以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置100について説明する。ここでは、ブレーキ装置100は、作動流体として圧縮空気が用いられる鉄道車両用の空気圧ブレーキである。圧縮空気に代えて、作動油など他の作動流体を用いてもよい。
図1及び図2に示すように、ブレーキ装置100は、車輪1の回転を制動するブレーキ本体10と、ブレーキ本体10を支持する第1及び第2スライドピン31,32と、第1及び第2スライドピン31,32を支持するブレーキ支持部材50と、を備える。ブレーキ支持部材50は、車両の台車(図示省略)に取り付けられる。ブレーキ装置100が鉄道車両以外の車両に適用される場合には、ブレーキ支持部材50は車両の車体(図示省略)に取り付けられる。
ブレーキ装置100は、ブレーキ支持部材50を台車又は車体に取付けることにより、車両に装着される。ここでは、ブレーキ装置100が車両に装着されているものとして説明する。
ブレーキ本体10は、車輪1を挟持するための一対のブレーキライニング11a,11bと、ブレーキライニング11a,11bをそれぞれ支持するガイドプレート12a,12bと、を有する。一対のブレーキライニング11a,11bは、車輪1を挟持する際には、車輪1の表裏両面に設けられるブレーキディスク2a,2bにそれぞれ接する。
ブレーキディスク2a,2bは、車輪1と一体に形成されて車輪1とともに回転する。車輪1と一体に形成されるブレーキディスク2a,2bに代えて、車輪1とは別体に形成され車輪1とともに回転可能に車輪1に設けられるブレーキディスク2a,2bを用いてもよい。
また、ブレーキ本体10は、ガイドプレート12a,12bを支持するキャリパアーム部13a,13bと、キャリパアーム部13a,13bを連結するヨーク部14と、ヨーク部14に設けられる第1及び第2ピン受部15,16と、を有する。キャリパアーム部13a,13b、ヨーク部14、並びに第1及び第2ピン受部15,16は、一体に成形される。
キャリパアーム部13a,13bは、それぞれ、ブレーキディスク2a,2bに沿って延在する。キャリパアーム部13aとブレーキディスク2aとの間にブレーキライニング11aが配置され、キャリパアーム部13bとブレーキディスク2bとの間にブレーキライニング11bが配置される。
第1ピン受部15は、ヨーク部14の上側に配置され、車輪1とは反対側にヨーク部14から突出する。第2ピン受部16は、ヨーク部14の下側に配置され、車輪1とは反対側にヨーク部14から突出する。
第1及び第2ピン受部15,16は、軸が車輪1の回転軸に沿う円柱形状に形成される。第1ピン受部15には貫通孔15aが形成され、第2ピン受部16には貫通孔16aが形成される(図3参照)。
第1スライドピン(第1ガイド部材)31は、第1ピン受部15の貫通孔15aに挿通する。第2スライドピン(第2ガイド部材)32は、第1スライドピン31よりも下方に位置し、第2ピン受部16の貫通孔16aに挿通する。貫通孔15aへの第1スライドピン31の挿通及び貫通孔16aへの第2スライドピン32の挿通により、ブレーキ本体10は第1及び第2スライドピン31,32に対して軸方向(延在方向)に摺動自在に支持される。
第1及び第2スライドピン31,32の軸方向は、車輪1の回転軸方向に一致する。したがって、ブレーキ本体10は、第1及び第2スライドピン31,32に対して摺動することにより、車輪1の回転軸方向に移動する。つまり、第1及び第2スライドピン31,32は、ブレーキ本体10を車輪1の回転軸方向に案内するガイド部として機能する。
ブレーキ支持部材50は、台車に取り付けられる基部51と、第1及び第2スライドピン31,32を支持する第1及び第2支持部としての第1及び第2ブラケット部60,70を有する。第1及び第2ブラケット部60,70は、互いに間隔を空けて基部51に設けられ、基部51と一体に形成される。第1及び第2ブラケット部60,70は、台車に直接設けられていてもよい。
第1ブラケット部60は、第1スライドピン31の一端部が挿通する貫通孔61と、第2スライドピン32の一端部が挿通する貫通孔(図示省略)と、を有する。第2ブラケット部70は、第1スライドピン31の他端部が挿通する貫通孔71と、第2スライドピン32の他端部が挿通する貫通孔(図示省略)と、を有する。
基部51は、基部51の上端部に形成されるボルト孔62a,72aと、基部51の下端部に形成されるボルト孔62b,72bと、を有する。ボルト孔62a,72aは上下方向に延在し、ボルト孔62b,72bは横方向に延在する。
ボルト孔62a,72aに挿通したボルトを台車に螺合することにより、ブレーキ支持部材50は台車の上面に締結される。ボルト孔62b,72bに挿通したボルトを台車に螺合することにより、ブレーキ支持部材50は台車の側面に締結される。
