JP2017174764A - 非水系二次電池正極用バインダー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、非水系二次電池用正極、および非水系二次電池 - Google Patents

非水系二次電池正極用バインダー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、非水系二次電池用正極、および非水系二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池正極用バインダー組成物の提供を目的とする。【解決手段】本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、水素添加ニトリルゴム、架橋剤、および溶媒を含み、溶出率比(=溶出率A/溶出率B)が0.45以下である。なお溶出率Aは、バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを、150℃で6時間真空乾燥し、所定の測定用電解液中に60℃で72時間浸漬させた際の溶出率であり、溶出率Bは、バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを、25℃で6時間真空乾燥し、所定の測定用電解液中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率である。【選択図】なし

Description

本発明は、非水系二次電池正極用バインダー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、非水系二次電池用正極、および非水系二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、非水系二次電池の更なる高性能化を目的として、電極などの電池部材の改良が検討されている。
ここで、非水系二次電池用の正極は、通常、集電体と、集電体上に形成された電極合材層(正極合材層)とを備えている。そして、この正極合材層は、例えば、正極活物質と、結着材を含むバインダー組成物などとを分散媒に分散させてなるスラリー組成物を用いて形成される。
そこで、近年では、非水系二次電池の更なる性能の向上を達成すべく、正極合材層の形成に用いられるバインダー組成物の改良が試みられている。
具体的には、例えば特許文献1では、フッ素系ポリマーと水素添加ニトリルゴムの混合物を結着材として用いることにより、非水系二次電池のサイクル特性を向上させる技術が提案されている。
特開平9−63590号公報
しかしながら、上記従来の技術を用いても二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることは困難な場合があった。例えば、近年、二次電池の正極合材層の高密度化による二次電池の性能向上が試みられている。ここで、高密度化した正極合材層に十分に電解液を浸透させるためには、電解液の組成を調整して粘度を低下させることが好ましい。しかしながら、低粘度である電解液と、結着材として用いられる水素添加ニトリルゴムのSP値(「溶解度パラメータ」とも言う。)の差は小さくなり易く、電解液中に水素添加ニトリルゴムが溶出し易い。そのため、二次電池のサイクル特性が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池正極用バインダー組成物および非水系二次電池正極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池用正極を提供することを目的とする。
更に、本発明は、優れたサイクル特性を有する非水系二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、溶媒中に水素添加ニトリルゴムを含んでなるバインダー組成物に、更に架橋剤を添加することで、得られる正極合材層中の水素添加ニトリルゴムが電解液に溶出するのを抑制しうることに着想した。そしてこのバインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを高温(150℃)環境で真空乾燥後に所定の電解液に浸漬させた際の溶出率と、同バインダーフィルムを低温(25℃)環境で真空乾燥後に所定の電解液に浸漬させた際の溶出率を比較し、これらの溶出率の比が所定の値以下であれば、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させうることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、水素添加ニトリルゴム、架橋剤、および溶媒を含み、以下の式(1)によって算出される溶出率比が0.45以下であることを特徴とする。
溶出率比=溶出率A/溶出率B・・・(1)
式(1)中、
溶出率Aは、前記非水系二次電池正極用バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを150℃で6時間真空乾燥し、真空乾燥後のバインダーフィルムを、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびn−プロピルプロピオネート(PP)を質量比EC:PC:EMC:PP=2:1:1:6で混合して得られる溶媒にLiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させた測定用電解液中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率を表し、
溶出率Bは、前記非水系二次電池正極用バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを25℃で6時間真空乾燥し、真空乾燥後のバインダーフィルムを、前記測定用電解液中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率を表す。このようなバインダー組成物を用いれば、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させ得る正極合材層を形成することができる。
なお、本発明において、「架橋剤」とは、フリーラジカルを生成して架橋反応を進行させる化合物をいう。また、本発明において、「真空乾燥」とは、10kPa以下の減圧環境下で乾燥を行うことをいう。
ここで、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、前記架橋剤の10時間半減期温度が、80℃以上160℃以下であることが好ましい。上述の範囲内の10時間半減期温度を有する架橋剤を用いれば、バインダー組成物の保存安定性および正極のピール強度(正極合材層と集電体の密着強度)を高めると共に、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「10時間半減期温度」とは、架橋剤の濃度が初期の半分に減ずるまでの時間(半減期)が10時間となる温度を意味する。
また、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、前記架橋剤が有機過酸化物であることが好ましい。架橋剤が有機過酸化物であれば、正極のピール強度を高めると共に、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
更に、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、前記水素添加ニトリルゴム100質量部当たり、前記架橋剤を1質量部以上3質量部以下含むことが好ましい。架橋剤の含有量が上述の範囲内であれば、正極の柔軟性およびピール強度、並びにバインダー組成物の安定性を高めると共に、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
そして、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、更に共架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤に加え、共架橋剤を含むバインダー組成物を用いれば、正極のピール強度を高めると共に、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「共架橋剤」とは、エチレン性不飽和結合などのラジカル反応性の不飽和基を一分子中に複数個有する化合物をいう。
ここで、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、前記水素添加ニトリルゴム100質量部当たり、前記共架橋剤を1質量部以上5質量部以下含むことが好ましい。共架橋剤の含有量が上述の範囲内であれば、正極の柔軟性およびピール強度を高めると共に、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池正極用スラリー組成物は、正極活物質と、上述した何れかの非水系二次電池正極用バインダー組成物とを含むことを特徴とする。このようなスラリー組成物を用いれば、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させ得る正極合材層を形成することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用正極は、上述した非水系二次電池正極用スラリー組成物を用いて形成した正極合材層を備えることを特徴とする。このように、上述したスラリー組成物を用いて形成した正極合材層を有する正極を使用すれば、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えることを特徴とする。このように、上述した非水系二次電池用正極を使用すれば、優れたサイクル特性を有する二次電池を得ることができる。
