JP2017178651A - セメントクリンカーの製造条件の予測方法 - Google Patents

セメントクリンカーの製造条件の予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間でかつ高い精度でセメントクリンカーの製造条件を予測することができる方法を提供する。【解決手段】ニューラルネットワーク、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、学習データから得られる特定の範囲内となる学習データの群、及び、モニターデータを用いて、σL<σMとなる大きい学習回数でニューラルネットワークの学習を行った後に、学習回数を減らしながらニューラルネットワークの学習をσL≧σMとなるまで繰り返し、かつ、解析度判定値が第一の設定値を満たさない場合であって、解析度判定値が予め定めた第二の設定値を満たす場合、監視データの実測値が特定の限定条件によって形成される数値範囲内に属する場合であれば、ニューラルネットワークの入力層に当該の監視データの実測値を入力し、出力層から評価データの推測値を出力するセメントクリンカーの製造条件の予測方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ニューラルネットワークを用いたセメントクリンカーの製造条件の予測方法に関する。
セメント原料及び焼成用燃料には硫黄化合物が含有されており、セメントクリンカーの焼成運転中のロータリーキルン内では、これら硫黄化合物の一部が揮発している。この揮発成分は、ロータリーキルンからの排気ガスの一部として、サスペンションプレヒータに導かれるが、この間、特に、キルン窯尻とサスペンションプレヒータの最下段サイクロンの間で、揮発成分とセメント原料が接触して凝縮し、設備の内壁面上にコーティング(被膜)を形成する。コーティングが形成されると、通風障害やサイクロンの詰り等を引き起こし、操業の中断に至る場合もある。
近年、資源循環型社会の実現に向け、セメントクリンカー製造におけるリサイクル資源の大量活用と、低品位の原料及び燃料の使用量の増大等が進められている。このような中、セメントクリンカー製造において、セメント原料及び焼成用燃料に含まれる硫黄化合物の量も増大していく傾向にある。このため、サスペンションプレヒータにおいて、コーティングが形成されることに起因するトラブルの発生が助長されてきている。
サスペンションプレヒータにおいて、コーティングが形成されることに起因するトラブルの発生防止のため、セメント工場では数時間に1回の頻度で、サスペンションプレヒータ内の原料(以後、「プレヒータ原料」と略称する。)を採取し、当該プレヒータ原料中のSO量を分析して、必要に応じてセメントクリンカー製造プロセスにおいて用いられる焼成用燃料中のSO量を調整したり、ロータリーキルンやサスペンションプレヒータ(仮焼炉)等の運転条件を調整するなどの作業が行われている。
しかしながら、プレヒータ原料の採取及び分析は煩雑であると共に、1回の作業に数時間を要するため、ロータリーキルンやサスペンションプレヒータ等の運転状況をきめ細かく把握してセメントクリンカー製造プロセスを安定させる方法については、改善の余地があった。
プレヒータ原料のSO量(結果)を所定の範囲内にするために、セメントクリンカー製造プロセスにおいて用いられる焼成用燃料や、ロータリーキルンやサスペンションプレヒータの運転条件(原因)等をどのようにすべきか、という逆問題に対するアプローチ方法の一つとして、ニューラルネットワークを用いた予測方法がある。
セメントの製造方法に関するニューラルネットワークを用いた予測方法として、例えば、特許文献1には、学習データとモニターデータを用いて、σ<σとなるような、十分に大きい学習回数でニューラルネットワークの学習を行った後に、学習回数を減らしながらニューラルネットワークの学習をσ≧σとなるまで繰り返し、学習後の解析度判定値が予め定めた設定値未満である場合に、ニューラルネットワークの入力層に、セメント製造における監視データの実測値を入力して、学習後のニューラルネットワークの出力層から、セメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力する、セメントの品質または製造条件の予測方法が記載されている。
特許第5323290号公報
特許文献1に記載された方法の予測の対象は、セメントの品質に直接的に関係するセメントの製造条件であり、セメントクリンカー製造プロセスの安定化を支援するための、セメントクリンカーの製造条件(特に、プレヒータ原料中のSO量)を予測の対象としたものではない。
本発明の目的は、高い精度で、プレヒータ原料中のSO量を予測することができる方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ニューラルネットワークを用いたセメントクリンカーの製造条件の予測方法であって、学習データとモニターデータを用いて、σ<σ(この式の意味は後で説明する。)となるような、十分に大きい学習回数でニューラルネットワークの学習を行った後に、学習回数を減らしながらニューラルネットワークの学習をσ≧σとなるまで繰り返し、次いで、解析度判定値を算出して、得られた値が、予め定めた設定値未満である場合には、以下のことを行えば、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
(a)セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、学習データの監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値である場合には、得られたニューラルネットワークの入力層にセメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値を入力して、出力層からプレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力する。
(b)セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、上記範囲外の数値であれば、特定の学習データを新たに追加した学習データ群を用いて、ニューラルネットワークの学習を行った後に、得られたニューラルネットワークの入力層に、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値を入力して、出力層からプレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力する。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] 入力層及び出力層を有するニューラルネットワークを用いたセメントクリンカーの製造条件の予測方法であって、上記入力層は、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値を入力するためのものであり、上記出力層は、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力するためのものであり、上記監視データが、セメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、及びセメントクリンカーに関するデータの中から選ばれる一種以上であり、
(A)ニューラルネットワークの学習に使用する、監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせである学習データの複数からなる学習データ群の初期設定を行う工程と、
(B)学習回数の初期設定を行う工程と、
(C)設定された学習データ群を用いて、ニューラルネットワークの学習を、前工程で設定された学習回数行う工程と、
(D)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(C)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、ニューラルネットワークの学習結果の信頼性を確認するための監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせであるモニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(C)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(E)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(F)を実施する工程と、
(E)直近の工程(B)で設定された学習回数および再設定された直近のニューラルネットワークの学習回数のいずれの学習回数よりも大きい学習回数を、工程(B)において新たな学習回数として再設定し、再度工程(C)〜(D)を実施する工程と、
