JP2017180372A - 内燃機関制御装置 - Google Patents

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哲志 市橋
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哲志 市橋
智巳 米丸
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Abstract

【課題】内燃機関の個体差を抑制可能である簡便な構成で、適切な燃調を実現して内燃機関の運転状態を制御可能な内燃機関制御装置を提供する。【解決手段】内燃機関制御装置1は、内燃機関の燃焼を発生させるように内燃機関に指示された燃料噴射量の指示値に基づき内燃機関の推定トルクを算出する推定トルク算出部610と、燃焼により発生した内燃機関の実トルクを算出する実トルク算出部607と、推定トルクと実トルクとに応じて、運転状態を制御する運転状態制御部611と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関制御装置に関し、特に自動二輪車等の車両の内燃機関に適用される内燃機関制御装置に関する。
近年、自動二輪車等の車両の内燃機関に対しては、コントローラを用いて、内燃機関に対する燃料の供給、空気の供給並びに燃料及び空気から成る混合気への点火を協働させながら内燃機関の運転状態を電子制御する電子制御式の内燃機関制御装置が採用されている。
具体的には、かかる内燃機関制御装置は、エアフローセンサ、スロットル開度センサ及び吸気マニホルド負圧センサ等のセンサからの各々の検出信号を用いて得られる内燃機関に対する吸入空気量やクランク角センサからの検出信号を用いて得られる内燃機関の回転数等に基づき、内燃機関での適切な空燃比を実現するための燃料噴射量を算出して、この燃料噴射量で内燃機関に対して燃料噴射を実行すると共に、所定の点火時期で吸入空気及び噴射燃料の混合気に対して点火を実行する構成を有する。
また、この際、内燃機関制御装置においては、内燃機関におけるMBT(Minimum advance for the Best Torque)及びノッキング等に関する特性を考慮して、燃料噴射量及び点火時期における限界値が各々設定されている場合もある。また、このような内燃機関制御装置の中には、筒内圧センサ、ノックセンサ及びイオン電流センサ等のセンサからの各々の検出信号を用いて、燃焼室内の燃焼状態に応じた混合気への燃料噴射量及び点火時期の調整を各々実行する構成を有するものもある。
かかる状況下で、特許文献1は、エンジンの制御方法に関し、クランク角センサ、酸素濃度センサ、温度センサ、スロットル開度センサ、吸気管圧力センサ、熱線式吸入空気量センサ、吸入空気温度センサ、排気管温度センサ及び触媒温度センサを用いて、筒内温度の上昇によって点火以前に着火が起こるプレイグニッションを防止し、また点火以前に着火が起こってしまったときでも適切に処理を行ないエンジンの破損を防止する構成を有する。
特開平9−273436号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成では、酸素濃度センサ、吸気管圧力センサ、熱線式吸入空気量センサ、排気管温度センサ及び触媒温度センサ等の付加的なセンサを各種設ける必要があり、その構成が煩雑であると共に車両全体のコストが上昇する傾向にあると考えられて、この点で改良の余地があるものと考えられる。
また、本発明者の検討によれば、特に、内燃機関の空燃比の状態を把握するためには、酸素濃度センサや広域空燃比センサ等の高価なセンサを用いることが必要となり、車両全体のコストが上昇する傾向にあると考えられて、この点でも改良の余地があるものと考えられる。
また、本発明者の検討によれば、特に、内燃機関の空燃比の状態を把握するために普及型の酸素濃度センサを用いると内燃機関の運転状態のフィードバック制御が理論空燃比及びその近傍領域において限定的に可能となるため、かかるフィードバック制御をより広い空燃比領域で可能とするには、広域空燃比センサを用いることが必要となり、いずれにしても車両全体のコストが上昇する傾向にあると考えられて、この点でも改良の余地があるものと考えられる。