ここで、本発明の非水系二次電池は、前記電解液のSP値が22.0以上23.0以下であることが好ましい。SP値が上述の範囲内である電解液を用いた二次電池は、サイクル特性等の電池特性に一層優れる。
なお、本発明において、電解液の「SP値」は、Hoyの計算方法(H.L.Hoy Journal of Painting,1970,Vol.42,76-118を参照。)により電解液に含まれる各溶媒のSP値を算出し、それらのSP値に各溶媒の25℃における体積分率(0%超100%未満)を乗じたものの和を100で除することで算出することができる。
本発明によれば、非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池正極用バインダー組成物および非水系二次電池正極用スラリー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池用正極を提供することができる。
更に、本発明によれば、優れたサイクル特性を有する非水系二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、非水系二次電池正極用スラリー組成物を調製する際に用いることができる。そして、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池正極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の正極を形成する際に用いることができる。更に、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池正極用スラリー組成物を用いて形成した非水系二次電池用正極を用いたことを特徴とする。
(非水系二次電池正極用バインダー組成物)
本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物は、水素添加ニトリルゴムと、架橋剤と、溶媒とを含み、任意に、共架橋剤と、二次電池の正極に配合され得るその他の成分とを更に含有する。そして、本発明のバインダー組成物は、以下の式(1)によって算出される溶出率比が0.45以下であることを特徴とする。
溶出率比=溶出率A/溶出率B・・・(1)
なお、式(1)中、溶出率Aは、バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを150℃で6時間真空乾燥し、真空乾燥後のバインダーフィルムを、測定用電解液(EC:PC:EMC:PP=2:1:1:6(質量基準)の混合溶媒にLiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させてなる)中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率を表し、溶出率Bは、バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを25℃で6時間真空乾燥し、真空乾燥後のバインダーフィルムを、測定用電解液中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率を表す。
そして、本発明のバインダー組成物を用いて得られる正極合材層を備える正極は、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
ここで、本発明のバインダー組成物を用いることにより、二次電池のサイクル特性を向上させる正極合材層が得られる理由は、明らかではないが以下の通りであると推察される。
即ち、本発明のバインダー組成物は、水素添加ニトリルゴム、架橋剤、溶媒を含むため、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物を乾燥等させて正極合材層を形成する際、溶媒が除去されると共に、架橋剤から生成されるフリーラジカルが、水素添加ニトリルゴム中の水素原子(特には、水素添加ニトリルゴムの残留二重結合に隣接する炭素原子上(アリル位)に位置する水素原子)を引き抜き、ラジカル反応により正極合材層中に剛直な架橋ネットワークが形成される。この架橋ネットワークにより水素化ニトリルゴムの電解液中への溶出が抑えられ、そして正極合材層が膨らんで導電パスが切断されるのを抑制することができる。加えて、本発明のバインダー組成物は、上述した溶出率比の値が0.45以下であるため、比較的低温では架橋剤と水素添加ニトリルゴムの反応が抑制されている一方、比較的高温では、架橋剤と水素添加ニトリルゴムの反応が良好に進行する。よって、本発明のバインダー組成物は、バインダー組成物としての保存安定性を保持しつつ、正極合材層形成の際には良好な架橋ネットワークを形成し、導電パスの切断を抑制することができる。従って、本発明のバインダー組成物を用いて正極合材層を形成すれば、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
<水素添加ニトリルゴム>
水素添加ニトリルゴムは、バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池正極用スラリー組成物を使用して集電体上に正極合材層を形成することにより製造した正極において、正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持する(即ち、結着材として機能する)。そして水素添加ニトリルゴムは、共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体(ニトリルゴム)を水素化することにより得ることができる。すなわち、水素添加ニトリルゴムとして、共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の水素化物を用いることができる。
なお、本発明において、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
[共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体]
水素添加ニトリルゴムの調製に用いる上記共重合体は、共役ジエン単量体単位と、ニトリル基含有単量体単位と、任意に、その他の繰り返し単位とを含む。
[[共役ジエン単量体単位]]
共役ジエン単量体単位を形成しうる共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数4以上の共役ジエン化合物が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
そして、共重合体中での共役ジエン単量体単位の含有割合は、共重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、30質量%以上が好ましく、98質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。共重合体中での共役ジエン単量体単位の含有割合が上記範囲の下限値以上であれば、共重合体から得られる水素添加ニトリルゴムを含むバインダー組成物を用いた正極の柔軟性を向上させることができる。また、共重合体中での共役ジエン単量体単位の含有割合が上記範囲の上限値以下であれば、共重合体から得られる水素添加ニトリルゴムの溶媒に対する溶解性が確保される。そのため、水素添加ニトリルゴムがスラリー組成物中で導電材などを良好に分散させて、二次電池の電池特性(サイクル特性等)を向上させることができる。
[[ニトリル基含有単量体単位]]
ニトリル基含有単量体単位を形成しうるニトリル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体が挙げられる。そして、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。なかでも、共重合体から得られる水素添加ニトリルゴムの結着力を高め、正極の機械的強度を高める観点からは、ニトリル基含有単量体としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
そして、共重合体中でのニトリル基含有単量体単位の含有割合は、共重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。共重合体中でのニトリル基含有単量体単位の含有割合が上記範囲の下限値以上であれば、水素添加ニトリルゴムがスラリー組成物中で導電材などを良好に分散させて、二次電池の電池特性(サイクル特性等)を向上させることができる。また、共重合体中での共役ジエン単量体単位の含有割合が上記範囲の上限値以下であれば、共重合体から得られる水素添加ニトリルゴムを含むバインダー組成物を用いた正極の柔軟性を確保することができる。