(F)直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数を減らした学習回数を、新たな学習回数として再設定する工程と、
(G)設定された学習データ群を用いて、ニューラルネットワークの学習を直近の工程(F)で設定された学習回数行う工程と、
(H)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(G)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、モニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(G)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(J)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(I)を実施する工程と、
(I)直近の工程(G)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め設定された回数を超えている場合、再度工程(F)〜(H)を実施し、直近の工程(G)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値以下の場合、工程(M)を実施する工程と、
(J)下記式(1)を用いて解析度判定値を算出し、該解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満である場合、ニューラルネットワークの学習を終了し工程(K)を実施する工程と、上記解析度判定値が予め定めた第一の設定値以上である場合、工程(M)を実施する工程と、
(K)セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、設定された学習データ群における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値である場合には、工程(R)を実施し、範囲外の数値である場合には、工程(L)を実施する工程と、
(L)監視データの実測値が、設定された学習データ群における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値である学習データであって、上記学習データ群に含まれない1個以上の学習データを、上記学習データ群に追加して新たな学習データ群に設定した後、後、工程(C)以降を実施する工程と
(M)工程(B)を実施した回数の大きさについての判定を行い、該回数が予め設定した回数以下である場合は、工程(N)を実施し、該回数が予め設定した回数を超える場合には工程(O)を実施する工程と、
(N)学習条件の初期化を行って、再度工程(B)〜(J)を実施する工程と、
(O)工程(J)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満である場合、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(J)におけるニューラルネットワークを、学習済みのニューラルネットワークとした後、工程(P)を実施し、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値以上である場合、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
(P)工程(J)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(J)において、学習データとして使用した監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせについて無相関検定を行い、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの種類が2種以上である場合、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの全種類を座標軸とする座標空間に学習データとして使用した監視データの実測値をプロットし、座標空間において、プロットされた監視データ同士を結ぶことで形成される監視データの全てを包含する領域であって、該領域が最大となるように監視データ同士を結ぶことで形成される領域を、予測可能監視データ領域として設定した後、工程(Q)を実施し、5%の有意水準で有意であると判断された監視データが0または1種類である場合、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
(Q)セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値が、工程(P)で設定した予測可能監視データ領域に含まれる場合、セメントクリンカーの製造条件の予測を高い精度で行うことができると判断し、工程(K)を実施し、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれない場合、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
(R)学習済みのニューラルネットワークの入力層に、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力して、セメントクリンカーの製造条件を予測する工程と、
を含むことを特徴とするセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
Figure 2017178651
(上記式(1)中、学習データの平均2乗誤差(σ)とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)である。評価データの推測値の平均値とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値の平均値である。)
[2] 上記工程(L)で追加する学習データの数が、設定された学習データ群における学習データの数の8%以上である前記[1]に記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
[3] 上記解析度判定値の予め定めた第一の設定値が10%以下であり、上記解析度判定値の予め定めた第二の設定値が上記第一の設定値よりも大きくかつ30%以下である、前記[1]または[2]に記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
[4] 上記ニューラルネットワークが、上記入力層と上記出力層の間に中間層を有する階層型のニューラルネットワークである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
[5] 上記監視データの値を人為的に変動させて得られた上記評価データの推測値に基づいて、プレヒータ原料中のSO量を最適化する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
本発明のセメントクリンカーの製造条件の予測方法を用いれば、セメントクリンカーの製造運転で得られる様々なデータに基づいて、プレヒータ原料中のSO量を短時間で、且つ高い精度で予測することができる。
また、ニューラルネットワークの入力層に入力する、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、ニューラルネットワークの学習に用いた監視データの実測値のデータ範囲の上限または下限付近である場合においても、短時間でかつ高い精度でセメントクリンカーの製造条件を予測することができる。
また、得られた推測値を基に、リアルタイムでセメントクリンカーの製造運転を最適化することが可能であり、セメントクリンカーの製造プロセスの安定化の向上を図ることができる。
さらに、ニューラルネットワークの学習を継続することによって、高い予測の精度を維持することができる。
本発明の予測方法の一例を示すフロー図である。 実施例1において設定した予測可能監視データ領域を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の予測方法は、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値を入力するための入力層と、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力するための出力層を有するニューラルネットワークを用いて、セメントクリンカーの製造条件を予測する方法である。
本発明のニューラルネットワークは、入力層と出力層の間に中間層を有する階層型のニューラルネットワークであってもよい。
