JP2019074339A - コンクリートの劣化の早期検知方法 - Google Patents
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Abstract
Description
これらのうち、アルカリシリカ反応は、反応性骨材中のシリカと、コンクリート中のアルカリ金属イオンが、高いpH条件下で反応してアルカリシリカゲルを生成し、このゲルが吸水して膨張し、コンクリートにひび割れが生じる現象である。このアルカリシリカ反応に起因するひび割れは亀甲状を呈するため、他の劣化によるひび割れとは、ひび割れの形状で区別できる。
また、エトリンガイトの遅延生成は、コンクリートを蒸気養生すると数年後にエトリンガイトが集中して生じる場合があり、このエトリンガイトがコンクリートを膨張させてコンクリートが崩壊する現象である。
凍結融解は、コンクリート中の水分が、長年にわたり凍結と融解を繰り返し、水分(氷)の体積膨張により、コンクリートにひび割れが生じる現象である。また、乾燥収縮は、コンクリートの乾燥によりコンクリート中の水分が蒸発してコンクリートが収縮しひび割れが生じる現象である。さらに、鉄筋の腐食は、中性化や塩害により鉄筋の不動態被膜が損傷し、鉄筋が発錆して膨張し、コンクリートにひび割れが生じる現象である。
これらのコンクリートの劣化現象では、ひび割れが顕在化してひび割れを発見した時点では劣化が進み過ぎている場合が多い。したがって、コンクリートの劣化を効果的に防ぐには、ひび割れが顕在化する前に劣化の要因を早期に検知して、それぞれの要因に応じて対策をとる必要がある。
特許文献1に記載のコンクリート構造物の亀裂検査方法は、コンクリート構造物を構成する基体の上に、下塗層、剥落防止用シート層、および上塗層を順次積層したうえに、さらに上塗層の上に、励起光によって発光する蛍光色素を混入した高弾性塗膜層と、励起光の透過を阻止する遮蔽剤を混入した低弾性塗膜層とを順次積層して、コンクリート構造物の供用を開始した後に、当該構造物に励起光を照射して、経時劣化により基体に発生した亀裂を検出する方法である。
また、特許文献2に記載のコンクリート劣化因子検出方法は、コンクリート面を撮像して可視光画像を取得し、他方、そのコンクリート面に赤外線を照射すると共に、コンクリート面からの反射光をスキャニング装置を介して分光器に入力し、その分光器で特定の劣化因子を検出するための特定の波長の光強度に基づく吸光度を検出すると共に、その吸光度を劣化因子の濃度に換算してその濃度を量子化し、その量子化した値を基に前記測定するコンクリート面に対応させて濃淡あるいは色に表して劣化因子画像を取得し、その劣化因子画像と上記可視光画像とを合成する方法である。
(A)コンクリートの取得対象面のデジタル画像を経時的に取得する、画像取得工程
(B)前記デジタル画像に基づきデジタル画像相関法を用いてひずみを算出し、該ひずみに基づき最大主ひずみの分布を得る、最大主ひずみ分布取得工程
[2]前記模様に加えて、ひずみの正負の分布に基づきコンクリートの劣化を検知する、前記[1]に記載のコンクリートの劣化の早期検知方法。
[3]前記模様を用いて、下記(a)〜(e)の基準に基づきコンクリートの劣化を検知する、前記[1]に記載のコンクリートの劣化の早期検知方法。
(a)亀甲状の模様が出現した部分は、アルカリシリカ反応として検知する。
(b)骨材部分を除いて全体的に一様な模様が出現した場合は、エトリンガイトの遅延生成として検知する。
(c)斑点状の模様が出現した場合は、凍結融解として検知する。
(d)鉄筋が存在しない箇所に線状の模様、または、構造物の柱若しくは梁等の部材に対して斜め方向に線状の模様が出現した場合は、乾燥収縮として検知する。
(e)鉄筋の直上に線状の模様が出現した場合は、鉄筋の腐食として検知する。
[4]前記模様とひずみの正負の分布を用いて、下記(f)〜(j)の基準に基づきコンクリートの劣化を検知する、前記[2]に記載のコンクリートの劣化の早期検知方法。
(f)亀甲状の模様が出現した場合であって、亀甲状の模様の線部が、より大きいプラス(膨張)のひずみを示し、基質部(模様以外の部分)も全体的にプラス(膨張)のひずみを示す場合は、アルカリシリカ反応として検知する。
(g)骨材部分を除いて全体的に一様な模様が出現した場合であって、骨材の部分はひずみを示さないが、その他のペーストまたはモルタルからなる部分が全体的にプラス(膨張)のひずみを示す場合は、エトリンガイトの遅延生成として検知する。
