JP2017169655A - 医療用チューブの製造方法及び医療用チューブ - Google Patents

医療用チューブの製造方法及び医療用チューブ Download PDF

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Abstract

【課題】生物学的物質又は医療用液体が付着しにくい医療用チューブの製造方法及び医療用チューブを提供することである。
【解決手段】本発明に係る医療用チューブの製造方法は、微細凹凸構造が形成された内周面を構成する一層又は複数の層により構成された内層と、前記内層より径方向外側に一層又は複数の層により構成される外層とを備える医療用チューブの製造方法であって、前記内層を形成するシート部材を、前記外層のうち前記内層に積層される層を少なくとも形成する外側チューブに挿入する工程と、前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、前記シート部材と前記外側チューブとを一体化する工程と、を含む。
【選択図】図7

Description

本発明は、医療用チューブの製造方法及び医療用チューブに関する。
従来から、自発呼吸困難な患者や、自力で痰の排出が困難な患者等に対し、体外と気管内を直接つなぎ、気道を確保すると共に、呼吸や痰等の異物の吸引を行うことが可能な気管チューブが知られている。
このような気管チューブは、例えば特許文献1に開示されている。具体的に特許文献1には、基端部から先端部にかけて貫通する気道確保用ルーメンを備えた管腔体と、前記管腔体の基端部に形成されたコネクタ部と、前記管腔体の先端側部分の外周に形成され膨張収縮が可能なカフと、前記管腔体を構成する壁部に形成され前記コネクタ部の表面部と前記カフ内とを連通させるカフ膨張用ルーメンと、前記管腔体を構成する壁部に形成され前記コネクタ部の表面部と前記管腔体の表面部とを連通させる吸引用ルーメンとを備えた気管切開チューブが開示されている。
特許文献1に開示の気管チューブでは、コネクタ部の表面から管腔体の表面における所定部分に連通する吸引用ルーメンを管腔体の壁部に形成して、コネクタ部側から吸引することにより、管腔体と気管との間に溜まった痰等を吸引用ルーメンを介して外部に排出することができるようにしている。
また、引用文献1に開示の気管チューブでは、前記気管切開チューブの表面と、前記管腔体の気道確保用ルーメンを形成する内面とに、湿潤時に表面潤滑性を発現する被膜が形成されていることを特徴としている。このような構造とすることにより、患者が呼吸をする際の息やつば等によって、管腔体の内面が湿ると表面潤滑性が発現して、管腔体の内面に痰等が付着し難くなるということが記載されている。
特開2006−102099号公報
しかしながら、本発明者らが検討した限りでは、特許文献1に記載された気管切開チューブでは、痰の付着抑制に関して、更なる改良の余地が残されていることが知見された。また、気管チューブ以外で用いられる医療用チューブについても、痰等の生物学的物質又は輸液剤等の医療用液体の付着抑制について更なる改良の余地が残されている。
そこで、本発明は、生物学的物質又は医療用液体が付着しにくい医療用チューブの製造方法及び医療用チューブを提供することを目的とするものである。
本発明の第1の態様としての医療用チューブの製造方法は、微細凹凸構造が形成された内周面を構成する一層又は複数の層により構成された内層と、前記内層より径方向外側に一層又は複数の層により構成される外層とを備える医療用チューブの製造方法であって、前記内層を形成するシート部材を、前記外層のうち前記内層に積層される層を少なくとも形成する外側チューブに挿入する工程と、前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、前記シート部材と前記外側チューブとを一体化する工程と、を含む。
また、前記微細凹凸構造が形成された表面が内面になるように前記シート部材を円筒状に曲げて、又は前記シート部材を折りたたんで、前記外側チューブに挿入することが好ましい。
また、固定冶具に前記シート部材の一端部を固定することによって、前記シート部材の形状を固定して前記シート部材を前記外側チューブに挿入することが好ましい。
また、前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、前記シート部材の両端部を接合して前記シート部材をチューブ形状にする工程を更に含むことが好ましい。
また、前記シート部材の前記両端部を外部から加熱することにより前記両端部を接合することが好ましい。
また、前記シート部材が前記外側チューブに一体化された状態において、少なくとも一部が湾曲した湾曲棒部材を前記シート部材の内側に挿入することにより、前記湾曲棒部材に沿って前記シート部材及び外側チューブの少なくとも一部を湾曲させることが好ましい。
また、前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、前記外側チューブの外部から力を加えることによって前記シート部材及び前記外側チューブの少なくとも一部を湾曲させる、ことが好ましい。
また、形状維持冶具が前記シート部材の内側に位置する状態で、前記シート部材と前記外側チューブとを一体化することが好ましい。
また、前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、外部から加熱することにより、前記外側チューブが縮径して前記シート部材の外面に前記外側チューブの内面が密着して、前記シート部材と前記外側チューブとが一体化されることが好ましい。
また、前記微細凹凸構造にフッ素コーティングを施す工程を更に含むことが好ましい。
本発明の第2の態様としての医療用チューブは、凸部の中心間の距離が10μm〜100μm、かつ、前記凸部の頂面の最大幅が0.01μm〜50μm、かつ、前記凸部の最大高さが数μm〜数百μm、である微細凹凸構造が内面に形成されており、前記微細凹凸構造の表面にフッ素コーティングが施されている。
本発明に係る製造方法によると、生物学的物質又は医療用液体が付着しにくい医療用チューブを製造することが可能である。また、本発明に係る医療用チューブによると、生物学的物質又は医療用液体を付着しにくくすることが可能である。
