JP2017179152A - 銀インク組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀、含窒素化合物及び水を配合する配合工程において、前記β−ケトカルボン酸銀、又は少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀と前記水以外の成分とが配合された配合物(M1)を、少なくとも前記含窒素化合物と前記水とが配合された配合物(M2)に添加する方法、前記β−ケトカルボン酸銀、又は前記配合物(M1)に、前記配合物(M2)を添加する方法、前記水、又は少なくとも前記水と前記β−ケトカルボン酸銀以外の成分とが配合された配合物(M3)を、少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀と前記含窒素化合物とが配合された配合物(M4)に添加する方法、並びに前記水、又は前記配合物(M3)に、前記配合物(M4)を添加する方法、のいずれかを採用する、銀インク組成物の製造方法。
[化1]
【選択図】なし
Description
このような銀インク組成物としては、金属銀の形成材料として、β−ケトカルボン酸銀を用いたものが開示されている(特許文献1参照)。前記銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物と、が配合されてなり、β−ケトカルボン酸銀以外の金属銀の形成材料や、金属銀自体が配合されてなる他の銀インク組成物よりも、高純度の金属銀を速やかに形成できることから、極めて有用性が高い。
前記β−ケトカルボン酸銀、又は少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀と前記水以外の成分とが配合されてなる配合物(M1)を、少なくとも前記含窒素化合物と前記水とが配合されてなる配合物(M2)に添加する方法、
前記β−ケトカルボン酸銀、又は前記配合物(M1)に、前記配合物(M2)を添加する方法、
前記水、又は少なくとも前記水と前記β−ケトカルボン酸銀以外の成分とが配合されてなる配合物(M3)を、少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀と前記含窒素化合物とが配合されてなる配合物(M4)に添加する方法、並びに
前記水、又は前記配合物(M3)に、前記配合物(M4)を添加する方法、
のいずれかを採用する、銀インク組成物の製造方法を提供する。
Y1はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R1は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R2は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;R3は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;R6は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
X1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R7O−」、「R7S−」、「R7−C(=O)−」若しくは「R7−C(=O)−O−」で表される基であり;
R7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
本発明の銀インク組成物の製造方法は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)と、炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、アンモニア、及び前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の含窒素化合物(以下、単に「含窒素化合物」と略記することがある)と、水と、を配合する配合工程を有する、銀インク組成物の製造方法であって、前記配合工程において、
前記β−ケトカルボン酸銀(1)、又は少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀(1)と前記水以外の成分とが配合されてなる配合物(M1)を、少なくとも前記含窒素化合物と前記水とが配合されてなる配合物(M2)に添加する方法(以下、「配合方法(a)−1」と略記することがある)、
前記β−ケトカルボン酸銀(1)、又は前記配合物(M1)に、前記配合物(M2)を添加する方法(以下、「配合方法(a)−2」と略記することがある)、
前記水、又は少なくとも前記水と前記β−ケトカルボン酸銀(1)以外の成分とが配合されてなる配合物(M3)を、少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀(1)と前記含窒素化合物とが配合されてなる配合物(M4)に添加する方法(以下、「配合方法(b)−1」と略記することがある)、並びに
前記水、又は前記配合物(M3)に、前記配合物(M4)を添加する方法(以下、「配合方法(b)−2」と略記することがある)、
のいずれかを採用するものである。
Y1はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R1は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R2は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;R3は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;R6は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
X1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R7O−」、「R7S−」、「R7−C(=O)−」若しくは「R7−C(=O)−O−」で表される基であり;
R7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
このような沈殿物の増加が抑制された、本発明の銀インク組成物は、例えば、インクジェット印刷法での使用に好適である。