(h)斑点状の模様が出現した場合であって、斑点の部分が大きいプラス(膨張)のひずみを示す場合は、凍結融解として検知する。
(i)鉄筋が存在しない箇所に線状の模様、または、構造物の柱若しくは梁等の部材に対して斜め方向に線状の模様が出現した場合であって、該模様の線部がプラス(膨張)のひずみを示し、基質部は全体的にマイナス(収縮)のひずみを示す場合は、乾燥収縮として検知する。
(j)鉄筋の直上に線状の模様が出現した場合であって、模様の線部がプラス(膨張)のひずみを示す場合は、鉄筋の腐食として検知する。
該工程は、コンクリート(試験体)の取得対象面のデジタル画像を経時的に取得する工程である。
ここで、前記コンクリートは、特に制限されず、普通コンクリート、水密コンクリート、暑中コンクリート、寒中コンクリート、マスコンクリート、流動化コンクリート、高流動コンクリート、高強度コンクリート、低発熱コンクリート、膨張コンクリート、プレストレストコンクリート、低収縮コンクリート、繊維補強コンクリート、軽量コンクリート、およびポリマーコンクリートが挙げられる。
良好なデジタル画像を取得するために、コンクリートの取得対象面は、研磨することが好ましい。また、取得対象面のデジタル画像はコンクリートが変形する前後において取得する。また、画像を取得する時期は、ひび割れが発生すると蓄積されたひずみが開放されてしまうため、好ましくは、コンクリートが硬化した後から、少なくともひび割れが発生する前までに取得する。ここで、変形前のコンクリートの画像取得時に、画像の取得面に水分が付着していると、色のコントラストが小さくなり、また色むらが生じて、乾燥後に取得した画像との相関性が低下する場合がある。この相関性の低下を避けるため、画像取得前に、乾燥前のコンクリートの撮影面に圧縮空気等を噴射して撮影面の水分を除去するか、または撮影面から水分がなくなるまで静置して風乾するなどの前処理を行う。なお、当該前処理は、画像の取得面に水分が付着している場合に行う任意の処理である。
該工程は、前記デジタル画像に基づき、デジタル画像相関法を用いてひずみを算出し、該ひずみに基づき最大主ひずみの分布を得る工程である。前記デジタル画像は、コンクリートの変形前後のデジタル画像であり、デジタル画像相関法を用いて変形後の最大主ひずみを算出する。
前記デジタル画像相関法は、ひずみによる変形の前後に取得したデジタル画像の輝度値の分布に基づいて、コンクリート上の移動量を算出し最大主ひずみに変換する方法である。
具体的には、以下の計算過程を経てひずみを算出する。
(i)変形前のデジタル画像において、任意の位置を中心とするサブセット内の輝度値分布を求める。
(ii)変形後のデジタル画像の輝度値分布と最も相関性が高い輝度値分布を有する、変形前のデジタル画像のサブセットを探索し、その中心点を着目点が変位した後の位置として捉えて、着目点から該中心点へ変位した量を算出し、さらに該変位した量を最大主ひずみに変換する。なお、変形前後のサブセットの相関性は、下記(1)式の相関係数Rを用いて表す。
ただし、実際は、矩形に設定した変形前のサブセットに対し、変形後のデジタル画像そのものが変形しているため、サブセットが矩形にならない場合がある。この場合、これを補正するため、サブセット内部において変位勾配が一定と仮定して、変形前後の座標(x,y)および(x*,y*)には下記(2)式を用いる。
以上の計算は、市販の画像解析用ソフトウエア(例えば、digital:Correlated solutions社製)を用いて行なうことができる。
(a)後掲の図7に示すように、亀甲状の模様が出現した部分は、アルカリシリカ反応(ASR)として検知する。また、模様の線部はより大きいプラス(膨張)のひずみを示し、基質部(模様以外の部分)も全体的にプラス(膨張)のひずみを示す。
(b)後掲の図8に示すように、骨材部分を除いて全体的に一様な模様が出現した場合は、エトリンガイトの遅延生成として検知する。また、骨材の部分はひずみを示さないが、その他のペースト部分またはモルタル部分は全体的にプラス(膨張)のひずみを示す。なお、図8では骨材が露出しているため前記判定となるが、骨材が露出していない実構造物ではコンクリート表面のペースト部分またはモルタル部分は、取得した画像全体において全体的なプラス(膨張)のひずみを示す。