上記監視データは、セメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、及びセメントクリンカーに関するデータの中から選ばれる一種以上のデータである。
上記評価データは、プレヒータ原料中のSO量に関するデータである。
監視データの一つである「セメントクリンカーの原料に関するデータ」は、セメントクリンカーの調合原料の化学組成、水硬率、ふるい試験残分量、ブレーン比表面積(粉末度)、強熱減量や、キルンへの投入時から所定の時間前の時点(例えば、5時間前の1つの時点や、3時間前、4時間前、5時間前、及び6時間前の4つの時点のような複数の時点)のセメントクリンカーの原料(搬送中に向流する空気流によって微粒分等が抜き取られたセメントクリンカーの調合原料。以後、「セメントクリンカーの窯入原料」と称す。)の化学組成、水硬率、供給量や、廃棄物のような特殊な原料からなるセメントクリンカーの副原料の供給量や、調合原料のブレンディングサイロの貯留量(残量)や、調合原料のストレージサイロの貯留量(残量)や、原料ミルと調合原料のブレンディングサイロの間に位置するサイクロンの電流値(サイクロンの回転数を表し、サイクロンを通過する原料の速度と相関関係があるもの)や、セメントクリンカーの窯入原料と副原料を混合してなる原料の化学組成、水硬率、ブレーン比表面積、ふるい試験残分量、脱炭酸率、水分量、等が挙げられる。これらのデータは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
ここで、セメントクリンカーの原料(調合原料または窯入原料)の化学組成とは、セメントクリンカーの原料中のSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率である。
監視データの一つである「セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ」は、セメントクリンカーの原料の挿入量、キルン回転数、キルン平均トルク、落口温度、焼成帯温度、セメントクリンカー温度、ボトムサイクロンの出口温度、クリンカークーラー温度、プレヒーターのガスの流量(プレヒーターの温度と相関関係があるもの)、仮焼炉出口ガスのO濃度やCO濃度等の仮焼炉出口ガス成分濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度やNO濃度等のキルンEP出口ガス成分濃度、キルン窯尻ガスのO濃度やNO濃度等のキルン窯尻ガス成分濃度、塩素バイパス抽気ガスのSO濃度等の塩素バイパス抽気ガス成分濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度等のプレヒータトップサイクロン出口ガス成分濃度等が挙げられる。これらのデータは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
監視データの一つである「セメントクリンカーに関するデータ」は、セメントクリンカーの鉱物組成、各鉱物の結晶学的性質(格子定数や結晶子径など)、2種以上の鉱物組成の比、化学組成、容重、SO含有量、Cl含有量等が挙げられる。これらのデータは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
ここで、セメントクリンカーの鉱物組成とは、3CaO・SiO(CS)、2CaO・SiO(CS)、3CaO・Al(CA)、4CaO・Al・Fe(CAF)、f.CaO、f.MgO等の含有率である。また「2種以上の鉱物組成の比」としては、例えば、CS/CSの比が挙げられる。なお、セメントクリンカーの鉱物組成は、例えばXRD−リートベルト法によって得ることができる。
セメントクリンカーの化学組成とは、セメントクリンカー中のSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率である。
監視データは、セメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、及びセメントクリンカーに関するデータの中から選ばれるいずれか一種のデータのみを用いてもよいが、これら3種のデータのうちの2種以上(複数)のデータを用いることが、評価データの予測の精度を高める観点から、好ましい。
本発明のセメントクリンカーの製造条件の予測方法において、対象となるセメントクリンカーは、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント用や、エコセメント用のセメントクリンカーが挙げられる。
セメントクリンカーの製造工程は、原料工程、焼成工程の2工程に大別される。原料工程は、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料などのセメントクリンカー原料を適当な割合で調合して、原料ミルで微粉砕し、セメントクリンカーの調合原料を得る工程である。焼成工程は、セメントクリンカーの調合原料を、サスペンションプレヒーターを経由してロータリーキルンに供給し、充分に焼成した後、冷却して、セメントクリンカーを得る工程である。
本発明では、セメントクリンカー製造運転における監視データと、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの関係を、ニューラルネットワークによって予め学習し、その学習結果を用いて、上記監視データのみに基づいて、上記評価データを予測する。
以下、本発明の予測方法について、図1を参照しながら詳しく説明する。
[工程(A)]
工程(A)において、ニューラルネットワークの学習に使用する、監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせである学習データの複数からなる学習データ群の初期設定を行う。
学習データは、学習用のサンプルを用意し、該サンプルの監視データの実測値、及び評価データの実測値を測定することで得ることができる。学習データは、作業性の観点から、予め十分な数を用意することが好ましいが、後述する工程(L)において、学習データ群に新たな学習データを追加する場合等、必要に応じて、新たな学習用のサンプルを用意し、該サンプルから新たな学習データを得てもよい。
学習データ群は、複数の学習用のサンプルから得られた全ての学習データからなるものでもよく、全ての学習データから選択した複数(ただし、全てのデータより1つ以上のデータを削除したもの)の学習データからなるものであってもよい。
全ての学習データから複数の学習データを選択して、学習データ群とする場合、学習データの選択は、全ての学習データの中から、監視データの実測値が、本発明の予測方法の対象となるセメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値と大きく異ならないものを選択することが好ましい。
具体的には、全ての学習データの中から、セメントクリンカー原料の構成が、本発明の予測方法の対象となるセメントクリンカーの製造運転におけるセメントクリンカー原料の構成と大きく異ならない学習データや、製造設備の変更や更新、さらには、製造工程の変更等が生じていない学習データを選択する。セメントクリンカー原料の構成が大きく異なる学習データや、製造設備の変更等が生じている学習データを選択した場合、該学習データがノイズとなって、予測精度の向上が困難となる場合がある。
学習データ群を構成する学習データの数は、特に限定されるものではないが、予測精度を高くする観点から、好ましくは5以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは150以上である。上記数の上限は、特に限定されないが、例えば、1,000である。
工程(A)終了後、工程(B)を実施する。
[工程(B)]
工程(B)において、学習回数の初期設定を実施する。設定される学習回数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、ニューラルネットワークの過学習(オーバーラーニング)が発生する程度に、十分に大きな回数である。具体的には、通常5千〜100万回、好ましくは1万〜10万回である。
工程(B)では、ニューラルネットワークの過学習が発生する学習回数、具体的にはσ<σ(詳しくは後述する)となるような学習回数を設定することが好ましいが、後の工程において、学習回数の増減が行われるため、工程(B)において最初に設定される学習回数は、ニューラルネットワークの学習に通常行われる学習回数を用いても問題ない。
工程(B)終了後、工程(C)を実施する。
[工程(C)]
工程(C)では、設定された学習データ群を用いて、ニューラルネットワークの学習を、前工程で設定された学習回数行う。
ここで、「設定された学習データ群」とは、工程(A)または工程(L)において設定された学習データ群であって、直近に設定されたものをいう。
