JP2017170429A - エアフィルタ濾材 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、積層した繊維層からなる不織布に平面方向と積層方向に方向性のある電界を設け、粉塵粒子に十分な静電気力を与えることにより、捕集性能を高めた濾材を提供する。【解決手段】本発明は、基材2と、基材2の表面上に設けた細繊維層4とを備え、細繊維層4は、細繊維3の集合体からなる多層構造体であって、細繊維3が正の電荷を多く帯びた第1の細繊維集合体6と、細繊維3が負の電荷を多く帯びた第2の細繊維集合体7とが、積層されていることを特徴とするものであり、捕集性能を著しく向上することができる。【選択図】図2
Description
本発明は、大気中の汚染物質を捕集するためのエアフィルタ濾材に関する。
径が細い繊維を用いた不織布を帯電処理することにより、捕集性能を向上させたエアフィルタ濾材が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
不織布に帯電処理を施したエアフィルタ濾材は、図10に示すように、正の電荷と負の電荷を有する繊維がランダムに分散して存在しているものである(例えば、特許文献2参照)。
上記従来例における課題は、不織布に正負の電荷がランダムに分散して存在しているため、不織布全体の電界強度が弱く、十分な静電気力が粉塵粒子に働かないことにより、捕集性能が低いという課題があった。さらに、粉塵粒子の受ける静電気力の向きが通過する場所によって変化するので、より捕集性能が低下するという課題があった。
そこで、本発明は、不織布に方向性のある電界を設け、粉塵粒子に十分な静電気力を与えることにより、捕集性能を高めた濾材を提供することを目的とするものである。
そして、この目的を達成するために、基材と、基材の表面上に設けた細繊維層とを備え、
前記細繊維層は、細繊維集合体からなる多層構造体であって、細繊維を形成するポリマーの体積抵抗率が10^16Ωcm以上且つ、誘電正接が0.001以下であり、前記細繊維が積層方向に対して、正の電荷を多く帯びた第1の細繊維集合体と、負の電荷を多く帯びた第2の細繊維集合体とが、積層されていることを特徴とするものであり、これにより、所期の目的を達成するものである。
前記細繊維層は、細繊維集合体からなる多層構造体であって、細繊維を形成するポリマーの体積抵抗率が10^16Ωcm以上且つ、誘電正接が0.001以下であり、前記細繊維が積層方向に対して、正の電荷を多く帯びた第1の細繊維集合体と、負の電荷を多く帯びた第2の細繊維集合体とが、積層されていることを特徴とするものであり、これにより、所期の目的を達成するものである。
本発明は、基材と、基材の表面上に設けた細繊維層とを備え、前記細繊維層は、細繊維集合体からなる多層構造体であって、細繊維を形成するポリマーの体積抵抗率が10^16Ωcm以上且つ、誘電正接が0.001以下であり、前記細繊維が積層方向に対して、正の電荷を多く帯びた第1の細繊維集合体と、負の電荷を多く帯びた第2の細繊維集合体とが、積層されていることを特徴とするものであるので、捕集効率を向上させることができる。
すなわち、本発明によれば、正負の電荷を帯びた細繊維の集合体が積層することで、厚み方向に方向性のある高い電界強度を有することができる。これにより、濾材を通過する粉塵粒子に一方向の十分な静電気力を与えることができるので、繊維が粉塵粒子を強く引きよせることができ、捕集効率を著しく向上することができる。
本発明の請求項1に係わるエアフィルタ濾材は、基材と、基材の表面上に設けた細繊維層とを備え、前記細繊維層は、細繊維集合体からなる多層構造体であって、細繊維を形成するポリマーの体積抵抗率が10^16Ωcm以上且つ、誘電正接が0.001以下であり、前記細繊維が平面方向には全体面積の90%以上に帯電が分布し、局所的な部分での積層方向には、正の電荷を多く帯びた第1の細繊維集合体と、負の電荷を多く帯びた第2の細繊維集合体とが、積層されていることを特徴とする。
これにより、細繊維層の厚み方向に対して高い電界強度を有することができるので、濾材を通過する粉塵粒子に一方向の十分な静電気力を与えることができる。その結果、細繊維が粉塵粒子を強く引きよせ、吸着することができるので、捕集効率を著しく向上することができる。