第1及び第2ピン受部15,16は、第1及び第2スライドピン31,32よりも短く、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に配置される。第1及び第2ピン受部15,16の摺動は、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70とによって制限される。
第1ブラケット部60と第1ピン受部15との間、及び第2ブラケット部70と第1ピン受部15との間には、ゴム製のブーツ33が設けられる。ゴム製のブーツ33は、第1スライドピン31のうち第1ピン受部15から延出する部分を覆い、第1スライドピン31をダスト等から保護する。
第1ブラケット部60と第2ピン受部16との間、及び第2ブラケット部70と第2ピン受部16との間には、ゴム製のブーツ(図示省略)が設けられる。ゴム製のブーツは、第2スライドピン32のうち第2ピン受部16から延出する部分を覆い、第2スライドピン32をダスト等から保護する。
ブレーキ本体10は、キャリパアーム部13aの先端に配置される空気圧シリンダ17を備える。空気圧シリンダ17の一端はキャリパアーム部13aに固定される。空気圧シリンダ17の他端にはガイドプレート12aが固定される。
通孔18を通じて空気圧シリンダ17に圧縮空気が供給されると、空気圧シリンダ17は伸長し、ガイドプレート12aをブレーキディスク2aに近づける。その結果、ブレーキライニング11aがブレーキディスク2aに接触する。
ブレーキライニング11aがブレーキディスク2aに接触した後に更に空気圧シリンダ17に圧縮空気が供給されると、空気圧シリンダ17はブレーキライニング11aをブレーキディスク2aに押圧する。ブレーキ本体10は、摺動自在に支持されるため、ブレーキライニング11aによるブレーキディスク2aの押圧に伴って、第1ブラケット部60に近づくように移動する。その結果、ブレーキライニング11bがブレーキディスク2bに接触する。
ブレーキライニング11a,11bがブレーキディスク2a,2bに接触した後に更に空気圧シリンダ17に圧縮空気が供給されると、ブレーキ本体10はブレーキライニング11a,11bを介して車輪1を挟持する。ブレーキライニング11a,11bは、ブレーキディスク2a,2bの回転に抗して支持されるので、ブレーキディスク2a,2bとブレーキライニング11a,11bとの間に摩擦力が生じる。その結果、車輪1の回転が制動される。
空気圧シリンダ17への圧縮空気の供給が遮断されると、空気圧シリンダ17は不図示のバネの復元力により収縮し、ガイドプレート12aをブレーキディスク2aから遠ざける。その結果、ブレーキライニング11a,11bがブレーキディスク2a,2bから離れ、車輪1の回転の制動が解除される。
このように、空気圧シリンダ17は、圧縮空気が供給されたときには車輪1の回転を制動するように作動し、圧縮空気の供給が遮断されたときには車輪1の回転の制動を解除するように作動する。以下において、車輪1の回転を制動する空気圧シリンダ17の動作を「制動動作」とも称し、車輪1の回転の制動を解除する空気圧シリンダ17の動作を「制動解除動作」とも称する。
また、ブレーキ本体10は、ブレーキライニング11aの摩耗量に関わらず、制動解除動作時におけるブレーキディスク2aに対するブレーキライニング11aの位置を一定に保つアジャスタ20aを備える。アジャスタ20aは、キャリパアーム部13aの先端に、アンカボルト21により締結される。
アジャスタ20aは、キャリパアーム部13aに対して進退可能なアンカピン22を有する。アンカピン22の先端にはガイドプレート12aが取り付けられる。したがって、アンカピン22は、制動動作時にはガイドプレート12aとともにブレーキディスク2aに向けて進出する。このとき、アンカピン22は、ブレーキディスク2aがブレーキライニング11aを回転させようとするのに抗してブレーキライニング11aを保持する保持部材としても機能する。
アンカピン22は、制動解除動作時には、ガイドプレート12aとともにブレーキディスク2aから後退する。このとき、アンカピン22は、元の位置よりも、制動動作時におけるブレーキライニング11aの摩耗量(摩耗により減った厚さ)だけブレーキディスク2aに近い位置に戻る。したがって、制動解除動作時におけるブレーキディスク2aとブレーキライニング11aとの間の間隔は、制動動作の前後において同じになる。
このように、アジャスタ20aは、制動解除動作時におけるアンカピン22の戻り量を制限し、制動解除動作時におけるブレーキディスク2aに対するブレーキライニング11aの位置を一定に保つ。
また、ブレーキ装置100は、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を覆って設けられるカバー部としてのカバープレート80を更に備える。図1及び図3を参照して、カバープレート80の構造を詳細に説明する。