本発明の一実施形態としての医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブを気管内に留置した状態を示す図である。 図1に示す気管チューブにおけるチューブ本体を単体で示す斜視図である。 図2に示すチューブ本体の内面に形成された微細凹凸構造を示す拡大断面図である。 図1に示す気管チューブを基端側から見た図である。 図2に示すチューブ本体の中心軸線方向に垂直な方向の断面図である。 図5に示す内層の内周面の展開図の一部を拡大した図である。図6(a)はラインアンドスペース構造を示す図であり、図6(b)はピラー構造を示す図である。 本発明の一実施形態としての医療用チューブの形成フローを示す図である。 金型による微細凹凸構造の転写を示す図である。図8(a)はシート部材に金型を押し当てる直前の状態を示す図である。図8(b)はシート部材に金型を押し当てている状態を示す図である。図8(c)は微細凹凸構造が転写されたシート部材を示す図である。 シート部材を曲げる方法を説明する図である。図9(a)はシート部材を曲げる方向を示す図である。図9(b)は円筒状に曲げられたシート部材を示す図である。図9(c)は芯棒冶具を用いてシート部材を曲げる方法を示す図である。 円筒状に曲げられたシート部材を長軸に垂直な方向から見た図である。 折りたたまれたシート部材を挿入する方向に垂直な方向から見た図である。 固定冶具の使用例を示す図である。図12(a)は円筒状に曲げられたシート部材を固定する例を示す図である。図12(b)は図12(a)の一部縦断面図である。 シート部材の両端部の接合を説明する図である。 図14(a)はチューブ本体に区画された中空部が2つに分割されている例を示す。図14(b)は外側チューブに第1〜第3ルーメンの原形となる溝が形成されている例を示す。図14(c)は外側チューブに第1〜第3ルーメンが形成されている例を示す。 内側チューブを外側チューブに挿入する例を示す図である。 少なくとも一部が湾曲した湾曲棒部材が内側に挿入されて一部が湾曲した、一体化されたシート部材及び外側チューブの縦断面図である。
以下、本発明に係る医療用チューブの製造方法の実施形態について、図1〜図16を参照して説明する。ここでは、本発明に係る医療用チューブの製造方法の一例として、気管チューブに用いられる医療用チューブとしてのチューブ本体の製造方法について説明する。なお、各図において共通の部材、部位には、同一の符号を付している。
<気管チューブ>
初めに、本発明に係る医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブについて説明する。図1は、本発明の一実施形態としての医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブ1を気管内に留置した状態を示す図である。図2は、気管チューブ1における医療用チューブとしてのチューブ本体2を単体で示す斜視図である。図3は図2に示すチューブ本体2の拡大断面図であり、チューブ本体2の内面に形成された微細凹凸構造100を示す。図4は、気管チューブ1を基端側から見た図である。図1に示すように、気管チューブ1は、チューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面上に取り付けられた収縮及び拡張可能なカフ3と、チューブ本体2の一方の端部に装着されたフランジ部材4とを備える。
図2に示すように、チューブ本体2は、先端5を含む先端部8と、チューブ本体2の内周面の中心軸線O1の延在方向(以下、単に「中心軸線方向A」と記載する。)において先端部8の基端6側で連続し、外周面上にカフ3が取り付けられるカフ装着部9と、このカフ装着部9の基端6側で連続する湾曲部10と、この湾曲部10の基端6側で連続し、基端6を含む基端部11と、を備える。
チューブ本体2は、中心軸線方向Aにおいて先端5から基端6まで貫通する中空部7を区画している。また、チューブ本体2は、壁内に形成され、基端面に区画された基端開口から中心軸線方向Aに延在する第1〜第3ルーメン12〜14を備える。中空部7により、気管チューブ1が外方から気管内に挿入されて留置されている状態において、気道を確保することができる。第1ルーメン12は、第1基端開口12aからカフ3よりも基端6側に設けられた吸引口まで延在しており、気管内に留置されている状態のカフ3よりも気管上流側(顎側)に貯留する痰、唾液、誤嚥物、血液などの異物Xを吸引して除去するために用いられる。第2ルーメン13は、第2基端開口13aからカフ3よりも先端5側に設けられた吸引口まで延在しており、気管内に留置されているカフ3よりも気管下流側(気管分岐部側)で、先端部8近傍に貯留する痰等の異物Xを吸引して除去するために用いられる。第3ルーメン14は、第3基端開口14aからカフ3の位置に設けられた連通口14bまで延在しており、カフ3を収縮及び拡張させるために用いられる。なお、壁内に区画された小径の第1〜第3ルーメン12〜14についても中空部であるが、説明の便宜上、気道を確保するための大径の中空部7と区別するため、ここでは「ルーメン」と記載する。
図3に示すように、医療用チューブとしてのチューブ本体2の内周面には、内面全体に微細凹凸構造100が形成されている。微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸が形成された表面を有する。微細凹凸構造100領域は痰の付着を抑制する性質(以下、「撥痰性」と記載する。)を有する。チューブ本体2の内周面に微細凹凸構造100を形成する方法の詳細は後述する。微細凹凸構造100は、チューブ本体2の内周面の全面に亘って形成してもよく、また、内周面の一部のみに形成してもよい。
また、微細凹凸構造100の表面にはフッ素コート層200が形成されている。フッ素コート層200はフッ素樹脂を主成分とするものであれば特に限定されない。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等を用いることができる。
チューブ本体2の構成材料としては、例えば、シリコーン、軟質ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂を用いることができる。その中でも、成形が容易であるという点で、軟質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂を用いることが好ましい。
カフ3は、気管チューブ1を気管内の所定の位置で留置させるために用いられる。具体的に、カフ3は、第3ルーメン14を通じて流体が供給されると拡張し、流体が吸引されると収縮する。カフ3が拡張した状態において、カフ3の外面は気管内壁と密着する。カフ3の外面と気管内壁との摩擦力等によって、カフ3が気管内周面に挟持される。このようにして、気管内でのカフ3の位置が固定され、気管チューブ1を気管内の所定の位置で留置させることができる。