また、請求項2に係わるエアフィルタ濾材は、前記細繊維集合体が交互に3層以上に積層されていることを特徴とする。
これにより、エアフィルタ濾材の厚み方向に対して、最上面と最下面に挟まれた細繊維層はさらに高い電界強度を有することができるので、細繊維が粉塵粒子を強く引きよせ、吸着することができ、捕集効率を著しく向上することができる。
また、請求項3に係るエアフィルタ濾材は、前記繊維層集合体の内部において、水面方向かつ厚さ方向において、電荷の局所的な偏りが逆電荷によって包囲された状態であることを特徴とする。
これにより、局所的な電荷を強めることとなるので、平面方向に対しても厚さ方向に対しても強い電界を形成でき、粉塵粒子の捕集効率を上げることができる。さらに、大気や細繊維層の端面への接触や導伝が無いので帯電放出が低減され、細繊維層の帯電状態をさらに長時間保持できるようになる。
また、請求項4に係るエアフィルタ濾材は、前記細繊維がポリスチレンからなることを特徴とする。
これにより、繊維層に帯電した電荷状態を長時間保持することができる。
また、請求項5に係るエアフィルタ濾材は、細繊維層が平均繊維径100〜2000nmの繊維から構成されている。
繊維径が細くなることで、繊維近傍で生じる乱流を抑制できるので、圧力損失を低減することができる。また、繊維径が細いほど通風時の繊維に衝突する抵抗は少なく、同じ圧力損失時の空間における繊維量は、繊維径が細いほど多くの繊維を使用できるため、細孔はより緻密にでき、機械的捕集による捕集効率を向上することができる。さらに、繊維間の電界強度が強くなるので、静電気力による捕集効率を向上することができる。結果、より捕集効率を向上することができる。
以下、本発明における実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本例に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1に示すように、エアフィルタ濾材1は、基材2と細繊維3からなる細繊維層4とを有する。
図1に示すように、エアフィルタ濾材1は、基材2と細繊維3からなる細繊維層4とを有する。
本実施の形態における請求項1に記載のエアフィルタ濾材1の第一の特徴は、図2に示すように、細繊維層4は、細繊維集合体5が多層に積層した構成であり、細繊維集合体5が平面方向には全体面積の90%以上に帯電が分布している。そして、局所的な部分で、細繊維集合体5が正の電荷を多く帯びた繊維集合体である第1の細繊維集合体6と、局所的な細繊維集合体5が負の電荷を多く帯びた繊維の集合体である第2の細繊維集合体7を交互に積層している。これにより、図3に示すように、細繊維層4内の厚み方向に分極を形成することができる。
本実施の形態における第二の特徴は、細繊維3を形成する繊維の材質を、体積抵抗率が10^16Ωcm以上、且つ、誘電正接が0.001以下の条件を満たしたポリマーを用いたことである。なお、「^」は、べき乗を表す演算子である。上記では10の16乗を表している。また、細繊維3を形成する繊維の体積抵抗率はASTM D257(米国試験材料協会策定の規格)に、誘電正接はASTM D150(米国試験材料協会策定の規格)に準じて測定することで、求められる。
体積抵抗率が10^16Ωcmより低いと、繊維の帯電が不十分で捕集効率が低くなる。また、誘電正接が0.001より大きいと、電荷の安定性が悪くなり、水蒸気に曝露すると電荷が消失し、捕集効率が低下する。なお体積抵抗率は、より好ましくは10^16〜10^18Ωcmである。これら材質を用いることにより、繊維に多くの電荷を保持できるので、高い電界強度を有することで、捕集効率を向上することができる。さらに、電荷を安定に保持できるので、細繊維層4の帯電を長期間に渡って維持できるという効果を奏する。これらのポリマーとして例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレン−ポロペンコポリマー(FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)などやそれらの混合物を用いることができる。