カバープレート80は、ブレーキ本体10の外形に沿って上下方向に延在するカバー本体81と、カバー本体81の上端縁に設けられる第1取付部82と、カバー本体81の下端縁に設けられる第2取付部83と、を有する。カバー本体81、第1及び第2取付部82,83は、金属製の板材により一体に形成される。
第1取付部82は、ボルト84により、第1及び第2ブラケット部60,70の上端部に締結される。第2取付部83は、ボルト85により、第1及び第2ブラケット部60,70の下端部に締結される。このように、カバープレート80は、ボルト84,85により、第1及び第2ブラケット部60,70に締結される。
カバー本体81は、ブレーキ本体10の外面のうち第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に位置し車輪1とは反対側の外面に対して所定の距離をもって対峙する外面81dを有する。具体的には、カバー本体81は、第1ピン受部15の車輪1とは反対側の外形に対応して形成される第1湾曲部81aと、ヨーク部14の車輪1とは反対側の外形に対応して形成される平面部81bと、第2ピン受部16の車輪1とは反対側の外形に対応して形成される第2湾曲部81cと、を有する。このように、カバー本体81は、ブレーキ本体10の一部の外形に対応した形状の外面81dを有する。
カバー本体81の外面81dは、ブレーキ本体10の車輪1とは反対側の外面に所定の距離をもって対峙するので、ブレーキ本体10とカバー本体81との間に所定の隙間が形成される。カバー本体81は、ブレーキ本体10が摺動しても所定の隙間が変化しないように延在する。具体的には、カバー本体81の外面81dは、第1及び第2スライドピン31,32の延在方向と略平行に延在する。したがって、ブレーキ本体10の摺動はカバー本体81により妨げられない。
カバー本体81が第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を覆うため、ブレーキ本体10とカバー本体81との間の所定の隙間には、この隙間より大きい異物は流入しない。所定の隙間よりも小さい異物は、この隙間に流入したとしても、付着力は弱く、ブレーキ本体10に加わる振動や摺動動作により取り除かれる。そのため、第1ブラケット部60の内側面60aと第2ブラケット部70の内側面70aに異物が付着し難く、ブレーキ本体10が摺動しても第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まり難い。したがって、異物によるブレーキ本体10の移動範囲の狭小化を防ぐことができる。
第1取付部82は、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に渡って延在し、カバー本体81の上端と台車との間を塞ぐ。つまり、第1取付部82は、カバー本体81の外面81dの上端と台車との間を塞ぐ上面82aを有する。
カバー本体81の上端と台車との間の隙間が第1取付部82により塞がれるため、異物がカバープレート80と台車との間に流入し難い。したがって、カバープレート80と台車との間に異物が溜まるのを防ぐことができる。
図3に示されるブレーキ装置100は、1つの板材により一体に形成されるカバープレート80をカバー部として備える。カバープレート80に代えて、図4に示す変形例のように、ブレーキ装置100は、複数のカバープレート80a,80b,80cをカバー部として備えていてもよい。
図4は、第1から第3カバープレート80a,80b,80cを備えるブレーキ装置100を、図3に対応して示す断面図である。第1カバープレート80aは、第1湾曲部81aと第1取付部82とを有する。第2カバープレート80bは、平面部81bを有する。第3カバープレート80cは、第2湾曲部81cと第2取付部83とを有する。
第1カバープレート80aは、ボルト84により、第1及び第2ブラケット部60,70の上端部に締結される。第3カバープレート80cは、ボルト85により、第1及び第2ブラケット部60,70の下端部に締結される。
第2カバープレート80bは、平面部81bの側端に設けられ平面部81bと一体に形成される第3取付部81eを有する。第3取付部81eは、ボルト86により、第1及び第2ブラケット部60,70の中間部分に締結される。このように、第2カバープレート80bは、ボルト86により、第1及び第2ブラケット部60,70に締結される。
図4に示す変形例では、第1から第3カバープレート80a,80b,80cが別体に形成される。そのため、第1から第3カバープレート80a,80b,80cはカバープレート80(図3参照)よりも小型であり、その製作が容易になる。
また、第1から第3カバープレート80a,80b,80cは、別々に第1及び第2ブラケット部60,70に取り付けられる。そのため、第1から第3カバープレート80a,80b,80cを第1及び第2ブラケット部60,70に容易に取り付けることができる。
