JP2017172533A - サーモスタットモニタ - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタにおいて、エンジン冷却水の温度と、外気の温度との差が所定値以上となる条件を満たすことにより、比較的簡易な構成で、サーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコアの放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを判別でき、確実にサーモスタットの開故障を検出することができるサーモスタットモニタを提供する。
【解決手段】サーモスタットモニタは、温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度と、外気の温度との温度差が所定値F以上となる条件を満たす場合に、サーモスタットの開故障の検出をする温度差判定手段を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、サーモスタットモニタに係り、特に、車両のエンジンとヒータコアとラジエータとが経路上に配置されているエンジン冷却水経路のうちラジエータ側冷却水経路に設けられたサーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタに関する。
従来から、サーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタとしては、車両のエンジンとヒータコアとラジエータとが経路上に配置されているエンジン冷却水経路のうちエンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された出口部近傍温度センサと、ラジエータ側冷却水経路に設けられたラジエータ側温度センサとの2つの温度センサにより、エンジン内冷却水経路から流出するエンジン冷却水の温度と、ラジエータ側冷却水経路から流出するエンジン冷却水の温度との2つの温度を直接測定し、ラジエータ側冷却水経路から流出するエンジン冷却水の温度の低下を直接測定するものが知られている。
特開2011−074829号公報
しかしながら、サーモスタットの開故障を検出するために、出口部近傍温度センサと、ラジエータ側温度センサとの2つの温度センサを配置するための、温度センサの部品コスト、組み付け製造のための製造コスト及び温度センサの信頼性を担保するためのコスト等が増えることとなるため、ラジエータ側冷却水経路に設けられたラジエータ側温度センサを省略して出口部近傍温度センサのみによりサーモスタットの開故障を検出する方法が検討されている。
例えば、特許文献1に示すように、エンジン冷却水経路に1つの温度センサを配置した状態でサーモスタットの開故障を検出する診断装置として、車速を所定値以上に設定することを条件とするものが知られている。
しかしながら、特許文献1に示すような診断装置によれば、車速を条件としてサーモスタットの開故障を検出するために、様々なデータの取得の必要が生じ、これらを処理するために非常に複雑な処理が必要となるという問題が生じる。さらに、非常に複雑な処理を実行する制御装置にも負荷がかかるという問題もある。
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、エンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいてサーモスタットの開故障を検出する場合に、エンジン冷却水の温度と、外気の温度との差が所定値以上となる条件を満たすことにより、比較的簡易な構成で、サーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコアの放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを判別でき、確実にサーモスタットの開故障を検出することができる。
上述した目的を達成するために、本発明は、車両のエンジンとヒータコアとラジエータとがその経路上に配置されているエンジン冷却水経路が、エンジン内冷却水経路と、ラジエータ側冷却水経路と、ヒータコア側冷却水経路とを備え、このエンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、上記ラジエータ側冷却水経路に設けられたサーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタであって、温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度と、外気の温度との温度差が所定値以上となる条件を満たす場合に、サーモスタットの開故障の検出をする温度差判定手段を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、エンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタにおいて、エンジン冷却水の温度と、外気の温度との差が所定値以上となる条件を満たす場合においては、ラジエータによるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコアによるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態で、サーモスタットの開故障の検出をすることができる。従って、比較的簡易な構成で、サーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコアの放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを判別でき、確実にサーモスタットの開故障を検出することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、ラジエータ側冷却水経路上のラジエータから放熱されるラジエータ放熱量が、ヒータコア側冷却水経路上のヒータコアから放熱されるヒータコア放熱量より大きく、且つラジエータ放熱量とヒータコア放熱量との差が所定値以上となる条件を満たす場合に、サーモスタットの開故障を検出するサーモスタット開故障検出手段、を有し、温度差判定手段が、温度差判定手段の条件を満たす場合に、サーモスタット開故障検出手段を開始させることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、エンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタにおいて、温度差判定手段が、温度差判定手段の条件を満たし、ラジエータによるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコアによるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態で、サーモスタット開故障検出手段が、ヒータコアの放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、サーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とのうちサーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態が生じていることを検出することができ、比較的簡易な構成で、より確実にサーモスタットの開故障を検出することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、車両の車速が、ラジエータ放熱量がヒータコア放熱量より大きく且つラジエータ放熱量とヒータコア放熱量との差が所定値以上となる関係を生じさせるように設定された所定の車速以上となる条件を満たす場合に、サーモスタット開故障検出手段を開始させる車速判定手段を有し、温度差判定手段が温度差判定手段の条件を満たし且つ車速判定手段が車速判定手段の条件を満たす場合に、サーモスタット開故障検出手段を開始させることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、エンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタにおいて、車速が高くなるほど増大されるラジエータ放熱量が、車速に対して一定とされるヒータコア放熱量より大きく、且つラジエータ放熱量とヒータコア放熱量との差が所定値以上となる関係を生じさせていると車速判定手段が判断する場合且つ、ラジエータによるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコアによるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態であると温度差判定手段が判断する場合において、サーモスタット開故障検出手段が、ヒータコアの放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、サーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とのうちサーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態が生じていることを検出することができ、比較的簡易な構成で、より確実にサーモスタットの開故障を検出することができる。
本発明のサーモスタットモニタによれば、エンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいてサーモスタットの開故障を検出する場合に、エンジン冷却水の温度と、外気の温度との差が所定値以上となる条件を満たすことにより、比較的簡易な構成で、サーモスタットの開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコアの放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを判別でき、確実にサーモスタットの開故障を検出することができる。
本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタが適用されたエンジン冷却装置の構成の概略図である。 本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタがサーモスタットの開故障を検出する処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタの車速判定手段が所定の車速の判定を行う車速とエンジンの始動開始からの経過時間との関係を示す図である。 本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタのサーモスタット開故障検出手段が演算するサーモスタットの正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温と、サーモスタットの開故障時のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温とが、エンジンの始動開始からの経過時間に対して変化する様子を示す図である。 本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタのサーモスタット開故障検出手段が演算するサーモスタットの正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温と、サーモスタットの開故障時のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温とが、診断時間において温度差を生じている様子を示す図である。 本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタに適用されるラジエータ放熱量及びヒータコア放熱量の車速に対する放熱特性を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタについて説明する。
図1は本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタが適用されたエンジン冷却装置の構成の概略図であり、図2は本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタがサーモスタットの開故障を検出する処理の手順を示すフローチャートであり、図3は本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタの車速判定手段が所定の車速の判定を行う車速とエンジンの始動開始からの経過時間との関係を示す図である。
図1において、エンジン冷却水経路4内をエンジン冷却水が流れる様子を矢印f1により例示し、冷媒循環経路48内を冷媒が流れる様子を矢印f2により例示し、外気が外気導入口部74に向けて流入する様子を矢印f3により例示している。
車両のエンジン2の冷却を行うため、エンジン冷却装置1は、エンジン2から流出したエンジン冷却水を内部で循環させてエンジンに戻すエンジン冷却水経路4と、エンジン冷却水経路4内を流れるエンジン冷却水の熱を暖房に利用するためのヒータコア6と、エンジン冷却水経路4内を流れるエンジン冷却水の熱を外部の空気中に放出するためのラジエータ8と、エンジン冷却水をエンジン冷却水経路4内において圧送するウォータポンプ10とを有している。
エンジン冷却水経路4は、エンジン2と、ヒータコア6と、ラジエータ8と、ウォータポンプ10とが経路上に配置されている。
ヒータコア6は、車両の車室内に温風を供給する空調用ヒータ(図示せず)の一部を構成するものであり、エンジン冷却水の熱を放熱して暖房に利用するための熱交換器として設けられている。ヒータコア6側においては、後述するように、使用者が暖房の設定を最強とし、エンジン冷却水の放熱量が最大となる状態であったとしても、エンジン冷却水の熱を放熱するヒータコア放熱量12(ヒータコア6側の放熱量)は、比較的低い値の上限値でほぼ一定に保たれることとなる。
ラジエータ8は、エンジン冷却水を、このラジエータ8の表面に供給される冷却風との間で熱交換させ、エンジン冷却水の熱を放熱させて冷却する熱交換器として設けられている。車両の車速が増加される(高速となる)場合には、冷却風の供給量が増え、エンジン冷却水の熱を放熱するラジエータ放熱量14(ラジエータ8側の放熱量)が増加するようになっている。