これらのポリマーを用いて細繊維層4を構成する細繊維3の製造方法は、ナノオーダーの繊維径を有する繊維の紡糸方法であれば特に限定されないが、静電紡糸法が好ましい。
静電紡糸法は、ポリマー溶液の入ったノズル先端に高電圧を印加し、アース表面にポリマー溶液を吹き付け、飛散している過程でポリマーの細繊維化を起こすものである。この手法は高電圧を印加する過程を含んでいるため、前述の条件を満たしたポリマーを用いることで、別途、帯電加工を施すことなく、細繊維3を帯電させることができる。すなわち、帯電加工で不織布を破損させ、リークによる捕集効率の低下を起こすことなく、細繊維3に帯電加工を施すことができるので、捕集効率を向上させることができる。また、繊維の1本、1本を帯電できるため、別途、帯電加工を行うよりも繊維の電荷量を多くすることができ、集塵性能を向上することができる。
ここで、エアフィルタ濾材1の製造方法について説明する。図4に示すように、製造設備は、基材2を載せて水平方向へ搬送する搬送手段8と、この搬送手段8の上方に位置するノズル9とから構成している。
ノズル9は、搬送手段8によって搬送される平板状の基材2の上面である表面上に細繊維層4を形成するために高分子ポリマー溶液を吹き付けるものである。
エアフィルタ濾材1の製造は、まず、平板形状の基材2を搬送手段8によって搬送させながら、ノズル9から細繊維層4を形成するために高分子ポリマー溶液を基材2に向かって放出する。ここで、ノズルには、+20KV程度の電圧が印加され、搬送手段8はアース処理をしており、この電位差によって、ノズル9から高分子ポリマー溶液を曳糸し、形成される細繊維3を基材2の表面に堆積することで、細繊維層4を得る。搬送手段8は特定しないが、繊維を搬送できるコンベアのようなもので良い。
高分子ポリマーを溶解させる溶媒としては、高分子ポリマーと相溶性があり、溶解させることが出来れば特に限定されない。溶媒としての一例は、水、アルコール類、有機溶剤等が挙げられ、具体的なアルコール類や有機溶剤としては、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、ジクロロメタン(DCM)、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、酢酸、蟻酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、トリフルオロ酢酸(TFA)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホランなどそれらの混合物を用いることができる。また、用いる溶媒が極性の高い溶媒であればなお良く、ノズルからの電圧印加とは別の帯電手段でポリマーの帯電が促せる。一般的に、溶媒はプロトン性(水素イオンを供給できる)、もしくは非プロトン性に大別でき、非プロトン性においては、他の物質と水素結合を形成できるかで、おおよその極性が分類できる。本発明で用いる、極性が高い溶媒とはプロトン性もしくは水素結合を形成可能な非プロトン性溶媒である。これらの溶媒としては、アセトン、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ベンジルアルコール、プロパノール、フェノール、ピリジン、酢酸、蟻酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、トリフルオロ酢酸(TFA)、アセトニトリル、ジエチルエーテルなど、またはそれらの混合物を用いることができる。
上記紡糸手段においてポリマーが帯電する過程としては、ノズルに印加した電圧により帯電する過程と極性溶媒の気化に際して帯電する過程がある。気化に際して帯電する過程により得られる電荷の正負は、使用するポリマーと溶媒の組合せで決まる。得られた帯電の確認手法は以下〔実施例〕で示す帯電トナーを使用した手法を用いる。
第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7を形成する手段として、非極性溶媒を用いる、もしくは極性溶媒の気化に際して帯電する過程とノズルに印加した電圧により帯電する過程とがともに同電荷(両手法とも正電荷に帯電、もしくは負電荷に帯電)の場合には以下の製造の方法を用いることが出来る。