次に、ブレーキ装置100の作用について説明する。
鉄道車両の走行時には、車輪1は高速で回転している。運転士の操作等によってブレーキ装置100が制動状態に切り換えられると、圧縮空気が空気圧源から通孔18を通じて空気圧シリンダ17に供給される。その結果、空気圧シリンダ17は伸長し、ブレーキライニング11aをブレーキディスク2aに押圧する。
カバー本体81の外面81dは、ブレーキ本体10の車輪1とは反対側の外面に対して所定の距離をもって対峙するため、ブレーキ本体10の摺動はカバー本体81により妨げられない。したがって、空気圧シリンダ17は、ブレーキディスク2aへのブレーキライニング11aの押圧時に、ブレーキ本体10を摺動させてブレーキライニング11bをブレーキディスク2bに押圧する。
ブレーキディスク2a,2bがそれぞれブレーキライニング11a,11bに押圧されると摩擦力が発生し、車輪1の回転は制動される。これにより、鉄道車両は、速度が低下してやがて停止する。
運転士の操作等によってブレーキ装置100による車輪1の制動が解除されると、空気圧シリンダ17は不図示のバネの復元力により収縮し、ブレーキライニング11a,11bをブレーキディスク2a,2bから離間する。これにより、車輪1は、ブレーキ装置100の影響を受けることなく回転することが可能となる。
車輪間隔が可変な鉄道車両では、例えば狭軌と標準軌とのように異なったレール間隔に応じて車輪1が回転軸方向に移動する。ブレーキ本体10は、車輪1の回転軸方向に移動自在に第1及び第2スライドピン31,32に支持されているので、車輪1に追従して移動する。したがって、車輪1の位置が回転中心軸方向へ変化しても、ブレーキ本体10はその移動位置で制動動作時に車輪1を挟持することができる。
車輪間隔が可変な鉄道車両以外の車両にもブレーキ装置100は適用可能である。ブレーキ本体10は、第1及び第2スライドピン31,32に対して軸方向に摺動自在に支持されるため、第1及び第2ブラケット部60,70に対して移動する。したがって、第1及び第2ブラケット部60,70が車輪1に対してずれた状態でブレーキ支持部材50が台車に取付けられても、ブレーキ本体10を車輪1に対応した所望の位置に配置させることができる。
鉄道車両の走行時には、車輪1の回転により、塵埃、灰及び雪等の異物が第1ブラケット部60及び第2ブラケット部70に向かって巻き上げられる場合がある。
ここで、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間が覆われていないブレーキ装置では、巻き上げられた異物が、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に流入し、第1ブラケット部60の内側面60aと第2ブラケット部70の内側面70aに付着するおそれがある。
内側面60a,70aに異物が付着すると、異物はブレーキ本体10の摺動にブレーキ本体10により第1ブラケット部60及び第2ブラケット部70に押し付けられ、第1ブラケット部60及び第2ブラケット部70に溜まる。そのため、ブレーキ本体10の移動範囲が狭められるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、カバー本体81が第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を覆うため、異物が第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に流入し難い。そのため、第1ブラケット部60の内側面60aと第2ブラケット部70の内側面70aに異物が付着し難く、ブレーキ本体10が摺動しても第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まり難い。したがって、異物によるブレーキ本体10の移動範囲の狭小化を防ぐことができる。
また、本実施形態では、カバー本体81の上端と台車との間の隙間が第1取付部82により塞がれるため、異物がカバープレート80と台車との間に流入し難い。したがって、カバープレート80と台車との間に異物が溜まるのを防ぐことができる。
<第2実施形態>
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
ブレーキ装置200は、カバー部としての第1及び第2カバープレート87,88を備える。第2カバープレート88は第1カバープレート87とは別体に形成され、第1カバープレート87よりも下方に配置される。
第1カバープレート87は、第1ピン受部15の車輪1とは反対側の外形に対応して形成される第1湾曲部87aと、第1湾曲部87aの上端縁に設けられる第1取付部87bと、有する。第1湾曲部87aと第1取付部87bとは、金属製の板材により一体に形成される。
