JP2017181124A - ひずみ分散効果の評価方法、ひび割れ抑制方法、およびセメント質硬化体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
したがって、セメント質硬化体の耐久性を確保するためには、ひび割れを抑制することが必要になる。
しかし、この方法は、発生したひび割れの状態を見て、ひび割れの抑制効果を評価する方法であって、ひび割れが発生する前の、補強材によるひずみの分散効果を評価することはできない。また、目視によりひび割れの状態を判断することから、視認できない微細なひび割れは評価対象にならず、評価対象が一部のひび割れに限られるため、従来の方法では全体的かつ総合的な評価ができず信頼性に欠ける。
(i)セメント質硬化体表面のひずみ(膨張ひずみと収縮ひずみ)の分布を、デジタル画像相関法を用いて定量的に把握した上で、
(ii)ひずみの分布が均一な程、すなわち、ひずみ分散効果が高い程、該セメント質硬化体はひび割れ抑制効果が高いこと
を見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の構成を有するセメント質硬化体のひずみ分散効果の評価方法等である。
(A)セメント質組成物を型枠に打設して供試体を作製する、供試体作製工程
(B)変形する前に、前記供試体の表面のデジタル画像を取得する、変形前の画像取得工程
(C)前記供試体を変形する、供試体変形工程
(D)変形した後に、前記供試体の表面のデジタル画像を取得する、変形後の画像取得工程
(E)前記取得した変形前および変形後のデジタル画像上に、複数の区画を設定し、該区画毎にデジタル画像相関法を用いてひずみを算出する、ひずみ算出工程
(F)前記算出したひずみを用いて、予め設定したひずみ階級毎に、ひずみの度数の分布を作成する、ひずみの度数分布作成工程
(G)前記ひずみの度数の合計を100として、各ひずみ階級毎にひずみの度数の割合を算出する、ひずみの相対度数算出工程
(H)前記複数の区画の間で、各ひずみ階級毎にひずみの相対度数の標準偏差を算出する、ひずみの相対度数の標準偏差算出工程
(I)ひずみ階級の間で、ひずみの相対度数の標準偏差の平均値を算出する、ひずみの相対度数の標準偏差の平均値算出工程
[2]前記ひずみの相対度数の標準偏差の平均値を比較して、該平均値が小さい程、セメント質硬化体のひずみの分散効果が高いと評価する、前記[1]に記載のひずみ分散効果の評価方法。
[3]拘束型枠内にセメント質組成物を打設して供試体を作製する、前記[1]または[2]に記載のひずみ分散効果の評価方法。
[4]前記拘束型枠内に補強材を配置した後、セメント質組成物を打設して供試体を作製する、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のひずみ分散効果の評価方法。
[5]前記供試体変形工程が、供試体を乾燥する工程である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のひずみ分散効果の評価方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のひずみ分散効果の評価方法により、セメント質硬化体のひずみの分散に与える効果が高いと評価された補強材を用いて、セメント質硬化体のひび割れを抑制する、ひび割れ抑制方法。
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のひずみ分散効果の評価方法により、セメント質硬化体のひずみの分散に与える効果が高いと評価された補強材を用いて、セメント質硬化体を製造する、セメント質硬化体の製造方法。
以下、本発明の評価方法を前記各工程に分けて、図を用いて詳細に説明する。
(A)供試体作製工程
該工程は、セメント質硬化体の供試体を作製する工程である。図1に示すように、実構造物で評価を行わず、事前に評価試験を行いたい場合、拘束型枠を用いると容易に実構造物を再現することができる。供試体は、セメント質硬化体の組成等を評価する場合はその材料を代えて複数の供試体を作成し、繊維シートなどの補強材を評価したい場合は、補強材を含まない供試体と、補強材を含む供試体を予め型枠に設置する。型枠に打設するセメント質組成物は、好ましくは、実際に施工するセメント質組成物と同じ配合の組成物である。なお、拘束型枠を用いた場合、硬化した後の供試体は底面のみ脱型し、そのままの状態で後工程において用いる。