すなわち、ノズル9への印加電圧をパルス電源とし、時間によって印加電圧の正負を入れ替える、もしくは、図5に示すように、搬送手段8の搬送方向に従って、ノズル9を列状に複数設け、搬送方向から順に第一のノズル列10、第二のノズル列11、第三のノズル列12とした場合、奇数列と偶数列で印加電圧の正負を変えることで第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7を強制的に作り分けることが可能となる。この手法においてはノズル9の列が多いほど多積層構造が形成でき、効果を得ることができる。また、図5ではノズル9の印加電圧を正から行っているが、負から開始しても良い。
上記製造手段により、製造されたエアフィルタ濾材1は、局所的な鉛直方向に電荷の偏った細繊維集合体5を交互に積層した多層構造となる細繊維層を形成することができる。これにより、図3に示すように、細繊維層4内の厚み方向に分極を形成することができるので、厚み方向に強度の高い電界を形成することができる。本実施の形態では、第1の細繊維集合体6を正の極に帯電(正の電荷が多くなるように帯電)させ、第2の細繊維集合体7を負の極性に帯電(負の電荷が多くなるように帯電)させている。
したがって、無極性の粉塵粒子は誘電分極され、第1の細繊維集合体6側に負の極性が、第2の細繊維集合体7側に正の極性が偏り生じるので、正の極性に偏りをもった粉塵粒子端部側は第2の細繊維集合体7に静電気力で引寄せられ、捕集される。第2の細繊維集合体7は、細繊維3が絡み合い積み重なって構成されているので、誘電分極された粉塵粒子が吸着する確率が向上し、捕集効率が高くなる。
さらに、本発明のエアフィルタ濾材1は、極性を有した細繊維集合体5が交互に積層されているため、電荷を帯びた粉塵粒子は異極性の細繊維3近傍を通過するので、細繊維3は粉塵粒子を捕集することができる。つまり、負の極性を帯びた粉塵粒子を、第1の細繊維集合体6で捕集し、正の極性を帯びた粉塵粒子を第2の細繊維集合体7で捕集することができるので、捕集効率を著しく向上することができる。
そして、第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7とを交互に複数配置することで、静電気力により捕集する機会を増やすことができるので、より捕集効率を向上することができる。
また、粉塵粒子は帯びた電荷の極性により、電界から受ける静電気力の向きが逆になるので、細孔を通過する速度に差が生じる。例えば、第1の細繊維集合体6から第2の細繊維集合体7に向けて通過する際は、正の電荷を帯びた粉塵粒子は加速するが、負の電荷を帯びた粉塵粒子は減速する。これにより、極性の異なる粒子同士が衝突し、凝集することで、粒子径が増大するため、捕集効率が向上する。なお、本実施の形態では、第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7を交互に多層に積層した形態を説明しているが、これに限定するものではなく、第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7をそれぞれ1層ずつ備えたものであっても良い。
なおエアフィルタ濾材1を形成する基材2については、細繊維層4を支持する支持体となる部材である。基材2は、スパンボンド法、乾式または湿式法、メルトブローン法、スパンボンド法、エアレイド法などにより製造されたパルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維、またはそれらの少なくとも1つを含んでいる不織布から構成される。また、基材2を構成する繊維の平均径は、1〜30μm程度が好ましい。平均繊維径が1μm以下であると強度が弱く、30μm以上であると繊維同士の空間が大きくなり、細繊維層4を形成する細繊維3が基材2の深くまで入り込み、圧力損失を増大させるためである。基材の材質、形状、長さについては特に限定されないが、不織布の剛性が低すぎるとプリーツ加工が困難になり、生産性が低下するので、プリーツ加工に耐えられる程度の剛性があれば良く、例えばガラス繊維やセルロース繊維などが好ましい。