フランジ部材4は、図1に示すようにチューブ本体2の基端部11(図2参照)に装着されており、チューブ本体2を体外から気管内に挿入して気管チューブ1を留置した際に、皮膚に当接することで、先端部8を気管内の適切な位置に固定する。図1及び図4に示すように、フランジ部材4は、チューブ本体2の基端部11が内挿され、チューブ本体2と嵌合することでチューブ本体2に対して装着される円筒状の筒部17と、この筒部17の外壁から径方向外側に向かって突出し、気管チューブ1を留置した状態で皮膚に当接する板状のフランジ部18と、を備える。なお、図4では、説明の便宜上、チューブ本体2の第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14の位置を二点鎖線により示している。
図4に示すように、筒部17には、フランジ部18よりも基端側の位置に、上述した第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14それぞれと連通する連通孔17a、17b、17cが区画されている。筒部17内にチューブ本体2の基端部11が嵌合することにより装着されている状態において、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14は、対応する連通孔17a、17b、17cを介して、気管チューブ1の外方と連通しており、この連通孔17a、17b、17cそれぞれに、チューブ本体2とは別の医療用チューブが接続されている。
具体的に、第1ルーメン12は、筒部17に形成された対応する連通孔17aを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17aに一端が嵌合した医療用チューブとしての吸引用チューブ19aの他端にシリンジまたは吸引ポンプ等を接続して吸引を行えば、体外から第1ルーメン12を通じて痰等の異物Xを吸引することができる。また、第2ルーメン13についても、第1ルーメン12と同様であり、医療用チューブとしての吸引用チューブ19b、筒部17に形成された対応する連通孔17b及び第2ルーメン13を通じて異物Xを吸引することができる。
更に、第3ルーメン14は、筒部17に形成された対応する連通孔17cを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17cに一端が嵌合した医療用チューブとしてのカフ用チューブ19cの他端にシリンジ等を接続すれば、体外にあるシリンジ等の操作により、カフ3の環状空間への流体の供給や吸引を行うことができ、それによりカフ3の拡張及び収縮を操作することができる。
なお、フランジ部材4の筒部17は、チューブ本体2の基端部11と同心円状に装着されており、チューブ本体2の周方向Bにおける第1ルーメン12の位置、第2ルーメン13の位置、及び第3ルーメン14の位置は、筒部17の対応する連通孔17a、17b、及び17cの周方向Bの位置の近傍とされている。そのため、各連通孔17a、17b、17cを短くすることができ、筒部17の連通孔17a、17b、及び17cの構成が複雑化することが抑制される。また、図4に示すように、吸引用チューブ19a及び19b、並びにカフ用チューブ19cは、図4の平面視において、各連通孔17a、17b、17cからフランジ部18の突設されている方向に延在するように接続され、先端部8側には延在していない。このように接続することにより、気管チューブ1が気管内に留置された状態において、吸引用チューブ19a及び19b、並びにカフ用チューブ19cが、患者の顎や首元にぶつかることが抑制され、気管チューブ1が留置される患者の不快感を軽減することができる。
フランジ部材4の構成材料としては、例えば、チューブ本体2と同様の材料で形成することができる。
<チューブ本体2の製造方法>
次に、医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法を説明する。図5に、医療用チューブとしてのチューブ本体2の中心軸線方向A(図2参照)に垂直な方向の断面図を示す。なお、図5は、チューブ本体2の中心軸線方向Aにおいて、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14が全て存在する位置での断面図である。本製造方法は、図5に示すように、内層30と、外層40とを備える医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法である。内層30は、一層(単層)であり、図3に示すような微細凹凸構造100が形成された内周面31を有している。内層30は、一層又は複数の層により構成される。外層40は内層30より径方向外側に設けられる。外層40は、内層30と同様に、一層又は複数の層により構成される。本実施形態の外層40は、内層30の径方向外側に積層される最も内側の層41(以下、「内側層41」と記載する。)を含む複数の層により構成されている。なお、図5では、内側層41と、この内側層41の径方向外側に位置する別の一層又は別の複数の層と、の間の境界を破線により示している。また、図5に示すように、本実施形態では、内層30を一層(単層)として説明する。
内層30の内周面31に形成される微細凹凸構造100の凹凸パターンの例を示す。図6は、内周面31の展開図の一部を拡大した図であり、図の横方向がチューブ本体2の中心軸線方向Aを示し、縦方向がチューブ本体2の周方向Bを示す。上述のように、微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸構造である。凹凸構造はいくつかの凹凸パターンを取り得る。例えば、図6(a)に示すように、チューブ本体2の中心軸線方向Aに延在する凸リブ101と凹溝102とが、周方向Bにおいて交互に配置された構造(以下、単に「ラインアンドスペース構造」と記載する。)とすることができる。また、例えば、図6(b)に示すように、円錐台形状の突起103が所定の配列で配置された構造(以下、単に「ピラー構造」と記載する。)とすることができる。なお、ラインアンドスペース構造は、周方向Bに延在する凸リブ101と凹溝102とが、中心軸線方向Aにおいて交互に配置される構造であってもよい。但し、ラインアンドスペース構造を有する面上の痰などの異物X(図1参照)は、凸リブ101及び凹溝102の延在方向に移動し易いため、異物Xがチューブ本体2内に留まることがないように、凸リブ101及び凹溝102を中心軸線方向Aに延在する図6(a)に示す構成とすることが好ましい。また、ピラー構造を構成する突起103の形状は、円錐台形状に限定されるものではなく、円錐形状、円柱形状、三角錐形状又はその他の多角錐形状、角柱形状等とすることもできる。