第1取付部87bは、ボルト84により、第1及び第2ブラケット部60,70の上端部に締結される。このように、第1カバープレート87は、ボルト84により、第1及び第2ブラケット部60,70に締結される。
第1湾曲部87aは、下方に向かうほど第1ピン受部15から離れる。そのため、ブレーキ本体10の摺動時に第1湾曲部87aの外面87cから掻き取られた異物は、第1ピン受部15と第1湾曲部87aとの間を通って下方に落ちやすい。したがって、第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、第1湾曲部87aは、ブレーキ本体10の摺動方向における両端から中心に向かうほど第1ピン受部15から離れる。そのため、ブレーキ本体10の摺動時に第1湾曲部87aの外面87cから掻き取られた異物は、外面87cに沿って中心へ送られやすい。したがって、第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
第2カバープレート88は、ヨーク部14の車輪1とは反対側の外形に対応して形成される平面部88aと、第2ピン受部16の車輪1とは反対側の外形に対応して形成される第2湾曲部88bと、平面部88aの側端に設けられる第2取付部88cと、を有する。平面部88a、第2湾曲部88b及び第2取付部88cは、金属製の板材により一体に形成される。
第2取付部88cは、ボルト86により、第1及び第2ブラケット部60,70の中間部に締結される。このように、第2カバープレート88は、ボルト86により、第1及び第2ブラケット部60,70に締結され、第2カバープレート88と台車との間に隙間が形成される。
第2湾曲部88bは、下方に向かうほど第2ピン受部16から離れる。そのため、ブレーキ本体10の摺動時に第2湾曲部88bの外面88dから掻き取られた異物は、第2ピン受部16と第2湾曲部88bとの間を通って下方に落ちやすい。したがって、第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、第2湾曲部88bは、ブレーキ本体10の摺動方向における両端から中心に向かうほど第2ピン受部16から離れる。そのため、ブレーキ本体10の摺動時に第2湾曲部88bの外面88dから掻き取られた異物は、外面88dに沿って中心へ送られやすい。したがって、第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
第1カバープレート87と第2カバープレート88とは、第1カバープレート87の下端87fと第2カバープレート88の上端88fとの間に間隔を空けて配置される。つまり、カバー部には第2カバープレート88と台車との間の隙間に通じる開口部89が形成される。
第1湾曲部87aの外面87cに付着した異物は、ブレーキ本体10の摺動時に第1ピン受部15により掻き取られ、開口部89を通じて、第2カバープレート88と台車との間の隙間に送られる。したがって、異物はブレーキ本体10に送られ難く、ブレーキ本体10の摺動時に第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、開口部89は、第1スライドピン31よりも下方かつ第2スライドピン32よりも上方に位置する。そのため、第1ピン受部15により第1湾曲部87aの外面87cから掻き取られた異物は、開口部89を通って第2カバープレート88と台車との間に送られ易く、第2スライドピン32及び第2ピン受部16に送られ難い。したがって、ブレーキ本体10の摺動時に第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
ブレーキ装置200では、開口部89は、第1スライドピン31の下端31aよりも下方に位置するが、開口部89が第1スライドピン31の下端31aよりも上方に位置していてもよい。つまり、開口部89は、第1スライドピン31の上端31bよりも下方かつ第2スライドピン32よりも上方に位置していればよい。
第1カバープレート87の下端87fは、第2カバープレート88の上端88fよりも下方に配置されていてもよい。この場合には、開口部89が第2カバープレート88の上端88fよりも下方に形成されるため、第2スライドピン32及び第2ピン受部16に異物が送られなくなる。したがって、ブレーキ本体10の摺動時に第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
開口部89は、板材により形成される第1及び第2カバープレート87,88を互いに間隔を空けて配置することにより形成される。そのため、板材に開口(孔)を形成する必要がない。したがって、カバー部をより容易に製作することができる。
