JP2017174974A - サーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサ - Google Patents

サーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 フィルム等に非焼成で直接成膜することができ、高B定数が得られるサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサを提供すること。【解決手段】 サーミスタに用いられる金属窒化物材料であって、一般式:MnxSiyNz(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物及び不可避不純物からなる。このサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法は、Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有している。【選択図】図1

Description

本発明は、フィルム等に非焼成で直接成膜可能なサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサに関する。
近年、樹脂フィルム上にサーミスタ材料を形成したフィルム型サーミスタセンサの開発が検討されており、フィルムに直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれている。そこで、本願の発明者らは、特許文献1〜3に記載のサーミスタに用いられる金属窒化物材料を開発した。
すなわち、特許文献1には、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるサーミスタ用金属窒化物材料が記載されている。
また、特許文献2には、一般式:SiTi(0.70≦x/(x+y)≦0.98、0.45≦z≦0.58、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、X線光電子分光分析においてSiのピークがSiよりも低いエネルギー側にピークを有したスペクトルが観察されると共に、X線回折において結晶相を同定可能な回折ピークが観察されず、25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から求めたB定数が1700K以上6300K未満であるサーミスタ用金属窒化物材料が記載されている。
さらに、特許文献3には、一般式:SiCr(0.70≦x/(x+y)≦0.98、0.45≦z≦0.58、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、X線光電子分光分析においてSiのピークがSiよりも低いエネルギー側にピークを有したスペクトルが観察されると共に、X線回折において結晶相を同定可能な回折ピークが観察されず、25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から求めたB定数が1700K以上6300K未満であるサーミスタ用金属窒化物材料が記載されている。
特開2013−179161号公報 特開2015−220325号公報 特開2015−220327号公報
上記特許文献1〜3に記載のサーミスタ用金属窒化物材料だけでなく、これらの材料のように、非焼成でフィルムに直接成膜でき高B定数が得られる他のサーミスタ材料の開発が望まれている。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、フィルム等に非焼成で直接成膜することができ、高B定数が得られるサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサを提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料は、サーミスタに用いられる金属窒化物材料であって、一般式:MnSi(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物及び不可避不純物からなることを特徴とする。
本発明のサーミスタ用金属窒化物材料では、一般式:MnSi(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなるので、非焼成で良好なB定数が得られる。
なお、上記「y/(x+y)」(すなわち、Si/(Mn+Si))が0.2未満であると、B定数が小さくなりすぎ、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Si/(Mn+Si))が0.95を超えると、抵抗値が高くなりすぎ、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Mn+Si+N))が0.35未満であると、窒化不足となり、抵抗値及びB定数が低くなりすぎ、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Mn+Si+N))が0.5を超えると、本発明の下記製法では作製することができない。これは、NaFeO型で、かつ、歪んだウルツ鉱型結晶構造をもつMnSiNにおいて、窒素サイトにおける欠陥がない場合のN/(Mn+Si+N)比の理論値が0.5であり、理論値以上の窒素を導入することができないことに由来する。0.5を超えるz量については、格子間に軽元素(窒素)が導入されたことと、XPS分析における軽元素(窒素)の定量精度とに起因するものである。
第2の発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料は、第1の発明において、前記一般式で、0.2≦y/(x+y)≦0.47であることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ用金属窒化物材料では、一般式で、0.2≦y/(x+y)≦0.47であるので、抵抗率に対するB定数が高く、低抵抗値にも関わらず温度係数が大きいので、低抵抗値の材料においても高精度な温度検出が可能になる。また、少ない窒化量でも高B定数化することが可能である。