また、「前工程で設定された学習回数」とは、工程(B)において設定される学習回数、または、工程(E)において再設定された新たな学習回数であって、直近の工程(工程(B)または工程(E))で設定された学習回数である。
具体的には、設定された学習データ群から、学習データの監視データの実測値をニューラルネットワークの入力層に入力して、出力層から出力された評価データの推測値と、該評価データの推測値に対応する学習データの評価データの実測値を比較評価してニューラルネットワークの修正することを、設定された学習回数行うことで、ニューラルネットワークの学習が行われる。
なお、学習回数を変更して、ニューラルネットワークの再学習を行う際には、前回の学習の結果得られたニューラルネットワークは初期化され、再度学習が行われる。
工程(C)終了後、工程(D)を実施する。
[工程(D)]
工程(D)では、σとσが算出される。σとσの大小関係から、学習がニューラルネットワークの過学習が発生する程度に十分に大きな回数行われたか否かを判断することができる。
具体的には、学習データの監視データの実測値を、直近の工程(C)において学習が行われたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出する。次いで、モニターデータの監視データの実測値を、直近の工程(C)において学習が行われたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出する。その後、算出されたσとσの数値を比較することで、ニューラルネットワークの学習が十分に大きな回数で行われたか判断することができる。
ここで、モニターデータとは、学習データを得るために用いられたサンプルとは別のサンプルから得られた、監視データの実測値及び評価データの実測値の組み合わせであり、ニューラルネットワークの信頼性を確認するためのデータである。
モニターデータ(監視データの実測値及び評価データの実測値の組み合わせ)のサンプルの数は、作業性の観点から、学習データのサンプル数の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜30%である。
工程(D)で算出されたσとσの関係が、σ≧σである場合(図1の過学習判定における「No」)、直近に行った工程(C)の学習回数は、十分に大きな回数ではないと判断することができる。この場合、工程(E)を実施する。工程(D)で算出されたσとσの関係が、σ<σである場合(図1の過学習判定における「Yes」)、直近に行った工程(C)の学習回数は、十分に大きな回数であったと判断することができる。この場合、工程(F)を実施する。
[工程(E)]
工程(E)では、直近の工程(B)で設定された学習回数および再設定された直近のニューラルネットワークの学習回数のいずれの学習回数よりも大きい学習回数を新たな学習回数として再設定する(例えば、直近の工程(C)で実施された学習回数に2.0を乗じた数を新たな学習回数として設定する。)。新たな学習回数を再設定した後、再度工程(C)〜(D)を実施する。
[工程(F)]
工程(F)では、直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数を減らした学習回数を、新たな学習回数として再設定する(例えば、直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数に0.95を乗じた数を新たな学習回数として設定する。)。
なお、直近のニューラルネットワークの学習とは、より近い過去に実施された学習を指す。具体的には、工程(C)もしくは後述の工程(G)のうち、より近い過去に実施された学習を指す。工程(F)終了後、工程(G)を実施する。
[工程(G)]
工程(G)では、設定された学習データ群(工程(A)または工程(L)において設定された学習データ群であって、直近に設定されたもの)を用いて、ニューラルネットワークの学習を直近の工程(F)で設定された学習回数行う。工程(G)で実施する内容は、ニューラルネットワークの学習を工程(F)において新たに設定された学習回数行う以外は、工程(C)と同じである。
工程(G)終了後、工程(H)を実施する。
[工程(H)]
工程(H)では、直近の工程(G)の学習において得られたニューラルネットワークを用いて終了判定を行う。具体的には学習データの監視データの実測値を、直近の工程(G)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、モニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(G)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係が、σ≧σである場合(図1の終了判定における「Yes」)、直近に行った工程(G)の学習回数は、もはや十分に大きな回数ではないと判断することができる。この場合、後述する工程(J)を実施する。算出されたσとσの関係がσ<σである場合(図1の終了判定における「No」)、直近に行った工程(G)の学習回数は、いまだ十分に大きな回数であったと判断することができる。この場合、後述する工程(I)を実施する。
[工程(I)]
工程(I)では、直近の工程(G)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値を超えていたかどうかの判定を行う。工程(I)は、工程(F)〜(H)を無限に繰り返すことを回避するために行われる。工程(I)において直近に行った工程(G)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値を超えていた場合(図1における「Yes」)は、再度工程(F)〜(H)を実施する。工程(I)において直近に行った工程(G)の学習回数が予め定めた数値以下場合(図1における「No」)は、後述の工程(M)を実施する。
なお、上記予め定めた数値とは、特に限定されず、例えば、工程(F)で設定された学習回数の100分の1の数値以下、もしくは、1以下または0以下等が挙げられる。
[工程(J)]
工程(J)では解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満であるか否かによって、解析度の判定を行うことができる。解析度判定値は下記式(1)を用いて算出される。
Figure 2017178651
上記式(1)中、学習データの平均2乗誤差(σ)とは、直近の工程(H)で算出された平均2乗誤差(σ)と同じである。評価データの推測値の平均値とは、学習データの監視データの実測値を、直近の工程(G)にて得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値の平均値である。
解析度の判定を行うことで学習を行ったニューラルネットワークを用いて、セメントクリンカーの製造条件(プレヒータ原料中のSO量)の予測を高い精度で行うことができるか否かを判断することができる。解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満(図1の第一の解析度判定における「Yes」)であれば、解析は十分であると判断され、ニューラルネットワークの学習は終了し、工程(K)を実施する。
解析度判定値が予め定めた第一の設定値以上(図1の第一の解析度判定における「No」)であれば、学習データを用いて学習を行ったニューラルネットワークをそのまま用いて、セメントの品質等の予測を高い精度で行うことはできないと判断され、工程(M)を実施する。
予め定めた第一の設定値は、特に限定されないが、より高い精度で予測を行う観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、特に好ましくは7%以下の値である。
なお、工程(B)〜(J)は、工程(J)において解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満となるか、あるいは、工程(M)において該回数が予め設定した回数を超えるまで繰り返される。工程(J)を実施するたびに得られる、解析度判定値及び学習済みのニューラルネットワークは、工程(O)において使用するため、データとして保存する。
また、予測精度の向上の観点から、工程(L)を実施した場合、工程(L)を実施する前に、工程(J)を実施するたびに得られた、解析度判定値及び学習済みのニューラルネットワークのデータは、工程(O)において使用せずに、破棄する。
[工程(K)]