以上のように、本実施の形態のエアフィルタ濾材は、細繊維集合体5が3層以上からなり、最上層13と最下層14に挟まれた内部層15において、鉛直方向に対して逆の電荷で挟まれた状態になるため、より高い電界強度を有する。したがって、粉塵の集塵効率が増大する。また、大気に露出している外層に粉塵粒子が付着しても、内部からの静電気力が外層に働くため、細繊維3は電荷の中和による減衰効果を受け難く、高い捕集効率を長期間維持できる。
また、厚み方向に複数の電界を有する濾材は、表面と裏面の極性が異なる2種類以上の不織布を積層することにより、構成することができるが、この場合、接着材や熱による接着が必要なため、濾材の圧力損失が高くなっていた。それに対し、本発明のエアフィルタ濾材1は、細繊維層4内に、極性の異なる第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7を交互に複数積層しているので、電荷を帯びた不織布を接着により積層させる必要が無く、細孔の閉塞による通気性の悪化を抑制できるため、圧力損失を低くすることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2のエアフィルタ濾材1は、細繊維集合体5の内部層15において、平面方向かつ積層方向に対して電荷が包囲された状態(ある電荷の局所的な偏りがその逆電荷によって囲まれた状態)であることを特徴とする。すなわち、正負どちらか一方の電荷を多くして、多いほうの電荷で少ないほうの電荷を包囲する構成を備えたものである。
実施の形態2のエアフィルタ濾材1は、細繊維集合体5の内部層15において、平面方向かつ積層方向に対して電荷が包囲された状態(ある電荷の局所的な偏りがその逆電荷によって囲まれた状態)であることを特徴とする。すなわち、正負どちらか一方の電荷を多くして、多いほうの電荷で少ないほうの電荷を包囲する構成を備えたものである。
このエアフィルタ濾材1の製造に関しては、極性溶媒を使用し、かつノズル9に印加した電圧により帯電する過程と極性溶媒の気化に際して帯電する過程とが逆電荷である場合であり、かつノズル9の列を搬送方向に対して垂直方向に可動とした場合に作製が可能となる。
すなわち、紡糸時において図6〔図4の搬送方向、Aから(第一のノズル列10をコンベアの上流側から見た)図〕に示すように、高電圧が印加されているノズル9と基材2の距離が近いノズル9の直下へ紡糸される中心繊維19は、ノズル9と基材2の間の電界により帯電するため、ノズル9の極性と同じ極に帯電する。一方でノズル9の直下から同心円状に広がった外周部へ紡糸される端繊維16は、ノズル9と基材2の作る電界の影響を受けにくく、極性溶媒の気化に伴い帯電する。つまり、ノズル9と基材2の距離が近い中心繊維19の箇所と、端繊維16の箇所で逆の電荷を持たせることができる。そして、実施の形態1と同様に正負の電荷を帯びたポリマーは誘電正接を0.001以下のものを用いることで、一度保持した電荷が放出、再結合せず維持されるため、端繊維16が重なるようにノズル9の間隔を設けることで、図6に示すように一つの層上の搬送方向に外周部へ紡糸される端繊維16だけが存在する領域を形成することができる。さらに、ノズル9の配置を変えることで、第1の細繊維集合体6と第2の細繊維集合体7の多層構造を形成することができる。特に、搬送方向に見て、中心繊維19に対して、端繊維16の幅を少なくすることで、ノズル9の極性と同じ極性の帯電層を積層方向に形成して、極性溶媒の気化に際して伴い帯電した部分を包囲することができる。
例えば、図7〔図5の基材上方、B(紡糸上方)から見た図〕に示すように、下層の第一のノズル列10のノズル9と上層の第二のノズル列11のノズル9の位置を入れ違い(一例として、第一のノズル列10のノズル9間の中心位置に第二のノズル列11のノズル9を配置する)にし、かつ中心繊維19の直径をα、中心繊維19間の距離をβとしたときにα≧βの場合に、第一のノズル列10で端繊維16の電荷が、第二のノズル列11で中心繊維19の電荷に包囲される。
したがって、平面方向には1つのノズル列によって帯状に電荷の偏りが形成でき、積層方向には上層と下層のノズル列の配置よって逆電荷で挟まれた状態になる。