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、内燃機関の個体差を抑制可能である簡便な構成で、適切な燃調を実現して内燃機関の運転状態を制御可能な内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するべく、本発明は、内燃機関の運転状態を制御する内燃機関制御装置において、前記内燃機関の燃焼を発生させるように前記内燃機関に指示された燃料噴射量の指示値に基づき前記内燃機関の推定トルクを算出する推定トルク算出部と、前記燃焼により発生した内燃機関の実トルクを算出するトルク算出部と、前記推定トルクと前記実トルクとに応じて、前記運転状態を制御する運転状態制御部と、を備えることを第1の局面とする。
本発明は、第1の局面に加えて、前記推定トルク算出部は、前記実トルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、前記推定トルクを補正して補正トルクを算出し、前記運転状態制御部は、前記補正トルクと、前記実トルクと、に応じて、前記運転状態を制御することを第2の局面とする。
本発明は、第2の局面に加えて、前記運転状態制御部は、前記実トルクに比べて前記補正トルクが大きいときに、最新の燃料噴射量の指示値よりも小さい新たな燃料噴射量の指示値を前記内燃機関に指示することで、前記運転状態を制御することを第3の局面とする。
以上の本発明の第1の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、内燃機関の燃焼を発生させるように内燃機関に指示された燃料噴射量の指示値に基づき内燃機関の推定トルクを算出する推定トルク算出部と、燃焼により発生した内燃機関の実トルクを算出するトルク算出部と、推定トルクと実トルクとに応じて、運転状態を制御する運転状態制御部と、を備えるものであるので、内燃機関の個体差を抑制可能である簡便な構成で、適切な燃調を実現して内燃機関の運転状態を制御することができる。
本発明の第2の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、推定トルク算出部が、実トルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、推定トルクを補正して補正トルクを算出し、運転状態制御部が、補正トルクと、実トルクと、に応じて、運転状態を制御するものであるので、実トルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して推定トルクを適切に補正することができ、かかる補正値を用いることにより、内燃機関の運転状態をより適切に制御することができる。
本発明の第3の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、運転状態制御部が、実トルクに比べて補正トルクが大きいときに、最新の燃料噴射量の指示値よりも小さい新たな燃料噴射量の指示値を内燃機関に指示するものであるため、内燃機関の燃調がリッチ側にある状態を適切に抑止することができ、内燃機関の運転状態をより適切に制御することができる。
図1は、本発明の実施形態における内燃機関制御装置の構成を示すブロック図である。 図2は、本実施形態における内燃機関制御装置が実行する運転状態制御処理の流れを示すフローチャートである。
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関制御装置につき、詳細に説明する。
[構成]
まず、図1を参照して、本実施形態における内燃機関制御装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態における内燃機関制御装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態における内燃機関制御装置1は、自動二輪車等の車両に搭載され、車両の内燃機関の運転状態を制御する。本実施形態における内燃機関制御装置1は、スロットル開度センサ20、クランク角センサ30、及び冷却水温センサ50に電気的に接続されたECU(Electronic Control Unit)60を備えている。なお、かかる内燃機関制御装置1が適用される内燃機関は、典型的には4ストロークサイクルの内燃機関であると共に、単気筒又は爆発が不等間隔の2気筒などの内燃機関である。また、説明の便宜上、車両や内燃機関の構成についての具体的な図示は、省略している。また、内燃機関に適用される燃料としては、原理的には、現在入手可能なものが適用でき、例えば、ガソリン、エタノール及びメタノール等の種別を問わず、ガソリンのオクタン価の種別も問わないものである。
スロットル開度センサ20は、内燃機関のスロットル装置の本体部に装着され、スロットルバルブの開度をスロットル開度として検出し、このように検出したスロットル開度を示す電気信号をECU60に入力する。