工程(K)では、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値(工程(R)において、学習が終了したニューラルネットワークの入力層に入力するもの)が、設定された学習データ群(工程(A)または工程(L)において設定された学習データ群であって、直近に設定されたもの)における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値である場合(図1の学習データの判定における「Yes」)には、工程(R)を実施し、範囲外の数値である場合(図1の学習データの判定における「No」)には、工程(L)を実施する。
セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が複数の種類ある場合、そのうち1種類でも範囲外の数値である場合には、工程(L)を実施する。
本工程において、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、上記範囲内の数値であるか否かを判断することによって、学習データ群を構成する学習データの数を増加して、ニューラルネットワークの学習を再度行う必要があるか否かを判断することができる。これにより、セメントクリンカーの製造条件の評価に関連する評価データの推測値の予測精度をより向上させることができる。
なお、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値とは、該数値が、監視データの実測値の平均値−平均2乗誤差(σ)以上であり、かつ、監視データの実測値の平均値+平均2乗誤差(σ)以下であることを意味する。また、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値とは、該数値が、監視データの実測値の平均値+平均2乗誤差(σ)を超える、または、監視データの実測値の平均値−平均2乗誤差(σ)未満であることを意味する。
[工程(L)]
工程(L)では、監視データの実測値が、設定された学習データ群(工程(A)または工程(L)において設定された学習データ群であって、直近に設定されたもの)における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値である学習データであって、上記学習データ群に含まれない1個以上の学習データを、上記学習データ群に追加して新たな学習データ群に設定した後、工程(C)以降を実施する(工程(C)〜(T)から適宜選択される工程を実施する)。
学習データの監視データの実測値が複数の種類ある場合、複数の種類の監視データの実測値の各々が、学習データの監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値である学習データを使用する。
上記範囲外の数値である、監視データの実測値が複数の種類ある場合、該複数の種類の監視データの実測値の各々について、学習データの監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値である学習データであって、上記学習データ群に含まれない1個以上の学習データを、上記学習データ群に追加して新たな学習データ群に設定する。
なお、追加する学習データの監視データの実測値の種類のうち、学習データ群における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値であった監視データの種類の実測値については、特に考慮しなくてもよい。
上記学習データを追加することで、ニューラルネットワークの入力層に入力する、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、ニューラルネットワークの学習に用いた学習データの監視データの実測値のデータ範囲の上限または下限付近である場合であっても、予測精度を向上することができる。
追加する学習データの数は、設定された学習データ群における学習データの数の、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上の数である。該数が8%以上であれば予測精度をより向上することができる。
なお、工程(L)は、工程(K)において、セメント製造における監視データの実測値が、設定された学習データ群における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値となるまで、繰り返し実施される。
[工程(M)]
工程(M)では、学習回数を設定する工程(B)を実施した回数が予め設定した数値以下であるかどうかの判定を実施する。判定を実施することによって、工程(B)から工程(J)を無限に繰り返すことを回避することができる。
工程(M)において、工程(B)を実施した回数が予め設定した回数以下(図1の回数判定における「Yes」)である場合、学習条件の初期化を行って、再度工程(B)〜(J)を行い、該回数が予め設定した回数を超える場合(図1の回数判定における「No」)、工程(O)を実施する。
予め設定した回数は、特に限定されないが、通常、5回以上である。予め設定した回数の上限は、工程(B)から工程(J)を多大に繰り返すことを防ぐ観点から、好ましくは100回以下である。
[工程(N)]
工程(N)では、学習条件の初期化を行って、再度工程(B)〜(J)を実施する。
学習条件の初期化の方法としては、例えば、ニューラルネットワークを構成するユニットの閾値やユニットを結合している重みをランダムで変更した上で、学習データを再入力する方法、学習データを得るためのサンプルの数を増やす、使用する監視データの種類を変更する、又は不適切な学習データを除外する等を行った上で、新たな学習データを入力する方法等が挙げられる。
[工程(O)]
工程(O)では、工程(J)において算出した全ての解析度判定値(ただし、工程(J)において、工程(L)を実施する前に、工程(J)を実施するたびに得られる、解析度判定値及び学習済みのニューラルネットワークのデータを破棄した場合、工程(L)を実施した後に、工程(J)において算出した全ての解析度判定値)のうち、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満であるか否かによって、次の予測の実施の可否の判定を行うことができる。
工程(O)の判定を追加することで、工程(J)において、セメントクリンカーの製造条件(プレヒータ原料中のSO量)の予測を高い精度で行うことはできないと判断された学習済みのニューラルネットワークであっても、次工程(P)〜(Q)を実施することによって、セメントクリンカーの製造条件の予測を高い精度で行うことができるか否かを判断することができる。最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満(図1の第二の解析度判定における「Yes」)である場合、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(J)におけるニューラルネットワークを、学習済みのニューラルネットワークとして得た後、工程(P)を実施する。
最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値以上(図1の第二の解析度判定における「No」)であれば、学習データを用いて学習を行ったニューラルネットワークを用いて、セメントクリンカーの製造条件の予測を高い精度で行うことはできないと判断して予測を終了する。
予め定めた第二の設定値は、上記第一の設定値よりも大きいものである。また、上限は、より高い精度で予測を行う観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは25%である。
[工程(P)]
工程(P)では、次工程(Q)で用いられる予測可能監視データ領域を設定する。
最初に、工程(J)において算出した全ての解析度判定値(ただし、工程(J)において、工程(L)を実施する前に、工程(J)を実施するたびに得られる、解析度判定値及び学習済みのニューラルネットワークのデータを破棄した場合、工程(L)を実施した後に、工程(J)において算出した全ての解析度判定値)のうち、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(J)において、学習データとして使用した監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせについて無相関検定を実施する。無相関検定において5%の有意水準で有意であると判断された監視データの種類が2種以上である場合(図1の無相関検定における「Yes」)、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの全種類を座標軸とする座標空間を作成する。
例えば、5%の有意水準で有意であると判断された監視データが、塩素バイパスの抽気ガスのSO濃度とキルンEP出口ガスのSO濃度の二種類である場合、塩素バイパスの抽気ガスのSO濃度をx軸とし、キルンEP出口ガスのSO濃度をy軸とする座標空間を作成する。