また、保存中の銀インク組成物で沈殿物が増加した場合には、この沈殿物を除去することで、銀インク組成物を目的とする用途に用いることができる。しかし、沈殿物を除去後の銀インク組成物を、沈殿物の除去が不要な銀インク組成物と同量用いて、金属銀を形成した場合、沈殿物の除去が不要な銀インク組成物を用いた場合よりも、金属銀の収量が低下してしまう。これに対して、本発明の銀インク組成物では、保存後の沈殿物の除去が不要なので、このように金属銀の収量が低下することはない。
以下、まず各配合方法について詳細に説明し、ここで用いる各種成分については、後ほど別途、詳細に説明する。
配合方法(a)−1は、β−ケトカルボン酸銀(1)を前記配合物(M2)に添加する方法(以下、「配合方法(a)−1−1」と略記することがある)、及び、前記配合物(M1)を前記配合物(M2)に添加する方法(以下、「配合方法(a)−1−2」と略記することがある)を含む。
配合物(M1)における水以外の成分(以下、「他の成分(i)」と略記することがある)は、本発明の効果を損なわない限り、β−ケトカルボン酸銀(1)及び水のいずれにも該当しない成分であれば、特に限定されない。好ましい他の成分(i)としては、例えば、アセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール、アルカン、前記含窒素化合物等が挙げられる。
例えば、他の成分(i)がアセチレンアルコール、又はアセチレンアルコール以外のアルコールである場合、これらの配合物(M1)における配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、配合方法(a)−1におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)の配合量に応じて適宜調節することが好ましい。
配合物(M2)としては、例えば、含窒素化合物及び水のみが配合されてなる配合物、含窒素化合物及び水以外に、これらのいずれにも該当しない任意成分(以下、「任意成分(I)」と略記することがある)が配合されてなる配合物が挙げられる。
好ましい任意成分(I)としては、例えば、アセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール、アルカン等が挙げられる。
そして、配合方法(a)−1において配合する含窒素化合物は、その総量のうちの好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上を、配合物(M2)とすることができ、100質量%、すなわち全量を配合物(M2)としてもよい。
すなわち、配合物(M2)における、水の配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、配合方法(a)−1におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)の配合量に応じて適宜調節することが好ましい。
そして、配合方法(a)−1において配合する水は、その総量のうちの好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上を、配合物(M2)とすることができ、100質量%、すなわち全量を配合物(M2)としてもよい。
例えば、任意成分(I)がアセチレンアルコール、又はアセチレンアルコール以外のアルコールである場合、これらの配合物(M2)における配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、配合方法(a)−1におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)の配合量に応じて適宜調節することが好ましい。
そして、配合方法(a)−1において配合するアセチレンアルコール、及びアセチレンアルコール以外のアルコールは、それぞれその総量のうちの好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上を、配合物(M2)とすることができ、100質量%、すなわち全量を配合物(M2)としてもよい。
また、配合物(M2)を調製するときの時間は、特に限定されないが、1秒〜1時間であることが好ましく、10秒〜30分であることがより好ましい。
なお、配合物(M2)を調製するときの各配合成分の配合順序(添加順序)は、特に限定されない。
また、配合物(M1)を調製するときの時間は、特に限定されないが、1秒〜1時間であることが好ましく、1秒〜30分であることがより好ましい。
なお、配合物(M1)を調製するときの各配合成分の配合順序(添加順序)は、特に限定されない。
また、β−ケトカルボン酸銀(1)又は配合物(M1)の添加を開始するまでの、配合物(M2)の温度は、特に限定されないが、−20〜30℃であることが好ましく、−20〜20℃であることがより好ましい。
また、配合物(M1)を調製してから、配合物(M2)に対する配合物(M1)の添加を開始するまでの時間は、特に限定されないが、1分〜24時間であることが好ましく、1分〜60分であることがより好ましい。
また、配合物(M2)に対して、β−ケトカルボン酸銀(1)又は配合物(M1)の添加を開始してから終了するまでの時間は、特に限定されないが、1〜60分であることが好ましく、1〜40分であることがより好ましく、1〜20分であることが特に好ましい。
また、前記最終配合物の撹拌時間は、特に限定されないが、5〜120分であることが好ましく、10〜60分であることがより好ましい。
そして、前記最終配合物は、二段階で攪拌処理することが好ましく、より具体的には、例えば、0〜19℃で2〜60分撹拌した後、20〜35℃で3〜120分撹拌することが好ましく、0〜16℃で2〜30分撹拌した後、20〜30℃で8〜60分撹拌することがより好ましい。
配合方法(a)−2は、β−ケトカルボン酸銀(1)に前記配合物(M2)を添加する方法(以下、「配合方法(a)−2−1」と略記することがある)、及び、前記配合物(M1)に前記配合物(M2)を添加する方法(以下、「配合方法(a)−2−2」と略記することがある)を含む。
なお、前記配合工程において、例えば、β−ケトカルボン酸銀(1)、配合物(M1)及び配合物(M2)がいずれも存在しない容器中に、β−ケトカルボン酸銀(1)又は配合物(M1)と、配合物(M2)と、の添加を同時に開始する場合等、添加するものと添加されるものとを明確に区別できない場合には、このような配合方法は、上述の配合方法(a)−1に分類する。
同様に、配合方法(a)−2−1及び配合方法(a)−2−2において、β−ケトカルボン酸銀(1)又は配合物(M1)に添加するまでの配合物(M2)の温度は、上述の配合方法(a)−1−1及び配合方法(a)−1−2において、β−ケトカルボン酸銀(1)又は配合物(M1)の添加を開始するまでの、配合物(M2)の温度と同じである。