クランク角センサ30は、内燃機関において、リラクタの外周面に形成されている歯部に対向した態様でシリンダブロックの下部に組み付けられたロアケース等に装着され、クランクシャフト(クランク軸)の回転に伴って回転する歯部を検出することによって、クランクシャフトの回転速度を内燃機関の回転速度として検出する。クランク角センサ30は、このように検出した内燃機関の回転速度を示す電気信号をECU60に入力する。
冷却水温センサ50は、内燃機関の冷却水通路に侵入した態様でシリンダブロックに装着され、冷却水通路内を流通する冷却水の温度を検出し、このように検出した冷却水の温度を示す電気信号をECU60に入力する。
ECU60は、車両が備えるバッテリからの電力を利用して動作する。ECU60は、A/D(Analog to Digital)変換回路601a及び601b、波形整形回路602、スロットル開度算出部603、角速度算出部604、冷却水温算出部606、実トルク算出部607、RAM609、推定トルク算出部610、運転状態制御部611、並びに駆動回路612a、612b及び612cを備えている。なお、スロットル開度算出部603、角速度算出部604、冷却水温算出部606、実トルク算出部607、推定トルク算出部610、及び運転状態制御部611は、ECU60の演算処理装置が図示を省略するメモリから必要な制御プログラムを読み出すと共にRAM609から必要な制御データを読み出して運転状態制御処理を実行する際の機能ブロックとして示している。
A/D変換回路601aは、スロットル開度センサ20から入力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態に変換してスロットル開度算出部603に入力する。
A/D変換回路601bは、冷却水温センサ50から入力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態に変換して冷却水温算出部606に入力する。
波形整形回路602は、クランク角センサ30から入力された電気信号に対してスムージング処理等の整形処理を施した後に電気信号を角速度算出部604に入力する。
スロットル開度算出部603は、A/D変換回路601aから入力された電気信号を用いてスロットル開度を算出し、このようにスロットル開度算出部603が算出したスロットル開度は、運転状態制御部611で用いられる。
角速度算出部604は、波形整形回路602から入力された電気信号を用いて、内燃機関の排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程の各行程におけるクランク軸の角速度を内燃機関の回転角速度として算出すると共に、かかる各行程におけるクランク軸の各角加速度を内燃機関の回転角加速度として算出する。このように角速度算出部604が算出した内燃機関の回転角速度及び回転角加速度は、実トルク算出部607において内燃機関の発生トルクである出力トルク(実トルク)の算出に用いられる。
具体的には、角速度算出部604は、波形整形回路602から入力された電気信号を用いて内燃機関のピストンの位置を検出し、それが排気上死点、吸気下死点、圧縮上死点及び膨張下死点のいずれにあるかを判別すると共にそのタイミングを取得する。併せて、角速度算出部604は、ピストンの位置が排気上死点にあると判別した場合には内燃機関の排気行程の行程時間、ピストンの位置が吸気下死点にあると判別した場合には内燃機関の吸気行程の行程時間、ピストンの位置が圧縮上死点にあると判別した場合には内燃機関の圧縮行程の行程時間、及びピストンの位置が膨張下死点にあると判別した場合には内燃機関の膨張行程の行程時間を、対応して算出する。
ここで、これらの場合に対応して、角速度算出部604は、クランクシャフトの回転方向の角度であるクランク角における各行程の角度範囲である180°を排気行程の行程時間で除して内燃機関の排気行程の角速度、180°を吸気行程の行程時間で除して内燃機関の吸気行程の角速度、180°を圧縮行程の行程時間で除して内燃機関の圧縮行程の角速度、及び180°を膨張行程の行程時間で除して内燃機関の膨張行程の角速度、を、算出する。