[[その他の繰り返し単位]]
また、その他の繰り返し単位を形成し得る単量体(以下、「その他の単量体」ということがある。)としては、特に限定されることなく、(メタ)アクリル酸エステル単量体、親水性基を有する重合可能な単量体、芳香族ビニル単量体などが挙げられる。
なお、これらの単量体は一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく、n−ブチルアクリレートがより好ましい。
また、親水性基を有する重合可能な単量体としては、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体が挙げられる。なお、共重合体から得られる水素添加ニトリルゴムの結着力を高める観点からは、親水性基は、カルボン酸基またはスルホン酸基であることが好ましく、カルボン酸基であることがより好ましい。
カルボン酸基を有する単量体としては、モノカルボン酸およびその誘導体や、ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸誘導体としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステルが挙げられる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
また、カルボン酸基を有する単量体としては、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。
その他、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸のモノエステルおよびジエステルも挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
なお、本発明において「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
リン酸基を有する単量体としては、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
なお、本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式:CH=CR−COO−(C2nO)−H(式中、mは2〜9の整数、nは2〜4の整数、Rは水素またはメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲンおよびヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテルおよびそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
そして、芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
なお、共重合体中でのその他の繰り返し単位の含有割合は、共重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。
[[共重合体の調製方法]]
共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。各重合法において、必要に応じて既知の乳化剤や重合開始剤を使用することができる。また、重合方法としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。
[共重合体への水素添加]
上述のようにして得られた共重合体(ニトリルゴム)に水素添加を行い、水素添加ニトリルゴムを調製することができる。ここで、水素添加の方法は、特に制限なく、触媒を用いる一般的な方法(例えば、国際公開第2012/165120号、国際公開第2013/080989号および特開2013−8485号公報参照)を使用することができる。
このようにして得られる水素添加ニトリルゴムは、共役ジエン単量体単位への水素添加により形成されるアルキレン構造単位と、ニトリル基含有単量体単位とを含む一方で、水素添加ニトリルゴムには、通常、一部の共役ジエン単量体単位が水素添加されずに残存する。即ち、水素添加ニトリルゴムは、通常、少なくとも、アルキレン構造単位と、ニトリル基含有単量体単位と、共役ジエン単量体単位とを含む。ここで、アルキレン構造単位は、一般式:−C2n−[但し、nは2以上の整数]で表わされるアルキレン構造のみで構成される繰り返し単位である。
ここで、水素添加ニトリルゴムは、ヨウ素価が、5mg/100mg以上であることが好ましく、100mg/100mg以下であることが好ましい。水素添加ニトリルゴムのヨウ素価が上述の範囲内であれば、水素添加ニトリルゴムが正極合材層中で一層剛直な架橋ネットワークを形成し、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「ヨウ素価」は、水素添加ニトリルゴムの水分散液100gを、メタノール1リットルで凝固した後、60℃で12時間真空乾燥して得られる乾燥重合体のヨウ素価を、JIS K6235(2006)に従って測定することで得ることができる。
<架橋剤>
架橋剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t-ヘキシルペルオキシ−シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−n−ブチルバレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエートが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が挙げられる。中でも、正極のピール強度を高めて、二次電池のサイクル特性を更に向上させる観点から、有機過酸化物が好ましく、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ジ−t-ヘキシルペルオキシ−シクロヘキサンがより好ましく、ジクミルパーオキサイドが更に好ましい。なお、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを用いれば、バインダー組成物の保存安定性を高めることもできる。これらの架橋剤は一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、架橋剤の10時間半減期温度は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、95℃以上であることが更に好ましく、160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが更に好ましい。架橋剤の10時間半減期温度が上記範囲の下限値以上であれば、架橋剤が過度な反応性を有することもなく、バインダー組成物の保存安定性を確保することができる。また、架橋剤の10時間半減期温度が上記範囲の上限値以下であれば、正極合材層の形成の際に架橋反応を十分に進行させることができる。そのため、正極のピール強度を高め、また二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
なお、架橋剤の10時間半減期温度は、以下のようにして求めることができる。
まずラジカルに対して比較的不活性な溶媒(例えばベンゼン)を用いて、架橋剤の濃度が0.1モル/リットルの架橋剤溶液を調製する。この架橋剤溶液を、窒素置換を行ったガラス管中に密封し、当該ガラス管を所定温度にセットした恒温槽に浸し、架橋剤溶液中の架橋剤を熱分解させる。
ここで、一般的に希薄溶液中の架橋剤の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができる。そのため、分解架橋剤量x、分解速度定数k、時間t、架橋剤初期濃度aとすると、これらの間に以下の関係が成り立つ。
dx/dt=k(a−x)・・・(2)
ln{a/(a−x)}=kt・・・(3)
ここで、半減期は、分解により架橋剤の濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるから、半減期をt1/2で示し、(3)式のxにa/2を代入すると、以下の式(4)を導出することができる。
kt1/2=ln2 ・・・(4)
上述のように所定温度で架橋剤溶液中の架橋剤を熱分解させ、時間(t)とln{a/(a−x)}の関係を複数プロットし、得られた直線の傾きから分解速度定数kを算出する。そして、(4)式から所定温度における半減期t1/2を求めることができる。
一方、上記分解速度定数kは、頻度因子A(1/h)、活性化エネルギーΔE(J/モル)、気体定数R(=8.314J/モル・K)、絶対温度T(K)を用いて、以下の式で表すことができる。
k=Aexp(−ΔE/RT) ・・・(5)
lnk=lnA−ΔE/RT ・・・(6)
(4)式のln2の値をL(凡そ0.693)として、k=L/t1/2を(6)式に代入して計算すると、以下の(7)式が得られる。
lnt1/2=ΔE/RT+ln(L/A) ・・・(7)
そして複数の温度T(K)について半減期を求め、lnt1/2と1/Tの関係をプロットして得られる直線において、t1/2が10時間となる場合の1/Tの値を読み取り、このT(K)の値を摂氏(℃)に換算することで、10時間半減期温度を得ることができる。