同様に、配合方法(a)−2−2において、配合物(M1)を調製してから、配合物(M1)に対する配合物(M2)の添加を開始するまでの時間は、上述の配合方法(a)−1−2において、配合物(M1)を調製してから、配合物(M2)に対する配合物(M1)の添加を開始するまでの時間と同じである。
また、β−ケトカルボン酸銀(1)又は配合物(M1)に対して、配合物(M2)の添加を開始してから終了するまでの時間は、特に限定されないが、1〜60分であることが好ましく、1〜40分であることがより好ましく、1〜20分であることが特に好ましい。
配合方法(b)−1は、水を前記配合物(M4)に添加する方法(以下、「配合方法(b)−1−1」と略記することがある)、及び、前記配合物(M3)を前記配合物(M4)に添加する方法(以下、「配合方法(b)−1−2」と略記することがある)を含む。
配合物(M3)におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)以外の成分(以下、「他の成分(ii)」と略記することがある)は、本発明の効果を損なわない限り、β−ケトカルボン酸銀(1)及び水のいずれにも該当しない成分であれば、特に限定されない。好ましい他の成分(ii)としては、例えば、アセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール、アルカン、前記含窒素化合物等が挙げられる。
例えば、他の成分(ii)がアセチレンアルコール、又はアセチレンアルコール以外のアルコールである場合、その配合物(M3)における配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、配合方法(b)−1におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)の配合量に応じて適宜調節することが好ましい。
配合物(M4)としては、例えば、β−ケトカルボン酸銀(1)及び含窒素化合物のみが配合されてなる配合物、β−ケトカルボン酸銀(1)及び含窒素化合物以外に、これらのいずれにも該当しない任意成分(以下、「任意成分(II)」と略記することがある)が配合されてなる配合物が挙げられる。
好ましい任意成分(II)としては、例えば、任意成分(I)におけるものと同様のアセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール、アルカン等が挙げられる。
そして、配合方法(b)−1において配合するβ−ケトカルボン酸銀(1)は、その総量のうちの好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上を、配合物(M4)とすることができ、100質量%、すなわち全量を配合物(M4)としてもよい。
そして、配合方法(b)−1において配合する含窒素化合物は、その総量のうちの好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上を、配合物(M4)とすることができ、100質量%、すなわち全量を配合物(M4)としてもよい。
例えば、任意成分(II)がアセチレンアルコール、又はアセチレンアルコール以外のアルコールである場合、その配合物(M4)における配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、配合方法(b)−1におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)の配合量に応じて適宜調節することが好ましい。
そして、配合方法(b)−1において配合するアセチレンアルコール、及びアセチレンアルコール以外のアルコールは、それぞれその総量のうちの好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上を、配合物(M4)とすることができ、100質量%、すなわち全量を配合物(M4)としてもよい。
また、配合物(M4)を調製するときの時間は、特に限定されないが、30秒〜1時間であることが好ましく、30秒〜30分であることがより好ましい。
そして、これら条件ですべての成分を配合した後に、さらに得られた配合物を、20〜35℃で3〜120分撹拌することが好ましく、20〜30℃で8〜60分撹拌することが好ましい。
なお、配合物(M4)を調製するときの各配合成分の配合順序(添加順序)は、特に限定されない。
また、配合物(M3)を調製するときの時間は、特に限定されないが、1〜20分であることが好ましく、1〜15分であることがより好ましく、1〜10分であることが特に好ましい。
なお、配合物(M3)を調製するときの各配合成分の配合順序(添加順序)は、特に限定されない。
また、水又は配合物(M3)の添加を開始するまでの、配合物(M4)の温度は、特に限定されないが、−20〜15℃であることが好ましく、0〜10℃であることがより好ましい。
また、配合物(M3)を調製してから、配合物(M4)に対する配合物(M3)の添加を開始するまでの時間は、特に限定されないが、1〜120分であることが好ましく、1〜15分であることがより好ましく、1〜10分であることが特に好ましい。
また、配合物(M4)に対して、水又は配合物(M3)の添加を開始してから終了するまでの時間は、特に限定されないが、1〜120分であることが好ましく、1〜60分であることがより好ましい。
また、前記最終配合物の撹拌時間は、特に限定されないが、3〜120分であることが好ましく、8〜60分であることがより好ましい。
配合方法(b)−2は、水に前記配合物(M4)を添加する方法(以下、「配合方法(b)−2−1」と略記することがある)、及び、前記配合物(M3)に前記配合物(M4)を添加する方法(以下、「配合方法(b)−2−1」と略記することがある)を含む。
配合方法(b)−2は、添加するものと添加されるものとが、配合方法(b)−1とは逆になったものである。
なお、前記配合工程において、例えば、水、配合物(M3)及び配合物(M4)がいずれも存在しない容器中に、水又は配合物(M3)と、配合物(M4)と、の添加を同時に開始する場合等、添加するものと添加されるものとを明確に区別できない場合には、このような配合方法は、上述の配合方法(b)−1に分類する。