更に、これらの場合に対応して、角速度算出部604は、排気行程の角速度からその直前に存在した膨張行程の角速度を減じて排気行程の角速度差を算出すると共に、排気行程の角速度差を排気行程の行程時間で除し、吸気行程の角速度からその直前に存在した排気行程の角速度を減じて吸気行程の角速度差を算出すると共に、吸気行程の角速度差を吸気行程の行程時間で除し、圧縮行程の角速度からその直前に存在した吸気行程の角速度を減じて圧縮行程の角速度差を算出すると共に、圧縮行程の角速度差を圧縮行程の行程時間で除し、及び膨張行程の角速度からその直前に存在した圧縮行程の角速度減じて膨張行程の角速度差を算出すると共に、膨張行程の角速度差を膨張行程の行程時間で除して、排気行程の角加速度、吸気行程の角加速度、圧縮行程の角加速度、及び膨張行程の角加速度を算出する。なお、かかる各行程の角速度差は、その行程の終了時点のクランクシャフトの角速度からその行程の開始時点のクランクシャフトの角速度を除して算出してもよい。
このように、内燃機関の実トルクの算出のために排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程の各工程における内燃機関のクランクシャフトの角加速度の算出を行うためには、クランクシャフトの回転角における180°毎に少なくとも1つのクランクパルスがあれば足りることになる。つまり、このことは、自動二輪車で多く採用されているクランクシャフトの回転角の360°において1歯のみを有するリラクタに更に1歯を付加するだけの簡便な構造変更を施すことが必要となることを意味するから、その結果、コストアップを最小限に抑えつつ精度のよい内燃機関の実トルクの算出を可能とするものである。
また、このように、内燃機関の実トルクの算出する際に内燃機関のクランクシャフトの角加速度の算出をクランクシャフトの回転角における180°毎に行えば、かかる実トルクの算出において、内燃機関のクランク機構におけるコンロッド及びピストンを主とする往復部材の慣性モーメントの影響を原理的に相殺することが可能となると共に、クランクシャフトの捩り振動の影響も原理的に吸収することを可能とする。このことは、内燃機関の高回転を含む運転領域において、共通化された算出手法で内燃機関のクランクシャフトの角加速度の算出を行って実トルクの算出を行うことを可能とする。ここで、かかる往復部材の慣性モーメントによる加速成分及び減速成分は、吸気行程及び排気行程におけるクランクシャフトの回転角における360°の区間毎に一巡し、圧縮行程及び膨張行程におけるクランクシャフトの回転角における360°の区間で一巡するものである。また、内燃機関の低回転時にはバルブスプリングの作動抵抗も無視し得ないが、これによる加速成分及び減速成分は、排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程の各工程におけるクランクシャフトの回転角における180°の区間毎に対称に発生するものである。
冷却水温算出部606は、A/D変換回路601bから入力された電気信号を用いて冷却水の温度を内燃機関の温度(エンジン温度)として算出し、このように冷却水温算出部606が算出したエンジン温度は、運転状態制御部611で用いられる。かかる冷却水の温度は、内燃機関の温度を代表的に示す内燃機関の代表温度であって、内燃機関のシリンダを冷却する冷却熱量を反映した温度であると評価され得るものである。なお、かかる内燃機関の代表温度としては、冷却水の温度の他に、内燃機関の潤滑油の温度等を用いてもよい。
実トルク算出部607は、角速度算出部604が算出した内燃機関の回転角速度を直接的に用いて内燃機関の実トルクを算出し、このように実トルク算出部607が算出した内燃機関の実トルクは、運転状態制御部611で用いられる。
具体的には、実トルク算出部607は、特に角速度算出部604が算出した内燃機関の排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程における回転角加速度を、内燃機関の排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程における実トルクとして、対応して算出する。ここで、排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程における実トルクは、内燃機関のクランク機構におけるコンロッド及びピストンを主とする往復部材の単位慣性モーメントあたりの排気抵抗トルク、吸気抵抗トルク、圧縮抵抗トルク及び膨張発生トルクに対応して相当するものである。詳しくは、排気抵抗トルクは、排気行程における内燃機関に対する外部負荷、内燃機関の内部フリクション及び内燃機関の排気抵抗が合算された抵抗トルクであるため、かかる外部負荷及び内部フリクションが一定の状態であれば、内燃機関の大気圧及びその変化の指標とすることが可能となる。