なお、上述したように、微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸構造であり、この条件の下、隣接する、ラインアンドスペース構造における凸リブ101又はピラー構造における突起103(以下、凸リブ101及び突起103を単に「凸部」と記載する。)の中心間の距離は、10μm〜100μmとすることが好ましく、10μm〜50μmとすることがより好ましい。100μmより大きいと、痰が凸部間に入り込み易くなり、撥痰性の効果が小さくなる。また、10μm未満の場合には、痰と凸部との接触面積が大きくなり、撥痰性の効果が小さくなる。
また、微細凹凸構造100のサイズが上記条件の下では、各凸部の頂面105(図3参照)の最大幅は、0.01μm〜50μmとすることが好ましく、1μm〜50μmとすることがより好ましく、1μm〜30μmとすることが更により好ましく、1μm〜20μmとすることが特に好ましい。50μmより大きいと、痰との接触面積が大きくなり、撥痰性の効果が小さくなる。また、0.01μm未満の場合には、凸部の成形が難しく、形状安定性が低下するおそれがある。なお、微細凹凸構造100がラインアンドスペース構造の場合、各凸部の頂面105(図3参照)の最大幅とは、凸リブ101の延在方向と直交する方向の頂面105の最大長さとなる。
更に、微細凹凸構造100のサイズが上記条件の下、微細凹凸構造100の凸部の最大高さを数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズとする。
具体的に、図7は、医療用チューブとしてのチューブ本体2の形成フローを示している。本製造方法は、微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層200を形成する工程と(P1)と、上述の内層30を形成するシート部材32を、外層40のうち内層30に積層される層を少なくとも形成する外側チューブ22(後に参照する図15等参照)に挿入する工程(P2)と、シート部材32が外側チューブ22に挿入された状態においてシート部材32と外側チューブ22とを一体化する工程(P3)とを含む。なお、外層40が一層により構成される場合、外側チューブ22は外層40全体を形成する。また、外層40が複数の層により構成される場合、外側チューブ22は内層30に積層される層、すなわち、外層40のうちチューブ本体2の径方向の最も内側の層41(内側層41)を少なくとも形成する(図5参照)。以下、シート部材32及び上記各工程について詳細を説明する。
シート部材について説明する。シート部材は所定の厚みを有するシート状の部材である。シート部材の厚さは好ましくは0.1mm〜1.0mmであり、より好ましくは0.15mm〜0.5mmとする。また、シート部材が、厚み方向から見た場合に矩形形状を有する場合には、シート部材の表面の短辺の長さを、外側チューブ22の内周と略等しい長さとし、長辺の長さを、外側チューブ22の軸方向における長さ以上の長さとする。このようにすれば、シート部材を、外側チューブ22の軸方向の全域及び周方向の全域に亘って、外側チューブ22内に設けることができる。但し、シート部材の表面の寸法は、上述のものに限られるものではなく、例えば、後述するように、シート部材を外側チューブに挿入する際、シート部材の表面の短辺の長さを外側チューブの内径よりも長くし、シート部材を二重に重ねるようにして外側チューブに挿入してもよい。また、シート部材と外側チューブとを一体化する際、外側チューブを熱により縮径させる方法を用いることにより、内側チューブの外径を、外側チューブの内径よりも小さくすることも可能である。すなわち、シート部材の表面の短辺の長さを、外側チューブ22の円周より短くしてもよい。
シート部材の構成材料としては、例えば軟質ポリ塩化ビニルなど、上述したチューブ本体2の構成材料を用いることができる。
図8は金型50による微細凹凸構造100の転写を示す。微細凹凸構造100は予め微細凹凸パターン52が形成された金型50による転写により形成することができる。具体的に、図8(a)に示すように、シート部材32のいずれか一方の表面33に、金型50を押し当てる(図8(a)の矢印51参照)。金型50のうちシート部材32に押し当てられる側の表面には、微細凹凸パターン52が形成されている。この微細凹凸パターン52は、シート部材32に形成される、所望の凹凸パターンを有する微細凹凸構造100と凹凸の向きが逆向きのものである。図8(b)に示すように、金型50をシート部材32に押し当てた状態(図8(b)の矢印53参照)で、加熱する。このようにすることで、金型50の微細凹凸パターン52がシート部材32の表面33に転写され、図8(c)に示すように、微細凹凸パターン52と凹凸の向きが逆向きの微細凹凸構造100がシート部材32の表面33に形成される。
[微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層200を形成する工程(P1)]
次に、微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層200を形成する工程(P1)について説明する。シート部材32の表面33に形成された微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施し、フッ素コート層200を形成する。具体的に説明する。まず、上述した、表面33に微細凹凸構造100が形成されたシート部材32を用意する。次に、微細凹凸構造100表面に、上述したフッ素樹脂を含むフッ素コーティング剤を塗着する。フッ素コーティング剤を塗着する方法としては、好ましくは、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒中にシート部材32を浸漬する、ディップコーティングがよい。但し、ディップコーティングに限定されるものではなく、例えば、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒を表面33に滴下して微細凹凸構造100が形成されている領域全域に拡げる方法や、スプレーで表面33に吹き付ける方法、あるいは箆部材を用いて表面33に塗る方法でもよい。次に、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒が塗着された状態でシート部材32を乾燥させる。溶媒が除去されフッ素コーティング剤の皮膜が形成される。次に、フッ素コーティング剤を硬化し、表面33との結合を形成する。フッ素コーティング剤を硬化する態様の一例として、例えば、シート部材32をオーブン(不図示)に投入し、オーブン内で所定時間、所定の温度で加熱して硬化することができる。設定温度は、好ましくは、約70〜100度、より好ましくは80度とし、加熱時間は好ましくは約30〜90分とする。このようにして、微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層200を形成する。