同様に、配合方法(b)−2−1及び配合方法(b)−2−2において、水又は配合物(M3)に添加するまでの配合物(M4)の温度は、上述の配合方法(b)−1−1及び配合方法(b)−1−2において、水又は配合物(M3)の添加を開始するまでの、配合物(M4)の温度と同じである。
同様に、配合方法(b)−2−2において、配合物(M3)を調製してから、配合物(M3)に対する配合物(M4)の添加を開始するまでの時間は、上述の配合方法(b)−1−2において、配合物(M3)を調製してから、配合物(M4)に対する配合物(M3)の添加を開始するまでの時間と同じである。
また、水又は配合物(M3)に対して、配合物(M4)の添加を開始してから終了するまでの時間は、特に限定されないが、1〜60分であることが好ましく、1〜40分であることがより好ましく、1〜20分であることが特に好ましい。
ここで、「必須成分以外の成分」としては、上述の他の成分(i)、他の成分(ii)、任意成分(I)又は任意成分(II)に包含される成分が挙げられ、好ましいものとしては、アセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール、アルカン等が挙げられる。
すなわち、本発明の銀インク組成物の製造方法では、前記配合工程において、さらにアセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール及びアルカンからなる群から選択される1種又は2種以上を配合することが好ましい。
銀インク組成物において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
なお、本明細書において、「β−ケトカルボン酸銀(1)に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合されたβ−ケトカルボン酸銀(1)中の銀を意味し、配合後に引き続きβ−ケトカルボン酸銀(1)を構成している銀と、配合後にβ−ケトカルボン酸銀(1)が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体(金属銀)と、の両方を含む概念とする。
これに対して、例えば、「特開2009−114232号公報」(上述の特許文献1)で開示されている銀インク組成物の製造方法では、本発明における前記配合工程は一切開示されておらず、水の配合方法と、得られる銀インク組成物の保存安定性との関連についても、一切開示されていない。
配合方法(z)−1は、前記含窒素化合物、又は少なくとも前記含窒素化合物と、前記β−ケトカルボン酸銀(1)及び水以外の成分とが配合されてなる配合物を、少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀(1)と水とが配合されてなる配合物に添加する方法を含む。
配合方法(z)−2は、前記含窒素化合物、又は少なくとも前記含窒素化合物と、前記β−ケトカルボン酸銀(1)及び水以外の成分とが配合されてなる配合物に、少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀(1)と水とが配合されてなる配合物を添加する方法を含む。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R1−CY1 2−」、「CY1 3−」、「R1−CHY1−」、「R2O−」、「R5R4N−」、「(R3O)2CY1−」若しくは「R6−C(=O)−CY1 2−」で表される基である。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH2−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が挙げられる。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR2は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR3は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR4及びR5は、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R4及びR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR6は、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、R6における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
X1における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
X1におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO2)等が挙げられ、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R7がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、X1において隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH2)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン等が挙げられる。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン等が挙げられる。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
環状アミンであれば、好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2−ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀からなる層の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、例えば、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、例えば、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが挙げられる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられるが、これに限定されない。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