吸気抵抗トルクは、吸気行程における内燃機関に対する外部負荷、内燃機関の内部フリクション及び内燃機関の吸気抵抗が合算された抵抗トルクであるため、かかる外部負荷及び内部フリクションが一定の状態であれば、内燃機関のスロットル開度及びその変化の指標とすることが可能となる。圧縮抵抗トルクは、圧縮行程における内燃機関に対する外部負荷、内燃機関の内部フリクション及び内燃機関の圧縮抵抗が合算された抵抗トルクであるため、かかる外部負荷及び内部フリクションが一定の状態であれば、内燃機関の吸入空気量及びその変化の指標とすることが可能となる。また、膨張発生トルクは、膨張行程における内燃機関に対する外部負荷、内燃機関の内部フリクション及び内燃機関が発生した出力トルクが合算されたトルクであるため、かかる外部負荷及び内部フリクションが一定の状態であれば、内燃機関が発生する実トルクの及びその変化、つまり内燃機関の駆動力及びその変化の指標とすることが可能となる。
このように、内燃機関の排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程の各工程についてクランクシャフトの回転角における180°毎に区分けして内燃機関の実トルクの算出を行うことにより、排気抵抗トルク、吸気抵抗トルク、圧縮抵抗トルク及び膨張発生トルクを各々算出することを可能とし、これにより、負荷・フリクショントルク及び行程発生トルク差をといったトルク成分を算出することを可能とする。
具体的には、実トルク算出部607は、互いに連続する排気行程及び吸気行程における角加速度同士の和から負荷・フリクショントルクを算出すると共に、互いに連続する圧縮行程及び膨張行程における角加速度同士の差又は比から行程発生トルク差を算出する。詳しくは、負荷・フリクショントルクは、排気抵抗トルク及び吸気抵抗トルクを合算することにより得られるもので、典型的には内燃機関の暖気状態において内燃機関に対して作用する抵抗力及びその変化の指標とすることが可能となる。行程発生トルク差は、圧縮抵抗トルク及び膨張発生トルクを合算することにより、又はそれらの比をとることにより得られるもので、内燃機関に作用している供給ガスの総量の及びその変化、つまり典型的には燃料噴射システムにおけるスロットル開度及び吸気圧並びにそれらの変化の指標とすることが可能となる。
また、実トルク算出部607は、内燃機関の実トルクの変動及び燃料噴射量の変動等に起因したトルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、実トルクを補正して補正値を算出してもよい。
RAM609は、揮発性の記憶装置によって構成され、運転状態制御部611が内燃機関の運転状態を制御する際に用いる各種データ(燃料噴射量の指示値や点火時期等)を記憶する運転状態制御部611のワーキングエリアとして機能する。
推定トルク算出部610は、燃料噴射量の指示値に基づいて内燃機関が発生するトルクの推定値を算出し、このように推定トルク算出部610が算出した内燃機関のトルクの推定値は、運転状態制御部611で用いられる。
ここで、特に、内燃機関が失火等の発生しない通常の燃焼状態にあるとき、その燃焼室に対して噴射された燃料量と発生したトルクとの間には実質的に比例関係といってよいような相関関係が成立する。つまり、内燃機関がかかる通常の燃焼状態にあることを前提として、燃料噴射量から発生トルクを推定して算出することが可能となる。また、このように推定されるトルクに対応する実トルクとしては、内燃機関の運転状態の制御目的に応じて、排気行程、吸気行程、圧縮行程及び膨張行程の各行程における実トルク、負荷・フリクショントルク、並びに行程発生トルク差を、必要に応じて単独で又は組み合わせて用いればよい。
具体的には、内燃機関の燃焼室に対して噴射された燃料量と発生したトルクとは実質的に比例関係にあるという観点から、ボア、ストローク、シリンダ、シリンダヘッド、及び冷却系等が同一である同一設計仕様の内燃機関において最適な出力トルクが得られるような内燃機関、つまり量産における好ましい中央特性の内燃機関個体(マスタエンジン)において、燃料噴射量と発生トルクとの関係を予め求めて規定しておき、これを他の内燃機関に適用してRAM609に記憶されている燃料噴射量の最新の指示値からその内燃機関が発生するトルクの推定値を算出することにより、運転状態制御部611において内燃機関の個体差である製造時の公差によるばらつき、特に燃料噴射量のばらつき、圧縮比のばらつき及び吸入空気量のばらつき等に起因する発生トルクの過不足を補うことが可能となる。この際、燃料噴射量のばらつき、圧縮比のばらつき及び吸入空気量のばらつき等に起因する発生トルクの過不足を総合的に網羅して補うことが可能となり、ユーザにとって好ましい車両挙動を実現することが可能となる。また、同一仕様の内燃機関について、酸素濃度センサや広域空燃比センサを用いることなく燃調、つまり空燃比のばらつきを抑制することが可能となる。