評価に用いるセメント質硬化体は、特に制限されず、普通コンクリート、水密コンクリート、暑中コンクリート、寒中コンクリート、マスコンクリート、流動化コンクリート、高流動コンクリート、高強度コンクリート、低発熱コンクリート、膨張コンクリート、プレストレストコンクリート、低収縮コンクリート、繊維補強コンクリート、軽量コンクリート、ポリマーコンクリート、モルタル、およびセメントペースト硬化体等が挙げられる。
該工程は、供試体が変形する前、および変形した後に、該供試体の表面のデジタル画像を取得する工程である。画像取得時期は、ひび割れが発生すると蓄積されたひずみが開放されてしまうため、硬化した後から可能で、少なくともひび割れが発生する前までに取得する。前記変形には、例えば、乾燥、自己収縮、および膨張が含まれる。
ここで、変形前の供試体の画像取得時に、画像の取得面に水分が付着していると、色のコントラストが小さくなり、また色むらが生じて、乾燥後に取得した画像との相関性が著しく低下する場合がある。この相関性の低下を避けるため、画像取得前に、乾燥前の供試体の撮影面に圧縮空気等を噴射して撮影面の水分を除去するか、または撮影面から水分がなくなるまで静置して風乾するなどの前処理を行う。なお、当該前処理は、画像の取得面に水分が付着している場合に行う任意の処理であり、(C)供試体変形工程には含まれない。
該工程は、前記供試体が変形する工程である。本発明における供試体の変形は、収縮、膨張などを含み、変形の種類は特に問わない。供試体変形工程は、構造物なら供用期間が相当し、試験室等による評価試験であれば養生期間が相当する。養生方法は評価したい変形にあわせて適宜設定すればよく、試験室では促進養生とすると、より早く評価結果を得ることができる。
例えば、乾燥収縮を評価する場合、乾燥温度は、特に制限されないが、前記供試体の乾燥の速さを考慮すると、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、また、相対湿度は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。また、供試体の乾燥期間は、特に制限されないが、前記乾燥条件を考慮すると、好ましくは1日以上、より好ましくは5日以上、さらに好ましくは15日以上である。
該工程は、変形前および変形後の供試体のデジタル画像に基づき、デジタル画像相関法を用いて、変形後の供試体のひずみを算出する工程である。
前記デジタル画像相関法は、ひずみによる変形の前後に取得したデジタル画像の輝度値の分布に基づいて、供試体上の各位置の移動量を算出しひずみに変換する方法である。
具体的には、以下の計算過程を経てひずみを算出する。
(i)変形前のデジタル画像において、任意の位置を中心とするサブセット内の輝度値分布を求める。
(ii)変形後のデジタル画像の輝度値分布と最も相関性が高い輝度値分布を有する、変形前のデジタル画像のサブセットを探索し、その中心点を着目点が変位した後の位置として捉えて、着目点から該中心点へ変位した量を算出し、さらに該変位した量をひずみに変換する。なお、変形前後のサブセットの相関性は、下記(1)式の相関係数Rを用いて表す。
該工程は、前記算出したひずみの値を用いて、ひずみの分布を示す指標として、ひずみ階級(例えば、実施例では、ひずみを−2500μから2500μまで、500μの間隔で刻んで得た区間)内に含まれるひずみの度数を求める。ただし、極端に大きいひずみ(エラー値)を除去するため、ひずみ階級の範囲を限定するのが好ましい(例えば、実施例では、−2500〜+2500μの範囲に限定した。)。ひずみ階級の間隔は、測定精度を高めるために好ましくは300〜500μである。
また、拘束型枠を用いた場合、異常に大きなひずみ(異常値)が比較的少ない供試体の中央付近の画像に、例えば、後掲の図5の(a)〜(c)に示すように、碁盤の目状に区画を設けて、各区画毎にひずみの度数分布を作成する。区画数は、測定精度を高めるため、好ましくは3〜20区画、より好ましくは5〜15区画である。各区画の範囲は、格子を有する補強材を用いた場合、その格子間隔またはその格子間隔の倍数であり、コンクリートを評価する場合、骨材の寸法に合わせて設定するとよい。なお、各区画の形状は問わない。
該工程は、後掲の表3、図6、および図7に示すように、前記各区画毎のひずみの度数分布に基づき、各区画毎のひずみの度数の合計を100とした場合の各ひずみ階級の度数の割合(ひずみの相対度数)を算出する工程である。
該工程は、前記各区画の同一ひずみ階級におけるひずみの相対度数の標準偏差を算出する工程である。該標準偏差は、例えば、本願の実施例における9区画(n=9)では、下記分散式の平方根として求まる。
