図面を参照し本発明の一実施形態を説明する。搬送システム300の概略的構成を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
図1に示すように、搬送システム300は、二台のミシン1A、1Bと、二台の搬送装置100A、100Bと、一台のパーソナルコンピュータ(PC)200を備える。ミシン1Aとミシン1Bは、略同一の構成である。以下説明では、ミシン1Aとミシン1Bを総じて説明する場合、ミシン1とする。搬送装置100Aと搬送装置100Bは、略同一の構成である。以下説明では、搬送装置100Aと搬送装置100Bを総じて説明する場合、搬送装置100とする。
搬送システム300は、鉄又はアルミ製の棒材を矩形に組んだ二つのフレーム301、302を有する。フレーム301は、フレーム302の右側に配置する。フレーム301、302は、中段に棚板305を設ける。ミシン1Aは、フレーム301の棚板305上に固定する。搬送装置100Aは、ミシン1Aの右方に設ける。ミシン1Bは、フレーム302の棚板305上に固定する。搬送装置100Bは、ミシン1Bの右方に設ける。
搬送装置100Aは、移動機構120Aと布把持装置150Aを備える。移動機構120Aはミシン1Aの右方に設け、棚板305上に固定する。布把持装置150Aはミシン1Aの右前方に設け、布箱102Aは布把持装置150Aの左方に設ける。布箱102Aは、ミシン1Aが縫製する布105Aを積み重ねて収容する。布把持装置150Aと布箱102Aはミシン1Aの補助板5上に固定する。
搬送装置100Bは、移動機構120B、布把持装置150B、布把持装置150Cを備える。移動機構120Bはミシン1Bの右方に設け、棚板305上に固定する。布把持装置150Bはミシン1Bの右前方に設け、布箱102Bは布把持装置150Bの左方に設ける。布箱102Bは、ミシン1Bが縫製する布105Bを積み重ねて収容する。布把持装置150Bと布箱102Bはミシン1Bの補助板5上に固定する。布把持装置150Cはミシン1Bの左前方に設け、布箱102Cは布把持装置150Cの前方に設ける。布箱102Cは、ミシン1Bが縫製を終えた布105Cを積み重ねて収容する。布把持装置150Cと布箱102Cはミシン1Bの補助板5上に固定する。フレーム301、302は、ミシン1A、1Bの左右両側で補助板5と略同じ高さ位置に目隠し板306を設ける。
移動機構120Aと移動機構120Bは略同一の構成である。以下説明では、移動機構120Aと移動機構120Bを総じて説明する場合、移動機構120とする。布把持装置150A、布把持装置150B、布把持装置150Cは略同一の構成である。以下説明では、布把持装置150A、布把持装置150B、布把持装置150Cを総じて説明する場合、布把持装置150とする。布箱102A、布箱102B、布箱102Cは略同一の構成である。以下説明では、布箱102A、布箱102B、布箱102Cを総じて説明する場合、布箱102とする。また、布105A、布105B、布105Cを総じて説明する場合、布105とする。
ミシン1と搬送装置100は、夫々の制御部50、110(図7、図8参照)を収容する制御箱307を備える。制御箱307は、フレーム301、302夫々の棚板305の下方に設ける。フレーム301、302は、前枠上段に、強化ガラス又は透明なアクリル板からなる保護板(図示略)を取り付ける。保護板は左右にスライドして開閉する。
フレーム302は、下段に棚板308を設ける。PC200は棚板308上に配置する。PC200は、ミシン1の制御部50と搬送装置100の制御部110の夫々に電気的に接続する。PC200は、例えばノート型のPCであり、ミシン1と搬送装置100の動作を制御する。
図2を参照しミシン1の機械的構成を説明する。ミシン1はベッド部2、脚柱部3、アーム部4を備える。ベッド部2は、棚板305上に配置する。ベッド部2は前後方向に延び、内部に垂直釜等(図示略)を備える。脚柱部3は、ベッド部2後側から上方に延びる。脚柱部3は、内部にミシンモータ31(図7参照)等を備える。アーム部4は、脚柱部3上端からベッド部2の上面に対向して前方に延び、前端に前端部7を備える。アーム部4は内部に主軸、針棒駆動機構(図示略)等を備える。針棒10は前端部7の下端から下方へ延びる。縫針11は針棒10の下端に装着する。
ミシン1はベッド部2の上方に補助板5と水平動機構6を備える。補助板5は針棒10よりも下方に位置し、水平方向に延びる上面を有する。補助板5は針板12を備える。針板12上面と補助板5上面は略同じ高さである。針板12は、針棒10に装着した縫針11直下の位置に、縫針11が挿通可能な針穴13を有する。
図2、図3に示すように、水平動機構6は、押え腕65、X移動板(図示略)、Y移動腕66、エアシリンダ69、X軸移動機構(図示略)、Y軸移動機構(図示略)、保持体70を備える。X軸移動機構はベッド部2内部に設ける。X軸移動機構は、X軸モータ32(図7参照)を駆動源としてX移動板をX軸方向(左右方向)へ移動する。X移動板の上面は、前後方向に延びるレール(図示略)を備える。押え腕65は、レール上に設ける。レールは、押え腕65を前後方向へ移動可能に支持する。押え腕65は、補助板5よりも上方にある。押え腕65は、X移動板と共にX軸方向へ移動する。
Y移動腕66は、支持部67と腕部68を備える。支持部67は左右方向に延びる。支持部67は、押え腕65の後部をX軸方向に移動可能に支持する。腕部68は支持部67後側に連結し、前後方向に延びる。腕部68は、ベッド部2内に設けたY軸移動機構に接続する。Y軸移動機構はY軸モータ34(図7参照)を駆動源として腕部68をY軸方向(前後方向)へ移動する。支持部67は、腕部68の移動に伴いY軸方向へ移動する。押え腕65は、Y移動腕66と共にY軸方向へ移動する。
保持体70は押え腕65の前端部に取り付ける。保持体70は、昇降板71、エアシリンダ72、押え足73、押え板74、レール75、スライダ76を備える。押え腕65は、左右に一対のエアシリンダ69を備える。エアシリンダ69のロッドは、昇降レバー(図示略)に接続する。昇降板71は昇降レバーに連結し、エアシリンダ69の駆動に応じて上下動する。エアシリンダ72とスライダ76は、昇降板71の前面に固定する。エアシリンダ72のロッドは左方に伸縮する。押え足73は側面視L字状であり、エアシリンダ72のロッドの左端部に連結する。押え足73はエアシリンダ72の駆動に応じて左右動する。レール75は左右に延び、押え足73の後面に固定する。スライダ76はレール75に係合し、押え足73を左右動可能に支持する。
押え板74は押え足73の下端部に固定する。押え板74は、例えば金属製である。押え板74は水平方向に配置した板部材であり、平面視矩形状の開口を有する。エアシリンダ69が駆動して昇降板71を下降した時、押え板74は補助板5との間に縫製対象の布105を上下から挟んで保持する。エアシリンダ69が駆動して昇降板71が上昇した時、押え板74は補助板5から上方に離れ、布105の保持を解除する。エアシリンダ72が駆動して押え足73を昇降板71の前方に配置した時、押え板74は押え腕65正面の「正位置」に位置する。図中の二点鎖線で示すように、エアシリンダ72が駆動して押え足73を昇降板71の左方に配置した時、押え板74は押え腕65正面から左方へ移動した「側方位置」に位置する。
図4を参照し搬送装置100の機械的構成を説明する。搬送装置100は、移動機構120、吸着機構130、布把持装置150、撮影装置117、吸引機構140を備える。移動機構120は、内部に複数のアーム駆動モータ121(図8参照)を備える、所謂ロボットアームである。移動機構120は、支柱部131、第一腕部132、第二腕部133、第三腕部134を有する。支柱部131は上下方向に延び、下端部を棚板305上に固定する。支柱部131の上端部は第一腕部132の一端部に連結し、第一腕部132を水平回転可能に支持する。支柱部131は上端部内にアーム駆動モータ121を備え、アーム駆動モータ121の駆動により第一腕部132は回動する。第一腕部132は水平方向に延びる。第一腕部132の他端部は第二腕部133の一端部に連結し、第二腕部133を水平回転可能に支持する。第二腕部133は水平方向に延び、且つ他端部が上下方向に延びる。第二腕部133は一端部内にアーム駆動モータ121を備え、アーム駆動モータ121の駆動により第一腕部132に対して相対的に回動する。
第三腕部134は、上下方向に延びる棒状の部材である。第二腕部133の他端部は第三腕部134を上下動可能、且つ第三腕部134の軸中心に回転可能に保持する。第二腕部133は他端部内に二つのアーム駆動モータ121を備え、アーム駆動モータ121の駆動により第三腕部134は上下動し、且つ回転する。第三腕部134の下端部は吸着機構130の取付台124に接続する。
吸着機構130は取付台124と帯電装置135を備える。取付台124は平面視略矩形状の板部材である。帯電装置135は通電によって帯電する。帯電装置135は平面視略矩形の板状であり、取付台124の下部に固定する。帯電装置135の下面は吸着面136である。帯電装置135が帯電することで静電気を帯び、吸着面136に布105を吸着することができる。搬送装置100の制御部110(図8参照)は、複数のアーム駆動モータ121の駆動を夫々制御し、補助板5上で移動機構120の可動範囲内の任意の位置に、任意の向きで、帯電装置135を移動することができる。