また、推定トルク算出部610は、RAM609に記憶されている燃料噴射量の最新及び過去の指示値を用いて、内燃機関の実トルクの変動及び燃料噴射量の変動等に起因したトルクの発生特性を反映した時間遅れを加味し、内燃機関が発生するトルクの推定値を補正して補正値を算出してもよい。
運転状態制御部611は、内燃機関制御装置1全体の動作を制御する。具体的には、運転状態制御部611は、スロットル開度算出部603が算出したスロットル開度、実トルク算出部607が算出した内燃機関の出力トルク、及び推定トルク算出部610が算出した補正値等に基づいて、燃料噴射量の指示値及び点火時期等を算出する。そして、運転状態制御部611は、このように算出した燃料噴射量の指示値及び点火時期等を内燃機関に適用することにより、その運転状態を制御する。
ここで、運転状態制御部611は、燃料噴射量の推定値と内燃機関の燃料噴射量の指示値とを比較し、燃料噴射量の推定値が燃料噴射量の指示値よりも大きい場合には、実際の燃料噴射量が燃料噴射量の指示値よりも大きい、つまり内燃機関の燃調がリッチ側にあるとの観点から、燃料噴射量の指示値を増量して算出する一方で、燃料噴射量の推定値が燃料噴射量の指示値よりも小さければ実際の燃料噴射量が燃料噴射量の指示値よりも小さい、つまり内燃機関の燃調がリーン側にあるとの観点から、燃料噴射量の指示値を減量して算出するものである。これにより、内燃機関の燃調の状態を検出するセンサ等を用いることなく、内燃機関の必要な出力トルクに対して適切な燃焼となる燃焼噴射量を実現することが可能となる。なお、この際、燃料噴射量の推定値としては、内燃機関の実トルクの変動及び燃料噴射量の変動等に起因したトルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、燃料噴射量の推定値を積算、平均化した値(移動平均処理した値)をその補正値として用いてもよく、燃料噴射量の指示値としては、内燃機関の実トルクの変動及び燃料噴射量の変動等に起因したトルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、燃料噴射量の指示値を積算、平均化した値(移動平均処理した値)をその補正値として用いてもよい。
駆動回路612aは、運転状態制御部611から入力された制御信号に従ってスロットルモータ70を駆動することによってスロットル開度を制御する。
駆動回路612bは、運転状態制御部611から入力された制御信号に従って点火栓80を駆動することによって内燃機関の点火時期を制御する。
駆動回路612cは、運転状態制御部611から入力された制御信号に従って燃料噴射弁90を駆動することによって内燃機関の燃料噴射量を制御する。
以上のような構成を有する内燃機関制御装置1は、以下に示す運転状態制御処理を実行することによって、内燃機関の個体差を抑制可能である簡便な構成で、適切な燃調を実現して内燃機関の運転状態を制御する。以下、図2を参照して、この運転状態制御処理を実行する際の内燃機関制御装置1の動作について説明する。
〔運転状態制御処理〕
図2は、本実施形態における内燃機関制御装置1が実行する運転状態制御処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられてECU60が稼働したタイミングで開始となり、運転状態制御処理はステップS1の処理に進む。かかる運転状態制御処理は、ECU60が稼働状態である間、メモリから必要な制御プログラムを読み出すと共にRAM609から必要な制御データを読み出して所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS1の処理では、運転状態制御部611が、実トルク算出部607が算出した内燃機関の実トルク等に基づき内燃機関が運転中であるか否かを判別する。判別の結果、内燃機関が運転中である場合、運転状態制御部611は、運転状態制御処理をステップS2の処理に進める。一方、内燃機関が運転中でない場合には、運転状態制御部611は、今回の一連の運転状態制御処理を終了する。
ステップS2の処理では、推定トルク算出部610が、量産における好ましい中央特性の内燃機関個体(マスタエンジン)における燃料噴射量と発生トルクとの関係を示す特性に基づいて、燃料噴射量の指示値から推定発生トルクTIDCBP0を算出する。そして、推定トルク算出部610がこのように算出した推定発生トルクTIDCBP0は、運転状態制御部611等で用いられる。これにより、ステップS2の処理は完了し、運転状態制御処理はステップS3の処理に進む。