さらに、この製造方法において、同一面上で、ノズル9の列を可動させることで、作製した細繊維集合体5の水平方向においても中心繊維19による正の電荷の局所的な偏りを第一の電荷集中部17と端繊維16による負の電荷の偏りを第二の電荷集中部18として作り分けることが可能である。
例えば、図8(ノズル9上方から見た、第一のノズル列10が平面状に紡糸する際のノズル9と中心繊維の軌道20)に示す。
第一のノズル列10のノズル9が基材2上に紡糸をする際には、中心繊維19は、第一のノズル列10の動きと基材2の搬送により、蛇行したような中心繊維の軌道20を描く。この時中心繊維の軌道20に沿って、第一の電荷集中部17も蛇行する。また、第一のノズル列10内のノズル9間で、中心繊維の軌道20が重ならない部分は、端繊維16が紡糸され第二の電荷集中部18となり、中心繊維の直径αと中心繊維間の距離βの調整により、第二の電荷集中部18を第一の電荷集中部17で包囲することができる。また、図7のようにノズル9の配置が第一のノズル列10と第二のノズル列11で異なり、第二の電荷集中部18の上層に第一の電荷集中部17を紡糸することができるので、多層構造に紡糸することで、第二の電荷集中部18を第一の電荷集中部17で3次元的に包囲することができる。
構造例として、図6で示す細繊維集合体5が3層からなる細繊維層4である例では、最上層13と最下層14が第2の細繊維集合体7で、内部層15が第1の細繊維集合体6であり、第1の細繊維集合体6の平面方向においても第二の電荷集中部18が第一の電荷集中部17に包囲された状態を実現しているものである。つまり、負の電荷が正の電荷に3次元的に包囲された状態である。
また、正の電荷が負の電荷に包括された状態を実現しても良い。これは、単位時間当たりの中心繊維19と端繊維16の紡糸量、中心繊維の直径αと中心繊維間の距離β、ノズル9の可動速度、基材2の搬送速度などの調整で作製が可能である。
これにより、第一の電荷集中部17および第二の電荷集中部18が全体を包囲されたため局所的な電荷を強めることとなるので、水平方向に対しても鉛直方向に対しても強い電界を形成できる。つまり、通過する粉塵粒子の誘電分極効果の向上と細繊維層のクーロン力により、エアフィルタ濾材1の粒子捕集性能を著しく向上させることが出来る。また、水平方向に包括した電荷が放出されにくくなり、長時間帯電状態を維持することができる。
したがって粉塵粒子の捕集効率を上げることができ、大気や細繊維層4の端面からの帯電放出が低減され、細繊維層の帯電状態をさらに長時間保持できるようになる。
したがって粉塵粒子の捕集効率を上げることができ、大気や細繊維層4の端面からの帯電放出が低減され、細繊維層の帯電状態をさらに長時間保持できるようになる。
また、エアフィルタ濾材1は、細繊維3は繊維径が平均繊維径100〜2000nmの繊維で構成されていることが好ましい。繊維径が100nmより細いと、自己支持性が弱く、破損しやすいので好ましくない。一方、繊維径が2000nmより太いと、細繊維3が形成する3次元網目構造の細孔が大きくなり、大気中の粉塵等を引き寄せるクーロン力が弱くなるため、捕集効率の低下を招くため好ましくない。より好ましくは500〜1500nmである。
これにより、細孔を小さくできるので、さえぎりや拡散などの機械的捕集による捕集効率を向上することができる。さらに、細繊維3間の距離が短くなることで、電界強度が強くなり、静電気力による捕集効率を向上することができる。結果として、より捕集効率を向上することができる。また、繊維径を細くすることで、細繊維3近傍における空気流れの変化を小さくできるので、乱流を抑制でき、圧力損失を低減することができる。
また、繊維径を細くすることで、曲率が大きくなり、細繊維3表面の電荷密度が増加し、静電気力が強くなるので、細繊維3近傍の粉塵粒子を吸引しやすくなる。結果、捕集効率を向上することができる。
ここでの繊維径は、ほぼ正規分布となり、繊維径の数値は、中心径の数値で標準偏差のばらつきを含んだ数値である。
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例と比較例における評価項目は以下の手法で実施した。
(平均繊維径)
得られた濾材の表面を走査型電子顕微鏡(倍率10000倍)で撮影し、その画像から20本の繊維径を測定し、平均値を算出した。