そして、架橋剤の配合量は、水素添加ニトリルゴム100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、3質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましい。架橋剤の配合量が上記範囲の下限値以上であれば、正極合材層の形成の際に架橋反応を十分に進行させることができる。そのため、正極のピール強度を高め、また二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。一方、架橋剤の配合量が上記範囲の上限値以下であれば、バインダー組成物の保存安定性を確保しつつ、正極の柔軟性を高めることができる。
<共架橋剤>
本発明のバインダー組成物は、任意に、共架橋剤を含有することができる。上述した架橋剤と併せて共架橋剤を用いれば、バインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物を乾燥等させて正極合材層を形成する際に、一層剛直な架橋ネットワークを形成して、正極のピール強度を高めつつ水素化ニトリルゴムの電解液中への溶出を十分に抑制することができる。そのため、共架橋剤を用いれば、二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
ここで、共架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンなどの多官能芳香族ビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;N,N'‐m‐フェニレンジマレイミドなどのマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェートなどの多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンをアリル化してなるトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールを部分的にアリル化してなるアリルエーテルなどのアリルエーテル類;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの、3〜5官能のメタクリレート化合物およびアクリレート化合物;などが挙げられる。中でも、二次電池のサイクル特性を更に高める観点から、イソシアヌレート類が好ましく、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
そして、共架橋剤の配合量は、水素添加ニトリルゴム100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましい。共架橋剤の配合量が上記範囲の下限値以上であれば、正極合材層の形成の際に架橋反応を十分に進行させることができる。そのため、正極のピール強度を更に高め、また二次電池のサイクル特性をより一層向上させることができる。一方、共架橋剤の配合量が上記範囲の上限値以下であれば、バインダー組成物の保存安定性を確保しつつ、正極の柔軟性を高めることができる。
<溶媒>
本発明のバインダー組成物の溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。中でも、溶媒としては、NMPがより好ましい。
<その他の成分>
バインダー組成物は、上記成分の他に、水素添加ニトリルゴム以外の結着材(ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート等)、補強材、レベリング剤、粘度調整剤、電解液添加剤等の成分を含有していてもよい。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、バインダー組成物が水素添加ニトリルゴム以外の結着材(その他の結着材)を含む場合、水素添加ニトリルゴムとその他の結着材の合計量中のその他の結着材の量の割合は、40.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましく、99.9質量%以下であることが好ましく、90.0質量%以下であることがより好ましい。その他の結着材の量の割合が上記範囲の下限値以上であれば、二次電池の内部抵抗を低減し、またサイクル特性を確保することができる。一方、その他の結着材の量の割合が上記範囲の上限値以下であれば、正極の柔軟性を確保することができる。
<バインダー組成物の調製>
そして、バインダー組成物は、水素添加ニトリルゴムと、架橋剤と、任意に添加しうる共架橋剤およびその他の成分とを、有機溶媒などの溶媒中に溶解または分散させることにより調製することができる。具体的な混合方法としては、特に限定されないが、容器自体が振とう、回転、または振動することで内容物を混合する、ロッキングミキサー、タンブラーミキサー等を用いた容器攪拌法;容器内に配置される回転軸(例えば、容器壁面に対し水平又は垂直に延在する)に撹拌のための羽根、回転盤、またはスクリュー等が取り付けられた混合機(水平円筒型混合機、V型混合機、回転円盤型混合機および高速回転羽根混合機等)を用いた機械式撹拌法、等が挙げられる。
なお、水素添加ニトリルゴムが水分散体として調製された場合には、水分散体と溶媒とを混合した後に水を除去してバインダー組成物の調製に使用することが好ましい。
このようにして調製されるバインダー組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましい。
<溶出率比>
上述のようにして得られる本発明のバインダー組成物の溶出率比(=溶出率A/溶出率B)は、0.45以下であることが必要であり、0.20以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。溶出率比が0.45を超えると、正極合材層の形成の際に架橋反応を十分に進行させることができない。そのため、正極の膨れによる導電パスの切断を抑制することができず、二次電池のサイクル特性等の電池特性が低下する。なお、本発明のバインダー組成物の溶出率比の下限値は特に限定されないが、バインダー組成物の保存安定性および正極の柔軟性を確保する観点から、0.03以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましい。
ここで、溶出率Aおよび溶出率Bの値は、溶出率比が上記の上限値以下となれば特に限定されない。例えば、溶出率Aは、3.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましく、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。また溶出率Bは、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、100質量%以下であり、95質量%以下であることが好ましい。なお、溶出率Bが80質量%を下回る場合は、バインダー組成物中の固形分がNMP等の溶媒に溶解し難くなり、バインダー組成物の調製自体が困難となる虞がある。
(非水系二次電池正極用スラリー組成物)
本発明の非水系二次電池正極用スラリー組成物は、正極活物質と、上述したバインダー組成物とを含み、任意に、導電材と、その他の成分を更に含有する。即ち、本発明のスラリー組成物は、正極活物質と、水素添加ニトリルゴムと、架橋剤と、溶媒とを含有し、任意に、共架橋剤と、導電材と、その他の成分を更に含有する。そして、本発明のスラリー組成物は、上述したバインダー組成物を含んでいるので、本発明のスラリー組成物を用いて形成した正極合材層は、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
<正極活物質>
正極活物質は、二次電池の正極において電子の受け渡しをする物質である。そして、例えばリチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。
なお、以下では、一例として非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合の正極活物質について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
具体的には、リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、遷移金属を含有する化合物、例えば、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属との複合金属酸化物などを用いることができる。なお、遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が挙げられる。
ここで、遷移金属酸化物としては、例えばMnO、MnO、V、V13、TiO、Cu、非晶質VO−P、非晶質MoO、非晶質V、非晶質V13等が挙げられる。
遷移金属硫化物としては、TiS、TiS、非晶質MoS、FeSなどが挙げられる。