以上の第2実施形態によっても第1実施形態と同様に、第1及び第2カバープレート87,88が第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を覆うため、ブレーキ本体10とカバープレート87,88との間の所定の隙間には、この隙間より大きい異物は流入しない。所定の隙間よりも小さい異物は、この隙間に流入したとしても、付着力は弱く、ブレーキ本体10に加わる振動や摺動動作により取り除かれる。そのため、第1ブラケット部60の内側面60aと第2ブラケット部70の内側面70aに異物が付着し難く、ブレーキ本体10が摺動しても第1及び第2ブラケット部60,70に異物が溜まり難い。したがって、異物によるブレーキ本体10の移動範囲の狭小化を防ぐことができる。
第1ピン受部15と対峙する第1湾曲部87aは、第1湾曲部87aの上端87dが第1ピン受け部15に最も近く、下方に向かうほど第1ピン受部15から離れる形態に限られない。例えば、第1湾曲部87aの上下方向中間部87eが第1ピン受け部15に最も近く、中間部87eから下端87fに向かうほど第1ピン受け部15から離れていても良い。
つまり、カバー部としての第1カバープレート87の外面87cは、外面87cの下端87fよりも上方に位置し下端87fと比較してブレーキ本体10の近くに位置する近位部分としての上端87d又は中間部87eを有し、上端87d又は中間部87eから下端87fに向かうほどブレーキ本体10から離れていればよい。
同様に、カバー部としての第2カバープレート88の外面88dは、外面88dの下端88eよりも上方に位置し下端88eと比較してブレーキ本体10の近くに位置する近位部分としての上端88f又は中間部88gを有し、上端88f又は中間部88gから下端88eに向かうほどブレーキ本体10から離れていればよい。
また、ブレーキ装置200では、第1湾曲部87aが第1ピン受け部15と対峙するが、第1ピン受け部15と対峙する部分は平板状に形成されていてもよい。同様に、第2湾曲部88bに代えて、第2ピン受け部16と対峙する部分は平板状に形成されていてもよい。
ブレーキ装置200では、ブレーキ本体10の摺動方向における第1及び第2カバー部レート87,88の両端は、角部のない円弧状に形成される。第1及び第2カバー部レート87,88の両端の少なくとも1つが、円弧形状に代えて、角部を有する形状に形成されてもよい。第1及び第2カバー部レート87,88の両端が角部を有する形状に形成される場合、第1及び第2カバー部レート87,88の加工が容易であり、ブレーキ装置200の製造コストを低減することができる。
<第3実施形態>
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第3実施形態に係るブレーキ装置300について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。また、図8では、ブレーキ本体10、第1及び第2スライドピン31,32、並びにブーツ33は図示が省略されている。
ブレーキ装置300は、カバー部としての複数のカバーブロック(ブロック材)90を備える。カバーブロック90は、例えば発泡ゴム等の内部に気泡を有する樹脂材料により形成され、ブレーキ本体10の摺動方向に並べられる。つまり、カバー部は、ブレーキ本体10の摺動方向に分割されている。
各カバーブロック90には、シャフト91が挿通する孔90aが形成される。シャフト91の一端部は、第1ブラケット部60に形成される孔(図示省略)に挿通され、シャフト91の他端部は、第2ブラケット部70に形成される孔(図示省略)に挿通される。
シャフト91は、両端部が第1及び第2ブラケット部60,70の孔に挿通した状態で、ナット92と螺合し、第1及び第2ブラケット部60,70に締結される。第1及び第2ブラケット部60,70へのシャフト91の締結により、カバーブロック90が第1及び第2ブラケット部60,70に取り付けられる。
各カバーブロック90は、ブレーキ本体10の外面のうち第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に位置し車輪1とは反対側の外面に対して対峙する外面90bを有する。外面90bは、カバーブロック90が第1及び第2ブラケット部60,70に取り付けられた状態では、ブレーキ本体10との間に所定の隙間を有する。この所定の隙間は、ブレーキ本体10が摺動しても変化しない。したがって、ブレーキ本体10の摺動はカバーブロック90により妨げられない。
カバーブロック90が樹脂材料により形成されるため、カバーブロック90の温度が下がり難い。そのため、カバーブロック90の外面90bに雪が付き難い。したがって、雪によるブレーキ本体の移動範囲の狭小化をより確実に防ぐことができる。また、カバーブロック90が内部に気泡を有する樹脂材料により形成されるため、カバーブロック90の軽量化が可能になる。