得られた濾材の表面を走査型電子顕微鏡(倍率10000倍)で撮影し、その画像から20本の繊維径を測定し、平均値を算出した。
(帯電分布)
帯電トナー(春日電機製)を濾材に散布し、過剰なトナーを払い落とすことで、帯電状態を確認した。
帯電トナー(春日電機製)を濾材に散布し、過剰なトナーを払い落とすことで、帯電状態を確認した。
(濾材の性能評価)
粉塵粒子の捕集効率は、濾材をダクト内に配置し、濾材の通過面風速が6.5cm/秒の濾材上流と下流における大気塵の粒子径0.3〜0.5μmの粒子数を、パーティクルカウンター(カノマックス製、Model3887)で1サンプル当り3回測定し、上流側と下流側の粒子数の比率から算出した。圧力損失は、捕集効率の評価時に平行して、濾材上流と下流の静圧差を差圧計で読み取った。
粉塵粒子の捕集効率は、濾材をダクト内に配置し、濾材の通過面風速が6.5cm/秒の濾材上流と下流における大気塵の粒子径0.3〜0.5μmの粒子数を、パーティクルカウンター(カノマックス製、Model3887)で1サンプル当り3回測定し、上流側と下流側の粒子数の比率から算出した。圧力損失は、捕集効率の評価時に平行して、濾材上流と下流の静圧差を差圧計で読み取った。
測定した捕集効率と圧力損失から、下記の計算式よりQF値を算出した。QF値が大きい程、エアフィルタ濾材として高性能となる。
QF[1/Pa]=−ln(1−捕集効率[%]/100)/圧力損失[Pa]
(実施例1)
実施の形態1に示す製造方法によって、濾材を作製した。基材2として、目付量98g/m2のポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を、高分子ポリマー溶液として、ポリスチレンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した24重量%を用いて、細繊維3を紡糸することにより、細繊維層4を形成した濾材を得た。その後、繊維径と濾材の捕集効率、及び、帯電分布の状態を評価し、図9に示した。
(実施例1)
実施の形態1に示す製造方法によって、濾材を作製した。基材2として、目付量98g/m2のポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を、高分子ポリマー溶液として、ポリスチレンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した24重量%を用いて、細繊維3を紡糸することにより、細繊維層4を形成した濾材を得た。その後、繊維径と濾材の捕集効率、及び、帯電分布の状態を評価し、図9に示した。
(比較例1)
ポリエーテルサルホンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した25重量%の高分子ポリマー溶液を、実施例1と同様の方法で紡糸し、濾材を得た。その後、繊維径と濾材の捕集効率、及び、帯電分布の状態を評価し、図9に示した。
ポリエーテルサルホンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した25重量%の高分子ポリマー溶液を、実施例1と同様の方法で紡糸し、濾材を得た。その後、繊維径と濾材の捕集効率、及び、帯電分布の状態を評価し、図9に示した。
(比較例2)
ポリフッ化ビニリデンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した20重量%の高分子ポリマー溶液を、実施例1と同様の方法で紡糸し、濾材を得た。その後、繊維径と濾材の捕集効率、及び、帯電分布の状態を評価し、図9に示した。
ポリフッ化ビニリデンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した20重量%の高分子ポリマー溶液を、実施例1と同様の方法で紡糸し、濾材を得た。その後、繊維径と濾材の捕集効率、及び、帯電分布の状態を評価し、図9に示した。
(比較結果)
体積抵抗が10^16Ωcm以上、且つ、誘電正接が0.001以下であるポリスチレンを用いた実施例1では、集合体が交互に積層している帯電分布が確認でき、高いQF値を示した。
体積抵抗が10^16Ωcm以上、且つ、誘電正接が0.001以下であるポリスチレンを用いた実施例1では、集合体が交互に積層している帯電分布が確認でき、高いQF値を示した。