リチウムと遷移金属との複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO(コバルト酸リチウム))、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co−Ni−Mnのリチウム含有複合酸化物(Li(Co Mn Ni)O)、Ni−Mn−Alのリチウム含有複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム含有複合酸化物、LiMaOとLiMbOとの固溶体などが挙げられる。なお、Co−Ni−Mnのリチウム含有複合酸化物としては、Li[Ni0.5Co0.2Mn0.3]O、Li[Ni1/3Co1/3Mn1/3]Oなどが挙げられる。また、LiMaOとLiMbOとの固溶体としては、例えば、xLiMaO・(1−x)LiMbOなどが挙げられる。ここで、xは0<x<1を満たす数を表し、Maは平均酸化状態が3+である1種類以上の遷移金属を表し、Mbは平均酸化状態が4+である1種類以上の遷移金属を表す。このような固溶体としては、Li[Ni0.17Li0.2Co0.07Mn0.56]Oなどが挙げられる。
なお、本明細書において、「平均酸化状態」とは、前記「1種類以上の遷移金属」の平均の酸化状態を示し、遷移金属のモル量と原子価とから算出される。例えば、「1種類以上の遷移金属」が、50mol%のNi2+と50mol%のMn4+から構成される場合には、「1種類以上の遷移金属」の平均酸化状態は、(0.5)×(2+)+(0.5)×(4+)=3+となる。
スピネル型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、マンガン酸リチウム(LiMn)や、マンガン酸リチウム(LiMn)のMnの一部を他の遷移金属で置換した化合物が挙げられる。具体例としては、LiNi0.5Mn1.5などのLi[Mn2−tMc]Oが挙げられる。ここで、Mcは平均酸化状態が4+である1種類以上の遷移金属を表す。Mcの具体例としては、Ni、Co、Fe、Cu、Cr等が挙げられる。また、tは0<t<1を満たす数を表し、sは0≦s≦1を満たす数を表す。なお、正極活物質としては、Li1+xMn2−x(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物なども用いることができる。
オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)などのLiMdPOで表されるオリビン型リン酸リチウム化合物が挙げられる。ここで、Mdは平均酸化状態が3+である1種類以上の遷移金属を表し、例えばMn、Fe、Co等が挙げられる。また、yは0≦y≦2を満たす数を表す。さらに、LiMdPOで表されるオリビン型リン酸リチウム化合物は、Mdが他の金属で一部置換されていてもよい。置換しうる金属としては、例えば、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、BおよびMoなどが挙げられる。
上述した中でも、リチウムイオン二次電池の高電位化を可能にする観点からは、正極活物質としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、Co−Ni−Mnのリチウム含有複合酸化物(Li(Co Mn Ni)O)、LiMaOとLiMbOとの固溶体、Li[Ni0.5Co0.2Mn0.3]O、Li[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O、LiNi0.5Mn1.5などが好ましい。
なお、正極活物質の配合量や粒子径は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質と同様とすることができる。
<バインダー組成物>
バインダー組成物としては、少なくとも、水素添加ニトリルゴム、架橋剤、および溶媒を含む上述した本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物を用いる。
ここで、非水系二次電池電極用スラリー組成物中のバインダー組成物の含有割合は、正極活物質100質量部当たり、水素添加ニトリルゴムの量が0.1質量部以上となる量であることが好ましく、0.3質量部以上となる量であることがより好ましく、3質量部以下となる量であることが好ましく、1.5質量部以下となる量であることがより好ましい。スラリー組成物に、水素添加ニトリルゴムの量が上記範囲内となる量でバインダー組成物を含有させれば、正極のピール強度および柔軟性をバランス良く向上させつつ、二次電池のサイクル特性を更に高めることができる。
<導電材>
導電材は、正極活物質同士の電気的接触を確保するためのものである。そして、導電材としては、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラックなど)、グラファイト、炭素繊維、カーボンフレーク、炭素超短繊維(例えば、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維など)等の導電性炭素材料;各種金属のファイバー、箔などを用いることができる。
これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
そして、導電材の配合量は、正極活物質100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、5.0質量部以下であることが好ましく、4.5質量部以下であることがより好ましい。導電材の量が上記範囲内であれば、正極活物質同士の電気的接触を良好に確保して、二次電池に優れた電池特性(サイクル特性および出力特性等)を発揮させることができる。
<その他の成分>
非水系二次電池正極用スラリー組成物に配合し得るその他の成分としては、特に限定することなく、上述したバインダー組成物に配合し得るその他の成分と同様のものが挙げられる。また、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<スラリー組成物の調製>
上述したスラリー組成物は、上記各成分を有機溶媒などの溶媒中に溶解または分散させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と溶媒とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。なお、スラリー組成物の調製に用いる溶媒としては、バインダー組成物に含まれている溶媒を使用してもよい。
(非水系二次電池用正極)
本発明の非水系二次電池用正極は、通常、集電体と、集電体上に形成された正極合材層とを備え、正極合材層は上記非水系二次電池正極用スラリー組成物を用いて形成されている。ここで、スラリー組成物中の架橋剤および任意に用いられる共架橋剤(以下、これらを纏めて「架橋剤等」と称する場合がある。)は、通常、正極合材層を形成する際の架橋反応により消費されるが、架橋剤等は、正極合材層中に残存していてもよい。即ち、正極合材層には、少なくとも、正極活物質と、水素添加ニトリルゴムおよび/又は水素添加ニトリルゴムの架橋物とが含有されており、未反応の架橋剤等が含有されていてもよい。
そして、本発明の非水系二次電池用正極では、本発明の非水系二次電池正極用バインダー組成物を含むスラリー組成物を使用しているので、架橋ネットワークが良好に形成された正極合材層を集電体上に良好に形成することができる。従って、当該正極を使用すれば、サイクル特性を等の電池特性に優れる二次電池が得られる。
<正極の製造方法>
なお、本発明の非水系二次電池用正極は、例えば、上述したスラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたスラリー組成物を乾燥して集電体上に正極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
[塗布工程]
上記スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる正極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
ここで、スラリー組成物を塗布する集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる集電体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[乾燥工程]
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に正極合材層を形成し、集電体と正極合材層とを備える非水系二次電池用正極を得ることができる。
なお、乾燥工程は、集電体上の非水系二次電池正極用スラリー組成物を温度110℃以上で乾燥する操作を含むことが好ましい。乾燥温度を110℃以上とすれば、架橋剤等による架橋反応を進行させて、二次電池のサイクル特性を一層高めることができる。
ここで、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、正極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、正極合材層と集電体との密着性を向上させることができる。また、正極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、正極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