微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施すことにより、シート部材32の表面33の撥水性、撥油性、耐摩擦性を向上させることができると共に、表面33に形成された微細凹凸構造100の強度を向上させることができる。そのため、後述する、シート部材32を外側チューブ22に挿入する際や、形状維持冶具をシート部材32の内側に位置させた状態でシート部材32と外側チューブ22とを一体化する際等に、微細凹凸構造100を損傷しにくくすることができる。
[シート部材32を外側チューブ22に挿入する工程(P2)]
次に、シート部材32を外側チューブ22に挿入する工程(P2)について説明する。図15は、シート部材32を外側チューブ22に挿入する例を示す図である。図15に示すように、シート部材32を外側チューブ22の一端から他端に向かって、外側チューブ22の内部に挿入していく。外側チューブ22内で、シート部材32を外側チューブ22に対して相対的に移動し、外側チューブ22内の所定の位置まで移動させる。
シート部材32を変形して、外側チューブ22に挿入する。変形の態様の一例として、例えば、円筒状に曲げることや、折りたたむことができる。図9はシート部材32を円筒状に曲げる方法を説明する図である。具体的に、微細凹凸構造100が形成された表面33が内面になるようにシート部材32を円筒状に曲げる。シート部材32を曲げる際は、図9(a)、(b)に示すように、シート部材32の端部34のうち表面33の短辺を含む端部34c及び34dが円形状になるように曲げる(図9(a)の矢印54参照)。図10は、円筒状に曲げられたシート部材を長軸に垂直な方向から見た図であり、曲げ方についてのいくつかの例を示す図である。好ましくは、図10(a)に示すように、シート部材32の表面33の長辺を含む端部34a及び34bを互いに突き合わせるように曲げる。一方、図10(b)に示すように、シート部材32の表面33の長辺を含む端部の一方34aと他方34bとの間に隙間(図10(b)の矢印参照)を設けるように曲げてもよい。好ましくは、隙間は1mm以下とする。また、図10(c)に示すように、二重に重なる部分があってもよく、更に、図10(d)に示すように、三重以上、多重に重なるように曲げてもよい。なお、図10(c)では、シート部材32が二重に重なる部分を破線円により示している。
好ましくは、シート部材32を円筒状に曲げる際、図9(c)に示すように、例えば円柱状の芯棒冶具57を用い、芯棒冶具57の外面にシート部材32を巻き付け、芯棒冶具57の外面の形状に沿って円筒状に曲げる。なお、芯棒冶具57の具体例には、中実又は中空の金属棒や樹脂棒が挙げられる。この他に、芯棒冶具57の具体例として、自己拡張型の網状筒部材や渦巻き状や螺旋状のバネ部材等の弾性部材、空気圧や水圧等で拡張するバルーン、等の拡張体が挙げられる。
図11は折りたたまれたシート部材を挿入する方向に垂直な方向から見た図である。折りたたみ方の態様の一例として、図11に示すように、シート部材32を外側チューブ22に挿入する方向(以下、「挿入方向」と記載する。)に垂直な断面が凹型形状になるように折りたたむことができる。このようにすることで、シート部材32の挿入方向に垂直な断面の外径を外側チューブ22の内径よりも小さくすることができるため、外側チューブ22に挿入しやすくなると共に、凹型形状としたシート部材32は復元力により円筒形状に戻り易いため、外側チューブ22への挿入後、シート部材32を外側チューブ22の内面に沿うような形状に戻しやすい。但し、シート部材32を外側チューブ22に挿入でき、かつシート部材32が外側チューブ22に挿入された状態においてシート部材32と外側チューブ22とを一体化して、チューブ本体2の内周面31の所望の位置に微細凹凸構造100を配置できるようなものであれば任意の折りたたみ方でよい。
好ましくは、シート部材32の一端部を固定冶具に固定することによって、シート部材32の形状を固定してシート部材32を外側チューブ22に挿入する。図12は固定冶具の使用例を示す。図12では、固定冶具として、上述の芯棒冶具57をそのまま利用しているが、芯棒冶具57に代えて、別の固定冶具を用いてもよい。図12(a)、(b)に示すように、固定冶具としての芯棒冶具57の一方の端部には、シート部材32を芯棒冶具57に固定可能なキャップ部材84が設けられている。キャップ部材84は、内部に、芯棒冶具57の直径よりも僅かに小さい又は同程度の直径を有する円柱形状の穴85を区画している。そのため、キャップ部材84の穴85内に芯棒冶具57の一端を嵌合させると、穴85を区画する内面が、芯棒冶具57の外面と密着した状態となる。
図12(a)及び(b)に示すように、シート部材32の挿入方向におけるシート部材32の一端部、すなわち先端側の端部を、芯棒冶具57の外面とキャップ部材84の穴85を区画する内面とで挟持することで、シート部材32を円筒状に曲げた状態で芯棒冶具57に固定することができる。このようにすることにより、固定冶具としての芯棒冶具57に円筒状に曲げられたシート部材32の一端部を固定することができる。ここで、キャップ部材84の穴85内に芯棒冶具57の一端が嵌合した状態において、キャップ部材84の外径は、芯棒冶具57に巻き付けられた状態におけるシート部材32の外径よりも小さい又は略等しい。本実施形態では、図9(c)及び図12(b)に示すように、キャップ部材84の穴85内に嵌合する芯棒冶具57の一端を、先端側に向かって縮径するテーパ形状とすることで、これを実現している。