(c)後掲の図9に示すように、斑点状の模様が出現した場合は、凍結融解として検知する。また、斑点の部分は大きいプラス(膨張)のひずみを示す。斑点以外の部分は、コンクリートの配合条件や設置条件により、ひずみはプラス(膨張)やマイナス(収縮)になるため、劣化の検知には使えない。
(d)後掲の図10に示すように、鉄筋が存在しない箇所に線状の模様、または、構造物の柱若しくは梁等の部材に対して斜め方向の線状の模様が出現した場合は、乾燥収縮として検知する。なお、構造物において鉄筋の存在しない箇所は、図面や電磁波レーダー等の既存の方法を用いて事前に確認できる。さらに、柱または梁等の部材に対する斜め方向の模様は、各部材に対する角度を限定するものではない。また、模様の線部はプラス(膨張)のひずみを示し、基質部は全体的にマイナス(収縮)のひずみを示す。
(e)鉄筋の直上(鉄筋のかぶりの部分)に線状の模様が出現した場合は、鉄筋の腐食として検知する。なお、鉄筋位置は、構造物の図面や電磁波レーダー等の既存の方法を用いて事前に確認できる。また、模様の線部はプラス(膨張)のひずみを示し、その他の部分は、コンクリートの配合条件や設置条件により、ひずみはプラス(膨張)やマイナス(収縮)になるため、劣化の検知には使えない。
なお、[図面]欄に掲載した白黒の図(写真)では、ひずみのプラス(膨張)とマイナス(収縮)が判別できないため、別途、ひずみのプラスとマイナスが判別できるカラー写真を上申する。
また、各種の劣化の要因を検出するにあたり、コンクリートのデジタル画像を取得する対象として、表1に示す画像取得場所や具体例を選択すれば、劣化現象をより効率よく検知できる。
1.使用材料とコンクリート(試験体)の配合
表2に使用材料を示し、表3にコンクリートの配合を示す。
表3中の配合No.1〜4は以下の目的(意図)を有する。
(1)No.1はアルカリシリカ反応用試験体の配合である。アルカリシリカ反応の発生促進のため、セメント由来のアルカリ量を含めて、R2O量が8.6kg/m3となるようNaOHを練混水に溶解して用いた。No.1で用いたセメントは普通ポルトランドセメントで、目標空気量は表3に示す。
(2)No.2はエトリンガイトの遅延生成用試験体の配合である。エトリンガイトの遅延生成の発生促進のため、SO3量が2質量%になるようK2SO4を添加した。No.2で用いたセメントは早強ポルトランドセメントで、目標空気量は表3に示す。
(3)No.3は凍結融解用試験体の配合である。No.3で用いたセメントは普通ポルトランドセメントで、目標空気量は表3に示す。
(4)No.4は乾燥収縮用試験体の配合である。乾燥収縮の進行促進のため、単位水量300kg/m3、W/C60%の貧配合のコンクリートから粗骨材を除いた。また、ブリーディングの抑制のため、細骨材に代えて石灰石微粉末を用いた。No.4で用いたセメントは普通ポルトランドセメントである。なお、石灰石微粉末も表3中でSと表記した。
No.1〜No.3の配合を用いて、図1に示す縦400mm、横400mm、厚さ300mmのブロック状のコンクリートを作製した後、表4に示す条件で該コンクリートを養生した。この養生後、該コンクリートから厚さ50mmの版体を切り出し、測定面を研磨して、それぞれ、アルカリシリカ反応用試験体、エトリンガイトの遅延生成用試験体、および凍結融解用試験体を作製した。なお、No.3の配合を用いた凍結融解用試験体は、前記研磨した後、さらに、図4に示すように測定面を除く5面をアルミテープで被覆して作製した。
また、No.4の配合を用いた乾燥収縮用試験体は、実構造物においてコンクリートが拘束された状態を模擬するために、図5に示す拘束型枠にモルタルを打設した後、打設したままの状態で、20℃、相対湿度80%で3日間養生し、底面のみ脱型した後、続けて、20℃、相対湿度80%で2日間養生して試験体を作製した。
試験体のデジタル画像は、前記の前養生(2回目)の終了直後を基長として、基長時、および図7〜10に示す各期間において、図6に示すラインセンサタイプのデジタル画像取得用スキャナー(全視野ひずみ計測装置)を用いて、図3および4に示す範囲を走査して取得した。なお、温度によるひずみ変化と、水分の影響による輝度値の変化を避けるため、画像を取得する前に、20℃、相対湿度60%の環境下で、20時間以上、試験体を保管した。
次に、最大主ひずみの分布の算出は、取得したデジタル画像を用いて、デジタル画像相関法により解析し、下記(i)と(ii)の計算過程を経て、試験体の表面における最大主ひずみの分布を算出した。ここで算出した最大主ひずみの分布を