必須成分以外の成分は、上述のように、必須成分であるβ−ケトカルボン酸銀(1)、含窒素化合物及び水のいずれにも該当しない成分である。
必須成分以外の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
必須成分以外の成分としては、例えば、上述のアセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール、水酸基(−OH)を有しない化合物等が挙げられ、アセチレンアルコールが好ましい。
アセチレンアルコールは、炭素原子間の三重結合(C≡C)を有するアルコールであれば、特に限定されないが、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
アセチレンアルコール以外のアルコールは、炭素原子間の三重結合(C≡C)を有さず、かつ水酸基(−OH)を有する化合物であれば特に限定されないが、常温で液状であるものが好ましい。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜30℃の温度等が挙げられる。
また、アセチレンアルコール以外のアルコールは、一価アルコール及び二価以上の多価アルコールのいずれでもよい。
アセチレンアルコール以外のアルコールで好ましいものとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール等が挙げられる。
アセチレンアルコール以外のアルコールは、炭素数が1〜7であることが好ましい。
水酸基(−OH)を有しない化合物は、上述のアセチレンアルコール及びアセチレンアルコール以外のアルコールのいずれにも該当しないものであればよいが、常温で液状であるものが好ましい。
水酸基を有しない化合物で好ましいものとしては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、デカヒドロナフタレン等のアルカンを含む脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられる。
金属銀は、例えば、本発明の銀インク組成物を基材等の目的とする箇所に付着させ、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が挙げられる。
なかでも、本発明の製造方法で得られた銀インク組成物は、印刷法での適用に好適なものであり、インクジェット式印刷法での適用により好適なものである。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜280℃であることが好ましく、70〜260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目及び二段階目の加熱処理における加熱温度は、130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
上記の加熱した液体は湯(加熱した水)であることが好ましく、二段階目の加熱処理は、一段階目の加熱処理を行った銀インク組成物を湯中に浸漬すること、すなわち湯煎によって行うことが好ましい。
二段階目の加熱処理を液相中で行った場合には、この加熱処理によって形成された金属銀を、さらに乾燥させればよい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
一段階目の非加湿条件下での加熱処理に次いで行う、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜140℃であることが好ましく、70〜130℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分〜2時間であることが好ましく、1分〜1時間であることがより好ましく、1分〜30分であることが特に好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目の非加湿条件下での加熱処理及び二段階目の加湿条件下での加熱処理における加熱温度は、いずれも130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
上述のように、本発明の銀インク組成物を用いて、基材上に金属銀の層(銀層)を形成して得られた積層体において、銀層は、膜状とすることが可能であり、パターニングすることも可能である。
本発明の銀インク組成物を用いて得られた積層体は、各種電子機器、透明導電膜等を構成するのに好適である。
前記基材の厚さは、10〜5000μmであることが好ましく、10〜3000μmであることがより好ましい。
また、基材の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスや、紙が挙げられる。
また、基材は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、2種以上の材質を併用したものでもよい。
なお、基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
銀層の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、3nm〜40μmであることが好ましく、4nm〜30μmであることがより好ましい。銀層の厚さが前記下限値以上であることで、銀層を備えることの効果をより向上させることができ、また、銀層の構造をより安定して維持できる。また、銀層の厚さが前記上限値以下であることで、積層体をより薄層化できる。
電子機器は、例えば、前記積層体を用い、前記基材を筐体(外装材)として備えるように構成でき、前記積層体中の基材で筐体(外装材)の少なくとも一部を構成した点以外は、公知の電子機器と同様の構成とすることができる。例えば、携帯電話機等の通信機器における外装材の平面又は曲面部分を前記基材とし、この外装材(基材)上に金属銀からなる細線を形成し、この細線を回路とすることで、前記積層体を回路基板として用いることができる。そして、例えば、前記積層体に加え、音声入力部、音声出力部、操作スイッチ、表示部等を組み合わせることにより、携帯電話機を構成できる。また、パターニングされた金属銀をアンテナとすることで、前記積層体をアンテナ構造体とすることができ、前記アンテナ構造体を用いた点以外は、公知のデータ受送信体と同様の構成とすることで、新規のデータ受送信体とすることができる。例えば、前記積層体において、基材上に金属銀のパターンと電気的に接続されたICチップを設けてアンテナ部とすることにより、非接触型データ受送信体を構成できる。