ウォータポンプ10は、エンジン2の回転数の上昇に連動してエンジン冷却水を加圧して圧送する構造を有しているため、エンジン2の回転数が上昇する場合には、エンジン冷却水の通水量を上昇させ、よって、ラジエータ8側のエンジン冷却水の通水流量を上昇させる。よって、ラジエータ放熱量14が増加する。同様に、ヒータコア6側のエンジン冷却水の通水流量も上昇される。エンジン2の回転数が減少する場合には、エンジン冷却水の通水量を減少させ、よって、ラジエータ8側のエンジン冷却水の通水流量を減少させる。
エンジン冷却装置1は、さらに、冷媒が循環する冷媒循環経路48と、冷媒ガスを圧縮して圧送するコンプレッサ50と、コンプレッサ50から圧送された冷媒ガスから潜熱を奪って高温高圧の冷媒液とするコンデンサ52と、この冷媒液を一旦貯留するレシーバドライヤ54と、冷媒循環経路48上の冷媒の冷媒圧を検出する冷媒圧センサ56と、冷媒液を減圧して低温低圧の気液混合冷媒とするエキスパンションバルブ58と、内部を通過する空気を冷媒との熱交換によって冷却するエバポレータ60と、外気又は内気をエアコン本体内の空気通路(図示せず)に取り込むとともに、この取り込んだ空気を下流側である下方へ送出するブロア62と、を有している。
エバポレータ60は、ブロア62の下流側に配置され、ブロア62から送られてくる空気がエバポレータ60内部を通過するように設けられている。ヒータコア6はエバポレータ60の下流側において、エバポレータ60通過後の冷風が内部を通過するように配置されている。
次に、エンジン冷却水経路4についてより詳細に説明する。
エンジン冷却水経路4は、エンジン2内のエンジン内冷却水経路16と、エンジン内冷却水経路16の下流側からエンジン内冷却水経路16の入口部まで戻る冷却水循環経路18と、エンジン2とラジエータ8との間に設けられ且つエンジン内冷却水経路16の下流側から分岐されるラジエータ側冷却水経路20と、エンジン2とヒータコア6との間に設けられ且つエンジン内冷却水経路16の下流側から分岐されるヒータコア側冷却水経路22と、エンジン内冷却水経路16の下流側から分岐される自動変速機の作動油(ATF)のATFウォーマ24用のATFウォーマ側冷却水経路26と、を備えている。
エンジン内冷却水経路16から流出したエンジン冷却水は、冷却水循環経路18、ラジエータ側冷却水経路20、ヒータコア側冷却水経路22、ATFウォーマ側冷却水経路26のいずれかを通り、冷却水循環経路18からエンジン内冷却水経路16に戻るようになっている。ATFウォーマ側冷却水経路26の下流端部は、冷却水循環経路18の下流端部近傍に接続され、ATFウォーマ側冷却水経路26における放熱は、本実施形態において後述するような放熱量の計算には影響を与えないと考えられる。
エンジン冷却装置1は、さらに、パワートレインコントロールモジュール28(以下、PCMという)と、エンジン冷却水経路4のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍に配置され且つエンジン冷却水の温度を検出する温度センサ30と、ラジエータ側冷却水経路20上に設けられたサーモスタット32と、車両の速度を検出する車速センサ34と、エンジン2の各シリンダ(図示せず)の燃焼室に外気を吸気するためのインテークマニホールド64と、インテークマニホールド64の上流側(外気吸入側)に設けられたスロットルボディ66と、スロットルボディ66の上流側(外気吸入側)に設けられたエアクリーナ68と、スロットルボディ66の上流側(外気吸入側)の流路上に設けられた第1外気温センサ70と、インテークマニホールド64の流路内に設けられた第2外気温センサ72と、エアクリーナ68に接続され且つ外気をエアクリーナ68に向けて導入する外気導入口部74と、サーモスタット32の開故障を検出するサーモスタットモニタ36と、を備えている。
PCM28は、車両の各部から送られてくるデータを受け入れる入力インターフェース(図示せず)と、車両の各部の制御を行うための演算を実行するCPU(図示せず)と、車両の各部の制御を行うためのプログラム、データ及び制御信号を格納するメモリ(図示せず)と、および車両の各部に制御信号を送る出力インターフェース(図示せず)とを備えている。本発明のサーモスタットモニタを実現するためのプログラム、およびこのプログラムの実行に使用するデータおよびテーブルは、メモリ上に格納されている。さらに、メモリには、CPUによる演算のための作業領域が設けられ、車両の各部から送られてくるデータおよび車両の各部に送り出す制御信号は、メモリに記憶される。PCM28は、機能要素として、後述するサーモスタットモニタ36のサーモスタット開故障検出手段38及び車速判定手段40を有している。
温度センサ30は、エンジン2から流出するエンジン冷却水の温度を検出する。また、温度センサ30は、エンジン内冷却水経路16の下流側且つラジエータ側冷却水経路20の上流側且つヒータコア側冷却水経路22の上流側の領域に配置されている。温度センサ30は、PCM28と電気的に接続されており、温度センサ30で検出されたエンジン冷却水の温度が、電気信号としてPCM28に入力されるようになっている。
サーモスタット32は、本実施形態においては、バイメタル等を用いた機械検知式の切替弁により構成されたサーモスタット32である。サーモスタット32は、例えばサーミスタ等を用いた電気検知式の切替弁により構成されたサーモスタットであってもよい。また、サーモスタット32は、ラジエータ側冷却水経路20の通水状態を制御する機能を有するものであればよく、例えば、温度条件等に基づいて電気制御により開閉され水流を制御する電動式の水流制御バルブにより構成されていてもよい。
サーモスタット32は、ラジエータ側冷却水経路20上においてラジエータ8の出口部側(下流側)に設けられているが、例えば、ラジエータ8の入口部側(上流側)に設けられていてもよい。
サーモスタット32は、エンジン冷却水の温度が所定温度よりも低いときに閉弁してラジエータ側冷却水経路20を閉止することにより、ラジエータ側冷却水経路20の冷却水の流れ、すなわちラジエータ8により放熱される冷却水の流れを遮断するように構成されている。サーモスタット32が閉弁状態に維持されている間、エンジン内冷却水経路16から流出するエンジン冷却水は、ラジエータ8側に供給されることなく、ヒータコア側冷却水経路22を通ってヒータコア6に供給され、又は冷却水循環経路18等を通り、その後エンジン内冷却水経路16へと戻されることになる。このようにサーモスタット32が閉弁状態にされている間、エンジン冷却水は、ラジエータ側冷却水経路20内を通過しないので、エンジン冷却水がラジエータ8の放熱により冷却されないようになっている。
一方、エンジン冷却水の温度が所定温度以上になると、サーモスタット32が開弁してラジエータ側冷却水経路20を開放することにより、ラジエータ側冷却水経路20の冷却水の流れ、すなわちラジエータ8により放熱される冷却水の流れを許容するように構成されている。このとき、エンジン内冷却水経路16から流出された高温のエンジン冷却水は、ラジエータ側冷却水経路20に流入するようになる。すなわち、サーモスタット32が開弁状態にされている間、エンジン内冷却水経路16から流出された高温のエンジン冷却水は、ラジエータ8で冷却された後に、温度センサ30の下流側の冷却水循環経路18に戻され、再びエンジン内冷却水経路16へと戻されることになるこのようにサーモスタット32が開弁状態にされている間、エンジン冷却水は、ラジエータ8を通過するので、エンジン冷却水がラジエータ放熱量14を放熱し、その分冷却された状態となる。