該工程は、前記同一ひずみ階級で求められた標準偏差の平均値を算出する工程である。なお、該工程では、各ひずみ階級毎のひずみの相対度数の標準偏差を用いて評価することにより、ひずみの絶対値の影響を排除して評価できる。
こうして得られた、異なるセメント質硬化体で製作された供試体の、ひずみの相対度数の標準偏差の平均値を比較して、一方の供試体の該平均値が、他方の供試体の該平均値に比べ小さい程、本発明ではひずみ分散効果が高く、ひび割れに対する抵抗性が高いと評価する。
本発明の評価の対象となる材料は、例えば、セメントの種類、骨材の種類や大きさ、コンクリートの組成(配合)、強化繊維の有無やその種類、特殊混和剤の有無やその種類、鉄筋や繊維シートなどの補強材の配置やその種類など、ひび割れや膨張の発生に影響を及ぼす材料である。
本発明のひび割れ抑制方法は、拘束型枠と補強材を用いて本発明のひずみ分散効果の評価を行い、ひずみ分散効果が高いと評価された補強材を用いて、セメント質硬化体のひび割れを抑制する方法である。
また、本発明のセメント質硬化体の製造方法は、拘束型枠と補強材を用いて本発明のひずみ分散効果の評価を行い、ひずみ分散効果が高いと評価された補強材を用いて、セメント質硬化体を製造する方法である。なお、本発明のセメント質硬化体を製造する方法は、特に制限されず、ひずみ分散効果が高いと評価された補強材を用いる以外は、一般のセメント質硬化体の製造に用いられる方法が適用できる。
ここでは、実構造物においてセメント質硬化体が拘束されている状態を模擬するために拘束型枠を代用したもので、実構造物ではその表面をそのまま測定すればよい。また、セメント質硬化体の材料や組成の影響を評価したい場合、拘束型枠や補強材の有無にかかわらず材料や組成が異なる複数のセメント質硬化体を用いることで評価できる。
1.供試体の作製
図1に示す拘束型枠に、図2の(a)、(b)および(c)に示す補強材(繊維シート)を設置した。試験水準は、補強材不使用の水準(図2の(a))、補強材をひび割れに対し約45°になるように配向して配置した水準(図2の(b))、および、補強材をひび割れに対し約90°になるように配向して配置した水準(図2の(c))の3水準の供試体を作製した。
次に、表1に示す材料を用いて、表2の配合に従いモルタルを混練し、拘束型枠に打設した。このまま、3日間、20℃、80%で養生し、底面のみ脱型した。続けて、2日間、20℃、80%%で養生した。
以下、図2の(a)、(b)および(c)に示す拘束型枠を用いて作製した供試体を、それぞれ供試体(a)、供試体(b)および供試体(c)という。
本実施例では、より早期に測定結果を得るために、供試体変形工程を乾燥として、材齢5日から30℃、相対湿度40%の条件で供試体を乾燥した。乾燥する前と、乾燥期間が1日、2日、5日、7日、12日、および15日の(a)〜(c)の供試体の、図3に示す四角枠(供試体の左半分)内の表面にランダムパターン(斑模様)を施して、点線の四角枠内について図4に示すデジタル画像取得用スキャナー(ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置、解像度:1200dpi)を用いて、供試体の表面を走査してデジタル画像を取得した。
ここで、前記「ランダムパターン」とは、測定対象面の輝度値に変化をもたせるために、白と黒のスプレーを用いて描かれた斑模様である。
ちなみに、拘束型枠を用いた場合の供試体のひび割れは、図3に示すように、枠に対して約45°の方向に発生した。
前記取得したデジタル画像を、画像解析用ソフトウェアを用いて解析し、供試体の最大主ひずみ(収縮ひずみと圧縮ひずみ)を算出した。具体的には、以下の計算過程を経てひずみを算出した。
(i)乾燥前と乾燥後の供試体のデジタル画像において、任意の位置を中心とするサブセット内の輝度値分布を求めた。
(ii)乾燥後の供試体のデジタル画像の輝度値分布と最も相関性が高い輝度値分布を有する、乾燥前のデジタル画像のサブセットを探索し、その中心点を着目点が移動(変位)した後の位置として捉えて、着目点から該中心点へ移動した距離(変位量)を算出し、さらに該移動した距離を最大主ひずみに変換した。
なお、乾燥前および乾燥後の供試体のデジタル画像におけるサブセットの相関性は、前記(1)式の相関係数Rを用いた。また、乾燥前および乾燥後の座標(x,y)および(x*,y*)は前記(2)式を用いた。