透明導電膜は、例えば、前記積層体を用い、金属銀のパターンを極微細配線又は極薄配線として備えるように構成でき、金属銀のパターンを極微細配線又は極薄配線として備えた点以外は、公知の透明導電膜と同様の構成とすることができる。例えば、前記積層体に加え、透明基材等と組合せることにより、タッチパネルや光学ディスプレイを構成できる。
極微細配線の線幅は、1〜20μmであることが好ましく、1.3〜15μmであることがより好ましく、1.5〜13μmであることが特に好ましい。
また、極微細配線の断面形状は、好ましくは楕円の短軸方向のほぼ半分の領域が切り取られた半楕円形状である。
一方、極薄配線の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、7nm〜5μmであることがより好ましく、10nm〜1μmであることが特に好ましい。
極薄配線の断面形状は、前記極微細配線の断面形状と同様である。
前記透明導電膜は、金属銀のパターンがこのような線幅及び厚さの少なくとも一方を満たしていることが好ましい。金属銀のパターンがこのような線幅又は厚さであれば、目視によってその存在が認識困難となるので、透明導電膜として好ましいものとなる。
上記のような電子機器、透明導電膜等は、長期に渡って高い性能を維持することが可能である。
[実施例1]
配合方法(a)−1−1を適用し、以下に示す方法で銀インク組成物を製造した。
すなわち、容器中の2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して3.0倍モル量)に、室温(25℃)下で3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」、以下、「DMHO」と略記することがある)(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を添加し、さらにここへ室温(25℃)下で水(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して1.8倍モル量)を添加して、5℃に冷却して5分撹拌し、配合物(M2)を得た。
次いで、得られた配合物(M2)をそのまま5℃に冷却しながら、ここへ2−メチルアセト酢酸銀を添加して、得られた最終配合物を同じ温度(5℃)で冷却したまま5分撹拌した。
次いで、冷却を停止し、この最終配合物を25℃の条件下でそのまま10分撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
各配合成分の種類及び配合比、並びに配合方法の分類を表1に示す。表1に記載の各配合成分の「モル比」とは、該当する配合成分の、β−ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたりの配合量(モル数)を意味する。
2−エチルヘキシルアミン及び水の配合量を表1に示すように変更した点以外は、実施例1と同じ方法で銀インク組成物を製造した。
配合方法(b)−1−1を適用し、以下に示す方法で銀インク組成物を製造した。
すなわち、容器中の2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して3.0倍モル量)に、室温(25℃)下でDMHO(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を添加して、5℃に冷却し、5分撹拌した。
次いで、得られた配合物をそのまま5℃に冷却しながら、ここへ2−メチルアセト酢酸銀を添加して、同じ温度で冷却したまま5分撹拌し、配合物(M4)を得た。
次いで、冷却を停止し、得られた配合物(M4)を25℃の条件下でそのまま10分撹拌した後、冷蔵(3℃)下で12時間保管した。そして、配合物(M4)の温度を25℃に戻した後、ここへ水(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.8倍モル量)を添加して、得られた最終配合物を25℃の条件下でそのまま10分撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
各配合成分の種類及び配合比、並びに配合方法の分類を表1に示す。
2−エチルヘキシルアミン及び水の配合量を表1に示すように変更した点以外は、実施例3と同じ方法で銀インク組成物を製造した。
配合方法(a)−1−1を適用し、以下に示す方法で銀インク組成物を製造した。
すなわち、容器中の2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して4.8倍モル量)に、室温(25℃)下でDMHO(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を添加し、さらにここへ室温(25℃)下で水(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して1.0倍モル量)を添加し、次いでさらにここへ室温(25℃)下で2−プロパノール(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.5倍モル量)を添加して、5℃に冷却し、5分撹拌して、配合物(M2)を得た。
次いで、得られた配合物(M2)をそのまま5℃に冷却しながら、ここへ2−メチルアセト酢酸銀を添加して、得られた最終配合物を同じ温度(5℃)で冷却したまま5分撹拌した。
次いで、冷却を停止し、この最終配合物を25℃の条件下でそのまま10分撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
各配合成分の種類及び配合比、並びに配合方法の分類を表1に示す。なお、表1中、「2−PrOH」は2−プロパノールを意味する。
2−エチルヘキシルアミン、水及び2−プロパノールの配合量を表1に示すように変更した点以外は、実施例5と同じ方法で銀インク組成物を製造した。
配合方法(a)−1−1を適用し、以下に示す方法で銀インク組成物を製造した。
すなわち、容器中の2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して3.4倍モル量)に、室温(25℃)下で水(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して2.5倍モル量)を添加した後、さらに2−プロパノール(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して3.0倍モル量)を添加して、5℃に冷却し、5分撹拌して、配合物(M2)を得た。