車速センサ34は、車両の速度を検出する。また、車速センサ34は、PCM28と電気的に接続されており、車速センサ34で検出された車両の速度が、電気信号としてPCM28に入力されるようになっている。
第1外気温センサ70は、スロットルボディ66の上流側のエアクリーナ68の近傍において、エアクリーナ68に吸入される車両の外部空気(外気)の温度を検出する。第1外気温センサ70は、PCM28と電気的に接続されており、第1外気温センサ70で検出された外気の温度が、電気信号としてPCM28に入力されるようになっている。
第2外気温センサ72は、インテークマニホールド64の流路内において、エアクリーナ68を介してエンジン2に吸気される車両の外部空気(外気)の温度を検出する。第2外気温センサ72は、PCM28と電気的に接続されており、第2外気温センサ72で検出された外気の温度が、電気信号としてPCM28に入力されるようになっている。
第1外気温センサ70及び第2外気温センサ72は、ラジエータ8近傍の位置において外気の温度(ラジエータ8周囲の温度)を計測しており、ラジエータ8に流入する外気の温度と、第1外気温センサ70及び/又は第2外気温センサ72が計測する外気の温度とは、ほぼ同じ温度である。
本実施形態においては、ラジエータ8近傍の位置に配置される外気温センサの例として、第1外気温センサ70及び第2外気温センサ72を示しているが、外気温センサをラジエータ8近傍の他の位置に配置していてもよい。例えば、ラジエータ8の表面に供給風を供給する上流側に外気温センサを設けていてもよい。また、第1外気温センサ70及び第2外気温センサ72は、いずれか一方のみが設けられるようにされていてもよい。
次に、本実施形態のサーモスタットモニタ36について説明する。
サーモスタットモニタ36は、PCM28に設けられている。本実施形態のサーモスタットモニタ36は、エンジン冷却水経路4のうちエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域に配置された温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の温度(エンジン出口水温とも称する。以下同じ)に基づいて、ラジエータ側冷却水経路20に設けられたサーモスタット32の開故障を検出する。
サーモスタットモニタ36は、エンジン冷却水の温度がサーモスタット32を開弁する所定温度よりも低いエンジン2の冷間時に、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域に配置された単一の温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下と、サーモスタット32の開故障とを判別すると共に、サーモスタット32の開故障を確実に検出するものである。
すなわち、エンジン2の冷間時には、サーモスタット32は本来開弁しないはずであるが、サーモスタット32の開故障が起きて、冷間時であるにもかかわらずサーモスタット32が開弁してしまうと、エンジン2から流出したエンジン冷却水が、ラジエータ側冷却水経路20を通過し、ラジエータ8で冷却されるため、図4において、サーモスタット32の開故障時のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温44に示すように、エンジン始動後のエンジン冷却水の温度が、サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温42に比べて低くなる。
サーモスタットモニタ36は、ラジエータ側冷却水経路20上のラジエータ8から放熱されるラジエータ放熱量14が、ヒータコア側冷却水経路22上のヒータコア6から放熱されるヒータコア放熱量12より大きく、且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A(図6参照)以上となる条件を満たす場合に、サーモスタット32の開故障を検出するサーモスタット開故障検出手段38と、ラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より大きく且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を生じさせるように設定された所定の車速V1以上となる条件を満たす場合に、サーモスタット開故障検出手段38を開始させる車速判定手段40と、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との温度差が所定値F以上となる条件を満たす場合に、サーモスタット32の開故障の検出を開始させる温度差判定手段76とを有する。なお、温度差判定手段76は、外気の温度46との差が所定値F以上となる条件を満たす場合においては、ラジエータ8によるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコア6によるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態であり、温度差判定手段76単独でも比較的簡単にサーモスタットの開故障を検出することができる。
次に、図2乃至図6により、本実施形態のサーモスタットモニタ36の動作及び処理内容の詳細について説明する。
図4は本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタのサーモスタット開故障検出手段が演算するサーモスタットの正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温と、サーモスタットの開故障時のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温とが、エンジンの始動開始からの経過時間に対して変化する様子を示す図であり、図5は本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタのサーモスタット開故障検出手段が演算するサーモスタットの正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温と、サーモスタットの開故障時のエンジン内冷却水経路の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温とが、診断時間において温度差を生じている様子を示す図であり、図6は本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタに適用されるラジエータ放熱量及びヒータコア放熱量の車速に対する放熱特性を示す図である。
ステップS1に示すように、サーモスタットモニタ36は、温度差判定手段76が、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の温度と、外気の温度46との差が所定値F以上となる条件を満たす場合に、サーモスタット32の開故障の検出を開始させるようになっている。