第3の発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料は、第1又は第2の発明において、膜状に形成されていることを特徴とする。
第4の発明に係るフィルム型サーミスタセンサは、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルム上に第1から第3の発明のいずれかのサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部と、少なくとも前記薄膜サーミスタ部の上又は下に形成された一対のパターン電極とを備えていることを特徴とする。
すなわち、このフィルム型サーミスタセンサでは、絶縁性フィルム上に第1から第3の発明のいずれかのサーミスタ用金属窒化物材料で薄膜サーミスタ部が形成されているので、非焼成で形成され高B定数で耐熱性の高い薄膜サーミスタ部により、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルムを用いることができると共に、良好なサーミスタ特性を有した薄型でフレキシブルなサーミスタセンサが得られる。
第5の発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法は、第1から第3の発明のいずれかのサーミスタ用金属窒化物材料を製造する方法であって、Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有していることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法では、Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有しているので、上記MnSiからなる本発明のサーミスタ用金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料によれば、一般式:MnSi(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物及び不可避不純物からなるので、非焼成で良好なB定数が得られる。
また、本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法によれば、Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有しているので、上記MnSiからなる本発明のサーミスタ用金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。
さらに、本発明に係るフィルム型サーミスタセンサによれば、絶縁性フィルム上に本発明のサーミスタ用金属窒化物材料で薄膜サーミスタ部が形成されているので、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルムを用いて良好なサーミスタ特性を有した薄型でフレキシブルなサーミスタセンサが得られる。さらに、基板材料が、薄くすると非常に脆く壊れやすいセラミックスでなく、樹脂フィルムであることから、厚さ0.1mmの非常に薄いフィルム型サーミスタセンサが得られる。
本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサの一実施形態において、サーミスタ用金属窒化物材料の組成範囲を示すMn−Si−N系3元系相図である。 本実施形態において、フィルム型サーミスタセンサを示す斜視図である。 本実施形態において、フィルム型サーミスタセンサの製造方法を工程順に示す斜視図である。 本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサの実施例において、サーミスタ用金属窒化物材料の膜評価用素子を示す正面図及び平面図である。 本発明に係る実施例において、25℃抵抗率とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Si/(Mn+Si)比とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、N/(Mn+Si+N)比とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Si/(Mn+Si)=0.42とした場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Si/(Mn+Si)=0.46とした場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Si/(Mn+Si)=0.50とした場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 Siバルク体におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 SiMnNバルク体(XRDカードデータ)におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Si/(Mn+Si)=0.51とした場合における断面SEM写真である。
以下、本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサにおける一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料は、サーミスタに用いられる金属窒化物材料であって、一般式:MnSi(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物及び不可避不純物からなる。