また、乾燥工程の後、架橋工程として、集電体上の正極合材層を温度140℃以上で真空乾燥する操作を含むことが好ましい。正極合材層を140℃以上で真空乾燥すれば、架橋剤等による架橋反応を十分に進行させて、二次電池のサイクル特性をより一層高めることができる。
なお、集電体上に形成される正極合材層のかさ密度(=正極合材層の目付量/正極合材層の厚み)は、特に限定されないが、3.6g/cm以上であることが好ましく、3.8g/cm以上であることがより好ましく4.2g/cm以下であることが好ましく、4.0g/cm以下であることがより好ましい。本発明の非水系二次電池用正極は、正極合材層の調製に本発明のバインダー組成物を含むスラリー組成物を用いているため、水素添加ニトリルゴムが電解液中に溶出し難い。そのため、正極合材層のかさ密度を上述の範囲内のように比較的高い値としつつ粘度の低い電解液を用いた場合であっても、正極の膨れによる導電パスの切断を抑制することができる。従って、正極合材層の高密度化によるエネルギー密度の上昇等の利益を享受しつつ、二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
なお、水素添加ニトリルゴムおよび架橋剤を含むが、実質的に溶媒を含有しないゴム組成物に、正極活物質、並びに、任意に共架橋剤および導電材等を添加してなる粉体混合物を加熱圧縮することで、集電体上に正極合材層を形成することもできる。しかしながら、このように溶媒の不存在下で正極合材層を形成しても、正極合材層の厚みのバラツキが大きくなる。そしてこのような正極合材層の厚みのバラツキが大きい正極を用いても、二次電池に優れた電池特性(サイクル特性等)を発揮させることができない。
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、正極として本発明の非水系二次電池用正極を用いたものである。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用正極を備えているので、サイクル特性等の電池特性に優れる。
なお、以下では、一例として非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
<負極>
負極としては、既知の負極を用いることができる。具体的には、負極としては、例えば、金属リチウムの薄板よりなる負極や、負極合材層を集電体上に形成してなる負極を用いることができる。
なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。また、負極合材層としては、負極活物質と結着材とを含む層を用いることができる。更に、結着材としては、特に限定されず、任意の既知の材料を用いうる。
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。リチウムイオン二次電池の支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFが特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;n−プロピルプロピオネート(PP)、γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類を用いることが好ましい。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加することができる。
ここで、電解液のSP値は22.0以上23.0以下であることが好ましい。上述の範囲内のSP値を有する電解液は、通常、粘度が低く、高密度化した正極合材層にも良好に浸透することができる。一方で、SP値が22.0以上23.0以下である電解液は、通常、水素添加ニトリルゴムに対して高い溶解能を有する。しかしながら、本発明の二次電池は、正極として本発明の非水系二次電池用正極を用いているため、上述のSP値を有する電解液を用いた場合であっても、水素添加ニトリルゴムの溶出を抑えて、正極合材層中の導電パスを保持することができる。従って、上述の範囲内のSP値を有する電解液を用いれば、二次電池の電池特性(サイクル特性等)を一層高めることができる。
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
<二次電池の製造方法>
本発明の二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、バインダー組成物の溶出率比および保存安定性、正極の柔軟性およびピール強度、並びに二次電池のサイクル特性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
<溶出率比>
固形分濃度8質量%に調整したバインダー組成物約1gを100℃のオーブン中で1時間乾燥させ、厚さ約120μmのバインダーフィルムAを得た。このバインダーフィルムAの初期重量WA0を測定した。
バインダーフィルムAを150℃で6時間真空乾燥(0.6kPa)し、次いで、測定用電解液(EC:PC:EMC:PP=2:1:1:6(質量基準)の混合溶媒にLiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させてなる)中に、60℃72時間浸漬させた。電解液から引き上げたバインダーフィルムAをメタノールで洗浄し、25℃のオーブン中で24時間乾燥後、バインダーフィルムAの浸漬後重量WA1を測定した。そして以下の式から溶出率Aを算出した。
溶出率A=(WA0−WA1)/WA0
別途、固形分濃度8質量%に調整したバインダー組成物約1gを100℃のオーブン中で1時間乾燥させ、厚さ約120μmのバインダーフィルムBを得た。このバインダーフィルムBの初期重量WB0を測定した。
バインダーフィルムBを25℃で6時間真空乾燥(0.6kPa)し、次いで、上記と同様の組成を有する測定用電解液中に、60℃72時間浸漬させた。電解液から引き上げたバインダーフィルムBをメタノールで洗浄し、25℃のオーブン中で24時間乾燥後、バインダーフィルムBの浸漬後重量WB1を測定した。そして以下の式から溶出率Bを算出した。
溶出率B=(WB0−WB1)/WB0
得られた溶出率Aと溶出率Bの値から、溶出率比(=溶出率A/溶出率B)を算出した。
<保存安定性>
バインダー組成物の調製直後の粘度Mと、40℃で7日間保存した後の粘度Mを測定した。なお、粘度の測定は、B型粘度計を使用し、温度:25℃、ローター:No.4、ローター回転数:60rpmの条件下で行った。
そして、粘度変化率ΔM(=M/M×100(%))を算出し、下記の基準で評価した。粘度変化率ΔMの値が小さいほど、バインダー組成物の粘度安定性が高いことを示す。
A:粘度変化率ΔMが110%未満
B:粘度変化率ΔMが110%以上120%未満
C:粘度変化率ΔMが120%以上
<柔軟性>
作製した正極を用い、JIS K 5600(マンドレル試験)に従い耐屈曲性試験を行った。正極を、正極合材層が外側となるようにマンドレル(直径:3mm)に巻きつけ、正極合材層の割れの有無をデジタルマイクロスコープ(倍率:30倍)で観察した。この操作を10枚の正極に対して行い、下記の基準で評価した。
A:10枚の正極何れにも割れが観察されなかった。
B:10枚の正極中1枚以上3枚以下に割れが観察された。
C:10枚の正極中4枚以上9枚以下に割れが観察された。
D:10枚の正極全てに割れが観察された。
<ピール強度>
作製した正極を、幅1.0cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とした。そして、試験片の正極合材層側の表面にセロハンテープを張り付けた。この際、セロハンテープはJIS Z1522に規定されるものを用いた。その後、セロハンテープを試験台に固定した状態で試験片を一端側から50mm/分の速度で他端側に向けて引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、応力の平均値を求めて、これをピール強度とし、以下の基準で評価した。ピール強度が大きいほど集電体に対する正極合材層の密着性が優れていることを示す。
A:ピール強度が50N/m以上
B:ピール強度が10N/m以上50N/m未満
C:ピール強度が10N/m未満
<サイクル特性>
作製した二次電池を25℃の環境下で5時間静置させた。その後、25℃の環境下で、充電レート0.2Cの定電流法により、4.4Vになるまで定電流で充電を行ない、更に4.4Vで充電電流が0.02Cになるまで定電圧充電を行った。さらに、放電レート0.2Cで3.0Vまで放電した。その後、45℃の環境下で、1.0Cの定電流法にて4.4Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、このリチウムイオン二次電池を、前記と同様の充放電を199回繰り返し、合計200サイクル後の容量C1を測定した。
サイクル特性(高温サイクル特性)は、ΔC=(C1/C0)×100(%)で示す容量維持率ΔCを算出し、以下の基準により評価した。この容量維持率ΔCの値が高いほど、サイクル特性に優れることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが75%未満
(実施例1)