布把持装置150は、積み重なった複数の布105から一枚の布105を取り出す装置である。布把持装置150は、回動機構160、上下動機構170、把持機構180を備える。回動機構160は台座部161、エアシリンダ162、支柱163、回動腕164を備える。台座部161は箱状で、底部を補助板5上に固定する。支柱163は上下方向に延びる棒状である。台座部161は、支柱163をその軸中心に回転可能に支持する。支柱163の下端部は台座部161内に配置する。エアシリンダ162は台座部161の側部に設ける。エアシリンダ162のロッド165は台座部161内に配置し、支柱163の側方で左右方向に伸縮する。支柱163の下端部はピニオンギア(図示略)を備える。エアシリンダ162のロッド165はラックギア(図示略)を備え、ピニオンギアに噛合う。エアシリンダ162が駆動すると、支柱163は回動する。
回動腕164の一端部は、支柱163の上端部に固定する。回動腕164は水平方向に延び、他端部に上下動機構170を固定する。図5に示すように、上下動機構170は角形のエアシリンダであり、下方に伸縮する二本のロッド171を備える。把持機構180は、二本のロッド171の下端に接続する。
図5、図25に示すように、把持機構180は、支持部181、二つの脚部182、二つの足部183、二つの把持部184、二つの保持機構190を備える。支持部181は左右方向に延び、側面視逆U字状に曲げ加工した板部材である。上下動機構170のロッド171下端は支持部181上面略中央に固定する。
脚部182は、側面視U字状に曲げ加工した板状の部材である。脚部182は、前後方向に対向する板状の部分の夫々に、上下方向に延びる一対の長穴173を有し、底部に円形の穴部174を形成する。穴部174の内周面は段状に形成し、段部の下側の方が径方向に大きい。支持部181は、前後方向に対向する部分の外側面に、板状の一対の突部159を固定する。突部159は、上下方向に長い長円形状である。支持部181は一対の長穴173に一対の突部159を係合し、脚部182を長穴173の範囲内で上下動可能に支持する。脚部182は、支持部181に対して相対的に上方に位置する「上位置」(図11参照)と、上位置よりも下方に位置する「下位置」(図5参照)との間で上下動する。脚部182の下端部は支持部181の下方に突出する。
保持機構190は、脚部182が下位置から上位置に移動した時、脚部182を上位置に保持することができる。保持機構190は、支持棒191、ピン192、カム部材193、切替部材197、保護筒166、圧縮ばね178、179を備える。支持棒191は上下方向に延びる棒材であり、支持部181内に設ける。支持棒191の上端部は支持部181の上部にナット177で固定する。支持棒191は、径方向外側に突出するピン192を下端部に備える。ピン192は、カム部材193と切替部材197に係合する。圧縮ばね178は、支持棒191の周囲に設ける。圧縮ばね178の上端は支持部181の上部下面に当接し、下端はカム部材193の上面157に当接する。圧縮ばね178はカム部材193を下向きに付勢する。
カム部材193は上下方向に延び、上部中央に開口部分を形成した上面157を有する円筒状の部材である。カム部材193の外径は支持棒191の外径より大きい。支持棒191は上面157の開口部分を挿通し、下端部をカム部材193内に配置する。カム部材193の内径は、支持棒191の外径と略同じである。カム部材193は支持棒191を中心に周方向に回転可能である。カム部材193は側面に複数の案内部194と制限部195を形成する。案内部194と制限部195は夫々カム部材193の下端から上下方向に延びる溝状であり、カム部材193の外側側面と内側側面に連通する。案内部194と制限部195はカム部材193の周方向に交互に並べ、等間隔に設ける。カム部材193は、案内部194と制限部195の間の周壁の下端に、上下方向に傾斜し下方を向く斜面196を形成する。斜面196は、平面視時計回り方向に下方から上方へ傾斜する。斜面196の周方向の長さL1は、案内部194の幅L2よりも大きく、制限部195の幅L3よりも大きい。案内部194の幅L2と制限部195の幅L3は同じ大きさであり、ピン192の外径より僅かに大きい。
ピン192は、案内部194と制限部195に係合し、案内部194内と制限部195内を上下方向に移動可能である。案内部194の上端は、制限部195の上端よりも上方である。案内部194は、脚部182が上位置と下位置の間で移動する時、脚部182に対するピン192の相対的な上下動を案内する。制限部195は、脚部182が上位置と下位置の間で移動する時、脚部182に対するピン192の相対的な上下動を制限する。
切替部材197は上下方向に延び、カム部材193と略同じ外径の円筒状の部材である。切替部材197はカム部材193の下方に配置し、上部開口から支持棒191の下端部が進入する。切替部材197は下部に半球状の軸部158を有する。軸部158は脚部182の穴部174を介して足部183の上面に当接する。軸部158の軸心は切替部材197の軸心と一致する。切替部材197は軸部158の軸心を中心に周方向に回転可能である。
切替部材197の内径は、支持棒191の外径と略同じである。切替部材197は、側面に複数の溝部198を形成する。溝部198は切替部材197の上端から上下方向に延びる溝状であり、切替部材197の外側側面と内側側面に連通する。複数の溝部198は切替部材197の周方向に等間隔に並べて設ける。切替部材197は、個々の溝部198間の周壁の上端に、上下方向に傾斜し上方を向く斜面199を形成する。斜面199は、平面視時計回り方向に上方から下方へ傾斜する。斜面199の周方向の長さL4は、溝部198の幅L5よりも大きい。溝部198の幅L5は、ピン192の外径より僅かに大きい。
ピン192は、溝部198に係合し、溝部198内を上下方向に移動可能である。溝部198は、脚部182が上位置に位置する時、脚部182に対するピン192の相対的な上下動を案内する。切替部材197は、脚部182が支持部181に対して一回の上下動を行う毎に、ピン192がカム部材193に係合する部位を、案内部194と制限部195とに交互に切り替える。
保護筒166は、上下方向に延び、上部に上壁168を有する円筒状の部材である。保護筒166の上下方向の大きさは、カム部材193と切替部材197を上下方向に並べた大きさよりも大きい。保護筒166の内径は、カム部材193と切替部材197の外径より僅かに大きい。保護筒166は、カム部材193と切替部材197の外側側面を周方向に囲んで設ける。保護筒166の下端部は、径方向外向きに突出する鍔部167を備える。鍔部167は脚部182の穴部174の段部に係合する。保護筒166の上壁168は、開口部分を有する。上壁168の開口部分の内径は、支持棒191の周囲に設けた圧縮ばね178の外径よりも大きく、カム部材193の外径よりも小さい。上壁168の下面は、カム部材193の上面157に係合する。圧縮ばね178は、保護筒166とは干渉せずにカム部材193を下向きに付勢する。
圧縮ばね179は、保護筒166の周囲に設ける。圧縮ばね179の上端は支持部181の上部下面に当接し、下端は脚部182の底部に当接する。圧縮ばね179は脚部182を下向きに付勢する。
二つの足部183は、夫々、脚部182の底部下面に螺子153で固定する。足部183は板状で、脚部182の側方に突出する。足部183上面は、保護筒166の鍔部167に当接する。足部183は保護筒166と脚部182を一体に組み付ける。足部183は、突出方向に延びる二つの長穴154を有する。螺子153は長穴154内を挿通する。足部183は、螺子153が長穴154の範囲において移動でき、側方に突出する大きさを調整することができる。
二つの把持部184は、夫々、脚部182の側方に設ける。足部183は把持部184側に突出する。支持部181は、左右両端部に、前壁と後壁の間で延びる軸棒185を夫々備える。軸棒185は、把持部184の基端部189を挿通し、把持部184を回動可能に支持する。把持部184は、基端部189よりも先端部188の厚みが小さく、回動方向に屈曲する鉤爪状の部材である。支持部181は軸棒185に捻りばね175を設ける。捻りばね175は、把持部184の先端部188を基端部189の下方へ向けて付勢する。該時、把持部184は、先端部188が足部183に対し側方で対向する「開放位置」に位置する。把持部184は、捻りばね175の付勢力に抗して回動した時、先端部188が足部183の上方に位置する「閉鎖位置」に位置する。
支持部181は、軸棒185の上方に、前壁と後壁の間で延びるストッパ187を備える。把持部184が開放位置に位置する時、ストッパ187は基端部189に当接し、先端部188を足部183の側方に維持する。把持部184は、先端部188と基端部189との間に、下方向きに湾曲する湾曲面186を有する。把持部184は、先端部188表面から湾曲面186にかけて、布105に対する摩擦力が布105同士の摩擦力よりも大きいパッド176を備える。パッド176は、例えばゴム、シリコン等をシート状に形成した部材である。パッド176は把持部184に貼り付けて設ける。把持部184が開放位置から閉鎖位置に回動する時、把持部184は湾曲面186で布105に当接しながらパッド176で布105を手繰り寄せる。パッド176は弾性を有するので、把持部184が布105を手繰り寄せた時、布105にかかる負荷を軽減できる。
足部183と把持部184の先端部188との間隙は、足部183を脚部182に螺子153で固定する時の螺子153と長穴154の位置関係に応じて変更することができる。足部183と把持部184の間隙は、例えば、布105の厚み、材質等に応じて調整するとよい。例えば、布105の厚みが比較的薄い時、足部183と把持部184の間隙は、比較的小さくするとよい。足部183と把持部184の間隙を小さくすれば、把持機構180は、把持部184で布105を手繰り寄せた時、複数の布105を把持部184と足部183との間に把持してしまうことを防止できる。例えば、布105の厚みが比較的厚い時、足部183と把持部184の間隙は、比較的大きくするとよい。足部183と把持部184の間隙を大きくすれば、把持機構180は、把持部184で布105を手繰り寄せた時、布105が屈曲できずに足部183との間に把持できなくなることを防止できる。