サーモスタット32の開故障時のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温44と、第1外気温センサ70及び/又は第2外気温センサ72が計測する外気の温度46とは、図4に示されている。
図4においては、サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温42と、サーモスタット32の開故障時のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温44と、が、エンジン2の始動開始時点t0からの経過時間に対して変化する様子が示されている。図4においては、さらに、第1外気温センサ70及び/又は第2外気温センサ72が計測する外気の温度46が、エンジン2の始動開始時点t0からの経過時間に対して示されている。
図4においては、縦軸には温度[deg.C](セルシウス度)が示され、横軸にはエンジンの始動開始からの経過時間[sec]が示されている。t0はエンジンの始動開始時点を示している。サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温42が、エンジン2の始動開始時点t0からの経過時間に対して示されている。また、サーモスタット32の開故障時のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温44(実際水温)が、エンジン2の始動開始時点t0からの経過時間に対して示されている。第1外気温センサ70及び/又は第2外気温センサ72が計測する外気の温度46は、エンジン2の始動開始時点t0からの比較的短い経過時間においてはほぼ一定の温度となっている。
第1外気温センサ70及び/又は第2外気温センサ72が計測する外気の温度46は、本実施形態においては、第1外気温センサ70が検出した外気の温度46と、第2外気温センサ72が検出した外気の温度46とのうち、小さい方の温度を選択して外気の温度46とする。なお、他の条件により、第1外気温センサ70が検出した外気の温度46と、第2外気温センサ72が検出した外気の温度46とのうちいずれかを採用してもよく、また、両者の平均を外気の温度46としてもよい。
図4に示すように、エンジン2の始動開始時点t0後、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との差が徐々に増大される。このように、例えばエンジン始動後車速が上昇する又はエンジン2が暖気される等により、エンジン冷却水の検出水温44と外気の温度46との差が大きくなるほど、エンジン冷却水は高温になっており、ラジエータ8によるエンジン冷却水の冷却効果は大きくなる。一方、このような、エンジン冷却水の検出水温44と外気の温度46との差が大きくなる要因、例えば車速の上昇に対して、ヒータコア6によるエンジン冷却水の冷却効果はほぼ一定である。
よって、エンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との差が所定値F以上となる条件を満たす場合においては、ラジエータ8によるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコア6によるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態であり、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下が、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下よりも十分に大きくなっている状態で、サーモスタット32の開故障の検出をさせることができる。
また、図4に示すように、エンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との差が所定値F以上となる条件を満たす場合には、後述する予測水温42と、検出水温44とが比較的大きく乖離することとなり、後述するサーモスタット開故障検出手段38によるより高精度且つ確実な判定を可能にすることができる。
従って、温度差判定手段76は、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との差が所定値F以上となる条件を満たす場合に、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とのうち、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態が支配的となると判別して、サーモスタット32の開故障の検出を開始させるステップS2に進む。
一方、温度差判定手段76は、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との温度差が所定値F以上となる条件を満たしていない場合には、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを判別しにくい状態であると判断して、より確実にサーモスタット32の開故障を検出するため、再びステップS1の最初に戻って判定を続ける。
ステップS2に示すように、サーモスタットモニタ36は、エンジン2の始動時t0から車速判定手段40において、所定の車速V1以上となるか否かの判定を行う。所定の車速V1以上となる場合、例えば、車両の車速が時速50km以上となる場合に、ラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より大きく且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を生じさせると想定されるのでステップS3に進む。所定の車速V1未満の場合、例えば、車両の車速が時速50km未満である場合には、図6に示すように、詳細は後述するが、ラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より下回る場合があるなど、ラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より大きく且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を生じさせていない場合が多いと想定されるので、再びステップS1の最初に戻って判定を続ける。
このように、車速判定手段40は車両の所定の車速V1を基準として、サーモスタット開故障検出手段38を開始させるか否かの判定を行うことができる。
図3においては、エンジン2の始動開始からの経過時間においての検出された車速の一例を示している。図3においては、縦軸には車速[km/h]が示され、横軸にはエンジンの始動開始からの経過時間[sec]が示されている。t0はエンジンの始動開始時点を示している。
図3に示すように、t1の時間において、車速が所定の車速V1以上の値となるため、車速判定手段40が、ステップS3に進み、サーモスタット開故障検出手段38を開始させる。
ラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より大きく且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を生じさせるように設定された所定の車速V1とは、車両がある一定の車速以上の車速を有していれば、図6に示すように、後述するようなラジエータ8とヒータコア6との放熱の特性の違いから、後述するような方法により算定されるラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より大きい値を示し、且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を生じさせる可能性が高いと予め想定された車速である。すなわち、所定の車速V1は、通常、上述のような関係を満たすように設定された車速である。従って、車両がこのような所定の車速V1以上の車速で走行する場合、ラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12より大きく且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を有している。
なお、本実施形態においては、ステップS1の後に引き続いてステップS2を実行し、ステップS2の車速判定手段40における所定の車速V1以上の車速の条件を満たす場合に、ステップS3のサーモスタット開故障検出手段38を開始させるようにしているが、他の実施形態として、ステップS1とは独立してステップS2を実行することにより、ステップS1の温度差判定手段76における所定の温度差が所定値F以上となる条件を満たし、且つ、ステップS2の車速判定手段40における所定の車速V1以上の車速の条件を満たす場合に、ステップS3のサーモスタット開故障検出手段38を開始させるようにしてもよい。この場合においては、ステップS1の温度差判定手段76における判定と、ステップS2の車速判定手段40における判定とを、ほぼ同時に平行して行うこと又は多少前後したタイミングで独立して行うことも可能である。
ステップS3においては、車両が所定の車速V1以上の速度を有することとなった場合に、車速判定手段40はサーモスタット開故障検出手段38を開始させ、このサーモスタット開故障検出手段38が、先ず、サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水を予想した予測水温42を演算させる。
サーモスタット開故障検出手段38が演算した予測水温42は、図4に示されている。
図4においては、サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温42が、エンジン2の始動開始時点t0からの経過時間に対して示されている。また、サーモスタット32の開故障時のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温44(実際水温)が、エンジン2の始動開始時点t0からの経過時間に対して示されている。
ステップS3において、図5に示すように、車両が所定の車速V1以上の速度を有することとなった場合の時点t1において、サーモスタット開故障検出手段38は、サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温42の診断時間Dの変動を演算する。この予想水温42の演算は、さまざまなパラメータの設定要素によって決定され、後述する時点t1から時点t2までの診断時間Dにおける予想水温42を算定する。なお、この予想水温42の演算は、時点t1から時点t2までの診断時間Dを含むより長い時間における予想水温42を算出するように行われていてもよい。この予想水温42の算定のために必要なデータは、PCM28のメモリに取得されている及び/又は新たに取得される。
ステップS3において、図5を参照して、上述のようにして演算された予測水温42と実際の検出水温44との温度差から放熱量を算定する処理を説明する。
図5においては、サーモスタット32の正常動作時(非故障時)のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域のエンジン冷却水の予想水温42と、サーモスタット32の開故障時のエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域において実際に計測されたエンジン冷却水の検出水温44とが、時点t1から時点t2までの診断時間Dにおいて温度差を生じている様子が示されている。
図5においては、縦軸にはエンジン内冷却水経路16の出口部領域におけるエンジン冷却水の水温[deg.C]が示され、横軸にはエンジンの始動開始からの経過時間[sec]が示されている。
時点t1から時点t2までの診断時間Dにおける予想水温42は、サーモスタット32が正常に動作していると仮定して、エンジン内冷却水経路16の出口部領域におけるエンジン冷却水の温度について、さまざまな設計条件に基づき、PCM28のサーモスタット開故障検出手段38により算出されている。予測水温42は、サーモスタット32が正常に動作していると仮定した場合、すなわちラジエータ8の放熱がないものと仮定した場合のエンジン冷却水の温度の上昇を示している。
これに対し、時点t1から時点t2までの診断時間Dにおける検出水温44は、所定の車速が車速V1以上となった時点t1から所定の診断時間Dを経過した時点t2まで、温度センサ30が実際に検出したエンジン冷却水の温度が記録される。
図4及び図5に示すように、サーモスタット32の開故障が生じている場合には、エンジン冷却水の検出水温44は、ラジエータ8の放熱量があるため、予想水温42よりも低下された温度となる。逆に、サーモスタット32の開故障が生じていない場合には、エンジン冷却水の温度は、ラジエータ8側の放熱量がないため、予想水温42とほぼ一致する温度となる。サーモスタット32の開故障が生じている場合には、エンジン冷却水の温度と、予想水温42との温度差Δt[deg.C]が算出される。
この温度差Δtを基にして次の算式によりラジエータ8側の放熱量Q(ラジエータ放熱量14)が求められる。
温度差Δt[deg.C]×ラジエータ通水量[m3]×比熱[J/kgK]×密度[kg/m3]=放熱量Q[J]
この放熱量Q[J]を診断時間Dの気水温度差の平均値で除することにより単位気水温度差当たりの放熱量Q[W/K]が算出される。
ここで、ラジエータ通水量[m3]は、主にウォータポンプの圧力、すなわちエンジンの回転数に応じて決定される。比熱[J/kgK]は、エンジン冷却水の比熱である。密度[kg/m3]は エンジン冷却水の密度である。気水温度差は、エンジン冷却水と冷却空気との温度差である。診断時間Dは、ラジエータ放熱量14の移送の遅れ時間及び温度センサ30の時定数等を考慮して定められている。
図6においては、演算により算定されたラジエータ放熱量14と、ヒータコア放熱量12と、車速との関係(放熱特性の関係)が示されている。図6においては、縦軸には単位気水温度差当たりの放熱量[W/K]が示され、横軸には車速[km/h]が示されている。