実施例で用いた補強材は、図2の(b)と(c)に示すように、格子の寸法が縦30mm、横30mmであるから、この格子寸法に合わせて、異常に大きなひずみが比較的少ない供試体の中央付近の画像に、図5の(a)〜(c)に示すように、区画1〜9を碁盤の目状に設けた(図5の(b)と(c)では、1〜9の表示は省略したが、(a)と同様である。)。
次に、該区画1〜9内の、前記「3.ひずみの算出」において算出した最大主ひずみ(以下「ひずみ」いう。)の値を用いて、ひずみの分布を示す指標として、各ひずみ階級(ひずみを−2500μから2500μまで、500μの間隔で刻んで得た各区間)内に含まれるひずみの度数を求めた。ただし、極端に大きいひずみ(エラー値)を除去するため、ひずみ階級の範囲を−2500〜2500μの範囲に限定した。なお、ひずみ階級が正の値は膨張ひずみ、負の値は収縮ひずみを表し、ひずみ階級の絶対値が大きい程、ひずみは大きい。
なお、表3および表4において、ひずみ階級−2500、−2000、−1500、−1000、−500、0、500、1000、1500、2000、および2500以上は、それぞれ、−2500〜−2000μ、−2000〜−1500μ、−1500〜−1000μ、−1000〜−500μ、−500〜0μ、0〜500μ、500〜1000μ、1000〜1500μ、1500〜2000μ、2000〜2500μ、2500μ以上の、各ひずみの区間を表す。
なお、比較として、図9に、各区画1〜9内においてひずみの平均値を求め、求めた各区画1〜9の平均値を平均した結果を示す。図10に、各区画1〜9内においてひずみの標準偏差を求め、求めた各区画1〜9の標準偏差を平均した結果を示す。図11に、前記平均値と標準偏差の平均値から求めた変動係数の結果を示す。図9〜11に示すように、供試体(a)〜(c)の間で値に差がないため、これらの値では、ひずみの分散効果やひび割れの抑制効果を評価できない。
Claims (7)
- 下記(A)〜(I)工程を経て算出した、ひずみの相対度数の標準偏差の平均値に基づき、セメント質硬化体のひずみ分散効果を評価する、ひずみ分散効果の評価方法。
(A)セメント質組成物を型枠に打設して供試体を作製する、供試体作製工程
(B)変形する前に、前記供試体の表面のデジタル画像を取得する、変形前の画像取得工程
(C)前記供試体を変形する、供試体変形工程
(D)変形した後に、前記供試体の表面のデジタル画像を取得する、変形後の画像取得工程
(E)前記取得した変形前および変形後のデジタル画像上に、複数の区画を設定し、該区画毎にデジタル画像相関法を用いてひずみを算出する、ひずみ算出工程
(F)前記算出したひずみを用いて、予め設定したひずみ階級毎に、ひずみの度数の分布を作成する、ひずみの度数分布作成工程
(G)前記ひずみの度数の合計を100として、各ひずみ階級毎にひずみの度数の割合を算出するする、ひずみの相対度数算出工程
(H)前記複数の区画の間で、各ひずみ階級毎にひずみの相対度数の標準偏差を算出する、ひずみの相対度数の標準偏差算出工程
(I)ひずみ階級の間で、ひずみの相対度数の標準偏差の平均値を算出する、ひずみの相対度数の標準偏差の平均値算出工程 - 前記ひずみの相対度数の標準偏差の平均値を比較して、該平均値が小さい程、セメント質硬化体のひずみの分散効果が高いと評価する、請求項1に記載のひずみ分散効果の評価方法。
- 拘束型枠内にセメント質組成物を打設して供試体を作製する、請求項1または2に記載のひずみ分散効果の評価方法。
- 前記拘束型枠内に補強材を配置した後、セメント質組成物を打設して供試体を作製する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のひずみ分散効果の評価方法。
- 前記供試体変形工程が、供試体を乾燥する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のひずみ分散効果の評価方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のひずみ分散効果の評価方法により、セメント質硬化体のひずみの分散に与える効果が高いと評価された補強材を用いて、セメント質硬化体のひび割れを抑制する、ひび割れ抑制方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のひずみ分散効果の評価方法により、セメント質硬化体のひずみの分散に与える効果が高いと評価された補強材を用いて、セメント質硬化体を製造する、セメント質硬化体の製造方法。
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