なお、キャップ部材84の構成は、シート部材32を変形させた状態で固定冶具に固定可能な構成であれば図12(a)、(b)に示す構成に限られるものではない。例えば、図12(a)、(b)に示すキャップ部材84は、シート部材32の挿入方向の先端側で芯棒冶具57に取り付けられ、シート部材32及び芯棒冶具57と共に外側チューブ22内に挿入されるものであるが、シート部材32の挿入方向の後端側で芯棒冶具57に取り付けられ、外側チューブ22内に挿入されないキャップ部材としてもよい。また、キャップ部材84が外側チューブ22内に挿入せずに用いる場合、キャップ部材84は芯棒冶具57に巻き付けられた状態におけるシート部材32の外径よりも大きい外径を有するものであってもよい。
以上のように、シート部材32を固定冶具に固定することにより、シート部材32の形状を固定して、シート部材32を外側チューブ22に挿入することができる。固定冶具を使用することにより、シート部材32を外側チューブ22に挿入しやすい形状に固定でき、また、外側チューブ22に挿入している間にかかる形状を維持できるため、容易に挿入することができる。また、シート部材32が固定冶具に固定されている場合、固定冶具と外側チューブ22との相対移動のみによって、シート部材32を外側チューブ22に対して移動することができ、シート部材32が固定冶具に固定されていない場合よりもスムーズにシート部材32を外側チューブ22に挿入することができる。
好ましくは、シート部材32を外側チューブ22に挿入した状態において、シート部材32の両端部34a及び34bを接合してシート部材32をチューブ形状に成形する。具体的に、図13に示すように、シート部材32のうち、表面33の長辺を含む、互いに対向する端部34a及び34bを突き合わせた状態で、外側チューブ22の外部から両端部34a及び34bを加熱することにより、両端部34a及び34bを溶融させ溶着する。好ましくは、外側チューブ22の外部から両端部34a及び34bに向けてレーザー照射56を行う。レーザーは、外側チューブ22の内部に挿入された状態のシート部材32の両端部34a及び34bに焦点が合うように、所定の距離を離れた位置から照射される。レーザー照射56により、シート部材32の両端部34a及び34bに熱が加えられ、両端部34a及び34bが溶融し溶着する。なお、熱源にはレーザー光の他、電気、高周波、超音波等、その他公知の技術を用いることができる。
なお、溶着は、シート部材32の内側に上述した芯棒冶具57が挿入された状態で行ってもよい。この場合、芯棒冶具57の一部又は全部を熱伝導性のよい素材とし、芯棒冶具57を外部から発熱又は加熱することにより、芯棒冶具57を介して、芯棒冶具57に巻き付けられているシート部材32の端部34a及び34bを加熱し、溶着するという方法でもよい。なお、熱伝導性のよい素材としては例えばアルミニウムや銅などの金属を用いることができる。また、上述した芯棒冶具57に代えて、別の部材をシート部材32の内側に挿入し、この部材を外部から発熱又は加熱することにより、シート部材32の端部34a及び34bを加熱し、溶着するようにしてもよい。
[シート部材32と外側チューブ22とを一体化する工程(P3)]
次に、シート部材32と外側チューブ22とを一体化する工程(P3)について説明する。シート部材32が外側チューブ22に挿入された状態において、これらを外側チューブ22の外部から加熱する。加熱装置としては、例えば、ヒーター、超音波発生装置、高周波発生装置を使用することができる。加熱する態様の一例として、例えば、シート部材32が挿入された外側チューブ22をオーブン(不図示)に投入し、オーブン内で加熱することができる。設定温度は、好ましくは、100〜180度、より好ましくは150度とする。
本実施形態の外側チューブ22は、上述するチューブ本体2の構成材料のうち、外部からの加熱により軟化する性質、すなわち、熱可塑性を有する材料により構成される。外側チューブ22は、外部からの加熱により収縮する。従って、外部から加熱することにより、外側チューブ22が縮径して、外側チューブ22の内面がシート部材32の表面のうち外側チューブ22の内面に面する表面(以下、「シート部材32の外面」と記載する。)に密着する。このようにして、外側チューブ22がシート部材32の外面上に貼り付け固定されることにより、シート部材32と外側チューブ22とが一体化される。更に、外側チューブ22の内面及びシート部材32の外面を溶融させて溶着することにより、外側チューブ22とシート部材32とをより強固に一体化させてもよい。
好ましくは、形状維持冶具をシート部材32の内側に位置させた状態で、シート部材32と外側チューブ22とを一体化する。形状維持冶具としては、例えば、上述した芯棒冶具57を利用することができる。形状維持冶具としての上述した芯棒冶具57をシート部材32の内側に挿入したままの状態で、シート部材32と芯棒冶具57と外側チューブ22とをオーブンに投入して加熱する。加熱の際に、シート部材32の内側に芯棒冶具57が位置することにより、外側チューブ22が縮径する際に、シート部材32が外側チューブ22の内面に沿った状態から径方向内側に向かって変形することを抑制することができる。そのため、外側チューブ22とシート部材32とをより強固に一体化することができると共に、製造されるチューブ本体2(図2参照)の断面形状をより均一化することができる。なお、ここでは、シート部材32を円筒状にする際に使用した芯棒冶具57を形状維持冶具としてそのまま利用することについて説明したが、芯棒冶具57に代えて、別の芯棒冶具やその他の冶具などを形状維持冶具としてシート部材32の内側に挿入して、シート部材32及び外側チューブ22と共に加熱するようにしてもよい。
上述の例では、外部からの加熱による一体化を説明したが、これに限定されるものではなく、溶剤や接着剤を使用してシート部材32と外側チューブ22の内面とを一体化する方法でもよい。接着剤は、瞬間接着剤やUV硬化型のものを使用できる。なお、シート部材32及び外側チューブ22と同等の柔軟性を持つものであることが好ましい。
以上のようにして、シート部材32と外側チューブ22とが一体化され、チューブ材を形成することができ、このチューブ材に各種加工を施すことにより、医療チューブとしてのチューブ本体2を形成することができる。なお、加熱の際に芯棒冶具57等の形状維持冶具を使用した場合は、シート部材32と外側チューブ22とが一体化された後、芯棒冶具57等の形状維持冶具を抜去してチューブ材を形成し、医療用チューブとしてのチューブ本体2を形成する。また、両端をカット処理することにより、チューブ本体2を形成するようにしてもよい。