特に、上記一般式で、0.2≦y/(x+y)≦0.47であることが好ましい。
なお、上記不可避不純物は、例えば酸素等である。
すなわち、このサーミスタ用金属窒化物材料の金属窒化物は、図1に示すように、Mn−Si−N系3元系相図における点A,B,C,Dで囲まれる領域内の組成を有し、NaFeO型(歪んだウルツ鉱型:Distorted wurtzite crystal structure)の結晶構造を有した金属窒化物である。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x,y,z)(atm%)は、A(40.0,10.0,50.0),B(2.5,47.5,50.0),C(3.25,61.75,35.0),D(52.0,13.0,35.0)である。
また、このサーミスタ用金属窒化物材料は、膜状に形成されている。
次に、本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料を用いたフィルム型サーミスタセンサについて説明する。このフィルム型サーミスタセンサ1は、図2に示すように、絶縁性フィルム2と、該絶縁性フィルム2上に上記サーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部3と、少なくとも薄膜サーミスタ部3上に形成された一対のパターン電極4とを備えている。
上記絶縁性フィルム2は、例えばポリイミド樹脂シートで帯状に形成されている。なお、絶縁性フィルム2としては、他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート等でも構わない。
上記一対のパターン電極4は、例えばCr膜とAu膜との積層金属膜でパターン形成され、薄膜サーミスタ部3上で互いに対向状態に配した櫛形パターンの一対の櫛形電極部4aと、これら櫛形電極部4aに先端部が接続され基端部が絶縁性フィルム2の端部に配されて延在した一対の直線延在部4bとを有している。
また、一対の直線延在部4bの基端部上には、リード線の引き出し部としてAuめっき等のめっき部4cが形成されている。このめっき部4cには、リード線の一端が半田材等で接合される。さらに、めっき部4cを含む絶縁性フィルム2の端部を除いて該絶縁性フィルム2上にポリイミドカバーレイフィルム5が加圧接着されている。なお、ポリイミドカバーレイフィルム5の代わりに、ポリイミドやエポキシ系の樹脂材料層を印刷で絶縁性フィルム2上に形成しても構わない。
このサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法及びこれを用いたフィルム型サーミスタセンサ1の製造方法について、図3を参照して以下に説明する。
まず、本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法は、Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有している。
また、上記反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、0.2Pa以上に設定している。
さらに、上記成膜工程後に、形成された膜に窒素プラズマを照射することが好ましい。
より具体的には、例えば図3の(a)に示す厚さ50μmのポリイミドフィルムの絶縁性フィルム2上に、図3の(b)に示すように、反応性スパッタ法にて上記本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部3を200nm成膜する。
その時のスパッタ条件は、例えば到達真空度:4×10−5Pa、スパッタガス圧:0.67Pa、ターゲット投入電力(出力):300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において窒素ガス分圧:40%とする。
また、メタルマスクを用いて所望のサイズにサーミスタ用金属窒化物材料を成膜して薄膜サーミスタ部3を形成する。なお、形成された薄膜サーミスタ部3に窒素プラズマを照射することが望ましい。例えば、真空度:6.7Pa、出力:200W及びNガス雰囲気下で、窒素プラズマを薄膜サーミスタ部3に照射させる。
次に、スパッタ法にて、例えばCr膜を20nm形成し、さらにAu膜を200nm形成する。さらに、その上にレジスト液をバーコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントによりウェットエッチングを行い、図3の(c)に示すように、レジスト剥離にて所望の櫛形電極部4aを有したパターン電極4を形成する。なお、絶縁性フィルム2上に先にパターン電極4を形成しておき、その櫛形電極部4a上に薄膜サーミスタ部3を成膜しても構わない。この場合、薄膜サーミスタ部3の下にパターン電極4の櫛形電極部4aが形成されている。
次に、図3の(d)に示すように、例えば厚さ50μmの接着剤付きのポリイミドカバーレイフィルム5を絶縁性フィルム2上に載せ、プレス機にて150℃,2MPaで10分間加圧し接着させる。さらに、図3の(e)に示すように、直線延在部4bの端部を、例えばAuめっき液によりAu薄膜を2μm形成してめっき部4cを形成する。
なお、複数のフィルム型サーミスタセンサ1を同時に作製する場合、絶縁性フィルム2の大判シートに複数の薄膜サーミスタ部3及びパターン電極4を上述のように形成した後に、大判シートから各フィルム型サーミスタセンサ1に切断する。
このようにして、例えばサイズを25×3.6mmとし、厚さを0.1mmとした薄いフィルム型サーミスタセンサ1が得られる。
このように本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料では、一般式:MnSi(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなるので、非焼成で良好なB定数が得られる。