図4に示すように、補助板5は台座部161の後方に円形の窓部101を備える。窓部101は強化ガラス又は透明なアクリル板を固定する。フレーム301、302は、窓部101の下方に撮影装置117を固定する。撮影装置117は、窓部101を介して補助板5の上方を撮影する。移動機構120が帯電装置135を窓部101上方の「撮影位置」に移動した時、撮影装置117は帯電装置135の吸着面136と、吸着面136に吸着する布105を撮影する。
布箱102は台座部161の左方に設け、補助板5上に固定する。布箱102は平面視略矩形状であり、前後方向よりも左右方向が長い。縫製対象の布105は、布箱102内に積み重ねて配置する。布箱102は、底面上にパッド103(図5参照)を備える。パッド103は、例えばゴム、シリコン等をシート状に形成した部材である。パッド103は、布箱102内に収容する布105の滑りを抑制する。布105に対するパッド103の摩擦力は、布105同士の摩擦力よりも大きい。把持部184のパッド176の摩擦力は、布箱102のパッド103の摩擦力よりも大きい。故に把持機構180は、布箱102から最後の一枚の布105を把持する時、パッド176でパッド103に抗して布105を手繰り寄せることができる。
本実施形態の布105は略長方形状である。布105は、長い辺を左右方向にして布箱102内に収容する。把持機構180が布箱102から一枚の布105を把持する時、回動機構160は、上下動機構170と把持機構180を布箱102上方の位置に回動する。図中の二点鎖線で示すように、布把持装置150A、150Bの回動機構160は、上下動機構170と把持機構180を布箱102A、102B上方の位置から略90度回動し、窓部101上方の位置に移動する。布把持装置150Cの回動機構160は、上下動機構170と把持機構180を布箱102C上方の位置から略180度回動する。補助板5上で窓部101付近の位置は、「配置位置」である。布把持装置150は、布箱102から取り出した一枚の布105を配置位置に配置する。移動機構120は、配置位置に帯電装置135を移動し、布105を受け取る。
補助板5は、布箱102の後方に開口部19を有する。開口部19は平面視略矩形状であり、前後方向よりも左右方向が長い。図6に示すように、吸引機構140は開口部19に設け、補助板5の下側に固定する。吸引機構140は、吸引箱141、流通板142、吸引バルブ145を備える。吸引箱141は上部を開放する箱状である。流通板142は開口部19に係合して吸引箱141を覆い、吸引箱141にネジ留めして固定する。流通板142上面と補助板5上面は略同じ高さである。流通板142はエアが流通する複数の流通穴143を有する。吸引バルブ145は吸引箱141の底部に接続する。吸引バルブ145はエアで駆動し、吸引箱141内のエアを吸引する。流通板142の上面は、布105を吸引可能な吸引面144である。補助板5における吸引面144の位置は、移動機構120の帯電装置135が吸着面136に吸着した布105を水平動機構6の押え板74に受け渡す「受渡位置」である。吸引機構140は移動機構120が受渡位置に配置した布105を吸引し、受け渡しが完了するまで布105を保持する。
ミシン1のエアシリンダ69、72、布把持装置150のエアシリンダ162、上下動機構170、吸引機構140の吸引バルブ145は、夫々、エアチューブを介してエアコンプレッサ(図示略)に接続する。
図7を参照しミシン1の電気的構成を説明する。ミシン1の制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53、記憶装置54、通信インターフェース(I/F)55、入出力I/F56、駆動回路57〜59を備える。CPU51、ROM52、RAM53、記憶装置54は、バスを介して入出力I/F56と電気的に接続する。CPU51はミシン1の制御を司り、ROM52が記憶する各種プログラムに従い縫製に関わる各種演算と処理を実行する。ROM52は各種プログラム、各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM53はCPU51の演算結果、ポインタ、カウンタ等を一時的に記憶する。
記憶装置54は複数の模様の縫製データ、作業者が入力した各種設定情報等を記憶する不揮発性の記憶装置である。縫製データは、模様を縫製する為の複数の針落ち点が順に縫針11の直下に位置するように、保持体70を移動する為のデータである。針落ち点は針棒10と共に縫針11が下方に移動した時に縫針11が刺さる布105上の予定位置である。「縫製開始位置」は、最初の針落ち点に対応する保持体70の位置である。針落ち点の座標は保持体70の原点位置を基準位置とした座標である。保持体70の「原点位置」は、例えば、押え板74の中心点が縫針11の直下にある位置である。保持体70の原点位置は、本実施形態の例に限らない。例えば押え板74の他の位置が縫針11の直下にある位置としてもよい。
通信I/F55は入出力I/F56と電気的に接続する。通信I/F55は、例えばシリアル通信用のインターフェースである。通信I/F55はPC200の通信I/F210に接続する。駆動回路57〜59は入出力I/F56と電気的に接続する。駆動回路57はミシンモータ31と電気的に接続する。CPU51は駆動回路57を制御し、ミシンモータ31を駆動する。ミシンモータ31は主軸を回転する。
駆動回路58はX軸モータ32と電気的に接続する。駆動回路59はY軸モータ34と電気的に接続する。CPU51は駆動回路58、59を制御し夫々X軸モータ32とY軸モータ34を駆動する。X軸モータ32、Y軸モータ34は夫々ステッピングモータである。X軸モータ32、Y軸モータ34は夫々X軸移動機構、Y軸移動機構を駆動する。保持体70はX軸方向、Y軸方向に移動する。X軸モータ32、Y軸モータ34は夫々出力軸にX軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ35を備える。X軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ35は夫々入出力I/F56と電気的に接続する。X軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ35は夫々X軸モータ32、Y軸モータ34の出力軸の回転角度に対応するカウント値を検出し、CPU51に出力する。CPU51はカウント値に基づいて保持体70の現在位置の座標を演算し、RAM53に記憶する。CPU51は縫製時にミシンモータ31を駆動して主軸を回転し、針棒10の上下動と垂直釜の駆動を制御する。CPU51は、ミシンモータ31の駆動と同時に縫製データに基づきX軸モータ32、Y軸モータ34を駆動することで水平動機構6の駆動を制御し、保持体70の押え板74が保持する布105を縫製する。
入出力I/F56はX方向原点センサ36、Y方向原点センサ37、電磁弁38、39と電気的に接続する。X方向原点センサ36はX軸移動機構に設ける。X方向原点センサ36は保持体70の原点設定に用いる。Y方向原点センサ37はY軸移動機構に設ける。Y方向原点センサ37は保持体70の原点設定に用いる。CPU51はX方向原点センサ36、Y方向原点センサ37の検出結果に基づきX軸モータ32、Y軸モータ34の駆動を制御する。縫製開始前、CPU51は保持体70を原点位置へ移動する。
電磁弁38は、エアコンプレッサがエアシリンダ69へ供給するエアの供給経路に設ける。CPU51は電磁弁38の開閉によってエアシリンダ69の駆動を制御し、押え板74を昇降する。電磁弁39は、エアコンプレッサが保持体70のエアシリンダ72へ供給するエアの供給経路に設ける。CPU51は電磁弁39の開閉によってエアシリンダ72の駆動を制御し、押え板74を左右に移動する。
図8を参照し搬送装置100の電気的構成を説明する。搬送装置100の制御部110は、CPU111、ROM112、RAM113、通信I/F114、入出力I/F115、駆動回路116を備える。CPU111、ROM112、RAM113はバスを介して入出力I/F115と電気的に接続する。CPU111は搬送装置100の制御を司り、ROM112が記憶する各種プログラムに従い処理を実行する。ROM112は各種プログラム、各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM113はCPU111の演算結果、各種データ等を一時的に記憶する。通信I/F114は入出力I/F115と電気的に接続する。通信I/F114は例えばシリアル通信用のインターフェースである。通信I/F114はPC200の通信I/F210に接続する。
駆動回路116は入出力I/F115と電気的に接続する。駆動回路116は複数のアーム駆動モータ121に接続する。アーム駆動モータ121はステッピングモータである。CPU111は駆動回路116を制御し、複数のアーム駆動モータ121を駆動する。複数のアーム駆動モータ121は、移動機構120の第一腕部132、第二腕部133、第三腕部134を駆動し、帯電装置135を移動する。複数のアーム駆動モータ121は、夫々の出力軸にアームエンコーダ122を備える。アームエンコーダ122は、夫々入出力I/F115と電気的に接続する。アームエンコーダ122は夫々アーム駆動モータ121の出力軸の回転角度に対応するカウント値を検出し、CPU111に出力する。CPU111はカウント値に基づいて第一腕部132、第二腕部133、第三腕部134の現在位置を演算し、RAM113に記憶する。CPU111は、複数のアーム駆動モータ121の駆動を制御することで、帯電装置135を配置位置と受渡位置との間で移動する。