<水素添加ニトリルゴムの調製>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル35部、連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.25部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン65部を圧入し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体単位を含んでなる重合体(ニトリルゴム)を得た。重合転化率は85%であった。
得られた重合体に対してイオン交換水を添加して全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の溶液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して溶液中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム50mgを、パラジウム(Pd)に対して4倍モルの硝酸を添加したイオン交換水180mLに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(第一段階の水素添加反応)させた。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加したイオン交換水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(第二段階の水素添加反応)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して水素添加ニトリルゴムの水分散液を得た。この水分散液に溶媒としてのNMPを水素添加ニトリルゴムの固形分濃度が7%になるよう添加した。そして、90℃にて減圧蒸留を実施して水および過剰なNMPを除去し、固形分濃度8%の水素添加ニトリルゴムのNMP溶液を得た。なお、得られた水素添加ニトリルゴムのヨウ素価は、50mg/100mgであった。
<正極用バインダー組成物の調製>
得られた水素添加ニトリルゴムのNMP溶液100部(固形分換算)に対して、架橋剤としてのジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃)2部、共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、商品名「TAIC」)3部、および適量のNMPを加えて、室温下、容器攪拌法にて攪拌混合することで固形分濃度が8質量%の正極用バインダー組成物を得た。この正極用バインダー組成物を用いて、保存安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
<正極用スラリー組成物の調製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウムLCO(LiCoO)96部と、導電材としてのアセチレンブラック(BET比表面積:39m/g)2部と、水素添加ニトリルゴム、架橋剤および共架橋剤の量の合計が0.4部(固形分換算)となる量の正極用バインダー組成物と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)のNMP溶液1.52部(固形分換算)と、追加の溶媒としてのNMPをプラネタリーミキサーにて混合することにより、正極用スラリー組成物を調製した。なお追加のNMPの量は、得られる正極用スラリー組成物の粘度(B型粘度計を使用。温度:25℃、ローター:No.4、ローター回転数:60rpm)が4000±200mPa・sの範囲内となるように調整した。
<二次電池用正極の作製>
得られた正極用スラリー組成物を、集電体としてのアルミニウム箔(厚さ:20μm)の片面に、ドクターブレード法によって乾燥後の塗布量が25mg/cmになるように塗布し、60℃で20分、120℃で20分間乾燥して正極原反を得た。次いで2軸のロールプレスで圧縮し、シート状正極を作製した。このシート状正極を150℃で10時間真空乾燥(0.6kPa)して、かさ密度が4.0g/cmの正極合材層をアルミニウム箔(集電体)上に備えてなる二次電池用正極を得た。この二次電池用正極を用いて、柔軟性およびピール強度の評価を行った。結果を表1に示す。
<二次電池用負極の作製>
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径:24.5μm、比表面積:4m/g)100部と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製、BSH−12)1部(固形分換算)とを加え、イオン交換水で固形分濃度55%に調整した後、25℃で60分混合した。次いで、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した後、25℃で15分間混合して混合液を得た。得られた混合液に、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体(ガラス転移温度が−15℃)の40%水分散液を1.0部(固形分換算)と、イオン交換水とを添加し、最終固形分濃度が50%となるように調整し、10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用のスラリー組成物を得た。
得られた負極用のスラリー組成物を、コンマコーターで、集電体としての銅箔(厚さ:18μm)の片面に、乾燥後の塗布量が14.7mg/cm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延して、かさ密度が1.6g/cmの負極合材層を銅箔(集電体)上に備えてなる二次電池用負極を得た。
<二次電池用セパレータの準備>
単層のポリプロピレン製セパレータ(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を、5cm×5cmの正方形に切り抜いた。
<二次電池の製造>
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。そして、上記で得られた正極を、4cm×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。正極の正極合材層の上に、上記で得られた正方形のセパレータを配置した。さらに、上記で得られた負極を、4.2cm×4.2cmの正方形に切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うように配置した。更に、電解液を充填し、その後、アルミニウム包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム包材外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を得た。なお、電解液としては、EC、PC、EMC、およびPPを質量比EC:PC:EMC:PP=2:1:1:6で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてビニレンカーボネート1.5体積%を添加したものを用いた。電解液のSP値は22.20であった。
そして、得られたリチウムイオン二次電池を用いてサイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
正極用バインダー組成物の調製時に、共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレートを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3,4)
正極用バインダー組成物の調製時に、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドに替えて、それぞれ1,1−ジ−t-ヘキシルペルオキシ−シクロヘキサン(10時間半減期温度:87.1℃)、クメンハイドロパーオキサイド(10時間半減期温度:157.9℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
正極用バインダー組成物の調製時に、共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレートに替えて、トリメチロールプロパントリアクリレートを使用した以外は、実施例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6,7)
正極用バインダー組成物の調製時に、架橋剤および共架橋剤の配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
二次電池の作製時に、電解液として、SP値が24.18の電解液(ECおよびEMCを質量比EC:EMC=3:7で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてビニレンカーボネート1.5体積%を添加したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