(i)基長時と促進養生した後の試験体のデジタル画像上で、任意の位置を中心としてサブセット内の輝度値分布を求めた。
(ii)促進養生した後の試験体のデジタル画像の輝度値分布と最も相関性が高い輝度値分布を有する、乾燥前の試験体のデジタル画像のサブセットを探索し、その中心点を着目点が移動(変位)した後の位置として捉えて、着目点から該中心点へ移動した距離(変位量)を算出し、さらに該移動した距離を最大主ひずみに変換した。図7〜10に最大主ひずみの分布を示す。
また、参考例として、前記試験体の全体の長さ変化を把握するため、図3に示すように、打込み面を除く試験体の残り3つの側面にコンタクトゲージ用チップを取り付けて、JIS A 1129−2「モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法−第2部:コンタクトゲージ方法」に準拠して、表5に示す各期間において、前記試験体の全体の長さ変化を測定して、その平均値を求めた。その結果を表5に示す。
また、図8に示すようにエトリンガイトの遅延生成では、骨材部分を除いて全体的に一様な模様が出現した。また、骨材の部分はひずみを示さないが、その他のペースト、あるいはモルタルからなる部分は全体的にプラス(膨張)のひずみを示した。なお、局所的な点状の大きいプラスのひずみはノイズである。
また、図9に示すように凍結融解では、スケーリングやポップアウト等の劣化現象が生じる前に斑点状の高いひずみが出現した。なお、水平状に入る大きいプラスのひずみはノイズである。
さらに、図10に示すように、乾燥収縮ではひび割れが発生する前に、構造物の柱または梁等のコンクリートを拘束する部材に対していくつかの斜め線状の模様が出現した。また、模様の線部はプラス(膨張)のひずみを示し、他の基質部は全体的にマイナス(収縮)のひずみを示した。
Claims (4)
- 下記(A)工程および(B)工程を経て得た最大主ひずみの分布の像に現れた模様を用いてコンクリートの劣化を検知する、コンクリートの劣化の早期検知方法。
(A)コンクリートの取得対象面のデジタル画像を経時的に取得する、画像取得工程
(B)前記デジタル画像に基づきデジタル画像相関法を用いてひずみを算出し、該ひずみに基づき最大主ひずみの分布を得る、最大主ひずみ分布取得工程 - 前記模様に加えて、ひずみの正負の分布に基づきコンクリートの劣化を検知する、請求項1に記載のコンクリートの劣化の早期検知方法。
- 前記模様を用いて、下記(a)〜(e)の基準に基づきコンクリートの劣化を検知する、請求項1に記載のコンクリートの劣化の早期検知方法
(a)亀甲状の模様が出現した部分は、アルカリシリカ反応として検知する。
(b)骨材部分を除いて全体的に一様な模様が出現した場合は、エトリンガイトの遅延生成として検知する。
(c)斑点状の模様が出現した場合は、凍結融解として検知する。
(d)鉄筋が存在しない箇所に線状の模様、または、構造物の柱若しくは梁等の部材に対して斜め方向に線状の模様が出現した場合は、乾燥収縮として検知する。
(e)鉄筋の直上に線状の模様が出現した場合は、鉄筋腐食として検知する。 - 前記模様とひずみの正負の分布を用いて、下記(f)〜(j)の基準に基づきコンクリートの劣化を検知する、請求項2に記載のコンクリートの劣化の早期検知方法。
(f)亀甲状の模様が出現した場合であって、亀甲状の模様の線部が、より大きいプラス(膨張)のひずみを示し、基質部(模様以外の部分)も全体的にプラス(膨張)のひずみを示す場合は、アルカリシリカ反応として検知する。
(g)骨材部分を除いて全体的に一様な模様が出現した場合であって、骨材の部分はひずみを示さないが、その他のペーストまたはモルタルからなる部分が全体的にプラス(膨張)のひずみを示す場合は、エトリンガイトの遅延生成として検知する。
(h)斑点状の模様が出現した場合であって、斑点の部分が大きいプラス(膨張)のひずみを示す場合は、凍結融解として検知する。
(i)鉄筋が存在しない箇所に線状の模様、または、構造物の柱若しくは梁等の部材に対して斜め方向に線状の模様が出現した場合であって、該模様の線部がプラス(膨張)のひずみを示し、基質部は全体的にマイナス(収縮)のひずみを示す場合は、乾燥収縮として検知する。
(j)鉄筋の直上に線状の模様が出現した場合であって、模様の線部がプラス(膨張)のひずみを示す場合は、鉄筋の腐食として検知する。
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