入出力I/F115は複数のアーム原点センサ123、帯電装置135と電気的に接続する。複数のアーム原点センサ123は、第一腕部132、第二腕部133、第三腕部134夫々の回転軸と第三腕部134の上端位置に設ける。アーム原点センサ123は移動機構120を待機時形態にする設定に用いる。移動機構120の非動作時、CPU111はアーム原点センサ123の検出結果に基づき複数のアーム駆動モータ121の駆動を夫々制御して、移動機構120を待機時形態にする。待機時形態は、移動機構120の形態が他の装置の動作に干渉しない形態である。帯電装置135は駆動回路を含み、CPU111の制御で帯電する。
入出力I/F115は撮影装置117、電磁弁118、151、152と電気的に接続する。撮影装置117は、布把持装置150が配置位置に配置した布105を移動機構120が帯電装置135により吸着面136に吸着した時、吸着面136を撮影する。CPU111は、撮影装置117の撮影画像を解析し、解析結果に基づき保持位置の検出を行う。「保持位置」は、帯電装置135が吸着面136で布105を保持する位置である。CPU111は、予め、吸着面136に基準位置を設定する。「基準位置」は、布105を正確に受渡位置に移動する為、吸着面136で保持位置の基準として設定する位置である。CPU111は、保持位置の検出結果に基づき移動機構120を制御し、基準位置とのずれを修正することによって、布105を正確に受渡位置に移動することができる。
電磁弁118は、エアコンプレッサが吸引バルブ145へ供給するエアの供給経路に設ける。CPU111は電磁弁118を開閉し、吸引バルブ145の駆動と非駆動を制御する。電磁弁151は、エアコンプレッサがエアシリンダ162へ供給するエアの供給経路に設ける。CPU111は電磁弁151を開閉し、布把持装置150の支柱163の回動を制御し、把持機構180を布箱102上方の位置と配置位置上方の位置との間で移動する。電磁弁152は、エアコンプレッサが上下動機構170へ供給するエアの供給経路に設ける。CPU111は電磁弁152を開閉し、ロッド171の伸縮を制御して、把持機構180を上下動する。
図9を参照しPC200の電気的構成を説明する。PC200はCPU201を備える。CPU201はPC200の制御を司る。CPU201はチップセット204に接続し、チップセット204を介してROM202、RAM203、表示制御部208と電気的に接続する。チップセット204は、CPU201と、ROM202、RAM203、表示制御部208との間でデータの送受信を管理する一連の回路群である。ROM202はBIOS等を記憶する。RAM203は、種々の一時データを記憶する。表示制御部208は、ディスプレイ209への映像の表示を制御する。
チップセット204はチップセット205と接続する。CPU201は、チップセット205を介し、記憶装置206、入力部207、通信I/F210と電気的に接続する。チップセット205は、CPU201と、記憶装置206、入力部207、通信I/F210との間でデータの送受信を管理する一連の回路群である。記憶装置206は、例えばハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等、不揮発性の記憶装置である。記憶装置206は、OS、各種アプリケーション、データ等を記憶する。入力部207は、キーボード、マウス等、PC200に対する操作の入力を行う装置である。通信I/F210は、例えばシリアル通信用のインターフェースである。通信I/F210はミシン1(ミシン1A、1B)、搬送装置100(搬送装置100A、100B)に接続する。
図5、図10〜図12、図26〜30を参照し、布把持装置150が布105を把持する動作を説明する。図5に示すように、布箱102に積み重ねて収容した布105から一枚の布105を布把持装置150が取り出す時、回動機構160は、上下動機構170と把持機構180を布箱102上に移動する。脚部182は圧縮ばね179の付勢によって下位置に位置し、把持部184は捻りばね175の付勢によって開放位置に位置する。図26に示すように、保持機構190の圧縮ばね179は、脚部182を下方へ付勢する。圧縮ばね178は、カム部材193の上面157を下方に押圧する。ピン192は、カム部材193の案内部194に係合する時、カム部材193の下方への移動に対して相対的に案内部194を上方へ移動する。脚部182が下位置に位置する時、ピン192は案内部194の上端に位置する。
図10に示すように、上下動機構170はロッド171を下方に伸ばし、把持機構180を布105上に下降する。足部183は最上位の布105に当接し、布105を押さえる。支持部181が下降するので、脚部182は相対的に上方へ移動する。
脚部182が下位置から上位置へ向けて移動する過程で、把持部184の湾曲面186は、最上位の布105に当接する。把持部184は軸棒185を支点に開放位置から閉鎖位置へ向けて回動する。先端部188は、脚部182に近付きながら支持部181に対して相対的に上方に移動する。把持部184の回動に伴い、湾曲面186が布105に当接する位置は、先端部188側から基端部189側に移動する。湾曲面186のパッド176は、湾曲面186に当接した布105を先端部188側へ向けて手繰り寄せる。パッド176の摩擦力は、布105同士の摩擦力より大きい。故に把持部184は、最上位の布105だけを手繰る。先端部188は足部183に対向する。よって把持部184は、湾曲面186に当接した布105の部分を足部183へ向けて送る。
把持部184が閉鎖位置に回動すると、先端部188は足部183の上方に位置する。図11に示すように、脚部182が上位置に位置する時、湾曲面186のパッド176が手繰り寄せた布105の部分は略S字状に屈曲する。把持部184と足部183は、布105の屈曲部分を上下に挟む。
図27に示すように、脚部182が下位置から上位置へ向けて移動する時、足部183に当接する切替部材197の押圧によって、カム部材193は圧縮ばね178の付勢力に抗してピン192に対して相対的に上方へ移動する。カム部材193の下端部は、切替部材197の斜面199に当接する。ピン192は、案内部194に沿って相対的に下方へ移動し、案内部194の上端から下端に移動する。ピン192は、切替部材197の斜面199に当接し、斜面199を相対的に下方に押圧する。
図28に示すように、切替部材197はピン192が斜面199を押圧する力で軸部158を中心に平面視反時計回りに回転する。切替部材197の回転によって、溝部198はピン192の下方に移動する。ピン192は相対的に下方へ移動し、溝部198内に移動する。
図29に示すように、ピン192はカム部材193との係合を解除し、カム部材193は回転可能になる。ピン192は切替部材197と係合し、切替部材197の回転は止まる。切替部材197の押圧により、切替部材197の斜面199の上端がカム部材193の斜面196に沿って移動し、カム部材193は回転する。カム部材193は支持棒191を中心に平面視反時計回りに回転し、溝部198の上方に斜面196が移動する。
図12に示すように、上下動機構170はロッド171を上方へ縮め、把持機構180を上昇する。支持部181が上昇し、足部183が脚部182の相対的な上方への押圧を解除すると、圧縮ばね179は脚部182を下方に押圧する。圧縮ばね178がカム部材193を下方へ押圧し、カム部材193はピン192に対して相対的に下方へ移動する。ピン192は、溝部198に沿って相対的に上方へ移動し、カム部材193の斜面196に当接する。ピン192は斜面196を相対的に上方に押圧する。
図30に示すように、カム部材193はピン192が斜面196を押圧する力で支持棒191を中心に平面視反時計回りに回転する。カム部材193の回転によって、案内部194の隣に並ぶ制限部195はピン192の上方に移動する。ピン192は相対的に上方へ移動して制限部195内に移動し、制限部195の上端に位置する。制限部195は、ピン192に対するカム部材193の相対的な下方への移動を制限する。保護筒166と一体の脚部182は、圧縮ばね179の付勢によって下方へ移動しようとする。カム部材193は、保護筒166の上壁168下面に上面157を当接し、脚部182の下方への移動を制限する。以上の動作により、保持機構190は脚部182を上位置に保持する。
把持機構180は、把持部184と足部183で一枚の布105を把持した状態を保持する。回動機構160は上下動機構170と把持機構180を配置位置上に移動し、上下動機構170は把持機構180を下降する。足部183が配置位置で補助板5上面に当接し、脚部182を支持部181に対して相対的に上方向きに移動すると、カム部材193と切替部材197は上記と同様に協働し、ピン192を制限部195から案内部194に移動する。保持機構190は脚部182の保持を解除する。上下動機構170が把持機構180を上昇した時、脚部182は圧縮ばね179の付勢力により上位置から下位置に移動し、把持部184は捻りばね175の付勢力で閉鎖位置から開放位置に移動する。故に、布把持装置150は、把持部184と足部183による布105の把持を解除し、一枚の布105を配置位置に配置することができる。
図13〜図24を参照し、搬送システム300の動作を説明する。以下の説明では、ミシン1Aと搬送装置100Aに関する各位置と、ミシン1Bと搬送装置100Bに関する各位置とを区別して説明する場合、便宜上、ミシン1A、搬送装置100Aに関する各位置を位置Aとし、ミシン1B、搬送装置100Bに関する各位置を位置Bとする。搬送装置100Aが布箱102Aから取り出し、ミシン1Aが縫製する布105を布105Aとし、搬送装置100Bが布箱102Bから取り出す布105を布105Bとする。ミシン1Bは、布105Aと布105Bを重ね合わせて縫製する。