また、カバーブロック90は、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間の空所を埋めるため、ブレーキ本体10の摺動方向と交わる方向に十分な厚さを有する。したがって、カバーブロック90の強度を高めることができる。
ブレーキ装置300は、第1実施形態における金属性のカバープレート80(図3参照)をカバーブロック90の外面90bに備えていても良い。この場合、金属製のカバープレート80が樹脂製のカバーブロック90を保護するため、カバーブロック90の変形を防ぐことができる。
ブレーキ装置300では、カバーブロック90は、ブレーキ本体10の摺動方向に複数に分割されるが、カバーブロック90は分割されていなくても良い。カバーブロック90が分割される形態では、カバーブロック90の個数を増減させることで、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間の間隔が異なる複数の車両にブレーキ装置300をより柔軟に対応させることができる。
また、ブレーキ装置100,200において(図3及び図5参照)、カバープレート80、第1及び第2カバープレート87,88がブレーキ本体10の摺動方向に分割されていても良い。この場合においても、カバープレート80,87,88の分割体の個数を増減させることで、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間の間隔が異なる複数の車両にブレーキ装置100,200をより柔軟に対応させることができる。
以上の第1ないし第3実施形態の説明において、ブレーキ装置100,200,300はフローティング式であるが、本実施形態は、対向ピストン式、踏面式、てこリンク式などのブレーキ装置にも適用可能である。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ブレーキ装置100,200,300は、車体又は台車に設けられる第1及び第2ブラケット部60,70と、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間に渡って延在する第1及び第2スライドピン31,32と、第1及び第2スライドピン31,32に対して延在方向に摺動自在に支持され車輪1の回転を制動するブレーキ本体10と、ブレーキ本体10の外面のうち第1及び第2スライドピン31,32の間に位置し車輪1とは反対側の外面に対して所定の距離をもって対峙する外面81d,87c,88d,90bを有し、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を覆って設けられるカバープレート80,87,88又はカバーブロック90と、を備えることを特徴とする。
この構成では、カバープレート80,87,88又はカバーブロック90は、ブレーキ本体10の車輪1とは反対側の外面に所定の距離をもって対峙する外面81d,87c,88d,90bを有するので、ブレーキ本体10とカバープレート80,87,88又はカバーブロック90との間に所定の隙間が形成される。カバープレート80,87,88又はカバーブロック90が第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を覆うため、所定の隙間には、この隙間より大きい異物は流入しない。所定の隙間よりも小さい異物は、この隙間に流入したとしても、付着力は弱く、ブレーキ本体10に加わる振動や摺動動作により取り除かれる。そのため、第1ブラケット部60の内側面60aと第2ブラケット部70の内側面70aに異物が付着し難く、ブレーキ本体10が摺動しても第1ブラケット部60と第2ブラケット部70とに異物が溜まり難い。したがって、異物によるブレーキ本体10の移動範囲の狭小化を防ぐことができる。
また、ブレーキ装置200は、カバープレート87,88と車体又は台車との間に隙間が形成され、カバープレート87,88は、隙間に通じる開口部89を有する板材であることを特徴とする。
この構成では、カバープレート87,88と車体又は台車との間の隙間に通じる開口部89がカバープレート87,88に形成されるため、外面87cに付着した異物は、ブレーキ本体10が摺動してブレーキ本体10により掻き取られた際に、カバープレート88と車体又は台車との間に開口部89を通じて送られる。したがって、ブレーキ本体10の摺動時に第1ブラケット部60と第2ブラケット部70とに異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、ブレーキ装置200は、第2スライドピン32が第1スライドピン31より下方に位置し、開口部89は、第1スライドピン31の上端31bよりも下方かつ第2スライドピン32よりも上方に位置することを特徴とする。