図6においては、エンジン冷却水の検出水温44と予想水温42との温度差Δtとから所定の方法により算出されたラジエータ放熱量14と、ヒータコア放熱量12と、車速との関係が示されている。ラジエータ放熱量14は、車速の増加に対して比較的線形に増加していく関係を示すのに対し、ヒータコア放熱量12は、車速の増加に対してほぼ一定に維持された関係を示している。ヒータコア放熱量12は、ヒーターのON、OFFの設定、ヒーターON時の暖房強さの設定、ブロワの段数、その他ブロワの各製品の能力等によって変わる関係を有する。図6においては、エアコンを使用し且つヒーターの強さ及び設定温度を最大にした設定におけるヒータコア放熱量をヒータコア放熱量12aにより示している。一方、ヒーターのOFFの設定におけるヒータコア放熱量をヒータコア放熱量12bにより示している。すなわち、ヒータコア放熱量12は、図6において矢印Bにより示すように、ヒーターの設定及びブロア62の設定等により、放熱量の大きさが決定されるため、車速の増減により変化されない。このようなヒータコア放熱量12の情報は、予めPCM28側のメモリに記憶されているが、センサ等の情報により算出してもよい。本実施形態においては、例えば、ヒータコア放熱量12として、エアコンを使用し且つヒーターの強さを最大にした設定におけるヒータコア放熱量12aを用いて以下の放熱量の差を算出する計算を行う。
ステップS2において、既に、車速判定手段40がラジエータ放熱量14がヒータコア放熱量12よりも低くなっている可能性のある車速領域Cを除くように判定を行っているので、ラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値Aの閾値以上、例えば200W/K以上となる場合には、ラジエータ8側での放熱量がヒータコア6側での放熱量を大きく上回っている状態と判定され、サーモスタット32の開故障の可能性が高いと診断できる。
従って、ラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値Aの閾値以上、例えば200W/K以上となる場合には、ラジエータ8側での放熱量がヒータコア6側での放熱量を大きく上回っておりサーモスタット32の開故障の可能性が高いため、ステップS4に進む。なお、サーモスタット32の開故障の検出の信頼性を高めるため、所定期間において、 ラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値Aの閾値以上となった回数が所定の回数、例えば3回に達するまでは、ステップS1に戻る処理を行って処理をやり直し、所定の回数に達した後にステップS3に進むようにすることができる。
一方、予測水温42と実際の検出水温44との温度差から算定された放熱量、すなわちラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が、所定値Aの閾値未満、例えば200W/K未満となる場合には、車速の条件を満たしているものの、ラジエータ8側での放熱量がヒータコア6側での放熱量を十分に上回っていないため、より確実にサーモスタット32の開故障を検出するため、ステップS1に戻り、最初から一連の判定を行う。
なお、ステップS3において、サーモスタットモニタ36は、車両の車速が診断時間Dの間、車速V1以上の値に維持されているか否かを判定している車速維持判定機能も備えている。
具体的には、予測水温42と実際の検出水温44との温度差からラジエータ放熱量14を算定する演算処理を行うため、所定の車速V1以上となった時点t1から所定の診断時間Dを経過した時点t2までの所定時間にわたって車速V1以上の値を継続している必要がある。
よって、サーモスタットモニタ36は、車両の車速が診断時間Dの間、車速V1以上の値に維持されている場合に、診断時間Dを経過した時点t2において求められた温度差Δtを基にしてラジエータ放熱量14を算定する。すなわち、サーモスタットモニタ36は、車両の車速が診断時間Dの間、車速V1以上の値に維持されている場合に、ラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値Aの閾値以上か否かの判定を行う。
逆に、サーモスタットモニタ36は、車両の車速が診断時間Dの間、車速V1以上の値に維持されていない場合、例えば、車両の車速が診断時間Dを経過する前に、車速V1未満の値となる場合には、車両の走行状態が安定していない状態、例えば、車両が発進及び停止を繰り返しているような状態、と判断され、より確実にサーモスタット32の開故障を検出するため、サーモスタット開故障検出手段38の処理を中断させ、ステップS1に戻って、最初から判定を行う。
ステップS4においては、図4に示すように、温度センサ30が検出しているエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の検出水温44が、判定温度Eに到達しているか否かを判定する。判定温度Eは、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の水温が判定温度E以上である場合においては、サーモスタット32が正常に機能していると考えられ、一方、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の水温が判定温度E未満である場合においては、サーモスタット32が開故障し、ラジエータ8側で放熱されている故障状態と考えられる温度である。すなわち、サーモスタットモニタ36は、温度センサ30が検出している検出水温44が、診断時間Dの終了以後の適当な時点、例えば時点t2において判定温度Eに到達しているか否かを判定する温度判定機能も備えている。
エンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の検出水温44が、判定温度Eに到達している(検出水温44が、判定温度E以上の値となる)場合には、車両の走行状態が安定していない状態、例えば、車両が発進及び停止を繰り返しているような状態、と判断され、より確実にサーモスタット32の開故障を検出するため、ステップS1に戻る。
エンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の検出水温44が、判定温度Eに到達していない(検出水温44が、判定温度E未満の値である)場合には、ラジエータ8側での放熱量が多いため検出水温44が低下していると考えられ、ステップS5に進み、サーモスタット32の開故障が生じていると判定される。
なお、本実施形態においては、サーモスタットモニタ36は、時点t2において判定温度Eに到達しているか否かを判定しているが、サーモスタットモニタ36は、常時判定温度Eに到達しているか否かを判定しているような常時温度判定機能を有していてもよく、検出水温44が、判定温度Eに到達した場合には一連の開故障の検出処理を中止し、ステップS1に戻るように設定することもできる。
ステップS4においては、上述のようなステップS1乃至S3における判定を経た上で、温度センサ30が検出しているエンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の検出水温44が、判定温度Eに到達しているか否かを判定することにより、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを確実に判別すると共に、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の検出水温44に基づいて、サーモスタット32の開故障を確実に検出することができる。