特に、上記一般式で、0.2≦y/(x+y)≦0.47とすることで、抵抗率に対するB定数が高く、低抵抗値に対して温度係数が大きく、高精度な温度検出が可能になる。また、少ない窒化量でも高B定数化することが可能である。
本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法では、Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記MnSiからなる上記サーミスタ用金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。
したがって、本実施形態のサーミスタ用金属窒化物材料を用いたフィルム型サーミスタセンサ1では、絶縁性フィルム2上に上記サーミスタ用金属窒化物材料で薄膜サーミスタ部3が形成されているので、非焼成で形成され高B定数で耐熱性の高い薄膜サーミスタ部3により、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルム2を用いることができると共に、良好なサーミスタ特性を有した薄型でフレキシブルなサーミスタセンサが得られる。
次に、本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料及びその製造方法並びにフィルム型サーミスタセンサについて、上記実施形態に基づいて作製した実施例により評価した結果を、図4から図13を参照して具体的に説明する。
<膜評価用素子の作製>
本発明の実施例及び比較例として、図4に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のMn−Si合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ200nmの表1に示す様々な組成比で形成されたサーミスタ用金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部3を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:4×10−5Pa、スパッタガス圧:0.1〜4.0Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分圧を10〜100%と変えて作製した。
次に、上記薄膜サーミスタ部3の上に、スパッタ法でCr膜を20nm形成し、さらにAu膜を200nm形成した。さらに、その上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行った。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントによりウェットエッチングを行い、レジスト剥離にて所望の櫛形電極部124aを有するパターン電極124を形成した。そして、これをチップ状にダイシングして、B定数評価及び耐熱性試験用の膜評価用素子121とした。
なお、本発明の実施例1〜3は、Si/(Mn+Si)=0.29〜0.30の範囲内のものであり、実施例4〜11は、Si/(Mn+Si)=0.39〜0.47の範囲内のものであり、実施例12〜16は、Si/(Mn+Si)=0.50〜0.52の範囲内のものである。
また、比較としてMnN(比較例1)、MnAlN(比較例2)、NiSiN(比較例3,4)、組成比が本発明の範囲外であるMnSiN(比較例5〜7)についても同様に作製して評価を行った。
<膜の評価>
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。一部のサンプルに対して、最表面から深さ100nmのスパッタ面における定量分析を実施し、深さ20nmのスパッタ面と定量精度の範囲内で同じ組成であることを確認している。
なお、上記X線光電子分光法(XPS)は、X線源をAlKα(350W)とし、パスエネルギー:46.95eV、測定間隔:0.1eV、試料面に対する光電子取り出し角:45deg、分析エリアを約800μmφの条件下で定量分析を実施した。なお、定量精度について、N/(Mn+Si+N)の定量精度は±2%、Si/(Mn+Si)の定量精度は±1%である。
なお、不可避不純物として、膜中に最大2%程度の酸素が含まれていることを確認した。
(2)比抵抗測定
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3について、4端子法(van der pauw法)にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。また、25℃と50℃との抵抗値より負の温度特性をもつサーミスタであることを確認している。
なお、本発明におけるB定数算出方法は、上述したように25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から以下の式によって求めている。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
これらの結果からわかるように、MnSiの組成比が図1に示す3元系の三角図において、点A,B,C,Dで囲まれる領域内、すなわち、「0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1」となる領域内の実施例全てで、B定数:1000K以上のサーミスタ特性が達成されている。また、Si/(Mn+Si)=0.39〜0.95では、抵抗率:60Ωcm以上、B定数:1500K以上のサーミスタ特性が達成されている。
上記結果から25℃での抵抗率とB定数との関係を示したグラフを、図5に示す。また、Si/(Mn+Si)比とB定数との関係を示したグラフを、図6に示す。さらに、N/(Mn+Si+N)比とB定数との関係を示したグラフを、図7に示す。
これらのグラフから、Si/(Mn+Si)=0.2〜0.95の領域にあるものは、B定数:1000K以上のサーミスタ特性が達成されている。また、Si/(Mn+Si)=0.39〜0.95では、25℃における比抵抗値が60Ωcm以上、B定数が1500K以上の高抵抗かつ高B定数の領域が実現できている。