搬送システム300は、PC200のCPU201が記憶装置206に記憶するシステム制御処理のプログラムを実行し、ミシン1と搬送装置100の動作を制御して布105を縫製する一連の処理を行う。図15に示すように、作業者が搬送装置100の電源をオンにすると、CPU111は、ROM112から搬送制御処理のプログラムを読み出して実行する。CPU111は、PC200が送信する各種指示の信号の受信を待機する(S41:NO、S48:NO、S51:NO、S53:NO、S56:NO、S41)。図19に示すように、作業者がミシン1の電源をオンにすると、CPU51は、ROM52から縫製制御処理のプログラムを読み出して実行する。CPU51は、PC200が送信する各種指示の信号の受信を待機する(S121:NO、S129:NO、S132:NO、S121)。
図13に示すように、作業者がPC200の電源をオンにすると、CPU201はROM202に記憶するBIOSを立ち上げ、記憶装置206に記憶するOSを読み込んで実行する。作業者がPC200を操作し、システム制御処理の実行を指示すると、CPU201は記憶装置206からシステム制御処理のプログラムを読み出して実行する。
CPU201は、作業者の操作による加工数の入力を受け付ける。加工数は、搬送システム300の稼働によって縫製加工する縫製物の数である。作業者は、予め布箱102A、102Bに、加工数に応じた枚数の布105A、105Bを夫々積み重ねて収容する。CPU201は、作業者が入力した加工数をRAM203に記憶し、加工数を設定する(S1)。CPU201は、全装置(ミシン1A、1B、搬送装置100A、100B)に対して初期配置信号を送信し(S2)、全装置から配置完了信号を受信するまで待機する(S3:NO)。
図15に示すように、搬送装置100A、100BのCPU111は、初期配置信号を受信すると(S41:YES)、処理をS42へ進める。CPU111は、電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、ロッド171を上方へ引き込む。布把持装置150A、150B、150C夫々の把持機構180は上昇する(S42)。CPU111は、電磁弁151を作動してエアシリンダ162を駆動し、支柱163を平面視反時計回りに回動する。布把持装置150A、150B、150C夫々の上下動機構170と把持機構180は、布箱102A、102B、102C上へ移動する(S43)。
CPU111は移動機構120を駆動し、待機時形態にする処理を行う(S44)。CPU111は、アームエンコーダ122のカウント値と、アーム原点センサ123の検出結果に基づき、移動機構120が待機時形態になるまで、複数のアーム駆動モータ121の駆動を制御する(S46:NO、S44)。移動機構120が待機時形態になると(S46:YES)、CPU111は、PC200に配置完了信号を送信する(S47)。CPU111は処理をS41に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図19に示すように、ミシン1A、1BのCPU51は、初期配置信号を受信すると(S121:YES)、処理をS122へ進める。CPU51は、電磁弁38を作動してエアシリンダ69を駆動し、昇降レバーを介して保持体70を上昇する(S122)。保持体70の押え板74は上昇し、補助板5上面から上方に離れて位置する。CPU51は、電磁弁39を作動してエアシリンダ72を駆動し、押え足73を昇降板71に対して左方へ移動する。押え板74は、側方位置へ移動する(S123)。
CPU51は、水平動機構6を駆動して保持体70を夫々の原点位置に移動する処理を行う(S126)。CPU51は、X軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ35の各カウント値と、X方向原点センサ36、Y方向原点センサ37の各検出結果に基づき、保持体70が原点位置に移動するまで、X軸モータ32とY軸モータ34の駆動を制御する(S127:NO、S126)。保持体70が原点位置に移動すると(S127:YES)、CPU51は、PC200に配置完了信号を送信する(S128)。CPU51は処理をS121に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図13に示すように、PC200のCPU201は、全装置から配置完了信号を受信すると(S3:YES)、工程数として0を設定し、RAM203に記憶する(S4)。CPU201は、ミシン1A、1B、搬送装置100A、100Bが行う一連の処理の繰り返し回数を工程数として計数し、各装置の制御を行う。CPU201は、工程数が0でなければ処理をS7に進め(S6:NO)、工程数が0であれば処理をS9に進める(S6:YES)。S4で工程数を0に設定した後の処理であるので、CPU201はS6の処理で、S9に処理を進める。
CPU201は、工程数が加工数と同じでなければ処理をS11に進め(S9:NO)、工程数が加工数と同じであれば処理をS13に進める(S9:YES)。S9の処理で工程数が0の時、CPU201は搬送装置100Aに対して供給開始信号を送信し(S11)、ミシン1Aに対して受け取り準備信号を送信する(S12)。CPU201は、処理をS13に進める。
図15に示すように、搬送装置100AのCPU111は、供給開始信号を受信すると(S48:YES)、布供給処理を実行する(S49)。図16に示すように、CPU111は、電磁弁152を作動して布把持装置150Aの上下動機構170を駆動し、把持機構180を布箱102A内に下降する(S61)。把持機構180の足部183と把持部184は、布箱102A内の最上位の布105Aに当接し、布105Aを把持部184と足部183の間に挟む。脚部182が上位置に移動すると保持機構190が作動し、把持機構180は布105Aを把持した状態を維持する。
CPU111は、電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、把持機構180を上昇する(S62)。把持機構180は、布105Aを把持した状態を維持して布箱102A上方に上昇する。CPU111は、電磁弁151を作動してエアシリンダ162を駆動し、支柱163を平面視時計回りに略90度回動する。上下動機構170と把持機構180は、配置位置Aの上方へ移動する(S63)。
CPU111は、電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、把持機構180を配置位置Aに向けて下降する(S64)。配置位置Aで足部183が補助板5上面に当接し、脚部182が上向きの押圧力を受けると、保持機構190は脚部182の保持を解除する。CPU111は、電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、把持機構180を上昇する(S66)。把持機構180は、布105Aの把持を解除して、配置位置A上方に上昇する。布105Aは、布箱102A内に収容する向きに対し略90度時計回りに回転した向きで、配置位置Aに残る(図21参照)。CPU111は、電磁弁151を作動してエアシリンダ162を駆動し、支柱163を平面視反時計回りに略90度回動する。上下動機構170と把持機構180は、布箱102A上へ移動する(S67)。
CPU111は、移動機構120Aのアーム駆動モータ121を駆動し、帯電装置135を配置位置Aに移動する(S68)。CPU111は予め作成したプログラムに従って移動機構120Aを制御し、帯電装置135を配置位置Aの定位置に移動する。帯電装置135を配置位置Aに移動する時、CPU111は移動機構120Aの第三腕部134を回転する。図21に一点鎖線で示すように、帯電装置135は、待機時形態の向き(図4参照)に対し平面視略90度回転した向きで配置位置Aに位置する。
CPU111は帯電装置135を駆動する(S69)。帯電装置135は静電気を帯び、吸着面136に配置位置Aの布105Aを吸着する。CPU111は、移動機構120Aのアーム駆動モータ121を駆動し、帯電装置135を撮影位置Aに移動する(S71)。「撮影位置」は、撮影装置117で窓部101を介して吸着面136を撮影する為、吸着面136を配置する所定の位置である。CPU111は、窓部101上方且つ補助板5から所定高さの撮影位置Aに、吸着面136を配置する。
CPU111は、撮影装置117で吸着面136を撮影し、RAM113に撮影画像を保存する(S72)。CPU111は、撮影画像を解析する(S73)。CPU111は、撮影画像に対し、例えば、予め用意した吸着面136と布105Aのテンプレート画像を用い、公知のパターン検出処理を行う。図21に示すように、CPU111は、テンプレート画像の吸着面136と布105Aの四隅の位置に基づき、布105Aの四つ角の位置に対応する点P1〜P4で囲う矩形領域で示す基準位置を設定し、例えば点P1を原点とする座標系を設定する。CPU111は、撮影画像の布105Aの四つ角の位置を示す点Q1〜Q4で囲う矩形領域を保持位置として検出する。
図16に示すように、CPU111は、基準位置に対する保持位置の相対的な位置座標と回転角度を演算する(S74)。具体的に、CPU111は、点P1、P2に対する点Q1、Q2の相対的な位置座標に基づき、点P1と点Q1との距離と、線分P1−P2に対する線分Q1−Q2の回転角度を演算によって求める。点P1と点Q1との距離が所定の距離以下であり、且つ、線分P1−P2に対する線分Q1−Q2の回転角度が所定の角度範囲内である場合、CPU111は、保持位置が許容範囲内にあると判断する。保持位置が許容範囲内にある時(S76:YES)、CPU111は、保持位置の演算結果に基づき、移動機構120Aのアーム駆動モータ121を駆動して帯電装置135を受渡位置Aへ移動する(S81)。図21に示すように、例えば保持位置(点Q1〜Q4)は基準位置(点P1〜P4)と一致する時がある。この時、CPU111は、受渡位置Aに設定する点R1〜R4に、基準位置を示す点P1〜P4が重なるように移動機構120Aを制御し、帯電装置135を移動する。帯電装置135は二点鎖線で示す位置に移動し、布105Aを受渡位置Aに正確に配置する。CPU111は、処理をS82に進める。