なお、上述したチューブ本体2の製造方法における工程(P1)〜工程(P3)では、工程(P1)にてフッ素コート層200を形成する工程を含んでいるが、この工程を用いずに行うことも可能である。かかる場合には、上述の工程(P1)は不要となる。なお、シート部材32の表面33に形成された微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施す例を説明したが、これに限定されるものではなく、シート部材32を外側チューブ22に挿入した後に実施しても良く、シート部材32を外側チューブ22とを一体化した後に実施してもよく、後述するチューブを湾曲させた後に実施してもよい。但し、上述のフッ素コート層200を形成する工程(P1)を含めば、より微細凹凸構造100の強度を向上させることができる。
好ましくは、図16に示すように、シート部材32が外側チューブ22に一体化された状態において、少なくとも一部が湾曲した湾曲棒部材90をシート部材32の内側に挿入することにより、湾曲棒部材90に沿ってシート部材32及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させるようにする。このようにすれば、チューブ本体2の湾曲部10(図2参照)を形成することができる。なお、少なくとも一部が湾曲した湾曲棒部材90をシート部材32の内側に挿入した状態で、シート部材32及び外側チューブ22をオーブン内で加熱した後、冷却する。このようにすることで、湾曲形状を有するチューブ本体2を作成することができる。また、本実施形態では、湾曲棒部材90の湾曲した部分がシート部材32及び外側チューブ22の一端側に配置されるよう、湾曲棒部材90をシート部材32に挿入する。このようにすることで、図2に示すチューブ本体2の湾曲部10を形成することができる。図16に示す湾曲棒部材90は、シート部材32の表面33に形成された微細凹凸構造100を崩さないように、外側チューブ22の内径よりも小さい外径を有する湾曲棒部材90を使用している。
湾曲棒部材90を使用せずに、シート部材32及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させる方法でもよい。具体的には、シート部材32が外側チューブ22に挿入された状態において、外側チューブ22の外部から力を加えることによって、外側チューブ22に挿入されたシート部材32及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させる。このようにして、チューブ本体2の湾曲部10(図2参照)を形成してもよい。外側チューブ22の外部から力を加える方法としては、例えば、シート部材32及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させた所望の姿勢で維持可能な受け面を有する金型を使用することができる。また、このような金型の使用に加えて、外側チューブ22にシート部材32が挿入された状態において、シート部材32の内側に、直線状であって、外力を加えることにより変形可能な芯棒部材を挿入するようにしてもよい。つまり、外側チューブ22にシート部材32が挿入された状態において、シート部材32の内側に直線状の芯棒部材を挿入し、挿入後に芯棒部材を湾曲させ、次いで、金型を使用してその湾曲した状態を外部から固定することにより、少なくとも一部に湾曲部を有するチューブ本体を形成してもよい。なお、湾曲可能な芯棒部材としては、柔軟性を有するシリコーン樹脂や形状記憶合金などから形成すればよい。このような変形可能な芯棒部材を上述した芯棒冶具57で構成してもよい。
なお、上述したチューブ本体2は、1つの中空部7を有するものであるが、複数の中空部が形成されたチューブ本体を作成することも可能である。図14(a)に示すように、円筒状に曲げた2つのシート部材32を、外側チューブ22に挿入し、2つのシート部材32と外側チューブ22とを一体化すると共に、2つのシート部材32同士も一体化する。このようにすることで、チューブ本体2の中空部が第1中空部7a及び第2中空部7bの2つに分割されたチューブ本体を形成することができる。
次に、上述したチューブ本体2の第1〜第3ルーメン12〜14を形成する方法について例示説明する。図14(b)に示すように、外側チューブ22の内壁42に3つの溝43a、43b、43cを区画する。3つの溝43a、43b、43cは外側チューブ22の中心軸線方向Aに、外側チューブ22の一端から他端まで延在する。この外側チューブ22にシート部材32を挿入し、シート部材32と外側チューブ22とを一体化する。シート部材32と外側チューブ22とが一体化されると、3つの溝43a、43b、43cを区画する外側チューブ22の内壁42とシート部材32の外面とで、一端から他端まで貫通する第1〜第3ルーメン12〜14の原形となる3つの中空部が形成される。この他に、図14(c)に示すように、外側チューブ22を複数層で構成し、上述した内側層41(図5参照)となる径方向の最も内側の層を、予め第1〜第3ルーメン12〜14の原形となる3つの中空部が形成された層としてもよい。更に、外側チューブ22が複数層で構成される場合には、図14(c)に示す最も内側の層に限らず、外側チューブ22の他の層に予め第1〜第3ルーメン12〜14の原形となる3つの中空部を形成してもよい。
本発明に係る医療用チューブの製造方法及び医療用チューブは、上述した実施形態で説明した具体的な方法及び構成に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことが可能である。例えば、上述した実施形態では、医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法について説明したが、本発明に係るチューブの製造方法は、気管チューブのチューブ本体に限らず、他の用途や目的で使用される医療用チューブの製造方法としても適用可能である。
本発明に係る製造方法により製造可能な医療用チューブとしては、例えば、(1)胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(2)酸素カテーテル、気管内チューブ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(3)尿道カテーテル、導尿カテーテル、尿道バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(4)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(5)輸液チューブ、IVH(intravenous hyperalimentationの略)カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に間接的あるいは直接的に挿入ないし留置されるカテーテル類;(6)人工気管、人工気管支などの医療用人工管;(7)体外循環治療用の医療器具(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)の回路類、などが挙げられる。
