tave)は85%以上となったものの、吸収波長帯幅がそれぞれ21nm、31nmとなり、近赤外線領域の光線のカット性能に劣るものとなった。なお、比較例1、2では、近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物4のみを用いているが、吸収波長帯幅を広げるためにスクアリリウム化合物4の濃度をさらに高めると、波長λ50が630nmを下回るようになり、可視光領域のうち赤色領域の光線の透過率が低下する。そのため、近赤外線吸収色素としてスクアリリウム化合物4のみを用いた場合は、吸収層の吸収波長帯幅を35nm以上としつつ、波長λ50を630nm以上とすることは難しい。
Figure 2017182043
実施例2で作製したフィルターに対して、透過率3%以下の吸収波長帯の長波長側となる波長745nm以降の波長域で透過率が1%以下となるように誘電体多層膜(無機蒸着膜)を積層し、得られたフィルターの角度依存性を調べたところ、45°の入射角でも角度依存性が認められなかった。
本発明の光選択透過フィルターは、表示素子や撮像素子等の光学デバイス等、種々の分野において用いることが可能である。例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等の電子部品に使用できる。

Claims (5)

  1. 近赤外線吸収色素を含有し、下記(A)〜(C)を満たす吸収層を有することを特徴とする光選択透過フィルター。
    (A)波長680nm〜800nmの範囲において、透過率が連続して3%以下となる波長帯の幅が35nm〜120nm
    (B)前記波長帯よりも短波長側で透過率50%となる波長λ50が630nm〜650nm
    (C)波長420nm〜550nmの範囲の平均透過率が85%以上
  2. 前記色素として、式(1)で表されるスクアリリウム化合物または式(2)で表されるクロコニウム化合物を含有する請求項1に記載の光選択透過フィルター。
    Figure 2017182043

    [式(1)および式(2)中、R1〜R4はそれぞれ独立して、下記式(3)で示される構造単位を表す。]
    Figure 2017182043

    [式(3)中、
    環Aは、4〜9員の不飽和炭化水素環を表し、
    環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、
    Xは、水素原子、有機基または極性官能基を表し、
    Yは、有機基または極性官能基を表し、
    *は式(1)中の4員環または式(2)中の5員環との結合部位を表し、
    nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。]
  3. 前記吸収層上に誘電体多層膜を有する請求項1または2に記載の光選択透過フィルター。
  4. 波長800nm〜1000nmの範囲の平均透過率が1%以下である請求項3に記載の光選択透過フィルター。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光選択透過フィルターを有することを特徴とする撮像素子。
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