図22に示すように、例えば保持位置(点Q1〜Q4)は基準位置(点P1〜P4)からずれて位置するが、許容範囲内にある時がある。この時、CPU111は、受渡位置に設定する点R1〜R4に、保持位置を示す点Q1〜Q4が重なるように、保持位置の演算結果に応じて帯電装置135の移動先の位置を修正する。帯電装置135は二点鎖線で示す位置に移動し、布105Aを受渡位置Aに正確に配置する。CPU111は、処理をS82に進める。
図16に示すように、保持位置が許容範囲内にない時(S76:NO)、CPU111は、移動機構120Aのアーム駆動モータ121を駆動し、帯電装置135を調整位置Aへ移動する(S77)。「調整位置」は、帯電装置135が吸着面136のいかなる位置に布105Aを保持していても、帯電装置135が布箱102A、及び針穴13の上方に位置する針棒10等に干渉せずに、布105Aを配置可能な補助板5上の位置である。本実施形態の調整位置Aは、平面視で布箱102A、針板12、吸引機構140、窓部101で取り囲む領域内の位置である。
図23に示すように、CPU111は、保持位置の演算結果に基づき二点鎖線で示す位置に帯電装置135を移動し、調整位置Aに布105Aを配置する。図16に示すように、CPU111は、帯電装置135の駆動を停止する(S78)。帯電装置135は吸着面136に布105Aの吸着を解除し、布105Aを調整位置Aに配置する。CPU111は、保持位置の演算結果に基づき、基準位置と調整位置Aの布105Aとの相対位置を修正する(S79)。図24に示すように、CPU111は、保持位置の演算結果に基づいて移動機構120Aのアーム駆動モータ121を駆動し、帯電装置135を移動する。帯電装置135は、調整位置Aに配置した布105Aの四隅の位置を示す点Q1〜Q4に、基準位置を示す点P1〜P4が重なるように、一点鎖線で示す位置に移動する。
図16に示すように、CPU111は、処理をS69に戻し、帯電装置135を駆動して布105Aを吸着面136に吸着する。CPU111は、保持位置が許容範囲内に位置するまで、S69〜S79の処理を繰り返す。保持位置が許容範囲内に位置したら、CPU111は、帯電装置135を受渡位置Aへ移動し、処理をS82に進める。
CPU111は、電磁弁118を作動し、吸引バルブ145を駆動する(S82)。吸引バルブ145は吸引箱141内のエアを外部に排出し、流通板142の流通穴143を介して吸引面144上の布105Aを吸引する。吸引機構140は、布105Aを受渡位置Aに位置決めする。CPU111は、帯電装置135の駆動を停止する(S83)。帯電装置135は吸着面136への布105Aの吸着を解除する。CPU111は移動機構120Aを駆動し、待機時形態にする処理を行う(S84)。CPU111は移動機構120Aが待機時形態になるまで、アーム駆動モータ121の駆動を制御する(S86:NO、S84)。移動機構120Aが待機時形態になると(S86:YES)、CPU111は、PC200に供給完了信号を送信する(S87)。CPU111は処理を搬送制御処理のS41に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図19に示すように、ミシン1AのCPU51は、受取準備信号を受信すると(S129:YES)、水平動機構6のX軸移動機構とY軸移動機構を駆動して、保持体70を引取位置Aに移動する(S131)。「引取位置」は、針板12の右方の位置であり、押え板74が正位置にある時、保持体70が受渡位置の布105を保持できる位置である。保持体70を移動後、CPU51は処理をS121に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図13に示すように、PC200のCPU201は、S13の処理で、工程数が0でなければ処理をS14に進め(S13:NO)、工程数が0であれば処理をS17に進める(S13:YES)。S13の処理で工程数が0の時、CPU201は、供給開始信号を送信した全ての搬送装置100から、供給完了信号を受信するまで待機する(S17:NO)。CPU201は、工程数が0の時は搬送装置100Aに供給開始信号を送信したので、搬送装置100Aから供給完了信号を受信すると(S17:YES)、処理をS18に進める。図14に示すように、CPU201は、工程数が加工数と同じでなければ処理をS19に進め(S18:NO)、工程数が加工数と同じであれば処理をS21に進める(S18:YES)。S18の処理で工程数が0の時、CPU201はミシン1Aに対して縫製開始信号を送信し(S19)、処理をS21に進める。
図19に示すように、ミシン1AのCPU51は、縫製開始信号を受信すると(S132:YES)、縫製処理を実行する(S133)。図20に示すように、CPU51は電磁弁39を作動してエアシリンダ72を駆動し、押え足73を昇降板71に対して右方へ移動する。押え板74は、正位置へ移動する(S141)。CPU51は、電磁弁38を作動してエアシリンダ69を駆動し、昇降レバーを介して押え足73を押え腕65に対して下降する(S142)。押え板74は受渡位置Aで下降し、布105Aを補助板5との間に挟んで保持する。CPU51は、PC200に受取完了信号を送信する(S143)。
CPU51は水平動機構6のX軸移動機構とY軸移動機構を駆動して、保持体70を縫製開始位置に移動する処理を行う(S147)。CPU51はミシンモータ31を駆動し(S148)、縫製データに従って保持体70を移動し、布105Aを縫製する(S149)。具体的には、CPU51は、ミシンモータ31を駆動して主軸を回転駆動することで、針棒10の上下動と垂直釜の駆動を制御する。CPU51は、主軸の回転駆動と同期した速度で、縫製データが示す回転方向、駆動パルス数のパルスをX軸モータ32、Y軸モータ34に与える。CPU51は、保持体70を針落ち点に対応する位置へ順に移動し、布105Aに縫目を形成する縫製動作を継続する(S151:NO、S149)。
縫製データに基づく縫目を形成し、縫製が完了すると(S151:YES)、CPU51は、ミシンモータ31の駆動を停止する(S152)。CPU51は水平動機構6のX軸移動機構とY軸移動機構を駆動して、保持体70を差出位置Aへ移動する(S153)。「差出位置」は、針板12の左方の位置であり、縫製を終えた布105Aを、補助板5上の「引継位置」に配置可能な位置である。引継位置Aは、ミシン1Aが縫製を終えた布105Aを搬送装置100Bが受け取る位置である。保持体70が差出位置Aに位置し、且つ押え板74が側方位置Aに位置する時の布105Aは引継位置Aに位置する。引継位置Bは、布把持装置150Cが布箱102C上から略180度回動し、ミシン1Bが縫製を終えた布105Cを把持可能な位置である。
CPU51は電磁弁39を作動してエアシリンダ72を駆動し、押え足73を昇降板71に対して左方へ移動する。押え板74は側方位置へ移動する(S154)。押え板74が保持する布105Aは、押え板74と共に引継位置Aに移動する。CPU51は、電磁弁38を作動してエアシリンダ69を駆動し、昇降レバーを介して押え足73を上昇する(S156)。押え板74は引継位置Aで上昇する。
CPU51は水平動機構6のX軸移動機構とY軸移動機構を駆動して、保持体70を基準位置Aに移動する(S158)。基準位置は、原点位置に基づいて予め設定した保持体70の位置である。CPU51は、保持体70が基準位置Aに移動するまでX軸モータ32とY軸モータ34の駆動を制御する(S159:NO、S158)。保持体70が基準位置Aに位置すると(S159:YES)、CPU51は、PC200に縫製完了信号を送信する(S161)。CPU51は処理を縫製制御処理のS121に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図14に示すように、PC200のCPU201は、S21の処理で、工程数が0でなければ処理をS22に進め(S21:NO)、工程数が0であれば処理をS23に進める(S21:YES)。S21の処理で工程数が0の時、CPU201は、受取完了信号の受信と、縫製開始信号を送信した全てのミシン1からの縫製完了信号の受信を待機する(S23:NO、S26:NO、S23)。ミシン1が縫製動作の開始前に送信する受取完了信号を受信すると(S23:YES)、CPU201は、受取完了信号送信元のミシン1に対応する搬送装置100に吸引停止信号を送信する(S24)。即ちCPU201は、ミシン1Aから受取完了信号を受信した時には搬送装置100Aに吸引停止信号を送信し、ミシン1Bから受取完了信号を受信した時には搬送装置100Bに吸引停止信号を送信する。CPU201は、処理をS26へ進める。
図15に示すように、搬送装置100のCPU111は、吸引停止信号を受信すると(S51:YES)、電磁弁118を作動して吸引バルブ145の駆動を停止する(S52)。吸引機構140は、布105Aの吸引を停止する。吸引機構140の吸引が停止しても、ミシン1Aが押え板74と補助板5の間に布105Aを挟んで保持するので、布105Aは受渡位置Aに位置決めした状態を維持する。CPU111は処理をS41に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図14に示すように、PC200のCPU201は、S26の処理で、縫製開始信号を送信した全てのミシン1からの縫製完了信号を受信すると(S26:YES)、処理をS27に進める。CPU201は、工程数が0の時はミシン1Aに縫製開始信号を送信したので、ミシン1Aから縫製完了信号を受信すると、処理をS27に進める。CPU201は、工程数が0でなければ処理をS28に進め(S27:NO)、工程数が0であれば処理をS31に進める(S27:YES)。