この構成では、開口部89が第1スライドピン31の上端31bよりも下方かつ第2スライドピン32よりも上方に位置する。そのため、カバープレート87の外面87cに付着した異物は、第1スライドピン31に対して摺動する第1ピン受部15により掻き取られた際に、カバープレート88と車体又は台車との間に開口部89を通じて送られ易く、第2スライドピン32に送られ難い。したがって、ブレーキ本体10の摺動時に第1ブラケット部60と第2ブラケット部70とに異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、ブレーキ装置200では、カバープレート87,88は、上下方向に分割された板材であり、開口部89は、カバープレート87,88を互いに間隔を空けて配置することにより形成されることを特徴とする。
この構成では、開口部89がカバープレート87,88を互いに間隔を空けて配置することにより形成されるため、板材に開口(孔)を形成する必要がない。したがって、カバープレート87,88をより容易に製作することができる。
また、ブレーキ装置300では、カバーブロック90は、樹脂材料により形成され第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を埋めることを特徴とする。
この構成では、カバーブロック90は、樹脂材料により形成されるため、カバーブロック90の温度が下がり難く、カバーブロック90の外面90bに雪が付き難い。したがって、雪によるブレーキ本体10の移動範囲の狭小化を防ぐことができる。また、カバーブロック90は、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間を埋めるため、ブレーキ本体10の摺動方向と交わる方向に十分な厚さを有する。したがって、カバーブロック90の強度を高めることができる。
また、ブレーキ装置300は、カバーブロック90を覆い外面81dを形成する金属製のカバープレート80を更に備えることを特徴とする。
この構成では、カバーブロック90を覆う金属製のカバープレート80が外面81dを形成するため、カバーブロック90が外力により変形し難い。したがって、カバーブロック90の強度を高めることができる。
また、ブレーキ装置100,200,300では、カバープレート80,87,88又はカバーブロック90は、ブレーキ本体10の摺動方向に分割されることを特徴とする。
この構成では、カバープレート80,87,88又はカバーブロック90がブレーキ本体10の摺動方向に複数に分割されるので、分割体の個数を増減させることで、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70との間の間隔が異なる複数の車両にブレーキ装置100,200,300をより柔軟に対応させることができる。
また、ブレーキ装置200では、外面87c,88dは、外面87c,88dの下端87f,88eよりも上方に位置し下端87f,88eと比較してブレーキ本体10の近くに位置する上端87d,88f又は中間部87e,88gを有し、上端87d,88f又は中間部87e,88gから下端87c,88dに向かうほどブレーキ本体10から離れることを特徴とする。
この構成では、外面87c,88dが上端87d,88f又は中間部87e,88gから下端87f,88eに向かうほどブレーキ本体10から離れるため、ブレーキ本体10の摺動時に外面87c,88dから掻き取られた異物は、上端87d,88f又は中間部87e,88gからブレーキ本体10とカバープレート87,88との間を通って下方に落ちやすい。したがって、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70とに異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、ブレーキ装置200では、外面87c,88dは、ブレーキ本体10の摺動方向における端から中心へ向かうほどブレーキ本体10から離れることを特徴とする。
この構成では、外面87c,88dが端から中心へ向かうほどブレーキ本体10から離れるため、ブレーキ本体10の摺動時に外面87c,88dから掻き取られた異物は、外面87c,88dに沿って中心へ送られ易い。したがって、第1ブラケット部60と第2ブラケット部70とに異物が溜まるのをより確実に防ぐことができる。
また、ブレーキ装置100では、カバープレート80は、外面80dの上端と車体又は台車との間を塞ぐ上面82aを有することを特徴とする。
この構成では、カバープレート80の上面82aが外面80dの上端と車体又は台車との間を塞ぐため、異物がカバープレート80と車体又は台車との間に流入しにくい。したがって、カバープレート80と車体又は台車との間に異物が溜まるのを防ぐことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。