また、従来設けられていたラジエータ側冷却水経路20上の温度センサを省略した場合においても、エンジン内冷却水経路16内の温度センサとしては、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍領域の検出水温44を検出する一つの温度センサ30のみを用いて、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを確実に判別すると共に、温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の検出水温44に基づいて、サーモスタット32の開故障を確実に検出することができる。
ステップS5に進み、サーモスタット32の開故障が生じていると判定されると、サーモスタットモニタ36がサーモスタット32の開故障を検出する処理が終了する。サーモスタット32の開故障が検出された場合には、PCM28は必要に応じてサーモスタット32の開故障が生じている旨を、報知手段(図示せず)により使用者に報知する。
上述した本発明の一実施形態によるサーモスタットモニタ36によれば、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍に配置された温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタット32の開故障を検出するサーモスタットモニタ36において、エンジン冷却水の検出水温44と、外気の温度46との差が所定値F以上となる条件を満たす場合においては、ラジエータ8によるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコア6によるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態で、サーモスタット32の開故障の検出をすることができる。従って、比較的簡易な構成で、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とを判別でき、確実にサーモスタット32の開故障を検出することができる。
また、本実施形態によるサーモスタットモニタ36によれば、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍に配置された温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタット32の開故障を検出するサーモスタットモニタ36において、温度差判定手段76が、温度差判定手段76の条件を満たし、ラジエータ8によるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコア6によるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態で、サーモスタット開故障検出手段38が、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とのうちサーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態が生じていることを検出することができ、比較的簡易な構成で、より確実にサーモスタット32の開故障を検出することができる。
さらに、本実施形態によるサーモスタットモニタ36によれば、エンジン内冷却水経路16の出口部近傍に配置された温度センサ30により検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、サーモスタット32の開故障を検出するサーモスタットモニタ36において、車速が高くなるほど増大されるラジエータ放熱量14が、車速に対して一定とされるヒータコア放熱量12より大きく、且つラジエータ放熱量14とヒータコア放熱量12との差が所定値A以上となる関係を生じさせていると車速判定手段40が判断する場合且つ、ラジエータ8によるエンジン冷却水の冷却効果が、ヒータコア6によるエンジン冷却水の冷却効果よりも十分に大きくなっている状態であると温度差判定手段76が判断する場合において、サーモスタット開故障検出手段38が、ヒータコア6の放熱によるエンジン冷却水の温度の低下の状態と、サーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態とのうちサーモスタット32の開故障によるエンジン冷却水の温度の低下の状態が生じていることを検出することができ、比較的簡易な構成で、より確実にサーモスタット32の開故障を検出することができる。
2 エンジン
4 エンジン冷却水経路
6 ヒータコア
8 ラジエータ
12 ヒータコア放熱量
14 ラジエータ放熱量
16 エンジン内冷却水経路
20 ラジエータ側冷却水経路
22 ヒータコア側冷却水経路
28 パワートレインコントロールモジュール(PCM)
30 温度センサ
32 サーモスタット
34 車速センサ
36 サーモスタットモニタ
38 サーモスタット開故障検出手段
40 車速判定手段
44 検出水温
46 外気の温度
76 温度差判定手段
A 所定値
F 所定値

Claims (3)

  1. 車両のエンジンとヒータコアとラジエータとがその経路上に配置されているエンジン冷却水経路が、エンジン内冷却水経路と、ラジエータ側冷却水経路と、ヒータコア側冷却水経路とを備え、このエンジン内冷却水経路の出口部近傍に配置された温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度に基づいて、上記ラジエータ側冷却水経路に設けられたサーモスタットの開故障を検出するサーモスタットモニタであって、
    上記温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度と、外気の温度との温度差が所定値以上となる条件を満たす場合に、上記サーモスタットの開故障の検出をする温度差判定手段を有することを特徴とするサーモスタットモニタ。
  2. さらに、上記ラジエータ側冷却水経路上の上記ラジエータから放熱されるラジエータ放熱量が、ヒータコア側冷却水経路上の上記ヒータコアから放熱されるヒータコア放熱量より大きく、且つ上記ラジエータ放熱量と上記ヒータコア放熱量との差が所定値以上となる条件を満たす場合に、上記サーモスタットの開故障を検出するサーモスタット開故障検出手段、を有し、上記温度差判定手段が、上記温度差判定手段の上記条件を満たす場合に、上記サーモスタット開故障検出手段を開始させることを特徴とする請求項1に記載のサーモスタットモニタ。
  3. さらに、車両の車速が、上記ラジエータ放熱量が上記ヒータコア放熱量より大きく且つ上記ラジエータ放熱量と上記ヒータコア放熱量との差が所定値以上となる関係を生じさせるように設定された所定の車速以上となる条件を満たす場合に、上記サーモスタット開故障検出手段を開始させる車速判定手段を有し、
    上記温度差判定手段が上記温度差判定手段の上記条件を満たし且つ上記車速判定手段が上記車速判定手段の上記条件を満たす場合に、上記サーモスタット開故障検出手段を開始させることを特徴とする請求項2に記載のサーモスタットモニタ。
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