S27の処理で工程数が0の時、CPU201は、工程数に1を加算する(S31)。CPU201は、工程数が加工数より大きいか否か判断し(S32)、加工数以下なら処理をS6に戻す(S32:NO)。
以上のように工程数が0の時、CPU201は搬送装置100Aを制御し、布把持装置150Aで布箱102Aから取り出した布105Aを移動機構120Aで受渡位置Aに配置する。CPU201はミシン1Aを制御し、受渡位置Aで布105Aを受け取り縫製する。ミシン1Aは、縫製した布105Aを引継位置Aに配置する。この間、搬送装置100Bとミシン1Bは処理を待機する。
図13に示すように、工程数が1以上加工数未満の時、CPU201はS6〜S32の全ての処理を繰り返して実行する。工程数が0でない時(S6:NO)、CPU201は搬送装置100Bに引継開始信号を送信する(S7)。CPU201は、搬送装置100Bから引継完了信号を受信するまで待機する(S8:NO)。
図15に示すように搬送装置100BのCPU111は、引継開始信号を受信すると(S53:YES)、布引継処理を実行する(S54)。図17に示すように、CPU111は、移動機構120Bのアーム駆動モータ121を駆動し、帯電装置135を引継位置Aへ移動する(S91)。CPU111は予め作成したプログラムに従って移動機構120Bを制御し、帯電装置135を引継位置Aの定位置に移動する。
以下のS92〜S111の処理は、布供給処理のS69〜S86の処理と略同様であるので説明を簡略化する。CPU111は帯電装置135を駆動し、引継位置Aの布105Aを吸着面136に吸着する(S92)。CPU111は、帯電装置135を撮影位置Bに移動する(S93)。CPU111は、撮影装置117で吸着面136を撮影し(S94)、撮影画像を解析する(S96)。CPU111は、基準位置に対する保持位置の相対的な位置座標と回転角度を演算する(S97)。保持位置が許容範囲内にある時(S98:YES)、CPU111は、保持位置の演算結果に基づき、帯電装置135を受渡位置Bへ移動する(S106)。
保持位置が許容範囲内にない時(S98:NO)、CPU111は、帯電装置135を調整位置Bへ移動する(S99)。CPU111は帯電装置135の駆動を停止し、布105Aを調整位置Bに配置する(S101)。CPU111は保持位置の演算結果に基づき、帯電装置135を移動して基準位置と調整位置Bの布105Aとの相対位置を修正する(S102)。CPU111は、布105Aを基準位置に保持可能な位置に帯電装置135を移動する。
CPU111は処理をS92に戻し、帯電装置135により布105Aを吸着面136に吸着する。CPU111は、保持位置が許容範囲内に位置するまで、S92〜S102の処理を繰り返す。保持位置が許容範囲内に位置したら、CPU111は、帯電装置135を受渡位置Bへ移動し、処理をS107に進める。
CPU111は吸引バルブ145を駆動し(S107)、布105Aを受渡位置Bに位置決めする。CPU111は、帯電装置135の駆動を停止し(S108)、吸着面136への布105Aの吸着を解除する。CPU111は移動機構120Bを駆動し、待機時形態にする処理を行う(S109)。CPU111は移動機構120Bを待機時形態にする為、アーム駆動モータ121の駆動を制御する(S111:NO、S109)。
移動機構120Bが待機時形態になると(S111:YES)、CPU111は吸引バルブ145の駆動を停止し(S112)、PC200に引継完了信号を送信する(S113)。CPU111は処理を搬送制御処理のS41に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図13に示すように、PC200のCPU201はS8の処理で、搬送装置100Bから引継完了信号を受信すると(S8:YES)、処理をS9に進める。工程数が加工数と同じでない時(S9:NO)、CPU201は搬送装置100Aに供給開始信号を送信し(S11)、ミシン1Aに受取準備信号を送信し(S12)、処理をS13に進める。ミシン1Aは保持体70を引取位置Aに移動する。搬送装置100Aは布供給処理を実行し、布箱102Aから新たに布105Aを取り出し、受渡位置Aに配置する。搬送装置100Aは処理を完了したらPC200に供給完了信号を送信する。
S13の処理で工程数が0でない時(S13:NO)、CPU201は搬送装置100Bに供給開始信号を送信し(S14)、ミシン1Bに受取準備信号を送信し(S16)、処理をS17に進める。ミシン1Bは保持体70を引取位置Bに移動する。搬送装置100Bは布供給処理を実行し、布箱102Bから取り出した布105Bを受渡位置Bで布105Aに重ねて配置する。搬送装置100Bは処理を完了したらPC200に供給完了信号を送信する。
CPU201は搬送装置100A、100Bに供給開始信号を送信したので、搬送装置100A、100Bの双方から供給完了信号を受信すると(S17:YES)、処理をS18に進める。図14に示すように、CPU201は、S18の処理で工程数が加工数と同じでない時、ミシン1Aに縫製開始信号を送信し(S19)、処理をS21に進める。ミシン1Aは縫製処理を実行し、搬送装置100Aが受渡位置Aに新たに配置した布105Aを受け取り、押え板74に保持して縫製する。ミシン1Aは縫製動作を終え、縫製した布105Aを引継位置Aに配置すると、PC200に縫製完了信号を送信する。
CPU201は、S21の処理で工程数が0でない時、ミシン1Bに縫製開始信号を送信し(S22)、処理をS23に進める。ミシン1Bは搬送装置100Bが受渡位置Bに重ねて配置した布105A、105Bを受け取り、押え板74に保持して縫製する。ミシン1Bは縫製動作を終え、縫製した布105Cを引継位置Bに配置すると、PC200に縫製完了信号を送信する。
CPU201は、ミシン1A、1Bに縫製開始信号を送信したので、ミシン1A、1Bの双方から縫製完了信号を受信すると(S26:YES)、処理をS27に進める。CPU201は、工程数が0ではないので(S27:NO)、搬送装置100Bに回収指示信号を送信する(S28)。CPU201は、搬送装置100Bから回収完了信号を受信するまで待機する(S29:NO)。
図15に示すように、搬送装置100BのCPU111は、回収指示信号を受信すると(S56:YES)、布回収処理を実行する(S57)。図18に示すように、CPU111は、電磁弁151を作動して布把持装置150Cのエアシリンダ162を駆動し、支柱163を平面視時計回りに略180度回動する。上下動機構170と把持機構180は、引継位置Bの上方へ移動する(S171)。
CPU111は電磁弁152を作動して布把持装置150Cの上下動機構170を駆動し、把持機構180を引継位置Bへ向けて下降する(S172)。把持機構180の足部183と把持部184は、引継位置Bで布105Cに当接し、布105Cを把持部184と足部183の間に挟む。脚部182が上位置に移動すると保持機構190が作動し、把持機構180は布105Cを把持した状態を維持する。CPU111は、電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、把持機構180を上昇する(S173)。把持機構180は、布105Cを把持した状態を維持して引継位置B上方に上昇する。
CPU111は、電磁弁151を作動してエアシリンダ162を駆動し、支柱163を平面視反時計回りに略180度回動する。上下動機構170と把持機構180は、布箱102Cの上方へ移動する(S174)。CPU111は電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、把持機構180を布箱102C内に下降する(S176)。足部183が布箱102C内で補助板5上面又は収容済みの布105Cに当接し、脚部182が上向きの押圧力を受けると、保持機構190は脚部182の保持を解除する。CPU111は、電磁弁152を作動して上下動機構170を駆動し、把持機構180を上昇する(S177)。把持機構180は、布105Cの把持を解除して、布箱102C上方に上昇する。布105Cは布箱102C内に残る。CPU111はPC200に回収完了信号を送信する(S178)。CPU111は処理を搬送制御処理のS41に戻し、PC200からの各種指示の信号の受信を待機する。
図14に示すように、PC200のCPU201は、S29の処理で、搬送装置100Bから回収完了信号を受信すると(S29:YES)、工程数に1を加算する(S31)。CPU201は、工程数が加工数以下なら処理をS6に戻す(S32:NO)。
以上のように、工程数が1以上、加工数未満の時、CPU201は搬送装置100Bを制御し、ミシン1Aが縫製した布105Aを移動機構120Bで引継位置Aから受渡位置Bに移動する。CPU201は、搬送装置100Bを制御し、布把持装置150Bで布箱102Bから取り出した布105Bを移動機構120Bで受渡位置Bに移動し、布105Aに重ねて配置する。CPU201はミシン1Bを制御し、受渡位置Aで布105Aと布105Bを受け取り縫い合わせる。ミシン1Bは、縫製した布105Cを引継位置Bに配置する。並行してCPU201は搬送装置100Aを制御し、布把持装置150Aで布箱102Aから取り出した布105Aを移動機構120Aで受渡位置Aに配置する。CPU201はミシン1Aを制御し、受渡位置Aで布105Aを受け取り縫製する。ミシン1Aは、縫製した布105Aを引継位置Aに配置する。CPU201は搬送装置100Bを制御し、ミシン1Bが縫製した布105Cを、布把持装置150Cで布箱102Cに収容する。