ステップS3の処理では、推定トルク算出部610が、内燃機関の実トルクの変動及び燃料噴射量の変動等に起因したトルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、ステップS2の処理で算出した最新の推定発生トルクTIDCBP0及び運転状態制御部611によりRAM609に記憶されている過去の推定発生トルクTIDCBP0を用いて、それらを積算、平均化した値(移動平均処理した値)を、内燃機関の推定発生トルク平均値TIDCBPAとして算出する。そして、推定トルク算出部610がこのように算出した推定発生トルク平均値TIDCBPAは、運転状態制御部611で用いられる。これにより、ステップS3の処理は完了し、運転状態制御処理はステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、実トルク算出部607が、角速度算出部604が算出した内燃機関の回転角速度を用いて内燃機関の実トルクを算出する。ここで、実トルク算出部607が算出した実トルクとしては、内燃機関に作用している供給ガスの総量の及びその変化、つまり典型的には燃料噴射システムにおけるスロットル開度及び吸気圧並びにそれらの変化の指標とすることができる行程発生トルク差DCBCP0とした。これにより、ステップS4の処理は完了し、運転状態制御処理はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、実トルク算出部607が、内燃機関の実トルクの変動及び燃料噴射量の変動等に起因したトルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、ステップS4の処理で算出した最新の行程発生トルク差DCBCP0及び運転状態制御部611によりRAM609に記憶されている過去の行程発生トルク差DCBCP0を用いて、それらを積算、平均化した値(移動平均処理した値)を、内燃機関の行程発生トルク差平均値DCBCPAとして算出する。そして、実トルク算出部607がこのように算出した行程発生トルク差平均値DCBCPAは、運転状態制御部611で用いられる。これにより、ステップS5の処理は完了し、運転状態制御処理はステップS6の処理に進む。なお、最新の行程発生トルク差DCBCP0及び過去の行程発生トルク差DCBCP0をを積算、平均化することなく、最新の行程発生トルク差DCBCP0を内燃機関の行程発生トルク差平均値DCBCPAとして採用してもよい。
ステップS6の処理では、運転状態制御部611が、推定発生トルク平均値TIDCBPAが行程発生トルク差平均値DCBCPAより大きいか否かを判別する。判別の結果、推定発生トルク平均値TIDCBPAが行程発生トルク平均値DCBCPAより大きい場合、運転状態制御部611は、燃料噴射量が過多になっていると判断し、運転状態制御処理をステップS7の処理に進める。一方、推定発生トルク平均値TIDCBPAが行程発生トルク平均値DCBCPA以下である場合には、運転状態制御部611は、燃料噴射量が過少になっていると判断し、運転状態制御処理をステップS8の処理に進める。
ステップS7の処理では、運転状態制御部611が、燃料噴射量が過多であるという観点から燃料噴射量の指示値を減量して設定して算出すると共に、クランクシャフトの角速度等を用いて内燃機関の点火時期を算出し、併せて、アクセル開度等を用いて目標スロットル開度を算出し、それらに応じて駆動回路612c、612b及び612aを介して燃料噴射弁90、点火栓80及びスロットルモータ70を駆動することによって、内燃機関の運転状態を制御する。この際、運転状態制御部611は、このように各々算出した燃料噴射量の指示値、点火時期及び目標スロットル開度をRAM609に記録した後にRAM609からこれらを読み出して内燃機関の運転状態を制御する。これにより、ステップS7の処理は完了し、今回の一連の運転状態制御処理は終了する。