次いで、学習データとして使用した監視データの実測値のうち、5%の有意水準で有意であると判断された種類の監視データの実測値を全て、座標空間にプロットし、座標空間においてプロットされた監視データ同士を結ぶことで予測可能監視データ領域を設定する。該予測可能監視データ領域は、プロットされた監視データの全てを包含する領域であって、該領域が最大となるように監視データ同士を結ぶことで形成される領域である。予測可能監視データ領域を設定した後、工程(Q)を実施する。
5%の有意水準で有意であると判断された監視データが0または1種類である場合(図1の無相関検定における「No」)、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する。
[工程(Q)]
工程(Q)では、セメントクリンカー製造における監視データの実測値と工程(P)で設定された座標空間を用いて、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値と工程(O)の学習済みのニューラルネットワークによって、セメントクリンカーの製造条件の予測を高い精度で行うことができるか否かを判定することができる。
セメントクリンカーの製造条件の予測に使用される、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値が、工程(Q)で設定した予測可能監視データ領域に含まれる場合(図1の座標判定における「Yes」)、セメントクリンカーの製造条件の予測を高い精度で行うことができると判断し、工程(K)を実施する。セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれない場合(図1の座標判定における「No」)、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する。
なお、セメントクリンカー製造運転における監視データが、工程(P)で設定された座標空間の座標軸として用いられていない種類の監視データの実測値(無相関検定において5%の有意水準で有意であると判断されなかった監視データの種類)を含む場合、当該の座標軸として用いられていない種類の監視データからは、監視データの実測値に何ら制限は与えない。
[工程(R)]
工程(R)では、学習済みのニューラルネットワークの入力層に、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値を入力して、学習済みのニューラルネットワークの出力層から、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力することで、セメントクリンカーの製造条件を予測することができる。
本発明の予測方法によれば、ニューラルネットワークの入力層に入力する、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値から、高い精度でセメントクリンカーの製造条件(プレヒータ原料中のSO量)を予測することができる。
ニューラルネットワークは、予測の精度を高い状態に維持するために、評価データの推測値と、該推測値に対応する実測値の乖離の大きさを定期的に点検し、その点検結果に基づいて、ニューラルネットワークを更新することが好ましい。更新の周期は、好ましくは1か月に一回、より好ましくは1週間に一回、特に好ましくは1日に一回である。
本発明のセメントクリンカーの製造条件の予測方法によれば、ニューラルネットワークを用いることによって、監視データを入力するだけで、評価データ(プレヒータ原料中のSO量)の推測値を、1時間以内に得ることができる。
また、得られた評価データの推測値に基づいて、セメントクリンカー製造の途中における、サスペンションプレヒータでのコーティングトラブルの発生の可能性を早期に察知し、原料工程及び焼成工程等における諸条件の最適化を行うことにより、セメントクリンカー製造プロセスを安定させることができる。
具体的には、プレヒータ原料中のSO量の推測値に増加等の異常が認められた場合、原料の調合、ロータリーキルン及び仮焼炉(サスペンションプレヒータ)の焼成条件の調整等を行うことで、プレヒータ原料中のSO量を目的のものにすることができる。
また、評価データの推測値に基いて、セメントクリンカーの製造工程の管理目標値を修正することも可能である。例えば、プレヒータ原料中のSO量が目標値に達しないと予測される場合、燃料炭種のSO量を分析して、最適な燃料炭種のSO量の管理目標値を確認することで、セメントクリンカー製造プロセスを安定させることができる。
さらに、セメントクリンカーの製造工程を制御するコンピュータと、本発明のセメントクリンカーの製造条件の予測方法を実施するために用いるコンピュータを接続することによって、評価データに基づいて監視データを人為的に変動させるための制御システムを自動化することもできる。
本発明において、ニューラルネットワークによる演算を行うためのソフトウェアとしては、例えば、OLSOFT社製の「Neural Network Library」(商品名)等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明する。
[実施例1]
学習用のサンプルとして、異なる47点のサンプリング時間における、プレヒータボトムサイクロンから採取したプレヒータ原料のSO量を、蛍光X線分析法を用いて測定して、学習データ(評価データの実測値)とした。
また、上記47点のサンプリング時間における、ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度を測定して、学習データ(監視データの実測値)とした。
また、モニター用のサンプルとして、前記47点のサンプリング時間とは異なる5点のサンプリング時間における、プレヒータ原料のSO量を測定して、モニターデータ(評価データの実測値)とした。
さらに、上記5点のサンプリング時間における、ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度を測定して、モニターデータ(監視データの実測値)とした。
上記学習データを用いてニューラルネットワークの学習を行った。ニューラルネットワークとしては、入力層、中間層及び出力層を有する階層型のニューラルネットワークを用いた。ニューラルネットワークの初期学習回数を10,000回に設定した。得られたニューラルネットワークを用いて、σとσを算出したところ、σとσの関係はσ<σであった。その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を、前記学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσとσの関係がσ≧σとなるまで繰り返した。
σとσの関係がσ≧σとなった後、解析度判定値を算出したが、予め定めた第一の設定値である6%未満とはならず、最も小さい解析度判定値は8.0%であった。最も小さい解析度判定値を算出した際のニューラルネットワークを学習済みのニューラルネットワークとした。
なお、第二の解析度判定値の設定値は20%とした。
学習データの評価データの実測値であるプレヒータ原料のSO量と、学習データの監視データの実測値であるボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度の各々について、無相関検定を行った。学習データの評価データの実測値と、各々の学習データの監視データの実測値との相関関係を表1に示す。
学習データの監視データの実測値のうち、5%の有意水準(相関係数が0.278を超えるもの、または、−0.278未満のもの)で有意であった学習データは、キルンEP出口ガスのSO濃度と塩素バイパス抽気ガスのSO濃度の2つであった。
Figure 2017178651
上記無相関検定より有意であると判定されたキルンEP出口ガスのSO濃度および塩素バイパス抽気ガスのSO濃度について、キルンEP出口ガスのSO濃度をx軸とし、塩素バイパス抽気ガスのSO濃度をy軸とする座標空間に、学習データ(監視データの実測値)におけるキルンEP出口ガスのSO濃度と塩素バイパス抽気ガスのSO濃度のデータをプロットした。プロットされた学習データ同士を結ぶことで形成される学習データの全てを包含する領域であって、該領域の面積が最大となるよう形成される領域を予測可能監視データ領域として設定した。(図2a)
得られた学習済みのニューラルネットワークの学習に使用された、監視データの実測値(ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)について、それぞれ平均値と平均2乗誤差を算出した。
また、学習済みのニューラルネットワークを用いて、セメントクリンカーの製造条件を予測するためのサンプル(以下、「予測用サンプル」ともいう。)として、上記の学習用サンプル及びモニター用サンプルとは異なる1点のサンプリング時間における、ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度を測定して、予測用サンプルの監視データの実測値とした。