本発明に係る製造方法により製造される各種医療用チューブによれば、広範囲の生物学的物質又は医療用液体が内面に付着することを抑制することができる。なお、「生物学的物質」としては、例えば、全血、血漿、血清、汗、便、尿、唾液、涙、膣液、前立腺液、歯肉滲出液、羊水、眼液、脳脊髄液、精液、痰、腹水、膿、鼻咽頭液、創傷浸出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ、外リンパ、胃液、粘液、腹液、胸水、皮脂、嘔吐物、これらの組み合わせからなる群、などが挙げられる。また、「医療用液体」としては、例えば、輸液剤、栄養剤、造影剤、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などで使用される塞栓剤、などが挙げられる。
なお、図面では、説明の便宜上、シート部材の幅及び長さに対するシート部材の厚みを厚く描いているが、実際はより薄いものであることに留意されたい。
本発明は、医療用チューブの製造方法及び医療用チューブに関する。
1:気管チューブ
2:チューブ本体(医療用チューブ)
3:カフ
4:フランジ部材
5:チューブ本体の先端
6:チューブ本体の基端
7:チューブ本体の中空部
7a:第1中空部
7b:第2中空部
8:チューブ本体の先端部
9:チューブ本体のカフ装着部
10:チューブ本体の湾曲部
11:チューブ本体の基端部
12:第1ルーメン
12a:第1基端開口
13:第2ルーメン
13a:第2基端開口
14:第3ルーメン
14a:第3基端開口
14b:連通口
17:筒部
17a、17b、17c:連通孔
18:フランジ部
19a、19b:吸引用チューブ
19c:カフ用チューブ
22:外側チューブ
30:内層
31:内周面
32:シート部材
33:表面
34、34a、34b、34c、34d:端部
40:外層
41:外層の最も内側の層(内側層)
42:内壁
43a、43b、43c:溝
50:金型
51、53、54:矢印
52:微細凹凸パターン
56:レーザー照射
57:芯棒冶具(固定冶具、形状維持冶具)
84:キャップ部材
85:穴
90:湾曲棒部材
100:微細凹凸構造
101:凸リブ
102:凹溝
103:突起
105:頂面
200:フッ素コート層
A:チューブ本体の内周面の中心軸線の方向
B:チューブ本体の周方向
O1:チューブ本体の内周面の中心軸線
X:異物

Claims (11)

  1. 微細凹凸構造が形成された内周面を構成する一層又は複数の層により構成された内層と、前記内層より径方向外側に一層又は複数の層により構成される外層とを備える医療用チューブの製造方法であって、
    前記内層を形成するシート部材を、前記外層のうち前記内層に積層される層を少なくとも形成する外側チューブに挿入する工程と、
    前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、前記シート部材と前記外側チューブとを一体化する工程と、を含む医療用チューブの製造方法。
  2. 前記微細凹凸構造が形成された表面が内面になるように前記シート部材を円筒状に曲げて、又は前記シート部材を折りたたんで、前記外側チューブに挿入する、請求項1に記載の医療用チューブの製造方法。
  3. 固定冶具に前記シート部材の一端部を固定することによって、前記シート部材の形状を固定して前記シート部材を前記外側チューブに挿入する、請求項1又は2に記載の医療用チューブの製造方法。
  4. 前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、
    前記シート部材の両端部を接合して前記シート部材をチューブ形状にする工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用チューブの製造方法。
  5. 前記シート部材の前記両端部を外部から加熱することにより前記両端部を接合する、請求項4に記載の医療用チューブの製造方法。
  6. 前記シート部材が前記外側チューブに一体化された状態において、少なくとも一部が湾曲した湾曲棒部材を前記シート部材の内側に挿入することにより、
    前記湾曲棒部材に沿って前記シート部材及び外側チューブの少なくとも一部を湾曲させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用チューブの製造方法。
  7. 前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、
    前記外側チューブの外部から力を加えることによって前記シート部材及び前記外側チューブの少なくとも一部を湾曲させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用チューブの製造方法。
  8. 形状維持冶具が前記シート部材の内側に位置する状態で、前記シート部材と前記外側チューブとを一体化する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療用チューブの製造方法。
  9. 前記シート部材が前記外側チューブに挿入された状態において、
    外部から加熱することにより、前記外側チューブが縮径して前記シート部材の外面に前記外側チューブの内面が密着して、前記シート部材と前記外側チューブとが一体化される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用チューブの製造方法。
  10. 前記微細凹凸構造にフッ素コーティングを施す工程を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療用チューブの製造方法。
  11. 凸部の中心間の距離が10μm〜100μm、かつ、
    前記凸部の頂面の最大幅が0.01μm〜50μm、かつ、
    前記凸部の最大高さが数μm〜数百μm、である微細凹凸構造が内面に形成されており、
    前記微細凹凸構造の表面にフッ素コーティングが施されている、医療用チューブ。
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