ステップS8の処理では、運転状態制御部611が、燃料噴射量が過少であるという観点から燃料噴射量の指示値を増量して設定して算出すると共に、クランクシャフトの角速度等を用いて内燃機関の点火時期を算出し、併せて、アクセル開度等を用いて目標スロットル開度を算出し、それらに応じて駆動回路612c、612b及び612aを介して燃料噴射弁90、点火栓80及びスロットルモータ70を駆動することによって、内燃機関の運転状態を制御する。この際、運転状態制御部611は、このように各々算出した燃料噴射量の指示値、点火時期及び目標スロットル開度をRAM609に記録した後にRAM609からこれらを読み出して内燃機関の運転状態を制御する。これにより、ステップS8の処理は完了し、今回の一連の運転状態制御処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関制御装置1は、内燃機関の燃焼を発生させるように内燃機関に指示された燃料噴射量の指示値に基づき内燃機関の推定トルクを算出する推定トルク算出部610と、燃焼により発生した内燃機関の実トルクを算出する実トルク算出部607と、推定トルクと実トルクとに応じて、運転状態を制御する運転状態制御部611と、を備えるものであるので、内燃機関の個体差を抑制可能である簡便な構成で、適切な燃調を実現して内燃機関の運転状態を制御することができる。
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、推定トルク算出部610が、実トルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、推定トルクを補正して補正トルクを算出し、運転状態制御部611が、補正トルクと、実トルクと、に応じて、運転状態を制御するものであるので、実トルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して推定トルクを適切に補正することができ、かかる補正値を用いることにより、内燃機関の運転状態をより適切に制御することができる。
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、運転状態制御部611が、実トルクに比べて補正トルクが大きいときに、最新の燃料噴射量の指示値よりも小さい新たな燃料噴射量の指示値を内燃機関に指示するものであるため、内燃機関の燃調がリッチ側にある状態を適切に抑止することができ、内燃機関の運転状態をより適切に制御することができる。
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
以上のように、本発明は、内燃機関の個体差を抑制可能である簡便な構成で、適切な燃調を実現して内燃機関の運転状態を制御可能な内燃機関制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から自動二輪車等の車両の内燃機関に広く適用され得るものと期待される。
1…内燃機関制御装置
20…スロットル開度センサ
30…クランク角センサ
50…冷却水温センサ
60…ECU
70…スロットルモータ
80…点火栓
90…燃料噴射弁
601a、601b…A/D変換回路
602…波形整形回路
603…スロットル開度算出部
604…角速度算出部
606…冷却水温算出部
607…実トルク算出部
609…RAM
610…推定トルク算出部
611…運転状態制御部
612a、612b、612c…駆動回路

Claims (3)

  1. 内燃機関の運転状態を制御する内燃機関制御装置において、
    前記内燃機関の燃焼を発生させるように前記内燃機関に指示された燃料噴射量の指示値に基づき前記内燃機関の推定トルクを算出する推定トルク算出部と、
    前記燃焼により発生した内燃機関の実トルクを算出するトルク算出部と、
    前記推定トルクと前記実トルクとに応じて、前記運転状態を制御する運転状態制御部と、
    を備えることを特徴とする内燃機関制御装置。
  2. 前記推定トルク算出部は、前記実トルクの発生特性を反映した時間遅れを加味して、前記推定トルクを補正して補正トルクを算出し、
    前記運転状態制御部は、前記補正トルクと、前記実トルクと、に応じて、前記運転状態を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
  3. 前記運転状態制御部は、前記実トルクに比べて前記補正トルクが大きいときに、最新の燃料噴射量の指示値よりも小さい新たな燃料噴射量の指示値を前記内燃機関に指示することで、前記運転状態を制御することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017180371A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 株式会社ケーヒン 内燃機関制御装置

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