図13に示すように、S6〜S32の処理を繰り返し、工程数が加工数と同じになった時、CPU201は、S11、S12、S19の処理を省いて実行する。S7の処理で、CPU201は搬送装置100Bに引継開始信号を送信する。搬送装置100Bは、ミシン1Aが引継位置Aに配置した布105Aを受渡位置Bに移動し、PC200に引継完了信号を送信する。CPU201は、S14の処理で搬送装置100Bに供給開始信号を送信し、S16の処理でミシン1Bに受取準備信号を送信する。ミシン1Bは保持体70を引取位置Bに移動する。搬送装置100Bは布105Bを受渡位置Bで布105Aに重ねて配置する。配置後、搬送装置100BはPC200に供給完了信号を送信する。
CPU201は、S22の処理でミシン1Bに縫製開始信号を送信する。ミシン1Bは受渡位置Bの布105A、105Bを押え板74で保持し、縫製する。縫製後、ミシン1Bは布105Cを引継位置Bに配置し、PC200に縫製完了信号を送信する。CPU201は、S28の処理で搬送装置100Bに回収指示信号を送信する。搬送装置100Bは、布把持装置150Cで布105Cを布箱102C内に収容し、PC200に回収完了信号を送信する。この間、搬送装置100Aとミシン1Aは処理を待機する。S31の処理で、CPU201は工程数に1を加算する。工程数は加工数より大きくなる(S32:YES)。CPU201はシステム制御処理の実行を終了する。
以上説明したように、把持機構180が下降すると、足部183と把持部184の先端部188は布105に当接する。把持機構180が更に下降すると、脚部182は下位置から上位置に移動し、把持部184は開放位置から閉鎖位置へ向けて回動する。把持部184は、布105に当接する部分を湾曲面186に移行し、安定した押圧力を布105に加えることで、一枚の布105を手繰り寄せることができる。把持部184は、先端部188を足部183の上方へ移動し、湾曲面186と足部183の上面との間に布105を把持する。故に布把持装置150は、上下動する脚部182と、回動する把持部184とを用いた簡易な構成で、重ねて配置した複数の布105から一枚の布105を確実に分離することができる。
脚部182は、圧縮ばね179の付勢によって、布105を確実に下向きに押さえることができる。把持部184は、捻りばね175の付勢によって、湾曲面186から更に安定した押圧力を布105に加えることができるので、布105を確実に手繰り寄せることができる。故に布把持装置150は、重ねて配置した複数の布105から一枚の布105を確実に分離することができる。
把持機構180が布105を把持する時、脚部182は上位置に位置し、把持部184は閉鎖位置に位置する。保持機構190が脚部182を上位置に保持すると、足部183は把持部184の先端部188に当接し、把持部184を閉鎖位置に維持する。故に、上下動機構170が把持機構180を上方に移動しても、把持機構180は布105を把持した状態を維持できる。
保持機構190は、機械的な構成によって、脚部182が支持部181に対して一回の上下動を行う毎に、脚部182が上下動可能な状態と、脚部182を上位置に保持する状態とを切り替える。上下動機構170が把持機構180を上下動する時、脚部182は、足部183が布105に当接した状態で支持部181が下降すると上昇し、支持部181が上昇すると下降する。即ち保持機構190は、上下動機構170による把持機構180の上下動に機械的に連動し、脚部182の保持と上下動を切り替えることができる。故に布把持装置150は、保持機構190の作動に別途駆動源を設ける必要がないので、構成の簡易化を図り、コストを削減することができる。
保持機構190は、ピン192と溝状の案内部194、制限部195及び溝部198との係合によって動作し、脚部182が上下動可能な状態と、脚部182を上位置に保持する状態とを確実に切り替えることができる。
足部183の長穴154と螺子153は、布105の厚み、材質等に応じて足部183と把持部184の先端部188との間隙を調整できる。故に把持機構180は、重ねて配置した複数の布105から一枚の布105を確実に分離することができる。
パッド176によって把持部184が布105に対して滑りにくくなることで、把持機構180は、重ねて配置した複数の布105から一枚の布105を確実に分離することができる。
パッド103の摩擦力がパッド176の摩擦力より小さいので、把持部184が布箱102から最後の一枚の布105を把持する時、パッド176は、パッド103に抗して布105を手繰り寄せることができる。故に把持機構180は、最後の一枚の布105を確実に把持することができる。
把持機構180は、複数組の把持部184と足部183によって、布105上の複数箇所で布105を把持することができる。故に把持機構180は、重ねて配置した複数の布105から一枚の布105を確実に分離することができる。
本発明は上記実施形態の他に種々の変更が可能である。搬送システム300はミシン1と搬送装置100を一台ずつ備えてもよいし、複数台(三台以上)ずつ備えてもよい。搬送システム300がミシン1と搬送装置100を複数台ずつ備える時、必ずしも全てのミシン1と搬送装置100が縫製動作の各工程を行う必要はなく、一部のミシン1と搬送装置100の電源をオフにしてもよい。布把持装置150の回動機構160、上下動機構170はモータ、アクチュエータ等を用いて電動で駆動してもよい。保持体70の上下動、押え板74の左右動はエアシリンダに限らず、モータ、アクチュエータ等を用いて電動で駆動してもよい。
保持機構190は、支持棒191の上端部を支持部181の上部にナット177で固定し、カム部材193が支持棒191を中心に周方向に回転可能であり、切替部材197が軸部158の軸心を中心に周方向に回転可能である。本発明はこれに限らず、支持棒191の上端部を支持部181の上部にて回動可能に支持し、切替部材197を足部183の上面に固定してもよい。該場合も、保持機構190は、脚部182が支持部181に対して一回の上下動を行う毎に、脚部182が上下動可能な状態と、脚部182を上位置に保持する状態とを切り替えることができる。
把持部184は捻りばね175で支持部181に対して下方に付勢したが、自重で閉鎖位置から開放位置に移動してもよい。脚部182は、ピン192が案内部194に係合する時、圧縮ばね179で支持部181に対して下方に付勢したが、自重で上位置から下位置に移動してもよい。
把持部184の形状は鉤爪状に限らない。把持部184は、例えばローラ状の部材であってもよい。把持機構180が布105上に下降してローラ部材が布105に当接した時、ローラ部材が回動して布105を屈曲し、足部183とローラ部材との間に屈曲部分を挟んで把持する構成であってもよい。この場合、ローラ部材は例えばギア等によって脚部182に連結し、脚部182が下位置から上位置に移動する時、脚部182の移動に従動して回転すればよい。
足部183は、長穴154と螺子153との位置関係に応じて把持部184との間隙を調整したが、脚部182から側方に突出する大きさの異なる足部に付け替えることによって、把持部184との間隙を調整してもよい。支持部181は、把持部184の回転中心である軸棒185を支持する支持穴を長穴状に形成してもよい。この場合、支持部181は、把持部184を脚部182に近接又は離間して支持することで、足部183と把持部184との間隙を調整してもよい。支持部181は、把持部184の回転中心である軸棒185を支持する支持穴を複数設けてもよい。この場合、支持部181は、軸棒185の支持穴の選択によって把持部184を脚部182に近接又は離間して支持することで、足部183と把持部184との間隙を調整してもよい。
把持部184は、先端部188表面から湾曲面186にかけてパッド176を設けたが、これに限らない。例えば、把持部184は、先端部188表面から湾曲面186にかけて複数の突起部を設け、布105を突起部に引っ掛けることで、布105に対する摩擦力を確保してもよい。把持部184は、回動方向に屈曲する鉤爪状でなく、湾曲面を有する側面視略楕円状でもよい。把持部184は、先端部188と基端部189との間に、下方向きに湾曲する湾曲面186を有さず、略平面であってもよい。
把持機構180は、脚部182と把持部184の組を二組設け、二カ所で布105を把持する。これに限らず、脚部182と把持部184の組は一組であっても、三組以上あってもよい。図31に示すように、把持機構480は、一つの脚部482に対し二つの把持部484を設けてもよい。支持部481は脚部482を左右方向の中央に設け、把持部484を左右両端に支持する。脚部482は底部に、左右両側に突出する足部483を設ける。足部483は、左右両端の把持部484の側に突出する。把持機構480は、二つの把持部484と一つの脚部482で布105の二カ所を把持できる。把持機構480は、脚部482が下位置から上位置に移動した時、脚部482を上位置に保持することができる保持機構を備えてもよい。該保持機構は、保持機構190と同様の構成であればよい。
上記説明で、圧縮ばね179は本発明の「第一付勢部材」に相当する。捻りばね175は本発明の「第二付勢部材」に相当する。ピン192は本発明の「突出部材」に相当する。圧縮ばね178は本発明の「カム付勢部材」に相当する。螺子153と長穴154は本発明の「調整機構」に相当する。パッド176は本発明の「掴み部」に相当する。布箱102は本発明の「配置部」に相当する。パッド103は本発明の「抑制部材」に相当する。