一方、体積抵抗と誘電正接の少なくとも1つが条件を満たさないポリエーテルサルホンとポリフッ化ビニリデンでは、帯電トナーが付着せずに、QF値が低いものであった。
本発明のエアフィルタ濾材は、捕集効率を著しく向上させ、長期間維持できるとともに、圧力損失を低くしたものである。従って、家庭用や事務所用などのエアフィルタ、およびこのエアフィルタを備えた空気清浄装置として活用が期待されるものである。
1 エアフィルタ濾材
2 基材
3 細繊維
4 細繊維層
5 細繊維集合体
6 第1の細繊維集合体
7 第2の細繊維集合体
8 搬送手段
9 ノズル
10 第一のノズル列
11 第二のノズル列
12 第三のノズル列
13 最上層
14 最下層
15 内部層
16 端繊維
17 第一の電荷集中部
18 第二の電荷集中部
19 中心繊維
20 中心繊維の軌道
α 中心繊維の直径
β 中心繊維間の距離
2 基材
3 細繊維
4 細繊維層
5 細繊維集合体
6 第1の細繊維集合体
7 第2の細繊維集合体
8 搬送手段
9 ノズル
10 第一のノズル列
11 第二のノズル列
12 第三のノズル列
13 最上層
14 最下層
15 内部層
16 端繊維
17 第一の電荷集中部
18 第二の電荷集中部
19 中心繊維
20 中心繊維の軌道
α 中心繊維の直径
β 中心繊維間の距離
Claims (5)
- 基材と、基材の表面上に設けた細繊維層とを備え、
前記細繊維層は、細繊維集合体からなる多層構造体であって、
細繊維を形成するポリマーの体積抵抗率が10^16Ωcm以上且つ、誘電正接が0.001以下であり、
前記細繊維集合体が平面方向には全体面積の90%以上に帯電が分布し、局所的な部分での積層方向には、正の電荷を多く帯びた第1の細繊維集合体と、負の電荷を多く帯びた第2の細繊維集合体とが、積層されていることを特徴とするエアフィルタ濾材。 - 前記細繊維集合体が交互に3層以上に積層されていることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ濾材。
- 前記繊維層集合体の内部において、水平方向かつ鉛直方向において、電荷の局所的な偏りが逆電荷で包括された状態であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
- 前記細繊維がポリスチレンからなる請求項1から3のいずれかに記載のエアフィルタ濾材。
- 前記細繊維が平均繊維径100〜2000nmの繊維から構成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエアフィルタ濾材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2017/010904 WO2017164112A1 (ja) | 2016-03-22 | 2017-03-17 | エアフィルタ濾材 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016056463 | 2016-03-22 | ||
JP2016056463 | 2016-03-22 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017170429A true JP2017170429A (ja) | 2017-09-28 |
Family
ID=59973593
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017036226A Pending JP2017170429A (ja) | 2016-03-22 | 2017-02-28 | エアフィルタ濾材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017170429A (ja) |
-
2017
- 2017-02-28 JP JP2017036226A patent/JP2017170429A/ja active Pending
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