正極用バインダー組成物の調製時に、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドおよび共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレートの何れも添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
水素添加ニトリルゴムのNMP溶液をメタノール中に注いで、水素添加ニトリルゴムを析出・凝固させた。次いで、析出物をメタノールで洗浄してNMPを除去した後、更にメタノールを乾燥により除去して、水素添加ニトリルゴムの固形物を得た。得られた水素添加ニトリルゴムの固形物100部と、架橋剤としての1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン40%品(アルケマ社製、商品名「Vul-Cup40KE」)5部(架橋剤有効成分が2部)と、共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、商品名「TAIC」)3部を、オープンロールを用いて50℃で5分間混練することにより、架橋したゴム組成物を得た。
この架橋したゴム組成物をNMPに溶解させてバインダー組成物の調製を試みたが、架橋したゴム組成物はNMPに溶解せず、バインダー組成物を調製することができなかった。
なお、架橋したゴム組成物(顆粒状)を測定試料とし、この測定試料をバインダーフィルム(A,B)として取り扱った以外は、実施例1と同様にして溶出率A,Bおよび求め、溶出率比を算出した。結果を表1に示す。
(比較例3)
正極用バインダー組成物の調製時に、水素添加ニトリルゴムに替えて、以下のように調製したアクリル系重合体を使用した以外は、実施例1と同様にして、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<アクリル系重合体の調製>
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器Aに、窒素雰囲気下、イオン交換水210部と、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウ・ケミカル社製、商品名「ダウファックス(登録商標)2A1」)を0.5部(固形分換算)仕込み、その後撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器Aに添加した。次いで、反応器Aとは別の容器Bに、窒素雰囲気下、(メタ)アクリル酸エステル単量体としての2−エチルヘキシルアクリレート20部、芳香族ビニル単量体としてのスチレン70部、ニトリル基含有単量体としてのアクリロニトリル10部、乳化剤としての濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウ・ケミカル社製、「ダウファックス(登録商標)2A1」)を0.5部(固形分換算)、およびイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器Aに添加した。重合転化率が95%になるまで反応させて、アクリル系重合体の水分散液を得た。この水分散液に溶媒としてのNMPをアクリル系重合体の固形分濃度が7%になるよう添加した。そして、90℃にて減圧蒸留を実施して水および過剰なNMPを除去し、固形分濃度8%のアクリル系重合体のNMP溶液を得た。
(比較例4)
二次電池の作製時に、電解液として、SP値が24.18の電解液(ECおよびEMCを質量比EC:EMC=3:7で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてビニレンカーボネート1.5体積%を添加したもの)を用いた以外は、比較例1と同様にして、水素添加ニトリルゴム、正極用バインダー組成物、正極用スラリー組成物、二次電池用正極、二次電池用負極および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中
「HNBR」は、水素添加ニトリルムゴムを示し、
「ACL」は、アクリル系重合体を示し、
「DPO」は、ジクミルパーオキサイドを示し、
「DHPC」は、1,1−ジ−t-ヘキシルペルオキシ−シクロヘキサンを示し、
「CHP」は、クメンハイドロパーオキサイドを示し、
「TAIC」は、トリアリルイソシアヌレートを示し、
「TMPT」は、トリメチロールプロパントリアクリレートを示し、
「PVDF」は、ポリフッ化ビニリデンを示す。
Figure 2017174764
表1より、水素添加ニトリルゴムと、架橋剤と、溶媒とを含み、且つ、溶出率比が0.45以下であるバインダー組成物を用いた実施例1〜8では、バインダー組成物が粘度安定性に優れており、また、柔軟性およびピール強度が確保された正極、並びにサイクル特性に優れる二次電池を製造できることが分かる。
また、表1より、架橋剤を含まず、且つ、溶出率比が0.45を超えるバインダー組成物を用いた比較例1および4では、正極のピール強度が低下し、また、二次電池のサイクル特性が低下してしまうことが分かる。更に、表1より、水素添加ニトリルゴムに変えてアクリル系重合体を用いた比較例3では、導電材の分散状態が悪化するためと推察されるが、二次電池のサイクル特性が低下してしまうことが分かる。加えて、SP値が22.20の電解液を使用する実施例1とSP値が24.18の電解液を使用する実施例8とを比較すると、実施例1の方がサイクル特性に優れている。これは、SP値が22.20の電解液が、SP値が24.18の電解液に比して低粘度であるため、正極合材層により良好に浸透するためと考えられる。しかしながら一方で、SP値が22.20である電解液を使用する比較例1とSP値が24.18の電解液を使用する比較例4とを比較すると、比較例1の方がサイクル特性は低下している。これは、比較例1および4では架橋剤を使用していないため、比較例1のようにSP値が22.20の電解液を使用すると、電解液が正極合材層に良好に浸透するものの、水素添加ニトリルゴムの電解液中への溶出が顕著となるためと考えられる。
本発明によれば、非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池正極用バインダー組成物および非水系二次電池正極用スラリー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、非水系二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることが可能な非水系二次電池用正極を提供することができる。
更に、本発明によれば、優れたサイクル特性を有する非水系二次電池を提供することができる。

Claims (10)

  1. 水素添加ニトリルゴム、架橋剤、および溶媒を含み、
    以下の式(1)によって算出される溶出率比が0.45以下である、非水系二次電池正極用バインダー組成物。
    溶出率比=溶出率A/溶出率B・・・(1)
    式(1)中、
    溶出率Aは、前記非水系二次電池正極用バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを150℃で6時間真空乾燥し、真空乾燥後のバインダーフィルムを、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびn−プロピルプロピオネート(PP)を質量比EC:PC:EMC:PP=2:1:1:6で混合して得られる溶媒にLiPFを1.0モル/リットルの濃度で溶解させた測定用電解液中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率を表し、
    溶出率Bは、前記非水系二次電池正極用バインダー組成物から形成されるバインダーフィルムを25℃で6時間真空乾燥し、真空乾燥後のバインダーフィルムを、前記測定用電解液中に、60℃で72時間浸漬させた際の溶出率を表す。
  2. 前記架橋剤の10時間半減期温度が、80℃以上160℃以下である、請求項1に記載の非水系二次電池正極用バインダー組成物。
  3. 前記架橋剤が有機過酸化物である、請求項1又は2に記載の非水系二次電池正極用バインダー組成物。
  4. 前記水素添加ニトリルゴム100質量部当たり、前記架橋剤を1質量部以上3質量部以下含む、請求項1〜3の何れかに記載の非水系二次電池正極用バインダー組成物。
  5. 更に共架橋剤を含む、請求項1〜4の何れかに記載の非水系二次電池正極用バインダー組成物。
  6. 前記水素添加ニトリルゴム100質量部当たり、前記共架橋剤を1質量部以上5質量部以下含む、請求項5に記載の非水系二次電池正極用バインダー組成物。
  7. 正極活物質と、請求項1〜6の何れかに記載の非水系二次電池正極用バインダー組成物とを含む、非水系二次電池正極用スラリー組成物。
  8. 請求項7に記載の非水系二次電池正極用スラリー組成物を用いて形成した正極合材層を備える、非水系二次電池用正極。
  9. 請求項8に記載の非水系二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備える、非水系二次電池。
  10. 前記電解液のSP値が22.0以上23.0以下である、請求項9に記載の非水系二次電池。
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