なお、図5及び図6のデータにおいて、同じSi/(Mn+Si)比に対して、B定数がばらついているのは、結晶中の窒素量が異なる、もしくは窒素欠陥等の格子欠陥量が異なるためである。図7のN/(Mn+Si+N)比とB定数との関係より、N/(Mn+Si+N)比が大きい材料にて、高B定数が実現できていることがわかる。
表1に示す比較例1(MnN)は、B定数が非常に小さく、また、抵抗値が低過ぎるため、サーミスタとして用いることは難しい。また、比較例2,3(MnAlN)及び比較例4,5(NiSiN)は、いずれもMnSiNよりも低抵抗かつ低B定数であった。さらに、比較例6〜9(MnSiNの本発明の組成範囲外)は、いずれも抵抗率:0.1Ωcm未満、B定数:1000K未満であった。
また、本発明の実施例では、図7に示すように、窒化量が大きくなると高B定数化していることが分かる。特に、実施例4〜11(Si/(Mn+Si)=0.39〜0.47)では、少ない窒化量N/(Mn+Si+N)比にて高B定数が得られている。
図5において、実施例1〜11(Si/(Mn+Si)=0.29〜0.47)では、実施例12〜16(Si/(Mn+Si)=0.50〜0.52)に比べて、低抵抗値で高B定数が得られている。
以上の結果より、一般式 0.2≦y/(x+y)≦0.47とするMnSi材料は、抵抗率に対するB定数が高く、低抵抗値にも関わらず温度係数が大きいので、低抵抗値の材料においても高精度な温度検出が可能になる。また、少ない窒化量でも高B定数化することが可能である。
(4)薄膜X線回折(結晶相の同定)
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、蛍光X線除去モードの条件下において、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
本発明における実施例のXRDプロファイルの一例を、図8及び図9に示す。図8の実施例は、Si/(Mn+Si)=0.42であり、入射角を1度として測定した。また、図9の実施例は、Si/(Mn+Si)=0.46であり、入射角を1度として測定した。さらに、図10の実施例は、Si/(Mn+Si)=0.50であり、入射角を1度として測定した。
なお、比較として、図11に、Siバルク体のXRDプロファイルを示している。また、図12に、Si/(Mn+Si)=0.50であるMnSiNバルク体(XRDカードデータ、ICDD−01−075−4318)におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。
これらの結果から、本発明の実施例は、バルク体データのプロファイルと比較すると、Si型ではなく、NaFeO型(歪んだウルツ鉱型:Distorted wurtzite crystal structure)の結晶構造であると考えられる。
なお、グラフ中(*)は装置由来および熱酸化膜付きSi基板由来のピークであり、サンプル本体のピーク、もしくは、不純物相のピークではないことを確認している。また、入射角を0度として、対称測定を実施し、そのピークが消失していることを確認し、装置由来および熱酸化膜付きSi基板由来のピークであることを確認した。
<結晶形態の評価>
次に、薄膜サーミスタ部3の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に390nm程度成膜された実施例(Si/(Mn+Si)=0.51)の薄膜サーミスタ部3における断面SEM写真を、図13に示す。
この実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
これらの写真からわかるように、この実施例は柱状結晶で形成されている。すなわち、基板面に垂直な方向に柱状の結晶が成長している様子が観測されている。
なお、図中の柱状結晶サイズについて、図13の実施例は、粒径が20nmφ(±5nmφ)、長さ390nm程度であった。
なお、ここでの粒径は、基板面内における柱状結晶の直径であり、長さは、基板面に垂直な方向の柱状結晶の長さ(膜厚)である。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1…フィルム型サーミスタセンサ、2…絶縁性フィルム、3…薄膜サーミスタ部、4,124…パターン電極

Claims (5)

  1. サーミスタに用いられる金属窒化物材料であって、
    一般式:MnSi(0.2≦y/(x+y)≦0.95、0.35≦z≦0.50、x+y+z=1)で示される金属窒化物及び不可避不純物からなることを特徴とするサーミスタ用金属窒化物材料。
  2. 請求項1に記載のサーミスタ用金属窒化物材料において、
    前記一般式で、0.2≦y/(x+y)≦0.47であることを特徴とするサーミスタ用金属窒化物材料。
  3. 請求項1又は2に記載のサーミスタ用金属窒化物材料において、
    膜状に形成されていることを特徴とするサーミスタ用金属窒化物材料。
  4. 絶縁性フィルムと、
    該絶縁性フィルム上に請求項1から3のいずれか一項に記載のサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部と、
    少なくとも前記薄膜サーミスタ部の上又は下に形成された一対のパターン電極とを備えていることを特徴とするフィルム型サーミスタセンサ。
  5. 請求項1から3のいずれか一項に記載のサーミスタ用金属窒化物材料を製造する方法であって、
    Mn−Si合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有していることを特徴とするサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法。
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