結果を表2に示す。なお、本明細書中、ppmは質量基準である。
Figure 2017178651
予測用サンプルの監視データ(ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)の実測値のうち、仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値が、学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の数値範囲外の数値であった。具体的には、予測用サンプルの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値(2.6質量%)は、学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値の平均値(3.4質量%)から、平均2乗誤差(σ)を減算した数値(2.9質量%)よりも小さいものである。
このため、上記学習済みのニューラルネットワークと、セメントクリンカーの製造条件における監視データの実測値を用いて、評価データの推測値(プレヒータ原料のSO量)を予測した場合、予測精度が低くなるおそれがある。
そこで、仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値が、上記学習データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値であって、かつ、上記学習データ又はモニターデータとは異なる新たな学習データ5個(前回のニューラルネットワークの学習に使用した学習データ群の約25%に相当する個数)を新たな学習データとして、上記47個の学習データに追加して、合計52個の学習データを、新たな学習データ群として使用して、上述したニューラルネットワークの学習と同様に、ニューラルネットワークの学習を再度行った。
なお、新たな学習用データの仮焼炉出口ガスのO濃度以外の監視データ(ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)の実測値は、学習データ(新たな学習データを追加する前の学習データ)の仮焼炉出口ガスのO濃度以外の監視データ(ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)の実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値と範囲内の数値が混在するものであった。
再度のニューラルネットワークの学習に使用した学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度(監視データ)の実測値の平均値は3.49質量%であり、平均2乗誤差(σ)は0.56質量%であり、予測サンプルの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値は、依然として、学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の数値範囲外の数値であった。
そこで、仮焼炉出口ガスのO濃度(監視データ)の実測値が、上記学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値の平均値±σの範囲外の数値であって、かつ、前回のニューラルネットワークの学習に使用した学習データ及びモニターデータとは異なる新たな学習データ17個(追加した学習データの合計個数(22個)は、最初のニューラルネットワークの学習に使用した学習データの個数の47%に相当する個数)を、新たな学習データとして、上記52個の学習データに追加した合計69個の学習データを、新たな学習データ群として使用して、上述したニューラルネットワークの学習と同様に、ニューラルネットワークの学習を再度行った。
再度のニューラルネットワークの学習に使用した学習データの監視データの実測値(ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)について、それぞれ平均値と平均2乗誤差を算出した。結果を表3に示す。なお、表3において、参考として予測用サンプルの監視データの実測値を示す。
再度のニューラルネットワークの学習に使用した学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度(監視データ)の実測値の平均値は3.39質量%であり、平均2乗誤差(σ)は0.88質量%であり、予測用サンプルの仮焼炉出口ガスのO濃度(監視データ)の実測値は、学習データの仮焼炉出口ガスのO濃度の実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値であった。
Figure 2017178651
ニューラルネットワークの学習に使用した学習データ(69個)の評価データの実測値であるプレヒータ原料のSO量と、監視データの実測値であるボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度の各々について、無相関検定を行った。
プレヒータ原料のSO量と、ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度の各々の相関係数を表4に示す。
学習データの監視データの実測値のうち、5%の有意水準(相関係数が0.235を超えるもの、または、−0.235未満のもの)で有意であった学習データは、前回の無相関検定同様にキルンEP出口ガスのSO濃度と塩素バイパス抽気ガスのSO濃度であった。
Figure 2017178651
上記無相関検定より有意であると判定されたキルンEP出口ガスのSO濃度および塩素バイパス抽気ガスのSO濃度について、キルンEP出口ガスのSO濃度をx軸とし、塩素バイパス抽気ガスのSO濃度をy軸とする座標空間に学習データ(監視データの実測値)におけるキルンEP出口ガスのSO濃度と塩素バイパス抽気ガスのSO濃度のデータをプロットした。
プロットした学習データ同士を結ぶことで形成される学習データの全てを包含する領域であって、該領域の面積が最大となるよう形成される領域を予測可能監視データ領域として再設定した。(図2b)
上記座標空間に、予測用サンプルの監視データ(キルンEP出口ガスのSO濃度、塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)の実測値をプロットしたところ、予測可能監視データ領域範囲内であった。
得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に、予測用サンプルの監視データ(ボトムサイクロンの出口温度、仮焼炉出口ガスのO濃度、仮焼炉出口ガスのCO濃度、キルンEP出口ガスのSO濃度、キルンEP出口ガスのNO濃度、プレヒータトップサイクロン出口ガスのCO濃度、及び塩素バイパス抽気ガスのSO濃度)の実測値を入力し、プレヒータ原料のSO量の推測値を得た。該推測値は4.24±0.69(偏差は3σを示す。)質量%であった。
また、予測用サンプルのプレヒータ原料のSO量の実測値は4.44質量%であった。
[比較例1]
単回帰分析により、プレヒータ原料のSO量と塩素バイパス抽気ガスのSO濃度の関係より、予測用サンプルのプレヒータ原料のSO量を出力したところ、推測値は6.02±2.79(偏差は3σを示す。)質量%であった。
実施例1で得られた評価データの推測値(4.24±0.69質量%)と、比較例1で得られた評価データの推測値(6.02±2.79質量%)を比較すると、実施例1で得られた推測値は、比較例1で得られた推測値よりも、実測値(4.44質量%)に近く、かつ、偏差が小さいことから、より信頼性が高いことがわかる。

Claims (5)

  1. 入力層及び出力層を有するニューラルネットワークを用いたセメントクリンカーの製造条件の予測方法であって、上記入力層は、セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値を入力するためのものであり、上記出力層は、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力するためのものであり、
    上記監視データが、セメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、及びセメントクリンカーに関するデータの中から選ばれる一種以上であり、
    (A)ニューラルネットワークの学習に使用する、監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせである学習データの複数からなる学習データ群の初期設定を行う工程と、