次いで、得られた配合物(M2)をそのまま5℃に冷却しながら、ここへ2−メチルアセト酢酸銀を添加して、得られた最終配合物を同じ温度(5℃)で冷却したまま5分撹拌した。
次いで、冷却を停止し、この最終配合物を25℃の条件下でそのまま10分撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
各配合成分の種類及び配合比、並びに配合方法の分類を表1に示す。
配合方法(b)−1−1を適用し、以下に示す方法で銀インク組成物を製造した。
すなわち、容器中の2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して6.2倍モル量)に、室温(25℃)下でDMHO(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を添加して、5℃に冷却し、5分撹拌した。
次いで、得られた配合物をそのまま5℃に冷却しながら、ここへ2−メチルアセト酢酸銀を添加して、同じ温度で冷却したまま5分撹拌し、配合物(M4)を得た。
次いで、冷却を停止し、得られた配合物(M4)を25℃の条件下でそのまま10分撹拌した後、冷蔵(3℃)下で12時間保管した。そして、配合物(M4)の温度を25℃に戻した後、ここへ水(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.2倍モル量)を添加し、さらにシクロオクタン(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.2倍モル量)を添加して、得られた最終配合物を25℃の条件下でそのまま10分撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
各配合成分の種類及び配合比、並びに配合方法の分類を表1に示す。
配合方法(z)−1を適用し、以下に示す方法で銀インク組成物を製造した。
すなわち、25℃の条件下で、容器中の2−メチルアセト酢酸銀に水(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.8倍モル量)を添加して、25℃の条件下でそのまま5分撹拌した。
次いで、別の容器に入った2−エチルヘキシルアミン(2−メチルアセト酢酸銀に対して3.0倍モル量)に、室温(25℃)下でDMHO(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を添加して、5℃に冷却し、5分撹拌した。
次いで、上記で得られた2−エチルヘキシルアミンとDMHOとの配合物を、5℃の条件下で、上記で得られた2−メチルアセト酢酸銀と水との配合物へ添加し、5℃で冷却したまま5分撹拌した。
次いで、冷却を停止し、得られた配合物を25℃の条件下でそのまま10分撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
各配合成分の種類及び配合比、並びに製造方法の分類を表1に示す。
2−エチルヘキシルアミン及び水の配合量を表1に示すように変更した点以外は、比較例1と同じ方法で銀インク組成物を製造した。
上記で得られた銀インク組成物を、製造直後から3℃で1週間静置保存し、この保存後の銀インク組成物について、目視観察により沈殿の増加の有無を確認した。そして、沈殿の増加が認められなかった銀インク組成物については、その保存安定性を合格(○)と判定し、沈殿の増加が認められた銀インク組成物については、その保存安定性を不合格(×)と判定した。結果を表1に示す。
これに対して、比較例1〜2の銀インク組成物では、保存時に沈殿物が顕著に増加しており、保存安定性が低かった。
Claims (2)
- 下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀と、炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、アンモニア、及び前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の含窒素化合物と、水と、を配合する配合工程を有する、銀インク組成物の製造方法であって、
前記配合工程において、
前記β−ケトカルボン酸銀、又は少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀と前記水以外の成分とが配合されてなる配合物(M1)を、少なくとも前記含窒素化合物と前記水とが配合されてなる配合物(M2)に添加する方法、
前記β−ケトカルボン酸銀、又は前記配合物(M1)に、前記配合物(M2)を添加する方法、
前記水、又は少なくとも前記水と前記β−ケトカルボン酸銀以外の成分とが配合されてなる配合物(M3)を、少なくとも前記β−ケトカルボン酸銀と前記含窒素化合物とが配合されてなる配合物(M4)に添加する方法、並びに
前記水、又は前記配合物(M3)に、前記配合物(M4)を添加する方法、
のいずれかを採用する、銀インク組成物の製造方法。
Y1はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R1は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R2は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;R3は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;R6は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
X1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R7O−」、「R7S−」、「R7−C(=O)−」若しくは「R7−C(=O)−O−」で表される基であり;
R7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。) - 前記配合工程において、さらにアセチレンアルコール、アセチレンアルコール以外のアルコール及びアルカンからなる群から選択される1種又は2種以上を配合する、請求項1に記載の銀インク組成物の製造方法。
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