    (B)学習回数の初期設定を行う工程と、
    (C)設定された学習データ群を用いて、ニューラルネットワークの学習を、前工程で設定された学習回数行う工程と、
    (D)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(C)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、ニューラルネットワークの学習結果の信頼性を確認するための監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせであるモニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(C)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(E)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(F)を実施する工程と、
    (E)直近の工程(B)で設定された学習回数および再設定された直近のニューラルネットワークの学習回数のいずれの学習回数よりも大きい学習回数を、工程(B)において新たな学習回数として再設定し、再度工程(C)〜(D)を実施する工程と、
    (F)直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数を減らした学習回数を、新たな学習回数として再設定する工程と、
    (G)設定された学習データ群を用いて、ニューラルネットワークの学習を直近の工程(F)で設定された学習回数行う工程と、
    (H)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(G)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、モニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(G)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(J)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(I)を実施する工程と、
    (I)直近の工程(G)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め設定された回数を超えている場合、再度工程(F)〜(H)を実施し、直近の工程(G)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値以下の場合、工程(M)を実施する工程と、
    (J)下記式(1)を用いて解析度判定値を算出し、該解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満である場合、ニューラルネットワークの学習を終了し工程(K)を実施する工程と、上記解析度判定値が予め定めた第一の設定値以上である場合、工程(M)を実施する工程と、
    (K)セメントクリンカーの製造運転における監視データの実測値が、設定された学習データ群における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲内の数値である場合には、工程(R)を実施し、範囲外の数値である場合には、工程(L)を実施する工程と、
    (L)監視データの実測値が、設定された学習データ群における、監視データの実測値の平均値±平均2乗誤差(σ)の範囲外の数値である学習データであって、上記学習データ群に含まれない1個以上の学習データを、上記学習データ群に追加して新たな学習データ群に設定した後、工程(C)以降を実施する工程 と
    (M)工程(B)を実施した回数の大きさについての判定を行い、該回数が予め設定した回数以下である場合は、工程(N)を実施し、該回数が予め設定した回数を超える場合には工程(O)を実施する工程と、
    (N)学習条件の初期化を行って、再度工程(B)〜(J)を実施する工程と、
    (O)工程(J)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満である場合、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(J)におけるニューラルネットワークを、学習済みのニューラルネットワークとした後、工程(P)を実施し、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値以上である場合、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
    (P)工程(J)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(J)において、学習データとして使用した監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせについて無相関検定を行い、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの種類が2種以上である場合、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの全種類を座標軸とする座標空間に学習データとして使用した監視データの実測値をプロットし、座標空間において、プロットされた監視データ同士を結ぶことで形成される監視データの全てを包含する領域であって、該領域が最大となるように監視データ同士を結ぶことで形成される領域を、予測可能監視データ領域として設定した後、工程(Q)を実施し、5%の有意水準で有意であると判断された監視データが0または1種類である場合、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
    (Q)セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値が、工程(P)で設定した予測可能監視データ領域に含まれる場合、セメントクリンカーの製造条件の予測を高い精度で行うことができると判断し、工程(K)を実施し、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれない場合、セメントクリンカーの製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
    (R)学習済みのニューラルネットワークの入力層に、セメントクリンカー製造運転における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、プレヒータ原料中のSO量に関する評価データの推測値を出力して、セメントクリンカーの製造条件を予測する工程と、
    を含むことを特徴とするセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
    Figure 2017178651
    (上記式(1)中、学習データの平均2乗誤差(σ)とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)である。評価データの推測値の平均値とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値の平均値である。)
  2. 上記工程(L)で追加する学習データの数が、設定された学習データ群における学習データの数の8%以上である請求項1に記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
  3. 上記解析度判定値の予め定めた第一の設定値が10%以下であり、上記解析度判定値の予め定めた第二の設定値が上記第一の設定値よりも大きくかつ30%以下である、請求項1または2に記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
  4. 上記ニューラルネットワークが、上記入力層と上記出力層の間に中間層を有する階層型のニューラルネットワークである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。
  5. 上記監視データの値を人為的に変動させて得られた上記評価データの推測値に基づいて、プレヒータ原料中のSO量を最適化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセメントクリンカーの製造条件の予測方法。

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